説明

自動車用開閉体の振動防止装置

【課題】簡単な構造でピストンのスライド規制を図れ、スプリングの外径を確保してシリンダの全長を短くできる自動車用開閉体の振動防止装置を提供する。
【解決手段】この振動防止装置10は、ピストン本体21及びピストンロッド23,27を有するピストン20と、第1筒部31、第2筒部32及び第1フランジ部35を有する第1ボディ30Aと、第3筒部39及び第2フランジ部45を有する第2ボディ30Bとからなるシリンダ30と、コイルスプリング55とを備え、コイルスプリング55は、シリンダ30の外周に配置され、一端が第1フランジ部35及び第2フランジ部45の接合部に支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のドア等の開閉体を閉じたときに、その振動を防止するための、自動車用開閉体の振動防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ハッチバックや、ワゴン、バン等の自動車には、後部の荷室を開閉するための、バックドアが取付けられている。このようなバックドアは、その周縁部が荷室の開口部周縁にゴム状のストッパ等を介して当接し、開口部を閉じるようになっている。しかし、自動車走行時やアイドリング中の振動等により、開閉体が共振して不快音や不快感が生じる場合があった。そのような不快音等を抑制するため、様々な構造が提案されている。例えば、内部に油等の粘性流体が充填されたシリンダと、該シリンダ内にスライド可能に配置されるピストンとを備え、ピストンのスライド移動が粘性流体の抵抗により規制されることで、振動を減衰させる構造が提案されている。
【0003】
このような構造を採用するものとして、例えば、下記特許文献1には、上端が閉塞し他端が開口した車体側チューブと、該車体側チューブ内に昇降可能に配置されると共に、上下両端が開口したシリンダ状の車輪側チューブと、該車輪側チューブ内に昇降可能に配置されたピストン体とを有するフロントフォークが記載されている。
【0004】
また、前記車輪側チューブの内部下方に下方軸受部材が連結され、同車輪側チューブの上端開口部に上方軸受部材が連結されており、ピストン体の上面から突出した上方ロッド体が前記上方軸受部材に支持され、同ピストン体の下面から突出した下方ロッドが前記下方軸受部材に支持されている。なお、前記上方ロッドは、その先端部が前記車体側チューブの上壁に連結されており、車体側チューブとピストン体とが一体化されている。
【0005】
更に、車体側チューブの内側であって、その上壁と上方軸受部材との間にスプリングが介装されて、車体側チューブに対して車輪側チューブが下向きに付勢されている。また、車輪側チューブの内側であって、上方軸受部材とピストン体との間、及び、ピストン体と下方軸受部材との間にもスプリングがそれぞれ介装されており、ピストン体が車輪側チューブ内周の所定位置に保持されている。
【0006】
そして、車体側又は車輪側から振動を受けて、車輪側チューブ及び車体側チューブが相対的に昇降すると、スプリングの付勢力に抗して車輪側チューブ内をピストン体が昇降すると共に、車輪側チューブ内に充填された油によりピストン体が制動されて、上記振動が減衰されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−168233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1における前記ピストン体から突出した上方ロッド、下方ロッドは、各々車輪側チューブの上端開口部に連結された上方軸受部材と、同車輪側チューブの内部下方に連結された下方軸受部材に支持されるようになっている。しかしながら、これらの上方軸受部材及び下方軸受部材は、車輪側チューブとは別体で形成され、車輪側チューブの上端開口部又は内部下方に連結されているので、部品点数が多く構造が複雑であるという問題があった。
【0009】
また、特許文献1における複数のスプリングは、車体側チューブの内側、若しくは、車輪側チューブの内側に配置されているので、その外径は各チューブの内径に左右され、十分な大きさを確保しにくく、ばね力が不足する場合があった。また、複数のスプリングは、両チューブの内側に直列的に配置されているので、両チューブの長さが長くなりやすく大型化してしまうという不都合も生じる。
【0010】
したがって、本発明の目的は、簡単な構造で一対のピストンロッドを支持することができると共に、コイルスプリングの外径を十分に確保して、シリンダの全長を短くすることができる、自動車用開閉体の振動防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、自動車に設けられる開口部と、該開口部に取付けられる開閉体との間に配置され、前記開閉体を閉じた状態での振動を防止するためのものであって、フランジ状のピストン本体、及び、該ピストン本体の両端面からそれぞれ突出した一対のピストンロッドを有するピストンと、前記ピストン本体をスライド可能に収容する第1筒部、該第1筒部の一端面から縮径して連設され、一方のピストンロッドを挿通支持させる第2筒部、及び、前記第1筒部の他端部周縁に設けられた第1フランジ部を有する第1ボディと、他方のピストンロッドを挿通支持させる第3筒部、及び、この第3筒部の端部周縁に設けられ、前記第1フランジ部に接合される第2フランジ部を有し、前記開口部周縁又は前記開閉体のいずれか一方に固着される第2ボディとを有し、内部に粘性流体が充填されるシリンダと、一方のピストンロッドを前記第1ボディの第2筒部から突出させて、同ピストンロッドの先端部を、前記開口部周縁又は前記開閉体の他方に当接するように付勢するコイルスプリングとを備え、前記コイルスプリングは、前記シリンダの外周に配置され、一端が前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部の接合部に当接して支持され、他端が前記第2筒部から突出したピストンロッドの先端部側に支持されていることを特徴とする自動車用開閉体の振動防止装置を提供するものである。
【0012】
