説明

蓄電モジュールおよびその製造方法

【課題】バスバーと電池セルの正・負極端子との接合が効率的に行うことができるようにする。
【解決手段】
ケース側板250には、位置決め孔172、173が形成され、溶接装置500には、位置決めピン511、521が固定されたフレーム501に溶接アーチ504が取り付けられている。電池セル140が収納されたケース本体110上にケース側板250を配置し、ケース側板250にバスバー150を取り付ける。溶接装置500の位置決めピン511、521をケース側板250の位置決め孔172、173に嵌合し、溶接トーチ504をx、y、z方向に移動して、バスバー150を電池セル140の正・負極端子140a、140bに溶接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを備える蓄電モジュールおよびその製造方法に関し、より詳細には、電池セルとバスバーとが接合された蓄電モジュールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の円筒形電池セルを直列に連結した電池モジュールを複数個、電池容器内に収納し、電池容器に装着された保護電子回路によって電池モジュールの電池セルを保護するように構成された電源装置がある。電池容器は、ケース本体とケース本体の左右に配置された一対のケース側板により構成され、ケース本体とケース側板間に円筒形の二次電池セルが複数列、複数段に配列された状態に保持される。各電池モジュールは、バスバーと言われる接続端子板により、複数の電池セルの正極および負極の電極端子を、適宜、横方向または縦方向に接続することにより、全体を直列に接続する。
【0003】
バスバーと電池セルの正極および負極端子との接続は、アーク溶接などの溶接により行われる。溶接前に、バスバーは、電池セルの正極および負極端子に対して位置決めを行う必要がある。
【0004】
バスバーと電池セルとの位置決めは、通常、位置決め治具を用いて行うが、位置決め治具を用いる方法としては、例えば、次の方法が知られている。
電池セルを、正極端子と負極端子が交互に配置されるように、電池容器内に収容する。電池セルの正極および負極端子に対して所定の角度に突起が形成されたリング型治具を電池セルの正極端子の回りにセットする。バスバーに対応する落込口と、リング型治具の突起を挿通する差込口を有するキャップ型治具を、差込口をリング型治具の突起に嵌合して、電池セルの上部にセットする。バスバーをキャップ型治具の落込口から落とし込み、電池セルの正極および負極端子に接触させる。押圧部材によりバスバーを電池セルの正極および負極端子に押し付け、この状態で、ウエルダーにより溶接する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−184371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された方法では、電池セル毎にリング型治具をセットし、また、バスバーをキャップ型治具の落込口に落とし込む作業が必要なため、作業効率が低い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の蓄電モジュールは、一端側に正極端子、一端側に対向する他端側に負極端子を有する複数の円筒形の蓄電セルと、複数の円筒形の蓄電セルを収納する収納部を有するケース本体と、ケース本体の一側面に取り付けられ、円筒形の蓄電セルの各正極端子および各負極端子の少なくとも一部を露出する開口部を有するケース側板とを有する電池容器と、ケース側板に位置決めされ、ケース側板の開口部から露出された円筒形の蓄電セルの正極端子および負極端子に接合されたバスバーとを備え、ケース側板には、バスバーに対して所定の位置に設定され、溶接装置を位置決めするための位置決め部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の蓄電モジュールの製造方法は、ケース本体の内部に、正極端子および負極端子を有する複数の円筒形の蓄電セルを、正極端子と負極端子が交互に配置されるように収納する電池収納工程と、ケース本体の一側面に、円筒形の蓄電セルの各正極端子および各負極端子の少なくとも一部を露出する開口部を有するケース側板を取り付けるケース側板取付工程と、ケース側板に円筒形の蓄電セルの正極端子および負極端子に接合される接合部を有するバスバーを取り付けるバスバー取付工程と、ケース側板に設けられた位置決め部と溶接装置とを位置決めする位置決め工程と、溶接装置の接合ヘッドを移動して、バスバーを円筒形の蓄電セルの正極端子および負極端子に接合する接合工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、円筒形二次電池の正極端子および負極端子に接合されるバスバーを備えたケース側板に、溶接装置を位置決めするための位置決め部を設けたので、この位置決め部に溶接装置を位置決めするだけで、バスバーを円筒形二次電池の正極端子と負極端子に接合することができ、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の蓄電モジュールを備えた一実施の形態としてのハイブリッド自動車駆動システムのブロック回路図。
【図2】本発明の一実施の形態の蓄電装置全体の外観斜視図。
【図3】図2に示す蓄電装置を冷却媒体入口側から観た斜視図。
【図4】本発明の一実施の形態としての蓄電モジュールの外観斜視図。
【図5】図4に示す蓄電モジュールの分解斜視図。
【図6】図5に図示された電池容器を構成するケース側板の拡大斜視図。
【図7】図5におけるVII−VII線切断拡大断面図。
【図8】電圧検出導体の構成を示す平面図。
【図9】電圧検出導体をケース側板に組み込んだ状態を示す平面図。
【図10】ケース側板にバスバーを装着した状態を示す蓄電モジュールの斜視図。
【図11】ケース側板にバスバーを装着した状態の拡大斜視図。
【図12】(a)は図11に図示されたケース側板にバスバーを装着した状態の平面図、(b)は図12(a)のb−bの断面図、(c)は図12(a)のc−c断面図。
【図13】バスバーを円筒形二次電池の正・負極端子に溶接する方法を説明するための図。
【図14】本発明の蓄電装置の製造手順を示す一実施の形態としてのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態の蓄電モジュールを、図面を参照して詳細に説明する。
以下では、一実施の形態による蓄電モジュールを、電動車両、特に電気自動車の車載電源装置を構成する蓄電装置に適用した場合を例として説明する。電気自動車は、内燃機関であるエンジンと電動機とを車両の駆動源として備えたハイブリッド電気自動車、および電動機を車両の唯一の駆動源とする純正電気自動車等を含む。
本発明の蓄電モジュールを備えた一実施の形態としてのハイブリッド自動車駆動システムのブロック回路図。
【0012】
[ハイブリッド自動車駆動システム]
図1は、本発明の一実施の形態としての蓄電モジュールを有するハイブリッド自動車駆動システムのブロック回路図である。
図1に示すハイブリッド自動車クドウシステムは、一例として、車載電機システムを例示しており、モータジェネレータ10、インバータ装置20、車両全体を制御する車両コントローラ30、および車載電源装置を構成する蓄電装置1000等を備える。蓄電装置1000は、例えば、複数の電池セル等を備えたリチウムイオンバッテリ装置として構成される。
【0013】
