説明

自立式結晶化シリコン薄膜の製造方法

本発明は、1mmを越える粒度を持つ自立式結晶化シリコン薄膜の製法に係る。本発明は、また自立式シリコンリボンを製造するための該方法の利用およびこのようにして得られたリボンにも係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「粗粒」状の結晶学的構造を持つ、自立式シリコンリボンを得るための、再結晶法に係り、これらのリボンは、光電池の製造にとって特に有利である。
【背景技術】
【0002】
光電池は、基本的に、単結晶性または多結晶性シリコンから作られる。
このシリコンは、一般的に液体シリコン浴から出発して、シリコンインゴットに固化処理することにより得られる。該インゴットを、次にウエハとして切出し、該ウエハを、前記電池の製造のために使用する。
これらインゴットをウエハに切出す際に生じる、該材料の喪失を避けるために、シリコンウエハまたはリボンを直接製造するための技術が開発された。
その第一の型の技術、即ちEFG(エッジ-画成フィルム-供給成長(Edge-defined Film-fed Growth))法(1)、RAD(リボンアゲインストドロップ(Ribbon Against Drop))法(2)およびRGS(支持体上でのリボン成長(Ribbon Growth on Substrate))法(3)によって例証される「液相」技術は、液体シリコン浴を使用する。
該EFG法において、該液体シリコンは、毛細管内を上昇して、種晶と接触し、次いで該種晶は垂直に移動される。この技術は、幅125mm(および厚み300μm)の面を持つ、大径の八角形断面のチューブを製造することを可能とする。従って、これから上記ウエハが切出される。
【0003】
上記RAD法においては、可撓性グラファイトのシートが、該液体シリコン浴に対して垂直に通され、その両面がシリコンで被覆された状態で出てくる。該リボンの厚みは、その引き上げ速度に依存する。
上記RGS法においては、移動する低温の支持体が、液体浴と接触し、かつその一方の面上にシリコンフィルムを同伴した状態で出てくる。固化は、該支持体から開始し(該リボンの面に対して平行な固/液フロント)、また光起電力用途にとっては最適でない、小さな粒子を含む構造を生成する。
これらの方法は、一般に100〜500μmなる範囲で変動するシリコンの厚みを達成することを可能とする。
【0004】
この液相技術と並行して、CVD法(4)およびPVD法(5)によって例示される、気相堆積に基く技術がある。このようにして堆積された該フィルムは、一般的に上記液相法によって得られたフィルムよりもかなり薄い(最大20μm)ものである。この気相技術は、高い堆積速度での作業を可能とし、その結果満足な生産性の確保を可能とする。しかし、このようにして得られる結晶学的な構造は、その小さな結晶サイズのために、高いエネルギー転化効率の達成を可能としない。
有機溶媒中にシリコン粉末を含む混合物を、液相として堆積し、該溶媒を蒸発させ、かつ水素添加したアルゴンプラズマトーチを用いて該粉末を焼結することを目論むことも可能である。この場合には、極めて高い生産性を達成することが可能であり、またこの技術は、最近、光起電力用途用のシリコンの製造のために利用されているが、この粗い焼結フィルムは、高い転化効率の達成を可能としない。
結果として、例えばCVD、PVDまたはプラズマ法により例示される技術等の、幾つかの技術は、特に生成されるシリコン結晶の粒径が小さい点に鑑みて、全く満足なものとはいえない。その上、これらの方法は、本質的に、支持体上に支持されたシリコンフィルムの提案を意図しており、従って自立式のシリコンフィルム、即ち支持体材料に付着されていないフィルムの開発に係るものではない。
【0005】
CVD法、PVD法またはプラズマ法あるいは更に上記RGS法により堆積されたフィルムについて観測される、上記粒子サイズの不十分さに関連して、支持されたシリコンフィルムを高温度にてアニール処理することによって、再結晶化法を実施することが、既に提案されている。フィルムをアニール処理するのに特に有利な一つの方法は、ゾーン溶融法であり、この方法は、考察する材料中で、高温ゾーンにおける2つの固体相間に、局部的に液体ブリッジを形成する工程および、このようにして生成した該材料を、引続き低温ゾーンに移動させる工程からなっている。この技術は、1950年代以来、特にシリコンで作られた大きな単結晶の成長に関連して公知であった。この技術は、最近になって光起電力用途用のシリコン薄膜を結晶化するために採用されている(4)。この方法においては、ゾーン-溶融アニール法が、厚み数μmを持つフィルムの再結晶のために利用されており、このフィルムは、真空蒸着技術に基く方法により薄膜電池を製造するための、エピタキシャル成長用の支持体として役立つものである。しかし、結晶サイズを増すためのこの有利な技術は、該文献においては、支持体上に支持されたシリコンフィルムを製造するためにのみ考察されている。従って、本発明に従って考察されるもう一つの局面に係る、かくして製造したシリコンフィルムの、その支持体からの分離に係る問題は、該文献においては扱われていない。
