自律移動装置
【課題】自律移動装置において、障害物とターゲットを同一計測範囲内で同時に認識しつつ障害物を回避しながらターゲットを連続的に追尾して走行可能とする。
【解決手段】予め設定された計測範囲内を撮像する撮像手段2と、撮像データにより距離情報を取得する距離情報取得手段3と、距離情報から障害物を認識する障害物認識手段4と、走行のための駆動部を有する走行手段5と、自己位置と姿勢を認識すると共に障害物認識手段4によって認識された走行進路中の障害物を回避するように走行手段5を制御する走行制御手段6と、前記距離情報に基づいて、移動自在な予め設定された形状及び大きさのターゲットを検出するターゲット検出手段7と、を備える。走行制御手段6は、ターゲット検出手段7によって検出されたターゲットの位置を目的地として障害物認識手段4によって認識された障害物を回避しつつターゲットを追尾走行するように走行手段5を制御する。
【解決手段】予め設定された計測範囲内を撮像する撮像手段2と、撮像データにより距離情報を取得する距離情報取得手段3と、距離情報から障害物を認識する障害物認識手段4と、走行のための駆動部を有する走行手段5と、自己位置と姿勢を認識すると共に障害物認識手段4によって認識された走行進路中の障害物を回避するように走行手段5を制御する走行制御手段6と、前記距離情報に基づいて、移動自在な予め設定された形状及び大きさのターゲットを検出するターゲット検出手段7と、を備える。走行制御手段6は、ターゲット検出手段7によって検出されたターゲットの位置を目的地として障害物認識手段4によって認識された障害物を回避しつつターゲットを追尾走行するように走行手段5を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲットを追尾して走行する自律移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特定の移動する目標(ターゲット)を認識すると共に、その目標を追尾して自律的に走行する自律移動装置が知られている。例えば、重要物を収納して搬送人を追尾する、金融機関への現金輸送用途などの自律移動装置がある。搬送人は、これにより、重要物を直接持つことなく、両手が空いた状態で周囲を十分警戒しつつ重要物を安全に搬送できる。この自律移動装置は、追尾用の反射型の距離センサによって目標となる反射材を装着した搬送人を認識して追尾する(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
また、障害物検出用センサと同じ種類のセンサを用いて単一のセンシング技術でユーザの追尾を図る自律移動装置がある。この自律移動装置は、ユーザのベルトや帽子などに装着した目標となる追尾用赤外線源からの赤外線を追尾用受光センサで受光してユーザを追尾する。また、この自律移動装置は、障害物探知用の赤外線発光素子と探知用受光センサの対からなる反射型のセンサを用いて障害物をセンシングして回避する(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−126800号公報
【特許文献2】特開2004−126801号公報
【特許文献3】特開平8−166822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1,2に示されるような自律移動装置においては、追尾用のセンサとは別に、障害物検出用のセンサを備えているものの、このセンサは、搬送人の移動に従って転回しようとする角度に応じて障害物を検知するための側方測距センサであり、金融機関などの特定ルートではない一般の走行ルートで目標を追尾走行する自律移動装置としては、追尾目標物の周囲に付随した障害物を検出することが容易ではないので使用しにくい。
【0005】
また、上述した特許文献2に示されるような自律移動装置においては、単一のセンシング技術を用いるため、障害物検出用と追尾用に同じ種類の赤外線受光センサを用いており、これらが追尾対象と障害物を混同しないように、そのセンシング領域を離間して設けているので、追尾目標物とその周囲に付随した障害物とを関連させて検出できないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解消するものであって、障害物とターゲットを同一計測範囲内で同時に認識すると共に、障害物を回避しながらターゲットを連続的に追尾して走行できる自律移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、予め設定された計測範囲内を撮像する撮像手段と、前記撮像手段の撮像データにより前記計測範囲内の距離情報を取得する距離情報取得手段と、前記距離情報取得手段によって取得された距離情報から障害物を認識する障害物認識手段と、走行のための駆動部を有する走行手段と、自己位置と自己姿勢とを認識すると共に前記障害物認識手段によって認識された走行進路中の障害物を回避するように前記走行手段を制御する走行制御手段と、を備えた自律移動装置において、前記距離情報取得手段によって取得された距離情報に基づいて、移動自在な予め設定された形状及び大きさのターゲットを検出するターゲット検出手段を備え、前記走行制御手段は、前記ターゲット検出手段によって検出されたターゲットの位置を目的地とすると共に、前記障害物認識手段によって認識された障害物を回避しつつ前記ターゲットを追尾走行するように前記走行手段を制御するものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の自律移動装置において、走行している際に、前記ターゲット検出手段がターゲットを検出できなくなった場合に、その直前に検出していた最後のターゲットの位置を目的地として走行するように前記走行手段を制御するものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載の自律移動装置において、前記最後のターゲットの位置を目的地として走行している際に、前記ターゲット検出手段がターゲットを検出した場合に、その検出したターゲットの位置を目的地として走行するように前記走行手段を制御するものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項2に記載の自律移動装置において、前記最後のターゲットの位置を目的地として走行して、その目的地に到達した際に、前記計測範囲内よりも広い範囲で距離情報を取得してその情報によりターゲットを検出し、これを新たなターゲットとして追尾走行するように前記走行手段を制御するものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の自律移動装置において、前記ターゲット検出手段が第1回目のターゲット検出の所定時間後に第2回目のターゲット検出を行い、前記検出した第1回目と第2回目のターゲットが同じ位置の場合には停止し、異なる位置の場合には走行するように前記走行手段を制御するものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、計測範囲内の撮像データから得られた同一距離情報に基づいて障害物を認識すると共にターゲットを検出するので、障害物とターゲットを同時に認識して障害物の回避を行いながらターゲットを追尾していくことが可能である。また、障害物とターゲットを同一計測範囲内で認識するので、追尾目標物とその周囲に付随した障害物とを関連させて検出でき、より確実に障害物の回避とターゲットの追尾が可能である。
【0013】
請求項2の発明によれば、ターゲットを見失った後も、その直前に検出していた最後のターゲットの位置に向かうことによって、連続的な追尾走行が可能である。
【0014】
請求項3の発明によれば、ターゲットを見失った後に、その直前に検出していた最後のターゲットの位置に向かう途中でターゲットを発見すれば、そのターゲットの位置を新たな目的地として設定するので、連続的でスムーズな追尾走行が可能である。
【0015】
請求項4の発明によれば、ターゲットを見失った後に、その直前に検出していた最後のターゲットの位置を目的地として走行し、その目的地に到達したとき、計測範囲を広げて、例えば、計測範囲を動かして、ターゲットを探すので、より確実にターゲットを検出でき、連続的に追尾して走行できる。
【0016】
請求項5の発明によれば、ターゲットの動きに基づいて、追尾走行以外の動作、例えば、緊急停止などの動作を自律移動装置において実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る自律移動装置について、図面を参照して説明する。図1は自律移動装置1の追尾走行の状況を示し、図2は距離情報取得装置9のブロック構成を示し、図3は自律移動装置1のブロック構成を示す。自律移動装置1は、車輪51を有する装置本体8と、その上部に配置された、障害物を検出するための距離情報取得装置9と、を備えている。自律移動装置1は、設定された目的地まで、障害物を回避しながら進み到達することができる。本発明は、この自律移動装置1に、予め設定された上下の視野角φの計測範囲A内に、予め定められた形状および大きさのターゲット20を提示すると、自律移動装置1が、ターゲット20を認識してその位置を自律移動装置1の目的地として設定できるというものである。
