自己整合印刷
【課題】表面エネルギーパターンの手助けなしに印刷材料の第1および第2の領域を分離するマイクロメータおよびサブマイクロメータの寸法の臨界形状を形成することのできる方法を提供する。
【解決手段】 溶液処理および直接印刷によって導電性、半導体および/または絶縁性の層を蒸着する工程、および第2の材料の溶液をはじく第1のパターンの周りに表面エネルギー障壁を自己整合的に形成することによって電気活性ポリマーの高解像度パターンを形成する工程を含む、有機性または部分的に有機性のスイッチング装置を形成する方法。
【解決手段】 溶液処理および直接印刷によって導電性、半導体および/または絶縁性の層を蒸着する工程、および第2の材料の溶液をはじく第1のパターンの周りに表面エネルギー障壁を自己整合的に形成することによって電気活性ポリマーの高解像度パターンを形成する工程を含む、有機性または部分的に有機性のスイッチング装置を形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば有機電子装置を形成するために構造体を蒸着する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体接合ポリマー薄膜トランジスタ(TFTs)は近年、プラスチック基板に集積された安価な論理回路(C. Duryら、APL 73, 108(1998年))、および光電集積装置および高解像度アクティブマトリックス装置の画素トランジスタスイッチへの適用に関心が持たれ始めている(H. Sirringhausら、Science 280, 1741(1998年)、A. Dodabalapurら、App. Phys. Lett. 73, 142 (1998年))。電荷担体移動度が0.1cm2/Vsまででオン−オフ電流比が106−108の高性能TFTが提示されている。これはアモルファスシリコンTFTの性能に匹敵する(H. Sirringhausら、Advances in Solid State Physics 39, 101 (1999年))。
【0003】
ポリマー半導体の利点の1つは、簡単で低費用の溶液処理に向いているという点である。しかしながら、完全にポリマー化されているTFT装置および集積回路はポリマーの導体、半導体、および絶縁体の側面パターンを形成できることが必要とされる。フォトリソグラフィー(WO 99/10939 A2)、スクリーン印刷(Z. Baoら、Chem. Mat. 9, 1299 (1997年))、ソフトリソグラフィースタンピング(J. A. Rogers, Appl. Phys. Lett. 75, 1010 (1999年))、およびマイクロ成型(J. A. Rogers, Appl. Phys. Lett. 72, 2716 (1988年))ならびに直接インクジェット印刷(H. Sirringhausら、英国特許第0009911.9号)といったさまざまなパターンニング技術が提示されてきた。
【0004】
直接印刷技術の多くはTFTのソースおよびドレイン電極を形成するのに必要とされるパターンニング解像度を提供することができない。適切な駆動電流とスイッチング速度を得るには、チャネル長さが10μm未満であることが必要とされる。集積論理回路の速度は移動度に比例し、且つTFTチャネル長さの逆2乗に比例する。チャネル長さを1桁減らすことによって、動作速度を約100倍高くすることができる。従って、サブマイクロメータの臨界形状サイズで装置を形成することにより回路性能をより高めることが強く望まれている。
【0005】
インクジェット印刷といった直接印刷技術の多くはこのような高解像度を達成できるとはみなされていない。例えばインクジェットプリンタのノズルに形成される液滴がノズルプレートにおける湿潤状態が変化することにより飛散方向が統計学的に変化した状態で放射される。基板に着地するときに、液滴は制御されていない状態で拡散する。両方の要因が、チャネル長さが数マイクロメータと短い2つの平行な印刷ソースおよびドレインTFT電極間に電気的短絡を引き起こす可能性がある。英国特許第0009915.0号では、溶液に基づいた直接印刷法のこのような一般的な解像度の限界が、表面自由エネルギーの異なる領域を有するあらかじめパターンニングされた基板上に印刷を行うことによって克服されている。例えば、極性(非極性)溶媒から蒸着される材料の蒸着は基板の親水性(疎水性)領域においてのみ起こり、基板上における液滴の拡散は重要な装置寸法を規定している反発表面エネルギーバリヤによって制御することができる。この技術はチャンネル長さが5μm未満の精度良く形成されたチャネルを持つTFT装置の印刷を可能にする。表面エネルギーパターンを形成するには、集束赤外線レーザービームへの局所的露出などさまざまな方法を利用することができる(本発明者の同時係属英国出願第0116174.4号を参照のこと)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
あらかじめ形成された表面エネルギーパターンの手助けにより高解像度印刷を達成する際の欠点の1つとして、高解像度を持つこのようなパターンを形成するにはさらなる処理工程が必要とされる点が挙げられる。典型的には数μmの臨界形状の場合、表面エネルギープレパターンニングのために広範囲の技術を利用することができるが、サブミクロンの寸法の臨界形状を形成することは、急激に困難で高価となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、添付の特許請求の範囲に記載されているような方法および装置が提供される。
【0008】
従って、本発明の側面は、表面エネルギーパターンの手助けなしに印刷材料の第1および第2の領域を分離するマイクロメータおよびサブマイクロメータの寸法の臨界形状を形成することのできる方法を提供する。このような方法は、第1の材料の印刷パターン表面、および/または第1の材料の印刷パターン周囲にある基板領域に形成された自己整合表面コーティング層の形成に基づいている。この表面コーティング層により、第2の材料の溶液が第1の材料の表面から反発するようになる。第2の材料の溶液と第1の材料の周りの表面コーティング層との相互作用により、第1および第2の材料のパターン間に小さな間隙を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、本発明を以下の図面を参照しながら説明する。
【0010】
以下でより詳細に説明するように、基板を最初に準備した後、基板に第1の材料を蒸着することができる。さらに表面改質および溶液配合を行った後、材料の第2の蒸着を行い高解像度形状の形成を行うことができる。以下の説明はまた、この技術を実施して短いチャネルおよび薄いゲートのトランジスタ構造体、および臨界形状の寸法が20μm未満であることを必要とするその他の電子素子および装置を形成することを記載している。
【0011】
本発明の第1の実施形態によると、基板の第2の領域に蒸着された第2の材料の溶液が、第1の領域にあらかじめ蒸着された第1の材料の表面によってはじかれる方法が提供される。
【0012】
図1は本実施形態を概略的に示している。第1の材料3がまず最初に、好ましくは溶液から基板1上に蒸着される。第1の材料のパターンを作成できる蒸着技術であればどのようなものでも利用してよい。このような技術の例としては、インクジェット蒸着、噴射コーティング、スクリーン印刷、オフセット印刷、後にフォトリソグラフィーパターンニングを行う連続膜蒸着、表面エネルギーパターンを含む基板上に溶液流延または噴射コーティングを行うことなどが挙げられる。第1の材料を蒸着中または蒸着後、自己整合表面層5を第1の材料4のパターンの周辺に形成する。この表面層は、第1の材料と接触して蒸着された第2の材料の溶液6をはじくことができるか、またはこのような引き続き蒸着された材料の流れをその境界に局限するように準備される。第1の材料は、これが本質的にこれらの特性を提供するように選択してよい。あるいは、このような特性は蒸着後に第1の材料を表面改質することによって得ることができる。このような特徴は以下の技術のあとに続く技術によって得ることができる、なぜなら以下の工程、ただしこれらに限定されるわけではないが、を含む1つ以上のさまざまな技術によって表面改質されてこれらの特徴をこれに与えることができるからである。
【0013】
(a)第1の材料の表面が第2の材料のインクをはじく生来の傾向を持つように第2の材料の溶液を選択することができる。
【0014】
(b)第1の材料中で相分離を行うことにより、第1の材料のバルク組成とは異なる表面組成を形成できる。
【0015】
(c)気相又は液相の表面改質剤にさらされたときに第1の材料の後蒸着表面反応を誘発する。
【0016】
(d)第1の材料の溶液を、表面に分離する傾向のある成分、すなわち界面活性剤、または低い表面エネルギー成分を含む分子またはポリマーと混合する。
【0017】
(e)電磁波への露出、または熱処理により第1の材料にさらすことによって表面反応を誘発する。
【0018】
第1の材料の表面を改質するために実施される後蒸着表面反応の場合、表面反応は選択的である必要がある、すなわち、基板表面の改質を引き起こしてはならない、または少なくとも第1の材料の表面に引き起こすのと同じ程度の改質であってはならない。そして第2の材料を、溶液が少なくとも部分的に第1の材料の表面に接触するように蒸着する。第2の材料の溶液が第1の領域からはじかれ、そして乾燥すると、第1の領域では第2の材料7の蒸着は起こらない。第2の溶液が基板表面で乾燥したときに第1と第2の材料の間に小さな間隙が形成される。
【0019】
以下に、第1の材料の表面と第2の材料の溶液との間のこのような反発相互作用を達成することができる方法のいくつかの方法の例を述べる。
【0020】
もし第1および第2の材料が異なる場合、例えば、もしこれらが異なる極性を持っている場合は、第2の材料の溶液は、裸の基板に対するよりもより大きな接触角度を第1の材料の表面に持つように配合して、第1の材料と接触しているときにはじかれるようにすることができる。例えば、もし第1の材料が極性(非極性)溶媒に可溶な極性(非極性)材料であり、第2の材料が非極性(極性)材料である場合、第2の材料は第1の材料が不溶性であるかまたはわずかしか可溶でない非極性(極性)溶媒中で配合することができる。このような材料の例としては、水中で配合される極性導電性ポリマーPEDOT/PSS、およびキシレンのような非極性溶媒中で配合されるポリジオクチルフルオレン−コ−ビチオフェン(F8T2)のような非極性半導体ポリマーがあげられる。
【0021】
一方、もし第1および第2の材料が同じまたは似た極性であれば、第2の材料の溶液の表面反発は、第1の材料の蒸着中または蒸着後、ただし第2の材料の蒸着前に第1の材料の表面を選択的に改質することよって実現することができる。
【0022】
このような選択的な表面改質は、第1の材料の蒸着後の反応性プラズマ処理、第1の材料の溶液に混合された界面活性剤の使用、第1の材料を相分離ジブロックコポリマーと混合する、または第1の材料の表面に材料を選択的に成長または蒸着させるといった、ただしこれらに限られるわけではないさまざまな広範囲の技術によって達成することができる。
【0023】
本発明の1つの実施形態によると(図2)、プラズマ処理は表面を四フッ化炭素(CF4)のような気体反応性種に表面を露出する工程を伴っている。適切なプラズマ条件下では、ポリマー材料の表面は、同時に基板表面を改質することなく選択的に改質することができる。ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)をドーピングされた導電性ポリマーポリエチレンジオキシチオフェンなどの多くの炭化水素ポリマーの表面、または絶縁性ポリマーポリイミドの表面は、低エネルギーCF4プラズマにさらすことによってガラス基板(例えばコーニング7059)上に選択的にフッ素化することができると同時に、ガラス基板の表面がフッ素化によって影響を受ける度合いをより低くすることができる。第1の材料11の周りの低エネルギーのフッ素化表面層12は、例えば水から蒸着されたPEDOT/PSSの他の溶液といった第2の材料13の液滴を効率的にはじく。
【0024】
その他の技術としては、界面活性剤を第1の材料の溶液に混合することが挙げられる。界面活性剤は、極性/イオン親水性先頭基および非極性疎水性末尾基を含む両親媒性分子である。界面活性剤および溶媒(水など)の溶液を表面に接触させると、単層界面層を形成するために界面活性剤が界面に分離する。表面/界面が非極性媒質と接触すると(すなわち、例えば空気との自由表面と接触する場合)、界面活性剤の非極性基が表面/界面に分離して低エネルギー疎水性表面コーティングを形成する。極性媒体と接触する場合は、界面活性剤の極性基が界面に向かって引きつけられる。
【0025】
界面活性剤の表面活性は、界面活性剤分子の高密度に濃縮された単層が溶液の表面に形成されるときに、最大となり、いわゆる臨界ミセル濃度(CMC)となる。CMC未満では、表面層はあまり密度が高くなく、CMCより高いと溶液の大部分に球状、ロッド状、または層状のミセルが形成される。溶液の表面/界面エネルギーは典型的には、界面活性剤の濃度が高くなるにつれて小さくなり、CMCで最小に達し、CMCより上で一定にとどまる。特定の溶媒/界面活性剤の組み合わせについては、CMCは電荷密度を補償する傾向のある対イオン、電解質などを添加することによって影響されることがある。CMCはまたpHならびに界面活性剤の疎水性基の長さにも左右される。技術的に、界面活性剤は洗剤、発泡樹脂製品、乳剤用の安定剤、分散液の製剤に広範囲に使用されている(M. R. Porter, Handbook of Surfactants, London, Blackie Academic & Professional (1994年))。
【0026】
界面活性剤のさまざまな分類は次のように区別される。すなわち、アニオン(カチオン)界面活性剤はR=CnH2n+1のような非極性の長い炭化水素基、およびカルボキシラト基RCOO−、スルホネート基RSO3−、硫酸基ORSO3−、またはホスホネート基ROPO(OH)O−のような陰性に(陽性に)電気を帯びている極性基を含んでいる。両性界面活性剤は陽性および陰性に電気を帯びている基の両方を含んでいる。長さの短い非極性炭化水素基については、界面活性剤は水中に可溶であるが、長さのより長い鎖の場合、ポリマーはアルコールのような極性のより小さい溶媒にしか可溶でない場合がある。カルボキシレートのようないくつかのアニオン性界面活性剤は低いpHの水溶液中では不安定である。なぜなら水不溶性脂肪酸を形成するからである。
【0027】
ほとんどのカチオン性界面活性剤は、陽性に電気を帯びているNH3+基を含んだ第四アンモニウム系分子を基礎としている。一例としてはDD50が挙げられる。カチオン性界面活性剤はプラスチック表面、シリカまたはガラス表面といった多くの陰性に電気を帯びている表面上で優先的に自己組織化する。
【0028】
非イオン界面活性剤はアルコールまたはエーテル基といった、イオン化しないものの例えば水素結合相互作用により水分子と好都合に相互作用する水溶性基を含んでいる。非イオン性界面活性剤の例としては、アルコールエトキシレートが挙げられる。非イオン性界面活性剤は、水への可溶度が低いためアニオン性界面活性剤よりもCMC濃度が低くなる傾向にある。また異常な可溶度特性を示す。溶解度は温度がいわゆる曇り点を超えるのに伴って低下する。多くの非イオン性界面活性剤は溶液の大部分において溶解度が小さいため強い表面活性を示し酸性溶液中で良好な安定性を示す。(EO)nC12H25OHのようなアルコールエトキシレートはEO鎖が長いと(n>6)水に溶け、EO鎖が短いと(n>4)水に溶けない。
【0029】
界面活性剤の分子が第1の材料の膜の表面に分離すると、第1の材料の周りに表面極性が第1の材料の大部分とは反対の表面封入層を形成する。表面への分離は溶液中でまたは乾燥時にすでに起こっているが、第1の材料の蒸着後のアニール工程などのさらなる処理工程によっても促進することができる。例えば、もし第1の材料が極性材料であれば、表面エネルギーは界面活性剤の分子が表面へと分離することによって低下し、その結果界面活性剤の非極性基により反発性表面キャップ層が形成される。
【0030】
第2の溶液の反発がもっとも効率的となるようにするために、界面活性剤の分子が第2の溶液の溶媒に溶けないことが好ましい。さもなければ第1の材料の周りに界面活性剤キャップ層が溶解し、第2の溶液に加えられる反発力が低下する。溶解は第1および第2の材料の蒸着に異なる溶媒を使用することによって回避することができる。例えば、第1の材料は溶けるが界面活性剤は溶けない第1の溶媒を含んでいる第1の材料の蒸着用の溶媒と、第1の溶媒と混和できる界面活性剤用の第2の共溶媒との混合物を使用できる。この場合、第2の材料の溶液は界面活性剤用の共溶媒は含まず第1の材料用の溶媒しか含まないことになる。
【0031】
水には溶けないが、エタノールまたはイソプロパノールといったアルコールに溶けることのできる界面活性剤の例としては5EO−C12H25またはスルホコハク酸ジオクチルナトリムなどの、EOセグメントの短いアルコールエトキシレートが挙げられる。イソプロパノールなどのアルコールは水と混和可能であり、水に溶けない界面活性剤をPEDOT−PSSの溶液に共蒸着させるのに使用することができる。
【0032】
たとえ界面活性剤が水溶性であっても、界面活性剤コーティングは第2の材料の水性溶液と接触した状態にある第1の材料の表面上で十分に安定することができる。なぜなら第2の溶液が表面エネルギー力によって戻される前に第2の溶液が第1の材料の表面と接触する短時間では、大きな溶解は発生しないからである。硫酸ドデシルナトリウム(SDS)のようなPEDOT/PSS水溶性界面活性剤といった導電性ポリマーの水性溶液については、エッグ−ホスファチジルコリン(エッグ−PC)のような天然界面活性剤、またはAusimont社(www.ausimont.com)からFluorolinkという商品名で市販されている、またはバイエル社からBayowetという商品名で市販されているフッ素化界面活性剤が首尾よく利用されてきた。この場合、水溶性界面活性剤によって改質されたPEDOT/PSS表面の水接触角度は、適切な時間内に安定しないことがしばしば観察された。このような表面はしばしば当初は大きな接触角度を示すが時間がたつと小さくなった。これはおそらくPEDOT/PSS表面上の界面活性剤層が表面上の水滴に溶解することが原因と思われる。この場合、第2の液滴が第1のパターンに隣接する領域に印刷されたときに第1の印刷PEDOT/PSSパターンからの第2の水性PEDOT/PSS液滴の反発の信頼性がより高くなり、良好なチャネル形成が達成され、これにより第2の液滴が基板上に拡散するときに第1の印刷パターンの上に部分的に蒸着されるのではなく第1のパターンの接触ラインにのみ接触するようになった。もし第2の液滴が第1のパターンの表面上に印刷されれば、多くの場合第2の液滴は第1のパターンから流れ出ず、いくらか時間がたつと第1のパターンを湿らし始める。従って、第2の材料の溶液に溶ける界面活性剤を使用する場合、印刷許容誤差が十分に小さく第2の液滴が第1の材料上に印刷されないようにするよう注意を払う必要がある。
【0033】
さらに、界面活性剤が表面と密接に結合していることが好ましい。これは、例えば、先頭基が第1の材料の表面上の電気を帯びた基と反対の電荷を持つ界面活性剤を選択することによって実現することができる。多くの蒸着条件下では、PEDOT/PSSは陰性の表面電荷を持っている。なぜならPSS成分が表面に分離して、表面上のSO3−基の密度を高める傾向があるからである。DD50のようなカチオン性界面活性剤をこのような場合に使用すると、SDSのようなアニオン性界面活性剤を使用する場合よりも界面活性剤がより密接に表面に結合する。
【0034】
溶液中の界面活性剤の濃度は典型的にはほぼCMCの桁である。CMCでは界面活性は最大であり、高密度に濃縮された表面層が形成される。濃度をより高めるためには、界面活性剤は材料の大部分においてミセル構造のような相分離構造を形成するが、これは材料の形態および電子特性に悪影響を与える傾向があるものである。多くの装置用途については、イオン種の拡散によって誘発される可能性のある装置の不安定性を最小限にとどめるため、界面活性剤濃度は最小でも第2の材料を蒸着するにあたり十分な表面反発を与えることが必要とされねばならない。
【0035】
水中で配合されるPEDOT/PSSの場合、アルコール可溶性であるが水溶性ではない界面活性剤を第1の蒸着用にアルコール共溶媒から共蒸着することができると同時に、第2の蒸着用には水中の純粋なPEDOT/PSSを使用することができる。第2の材料の溶媒中の界面活性剤の溶解度は第2の液滴の乾燥の時間スケールで表面層の溶解を回避するのに十分低いことが必要とされる。界面活性剤の殻の溶解は、乾燥が迅速となるように第2の材料を蒸着すること、すなわち相変化インクを利用して高温の溶液からまたは溶融物から蒸着することにより、または加熱した基板上に蒸着することにより、または窒素のような乾燥ガスの流れを与えて第2の材料の乾燥を加速することによっても回避することができる。
【0036】
表面への分離は通常のやりかたでは蒸着および乾燥中に起こり得るか、または蒸着速度制御、温度制御、または後のアニール処理によりこのプロセスを向上させる必要がある場合がある。この分離プロセスを手助けするのに熱プロセスが必要な場合がある。上述のプラズマフッ素化プロセスのように、分離された層をさらに改質することが必要な場合がある。
【0037】
本発明のこの側面による第1の材料の表面の極性を変化させるための別の技術は、極性および非極性ブロックからなるジブロックコポリマーを第1の材料と混合することに基づいている。もし第1の材料が極性の資質を持っていれば、ブロックコポリマーの非極性ブロックは表面に向かって分離し第1の材料の非極性封入を形成しがちになるが、これを第2の極性材料の溶液をはじくのに利用することができる。適切なブロックコポリマーの例としては、ポリエチレン酸化物(PEO)とポリジメチルシロキサン(PDMS)とのブロックコポリマー、またはポリジオクチルフルオレンのような非極性共役ブロックとPEOのような極性非共役ブロックとのブロックコポリマー[P. Leclere, Adv. Mat. 12, 1042 (2000年)]、または導電性および半導体性ブロックからなるブロックコポリマー(C. Schmitt, Macromol. Rapid Communications 22, 624(2001年))が挙げられる。このようなポリマーは水に溶けるか、または水と混和できる極性溶媒に溶けるかのいずれかであり、水中で配合されるPEDOT:PSSのような導電性ポリマーと共蒸着させることができる。親水性表面官能性を持つ半導体性ナノ結晶などの他の表面分離または両親媒性分子もまた使用してよい。
【0038】
表面を選択的に改質する他の技術としては、第1の材料に、第1の材料とともに相分離する傾向のある異なる極性の成分材料を共蒸着することが挙げられる。成分材料は第1の材料よりも表面エネルギーが低くて表面に分離する傾向を持つことが好ましい。望ましい相分離形態は、第1の材料上の表面をカバーする材料とともに垂直相分離することである。類似の形態が望まれる(ただしその理由はさまざまである)ポリマー光起電性装置に垂直相分離を引き起こす技術は研究によって知られている。垂直相分離は第1の材料に比べてより低い第3の材料の溶解度によって誘発することができ、これにより溶液が表面から乾燥するときに第3の材料がまず最初に溶液から出るようになる。あるいは、垂直相分離は第1の材料および基板表面の界面エネルギーを低くするために蒸着前に基板表面を改質することによって誘発できる。良好な表面反発を実現したこのような垂直相分離系の例としては、ポリビニルフェノール(PVP)とともに水/イソプパノール混合物から共蒸着されたPEDOT:PSSの溶液が挙げられる。
【0039】
より疎水性のPVPポリマーの垂直相分離は、溶媒混合物、水よりも沸点の低いイソプロパノールのようなPVP共溶媒からの蒸着によって向上させることができる。表面から内部へ溶液が乾燥すると、イソプロパノールが表面上で乾燥し、PVP富裕表面層の蒸着を促進する。
【0040】
第1の領域の表面を選択的に改質するさらに他の方法は、後蒸着溶液コーティングまたは蒸気露出工程によって第1の材料の周りに選択的な表面コーティング層を塗布することが挙げられる。表面コーティング材料は、第1の材料の表面上の官能基と共有結合を形成することができるが表面上の官能基とは結合を形成できない界面活性剤、ブロックコポリマー界面活性剤、自己組織化単層、または最初に蒸着される表面に選択的に接着するが、基板表面には接着しないか少なくとも同程度には接着しない何らかの他の材料であり得る。
【0041】
