説明

色補正方法および色補正プログラム

【課題】2台の印刷装置において、個別機体間のバラツキを抑える補正方法を提供する。
【解決手段】色補正方法は、印刷する色に関する第1の基準値を目標として、第1の印刷装置の色特性および第2の印刷装置の色特性を補正する第1の補正工程と、第1の補正工程で補正した第1の印刷装置の色特性と第1の基準値との第1の差異、および第1の補正工程で補正した第2の印刷装置の色特性と第1の基準値との第2の差異を取得する差異取得工程と、第1の差異と第2の差異との差分を算出する算出工程と、差分が一定の範囲を超える場合、第1の印刷装置および第2の印刷装置の何れか一方は自身の色特性に基づく第2の基準値を作成し、他方は第2の基準値を目標として自身の色特性を補正する第2の補正工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色補正方法および色補正プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターのように、カラー印刷が可能な印刷装置においては、一般的に画像の色を複数の色成分毎の階調値によって表現し、階調値によって印刷媒体上に記録するインク量を調整している。同じ機種の印刷装置において、同じ階調値であれば同じ色を示すのが通常であるが、印刷装置の個体バラツキや経時変化の影響により、機体間で出力色にずれが生じ得る。そこで、下記特許文献1に示すように、個別機体に色のずれを修正できる機能を具備し、標準機体で作成した色合わせ(キャリブレーション)用の基準値をターゲットとして個別機体の色のずれを修正する方法が知られている。
例えば、標準機体の色特性をターゲットとして、2台の個別機体に対してそれぞれ色合わせを行った場合、2台の個別機体を標準機体に対して所定の色差範囲(例えば、CIE_Δ2000の色差式によって算出される色差ΔE00<2.0)に合わせることができるため、それぞれの個別機体の色特性を安定させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−204053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、2台の個別機体が標準機体に対してそれぞれΔE<2.0の色差範囲に入っている場合でも、一方が正方向にずれ、他方が負方向にずれる場合には、2台の個別機体間では最大で4.0になる可能性があるため、2台の個別機体間の色差のバラツキが大きくなった。本発明は、個別機が作成したキャリブレーション用の基準値を用いて色のずれを修正することで、個別機体間のバラツキを抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]
本適用例にかかる色補正方法は、印刷する色に関する第1の基準値を目標として、第1の印刷装置の色特性および第2の印刷装置の色特性を補正する第1の補正工程と、前記第1の補正工程で補正した前記第1の印刷装置の前記色特性と前記第1の基準値との第1の差異、および前記第1の補正工程で補正した前記第2の印刷装置の前記色特性と前記第1の基準値との第2の差異を取得する差異取得工程と、前記第1の差異と前記第2の差異との差分を算出する算出工程と、前記差分が一定の範囲を超える場合、前記第1の印刷装置および前記第2の印刷装置の何れか一方は自身の前記色特性に基づく第2の基準値を作成し、他方は前記第2の基準値を目標として自身の前記色特性を補正する第2の補正工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
このような方法によれば、第1の印刷装置および第2の印刷装置を第1の基準値を目標として色特性を補正した結果、第1の印刷装置の色特性と第1の基準値との差異、および第2の印刷装置の色特性と第1の基準値との差異を取得し、2つの差異の差分が一定の範囲を超える場合、第1の印刷装置および第2の印刷装置の何れか一方は自身の色特性に基づく第2の基準値を作成し、他方は第2の基準値を目標として自身の色特性を補正する。従って、第1の印刷装置および第2の印刷装置の色特性の差を抑えることができるため、第1の印刷装置および第2の印刷装置の色特性のバラツキを抑えることができる。
【0008】
[適用例2]
上記適用例にかかる色補正方法において、前記色特性は、所定の色を印刷し、印刷した前記色を測色することにより得られる測色値であっても良い。
【0009】
[適用例3]
上記適用例にかかる色補正方法において、前記基準値は、印刷する色を特定するターゲット階調値と、前記ターゲット階調値によって印刷した色の前記測色値と前記ターゲット階調値との対応関係を示す基準測色値と、を含むことが好ましい。