【0018】
これにより、人がターゲット20を持ちながら移動することによって、自律移動装置1に追尾させることができる。また、自律移動装置1は、途中で障害物があった場合に、ターゲット20を認識するためのセンサと同じセンサによって、障害物を認識して回避することができる。また、ターゲット20を持った人と自律移動装置1との間隔は、所定の距離を保つように設定できる。ここで、自律移動装置1と共に移動する座標系xyzとして、水平方向にx軸、上方にy軸、走行方向前方にz軸を有する座標系を設定する。
【0019】
距離情報取得装置9は、図2に示すように、予め設定された計測範囲内を撮像する撮像手段2と、撮像手段2の撮像データにより計測範囲内の距離情報を取得する距離情報取得手段3と、得られた距離情報を装置本体8に対して出力する通信制御部11とを備えている。また、距離情報取得手段3は、撮像データを解析し処理して距離情報を出力する中央演算部30(CPU)と、作業用メモリ31と、プログラムメモリ32とを備えている。
【0020】
装置本体8は、図3に示すように、距離情報取得手段3によって取得された距離情報から障害物を認識する障害物認識手段4と、走行のための駆動部を有する走行手段5と、自己位置と自己姿勢とを認識すると共に障害物認識手段4によって認識された走行進路中の障害物を回避するように走行手段5を制御する走行制御手段6と、距離情報取得手段3によって取得された距離情報に基づいて、移動自在な予め設定された形状及び大きさのターゲット20を検出するターゲット検出手段7と、を備えている。
【0021】
さらに、装置本体8は、距離情報取得装置9の通信制御部11を介して距離情報を受信し記憶する記憶手段12と、記憶手段12、障害物認識手段4、ターゲット検出手段7、及び走行制御手段6との間のデータや信号のやりとりや演算を行ってこれらを制御する中央制御手段10と、を備えている。記憶手段12は、距離情報の他に装置本体8の位置や姿勢、走行のための各種パラメータ等を記憶する。また、距離情報取得装置9は、計測範囲内に存在する全ての対象物までの距離情報を一度に測定することができる。
【0022】
走行制御手段6は、ターゲット検出手段7によって検出されたターゲット20の位置を目的地とすると共に、障害物認識手段4によって認識された障害物を回避しつつターゲット20を追尾走行するため、目的地までの最短ルートや回避行動のための回避ルートに沿って走行するように走行手段5を制御する。
【0023】
次に、図4(a)(b)(c)、図5(a)(b)、図6を参照して、ターゲット20の検出と、その位置情報の取得について説明する。自律移動装置1は、図4(a)に示すように、前方の予め設定された水平方向の視野角θの計測範囲A内を、撮像手段2によって撮像し、その撮像データを、距離情報取得手段3によって処理することにより、図4(b)に示すような距離情報、すなわち距離画像Gを取得する。計測範囲A内にターゲット20が提示されていると、ターゲット20の距離画像Gが得られる。距離画像Gは、遠近の距離データを濃淡データに対応させた画像である。その対応は、濃淡スケールSに示すように、自律移動装置1に近い位置を濃く、遠い位置を淡く対応させることができる。このような距離画像Gには、撮像された計測範囲A内において視認できる点の位置座標の情報が含まれている。
【0024】
上述の距離画像Gに対して、ターゲット検出手段7は、周知の画像処理技術を用いて、図4(c)に示すように、ターゲット20を検出する。ターゲット20の形状は、例えば、球形とすることにより、球形は、どの位置から見ても球形であるので、パターンマッチングが容易になり、検出ミスを無くすことができる。ターゲット20の検出には、例えば、ハフの方法(Hough’s method)を用いることができる。
【0025】
ターゲット検出手段7が、距離画像Gにおいてターゲット20を検出すると、図5(a)(b)に示すように、xyz座標系におけるターゲット20の位置座標が決定される。xyz座標系の原点からターゲット20までの、水平面内のベクトルdの終端が、自律移動装置1が目指して走行する目的地として設定される。ベクトルdが、ターゲット20の位置までの最短ルートを示す。なお、自律移動装置1は、略水平な走行面内を走行するので、ターゲット20の上下方向(y方向)の位置は、通常、目的地の設定には無関係である。そこで、自律移動装置1の走行の目的地は、ベクトルdのxz面内のz方向からの傾き角αとベクトルdの大きさで決定される。
【0026】
上述したように、ターゲット20の上下方向の位置の情報は、目的地の設定には無関係であるので、その情報を、自律移動装置1との通信手段として、つまりターゲット20の動きを自律移動装置1への合図として、用いることができる。例えば、自律移動装置1が、電源をONした初期状態として追尾停止の状態にあるときに、図6に示すように、ターゲット20を所定時間内に上下方向の軌跡20aに沿って動かすことにより、自律移動装置1に対して、追尾開始の指示をする、ということができる。また、ターゲット20のある一定の動きを見せた場合は、例えば、自律移動装置1を緊急停止させるといった使用法が可能となる。例えば、簡単な例として、ターゲット検出手段7が第1回目のターゲット検出の所定時間後に第2回目のターゲット検出を行い、検出した第1回目と第2回目のターゲットが同じ位置の場合には停止し、異なる位置の場合には走行するというように設定することができる。
【0027】
次に、図7(a)(b)、図8(a)〜(e)を参照して、障害物とターゲット20の認識及び検出について説明する。図7(a)に示す状況に基づいて説明する。この図の状況では、撮像手段2の左前方に壁からなる障害物40、前方下方に小さな球体の障害物22、正面前方に円形の端面を撮像手段2に略正対させた円柱状の障害物23、そして、右下前方にターゲット20が存在している。この状態で得られた距離画像Gは、図7(b)に示すようになる。
【0028】
上述の図7(b)に示した距離画像Gに対して、ターゲット20を検出するために、以下の処理を行う。まず、遠方の背景部分から、ターゲット20及び障害物40,22,23の画像領域を分離して抽出すると、図8(b)に示す距離画像Gが得られる。この距離画像Gに対して、二次元形状による絞り込み、すなわち、球の投影形状である円形状のみを抽出する絞り込みを行う。すると、図8(c)に示すように、距離画像Gから壁の障害物40が除去される。
【0029】
さらに、図8(b)の距離画像Gに対して、距離と大きさによる絞り込みを行うと、図8(c)に示すように、小さな球の障害物22が除去される。この処理は、障害物22,23やターゲット20まで距離が、距離画像Gの情報から分かり、距離が分かればその大きさも判明すること、さらに、ターゲット20の大きさが既知であることに基づいて行われる。
【0030】
さらに、図8(c)の距離画像Gに対して、三次元形状に基づく絞り込みを行うと、図8(d)に示すように、球面でない障害物23が除去される。この処理は、図8(e)に示すように、障害物23の見えている面が平面であり、球状のターゲット20の表面が球面であるというように、各物体のz方向の形状、つまり三次元形状が異なることに基づいている。以上のような処理により、ターゲット20とほぼ同じ形状と大きさの障害物を誤検出してしまう可能性を回避することができる。
【0031】
このようにして、図7(b)に示した距離画像Gから、ターゲット20が抽出され検出されて、その位置情報(xyz座標値)が得られる。そして、図8(a)の距離画像Gにおける領域抽出された物体は、ターゲット20を除いて、全て障害物であると認識される。障害物の情報とターゲット20の情報は、それぞれ障害物認識手段4とターゲット検出手段7によって、取得管理されて走行制御手段6に渡される。
【0032】
次に、図9(a)〜(c)、図10(a)(b)、図11を参照して、走行制御手段6による追尾ルートの決定と追尾走行について説明する。図7(a)の状況において、ターゲット20の位置への最短ルートdは、障害物40と干渉することになる。そこで、走行制御手段6は、回避ルートaを設定して、回避ルートaに沿って走行するように走行手段を制御する。
【0033】
上述の回避ルートに沿って追尾走行するため、自律移動装置1は、図9(b)に示すように、装置本体8を旋回Rさせて走行する。このときターゲット20がさらに移動すると、自律移動装置1は、その移動に追随して新たな回避ルートa1を設定し、その回避ルートa1に沿って追尾走行する。ターゲット20がさらに移動して、図9(c)に示すように、最短ルートdが障害物40と干渉しなくなると、自律移動装置1は、その最短ルートdに沿って走行する。