このようなプロセスの例としては、第1のPEDOT/PSSパターンを含む基板を水中のDD50の溶液のようなカチオン性界面活性剤を含む溶液に浸漬するプロセスが挙げられる。浸漬前に、PEDOT/PSSを水に溶けなくするためにPEDOT/PSSパターンを150℃の温度でアニールする。浸漬コーティング工程中、界面活性剤はPEDOT表面上に表面コーティングを形成する。学説に縛り付けられたくはないが、表面層はPSSの陰性に電気を帯びたSO3−とカチオン性界面活性剤の陽性先頭基との間の好ましい相互作用によって形成されると考えられる。
【0042】
他の例としては、共役ポリマー半導体基板表面上に印刷されたPEDOT:PSSに流されるPVDF/DMA溶液が挙げられる。共役ポリマー半導体の例としては、ポリ(ジオクチルフルオレン−コ−ビチオフェン)(F8T2)またはポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)が挙げられる。PVDF溶液はスピンコーティング、ブレードコーティング、インクジェット印刷またはその他の材料の蒸着工程中にF8T2表面からPEDOT:PSS領域上にデウェットする。PVDFは、後の蒸着のためのパターン化された表面として機能する。
【0043】
本発明の他の側面によると、第3の材料は第1の材料の表面から選択的に成長する。このような第3の材料の例としては、連鎖重合開始剤によって表面を官能化することによって制御された状態で第1の材料の表面から成長するポリマーブラシが挙げられる。この連鎖重合は原子転移ラジカル重合(ATRP)のような制御されたラジカル重合であり得、開始剤は2−ブロモ−2−メチルプロピオンエステル誘導体であり得る。アニオン性、カチオン性、開環メタセシスなどのその他の「生きた」重合も使用してよい。これらの重合により、適切な開始剤で表面を官能化した後、共役的に結合したポリマーを形成できる。本発明では、選択する表面はPEDOT:PSS層である。表面に開始剤を導入した後、溶媒がある状態またはない状態で引き続きモノマーおよび触媒にさらすことにより厚さが数百ナノメータまでのポリマーブラシが表面に形成されることになる。
【0044】
これらの疎水性素質により化学的および機械的に頑丈な疎水性層が形成されてその後に発生する液滴をはじく。
【0045】
本発明の本実施形態の他の実施形態では、第1の印刷パターンの蒸着後に無電解めっきによって表面コーティング層が成長する。第1の後蒸着工程では、触媒作用のある表面開始剤が第1の材料の表面上に選択的に蒸着される。そしてこの表面開始剤は基板が第3の材料の前駆体を含む浴槽に浸漬されると表面反応に触媒作用を及ぼす(Z. J. Yu, Journal of the Electrochemical Society 149, C10 (2002年))。
【0046】
本発明の他の実施によると、表面コーティング層は電気化学的プロセスによって第1の材料の表面から成長する。この場合、第1の材料は蒸着後に電気接触が行われる電気的に導電性または半導体性の材料でなければならない。そして全体の構造体が表面コーティング材料の前駆体を含む溶液中に配置され、溶液中の対極に対して第1の材料のパターンに電圧が印加されると第1の材料の表面上で酸化または還元反応が発生する。おそらく乾燥または硬化工程を含むさらなる処理の後に第2の蒸着材料を基板に塗布してよく、この場合、通常の反発が、小さく再現性の高い間隙を形成するのが観察される。
【0047】
学説に縛り付けられたくはないが、第2の材料が第1の材料の表面からはじかれるときに形成される第1および第2の材料の間の間隙の幅は基板上の第2の材料の溶液の乾燥モードによって決まると考えられる。もし第2の液滴の溶液の接触線が基板上での乾燥中にピン留めされなければ、第2の溶液の接触線は乾燥時に第1の領域の境界線から離れていき、数マイクロメータの長さの間隙を得ることができる(図1(c))。他の制限的な場合においては接触線が第1の領域の境界に接触するやいなやピン留めされ、第1の材料上の表面層の幅によって間隙の幅が規定され、且つ分子寸法とすることができる(図1(d))。
【0048】
第1および第2の領域の間の間隙を決める第2の溶液の乾燥モードは、基板の表面極性、基板の表面粗さ(粗い表面は接触線をピン留めする傾向がある)、温度、基板の上の気体雰囲気、外部の電場、磁場または重力場の存在、ならびに第2の溶液の溶媒または混合溶媒の表面張力、粘度および沸点などの、ただしこれらに限定されるわけではないさまざまな要因に影響され得る。
【0049】
本発明の別の実施形態によると、第1の材料の溶液の乾燥プロセス中に第1のパターンを取り囲む基板表面を改質して第1のパターンの端部の周りに自己整合する第2の材料の蒸着のための表面エネルギー障壁を形成する方法が提供される。ここでは第1のパターンの周りにこのような自己整合表面エネルギー障壁を形成することのできる方法をいくつか開示する。
【0050】
ぬれている基板の表面上に液滴が拡散すると、いわゆる前駆体膜が液滴の周りに形成される(例えば、Souheng Wu, Polymer Interface and Adhesion, Marcel Dekker Inc., New York (1982年)を参照のこと)。前駆体膜はバルク液滴の典型的な厚さよりもかなり薄く、バルク液滴の肉眼で見える接触線を越えて延びる。場合によっては、前駆体膜は幾分かより厚い二次的膜および薄い一次的膜に再分割される。
【0051】
第1の液滴16を乾燥するとバルク液滴の端部の周りに非常に薄い材料の膜が形成され、これをそれぞれの液滴の周りの明確に規定された領域で表面エネルギーを選択的に改質するのに利用することができる(図3)。乾燥された前駆体膜19の表面はプラズマ処理、第1の材料の溶液と混合された界面活性剤、または上述の方法と同じように他の技術によって選択的に改質することができる。そしてこれを第2の材料の溶液をはじくのに利用することができる。この方法は、前駆体層の幅、したがって第1の材料18と第2の材料20との間に形成される間隙の幅を基板の湿潤状態によって制御できるという点で上述の方法とは異なる。第1の材料の溶液について基板がぬれているほど、そしてその表面エネルギーが低いほど、液滴の周りの前駆体膜の幅が広くなる。この方法は一般的には分子寸法の間隙を形成することはできないが、マイクロメータ寸法の間隙を形成することはできる。多くの用途については、臨界形状がサブマイクロメータ寸法であることは重要ではなく、むしろ間隙が非常に歩留まり高く形成されることが重要である。高い歩留まりは第1および第2の領域の分離がマイクロメータ台であるとより達成されやすい。
【0052】
前駆体膜は非常に薄いが、場合によっては、例えば第1の導電性および第2の導電性領域の間の導電率を小さくするために、第2の材料の印刷後にさらにその厚みを小さくするか除去さえしてしまうことが望ましい。これは第2の材料の蒸着後に完成した構造体をプラズマエッチング工程などの物理的エッチング処理にさらすことによって達成することができる。エッチング時間を調整することにより、この処理は、より厚いバルク領域をあまり薄くすることなく第1および第2の領域の間にある非常に薄い乾燥前駆体膜を除去する(図2(d))。
【0053】
第1の印刷液滴の周りに改変された表面エネルギーの領域を形成する他の可能性は、第1の液滴の乾燥モードを利用することである(図4)。もし第1の液滴の接触線が最初に、すなわち基板に衝突後に基板上にピン留めされなければ、第2の液滴23の直径は、乾燥液滴中の粘度が非常に高くなって接触線がもはや移動できなくなったとき最終的にピン留めされる前に、乾燥中に収縮してしまう。もし基板に結合または接着するための高い親和性を持つ表面改質剤を溶液に混合すれば、表面改質剤は液滴が後退するときに裸の基板表面に接着し、液滴接触線の最初から最後の位置にわたって延びている第1の液滴25の周りの領域における表面エネルギーを改変する。改変された表面エネルギーのこの領域は、その後第2の印刷液滴26をはじいて2つの印刷領域間に幅が第1の液滴の乾燥モードにだけ左右される自己整合間隙を形成するのに利用することができる。このような表面改質剤の例としては、自分自身が基板表面上の官能基に接着することのできる界面活性剤が挙げられる。ガラス又はSiO2の基板の表面のOH−基のような陰性に電気を帯びた表面基を持つ極性基板表面の場合、DD50のようなカチオン性界面活性剤が使用される。NH3+基を含む自己組織化単層によって改質されたガラス基板のような陽性に電気を帯びた表面基を持つ極性基板表面の場合、SDSのようなアニオン性界面活性剤が使用される。例えばC00H基によって停止している親水性表面に結合することができ表面を疎水性にすることのできる表面改質剤の他の例としては、アルキルアミン誘導体CH3(CH2)n−1NH2が挙げられる(S. W. Leeら、J. Am. Chem. Soc. 122, 5395(2000年))。第1の材料の溶液(これは表面改質剤を溶液に溶解しやすくする共溶媒を含む場合もある)に混合されると、アルキルアミン誘導体は溶液の液滴が後退する表面領域に蒸着し、それにより乾燥した材料の最終的な端部の周りに狭い疎水性の表面領域が形成される。
【0054】
当然のことながら、第1の液滴の周りに表面改質剤が自己整合蒸着した後に選択的な化学反応を行わせることが可能である。この反応では、他の表面改質剤が改質された表面領域で選択的に反応することにより表面エネルギーの高低差がさらに強められる。
【0055】
第1の領域の周りに自己整合表面エネルギーパターンを形成するための関連する方法として、第1の材料の蒸着後に基板を熱アニール工程にかけることが挙げられる。もし基板の熱膨張係数が第1の材料の熱膨張係数よりも大きければ、第1の液滴は基板上で収縮するであろう。もし第1の材料の溶液が、第1の材料と基板との界面に向かって選択的に分離し、界面層25を形成している界面エネルギーを改変する薬剤を含んでいれば、収縮する第1の領域は、基板と接触したことによって改変された表面エネルギーを持つ基板の露出領域を後に残すことになる。このような薬剤の例としては、非極性基板と接触している第1の材料の極性溶液中の非極性の分子またはポリマーが挙げられる。
【0056】
他の方法は、後退する第1の溶液による表面トポグラフィーによる改質に基づいている。もし、例えば、その最初の接触線と接触線の最終位置との間で溶媒が、例えば基板の膨張によってまたは基板の表面層の成分を選択的に溶解することによって表面粗さを大きくするように基板と相互作用すると、その結果得られる第1の液滴の周りの粗さの大きくなった領域を使って、第2の液滴の接触線をこれが粗さの大きくなった領域に広がろうとするときにピン留めすることができる。接触線のピン留めは、表面粗さによって強められることが知られている。この効果は第2の材料の溶液が第1の材料の領域と接触するのを防止するのに利用することができる。
【0057】
第1の液滴の周りに改変された表面エネルギーの自己整合領域を形成するためのさらに他の方法としては、第1の液滴の溶液を第1の材料の領域外に拡散することのできる薬剤に混合して、第1の領域の周りの基板上の小さな領域の表面エネルギーを改変することが挙げられる。移動性薬剤の表面拡散は高温に基板をアニールすることによって向上させることができる。この場合の表面改質領域の幅は、表面拡散が行われる時間および温度によって制御される。
【0058】
第1の領域の周りにこのような自己整合表面エネルギーパターンを形成するさらに他の方法を図5に開示する。この場合、基板27は、第1の液滴の蒸着に使用される溶媒に可溶な極性材料28の薄膜でコーティングされた疎水性表面を持つ。第1の液滴が基板上でその最初の直径から後退すると、その端部の周りで局所的に極性膜を溶解し、第1の材料の端部で自己整合された領域31において埋め込まれた疎水性基板の表面を露出させる。もし第2の材料32の溶液が第1の材料の領域に隣接する表面領域に蒸着されると、第2の材料の溶液は第1の材料の端部の周りの疎水性領域に接触したときはじかれる。第1の材料の溶媒中の極性材料28の溶解度は、液滴の最初の拡散を促進し、一旦層28が第1の材料の溶液に溶解すると液滴が引き続いて縮小するのに十分低いことが要求される。
【0059】
乾燥モードおよび表面エネルギー障壁幅は、基板表面の表面エネルギー、すなわち基板上の液体溶液の接触角度、表面および界面張力、第1の液滴の乾燥時間に影響を与える基板の温度、基板の上方の気体雰囲気、電場、磁場、又は重力場の存在などによって制御することができる。
【0060】
第1の導電性材料42の表面状態を改質するさらに他の方法として、表面層を脱ドーピングすること、または表面層から電荷担体を空乏化させることが挙げられる(図7)。導電性ポリマーの場合、表面層を脱ドーピングすることで表面エネルギーおよび溶解度特性が改変された非導電性表面層43が得られる。脱ドーピングは、例えば、電気化学的脱ドーピングによって実行できる。その後第2の蒸着材料44を、空乏層または脱ドーピング層の厚さによって間隙が形成される第1の層に隣接してまたはその上に配置する。
【0061】
本発明の1つの実施形態では、第1の材料と第2の材料は、導電性ポリマーをはじめとするがそれに限られない異なる材料であり、例えば溶液処理技術を介して基板上に蒸着される。
【0062】
本発明の他の実施形態では、局限層と考察の対象となっている材料とは、導電性ポリマー材料をはじめとするがそれに限られない類似する材料か、または実際に同じ材料である。
【0063】
第1の液滴の表面への絶縁体分離など、場合によっては第2の材料の蒸着後に表面コーティング層を取り除く必要がある。導電性チャネルが印刷自己整合ソースおよびドレイン電極と接触して蒸着されるいくつかのTFT装置アーキテクチャにおいては、電荷担体注入は絶縁表面コーティング層の存在により妨害される場合がある。洗浄工程、物理的エッチング工程、または他の制御された材料除去技術によって選択的な除去を行うことができる。底面ゲートTFT構造(図8bからd)、またはチャネル材料の下にチャネル材料がある図12のような構造では、これは必要ではない場合がある。
【0064】
すべての場合において、2つの印刷パターンの間の自己整合間隙の形成は任意の形状の印刷パターンに使用することができる。すなわち2つの単一の印刷液滴間に間隙を形成するか、または例えば接触面積の大きいくし型アレー形状の直線形状の第1のパターンとの間に間隙を形成するのに使用することができる。
【0065】
本発明の1つの実施形態において、第1の材料が表面上に蒸着され、その後表面改質される。そして第2の材料が蒸着されて第1の材料と第2の材料との間で選択的な反発が起こるようにする。そして選択的な溶媒溶解またはいくつかの他の技術によって第1の層が除去されて、露出表面が改質されてさらに(隣接する、明確に形成された第2の材料の層とともに)処理される。
【0066】
本発明の1つの実施形態においては、電場、重力の影響といった外部からの誘導的または局限的効果を用いて、または実際に操作プローブを使って、まだ液体状の蒸着材料を有利な形状へと物理的に移動させまたは保持する。
【0067】
蒸着材料は同時に隣接して表面上に配置でき、ここで溶媒が相違する性質により反発が起こる。基本的な前提は、通常の状況では互いにはじきあう2つの混和できない溶媒(例えば極性と非極性)を使うことである。蒸着材料は化学的組成が非類似であるかまたは類似していると考えられる。本技術のさらなる変形としては、表面改質添加剤または基を両方の蒸着材料に使用することが挙げられる。これらの材料は本来的には水性または溶媒ベースであり、類似のまたは非類似の材料であり得る。これらの界面活性剤または基は、同時にまたは別々に(ただし乾燥せずに)そして隣接して蒸着されると立体的な障害物または電気的な反発のいずれかにより相互作用しはじきあう(図6)。
【0068】
ここで開示したようなプロセスは広範囲の電子装置の制御された製造に利用することができる。
【0069】
もし第1および第2の材料が導電性材料であれば、これらはTFTのチャネルを形成している2つの領域間の自己整合間隙を備える薄膜トランジスタのソースおよびドレイン電極として使用できる。基板上に印刷される(図8(a))かまたは半導体層(図8(b))の上に直接印刷されるソースおよびドレイン電極を備えるトップゲートTFT、ならびにソースおよびドレイン電極が半導体層のどちらかの側にあってもよい(図8(c)および8(d))底面ゲートTFTといったいくつかのTFT構成が可能である。構成(b)および(d)はソース−ドレイン電極から直接TFT積層チャネルへと効率的な電荷注入ができるため有利である点に留意すべきである。
【0070】
上述の技術を使って、両面に局限された幅の狭い形状を製造することも可能である(図9)。最初の工程では、幅の狭い、明確に形成された間隙が第1の領域53と第2の領域55との間に形成される。上述のようにCF4プラズマ処理のような技術を使って第1および第2の材料の表面が低エネルギー状態に加工される。引き続いて第3の材料56を間隙領域内に印刷することができ、第1および第2の領域の反発表面相互作用の働きによって間隙領域に局限できる。もし第3の材料がPEDOT/PSSのような導電性材料であれば、局限された導電線の幅に比べて大幅に幅が狭められた狭い導電線57を印刷することができる。
【0071】
このような構造の例としては、ガラス、またはポリビニルアルコールの最上層を持つ基板のような極性基板上の表面改質PVPまたはポリイミドといった絶縁性非極性ポリマーの第1および第2の領域が挙げられる。このような構造はPEDOT:PSSの水性且つ導電性のポリマー溶液の液滴を局限することができ、幅の狭い導電線を形成することができる。このような線は、例えば電子回路の相互接続、またはソース/ドレイン電極とゲート電極との間のオーバラップ容量の小さいTFT装置のゲート電極として使用することができる。たとえ第3の材料が間隙領域に完全に局限されなくとも、二重に局限された線の真ん中から離れている絶縁体の厚みが大きいことがさらに下地電極とのオーバラップ容量を小さくするのに役立っている(図9)。
【0072】
本発明者によるプロセスの他の有用な用途としては、ヴィアホール相互接続を高解像度に形成することが挙げられる。英国特許第9930217.6号には、溶媒の局所的なインクジェット蒸着による層構造の局所的な溶解に基づくヴィアホール形成方法が記載されている。溶媒液滴直径よりも寸法の小さいヴィアホールを形成するためには基板表面上で溶媒液滴を局限する必要がある。これは次のようにして達成することができる。上述のセクションで述べたのと類似の方法で、電気的接続が確立される埋め込み電極58を含んだ基板の表面上に自己整合局限構造60、62を形成することができる。埋め込み電極は誘電体層59によって覆われており、誘電体層59を介してヴィアホール接続を開ける必要がある。このような構造の例としては、PEDOT:PSSの下地電極を持つPVAの層の上の、表面改質PVPまたはポリイミドの非極性局限構造が挙げられる。もし誘電体層にとって良好な溶媒63がこのような構造に蒸着されると、溶媒は非極性ポリマーがイソプロパノールに溶解しない限り2つの非極性領域間に形成された間隙内の誘電体層のみを溶解することができる。その結果、2つの非極性自己整合局限領域の間の間隙の大きさによって規定される寸法をもってヴィアホールが形成される(図10)。
【0073】
上述のプロセスはアクティブ半導体層自体またはゲート誘電体層といった、電極以外の自己整合電子装置の他の構成素子を形成するのにも有用である。
【0074】
図11は、底面ゲート66、ゲート誘電体67、自己整合ソース−ドレイン電極68および70を備える、本発明による自己整合トランジスタ装置の概略断面図を示す。この装置では、自己整合印刷に使用される表面改質層69は、装置のアクティブ半導体層をも形成する半導体材料である。この場合、第2の液滴の乾燥モードにより第1および第2の電極の間が密着するようになることが重要である。半導体表面改質層69は、制御されたラジカル重合のような例えばポリマーブラシを表面から成長させることのできる技術によって成長させることができる。
【0075】
図12は半導体層72、自己整合ソース−ドレイン電極73および75、およびゲート電極77を備えた、本発明による自己整合トランジスタ装置の概略断面を示している。この装置では、自己整合印刷に使用される表面改質層74および76は装置のゲート誘電体層をも形成している誘電材料である。この場合もまた、第2の液滴の乾燥モードにより第1および第2の電極の間が密着することが重要である。半導体表面改質層74および76は、制御されたラジカル重合、PMMAの表面開始重合といった例えばポリマーブラシを表面から成長させることのできる技術によって成長させることができる。
【0076】
ここで本発明を以下の実施例により説明する。
[実施例1]
【0077】
CF4表面処理
RFプラズマに手助けされた、自己整合ソース−ドレインTFTを形成するための気相処理の例を図2に示す。本実施例では、CF4プラズマは最初に蒸着されるPEDOT:PSS層をそのガラス基板に対して選択的に改質する。この場合の基板はガラス基板、またはガラス基板上のF8T2のような共役ポリマー半導体薄膜である。表面改質は主に後の材料の蒸着をはじくという目的にかなう。しかしながら、表面改質はまた最初に蒸着される材料の表面付近または端部領域を電気的にまたは別のやり方で不活性化するかまたは膜の表面付近または端部領域の溶解度を変更するという目的にもかなう。このことは第1の材料と後に蒸着される材料との間の間隙を電気的に隔離するかまたは拡張するという目的にかなう。
【0078】
次の工程は第1の印刷上にまたはこれに隣接して第2の材料を印刷するかさもなければ蒸着する工程を含んでいる。第1の表面の反発する性質により、第2に印刷される材料は第1の液滴によって形成される端部にピン留めされる。フッ素化PEDOT:PSSの場合、これにより2つのPEDOT:PSS領域の間には非常に小さな間隙が形成されることになる。
【0079】
溶媒洗浄および酸素プラズマエッチングを使って清浄な基板、本実施例ではガラス、を作成する。基板をインクジェットヘッドの下に取り付け、液体導電性ポリマーであるPEDOT/PSS(BAYTRON P、バイエル社)を必要に応じてインクヘッドのしずく(DOD)に導入し、その後のしずくが接触しあって連続的な線パターンを形成するように蒸着する。他の溶液印刷技術としては、例えば連続インクジェット、フレキソおよびグラビアリソグラフィー、スクリーン印刷およびパッドスタンピングが考えられる。この段階で、しずくは局限されておらず、基板によって決められる拡がりをもって、通常の蒸気状態で乾燥する。さらに、乾燥プロセスは熱風乾燥、超音波乾燥またはその他の強制的な条件を使うことによって手助けしてよいが、もっぱら必要とされるわけではない。そして印刷された材料はCF4プラズマエッチングを使い50から250Wの電力で30秒から10分で表面改質される。CF4プラズマにより基板上のPEDOT/PSSパターンの表面が疎水性とされるが、ガラス基板の表面は実質的に親水性のままである。そして基板を印刷ヘッドの下に再度取り付け、2番目のPEDOT/PSSパターンを第1の、表面改質されたPEDOT/PSSの近くに蒸着する。噴射される液滴はBUTに向かって拡散するが、第1のPEDOT/PSSパターンの疎水性表面によってはじかれる。PEDOT/PSSの第2のパターンの液滴が第1のPEDOT/PSSパターンの上にまたは部分的に上に蒸着すると、第2のパターンの液滴がはじかれ、第1のパターンの表面から流れ出て、第2のPEDOT/PSSパターンの接触線が第1のPEDOT/PSSパターンの接触線の近くに位置するように乾燥することが観察された。第2の液滴は、第1のPEDOT/PSSパターンの端部に一致する。
【0080】
このようにして、第1および第2の印刷PEDOTパターン間に非常に小さな間隙を実現することができる。間隙の幅は、基板上のPEDOT液滴が第1のPEDOTパターンから流れ出た後におけるPEDOT液滴の乾燥モードにより決まる。親水性ガラス基板上では、100nm未満まで小さくなった間隙が原子間力顕微鏡によって測定された。第1および第2のPEDOTパターン間の導電率を測定することにより、2つのパターン間の間隙がそれにもかかわらず良好に形成されており、2つのパターン間には電気的短絡がないことがわかる。
[実施例2]
【0081】
界面活性剤改質インク
第1のPEDOT電極パターンをインクジェット蒸着するために、異なる界面活性剤分子をPEDOT:PSSインクに混合した。これは水とバイエル社から市販されているPEDOT Baytron PHとの1:1の割合の混合物からなり界面活性剤の濃度はさまざまにした。カチオン性(DD50)、アニオン性(SDS、フルオロリンク)、および非イオン性界面活性剤(EOmCnH2nOHの形状のアルキルエトキシレート化界面活性剤を使用し、濃度を1mg界面活性剤/mlPEDOT/PSS原液と、<0.1mg界面活性剤/mlPEDOT/PSS原液との間で変えた。DD50およびエトキシレート化界面活性剤の場合、インクは水中のPEDOT/PSS原液とイソプロパノール中の界面活性剤の溶液との混合物からなっていた。なぜならDD50とアルキル鎖がn=5よりも長いエトキシレート化界面活性剤は両方とも水に溶けないからである。