【0010】
このような方法によれば、他方は、ターゲット階調値と基準測色値を目標として自身の色特性を補正できる。
【0011】
[適用例4]
本適用例にかかる色補正プログラムは、印刷する色に関する第1の基準値を目標として、第1の印刷装置の色特性および第2の印刷装置の色特性を補正する第1の補正機能と、前記第1の補正機能が補正した前記第1の印刷装置の前記色特性と前記第1の基準値との第1の差異、および前記第1の補正機能が補正した前記第2の印刷装置の前記色特性と前記第1の基準値との第2の差異を取得する差異取得機能と、前記第1の差異と前記第2の差異との差分を算出する算出機能と、前記差分が一定の範囲を超える場合、前記第1の印刷装置および前記第2の印刷装置の何れか一方は自身の前記色特性に基づく第2の基準値を作成し、他方は前記第2の基準値を目標として自身の前記色特性を補正する第2の補正機能と、をコンピューターに実行させることを特徴とする。
【0012】
このようなプログラムによれば、第1の印刷装置および第2の印刷装置を第1の基準値を目標として色特性を補正した結果、第1の印刷装置の色特性と第1の基準値との差異、および第2の印刷装置の色特性と第1の基準値との差異を取得し、2つの差異の差分が一定の範囲を超える場合、第1の印刷装置および第2の印刷装置の何れか一方は自身の色特性に基づく第2の基準値を作成し、他方は第2の基準値を目標として自身の色特性を補正する。従って、第1の印刷装置および第2の印刷装置の色特性の差を抑えることができるため、第1の印刷装置および第2の印刷装置の色特性のバラツキを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】2台の印刷装置でキャリブレーションを行うためのシステム構成を示す図。
【図2】補正処理装置の概略構成を示すブロック図。
【図3】キャリブレーション処理の流れを示すフローチャート。
【図4】基準値作成装置の概略構成を示すブロック図。
【図5】色合わせを行うための基準値を作成する処理の流れを示すフローチャート。
【図6】基準値作成/適用ツールが基準値を作成する処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、印刷装置における色補正方法について図面を参照して説明する。
【0015】
(実施形態)
図1は、個別機体として2台の印刷装置でキャリブレーションを行うためのシステム構成を示す図である。本実施形態では、印刷装置A(5A)および印刷装置B(5B)は、標準機体であるメーカー標準機70が作成したキャリブレーション用基準値をターゲットに色合わせを行うことができる。また、管理PC60は、印刷装置A(5A)および印刷装置B(5B)に対して種々の機能を指示可能なコンピューターである。この管理PC60は、印刷装置A(5A)と印刷装置B(5B)はネットワーク等を介して通信可能に接続されている。
また、一方の印刷装置A(5A)は、管理PC60からの指示に応じて、自身が基準値を作成する機能を備える基準値作成装置として機能する。また、他方の印刷装置B(5B)は、管理PC60からの指示に応じて、印刷装置A(5A)が作成した基準値をターゲットに色合わせを行う機能を備える補正処理装置として機能する。このような機能は、メーカー標準機70が作成したキャリブレーション用基準値が提供されない場合や、印刷装置A(5A)で作成した基準値をターゲットにすることで、印刷装置B(5B)の色味を印刷装置A(5A)の色味に合わせたい場合に実行される。
尚、本実施形態では、印刷装置A(5A)と印刷装置B(5B)の構成は、それぞれ異なるものとして説明するが、同一の構成を備え、基準値を作成する側、および作成した基準値をターゲットに合わせこむ側は、切り替え可能であっても良い。
以下に、基準値作成装置と補正処理装置の各機能について説明する。本実施形態では、下記の順序に従って説明する。
(1)補正処理装置の構成
(2)補正処理装置のキャリブレーション処理
(3)基準値作成装置の構成
(4)基準値作成装置が生成した基準値を用いて補正処理装置が補正する処理
【0016】
(1)補正処理装置の構成
図2は、補正処理装置としての機能を有する印刷装置B(5B)の概略構成を示すブロック図である。この印刷装置B(5B)は、印刷制御装置として機能するコンピューター10、ディスプレイ18、キーボード31、マウス32、プリンター40および測色器50を備える。
