説明

自動弁装置およびそれに用いられる圧力調整弁

【課題】この発明は、オリフィス部の隙間への異物の詰まりや生成物の生成を抑え、主弁が閉じられない事態の発生を回避できる自動弁装置および圧力調整弁を得る。
【解決手段】オリフィス用弁座62とオリフィス用弁体63との間の隙間が、起動弁が開弁され、一次側加圧水が第3配管を介して一次圧導入室49内に供給されている状態では、微小な第1隙間に保持され、起動弁が閉弁され、作動室内の一次側加圧水の圧力が下がり、主弁が閉じられている状態では、第1隙間より大きな第2隙間に保持されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば高速自動車道等のトンネルに設置されて放水ヘッドに加圧水を供給して放水させる自動弁装置およびそれに用いられる圧力調整弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の散水システムがトンネルに用いられる場合、トンネルの長手方向を所定の距離毎に区切って防火区画を設定し、火災発生時にその火元を含む防火区画を特定し、その防火区画の領域全体に散水する。この散水システムでは、加圧水供給源に接続された主配管が埋設されてトンネル内に敷設され、各防火区画において、分岐配管が主配管から分岐してトンネルの側壁に沿って立ち上がり、その先端に放水ヘッドが接続される。放水ヘッドは防火区画の大きさに合わせて必要な個数が設けられる。各分岐配管には、仕切り弁が設けられ、さらに、その二次側に自動弁装置が設けられる。この自動弁装置は、火災発生時に開いて放水ヘッドに加圧水を供給し、鎮火後閉じて放水ヘッドへの加圧水の供給を停止させる。
【0003】
このような従来の自動弁装置は、放水ヘッドに加圧水を供給する自動弁と、自動弁の弁体を開閉駆動するアクチュエータと、アクチュエータに所定圧力に調整された駆動用の加圧水を供給する圧力調整弁と、アクチュエータに対する加圧水の供給が停止した状態で圧力調整弁を経由してアクチュエータの加圧水を排水させる自動排水弁と、などを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−5240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の自動弁装置においては、放水ヘッドからの放水が終了し、アクチュエータに対する加圧水の供給が停止した状態となると、アクチュエータ内の加圧水が、圧力調整弁内に入り、オリフィスを通って圧力調整弁の配管側の部屋に移動する。ついで、圧力調整弁から配管に流れ出し、配管内を流れて自動排水弁からドレインに排水され、アクチュエータ内の圧力が低下し、自動弁の弁体が閉じられる。
【0006】
この圧力調整弁内のオリフィスは、アクチュエータによる圧力調整時に、アクチュエータの動作に影響を及ぼさず、かつ放水終了後に主弁を閉弁させるためにアクチュエータの加圧水を排水させるときに、過度の水撃を発生させないように、微小な隙間に調整されていた。そこで、加圧水中の異物がオリフィスに詰まり、さらには生成物がオリフィスに生成され、最悪の場合には、自動弁の弁体が閉じられなくなるという不具合が発生する。
【0007】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、オリフィス部の隙間が放水終了後に広げられるように構成され、隙間への異物の詰まりや生成物の生成を抑え、主弁が閉じられない事態の発生を回避できる自動弁装置およびそれに用いられる圧力調整弁を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による自動弁装置は、連通孔を有する隔離壁により仕切られた一次側流路と二次側流路とを有する胴体部、上記一次側流路側から上記連通孔を開閉する主弁、上記二次側流路を介して上記連通孔に対向するように上記胴体部に突設された筒状のシリンダ、および上記シリンダ内に摺動可能に配設され、該シリンダ内の上記二次側流路と反対側に画成される作動室内の圧力に応じて上記主弁を開閉駆動するピストンを有する自動弁と、一次圧導入室、二次圧導入室、上記一次圧導入室を大気に開閉する弁部、上記一次圧導入室と上記二次圧導入室とを連通する連通路、上記二次圧導入室内の圧力に応じて上記弁部を開閉させる弁駆動機構、および上記連通路に形成されたオリフィス部を有する圧力調整弁と、上記一次側流路と上記作動室とを連通する第1配管と、上記第1配管の経路中に配設され、一次側加圧水の上記作動室への供給を制御する起動弁と、上記二次側流路と上記二次圧導入室とを連通する第2配管と、上記作動室と上記一次圧導入室とを連通する第3配管と、を備えている。上記圧力調整弁は、上記起動弁の開弁状態では、上記二次側流路から上記第2配管を介して供給される上記二次圧導入室内の二次側加圧水の圧力に応じて上記弁部を開閉させて、上記二次圧導入室内の二次側加圧水の圧力が所定圧力となるように上記主弁の開度を制御し、上記起動弁が閉弁されると、上記作動室内の一次側加圧水を上記第3配管および上記一次圧導入室を介して上記オリフィス部から上記二次圧導入室に流出させて上記作動室内の一次側加圧水の圧力を下げ、上記主弁を閉じるように構成されている。上記オリフィス部は、上記起動弁が開弁され、上記一次側加圧水が上記第3配管を介して上記一次圧導入室内に供給されている状態では、微小な第1隙間に保持され、上記起動弁が閉弁され、上記作動室内の一次側加圧水の圧力が下がり、上記主弁が閉じられている状態では、第1隙間より大きな第2隙間に保持されるように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、オリフィス部は、起動弁が開弁され、一次側加圧水が第3配管を介して一次圧導入室内に供給されている状態では、微小な第1隙間に保持され、起動弁が閉弁され、作動室内の一次側加圧水の圧力が下がり、主弁が閉じられている状態では、第1隙間より大きな第2隙間に保持されるように構成されている。そこで、一次側加圧水中の異物がオリフィス部の隙間に入り込んでも、放水終了後にオリフィス部の隙間が第2隙間に広げられ、異物がオリフィス部の隙間から落下する。また、放水終了後にオリフィス部の隙間が第2隙間に広げられるので、生成物がオリフィス部の隙間に生成されにくい。これにより、オリフィス部の隙間がふさがり、主弁の閉弁時間が長くなったり、主弁が閉じなくなるような事態の発生が未然に回避される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明に係る自動弁装置を示す概略構成図である。
【図2】この発明に係る自動弁装置における放水時の2次側圧力の上昇動作を説明する図である。
【図3】この発明に係る自動弁装置における放水時の2次側圧力の低下動作を説明する図である。
【図4】この発明に係る自動弁装置における放水停止動作を説明する図である。
【図5】この発明に係る自動弁装置に用いられる圧力調整弁を示す断面図である。
【図6】この発明に係る自動弁装置に用いられる圧力調整弁を示す断面図である。
【図7】この発明に係る自動弁装置に用いられる圧力調整弁の非作動状態を示す要部断面図である。
【図8】この発明に係る自動弁装置に用いられる圧力調整弁の作動状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の自動弁装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0012】
図1はこの発明に係る自動弁装置を示す概略構成図である。
図1において、自動弁装置は、主弁7の開度を変化させて、一次側流路2から二次側流路3に流れる一次側加圧水の流量を調整する自動弁100と、自動弁100の主弁7の主弁駆動機構に一次側加圧水を供給して自動弁装置を起動する起動弁200と、二次側加圧水の圧力が所定圧力に達したことを感知して主弁7の開度を設定開度に制御する圧力調整弁400と、自動弁100の二次側に配置され、放水ヘッドから放水時には開放し、また放水ヘッドから放水せず、自動弁100のテストをするときなどに閉鎖する制水弁25と、二次側流路3内の二次側加圧水を排水する排水ユニット300と、自動弁100の二次側加圧水の圧力が所定の放水圧以上となると放水信号を監視室などに発信する圧力スイッチ20と、を備えている。