【0082】
界面活性剤改質インクを表面極性の異なる広範囲のさまざまな基板にインクジェット蒸着した。表面上に多数の陰性に電気を帯びたOH−官能基を生成するO2プラズマ処理(250Wで10分間)により湿潤された7059ガラス基板を使用した。親水性ガラス基板もまた4次化アミン自己組織化単層によって改質して陽性NMe3+表面基で停止する極性表面を生成した(P. K. Ho, Adv. Mat. 10, 770(1998年))。ガラス基板はまたPVPおよびPMMAポリマーの層でもコーティングした。ポリマー表面は短時間の、低電力O2プラズマエッチング工程(100W、30秒間)によって親水性湿潤状態で準備された。PMMAの場合この工程は必要である。なぜなら表面はあまりにも疎水性でありすぎるためPEDOTの連続的なパターンをインクジェット印刷できないからである。すべての場合において、界面活性剤改質PEDOT液滴は、界面活性剤によって誘発される表面エネルギーの低下により乾燥後基板上で純粋なPEDOT液滴よりも大きな半径を有する。これは、乾燥プロセス中に界面活性剤が表面に分離している証拠である。
【0083】
第1の電極パターンを蒸着後、ガラス基板を100から150℃の温度でアニールして残留水をPEDOTから除去し、界面活性剤の分離をさらに促進する。2回目の実験では、最初のPEDOT電極を蒸着する前に基板をアニールしなかった。
【0084】
第2のPEDOT電極については、非改質PEDOT/PSS原液ならびに第1のPEDOTパターンの蒸着に使ったインクを含む同じ界面活性剤の両方を使った。第1の液滴が第2の液滴のインクをはじく能力については、差異は観察されなかった。
【0085】
同一の第2および第1の電極のためのインクの場合、第2の電極パターンは、場合によっては第1の電極がまだ部分的に液体状であっても第1のパターンの直後に印刷された。この場合でさえも、2つの液滴間の反発が確認された。
【0086】
水溶性SDSのようないくつかの界面活性剤を使うと、短絡のないソース−ドレイン電極の歩留まりは第2の液滴のインクが第1の液滴上に直接は印刷されず、基板上の第2の液滴の拡散運動中に第1の電極の端部にのみ接触する場合に、より高くなった。これは、第2の液滴の水性インクが界面活性剤の殻に接触するときに界面活性剤コーティングが部分的に溶解するためと思われる。印刷距離sを、第2の液滴が基板表面に衝突するときの第1の液滴の端部と第2の液滴の中心との間の最小差として定義することができる。もし基板に衝突する前に空気中で第2の液滴が直径d1であり、基板の均一領域における拡散運動中に最大直径d2であれば、印刷距離sはd1/2+Δ<s<d2/2の範囲でなければならない。Δは安全距離であり、Δが大きくなるほど第2の液滴の接触線が第1の液滴の境界にぶつかる運動エネルギーが小さくなる。Δ≧20μmであれば、たとえ第2の液滴のインクが第1のPEDOTパターンから流れ出なかった場合でさえも信頼性のある印刷が観察された。図14はガラス基板(a)及び(b)上およびPMMA基板(c)及び(d)上の自己整合による第1および第2の液滴の光学顕微鏡写真を示している。第1の液滴は丸いが、第2の液滴は変形しており第1の液滴の丸い形状に一致している。
【0087】
表面の極性はソースとドレインとの間に短絡のある装置の数という点で自己整合印刷の信頼性に大きな影響を及ぼすことが観察された。表面に高密度の陰性に電気を帯びたヒドロキシル基を持つプラズマ処理されたガラス表面においては、SDSのようなアニオン性界面活性剤はDD50のようなカチオン性界面活性剤よりも大幅に低い信頼性を示した。一方、SAM処理された、NH3+停止ガラス表面においては、SDSはDD50よりも著しく良好な信頼性を示した(図15)。このことは界面活性剤の観点からして、反発力を及ぼす最初の液滴の端部周りの幅が有限の表面領域が、第2の液滴がこの周辺領域へと広がろうとするときに改質されるものと解釈される。この表面改質は、第1の液滴が、乾燥中に、接触線が固定される前に、または第1の液滴に占領された領域から界面活性剤が拡散することにより、基板上でいくらか後退するときに起こる可能性がある。界面活性剤はまた液滴の拡散中に表面に付着して接触線をわずかに−>「孤独恐怖」だけ後退させる可能性がある。第1の液滴の周りの領域において基板の表面を改質する能力は、先頭基が基板表面の官能基とは反対の電荷を持っている場合に強化されるように思われる。
【0088】
界面活性剤の基板表面を改質する能力を赤外線分光学によって直接検証した(図15b)。陰性に電気を帯びた、O2プラズマ処理された基板をDD50の溶液に浸漬し、赤外線分光を浸漬後に取ると、DD50分子が基板表面に結合するという証拠が得られた。DD50の特徴的な形跡は、基板を水で洗浄した後でさえも観察された。陽性に電気を帯びた表面では、DD50蒸着の証拠は観察されなかった。同じような結果はSDSについても得られた。
【0089】
液滴周辺領域における基板の表面改質のさらなる証拠を、最初のPEDOT電極の溶液中の界面活性剤濃度を変化させることによって得た。PEDOT溶液中のDD50濃度が低いほど、第1の電極と第2の電極との間に形成される間隙が小さくなることがわかった。図16はDD50の濃度が異なる自己整合ソースドレイン電極の原子間力顕微鏡写真である。この実験において、第1および第2の電極のPEDOTインクは同じであった。印刷の安全距離はΔ=20μmであった。1mg/mlの濃度では、2つの電極間の自己整合間隙は10μmの桁であり、ある濃度では間隙は約2μmの桁であり、0.1mg/ml未満の濃度では間隙は200から400nmであった。このことは、間隙の大きさは界面活性剤の濃度で制御できることを示している。このことはまた、界面活性剤は液滴のすぐ隣の表面領域を改質する作用があるというさらなる証拠にもなる。
【0090】
図17は印刷された底面ゲートPEDOT電極、ブチルアセテートから蒸着された厚さ1μmのPMMA誘電体層、濃度が0.1mg/mlより低いDD50を含む溶液から蒸着された自己整合PEDOTソース−ドレイン電極、および一番上にm−キシレンからスピンコーティングされたP3HT半導体層を備える2つのTFTの出力特性および伝達特性を示している。自己整合印刷前にPMMA表面を100Wに30秒間さらした。この装置のチャネル長さは200から400nmの桁であり、チャネル幅は50μmの桁であった。きれいなp型電界効果動作が確認され、飽和伝達特性から抽出された電界効果移動度は10−3cm2/Vsの桁である。
[実施例3]
【0091】
界面活性剤なしPEDOT/PSSインク
実施例2で説明したのと類似の実験を、まったく界面活性剤を含まないPEDOT/PSSインクを使っても実施した。この場合、O2プラズマ処理されたガラス基板上ではその処理は効果がないこと、すなわち第2の液滴が基板上に拡散中に第1の液滴に接触するときはいつでも第1の液滴を濡らして電気的短絡が発生したことが観察された。
【0092】
しかしながら100Wで30秒間O2プラズマ処理されたPMMA表面では、もし印刷距離を非常に注意深く制御して、すなわちΔ=20μmが十分に大きく、拡散する第2の液滴が第1の液滴に接触するときに接触線速度が遅くなるようにすると、電気的短絡を生じることなく200nmの桁の小さな間隙が形成されることが観察された。このことから、精度の良い印刷状態では、PEDOT/PSS自体の表面、すなわちさらなる界面活性剤がない状態では、第1および第2のPEDOT液滴間で十分に強い反発力が得られることがわかる。このことはPEDOTが相分離する傾向があることに関連すると思われる。乾燥させると、表面はより疎水性のPSSH成分で富裕化される。反発力について2つ目の考えられる理由は、第1の液滴の端部の周りに改質された表面領域が存在することである。この改質表面領域は、プロトン化PSSHなどの何らかの疎水性成分をPEDOT溶液から基板表面に蒸着すると同時に第1の液滴が溶液の乾燥中に後退することによって形成され得たものであるか、または前駆体湿潤層の乾燥中に疎水性材料を蒸着することによって形成され得たものである。PMMA基板上では、水中のPEDOTの接触角度はガラス基板上におけるよりも著しく大きい点に留意すべきである。PEDOT/PSSが疎水性表面を示す傾向は、第2のPEDOTパターンを蒸着する前に第1のPEDOTパターンをアニール処理することによって強化される。
[実施例4]
【0093】
垂直相分離による自己整合印刷
装置を、イソプロパノール中のPVP溶液と混合された水中のPEDOT/PSSの配合物(PEDOT1:1中に6.3mg/mlのPVP。80パーセントのH2Oおよび20パーセントのIPAを含む)から第1の電極をインクジェット印刷することによっても製造した。PVPを選んだのは、表面の極性がPEDOT/PSSよりも小さく、PVPは水を混和するアルコール溶媒に溶解することができる、すなわちPVPはPEDOT/PSSと共蒸着できるからである。ガラス基板上で溶液を乾燥中、PVP成分が表面に分離し第1の液滴の周りに疎水性表面コーティングを形成する。PEDOT/PSSとPVPとの間の垂直相分離は第1の印刷電極の後蒸着アニールによって強化できることが観察された。60℃の温度で(6時間にわたって)のイソプロパノール溶媒の雰囲気下でアニールを行うと特に有効であることがわかった。アニール工程中、溶媒がポリマーの移動度を強化するものと思われる。
【0094】
水中のPEDOT/PSSの第2の液滴(PVPを含まない)を第1の液滴と接触して印刷したとき、2つの液滴間で非常に効率的な反発が観察された。図18(a)は2つの電気プローブによって測定された導電率の測定を示しており、電気プローブは両方とも第1のPEDOT/PVPに配置され、両方とも第2のPEDOT液滴に配置され、一方の電極が第1のPEDOT/PVP液滴に配置され他方の電極が第2のPEDOT液滴に配置されており、第1の液滴と第2の液滴との間には電気的短絡が存在しないことを示している。第1のPEDOT/PVPの導電率は第2の純粋なPEDOT液滴に対して2分の1から3分の1に低減される。図18(b)は、第1の液滴と第2の液滴の間の漏れ電流を、蒸着後に第1の液滴を溶媒アニールすることによって小さくできることを示している。
【0095】
図19は第1のPEDOT/PVP電極を備えているが、ほかの点では実施例3で説明したのと同じ方法で製造されたトップゲートF8T2装置の出力および伝達特性を示している。第1のPEDOT/PVP電極を電荷注入ソース電極として使用すると、ソース電極として第2の純粋なPEDOT第2電極を備えた装置の動作と比較して電流は2分の1から3分の1に低減される。このことは、第1の電極表面上の薄い絶縁PVP膜が装置の接触抵抗に貢献していることを表している。この問題はソースとして第2の電極を使用することで解決することができる、なぜならソース電極は逆バイアス電極であるため接触抵抗に対してより敏感な傾向があるからである。さらに、接触抵抗は第1の液滴の形成時にPVP濃度を最小にすることにより、または第2の電極を蒸着した後にイソプロパノールまたは他のアルコールの浴槽に基板を浸漬するなど、選択的にPVP表面層を溶解することによって小さくすることができる。
[実施例5]
【0096】
エッチングによる短絡の除去
いくつかの界面活性剤および印刷状態について上で述べたように、互いに接触し合ういくつかの第1の液滴と第2の液滴との間に電気的短絡が観察された。しかしながらこのような場合でさえも、2つの液滴間の接触領域の厚さは2つの液滴の中心の厚さよりも大幅に小さいことが観察された。2つの液滴は、厚さの輪郭が2つの液滴間の接触線に向かって連続的に減少する厚さを有することを示している(図21のAFM顕微鏡図を参照のこと)。
【0097】
本発明者は、サンプルのエッチングによって電気的短絡を除去できることを見出した。エッチング処理により表面から所定の厚さのPEDOT層を除去する(図20(a)の概略図を参照)。液滴の中心ではこれは導電率に大きな影響を及ぼすことはないが、接触線ではエッチング処理ですべての導電性材料が完全に除去され電気的短絡が取り除かれる。蒸着後に短絡した液滴を80Wの酸素プラズマにさまざまな時間の間露出することにより、30秒後に接合部を流れる電流が観察できなくなるまでエッチング時間の関数として2つのPEDOT液滴間で測定される導電率が連続的に小さくなること観察された(図20(b)および(c))。図21は蒸着後に一対の最初に短絡した液滴の原子間力顕微鏡図((a)および(c))、および80WのO2プラズマ処理を30分行った後の原子間力顕微鏡図を示している((b)および(d))。酸素プラズマ処理後、表面粗さが高められた。第1の液滴と第2の液滴の間の間隙は非常に小さいため原子間力顕微鏡では検出できないが、図20の電気測定で間隙が存在することがはっきりと示されている。
【0098】
図20(e)および(f)は、最初に短絡する一対の自己整合PEDOTソース−ドレイン電極をガラス基板上に持つトップゲート電界効果トランジスタの出力および伝達特性を示している。この装置は、短絡した電極をO2プラズマエッチング処理にかけた後製造した。F8T2の半導体ポリマーおよびPVPゲート誘電体をPEDOTソース−ドレイン電極の上にm−キシレンおよびブチルアセテートの溶液からそれぞれスピンコートした。この装置は、出力特性における電流飽和の欠如といったはっきりとした短チャネル特性、およびソース−ドレイン電圧の上昇にともなうオン−オフ電流比の低下を示す。
[実施例6]
【0099】
PEDOTの後蒸着界面活性剤特性
第1および第2のPEDOT液滴間の効率的な反発は、第2のPEDOT液滴の蒸着前に第1のPEDOT電極表面を界面活性剤にさらすことによっても達成された。PEDOT/PSS(1部分Baytron PH:1部分H2O)の最初のパターンをO2プラズマ処理されたガラス基板上に蒸着する。そして基板を150℃で20分間アニールする。その後基板を5から10分間、水中のカチオン性界面活性剤ジデシルジメチルアンモニウム臭化物の溶液(濃度1−1.5mg/ml)、またはフッ素化カチオン性界面活性剤[3[[(ヘプタデカフルオロオクチル)スルホニル]]アミノ]プロピル]トリメチルアンモニウムヨードに漬ける。その後、基板をイソプロパノールまたは水で洗浄する。
【0100】
そして、第2のPEDOT電極をインクジェット印刷によって塗布する。非常に効率的な反発が観察される。たとえ第2の液滴が第1のパターンの上に印刷された場合であっても、第2の液滴は第1の液滴の表面から流れ出て第1の液滴に隣接する領域で乾燥し、2つの液滴間には10μm未満の小さな間隙が形成された状態となる。
【0101】
このような方法によりDD50で処理されたPEDOT/PSS表面の水接触角度は、改質されていないPEDOT/PSSの場合に観察される10°未満の水接触角度と比較して105°±5°であることが観察された。界面活性剤改質PEDOT/PSSの場合、水接触角度は少なくとも数分間にわたって安定しているが、改質されていないPEDOT/PSSでは接触角度は時間とともに小さくなる、これはPEDOT膜が水滴中に溶解していることを表している。このような溶解は界面活性剤改質PEDOT/PSS表面の場合には起こらないと思われる。
【0102】
PEDOT/PSS表面上の表面基に共有結合する自己組織化単層を使って第1のPEDOTパターンの別の後蒸着を達成することもできる。フルオロアルキルモノ−またはトリクロロシラン自己組織化単層は、PEDOT表面と選択的に反応するが、陽性に電気を帯びたNH3+基で停止する改質ガラス基板表面またはPMMA基板表面は改質しない。
[実施例6]
【0103】
ポリマーブラシ成長による表面改質
ポリマーブラシは鎖重合開始剤によって表面を官能化することによって制御された方法で表面から成長させることができる。この鎖重合は原子転移ラジカル重合(ATRP)などの制御されたラジカル重合であり得、開始剤は2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸エステル誘導体であり得る。
【0104】
この開始剤をPEDOTの表面に固定するには、PEDOTの表面をまず最初にO2プラズマで酸化して表面−OH基を導入する。そして活性化された表面を上述の開始剤を含むトリクロロシラン誘導体と反応させる。あるいは、開始剤官能化界面活性剤状分子をPEDOT溶液に混合し、そして得られた溶液が、表面上でPEDOT膜を乾燥すると開始剤を表面に露出した状態で表面単層を形成する。PEDOT表面に開始剤を導入する第3の方法は、開始剤の官能性をもつPEDOT誘導体を合成することである。
【0105】
モノマー(ATRPの場合、これは何らかのアクリレートまたはメタクリレートであり得る)、触媒(Cu(I)ClまたはCu(I)Br)、およびリガンド(PMDETA、ビピリジン、または他の公知でCu塩を可溶化するのに適したリガンド)を含んだ溶液に開始剤官能化PEDOT膜をさらす。必要に応じて溶媒を使用してよい(水やメタノールのような極性溶媒は反応を大幅に早め、エチルアセテートやトルエンは別の2つの公知の溶媒である)。より精度良く反応を制御するために、Cu(II)塩を添加してよい。
【0106】
表面を設定された時間重合媒体中に放置し、その後過度なモノマーおよび触媒を表面から洗浄するとポリマーブラシが後に残る。PEDOT/PSS第1電極の表面に成長したPMMAのポリマーブラシの場合、PMMAは疎水性表面コーティングを形成する。このコーティングは第2のPEDOT/PSS電極パターン用の液滴を効率的にはじく。
【0107】
界面活性剤分子を選択して本発明による電子装置の自己整合製造を行うための1つの一般的な基準は、界面活性剤の極性基から由来するイオン不純物による装置の汚染を最小限にとどめるべきであるということである。これは低い濃度の界面活性剤を使うか、非イオン性界面活性剤を使うことによって達成できる。さらに、ポリマー性界面活性剤のような分子量のより大きな界面活性剤を使うことにより、装置の動作中または長期の動作中に電場の作用のもとでの界面活性剤の拡散を小さくすることができる。
【0108】
第2の液滴をはじくのに特に有効な表面改質剤の種類は、アニオン性またはカチオン性フッ素化界面活性剤のようなフッ素化表面改質剤である。第1のPEDOT液滴のフッ素化表面においては100°に近い高い水接触角度を達成することができる。
【0109】
本願で説明するプロセスおよび装置は溶液処理されるポリマーを使って製造される装置に限定されるわけではない。TFTのいくつかの導電性電極、および/または回路もしくは表示装置(以下を参照のこと)中の相互接続は、例えばコロイド懸濁液の印刷または前パターンニングされた基板上への電気めっきにより蒸着できる無機導電体から形成できる。すべての層が溶液から蒸着されるわけではない装置においては、装置の1つ以上のPEDOT/PSS部分を真空蒸着導電体などの不溶導電性材料に置き換えてよい。
【0110】
半導体層については、10−3cm2/Vsを超え、好ましくは10−2cm2/Vsを超える適切な電界効果移動度を示すどのような溶液処理可能な共役ポリマー性またはオリゴマー性材料を使ってもよい。適切な材料は、例えばH. E. Katz, J. Mater. Chem. 7,369(1997年)、またはZ. Bao. Advanced Materials 12, 227(2000年)で検討されている。その他の可能性のあるものとしては、可溶性側鎖を持つ小規模共役分子(J.G. laquindanumら、J. Am. Chem. Soc. 120, 664(1998年))、溶液から自己組織化した半導体有機−無機ハイブリッド材料(C. R. Kaganら、Science 286, 946(1999年))、またはCdSeナノ粒子のような溶液蒸着無機半導体(B. A. Ridleyら、Science 286, 746(1999年))が挙げられる。
【0111】
電極はインクジェット印刷以外の技術によって粗く印刷できる。適切な技術としては、ソフトリソグラフィー印刷(J. A. Rogersら、Appl. Phys. Lett. 75, 1010(1999年)、およびS. Brittainら、physics World 1998年5月、31頁)、スクリーン印刷(Z. Baoら、Chem. Mat. 9, 12999(1997年))、およびフォトリソグラフィーパターンニング(WO99/10939を参照のこと)、オフセット印刷、フレキソグラフィー印刷または他のグラフィックアート印刷技術が挙げられる。位置あわせが良好な大面積のパターンニング、特にフレキシブルプラスチック基板にはインクジェット印刷が特に適していると考えられている。
【0112】
装置および回路のすべての層および構成素子が、溶液処理および印刷技術によって蒸着され且つパターンニングされることが好ましいものの、半導体層のような1つ以上の構成素子を真空蒸着技術によって蒸着しおよび/またはフォトリソグラフィープロセスによってパターンニングしてもよい。
【0113】
上述のように製造されたTFTのような装置は、1つ以上のこのような装置を互いに一体化できそして/または他の装置と一体化できるより複雑な回路または装置の一部となり得る。適用例としては、ディスプレイまたはメモリ装置用の論理回路およびアクティブマトリックス回路、または使用者が規定するゲートアレー回路が挙げられる。
【0114】
相互接続、レジスタ、コンデンサなどの、このような回路の他の構成素子をパターンニングするのにパターンニングプロセスを同様に使ってよい。
【0115】
本発明はポリマートランジスタ装置に限定されるわけではない。本願は2つの印刷パターン間に狭い間隙を持つ構造が必要とされる場合であれば適用できる。第1の材料および第2の材料のいずれもコロイド銀または銅インクのような溶液処理可能な無機導電体、可溶化無機ナノクリスタルのような溶液処理無機半導体、またはスピンオンガラスのような溶液処理可能な無機誘電体のような無機材料であってよい。装置は、発光装置または光起電装置のようにパターンニングが制御され形状サイズが小さいことが必要とされるどのような装置であってもよい。
【0116】
一例として、小面積LEDまたはフォトダイオードの活性領域は、第1の局限障壁80と第2の局限障壁81との間の自己整合した小さな間隙に少なくとも1つの半導体発光材料82を印刷することによって形成できる。基板は正孔注入アノード79を含んでおり、装置の上には電子注入カソード層83が蒸着されている(図13)。
【0117】
本発明の可能性のある他の適用例としては、従来のグラフィックアート印刷において2つの印刷パターン間の間隙が狭いことまたは幅の狭い印刷パターンが要求され、これが表面エネルギーパターンニングを利用しなければ達成することができない場合であればいつでも適用できる。
【0118】
本発明で開示する技術により、溶液処理可能な材料を所定の位置へ方向付けるのに表面エネルギー前パターンニングを必要としない歩留まりの高い、解像度の高い印刷が可能となる。
【0119】
本発明は上述の実施例に限定されるわけではない。本発明の側面は、本願に記載した概念のすべての新規性および/または進歩性ある側面、および本願に記載した特徴のすべての新規性および/または進歩性ある組み合わせを含むものである。
【0120】
出願人は本願で記載するそれぞれの個々の特徴および2つ以上のこのような特徴のどのような組み合わせも、このような特徴または特徴の組み合わせが本願で開示されているいずれかの問題を解決するかどうかにかかわらず、また特許請求の範囲に制限を加えることなく、このような特徴または組み合わせが全体として当業者の常識的な一般知識に照らし合わせて本明細書に基づいて実施できる程度に本願により別個に開示する。出願人は、本発明の側面はこのような個々の特徴または特徴の組み合わせのいずれによっても構成することができることを示している。上述の記載をかんがみて本発明の範囲内でさまざまな変形を行ってよいことは当業者にとって明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】自己整合表面コーティング層を持つ第1の材料の領域から第2の溶液がはじかれるところを示している。
【図2】CF4に露出することによって得られた選択的にフッ素化された表面を持つ第1の材料の領域から第2の溶液がはじかれるところを示している。
【図3】第1の印刷パターンの周りの表面領域から第2の溶液がはじかれるところを示している。
【図4】第1の材料の溶液を乾燥中に表面改質剤を蒸着することによって第1の液滴の周りの領域を自己整合改質するところを示している。
【図5】乾燥中に薄い表面層を溶解することによって第1の液滴の周りの領域を自己整合改質するところを示している。
【図6】第1の材料の選択的にフッ素化された領域から第2の溶液が、まだ両方の液滴が液体であるときにはじかれるところを示している。
【図7】表面層の脱ドーピングによって第1の導電材料の表面を改質するところを示している。
【図8】自己整合ソース−ドレイン電極を備えたTFTのさまざまな装置構成を示している。
【図9】2つの側面に局限された自己整合している幅の狭い線を形成するところを示している。