コンピューター10は、演算処理の中枢をなす図示しないCPUや記憶媒体としてのROMやRAM等を備えており、HDD15等の周辺機器を利用しながら所定のプログラムを実行することができる。コンピューター10にはシリアル通信用I/O19aを介してキーボード31やマウス32等の操作用入力機器が接続されており、図示しないビデオボードを介して表示用のディスプレイ18も接続されている。さらに、プリンター40はUSB用I/O19bを介して接続されている。また、ネットワーク通信用I/O19cを介して、管理PC60と通信可能に接続されている。尚、この管理PC60は、ハードウェアとして、何れも図示しない、CPUやROM、RAM、HDD等を備えており、これらのハードウェアとソフトウェアとが協働することで、所定の機能を実現できる。
【0017】
また、USB用I/O19bを介して測色器50が接続されている。本実施形態におけるプリンター40は、複数色のインクを充填するインクカートリッジをそれぞれの色毎に着脱可能な機構を備えており、この機構にCMYKlclm(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ライトシアン、ライトマゼンタ)の各インクのカートリッジを搭載する。プリンター40においては、これらのインク色を組み合わせて多数の色を形成可能であり、これにより印刷媒体上にカラー画像を形成する。また、本実施形態において、プリンター40は異なる3種のインク量でインク滴を吐出可能であり、1画素について4階調の表現が可能である。本明細書ではインク滴の大きさに着目し、各インク滴を大中小ドットと呼ぶ。本実施形態におけるプリンター40はインクジェット方式のプリンターであるが、インクジェット方式の他にもレーザー方式等、種々のプリンターに対して本発明を適用可能である。
【0018】
また、CMYKlclmの6色の有色インクを使用する構成が必須というわけではなく、CMYKの4色やCMYKlclmDY(ダークイエロー)の7色を使用する構成であってもよい。むろん、他の色、例えばR(レッド)やV(バイオレット)をlclmインクの代わりに使用してもよいし、Kインクについて濃淡インクを使用してもよい。測色器50においては、既知の光源で印刷物を照射し、反射光を検出することにより印刷物の分光反射率を検出して測色値、例えばCIELAB値(L***値)やXYZ値のような色彩値を出力可能である。
【0019】
本実施形態においては、プリンター40で印刷したパッチのCIELAB値を測色し測色データとしてUSB用I/O19bに出力する。また、コンピューター10とプリンター40の接続インターフェースやコンピューター10と測色器50の接続インターフェースも上述のものに限る必要はなくパラレルインターフェースやSCSI接続、無線接続など種々の接続態様を採用できる。
【0020】
さらに、本実施形態においてはコンピューター10によって印刷制御装置を構成しているが、プリンター40に搭載するプログラム実行環境によって本発明にかかる印刷制御処理を実施可能に構成し、プリンター40に対して直接的に接続されるデジタルカメラから画像データを取得して印刷制御処理を行ってもよい。むろん、同様の構成においてデジタルカメラにて印刷制御処理を実施してもよいし、他にも分散処理によって本発明にかかる印刷制御処理を実施するなど種々の構成を採用可能である。画像を取り込むスキャナーと画像を印刷するプリンターとが一体となったいわゆる複合機において本発明にかかる印刷制御処理を行ってもよい。
【0021】
本実施形態にかかるコンピューター10では、プリンタードライバー(PRTDRV)21、入力機器ドライバー(DRV)22およびディスプレイドライバー(DRV)23は、所定のOS20に組み込まれている。ディスプレイDRV23は、ディスプレイ18における画像やプリンターのプロパティー画面等の表示を制御するドライバーである。また、入力機器DRV22は、シリアル通信用I/O19aを介して入力される上記キーボード31やマウス32からのコード信号を受信して所定の入力操作を受け付けるドライバーである。
【0022】
PRTDRV21は、図示しないアプリケーションプログラムから印刷指示が行われた画像や後述するパッチの画像について所定の処理を行って印刷を実行する。PRTDRV21は印刷を実行するために、画像データ取得モジュール21aと、色変換モジュール21bと、大中小ドット生成モジュール21cと、ハーフトーン処理モジュール21dと、印刷データ生成モジュール21eと、を備えている。上述の印刷指示を受けると、PRTDRV21は駆動し、ディスプレイDRV23にデータを送出する。その結果、印刷媒体、画質および印刷速度などの印刷条件を示す情報や、キャリブレーション動作を実行するための指示を入力させるためのユーザーインターフェイス(図示せず)を表示する。
【0023】
