説明

舶用脱硝装置およびこれを備えた船舶

【課題】脱硝用還元剤としてアンモニアを生成する際に必要な電気エネルギーを低い消費エネルギーで供給できる舶用脱硝装置を提供する。
【解決手段】水から水素を製造する水素製造部及び空気から窒素を製造する窒素製造部を有し、水素製造部によって製造された水素および窒素製造部によって製造された窒素からアンモニアを生成するアンモニア生成器2と、舶用推進用のディーゼルエンジン3の排ガス通路としての第2排気管L2に設けられ、アンモニア生成器2によって生成されたアンモニアとともに排ガス脱硝を行うSCR触媒部4とを備えた舶用脱硝装置1において、ハイブリッド排気タービン過給機5の発電機モータ5cの発電出力がアンモニア生成器2に対して供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばディーゼルエンジンからの排ガスの脱硝に用いて好適な船舶に搭載される舶用脱硝装置およびこれを備えた船舶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶推進用のディーゼルエンジン(メインエンジン)から発生する窒素酸化物(NOx)を除去するために、船舶に脱硝装置が搭載される。
下記特許文献1には、脱硝触媒の還元剤として用いるアンモニアを船舶上にて生成可能とした発明が開示されている。アンモニアが船舶上で生成できるので、液体アンモニアを船舶へと運搬し、船舶内で貯蔵する必要がない。また、液体アンモニアは危険物として扱われるので、漏洩検知センサや二重配管といった特別な貯蔵設備を設ける必要があるが、船舶上にてアンモニアを必要量だけ生成すれば特別な貯蔵設備を設ける必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−292531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
船舶上でアンモニアを生成するには水電気分解や搬送ポンプ等を駆動するための電気エネルギーが必要とされる。上記特許文献1では、補機としてのディーゼルエンジン発電機からの電力を利用することが示されている。
しかし、一般的にディーゼルエンジン発電機はメインエンジンよりも熱効率が低いため、ディーゼルエンジン発電機から電力を得るのでは、アンモニアを生成するためにエネルギーを更に浪費することになり、省エネルギーの観点から好ましくない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、脱硝用還元剤としてアンモニアを生成する際に必要な電気エネルギーを低い消費エネルギーで供給できる舶用脱硝装置およびこれを備えた船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の舶用脱硝装置およびこれを備えた船舶は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる舶用脱硝装置は、水から水素を製造する水素製造部、及び、空気から窒素を製造する窒素製造部を有し、前記水素製造部によって製造された水素および前記窒素製造部によって製造された窒素からアンモニアを生成するアンモニア生成器と、舶用推進用のメインエンジンの排ガス通路に設けられ、前記アンモニア生成器によって生成されたアンモニアとともに排ガス脱硝を行う脱硝触媒部とを備えた舶用脱硝装置において、前記メインエンジンの排気エネルギーを用いて発電する発電機の発電出力が前記アンモニア生成器に対して供給されることを特徴とする。
【0007】
アンモニア生成器は、水から水素を製造する水素製造部と、空気から窒素を製造する窒素製造部とを有し、水素製造部および窒素製造によって製造された水素および窒素によってアンモニアを生成する。このように、水および空気を原料として船舶上にてアンモニアを生成できるので、液体アンモニア(例えばアンモニア水溶液)や尿素等の還元剤を貯蔵するスペースを船舶上に設ける必要がない。したがって、大きなスペースを確保することなく舶用脱硝装置を船舶内に設置することができる。