【0013】
この自動弁装置は、自動弁100の一次側流路2が主配管(図示せず)に接続され、二次側流路3が制水弁25を介して二次側配管15に接続され、放水ヘッド16が二次側配管15の先端に設けられている。この自動弁装置は、火災発生時に自動弁100が開いて放水ヘッド16に加圧水を供給し、鎮火後閉じて放水ヘッド16への加圧水の供給を停止させる。
【0014】
まず、自動弁100の構造について説明する。
自動弁100は、胴本体部1aと胴本体部1aの両側に同軸に相対して配設される一次側および二次側管路1b、1cとからなる胴体部1を備える。胴本体部1aは、同軸に配設された一次側および二次側管路1b,1cの軸心(以降、胴体部軸心とする)と直交する断面形状が円形であり、かつ該円形断面の直径が一次側管路1bから二次側管路1cに向かって徐々に大きくなり、最大値を経て徐々に小さくなる外形形状の膨出体形状に作製されている。
【0015】
隔離壁4が胴体部1内を一次側流路2と二次側流路3とに区画するように配設されている。連通孔5が一次側流路2と二次側流路3とを連通するように隔離壁4に穿設されている。一次側流路2には、一次側加圧水が一次側管路1bを介して供給され、二次側流路3は、二次側管路1cを介して二次側配管15に接続される。円筒状のシリンダ6が、軸心を連通孔5の孔中心に一致させて、かつ、二次側流路3を挟んで連通孔5と相対して、二次側流路3に開口するように胴本体部1aに形成されている。このシリンダ6は、シリンダ6の軸心を胴体部1の軸心と直交させて胴本体部1aの円形断面が最大径の部位に突設されている。
【0016】
主弁7が胴体部1の一次側流路2内に連通孔5の外周縁部に形成される弁座4aに胴体部1の軸心と直交する方向に接離自在に配設されている。また、付勢手段としてのスプリング8が主弁7を二次側流路3側に押圧するように一次側流路2内に縮設されている。これにより、主弁7が弁座4aに密接し、一次側流路2と二次側流路3との間の流路を閉止している。
【0017】
ピストン9がシリンダ6内に摺動自在に挿入され、Oリング10がピストン9の外周部に嵌装されて、シリンダ6内が二次側流路3側のピストン室6aと二次側流路3と反対側の作動室6bとに区画されている。さらに、ステム11が、一端をピストン9の中心位置に固着され、他端を主弁7の中心位置に嵌着されて、その軸心がシリンダ6の軸心に一致するように取り付けられている。ここで、シリンダ6、スプリング8、ピストン9およびステム11などにより主弁駆動機構が構成されている。そして、シリンダ6の軸心が主弁7の接離方向に一致している。
【0018】
起動弁200は、パイロット弁18と、手動起動弁19と、からなり、第1配管30に並列に配設されている。また、止め弁17が第1配管30の起動弁200の上流側に配設されている。
制水弁25は、制水弁取付フランジ27を用いて胴体部1の二次側管路1cに取り付けられている。
排水ユニット300は、自動排水弁21と、手動によるボール弁22とからなり、第2配管31に配設されている。圧力スイッチ20が第2配管31に配設されている。
【0019】
つぎに、圧力調整弁400の構造について図5乃至図8を参照しつつ説明する。図5および図6はそれぞれこの発明に係る自動弁装置に用いられる圧力調整弁を示す断面図、図7はこの発明に係る自動弁装置に用いられる圧力調整弁の非作動状態を示す要部断面図、図8はこの発明に係る自動弁装置に用いられる圧力調整弁の作動状態を示す要部断面図である。
【0020】
