説明

自動車用耐水・耐久性向上吸音アンダーカバー

【課題】 この発明はスパンボンド不織布を積層した樹脂層を使用して、成形時に均一に成形出来、且つ、防音効果の大きい吸音性能と表面撥水を両立し、チッピング性向上を図った自動車用耐水・耐久性向上吸音アンダーカバーを開発・提供する事にある。
【解決手段】 この課題を解決する為の手段として、GFPP材等の繊維系材料と発泡剤を含む複合材料に、不織布と、ボディー側と路面側のMI値を所定数値にそれぞれ設定したフィルム等の樹脂層を貼着して設け、且つ、該樹脂層は車両に対して路面側に貼着して設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車用耐水・耐久性向上吸音アンダーカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本来、アンダーカバー取り付けの目的は、空力性能を向上し、ハンドリング性を高める事で、最高速度と加速度を向上し、更には燃費の向上やタイヤが巻き上げる埃・砂・石・泥等からエンジン及びその周辺を保護する為である。
【0003】
しかし、最近では振動や騒音等の公害対策の一環として、アンダーフロアー部の防音効果が大きく、中間層に遮音層・両面又は片面の表面側に吸音層を設定する方法が取られて来ていて、その吸音材は水や泥等による吸音対策及び取り付け強度に対する課題があり、コストアップの傾向にある。そして、アンダーフロアーの中間層材質としては、PP系が主流と成っているが、板厚2.0mm(2000g/m2)で面積の大きいアンダーフロアーとしては重量アップも大きな問題となっている。
【0004】
従って、これからのアンダーカバーは上記目的(0002)に加えて、吸音性能と表面撥水を両立し、且つ、膨張性が有り強度の優れた基材を使用する事が望まれている。
【0005】
そこで、上記の問題解決と課題解決の為に、防音効果に優れ、吸音性能と表面撥水を両立し、且つ、膨張性が有り強度の優れた基材を使用した自動車用アンダーカバーを発明し、出願(特開2006−240408)をしている。
【0006】
ところが、上記発明の自動車用アンダーカバーは、樹脂層のみでは成形時均一に成形出来ない為、形状部で肉厚が薄く成る、又は亀裂が発生する等の問題があった。
【0007】
又、これまでに出願されている自動車用アンダーカバーを紹介する。(特許文献1〜3参照。)
【特許文献1】特開2004−169616
【特許文献2】特開2002−348767
【特許文献3】特開平9−258740
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、上記課題を解決する為に、この発明はスパンボンド不織布を積層した樹脂層を使用して、成形時に均一に成形出来、且つ、防音効果の大きい吸音性能と表面撥水を両立し、チッピング性向上を図った自動車用耐水・耐久性向上吸音アンダーカバーを開発・提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決する為の手段として、GFPP材等の繊維系材料と発泡剤を含む複合材料に、不織布と、ボディー側と路面側のMI値を所定数値にそれぞれ設定したフィルム等の樹脂層を貼着して設け、且つ、該樹脂層は自動車に対して路面側に貼着して設けたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明の効果として、GFPP材等の繊維系材料と発泡剤を含む複合材料に、不織布と、ボディー側と路面側のMI値を所定数値にそれぞれ設定したフィルム等の樹脂層を貼着して設け、且つ、該樹脂層は車両に対して路面側に貼着して設けた事で、撥水性と吸音性を両立し、且つ、成形時のチッピング性向上を図る等、極めて有益なる効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の最良の形態として、アンダーカバーの品質・強度・性能を確保し、且つ、より安価なものにする為に、許容範囲内で部材の板厚や形状を統一し、標準化する事で生産性を向上する事が重要である。
【実施例1】
【0012】
そこで、この発明の一実施例を図1〜2に基づいて詳述すると、自動車等の車両フロアー下部の全面を被覆するアンダーカバーにおいて、該アンダーカバーはGFPP材等の繊維系材料と発泡剤を含む複合材料に、均一に分散させた布地を熱圧着により接合して設けたスパンボンド不織布(1)と、ボディー側と路面側のMI値を所定数値にそれぞれ設定したフィルム等の樹脂層(3)を貼着して設け、且つ、該樹脂層(3)は車両に対して路面側に貼着して設けた事を特徴とする自動車用耐水・耐久性向上吸音アンダーカバーから構成される。