ユーザーは、キーボード31やマウス32等を操作し、ユーザーインターフェイスにて印刷に必要な情報を入力し、更に、印刷の実行指示を行うと、PRTDRV21の各モジュールが起動され、各モジュールによって上記画像データの各画素データに対する処理が実施され、印刷データが生成される。生成された印刷データは、USB用I/O19bを介してプリンター40に出力され、プリンター40は生成された印刷データに基づいて印刷を実行する。
【0024】
より具体的には、画像データ取得モジュール21aは、印刷対象の画像を示す画像データ15aを取得する。このとき、画像データ15aの画素数に過不足があれば印刷に必要な画素を確保するため適宜解像度変換処理を行う。この画像データ15aはRGB(レッド,グリーン,ブルー)の各色成分を階調表現して各画素の色を規定したドットマトリクス状のデータであり、本実施形態では各色256階調であり、sRGB規格に従った表色系を採用した画像データである。
【0025】
本実施形態においてはこの画像データ15aを例にして説明するが、YCbCr表色系を採用したJPEG画像データやCMYK表色系を採用した画像データ等、種々のデータを採用可能である。
【0026】
色変換モジュール21bは、各画素の色を示す表色系を変換するモジュールであり、HDD15に記録されたLUT(色変換テーブル)15bを適宜参照して画像データ15aのsRGB表色系をプリンター40が搭載するインク色(CMYKlclm)を成分とするCMYKlclm表色系に変換する。LUT15bは、sRGB表色系とCMYKlclm表色系とのそれぞれによって色を表現するとともに両者を対応づけ、複数の色についてこの対応関係を記述したテーブルである。従って、sRGB表色系で表現した任意の色に関し、その周りの色であってLUT15bに規定されたsRGBの色を参照することにより、補間演算によって任意の色に対応したCMYKlclm表色系の色を算出することで、色変換を実施できる。
【0027】
本実施形態にかかるプリンター40は上述のように大中小ドットを吐出可能であり、大中小ドット生成モジュール21cは、256階調のCMYKlclmデータに基づいて、それぞれの色毎に大中小ドットの記録量を示すデータに変換する。即ち、HDD15には、CMYKlclmの各階調値と大中小ドットの記録量を示す階調値とを対応づけた大中小振り分け標準機データ15cが記録されており、大中小ドット生成モジュール21cは大中小振り分け標準機データ15cを参照し、CMKYlclmの各階調値をそれぞれの色毎に大中小ドットの階調値に変換する。
【0028】
尚、大中小振り分け標準機データ15cは、標準のプリンター40について決定されたデータである。即ち、プリンター40の製造者は、プリンター40の製造段階で予めメーカー標準機70を用意しておき、大中小振り分け標準機データ15cを参照して印刷を行ったときの個別のプリンター40の出力色がメーカー標準機70の出力色とほぼ等価になるようにインク吐出量等を調整する。本実施形態においては、個別のプリンター40の出荷時に大中小振り分け標準機データ15cが所定の記録媒体に記録され、コンピューター10に対するインストール時に記録媒体からHDD15にコピーされる。本実施形態において初期状態では大中小振り分け標準機データ15cが参照されるが、後述するキャリブレーション処理後には個別機補正値15dを用いて大中小振り分け標準機データ15cを再構築した大中小振り分け個別機データが参照される。
【0029】
ハーフトーン処理モジュール21dは、以上のようにして生成された大中小ドットの階調値を参照し、各階調値に対応したインク量に相当する記録をプリンター40にて実現するために画素毎の階調数を減じるハーフトーン処理を実施する。すなわち、画素毎にインクの吐出/非吐出および吐出するインクの量(大中小のいずれか)を特定したハーフトーン画像データを生成する。印刷データ生成モジュール21eは、かかるハーフトーン画像データを受け取って、プリンター40で使用される順番に並べ替え、一回の主走査にて使用されるデータを単位にして逐次プリンター40に出力する。
【0030】
すなわち、プリンター40においてはインク吐出デバイスとして吐出ノズル列が搭載されており、ノズル列では副走査方向に複数の吐出ノズルが並設されるため、副走査方向に数ドット分離れたデータが同時に使用される。そこで、主走査方向に並ぶデータのうち同時に使用されるべきものがプリンター40にて同時にバッファリングされるように順番に並べ替える。そして、印刷データ生成モジュール21eは、並べ替え処理後のデータに画像の解像度などの所定の情報を付加して印刷データを生成し、USB用I/O19bを介してプリンター40に出力する。プリンター40にて画像を形成するために必要なデータが転送されると、プリンター40にて印刷媒体上に画像が形成される。
【0031】