【図10】直径の小さいヴィアホール相互接続の自己整合形成を示している。
【図11】表面キャップ層がチャネル長さを規定しならびに装置の半導体層として機能するという両方の役割を果たしている自己整合TFTの構成を示している。
【図12】表面キャップ層がチャネル長さを規定しならびに装置の誘電体層として機能するという両方の役割を果たしている自己整合TFTの構成を示している。
【図13】活性領域の小さい自己整合型のLEDまたはフォトダイオードの構成を示している。
【図14】自己整合法によって印刷されたPEDOT/PSSの乾燥した液滴の光学顕微鏡写真を示している。
【図15】さまざまな濃度のカチオン性界面活性剤ジ−n−デシルジメチルアンモニウム塩化物(DD50)を使って蒸着された自己整合PEDOT/PSS液滴の原子間力トポグラフィー断面図および顕微鏡写真である。
【図16】自己整合印刷法によりPMMAゲート誘電体の上に製造された底面ゲートP3HT TFTの出力および伝達特性を示している(DD50の濃度は1mg/ml未満)。
【図17】ソースおよびドレイン接触の導電率およびPVP−PEDOT/PSS混合物を使って製造された自己整合PEDOT/PSS電極の自己整合間隙にわたる導電率を示す電流電圧特性を示している。
【図18】PVP−PEDOT/PSS第1電極を備えた自己整合トップゲートF8T2 TFTの出力および伝達特性を示している。
【図19】O2プラズマに露出した際の、最初に短絡するPEDOT/PSSソース−ドレイン電極の導電率の低下を示している。
【図20】最初に短絡したソース−ドレイン電極(a.)およびc.))およびO2プラズマエッチングされたソース−ドレイン電極(b.)およびd.))の原子間力顕微鏡写真ならびにO2プラズマエッチング後のトップゲートF8T2TFTの出力および伝達特性を示している。
【図21】(a)陽性に電気を帯びたNH3+停止表面ならびに陰性に電気を帯びたOH−表面上のアニオン性SDSおよびカチオン性DD50界面活性剤から蒸着された自己整合PEDOT/PSS液滴の光学的顕微鏡写真、および(b)脱イオン化水で洗浄する前および後にDD50の溶液中に漬けたSi/SiO2表面の赤外線スペクトラムである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば有機電子装置を形成するために構造体を蒸着する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体接合ポリマー薄膜トランジスタ(TFTs)は近年、プラスチック基板に集積された安価な論理回路(C. Duryら、APL 73, 108(1998年))、および光電集積装置および高解像度アクティブマトリックス装置の画素トランジスタスイッチへの適用に関心が持たれ始めている(H. Sirringhausら、Science 280, 1741(1998年)、A. Dodabalapurら、App. Phys. Lett. 73, 142 (1998年))。電荷担体移動度が0.1cm2/Vsまででオン−オフ電流比が106−108の高性能TFTが提示されている。これはアモルファスシリコンTFTの性能に匹敵する(H. Sirringhausら、Advances in Solid State Physics 39, 101 (1999年))。
【0003】
ポリマー半導体の利点の1つは、簡単で低費用の溶液処理に向いているという点である。しかしながら、完全にポリマー化されているTFT装置および集積回路はポリマーの導体、半導体、および絶縁体の側面パターンを形成できることが必要とされる。フォトリソグラフィー(WO 99/10939 A2)、スクリーン印刷(Z. Baoら、Chem. Mat. 9, 1299 (1997年))、ソフトリソグラフィースタンピング(J. A. Rogers, Appl. Phys. Lett. 75, 1010 (1999年))、およびマイクロ成型(J. A. Rogers, Appl. Phys. Lett. 72, 2716 (1988年))ならびに直接インクジェット印刷(H. Sirringhausら、英国特許第0009911.9号)といったさまざまなパターンニング技術が提示されてきた。
【0004】
直接印刷技術の多くはTFTのソースおよびドレイン電極を形成するのに必要とされるパターンニング解像度を提供することができない。適切な駆動電流とスイッチング速度を得るには、チャネル長さが10μm未満であることが必要とされる。集積論理回路の速度は移動度に比例し、且つTFTチャネル長さの逆2乗に比例する。チャネル長さを1桁減らすことによって、動作速度を約100倍高くすることができる。従って、サブマイクロメータの臨界形状サイズで装置を形成することにより回路性能をより高めることが強く望まれている。
【0005】
インクジェット印刷といった直接印刷技術の多くはこのような高解像度を達成できるとはみなされていない。例えばインクジェットプリンタのノズルに形成される液滴がノズルプレートにおける湿潤状態が変化することにより飛散方向が統計学的に変化した状態で放射される。基板に着地するときに、液滴は制御されていない状態で拡散する。両方の要因が、チャネル長さが数マイクロメータと短い2つの平行な印刷ソースおよびドレインTFT電極間に電気的短絡を引き起こす可能性がある。英国特許第0009915.0号では、溶液に基づいた直接印刷法のこのような一般的な解像度の限界が、表面自由エネルギーの異なる領域を有するあらかじめパターンニングされた基板上に印刷を行うことによって克服されている。例えば、極性(非極性)溶媒から蒸着される材料の蒸着は基板の親水性(疎水性)領域においてのみ起こり、基板上における液滴の拡散は重要な装置寸法を規定している反発表面エネルギーバリヤによって制御することができる。この技術はチャンネル長さが5μm未満の精度良く形成されたチャネルを持つTFT装置の印刷を可能にする。表面エネルギーパターンを形成するには、集束赤外線レーザービームへの局所的露出などさまざまな方法を利用することができる(本発明者の同時係属英国出願第0116174.4号を参照のこと)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
あらかじめ形成された表面エネルギーパターンの手助けにより高解像度印刷を達成する際の欠点の1つとして、高解像度を持つこのようなパターンを形成するにはさらなる処理工程が必要とされる点が挙げられる。典型的には数μmの臨界形状の場合、表面エネルギープレパターンニングのために広範囲の技術を利用することができるが、サブミクロンの寸法の臨界形状を形成することは、急激に困難で高価となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、添付の特許請求の範囲に記載されているような方法および装置が提供される。
【0008】
従って、本発明の側面は、表面エネルギーパターンの手助けなしに印刷材料の第1および第2の領域を分離するマイクロメータおよびサブマイクロメータの寸法の臨界形状を形成することのできる方法を提供する。このような方法は、第1の材料の印刷パターン表面、および/または第1の材料の印刷パターン周囲にある基板領域に形成された自己整合表面コーティング層の形成に基づいている。この表面コーティング層により、第2の材料の溶液が第1の材料の表面から反発するようになる。第2の材料の溶液と第1の材料の周りの表面コーティング層との相互作用により、第1および第2の材料のパターン間に小さな間隙を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、本発明を以下の図面を参照しながら説明する。
【0010】
以下でより詳細に説明するように、基板を最初に準備した後、基板に第1の材料を蒸着することができる。さらに表面改質および溶液配合を行った後、材料の第2の蒸着を行い高解像度形状の形成を行うことができる。以下の説明はまた、この技術を実施して短いチャネルおよび薄いゲートのトランジスタ構造体、および臨界形状の寸法が20μm未満であることを必要とするその他の電子素子および装置を形成することを記載している。
【0011】
本発明の第1の実施形態によると、基板の第2の領域に蒸着された第2の材料の溶液が、第1の領域にあらかじめ蒸着された第1の材料の表面によってはじかれる方法が提供される。
【0012】
図1は本実施形態を概略的に示している。第1の材料3がまず最初に、好ましくは溶液から基板1上に蒸着される。第1の材料のパターンを作成できる蒸着技術であればどのようなものでも利用してよい。このような技術の例としては、インクジェット蒸着、噴射コーティング、スクリーン印刷、オフセット印刷、後にフォトリソグラフィーパターンニングを行う連続膜蒸着、表面エネルギーパターンを含む基板上に溶液流延または噴射コーティングを行うことなどが挙げられる。第1の材料を蒸着中または蒸着後、自己整合表面層5を第1の材料4のパターンの周辺に形成する。この表面層は、第1の材料と接触して蒸着された第2の材料の溶液6をはじくことができるか、またはこのような引き続き蒸着された材料の流れをその境界に局限するように準備される。第1の材料は、これが本質的にこれらの特性を提供するように選択してよい。あるいは、このような特性は蒸着後に第1の材料を表面改質することによって得ることができる。このような特徴は以下の技術のあとに続く技術によって得ることができる、なぜなら以下の工程、ただしこれらに限定されるわけではないが、を含む1つ以上のさまざまな技術によって表面改質されてこれらの特徴をこれに与えることができるからである。
【0013】
(a)第1の材料の表面が第2の材料のインクをはじく生来の傾向を持つように第2の材料の溶液を選択することができる。
【0014】
(b)第1の材料中で相分離を行うことにより、第1の材料のバルク組成とは異なる表面組成を形成できる。
【0015】
(c)気相又は液相の表面改質剤にさらされたときに第1の材料の後蒸着表面反応を誘発する。
【0016】
(d)第1の材料の溶液を、表面に分離する傾向のある成分、すなわち界面活性剤、または低い表面エネルギー成分を含む分子またはポリマーと混合する。
【0017】
(e)電磁波への露出、または熱処理により第1の材料にさらすことによって表面反応を誘発する。
【0018】
第1の材料の表面を改質するために実施される後蒸着表面反応の場合、表面反応は選択的である必要がある、すなわち、基板表面の改質を引き起こしてはならない、または少なくとも第1の材料の表面に引き起こすのと同じ程度の改質であってはならない。そして第2の材料を、溶液が少なくとも部分的に第1の材料の表面に接触するように蒸着する。第2の材料の溶液が第1の領域からはじかれ、そして乾燥すると、第1の領域では第2の材料7の蒸着は起こらない。第2の溶液が基板表面で乾燥したときに第1と第2の材料の間に小さな間隙が形成される。
【0019】
以下に、第1の材料の表面と第2の材料の溶液との間のこのような反発相互作用を達成することができる方法のいくつかの方法の例を述べる。
【0020】
もし第1および第2の材料が異なる場合、例えば、もしこれらが異なる極性を持っている場合は、第2の材料の溶液は、裸の基板に対するよりもより大きな接触角度を第1の材料の表面に持つように配合して、第1の材料と接触しているときにはじかれるようにすることができる。例えば、もし第1の材料が極性(非極性)溶媒に可溶な極性(非極性)材料であり、第2の材料が非極性(極性)材料である場合、第2の材料は第1の材料が不溶性であるかまたはわずかしか可溶でない非極性(極性)溶媒中で配合することができる。このような材料の例としては、水中で配合される極性導電性ポリマーPEDOT/PSS、およびキシレンのような非極性溶媒中で配合されるポリジオクチルフルオレン−コ−ビチオフェン(F8T2)のような非極性半導体ポリマーがあげられる。
【0021】
一方、もし第1および第2の材料が同じまたは似た極性であれば、第2の材料の溶液の表面反発は、第1の材料の蒸着中または蒸着後、ただし第2の材料の蒸着前に第1の材料の表面を選択的に改質することよって実現することができる。
【0022】
このような選択的な表面改質は、第1の材料の蒸着後の反応性プラズマ処理、第1の材料の溶液に混合された界面活性剤の使用、第1の材料を相分離ジブロックコポリマーと混合する、または第1の材料の表面に材料を選択的に成長または蒸着させるといった、ただしこれらに限られるわけではないさまざまな広範囲の技術によって達成することができる。
【0023】
本発明の1つの実施形態によると(図2)、プラズマ処理は表面を四フッ化炭素(CF4)のような気体反応性種に表面を露出する工程を伴っている。適切なプラズマ条件下では、ポリマー材料の表面は、同時に基板表面を改質することなく選択的に改質することができる。ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)をドーピングされた導電性ポリマーポリエチレンジオキシチオフェンなどの多くの炭化水素ポリマーの表面、または絶縁性ポリマーポリイミドの表面は、低エネルギーCF4プラズマにさらすことによってガラス基板(例えばコーニング7059)上に選択的にフッ素化することができると同時に、ガラス基板の表面がフッ素化によって影響を受ける度合いをより低くすることができる。第1の材料11の周りの低エネルギーのフッ素化表面層12は、例えば水から蒸着されたPEDOT/PSSの他の溶液といった第2の材料13の液滴を効率的にはじく。
【0024】
その他の技術としては、界面活性剤を第1の材料の溶液に混合することが挙げられる。界面活性剤は、極性/イオン親水性先頭基および非極性疎水性末尾基を含む両親媒性分子である。界面活性剤および溶媒(水など)の溶液を表面に接触させると、単層界面層を形成するために界面活性剤が界面に分離する。表面/界面が非極性媒質と接触すると(すなわち、例えば空気との自由表面と接触する場合)、界面活性剤の非極性基が表面/界面に分離して低エネルギー疎水性表面コーティングを形成する。極性媒体と接触する場合は、界面活性剤の極性基が界面に向かって引きつけられる。
【0025】
界面活性剤の表面活性は、界面活性剤分子の高密度に濃縮された単層が溶液の表面に形成されるときに、最大となり、いわゆる臨界ミセル濃度(CMC)となる。CMC未満では、表面層はあまり密度が高くなく、CMCより高いと溶液の大部分に球状、ロッド状、または層状のミセルが形成される。溶液の表面/界面エネルギーは典型的には、界面活性剤の濃度が高くなるにつれて小さくなり、CMCで最小に達し、CMCより上で一定にとどまる。特定の溶媒/界面活性剤の組み合わせについては、CMCは電荷密度を補償する傾向のある対イオン、電解質などを添加することによって影響されることがある。CMCはまたpHならびに界面活性剤の疎水性基の長さにも左右される。技術的に、界面活性剤は洗剤、発泡樹脂製品、乳剤用の安定剤、分散液の製剤に広範囲に使用されている(M. R. Porter, Handbook of Surfactants, London, Blackie Academic & Professional (1994年))。
【0026】
界面活性剤のさまざまな分類は次のように区別される。すなわち、アニオン(カチオン)界面活性剤はR=CnH2n+1のような非極性の長い炭化水素基、およびカルボキシラト基RCOO−、スルホネート基RSO3−、硫酸基ORSO3−、またはホスホネート基ROPO(OH)O−のような陰性に(陽性に)電気を帯びている極性基を含んでいる。両性界面活性剤は陽性および陰性に電気を帯びている基の両方を含んでいる。長さの短い非極性炭化水素基については、界面活性剤は水中に可溶であるが、長さのより長い鎖の場合、ポリマーはアルコールのような極性のより小さい溶媒にしか可溶でない場合がある。カルボキシレートのようないくつかのアニオン性界面活性剤は低いpHの水溶液中では不安定である。なぜなら水不溶性脂肪酸を形成するからである。
【0027】
ほとんどのカチオン性界面活性剤は、陽性に電気を帯びているNH3+基を含んだ第四アンモニウム系分子を基礎としている。一例としてはDD50が挙げられる。カチオン性界面活性剤はプラスチック表面、シリカまたはガラス表面といった多くの陰性に電気を帯びている表面上で優先的に自己組織化する。
【0028】
非イオン界面活性剤はアルコールまたはエーテル基といった、イオン化しないものの例えば水素結合相互作用により水分子と好都合に相互作用する水溶性基を含んでいる。非イオン性界面活性剤の例としては、アルコールエトキシレートが挙げられる。非イオン性界面活性剤は、水への可溶度が低いためアニオン性界面活性剤よりもCMC濃度が低くなる傾向にある。また異常な可溶度特性を示す。溶解度は温度がいわゆる曇り点を超えるのに伴って低下する。多くの非イオン性界面活性剤は溶液の大部分において溶解度が小さいため強い表面活性を示し酸性溶液中で良好な安定性を示す。(EO)nC12H25OHのようなアルコールエトキシレートはEO鎖が長いと(n>6)水に溶け、EO鎖が短いと(n>4)水に溶けない。
【0029】
界面活性剤の分子が第1の材料の膜の表面に分離すると、第1の材料の周りに表面極性が第1の材料の大部分とは反対の表面封入層を形成する。表面への分離は溶液中でまたは乾燥時にすでに起こっているが、第1の材料の蒸着後のアニール工程などのさらなる処理工程によっても促進することができる。例えば、もし第1の材料が極性材料であれば、表面エネルギーは界面活性剤の分子が表面へと分離することによって低下し、その結果界面活性剤の非極性基により反発性表面キャップ層が形成される。
【0030】
第2の溶液の反発がもっとも効率的となるようにするために、界面活性剤の分子が第2の溶液の溶媒に溶けないことが好ましい。さもなければ第1の材料の周りに界面活性剤キャップ層が溶解し、第2の溶液に加えられる反発力が低下する。溶解は第1および第2の材料の蒸着に異なる溶媒を使用することによって回避することができる。例えば、第1の材料は溶けるが界面活性剤は溶けない第1の溶媒を含んでいる第1の材料の蒸着用の溶媒と、第1の溶媒と混和できる界面活性剤用の第2の共溶媒との混合物を使用できる。この場合、第2の材料の溶液は界面活性剤用の共溶媒は含まず第1の材料用の溶媒しか含まないことになる。
【0031】
水には溶けないが、エタノールまたはイソプロパノールといったアルコールに溶けることのできる界面活性剤の例としては5EO−C12H25またはスルホコハク酸ジオクチルナトリムなどの、EOセグメントの短いアルコールエトキシレートが挙げられる。イソプロパノールなどのアルコールは水と混和可能であり、水に溶けない界面活性剤をPEDOT−PSSの溶液に共蒸着させるのに使用することができる。
【0032】
たとえ界面活性剤が水溶性であっても、界面活性剤コーティングは第2の材料の水性溶液と接触した状態にある第1の材料の表面上で十分に安定することができる。なぜなら第2の溶液が表面エネルギー力によって戻される前に第2の溶液が第1の材料の表面と接触する短時間では、大きな溶解は発生しないからである。硫酸ドデシルナトリウム(SDS)のようなPEDOT/PSS水溶性界面活性剤といった導電性ポリマーの水性溶液については、エッグ−ホスファチジルコリン(エッグ−PC)のような天然界面活性剤、またはAusimont社(www.ausimont.com)からFluorolinkという商品名で市販されている、またはバイエル社からBayowetという商品名で市販されているフッ素化界面活性剤が首尾よく利用されてきた。この場合、水溶性界面活性剤によって改質されたPEDOT/PSS表面の水接触角度は、適切な時間内に安定しないことがしばしば観察された。このような表面はしばしば当初は大きな接触角度を示すが時間がたつと小さくなった。これはおそらくPEDOT/PSS表面上の界面活性剤層が表面上の水滴に溶解することが原因と思われる。この場合、第2の液滴が第1のパターンに隣接する領域に印刷されたときに第1の印刷PEDOT/PSSパターンからの第2の水性PEDOT/PSS液滴の反発の信頼性がより高くなり、良好なチャネル形成が達成され、これにより第2の液滴が基板上に拡散するときに第1の印刷パターンの上に部分的に蒸着されるのではなく第1のパターンの接触ラインにのみ接触するようになった。もし第2の液滴が第1のパターンの表面上に印刷されれば、多くの場合第2の液滴は第1のパターンから流れ出ず、いくらか時間がたつと第1のパターンを湿らし始める。従って、第2の材料の溶液に溶ける界面活性剤を使用する場合、印刷許容誤差が十分に小さく第2の液滴が第1の材料上に印刷されないようにするよう注意を払う必要がある。
【0033】
さらに、界面活性剤が表面と密接に結合していることが好ましい。これは、例えば、先頭基が第1の材料の表面上の電気を帯びた基と反対の電荷を持つ界面活性剤を選択することによって実現することができる。多くの蒸着条件下では、PEDOT/PSSは陰性の表面電荷を持っている。なぜならPSS成分が表面に分離して、表面上のSO3−基の密度を高める傾向があるからである。DD50のようなカチオン性界面活性剤をこのような場合に使用すると、SDSのようなアニオン性界面活性剤を使用する場合よりも界面活性剤がより密接に表面に結合する。
【0034】
溶液中の界面活性剤の濃度は典型的にはほぼCMCの桁である。CMCでは界面活性は最大であり、高密度に濃縮された表面層が形成される。濃度をより高めるためには、界面活性剤は材料の大部分においてミセル構造のような相分離構造を形成するが、これは材料の形態および電子特性に悪影響を与える傾向があるものである。多くの装置用途については、イオン種の拡散によって誘発される可能性のある装置の不安定性を最小限にとどめるため、界面活性剤濃度は最小でも第2の材料を蒸着するにあたり十分な表面反発を与えることが必要とされねばならない。
【0035】
水中で配合されるPEDOT/PSSの場合、アルコール可溶性であるが水溶性ではない界面活性剤を第1の蒸着用にアルコール共溶媒から共蒸着することができると同時に、第2の蒸着用には水中の純粋なPEDOT/PSSを使用することができる。第2の材料の溶媒中の界面活性剤の溶解度は第2の液滴の乾燥の時間スケールで表面層の溶解を回避するのに十分低いことが必要とされる。界面活性剤の殻の溶解は、乾燥が迅速となるように第2の材料を蒸着すること、すなわち相変化インクを利用して高温の溶液からまたは溶融物から蒸着することにより、または加熱した基板上に蒸着することにより、または窒素のような乾燥ガスの流れを与えて第2の材料の乾燥を加速することによっても回避することができる。
【0036】
表面への分離は通常のやりかたでは蒸着および乾燥中に起こり得るか、または蒸着速度制御、温度制御、または後のアニール処理によりこのプロセスを向上させる必要がある場合がある。この分離プロセスを手助けするのに熱プロセスが必要な場合がある。上述のプラズマフッ素化プロセスのように、分離された層をさらに改質することが必要な場合がある。
【0037】
本発明のこの側面による第1の材料の表面の極性を変化させるための別の技術は、極性および非極性ブロックからなるジブロックコポリマーを第1の材料と混合することに基づいている。もし第1の材料が極性の資質を持っていれば、ブロックコポリマーの非極性ブロックは表面に向かって分離し第1の材料の非極性封入を形成しがちになるが、これを第2の極性材料の溶液をはじくのに利用することができる。適切なブロックコポリマーの例としては、ポリエチレン酸化物(PEO)とポリジメチルシロキサン(PDMS)とのブロックコポリマー、またはポリジオクチルフルオレンのような非極性共役ブロックとPEOのような極性非共役ブロックとのブロックコポリマー[P. Leclere, Adv. Mat. 12, 1042 (2000年)]、または導電性および半導体性ブロックからなるブロックコポリマー(C. Schmitt, Macromol. Rapid Communications 22, 624(2001年))が挙げられる。このようなポリマーは水に溶けるか、または水と混和できる極性溶媒に溶けるかのいずれかであり、水中で配合されるPEDOT:PSSのような導電性ポリマーと共蒸着させることができる。親水性表面官能性を持つ半導体性ナノ結晶などの他の表面分離または両親媒性分子もまた使用してよい。
【0038】
表面を選択的に改質する他の技術としては、第1の材料に、第1の材料とともに相分離する傾向のある異なる極性の成分材料を共蒸着することが挙げられる。成分材料は第1の材料よりも表面エネルギーが低くて表面に分離する傾向を持つことが好ましい。望ましい相分離形態は、第1の材料上の表面をカバーする材料とともに垂直相分離することである。類似の形態が望まれる(ただしその理由はさまざまである)ポリマー光起電性装置に垂直相分離を引き起こす技術は研究によって知られている。垂直相分離は第1の材料に比べてより低い第3の材料の溶解度によって誘発することができ、これにより溶液が表面から乾燥するときに第3の材料がまず最初に溶液から出るようになる。あるいは、垂直相分離は第1の材料および基板表面の界面エネルギーを低くするために蒸着前に基板表面を改質することによって誘発できる。良好な表面反発を実現したこのような垂直相分離系の例としては、ポリビニルフェノール(PVP)とともに水/イソプパノール混合物から共蒸着されたPEDOT:PSSの溶液が挙げられる。
