説明

自動車用フードのシール構造

【課題】 フードの先端部に沿って取り付けられて車体との間をシールするシールラバーのシール性および剛性を両立させる。
【解決手段】 自動車のボンネットフード11の先端部11aに沿って取り付けたシールラバー13のパイプ状のシール部18の内部に、ボンネットフード11の開閉時における先端部11aの移動軌跡tに沿う隔壁18aを形成したので、シール部18の前記移動軌跡tに沿う方向の剛性を高めることができる。これにより、ボンネットフード11の先端部11aをフロントグリル14に対して確実に密着させてシール性を向上させるとともに、ボンネットフード11を勢い良く閉じたときにシール部18が過剰に変形しないようにして、ボンネットフード11の先端部11aがフロントグリル14に衝突するのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフードの先端部に沿って取り付けたシールラバーで車体との間をシールする自動車用フードのシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンルームを開閉するフードの先端部下面に断面L字状のシールゴムの一辺を固定し、このシールゴムの他辺をフードロックメンバの上面に弾性的に当接させてシールを行うものが、下記特許文献1により公知である。
【特許文献1】特開平7−205842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献1に記載されたものは、シールゴムが断面L字状に形成されていてフードの開閉方向の剛性が低いため、フードロックメンバの上面との間を確実にシールできない可能性があるだけでなく、フードを勢い良く閉じるとシールゴムが過剰に変形してしまい、フードの先端部がフードロックメンバの上面に衝突する可能性があった。
【0004】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、フードの先端部に取り付けられて車体との間をシールするシールラバーのシール性および剛性を両立させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、自動車のフードの先端部に沿って取り付けたシールラバーで車体との間をシールする自動車用フードのシール構造において、前記シールラバーは前記フードの先端部に沿って配置されるパイプ状のシール部と、このシール部と一体に形成されて前記フードの裏面に固定される帯状の取付部とで構成され、前記シール部の内部に前記フードの開閉時における前記先端部の移動軌跡に沿う隔壁を形成するとともに、前記シール部の外表面に前記フードの先端部が嵌合する凹部を形成したことを特徴とする自動車用フードのシール構造が提案される。
【0006】
尚、実施例のボンネットフード11は本発明のフードに対応し、実施例のフロントグリル14およびヘッドライト15は本発明の車体に対応する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の構成によれば、自動車のフードの先端部に沿って取り付けたシールラバーのパイプ状のシール部の内部に、フードの開閉時における先端部の移動軌跡に沿う隔壁を形成したので、シール部の前記移動軌跡に沿う方向の剛性を高めることができる。これにより、フードの先端部を車体に対して確実に密着させてシール性を向上させるとともに、フードを勢い良く閉じたときにシール部が過剰に変形しないようにしてフードの先端部が車体に衝突するのを防止することができる。しかもシール部の外表面に形成した凹部にフードの先端部を嵌合させたので、圧縮されたシール部がフードの先端部から遠ざかるように移動するのを阻止し、シール部とフードの先端部との密着性を更に高めてシール性および外観の両方を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0009】
図1〜図3は本発明の一実施例を示すもので、図1は自動車の車体前部の斜視図、図2は図1の2−2線拡大断面図、図3は図2の3部拡大図である。
【0010】
図1に示すように、自動車のエンジンルームを覆うボンネットフード11は、その後端に設けた左右一対のヒンジ12,12を介して車体に開閉自在に支持される。ボンネットフード11の先端には車体左右方向に延びるシールラバー13が装着されており、このシールラバー13がフロントグリル14および左右のヘッドライト15,15の上縁に当接する。
【0011】
図2および図3に示すように、ボンネットフード11はスキン16の裏面にスチフナ17を重ね合わせて補強したもので、その先端部11aはスキン16を略180°折り返してスチフナ17の前端を挟み込んだビード状の構造になっている。ボンネットフード11の先端部11aの近傍の剛性を高めるべく、スチフナ17の下方に突出する突部17aが先端部11aに沿って形成される。
【0012】
シールラバー13は一定の横断面を有するように押出成形されたもので、前側のパイプ状のシール部18と、後側の帯状の取付部19とが一体に形成される。取付部19には所定間隔で複数のクリップ孔19a…が形成されており、これらのクリップ孔19a…を下から上に貫通する複数のクリップ20…をスチフナ17の突部17aに係合させることで、シール部18がボンネットフード11の先端に沿って位置決めされる。シール部18は、フロントグリル14およびヘッドライト15,15の平坦な上面に当接してシール機能を発揮する。