圧力調整弁400は、ダイヤフラム40がダイヤフラムホルダ41に保持されてスプリングケース42と弁ボディ46とに挟持されて構成されている。スプリングケース42は、有底円筒状に作製されている。そして、自動弁100の二次側の規定圧力を設定するためのスプリング荷重を加えるスプリング43がスプリングシート44とダイヤフラムホルダ41との間に縮設されている。さらに、圧力調整用ボルト45がスプリングケース42の頂部を貫通するように螺着されており、圧力調整用ボルト45のスプリングケース42内への延出量を調整することによりスプリング43の収縮量を調整でき、スプリング荷重を調整できる。
【0021】
弁ボディ46には、ダイヤフラム40により画成される二次圧導入室47と、二次圧導入室47に二次圧を導入する二次圧導入ポート48と、一次圧導入室49と、一次圧導入室49に一次圧を導入する一次圧導入ポート50と、二次圧導入室47と一次圧導入室49とを連通する連通路51と、一次圧導入室49と大気とを連通する排水ポート52と、が形成されている。
軸棒53は、一端をダイヤフラムホルダ41に固着され、二次圧導入室47を通過して弁ボディ46を貫通して一次圧導入室49内に延出するように配設され、ダイヤフラム40の変位に連動して往復移動可能に構成されている。なお、軸棒53の弁ボディ46の貫通部にはOリング57が装着され、二次圧導入室47と一次圧導入室49との間のシールが確保されている。
【0022】
プラグ55は、有底円筒状に作製され、底部側を一次圧導入室49に向けて排水ポート52に嵌着保持されている。プラグ55の底部には、所定口径の弁座56が形成されており、軸棒53の先端部に形成された弁体54が軸棒53の往復移動により弁座56に接離可能となっている。
ここで、弁体54と弁座56が弁部を構成する。弁体54は円錐形状に作製され、弁座56と同軸に配置されている。また、ダイヤフラム40、スプリングケース42、スプリング43、軸棒53などにより、弁駆動機構を構成する。
【0023】
オリフィスプレート60が連通路51を遮断するように配設され、連通穴61がオリフィスプレート60を貫通するように形成されている。そして、連通穴61の一次圧導入室49側が円錐形状に大径化され、オリフィス用弁座62を構成している。オリフィス用弁体63が、例えばポリテトラフルオロエチレンなどの耐食性に優れた材料を用いて球状に作製され、一次圧導入室49内に導入される一次圧を作動力として、切頭円錐形の内周面により構成されるオリフィス用弁座62に接離可能に連通穴61内のオリフィスプレート60の一次圧導入室49側に配設されている。
【0024】
隙間確保手段としての隙間調整治具64は、ブロック本体65、調整棒66と、および調整棒66の後端に一体に形成され、ブロック本体65に形成された雌ねじ部に螺着され、雌ねじ部に沿って回転して調整棒を進退させる調整ねじ67を有し、調整棒66の先端が二次圧導入室47側から連通穴61に挿入されるように弁ボディ46に装着される。そして、隙間調整治具64は、調整ねじ67を回転させて調整棒66の連通穴61への挿入量が調整可能に構成されている。
【0025】
このように構成された圧力調整弁400では、圧力調整用ボルト45のスプリングケース42内への延出量が調整され、スプリング荷重が設定値となるように調整される。そして、ダイヤフラム40は、ダイヤフラムホルダ41を介して作用するスプリング荷重により一次圧導入室49側に変位し、弁体54が弁座56に当接し、閉弁状態となっている(初期状態)。
【0026】
一次圧が一次圧導入ポート50から一次圧導入室49に導入されると、一次圧導入室49に導入された一次圧がオリフィス用弁体63に作用し、オリフィス用弁体63がオリフィス用弁座62側に移動する。このとき、図8に示されるように、オリフィス用弁体63が連通穴61に挿入された調整棒66の先端に当接する。そして、一次圧導入室49に導入された一次圧の変動およびオリフィス用弁体63の自重により、オリフィス用弁体63が調整棒66の軸心に対して傾き、オリフィス用弁体63の一部のみがオリフィス用弁座62に接し、オリフィス用弁体63とオリフィス用弁座62との間に隙間が形成される。
