説明

船外機用の2気筒V型OHVエンジン

【課題】 2気筒V型OHVエンジンにおいてエンジンの幅方向における省スペースを図る。
【解決手段】 シリンダブロック31は、シリンダヘッド51と共にV字形状のシリンダバンクLB、RBをなし、シリンダブロック31内部には、片側(各シリンダバンクLB,RB)に1気筒ずつシリンダ34L、34Rが形成される。クランクシャフト35の下端側にクランクギヤ42が固定され、カムシャフト41の下端側にカムギヤ43が固定される。クランクギヤ42とカムギヤ43とにはアイドルギヤ44が噛み合い、クランクシャフト35の回転駆動力がアイドルギヤ44を介してカムシャフト41に伝達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船外機用の2気筒V型OHVエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、カム軸に同軸に一体に形成されたタイミングギヤとクランク軸に同軸に設けられたクランクギヤとを噛合させ、クランク軸の動力が、上記タイミングギヤ及びクランクギヤを介してカム軸に伝わるようにし、実質的に、クランク軸でカム軸を直接的に駆動するように構成されたV型OHVエンジンが知られている。
【特許文献1】特開平07−293268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に示されるようなV型OHVエンジンでは、タイミングギヤ及びクランクギヤを噛合させるために、両ギヤが大型化する傾向にあり、エンジンの大型化を招くだけでなく、カム軸自体の重量も増大する。特に、小型化が強く求められる船外機に、V型のOHVエンジンを搭載する場合には、エンジン幅の拡大を極力抑制する工夫が重要である。
【0004】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、2気筒V型OHVエンジンにおいてエンジンの幅方向における省スペースを図ることができる船外機用の2気筒V型OHVエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明の請求項1の船外機用の2気筒V型OHVエンジンは、第1気筒を有する第1シリンダーバンクと第2気筒を有する第2シリンダーバンクとがV字形状をなすように構成された船外機用の2気筒V型OHVエンジンであって、1本のカム軸を、アイドルギヤを介してクランク軸で駆動するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、2気筒V型OHVエンジンにおいてエンジンの幅方向における省スペースを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0008】
図1は、本発明の一実施の形態に係る2気筒V型OHVエンジンを備える船外機の縦断面図である。図2は、上記船外機の横断面図である。
【0009】
尚、以降、船外機1について、図1左方(船体側)を「前方」、右方を「後方」、上方を「上方」、下方を「下方」とし、手前側を「左舷側」、奥側を「右舷側」として説明する。
【0010】
図1に示すように、この船外機1は、エンジン2と、エンジン2の下面に接合固定されているオイルパン4と、オイルパン4の下部に固定されているドライブシャフトハウジング5と、ドライブシャフトハウジング5の下部に固定されているギヤハウジング6とを備える。エンジン2は、その内部にクランクシャフト35が略垂直に(縦置きに)配置されたOHV式水冷4サイクルV型2気筒エンジンである。また、船外機1は、上下分割可能なエンジンカバー8を備え、エンジンカバー8は、エンジン2及びオイルパン4の周囲を覆っている。
【0011】
オイルパン4、及びドライブシャフトハウジング5内にはドライブシャフト12が略垂直に配置される。ドライブシャフト12は、ドライブシャフトハウジング5内を下方に向かって延び、ギヤハウジング6内のベベルギヤ14及びプロペラシャフト13を介して、推進装置であるプロペラ15を駆動するように構成されている。
【0012】
オイルパン4には、図7で後述するように左舷側及び右舷側の各側面にアッパーマウント取付部104L,104Rが形成されており、アッパーマウント取付部104L,104Rには、図示しない左右一対のアッパーマウントが取り付けられており、このアッパーマウントは、アッパーマウントブラケット23に取り付けられている。また、ドライブシャフトハウジング5の両側部には図示しない一対のロアーマウントが設けられており、このロアーマウントは、ロアーマウントブラケット25に取り付けられている。そして、船外機1は、後述するように、これらアッパーマウントブラケット23及びロアーマウントブラケット25の前端がクランプブラケット7に連結されており、クランプブラケット7が図示しない船体の船尾板に固定される。
【0013】
クランプブラケット7には、チルト軸24を介してスイベルブラケット21が設けられており、スイベルブラケット21内にパイロットシャフト22が鉛直方向に、且つ回転自在に軸支されている。パイロットシャフト22の上下端に、アッパーマウントブラケット23及びロアーマウントブラケット25が夫々回動一体に設けられている。これらにより、船外機1は、クランプブラケット7に対しパイロットシャフト22を中心に左右に操舵可能になると共に、チルト軸24を中心に上方に向かってチルトアップ可能になる。
【0014】
エンジン2の最前部(船首側)にはシリンダブロック31が配置されており、シリンダブロック31の後方にはシリンダヘッド51が配置されている。シリンダブロック31は、その最前面がシリンダカバー32によって覆われている。また、図2に示すように、シリンダブロック31が、シリンダヘッド51(51L,51R)と共にV字形状のシリンダバンク(左舷側シリンダバンクLB及び右舷側シリンダバンクRB)をなすように、V字形状のバンクが形成されている。
【0015】
シリンダブロック31及びシリンダヘッド51L,51Rの下面には、クランクシャフト35の下部を収容するクランクケース3が配置されている(図3、図8参照)。クランクケース3には、オイル戻し用の孔が形成されており、下部にオイルパン4が接続されている。また、クランクシャフト35は、その上端部がシリンダブロック31の上部に、その下端部がクランクケース3によって夫々回転自在に軸支されて収容されている。クランクシャフト35は、ドライブシャフト12と連結されている。
【0016】
また、図1、図2に示すように、シリンダバンクLB,RB間、すなわち、シリンダブロック31内のV字形状バンク先端の近傍であってクランクシャフト35の後方には、クランクシャフト35に平行にカムシャフト41が配置されている。カムシャフト41は、その上端部がシリンダブロック31の上部に、その下端部がクランクケース3に夫々回転自在に軸支されている。クランクシャフト35には、その下端側にクランクギヤ42が固定されており、カムシャフト41には、その下端側にカムギヤ43が固定されている。クランクケース3には、アイドルギヤ44が回転自在に軸支されている。アイドルギヤ44の上下方向における位置は、カムギヤ43及びクランクギヤ42の位置とほぼ同じである。アイドルギヤ44はまた、左右方向において、右舷側にオフセットされた位置に配置されている。アイドルギヤ44は、後述するシリンダ34Rの下方に位置し、平面視において、一部が上記シリンダ34Rと重なっている。アイドルギヤ44は、クランクギヤ42とカムギヤ43とに噛み合ってクランクシャフト35の回転駆動力をカムシャフト41に伝達する。
【0017】
図1に示すように、ギヤハウジング6の上部には、ドライブシャフト12によって駆動されるウオータポンプ17が設置されており、また、ギヤハウジング6には吸水口18が設けられている。オイルパン4には、図7で後述する水溜り部19が設けられており、ウオータポンプ17によって吸水口18から冷却水として取り入れられた外部の水(海水、湖水、河水等)が、ウオータチューブ20を介して水溜り部19に供給される。ウオータチューブ20は、オイルパン4のウオータチューブ取付孔92(図7(a)参照)に取り付けられている。
【0018】
水溜まり部19に溜められた水は、図示しない冷却水通路を通ってシリンダブロック31や左右のシリンダヘッド51(51L、51R;図2及び図3参照)を冷却した後、排気ガスと共にプロペラ15の中心孔から船外機1外部に放出される。
【0019】
クランクケース3においてカムシャフト41の下端には、オイルポンプ45が設置されており、オイルポンプ45にはオイルパン4内の底部に延びるオイルストレイナ16が接続されている。オイルパン4内に貯留された潤滑オイル(以下、単に「オイル」と称する)は、後述するように、オイルストレイナ16を通じてオイルポンプ45により吸い上げられ、エンジン2内の各部に給送された後、オイルパン4内に再び戻される。
【0020】
図3は、船外機1のエンジン2及びオイルパン4の背面図であり、図4は、船外機1の部分断面図である。
【0021】
上述のように、図2及び図3に示すように、エンジン2には、シリンダヘッド51(51L,51R)が、平面視で後方に向かって開くV字形状のシリンダバンクをなすように左右一対設けられている。また、図3に示すように、シリンダヘッド51Rは、シリンダヘッド51Lに対してクランクシャフト35に平行であって上方にオフセットされている。即ち、シリンダヘッド51Rは、クランクシャフト35の軸方向に、シリンダヘッド51Lより所定のオフセット量だけ高い位置に設けられている。尚、シリンダヘッド51Rは、シリンダヘッド51Lに対して下方にオフセットされていてもよい。
【0022】
左舷側シリンダバンクLB及び右舷側シリンダバンクRBは、基本的に同様に構成され、シリンダブロック31内部には、片側(各シリンダバンクLB,RB)1気筒ずつシリンダ34(34L、34R)が形成されている。一方、シリンダヘッド51側には、図4に示すように、各シリンダ34に整合する燃焼室33と、燃焼室33に連通される吸気ポート57及び排気ポート58が上下に夫々形成されており、吸気ポート57及び排気ポート58はシリンダヘッド51の上面及び下面に夫々開口されている。吸気ポート57と排気ポート58の間には、燃焼室33内の圧縮混合気に点火する点火プラグ60が燃焼室33毎に取り付けられている。シリンダヘッド51L,51Rには、ヘッドカバー52,59が夫々被装されている。
【0023】
シリンダヘッド51L,51Rの各々には、図4に示すように、吸気バルブ53が吸気ポート57を開閉可能に取り付けられており、排気バルブ54が排気ポート58を開閉可能に取り付けられており、また、図2に示すように、ヘッドカバー59内部において、吸気バルブ53及び排気バルブ54の各々に対応して、ロッカアーム55が揺動可能に軸支されている。ロッカアーム55は、シリンダバンク内側方向端においてプッシュロッド56と係合し、シリンダバンク外側方向端において吸気バルブ53及び排気バルブ54と当接する(図4参照)。
【0024】
カムシャフト41は、図1に示すように、上方から順に、シリンダヘッド51Rの吸気バルブ53をその軸方向に移動させるためのRIカム41aと、シリンダヘッド51Lの吸気バルブ53をその軸方向に移動させるためのLIカム41bと、シリンダヘッド51Rの排気バルブ54をその軸方向に移動させるためのREカム41cと、シリンダヘッド51L排気バルブ54をその軸方向に移動させるためのLEカム41dと、後述する燃料ポンプ78を駆動するための燃料ポンプ駆動用カム41iとを備える(図9も参照)。燃料ポンプ駆動用カム41iは、カムギヤ43の上に位置する。
【0025】