また、メインエンジンの排気エネルギーを用いて発電する発電機の発電出力がアンモニア生成器に対して供給されるので、アンモニア生成器を少ない消費エネルギーで運転することができる。また、メインエンジンの排気エネルギーを有効利用できるので、別途設けられたディーゼルエンジン発電機等の発電用補機の容量増大や増台を回避することができる。
【0008】
さらに、本発明の舶用脱硝装置では、前記アンモニア生成器によって生成されたアンモニアは、前記メインエンジンの排ガス通路に対して、貯留されることなく直接供給されることを特徴とする。
【0009】
アンモニア生成器によって生成されたアンモニアを、途中で貯留することなく排ガス通路に直接供給することとしたので、アンモニアを貯留する際に必要となる漏洩対策が不要となり付帯設備を最小化することができる。
また、アンモニアを排ガス通路に直接供給するので、漏洩を検知した時点でアンモニア生成を停止することで漏洩被害の拡大を最小限に止めることができる。これにより、脱硝装置の信頼性が向上する。
【0010】
さらに、本発明の舶用脱硝装置では、前記メインエンジンの排気タービン過給機の回転出力を得て発電する過給機側発電機を、前記発電機として用いることを特徴とする。
【0011】
メインエンジンの排気タービン過給機の回転出力を得て発電する過給機側発電機を備えた過給機として、ハイブリッド排気タービン過給機が知られている。この過給機側発電機をアンモニア生成器に対して電力供給する発電機として用いることとした。これにより、メインエンジンの排気エネルギーを有効に利用することができる。
【0012】
さらに、本発明の舶用脱硝装置では、前記メインエンジンの排ガスを駆動源とするパワータービンによって発電するパワータービン側発電機を、前記発電機として用いることを特徴とする。
【0013】
メインエンジンの排ガスを駆動源とするパワータービンによって発電するパワータービン側発電機の出力電力をアンモニア生成器に用いることとした。これにより、メインエンジンの排気エネルギーを有効に利用することができる。
【0014】
さらに、本発明の舶用脱硝装置では、前記メインエンジンの排ガスを駆動源とするパワータービン、及び、前記メインエンジンの排ガスを用いた排ガスボイラによって生成された蒸気を駆動源とする蒸気タービンによって発電する異種タービン側発電機を、前記発電機として用いることを特徴とする。
【0015】
異種タービン側発電機には、パワータービン及び蒸気タービンといった異なる種類(異種)のタービンが接続されている。この異種タービン側発電機を用いることにより、メインエンジンの排ガスを駆動源とするパワータービンに加えて、メインエンジンの排ガスを用いた排ガスボイラによって生成された蒸気を駆動源とする蒸気タービンをも用いて発電することとしたので、さらにメインエンジンの排気エネルギーを有効に利用することができる。
【0016】
メインエンジンから発生する窒素酸化物(NOx)量はメインエンジン負荷に対して概略比例関係を有している。ハイブリッド排気タービン過給機、パワータービン、または蒸気タービンは、その回転出力から発電を得る方式なのでメインエンジン負荷に応じた発電出力が得られるようになっている。したがって、脱硝のための必要アンモニア量を生成するための必要電力とメインエンジン負荷とが概略比例するので、メインエンジンに対する影響を少なく抑えることができる。
また、メインエンジンの排気エネルギーを用いて発電する場合、排気タービン過給機によりメインエンジンに送り込まれる空気量が低下するため、メインエンジン出力一定で比較した場合、発電しない場合に比べて排ガス温度が上昇する。脱硝触媒部として主に用いられている選択接触還元法(SCR)のSCR触媒では、排ガス温度が低温になるほど被毒のおそれがある。本発明によれば、排ガス温度が上昇するのでSCR触媒の被毒を防止することができる。特に、メインエンジンとして2ストロークディーゼルエンジンを用いる場合には、排ガス温度が低いため効果的である。さらに、SCR触媒の被毒の影響をゼロとする程度までハイブリッド排気タービン過給機またはパワータービンの発電量を増加させて排ガス温度を上昇させる運用も可能である。この場合、余剰電力が発生することになるが、機関室全体のシステム構成を見直すことにより、補機としてのディーゼルエンジン発電機の容量を減少させることができ、あるいは減台することができる。