【0027】
そして、隙間調整治具64の調整ねじ67を回転させて調整棒66の連通穴61への挿入量を変え、オリフィス用弁体63とオリフィス用弁座62との間の隙間が微小な第1隙間に調整される。また、一次圧導入室49に導入された一次圧の圧力が弱まると、図7に示されるように、オリフィス用弁体63が自重によりオリフィス用弁座62から外れて、オリフィス用弁体63とオリフィス用弁座62との隙間が大きな第2隙間に拡大される。なお、オリフィス用弁座62、オリフィス用弁体63、調整棒66などによりオリフィス部が構成される。
【0028】
二次圧が二次圧導入ポート48から二次圧導入室47に導入され、二次圧導入室47内の圧力が上昇する。そして、二次圧導入室47内の圧力がスプリング荷重に勝ると、ダイヤフラム40はスプリングケース42側に変位し、弁体54が弁座56から離反し、開弁状態となる。これにより、一次圧導入ポート50から一次圧導入室49内に導入されている一次圧が排水ポート52から排出される。また、二次圧導入室47内の圧力が低下してスプリング荷重より劣ると、ダイヤフラム40は一次圧導入室49側に変位し、弁体54が弁座56に当接し、閉弁状態となる。これにより、排水ポート52からの一次圧の排出が停止される。なお、圧力調整弁400は、常閉式の圧力調整弁である。
【0029】
この圧力調整弁400は、後述するように、二次側流路3内の二次側加圧水の圧力が所定圧力に達したときに開弁し、放水の規定圧を設定する規定圧設定機構として機能する。そして、スプリング荷重を調整することで、放水の規定圧を調整できる。また、圧力調整弁400は、後述するように、作動室6b内の一次側加圧水をオリフィス用弁体63とオリフィス用弁座62との間の微小な第1隙間から二次圧導入室47に流出して主弁7を閉弁させる放水停止後の主弁7の閉弁機構として機能する。
【0030】
ここで、オリフィス用弁体63とオリフィス用弁座62との間の隙間が、狭すぎると、当該隙間からの一次側加圧水の流出量が少なくなり、シリンダ6の作動室6b内への一次側加圧水の供給停止から自動弁100の主弁7の閉弁までの時間が長くなってしまう。当該隙間が広くなると、当該隙間からの一次側加圧水の流出量が多くなり、作動室6b内の圧力が上昇せず、圧力調整弁400の規定圧設定機能に影響を及ぼしてしまう。当該隙間がさらに広くなると、放水停止後、主弁7がすぐさま閉弁して、構成部品の耐久性に影響を及ぼす水撃が発生し、信頼性を低下させてしまう。
そこで、自動弁装置の据付後、据付現場の水圧などの状況を考慮し、スプリング荷重およびオリフィス用弁体63とオリフィス用弁座62との間の隙間が要求仕様に合うように、圧力調整用ボルト45および調整ねじ67により調整される。
【0031】
つぎに、配管系統について説明する。
第1配管30は、一端が起動弁200を介して自動弁100の一次側流路2に接続され、他端が自動弁100の作動室6bに接続されている。そして、第2配管31は、一端が自動弁100の二次側流路3に接続され、他端が圧力調整弁400の二次圧導入室47に接続されている。また、第3配管32は、第1配管30から分岐し、圧力調整弁400の一次圧導入ポート50に接続されている。なお、第3配管32は、第1配管30を介さず、作動室6bに直接接続してもよい。
【0032】
つぎに、このように構成された自動弁装置の動作について図1乃至図4を参照しつつ説明する。図2はこの発明に係る自動弁装置における放水時の2次側圧力の上昇動作を説明する図、図3はこの発明に係る自動弁装置における放水時の2次側圧力の低下動作を説明する図、図4はこの発明に係る自動弁装置における放水停止動作を説明する図である。
【0033】
まず、監視状態では、図1に示されるように、制水弁25が操作ハンドル26を操作して開放され、止め弁17が開放され、自動排水弁21が大気圧により開放され、ボール弁22が閉止される。
【0034】