【0039】
より疎水性のPVPポリマーの垂直相分離は、溶媒混合物、水よりも沸点の低いイソプロパノールのようなPVP共溶媒からの蒸着によって向上させることができる。表面から内部へ溶液が乾燥すると、イソプロパノールが表面上で乾燥し、PVP富裕表面層の蒸着を促進する。
【0040】
第1の領域の表面を選択的に改質するさらに他の方法は、後蒸着溶液コーティングまたは蒸気露出工程によって第1の材料の周りに選択的な表面コーティング層を塗布することが挙げられる。表面コーティング材料は、第1の材料の表面上の官能基と共有結合を形成することができるが表面上の官能基とは結合を形成できない界面活性剤、ブロックコポリマー界面活性剤、自己組織化単層、または最初に蒸着される表面に選択的に接着するが、基板表面には接着しないか少なくとも同程度には接着しない何らかの他の材料であり得る。
【0041】
このようなプロセスの例としては、第1のPEDOT/PSSパターンを含む基板を水中のDD50の溶液のようなカチオン性界面活性剤を含む溶液に浸漬するプロセスが挙げられる。浸漬前に、PEDOT/PSSを水に溶けなくするためにPEDOT/PSSパターンを150℃の温度でアニールする。浸漬コーティング工程中、界面活性剤はPEDOT表面上に表面コーティングを形成する。学説に縛り付けられたくはないが、表面層はPSSの陰性に電気を帯びたSO3−とカチオン性界面活性剤の陽性先頭基との間の好ましい相互作用によって形成されると考えられる。
【0042】
他の例としては、共役ポリマー半導体基板表面上に印刷されたPEDOT:PSSに流されるPVDF/DMA溶液が挙げられる。共役ポリマー半導体の例としては、ポリ(ジオクチルフルオレン−コ−ビチオフェン)(F8T2)またはポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)が挙げられる。PVDF溶液はスピンコーティング、ブレードコーティング、インクジェット印刷またはその他の材料の蒸着工程中にF8T2表面からPEDOT:PSS領域上にデウェットする。PVDFは、後の蒸着のためのパターン化された表面として機能する。
【0043】
本発明の他の側面によると、第3の材料は第1の材料の表面から選択的に成長する。このような第3の材料の例としては、連鎖重合開始剤によって表面を官能化することによって制御された状態で第1の材料の表面から成長するポリマーブラシが挙げられる。この連鎖重合は原子転移ラジカル重合(ATRP)のような制御されたラジカル重合であり得、開始剤は2−ブロモ−2−メチルプロピオンエステル誘導体であり得る。アニオン性、カチオン性、開環メタセシスなどのその他の「生きた」重合も使用してよい。これらの重合により、適切な開始剤で表面を官能化した後、共役的に結合したポリマーを形成できる。本発明では、選択する表面はPEDOT:PSS層である。表面に開始剤を導入した後、溶媒がある状態またはない状態で引き続きモノマーおよび触媒にさらすことにより厚さが数百ナノメータまでのポリマーブラシが表面に形成されることになる。
【0044】
これらの疎水性素質により化学的および機械的に頑丈な疎水性層が形成されてその後に発生する液滴をはじく。
【0045】
本発明の本実施形態の他の実施形態では、第1の印刷パターンの蒸着後に無電解めっきによって表面コーティング層が成長する。第1の後蒸着工程では、触媒作用のある表面開始剤が第1の材料の表面上に選択的に蒸着される。そしてこの表面開始剤は基板が第3の材料の前駆体を含む浴槽に浸漬されると表面反応に触媒作用を及ぼす(Z. J. Yu, Journal of the Electrochemical Society 149, C10 (2002年))。
【0046】
本発明の他の実施によると、表面コーティング層は電気化学的プロセスによって第1の材料の表面から成長する。この場合、第1の材料は蒸着後に電気接触が行われる電気的に導電性または半導体性の材料でなければならない。そして全体の構造体が表面コーティング材料の前駆体を含む溶液中に配置され、溶液中の対極に対して第1の材料のパターンに電圧が印加されると第1の材料の表面上で酸化または還元反応が発生する。おそらく乾燥または硬化工程を含むさらなる処理の後に第2の蒸着材料を基板に塗布してよく、この場合、通常の反発が、小さく再現性の高い間隙を形成するのが観察される。
【0047】
学説に縛り付けられたくはないが、第2の材料が第1の材料の表面からはじかれるときに形成される第1および第2の材料の間の間隙の幅は基板上の第2の材料の溶液の乾燥モードによって決まると考えられる。もし第2の液滴の溶液の接触線が基板上での乾燥中にピン留めされなければ、第2の溶液の接触線は乾燥時に第1の領域の境界線から離れていき、数マイクロメータの長さの間隙を得ることができる(図1(c))。他の制限的な場合においては接触線が第1の領域の境界に接触するやいなやピン留めされ、第1の材料上の表面層の幅によって間隙の幅が規定され、且つ分子寸法とすることができる(図1(d))。
【0048】
第1および第2の領域の間の間隙を決める第2の溶液の乾燥モードは、基板の表面極性、基板の表面粗さ(粗い表面は接触線をピン留めする傾向がある)、温度、基板の上の気体雰囲気、外部の電場、磁場または重力場の存在、ならびに第2の溶液の溶媒または混合溶媒の表面張力、粘度および沸点などの、ただしこれらに限定されるわけではないさまざまな要因に影響され得る。
【0049】
本発明の別の実施形態によると、第1の材料の溶液の乾燥プロセス中に第1のパターンを取り囲む基板表面を改質して第1のパターンの端部の周りに自己整合する第2の材料の蒸着のための表面エネルギー障壁を形成する方法が提供される。ここでは第1のパターンの周りにこのような自己整合表面エネルギー障壁を形成することのできる方法をいくつか開示する。
【0050】
ぬれている基板の表面上に液滴が拡散すると、いわゆる前駆体膜が液滴の周りに形成される(例えば、Souheng Wu, Polymer Interface and Adhesion, Marcel Dekker Inc., New York (1982年)を参照のこと)。前駆体膜はバルク液滴の典型的な厚さよりもかなり薄く、バルク液滴の肉眼で見える接触線を越えて延びる。場合によっては、前駆体膜は幾分かより厚い二次的膜および薄い一次的膜に再分割される。
【0051】
第1の液滴16を乾燥するとバルク液滴の端部の周りに非常に薄い材料の膜が形成され、これをそれぞれの液滴の周りの明確に規定された領域で表面エネルギーを選択的に改質するのに利用することができる(図3)。乾燥された前駆体膜19の表面はプラズマ処理、第1の材料の溶液と混合された界面活性剤、または上述の方法と同じように他の技術によって選択的に改質することができる。そしてこれを第2の材料の溶液をはじくのに利用することができる。この方法は、前駆体層の幅、したがって第1の材料18と第2の材料20との間に形成される間隙の幅を基板の湿潤状態によって制御できるという点で上述の方法とは異なる。第1の材料の溶液について基板がぬれているほど、そしてその表面エネルギーが低いほど、液滴の周りの前駆体膜の幅が広くなる。この方法は一般的には分子寸法の間隙を形成することはできないが、マイクロメータ寸法の間隙を形成することはできる。多くの用途については、臨界形状がサブマイクロメータ寸法であることは重要ではなく、むしろ間隙が非常に歩留まり高く形成されることが重要である。高い歩留まりは第1および第2の領域の分離がマイクロメータ台であるとより達成されやすい。
【0052】
前駆体膜は非常に薄いが、場合によっては、例えば第1の導電性および第2の導電性領域の間の導電率を小さくするために、第2の材料の印刷後にさらにその厚みを小さくするか除去さえしてしまうことが望ましい。これは第2の材料の蒸着後に完成した構造体をプラズマエッチング工程などの物理的エッチング処理にさらすことによって達成することができる。エッチング時間を調整することにより、この処理は、より厚いバルク領域をあまり薄くすることなく第1および第2の領域の間にある非常に薄い乾燥前駆体膜を除去する(図2(d))。
【0053】
第1の印刷液滴の周りに改変された表面エネルギーの領域を形成する他の可能性は、第1の液滴の乾燥モードを利用することである(図4)。もし第1の液滴の接触線が最初に、すなわち基板に衝突後に基板上にピン留めされなければ、第2の液滴23の直径は、乾燥液滴中の粘度が非常に高くなって接触線がもはや移動できなくなったとき最終的にピン留めされる前に、乾燥中に収縮してしまう。もし基板に結合または接着するための高い親和性を持つ表面改質剤を溶液に混合すれば、表面改質剤は液滴が後退するときに裸の基板表面に接着し、液滴接触線の最初から最後の位置にわたって延びている第1の液滴25の周りの領域における表面エネルギーを改変する。改変された表面エネルギーのこの領域は、その後第2の印刷液滴26をはじいて2つの印刷領域間に幅が第1の液滴の乾燥モードにだけ左右される自己整合間隙を形成するのに利用することができる。このような表面改質剤の例としては、自分自身が基板表面上の官能基に接着することのできる界面活性剤が挙げられる。ガラス又はSiO2の基板の表面のOH−基のような陰性に電気を帯びた表面基を持つ極性基板表面の場合、DD50のようなカチオン性界面活性剤が使用される。NH3+基を含む自己組織化単層によって改質されたガラス基板のような陽性に電気を帯びた表面基を持つ極性基板表面の場合、SDSのようなアニオン性界面活性剤が使用される。例えばC00H基によって停止している親水性表面に結合することができ表面を疎水性にすることのできる表面改質剤の他の例としては、アルキルアミン誘導体CH3(CH2)n−1NH2が挙げられる(S. W. Leeら、J. Am. Chem. Soc. 122, 5395(2000年))。第1の材料の溶液(これは表面改質剤を溶液に溶解しやすくする共溶媒を含む場合もある)に混合されると、アルキルアミン誘導体は溶液の液滴が後退する表面領域に蒸着し、それにより乾燥した材料の最終的な端部の周りに狭い疎水性の表面領域が形成される。
【0054】
当然のことながら、第1の液滴の周りに表面改質剤が自己整合蒸着した後に選択的な化学反応を行わせることが可能である。この反応では、他の表面改質剤が改質された表面領域で選択的に反応することにより表面エネルギーの高低差がさらに強められる。
【0055】
第1の領域の周りに自己整合表面エネルギーパターンを形成するための関連する方法として、第1の材料の蒸着後に基板を熱アニール工程にかけることが挙げられる。もし基板の熱膨張係数が第1の材料の熱膨張係数よりも大きければ、第1の液滴は基板上で収縮するであろう。もし第1の材料の溶液が、第1の材料と基板との界面に向かって選択的に分離し、界面層25を形成している界面エネルギーを改変する薬剤を含んでいれば、収縮する第1の領域は、基板と接触したことによって改変された表面エネルギーを持つ基板の露出領域を後に残すことになる。このような薬剤の例としては、非極性基板と接触している第1の材料の極性溶液中の非極性の分子またはポリマーが挙げられる。
【0056】
他の方法は、後退する第1の溶液による表面トポグラフィーによる改質に基づいている。もし、例えば、その最初の接触線と接触線の最終位置との間で溶媒が、例えば基板の膨張によってまたは基板の表面層の成分を選択的に溶解することによって表面粗さを大きくするように基板と相互作用すると、その結果得られる第1の液滴の周りの粗さの大きくなった領域を使って、第2の液滴の接触線をこれが粗さの大きくなった領域に広がろうとするときにピン留めすることができる。接触線のピン留めは、表面粗さによって強められることが知られている。この効果は第2の材料の溶液が第1の材料の領域と接触するのを防止するのに利用することができる。
【0057】
第1の液滴の周りに改変された表面エネルギーの自己整合領域を形成するためのさらに他の方法としては、第1の液滴の溶液を第1の材料の領域外に拡散することのできる薬剤に混合して、第1の領域の周りの基板上の小さな領域の表面エネルギーを改変することが挙げられる。移動性薬剤の表面拡散は高温に基板をアニールすることによって向上させることができる。この場合の表面改質領域の幅は、表面拡散が行われる時間および温度によって制御される。
【0058】
第1の領域の周りにこのような自己整合表面エネルギーパターンを形成するさらに他の方法を図5に開示する。この場合、基板27は、第1の液滴の蒸着に使用される溶媒に可溶な極性材料28の薄膜でコーティングされた疎水性表面を持つ。第1の液滴が基板上でその最初の直径から後退すると、その端部の周りで局所的に極性膜を溶解し、第1の材料の端部で自己整合された領域31において埋め込まれた疎水性基板の表面を露出させる。もし第2の材料32の溶液が第1の材料の領域に隣接する表面領域に蒸着されると、第2の材料の溶液は第1の材料の端部の周りの疎水性領域に接触したときはじかれる。第1の材料の溶媒中の極性材料28の溶解度は、液滴の最初の拡散を促進し、一旦層28が第1の材料の溶液に溶解すると液滴が引き続いて縮小するのに十分低いことが要求される。
【0059】
乾燥モードおよび表面エネルギー障壁幅は、基板表面の表面エネルギー、すなわち基板上の液体溶液の接触角度、表面および界面張力、第1の液滴の乾燥時間に影響を与える基板の温度、基板の上方の気体雰囲気、電場、磁場、又は重力場の存在などによって制御することができる。
【0060】
第1の導電性材料42の表面状態を改質するさらに他の方法として、表面層を脱ドーピングすること、または表面層から電荷担体を空乏化させることが挙げられる(図7)。導電性ポリマーの場合、表面層を脱ドーピングすることで表面エネルギーおよび溶解度特性が改変された非導電性表面層43が得られる。脱ドーピングは、例えば、電気化学的脱ドーピングによって実行できる。その後第2の蒸着材料44を、空乏層または脱ドーピング層の厚さによって間隙が形成される第1の層に隣接してまたはその上に配置する。
【0061】
本発明の1つの実施形態では、第1の材料と第2の材料は、導電性ポリマーをはじめとするがそれに限られない異なる材料であり、例えば溶液処理技術を介して基板上に蒸着される。
【0062】
本発明の他の実施形態では、局限層と考察の対象となっている材料とは、導電性ポリマー材料をはじめとするがそれに限られない類似する材料か、または実際に同じ材料である。
【0063】
第1の液滴の表面への絶縁体分離など、場合によっては第2の材料の蒸着後に表面コーティング層を取り除く必要がある。導電性チャネルが印刷自己整合ソースおよびドレイン電極と接触して蒸着されるいくつかのTFT装置アーキテクチャにおいては、電荷担体注入は絶縁表面コーティング層の存在により妨害される場合がある。洗浄工程、物理的エッチング工程、または他の制御された材料除去技術によって選択的な除去を行うことができる。底面ゲートTFT構造(図8bからd)、またはチャネル材料の下にチャネル材料がある図12のような構造では、これは必要ではない場合がある。
【0064】
すべての場合において、2つの印刷パターンの間の自己整合間隙の形成は任意の形状の印刷パターンに使用することができる。すなわち2つの単一の印刷液滴間に間隙を形成するか、または例えば接触面積の大きいくし型アレー形状の直線形状の第1のパターンとの間に間隙を形成するのに使用することができる。
【0065】
本発明の1つの実施形態において、第1の材料が表面上に蒸着され、その後表面改質される。そして第2の材料が蒸着されて第1の材料と第2の材料との間で選択的な反発が起こるようにする。そして選択的な溶媒溶解またはいくつかの他の技術によって第1の層が除去されて、露出表面が改質されてさらに(隣接する、明確に形成された第2の材料の層とともに)処理される。
【0066】
本発明の1つの実施形態においては、電場、重力の影響といった外部からの誘導的または局限的効果を用いて、または実際に操作プローブを使って、まだ液体状の蒸着材料を有利な形状へと物理的に移動させまたは保持する。
【0067】
蒸着材料は同時に隣接して表面上に配置でき、ここで溶媒が相違する性質により反発が起こる。基本的な前提は、通常の状況では互いにはじきあう2つの混和できない溶媒(例えば極性と非極性)を使うことである。蒸着材料は化学的組成が非類似であるかまたは類似していると考えられる。本技術のさらなる変形としては、表面改質添加剤または基を両方の蒸着材料に使用することが挙げられる。これらの材料は本来的には水性または溶媒ベースであり、類似のまたは非類似の材料であり得る。これらの界面活性剤または基は、同時にまたは別々に(ただし乾燥せずに)そして隣接して蒸着されると立体的な障害物または電気的な反発のいずれかにより相互作用しはじきあう(図6)。
【0068】
ここで開示したようなプロセスは広範囲の電子装置の制御された製造に利用することができる。
【0069】
もし第1および第2の材料が導電性材料であれば、これらはTFTのチャネルを形成している2つの領域間の自己整合間隙を備える薄膜トランジスタのソースおよびドレイン電極として使用できる。基板上に印刷される(図8(a))かまたは半導体層(図8(b))の上に直接印刷されるソースおよびドレイン電極を備えるトップゲートTFT、ならびにソースおよびドレイン電極が半導体層のどちらかの側にあってもよい(図8(c)および8(d))底面ゲートTFTといったいくつかのTFT構成が可能である。構成(b)および(d)はソース−ドレイン電極から直接TFT積層チャネルへと効率的な電荷注入ができるため有利である点に留意すべきである。
【0070】
上述の技術を使って、両面に局限された幅の狭い形状を製造することも可能である(図9)。最初の工程では、幅の狭い、明確に形成された間隙が第1の領域53と第2の領域55との間に形成される。上述のようにCF4プラズマ処理のような技術を使って第1および第2の材料の表面が低エネルギー状態に加工される。引き続いて第3の材料56を間隙領域内に印刷することができ、第1および第2の領域の反発表面相互作用の働きによって間隙領域に局限できる。もし第3の材料がPEDOT/PSSのような導電性材料であれば、局限された導電線の幅に比べて大幅に幅が狭められた狭い導電線57を印刷することができる。
【0071】
このような構造の例としては、ガラス、またはポリビニルアルコールの最上層を持つ基板のような極性基板上の表面改質PVPまたはポリイミドといった絶縁性非極性ポリマーの第1および第2の領域が挙げられる。このような構造はPEDOT:PSSの水性且つ導電性のポリマー溶液の液滴を局限することができ、幅の狭い導電線を形成することができる。このような線は、例えば電子回路の相互接続、またはソース/ドレイン電極とゲート電極との間のオーバラップ容量の小さいTFT装置のゲート電極として使用することができる。たとえ第3の材料が間隙領域に完全に局限されなくとも、二重に局限された線の真ん中から離れている絶縁体の厚みが大きいことがさらに下地電極とのオーバラップ容量を小さくするのに役立っている(図9)。
【0072】
本発明者によるプロセスの他の有用な用途としては、ヴィアホール相互接続を高解像度に形成することが挙げられる。英国特許第9930217.6号には、溶媒の局所的なインクジェット蒸着による層構造の局所的な溶解に基づくヴィアホール形成方法が記載されている。溶媒液滴直径よりも寸法の小さいヴィアホールを形成するためには基板表面上で溶媒液滴を局限する必要がある。これは次のようにして達成することができる。上述のセクションで述べたのと類似の方法で、電気的接続が確立される埋め込み電極58を含んだ基板の表面上に自己整合局限構造60、62を形成することができる。埋め込み電極は誘電体層59によって覆われており、誘電体層59を介してヴィアホール接続を開ける必要がある。このような構造の例としては、PEDOT:PSSの下地電極を持つPVAの層の上の、表面改質PVPまたはポリイミドの非極性局限構造が挙げられる。もし誘電体層にとって良好な溶媒63がこのような構造に蒸着されると、溶媒は非極性ポリマーがイソプロパノールに溶解しない限り2つの非極性領域間に形成された間隙内の誘電体層のみを溶解することができる。その結果、2つの非極性自己整合局限領域の間の間隙の大きさによって規定される寸法をもってヴィアホールが形成される(図10)。
【0073】
上述のプロセスはアクティブ半導体層自体またはゲート誘電体層といった、電極以外の自己整合電子装置の他の構成素子を形成するのにも有用である。
【0074】
図11は、底面ゲート66、ゲート誘電体67、自己整合ソース−ドレイン電極68および70を備える、本発明による自己整合トランジスタ装置の概略断面図を示す。この装置では、自己整合印刷に使用される表面改質層69は、装置のアクティブ半導体層をも形成する半導体材料である。この場合、第2の液滴の乾燥モードにより第1および第2の電極の間が密着するようになることが重要である。半導体表面改質層69は、制御されたラジカル重合のような例えばポリマーブラシを表面から成長させることのできる技術によって成長させることができる。
【0075】
図12は半導体層72、自己整合ソース−ドレイン電極73および75、およびゲート電極77を備えた、本発明による自己整合トランジスタ装置の概略断面を示している。この装置では、自己整合印刷に使用される表面改質層74および76は装置のゲート誘電体層をも形成している誘電材料である。この場合もまた、第2の液滴の乾燥モードにより第1および第2の電極の間が密着することが重要である。半導体表面改質層74および76は、制御されたラジカル重合、PMMAの表面開始重合といった例えばポリマーブラシを表面から成長させることのできる技術によって成長させることができる。
【0076】
ここで本発明を以下の実施例により説明する。
[実施例1]
【0077】
CF4表面処理
RFプラズマに手助けされた、自己整合ソース−ドレインTFTを形成するための気相処理の例を図2に示す。本実施例では、CF4プラズマは最初に蒸着されるPEDOT:PSS層をそのガラス基板に対して選択的に改質する。この場合の基板はガラス基板、またはガラス基板上のF8T2のような共役ポリマー半導体薄膜である。表面改質は主に後の材料の蒸着をはじくという目的にかなう。しかしながら、表面改質はまた最初に蒸着される材料の表面付近または端部領域を電気的にまたは別のやり方で不活性化するかまたは膜の表面付近または端部領域の溶解度を変更するという目的にもかなう。このことは第1の材料と後に蒸着される材料との間の間隙を電気的に隔離するかまたは拡張するという目的にかなう。
【0078】
次の工程は第1の印刷上にまたはこれに隣接して第2の材料を印刷するかさもなければ蒸着する工程を含んでいる。第1の表面の反発する性質により、第2に印刷される材料は第1の液滴によって形成される端部にピン留めされる。フッ素化PEDOT:PSSの場合、これにより2つのPEDOT:PSS領域の間には非常に小さな間隙が形成されることになる。
【0079】
溶媒洗浄および酸素プラズマエッチングを使って清浄な基板、本実施例ではガラス、を作成する。基板をインクジェットヘッドの下に取り付け、液体導電性ポリマーであるPEDOT/PSS(BAYTRON P、バイエル社)を必要に応じてインクヘッドのしずく(DOD)に導入し、その後のしずくが接触しあって連続的な線パターンを形成するように蒸着する。他の溶液印刷技術としては、例えば連続インクジェット、フレキソおよびグラビアリソグラフィー、スクリーン印刷およびパッドスタンピングが考えられる。この段階で、しずくは局限されておらず、基板によって決められる拡がりをもって、通常の蒸気状態で乾燥する。さらに、乾燥プロセスは熱風乾燥、超音波乾燥またはその他の強制的な条件を使うことによって手助けしてよいが、もっぱら必要とされるわけではない。そして印刷された材料はCF4プラズマエッチングを使い50から250Wの電力で30秒から10分で表面改質される。CF4プラズマにより基板上のPEDOT/PSSパターンの表面が疎水性とされるが、ガラス基板の表面は実質的に親水性のままである。そして基板を印刷ヘッドの下に再度取り付け、2番目のPEDOT/PSSパターンを第1の、表面改質されたPEDOT/PSSの近くに蒸着する。噴射される液滴はBUTに向かって拡散するが、第1のPEDOT/PSSパターンの疎水性表面によってはじかれる。PEDOT/PSSの第2のパターンの液滴が第1のPEDOT/PSSパターンの上にまたは部分的に上に蒸着すると、第2のパターンの液滴がはじかれ、第1のパターンの表面から流れ出て、第2のPEDOT/PSSパターンの接触線が第1のPEDOT/PSSパターンの接触線の近くに位置するように乾燥することが観察された。第2の液滴は、第1のPEDOT/PSSパターンの端部に一致する。
【0080】