モータジェネレータ10は、三相交流同期機である。モータジェネレータ10は、車両の力行時及び内燃機関であるエンジンを始動する時など、回転動力が必要な運転モードでは、モータ駆動し、発生した回転動力を車輪及びエンジンなどの被駆動体に供給する。この場合、車載電機システムは、モータジェネレータ10に、蓄電装置1000から電力変換装置であるインバータ装置20を介して、直流電力を三相交流電力に変換して供給する。
【0014】
また、モータジェネレータ10は、車両の減速時や制動時などの回生時及び蓄電装置1000の充電が必要な時など、発電が必要な運転モードでは、車輪或いはエンジンからの駆動力によって駆動し、ジェネレータとして三相交流電力を発生させる。この場合、車載電機システムは、モータジェネレータ10からの三相交流電力を、インバータ装置20を介して直流電力に変換し、蓄電装置1000に供給する。これにより、蓄電装置1000には電力が蓄積される。
【0015】
インバータ装置20は、前述した電力変換、すなわち直流電力から三相交流電力への変換、及び三相交流電力から直流電力への変換をスイッチング半導体素子の作動(オン・オフ)によって制御する電子回路装置である。インバータ装置20は、パワーモジュール21、ドライバ回路22、モータコントローラ23を備えている。
【0016】
パワーモジュール21は、6つのスイッチング半導体素子を備え、この6つのスイッチング半導体素子のスイッチング動作(オン・オフ)によって、前述した電力変換を行う電力変換回路である。
直流正極側モジュール端子は直流正極側外部端子に、直流負極側モジュール端子は直流負極側外部端子にそれぞれ電気的に接続されている。直流正極側外部端子及び直流負極側外部端子は、蓄電装置1000との間において直流電力を授受するための電源側端子であり、蓄電装置1000から延びる電源ケーブル610、620が電気的に接続されている。交流側モジュール端子は交流側外部端子に電気的に接続されている。交流側外部端子は、モータジェネレータ10との間において三相交流電力を授受するための負荷側端子であり、モータジェネレータ10から延びる負荷ケーブルが電気的に接続されている。
【0017】
モータコントローラ23は、電力変換回路を構成する6つのスイッチング半導体素子のスイッチング動作を制御するための電子回路装置である。モータコントローラ23は、上位制御装置、例えば車両全体を制御する車両コントローラ30から出力されたトルク指令に基づいて、6つのスイッチング半導体素子に対するスイッチング動作指令信号(例えばPWM(パルス幅変調)信号)を生成する。この生成された指令信号はドライバ回路22に出力される。
【0018】
蓄電装置1000は、電気エネルギーを蓄積及び放出(直流電力を充放電)するための蓄電モジュール100、及び蓄電モジュール100の状態を管理及び制御するための制御装置900(図2参照)を備えている。
蓄電モジュール100は、それぞれ、電気的に直列に接続される高電位側の蓄電モジュール100a及び低電位側の蓄電モジュール100bから構成されている。各蓄電モジュールには、直列に接続された複数のリチウムイオン電池セル(以下、「電池セル」とする)を有している。複数の電池セルおよびこれらの電池セルを直列に接続する接続体により、後述する第1、第2電池セル列が構成される。各蓄電モジュール100a、100bの構成については後述する。
【0019】
高電位側の蓄電モジュール100aの負極側(低電位側)と低電位側の蓄電モジュール100bの正極側(高電位側)との間にはSD(サービスディスコネクト)スイッチ700が設けられている。SDスイッチ700は蓄電装置1000の保守、点検の時の安全性を確保するために設けられた安全装置であり、スイッチとヒューズとを電気的に直列に接続した電気回路から構成され、サービスマンによって保守、点検時に操作される。
【0020】
制御装置900は、上位(親)に相当するバッテリコントローラ300及び下位(子)に相当するセルコントローラ310を含んでいる。
バッテリコントローラ300は、蓄電装置1000の状態を管理及び制御すると共に、上位制御装置である車両コントローラ30やモータコントローラ23に蓄電装置1000の状態や許容充放電電力などの充放電制御指令を通知する。蓄電装置1000の状態の管理及び制御には、蓄電装置1000の電圧及び電流の計測、蓄電装置1000の蓄電状態(SOC:State Of Charge)及び劣化状態(SOH:State Of Health)などの演算、各蓄電モジュールの温度の計測、セルコントローラ310に対する指令(例えば各電池セルの電圧を計測するための指令、各電池セルの蓄電量を調整するための指令など)の出力などがある。
【0021】
セルコントローラ310は、バッテリコントローラ300からの指令によって複数のリチウムインオン電池セルの状態の管理及び制御を行う、いわゆるバッテリコントローラ300の手足であり、複数の集積回路(IC)によって構成されている。複数の電池セルの状態の管理及び制御には、各電池セルの電圧の計測、各電池セルの蓄電量の調整などがある。すなわち、図1には図示しないが、セルコントローラ310は各電池セルの電圧を計測する電圧センサを有する。電圧センサは、蓄電モジュール100a、100b内の各電池セルの正極端子および負極端子に接続された作動増幅器により構成される。作動増幅器からの出力電圧は、セルコントローラ310に内蔵されたA/D変換器(図示せず)によりアナログ値からデジタル値に変換される。また、各電池セルの正極端子および負極端子には、抵抗器およびスイッチング素子が直列に接続された放電回路(図示せず)が並列に接続されている。各電池セルあるいは電池セルの平均値が所定の電圧値を越えた場合には、セルコントローラ310の指令によりスイッチング素子がオンし、所定の電圧値以下となるまで放電される。このように、各集積回路は、対応する複数の電池セルが決められており、対応する複数の電池セルに対して状態の管理及び制御を行う。
【0022】
セルコントローラ310を構成する集積回路の電源には、対応する複数の電池セルを用いている。このため、セルコントローラ310と蓄電モジュール100の両者は接続配線800を介して電気的に接続されている。各集積回路には、対応する複数の電池セルの最高電位の電圧が接続配線800を介して印加されている。
高電位側の蓄電モジュール100aの正極端子とインバータ装置20の直流正極側外部端子との両者は正極側の電源ケーブル610を介して電気的に接続されている。低電位側の蓄電モジュール100bの負極端子とインバータ装置20の直流負極側外部端子との間は負極側の電源ケーブル620を介して電気的に接続されている。
【0023】
電源ケーブル610、620の途中にはジャンクションボックス400、負極側メインリレー412が設けられている。ジャンクションボックス400の内部には、正極側メインリレー411及びプリチャージ回路420から構成されたリレー機構が収納されている。リレー機構は、蓄電モジュール100とインバータ装置20との間を電気的に導通及び遮断するための開閉部であり、車載電機システムの起動時には蓄電モジュール100とインバータ装置20との間を導通、車載電機システムの停止時及び異常時には蓄電モジュール100とインバータ装置20との間を遮断する。このように、蓄電装置1000とインバータ装置20との間をリレー機構によって制御することにより、車載電機システムの高い安全性を確保できる。
【0024】