本発明の自動車用開閉体の振動防止装置においては、前記シリンダの第1フランジ部と第2フランジ部とがかしめられて接合されていることが好ましい。
【0013】
本発明の自動車用開閉体の振動防止装置においては、前記第1フランジ部が前記第2フランジ部よりも大径とされており、この第1フランジ部の周縁部がかしめられて、前記第1フランジ部と前記第2フランジ部とが接合されていることが好ましい。
【0014】
本発明の自動車用開閉体の振動防止装置においては、前記第1ボディの第1筒部と第2筒部とを連結する連結壁が傾斜した形状をなしていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、開口部に対して開閉体を閉じると、シリンダの第2筒部から突出するピストンロッドが開口部周縁又は開閉体に当接して、ピストンロッドがコイルスプリングに抗してシリンダ側に押し込まれる。その結果、開閉体が自動車に設けられた開口部に対して常時開く方向に付勢され、ロック状態での開閉体のガタ付きを防止することができる。
【0016】
また、車両走行時の振動等により開閉体が振動しようとすると、ピストン本体がシリンダ内で移動する際の粘性流体の流動抵抗により振動減衰効果がもたらされ、共振を防止して車室内で不快音が発生することを防止できる。
【0017】
そして、コイルスプリングは、その一端が第1フランジ部及び第2フランジ部の接合部に当接して支持され、他端がピストンロッドの先端部側に支持された状態で、シリンダの外周に配置されているので、チューブ内側にスプリングが配置される特許文献1のものと比べて、コイルスプリングの外径を十分に確保して、高いばね力を得ることができ、その結果、シリンダの全長を短くして省スペース化を図ることができる。
【0018】
更に、一対のピストンロッドを支持しながら、ピストン本体をスライド可能に収容するシリンダを、第1ボディ及び第2ボディだけで構成することができるので、上記特許文献1における上方軸受部材や下方軸受部材等が不要となり、部品点数を少なくして簡単な構造にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る自動車用開閉体の振動防止装置の、一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】同振動防止装置の要部組立斜視図である。
【図3】同振動防止装置の断面斜視図である。
【図4】同振動防止装置を構成するシリンダの、第1ボディの断面図である。
【図5】同振動防止装置を構成するシリンダの、第2ボディを示しており、(a)はその平面図、(b)は断面図である。
【図6】同振動防止装置を構成する止め具を示しており、(a)はその平面図、(b)は(a)のA−A矢示線における断面図である。
【図7】同振動防止装置を構成するカバー部材を示しており、(a)はその断面図、(b)は(a)のB−B矢示線における断面図である。
【図8】同振動防止装置の使用状態を示しており、弾性手段によりピストンロッドが付勢された状態を示す説明図である。
【図9】同振動防止装置の使用状態を示しており、弾性手段の付勢力に抗してピストン本体が移動した状態を示す説明図である。
【図10】同振動防止装置の要部拡大説明図である。
【図11】同振動防止装置を適用した開閉体及び開口部を示す斜視図である。
【図12】本発明に係る自動車用開閉体の振動防止装置の、他の実施形態を示す説明図である。
【図13】本発明に係る自動車用開閉体の振動防止装置の、更に他の実施形態を示しており、同振動防止装置を構成する止め具の斜視図である。
【図14】同振動防止装置を構成する止め具を示しており、(a)はその平面図、(b)は(a)のC−C矢示線における断面図である。
【図15】同振動防止装置の要部拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1〜11を参照して、本発明に係る自動車用開閉体の振動防止装置の一実施形態について説明する。この自動車用開閉体の振動防止装置は、自動車の後部荷室に設けられる開口部3と、該開口部3に取付けられるハッチバックドアからなる開閉体5との間に配置され、開閉体5を閉じた状態での振動を防止するためのものである(図11参照)。なお、この自動車用開閉体の振動防止装置は、車両後方のハッチバックドアだけでなく、車両側面のヒンジドアやスライドドア等にも適用することができ、その配置箇所は特に限定されない。
【0021】
図1に示すように、この実施形態における自動車用開閉体の振動防止装置10(以下、「振動防止装置10」という)は、フランジ状のピストン本体21及び同ピストン本体21の両端面からそれぞれ突出した一対のピストンロッド23,27を有するピストン20と、互いに連結される第1ボディ30A及び第2ボディ30Bからなり、前記ピストン20をスライド可能に収容するシリンダ30と、このシリンダ30を前記開閉体5に取付ける止め具60と、この止め具60と前記シリンダ30とを固定するリベット80と、一方のピストンロッド23を自動車の開口部3側へ付勢するコイルスプリング55と、前記シリンダ30を覆うカバー部材90とから主として構成されている。
【0022】
図1,3,8に示すように、前記ピストン20は、円形フランジ状のピストン本体21と、該ピストン本体21の一端面中央から所定長さで突出したピストンロッド23と、前記ピストン本体21の他端面中央から、前記ピストンロッド23と同軸的に且つ同ピストンロッド23よりも短く突出したピストンロッド27とを有している。前記ピストン本体21の外周には、切欠き状のオリフィス21a,21aが対向して形成されている。また、ピストンロッド23,27の軸方向途中にはシールリング装着溝23a,27aが形成され、それらにシールリング24,28がそれぞれ装着されている。更に、ピストンロッド23の先端部25は、ワッシャプレート50が装着される縮径した形状をなしており、その外周にEリング装着溝25aが形成されている。この実施形態では、前記ピストンロッド23が本発明における「一方のピストンロッド」をなしている。
【0023】