ついで、パイロット弁18または手動起動弁19が開放されると、主配管(図示せず)から一次側流路2内に供給された一次側加圧水が、第1配管30および第3配管32を介して一次圧導入室49内に流入、充水される。これにより、オリフィス用弁体63が一次圧導入室49に充水された一次側加圧水に押圧されてオリフィス用弁座62側に移動し、調整棒66の先端に当接し、オリフィス用弁体63とオリフィス用弁座62との間に隙間(第1隙間)が確保される。
【0035】
また、パイロット弁18または手動起動弁19の開放と同時に、一次側加圧水が、第1配管30を介して作動室6b内に流入、充水される。これにより、作動室6b内の圧力が上昇し、ピストン9が図1中左側に移動する。このピストン9の移動力がステム11を介して主弁7に伝達され、主弁7がスプリング8の付勢力に抗して図1中左側に移動する。そして、主弁7が弁座4aから離反し、一次側加圧水が、一次側流路2内から二次側流路3内に流入する。そして、図2に示されるように、一次側加圧水が二次側流路3に充水され、二次側加圧水となって二次側配管15を流通し、放水ヘッド16から放水される。
【0036】
二次側流路3内の二次側加圧水は、自動排水弁21を閉止させるとともに、第2配管31を介して圧力調整弁400の二次圧導入室47に供給される。そして、二次側流路3内の二次側加圧水の圧力が上昇し、二次圧導入室47内の圧力が所定圧力より高くなると、圧力調整弁400が開弁される。これにより、第1配管30を介して自動弁100の作動室6b内に供給される一次側加圧水は、図3に示されるように、第3配管32および一次圧導入室49を介して圧力調整弁400の排水ポート52から排水される。そこで、作動室6b内の圧力が低下し、ピストン9が、図3中右側に移動し、主弁7の開度が小さくなる。
【0037】
ついで、主弁7の開度が小さくなり、一次側流路2内から二次側流路3内に流入する一次側加圧水の流量が少なくなる。そして、二次側流路3内の二次側加圧水の圧力が低下し、二次圧導入室47内の圧力が所定圧力より低くなると、圧力調整弁400が図2に示されるように閉弁される。これにより、一次側加圧水が、第1配管30を介して自動弁100の作動室6b内に供給され、作動室6b内の圧力が上昇し、ピストン9が、図2中左側に移動し、主弁7の開度が大きくなる。このように、圧力調整弁400の開弁/閉弁動作が繰り返され、二次側加圧水の圧力が所定圧力に調整される。そして、所定圧力に調整された二次側加圧水が放水ヘッド16から放水される。
【0038】
放水ヘッド16からの放水が終了し、パイロット弁18および手動起動弁19が閉弁されると、第1配管30を介して自動弁100の作動室6bへの一次側加圧水の供給がなくなる。そして、作動室6bおよび第1配管30内の一次側加圧水が、図4に矢印で示されるように、第3配管32、一次圧導入室49およびオリフィス用弁体63とオリフィス用弁座62との間の隙間(第1隙間)を通って二次圧導入室47に流出する。これにより、作動室6b内の一次側加圧水の圧力が低下し、スプリング8の付勢力により、主弁7が閉弁される。
【0039】
主弁7が閉弁されると、自動排水弁21が開放され、二次側配管15、二次側流路3および二次圧導入室47内の残水が第2配管31を介して自動排水弁21から排水される。そして、一次圧導入室49と二次圧導入室47との差圧が大きくなり、オリフィス用弁体63とオリフィス用弁座62との間の隙間(第1隙間)を通って二次圧導入室47への一次側加圧水の流出が加速される。二次圧導入室47に流出した一次側加圧水は、図4中矢印で示されるように、第2配管31を通って自動排水弁21から排水される。これにより、作動室6bおよび第1配管30内の一次側加圧水の排出が促進される。そして、一次圧導入室49内の圧力が、オリフィス用弁体63が自重によりオリフィス用弁座62の内周面を転げ落ちる力より低下すると、オリフィス用弁体63は自重によりオリフィス用弁座62の内周面を転げ落ちる。そこで、オリフィス用弁体63とオリフィス用弁座62との間の隙間が広げられ、第2隙間となる。