カム41a,41b,41c,41dはプッシュロッド56に当接しており、カムシャフト41が回転すると、各プッシュロッド56は各カムのプロフィールに沿ってその長手方向に動かされて、これによりロッカアーム55が揺動し、シリンダヘッド51Rの吸気バルブ53、シリンダヘッド51Lの吸気バルブ53、シリンダヘッド51Rの排気バルブ54、シリンダヘッド51Lの排気バルブ54が夫々動かされて、吸気ポート57及び排気ポート58の燃焼室33への連通が、吸気バルブ53及び排気バルブ54によって夫々開閉制御される。
【0026】
カムシャフト41において、カム41a,41b,41c,41dが上述のようにこの順番で形成されていることにより、シリンダヘッド51Rのシリンダヘッド51Lに対するオフセット量を減少させることができる。すなわち、上側のシリンダ34R用の吸気、排気用カムであるRIカム41a、REカム41cと、下側のシリンダ34L用の吸気、排気用カムであるLIカム41b、LEカム41dとの位置がオーバーラップしていることで、仮にカム41a,41c,41b,41dの順に配置した場合に比し、上下関係にある2つの気筒34L、34Rのオフセット量が少なくても各カム位置を適切に設定でき、従って、高さ方向におけるエンジン2の省スペースを図ることができる。
【0027】
図2に示すように、シリンダブロック31の各シリンダ34(34L、34R)には、ピストン37が、対応するシリンダ34内を摺動自在に挿入されており、ピストン37は、クランクシャフト35に回転自在に取り付けられたコンロッド36に、ピストンピン38にて回転自在に軸支されて取り付けられている。
【0028】
図5は、船外機1の概略構成を示す上面図であり、図6は、エンジン2及びオイルパン4の右舷側側面図である。
【0029】
図1に示すように、クランクシャフト35の上端側には、フライホイールマグネット61が固定されており、シリンダブロック31の上部には、フライホイールマグネット61に内包されてバッテリチャージコイル62がクランクシャフト35の周りに固定されている。また、図1及び図5に示すように、シリンダブロック31の上部には、フライホイールマグネット61を内包するフライホイールマグネットカバー63が取り付けられている。
【0030】
図1に示すように、フライホイールマグネットカバー63には、その内部のフライホイールマグネット61上方にリコイルスタータ64が取り付けられている。リコイルスタータ64は、スタータグリップ65と、フライホイールマグネットカバー63に回転自在に軸支されたリール66と、一端がスタータグリップ65に他端がリール66の軸部に接続されてリール66の溝に巻き付けられたゼンマイ67と、ゼンマイ67が引っ張られることによりフライホイールマグネット61と係合する図示しない係合部とを備える。リコイルスタータ64は、スタータグリップ65が引っ張られることにより、ゼンマイ67が引っ張られてリール66を回転させると共に、図示しない係合部がフライホイールマグネット61と係合してフライホイールマグネット61を回転させ、クランクシャフト35を回転させることによりエンジン2を始動させることができる。また、シリンダブロック31の左舷側前方には、スタータモータ77が配置されている。
【0031】
船外機1において、フライホイールマグネットカバー63の上方には、吸気サイレンサ68が配置されている。吸気サイレンサ68は、右舷後方に下向きに開口する吸入口69と、後方に開口する連通口70と、内部を仕切る仕切板71とを備え、吸入口69から吸入された外気が吸気サイレンサ68内部を仕切板71に沿って図5に示す矢印の方向に流れて連通口70から排出される。
【0032】
吸気サイレンサ68の後方であって、シリンダブロック31のシリンダバンクLB,RB間上方には、吸気サイレンサ68と連通口70を介して連通される気化器72が配置されている。また、気化器72の後方には、インテークマニホールド73が配置されている。インテークマニホールド73は、連通パイプ74と、連通パイプ74の一端から分岐する左舷側のインテークパイプ76L及び右舷側のインテークパイプ76Rとを備え、連通パイプ74の他端が気化器72に接続されてインテークマニホールド73と気化器72とが連通される。インテークパイプ76Lはシリンダヘッド51Lに接続されて、インテークマニホールド73とシリンダヘッド51Lの吸気ポート57とが連通され、インテークプパイプ76Rはシリンダヘッド51Rに接続されて、インテークマニホールド73とシリンダヘッド51Rの吸気ポート57とが連通される(図4参照)。
【0033】
気化器72は、吸気サイレンサ68から吸入された吸入外気に、シリンダバンクLB,RB間に配置された燃料ポンプ78を介して供給される燃料を混合して混合気を作り、混合気は、インテークマニホールド73を介してシリンダバンクLB,RBの各シリンダ34L、34R内に吸入される。
【0034】
図1に示すように、エンジンカバー8は、上部後方に外気取入チャンバ81と、上部後方で幅方向における略中央に外気取入チャンバ81とエンジンカバー8外部とを連通して外気取入チャンバ81内に外気を取り入れるための外気取入口82と、外気取入チャンバ81とエンジンカバー8内部とを連通してエンジン2に外気を供給するための外気導入ダクト83とを備える。外気導入ダクト83は、船外機1の幅方向に気化器72に対して吸気サイレンサ68の吸入口69の反対側に配置されている。エンジンカバー8外部の外気は、外気取入口82、外気取入チャンバ81、及び外気導入ダクト83を介してエンジンカバー8内に導入される。
【0035】
図7は、オイルパン4の概略構造を示す図であり、図7(a)は下面図であり、図7(b)は左側面図であり、図7(c)は上面図であり、図7(d)は右側面図である。
【0036】
図7(a)に示すように、オイルパン4の底面91には、ウオータチューブ20が取り付けられるウオータチューブ取付孔92が形成されている。ウオータチューブ取付孔92は、オイルパン4の右側面に形成されている水溜り部19に連通している。水溜り部19には、底面91に平行に船外機1の左右方向に形成されている冷却水通路93と、底面91に平行に船外機1の前後方向に形成されている冷却水通路94とが連通する。また、オイルパン4の右側面には、図示しないプレッシャバルブが収容されるプレッシャバルブ室95が水溜り部19に連通して形成されており、プレッシャバルブ室95は底面91に形成されている冷却水排出孔96に連通している。また、底面91には、オイルパン4を上下方向に貫通する、エンジン2においてドライブシャフト12が摺動自在に同軸に貫挿されるドライブシャフト孔97が形成されている。