なお、図8に示すように本実施形態における前記シールリング24,28は、断面がY字状のいわゆるYリングが採用されているが、これに限定されるものではなく、断面が円形状のいわゆるOリングや、その他の断面形状のリングを採用してもよい。
【0024】
また、本実施形態では、オリフィスとしてピストン本体21に切欠き状に形成されたものを採用したが、これに限定されるものではない。例えば、ピストン本体21に貫通した穴を設け、この穴をオリフィスとして用いたり、或いは、後述するシリンダ30の第1ボディ30Aの第2筒部32の内径と、ピストンロッド23の外径との間に隙間を設けて、この隙間をオリフィスとして利用してもよい。
【0025】
図1,4,8に示すように、シリンダ30を構成する第1ボディ30Aは、前記ピストン本体21をスライド可能に収容する円筒状の第1筒部31と、この第1筒部31の一端面から連結壁33を介して縮径して連設され、前記ピストンロッド23を挿通させる第2筒部32と、前記第1筒部31の他端周縁から外径方向に形成された第1フランジ部35とを有している。
【0026】
なお、図9に示すように、前記第2筒部32は、ピストン本体21が第2ボディ30B側に最大限スライドしたときに、ワッシャプレート50には当接しない長さとされている。すなわち、図8に示すように、コイルスプリング55により付勢されたピストン本体21が、第1ボディ30Aの連結壁33に当接して移動規制がなされたとき、ピストン本体21とガスケット46との間の距離aよりも、第2筒部32の上端とワッシャプレート50の下端との距離bの方が大きくなるように、第2筒部32の長さが設定されている。
【0027】
また、図4に示すように、第2ボディ30Bに連結される前の状態で、前記第1フランジ部35の周縁部35aは、第1ボディ30Aの軸方向に延出した筒状をなしている。更に図4及び図8に示すように、第1筒部31と第2筒部32とを連結する連結壁33は、第2筒部32に向かうほど軸方向に突出するように傾斜した形状をなしている。
【0028】
一方、上記第1ボディ30Aに連結される第2ボディ30Bは、前記ピストン20の他方のピストンロッド27をスライド可能に支持する有底円筒状の第3筒部39と、該第3筒部39の開口部周縁から外径方向に広がり、前記第1フランジ部35の周縁部35aの内径よりも小径で形成された第2フランジ部45とを有している。すなわち、前記第1フランジ部35の外径は、第2フランジ部45の外径よりも大きく形成されている。
【0029】
そして、第2ボディ30Bの第2フランジ部45の表面側に、前記第1フランジ部35の周縁部35aが被さるようにかしめられて、第1フランジ部35及び第2フランジ部45の両者が接合され、第1ボディ30Aに第2ボディ30Bが連結されるようになっている(図3及び図8参照)。この第1フランジ部35と第2フランジ部45との接合部48(図8〜10参照)に、コイルスプリング55の一端が支持されるようになっている。
【0030】
また、前記第1ボディ30Aの第1フランジ部35と、前記第2ボディ30Bの第2フランジ部45との間には、織布やゴム等からなり、シール性を高めるための環状のガスケット46が配置されている(図8〜10参照)。このガスケット46の内径寸法は、第1ボディ30Aの第1筒部31の内径寸法よりも小さく形成されている。
【0031】
図5(a),(b)に示すように、前記第2ボディ30Bの第3筒部39の底部41の中央には、貫通孔43が形成されており、この貫通孔43の外周には、周方向に均等な間隔で複数、この実施形態では3個の空気逃げ孔43aが形成されている。
【0032】
また、第3筒部39は、前記ピストンロッド27よりも長く延出されており、その先端部内側に、ピストンロッド27がスライドしても、ピストンロッド27が挿入されない空間部47が設けられている(図8及び図9参照)。この空間部47内には、シリンダ30と前記止め具60とを固定するリベット80の係合部80bが配置されるようになっている。なお、ピストン本体21が第2ボディ30B側に最大限スライドしても、ピストンロッド27と係合部80bとが衝突しないようになっている(図9参照)。
【0033】
上記の第1ボディ30Aと第2ボディ30Bとが連結された状態では、ピストン本体21は、第1筒部31内にスライド可能に収容されると共に、一方のピストンロッド23は、第1ボディ30Aの第2筒部32にスライド可能に支持され、その先端開口から挿出され、他方のピストンロッド27は、第2ボディ30Bの第3筒部39にスライド可能に支持されて、ピストン20が両持ち支持されるようになっている(図3,8,9参照)。
【0034】
また、図8に示すように、第2筒部32の内周にシールリング24が当接し、第3筒部39の内周にシールリング28が当接して、シリンダ30の内部に粘性流体Rが封入され、シリンダ30内でピストン本体21がスライドするときに、同粘性流体Rがオリフィス21aを通過するときの流動抵抗により、ピストン本体21に制動力が作用するようになっている。
【0035】
更に、ピストン本体21は、常時はコイルスプリング55により付勢され、第1ボディ30Aの連結壁33に当接し(図8参照)、コイルスプリング55の付勢力に抗して第2ボディ30B側に移動するときには、ガスケット46に当接して、それ以上の移動が規制されるようになっている(図9参照)。
【0036】
なお、ガスケット46が第1筒部31の内周からはみでないようにしたり、ガスケット46を用いずに、第1フランジ部35と第2フランジ部45とをかしめる等により接合し、第1ボディ30Aと第2ボディ30Bとを連結させたりして、ピストン本体21を第2ボディ30Bの第2フランジ部45に直接的に当接させて、その移動を規制するようにしてもよい。また、上記のように、ガスケット46を用いず、第1フランジ部35と第2フランジ部45とをかしめる場合には、両者の隙間をシールするために、第1フランジ部35と第2フランジ部45との間に接着剤を介在させておくことが好ましい。
【0037】