以上述べたような印刷を実行する構成において、プリンター40の経年変化等により、個別のプリンター40での出力色と、標準のプリンターでの出力色との間で「ずれ」が生じてしまう場合がある。本実施形態においては、コンピューター10のユーザーは、ユーザーインターフェイスを介してキャリブレーションツール25を動作させることにより、色の「ずれ」を解消するキャリブレーションを行うことができる。すなわち、キャリブレーションツール25により個別機補正値15dが生成され、生成された個別機補正値15dはHDD15に記録される。
【0032】
個別機補正値15dが記録された後には、大中小ドット生成モジュール21cが個別機補正値15dを参照して大中小ドットの階調値を決定することで、色のずれが補償された状態で印刷を実施できる。尚、キャリブレーション処理を行うために必要な標準機測色データ15eおよびターゲット階調値データ15gは、メーカー標準機70をターゲットとする場合には、メーカー等から供給されるが、印刷装置A(5A)で基準値を作成する場合は、標準機測色データ15eおよびターゲット階調値データ15gは、印刷装置A(5A)において生成されて記録媒体に記録される。ユーザーは、これらのデータが記録された記録媒体を印刷装置B(5B)に読み取らせると共に、これらのデータをHDD15にコピーする。
【0033】
ここで、ターゲット階調値データ15gは、CMYKlclmの複数の階調値を指定したデータであり、本実施形態においてはCMYKlclmの全階調値から略均等に複数個の階調値を抽出したデータである。キャリブレーションツール25は、ターゲット階調値データ15gを参照して個別のプリンター40における出力色を把握するためのパッチデータを生成し、複数のパッチをプリンター40に対して出力させる。
【0034】
本実施形態では、ターゲット階調値データ15gに基づいて矩形のパッチを生成し、印刷する。印刷される様態は、例えば、大きな矩形で印刷媒体を示しており、その上辺に階調値、左辺にインク色を示している。階調値が大きくなるとインク量が多くなるため、一方の側のパッチが明るく、他方に行くにつれ暗くなる。また、全色についてパッチを印刷し、インク色毎にキャリブレーションを実施しても良い。
【0035】
キャリブレーションツール25は、測色器50によって測色された測色データを取得し、印刷装置B(5B)の色特性を示す個別機測色データ15fとしてHDD15に記録する。すなわち、上述したパッチを測色して得られた色彩値(CIELAB値等)を示す測色値を印刷装置B(5B)の色特性と定義し、個別機測色データ15fとする。そして、ターゲット階調値データ15gと個別機測色データ15fと標準機測色データ15eとに基づいて、個別機補正値15dを作成する。尚、標準機測色データ15eは、ターゲット階調値データ15gに基づいて上述したパッチと同様のパッチを印刷し、測色器50によって測色したCIELAB値を示すデータである。
【0036】
(2)補正処理装置のキャリブレーション処理
次に、キャリブレーション処理について図3に示すフローに基づいて詳説する。PRTDRV21は、キャリブレーションツール25を備えており、ユーザーはプロパティー画面等からキャリブレーションの実行指示を行うことにより、キャリブレーションツール25を起動できる。また、キャリブレーションツール25は、管理PC60からの指示に応じて起動できるように構成されている。キャリブレーションツール25が起動されると、まずステップS80にてHDD15からターゲット階調値データ15gを取得する。
【0037】
ステップS81では、ターゲット階調値データ15gから、各インク色の階調値を把握し、階調値で印刷を実行させるためのパッチデータを生成し、パッチを印刷する。すなわち、このパッチデータは上記大中小ドット生成モジュール21cに対して受け渡され、大中小ドット生成モジュール21cは受け渡されたパッチデータおよび大中小振り分け標準機データ15cを参照して、大中小ドットの階調値でパッチの色を表現したパッチデータを生成する。この結果、プリンター40にて複数のパッチが印刷される。
【0038】
ユーザーは、印刷された各パッチを測色器50によって測色する。キャリブレーションツール25は、ステップS82でUSB用I/O19bを介して測色データを出力させるための制御データを出力し、測色器50は制御データに応じて各パッチのCIELAB値を示す測色データを出力する。キャリブレーションツール25は、測色データを取得し、HDD15に対して個別機測色データ15fとして保存する。
【0039】