リレー機構の駆動はモータコントローラ23により制御される。モータコントローラ23は、車載電機システムの起動時には、蓄電装置1000の起動完了の通知をバッテリコントローラ300から受けることにより、リレー機構に対して導通の指令信号を出力してリレー機構を駆動させる。また、モータコントローラ23は、車載電機システムの停止時にはイグニションキースイッチからオフの出力信号を受けることにより、また、車載電機システムの異常時には車両コントローラからの異常信号を受けることにより、リレー機構に対して遮断の指令信号を出力してリレー機構を駆動させる。
【0025】
メインリレーは正極側メインリレー411及び負極側メインリレー412から構成されている。正極側メインリレー411は正極側の電源ケーブル610の途中に設けられ、蓄電装置1000の正極側とインバータ装置20の正極側との間の電気的な接続を制御する。負極側メインリレー412は負極側の電源ケーブル620の途中に設けられ、蓄電装置1000の負極側とインバータ装置20の負極側との間の電気的な接続を制御する。
【0026】
プリチャージ回路420は、プリチャージリレー421及び抵抗422を電気的に直列に接続した直列回路であり、正極側メインリレー411に電気的に並列に接続されている。
車載電機システムの起動時にあたっては、まず、負極側メインリレー412が投入され、この後に、プリチャージリレー421が投入される。これにより、蓄電装置1000から供給された電流が抵抗422によって制限された後、インバータ搭載の平滑コンデンサに供給されて充電される。平滑コンデンサが所定の電圧まで充電された後、正極側メインリレー411が投入され、プリチャージリレー421が開放される。これにより、蓄電装置1000から正極側メインリレー411を介してインバータ装置20に主電流が供給される。
【0027】
また、ジャンクションボックス400の内部には電流センサ430が収納されている。電流センサ430は、蓄電装置1000からインバータ装置20に供給される電流を検出するために設けられたものである。電流センサ430の出力線はバッテリコントローラ300に電気的に接続されている。バッテリコントローラ300は、電流センサ430から出力された信号に基づいて、蓄電装置1000からインバータ装置20に供給された電流を検出する。この電流検出情報は、バッテリコントローラ300からモータコントローラ23や車両コントローラ30などに通知される。
【0028】
電流センサ430はジャンクションボックス400の外部に設置しても構わない。蓄電装置1000の電流の検出部位は、正極側メインリレー411のインバータ装置20側のみならず、正極側メインリレー411の蓄電モジュール100a側であってもよい。
【0029】
各電池セルに充電された電圧値を検出するための電圧センサを、ジャンクションボックス400の内部に収納してもよい。ジャンクションボックス400の内部に電圧センサを収納する場合には、電圧センサの出力線は電流センサ430と同様にバッテリコントローラ300を介して各電池セルの正・負極端子に接続される。バッテリコントローラ300は、電圧センサの出力信号に基づいて蓄電装置1000の全体の電圧を検出する。この電圧検出情報はモータコントローラ23や車両コントローラ30に通知される。
【0030】
[蓄電装置の構造]
図2および図3は、蓄電装置1000の全体構成を表す斜視図を示す。図2は、蓄電装置1000の冷却媒体の出口側から観た図であり、図3は冷却媒体の入口側から観た図である。蓄電装置1000は大きく分けて、蓄電モジュール100及び制御装置900の二つのユニットから構成されている。まず、蓄電モジュール100の構成について説明する。
【0031】
上述したように、蓄電モジュール100は、高電位側の蓄電モジュール100a及び低電位側の蓄電モジュール100bから構成され、蓄電モジュール100a、100bには、それぞれ、電気的に直列に接続され複数の電池セルが収納されている。図2に示すように、高電位側の蓄電モジュール100a及び低電位側の蓄電モジュール100bは、各ブロックの長手方向同士が平行となるように互いに隣接して並列に配置される。
【0032】
高電位側の蓄電モジュール100a及び低電位側の蓄電モジュール100bは、モジュールベース101上に並置され、ボルトなどの固定手段により固定されている。モジュールベース101は、短手方向に三分割された剛性のある薄肉の金属板(例えば鉄板)により構成され、車両に固定されている。すなわち、モジュールベース101は、短手方向の両端部と中央部に配置された3つの部材から構成されている。このような構成により、モジュールベース101の面を各蓄電モジュール100a、100bの下面と面一にでき、蓄電モジュール100の高さ方向の寸法をさらに低減することができる。
高電位側の蓄電モジュール100a及び低電位側の蓄電モジュール100bの上部は、後述する制御装置900の筐体910によって固定されている。
なお、高電位側の蓄電モジュール100aと低電位側の蓄電モジュール100bは、基本的に同一の構造を有している。このため、以下においては、高電位側の蓄電モジュール100a及び低電位側の蓄電モジュール100bを代表して、蓄電モジュール100として説明する。
【0033】
[蓄電モジュール]
(電池容器)
図4は、蓄電装置1000を構成する蓄電モジュール100の外観斜視図を示す。また、図5は、蓄電モジュール100の分解斜視図である。
図5に図示されるように、蓄電モジュール100は、ケース本体110、ケース本体110の両側面に配置された一対のケース側板250、251および各ケース側板の外側に配置された一対の覆い板160から構成される電池容器2(図5参照)を有する。電池容器2内には、16個の電池セル140が収納されている。16個の電池セル140は、後述する、複数のバスバーにより電気的に直列に接続されて構成されている。
【0034】
ケース本体110は、両側面が開口された略六面体状のブロック筐体を構成している。
具体的には、入口流路形成部111、出口流路形成部118、入口側案内部112(図3参照)および出口側案内部113(図2、5参照)を有する。ケース本体110の内部空間は、複数の電池セル(蓄電セル)140が収納される収納室として機能するとともに、これらの電池セル140を冷却するための冷却媒体(冷却空気)が流通する冷却通路として機能する。
なお、以下の説明において、ケース本体110の長さが最も長い方向、および入口側案内部112側から出口側案内部113側に至る方向を、長手方向と定義する。
また、二つのケース側板250、251が対向する方向を、短手方向と定義する。電池セル140の軸芯(正極端子及び負極端子の二つの電極が対向する方向)は短手方向に向いている。
さらに、入口流路形成部111と出口流路形成部118とが対向する方向を、蓄電モジュール100の設置方向に関係なく高さ方向と定義する。
【0035】
入口流路形成部111はケース本体110の上面を形成する長方形状の平板部である。出口流路形成部118(図5参照)はケース本体110の底面を形成する平板部である。入口流路形成部111と出口流路形成部118とは全長がほぼ同じ長さであるが、その長手方向端部の位置は、相互に、長手方向にずれている。
【0036】
入口側案内部112(図3参照)は、ケース本体110の長手方向に対向する側面の一方側を形成する板状部である。出口側案内部113は、ケース本体110の長手方向に対向する側面の他方側を形成する板状部である。
入口流路形成部111、出口流路形成部118、入口側案内部112及び出口側案内部113は、例えば、アルミダイキャストにより、ケース本体110として、一体に形成されている。
入口流路形成部111と入口側案内部112との間には、冷却媒体である冷却空気のケース本体110内部への導入口を構成する冷却媒体入口114(図3参照)が形成されている。