【0034】
また、図10(a)に示すように、ターゲット20が計測範囲Aから外れてしまって、ターゲット検出手段7がターゲット20を検出できなくなった場合に、自律移動装置1は、その直前に検出していた最後のターゲットの位置Pを目的地として走行する。このとき、途中に障害物があれば、回避ルートを求めて回避ルートに沿って走行する。また、自律移動装置1は、最後のターゲットの位置Pに向けて走行中にターゲット20を検出した場合に、図10(b)に示すように、そのターゲットの位置に目的地を設定して走行する。
【0035】
上述の、最後のターゲットの位置Pを目的地として走行して、途中でターゲット20を検出できずに、その目的地まで到達した際に、自律移動装置1は、図11に示すように、計測範囲Aを左右や上下に振るサーチ動作を行い、広い範囲で距離情報を取得してその情報によりターゲット20を探す。そして、ターゲット20を検出できた場合、自律移動装置1は、これを新たなターゲット20として目的地を設定して追尾走行する。
【0036】
自律移動装置1は、以上に述べたように、障害物とターゲット20の検出、及び追尾ルートの決定を行ってターゲット20を追尾走行する。本発明における自律移動装置1では、フレームと呼ぶ一定時間間隔のもとで、撮像手段2による計測範囲内の撮像、距離情報取得手段3による距離情報の取得、障害物認識手段4とターゲット検出手段7による障害物の認識とターゲット20の検出、走行制御手段6による追尾ルートの決定と追尾走行制御の処理が繰り返される。
【0037】
次に、図12、図13のフローチャートを参照して、自律移動装置1の自律移動の処理を説明する。図13は図12のフローチャートのサブルーティンを示す。ここで説明する処理は、ターゲット20の動きに追尾開始や停止の合図を含めていない例であり、単にターゲット20の位置を目的地として走行することにより、結果として、ターゲット20を追尾走行したり、走行停止したりする例である。ターゲット20の動きに合図を含む例は後述する(図14、図15)。
【0038】
まず、図12のフローチャートを説明する。自律移動装置1の始動開始のスイッチをONした後、図1に示したように自律移動装置1にターゲット20を見せることによって、追尾走行の処理が開始される。すなわち、撮像手段2が前方の画像を撮像し、その撮像データは距離情報取得手段3に渡されて距離画像とされ、その距離画像をもとにして障害物認識手段4とターゲット検出手段7による障害物の認識とターゲット20の検出が行われる(S1)。以下では、スイッチON直後の状態ではなく、ステップS1以下の処理が既に繰り返された後の状態であるとして説明する。
【0039】
上述のステップS1の処理の結果、ターゲット20が見つかった場合(S2でYes)、ターゲット検出手段7は、ターゲット20の位置を計算し(S3)、そのターゲットの位置を自律移動装置1の移動の目的地に設定し(S4)、その後、走行制御手段6によるルート設定と移動の処理が行われる(S6)。
【0040】
上述のステップS1の処理の結果、ターゲット20が見つからなかった場合(S2でNo)、目的地が設定されていなければ制御は次のフレームを開始するためステップS1に戻され(S5でNo)、目的地が設定されていれば(S5でYes)、その後、走行制御手段6によるルート設定と移動の処理が行われる(S6)。
【0041】
ルート設定と移動の処理の結果(S6)、自律移動装置1が目的地に到達していなければ(S7でNo)、制御は次のフレームを開始するためステップS1に戻され、目的地に到達していれば、計測範囲を動かすサーチ動作を行い(S8)、その後、制御は次のフレームを開始するためステップ1に戻される。
【0042】
上述のように、自律移動装置1は、常にフレームと呼ぶ一定時間間隔のもとで、毎回距離画像情報を取得し、距離画像から障害物候補を抽出した後、その中にターゲット20が存在するかどうかを確認し(図8(a)〜(e))、ターゲット20を発見した場合はその位置を計算して新しい目的地として設定し、発見しなければ、目的地を以前に設定されている目的地のままとして移動する。
【0043】
上記の処理をフレーム毎に行うことによって、ターゲット20を検出できている間はターゲット20を追尾することになる。また、途中で一時的にターゲット20を見失った場合は、最後に見つけた位置までは移動しようとするので、そこにたどり着くまでに再度ターゲット20を検出すれば、連続的な追尾が可能となる。ターゲット20を検出できずに毎回のフレームの処理を実行しつつ移動して、目的地にたどり着いた場合は、そこで計測範囲を上下左右のいずれかに動かし(図11参照)、次のフレームでターゲット20を探すことになる。
【0044】
次に、図13のルート設定と移動処理のサブルーティンを説明する。これは、上述のステップS6の処理に対応する。目的地が設定されているので、走行制御手段6は、現在値から、その目的地までの最短ルートを設定する(S10)。次に、障害物が、障害物認識手段4によって認識されていなければ(S11でNo)、走行制御手段6は、最短ルートに沿って移動するように走行手段5を制御し(S12)、サブルーティンの処理は終了する。
【0045】
また、障害物が、障害物認識手段4によって認識されている場合(S11でYes)、走行制御手段6は、最短ルートに障害物が干渉するかどうかを計算し、障害物が最短ルートに干渉しなければ(S13でNo)、そのまま最短ルートに沿って移動するように走行手段5を制御する。もし、障害物が最短ルートに干渉する場合(S13でYes)、走行制御手段6は、目的地までの回避ルートを求めて設定し(S14)、回避ルートに沿って移動するように走行手段5を制御し(S15)、サブルーティンの処理は終了する。
【0046】
次に、図14、図15のフローチャートを参照して、ターゲット20の動きに合図を含む場合の、自律移動装置1の自律移動の処理を説明する。図15は図14のフローチャートのサブルーティンを示す。ここで説明する自律移動装置1は、追尾停止状態と追尾走行状態と2つの状態を取ることができる。また、自律移動装置1は、ターゲット20の動きを用いた合図によって、これらの状態間を遷移することができる。
【0047】
追尾をしない追尾停止状態では、自律移動装置1は、ターゲット20を認識しても目的地の設定は行わない。この場合、自律移動装置1は、ターゲット20を検出すると、ターゲット20の位置をT1時間の間記録し続け、T1時間の間にターゲット20がある一定の動き、例えば、ターゲット20が上下方向に水平線をN回またぐ、といった動きをした場合に、この動きを合図にして追尾走行状態へと状態遷移する。これにより、追尾走行開始に当たり、ターゲット20とほぼ同じ形状と大きさの障害物を誤検出して、その後検出した障害物を追尾するように走行開始してしまう可能性を回避することができる。
【0048】
また、追尾して走行する追尾走行状態では、自律移動装置1は、上述の図12、図13に示した追尾走行の場合と同様の処理を行う。この追尾走行状態において、連続した時間T2の間にターゲット20が検出されなかった場合、自律移動装置1は、自動的に追尾走行状態を終了して追尾停止状態へと状態遷移する。また、ターゲット20を検出できている場合であっても、連続した時間T3の間のターゲット20の動きが命令を指示する動きであった場合は、自律移動装置1は、追尾停止状態や、緊急停止状態へと状態遷移する。
【0049】
以上の前提のもとで、図14のフローチャートを説明する。自律移動装置1の始動開始のスイッチがONされた後、中央制御手段10は、状態遷移のための時間計測のタイマt1,t2,t3を初期化し、さらに、自律移動装置1の状態を追尾停止状態に初期化する(S21)。この初期設定の処理を除いて、以下に説明する各ステップの処理がフレーム毎に繰り返し実行される。
【0050】
まず、撮像手段2が前方の画像を撮像し、その撮像データは距離情報取得手段3に渡されて距離画像とされ、その距離画像をもとにして障害物認識手段4とターゲット検出手段7による障害物の認識とターゲット20の検出が行われる(S22)。次に、中央制御手段10によって、自律移動装置1の現在の状態が調べられる(S23)。自律移動装置1は、始動開始直後の場合は初期設定によって追尾停止状態となっており、また、始動開始直後でなくても、フレームの複数回の繰り返しの後、状態遷移で追尾停止状態となっている場合がある。自律移動装置1が、これらの追尾停止状態にある場合(S23でNo)、中央制御手段10は追尾停止状態処理を行い(S42)、その後、制御は次のフレームを開始するためステップS22に戻される。ステップS22の内容は、図15を参照して後述する。
【0051】