キャリブレーションツール25は、個別機測色データ15fと標準機測色データ15eとを比較し、ターゲット階調値において出力されるべき色にできるだけ近い色を出力するように個別機補正値15dを作成する。ステップS83では、プリンター40における任意のCMYKlclm階調値に対するCIELAB値を取得するための補間関数を算出する。この補間関数は、個別機測色データ15fに示された複数のターゲット階調値とCIELAB値との対応関係を参照して作成される関数であり、各ターゲット階調値の間における両者の対応関係を近似的に記述する関数である。
【0040】
ステップS84では、印刷装置A(5A)で生成され、HDD15に記録されている基準測色データ15h(図4)を標準機測色データ15eとして取得する。そして、ステップS85〜ステップS89において、ターゲット階調値によって出力されるべき色を特定し、出力されるべき色を個別のプリンター40で出力するためのCIELAB値を算出するとともに、CIELAB値の出力を得るための大中小ドット階調値を取得する。取得した大中小ドット階調値は、ターゲット階調値と対応づけられる。
【0041】
具体的には、ステップS85にて標準機測色データ15eを参照し、あるターゲット階調値に対応するCIELAB値を取得する。
【0042】
ステップS86では、補間関数に基づいて最小の色差(ΔE)となるCIELAB値に対応する階調値を取得する。階調値が判明したら、ステップS87において大中小振り分け標準機データ15cを取得し、ステップS88において階調値に対応する大中小ドットの階調値を取得する。そして、ステップS89においては、取得した大中小ドットの階調値と上記ステップS85以降で処理対象としたターゲット階調値とを対応づけ、図示しないRAMに保存しておく。すなわち、ターゲット階調値については、ステップS88で取得した大中小ドットの階調値によってインク滴を出力するように対応付けを行う。
【0043】
続いて、ステップS90にて、上記複数のターゲット階調値の総てについて処理対象として処理を終えたか否かを判別し、ステップS90にて複数のターゲット階調値の総てについて処理が終了したと判別されるまでステップS85以降の処理を繰り返す。ステップS90にて複数のターゲット階調値の総てについて処理が終了したと判別されると、ステップS91にて図示しないRAMに保存された対応関係を個別機補正値15dとしてHDD15に保存する。
【0044】
以上のようにして作成した個別機補正値15dにおいては、それぞれの色毎に複数のターゲット階調値と大中小ドットの階調値とを対応づけており、対応づけられた大中小ドットの階調値によれば、ターゲット階調値によって出力されるべき色にできるだけ近い色を出力できる。従って、大中小ドット生成モジュール21cによって個別機補正値15dを参照して任意のCMYKlclm階調値を大中小ドットの階調値に変換することにより、個別のプリンター40と標準機との色ずれを修正しながら印刷を実行することができる。
【0045】
(3)基準値作成装置の構成
次に、基準値作成装置として機能する印刷装置A(5A)について説明する。図4は、印刷装置A(5A)の概略構成を示すブロック図である。この印刷装置A(5A)は、印刷制御装置として機能するコンピューター10、ディスプレイ18、キーボード31、マウス32、プリンター40および測色器50を備える。
尚、印刷装置A(5A)の機能部の中で、先に説明した印刷装置B(5B)の機能部と同一機能を有する機能部は、同一の番号を付与して説明を省略する。
印刷装置A(5A)のOS20には、基準値作成/適用ツール26を備えており、ユーザーが基準値作成/適用ツール26に対して実行指示を行うことにより、基準値作成/適用ツール26を起動することができる。
【0046】
基準値作成/適用ツール26は、ターゲット階調値作成モジュール27と、基準測色値作成モジュール28とを備える。
ターゲット階調値作成モジュール27は、それぞれの色毎に、例えば256階調でターゲット階調値算出用のチャートを作成し、作成したターゲット階調値算出用のチャートをプリンター40に印刷する。更に、ターゲット階調値作成モジュール27は、印刷されたターゲット階調値算出用のチャートを測色器50で測色し、測色結果に基づいて、例えば33階調程度のターゲット階調値データ15gを算出し、算出したターゲット階調値データ15gを基準値の1つとしてHDD15に記録する。
【0047】
基準測色値作成モジュール28は、HDD15に記録されたターゲット階調値データ15gを取得し、取得したターゲット階調値データ15gに基づいてターゲット階調値チャートを作成して印刷する。更に、基準測色値作成モジュール28は、印刷したターゲット階調値チャートを測色した結果に基づいて基準測色データ15hを算出し、算出した基準測色データ15hを基準値の1つとしてHDD15に記録する。
【0048】