【0006】
明確な理由のために、該支持体から容易に分離されるか否かに係る、該シリコンフィルムの能力は、該文献著者の見地からすれば、とりわけ該支持体の呈する湿潤性と関連付けられるものである。
液相を含みまた非-湿潤性支持体を使用するアニール法において、脱湿潤を回避するための一解決策は、再結晶すべきシリコン上にシリカフィルムを堆積することである(6)。不幸なことに、この解決策は、幾つかの付随的な処理段階を含む。これらの追加の段階を解消するためには、本来的に湿潤性の物質、あるいは液状シリコンと接触した際に湿潤支持体を生成することのできる物質の使用が、一般的に好ましい。例えば、炭素は、液状シリコンと接触した際に、液状シリコンとの良好な湿潤性をもたらす、炭化ケイ素SiCの形成へと導く。
【0007】
不幸なことに、シリコンフィルムを製造するための上記液相法に関しては、該液状シリコンフィルムの固化方法およびこのようにして製造された該固体シリコンフィルムの分離法は、該支持体に対して選択される温度の選択を通して、密接に関連している。従って、分離性にとって重要なパラメータである、該Si/支持体界面において生成される、該SiCフィルムの厚みは、該支持体温度によって決定される。一方において、低い支持体温度は、不純物の拡散を制限し、また他方において、該SiCフィルムの形成を制限するので、分離が促進される。不幸にも、この低温度は、並行して、光起電力用途にとって不適当な、シリコンの微細粒子状の固化による微細構造の生成を誘発する。更に、これら利点および欠点は、高い支持体温度に対しては逆となる。
結果的に、通常利用可能な技術は、第一に自立式の、即ち支持基板を必要としない、また第二に粗粒状の結晶学的構造、即ちその粒度が少なくとも1mmを越える構造を与えるような、シリコンフィルムを得るための、簡単かつ迅速な方法を与えることはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、正確に言えば、上記要件を満足する方法を提案することにある。
特に、本発明は、薄いシリコンフィルム、特に自立式のシリコンリボンまたはウエハを得るのに有用な、簡単かつ経済的な方法を提案することを目的とする。
本発明は、また粗粒状の結晶学的構造を持つ、自立式のシリコン薄膜を製造するための方法を提案することをも目的とする。
本発明の目的の一つは、更に粗粒状のシリコン再結晶化と、このようにして製造したシリコン薄膜の、その元の支持体からの分離を、同時に達成するための、自立式のシリコン薄膜の製法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
より正確には、本発明は、自立式の結晶化されたシリコン薄膜の製造方法に関するものであり、この方法は、少なくとも以下に列挙するものからなる諸工程を含む:
(1) 少なくとも3つの異なる重ね合わされたフィルム、即ち支持体フィルム(substrate film)、表面シリコンフィルムおよび該支持体フィルムと該表面フィルムとの間に挿入された炭素を基本とする犠牲フィルム(sacrificial film)で構成される材料のウエハを調製し;
(2) 該ウエハの該表面フィルムの少なくとも一つのゾーンを、該ゾーンの表面に存在するシリコンを溶融し、かつ該溶融シリコンと該犠牲フィルムを構成する炭素とを反応させることにより、該溶融シリコンのフィルムに隣接するSiCフィルムを形成するように加熱する工程;
(3) 前記工程(2)における該溶融シリコンゾーンを冷却することにより、これを固化する工程;および
(4) 該支持体フィルムからの該SiCフィルムの自発的な脱離によって、所望のシリコン薄膜を回収する工程。
【0010】
上記固化工程(3)は、有利には粒径において1mmを越えるシリコン結晶を生成するのに適した条件下で行われる。
有利には、上記工程(2)、(3)および(4)は、連続的に実施される。
一変形態様によれば、本発明の方法は、また該所望のシリコン薄膜と隣接する、該SiCフィルムの除去を含む工程(5)をも包含する。