また、前記ピストンロッド23の先端部25には、Eリング56によって抜け止めされたワッシャプレート50が装着されている。図1及び図2に示すように、このワッシャプレート50は、中央に挿通孔51が形成され、この挿通孔51の外周に、複数の爪装着孔52が均等な間隔で設けられている。更にワッシャプレート50の外周には、切起こし状のスプリング支持爪53が形成されている。このワッシャプレート50は、図9に示すように、ピストン本体21が第2ボディ30B側に最大限スライドしたときでも、前記第2筒部32に当接しないように構成されている。
【0038】
上記ワッシャプレート50には、自動車の開口部3の周縁に弾性的に当接する弾性当接部材57が装着されるようになっている。この弾性当接部材57は、ゴム等の弾性材料から形成され、その裏面側から前記ワッシャプレート50の爪装着孔52に挿入されて係合する複数の装着爪58が突設されている。なお、各装着爪58の中心には、成形性及び柔軟性を高めるための、肉抜き孔58aが軸方向に沿って形成されている(図3及び図8参照)。
【0039】
また、前記シリンダ30の第1ボディ30Aの外周に、一方のピストンロッド23をシリンダ30の第2筒部32の先端開口から突出させ、自動車の開口部3の周縁に当接するように付勢するコイルスプリング55が配置されている。図8〜10に示すように、このコイルスプリング55は、その一端が第1フランジ部35と第2フランジ部45との接合部48に当接して支持される。また、同コイルスプリング55の他端は、第2筒部32の先端開口から突出したピストンロッド23の先端部25側で支持、すなわち、前記ワッシャプレート50に当接して支持され、更に他端内周に前記ワッシャプレート50のスプリング支持爪53が挿入されて支持されるようになっている。このように一端が接合部48に支持され、他端がピストンロッド23の先端部25に装着されたワッシャプレート50に支持されたコイルスプリング55は、ワッシャプレート50を介して、ピストンロッド23を第2筒部32の先端開口から突出させ、自動車の開口部3の周縁に当接するように付勢するようになっている。
【0040】
上記シリンダ30の第3筒部39に取付けられて、シリンダ30を開閉体5に固着させる止め具60は、前記第3筒部39を収容して固定すると共に、前記開閉体5の取付孔7(図8参照)に挿入される有底円筒状の収容筒部61と、該収容筒部61の先端開口部周縁から外径方向に形成され、前記開閉体5の取付孔7の表側周縁に直接的又は間接的に係合する第3フランジ部75と、前記取付孔7の裏側周縁に係合する係合爪73とを有している。なお、上記収容筒部61の内径は、前記シリンダ30の第3筒部39の外径よりも大きく形成されている。
【0041】
図6(a),(b)に示すように、前記収容筒部61の底部63の中央には貫通孔65が形成されており、同底部63の内面には、該底部63から貫通孔64の軸心方向に突出すると共に、貫通孔64の中心から放射状に互いに間隔を空けて形成されている。この実施形態では十字状に伸びる複数の凸部67が形成されている。
【0042】
そして、図8に示すように、シリンダ30の貫通孔43及び止め具60の貫通孔65に、リベット80の軸部80aがそれぞれ挿入され、シリンダ30の空間部47内に配置された係合部80bが貫通孔43の周縁に係合すると共に、傘状部80cが止め具60の貫通孔65の周縁に係合することにより、リベット80を介してシリンダ30に止め具60が固定されるようになっている。なお、シリンダ30と止め具60との固定に際しては、リベット80以外にも、ボルトやナット、工業用ファスナー等の様々なものを採用することでき、特に限定されるものではない。
【0043】
また、この状態では図8に示すように、前記凸部67にシリンダ30の底部41が当接して、止め具60の底部63とシリンダ30の底部41との間に隙間S1が形成され、この隙間S1が、貫通孔43に設けられた空気逃げ孔43aを介して、第3筒部39の空間部47に連通するようになっている。
【0044】
前記収容筒部61の内周には、先端開口から底部63に至るまで、軸方向に沿って伸びる突条69が、周方向に互いに間隔を空けて複数突設されている(図6(a),(b)参照)。図6(a)に示すように、この実施形態における突条69は、収容筒部61を軸方向から見たときに、略三角形状をなすように内径方向に突出していると共に、前記底部63に形成された複数の凸部67の間に配置されている。そして、上述したように、リベット80を介してシリンダ30に止め具60が固定されたときに、止め具60の収容筒部61の内周と、シリンダ30の第3筒部39の外周との間に隙間S2が形成されるようになっている(図8参照)。図8及び図10に示すように、この隙間S2は、止め具60の底部63とシリンダ30の底部41との間に形成された前記隙間S1に連通するようになっている。
【0045】
また、前記収容筒部61の外周であって、前記複数の突条69の間に位置する部分には、コ字状のスリット71(図1及び図6(b)参照)を介して、前記係合爪73が撓み可能に形成されている。図3及び図6に示すように、この係合爪73は、収容筒部61の外周側に次第に突出するテーパ部73aと、その先端部に設けられ、前記取付孔7の裏側周縁に係合する係合段部73bとを有している。
【0046】
図10に示すように、前記リベット80により前記シリンダ30に止め具60が固定された状態で、前記シリンダ30の第1フランジ部35及び第2フランジ部45は、前記第3フランジ部75の上面よりも上方に位置し、それらの間に隙間S3が形成されるようになっている。この隙間S3は、止め具60の収容筒部61の内周と、シリンダ30の第3筒部39の外周との間に形成された前記隙間S2に連通するようになっている。
【0047】
上記構造をなすシリンダ30は、その第3筒部39が止め具60を介して取付孔7に挿入されて固着されるが、この第3筒部39以外の部分は、取付孔7から表側に突出し、この突出した部分が伸縮可能なカバー部材90で覆われるようになっている。
【0048】
このカバー部材90はゴム等の弾性材料で形成され、図1,3,7に示すように、環状をなし、前記止め具60の第3フランジ部75に接合される基端部91と、この基端部91に連設された蛇腹状をなす伸縮可能な伸縮筒部95と、この伸縮筒部95の先端部から延設された環状の先端カバー部97とを有している。
【0049】