(4)基準値作成装置が生成した基準値を用いて補正処理装置が補正する処理
次に、図5は、管理PC60からの指示に基づいて、印刷装置A(5A)が基準値を作成し、作成した基準値を用いて印刷装置B(5B)が色合わせを行う処理の流れを示すフローチャートである。
この処理が開始されると、第1の補正工程として、管理PC60は、ステップS100において、メーカー標準機70の基準値(第1の基準値)をターゲットとして、印刷装置A(5A)に対して図3で示したようなキャリブレーション処理を指示する。
【0049】
次に、差異取得工程として、ステップS101で管理PC60は印刷装置A(5A)がキャリブレーション処理を行った後の補正精度を取得する。続いて、ステップS102において、管理PC60は取得した補正精度(第1の差異)が所定の閾値より小さいか、否かを判定する。尚、本実施形態では、所定の閾値として、一定の閾値(例えば、ΔE00=2.0)を採用するが、これに限定されない。
ここで、補正精度が所定の閾値以上である場合(ステップS102でNo)、管理PC60は印刷装置Aを標準機とすべく、印刷装置A(5A)が基準値を作成する処理(ステップS110)の実行を指示する。続いて、管理PC60は、作成した基準値(第2の基準値)をターゲットに印刷装置B(5B)に対して図3で示したようなキャリブレーション処理(ステップS115)の実行を指示し、一連の処理を終了する。尚、ステップS110の処理は後述する。
他方で、補正精度が所定の閾値より小さい場合(ステップS102でYes)、管理PC60は、ステップS104において、メーカー標準機70の基準値(第1の基準値)をターゲットとして、印刷装置B(5B)に対して図3で示したようなキャリブレーション処理を指示する。
【0050】
次に、差異取得工程として、ステップS105で管理PC60は印刷装置B(5B)がキャリブレーション処理を行った後の補正精度を取得する。続いて、ステップS106において、管理PC60は取得した補正精度(第2の差異)が所定の閾値より小さいか、否かを判定する。
ここで、補正精度が所定の閾値以上である場合(ステップS106でNo)、管理PC60は印刷装置Aを標準機とすべく、印刷装置A(5A)が基準値を作成する処理(ステップS110)の実行を指示する。続いて、管理PC60は、作成した基準値(第2の基準値)をターゲットに印刷装置B(5B)に対して図3で示したようなキャリブレーション処理(ステップS115)の実行を指示し、一連の処理を終了する。
他方で、補正精度が所定の閾値より小さい場合(ステップS106でYes)、算出工程として、ステップS107で、管理PC60は、印刷装置A(5A)の補正精度および印刷装置B(5B)の補正精度の差分(補正精度差)を算出する。
【0051】
次に、ステップS108において、管理PC60は、算出した補正精度差が所定の閾値より小さいか、否かを判定する。
ここで、補正精度差が所定の閾値以上である場合(ステップS108でNo)、管理PC60は、第2の補正工程、即ち、印刷装置A(5A)が基準値を作成する処理(ステップS110)の実行を指示する。続いて、管理PC60は、作成した基準値(第2の基準値)をターゲットに印刷装置B(5B)に対して図3で示したようなキャリブレーション処理(ステップS115)の実行を指示し、一連の処理を終了する。
他方で、補正精度が所定の閾値より小さい場合(ステップS108でYes)、一連の処理を終了する。
【0052】
次に、図6は、ステップS110において、印刷装置A(5A)の基準値作成/適用ツール26が基準値を作成する処理の流れを示すフローチャートである。
この処理が開始されると、最初に、ターゲット階調値作成モジュール27が作動し、ステップS120において、ターゲット階調値作成モジュール27はターゲット階調値算出用チャートを作成する。
【0053】
次に、ステップS122において、ターゲット階調値作成モジュール27は、作成したターゲット階調値算出用チャートを印刷する。続いて、ステップS124において、ターゲット階調値作成モジュール27は、印刷したターゲット階調値算出用チャートを測色する。
続いて、ステップS126において、ターゲット階調値作成モジュール27は、測色結果に基づいて、ターゲット階調値データ15gを算出する。
次に、基準測色値作成モジュール28が作動し、ステップS128において、基準測色値作成モジュール28はターゲット階調値チャートを作成する。
【0054】
次に、ステップS130において、基準測色値作成モジュール28は、作成したターゲット階調値チャートを印刷する。続いて、ステップS132において、基準測色値作成モジュール28は、印刷したターゲット階調値チャートを測色し、測色結果に基づいて、基準測色データ15hを算出する。
