説明

自動分析装置

【課題】反応容器毎に内部の液体の攪拌を適切に行い、分析精度を向上させること。
【解決手段】反応テーブル19の外周側には、リーダライタ装置27が配設されており、反応容器に装着されたICタグ223との間で近距離無線通信を行う。ICタグ223のメモリには、駆動条件情報223bが格納されており、リーダライタ装置27は、この駆動条件情報223bを非接触で読み出し、記憶部47に格納する。そして、制御部4は、攪拌位置の反応容器のICタグ223から読み出した駆動条件情報を記憶部47から読み出し、攪拌装置23に出力する。これに応答して攪拌装置23では、駆動制御回路231が、制御部4から入力された駆動条件情報に従って信号発生器233の動作を制御し、表面弾性波素子225を駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応容器内に液体を分注し、この反応容器内で異なる液体を混合して反応させた反応液を分析する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、検体と試薬とを反応容器内に分注し、反応容器内で生じた反応を光学的に測定することによって検体の分析を行う自動分析装置が知られている。この自動分析装置は、反応容器内の検体と試薬との反応を促進するため、これらの液体を攪拌して混合する攪拌装置を具備している。近年では、検体や試薬の微量化のため、反応容器の小型化が望まれており、この反応容器の小型化に伴い、音波を発生させて非接触の攪拌を行う攪拌装置が提案されている。例えば、特許文献1には、圧電基板上に櫛型電極(IDT)を設けた表面弾性波素子を分析に用いる反応容器にそれぞれ取り付け、音波を発生させることによって反応容器内の液体を攪拌する技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−90791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように反応容器に表面弾性波素子を取り付ける場合、素子によって共振周波数や電気機械変換係数が異なる、素子と反応容器との間の接合状態が異なる、あるいは素子毎にインピーダンス状態が違うため電力の伝送効率が異なる等の要因で、各反応容器の表面弾性波素子を全て同一の駆動条件で駆動すると、実際に反応容器内の液体に伝播する音波のエネルギーが反応容器毎に異なる場合があった。このため、分析結果がばらつき、分析精度が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みて為されたものであって、反応容器毎に内部の液体の攪拌を適切に行い、分析精度を向上させることができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかる自動分析装置は、反応容器内に液体を分注し、前記反応容器内で異なる液体を混合して反応させた反応液を分析する自動分析装置であって、攪拌対象の反応容器に取り付けた音波発生手段を駆動し、該音波発生手段から音波を発生させて前記攪拌対象の反応容器内の液体を攪拌する攪拌手段と、前記攪拌対象の反応容器内の液体の攪拌にかかる前記攪拌手段の駆動条件情報を取得する駆動条件取得手段と、前記駆動条件取得手段によって取得された駆動条件情報に従って前記攪拌手段の動作を制御し、前記攪拌対象の反応容器内の液体を攪拌させる攪拌制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記反応容器には、該反応容器についての駆動条件情報が書き込まれ、少なくとも前記駆動条件情報の読み出しが可能に構成された非接触型の情報媒体が装着されており、前記駆動条件取得手段は、前記攪拌対象の反応容器の情報媒体から前記駆動条件情報を非接触状態で読み出して取得することを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記反応容器には、該反応容器の生産情報が書き込まれ、少なくとも前記生産情報の読み出しが可能に構成された非接触型の情報媒体が装着されており、生産情報毎の前記攪拌手段の駆動条件情報を記憶する駆動条件記憶手段を備え、前記駆動条件取得手段は、前記攪拌対象の反応容器の情報媒体から前記生産情報を非接触状態で読み出し、該読み出した生産情報に対応する駆動条件情報を前記駆動条件記憶手段から読み出して取得することを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記反応容器の情報媒体には、該反応容器に固有に割り当てられた識別情報が書き込まれており、前記攪拌対象の反応容器の情報媒体から前記識別情報を非接触状態で読み出して取得する識別情報取得手段と、前記駆動条件取得手段によって取得した駆動条件情報を、前記識別情報取得手段によって取得された識別情報と対応付けて管理する駆動条件管理手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記攪拌手段による前記攪拌対象の反応容器内の液体の攪拌状態に応じて変化する攪拌特性を検出する攪拌特性検出手段と、前記攪拌特性検出手段によって検出された攪拌特性を、前記識別情報取得手段によって取得された識別情報と対応付けて管理する攪拌特性管理手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記情報媒体は、データの書き込みが可能に構成されており、前記攪拌特性検出手段によって検出された攪拌特性をもとに前記攪拌対象の反応容器内の液体の攪拌の良否を判定する良否判定手段と、前記良否判定手段によって攪拌不良と判定された反応容器に装着された情報媒体に、異常情報を書き込む異常情報書込手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記攪拌特性検出手段は、前記攪拌特性として、前記攪拌手段による攪拌の際の前記攪拌対象の反応容器内の液体の攪拌温度を検出することを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記駆動条件情報は、前記音波発生手段の駆動周波数、前記音波発生手段の駆動電力および前記音波発生手段の駆動時間の少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、攪拌対象の反応容器内の液体の攪拌にかかる駆動条件情報に従って攪拌手段の動作を制御することができるので、反応容器毎に内部の液体の攪拌を適切に行うことができるという効果を奏する。したがって、分析結果のばらつきを抑え、分析精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。本実施の形態の自動分析装置は、複数の検体の生化学的な分析を自動的に行う装置であり、分析対象の検体と試薬とを反応容器にそれぞれ分注し、反応容器内で生じた反応を光学的に測定する。図1は、本実施の形態にかかる自動分析装置1の内部構成の一例を示す概略斜視図であり、図2は、自動分析装置1の機能構成の一例を示すブロック図であり、図3は、自動分析装置1を構成する反応テーブル19の半径方向の一部断面図である。自動分析装置1は、検体テーブル11、検体分注機構13、2つの試薬テーブル15(15−1,15−2)、試薬分注機構17、反応テーブル19、3つの攪拌装置23(23−1,23−2,23−3)、測定光学系25、リーダライタ装置27、洗浄装置29、攪拌判定装置31等を備える。また、自動分析装置1は、図2に示すように、装置を構成する各部を制御し、各部への動作タイミングの指示やデータの転送等を行って装置全体の動作を統括的に制御する制御部4を備える。