図7(a)に示すように、前記基端部91の内周には、その開口側に環状溝92が形成されると共に、環状溝92の上部は、内径方向に突出した突出部93をなしている。そして、前記環状溝92を前記止め具60の第3フランジ部75の外周に嵌着させることで、止め具60にカバー部材90の基端部91が装着され、その状態で前記突出部93がシリンダ30の第1フランジ部35の外周に密着するようになっている(図8〜10参照)。
【0050】
また、図7(b)に示すように、前記突出部93の内周には、軸方向に沿って伸びる空気逃げ溝93aが、周方向に均等な間隔で複数形成され、止め具60にカバー部材90が装着され、前記突出部93が第1フランジ部35の外周に密着した状態で、シリンダ30とカバー部材90との間の空気をカバー部材90の外部へ排出可能となっている。
【0051】
更に、カバー部材90の先端カバー部97の内周には、環状溝97aが形成されている。この環状溝97aを、ワッシャプレート50に装着された弾性当接部材57の外周に嵌着させることにより、同弾性当接部材57にカバー部材90の先端カバー部97が装着される(図8参照)。このように先端カバー部97が弾性当接部材57に装着されると共に、前記基端部91が止め具60の第3フランジ部75に装着されることで、カバー部材90によって、シリンダ30の第1ボディ30A、ピストンロッド23及びコイルスプリング55が覆われるようになっている。
【0052】
また、前記止め具60の第3フランジ部75の裏面側には、発泡材料からなる環状のシール部材82が配置されている(図2参照)。このシール部材82は、止め具60の第3フランジ部75の外径よりも大きく、かつ、カバー部材90の基端部91の外径よりも大きくなるように形成されている。
【0053】
次に上記構造からなる振動防止装置の作用効果について説明する。
【0054】
最初に組み立て作業について説明すると、シリンダ30、ピストン20及びコイルスプリング55は、例えば、次のようにして組み立てられる。すなわち、前記ピストンロッド23を第1ボディ30Aの第2筒部32に挿入し、ピストン本体21を同第1ボディ30Aの第1筒部31に収容すると共に、第1筒部31内にシリコンオイルやグリース等の粘性流体Rを充填して、第1ボディ30Aの第1フランジ部35の裏面側に環状のガスケット46(図1参照)を配置する。
【0055】
その後、第2ボディ30Bの第2フランジ部45を、第1フランジ部35の周縁部35aの内周に配置し、前記ガスケット46を両フランジ部35,45で挟み込むと共に、ピストンロッド27を第2ボディ30Bの第3筒部39に挿入する。その状態で、第1フランジ部35の周縁部35aを、第2フランジ部45の表面側に被さるように、かしめることにより、第1フランジ部35及び第2フランジ部45の両者が接合されて、第1ボディ30Aに第2ボディ30Bが連結される(図3及び図8参照)。このように、第1フランジ部35と第2フランジ部45との間にガスケット46を挟み込まれているので、両フランジ部35,45との間の隙間を封止して、両者のシール性を向上させることができる。
【0056】
また、上記のように本実施形態では、第1ボディ30Aの第1フランジ部35と第2ボディ30Bの第2フランジ部45とがかしめられて接合されており、平面状をなしたフランジ部35,45を利用して両ボディ30A,30Bを接合することができるので、第1ボディ30Aと第2ボディ30Bとを容易に連結することができる。
【0057】
その結果、第1筒部31内にピストン本体21がスライド可能に収容されると共に、ピストンロッド23が第1ボディ30Aの第2筒部32にスライド可能に支持され、かつ、ピストンロッド27が第2ボディ30Bの第3筒部39にスライド可能に支持されて、ピストン20が両持ち支持されるようになっている(図3,8,9参照)。
【0058】
上記のように、この振動防止装置10においては、第2筒部32及び第3筒部39により、一対のピストンロッド23,27をスライド可能に支持しながら、第1筒部31によってピストン本体31をスライド可能に収容するシリンダ30を、第1ボディ30A及び第2ボディ30Bの2つの部材だけで構成することができるので、上記特許文献1記載のフロントフォークにおける上方軸受部材や下方軸受部材等が不要となり、部品点数を少なくして簡単な構造にすることができる。
【0059】
次いで、シリンダ30の第1ボディ30Aの外周にコイルスプリング55を外装し、その一端を、第1フランジ部35と第2フランジ部45との接合部48に支持、具体的には第1フランジ部35の表面に当接させて支持させる。そして、ピストンロッド23の先端部25をワッシャプレート50の挿通孔51に挿通させ、同先端部25の段部25b(図8参照)でワッシャプレート50を支持すると共に、Eリング装着溝25aにEリング56を装着する。その結果、ピストンロッド23の先端部25にワッシャプレート50が抜け止め状態で装着され、コイルスプリング55の一端が第1フランジ部35と第2フランジ部45との接合部48に当接して支持され、他端がワッシャプレート50に支持されて、ワッシャプレート50とシリンダ30の第1フランジ部35との間にコイルスプリング55が縮んだ状態で介装され、ワッシャプレート50を介して、ピストンロッド23が自動車の開口部3側に向けて付勢される。
【0060】
上記のように、前記コイルスプリング55は、その一端が第1フランジ部35と第2フランジ部45との接合部48に当接して支持され、他端がワッシャプレート50に支持された状態で、シリンダ30の外周に配置されているので、上記特許文献1に記載されたフロントフォークのように、車体側チューブや車輪側チューブの内側にスプリングが配置される構造のものと比べて、コイルスプリング55の外径を十分に確保して、高いばね力を得ることができる。そのため、ばね力を得るべく、コイルスプリング55の全長を長くする必要がなく、シリンダ30の全長を短くすることできるので、嵩張らずコンパクトとなり省スペース化を図ることができる。
【0061】