【0037】
上述したように、入口流路形成部111と出口流路形成部118とは互いに長手方向端部が長手方向にずれて配置されている。この長手方向端部のずれ量は、長手方向における電池セル140のピッチの1/2であり、ケース本体110の入口側端部には、このずれ量分の段差が形成されている。このため、長手方向において冷却媒体入口114と入口側案内部112との間に空間が形成される。この空間には、ガス排出管139(図3参照)が配置される。
【0038】
このような構成により、蓄電モジュール100の長手方向の寸法を短縮することができる。
出口流路形成部118と出口側案内部113との間には、冷却空気をケース本体110内部から導出する冷却媒体出口115が形成されている。冷却媒体出口115には、冷却空気を冷却媒体出口115から外部に導くための冷却媒体出口ダクト117が設けられている。
【0039】
冷却媒体入口114及び冷却媒体出口115は高さ方向において位置がずれている。すなわち、高さ方向においては、冷却媒体入口114は入口流路形成部111側に位置し、冷却媒体出口115は出口流路形成部118側に位置している。
【0040】
ケース側板250、251は、ケース本体110の短手方向に対向して配置されている。
ケース側板250、251は、それぞれ、ほぼ平板状の部材であり、電気的な絶縁性を有するPBT(ポリブチレンテレフタレート)あるいはPP(ポリプロピレン)等の合成樹脂からなる成形体である。
ケース側板250、251の外側、すなわち電池セル140が収容される収納室と反対側には、サイドカバーと呼ばれる覆い板160が設けられている。覆い板160は、ボルト或いはリベットなどの締結部材161(図4参照)によってケース側板250、251に固定されている。
【0041】
覆い板160は、鉄或いはアルミニウムなどの金属板をプレス加工した平板、又はPBTなどの樹脂を成形して形成した平板であり、ケース側板250、251の平面形状とほぼ同じ形状に構成されている。覆い板160は、後述するケース側板250、251の貫通孔201に対応する部位を含む領域がケース側板250とは反対側に、すなわちケース本体110の外側に向けて一様に膨らんでいる。これにより、覆い板160とケース側板250、251との間には空間が形成される。この空間は、過充放電等により電池セル140から噴出したミスト状のガスが、冷却通路を流通する冷却媒体とは分離して放出されるガス放出流路として機能する。
【0042】
(電池セル)
複数の電池セル140は、ケース本体110の内部に形成された収納室に整列して収納されていると共に、短手方向からケース側板250、251により挟持され、銅等の導電性の良好な材料により形成されたバスバー150との接合によって電気的に直列に接続されている。
電池セル140は、一端側に正極端子140aが形成され、他端側に負極端子140bが形成された円筒形の例えば、リチウムイオン二次電池であり、非水電解液が注入された電池缶の内部に発電ユニットおよび安全弁等の構成部品が収納されて構成されている。正極端子140aは、中央部に開口部140a1を有し、軸芯方向における正極端子140aの開口部140a1の直下には、過充電などの異常によって電池容器の内部の圧力が所定の圧力になったときに開裂する開裂弁(図示せず)が形成されている。開裂弁は、開裂によって電池蓋と電池素子の正極側との電気的な接続を遮断するヒューズ機構として機能するとともに、電池容器の内部に発生したガス、すなわち非水電解液を含むミスト状の炭酸系ガスを電池容器の外部に噴出させる減圧機構として機能する。
【0043】
負極端子140bは、電池セル140の缶底であり、この缶底である負極端子140bにも開裂弁140b1が設けられている。この開裂弁140b1は、電池セル140の缶底を、プレスにより断面V字形状の溝を形成することにより形成される。開裂弁140b1は、過充電などの異常によって電池容器の内部の圧力が所定の圧力以上になったときに開裂する。これにより、電池缶の内部に発生したガスを負極端子側からも噴出させることができる。電池セル140の公称出力電圧は3.0〜4.2ボルト、平均公称出力電圧は3.6ボルトである。
【0044】
一実施の形態においては、円筒形の電池セル140が16個、ケース本体110の内部に整列配置されている。具体的には、電池セル140を横倒しにし、換言すれば、電池セル140の軸芯を短手方向に平行に配置し、長手方向に沿って8本の電池セル140を上段側に並列に配列して第1電池セル列121を構成する。また、第1電池セル列121と同様に8本の電池セル140を、長手方向に沿って下段側に並列に配列して第2電池セル列122を構成する。すなわち、ケース本体110の内部には、電池セル140が長手方向に8列、高さ方向に二段並べて構成される。
【0045】
第1電池セル列121及び第2電池セル列122は互いに長手方向にずれている。すなわち第1電池セル列121は、第2電池セル列122よりも入口流路形成部111側であって、冷却媒体入口114側にずれて配置されている。一方、第2電池セル列122は、第1電池セル列121よりも出口流路形成部側であって、冷却媒体出口115側にずれて配置されている。
図5に示すように、一実施の形態では、例えば第1電池セル列121の最も冷却媒体出口115側に位置する電池セル140の中心軸の長手方向の位置が、第2電池セル列122の最も冷却媒体出口115側に位置する電池セル140の中心軸と、それに隣接する電池セル140の中心軸との間の中間位置になるように、第1電池セル列121及び第2電池セル列122が長手方向にずれて配置されている。
【0046】
第1電池セル列121を構成する電池セル140は正極端子140aと負極端子140bとが交互に逆向きになるようにして軸芯を平行にして配列されている。第2電池セル列122を構成する電池セル140も同様に、正極端子140aと負極端子140bとが交互に逆向きになるようにして軸芯を平行にして配列されている。ただし、第1電池セル列121を構成する電池セル140の正・負極端子140a、140bの冷却媒体入口114(図3参照)側から冷却媒体出口115側への並び順は、第2電池セル列122を構成する電池セル140の端子の並び順と異なる。
【0047】
すなわち、第1電池セル列121は、ケース側板250側に面する電池セル140の端子が、冷却媒体入口114側から冷却媒体出口115側に向かって負極端子140b、正極端子140a、負極端子140b、…、正極端子140aの順に配置されている。一方、第2電池セル列122は、ケース側板250側に面する電池セル140の端子が、冷却媒体入口114側から冷却媒体出口115側に向かって正極端子140a、負極端子140b、正極端子140a、…、負極端子140bの順に配置されている。
このように、第1電池セル列121と第2電池セル列122とを長手方向にずらして配置することにより、ケース本体110の高さ方向の寸法を低くでき、蓄電モジュール100を高さ方向に小型化することができる。
【0048】
(ケース側板)
次に、第1電池セル列121および第2電池セル列122を両側から挟持する一対のケース側板250、251の構造について説明する。ここでは、一方のケース側板250の構造のみを説明するが、他方のケース側板251も基本的にはケース側板250と同様に構成されている。
【0049】
ケース側板250、251の構造を説明するに当たって、図1に戻り、蓄電モジュール100を、高電位側の蓄電モジュール100aと低電位側の蓄電モジュール100bとに分けて説明する。