【0016】
検体テーブル11には、図1に示すように、複数の検体容器111が周方向に沿って等間隔で収納される。検体容器111には、血液や尿等の検体が収容される。この検体テーブル11は、制御部4の制御のもと、不図示の駆動機構によってその中心を回転軸とした間欠的な回動が可能に構成されており、所望の検体容器111を所定の位置まで搬送する。そして、この所定位置に搬送された検体容器111内の検体が、検体分注機構13によって反応テーブル19上を配列して搬送される反応容器22に分注される。
【0017】
検体分注機構13は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行うアーム131を備え、このアーム131に、検体の吸引および吐出を行うプローブが取り付けられて構成されている。検体分注機構13は、制御部4の制御のもと、検体テーブル11上の所定位置に搬送された検体容器111からプローブによって検体を吸引する。そして、アーム131を回動させ、反応テーブル19上の検体分注位置に搬送された反応容器22内に検体を吐出して分注を行う。検体分注機構13のプローブは、分注終了後、その移動経路上に配設された図示しない洗浄槽で流水・洗浄される。
【0018】
試薬テーブル15(15−1,15−2)は、制御部4の制御のもと、それぞれ不図示の駆動機構によってその中心を回転軸とした間欠的な回動が可能に構成されており、所望の試薬容器151を所定の位置まで搬送する。各試薬容器151には、それぞれ分析項目に応じた所定の試薬が収容され、例えば、一方の試薬テーブル15−1には、第1試薬を収容した試薬容器151が収納され、他方の試薬テーブル15−2には、第2試薬を収容した試薬容器151が収納される。また、各試薬テーブル15の下方にはそれぞれ図示しない恒温槽が設けられており、各試薬容器151に収容された試薬を保冷して恒温状態に保つ。これにより、試薬の蒸発や変性を抑制することができる。
【0019】
試薬分注機構17(17−1,17−2)は、検体分注機構13と同様に、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行うアーム171を備え、このアーム171に、それぞれ試薬の吸引および吐出を行うプローブが取り付けられて構成されている。一方の試薬分注機構17−1は、制御部4の制御のもと、試薬テーブル15−1上の所定位置に搬送された試薬容器151からプローブによって第1試薬を吸引する。そして、アーム171を回動させ、反応テーブル19上の第1試薬分注位置に搬送された反応容器22内に第1試薬を吐出して分注を行う。同様にして、他方の試薬分注機構17−2は、制御部4の制御のもと、試薬テーブル15−2上の所定位置に搬送された試薬容器151からプローブによって第2試薬を吸引する。そして、アーム171を回動させ、反応テーブル19上の第2試薬分注位置に搬送された反応容器22内に第2試薬を吐出して分注を行う。各試薬分注機構17のプローブは、分注終了後、その移動経路上に配設された図示しない洗浄槽で流水・洗浄される。
【0020】
反応テーブル19には、複数の収納室21が周方向に沿って等間隔で形成されており、各収納室21に反応容器22が着脱自在に載置される。図4−1は、反応容器22の斜視図であり、図4−2は、反応容器22の底面図である。図4−1に示すように、反応容器22は、内部に液体を保持する四角筒状の容器であり、外側面221に、RFIDタグ等の非接触型のICチップを内蔵した情報媒体であるICタグ223が例えば貼付されて装着されている。ICタグ223は、メモリやアンテナ、制御回路等を備え、リーダライタ装置27によるメモリ内のデータの読み出しや書き込み、書き換えが可能に構成されたものであって、リーダライタ装置27からの電波に応答して、メモリに書き込まれたデータをリーダライタ装置27に送信する。あるいは、リーダライタ装置27から受信したデータをメモリに書き込む。また、図4−2に示すように、反応容器22の底面には、音波発生手段としての表面弾性波素子225が取り付けられている。この表面弾性波素子225は、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)等の圧電素材からなる圧電基板226上に櫛型電極(IDT)からなる振動子227が形成されて構成される。表面弾性波素子225は、振動子227を外側に向け、エポキシ樹脂等の不図示の音響整合層を介して反応容器22の底面に取り付けられる。
【0021】
この反応容器22は、光学的に透明な素材で成形される。具体的には、測定光学系25から出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。
【0022】
そして、反応容器22は、ICタグ223を外側に向けて反応テーブル19上に載置される。具体的には、反応テーブル19は、図3に示すように、この反応テーブル19上を各収納室21(図1参照)に区画して反応容器22を保持する容器保持部材191を備え、反応容器22は、容器保持部材191に保持されて反応テーブル19上に載置される。容器保持部材191は、制御部4の制御のもと、不図示の駆動機構によって反応テーブル19の中心を回転軸として回転自在に構成されており、一周期で1/4周分回転し、四周期で1反応容器分回転する。この容器保持部材191の回転によって、反応容器22は、反応テーブル19上の検体分注位置、第1試薬分注位置、第2試薬分注位置、攪拌位置、測定位置、洗浄装置29下方の廃液排出位置や洗浄位置、吸引乾燥位置、判定用攪拌位置等の各位置に搬送される。また、容器保持部材191の下方にはウォーターバス等の恒温槽193が設けられており、内部の温度を体温程度の温度に保温する。
【0023】
また、容器保持部材191によって保持される各反応容器22の下方には、それぞれ反応容器22の底面に設けられた表面弾性波素子225の振動子227の櫛型電極と接触する一対の引き出し電極195と、各引き出し電極195と接触する一対の接触電極198を具備する端子基板197とが配設されており、攪拌装置23を構成する表面弾性波素子225と信号発生器233との間を電気的に接続して、信号発生器233からの電力を、表面弾性波素子225の振動子227に供給する。