もう一つの変形態様によれば、上記犠牲フィルムと隣接する該支持体(基板)の面は、起伏を持つことができる。従って、本発明による該方法は、該形成されたシリコン薄膜の上に、この起伏を複製させ、またその結果として型押しされたシリコン薄膜の製造を可能とする。
更に別の変形態様によれば、上記工程(3)において行われる固化または結晶化は、種晶の添加、即ち該溶融ゾーンと少なくとも1種の外部からのシリコン結晶とを接触させることにより開始することもできる。
【0011】
該再結晶すべきシリコンのフィルムと、その支持体との間の界面における炭素を基本とする材料の存在、および本発明に従って要求される条件下での該溶融シリコンの冷却は、このようにして得られる該シリコンフィルムに、光起電力用途にとって有利な結晶学的構造および該フィルムの支持体からの良好な分離能力を与える。
有利には、本発明に関連して、該2つの所望の特性、即ち粗粒状の結晶学的構造を持つシリコンフィルムの製造および該シリコンフィルムの、その元の支持体からの分離の容易性が、これら相互の劣化を伴って得られるものではない。
【0012】
本発明のもう一つの局面によれば、本発明は自立式シリコンリボンを製造するための、前に記載されたような方法の利用に係る。該シリコンリボンの結晶学的構造は、1mmを越える粒子径を持つ。
最後に、本発明の課題は、またこの方法に従って得られたシリコンリボンの提供にもある。該シリコンリボンは、特に自立式のものであり、その結晶学的構造は、1mmを越える粒子径を持つ。
本発明の目的にとって、上記用語「自立式」とは、本発明が特許請求している方法に従って製造される上記粗粒状のシリコンフィルムが、堅い支持体に対して、接着により、しっかりと付着されていないことを意味する。
【0013】
材料のウエハ
a) 炭素を基本とするフィルム
該シリコンを汚染させないためには、選択される該炭素は、できる限り純粋なものであり、またその結果として有利には、99%を越える、または更には99.9%を越える純度を持つものである。
この炭素フィルムの厚みは、10nm〜2μmなる範囲、および有利には20nm〜200nmなる範囲内にある。
このフィルムは、シリコンに対して漏洩抵抗性でなければならず、また結果的に、上記液状シリコンの浸透を防止するために、開放型の孔をもたないものである必要がある。
この炭素フィルムは、当業者の能力の範囲内にある、標準的な技術に従って製造することができる。例えば、この炭素フィルムは、気体状または液状のプリカーサの熱分解により該支持体の一面の表面に形成し、あるいは溶媒の蒸発を伴う液体を用いる方法で堆積することによって形成し得る。
【0014】
上記したことから明らかなように、該支持体フィルムと再結晶すべき該シリコンフィルムとの間の界面における該炭素については、該液状シリコンとの接触により、まさに本発明が、多くの点における利益を導こうとしている、SiCフィルムへと完全に変換すべきことが意図されている。
第一に、該支持体フィルム中に存在する可能性のある金属元素の拡散を遮断することにより、このSiCフィルムは、該液状シリコンのフィルムを化学的に保護する。
その上、該Si/SiC界面は、エネルギー的に強力であり、該SiCの該液状シリコンフィルムによる良好な湿潤、およびその結果としての該液状シリコンフィルムの形態学的な安定性が保証される。このSiCの該液状シリコンフィルムによる良好な湿潤性は、また存在する場合には、支持体の表面組織の複製にとって好都合であり、このことは、上記電池における光の取込みにとって有利であり、また結果的に、該起伏を生成するために、該固化されたリボンに対して化学的な攻撃を与える、追加段階の使用の回避を可能とする。
【0015】
最後に、該炭化ケイ素フィルム/支持体界面が、機械的に弱いので、冷却の際に生じる熱力学的な応力が、接着性の崩壊により、即ち該シリコンおよび/または該支持体の破壊または変形を伴うことなしに、自発的な脱離をもたらす。
b) 支持体フィルム
該支持体(基板)を構成する該材料に関連して、該材料は、様々な性質を持つものであり得る。
本発明において使用するのに特に適した該支持体材料は、セラミックス型のもの、例えばアルミナまたは窒化ケイ素およびより詳しくはアルミナ等の低熱伝導性の材料である。
この支持体材料は、有利には、ウエハまたはリボン形状にあり、また特に5〜20cmなる範囲の幅および500μm〜10mmなる範囲および好ましくは1mm〜5mmなる範囲の厚みを持つリボンである。
【0016】
c) シリコンフィルム