高電位側の蓄電モジュール100aの正極側入出力端子(図示せず)には正極側の電源ケーブル610(図1参照)の端子が接続され、負極側入出力端子(図示せず)には、SDスイッチ700の一端側に電気的に接続されたケーブルの端子が接続される。低電位側の蓄電モジュール100bの正極側入出力端子183(図2参照)には、SDスイッチ700の他端側に電気的に接続されたケーブルの端子が接続される。低電位側の蓄電モジュール100bの負極側入出力端子184(図2参照)には負極側の電源ケーブル620の端子が接続される。なお、図2において、高電位側の蓄電モジュール100aのサブアセンブリ185は端子カバーで覆われた状態を示し、低電位側の蓄電モジュール100bのサブアセンブリ185は端子カバーを取り外した状態を示している。
【0050】
図6は、図5に図示された電池容器を構成するケース側板の拡大斜視図であり、図7は、図5におけるVII−VII線切断拡大断面図である。
ケース側板250は、図5に図示されるように、略長方形の平板形状に形成されている。ケース側板250には、短手方向に貫通する16個の円形の貫通孔201が形成されている。16個の貫通孔201は、下段側の第2電池セル列122に対応する8個の貫通孔201が上段側の第1電池セル列121に対応する8個の貫通孔201に対して、電池セル140の(1/2)ピッチだけ冷却媒体出口115寄りに位置して配列されている。
【0051】
各貫通孔201の直径は、正極端子140aおよび負極端子140bの直径よりも少し小さく形成され、正極端子140aおよび負極端子140bのそれぞれ一部を露出している。16個の電池セル140がケース本体110内に収納されると、ケース側板250の16個の貫通孔201は、すべて、電池セル140の正極端子140aまたは負極端子140bで塞がれる。同様に、ケース側板251側の16個の貫通孔201は、すべて、いずれかの電池セル140の正・負極端子140a、140bの一方の端子により塞がれる。但し、ケース側板250の貫通孔201が塞がれる電池セル140の端子と、ケース側板250の当該貫通孔201に対応するケース側板251の貫通孔201とが塞がれる電池セル140の端子とは、正極と負極が逆である。
【0052】
(電池セル収納構造)
ケース側板250は、周囲に所定の厚さの側部204を有し、側部204の内側には、電池セル140を収納するための16個の貫通孔201が形成されている。各貫通孔201の周囲には、電池セル140の外径より僅かに大きい開口部202aが設けられたリング状の壁部202が形成されている。壁部202は、電池セル140を収納する際の案内部材であり、かつ、電池セル140を保持する保持部材である。つまり、各電池セル140は、正極端子140aまたは負極端子140b付近の外周部を、リング状の壁部202を案内部材として挿入される。挿入された状態では、各電池セル140は、リング状の壁部202により保持される。
【0053】
各貫通孔201とリング状の壁部202との間は、電池セル140の正極端子140a付近の外周を保持する正極端子受部205または負極端子140bの付近の外周を保持する負極端子受部206のいずれかが形成されている。正極端子受部205と負極端子受部206は、ケース本体110の長手方向に沿って交互に配列されている。この場合、ケース側板251に形成される正極端子受部205および負極端子受部206は、対応する1つの貫通孔201に対して、ケース側板250とは逆の極性の端子受部が対応するように形成されている。
【0054】
正極端子受部205には、壁部202の内側に、壁部202より遥かに高さが低い環状の平坦部205bが形成されている。平坦部205bと壁部202との間には溝205aが形成されている。環状の溝205aの底面は平坦部205bの底面より少し低い位置に形成されている。
【0055】
図7に図示されるように、環状の溝205a内には、常温硬化型の接着剤221が塗布される。
接着剤221の上面に、点線で図示されるように電池セル140の正極端子140aが接着される。
【0056】
負極端子受部206には、壁部202の内側に、環状の溝206aが形成されている。環状の溝206aと貫通孔201との間には、段差部206bが形成されている。
図7に図示されるように、溝206a内には、常温硬化型の接着剤220が塗布される。
接着剤220の上面に、点線で図示されるように電池セル140の負極端子140bが接着される。
【0057】
上述した如く、正極端子受部205の環状の溝205aに充填された接着剤220は、正極端子140aの周縁部141の全周囲に確実に付着し、負極端子受部206の環状の溝206aに充填された接着剤221は、負極端子140bの周縁部の全周囲に確実に付着する。
このため、ケース本体110内を、冷却媒体入口114から冷却媒体出口115に向かって流通する冷却媒体は、正極端子受部205の環状の溝205aに充填された接着剤220および負極端子受部206の環状の溝206aに充填された接着剤221に遮断され、ケース側板250の外面側に流出することはない。
【0058】
電池セル140への過充電等に起因して電池セル140内の内圧が上昇し、開裂弁が破断して電池セル140の内部からミスト状のガス(電解液などを含む液体と気体とが混じったガス)が噴出あるいはリークしたりすることがある。このような場合においても、ミスト状のガスは、正極端子受部205の環状の溝205aに充填された接着剤220および負極端子受部206の環状の溝206aに充填された接着剤221に遮断され、ケース側板250の内部側に流入することはない。
【0059】
図6、7に図示されるように、ケース側板250の外側面250aとは反対側の他面250bには、貫通孔201の周囲を部分的に取り囲むように突起部207が形成されている。また、図5、6、7に図示されるように、他面250bには、貫通孔201同士の間に、電池セル140と接続されるバスバー150を配置するための複数の固定ガイド130aが形成されている。固定ガイド130aは、バスバー150で接続される一対の正極端子140aと負極端子140bとの間に形成されている。バスバー150を固定ガイド130aに取り付けることにより、バスバー150の接合部が、電池セル140の正・負極端子140a、140bの所定の箇所に対応する。このことについての詳細は後述する。固定ガイド130aは、また、導電材料で形成された覆い板160とバスバー150との接触を防止する機能も備えている。
【0060】
(位置決め部位)
図5に図示されるように、ケース側板250(251)には、位置決め部位170Aおよび170Bが設けられている。位置決め部位170Aは、ケース本体110の出口側案内部113側に位置し、ボス部171とボス部の中央に設けられた位置決め孔172を有する。位置決め部位170Bは、ケース側板250(251)のガス排出通路138付近に位置し、位置決め孔173を有する。
位置決め部位170A、170Bは、溶接装置の溶接トーチにより、バスバー150を電池セル140の正極端子140aおよび負極端子140bに接合する際、溶接装置とバスバー150の溶接部位との位置合わせ行うためのものであり、その詳細は後述する。
【0061】
(ガス排出路)
ケース側板250には、ケース側板250と覆い板160との間のガス放出室に放出されたミスト状のガスを蓄電モジュール100の外部に排出するためのガス排出通路138(図5参照)が設けられている。ガス排出通路138の開口部は、ガスに含まれる電解液などの液体の排出を考慮してケース側板250の下部に形成されている。具体的には、ケース側板250の冷却媒体入口114側であり、かつ出口流路形成部118側のケース側板250に形成されている。ガス排出通路138の先端部分は管状に形成されており、ガス排出通路138から排出されたガスを外部に導くためのガス排出管139(図3参照)が接続されている。