【0024】
攪拌装置23(23−1,23−2,23−3)は、対応する攪拌位置に搬送された反応容器22内に分注された液体の攪拌を行うものであり、攪拌装置23−1は第1の攪拌位置に搬送された反応容器22内の液体の攪拌を行い、攪拌装置23−2は第2の攪拌位置に搬送された反応容器22内の液体の攪拌を行い、攪拌装置23−3は第3の攪拌位置に搬送された反応容器22内の液体の攪拌を行う。これらの各攪拌装置23は、攪拌手段に相当するものであり、その攪拌位置近傍の反応テーブル19の下方に配設された駆動制御回路231および信号発生器233と、反応容器22の底面に取り付けられた表面弾性波素子225とで構成される。
【0025】
駆動制御回路231は、攪拌制御手段に相当するものであり、制御部4の制御のもと、信号発生器233の動作を制御して表面弾性波素子225を駆動させる。具体的には、駆動制御回路231は、例えば、表面弾性波素子225が発生する音波の特性(周波数、強度、位相、波の特性等)や波形(正弦波や三角波、矩形波、バースト波等)、変調(振幅変調や周波数変調等)等を制御する。
【0026】
信号発生器233は、駆動制御回路231からの制御信号に基づいて数十MHz〜数百MHz程度の高周波信号を振動子227に出力して表面弾性波素子225を駆動する。振動子227は、引き出し電極195および端子基板197の接触電極198を介して信号発生器233から供給される高周波信号を表面弾性波に変換して音波を発生させる。
【0027】
また、反応テーブル19の容器保持部材191には、図3に示すように、測定光学系25からの分析光を、反応容器22を挟んで反応テーブル19の半径方向に透過させるための測光穴192が形成されている。一方、恒温槽193には、図示しないが、測定位置の反応容器22を保持する容器保持部材191の測光穴192と連通して、測定光学系25からの分析光を反応テーブル19の半径方向内側から外側へと案内する開口が形成されている。
【0028】
測定光学系25は、制御部4の制御のもと、測定位置に搬送された反応容器22に分析光を照射し、反応容器22内の反応液を透過した光を受光して分光強度測定を行う。例えば、図1に示すように、反応容器22内の反応液を分析するための分析光(340〜800nm)を出射する光源251と、光源251から出射されて反応容器22内の反応液を透過した光束を測光する測光センサ253とを備える。この測定光学系25による測定結果は、制御部4に出力され、この制御部4と接続された分析部41において分析される。
【0029】
また、反応テーブル19の外周側には、駆動条件取得手段、識別情報取得手段および異常情報書込手段としてのリーダライタ装置27が配設されており、制御部4の制御のもと、反応容器22に装着されたICタグ223との間で近距離無線通信を行ってデータの読み書きを行う。具体的には、図3に示すように、容器保持部材191の回動に伴ってリーダライタ装置27の対向位置に移動された反応容器22を対象として近距離無線通信を行う。本実施の形態では、反応容器22に装着されるICタグ223のメモリには、図2に示すように、シリアル番号223aと、駆動条件情報223bと、異常フラグ223cとが格納されており、リーダライタ装置27は、シリアル番号223aおよび駆動条件情報223bを非接触で読み出すとともに、異常フラグ223cを非接触で書き換える。このとき、各反応容器22を保持する容器保持部材191が反応容器22間を仕切り、隣接する反応容器22に装着されたICタグ223同士での混信を防止する。なお、ICタグ223とリーダライタ装置27との間の通信距離や通信方式等は、適宜選択できる。また、ICタグ223同士の混信を防止するため、リーダライタ装置27として狭指向性アンテナを有するものを用いることもできる。
【0030】
シリアル番号223aは、当該反応容器22に固有に割り当てられる識別情報である。駆動条件情報223bは、当該反応容器22内の液体の攪拌にかかる攪拌装置23の動作を制御するためのデータである。具体的には、例えば、表面弾性波素子225の駆動周波数、表面弾性波素子225の駆動電力および表面弾性波素子225の駆動時間の少なくとも一つを含み、その共振周波数や電気機械変換係数、インピーダンス状態に応じた電力の伝送効率、あるいは反応容器22との間の接合状態等を考慮して予め反応容器22毎に定められる。異常フラグ223cは、当該反応容器22に取り付けられた表面弾性波素子225による当該反応容器22内の液体の攪拌の良否を示すフラグ情報(ON/OFF)であり、初期値として「OFF」が設定される。そして、攪拌判定装置31によって当該反応容器22の表面弾性波素子225による攪拌が不良と判定された場合に、リーダライタ装置27によって「ON」に書き換えられる。
【0031】
洗浄装置29は、測定光学系25による測定が終了して廃液排出位置、洗浄位置および吸引乾燥位置に順次搬送される反応容器22を洗浄・乾燥する。
【0032】
具体的には、廃液排出位置上方には、廃液吸引ノズルが設けられ、廃液を貯留するタンクや吸引ポンプと接続されている。この廃液吸引ノズルは、制御部4の制御のもと、その駆動機構によって廃液排出位置の反応容器22の内部に対して昇降動作を行い、反応容器22内の反応液(廃液)を吸引して排出する。
【0033】
洗浄位置上方には、反応容器22内に洗浄液を供給するための洗浄液吐出ノズルと、この洗浄液吐出ノズルによって反応容器22内に供給された洗浄液を排出するための洗浄液吸引ノズルとを組み合わせた洗浄ノズルが設けられており、洗浄液吐出ノズルは、例えば純水等の洗浄液を貯留したタンクやポンプと接続され、洗浄液吸引ノズルは、洗浄廃液を貯留するタンクやポンプと接続されている。本実施の形態では、洗浄装置29は、2組の洗浄ノズルを備えており、それぞれ第1および第2の各洗浄位置上方に設けられる。各洗浄ノズルは、制御部4の制御のもと、その駆動機構によって洗浄位置の反応容器22の内部に対して昇降動作を行い、洗浄液吐出ノズルによってこの反応容器22内に洗浄液を吐出して供給するとともに、洗浄液吸引ノズルによって反応容器22内の洗浄液を吸引して排出する。本実施の形態では、攪拌判定装置31によって各反応容器22内の液体の表面弾性波素子225による攪拌の良否を判定するため、第2の洗浄位置では、一旦反応容器22内に洗浄水を吐出して吸引した後、再度所定量の洗浄水を吐出する。
【0034】
吸引乾燥位置上方には、吸引乾燥ノズルが設けられ、廃液を貯留するタンクや吸引ポンプと接続されている。この吸引乾燥ノズルは、制御部4の制御のもと、その駆動機構によって吸引乾燥位置の反応容器22の内部に対して昇降動作を行い、この反応容器22内の洗浄水を吸引するとともに、その吸引力によって反応容器22内に加圧空気を吹き込み、残存する洗浄液を吸引乾燥する。上記したリーダライタ装置27は、例えばこの吸引乾燥位置近傍に設けられ、容器保持部材191の回動に伴って吸引乾燥位置に移動された反応容器22に装着されたICタグ223との間で近距離無線通信を行ってデータの読み書きを行う。以下、吸引乾燥位置を、適宜タグ読書位置と呼ぶ。