このようにして、第1および第2の印刷PEDOTパターン間に非常に小さな間隙を実現することができる。間隙の幅は、基板上のPEDOT液滴が第1のPEDOTパターンから流れ出た後におけるPEDOT液滴の乾燥モードにより決まる。親水性ガラス基板上では、100nm未満まで小さくなった間隙が原子間力顕微鏡によって測定された。第1および第2のPEDOTパターン間の導電率を測定することにより、2つのパターン間の間隙がそれにもかかわらず良好に形成されており、2つのパターン間には電気的短絡がないことがわかる。
[実施例2]
【0081】
界面活性剤改質インク
第1のPEDOT電極パターンをインクジェット蒸着するために、異なる界面活性剤分子をPEDOT:PSSインクに混合した。これは水とバイエル社から市販されているPEDOT Baytron PHとの1:1の割合の混合物からなり界面活性剤の濃度はさまざまにした。カチオン性(DD50)、アニオン性(SDS、フルオロリンク)、および非イオン性界面活性剤(EOmCnH2nOHの形状のアルキルエトキシレート化界面活性剤を使用し、濃度を1mg界面活性剤/mlPEDOT/PSS原液と、<0.1mg界面活性剤/mlPEDOT/PSS原液との間で変えた。DD50およびエトキシレート化界面活性剤の場合、インクは水中のPEDOT/PSS原液とイソプロパノール中の界面活性剤の溶液との混合物からなっていた。なぜならDD50とアルキル鎖がn=5よりも長いエトキシレート化界面活性剤は両方とも水に溶けないからである。
【0082】
界面活性剤改質インクを表面極性の異なる広範囲のさまざまな基板にインクジェット蒸着した。表面上に多数の陰性に電気を帯びたOH−官能基を生成するO2プラズマ処理(250Wで10分間)により湿潤された7059ガラス基板を使用した。親水性ガラス基板もまた4次化アミン自己組織化単層によって改質して陽性NMe3+表面基で停止する極性表面を生成した(P. K. Ho, Adv. Mat. 10, 770(1998年))。ガラス基板はまたPVPおよびPMMAポリマーの層でもコーティングした。ポリマー表面は短時間の、低電力O2プラズマエッチング工程(100W、30秒間)によって親水性湿潤状態で準備された。PMMAの場合この工程は必要である。なぜなら表面はあまりにも疎水性でありすぎるためPEDOTの連続的なパターンをインクジェット印刷できないからである。すべての場合において、界面活性剤改質PEDOT液滴は、界面活性剤によって誘発される表面エネルギーの低下により乾燥後基板上で純粋なPEDOT液滴よりも大きな半径を有する。これは、乾燥プロセス中に界面活性剤が表面に分離している証拠である。
【0083】
第1の電極パターンを蒸着後、ガラス基板を100から150℃の温度でアニールして残留水をPEDOTから除去し、界面活性剤の分離をさらに促進する。2回目の実験では、最初のPEDOT電極を蒸着する前に基板をアニールしなかった。
【0084】
第2のPEDOT電極については、非改質PEDOT/PSS原液ならびに第1のPEDOTパターンの蒸着に使ったインクを含む同じ界面活性剤の両方を使った。第1の液滴が第2の液滴のインクをはじく能力については、差異は観察されなかった。
【0085】
同一の第2および第1の電極のためのインクの場合、第2の電極パターンは、場合によっては第1の電極がまだ部分的に液体状であっても第1のパターンの直後に印刷された。この場合でさえも、2つの液滴間の反発が確認された。
【0086】
水溶性SDSのようないくつかの界面活性剤を使うと、短絡のないソース−ドレイン電極の歩留まりは第2の液滴のインクが第1の液滴上に直接は印刷されず、基板上の第2の液滴の拡散運動中に第1の電極の端部にのみ接触する場合に、より高くなった。これは、第2の液滴の水性インクが界面活性剤の殻に接触するときに界面活性剤コーティングが部分的に溶解するためと思われる。印刷距離sを、第2の液滴が基板表面に衝突するときの第1の液滴の端部と第2の液滴の中心との間の最小差として定義することができる。もし基板に衝突する前に空気中で第2の液滴が直径d1であり、基板の均一領域における拡散運動中に最大直径d2であれば、印刷距離sはd1/2+Δ<s<d2/2の範囲でなければならない。Δは安全距離であり、Δが大きくなるほど第2の液滴の接触線が第1の液滴の境界にぶつかる運動エネルギーが小さくなる。Δ≧20μmであれば、たとえ第2の液滴のインクが第1のPEDOTパターンから流れ出なかった場合でさえも信頼性のある印刷が観察された。図14はガラス基板(a)及び(b)上およびPMMA基板(c)及び(d)上の自己整合による第1および第2の液滴の光学顕微鏡写真を示している。第1の液滴は丸いが、第2の液滴は変形しており第1の液滴の丸い形状に一致している。
【0087】
表面の極性はソースとドレインとの間に短絡のある装置の数という点で自己整合印刷の信頼性に大きな影響を及ぼすことが観察された。表面に高密度の陰性に電気を帯びたヒドロキシル基を持つプラズマ処理されたガラス表面においては、SDSのようなアニオン性界面活性剤はDD50のようなカチオン性界面活性剤よりも大幅に低い信頼性を示した。一方、SAM処理された、NH3+停止ガラス表面においては、SDSはDD50よりも著しく良好な信頼性を示した(図15)。このことは界面活性剤の観点からして、反発力を及ぼす最初の液滴の端部周りの幅が有限の表面領域が、第2の液滴がこの周辺領域へと広がろうとするときに改質されるものと解釈される。この表面改質は、第1の液滴が、乾燥中に、接触線が固定される前に、または第1の液滴に占領された領域から界面活性剤が拡散することにより、基板上でいくらか後退するときに起こる可能性がある。界面活性剤はまた液滴の拡散中に表面に付着して接触線をわずかに−>「孤独恐怖」だけ後退させる可能性がある。第1の液滴の周りの領域において基板の表面を改質する能力は、先頭基が基板表面の官能基とは反対の電荷を持っている場合に強化されるように思われる。
【0088】
界面活性剤の基板表面を改質する能力を赤外線分光学によって直接検証した(図15b)。陰性に電気を帯びた、O2プラズマ処理された基板をDD50の溶液に浸漬し、赤外線分光を浸漬後に取ると、DD50分子が基板表面に結合するという証拠が得られた。DD50の特徴的な形跡は、基板を水で洗浄した後でさえも観察された。陽性に電気を帯びた表面では、DD50蒸着の証拠は観察されなかった。同じような結果はSDSについても得られた。
【0089】
液滴周辺領域における基板の表面改質のさらなる証拠を、最初のPEDOT電極の溶液中の界面活性剤濃度を変化させることによって得た。PEDOT溶液中のDD50濃度が低いほど、第1の電極と第2の電極との間に形成される間隙が小さくなることがわかった。図16はDD50の濃度が異なる自己整合ソースドレイン電極の原子間力顕微鏡写真である。この実験において、第1および第2の電極のPEDOTインクは同じであった。印刷の安全距離はΔ=20μmであった。1mg/mlの濃度では、2つの電極間の自己整合間隙は10μmの桁であり、ある濃度では間隙は約2μmの桁であり、0.1mg/ml未満の濃度では間隙は200から400nmであった。このことは、間隙の大きさは界面活性剤の濃度で制御できることを示している。このことはまた、界面活性剤は液滴のすぐ隣の表面領域を改質する作用があるというさらなる証拠にもなる。
【0090】
図17は印刷された底面ゲートPEDOT電極、ブチルアセテートから蒸着された厚さ1μmのPMMA誘電体層、濃度が0.1mg/mlより低いDD50を含む溶液から蒸着された自己整合PEDOTソース−ドレイン電極、および一番上にm−キシレンからスピンコーティングされたP3HT半導体層を備える2つのTFTの出力特性および伝達特性を示している。自己整合印刷前にPMMA表面を100Wに30秒間さらした。この装置のチャネル長さは200から400nmの桁であり、チャネル幅は50μmの桁であった。きれいなp型電界効果動作が確認され、飽和伝達特性から抽出された電界効果移動度は10−3cm2/Vsの桁である。
[実施例3]
【0091】
界面活性剤なしPEDOT/PSSインク
実施例2で説明したのと類似の実験を、まったく界面活性剤を含まないPEDOT/PSSインクを使っても実施した。この場合、O2プラズマ処理されたガラス基板上ではその処理は効果がないこと、すなわち第2の液滴が基板上に拡散中に第1の液滴に接触するときはいつでも第1の液滴を濡らして電気的短絡が発生したことが観察された。
【0092】
しかしながら100Wで30秒間O2プラズマ処理されたPMMA表面では、もし印刷距離を非常に注意深く制御して、すなわちΔ=20μmが十分に大きく、拡散する第2の液滴が第1の液滴に接触するときに接触線速度が遅くなるようにすると、電気的短絡を生じることなく200nmの桁の小さな間隙が形成されることが観察された。このことから、精度の良い印刷状態では、PEDOT/PSS自体の表面、すなわちさらなる界面活性剤がない状態では、第1および第2のPEDOT液滴間で十分に強い反発力が得られることがわかる。このことはPEDOTが相分離する傾向があることに関連すると思われる。乾燥させると、表面はより疎水性のPSSH成分で富裕化される。反発力について2つ目の考えられる理由は、第1の液滴の端部の周りに改質された表面領域が存在することである。この改質表面領域は、プロトン化PSSHなどの何らかの疎水性成分をPEDOT溶液から基板表面に蒸着すると同時に第1の液滴が溶液の乾燥中に後退することによって形成され得たものであるか、または前駆体湿潤層の乾燥中に疎水性材料を蒸着することによって形成され得たものである。PMMA基板上では、水中のPEDOTの接触角度はガラス基板上におけるよりも著しく大きい点に留意すべきである。PEDOT/PSSが疎水性表面を示す傾向は、第2のPEDOTパターンを蒸着する前に第1のPEDOTパターンをアニール処理することによって強化される。
[実施例4]
【0093】
垂直相分離による自己整合印刷
装置を、イソプロパノール中のPVP溶液と混合された水中のPEDOT/PSSの配合物(PEDOT1:1中に6.3mg/mlのPVP。80パーセントのH2Oおよび20パーセントのIPAを含む)から第1の電極をインクジェット印刷することによっても製造した。PVPを選んだのは、表面の極性がPEDOT/PSSよりも小さく、PVPは水を混和するアルコール溶媒に溶解することができる、すなわちPVPはPEDOT/PSSと共蒸着できるからである。ガラス基板上で溶液を乾燥中、PVP成分が表面に分離し第1の液滴の周りに疎水性表面コーティングを形成する。PEDOT/PSSとPVPとの間の垂直相分離は第1の印刷電極の後蒸着アニールによって強化できることが観察された。60℃の温度で(6時間にわたって)のイソプロパノール溶媒の雰囲気下でアニールを行うと特に有効であることがわかった。アニール工程中、溶媒がポリマーの移動度を強化するものと思われる。
【0094】
水中のPEDOT/PSSの第2の液滴(PVPを含まない)を第1の液滴と接触して印刷したとき、2つの液滴間で非常に効率的な反発が観察された。図18(a)は2つの電気プローブによって測定された導電率の測定を示しており、電気プローブは両方とも第1のPEDOT/PVPに配置され、両方とも第2のPEDOT液滴に配置され、一方の電極が第1のPEDOT/PVP液滴に配置され他方の電極が第2のPEDOT液滴に配置されており、第1の液滴と第2の液滴との間には電気的短絡が存在しないことを示している。第1のPEDOT/PVPの導電率は第2の純粋なPEDOT液滴に対して2分の1から3分の1に低減される。図18(b)は、第1の液滴と第2の液滴の間の漏れ電流を、蒸着後に第1の液滴を溶媒アニールすることによって小さくできることを示している。
【0095】
図19は第1のPEDOT/PVP電極を備えているが、ほかの点では実施例3で説明したのと同じ方法で製造されたトップゲートF8T2装置の出力および伝達特性を示している。第1のPEDOT/PVP電極を電荷注入ソース電極として使用すると、ソース電極として第2の純粋なPEDOT第2電極を備えた装置の動作と比較して電流は2分の1から3分の1に低減される。このことは、第1の電極表面上の薄い絶縁PVP膜が装置の接触抵抗に貢献していることを表している。この問題はソースとして第2の電極を使用することで解決することができる、なぜならソース電極は逆バイアス電極であるため接触抵抗に対してより敏感な傾向があるからである。さらに、接触抵抗は第1の液滴の形成時にPVP濃度を最小にすることにより、または第2の電極を蒸着した後にイソプロパノールまたは他のアルコールの浴槽に基板を浸漬するなど、選択的にPVP表面層を溶解することによって小さくすることができる。
[実施例5]
【0096】
エッチングによる短絡の除去
いくつかの界面活性剤および印刷状態について上で述べたように、互いに接触し合ういくつかの第1の液滴と第2の液滴との間に電気的短絡が観察された。しかしながらこのような場合でさえも、2つの液滴間の接触領域の厚さは2つの液滴の中心の厚さよりも大幅に小さいことが観察された。2つの液滴は、厚さの輪郭が2つの液滴間の接触線に向かって連続的に減少する厚さを有することを示している(図21のAFM顕微鏡図を参照のこと)。
【0097】
本発明者は、サンプルのエッチングによって電気的短絡を除去できることを見出した。エッチング処理により表面から所定の厚さのPEDOT層を除去する(図20(a)の概略図を参照)。液滴の中心ではこれは導電率に大きな影響を及ぼすことはないが、接触線ではエッチング処理ですべての導電性材料が完全に除去され電気的短絡が取り除かれる。蒸着後に短絡した液滴を80Wの酸素プラズマにさまざまな時間の間露出することにより、30秒後に接合部を流れる電流が観察できなくなるまでエッチング時間の関数として2つのPEDOT液滴間で測定される導電率が連続的に小さくなること観察された(図20(b)および(c))。図21は蒸着後に一対の最初に短絡した液滴の原子間力顕微鏡図((a)および(c))、および80WのO2プラズマ処理を30分行った後の原子間力顕微鏡図を示している((b)および(d))。酸素プラズマ処理後、表面粗さが高められた。第1の液滴と第2の液滴の間の間隙は非常に小さいため原子間力顕微鏡では検出できないが、図20の電気測定で間隙が存在することがはっきりと示されている。
【0098】
図20(e)および(f)は、最初に短絡する一対の自己整合PEDOTソース−ドレイン電極をガラス基板上に持つトップゲート電界効果トランジスタの出力および伝達特性を示している。この装置は、短絡した電極をO2プラズマエッチング処理にかけた後製造した。F8T2の半導体ポリマーおよびPVPゲート誘電体をPEDOTソース−ドレイン電極の上にm−キシレンおよびブチルアセテートの溶液からそれぞれスピンコートした。この装置は、出力特性における電流飽和の欠如といったはっきりとした短チャネル特性、およびソース−ドレイン電圧の上昇にともなうオン−オフ電流比の低下を示す。
[実施例6]
【0099】
PEDOTの後蒸着界面活性剤特性
第1および第2のPEDOT液滴間の効率的な反発は、第2のPEDOT液滴の蒸着前に第1のPEDOT電極表面を界面活性剤にさらすことによっても達成された。PEDOT/PSS(1部分Baytron PH:1部分H2O)の最初のパターンをO2プラズマ処理されたガラス基板上に蒸着する。そして基板を150℃で20分間アニールする。その後基板を5から10分間、水中のカチオン性界面活性剤ジデシルジメチルアンモニウム臭化物の溶液(濃度1−1.5mg/ml)、またはフッ素化カチオン性界面活性剤[3[[(ヘプタデカフルオロオクチル)スルホニル]]アミノ]プロピル]トリメチルアンモニウムヨードに漬ける。その後、基板をイソプロパノールまたは水で洗浄する。
【0100】
そして、第2のPEDOT電極をインクジェット印刷によって塗布する。非常に効率的な反発が観察される。たとえ第2の液滴が第1のパターンの上に印刷された場合であっても、第2の液滴は第1の液滴の表面から流れ出て第1の液滴に隣接する領域で乾燥し、2つの液滴間には10μm未満の小さな間隙が形成された状態となる。
【0101】
このような方法によりDD50で処理されたPEDOT/PSS表面の水接触角度は、改質されていないPEDOT/PSSの場合に観察される10°未満の水接触角度と比較して105°±5°であることが観察された。界面活性剤改質PEDOT/PSSの場合、水接触角度は少なくとも数分間にわたって安定しているが、改質されていないPEDOT/PSSでは接触角度は時間とともに小さくなる、これはPEDOT膜が水滴中に溶解していることを表している。このような溶解は界面活性剤改質PEDOT/PSS表面の場合には起こらないと思われる。
【0102】
PEDOT/PSS表面上の表面基に共有結合する自己組織化単層を使って第1のPEDOTパターンの別の後蒸着を達成することもできる。フルオロアルキルモノ−またはトリクロロシラン自己組織化単層は、PEDOT表面と選択的に反応するが、陽性に電気を帯びたNH3+基で停止する改質ガラス基板表面またはPMMA基板表面は改質しない。
[実施例6]
【0103】
ポリマーブラシ成長による表面改質
ポリマーブラシは鎖重合開始剤によって表面を官能化することによって制御された方法で表面から成長させることができる。この鎖重合は原子転移ラジカル重合(ATRP)などの制御されたラジカル重合であり得、開始剤は2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸エステル誘導体であり得る。
【0104】
この開始剤をPEDOTの表面に固定するには、PEDOTの表面をまず最初にO2プラズマで酸化して表面−OH基を導入する。そして活性化された表面を上述の開始剤を含むトリクロロシラン誘導体と反応させる。あるいは、開始剤官能化界面活性剤状分子をPEDOT溶液に混合し、そして得られた溶液が、表面上でPEDOT膜を乾燥すると開始剤を表面に露出した状態で表面単層を形成する。PEDOT表面に開始剤を導入する第3の方法は、開始剤の官能性をもつPEDOT誘導体を合成することである。
【0105】
モノマー(ATRPの場合、これは何らかのアクリレートまたはメタクリレートであり得る)、触媒(Cu(I)ClまたはCu(I)Br)、およびリガンド(PMDETA、ビピリジン、または他の公知でCu塩を可溶化するのに適したリガンド)を含んだ溶液に開始剤官能化PEDOT膜をさらす。必要に応じて溶媒を使用してよい(水やメタノールのような極性溶媒は反応を大幅に早め、エチルアセテートやトルエンは別の2つの公知の溶媒である)。より精度良く反応を制御するために、Cu(II)塩を添加してよい。
【0106】
表面を設定された時間重合媒体中に放置し、その後過度なモノマーおよび触媒を表面から洗浄するとポリマーブラシが後に残る。PEDOT/PSS第1電極の表面に成長したPMMAのポリマーブラシの場合、PMMAは疎水性表面コーティングを形成する。このコーティングは第2のPEDOT/PSS電極パターン用の液滴を効率的にはじく。
【0107】
界面活性剤分子を選択して本発明による電子装置の自己整合製造を行うための1つの一般的な基準は、界面活性剤の極性基から由来するイオン不純物による装置の汚染を最小限にとどめるべきであるということである。これは低い濃度の界面活性剤を使うか、非イオン性界面活性剤を使うことによって達成できる。さらに、ポリマー性界面活性剤のような分子量のより大きな界面活性剤を使うことにより、装置の動作中または長期の動作中に電場の作用のもとでの界面活性剤の拡散を小さくすることができる。
【0108】
第2の液滴をはじくのに特に有効な表面改質剤の種類は、アニオン性またはカチオン性フッ素化界面活性剤のようなフッ素化表面改質剤である。第1のPEDOT液滴のフッ素化表面においては100°に近い高い水接触角度を達成することができる。
【0109】
本願で説明するプロセスおよび装置は溶液処理されるポリマーを使って製造される装置に限定されるわけではない。TFTのいくつかの導電性電極、および/または回路もしくは表示装置(以下を参照のこと)中の相互接続は、例えばコロイド懸濁液の印刷または前パターンニングされた基板上への電気めっきにより蒸着できる無機導電体から形成できる。すべての層が溶液から蒸着されるわけではない装置においては、装置の1つ以上のPEDOT/PSS部分を真空蒸着導電体などの不溶導電性材料に置き換えてよい。
【0110】
半導体層については、10−3cm2/Vsを超え、好ましくは10−2cm2/Vsを超える適切な電界効果移動度を示すどのような溶液処理可能な共役ポリマー性またはオリゴマー性材料を使ってもよい。適切な材料は、例えばH. E. Katz, J. Mater. Chem. 7,369(1997年)、またはZ. Bao. Advanced Materials 12, 227(2000年)で検討されている。その他の可能性のあるものとしては、可溶性側鎖を持つ小規模共役分子(J.G. laquindanumら、J. Am. Chem. Soc. 120, 664(1998年))、溶液から自己組織化した半導体有機−無機ハイブリッド材料(C. R. Kaganら、Science 286, 946(1999年))、またはCdSeナノ粒子のような溶液蒸着無機半導体(B. A. Ridleyら、Science 286, 746(1999年))が挙げられる。
【0111】
電極はインクジェット印刷以外の技術によって粗く印刷できる。適切な技術としては、ソフトリソグラフィー印刷(J. A. Rogersら、Appl. Phys. Lett. 75, 1010(1999年)、およびS. Brittainら、physics World 1998年5月、31頁)、スクリーン印刷(Z. Baoら、Chem. Mat. 9, 12999(1997年))、およびフォトリソグラフィーパターンニング(WO99/10939を参照のこと)、オフセット印刷、フレキソグラフィー印刷または他のグラフィックアート印刷技術が挙げられる。位置あわせが良好な大面積のパターンニング、特にフレキシブルプラスチック基板にはインクジェット印刷が特に適していると考えられている。
【0112】
装置および回路のすべての層および構成素子が、溶液処理および印刷技術によって蒸着され且つパターンニングされることが好ましいものの、半導体層のような1つ以上の構成素子を真空蒸着技術によって蒸着しおよび/またはフォトリソグラフィープロセスによってパターンニングしてもよい。
【0113】
上述のように製造されたTFTのような装置は、1つ以上のこのような装置を互いに一体化できそして/または他の装置と一体化できるより複雑な回路または装置の一部となり得る。適用例としては、ディスプレイまたはメモリ装置用の論理回路およびアクティブマトリックス回路、または使用者が規定するゲートアレー回路が挙げられる。
【0114】
相互接続、レジスタ、コンデンサなどの、このような回路の他の構成素子をパターンニングするのにパターンニングプロセスを同様に使ってよい。
【0115】
本発明はポリマートランジスタ装置に限定されるわけではない。本願は2つの印刷パターン間に狭い間隙を持つ構造が必要とされる場合であれば適用できる。第1の材料および第2の材料のいずれもコロイド銀または銅インクのような溶液処理可能な無機導電体、可溶化無機ナノクリスタルのような溶液処理無機半導体、またはスピンオンガラスのような溶液処理可能な無機誘電体のような無機材料であってよい。装置は、発光装置または光起電装置のようにパターンニングが制御され形状サイズが小さいことが必要とされるどのような装置であってもよい。
【0116】
一例として、小面積LEDまたはフォトダイオードの活性領域は、第1の局限障壁80と第2の局限障壁81との間の自己整合した小さな間隙に少なくとも1つの半導体発光材料82を印刷することによって形成できる。基板は正孔注入アノード79を含んでおり、装置の上には電子注入カソード層83が蒸着されている(図13)。
【0117】
本発明の可能性のある他の適用例としては、従来のグラフィックアート印刷において2つの印刷パターン間の間隙が狭いことまたは幅の狭い印刷パターンが要求され、これが表面エネルギーパターンニングを利用しなければ達成することができない場合であればいつでも適用できる。
【0118】
本発明で開示する技術により、溶液処理可能な材料を所定の位置へ方向付けるのに表面エネルギー前パターンニングを必要としない歩留まりの高い、解像度の高い印刷が可能となる。
【0119】
本発明は上述の実施例に限定されるわけではない。本発明の側面は、本願に記載した概念のすべての新規性および/または進歩性ある側面、および本願に記載した特徴のすべての新規性および/または進歩性ある組み合わせを含むものである。
【0120】
出願人は本願で記載するそれぞれの個々の特徴および2つ以上のこのような特徴のどのような組み合わせも、このような特徴または特徴の組み合わせが本願で開示されているいずれかの問題を解決するかどうかにかかわらず、また特許請求の範囲に制限を加えることなく、このような特徴または組み合わせが全体として当業者の常識的な一般知識に照らし合わせて本明細書に基づいて実施できる程度に本願により別個に開示する。出願人は、本発明の側面はこのような個々の特徴または特徴の組み合わせのいずれによっても構成することができることを示している。上述の記載をかんがみて本発明の範囲内でさまざまな変形を行ってよいことは当業者にとって明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】自己整合表面コーティング層を持つ第1の材料の領域から第2の溶液がはじかれるところを示している。