【0017】
また、本発明の船舶は、船舶推進用のメインエンジンと、上記のいずれかに記載の舶用脱硝装置とを備えていることを特徴とする。
【0018】
上記のいずれかの舶用脱硝装置は、コンパクトに構成できるので、船舶に搭載するのに好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、メインエンジンの排気エネルギーを用いて発電する発電機の発電出力をアンモニアの生成に用いることとしたので、少ない消費エネルギーで舶用脱硝装置を運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる舶用脱硝装置が設けられたディーゼルエンジンまわりを示した概略構成図である。
【図2】図1に示したアンモニア生成器の概略を示した概略構成図である。
【図3】本発明の第2実施形態にかかる舶用脱硝装置が設けられたディーゼルエンジンまわりを示した概略構成図である。
【図4】本発明の第3実施形態にかかる舶用脱硝装置が設けられたディーゼルエンジンまわりを示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1を用いて説明する。
図1には、本実施形態にかかる舶用脱硝装置1が設けられたディーゼルエンジン3まわりの概略構成が示されている。
船舶内には、船舶推進用のディーゼルエンジン(メインエンジン)3と、ディーゼルエンジン3からの排ガスを脱硝するための脱硝装置1と、ディーゼルエンジン3の排ガスによって駆動されるハイブリッド排気ターボ過給機5と、ディーゼルエンジン3の排ガスによって蒸気を生成する排ガスエコノマイザ(排ガスボイラ)11とを備えている。
【0022】
ディーゼルエンジン3からの出力は、プロペラ軸を介してスクリュープロペラに直接的または間接的に接続されている。また、ディーゼルエンジン3の各気筒のシリンダ部13の排気ポートは排ガス集合管としての排気マニホールド15に接続されている。排気マニホールド15は、第1排気管L1を介して排気ターボ過給機5のタービン部5aの入口側と接続されている。
【0023】
一方、各シリンダ部13の給気ポートは給気マニホールド17に接続されており、給気マニホールド17は、給気管K1を介して排気ターボ過給機5のコンプレッサ部5bと接続している。また、給気管K1には空気冷却器(インタークーラ)19が設置されている。
【0024】
ハイブリッド排気ターボ過給機5は、タービン部5aと、コンプレッサ部5bと、ハイブリッド発電機モータ(過給機側発電機)5cとを備えている。タービン部5a、コンプレッサ部5b及びハイブリッド発電機モータ5cは、回転軸5cによって同軸にて連結されている。
ハイブリッド発電機モータ5cは、タービン部5aによって得られる回転出力を得て発電する一方で、船内系統30から電力を得てコンプレッサ部5bの回転を加勢する。ハイブリッド発電機モータ5cと船内系統30との間には、ハイブリッド発電機モータ5c側から順に、交流電力を直流電力に変換するコンバータ19と、直流電力を交流電力に変換するインバータ20と、開閉スイッチ21とが設けられている。
ハイブリッド発電機モータ5cによって発電された電力は、後述するように、アンモニア生成器2へと供給される。
なお、ハイブリッド発電機モータ5cによって発電された電力は、コンバータ19により直流電力に変換された後、インバータ20を通さずにアンモニア生成器2に直接供給することも可能である。
【0025】
この排ガスエコノマイザ11は、排気ターボ過給機5のタービン部5aの出口側の第2排気管L2に接続されており、ディーゼルエンジン3から排出される排ガスと、給水管23によって供給された水とを熱交換させて蒸気を発生させる。排ガスエコノマイザ11の上流側には、排ガスの流出入を制御する排ガスエコノマイザ用開閉弁22が設けられている。排ガスエコノマイザ用開閉弁22の切替タイミングは、図示しない制御部によって決定される。
【0026】
舶用脱硝装置1は、アンモニア生成器2と、選択接触還元法(SCR;Selective
Catalytic Reduction)に用いられるSCR触媒部4とを備えている。アンモニア生成器2及びSCR触媒部4は、第2排気管L2に接続されており、排ガス流れの上流側にアンモニア生成器2が配置され、下流側にSCR触媒部4が配置されている。