【0040】
ついで、自動弁100の開閉動作の確認や圧力調整弁400の設定確認を行う場合、操作ハンドル26を操作して制水弁25が閉止される。この時、自動排水弁21は大気圧により開放され、ボール弁22が閉止される。そして、起動弁200を操作し、主弁7を開閉して、自動弁100の開閉動作の確認や圧力調整弁400の設定確認を行う。
【0041】
このように構成された自動弁装置では、圧力調整弁400の一次圧導入室49と二次圧導入室47とを連通する連通路51にオリフィス部を形成し、放水停止後の主弁7の閉弁機構を構成している。そして、オリフィス部は、一次圧導入室49内の圧力が大きくなると、微小な第1隙間に保持され、一次圧導入室49内の圧力が低くなると、広い第2隙間に保持されるように構成されている。そこで、生成物が当該隙間に生成されない。また、自動弁装置の動作時に、異物がオリフィス部の隙間に詰まっても、自動弁装置の停止時に、オリフィス部の隙間が拡大し、当該隙間に詰まっていた異物が外れる。したがって、異物や生成物によりオリフィス部の隙間が狭くなり、主弁7の閉弁時間が長くなる、あるいは主弁7が閉じられなくなるという不具合の発生が未然に回避され、長期的に安定した動作を実現できる自動弁装置が得られる。
【0042】
また、圧力調整用ボルト45がスプリングケース42に取り付けられ、スプリング43の長さ、即ちスプリング荷重を調整可能になっているので、現場毎に、放水の規定圧を設定できる。
また、オリフィス部の隙間が調整可能に構成されているので、現場にて、水圧などの状況を考慮して、放水停止後の主弁7の閉弁時間を設定できる。
【0043】
オリフィス部が、オリフィス用弁座62、一次圧導入室49内の圧力を作動力してオリフィス用弁座62に接離する球状のオリフィス用弁体63、およびオリフィス用弁座62に接しようとするオリフィス用弁体63に当接して隙間を形成する調整棒66により構成されているので、オリフィス部の構成の簡略化が図られ、オリフィス部を連通路51に簡易に構築することができる。
【0044】
また、調整ねじ67をブロック本体65に形成された雌ねじ部に螺着し、調整棒66を調整ねじ67の先端に一体に形成して、隙間調整治具64を構成しているので、オリフィス用弁体63とオリフィス用弁座62との間の隙間を簡易に、かつ高精度に調整できる。
【0045】
なお、上記実施の形態では、低圧放水を行わない自動弁装置を例にあげて説明しているが、規定圧放水前に低圧放水を行う自動弁装置にも本発明を適用することができる。
また、上記実施の形態では、圧力調整弁はオリフィス部を内蔵するものとして説明しているが、圧力調整弁とオリフィス部とを配管で接続するような別体の形態も、本発明の圧力調整弁に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1 胴体部、2 一次側流路、3 二次側流路、4a 弁座、6 シリンダ、6b 作動室、7 主弁、8 スプリング(付勢手段)、9 ピストン、18 パイロット弁(起動弁)、19 手動起動弁(起動弁)、30 第1配管、31 第2配管、32 第3配管、40 ダイヤフラム(弁駆動機構)、42 スプリングケース(弁駆動機構)、43 スプリング(弁駆動機構)、46 弁ボディ、47 二次圧導入室、48 二次圧導入ポート、49 一次圧導入室、50 一次圧導入ポート、51 連通路、62 オリフィス用弁座(オリフィス部)、63 オリフィス用弁体(オリフィス部)、64 隙間調整治具(隙間確保手段、オリフィス部)、65 ブロック本体、66 調整棒、67 調整ねじ、100 自動弁、200 起動弁、400 圧力調整弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連通孔を有する隔離壁により仕切られた一次側流路と二次側流路とを有する胴体部、上記一次側流路側から上記連通孔を開閉する主弁、上記二次側流路を介して上記連通孔に対向するように上記胴体部に突設された筒状のシリンダ、および上記シリンダ内に摺動可能に配設され、該シリンダ内の上記二次側流路と反対側に画成される作動室内の圧力に応じて上記主弁を開閉駆動するピストンを有する自動弁と、