上述のステップS23で自律移動装置1が追尾走行状態であり(S23でYes)、ターゲット20が見つかっていない場合(S24でNo)、中央制御手段10はタイマt3をゼロに初期化する(S25)。さらに、目的地が設定されている場合は(S26でYes)、ルート設定と移動処理、すなわち追尾走行の処理を行う(S27)。このルート設定と移動処理のステップは、上述の図13に示した処理と同じであり、その後のステップS28,S29の処理は、図12に示したステップS7,S8と同じであるので、これらの説明は省略する。
【0052】
また、ステップS26で目的地が設定されていなかった場合は(S26でNo)、タイマt2の積算(t2←t2+Δt)を行う(S38)。ここで、時間の増分Δtは、例えば、繰り返しフレームの時間間隔とすることができる。タイマ積算の結果、未だにタイマt2が所定の時間T2よりも大きくない場合(S39でNo)、制御は次のフレームを開始するためステップS22に戻される。また、タイマt2が所定の時間T2よりも大きかった場合(S39でYes)、自律移動装置1の状態が追尾停止状態に状態遷移され(S40)、その後、追尾停止状態で用いられるタイマt1が初期化されて(S41)、制御は次のフレームを開始するためステップS22に戻される。
【0053】
上述のステップS24でターゲット20が見つかった場合(S24でYes)、中央制御手段10はタイマt2をゼロに初期化し(S30)、タイマt3の積算を行う(S31)。その後、ターゲット検出手段7は、ターゲット20の位置を計算し(S32)、そのターゲット20の位置を自律移動装置1の移動の目的地に設定する(S33)。そして、先のタイマt3の積算の結果、未だにタイマt3が所定の時間T3よりも大きくない場合(S34でNo)、ルート設定と移動処理が実行される(S27)。
【0054】
また、タイマt3の積算の結果、タイマt3が所定の時間T3よりも大きかった場合(S34でYes)、タイマt3の初期化を行い(S35)、連続した時間T3の間のターゲット20の動きが自律移動装置1へ追尾停止、追尾終了、緊急停止などの指示を行う合図であるかどうかが判断され、指示ではなかった場合(S36でNo)、ルート設定と移動処理が実行される(S27)。また、ターゲット20の動きが、いずれか指示を行う合図の場合(S36でYes)、指示された処理、例えば、追尾停止状態への状態遷移を行い(S37)、その後、制御は次のフレームを開始するためステップS22に戻される。
【0055】
次に、図15の追尾停止状態処理のサブルーティンについて説明する。これは、上述のステップS42の処理に対応する。まず、ターゲット20が見つかったかどうかが判断され、ターゲット20が見つかっていない場合(S51でNo)、タイマt1が初期化される(S52)。その後、現在、目的地が設定されているかどうか判断され(S53)、目的地が設定されていない場合は(S53でNo)、サブルーティンの処理は終了し、目的地が設定されている場合は(S53でYes)、ルート設定と移動処理、すなわち追尾走行の処理を行う(S54)。このルート設定と移動処理のステップは、上述の図13に示した処理と同じであり、その後のステップS55,S56の処理は、図12に示したステップS7,S8と同じであるので、これらの説明は省略する。
【0056】
また、ステップS51でターゲット20が見つかった場合(S51でYes)、タイマt1の積算を行う(S57)。その後、ターゲット検出手段7は、ターゲット20の位置を計算する(S58)。ここで、目的地の設定は行われない。そして、先のタイマt1の積算の結果、未だにタイマt1が所定の時間T1よりも大きくない場合(S59でNo)、サブルーティンの処理は終了する。
【0057】
また、タイマt1の積算の結果、タイマt1が所定の時間T1よりも大きかった場合(S59でYes)、タイマt1の初期化を行い(S60)、連続した時間T1の間のターゲット20の動きが自律移動装置1へ追尾停止、追尾終了、緊急停止などの指示を行う合図であるかどうかが判断され、指示ではなかった場合(S61でNo)、サブルーティンの処理は終了し、ターゲット20の動きが、いずれか指示を行う合図の場合(S61でYes)、指示された処理、例えば、追尾停止状態への状態遷移を行い(S62)、その後、サブルーティンの処理は終了する。
【0058】
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、自律移動装置1として、装置本体8の上部に距離情報取得装置9を配置した構造を示したが、距離情報取得装置9を装置本体8に内蔵する構成としてもよい。また、応答用音声発生装置を備えて、これを用いて、ターゲット20の検出時、見失い時、あるいは自律移動装置の状態変化等に際して、適宜応答用音声を発生するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に係る自律移動装置の追尾走行の状況を示す側面図。
【図2】同上自律移動装置の距離情報取得装置のブロック構成図。
【図3】同上自律移動装置についてのブロック構成図。
【図4】(a)は同上自律移動装置の追尾走行の状況を示す平面図、(b)は(a)の状況で取得された距離画像、(c)はターゲットを検出したことを示す距離画像。
【図5】(a)は同上自律移動装置の撮像手段とターゲットの位置関係を示す斜視図、(b)は(a)の状態にある自律移動装置の平面図。
【図6】検出されたターゲットの軌跡を示す距離画像。
【図7】(a)は同上自律移動装置の撮像手段と障害物及びターゲットの位置関係を示す斜視図、(b)は(a)の状態において取得された距離画像。
【図8】(a)〜(d)は図7(b)の距離画像からターゲットを検出する手順を説明する距離画像、(e)は(d)の距離画像における障害物とターゲットの奥行き形状を示す図。
【図9】(a)は同上自律移動装置が障害物回避ルートを設定する様子を示す平面図、(b)は同装置が障害物回避のため回転した様子を示す平面図、(c)は同装置が回避ルートに変えて最短ルートを設定する様子を示す平面図。
【図10】(a)は同上自律移動装置が計測範囲からターゲットを見失った様子を示す平面図、(b)は同装置が見失っていたターゲットを再検出したときの動作を説明する平面図。
【図11】同上自律移動装置が行うターゲット検出のサーチ動作を説明する平面図。
【図12】同上自律移動装置が行う追尾走行処理のフローチャート。
【図13】同上自律移動装置が行うルート設定と移動の処理フローチャート。
【図14】同上自律移動装置が行う追尾停止状態を含む追尾走行処理のフローチャート。
【図15】同上自律移動装置が行う追尾停止状態の処理フローチャート。
【符号の説明】
【0060】
1 自律移動装置
2 撮像手段
3 距離情報取得手段
4 障害物認識手段
5 走行手段
6 走行制御手段
7 ターゲット検出手段
20 ターゲット
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲットを追尾して走行する自律移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特定の移動する目標(ターゲット)を認識すると共に、その目標を追尾して自律的に走行する自律移動装置が知られている。例えば、重要物を収納して搬送人を追尾する、金融機関への現金輸送用途などの自律移動装置がある。搬送人は、これにより、重要物を直接持つことなく、両手が空いた状態で周囲を十分警戒しつつ重要物を安全に搬送できる。この自律移動装置は、追尾用の反射型の距離センサによって目標となる反射材を装着した搬送人を認識して追尾する(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
また、障害物検出用センサと同じ種類のセンサを用いて単一のセンシング技術でユーザの追尾を図る自律移動装置がある。この自律移動装置は、ユーザのベルトや帽子などに装着した目標となる追尾用赤外線源からの赤外線を追尾用受光センサで受光してユーザを追尾する。また、この自律移動装置は、障害物探知用の赤外線発光素子と探知用受光センサの対からなる反射型のセンサを用いて障害物をセンシングして回避する(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−126800号公報
【特許文献2】特開2004−126801号公報
【特許文献3】特開平8−166822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1,2に示されるような自律移動装置においては、追尾用のセンサとは別に、障害物検出用のセンサを備えているものの、このセンサは、搬送人の移動に従って転回しようとする角度に応じて障害物を検知するための側方測距センサであり、金融機関などの特定ルートではない一般の走行ルートで目標を追尾走行する自律移動装置としては、追尾目標物の周囲に付随した障害物を検出することが容易ではないので使用しにくい。