上記シリコンフィルムに関連して、これは、一般的に、まさに本発明の方法によって高めようとしている、「微粒子状」の結晶学的な構造を持つ。
この微粒子状という結晶学的特徴では、一般に、100μm未満および特に10μm未満の粒径を持つ。
このシリコンフィルムは、任意の標準的な方法により製造できる。特に、これは、CVD、PVDまたは粉末堆積法、あるいはまたRGS技術によって、上記炭素フィルムの表面に形成することができる。
その厚みは、10μm〜500μmなる範囲および特に100μm〜200μmなる範囲であり得る。
本発明のその他の特徴並びに利点は、添付図面を参照しつつ以下に非-限定的な実例として与えられる、以下の説明を読むことにより、一層明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明に従って処理すべき材料のウエハの、模式的な断面図である。
【図2】図2は、工程(2)において得られたウエハの模式的な断面図である。
【図3】図3は、支持体フィルムからSi/SiC薄膜を脱離する工程を例示する図である。
【図4】図4は、本発明の方法に従って得たシリコン/SiC薄膜の、模式的な断面図である。
【図5】図5は、SiCフィルムを除去した後に得られるシリコン薄膜を示す図である。
【図6】図6は、加熱チャンバー内での、本発明による処理中の、ウエハの長手方向における動き、および該チャンバーの端部における、支持体フィルムからのSiCフィルムの自発的な脱離による、Si/SiC薄膜の回収を例示する図である。 明確化のために、これら添付図において見られる構造を持つ、物質の様々なフィルムは、実際の縮尺で描かれているものではなく、幾つかの部材の寸法は、大幅に誇張されていることに注意すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上記工程(2)において、再結晶化すべき物質のウエハの上記表面フィルムの、少なくとも一つのゾーン、特に上で定義したようなゾーンは、局部的にシリコンの融点以上の温度、即ち1410℃以上の温度とされる。
更に、この温度は、有利には1700℃未満、特に1550℃未満、あるいは更には1500℃未満である。
該選択された温度に従って、該溶融ゾーンの大きさは、5mm〜5cmなる範囲および特に5mm〜2cmなる範囲であり得る。
前に述べたように、この工程(2)は、第一に局所的な加熱に曝されている該ゾーン内のシリコンを溶融し、また第二にこのゾーンに隣接する炭素を炭化ケイ素SiCに変換することを可能とする。
次いで、このようにして処理した該ゾーンを、該ゾーンを再結晶化して、1mmを越える粒度とするのに好都合な条件に曝す。
【0019】
特に、これらの条件は、該溶融ゾーンを、その融点以下に冷却することを必要とする。
該溶融ゾーンの該冷却は、10〜1000℃/時および有利には50〜300℃/時なる冷却速度にて、段階的に行うことができる。
有利には、該溶融シリコンの再結晶にとって好都合なこの冷却は、該Si/SiC/支持体材料により生成される該溶融ゾーンの厚み方向における熱交換が、大幅に減じられるような条件下で行われる。
該条件は、該フィルム厚み方向の何れかの側の温度を制御する(例えば、該フィルムの面各々の加熱)ことにより得られる。
そのために、加熱手段を、該ウエハの何れかの側に配置することが有利である。
換言すれば、特に、該支持体フィルムの厚み方向ではなく、寧ろその長手方向に、温度勾配を与えることが有利である。
【0020】
これを実施するために、該支持体を、冷却操作に掛け、即ち上記工程(3)の実施中に、あるいは更に上記工程(2)の直後に、0〜20℃なる範囲の、該結晶化温度との温度差を持つ温度に暴露することが有利であり得る。
前に述べたように、上記工程(2)、(3)および(4)は、連続的に実施することができる。
従って、該工程(2)および(3)は、本発明に従って処理すべき上記ウエハが導入される、加熱チャンバー内で実施することができる。
このチャンバーは、まさに、第一に該工程(2)に必要とされる局所加熱を達成し、また第二に該支持体を加熱するために必要な熱エネルギーを与えることを可能とし、その際、基本的には該支持体の長手方向に対して及ぼされ、また本発明に従う上記所定のシリコンの結晶化をもたらす上で、より一層有利なことが明らかとなる、温度勾配を掛けることが好ましい。
【0021】
この熱伝導モードを有利なものとするために、低熱伝導体、例えばアルミナ製の支持体を使用することも、好ましいことであり得る。