【0037】
オイルパン4において、底面91の後方には、エンジン2において底面91より高い位置であって底面91と平行に中段板98が形成されている。また、中段板98の後方には、オイルパン4を上下方向に貫通する、エンジン2内を循環した冷却水がエンジン2外に排出されるための冷却水戻し通路99が形成されており、冷却水戻し通路99の後方には排気レリーズ室100が形成されている。また、オイルパン4の後部であって冷却水戻し通路99の左右両側には、オイルパン4を上下方向に貫通する一対の排気通路101L,101Rが形成されている(図4参照)。
【0038】
図7(c)に示すように、オイルパン4の後部であって左右両側部には、冷却水通路102L及び冷却水通路102Rが排気通路101L及び排気通路101Rを内包するように夫々形成されている。冷却水通路102L及び冷却水通路102Rには、冷却水通路94及び冷却水通路93が夫々連通している。
【0039】
オイルパン4には、オイルが貯留されるオイル貯留部103が、オイルパン4の左右側面、前後側面、底面91、及び中段板98により画定されており、オイル貯留部103に貯留されているオイルは、オイルポンプ45によりオイルストレイナ16を介して吸い上げられてエンジン2内を循環し、エンジン2内を潤滑する。
【0040】
図7(b)及び図7(d)に示すように、オイルパン4の左右両側面には、アッパーマウント取付部104L,104Rが夫々形成されており、上述のように船外機1において、アッパーマウント取付部104L,104Rには、図示しない左右一対のアッパーマウントが夫々取り付けられており、このアッパーマウントは、アッパーマウントブラケット23に取り付けられている。
【0041】
図8(a),(b)は、クランクケース3単体の概略構造を示すクランクケース3の下面図である。図8(b)には、後述するオイル通路カバー119等が併せて示されている。
【0042】
図8(a),(b)に示すように、クランクケース3の後部の左右両側部には、上下方向に貫通する排気通路110L,110Rが夫々形成されており、また、排気通路110L,110Rを内包するように上下方向に貫通する冷却水通路111L,111R夫々が形成されている。排気通路110L,110Rは、図4に示すようにエンジン2において、下側がオイルパン4の排気通路101L,101Rに夫々連通し、一方、上側がシリンダヘッド51L,51Rの各排気ポート58に夫々連通している。また、冷却水通路111L,111Rは、下側がオイルパン4の冷却水通路102L,102Rに夫々連通しており、上側がシリンダヘッド51L,51Rに形成されているシリンダヘッド冷却水通路251(図2参照)に連通している。
【0043】
上述のシリンダヘッド冷却水通路251は、シリンダブロック31内に形成されているシリンダブロック冷却水通路252に連通していると共に(図2参照)、その上端が、シリンダバンクLB,RB間であってシリンダブロック31の上方に取り付けられたサーモスタット84の上流側に形成されているサーモスタット上流室85(図1及び図11参照)に接続している。また、上述のシリンダブロック冷却水通路252は、冷却水がシリンダバンクLB,RBの各シリンダ34L、34Rを冷却した後にサーモスタット上流室85(図1及び図11参照)内に流入するように形成されている。
【0044】
クランクケース3の前部中央には、クランクケース3を上下方向に貫通する、エンジン2においてクランクシャフト35が摺動自在に同軸に貫挿されるクランクシャフト孔112が形成されており(図8(b)参照)、後部中央には、上下方向に貫通する冷却水戻し通路113が形成されている。冷却水戻し通路113はエンジン2において、下側がオイルパン4の冷却水戻し通路99と連通し、上側が、シリンダバンクLB,RB間であってシリンダブロック31に取り付けられている図示しない冷却水戻し配管に連通している。この冷却水戻し配管は、サーモスタット84及びサーモスタット上流室85がサーモスタットカバー86によって覆われて形成されているサーモスタット84の下流側のサーモスタット下流室87(図1及び図11参照)に接続している。
【0045】
また、クランクケース3の中央部にはオイルポンプ45を収容するオイルポンプ室114が形成されている(図8(b)参照)。オイルポンプ室114には、クランクケース3を上下方向に貫通する、エンジン2においてカムシャフト41が摺動自在に同軸に貫挿されるカムシャフト孔114aが形成されている。
【0046】
また、クランクケース3は、潤滑構造120を備える。潤滑構造120は、クランクケース3の下面において平面視略コの字型の曲線状の曲線オイル通路115と、オイルポンプ45と、直線状の直線オイル通路116と、第1クランクケース内オイル通路117と、第2クランクケース内オイル通路118と、曲線オイル通路115を密閉するためのオイル通路カバー119とを有する。オイル通路カバー119には、エンジン2においてオイルストレイナ16の上端部に対応する位置に、オイルストレイナ16の上端部が気密に圧入されるオイルストレイナ取付孔121が形成されており、潤滑構造120は、オイルポンプ45の作動により、オイルパン4のオイル貯留部103内に貯留されたオイルをエンジン2内の各部に供給する。
【0047】