【図2】CF4に露出することによって得られた選択的にフッ素化された表面を持つ第1の材料の領域から第2の溶液がはじかれるところを示している。
【図3】第1の印刷パターンの周りの表面領域から第2の溶液がはじかれるところを示している。
【図4】第1の材料の溶液を乾燥中に表面改質剤を蒸着することによって第1の液滴の周りの領域を自己整合改質するところを示している。
【図5】乾燥中に薄い表面層を溶解することによって第1の液滴の周りの領域を自己整合改質するところを示している。
【図6】第1の材料の選択的にフッ素化された領域から第2の溶液が、まだ両方の液滴が液体であるときにはじかれるところを示している。
【図7】表面層の脱ドーピングによって第1の導電材料の表面を改質するところを示している。
【図8】自己整合ソース−ドレイン電極を備えたTFTのさまざまな装置構成を示している。
【図9】2つの側面に局限された自己整合している幅の狭い線を形成するところを示している。
【図10】直径の小さいヴィアホール相互接続の自己整合形成を示している。
【図11】表面キャップ層がチャネル長さを規定しならびに装置の半導体層として機能するという両方の役割を果たしている自己整合TFTの構成を示している。
【図12】表面キャップ層がチャネル長さを規定しならびに装置の誘電体層として機能するという両方の役割を果たしている自己整合TFTの構成を示している。
【図13】活性領域の小さい自己整合型のLEDまたはフォトダイオードの構成を示している。
【図14】自己整合法によって印刷されたPEDOT/PSSの乾燥した液滴の光学顕微鏡写真を示している。
【図15】さまざまな濃度のカチオン性界面活性剤ジ−n−デシルジメチルアンモニウム塩化物(DD50)を使って蒸着された自己整合PEDOT/PSS液滴の原子間力トポグラフィー断面図および顕微鏡写真である。
【図16】自己整合印刷法によりPMMAゲート誘電体の上に製造された底面ゲートP3HT TFTの出力および伝達特性を示している(DD50の濃度は1mg/ml未満)。
【図17】ソースおよびドレイン接触の導電率およびPVP−PEDOT/PSS混合物を使って製造された自己整合PEDOT/PSS電極の自己整合間隙にわたる導電率を示す電流電圧特性を示している。
【図18】PVP−PEDOT/PSS第1電極を備えた自己整合トップゲートF8T2 TFTの出力および伝達特性を示している。
【図19】O2プラズマに露出した際の、最初に短絡するPEDOT/PSSソース−ドレイン電極の導電率の低下を示している。
【図20】最初に短絡したソース−ドレイン電極(a.)およびc.))およびO2プラズマエッチングされたソース−ドレイン電極(b.)およびd.))の原子間力顕微鏡写真ならびにO2プラズマエッチング後のトップゲートF8T2TFTの出力および伝達特性を示している。
【図21】(a)陽性に電気を帯びたNH3+停止表面ならびに陰性に電気を帯びたOH−表面上のアニオン性SDSおよびカチオン性DD50界面活性剤から蒸着された自己整合PEDOT/PSS液滴の光学的顕微鏡写真、および(b)脱イオン化水で洗浄する前および後にDD50の溶液中に漬けたSi/SiO2表面の赤外線スペクトラムである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子装置を形成する方法であって、
基板の第1の領域上に第1の物体を形成する工程、そしてそれに引き続いて
第2の組成物の液体を前記第1の物体に接触して蒸着することにより、前記第1の領域に隣接した前記基板の第2の領域上に前記第1の物体と接触して第2の物体を形成する工程、を備え、
前記第1の物体は非導電性又は半導体性の表面領域を有しており、当該表面領域の厚さは前記電子装置の臨界形状の寸法を規定する方法。
【請求項2】
前記第2の組成物の液体は前記基板の前記第1の領域の周辺においてのみ前記第1の物体と接触するように蒸着される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1および第2の物体は実質的に同じ材料からなる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の組成物は分離して表面領域および第1の物体の内部領域を形成する傾向を持っており、前記表面領域は前記内部領域とは異なる組成を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記表面領域上の前記第2の組成物の液体の接触角度は前記第2の領域の前記基板表面における接触角度よりも10°を超えて大きい、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記表面領域上の前記第2の組成物の液体の接触角度は前記第2の領域の前記基板表面における接触角度よりも40°を超えて大きい、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記表面領域上の前記第2の組成物の液体の接触角度は前記第2の領域の前記基板表面における接触角度よりも70°を超えて大きい、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記表面領域はアルキレート化またはフッ素化化学基を含んでいる、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の組成物の液体は溶媒を含んでおり、前記表面領域は前記溶媒に溶けない、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の組成物は分離する傾向を持つ少なくとも2つの成分の溶液である、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記成分のうち1つは前記第1の組成物の表面に分離する傾向のあるポリマーである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記成分のうち1つは比較的極性のブロックおよび比較的非極性のブロックを含むジブロックコポリマーである、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記成分のうち1つは界面活性剤である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の成分の液体を蒸着する前に前記第1の物体を処理して前記第1の物体の表面の少なくとも1つの物理的または化学的特性を改質する工程を備える、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記特性は組成である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記特性は表面粗さである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記特性は表面エネルギーである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の物体の表面を処理する工程は前記第2の領域における前記基板の表面エネルギーを改変しない、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の物体の前記処理された表面上の前記第2の組成物の液体の接触角度は前記第2の領域における前記基板表面上の接触角度よりも10°を超えて大きい、請求項14から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記第1の物体の前記処理された表面上の前記第2の組成物の液体の接触角度は前記第2の領域における前記基板表面上の接触角度よりも40°を超えて大きい、請求項13から18のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記第1の物体の前記処理された表面上の前記第2の組成物の液体の接触角度は前記第2の領域における前記基板表面上の接触角度よりも70°を超えて大きい、請求項13から18のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記第1の物体の表面を処理する工程は、前記第1の物体の表面上のフッ素化またはアルキレート化化学基の密度を高める工程を備える、請求項14から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記第1の物体を表面処理する工程は、界面活性剤を前記第1の物体の表面に塗布する工程を備える、請求項14から19のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記第1の物体の表面は陽性に電気を帯びたイオン種を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記界面活性剤はアニオン性界面活性剤である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の物体の表面は陰性に電気を帯びたイオン種を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記界面活性剤はカチオン性界面活性剤である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記基板表面は、前記界面活性剤を塗布する前に熱処理または電磁放射にさらされる、請求項23から27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記第1の物体の表面を処理する工程は、前記第1の組成物の表面から異なる組成物の層を成長させる工程を備える、請求項14から22のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記異なる組成物の層はポリマー層である、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記異なる組成物の層はポリマーブラシである、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の物体の表面を処理する工程は、前記基板をプラズマ処理にさらす工程を備える、請求項14から19のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記プラズマ処理はフッ素化種を含んだプラズマにさらす工程を備える、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記プラズマ処理はCF4またはCF4のラジカルにさらす工程を備える、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第1の物体を表面処理する工程は、前記第1の物体の表面を脱ドーピングするかまたは前記第1の物体の表面から電荷担体を空乏化させる工程を備える、請求項14から22のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記第1の物体を表面処理する工程は、前記第1の物体の表面をエッチングする工程を備える、請求項14から22のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記第1の組成物は溶媒中の1つ以上の材料の溶液を含んでおり、この溶液は乾燥して前記第1の物体を形成するものであり、前記第1の物体はバルク領域とバルク領域の周辺にあって基板と接触している周辺領域とを有している、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記周辺領域の幅は20μm未満である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記周辺領域の表面エネルギーは、前記第1の物体では覆われていない領域における基板表面の表面エネルギーとは異なる、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
前記周辺領域の表面粗さは第2の領域における前記基板表面の表面粗さとは異なる、請求項37または38に記載の方法。
【請求項41】
前記周辺領域における前記第1の物体の厚さは、前記バルク領域における前記第1の物体の最大厚さの80パーセントを超えることはない、請求項37から40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
前記第1の組成物の溶液の乾燥中に前記第1の組成物の溶液が前記周辺領域から後退する、請求項37から41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記第1の組成物の溶液は、前記周辺領域における前記基板の表面エネルギーを改変する表面改質成分を含んでいる、請求項37から42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
前記表面改質成分が前記基板の表面エネルギーを改変すると同時に前記第1の組成物の溶液が前記周辺領域から後退する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記表面改質成分は前記バルク領域から前記周辺領域へと拡散する、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記第2の組成物の液体を蒸着する前に、前記基板を加熱して前記第1の物体を前記周辺領域から後退させる、請求項37から45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
前記方法は、前記周辺領域において前記第1の物体の表面を処理し、その結果前記周辺領域において前記第2の組成物の溶液の接触角度を高める工程を備えている、請求項37から46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
前記基板は前記第1の組成物の溶液の乾燥中に前記第1の組成物の溶液中に溶解する表面層を有しており、これにより前記周辺領域において前記基板の下地材料を露出させる、請求項37から41のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
前記第1の物体を蒸着した後に前記周辺領域において前記第1の物体の材料を除去するさらなる工程を備える、請求項34から45のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
前記周辺領域において前記第1の物体の材料を除去する前記工程はエッチングを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記第2の組成物の液体は界面活性剤を含む、請求項1〜50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
前記第2の組成物の液体が蒸着されている間は前記第1の物体は固体状態である、請求項1〜51のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
前記第2の組成物の液体が蒸着されている間は前記第1の物体は液体状態である、請求項1ないし51のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
前記第1の組成物の液体を前記基板に蒸着した後にこれを局限し、その結果前記第1の物体の形成された領域において前記第2の組成物の液体を前記第1の物体に接触させる工程を備える、請求項1〜53のいずれかに記載の方法。
【請求項55】
前記第1または第2の組成物のうち少なくとも1つの液体はインクジェット印刷によって蒸着される、請求項1〜54のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
前記第1または第2の組成物のうち少なくとも1つの液体はスプレーコーティングによって蒸着される、請求項1〜55のいずれかに記載の方法。
【請求項57】
前記第1または第2の組成物のうち少なくとも1つの液体は連続した膜としての前記基板上に塗布され、前記基板は比較的表面エネルギーの低い領域を含んでおり、これにより前記比較的表面エネルギーの低い領域から液体を乾燥させる、請求項1から55のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
前記第1の組成物の液体はオフセット印刷によって蒸着される、請求項1から57のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
前記第2の組成物の液体は乾燥して第2の物体を形成し、前記第1の物体および前記第2の物体のうち少なくとも1つは導電性である、請求項1〜58のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
前記第1の物体および前記第2の物体は両方とも導電性である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記第1および第2の物体は電子装置の電極を形成する、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記第1および第2の物体は電子スイッチング装置のソースおよびドレイン電極を形成する、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記第1および第2の物体は薄膜トランジスタのソースおよびドレイン電極を形成する、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記第1または第2の物体のうち少なくとも1つは導電性ポリマーを含んでいる、請求項59から63のいずれかに記載の方法。
【請求項65】
前記第2の組成物の液体は乾燥して第2の物体を形成し、前記第1および第2の物体のうち少なくとも1つは溶液から蒸着された無機導電性材料を含んでいる、請求項59から63のいずれかに記載の方法。
【請求項66】
前記第2の組成物の液体は乾燥して第2の物体を形成し、前記第1および第2の物体のうち少なくとも1つは半導体性である、請求項1から58のいずれかに記載の方法。
【請求項67】
前記第1の物体と前記第2の物体は両方とも半導体性である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記第1の物体および前記第2の物体のうち少なくとも1つは共役ポリマーを含んでいる、請求項66または67に記載の方法。
【請求項69】
前記半導体性の物体をアクティブ半導体層として有する電子装置を形成する工程を備える、請求項66から68のいずれかに記載の方法。
【請求項70】
前記第2の組成物の液体は乾燥して前記第2の物体を形成し、前記第1の物体および前記第2の物体のうち少なくとも1つは電気絶縁性である、請求項1から58のいずれかに記載の方法。
【請求項71】
前記第1の物体と前記第2の物体は両方とも電気絶縁性である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記第1または第2の物体のうち少なくとも1つは電気絶縁性ポリマーを含んでいる、請求項70または71に記載の方法。
【請求項73】
前記第1の物体の前記表面領域は電気絶縁性である、請求項4から36のいずれかに記載の方法。
【請求項74】
前記電気絶縁性の表面領域を誘電体層として有する電子装置を形成する工程を備える、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記電気絶縁性の表面領域を誘電体層として有する薄膜トランジスタを形成する工程を備える、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記第1の物体の前記表面領域は導電性である、請求項4から36のいずれかに記載の方法。
【請求項77】
前記導電性の表面領域を電極として有する電子装置を形成する工程を備える、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記導電性の表面領域は電荷を半導体層に注入するための電気注入層を形成する、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記第1の物体の前記表面領域は半導体性である、請求項1から6のいずれかに従属している請求項4から36のいずれかに記載の方法。
【請求項80】
前記半導体性の表面領域をアクティブ半導体層として有する電子装置を形成する工程を備える、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記電子装置は電子スイッチング装置である、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記電子装置は薄膜トランジスタである、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記第2の物体を蒸着した後に前記第1の物体の表面領域を除去する工程を備える、請求項4から36のいずれかに記載の方法。
【請求項84】
前記第1および第2の物体の端部間の距離は20μm未満である、請求項1〜83のいずれかに記載の方法。
【請求項85】
前記第1および第2の物体の端部間の距離は1μm未満である、請求項1〜84のいずれかに記載の方法。
【請求項86】
前記第1および第2の物体の端部間の距離は100nm未満である、請求項1〜85のいずれかに記載の方法。
【請求項87】
前記第1および第2の物体の端部間の距離は10nm未満である、請求項1〜86のいずれかに記載の方法。
【請求項88】
前記第1および第2の物体の上に第3の組成物の溶液を蒸着して前記第1および第2の物体に接触した第3の物体を形成するさらなる工程を備える、請求項1〜87のいずれかに記載の方法。
【請求項89】
前記第3の組成物の溶液は前記第1および第2の物体の両方の表面からはじかれる、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記第3の物体は前記第1および第2の物体の端部間の前記基板上の領域に局限される、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記第3の物体は半導体性である、請求項88から90のいずれかに記載の方法。
【請求項92】
前記第3の物体は導電性である、請求項88から90のいずれかに記載の方法。
【請求項93】
前記第3の物体は電気絶縁性である、請求項88から90のいずれかに記載の方法。
【請求項94】
前記第1および第2の物体の上に溶媒を蒸着するさらなる工程を備えており、前記溶媒は前記第1および第2の物体の端部間の領域において前記基板上の層を溶解する、請求項請求項1から87のいずれかに記載の方法。
【請求項95】
前記溶解により前記基板の層構成の一部である導電性層にヴィアホール相互接続を開け、さらなる導電性材料を前記第1および第2の物体間の領域に蒸着して前記ヴィアホール相互接続を充填する、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記ヴィアホール相互接続の直径は20μm未満である、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
請求項1〜96のうちいずれかに記載の方法によって形成される電子装置。
【請求項98】
請求項1〜96のうちいずれかに記載の方法によって形成される論理回路、ディスプレイメモリまたはセンサ装置。
【請求項99】
ソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極と、電気的に前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に存在する半導体領域と、電気的に前記半導体領域と前記ゲート電極との間に存在する誘電体領域とを備えており、前記半導体領域は前記ソース電極および前記ドレイン電極のうち少なくとも1つにわたって位置する実質的に均一な厚さの層の形状であり、且つ前記半導体領域は物理的に前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に隣接して位置することにより前記ソース電極と前記ドレイン電極とを分離してこれらが最も近接する部分で前記ソース電極と前記ドレイン電極とが前記層の厚みによって間があけられるようにしている、電子スイッチング装置。
【請求項100】
ソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極と、電気的に前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に存在する半導体領域と、電気的に前記半導体領域と前記ゲート電極との間に存在する誘電体領域とを備えており、前記誘電体領域は実質的に均一な厚さの層の形状であり、前記誘電体領域は、
物理的に前記ゲート電極と、前記ソース電極および前記ドレイン電極のうちの少なくとも1つとの間に隣接して位置しており、それにより前記ゲート電極と前記ソース電極およびドレイン電極のうちの1つとを分離してこれらが最も近接する部分で前記ゲート電極と前記ソース電極およびドレイン電極のうちの前記1つとが前記層の厚みによって間が空けられるようになっており、且つ前記誘電体領域は、
物理的に前記ソース電極とドレイン電極との間に隣接して位置しており、それによって前記ソース電極と前記ドレイン電極とを分離してこれらが最も近接する部分で前記ソース電極と前記ドレイン電極とが前記層の厚みによって間があけられるようにしている、電子スイッチング装置。
【請求項1】
電子装置を形成する方法であって、
基板の第1の領域上に第1の物体を形成する工程、そしてそれに引き続いて
第2の組成物の液体を前記第1の物体に接触して蒸着することにより、前記第1の領域に隣接した前記基板の第2の領域上に前記第1の物体と接触して第2の物体を形成する工程、を備え、
前記第1の物体は非導電性又は半導体性の表面領域を有しており、当該表面領域の厚さは前記電子装置の臨界形状の寸法を規定する方法。
【請求項2】
前記第2の組成物の液体は前記基板の前記第1の領域の周辺においてのみ前記第1の物体と接触するように蒸着される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1および第2の物体は実質的に同じ材料からなる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の組成物は分離して表面領域および第1の物体の内部領域を形成する傾向を持っており、前記表面領域は前記内部領域とは異なる組成を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記表面領域上の前記第2の組成物の液体の接触角度は前記第2の領域の前記基板表面における接触角度よりも10°を超えて大きい、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記表面領域上の前記第2の組成物の液体の接触角度は前記第2の領域の前記基板表面における接触角度よりも40°を超えて大きい、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記表面領域上の前記第2の組成物の液体の接触角度は前記第2の領域の前記基板表面における接触角度よりも70°を超えて大きい、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記表面領域はアルキレート化またはフッ素化化学基を含んでいる、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の組成物の液体は溶媒を含んでおり、前記表面領域は前記溶媒に溶けない、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の組成物は分離する傾向を持つ少なくとも2つの成分の溶液である、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記成分のうち1つは前記第1の組成物の表面に分離する傾向のあるポリマーである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記成分のうち1つは比較的極性のブロックおよび比較的非極性のブロックを含むジブロックコポリマーである、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記成分のうち1つは界面活性剤である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の成分の液体を蒸着する前に前記第1の物体を処理して前記第1の物体の表面の少なくとも1つの物理的または化学的特性を改質する工程を備える、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記特性は組成である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記特性は表面粗さである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記特性は表面エネルギーである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の物体の表面を処理する工程は前記第2の領域における前記基板の表面エネルギーを改変しない、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の物体の前記処理された表面上の前記第2の組成物の液体の接触角度は前記第2の領域における前記基板表面上の接触角度よりも10°を超えて大きい、請求項14から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記第1の物体の前記処理された表面上の前記第2の組成物の液体の接触角度は前記第2の領域における前記基板表面上の接触角度よりも40°を超えて大きい、請求項13から18のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記第1の物体の前記処理された表面上の前記第2の組成物の液体の接触角度は前記第2の領域における前記基板表面上の接触角度よりも70°を超えて大きい、請求項13から18のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記第1の物体の表面を処理する工程は、前記第1の物体の表面上のフッ素化またはアルキレート化化学基の密度を高める工程を備える、請求項14から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記第1の物体を表面処理する工程は、界面活性剤を前記第1の物体の表面に塗布する工程を備える、請求項14から19のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記第1の物体の表面は陽性に電気を帯びたイオン種を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記界面活性剤はアニオン性界面活性剤である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の物体の表面は陰性に電気を帯びたイオン種を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記界面活性剤はカチオン性界面活性剤である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記基板表面は、前記界面活性剤を塗布する前に熱処理または電磁放射にさらされる、請求項23から27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記第1の物体の表面を処理する工程は、前記第1の組成物の表面から異なる組成物の層を成長させる工程を備える、請求項14から22のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記異なる組成物の層はポリマー層である、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記異なる組成物の層はポリマーブラシである、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の物体の表面を処理する工程は、前記基板をプラズマ処理にさらす工程を備える、請求項14から19のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記プラズマ処理はフッ素化種を含んだプラズマにさらす工程を備える、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記プラズマ処理はCF4またはCF4のラジカルにさらす工程を備える、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第1の物体を表面処理する工程は、前記第1の物体の表面を脱ドーピングするかまたは前記第1の物体の表面から電荷担体を空乏化させる工程を備える、請求項14から22のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記第1の物体を表面処理する工程は、前記第1の物体の表面をエッチングする工程を備える、請求項14から22のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記第1の組成物は溶媒中の1つ以上の材料の溶液を含んでおり、この溶液は乾燥して前記第1の物体を形成するものであり、前記第1の物体はバルク領域とバルク領域の周辺にあって基板と接触している周辺領域とを有している、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記周辺領域の幅は20μm未満である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記周辺領域の表面エネルギーは、前記第1の物体では覆われていない領域における基板表面の表面エネルギーとは異なる、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
前記周辺領域の表面粗さは第2の領域における前記基板表面の表面粗さとは異なる、請求項37または38に記載の方法。
【請求項41】
前記周辺領域における前記第1の物体の厚さは、前記バルク領域における前記第1の物体の最大厚さの80パーセントを超えることはない、請求項37から40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
前記第1の組成物の溶液の乾燥中に前記第1の組成物の溶液が前記周辺領域から後退する、請求項37から41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記第1の組成物の溶液は、前記周辺領域における前記基板の表面エネルギーを改変する表面改質成分を含んでいる、請求項37から42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
前記表面改質成分が前記基板の表面エネルギーを改変すると同時に前記第1の組成物の溶液が前記周辺領域から後退する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記表面改質成分は前記バルク領域から前記周辺領域へと拡散する、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記第2の組成物の液体を蒸着する前に、前記基板を加熱して前記第1の物体を前記周辺領域から後退させる、請求項37から45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
前記方法は、前記周辺領域において前記第1の物体の表面を処理し、その結果前記周辺領域において前記第2の組成物の溶液の接触角度を高める工程を備えている、請求項37から46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
前記基板は前記第1の組成物の溶液の乾燥中に前記第1の組成物の溶液中に溶解する表面層を有しており、これにより前記周辺領域において前記基板の下地材料を露出させる、請求項37から41のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
前記第1の物体を蒸着した後に前記周辺領域において前記第1の物体の材料を除去するさらなる工程を備える、請求項34から45のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
前記周辺領域において前記第1の物体の材料を除去する前記工程はエッチングを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記第2の組成物の液体は界面活性剤を含む、請求項1〜50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
前記第2の組成物の液体が蒸着されている間は前記第1の物体は固体状態である、請求項1〜51のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
前記第2の組成物の液体が蒸着されている間は前記第1の物体は液体状態である、請求項1ないし51のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
前記第1の組成物の液体を前記基板に蒸着した後にこれを局限し、その結果前記第1の物体の形成された領域において前記第2の組成物の液体を前記第1の物体に接触させる工程を備える、請求項1〜53のいずれかに記載の方法。
【請求項55】
前記第1または第2の組成物のうち少なくとも1つの液体はインクジェット印刷によって蒸着される、請求項1〜54のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
前記第1または第2の組成物のうち少なくとも1つの液体はスプレーコーティングによって蒸着される、請求項1〜55のいずれかに記載の方法。
【請求項57】
前記第1または第2の組成物のうち少なくとも1つの液体は連続した膜としての前記基板上に塗布され、前記基板は比較的表面エネルギーの低い領域を含んでおり、これにより前記比較的表面エネルギーの低い領域から液体を乾燥させる、請求項1から55のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
前記第1の組成物の液体はオフセット印刷によって蒸着される、請求項1から57のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
前記第2の組成物の液体は乾燥して第2の物体を形成し、前記第1の物体および前記第2の物体のうち少なくとも1つは導電性である、請求項1〜58のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
前記第1の物体および前記第2の物体は両方とも導電性である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記第1および第2の物体は電子装置の電極を形成する、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記第1および第2の物体は電子スイッチング装置のソースおよびドレイン電極を形成する、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記第1および第2の物体は薄膜トランジスタのソースおよびドレイン電極を形成する、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記第1または第2の物体のうち少なくとも1つは導電性ポリマーを含んでいる、請求項59から63のいずれかに記載の方法。
【請求項65】
前記第2の組成物の液体は乾燥して第2の物体を形成し、前記第1および第2の物体のうち少なくとも1つは溶液から蒸着された無機導電性材料を含んでいる、請求項59から63のいずれかに記載の方法。
【請求項66】
前記第2の組成物の液体は乾燥して第2の物体を形成し、前記第1および第2の物体のうち少なくとも1つは半導体性である、請求項1から58のいずれかに記載の方法。
【請求項67】
前記第1の物体と前記第2の物体は両方とも半導体性である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記第1の物体および前記第2の物体のうち少なくとも1つは共役ポリマーを含んでいる、請求項66または67に記載の方法。
【請求項69】
前記半導体性の物体をアクティブ半導体層として有する電子装置を形成する工程を備える、請求項66から68のいずれかに記載の方法。
【請求項70】
前記第2の組成物の液体は乾燥して前記第2の物体を形成し、前記第1の物体および前記第2の物体のうち少なくとも1つは電気絶縁性である、請求項1から58のいずれかに記載の方法。
【請求項71】
前記第1の物体と前記第2の物体は両方とも電気絶縁性である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記第1または第2の物体のうち少なくとも1つは電気絶縁性ポリマーを含んでいる、請求項70または71に記載の方法。
【請求項73】
前記第1の物体の前記表面領域は電気絶縁性である、請求項4から36のいずれかに記載の方法。
【請求項74】
前記電気絶縁性の表面領域を誘電体層として有する電子装置を形成する工程を備える、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記電気絶縁性の表面領域を誘電体層として有する薄膜トランジスタを形成する工程を備える、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記第1の物体の前記表面領域は導電性である、請求項4から36のいずれかに記載の方法。
【請求項77】
前記導電性の表面領域を電極として有する電子装置を形成する工程を備える、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記導電性の表面領域は電荷を半導体層に注入するための電気注入層を形成する、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記第1の物体の前記表面領域は半導体性である、請求項1から6のいずれかに従属している請求項4から36のいずれかに記載の方法。
【請求項80】
前記半導体性の表面領域をアクティブ半導体層として有する電子装置を形成する工程を備える、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記電子装置は電子スイッチング装置である、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記電子装置は薄膜トランジスタである、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記第2の物体を蒸着した後に前記第1の物体の表面領域を除去する工程を備える、請求項4から36のいずれかに記載の方法。
【請求項84】
前記第1および第2の物体の端部間の距離は20μm未満である、請求項1〜83のいずれかに記載の方法。
【請求項85】
前記第1および第2の物体の端部間の距離は1μm未満である、請求項1〜84のいずれかに記載の方法。
【請求項86】
前記第1および第2の物体の端部間の距離は100nm未満である、請求項1〜85のいずれかに記載の方法。
【請求項87】
前記第1および第2の物体の端部間の距離は10nm未満である、請求項1〜86のいずれかに記載の方法。
【請求項88】
前記第1および第2の物体の上に第3の組成物の溶液を蒸着して前記第1および第2の物体に接触した第3の物体を形成するさらなる工程を備える、請求項1〜87のいずれかに記載の方法。
【請求項89】
前記第3の組成物の溶液は前記第1および第2の物体の両方の表面からはじかれる、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記第3の物体は前記第1および第2の物体の端部間の前記基板上の領域に局限される、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記第3の物体は半導体性である、請求項88から90のいずれかに記載の方法。
【請求項92】
前記第3の物体は導電性である、請求項88から90のいずれかに記載の方法。
【請求項93】
前記第3の物体は電気絶縁性である、請求項88から90のいずれかに記載の方法。
【請求項94】
前記第1および第2の物体の上に溶媒を蒸着するさらなる工程を備えており、前記溶媒は前記第1および第2の物体の端部間の領域において前記基板上の層を溶解する、請求項請求項1から87のいずれかに記載の方法。
【請求項95】
前記溶解により前記基板の層構成の一部である導電性層にヴィアホール相互接続を開け、さらなる導電性材料を前記第1および第2の物体間の領域に蒸着して前記ヴィアホール相互接続を充填する、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記ヴィアホール相互接続の直径は20μm未満である、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
請求項1〜96のうちいずれかに記載の方法によって形成される電子装置。
【請求項98】
請求項1〜96のうちいずれかに記載の方法によって形成される論理回路、ディスプレイメモリまたはセンサ装置。
【請求項99】
ソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極と、電気的に前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に存在する半導体領域と、電気的に前記半導体領域と前記ゲート電極との間に存在する誘電体領域とを備えており、前記半導体領域は前記ソース電極および前記ドレイン電極のうち少なくとも1つにわたって位置する実質的に均一な厚さの層の形状であり、且つ前記半導体領域は物理的に前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に隣接して位置することにより前記ソース電極と前記ドレイン電極とを分離してこれらが最も近接する部分で前記ソース電極と前記ドレイン電極とが前記層の厚みによって間があけられるようにしている、電子スイッチング装置。
【請求項100】
ソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極と、電気的に前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に存在する半導体領域と、電気的に前記半導体領域と前記ゲート電極との間に存在する誘電体領域とを備えており、前記誘電体領域は実質的に均一な厚さの層の形状であり、前記誘電体領域は、
物理的に前記ゲート電極と、前記ソース電極および前記ドレイン電極のうちの少なくとも1つとの間に隣接して位置しており、それにより前記ゲート電極と前記ソース電極およびドレイン電極のうちの1つとを分離してこれらが最も近接する部分で前記ゲート電極と前記ソース電極およびドレイン電極のうちの前記1つとが前記層の厚みによって間が空けられるようになっており、且つ前記誘電体領域は、
物理的に前記ソース電極とドレイン電極との間に隣接して位置しており、それによって前記ソース電極と前記ドレイン電極とを分離してこれらが最も近接する部分で前記ソース電極と前記ドレイン電極とが前記層の厚みによって間があけられるようにしている、電子スイッチング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2010−251794(P2010−251794A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152604(P2010−152604)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【分割の表示】特願2003−557053(P2003−557053)の分割
【原出願日】平成14年12月20日(2002.12.20)
【出願人】(503430658)プラスティック ロジック リミテッド (18)
【出願人】(503372842)ケンブリッジ エンタープライズ リミティド (32)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【分割の表示】特願2003−557053(P2003−557053)の分割
【原出願日】平成14年12月20日(2002.12.20)
【出願人】(503430658)プラスティック ロジック リミテッド (18)
【出願人】(503372842)ケンブリッジ エンタープライズ リミティド (32)
【Fターム(参考)】
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