【0035】
攪拌判定装置31は、制御部4の制御のもと、判定用攪拌位置に搬送された反応容器22内の液体の攪拌の良否を判定する装置であり、図2に示すように、温度センサ311と、温度監視部313と、判定用攪拌装置32とを備える。この攪拌判定装置31は、温度監視手段に相当するものであり、表面弾性波素子225と反応容器22との間の接着不良や剥離、表面弾性波素子225の表面に水等が付着していること等に起因する反応容器22内の液体への音波の伝播の程度を判定する。反応容器22は、第2の洗浄位置の後、吸引乾燥位置に搬送される前にこの判定用攪拌位置に搬送されるようになっており、攪拌判定装置31は、表面弾性波素子225からの音波の伝播の程度を反応容器22内の洗浄水の温度変化をもとに判定し、攪拌の良否を判定する。
【0036】
図5は、攪拌判定装置31の構成を説明する模式図である。温度センサ311は、攪拌特性検出手段に相当するものであり、反応容器22内の液体の攪拌状態に応じて変化する攪拌特性として、判定用攪拌装置31による攪拌の際の反応容器22内の液体の攪拌温度を検出する。具体的には、温度センサ311は、サーミスタや熱電対等で構成され、支持部材315の下端に設けられて反応容器22に保持された液体の温度を測定する。支持部材315は、カム316の回動によって上下動する支柱317に設けたアーム318に支持されている。カム316は、図示しないモータ等の駆動手段によって回動する。支柱317は、その下端がカム316のカム面316aに当接し、カム316の回動に伴って上下動する。このとき、案内部材319によって支柱317の上下動が円滑に案内される。そして、この支柱317の上下動によって温度センサ311が反応容器22の内部に対して昇降移動し、反応容器22内の液体の温度を検出して温度監視部313に出力する。温度監視部313は、良否判定手段に相当するものであり、判定用攪拌装置32による攪拌の前後に温度センサ311によって検出された温度から攪拌前後の液体の温度変化を判定し、反応容器22内の液体の攪拌の良否を判定する。そして、温度監視部313は、攪拌の前後の温度上昇値を攪拌温度特性とし、良否判定結果とともに制御部4に出力する。判定用攪拌装置32は、攪拌装置23と同様にして、その判定用攪拌位置近傍の反応テーブル19の下方に配設された駆動制御回路231および信号発生器233と、反応容器22の底面に取り付けられた表面弾性波素子225とで構成され、判定用攪拌位置に搬送された反応容器22内の液体(洗浄液)の攪拌を行う。
【0037】
図6は、反応容器22の反応テーブル19上の搬送経路を示す図である。上記構成の自動分析装置1では、反応容器22は、先ず第1試薬分注位置P1に搬送される。この第1試薬分注位置P1では、試薬分注機構17−1が試薬容器151中の第1試薬を分注する。次いで反応容器22は、第1の攪拌位置P2に搬送される。この第1の攪拌位置P2では、攪拌装置23−1が当該反応容器22内の第1試薬を攪拌する。次いで反応容器22は、検体分注位置P3に搬送される。この検体分注位置P3では、検体分注機構13が検体容器111中の検体を分注する。次いで反応容器22は、第2の攪拌位置P4に搬送される。この第2の攪拌位置P4では、攪拌装置23−2が当該反応容器22内の第1試薬と検体とを攪拌し、これによって反応が促進される。そして、反応容器22は、測定位置P5に搬送される。この測定位置P5では、測定光学系25が反応容器22内の反応させた状態の試料の分光強度測定を行う。そして、分析部41が測定結果を分析し、検体の成分分析等を自動的に行う。続いて、反応容器22は、第2試薬分注位置P6に搬送される。この第2試薬分注位置P6では、試薬分注機構17−2が試薬容器151中の第2試薬を分注する。次いで反応容器22は、第3の攪拌位置P7に搬送される。この第3の攪拌位置P7では、攪拌装置23−3が当該反応容器22内の第1試薬および検体と第2試薬とを攪拌し、これによって反応が促進される。そして、反応容器22は、測定位置P8に搬送される。この測定位置P8では、測定光学系25が反応容器22内の反応させた状態の試料の分光強度測定を行う。そして、分析部41が測定結果を分析する。
【0038】
続いて、反応容器22は、廃液排出位置P9に搬送される。この廃液排出位置P9では、洗浄装置29が反応容器22内の廃液を排出する。次いで反応容器22は、第1の洗浄位置P10および第2の洗浄位置P11に順次搬送される。各洗浄位置P10,P11では、洗浄装置29が反応容器22内に洗浄水を吐出して吸引し、その内部の水洗浄を行う。また、第2の洗浄位置P11では、洗浄装置29は、水洗浄の後、反応容器22内に再度洗浄水を吐出する。次いで反応容器22は、判定用攪拌位置P12に搬送される。この判定用攪拌位置P12では、攪拌判定装置31が反応容器22内の液体の攪拌の良否を判定する。次いで反応容器22は、吸引乾燥位置(タグ読書位置)P13に搬送される。この吸引乾燥位置(タグ読書位置)P13では、洗浄装置29が反応容器22内の洗浄水を吸引して乾燥する。また、吸引乾燥位置(タグ読書位置)P13では、リーダライタ装置27が、反応容器22のICタグ223と近距離無線通信を行い、シリアル番号223aや駆動条件情報223bの読み出しや、異常フラグ223cの書き換えを行う。この吸引乾燥位置(タグ読書位置)P13で吸引・乾燥された反応容器22は再び第1試薬分注位置P1に搬送され、一連の分析動作が連続して繰り返し行われる。
【0039】
制御部4は、マイクロコンピュータ等で構成され、装置内の適所に収められる。この制御部4は、図2に示すように、分析部41と接続されており、測定光学系25による測定結果が適宜出力されるようになっている。分析部41は、測定光学系25による測定結果に基づいて検体の成分濃度等を分析し、分析結果を制御部4に出力する。また、制御部4は、検体数や分析項目等、分析に必要な情報を入力するためのキーボードやマウス等の入力装置で構成される入力部43や、分析結果画面や警告表示画面、各種設定入力のための入力画面等を表示するためのLCDやELD等の表示装置で構成される表示部45、記憶部47と接続されている。
【0040】
記憶部47は、更新記憶可能なフラッシュメモリ等のROMやRAMといった各種ICメモリ、内蔵或いはデータ通信端子で接続されたハードディスク、CD−ROM等の情報記憶媒体及びその読取装置等によって実現されるものであり、分析結果の他、自動分析装置1の動作に必要な各種プログラムや、これらプログラムの実行にかかるデータ等が格納される。また、記憶部47には、駆動条件管理手段としての反応容器情報471と、攪拌状態管理手段としての攪拌特性履歴情報473と、反応容器使用状況情報475とが格納される。
【0041】