図2に示されているように、アンモニア生成器2は、水から水素を製造する水素製造部61と、空気から窒素を製造する窒素製造部63と、水素および窒素からアンモニアを生成するアンモニア生成部60とを備えている。
水素製造部61に用いられる水は、船舶に搭載された造水機65によって海水から製造された真水を、更に、船舶に搭載された純水製造機67によって製造された純水が用いられる。水素製造部61には、電解質としてイオン交換膜を用いて純水を電気分解する固体高分子電解質膜法が用いられる。水素製造部61から発生した水素は、水素ドライヤー(図示せず)で脱湿された後、アンモニア生成部60へと送られる。
窒素製造部63では、PSA(Pressure Swing Adsorption)法等によって空気から窒素が得られる。窒素製造部63で得られた窒素は、アンモニア生成部60へと送られる。
アンモニア生成部60では、水素と窒素とが混合加熱され、ルテニウム触媒等の反応触媒の下でアンモニアが生成される。
【0027】
アンモニア生成器2では、水素製造部61の電気分解等のように電力を消費するため、この電力として、上述したハイブリッド発電機モータ5cからの電力が利用される。
アンモニア生成器2にて生成されたアンモニア(ガス)は、図1に示すように、アンモニア生成器用開閉弁24を介して、第2排気管L2に直接供給される。このように、生成されたアンモニアは、途中で貯留されることなく排ガス中に供給されるようになっている。アンモニア生成器用開閉弁24の切替タイミングは、図示しない制御部によって決定される。
【0028】
SCR触媒部4には、SCR用開閉弁26を介して第2排気管L2から排ガスが導入されるようになっている。SCR用開閉弁26の切替タイミングは、図示しない制御部によって決定される。SCR触媒部4では、排ガス中のNOxが触媒により選択的に還元され、無害な窒素と水蒸気に分解される。
【0029】
SCR用開閉弁26と排ガスエコノマイザ用開閉弁22とは、択一的に選択されて開閉が行われる。すなわち、排ガスのNOx規制が厳格とされている海域を航行する際のように排ガス脱硝が必要な場合は、SCR用開閉弁26を開き、排ガスエコノマイザ用開閉弁22を閉じる。一方、排ガスのNOx規制が比較的緩やかな海域を航行する際のように排ガス脱硝を行わない場合は、SCR用開閉弁26を閉じ、排ガスエコノマイザ用開閉弁22を開ける。
なお、SCR用開閉弁26及び排ガスエコノマイザ用開閉弁22は、1つの三方弁で代用することも可能である。
【0030】
次に、上記構成の舶用脱硝装置1の運用方法について説明する。
ディーゼルエンジン3から排出された排ガスは、排気マニホールド15から第1排気管L1を介してハイブリッド排気ターボ過給機5のタービン部5aへと導かれる。タービン部5aは、排ガスエネルギーを得て回転させられ、その回転出力を回転軸5dを介してコンプレッサ部5b及びハイブリッド発電機モータ5cへと伝達する。コンプレッサ部5bでは、吸入した空気(外気)を圧縮して空気冷却器19を介して給気マニホールド17へと送る。
ハイブリッド発電機モータ5cでは、タービン部5aから得た回転出力によって発電し、その発電出力を船内系統30へと供給する。供給されたハイブリッド発電機モータ5cからの電力は、アンモニア生成器2へと送られ、水素製造部61の電気分解や、中間生成ガスおよび生成されたアンモニアを搬送する搬送ポンプ等に用いられる。
アンモニア生成器2では、ハイブリッド発電機モータ5cからの電力を用いて、水素製造部61にて製造された水素と窒素製造部63にて製造された窒素とからアンモニアが生成される。
【0031】
排ガスNOx規制が厳格な海域を航行する場合には、排ガス脱硝を行う。この場合、排ガスエコノマイザ用開閉弁22を閉とし、アンモニア生成器用開閉弁24及びSCR用開閉弁26を開とする。
ハイブリッド排気ターボ過給機5のタービン部5aから排出された排ガスは、第2排気管L2を通り、アンモニア生成器2から供給されるアンモニア(ガス)と混合される。アンモニアと混合された排ガスは、SCR用開閉弁26を介してSCR触媒部4へと導かれ、このSCR触媒部4にて脱硝され、図示しない煙突から外部へと排出される。