【0013】
シール部18の内部は上下方向に延びる隔壁18aで2分割されており、この隔壁18aの延びる方向は、ヒンジ12,12を中心とするボンネットフード11の先端部11aの移動軌跡tに概ね沿っている。またシール部18の前部上面には左右方向に延びる凹部18bが形成されており、この凹部18bにボンネットフード11のビード状の先端部11aが嵌合する。凹部18bの先端に形成された先細のシールリップ18cが、ボンネットフード11のビード状の先端部11aに密着する。更に、シールラバー13の取付部19がシール部18に連なる部分の上面に、シール部18を上方に移動し易くするための溝19bが形成される。
【0014】
しかして、ボンネットフード11を閉じると、その前縁に沿って装着したシールラバー13のシール部18の下面がフロントグリル14およびヘッドライト15,15の平坦な上面に当接し、かつボンネットフード11の先端部11aがシールラバー13のシール部18のシールリップ18cに当接することで、ボンネットフード11の先端部11aがフロントグリル14およびヘッドライト15,15の上面に対してシールされる。
【0015】
その際に、ボンネットフード11の先端部11aの移動軌跡tに沿う方向、つまり概ね上下方向にシール部18の隔壁18aが延びているので、シールラバー13のシール部18の上下方向の剛性が隔壁18aによって効果的に高められ、シールラバー13のシール性が向上するだけでなく、ボンネットフード11を勢い良く閉じたときでも、その衝撃を確実に受け止めてボンネットフード11がフロントグリル14やヘッドライト15,15に衝突するのを防止することができる。
【0016】
またボンネットフード11の先端部は前下りに傾斜しているため、シールラバー13のシール部18の下面がフロントグリル14およびヘッドライト15,15の平坦な上面に当接すると、シール部18がボンネットフード11の先端部11aから遠ざかるように後方に移動し、シールリップ18cが前記先端部11aから離反しようとする。しかしながら、本実施例によれば、ボンネットフード11のビード状の先端部11aがシール部18の凹部18bに嵌合しているため、シール部18の前記移動を抑制してシールリップ18cをボンネットフード11の先端部11aに密着させ、シール性および外観の両方を向上させることができる。
【0017】
更に、シールラバー13のシール部18の下面がフロントグリル14およびヘッドライト15,15の平坦な上面に当接したとき、シールラバー13の取付部19の先端部上面に形成した溝19bの作用でシール部18が容易に上向きに移動するため、シール部18のシールリップ18cをボンネットフード11の先端部11aに一層確実に密着させることができる。
【0018】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0019】
例えば、本発明のフードは実施例のボンネットフード11に限定されず、トランクリッドやテールゲート等の他のフードであっても良い。
【0020】
またフードが当接する車体は、実施例のフロントグリル14およびヘッドライト15,15に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】自動車の車体前部の斜視図
【図2】図1の2−2線拡大断面図
【図3】図2の3部拡大図
【符号の説明】
【0022】
11 ボンネットフード(フード)
11a 先端部
13 シールラバー
14 フロントグリル(車体)
15 ヘッドライト(車体)
18 シール部
18a 隔壁
18b 凹部
19 取付部
t フードの開閉時における先端部の移動軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフード(11)の先端部(11a)に沿って取り付けたシールラバー(13)で車体(14,15)との間をシールする自動車用フードのシール構造において、
前記シールラバー(13)は前記フード(11)の先端部(11a)に沿って配置されるパイプ状のシール部(18)と、このシール部(18)と一体に形成されて前記フード(11)の裏面に固定される帯状の取付部(19)とで構成され、
前記シール部(18)の内部に前記フード(11)の開閉時における前記先端部(11a)の移動軌跡(t)に沿う隔壁(18a)を形成するとともに、前記シール部(18)の外表面に前記フード(11)の先端部(11a)が嵌合する凹部(18b)を形成したことを特徴とする自動車用フードのシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−335168(P2006−335168A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160961(P2005−160961)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】