続いて、基準測色値作成モジュール28は、ステップS134において、ターゲット階調値データ15gと基準測色データ15hとを、HDD15のような所定の場所に保存し、一連の処理を終了する。
【0055】
以上述べた実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
(1)種々の印刷用紙に対するキャリブレーションのための基準値が用意されていない場合であっても、印刷装置A(5A)と印刷装置B(5B)との間の所定の印刷用紙における色特性のバラツキを抑えることができる。
(2)メーカー側で使用する測色器50の特性と、ユーザー側で使用する測色器50の特性にバラツキがある場合でも、ユーザー側で使用する測色器50のみで測色できるため、測色器50のバラツキの影響を排除できる。
以上のような手法を実施する装置は、単独の装置によって実現される場合もあれば、複数の装置を組み合わせることによって実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。
【符号の説明】
【0056】
5A…印刷装置A、5B…印刷装置B、10…コンピューター、15…HDD、15a…画像データ、15b…LUT、15c…大中小振り分け標準機データ、15d…個別機補正値、15e…標準機測色データ、15f…個別機測色データ、15g…ターゲット階調値データ、15h…基準測色データ、18…ディスプレイ、19a…シリアル通信用I/O、19b…USB用I/O、19c…ネットワーク通信用I/O、20…OS、21…PRTDRV、21a…画像データ取得モジュール、21b…色変換モジュール、21c…大中小ドット生成モジュール、21d…ハーフトーン処理モジュール、21e…印刷データ生成モジュール、22…入力機器DRV、23…ディスプレイDRV、25…キャリブレーションツール、26…基準値作成/適用ツール、27…ターゲット階調値作成モジュール、28…基準測色値作成モジュール、31…キーボード、32…マウス、40…プリンター、50…測色器、60…管理PC、70…メーカー標準機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷する色に関する第1の基準値を目標として、第1の印刷装置の色特性および第2の印刷装置の色特性を補正する第1の補正工程と、
前記第1の補正工程で補正した前記第1の印刷装置の前記色特性と前記第1の基準値との第1の差異、および前記第1の補正工程で補正した前記第2の印刷装置の前記色特性と前記第1の基準値との第2の差異を取得する差異取得工程と、
前記第1の差異と前記第2の差異との差分を算出する算出工程と、
前記差分が一定の範囲を超える場合、前記第1の印刷装置および前記第2の印刷装置の何れか一方は自身の前記色特性に基づく第2の基準値を作成し、他方は前記第2の基準値を目標として自身の前記色特性を補正する第2の補正工程と、を有することを特徴とする色補正方法。
【請求項2】
請求項1に記載の色補正方法において、
前記色特性は、所定の色を印刷し、印刷した前記色を測色することにより得られる測色値であることを特徴とする色補正方法。
【請求項3】
請求項2に記載の色補正方法において、
前記基準値は、
印刷する色を特定するターゲット階調値と、
前記ターゲット階調値によって印刷した色の前記測色値と前記ターゲット階調値との対応関係を示す基準測色値と、を含むことを特徴とする色補正方法。
【請求項4】
印刷する色に関する第1の基準値を目標として、第1の印刷装置の色特性および第2の印刷装置の色特性を補正する第1の補正機能と、
前記第1の補正機能が補正した前記第1の印刷装置の前記色特性と前記第1の基準値との第1の差異、および前記第1の補正機能が補正した前記第2の印刷装置の前記色特性と前記第1の基準値との第2の差異を取得する差異取得機能と、
前記第1の差異と前記第2の差異との差分を算出する算出機能と、
前記差分が一定の範囲を超える場合、前記第1の印刷装置および前記第2の印刷装置の何れか一方は自身の前記色特性に基づく第2の基準値を作成し、他方は前記第2の基準値を目標として自身の前記色特性を補正する第2の補正機能と、をコンピューターに実行させることを特徴とする色補正プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−9921(P2012−9921A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141380(P2010−141380)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】