また、クランクケース3には、クランクケース3の上下方向に沿ってオイルフィルタ連通孔122と、オイルパン連通孔123と、メインギャラリ連通孔124とが形成されている(図8(a)参照)。オイルフィルタ連通孔122は、上端がクランクケース3の上面に開口して、エンジン2において、シリンダブロック31に形成されたオイルフィルタ通路141(図2)に連通する。オイルパン連通孔123は、上端がクランクケース3の上面に開口して、オイルパン4のオイル貯留部103に連通する。メインギャラリ連通孔124は、上端がクランクケース3の上面に開口して、エンジン2において、シリンダブロック31内にクランクシャフト35と平行に形成されたメインギャラリ142(図2)に連通する。オイルフィルタ通路141と、メインギャラリ142とは、オイルフィルタ143を介して接続している。オイルフィルタ143は、シリンダブロック31の右舷側前面において、シリンダバンクRBのシリンダ34Rの軸及びクランクシャフト35の軸を通る平面P(図2)に平行な平面R(図2)上、即ち船外機1の前方に面する平面上に取り付けられている(図2参照)。
【0048】
このように、オイルフィルタ143は、エンジン2の前方において、前方に傾斜して、即ちエンジン2の前方から右舷側に傾いて取り付けられているので、船外機1においてユーザが、船体から降りることなくオイルフィルタ143の交換作業等を行うことができ、オイルフィルタ143を交換作業性のよいものにすることができる。尚、オイルフィルタ143の取付位置及び方向は上述の位置及び方向に限るものではなく、例えば左舷側前方に、前方から左舷側に傾斜して取り付けられていてもよい。
【0049】
図8(a)に示すように、曲線オイル通路115は、クランクケース3下面において平面視略L字型の曲線状で断面略コの字型溝である第1オイル通路125と、クランクケース3下面において平面視略L字型の曲線状で断面略コの字型の溝である第2オイル通路126と、オイルポンプ室114とを備え、第1オイル通路125は、オイルストレイナ16の上端部とオイルポンプ室114とを接続し、第2オイル通路126は、オイルポンプ室114を介して第1オイル通路125に接続している。曲線オイル通路115は、鋳抜きにより形成される。
【0050】
直線オイル通路116は、図8(a)に示すように、クランクケース3下面と平行であってクランクシャフト孔112の軸に対して垂直に形成された直線トンネル状の通路であり、一端がクランクケース3の右舷側側面に、他端が第2オイル通路126の前方端126aに開口している。また、直線オイル通路116は、オイルフィルタ通路122の下端と、オイルパン連通孔123の下端とに連通するように形成されている。直線オイル通路116は、加工により形成される。
【0051】
第1クランクケース内オイル通路117は、図8(a)に示すように、直線オイル通路116に対して略平行であってクランクケース3において下方に形成された直線トンネル状の通路であり、一端がクランクケース3の右舷側側面に、他端がクランクシャフト孔112に開口している。また、第1クランクケース内オイル通路117は、メインギャラリ連通孔124の下端と連通するように形成されている。
【0052】
第2クランクケース内オイル通路118は、クランクケース3の下面でオイルポンプ室114とクランクシャフト孔112との間に形成された凹状のオイル溜まり127を介してクランクシャフト孔112とオイルポンプ室114のカムシャフト孔114aとを接続する直線トンネル状の通路である。
【0053】
エンジン2においてクランクケース3は、クランクシャフト35がクランクシャフト孔112に図12で後述するメタルベアリング132を介して貫挿され、第1クランクケース内オイル通路117のクランクケース3右舷側開口端がプラグ161で密閉されている。また、直線オイル通路116のクランクケース3右舷側開口端にリリーフバルブ128(図12参照)が挿入されてプラグ162によって密閉されている。
【0054】
また、エンジン2において、カムシャフト孔114aにはカムシャフト41が貫挿され、オイルポンプ室114においてカムシャフト41の下端にオイルポンプ45が取り付けられ、このオイルポンプ45は、オイル通路カバー119によって、曲線オイル通路115及びオイル溜まり127と共に密閉されている。
【0055】
上述のように、曲線オイル通路115は鋳抜きにより形成され、また、曲線オイル通路115の第2オイル通路126は、略L字型の曲線状であるので、クランクケース3の右舷側側面、並びにオイルフィルタ連通孔122及びオイルパン連通孔123の近傍に前方端126aを容易に形成することができる。これにより、直線オイル通路116の長さを短くすることができ、直線オイル通路116の加工を容易に行うことができる。従って、オイルストレイナ16からオイルフィルタ143までのオイル通路である潤滑構造120の形成を容易に行うことができ、潤滑構造120の生産性を向上させることができる。
【0056】
更に、潤滑構造120は、曲線オイル通路115の第1オイル通路125及び第2オイル通路126が曲線状であり、直線オイル通路116が短い直線状であるので、潤滑構造120を形成するために他の構造の配置等を考慮する必要性を少なくすることができ、即ちエンジン2の内部構造に拘らずに潤滑構造120を形成することができ、加えて、潤滑構造120の加工のために必要とするスペースを減少させることができる。従って、エンジン2を小型化することができ、船外機1を小型化することができる。
【0057】
また、上述のように、クランクケース3において、曲線オイル通路115の第2オイル通路126、直線オイル通路116、第1クランクケース内オイル通路117、オイルフィルタ連通孔122、及びオイルパン連通孔123は、右舷側に形成されている。また、図3で上述したように、右舷側のシリンダヘッド51Rは、シリンダヘッド51Lに対して上方にオフセットされていて、シリンダヘッド51Lより高い位置に設けられており、シリンダブロック31において、シリンダヘッド51R側の下方には空きスペースが形成されている。従って、この空きスペースの下方に、曲線オイル通路115の第2オイル通路126、直線オイル通路116、第1クランクケース内オイル通路117、オイルフィルタ連通孔122、及びオイルパン連通孔123が集約して配置されるので、エンジン2を小型化することができる。また、オイルフィルタ143がシリンダブロック31の右舷側に取り付けられているので、エンジン2をより小型化することができる。