反応容器情報471は、反応テーブル19上に載置された各反応容器22の載置ポジション(各反応容器22が収納されている収納室21)を識別するためのポジション番号毎に、このポジション番号の載置ポジションに載置された反応容器22にかかるデータを記憶する。ここで、ポジション番号は、例えば、反応テーブル19上の所定の原点位置の収納室21から順番に時計回りに割り振った通し番号である。図7は、反応容器情報471のデータ構成例を示す図である。この反応容器情報471は、反応テーブル19上の反応容器22毎に用意され、反応容器22のICタグ223から読み出されたシリアル番号471a、駆動条件情報471bおよび異常フラグ471cが、載置ポジションのポジション番号と対応付けられて設定されている。異常フラグ471cは、攪拌判定装置31によってその反応容器22の攪拌が不良と判定された場合に、「ON」に更新される。
【0042】
攪拌特性履歴情報473は、各反応容器22の攪拌特性の履歴情報を管理する。例えば、攪拌特性として、攪拌判定装置31から入力される攪拌温度特性を管理する。図8は、攪拌特性履歴情報473のデータ構成例を示す図である。この攪拌特性履歴情報473には、攪拌判定装置31から入力される攪拌温度特性および良否判定結果が、判定時の日付情報である攪拌日付、判定用攪拌位置の載置ポジション、およびこの載置ポジションの反応容器22のシリアル番号と対応付けられて管理される。従来は、各反応容器22の攪拌特性の履歴情報をポジション番号と対応付けて管理していた。このため、例えばメンテナンス等のためにユーザが反応容器22を反応テーブル19から取り外し、再度載置する作業を行った場合等において、反応テーブル19上で反応容器22の載置ポジションが入れ替えられたり新たな反応容器22が載置される等して変更されると、データを正しく管理することができなかった。これに対して、本実施の形態では、攪拌特性履歴情報473において、各反応容器22の攪拌特性(攪拌温度特性)の履歴情報をシリアル番号と対応付けて管理する。シリアル番号は反応容器22毎に固有であるため、各載置ポジションの反応容器22が変更された場合であっても、各反応容器22の攪拌特性の履歴情報を適正に管理することができる。
【0043】
反応容器使用状況情報475は、現時点までに自動分析装置1で用いられた反応容器22のシリアル番号と対応付けて、その反応容器22が攪拌装置23によって攪拌された回数を総使用回数として記憶する。制御部4は、各攪拌装置23によって反応容器22内の液体の攪拌が行われる度に、その載置ポジションの反応容器22のシリアル番号に対応する総使用回数を更新していく。
【0044】
そして、制御部4は、本実施の形態を実現するための処理として、反応テーブル19上の全ての反応容器22のICタグ223からリーダライタ装置27が読み出したシリアル番号223a、駆動条件情報223bおよび異常フラグ223cの各データをもとに反応容器情報471を生成し、これらのデータを用いて装置各部を制御する。
【0045】
ここで、制御部4の処理手順について、図9に示すフローチャートを参照して説明する。図9に示すように、制御部4は、分析を開始する前の準備段階で、自動的にまたはユーザ操作に従って、タグ読書位置(吸引乾燥位置)に順次搬送される反応容器22のICタグ223からリーダライタ装置27が順次読み出したシリアル番号、駆動条件情報および異常フラグを、それぞれその反応テーブル19上の載置ポジションのポジション番号と対応付けた反応容器情報471を生成する(ステップS11)。またこのとき、制御部4は、異常フラグ「ON」の反応容器22があった場合には(ステップS13:YES)、その載置ポジションのポジション番号を表示部45に表示させて、反応テーブル19上に攪拌不良の反応容器22が載置されている旨の警告表示を行う(ステップS15)。なお、必ずしも警告表示を行う必要はなく、この載置ポジションの反応容器22を分析工程で使用しない構成としてもよい。
【0046】
分析を開始すると、制御部4は、分析を終了するまでの間、ループAの処理を反応テーブル19の回転が停止する度に繰り返し実行する(ステップS17〜ステップS35)。すなわち、制御部4は、第1〜第3の各攪拌位置および判定用攪拌位置の載置ポジションを判別し、そのポジション番号と対応付けられた反応容器情報471から駆動条件情報471bをそれぞれ読み出して、対応する各攪拌装置23および判定用攪拌装置32にそれぞれ出力する(ステップS19)。これに応答して、各攪拌装置23では駆動制御回路231が、判定用攪拌装置32では駆動制御回路231が、制御部4から入力された駆動条件情報に従って信号発生器233の動作を制御し、表面弾性波素子225を駆動させる。これによれば、攪拌対象の反応容器22に応じた駆動条件情報に従ってこの攪拌対象の反応容器22内の液体を攪拌させることができる。
【0047】
また、制御部4は、タグ読書位置の載置ポジションを判別し、そのポジション番号をもとに対応するシリアル番号を反応容器情報471から読み出して、タグ読書位置の反応容器22のICタグ223からリーダライタ装置27が読み出したシリアル番号と比較する。そして、制御部4は、これらが異なる場合にはタグ読書位置の載置ポジションにおいて反応容器22が変更されたと判定し(ステップS21:YES)、リーダライタ装置27に駆動条件情報および異常フラグの読み出し指示を出力する。そして、制御部4は、タグ読書位置の載置ポジションについての反応容器情報471を、リーダライタ装置27が読み出したシリアル番号、駆動条件情報および異常フラグに従って更新する(ステップS23)。このように、反応テーブル19上の反応容器22が変更された場合であっても、再度その駆動条件情報を読み出して取得するので、変更前の反応容器22の駆動条件情報を用いて攪拌装置23を駆動するといった事態を防止でき、反応容器22内の液体の攪拌を適切に行うことができる。ここでの駆動条件情報の読み出しに失敗した場合には、再度タグ読書位置に搬送され、駆動条件情報の読み出しが正常に行われるまでの間この反応容器22を分析に使用しない。なお、このときに読み出した異常フラグが「ON」の場合に、ステップS15と同様の処理を行って警告表示を行うこととしてもよい。
【0048】
また、制御部4は、タグ読書位置の載置ポジションのポジション番号と対応付けられた反応容器情報471の異常フラグ471cの更新の有無を判定し、更新(「OFF」→「ON」への更新)があった場合には(ステップS25:YES)、リーダライタ装置27に異常フラグの書き換え指示を出力する(ステップS27)。これに応答して、リーダライタ装置27は、タグ読書位置の反応容器22のICタグ223と近距離無線通信を行って異常フラグ223cを「ON」に書き換える。これによれば、この攪拌不良と判定された反応容器22が自動分析装置1から取り外された後、誤って他の自動分析装置に設置された場合であっても、ICタグ223内の異常フラグ223cを読み出して判定することによって、この反応容器22を用いた分析が行われずにすむ。各攪拌装置23および判定用攪拌装置32は、攪拌対象の反応容器22に応じた駆動条件情報に従ってこの攪拌対象の反応容器22内の液体を攪拌させることができる。