【0062】
ケース側板250の上面、すなわち入口流路形成部111側の面には、2つの接続端子810が長手方向に並んで設けられている。接続端子810は、ケース側板250と同じ成形材料によってケース側板250に一体に成形され、ケース側板250の上面において冷却媒体入口114側に配置されている。
【0063】
(電圧センサ接続配線)
各接続端子810は、電流遮断部811(後述の図8、図9参照)を備えており、制御装置900の電圧検出用コネクタ912(図2、3参照)から延びる接続配線800と、後述する電圧検出導体805とを電流遮断部811を介して電気的に接続している。
【0064】
電圧検出用コネクタ912は、制御装置900の短手方向両端部にそれぞれ設置されている。高電位側の蓄電モジュール100aに設けられた接続端子810に接続された接続配線800は、高電位側の蓄電モジュール100aの上方に配置された制御装置900の電圧検出用コネクタ912に接続される。一方、低電位側の蓄電モジュール100bに設けられた接続端子810に接続された接続配線800は、低電位側の蓄電モジュール100bの上方に配置された制御装置900の電圧検出用コネクタ912に接続される。接続配線800の長さは、配線ミスを防止するために、各接続端子810と対応する電圧検出用コネクタ912までの距離に相当するように設定されている。例えば、高電位側の蓄電モジュール100aの接続端子810に接続された接続配線800は、低電位側の蓄電モジュール100b用の電圧検出用コネクタ912まで到達しないような短さに設定されている。電流遮断部811は、ヒューズワイヤを備え、制御装置900や接続配線800の異常時に溶断して各電池セル140からの電流を遮断し、製品を保護する機能を有している。
【0065】
電圧検出導体805は、複数の電池セル140についてそれぞれ電圧を検出するために、電池セル140を直列に接続するバスバー150に接続されている。電圧検出導体805はケース側板250と一体化されている。具体的にはケース側板250に埋め込まれている。図8に電圧検出導体805の形状の一例を示す平面図を示し、図9に、図8に示す電圧検出導体805をケース側板250に埋め込んだ状態の平面図を示す。
【0066】
電圧検出導体805は、例えば銅などの金属製の薄板をプレス加工等により成形することにより、図8に示すように、細長い平角線状の検出線806を形成している。電圧検出導体805は、検出線806がケース側板250に形成された複数の貫通孔201から突出しないように延在され、検出線806の先端部800aは、所定の貫通孔201の内方に延出され、当該貫通孔201から露出されている。検出線806の各先端部800aは、ケース側板250の外側に向けて折り曲げられており、バスバー150と接続される。電圧検出導体805の先端部800aと反対の他端部は、電流遮断部811を介して接続端子810と電気的に接続されている。
【0067】
電圧検出導体805の形状は、ケース側板250を小型化して蓄電モジュール100全体を小型化するように、ケース側板250の利用可能なスペースを効率的に利用するように設計されている。また、複数の電池セル140は、バスバー150を介して直列に接続されているため、電圧検出導体805が接続される複数のバスバー150の間で電位差が発生することとなる。そこで、電圧検出導体805は、隣接する検出線806間の電位差ができるだけ小さくなるように検出線806の配置が決定されている。
【0068】
電圧検出導体805は、プレス加工等により所定の形状に成形された後、例えばケース側板250と同様の樹脂からなる樹脂部807によって形状が固定される。具体的には、樹脂部807によって、複数の検出線806をそれぞれ分離した状態にするとともに、各検出線806の形状を保つように固定する。図8に示す電圧検出導体805は、樹脂部807によって複数の部位で検出線806を固定した2つのサブユニットから構成されている。
【0069】
図8に示すように樹脂部807によって固定された電圧検出導体805は、例えばケース側板250を構成する樹脂によるインサートモールド成形によりケース側板250と一体化して形成される。検出線806同士はそれぞれ分離して固定されているので、電圧検出導体805がケース側板250と一体化されると、検出線806の短絡は実質的に発生しない。しかしながら、検出線806同士の短絡に対する更なる信頼性の向上の為に、電検出線806間の距離を、このシステムで必要とされる絶縁沿面距離の2〜2.5倍以上としている。それにより、信頼性の高いケース側板250を供給することを可能としている。また、その距離は大きければ大きいほど汚染された環境に対し効果がある。
【0070】
図4および5において、180および181は、それぞれ、蓄電モジュール100の電池容器2内に収納され、直列に接続された16個の電池セル140の両端部、換言すれば、最高電位および最低電位の電池セル140の正極端子140aおよび負極端子140bに接続される接続端子である。
接続端子180、181は、それぞれ、それぞれ、接続部180a、181aとバスバー部150a、150bを有し(図5参照)、インサートモールド成形によりケース側板250の一体成形されている。
【0071】
(バスバーと電池セル)
図10に、ケース側板250にバスバー150を装着した状態の蓄電モジュール100の斜視図を示す。
バスバー150は、電池セル140の間を電気的に接続する金属製、例えば銅製の板状部材であり、ケース側板250とは別体に構成されている。ただし、上述した如く、バスバー150a、150b(図5参照)を有する接続端子180、181は、それぞれ、ケース側板250と一体化して形成されている。
【0072】
バスバー150は、帯状に延在する中央部156と、中央部156の両端側に位置する端子部157とから構成される。中央部156と端子部157とは、それぞれ屈曲部158を介して連続している。すなわち、バスバー150は、折り曲げられてステップ状に形成されている。バスバー150の各端子部157には、細長貫通孔151、電池セル140の正・負極電極140a、140bに溶接される電極接合部152、および電圧検出導体805の先端部800aに溶接される配線接合部154が形成されている。
【0073】
細長貫通孔151は、上述したように電池セル140からガスが噴出した場合に、噴出したガスが通るように設けられている。バスバー150の中央部156には、ケース側板250に設けられた固定ガイド130aを挿入するための2つの位置決め孔155が形成されている。
【0074】
バスバー150は、中央部156の2つの位置決め孔155を、ケース側板250に設けられた2つの固定ガイド130aに嵌合させてケース側板250に装着される。バスバー150がケース側板250に装着されると、バスバー150の両端子部157は、貫通孔201に入り込んだ状態となり、電池セル140の端子面と当接する。また、バスバー150の配線接合部154は、ケース側板250に形成された貫通孔201から露出した電圧検出導体805の先端部800aと当接する。なお、バスバー150により溶接された一対の正極端子140aと負極端子140bとは同電位である。このため、先端部800aは、この同電位である一対の正・負極電極140a、140bに対し1本引き出されている。従って、図8、9に示すように、先端部800aは、一対となる貫通孔201の一方のみから露出され、他方の貫通孔201からは露出していない。