【0058】
図9は、カムシャフト41の縦断面図である。図10(a)は、図9のA−A線に沿う断面図である。図10(b)、(c)は、スチールボールが収容されるカムシャフト41のボール収容部の平面視による模式図ある。同図(b)はスチールボールの突出状態、同図(c)はスチールボールの没入状態を示している。
【0059】
図9に示すように、カムシャフト41は、中空構造であり、その内部に、円筒状のデコンプカムシャフト150が内装されている。すなわち、上記したカムシャフト41内部のオイル通路41eは、その略下半部が、オイル流路としても機能する挿通穴41e1となっており、挿通穴41e1より上方部分が、挿通穴41e1より小径の上側オイル通路41e2となっている。そして、デコンプカムシャフト150は、挿通穴41e1に下方から嵌挿され、カムシャフト41の下端部にボルト157が螺合されることで、挿通穴41e1内を中心点P1(図10(a)参照)を中心に回転自在にされる。
【0060】
デコンプカムシャフト150も中空構造であり、その内部には、デコンプカム内オイル通路150bが同軸に形成されている。デコンプカムシャフト150の下端部には、オイル導入路41fをデコンプカム内オイル通路150bと連通するためのオイル流入穴150cが形成されている。図9及び図10(b)、(c)に示すように、デコンプカムシャフト150の、REカム41c及びLEカム41dの位置に対応する部分には、切欠部150dが形成されている。また、カムシャフト41の、REカム41c及びLEカム41dの位置に対応する部分には、スチールボール151が収容されるボール収容部41hが形成されている。ここで、図9では、REカム41c用のボール出没機構(REカム41cに対応する切欠部150d、ボール収容部41h及びスチールボール151)のみが表されているが、LEカム41d用のボール出没機構はREカム41c用のボール出没機構と同様の構成を有し、中心点P1回りの回転方向における配置位置が異なるのみである。従って、以下では、ボール出没機構に構成については、主としてREカム41c用のボール出没機構について説明する。
【0061】
図9、図10(a)に示すように、カムギヤ43の上部には、固定ピン153、156が突設され、アーム152が、固定ピン156を中心に水平方向に回動自在にされている。また、アーム152の自由端部に設けられた係止部152aと固定ピン153との間にリターンスプリング154が介装され、アーム152は、リターンスプリング154によって図10(a)の時計方向に常に付勢されている。デコンプカムシャフト150の、アーム152に対応する位置には、係合ピン155が固定され、係合ピン155の先端は、アーム152の係合凹部152bと係合している。カムシャフト41には、係合ピン155が回転移動するための間隙部41jが形成されており、カムシャフト41の回転とは別に、係合ピン155の回転により、デコンプカムシャフト150が、係合ピン155と一体にカムシャフト41に対して相対的に回転するようになっている。
【0062】
REカム41c用及びLEカム41d用の各ボール出没機構、デコンプカムシャフト150、アーム152、固定ピン153、156、リターンスプリング154、リターンスプリング154、及び係合ピン155で、「デコンプ機構」が構成される。
【0063】
デコンプ機構は、かかる構成において、次のように動作する。すなわち、エンジン始動時において、スタータグリップ65を引っ張って、リコイルスタータ64の動力によりクランクシャフト35を助走回転させるとき、カムギヤ43の回転速度は、カムシャフト41と同じく低いので、アーム152には遠心力があまり作用しない。従って、アーム152は、カムシャフト41の回転停止時と同様に、リターンスプリング154の付勢力により、カムシャフト41側に押しつけられたままとなっている。
【0064】
この状態では、図10(b)に示すように、デコンプカムシャフト150の切欠部150dがボール収容部41hからずれているので、スチールボール151は、デコンプカムシャフト150の外周面150aとの当接によって外周方向に突出させられる。これにより、スチールボール151は、カムシャフト41のカムベース面41BCよりも外周方向に突出した状態が維持されるので、カムシャフト41の回転に応じて、スチールボール151の突出量に応じた分だけ、LEカム41d、REカム41cにそれぞれ対応するプッシュロッド56が動作し、対応するロッカアーム55を介して対応する排気バルブ54が僅かに開かれる。これによって、対応するシリンダ34の圧縮圧力の上昇が抑制され、クランクシャフト35の回転抵抗が小さくなるので、始動が容易となる。
【0065】
一方、エンジン2が始動すると、カムシャフト41の回転は低速以上となるので、アーム152は、大きくなった遠心力により、リターンスプリング154の付勢力に抗して、固定ピン156を中心に図10(a)の反時計方向に回転する。すると、係合ピン155が、アーム152の係合凹部152bとの係合により中心点P1を中心に反時計方向に所定位置まで回転するので、デコンプカムシャフト150もそれに応じて回転し、カムシャフト41が低速回転に戻るまでその状態が維持される。この状態では、図10(c)に示すように、デコンプカムシャフト150の切欠部150dがボール収容部41hとほぼ一致するので、スチールボール151は、切欠部150dと当接し得る位置までデコンプカムシャフト150の内周方向に没入する。その結果、LEカム41d、REカム41cに対応する排気バルブ54が、LEカム41d、REカム41cの本来のカムプロフィールに沿ってそれぞれ動作する。
【0066】
次いで、エンジン2におけるオイルの潤滑について説明する。
【0067】