更に、該材料のウエハおよび該チャンバーは、上記工程(2)におけるあらゆる溶融ゾーンが、冷却によるその再結晶化にとって好都合な、該チャンバーのゾーンに向かって連続的に移動するように、相互に関して運動させることが有利である。
より詳しくは、該チャンバーを介して運動するものは、該ウエハである。
上記工程(2)を実施するために必要とされる、上記局所加熱デバイスに関連して、処理すべき該材料のウエハの一つのゾーンのみに熱を適用するように、該デバイスを該チャンバー内に取付けることが有利である。
この局部的な加熱処理は、局所加熱にとって適した任意の公知の手段によって実施することができる。誘導加熱法は、とりわけ本発明において使用するのに最も適した方法である。しかし、抵抗加熱、赤外加熱、レーザー加熱、ミラーオーブン(mirror oven)加熱型等の加熱処理、あるいはこれらの任意の組合せ処理も考えることができる。
【0022】
上記冷却に関連して、この冷却の開始時点においては、特に該溶融ゾーンを微晶質ウエハと接触させることにより、該溶融ゾーンとシリコン種晶とを接触させることが有利であり得る。この再結晶化技術は、明らかに当業者の能力の範囲内にある。
冷却中、該Si/SiC二層型ウエハは、自発的に、即ち該ウエハを脱離させるために、機械的な応力を適用することなしに、該支持体フィルムから分離する。
かくして、上記工程の段階(4)の終了後、堅い支持体を持たない再結晶されたシリコンフィルムが得られる。しかし、該フィルムは、その一方の面において、一般的にはサブミクロンオーダーの厚みを持つ炭化ケイ素フィルムで覆われている。
この炭化ケイ素フィルムは、引続き、通常の技術に従って、一般には化学的な処理によって除去することができる。
【実施例】
【0023】
次に、本発明を、以下の実施例により説明するが、該実施例は、勿論のこと、本発明の非-限定的な例証を与えるものである。
実施例
先ず厚み約100nmの熱分解炭素(pyrocarbon)のフィルムが堆積されているアルミニウム上は(長さ50cm、幅10cm、厚み5mm)を、焼結粉末のフィルムで被覆する。このアセンブリーを、高温チャンバーを通過するコンベアベルトに載せる。該支持体の底部を、誘導式IR加熱ランプデバイスにより加熱する。このランプデバイスは、補足的な加熱を保証するために、該支持体上部の加熱をも行う。このようにして、該サンプルにおいて最高温度1500℃が達成され(高温計により測定)、これは、センチメートルオーダーのサイズの液状シリコンゾーンの生成へと導く。引抜きを、約50μm/秒なる速度にて、コンベアベルトを作動させることにより開始する。冷却中に、生成されるリボンは、該セラミックス支持体から分離する。室温まで戻した後、シリコンと接着していたサブミクロンサイズのSiCフィルムを、化学的に(硝酸-フッ化水素酸混合物)除去する。
【0024】
引用文献:
(1) B. Mackintosch等, J. Crystal Growth, 2006, 287:428-432;
(2) C. Belouet,「RAD法によるシリコンリボンの成長(Growth of silicon ribbons by the RAD process)」, J. Crystal Growth, 1987, 82:110-116;
(3) EP 165 449 A;
(4) S. Reber, A. Hurrle, A. Eyer, G. Wilke,「結晶性シリコン薄膜太陽電池-フラウンホーファーISEにおける最近の結果(Crystalline silicon thin film solar cells - recent results at Fraunhofer ISE)」,ソーラーエネルギー(Solar Energy), 2004, 77:865-875;
(5) M. Aoucher, G. Farhi, T. Mohammed-Brahim, J. Non-Crystalline Solids, 1998, 227-230:958;
(6) T. Kieliba等,「ZrSiO4セラミック支持体上の、結晶性シリコン薄膜太陽電池(Crystalline silicon thin film solar cells on ZrSiO4 ceramic substrates)」,太陽エネルギー材料および太陽電池(Solar Energy Materials & Solar Cells), 2002, 74:261。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立式結晶化シリコンの薄膜を製造する方法であって、少なくとも以下に列挙するものからなる諸工程:
(1) 少なくとも3つの異なる重ね合わされたフィルム、即ち支持体フィルム、表面シリコンフィルムおよび該支持体フィルムと該表面フィルムとの間に挿入された炭素を基本とする犠牲フィルムで構成される材料のウエハを調製し;
(2) 該ウエハの少なくとも一つのゾーンを、該ゾーンの表面に存在するシリコンを溶融し、かつ該溶融シリコンと該犠牲フィルムを構成する炭素とを反応させることにより、該溶融シリコンのフィルムに隣接するSiCフィルムを形成するように加熱する工程;
(3) 前記工程(2)における該溶融シリコンゾーンを冷却することにより、これを固化する工程;および
(4) 該支持体フィルムからの該SiCフィルムの自発的な脱離によって、所望のシリコン薄膜を回収する工程、
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記の如くして製造した前記シリコン薄膜が、1mmを越える粒度を持つ、請求項1記載の方法。
【請求項3】
更に、(5) 前記SiCフィルムを除去する工程をも含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記工程(2)、(3)および(4)が、連続的に行われる、請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(3)において行われる結晶化が、前記溶融ゾーンと、少なくとも1つのシリコン結晶とを接触させることにより開始する、請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記犠牲フィルムと隣接する前記支持体の面が、起伏を持つ、請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記炭素フィルムの厚みが、2μm未満である、請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記支持体フィルムが、セラミック型の材料から製造され、該フィルムは、好ましくは低熱伝導体である、請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記工程(2)において加熱された前記ゾーンが、1410〜1700℃なる範囲の温度、より詳しくは1550℃未満または更には1500℃未満なる温度にある、請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記加熱手段が、前記ウエハの厚み方向の何れかの側に配置されている、請求項1〜9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記支持体が、その冷却のために、0〜20℃なる範囲内の、前記結晶化温度に対する温度差を持つ温度に対して暴露されている、請求項1〜10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記工程(2)および(3)を、局部加熱デバイスを備えた加熱チャンバー内で行う、請求項1〜11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記材料のウエハおよび前記チャンバーが、前記工程(2)における前記溶融ゾーンを、その冷却にとって好ましい該チャンバーのゾーンに向けて移動するように、夫々に対して移動するように作られている、請求項1〜12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
結晶構造が1mmを越える粒度を持つ、自立式シリコンリボンを製造するための、請求項1〜13の何れか1項に記載の方法の使用。
【請求項15】
結晶構造が1mmを越える粒度を持ち、請求項1〜13の何れか1項に記載の方法に従って製造したものであることを特徴とする、自立式シリコンリボン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2012−502457(P2012−502457A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525598(P2011−525598)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051667
【国際公開番号】WO2010/026343
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(510336565)
【Fターム(参考)】