更に本実施形態では、第1フランジ部35の外径が、第2フランジ部45の外径よりも大きく形成され、同第1フランジ部35の周縁部35aが、第2フランジ部45の表面側に被さるようにかしめられて接合されている。その結果、コイルスプリング55の一端は、第1フランジ部35のかしめ加工用の周縁部35aではなく、面精度の高い平面部分で支持させることができるので、コイルスプリング55が傾くことを抑制して、安定した姿勢で配置することができる。
【0062】
また、上述したように、剛性の高いワッシャプレート50をピストンロッド23の端部に取付けることにより、コイルスプリング55の一端をしっかりと保持できると共に、構成を簡略化することができる。
【0063】
上記状態で図2に示すように、ワッシャプレート50の複数の爪装着孔52に、弾性当接部材57の複数の装着爪67aを整合させて、同弾性当接部材57を押し込むことにより、各装着爪67aを爪装着孔52に係合させて、ワッシャプレート50の表面に弾性当接部材57が装着される。
【0064】
また、上記構造をなしたシリンダ30は、その一方の筒部である第3筒部39が、止め具60に取付けられるようになっている。その際には、まず、止め具60の収容筒部61内に、シリンダ30の第3筒部39を挿入し、その底部41を止め具60の底部63の凸部67に当接させる。このとき、図6(a),(b)に示すように、複数の突条69の各先端部がシリンダ30の第3筒部39の外周に近接して配置されるので、シリンダ30の第3筒部39をガタ付くことなく、しっかりと支持することができる。
【0065】
この状態で図3及び図8に示すように、シリンダ30の貫通孔43及び止め具60の貫通孔65に、リベット80の軸部80aをそれぞれ挿入して、かしめることにより、シリンダ30の空間部47内に配置された係合部80bが貫通孔43の周縁に係合すると共に、止め具60の貫通孔65の周縁に傘状部80cが係合して、リベット80を介してシリンダ30に止め具60を固定することができる。また、この状態では、止め具60の収容筒部61の外周と、シリンダ30の第3筒部39の内周との間に隙間S2が形成される。
【0066】
また、第3筒部39の先端部のピストンロッド27が挿入されない空間部47を利用して、リベット80を介してシリンダ30と止め具60とを固定することができるので、両者の固定構造を簡略化することできる。更に、止め具60の収容筒部61にシリンダ30の第2ボディ30Bの第3筒部39が収容された状態で両者が固定されるので、省スペース化を図ることができる。
【0067】
上記のようにシリンダ30の第3筒部39を止め具60に固定した後、カバー部材90を、基端部91側からシリンダ30に被せていき、基端部91の環状溝92を、止め具60の第3フランジ部75の外周に嵌着させると共に、先端カバー部97の環状溝97aを、弾性当接部材57の外周に嵌着させることで、カバー部材90が、シリンダ30の第1ボディ30Aの外周に装着され、シリンダ30の第1ボディ30A、ピストンロッド23及びコイルスプリング55が覆われる(図3参照)。
【0068】
上記のようにして組み立てられた振動防止装置10は、開閉体5の取付孔7に止め具60を介して取付けられるようになっている。その取付けの際には、図2に示すように、止め具60の収容筒部61の外周に環状のシール部材82を装着しておき、その状態で止め具60の収容筒部61を取付孔7に挿入する。
【0069】
すると、取付孔内周にテーパ部73aが押圧されて係合爪73が内側に撓み、その係合段部73bが取付孔7を乗り越えると、係合爪73が弾性復帰して、係合段部73bが取付孔7の裏側周縁に係合する。それと共に、取付孔7の表側周縁にシール部材82が当接し、前記カバー部材90の基端部91の端縁部が、止め具60の第3フランジ部75と前記シール部材82との間で挟まれて接合されると共に、カバー部材90の基端部91が、シール部材82を若干押し潰した状態で、図8〜10に示すように、取付孔7の表側周縁にシール部材82を介して第3フランジ部75が間接的に係合する。
【0070】
以上のようにして、取付孔7の表側周縁にシール部材82を介して、止め具60の第3フランジ部75が間接的に係合し、この第3フランジ部75と、取付孔7の裏側周縁に係合した係合爪73とにより、取付孔7の周縁が挟持されて、取付孔7に振動防止装置10を取付けることができる。
【0071】
上記取付状態では、シリンダ30の取付孔7から表側に突出した部分がカバー部材90で覆われ、カバー部材90の基端部91が止め具60の第3フランジ部75に接合されているので、シリンダ30への雨水等の水分の接触や、カバー部材90内への雨水等の侵入を防止することができる。
【0072】
なお、この実施形態では、振動防止装置10を、開閉体5の取付孔7に取付けるようにしたが、これとは逆に、自動車の開口部3の周縁に取付孔を形成しておき、自動車の開口部3の周縁に振動防止装置10を取付けるようにしてもよい。
【0073】
そして、図11に示される自動車の開口部3が開いた状態から開閉体5を閉じていくと、シリンダ30の第2筒部32の先端開口から突出したピストンロッド23の先端部が、弾性当接部材57を介して開口部3の周縁に間接的に当接し、ピストンロッド23がコイルスプリング55の付勢力に抗して、カバー部材90の伸縮筒部95を縮ませながら、シリンダ30の第2ボディ30B側に押し込まれる。
【0074】
すると、第2筒部32及び第3筒部39により、ピストンロッド23,27がそれぞれスライド支持されつつ、かつ、オリフィス21aを通過する粘性流体Rの流動抵抗を受けながら、第1筒部31内をピストン本体21がスライドし、それと共にカバー部材90の伸縮筒部95も縮む。このとき、ピストンロッド23,27が第2筒部32及び第3筒部39にスライド可能に支持されて、ピストン20が両持ち支持されているため、ピストン本体21の傾きが防止され、第1筒部31内をスムーズにスライドさせることができる。
【0075】
そして、第1筒部31内を移動するピストン本体21は、第1ボディ30Aの第2筒部32の内周面から突出したガスケット46に当接して、それ以上の移動が規制されると共に、第2ボディ30Bの第3筒部39内をスライドするピストンロッド27は、リベット80の係合部80bの手前で静止するようになっている(図9参照)。
【0076】