【0049】
また、制御部4は、現在時刻を攪拌日付とし、この攪拌日付と攪拌判定装置31から入力された攪拌温度特性および攪拌の良否判定結果とを判定用攪拌位置の載置ポジションおよびこの載置ポジションの反応容器22のシリアル番号と対応付けたレコードを生成し、攪拌特性履歴情報473に追加する(ステップS29)。またこのとき、制御部4は、良否判定結果が攪拌不良の場合には(ステップS31)、判定用攪拌位置の載置ポジションを判別し、そのポジション番号と対応付けられた反応容器情報471の異常フラグ471cを「ON」に更新する(ステップS33)。なお、分析を終了する場合は、ループAの処理を終了し、本処理を終える。
【0050】
また、制御部4は、攪拌特性履歴情報473として管理している攪拌温度特性の履歴情報をユーザ操作に従って表示部45に表示する制御を行う。具体的には、制御部4は、入力部43から攪拌特性履歴情報473の閲覧指示が入力された場合に、ポジション画面またはポジション−シリアル番号画面を表示する制御を行う。これにより、ユーザは、画面上でポジション番号毎またはシリアル番号毎の攪拌温度特性の変化を確認することができ、反応容器22の劣化を把握することができる。
【0051】
図10は、ポジション画面W10の一例を示す図である。図10に示すように、ポジション画面W10には、ポジション番号がそれぞれ付されたポジション選択ボタンB11が配置されている。ユーザは、ポジション番号毎の攪拌温度特性の履歴情報を閲覧したい場合にポジション画面W10を表示させ、所望のポジション番号が付されたポジション選択ボタンB11を押下することによって、その載置ポジションにおける攪拌温度特性の履歴情報を表示させる。また、このポジション画面W10には、ポジション−シリアル番号画面に遷移するための画面遷移ボタンB13が配置されており、画面遷移ボタンB13を押下するとポジション−シリアル番号画面(図12参照)が表示される。
【0052】
このポジション画面W10において、例えばポジション選択ボタンB11−1を押下してポジション番号「11」を選択すると、ポジション別攪拌特性情報画面が表示される。図11は、ポジション別攪拌特性情報画面W20の一例を示す図である。このポジション別攪拌特性情報画面W20には、反応テーブル19上の載置ポジション「11」における攪拌温度特性の履歴情報が表示される。このとき、制御部4は、攪拌特性履歴情報473を参照し、ポジション番号に「11」が設定されているレコードの中から、例えば攪拌日付が新しい所定数個のレコードを抽出し、その内容を攪拌特性一覧L20として表示する制御を行うとともに、抽出したレコードの内容に従って、横軸を攪拌日付、縦軸を攪拌温度特性とした温度特性変化グラフG20を作成して表示する制御を行う。このポジション別攪拌特性情報画面W20によれば、2006年11月19日に載置ポジション「11」の反応容器22が入れ替えられており、この結果、攪拌温度特性が変化していることが確認できる。
【0053】
また、このポジション別攪拌特性情報画面W20には、攪拌日付が現在表示されている攪拌特性一覧L20以前の攪拌特性一覧およびその温度特性変化グラフを表示させるための前へボタンB21、攪拌日付が現在表示されている攪拌特性一覧L20よりも後の攪拌特性一覧およびその温度特性変化グラフを表示させるための次へボタンB23、ポジション画面に遷移するための画面遷移ボタンB25、およびポジション−シリアル番号画面に遷移するための画面遷移ボタンB27が配置されており、ユーザ操作に応じて画面表示を更新する。
【0054】
図12は、ポジション−シリアル番号画面W30の一例を示す図である。図12に示すように、ポジション−シリアル番号画面W30には、ポジション番号と対応させて、その載置ポジションに現在載置されている反応容器22のシリアル番号が付されたシリアル番号選択ボタンB31が配置されている。ユーザは、シリアル番号毎の攪拌温度特性の履歴情報を閲覧したい場合にポジション−シリアル番号画面W30を表示させ、所望のシリアル番号選択ボタンB31を押下することによって、その反応容器22の攪拌温度特性の履歴情報を表示させる。このポジション−シリアル番号画面W30において次へボタンB33を押下すれば、「31」以降の載置ポジションに載置されている反応容器22のシリアル番号を選択することができる。また、画面遷移ボタンB35を押下すれば、ポジション画面(図10参照)に遷移することができる。
【0055】
このポジション−シリアル番号画面W30において、例えばシリアル番号選択ボタンB31−1を押下してシリアル番号「008844」を選択すると、シリアル番号別攪拌特性情報画面が表示される。図13は、シリアル番号別攪拌特性情報画面W40の一例を示す図である。このシリアル番号別攪拌特性情報画面W40には、シリアル番号「008844」の反応容器22の攪拌特性情報が表示される。また、この攪拌特性情報と併せて、シリアル番号「008844」の反応容器22が攪拌装置23によって攪拌された総使用回数I40が表示される。このとき、制御部4は、攪拌特性履歴情報473を参照し、シリアル番号に「008844」が設定されているレコードの中から、例えば攪拌日付が新しい所定数個のレコードを抽出し、その内容を攪拌特性一覧L40として表示する制御を行うとともに、抽出したレコードの内容に従って、横軸を攪拌日付、縦軸を攪拌温度特性とした温度特性変化グラフG40を表示する制御を行う。また、制御部4は、反応容器使用状況情報475からシリアル番号「008844」の反応容器22の総使用回数を読み出して表示する制御を行う。このシリアル番号別攪拌特性情報画面W40によれば、2006年11月19日にシリアル番号「008844」の反応容器22の載置ポジションが変更されているが、攪拌温度特性は特に変化していないことが確認できる。
【0056】
また、このシリアル番号別攪拌特性情報画面W40には、ポジション別攪拌特性情報画面W20と同様にして、前へボタンB41、次へボタンB43、画面遷移ボタンB45,B47が配置されており、ユーザ操作に応じて画面表示を更新する。
【0057】
このようにしてポジション別攪拌特性情報画面およびシリアル番号別攪拌特性情報画面の表示制御を行うことによって、ユーザは、ポジション番号毎またはシリアル番号毎の攪拌温度特性の変化を確認することができ、反応容器22の攪拌不良を把握することができる。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態によれば、攪拌対象の反応容器22内の液体の攪拌を、この反応容器22に設定された駆動条件情報で攪拌装置23を駆動することによって行うことができる。そして、この駆動条件情報を、反応容器22に取り付けられた表面弾性波素子225の共振周波数や電気機械変換係数、そのインピーダンス状態に応じた電力の伝送効率、あるいは反応容器22との間の接合状態等を考慮して設定することができるので、反応容器22毎に内部の液体の攪拌を適切に行うことができ、分析結果のばらつきを抑え、分析精度を向上させることができる。