【0032】
排ガスNOx規制が比較的緩やかな海域を航行する場合には、排ガス脱硝を行わない。この場合、排ガスエコノマイザ用開閉弁22を開とし、アンモニア生成器用開閉弁24及びSCR用開閉弁26を閉とする。
ハイブリッド排気ターボ過給機5のタービン部5aから排出された排ガスは、第2排気管L2を通り、排ガスエコノマイザ用開閉弁22を介して、排ガスエコノマイザ11へと導かれる。排ガスエコノマイザ11では、給水管23から供給される水が排ガスによって加熱されて蒸気が生成される。生成された蒸気は、船内の各所にて使用される。排ガスエコノマイザ11から排出された排ガスは、図示しない煙突から外部へと排出される。
【0033】
上述の通り、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
アンモニア生成器2により、水および空気を原料として船舶上にてアンモニアを生成できるので、液体アンモニア(例えばアンモニア水溶液)や尿素等の還元剤を貯蔵するスペースを船舶上に設ける必要がない。したがって、大きなスペースを確保することなく舶用脱硝装置を船舶内に設置することができる。
【0034】
ディーゼルエンジン3の排気ガスによって発電するハイブリッド排気ターボ過給機5のハイブリッド発電機モータ5cの発電出力がアンモニア生成器2に対して供給されるので、アンモニア生成器2を少ない消費エネルギーで運転することができる。また、ディーゼルエンジン3の排気エネルギーを有効利用できるので、別途設けられたディーゼルエンジン発電機等の発電用補機の容量増大や増台を回避することができる。
【0035】
アンモニア生成器2によって生成されたアンモニアを、途中で貯留することなく第2排気管L2に直接供給することとしたので、アンモニアを貯留する際に必要となる漏洩対策が不要となり付帯設備を最小化することができる。
アンモニアを第2排気管L2に直接供給するので、漏洩を検知した時点でアンモニア生成を停止することで漏洩被害の拡大を最小限に止めることができる。これにより、脱硝装置1の信頼性が向上する。
【0036】
また、ディーゼルエンジン3から発生するNOx量はディーゼルエンジン負荷に対して概略比例関係を有している。ハイブリッド排気タービン過給機5は、その回転出力から発電を得る方式なのでディーゼルエンジン負荷に応じた発電出力が得られるようになっている。したがって、脱硝のための必要アンモニア量を生成するための必要電力とディーゼルエンジン負荷とが概略比例するので、ディーゼルエンジン3に対する影響を少なく抑えることができる。
ハイブリッド排気タービン過給機5により発電することで、ディーゼルエンジン出力一定で比較した場合、発電しない場合に比べて排ガス温度が上昇する。SCR触媒部4では、排ガス温度が低温になるほど排ガス中の硫黄分による被毒のおそれがある。本実施形態によれば、排ガス温度が上昇するのでSCR触媒部4の被毒を防止することができる。特に、2ストロークディーゼルエンジンを用いる場合には、排ガス温度が低いため効果的である。さらに、SCR触媒部4の被毒の影響をゼロとする程度までハイブリッド排気タービン過給機5の発電量を増加させて排ガス温度を上昇させる運用も可能である。この場合、余剰電力が発生することになるが、機関室全体のシステム構成を見直すことにより、補機としてのディーゼルエンジン発電機の容量を減少させることができ、あるいは減台することができる。
【0037】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図3を用いて説明する。上述した第1実施形態では、ハイブリッド排気タービン過給機5(図1参照)からの発電出力を脱硝装置に利用する構成としたのに対して、本実施形態では、パワータービン(ガスタービン)からの発電出力を脱硝装置に利用する構成とした点が異なる。したがって、その他の共通する構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0038】
第1実施形態のハイブリッド排気タービン過給機5(図1参照)に代えて、図3に示すように、排気タービン過給機5’が設けられている。排ガスによって駆動されるタービン部5a及び空気を圧縮するコンプレッサ部5aについては第1実施形態と同様である。