上記のように本実施形態においては、ピストンロッド23がコイルスプリング55の付勢力に抗して第2ボディ30B側に押し込まれたとき、ピストン本体21が第2ボディ30Bの第2フランジ部45に対して、ガスケット46を介して間接的に当接するようになっており、シリンダ30の第2ボディ30Bを利用して、ピストン本体21のスライド動作を規制することができる。また、第2ボディ30Bによって、ピストン本体21のスライド動作が規制されるので、形状が複雑で変形しやすい第1ボディ30Aに、ピストン本体21から大きな荷重が付加されることを防止することができ、第1ボディ30Aの変形や損傷を効果的に防止することができる。
【0077】
特に本実施形態では、ピストン本体21が、第2ボディ30Bの第2フランジ部35に、ガスケット46を介して間接的に当接して、その移動が規制されるようになっているので、第2フランジ部45の平面状の大きな支持面によって、ピストン本体21の外周縁部をしっかりと受け止めることができ、ピストン本体21からの荷重が第1ボディ30Aに付加されることをより確実に防止して、第1ボディ30Aの変形や損傷等を更に効果的に防止することができる。更に、ガスケット46にピストン本体21が当接して、それ以上の移動が規制されるので、ピストン本体21と第2ボディ30Bの第2フランジ部45が直接当接することを防止することでき、衝突音や、ピストン本体21及び第2ボディ30Bの摩耗等を抑制することができる。
【0078】
そして、前記開閉体5は、ピストンロッド23の先端部25が弾性当接部材57を介して開口部3の周縁に間接的に当接した状態で、図示しないロック装置により、開口部3を閉じた状態でロックされる。その結果、開閉体5が自動車の開口部3に対して、常時開く方向に付されるので、ロック状態での開閉体5のガタ付きを防止することができる。
【0079】
この際、ピストンロッド23の先端部25は、コイルスプリング55の付勢力によってワッシャプレート50を介して付勢されている。このとき、この振動防止装置10では、上述したようにコイルスプリング55の外径を十分に確保することができるので、ピストンロッド23を付勢するための付勢力を不足なく得ることができ、開閉体5のガタ付きをより確実に防止することができる。
【0080】
また、コイルスプリング55の一端は、第1フランジ部35の面精度の高い平面部分で支持され、その傾きが抑制され安定した姿勢で配置されているので、ワッシャプレート50を介して、その付勢力をピストンロッド23の先端部25に精度よく伝達させることができる。
【0081】
そして、開口部3が開閉体5により閉塞された状態で、自動車の走行時やアイドリング中の振動等が生じると、開閉体5が振動して共振を生じる可能性がある。しかしながら、この振動防止装置10においては、そのような開閉体5の振動を防止することができる。すなわち、弾性当接部材57を介して開閉体5に当接したピストンロッド23が、開閉体5の振動によりスライドして、第1筒部31内でピストン本体21が移動するときに、オリフィス21aを通過する粘性流体Rの流動抵抗により、ピストン本体21に制動力が作用するので、開閉体5の振動を減衰することができ、その結果、開閉体5の共振を防止して、自動車内の不快音や不快感が発生することを防ぐことができる。
【0082】
また、第1ボディ30Aの第2筒部32の長さが、ピストン本体21がガスケット46に当接したとき、ワッシャプレート50が第1ボディ30Aの第2筒部32に当接しないように設定されているので(図9参照)、同第2筒部32に大きな荷重がかからず、第1ボディ30Aの変形を効果的に防止することができる。更に、第2ボディ30Bの第3筒部39の長さが、ピストン本体21がガスケット46に当接したとき、ピストンロッド27とリベット80の係合部80bとの間に隙間が形成されるように設定されているので、ピストンロッド27がリベット80の係合部80bに当接することを防止することでき、それによる衝突音や両部材の摩耗等を抑制することができる。
【0083】
また、この実施形態では、図4及び図8に示すように、第1ボディ30Aの第1筒部31と第2筒部32とを連結する連結壁33は、第2筒部32に向かうほど軸方向に突出するように傾斜した形状をなしている。そのため、図10に示すように、ピストン本体21が第1筒部31内を第1ボディ30A側にスライドして、連結壁33に当接したときでも、連結壁33に対するピストン本体21の接触面積を比較的小さくすることができるので、ピストン本体21が連結壁33に貼り付いてしまって動かなくなることを防止することができる。更に、第1筒部31内をピストン本体21が、第1ボディ30A側にスライドするとき、図10の矢印に示すように、シリンダ30内の空気を連結壁33の傾斜に沿って第2筒部32側に誘導して、ピストン本体21とシリンダ30の内周との隙間に空気が咬み込むことを抑制することができる。
【0084】
なお、上記のようにカバー部材90の伸縮筒部95が縮んだ場合、カバー部材90内の空気は、図10の矢印で示すように、カバー部材90の空気逃げ溝93a、隙間S3、隙間S2、止め具60のスリット71をそれぞれ通過して、止め具60の外部へ排出されるようになっている。
【0085】
図12には、本発明に係る自動車用開閉体の振動防止装置の、他の実施形態が示されている。前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0086】
この実施形態における自動車用開閉体の振動防止装置10a(以下、「振動防止装置10a」という)は、第1ボディ30Aの、第1筒部31と第2筒部32とを連結する連結壁33aの形状が、前記実施形態と異なっている。
【0087】
すなわち、この振動防止装置10aにおける連結壁33aは、第2筒部32に向かうほど軸方向にへこむように傾斜した形状をなしている。この態様では、前記実施形態と同様に、ピストン本体21が連結壁33aに当接しても、同連結壁33aに対するピストン本体21の接触面積が比較的小さいため、ピストン本体21の連結壁33aへの貼り付きを防止することができる。また、ピストン本体21が、連結壁33aと第2筒部32との折曲部に当接して停止し、そこが上死点となるので、上死点よりも上方に空間C(図12参照)を確保でき、空気をその空間Cにためて、ピストン本体21とシリンダ30の内周との隙間に空気が咬み込むことを抑制することができる。