【0005】
また、上述した特許文献2に示されるような自律移動装置においては、単一のセンシング技術を用いるため、障害物検出用と追尾用に同じ種類の赤外線受光センサを用いており、これらが追尾対象と障害物を混同しないように、そのセンシング領域を離間して設けているので、追尾目標物とその周囲に付随した障害物とを関連させて検出できないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解消するものであって、障害物とターゲットを同一計測範囲内で同時に認識すると共に、障害物を回避しながらターゲットを連続的に追尾して走行できる自律移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、予め設定された計測範囲内を撮像する撮像手段と、前記撮像手段の撮像データにより前記計測範囲内の距離情報を取得する距離情報取得手段と、前記距離情報取得手段によって取得された距離情報から障害物を認識する障害物認識手段と、走行のための駆動部を有する走行手段と、自己位置と自己姿勢とを認識すると共に前記障害物認識手段によって認識された走行進路中の障害物を回避するように前記走行手段を制御する走行制御手段と、を備えた自律移動装置において、前記距離情報取得手段によって取得された距離情報に基づいて、移動自在な予め設定された形状及び大きさのターゲットを検出するターゲット検出手段を備え、前記走行制御手段は、前記ターゲット検出手段によって検出されたターゲットの位置を目的地とすると共に、前記障害物認識手段によって認識された障害物を回避しつつ前記ターゲットを追尾走行するように前記走行手段を制御するものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の自律移動装置において、走行している際に、前記ターゲット検出手段がターゲットを検出できなくなった場合に、その直前に検出していた最後のターゲットの位置を目的地として走行するように前記走行手段を制御するものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載の自律移動装置において、前記最後のターゲットの位置を目的地として走行している際に、前記ターゲット検出手段がターゲットを検出した場合に、その検出したターゲットの位置を目的地として走行するように前記走行手段を制御するものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項2に記載の自律移動装置において、前記最後のターゲットの位置を目的地として走行して、その目的地に到達した際に、前記計測範囲内よりも広い範囲で距離情報を取得してその情報によりターゲットを検出し、これを新たなターゲットとして追尾走行するように前記走行手段を制御するものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の自律移動装置において、前記ターゲット検出手段が第1回目のターゲット検出の所定時間後に第2回目のターゲット検出を行い、前記検出した第1回目と第2回目のターゲットが同じ位置の場合には停止し、異なる位置の場合には走行するように前記走行手段を制御するものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、計測範囲内の撮像データから得られた同一距離情報に基づいて障害物を認識すると共にターゲットを検出するので、障害物とターゲットを同時に認識して障害物の回避を行いながらターゲットを追尾していくことが可能である。また、障害物とターゲットを同一計測範囲内で認識するので、追尾目標物とその周囲に付随した障害物とを関連させて検出でき、より確実に障害物の回避とターゲットの追尾が可能である。
【0013】
請求項2の発明によれば、ターゲットを見失った後も、その直前に検出していた最後のターゲットの位置に向かうことによって、連続的な追尾走行が可能である。
【0014】
請求項3の発明によれば、ターゲットを見失った後に、その直前に検出していた最後のターゲットの位置に向かう途中でターゲットを発見すれば、そのターゲットの位置を新たな目的地として設定するので、連続的でスムーズな追尾走行が可能である。
【0015】
請求項4の発明によれば、ターゲットを見失った後に、その直前に検出していた最後のターゲットの位置を目的地として走行し、その目的地に到達したとき、計測範囲を広げて、例えば、計測範囲を動かして、ターゲットを探すので、より確実にターゲットを検出でき、連続的に追尾して走行できる。
【0016】
請求項5の発明によれば、ターゲットの動きに基づいて、追尾走行以外の動作、例えば、緊急停止などの動作を自律移動装置において実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る自律移動装置について、図面を参照して説明する。図1は自律移動装置1の追尾走行の状況を示し、図2は距離情報取得装置9のブロック構成を示し、図3は自律移動装置1のブロック構成を示す。自律移動装置1は、車輪51を有する装置本体8と、その上部に配置された、障害物を検出するための距離情報取得装置9と、を備えている。自律移動装置1は、設定された目的地まで、障害物を回避しながら進み到達することができる。本発明は、この自律移動装置1に、予め設定された上下の視野角φの計測範囲A内に、予め定められた形状および大きさのターゲット20を提示すると、自律移動装置1が、ターゲット20を認識してその位置を自律移動装置1の目的地として設定できるというものである。
【0018】
これにより、人がターゲット20を持ちながら移動することによって、自律移動装置1に追尾させることができる。また、自律移動装置1は、途中で障害物があった場合に、ターゲット20を認識するためのセンサと同じセンサによって、障害物を認識して回避することができる。また、ターゲット20を持った人と自律移動装置1との間隔は、所定の距離を保つように設定できる。ここで、自律移動装置1と共に移動する座標系xyzとして、水平方向にx軸、上方にy軸、走行方向前方にz軸を有する座標系を設定する。
【0019】
距離情報取得装置9は、図2に示すように、予め設定された計測範囲内を撮像する撮像手段2と、撮像手段2の撮像データにより計測範囲内の距離情報を取得する距離情報取得手段3と、得られた距離情報を装置本体8に対して出力する通信制御部11とを備えている。また、距離情報取得手段3は、撮像データを解析し処理して距離情報を出力する中央演算部30(CPU)と、作業用メモリ31と、プログラムメモリ32とを備えている。
【0020】
装置本体8は、図3に示すように、距離情報取得手段3によって取得された距離情報から障害物を認識する障害物認識手段4と、走行のための駆動部を有する走行手段5と、自己位置と自己姿勢とを認識すると共に障害物認識手段4によって認識された走行進路中の障害物を回避するように走行手段5を制御する走行制御手段6と、距離情報取得手段3によって取得された距離情報に基づいて、移動自在な予め設定された形状及び大きさのターゲット20を検出するターゲット検出手段7と、を備えている。
【0021】
さらに、装置本体8は、距離情報取得装置9の通信制御部11を介して距離情報を受信し記憶する記憶手段12と、記憶手段12、障害物認識手段4、ターゲット検出手段7、及び走行制御手段6との間のデータや信号のやりとりや演算を行ってこれらを制御する中央制御手段10と、を備えている。記憶手段12は、距離情報の他に装置本体8の位置や姿勢、走行のための各種パラメータ等を記憶する。また、距離情報取得装置9は、計測範囲内に存在する全ての対象物までの距離情報を一度に測定することができる。
【0022】
走行制御手段6は、ターゲット検出手段7によって検出されたターゲット20の位置を目的地とすると共に、障害物認識手段4によって認識された障害物を回避しつつターゲット20を追尾走行するため、目的地までの最短ルートや回避行動のための回避ルートに沿って走行するように走行手段5を制御する。
【0023】
次に、図4(a)(b)(c)、図5(a)(b)、図6を参照して、ターゲット20の検出と、その位置情報の取得について説明する。自律移動装置1は、図4(a)に示すように、前方の予め設定された水平方向の視野角θの計測範囲A内を、撮像手段2によって撮像し、その撮像データを、距離情報取得手段3によって処理することにより、図4(b)に示すような距離情報、すなわち距離画像Gを取得する。計測範囲A内にターゲット20が提示されていると、ターゲット20の距離画像Gが得られる。距離画像Gは、遠近の距離データを濃淡データに対応させた画像である。その対応は、濃淡スケールSに示すように、自律移動装置1に近い位置を濃く、遠い位置を淡く対応させることができる。このような距離画像Gには、撮像された計測範囲A内において視認できる点の位置座標の情報が含まれている。