【0039】
排気マニホールド15には、第3排気管L3が接続されており、この第3排気管L3を介してパワータービン7の入口側へとディーゼルエンジン3の排ガスが導かれる。このように、ディーゼルエンジン3の排ガスの一部が、排気ターボ過給機5’に供給される前に抽ガスされてパワータービン7に供給されるようになっている。この抽ガスされた排ガスによって、パワータービン7が回転駆動される。
パワータービン7の出口側から排出された排ガスは、第4排気管L4を介して、第2排気管L2へと導かれるようになっている。
【0040】
パワータービン7からの回転出力は、回転軸32を介して、パワータービン側発電機33に伝達されるようになっている。パワータービン側発電機33にて発電された出力は、周波数変換器35及び開閉スイッチ36を介して船内系統30へと供給されるようになっている。これにより、パワータービン側発電機33の出力電力がアンモニア生成器2へと供給される。
パワータービン側発電機33と周波数変換器35との間には、ロードバンク44が設けられている。ロードバンク44としては、例えばリチウム二次電池、キャパシタ等の二次電池が用いられ、パワータービン側発電機33からの出力変動を低減するために用いられる。
【0041】
また、第3排気管L3には、パワータービン7に導入するガス量を制御する排ガス量調整弁37と、非常時にパワータービン7への排ガスの供給を遮断する非常停止用緊急遮断弁39とが設けられている。また、非常停止用緊急遮断弁39が遮断したときに、排気ターボ過給機5’のタービン部5aへの過過給(エンジンの最適運転圧力を超えての過給)を防止するためにバイパス弁40及びオリフィス42が、第3排気管L3と第4排気管L4との間に設けられている。
【0042】
本実施形態によれば、第1実施形態の作用効果に加え、以下の作用効果を奏する。
ディーゼルエンジン3の排ガスを駆動源とするパワータービン7によって発電するパワータービン側発電機33の出力電力をアンモニア生成器2に用いることとしたので、ディーゼルエンジン3の排気エネルギーを有効に利用することができる。
【0043】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について、図4を用いて説明する。上述した第2実施形態では、パワータービン7(図3参照)から得られた発電出力を脱硝装置に利用する構成としたのに対して、本実施形態では、パワータービン及び蒸気タービンからの発電出力を脱硝装置に利用する構成とした点が異なる。したがって、その他の共通する構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0044】
図4に示すように、蒸気タービン9は、排ガスエコノマイザ11によって生成された蒸気が第1蒸気管J1を介して供給されて回転駆動されるようになっている。
排ガスエコノマイザ11には、排気ターボ過給機5’のタービン部5aの出口側から第2排気管L2を介して排出される排ガスと、パワータービン7の出口側から第4排気管L4を介して排出される排ガスとが、導入されるようになっている。排ガスエコノマイザ11で生成された蒸気は第1蒸気管J1を介して蒸気タービン9に導入される。蒸気タービン9で仕事を終えた蒸気は、第2蒸気管J2によって排出されて図示しないコンデンサ(復水器)に導かれるようになっている。
【0045】
パワータービン7と蒸気タービン9とは直列に結合されて異種タービン側発電機50を駆動するようになっている。すなわち、発電機50には、パワータービン7及び蒸気タービン9といった異なる種類(異種)のタービンが同軸上に接続されている。異種タービン側発電機50にて発電された出力は、周波数変換器35及び開閉スイッチ36を介して船内系統30へと供給されるようになっている。これにより、異種タービン側発電機50の出力電力がアンモニア生成器2へと供給される。
【0046】
蒸気タービン9の回転軸52は図示しない減速機およびカップリングを介して異種タービン側発電機50に接続され、また、パワータービン7の回転軸32は図示しない減速機およびクラッチ53を介して蒸気タービン9の回転軸52と連結されている。クラッチ53としては、所定の回転数にて嵌脱されるクラッチが用いられ、例えばSSS(Synchro-Self-Shifting)クラッチが好適に用いられる。