【0088】
図13〜15には、本発明に係る自動車用開閉体の振動防止装置の、更に他の実施形態が示されている。前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0089】
この実施形態における自動車用開閉体の振動防止装置10b(以下、「振動防止装置10b」という)は、シリンダ30を構成する第2ボディ30Bの、ピストン本体21が当接する部分である、フランジ状をなした第2フランジ部35が、止め具60の第3フランジ部75を介して、開閉体5の取付孔7の周縁に間接的に当接するように構成されている(図15参照)。
【0090】
具体的には、図13及び図14(a),(b)に示すように、前記止め具60の第3フランジ部75の開口部の周縁部分が、所定高さで突出した形状をなしている。この突出部75aが、リベット80を介してシリンダ30に止め具60を固定したときに、第2ボディ30Bの第2フランジ部45に当接して、同第2フランジ部45を支持するようになっている(図15参照)。その結果、前記第2ボディ30Bの第2フランジ部45は、止め具60の第3フランジ部75及びシール部材82を介して、取付孔7の表側周縁に間接的に当接することとなる。
【0091】
また、止め具60の第3フランジ部75の突出部75aには、前記底部63に設けられた十字状の凸部67と整合するように、複数の空気通過溝75bが放射状に形成されている(図13及び図14参照)。図15に示すように、この空気通過溝75bは、隙間S3及び隙間S2に連通するようになっており、空気逃げ溝93a及び隙間S3を通ったカバー部材90内の空気が通過するようになっている。
【0092】
そして、この実施形態では、第2ボディ30Bの第2フランジ部45が、止め具60の第3フランジ部75の突出部75aに当接して支持されているので、ピストンロッド23がコイルスプリング55の付勢力に抗して第2ボディ30B側に押し込まれ、ピストン本体21が、ガスケット46を介して間接的に第2フランジ部45に当接したとき、或いは、直接的に第2フランジ部45に当接したときでも、第2フランジ部45を変形させにくくすることができる。
【0093】
なお、上記実施形態以外にも、例えば、止め具60の第3フランジ部75の開口部周縁にリブを設けて、前記リベット80を介してシリンダ30に止め具60が固定されたときに、同リブが第2ボディ30Bの第2フランジ部45に当接して支持するように構成してもよく、第2フランジ部45を支持できる構造であればよい。
【0094】
また、上記実施形態では、止め具60の第3フランジ部75の裏側にシール部材82を配置したが、このシール部材82を省略して、第2ボディ30Bの第2フランジ部45を、止め具60の第3フランジ部75を介して取付孔7に間接的に当接させてもよく、更には、止め具60自体を利用せずに、第2ボディ30Bの第2フランジ部75を取付孔7に直接当接させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0095】
5 開閉体
7 取付孔
10,10a,10b 自動車用開閉体の振動防止装置(振動防止装置)
20 ピストン
21 ピストン本体
23,27 ピストンロッド
25 先端部
30 シリンダ
30A 第1ボディ
30B 第2ボディ
30a シリンダ本体
31 第1筒部
32 第2筒部
33,33a 連結壁
35 第1フランジ部
35a 周縁部
39 第3筒部
45 第2フランジ部
48 接合部
55 コイルスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に設けられる開口部と、該開口部に取付けられる開閉体との間に配置され、前記開閉体を閉じた状態での振動を防止するための振動防止装置であって、
フランジ状のピストン本体、及び、該ピストン本体の両端面からそれぞれ突出した一対のピストンロッドを有するピストンと、
前記ピストン本体をスライド可能に収容する第1筒部、該第1筒部の一端面から縮径して連設され、一方のピストンロッドを挿通支持させる第2筒部、及び、前記第1筒部の他端部周縁に設けられた第1フランジ部を有する第1ボディと、他方のピストンロッドを挿通支持させる第3筒部、及び、この第3筒部の端部周縁に設けられ、前記第1フランジ部に接合される第2フランジ部を有し、前記開口部周縁又は前記開閉体のいずれか一方に固着される第2ボディとを有し、内部に粘性流体が充填されるシリンダと、
一方のピストンロッドを前記第1ボディの第2筒部から突出させて、同ピストンロッドの先端部を、前記開口部周縁又は前記開閉体の他方に当接するように付勢するコイルスプリングとを備え、
前記コイルスプリングは、前記シリンダの外周に配置され、一端が前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部の接合部に当接して支持され、他端が前記第2筒部から突出したピストンロッドの先端部側に支持されていることを特徴とする自動車用開閉体の振動防止装置。
【請求項2】
前記シリンダの第1フランジ部と第2フランジ部とがかしめられて接合されている請求項1記載の自動車用開閉体の振動防止装置。
【請求項3】
前記第1フランジ部が前記第2フランジ部よりも大径とされており、この第1フランジ部の周縁部がかしめられて、前記第1フランジ部と前記第2フランジ部とが接合されている請求項2記載の自動車用開閉体の振動防止装置。
【請求項4】
前記第1ボディの第1筒部と第2筒部とを連結する連結壁が傾斜した形状をなしている請求項1〜3のいずれか1つに記載の自動車用開閉体の振動防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−19468(P2013−19468A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153129(P2011−153129)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】