図11は、潤滑構造120を含むエンジン2の備える潤滑機構の概略を示すためのエンジン2の断面図であり、図12は、潤滑機構の概略構成を示す模式図である。
【0068】
クランクシャフト35は、図11,図12に示すようにエンジン2において、上端がシリンダブロック31の上面に、ボールベアリング131を介して回転自在に軸支されており、下端がクランクケース3のクランクシャフト孔112にメタルベアリング132を介して回転自在に軸支されている。また、クランクシャフト35には、コンロッド36が回転自在に取り付けられているクランクピン35aの内部に同軸に略円筒状のオイル溜め35bが形成されている。クランクピン35aには、各コンロッド36の摺動面にオイルを供給するためのコンロッドオイル孔35cが、各コンロッド36の摺動面に対応した位置に2つ形成されている。コンロッドオイル孔35cは、この摺動面とオイル溜め35bとに開口する。
【0069】
また、クランクシャフト35には、メタルベアリング132取付部において一端が開口し、オイル溜め35bに他端が開口するクランクシャフトオイル通路35dが形成されている。
【0070】
シリンダブロック31には、メインギャラリ142に一端が開口し、ボールベアリング131取付部に他端が開口するオイル通路31aが形成されている。オイル通路31aにはベンチュリ31bが設けられており、オイル通路31aの通路面積を調整可能にしている。
【0071】
カムシャフト41には、同軸に内部にオイル通路41eが形成されており、オイル通路41eはカムシャフト41の上端において開口している。また、カムシャフト41には、カムシャフト孔114aの摺動面に一端が開口し、オイル通路41eに他端が開口するオイル導入路41fが形成されている(図9も参照)。
【0072】
図11及び図12に示すように、オイルポンプ45の作動によりオイルパン4のオイル貯留部103からオイルストレイナ16を介して吸い上げられたオイルは、曲線オイル通路115の第1オイル通路125、オイルポンプ室114、及び曲線オイル通路115の第2オイル通路126を介して直線オイル通路116に供給される。次いで、オイルは、直線オイル通路116からオイルフィルタ連通孔122及びオイルフィルタ通路141を介してオイルフィルタ143に供給される。尚、第2オイル通路126内の圧力が所定値以上であるときは、リリーフバルブ128が開き、オイルはオイルフィルタ連通孔122及びオイルパン連通孔123に供給され、オイルの一部がオイルパン4に戻される。
【0073】
次いで、オイルフィルタ143に供給されたオイルは、ここで濾過された後、メインギャラリ142内に供給される。メインギャラリ142内に供給されたオイルの一部は、クランクケース3のメインギャラリ連通孔124を介して第1クランクケース内オイル通路117に供給され、クランクシャフト孔112内に供給される。また、メインギャラリ142内に供給されたオイルの一部は、オイル通路31aを介してボールベアリング131に供給され、ボールベアリング131が潤滑される。尚、ボールベアリング131に供給されるオイル量は、ベンチュリ31bによって調整されている。
【0074】
上述のように、第1クランクケース内オイル通路117からクランクシャフト孔112に供給されたオイルは、その一部がメタルベアリング132を潤滑し、一部がメタルベアリング132に形成された図示しない孔を介してクランクシャフトオイル通路35dに流入し、オイル溜まり35bに供給される。オイル溜まり35bに供給されたオイルは、コンロッドオイル孔35cから流出してコンロッド36の摺動面を潤滑する。また、クランクシャフト孔112に流入したオイルの一部は、第2クランクケース内オイル通路118に流入し、カムシャフト孔114a内に供給される。
【0075】
上述のように、第2クランクケース内オイル通路118を通ってカムシャフト孔114a内に供給されたオイルは、その一部がカムシャフト孔114aのカムシャフト41摺動面を潤滑し、他の一部がオイル導入路41fに流入してオイル通路41eに供給される。すなわち、図9に示すように、オイルは、オイル導入路41fからオイル流入穴150cを介してデコンプカム内オイル通路150bに流入し、上側オイル通路41e2に流れる。その際、オイルの一部は、デコンプカムシャフト150の上端から、外周面150aと挿通穴41e1との間隙にも流れて、デコンプカムシャフト150とカムシャフト41との摺動面を潤滑すると共に、REカム41c用及びLEカム41d用の各ボール出没機構も潤滑する。
【0076】
さらに、上側オイル通路41e2に流れたオイルは、カムシャフト41上端から溢れ出て、各カム41a〜41iを潤滑すると共に、カムギヤ43及びその上部の、アーム152等のデコンプ機構を構成する各種部品も潤滑する。これらにより、コンパクトな潤滑構造でカムシャフト41及びデコンプ機構が潤滑される。
【0077】
また、上述のように、オイルパン4のオイル貯留部103内のオイルは、エンジン2内を循環してエンジン2の各部を潤滑して再度オイル貯留部103に戻される。
【0078】
本実施の形態によれば、2気筒V型OHV式のエンジン2において、1本のカムシャフト41を、アイドルギヤ44を介してクランクシャフト35で駆動するように構成したので、エンジン2の幅方向における省スペースを図ることができる。すなわち、エンジン2はV型としたため、直列型に比し、エンジン幅が大きくなりがちであるが、カムシャフト41をアイドルギヤ44を介して駆動することで、クランクシャフト35でカムシャフト41を直接的に駆動する場合に比し、クランクギヤ42及びカムギヤ43の各直径を小さく設定できるので、エンジン幅の拡大を抑制することができる。しかも、カムシャフト41自体の重量も抑えることができる。
【0079】