【0024】
上述の距離画像Gに対して、ターゲット検出手段7は、周知の画像処理技術を用いて、図4(c)に示すように、ターゲット20を検出する。ターゲット20の形状は、例えば、球形とすることにより、球形は、どの位置から見ても球形であるので、パターンマッチングが容易になり、検出ミスを無くすことができる。ターゲット20の検出には、例えば、ハフの方法(Hough’s method)を用いることができる。
【0025】
ターゲット検出手段7が、距離画像Gにおいてターゲット20を検出すると、図5(a)(b)に示すように、xyz座標系におけるターゲット20の位置座標が決定される。xyz座標系の原点からターゲット20までの、水平面内のベクトルdの終端が、自律移動装置1が目指して走行する目的地として設定される。ベクトルdが、ターゲット20の位置までの最短ルートを示す。なお、自律移動装置1は、略水平な走行面内を走行するので、ターゲット20の上下方向(y方向)の位置は、通常、目的地の設定には無関係である。そこで、自律移動装置1の走行の目的地は、ベクトルdのxz面内のz方向からの傾き角αとベクトルdの大きさで決定される。
【0026】
上述したように、ターゲット20の上下方向の位置の情報は、目的地の設定には無関係であるので、その情報を、自律移動装置1との通信手段として、つまりターゲット20の動きを自律移動装置1への合図として、用いることができる。例えば、自律移動装置1が、電源をONした初期状態として追尾停止の状態にあるときに、図6に示すように、ターゲット20を所定時間内に上下方向の軌跡20aに沿って動かすことにより、自律移動装置1に対して、追尾開始の指示をする、ということができる。また、ターゲット20のある一定の動きを見せた場合は、例えば、自律移動装置1を緊急停止させるといった使用法が可能となる。例えば、簡単な例として、ターゲット検出手段7が第1回目のターゲット検出の所定時間後に第2回目のターゲット検出を行い、検出した第1回目と第2回目のターゲットが同じ位置の場合には停止し、異なる位置の場合には走行するというように設定することができる。
【0027】
次に、図7(a)(b)、図8(a)〜(e)を参照して、障害物とターゲット20の認識及び検出について説明する。図7(a)に示す状況に基づいて説明する。この図の状況では、撮像手段2の左前方に壁からなる障害物40、前方下方に小さな球体の障害物22、正面前方に円形の端面を撮像手段2に略正対させた円柱状の障害物23、そして、右下前方にターゲット20が存在している。この状態で得られた距離画像Gは、図7(b)に示すようになる。
【0028】
上述の図7(b)に示した距離画像Gに対して、ターゲット20を検出するために、以下の処理を行う。まず、遠方の背景部分から、ターゲット20及び障害物40,22,23の画像領域を分離して抽出すると、図8(b)に示す距離画像Gが得られる。この距離画像Gに対して、二次元形状による絞り込み、すなわち、球の投影形状である円形状のみを抽出する絞り込みを行う。すると、図8(c)に示すように、距離画像Gから壁の障害物40が除去される。
【0029】
さらに、図8(b)の距離画像Gに対して、距離と大きさによる絞り込みを行うと、図8(c)に示すように、小さな球の障害物22が除去される。この処理は、障害物22,23やターゲット20まで距離が、距離画像Gの情報から分かり、距離が分かればその大きさも判明すること、さらに、ターゲット20の大きさが既知であることに基づいて行われる。
【0030】
さらに、図8(c)の距離画像Gに対して、三次元形状に基づく絞り込みを行うと、図8(d)に示すように、球面でない障害物23が除去される。この処理は、図8(e)に示すように、障害物23の見えている面が平面であり、球状のターゲット20の表面が球面であるというように、各物体のz方向の形状、つまり三次元形状が異なることに基づいている。以上のような処理により、ターゲット20とほぼ同じ形状と大きさの障害物を誤検出してしまう可能性を回避することができる。
【0031】
このようにして、図7(b)に示した距離画像Gから、ターゲット20が抽出され検出されて、その位置情報(xyz座標値)が得られる。そして、図8(a)の距離画像Gにおける領域抽出された物体は、ターゲット20を除いて、全て障害物であると認識される。障害物の情報とターゲット20の情報は、それぞれ障害物認識手段4とターゲット検出手段7によって、取得管理されて走行制御手段6に渡される。
【0032】
次に、図9(a)〜(c)、図10(a)(b)、図11を参照して、走行制御手段6による追尾ルートの決定と追尾走行について説明する。図7(a)の状況において、ターゲット20の位置への最短ルートdは、障害物40と干渉することになる。そこで、走行制御手段6は、回避ルートaを設定して、回避ルートaに沿って走行するように走行手段を制御する。
【0033】
上述の回避ルートに沿って追尾走行するため、自律移動装置1は、図9(b)に示すように、装置本体8を旋回Rさせて走行する。このときターゲット20がさらに移動すると、自律移動装置1は、その移動に追随して新たな回避ルートa1を設定し、その回避ルートa1に沿って追尾走行する。ターゲット20がさらに移動して、図9(c)に示すように、最短ルートdが障害物40と干渉しなくなると、自律移動装置1は、その最短ルートdに沿って走行する。
【0034】
また、図10(a)に示すように、ターゲット20が計測範囲Aから外れてしまって、ターゲット検出手段7がターゲット20を検出できなくなった場合に、自律移動装置1は、その直前に検出していた最後のターゲットの位置Pを目的地として走行する。このとき、途中に障害物があれば、回避ルートを求めて回避ルートに沿って走行する。また、自律移動装置1は、最後のターゲットの位置Pに向けて走行中にターゲット20を検出した場合に、図10(b)に示すように、そのターゲットの位置に目的地を設定して走行する。
【0035】
上述の、最後のターゲットの位置Pを目的地として走行して、途中でターゲット20を検出できずに、その目的地まで到達した際に、自律移動装置1は、図11に示すように、計測範囲Aを左右や上下に振るサーチ動作を行い、広い範囲で距離情報を取得してその情報によりターゲット20を探す。そして、ターゲット20を検出できた場合、自律移動装置1は、これを新たなターゲット20として目的地を設定して追尾走行する。
【0036】
自律移動装置1は、以上に述べたように、障害物とターゲット20の検出、及び追尾ルートの決定を行ってターゲット20を追尾走行する。本発明における自律移動装置1では、フレームと呼ぶ一定時間間隔のもとで、撮像手段2による計測範囲内の撮像、距離情報取得手段3による距離情報の取得、障害物認識手段4とターゲット検出手段7による障害物の認識とターゲット20の検出、走行制御手段6による追尾ルートの決定と追尾走行制御の処理が繰り返される。
【0037】
次に、図12、図13のフローチャートを参照して、自律移動装置1の自律移動の処理を説明する。図13は図12のフローチャートのサブルーティンを示す。ここで説明する処理は、ターゲット20の動きに追尾開始や停止の合図を含めていない例であり、単にターゲット20の位置を目的地として走行することにより、結果として、ターゲット20を追尾走行したり、走行停止したりする例である。ターゲット20の動きに合図を含む例は後述する(図14、図15)。
【0038】
まず、図12のフローチャートを説明する。自律移動装置1の始動開始のスイッチをONした後、図1に示したように自律移動装置1にターゲット20を見せることによって、追尾走行の処理が開始される。すなわち、撮像手段2が前方の画像を撮像し、その撮像データは距離情報取得手段3に渡されて距離画像とされ、その距離画像をもとにして障害物認識手段4とターゲット検出手段7による障害物の認識とターゲット20の検出が行われる(S1)。以下では、スイッチON直後の状態ではなく、ステップS1以下の処理が既に繰り返された後の状態であるとして説明する。
【0039】
上述のステップS1の処理の結果、ターゲット20が見つかった場合(S2でYes)、ターゲット検出手段7は、ターゲット20の位置を計算し(S3)、そのターゲットの位置を自律移動装置1の移動の目的地に設定し(S4)、その後、走行制御手段6によるルート設定と移動の処理が行われる(S6)。
【0040】
上述のステップS1の処理の結果、ターゲット20が見つからなかった場合(S2でNo)、目的地が設定されていなければ制御は次のフレームを開始するためステップS1に戻され(S5でNo)、目的地が設定されていれば(S5でYes)、その後、走行制御手段6によるルート設定と移動の処理が行われる(S6)。
【0041】
ルート設定と移動の処理の結果(S6)、自律移動装置1が目的地に到達していなければ(S7でNo)、制御は次のフレームを開始するためステップS1に戻され、目的地に到達していれば、計測範囲を動かすサーチ動作を行い(S8)、その後、制御は次のフレームを開始するためステップ1に戻される。