一次圧導入室、二次圧導入室、上記一次圧導入室を大気に開閉する弁部、上記一次圧導入室と上記二次圧導入室とを連通する連通路、上記二次圧導入室内の圧力に応じて上記弁部を開閉させる弁駆動機構、および上記連通路に形成されたオリフィス部を有する圧力調整弁と、
上記一次側流路と上記作動室とを連通する第1配管と、
上記第1配管の経路中に配設され、一次側加圧水の上記作動室への供給を制御する起動弁と、
上記二次側流路と上記二次圧導入室とを連通する第2配管と、
上記作動室と上記一次圧導入室とを連通する第3配管と、を備え、
上記圧力調整弁は、
上記起動弁の開弁状態では、上記二次側流路から上記第2配管を介して供給される上記二次圧導入室内の二次側加圧水の圧力に応じて上記弁部を開閉させて、上記二次圧導入室内の二次側加圧水の圧力が所定圧力となるように上記主弁の開度を制御し、
上記起動弁が閉弁されると、上記作動室内の一次側加圧水を上記第3配管および上記一次圧導入室を介して上記オリフィス部から上記二次圧導入室に流出させて上記作動室内の一次側加圧水の圧力を下げ、上記主弁を閉じるように構成され、
上記オリフィス部は、
上記起動弁が開弁され、上記一次側加圧水が上記第3配管を介して上記一次圧導入室内に供給されている状態では、微小な第1隙間に保持され、
上記起動弁が閉弁され、上記作動室内の一次側加圧水の圧力が下がり、上記主弁が閉じられている状態では、第1隙間より大きな第2隙間に保持されるように構成されていることを特徴とする自動弁装置。
【請求項2】
上記オリフィス部は、上記一次圧導入室側に口開き状の切頭円錐形の内周面を有するオリフィス用弁座と、上記一次圧導入室内の一次側加圧水の圧力を作動力として上記オリフィス用弁座に接離可能に配設された球状のオリフィス用弁体と、上記オリフィス用弁体が上記オリフィス用弁座に接したときに、該オリフィス用弁体と該オリフィス用弁座との間に上記第1隙間を確保させる隙間確保手段と、を備えていることを特徴とする請求項1記載の自動弁装置。
【請求項3】
上記隙間確保手段は、上記第1隙間の大きさを調整可能に構成されていることを特徴とする請求項2記載の自動弁装置。
【請求項4】
一次圧導入室と、二次圧導入室と、上記一次圧導入室を大気に開閉する弁部と、上記一次圧導入室と上記二次圧導入室とを連通する連通路と、上記連通路に形成されたオリフィス部と、上記二次圧導入室内の二次圧が第1圧力に達すると上記弁部を開弁し、上記二次圧導入室内の二次圧が第1圧力未満であると上記弁部を閉弁させる弁駆動機構と、を備え、
上記オリフィス部は、上記一次圧導入室内の一次圧が第2圧力に達すると微小な第1隙間に保持され、上記一次圧導入室内の一次圧が第2圧力より低くなると上記第1隙間より広い第2隙間に保持されるように構成されていることを特徴とする圧力調整弁。
【請求項5】
上記オリフィス部は、上記一次圧導入室側に口開き状の切頭円錐形の内周面を有するオリフィス用弁座と、上記オリフィス用弁座に接離可能に配設された球状のオリフィス用弁体と、上記オリフィス用弁体が上記オリフィス用弁座に接したときに、該オリフィス用弁体と該オリフィス用弁座との間に上記第1隙間を確保させる隙間確保手段と、を備えていることを特徴とする請求項4記載の圧力調整弁。
【請求項6】
上記隙間確保手段は、上記第1隙間の大きさを調整可能に構成されていることを特徴とする請求項5記載の圧力調整弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−210379(P2012−210379A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78505(P2011−78505)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】