【0059】
なお、上記した実施の形態では、反応容器22のICタグ223に駆動条件情報223bを記憶する場合について説明したが、ICタグのメモリにはシリアル番号のみを記憶しておくこととしてもよい。そして、例えば反応容器の製造メーカ等に設置される外部のサーバ装置と通信回線を介して接続し、ICタグから読み出したシリアル番号を通知して対応する駆動条件情報を取得する構成としてもよい。あるいは、装置側にシリアル番号毎の駆動条件情報を記憶しておき、ICタグから読み出したシリアル番号をもとに対応する駆動条件情報を読み出して取得する構成としてもよい。また、この場合には、外部のサーバ装置から該当する駆動条件情報が取得できなかったとき、あるいは装置側に該当する駆動条件情報が記憶されていなかった場合には、この反応容器を分析に使用しないこととしてもよい。
【0060】
また、上記した実施の形態の駆動条件情報にかえて、反応容器の生産情報を記憶しておくこととしてもよい。ここで、生産情報とは、例えば、当該反応容器のロット番号やバージョン番号、製造場所、商品名、型番、製造年月日、製造メーカ名等の情報を含む。表面弾性波素子225の特性がこれらの生産情報によって異なるような場合には、反応容器のICタグにその生産情報を記憶しておき、攪拌対象の反応容器のICタグから生産情報を読み出す。そして、読み出した生産情報に応じた駆動条件情報を取得して攪拌装置23の動作を制御し、表面弾性波素子225を駆動することとしてもよい。図14は、本変形例にかかるICタグ224の構成例を示す図である。図14に示すように、本変形例のICタグ224には、シリアル番号224aと、生産情報224bと、異常フラグ224cとが格納される。一方、自動分析装置が備える記憶部に、予め駆動条件記憶手段としての生産情報別駆動条件情報を記憶しておく。例えば、生産情報としてロット番号を記憶している場合には、生産情報別駆動条件情報として、ロット番号毎の駆動条件情報を記憶しておく。あるいは、外部のサーバ装置と通信回線を介して接続し、ICタグ224から読み出した生産情報を通知して対応する駆動条件情報を取得する構成としてもよい。
【0061】
また、上記した各実施の形態では、各攪拌装置23の動作を、表面弾性波素子225の駆動周波数、表面弾性波素子225の駆動電力および表面弾性波素子225の駆動時間の少なくとも一つを含む駆動条件情報に従って制御することとしたが、予め駆動電力の基準値(基準駆動電力)を設定しておき、この基準駆動電力を補正するための情報(係数)を駆動条件情報とすることもできる。例えば、反応容器のICタグに、駆動条件情報として駆動周波数と電力補正情報とを記憶しておく。また、基準駆動電力と駆動時間とを予め設定しておき、制御部は、ICタグから読み出した駆動条件情報に設定されている電力補正情報を基準駆動電力に乗じて駆動電力を算出し、算出した駆動電力を、駆動時間と、ICタグから読み出した駆動周波数とともに攪拌装置23に出力する。またこのとき、第1〜第3の攪拌位置毎に、基準駆動電力および駆動時間を設定しておくこととしてもよい。この場合には、制御部は、ICタグから読み出した駆動条件情報に設定されている電力補正情報を、その攪拌位置に応じた基準駆動電力に乗じて駆動電力を算出し、算出した駆動電力を、その攪拌位置の駆動時間と、ICタグから読み出した駆動周波数とともに攪拌装置23に出力する。例えば、ある反応容器22のICタグ223に電力補正情報「0.9」が設定されている場合であって、第1の攪拌位置の基準駆動電力が2(W)であったとする。そして、この反応容器22が第1の攪拌位置に搬送された場合には、制御部4は、基準駆動電力2(W)に電力補正係数「0.9」を乗じて駆動電力を1.8(W)とし、攪拌装置23−1に出力する。これによれば、攪拌位置毎に異なる駆動条件情報を出力することができる。
【0062】
また、反応容器22内の液体の攪拌状態に応じて変化する攪拌特性として、判定用攪拌装置31による攪拌の際の反応容器22内の液体の攪拌温度を検出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、反応容器内の液体の攪拌状態(攪拌の程度)に応じて変化する値であればよい。
【0063】
例えば、反応容器内の液体に伝播する音波を攪拌特性として検出し、攪拌の良否を判定することとしてもよい。この場合には、判定用攪拌装置による攪拌の際に、反応容器内に例えばマイクロホンや圧電素子等で構成される音波検出器を挿入し、反応容器内の液体に伝播する音波を検出する。そして、検出結果をもとに攪拌の良否を判定する。
【0064】
また、反応容器内の液体に伝播する音波による液揺れ等の液面の変化を攪拌特性として検出することとしてもよい。この場合には、判定用攪拌装置による攪拌の際に反応容器内の液体の液面を光学的に測定し、反応容器内の液体に伝播する音波による液揺れ等の液面の変化を検出する。そして、検出した液面の変化をもとに攪拌の良否を判定する。なお、液面の変化を攪拌特性として検出する場合には、分析に用いる攪拌装置による攪拌の際に反応容器内の液体の液面を光学的に測定することとしてもよく、判定用の攪拌装置を具備する必要はない。
【0065】
あるいは、音波の発生に伴って上昇する反応容器内の液体の温度上昇を光学的に測定し、攪拌特性として検出することとしてもよい。具体的には、反応容器内に例えばフェノールレッドの緩衝溶液等の温度に依存して吸光度が変化する色素液を分注し、判定用攪拌装置によって反応容器内の色素液を攪拌する。そして、測定光学系によって攪拌後の反応容器の分光強度測定を行い、測定結果をもとに反応容器内の液体の吸光度を算出する。そして、得られた吸光度をもとに攪拌の良否を判定する。なお、液面の変化を攪拌特性として検出する場合と同様に、分析に用いる攪拌装置による攪拌の際に反応容器内の液体の液面を光学的に測定することとしてもよく、判定用の攪拌装置を具備する必要はない。
【0066】
また、上記した実施の形態では、反応容器22の外側面221にICタグ223を装着し、底面に音波を発生させる表面弾性波素子225を取り付ける場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、反応容器の底面にICタグを装着し、外側面に表面弾性波素子を取り付けることとしてもよい。この場合には、ICタグの読み書きを行うリーダライタ装置を反応テーブルの底部に配設する。一方、攪拌位置近傍の反応テーブルの外周側に、表面弾性波素子を駆動する駆動制御回路および信号発生器を配設する。
【0067】
また、リーダライタ装置27の設置位置は吸引乾燥位置近傍に限定されるものではなく、例えば廃液排出位置近傍や第1または第2の洗浄位置近傍に設置し、これらの位置をタグ読書位置としてもよい。あるいは、吸引乾燥位置から第1の攪拌位置に搬送されるまでの間に反応容器22が停止するいずれかの位置をタグ読書位置とし、その近傍に設置することとしてもよい。