【0075】
図11は、ケース側板にバスバーを装着した状態の拡大斜視図であり、バスバー150のケース側板250への取り付け状態とバスバー150の詳細形状を示す。また、図12(a)は図11に図示されたケース側板にバスバーを装着した状態の平面図であり、図12(b)は図12(a)のb−bの断面図であり、また、図12(c)は図12(a)のc−c断面図である。
バスバー150は、両端子部157に設けられた電極接合部152において電池セル140の正・負極端子140a、140bに接合される。具体的には、溶接トーチを電極接合部152に位置合わせして電極接合部152と電池セル140の正・負極端子140a、140bとをアーク溶接により接合する。アーク溶接としては、例えばTIG(Titan Inert Gas)溶接、ガスシールドアーク溶接等が挙げられる。
【0076】
アーク溶接は高熱で母材および溶加材を溶融させて接合させるものであり、溶接時には超高熱を発生する。溶接時の熱は、溶接部の周辺に伝導され、周辺も溶融する程の高温となる。特に、溶接部近傍が角部のある矩形形状であったり、矩形の貫通孔があったりする場合、角部に熱が集中し、溶融され易い。また、上述したように、細長貫通孔151は電池セル140からガスが噴出した場合にガスの排出口として機能するため、端子部157が溶けて開口が閉じてしまうことを避ける必要がある。
【0077】
そこで、本実施の形態においては、図11および12に示すように、バスバー150の各端子部157の外側の側縁に立ち上がり部159を設けている。この立ち上がり部159は、ケース側板250の貫通孔201の中心部付近に対応する位置に形成されている。
バスバー150に立ち上がり部159を設けることにより、バスバー150の体積が増大して溶接時の放熱を大きくする効果がある。以下、このことについて説明する。
【0078】
バスバー150の端子部157はケース側板250の円形形状の貫通孔201内に収まる形状とされる。このため、端子部157の幅は、いずれの部位も、対応する円形形状の貫通孔の部位の幅よりも小さくする必要がある。したがって、端子部157が平板形状の場合には、貫通孔201の中心部を超えた領域では、貫通孔201の直径より小さい幅となる。
これに対し、本発明の実施形態では、図11に図示されるように、バスバー150の各端子部157には、ケース側板250の貫通孔201の中心部付近に対応する位置に立ち上がり部159が設けられている。このため、立ち上がり部159は貫通孔201の形状による制約を受けること無く、立ち上がり部159の根元から先端まで同一の幅とすることができる。すなわち、立ち上がり部159を設けることにより端子部157の面積は、立ち上がり部159を設けない場合よりも大きくすることができ、結果、バスバー150の体積を大きくして溶接時の放熱量を大きくすることが可能となる。
【0079】
また、溶接時に発生する熱の影響を受けにくくするために、細長貫通孔151を電極接合部152からできる限り遠ざけるように構成している。具体的には、細長貫通孔151を楕円形としている。楕円形の細長貫通孔151は、各端子部157に設けられた2つの電極接合部152の中間位置に配置されている。各端子部157には、正極端子140aおよび負極端子140bに接合される2つの電極接合部152が形成されている。したがって、1つのバスバー150は、4つの電極接合部152を有していることになる。電極接合部152は、電池セル140側に向かって突出した円形の凸部として構成されている。
【0080】
このように、バスバー150の各端子部157に立ち上がり部159を設け、放熱効果を高めると共に、細長貫通孔151を楕円形として細長貫通孔151の縁部が溶融し難い形状としている。このため、バスバー150と電池セル140との溶接時に発生する熱に対して、高い信頼性が確保される。
【0081】
電極接合部152は、図12に図示されるように、電池セル140に対して凸部となっており円形を成している。溶接時の熱は、バスバー150の電極接合部152から、電池セル140の正・負極端子140a、140bに伝導され、両部材の接合部位が溶融されることにより接合される。このことから、バスバー150の電極接合部152は溶接時の溶接起点となる機能を有する。このため、円形の直径は、溶接設備のトーチ位置のばらつき、また蓄電装置1000を構成する各部品の組み合わせによるばらつきを考慮して大きさが決められている。円形はいずれの方向のばらつきに対しても同一の公差を有し、円形の直径を、必要とされる溶接強度の最小面積が確保できる大きさとすることにより、いかなる場合でも、安定した高品質な蓄電装置1000とすることが可能となる。
【0082】
上述した如く、接続端子180、181は、それぞれ、バスバー150a、150b(図5参照)を有する。
接続端子180、181は、それぞれ、バスバー150を中央部156で切断したような形状を有し、それぞれ、バスバー150の片側の端子部157と同様な構造を有する。
すなわち、各バスバー部150a、150bは、それぞれ、細長貫通孔151、配線接合部154および2つの電極溶接部152が形成された端子部157を有している。
この場合、接続端子180、181は、バスバー150に対し90度回転した向きに配置されており、それぞれ、接続部180a、181aをケース側板250の上方の外部に突き出した状態でケース側板250に一体成形されている。
図5に図示されるように、最高電位の電池セル140の正極端子140aに接続される先端部800bおよび最低電位負極端子140bに接続される先端部800cが貫通孔201から露出されている。
そして、先端部800b、800cが、それぞれ、バスバー部150a、150bの配線接合部154に溶接される。各バスバー部150a、150bの細長貫通孔151、配線接合部154および2つの電極溶接部152の機能は、バスバー150の場合と同様であるので、ここでは説明を省略する。
次に、バスバー150の電極接合部152と電池セル140の正・負極端子140a、140bの溶接方法について説明する。
【0083】
(バスバーと電池セルの溶接)
図13は、バスバー150を円筒形の電池セル140の正・負極端子140a、140bに溶接する方法を説明するための図である。図13は、ケース側板250を透過して内部構造が図示された図とされている。
溶接装置500は、ケース側板250の長手方向の長さに対応する長さを有するフレーム501を有し、フレーム501の両端部側に固定された位置決め軸510、520を有する。位置決め軸510の端部には、ケース側板250(251)の位置決め部位170Aの位置決め孔172に嵌合する先鋭な端部を有する位置決めピン511が形成されている。位置決め軸520の端部には、ケース側板250(251)の位置決め部位170Bの位置決め孔173に嵌合する先鋭な端部を有する位置決めピン521が形成されている。
位置決めピン511と位置決めピン521の間隔は、ケース側板250(251)の位置決め部位170Aの位置決め孔172と位置決め部位170Bの位置決め孔173の間隔と同一である。
【0084】
フレーム501には、フレーム501の長手方向であるx方向にスライド可能にスライド部材502が取り付けられている。スライド部材502は、x方向と垂直な方向であるy方向に延出されている。スライド部材502には、y方向にスライド可能に、(接合ヘッド)保持部503が取り付けられている。トーチ保持部503の端部には、先鋭な溶接トーチ504が形成されている。