また、縦置きされたエンジン2において、アイドルギヤ44は、上下方向に互いにオフセットされたシリンダ34L、34Rのうち、高い位置に配置されたシリンダ34Rがある右舷側にオフセットして配置されたので、シリンダ34Rの下に生じるスペースを有効利用して、高さ方向におけるエンジンの省スペースを図ることができる。しかも、カムシャフト41の各カムが上からカム41a,41b,41c,41d,41iの順番で形成されたことで、高さ方向におけるエンジン2の省スペースを図ることができる。
【0080】
また、燃料ポンプ78が、カムシャフト41と共に、シリンダバンクLB,RB間に配置され、近接しているカムシャフト41によって燃料ポンプ78が駆動されるようにしたので、Vバンク内のスペースを利用して燃料ポンプ78を配置でき、省スペースを図ることができる。
【0081】
また、カムシャフト41の挿通穴41e1内に、デコンプ機構を構成するデコンプカムシャフト150を嵌挿し、デコンプカムシャフト150内のデコンプカム内オイル通路150b及びカムシャフト41の上側オイル通路41e2にオイルが導通されるようにしたので、カムシャフト41内にデコンプ機構の部品が内装された構造において、潤滑構造がコンパクトでありながら、カムシャフト41及びデコンプ機構を潤滑でき、両者の耐久性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施の形態に係る2気筒V型OHVエンジンを備える船外機の縦断面図である。
【図2】図1の船外機の横断面図である。
【図3】船外機のエンジン及びオイルパンの背面図である。
【図4】船外機の部分断面図である。
【図5】船外機の概略構成を示す上面図である。
【図6】エンジン及びオイルパンの右舷側側面図である。
【図7】オイルパンの概略構造を示す図であり、図7(a)は下面図であり、図7(b)は左側面図であり、図7(c)は上面図であり、図7(d)は右側面図である。
【図8】エンジンのクランクケース単体の概略構造を示すクランクケースの下面図である。
【図9】カムシャフトの縦断面図である。
【図10】図9のA−A線に沿う断面図(図(a))、スチールボールの突出状態を示すカムシャフトのボール収容部の平面視による模式図(図(b))、及びスチールボールの没入状態を示すカムシャフトのボール収容部の平面視による模式図(図(c))である。
【図11】エンジンが備える潤滑機構の概略を示すためのエンジンの断面図である。
【図12】オイル潤滑機構の概略構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0083】
1 船外機
2 エンジン(2気筒V型OHVエンジン)
34L シリンダ(第2気筒)
34R シリンダ(第1気筒)
35 クランクシャフト(クランク軸)
41 カムシャフト(カム軸)
41a RIカム(第1気筒用の吸気用カム)
41b LIカム(第2気筒用の吸気用カム)
41c REカム(第1気筒用の排気用カム)
41d LEカム(第2気筒用の排気用カム)
41e オイル通路
41e1 挿通穴
41e2 上側オイル通路
41i 燃料ポンプ駆動用カム
42 クランクギヤ
43 カムギヤ
44 アイドルギヤ
78 燃料ポンプ
150 デコンプカムシャフト(中空状部品)
150b デコンプカム内オイル通路(中空部)
151 スチールボール
152 アーム
153、156 固定ピン
154 リターンスプリング
155 係合ピン
LB 左舷側シリンダバンク(第2シリンダーバンク)
RB 右舷側シリンダバンク(第1シリンダーバンク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1気筒(34R)を有する第1シリンダーバンク(RB)と第2気筒(34L)を有する第2シリンダーバンク(LB)とがV字形状をなすように構成された船外機用の2気筒V型OHVエンジン(2)であって、
1本のカム軸(41)を、アイドルギヤ(44)を介してクランク軸(35)で駆動するようにしたことを特徴とする船外機用の2気筒V型OHVエンジン。
【請求項2】
当該エンジンは縦置きに搭載され、前記第1、第2気筒は、それぞれ当該エンジンの右側と左側とに配置され且つ互いに上下方向にオフセットされ、前記アイドルギヤは、当該エンジンの右側及び左側のうち、高い位置に配置された気筒(34R)がある側にオフセットして配置されたことを特徴とする請求項1記載の船外機用の2気筒V型OHVエンジン。
【請求項3】
当該エンジンは縦置きに搭載され、前記第1、第2気筒は互いに上下方向にオフセットして配置され、前記カム軸には、その軸方向に沿って、前記第1気筒用の吸気用カム(41a)、前記第2気筒用の吸気用カム(41b)、前記第1気筒用の排気用カム(41c)、前記第2気筒用の排気用カム(41d)及び燃料ポンプ駆動用カム(41i)が順に形成されたことを特徴とする請求項1または2記載の船外機用の2気筒V型OHVエンジン。
【請求項4】
前記カム軸と共に前記第1、第2シリンダーバンク間に配置された燃料ポンプ(78)を有し、前記燃料ポンプは、前記カム軸によって駆動されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の船外機用の2気筒V型OHVエンジン。
【請求項5】
前記カム軸内には軸方向に沿ってオイル通路(41e)が形成され、該オイル通路内には、中空部(150b)を有しデコンプ機構の一部を構成する中空状部品(150)が嵌挿され、潤滑オイルが、前記中空状部品の前記中空部及び前記カム軸の前記オイル通路に導通されるように構成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の船外機用の2気筒V型OHVエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−2741(P2006−2741A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182921(P2004−182921)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】