【0047】
第1蒸気管J1には、蒸気タービン9に導入する蒸気量を制御する蒸気量調整弁54と、非常時に蒸気タービン9への蒸気の供給を遮断する非常停止用緊急遮断弁55とが設置されている。また、第1蒸気管J1と第2蒸気管J2との間には、蒸気タービン7をバイパスする蒸気流量を調整するための蒸気バイパス弁57が設けられている。
【0048】
本実施形態によれば、第1実施形態および第2実施形態の作用効果に加え、以下の作用効果を奏する。
ディーゼルエンジン3の排ガスを駆動源とするパワータービン7に加えて、ディーゼルエンジン3の排ガスを用いた排ガスエコノマイザ11によって生成された蒸気を駆動源とする蒸気タービン9をも用いて発電することとしたので、さらにディーゼルエンジンの排気エネルギーを有効に利用することができる。
【0049】
なお、上述した第1実施形態および第2実施形態では、排ガスエコノマイザ11を用いた構成としたが、排ガスエコノマイザ11を省略した構成としても良い。
また、上述した各実施形態では、発電出力を船内系統30へ供給し、この船内系統30を介してアンモニア生成器2へ必要電力を供給する構成として説明したが、本発明はこれに限定されず、船内系統とは別の専用電力供給系統を設け、この専用電力系統からアンモニア生成器2へと発電電力を供給する構成としても良い。
【符号の説明】
【0050】
1 舶用脱硝装置
2 アンモニア生成器
3 ディーゼルエンジン(メインエンジン)
4 SCR触媒部
5 ハイブリッド排気タービン過給機
5’ 排気タービン過給機
5c ハイブリッド発電機モータ(過給機側発電機)
7 パワータービン
9 蒸気タービン
11 排ガスエコノマイザ(排ガスボイラ)
33 パワータービン側発電機
50 異種タービン側発電機
61 水素製造部
63 窒素製造部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水から水素を製造する水素製造部、及び、空気から窒素を製造する窒素製造部を有し、前記水素製造部によって製造された水素および前記窒素製造部によって製造された窒素からアンモニアを生成するアンモニア生成器と、
舶用推進用のメインエンジンの排ガス通路に設けられ、前記アンモニア生成器によって生成されたアンモニアとともに排ガス脱硝を行う脱硝触媒部と、
を備えた舶用脱硝装置において、
前記メインエンジンの排気エネルギーを用いて発電する発電機の発電出力が前記アンモニア生成器に対して供給されることを特徴とする舶用脱硝装置。
【請求項2】
前記アンモニア生成器によって生成されたアンモニアは、前記メインエンジンの排ガス通路に対して、貯留されることなく直接供給されることを特徴とする請求項1に記載の舶用脱硝装置。
【請求項3】
前記メインエンジンの排気タービン過給機の回転出力を得て発電する過給機側発電機を、前記発電機として用いることを特徴とする請求項1に記載の舶用脱硝装置。
【請求項4】
前記メインエンジンの排ガスを駆動源とするパワータービンによって発電するパワータービン側発電機を、前記発電機として用いることを特徴とする請求項1に記載の舶用脱硝装置。
【請求項5】
前記メインエンジンの排ガスを駆動源とするパワータービン、及び、前記メインエンジンの排ガスを用いた排ガスボイラによって生成された蒸気を駆動源とする蒸気タービンによって発電する異種タービン側発電機を、前記発電機として用いることを特徴とする請求項1に記載の舶用脱硝装置。
【請求項6】
船舶推進用のメインエンジンと、
請求項1から5のいずれかに記載の舶用脱硝装置と、
を備えていることを特徴とする船舶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−94536(P2011−94536A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249197(P2009−249197)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】