【0068】
また、反応容器使用状況情報475に設定されている総使用回数をもとに、ユーザに反応テーブル19上の所定の反応容器22の交換を促すこともできる。具体的には、反応容器22の使用回数(攪拌回数)によってその寿命が想定可能な場合には、総使用回数が所定の上限値を超えた反応容器22の載置ポジションやシリアル番号を、交換を促す旨のメッセージとともに提示することとしてもよい。
【0069】
また、上記した各実施の形態では、自動分析装置1に具備される試薬テーブルが2つの場合について説明したが、試薬テーブルは1つであっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】自動分析装置の内部構成の一例を示す概略斜視図である。
【図2】自動分析装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図3】自動分析装置を構成する反応テーブルの半径方向の一部断面図である。
【図4−1】反応容器の斜視図である。
【図4−2】反応容器の底面図である。
【図5】攪拌判定装置の構成を説明する模式図である。
【図6】反応容器の反応テーブル上の搬送経路を示す図である。
【図7】反応容器情報のデータ構成例を示す図である。
【図8】攪拌特性履歴情報のデータ構成例を示す図である。
【図9】制御部の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【図10】ポジション画面の一例を示す図である。
【図11】ポジション別攪拌特性情報画面の一例を示す図である。
【図12】ポジション−シリアル番号画面の一例を示す図である。
【図13】シリアル番号別攪拌特性情報画面の一例を示す図である。
【図14】変形例にかかるICタグの構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1 自動分析装置
11 検体テーブル
13 検体分注機構
15(15−1,2) 試薬テーブル
17(17−1,2) 試薬分注機構
19 反応テーブル
23(23−1,2,3) 攪拌装置
231 駆動制御回路
233 信号発生器
25 測定光学系
27 リーダライタ装置
29 洗浄装置
31 攪拌判定装置
311 温度センサ
313 温度監視部
32 判定用攪拌装置
4 制御部
41 分析部
43 入力部
45 表示部
47 記憶部
471 反応容器情報
473 攪拌特性履歴情報
475 反応容器使用状況情報
111 検体容器
151 試薬容器
22 反応容器
223 ICタグ
223a シリアル番号
223b 駆動条件情報
223c 異常フラグ
225 表面弾性波素子
226 圧電基盤
227 振動子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器内に液体を分注し、前記反応容器内で異なる液体を混合して反応させた反応液を分析する自動分析装置であって、
攪拌対象の反応容器に取り付けた音波発生手段を駆動し、該音波発生手段から音波を発生させて前記攪拌対象の反応容器内の液体を攪拌する攪拌手段と、
前記攪拌対象の反応容器内の液体の攪拌にかかる前記攪拌手段の駆動条件情報を取得する駆動条件取得手段と、
前記駆動条件取得手段によって取得された駆動条件情報に従って前記攪拌手段の動作を制御し、前記攪拌対象の反応容器内の液体を攪拌させる攪拌制御手段と、
を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記反応容器には、該反応容器についての駆動条件情報が書き込まれ、少なくとも前記駆動条件情報の読み出しが可能に構成された非接触型の情報媒体が装着されており、
前記駆動条件取得手段は、前記攪拌対象の反応容器の情報媒体から前記駆動条件情報を非接触状態で読み出して取得することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記反応容器には、該反応容器の生産情報が書き込まれ、少なくとも前記生産情報の読み出しが可能に構成された非接触型の情報媒体が装着されており、
生産情報毎の前記攪拌手段の駆動条件情報を記憶する駆動条件記憶手段を備え、
前記駆動条件取得手段は、前記攪拌対象の反応容器の情報媒体から前記生産情報を非接触状態で読み出し、該読み出した生産情報に対応する駆動条件情報を前記駆動条件記憶手段から読み出して取得することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記反応容器の情報媒体には、該反応容器に固有に割り当てられた識別情報が書き込まれており、
前記攪拌対象の反応容器の情報媒体から前記識別情報を非接触状態で読み出して取得する識別情報取得手段と、
前記駆動条件取得手段によって取得した駆動条件情報を、前記識別情報取得手段によって取得された識別情報と対応付けて管理する駆動条件管理手段と、
を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記攪拌手段による前記攪拌対象の反応容器内の液体の攪拌状態に応じて変化する攪拌特性を検出する攪拌特性検出手段と、
前記攪拌特性検出手段によって検出された攪拌特性を、前記識別情報取得手段によって取得された識別情報と対応付けて管理する攪拌特性管理手段と、
を備えることを特徴とする請求項4に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記情報媒体は、データの書き込みが可能に構成されており、
前記攪拌特性検出手段によって検出された攪拌特性をもとに前記攪拌対象の反応容器内の液体の攪拌の良否を判定する良否判定手段と、
前記良否判定手段によって攪拌不良と判定された反応容器に装着された情報媒体に、異常情報を書き込む異常情報書込手段と、
を備えることを特徴とする請求項5に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記攪拌特性検出手段は、前記攪拌特性として、前記攪拌手段による攪拌の際の前記攪拌対象の反応容器内の液体の攪拌温度を検出することを特徴とする請求項5または6に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記駆動条件情報は、前記音波発生手段の駆動周波数、前記音波発生手段の駆動電力および前記音波発生手段の駆動時間の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−42049(P2009−42049A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206884(P2007−206884)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】