【0042】
上述のように、自律移動装置1は、常にフレームと呼ぶ一定時間間隔のもとで、毎回距離画像情報を取得し、距離画像から障害物候補を抽出した後、その中にターゲット20が存在するかどうかを確認し(図8(a)〜(e))、ターゲット20を発見した場合はその位置を計算して新しい目的地として設定し、発見しなければ、目的地を以前に設定されている目的地のままとして移動する。
【0043】
上記の処理をフレーム毎に行うことによって、ターゲット20を検出できている間はターゲット20を追尾することになる。また、途中で一時的にターゲット20を見失った場合は、最後に見つけた位置までは移動しようとするので、そこにたどり着くまでに再度ターゲット20を検出すれば、連続的な追尾が可能となる。ターゲット20を検出できずに毎回のフレームの処理を実行しつつ移動して、目的地にたどり着いた場合は、そこで計測範囲を上下左右のいずれかに動かし(図11参照)、次のフレームでターゲット20を探すことになる。
【0044】
次に、図13のルート設定と移動処理のサブルーティンを説明する。これは、上述のステップS6の処理に対応する。目的地が設定されているので、走行制御手段6は、現在値から、その目的地までの最短ルートを設定する(S10)。次に、障害物が、障害物認識手段4によって認識されていなければ(S11でNo)、走行制御手段6は、最短ルートに沿って移動するように走行手段5を制御し(S12)、サブルーティンの処理は終了する。
【0045】
また、障害物が、障害物認識手段4によって認識されている場合(S11でYes)、走行制御手段6は、最短ルートに障害物が干渉するかどうかを計算し、障害物が最短ルートに干渉しなければ(S13でNo)、そのまま最短ルートに沿って移動するように走行手段5を制御する。もし、障害物が最短ルートに干渉する場合(S13でYes)、走行制御手段6は、目的地までの回避ルートを求めて設定し(S14)、回避ルートに沿って移動するように走行手段5を制御し(S15)、サブルーティンの処理は終了する。
【0046】
次に、図14、図15のフローチャートを参照して、ターゲット20の動きに合図を含む場合の、自律移動装置1の自律移動の処理を説明する。図15は図14のフローチャートのサブルーティンを示す。ここで説明する自律移動装置1は、追尾停止状態と追尾走行状態と2つの状態を取ることができる。また、自律移動装置1は、ターゲット20の動きを用いた合図によって、これらの状態間を遷移することができる。
【0047】
追尾をしない追尾停止状態では、自律移動装置1は、ターゲット20を認識しても目的地の設定は行わない。この場合、自律移動装置1は、ターゲット20を検出すると、ターゲット20の位置をT1時間の間記録し続け、T1時間の間にターゲット20がある一定の動き、例えば、ターゲット20が上下方向に水平線をN回またぐ、といった動きをした場合に、この動きを合図にして追尾走行状態へと状態遷移する。これにより、追尾走行開始に当たり、ターゲット20とほぼ同じ形状と大きさの障害物を誤検出して、その後検出した障害物を追尾するように走行開始してしまう可能性を回避することができる。
【0048】
また、追尾して走行する追尾走行状態では、自律移動装置1は、上述の図12、図13に示した追尾走行の場合と同様の処理を行う。この追尾走行状態において、連続した時間T2の間にターゲット20が検出されなかった場合、自律移動装置1は、自動的に追尾走行状態を終了して追尾停止状態へと状態遷移する。また、ターゲット20を検出できている場合であっても、連続した時間T3の間のターゲット20の動きが命令を指示する動きであった場合は、自律移動装置1は、追尾停止状態や、緊急停止状態へと状態遷移する。
【0049】
以上の前提のもとで、図14のフローチャートを説明する。自律移動装置1の始動開始のスイッチがONされた後、中央制御手段10は、状態遷移のための時間計測のタイマt1,t2,t3を初期化し、さらに、自律移動装置1の状態を追尾停止状態に初期化する(S21)。この初期設定の処理を除いて、以下に説明する各ステップの処理がフレーム毎に繰り返し実行される。
【0050】
まず、撮像手段2が前方の画像を撮像し、その撮像データは距離情報取得手段3に渡されて距離画像とされ、その距離画像をもとにして障害物認識手段4とターゲット検出手段7による障害物の認識とターゲット20の検出が行われる(S22)。次に、中央制御手段10によって、自律移動装置1の現在の状態が調べられる(S23)。自律移動装置1は、始動開始直後の場合は初期設定によって追尾停止状態となっており、また、始動開始直後でなくても、フレームの複数回の繰り返しの後、状態遷移で追尾停止状態となっている場合がある。自律移動装置1が、これらの追尾停止状態にある場合(S23でNo)、中央制御手段10は追尾停止状態処理を行い(S42)、その後、制御は次のフレームを開始するためステップS22に戻される。ステップS22の内容は、図15を参照して後述する。
【0051】
上述のステップS23で自律移動装置1が追尾走行状態であり(S23でYes)、ターゲット20が見つかっていない場合(S24でNo)、中央制御手段10はタイマt3をゼロに初期化する(S25)。さらに、目的地が設定されている場合は(S26でYes)、ルート設定と移動処理、すなわち追尾走行の処理を行う(S27)。このルート設定と移動処理のステップは、上述の図13に示した処理と同じであり、その後のステップS28,S29の処理は、図12に示したステップS7,S8と同じであるので、これらの説明は省略する。
【0052】
また、ステップS26で目的地が設定されていなかった場合は(S26でNo)、タイマt2の積算(t2←t2+Δt)を行う(S38)。ここで、時間の増分Δtは、例えば、繰り返しフレームの時間間隔とすることができる。タイマ積算の結果、未だにタイマt2が所定の時間T2よりも大きくない場合(S39でNo)、制御は次のフレームを開始するためステップS22に戻される。また、タイマt2が所定の時間T2よりも大きかった場合(S39でYes)、自律移動装置1の状態が追尾停止状態に状態遷移され(S40)、その後、追尾停止状態で用いられるタイマt1が初期化されて(S41)、制御は次のフレームを開始するためステップS22に戻される。
【0053】
上述のステップS24でターゲット20が見つかった場合(S24でYes)、中央制御手段10はタイマt2をゼロに初期化し(S30)、タイマt3の積算を行う(S31)。その後、ターゲット検出手段7は、ターゲット20の位置を計算し(S32)、そのターゲット20の位置を自律移動装置1の移動の目的地に設定する(S33)。そして、先のタイマt3の積算の結果、未だにタイマt3が所定の時間T3よりも大きくない場合(S34でNo)、ルート設定と移動処理が実行される(S27)。
【0054】
また、タイマt3の積算の結果、タイマt3が所定の時間T3よりも大きかった場合(S34でYes)、タイマt3の初期化を行い(S35)、連続した時間T3の間のターゲット20の動きが自律移動装置1へ追尾停止、追尾終了、緊急停止などの指示を行う合図であるかどうかが判断され、指示ではなかった場合(S36でNo)、ルート設定と移動処理が実行される(S27)。また、ターゲット20の動きが、いずれか指示を行う合図の場合(S36でYes)、指示された処理、例えば、追尾停止状態への状態遷移を行い(S37)、その後、制御は次のフレームを開始するためステップS22に戻される。
【0055】
次に、図15の追尾停止状態処理のサブルーティンについて説明する。これは、上述のステップS42の処理に対応する。まず、ターゲット20が見つかったかどうかが判断され、ターゲット20が見つかっていない場合(S51でNo)、タイマt1が初期化される(S52)。その後、現在、目的地が設定されているかどうか判断され(S53)、目的地が設定されていない場合は(S53でNo)、サブルーティンの処理は終了し、目的地が設定されている場合は(S53でYes)、ルート設定と移動処理、すなわち追尾走行の処理を行う(S54)。このルート設定と移動処理のステップは、上述の図13に示した処理と同じであり、その後のステップS55,S56の処理は、図12に示したステップS7,S8と同じであるので、これらの説明は省略する。
【0056】
また、ステップS51でターゲット20が見つかった場合(S51でYes)、タイマt1の積算を行う(S57)。その後、ターゲット検出手段7は、ターゲット20の位置を計算する(S58)。ここで、目的地の設定は行われない。そして、先のタイマt1の積算の結果、未だにタイマt1が所定の時間T1よりも大きくない場合(S59でNo)、サブルーティンの処理は終了する。
【0057】