【0013】
次に、アンダーカバーの局部断面構造について説明すると、従来は芯材にGF(グラスファイバー)とPP材を混合し、両面の表面部に厚みが50μ〜500μのPPフィルム等の補強層を貼着したものであったが、本発明のアンダーカバーは図1に示す様に、合成繊維フィラメントを均一に分散させた布地を熱圧着により接合したスパンボンド不織布(1)とフィルム等の樹脂層(3)を貼着して設けたものである。
【0014】
図3は、MI値8とMI値2の時の残響室法吸音率を示すデーターである。
【0015】
上記、樹脂層(3)であるフィルムの溶融時のMI値について説明すると、図3に示す様に吸音性能を持たせるにはMI値8以上、チッピング対策、吸水、着氷防止、撥水効果を持たせる場合はMI値5以下に調整設定する事で、それぞれの課題を達成する事が可能になる。
【0016】
スパンボンド不織布の成形性について述べると、図4に示す様にスパンボンド不織布有り品は伸び率が154%に対し、スパンボンド不織布無し品は伸び率が114%で、スパンボンド不織布有り品はスパンボンド不織布無し品に比較し伸び率が約1.35倍で良く伸びている。従って、成形時に良く伸びる為、深絞り成形が可能である。
【0017】
又、チッピング効果については、スパンボンド不織布有りと無しの比較試験の結果、一方のスパンボンド不織布有りのものは、フィルムに破れが見られず、又、他方の不織布無しのものは、破れが生じることが判明した。従って、スパンボンド不織布有りの方がチッピングに対して効果がある事が判断出来る。
【0018】
又、図5はMI値と剥離力の関係について測定結果を示したもので、樹脂のMI値が小さい方が、氷が付き難い事がわかる。又、吸水性に関しては、図6に示す様にMI値2とMI値8の吸水試験をした結果、双方とも吸水していない事が確認された。従って、FUCは十分な耐水性がある事がわかる。又、MI値が低い方が、吸水し難い傾向が見られる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
この発明の自動車用耐水・耐久性向上吸音アンダーカバーは、防音効果の大きいボディー側吸音性能と表面撥水を両立し、且つ、スパンボンドを積層した樹脂を使用してチッピング性向上を図る事で、多くの自動車産業市場に寄与する点で産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の一実施例を示し、自動車用耐水・耐久性向上吸音アンダーカバーの局部断面構造図である。
【図2】この発明の一実施例を示し、自動車用耐水・耐久性向上吸音アンダーカバーの局部断面構造図である。
【図3】この発明の根拠を示す参考資料で、MI値が吸音性に与える影響について表したデーターである。
【図4】この発明の根拠を示す参考資料で、スパンボンド不織布が伸び率に与える影響について表したデーターである。
【図5】この発明の根拠を示す参考資料で、MI値の差による着氷剥離力の違いについて表したデーターである。
【図6】この発明の根拠を示す参考資料で、MI値とアンダーカバーの板厚と重量変化率(吸水量)の関係を示したデーターである。
【符号の説明】
【0021】
1 補強層
2 芯材
3 スパンボンド不織布入り樹脂層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両フロアー下部の全面を被覆するアンダーカバーにおいて、該アンダーカバーはGFPP材等の繊維系材料と発泡剤を含む複合材料に、不織布(1)と、ボディー側と路面側のMI値を所定数値にそれぞれ設定したフィルム等の樹脂層(3)を貼着して設け、且つ、該樹脂層(3)は車両に対して路面側に貼着して設けた事を特徴とする自動車用耐水・耐久性向上吸音アンダーカバー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−298340(P2009−298340A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156422(P2008−156422)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(000135988)株式会社ヒロタニ (16)
【Fターム(参考)】