また、タイマt1の積算の結果、タイマt1が所定の時間T1よりも大きかった場合(S59でYes)、タイマt1の初期化を行い(S60)、連続した時間T1の間のターゲット20の動きが自律移動装置1へ追尾停止、追尾終了、緊急停止などの指示を行う合図であるかどうかが判断され、指示ではなかった場合(S61でNo)、サブルーティンの処理は終了し、ターゲット20の動きが、いずれか指示を行う合図の場合(S61でYes)、指示された処理、例えば、追尾停止状態への状態遷移を行い(S62)、その後、サブルーティンの処理は終了する。
【0058】
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、自律移動装置1として、装置本体8の上部に距離情報取得装置9を配置した構造を示したが、距離情報取得装置9を装置本体8に内蔵する構成としてもよい。また、応答用音声発生装置を備えて、これを用いて、ターゲット20の検出時、見失い時、あるいは自律移動装置の状態変化等に際して、適宜応答用音声を発生するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に係る自律移動装置の追尾走行の状況を示す側面図。
【図2】同上自律移動装置の距離情報取得装置のブロック構成図。
【図3】同上自律移動装置についてのブロック構成図。
【図4】(a)は同上自律移動装置の追尾走行の状況を示す平面図、(b)は(a)の状況で取得された距離画像、(c)はターゲットを検出したことを示す距離画像。
【図5】(a)は同上自律移動装置の撮像手段とターゲットの位置関係を示す斜視図、(b)は(a)の状態にある自律移動装置の平面図。
【図6】検出されたターゲットの軌跡を示す距離画像。
【図7】(a)は同上自律移動装置の撮像手段と障害物及びターゲットの位置関係を示す斜視図、(b)は(a)の状態において取得された距離画像。
【図8】(a)〜(d)は図7(b)の距離画像からターゲットを検出する手順を説明する距離画像、(e)は(d)の距離画像における障害物とターゲットの奥行き形状を示す図。
【図9】(a)は同上自律移動装置が障害物回避ルートを設定する様子を示す平面図、(b)は同装置が障害物回避のため回転した様子を示す平面図、(c)は同装置が回避ルートに変えて最短ルートを設定する様子を示す平面図。
【図10】(a)は同上自律移動装置が計測範囲からターゲットを見失った様子を示す平面図、(b)は同装置が見失っていたターゲットを再検出したときの動作を説明する平面図。
【図11】同上自律移動装置が行うターゲット検出のサーチ動作を説明する平面図。
【図12】同上自律移動装置が行う追尾走行処理のフローチャート。
【図13】同上自律移動装置が行うルート設定と移動の処理フローチャート。
【図14】同上自律移動装置が行う追尾停止状態を含む追尾走行処理のフローチャート。
【図15】同上自律移動装置が行う追尾停止状態の処理フローチャート。
【符号の説明】
【0060】
1 自律移動装置
2 撮像手段
3 距離情報取得手段
4 障害物認識手段
5 走行手段
6 走行制御手段
7 ターゲット検出手段
20 ターゲット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された計測範囲内を撮像する撮像手段と、前記撮像手段の撮像データにより前記計測範囲内の距離情報を取得する距離情報取得手段と、前記距離情報取得手段によって取得された距離情報から障害物を認識する障害物認識手段と、走行のための駆動部を有する走行手段と、自己位置と自己姿勢とを認識すると共に前記障害物認識手段によって認識された走行進路中の障害物を回避するように前記走行手段を制御する走行制御手段と、を備えた自律移動装置において、
前記距離情報取得手段によって取得された距離情報に基づいて、移動自在な予め設定された形状及び大きさのターゲットを検出するターゲット検出手段を備え、
前記走行制御手段は、前記ターゲット検出手段によって検出されたターゲットの位置を目的地とすると共に、前記障害物認識手段によって認識された障害物を回避しつつ前記ターゲットを追尾走行するように前記走行手段を制御すること特徴とする自律移動装置。
【請求項2】
走行している際に、前記ターゲット検出手段がターゲットを検出できなくなった場合に、その直前に検出していた最後のターゲットの位置を目的地として走行するように前記走行手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の自律移動装置。
【請求項3】
前記最後のターゲットの位置を目的地として走行している際に、前記ターゲット検出手段がターゲットを検出した場合に、その検出したターゲットの位置を目的地として走行するように前記走行手段を制御することを特徴とする請求項2に記載の自律移動装置。
【請求項4】
前記最後のターゲットの位置を目的地として走行して、その目的地に到達した際に、前記計測範囲内よりも広い範囲で距離情報を取得してその情報によりターゲットを検出し、これを新たなターゲットとして追尾走行するように前記走行手段を制御することを特徴とする請求項2に記載の自律移動装置。
【請求項5】
前記ターゲット検出手段が第1回目のターゲット検出の所定時間後に第2回目のターゲット検出を行い、前記検出した第1回目と第2回目のターゲットが同じ位置の場合には停止し、異なる位置の場合には走行するように前記走行手段を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の自律移動装置。
【請求項1】
予め設定された計測範囲内を撮像する撮像手段と、前記撮像手段の撮像データにより前記計測範囲内の距離情報を取得する距離情報取得手段と、前記距離情報取得手段によって取得された距離情報から障害物を認識する障害物認識手段と、走行のための駆動部を有する走行手段と、自己位置と自己姿勢とを認識すると共に前記障害物認識手段によって認識された走行進路中の障害物を回避するように前記走行手段を制御する走行制御手段と、を備えた自律移動装置において、
前記距離情報取得手段によって取得された距離情報に基づいて、移動自在な予め設定された形状及び大きさのターゲットを検出するターゲット検出手段を備え、
前記走行制御手段は、前記ターゲット検出手段によって検出されたターゲットの位置を目的地とすると共に、前記障害物認識手段によって認識された障害物を回避しつつ前記ターゲットを追尾走行するように前記走行手段を制御すること特徴とする自律移動装置。
【請求項2】
走行している際に、前記ターゲット検出手段がターゲットを検出できなくなった場合に、その直前に検出していた最後のターゲットの位置を目的地として走行するように前記走行手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の自律移動装置。
【請求項3】
前記最後のターゲットの位置を目的地として走行している際に、前記ターゲット検出手段がターゲットを検出した場合に、その検出したターゲットの位置を目的地として走行するように前記走行手段を制御することを特徴とする請求項2に記載の自律移動装置。
【請求項4】
前記最後のターゲットの位置を目的地として走行して、その目的地に到達した際に、前記計測範囲内よりも広い範囲で距離情報を取得してその情報によりターゲットを検出し、これを新たなターゲットとして追尾走行するように前記走行手段を制御することを特徴とする請求項2に記載の自律移動装置。
【請求項5】
前記ターゲット検出手段が第1回目のターゲット検出の所定時間後に第2回目のターゲット検出を行い、前記検出した第1回目と第2回目のターゲットが同じ位置の場合には停止し、異なる位置の場合には走行するように前記走行手段を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の自律移動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図8】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図4】
【図5】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図6】
【図8】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図4】
【図5】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−199965(P2007−199965A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−16993(P2006−16993)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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