溶接トーチ504は、トーチ保持部503の軸方向であるz方向に変位可能に取り付けられている。
すなわち、溶接トーチ504は、図示しない制御装置と駆動機構により、x方向、y方向およびz方向に移動可能にフレーム501に取り付けられている。
【0085】
バスバー150を、電池セル140の正・負極端子140a、140bにアーク溶接する手順の概要は下記の通りである。
ケース本体110に電池セル140を収納して、ケース側板250(251)をケース本体に締結する。次に、バスバー150をケース側板250(251)に取り付ける。取付は、ケース側板250の固定ガイド130aにバスバー150の位置決め孔155を嵌合することにより行う。次に、溶接装置500の位置決めピン511、521を、それぞれ、ケース側板250の位置決め孔172、173に位置合わせし、嵌合する。そして、図示しない制御装置および駆動機構により、溶接装置500の溶接トーチ504を、x、y、z方向に移動してバスバー150の電極接合部152に位置合わせしてアーク溶接を行う。アーク溶接としては、上述した如く、例えば、TIG溶接、ガスシールドアーク溶接等が適している。
接続端子180、181のバスバー部150a、150bと、電池セル140の正極端子140a、140bとの溶接もバスバー150の溶接と同様に行われる。
バスバー150、接続端子180、181のバスバー部150a、150bと電池セル140との溶接方法については、蓄電装置1000の製造方法と共に、さらに詳細を後述する。
【0086】
図2および3に図示された蓄電装置1000において、制御装置900は、蓄電モジュール100の上に載置されている。具体的には、制御装置900は高電位側の蓄電モジュール100a及び低電位側の蓄電モジュール100bの上に跨って載置された電子回路装置であり、筐体910、及び筐体910の内部に収納された一つの回路基板を備えている。
筐体910は、扁平な直方体状の金属製箱体であり、高電位側の蓄電モジュール100a及び低電位側の蓄電モジュール100bに対して、ボルト或いはネジなどの固定手段により固定されている。これにより、高電位側の蓄電モジュール100a及び低電位側の蓄電モジュール100bは互いの短手方向の端部同士が制御装置900によって接続されて固定される。すなわち、制御装置900が支持具の機能を兼ねているので、蓄電モジュール100の強度をより向上させることができる。
【0087】
筐体910の側面、すなわち、制御装置900の短手方向の両端面には複数のコネクタが設けられている。複数のコネクタとしては電圧検出用コネクタ912、温度検出用コネクタ913、および外部接続用コネクタ911を備えている。電圧検出用コネクタ912には、32個の電池セル140に電気的に接続された接続配線800のコネクタが結合される。温度検出用コネクタ913には、蓄電モジュール100の内部に配置された複数の温度センサ(図示省略)の信号線941のコネクタが結合される。
【0088】
外部接続用コネクタ911には、バッテリコントローラ300に駆動電源を供給するための電源線、イグニションキースイッチのオンオフ信号を入力するための信号線、及び車両コントローラ30やモータコントローラ23とCAN通信するための通信線などのコネクタ(図示省略)が結合される。
【0089】
[蓄電装置の製造方法]
以上説明した蓄電モジュール100および制御装置900から構成される蓄電装置1000の製造方法、特に、組み立て方法について、図14のフローチャートを用いて説明する。
図14において、ステップS1〜S10が蓄電モジュール100を作製する工程である。
蓄電装置1000は、高電位側の蓄電モジュール100aおよび低電位側の蓄電モジュール100bを備えているが、高電位側の蓄電モジュール100aと低電位側の蓄電モジュール100bとは構造は同一であり、各蓄電モジュールを制御装置900に接続する際の接続方法により、いずれかに確定する。つまり、蓄電モジュール100の組立方法は同一であり、以下に説明する蓄電モジュール100の作成方法は、高電位側および低電位側に共通する。
【0090】
まず、ステップS1において、ケース本体110にケース側板251を締結部材により締結する。
ケース本体110は、入口流路形成部111、出口側案内部113、冷却媒体入口114及び冷却媒体入口ダクト116、さらに、出口流路形成部118、入口側案内部112、冷却媒体出口115及び冷却媒体出口ダクト117が一体に形成されたものである。
ケース本体110は、例えば、ダイキャストにより形成することが可能である。
また、ケース側板250、251には、それぞれ、図8に図示される2個の接続端子810および電圧検出導体805を一体成形し、また、バスバー部150a、150bを有する接続端子180、181を一体成形しておく。各ケース側板250、251には、電池セル140の正・負極端子140a、140bに接着される接着剤220、221を塗布しておく。
【0091】
次に、ステップS2において、電池セル140をケース本体110に収納する。
ステップS1においてケース本体110とケース側板251が締結されたケース組立体を、図13に図示されるように、ケース側板251を下側にして、図示しない、取付台にセットする。ケース組立体は、取付台にセットすることにより、例えば、ケース側板250、251に形成された位置決め部位170A、170B等の各部位の位置が、所定の位置に定まるようになっている。ケース側板250に、図7に図示されるように接着剤220および221を塗布する。
【0092】
次に、ステップS2において、ケース本体110内に電池セル140を収納する。各電池セル140を、ケース本体110内を高さ方向に挿通してケース側板251の各壁部202をガイドにして順次差し込む。そして、電池セル140を適度な押圧力で押えて、各電池セル140の正極端子140aまたは負極端子140bをケース側板251に塗布された接着剤220、221に接着する。
【0093】
次に、ステップS3において、ケース本体110にケース側板250を締結部材により固定する。ケース本体110内に収納された各電池セル140は、正・負極端子140a、140bの一部が、ケース側板250の貫通孔201から露出する。また、各電池セル140の正・負極端子140a、140bは、それぞれ、ケース側板250に塗布された接着剤220、221に接着される。
【0094】
次に、ステップS4において、バスバー150を各電池セル140の正・負極端子140a、140bに溶接する。
先ず、各バスバー150をケース側板250に取り付ける。バスバー150の取り付けは、ケース側板250の固定ガイド130aにバスバー150の位置決め孔155を嵌合する(図11参照)ことによりなされる。これにより、各バスバー150の電極接合部152が、電池セル140の正・負極端子140a、140bの所要の箇所に位置決めされる。
【0095】
そして、バスバー150を各電池セル140の正、負極端子140a、140bに接合する。
これには、先ず、溶接装置500の位置決めピン511、521を、それぞれ、ケース側板250の位置決め孔172、173に嵌合する。ケース組立体がセットされた取付台は、生産時には、コンベアにより搬送される。この取付台を停止ピンにより停止させることにより、ケース側板250に設けられた位置決め孔172、173の位置が、取付台の搬送路上の所定の位置に位置づけられる。
この状態で、溶接装置500の位置決めピン511、521を、それぞれ、ケース側板250の位置決め孔172、173に嵌合する。位置決めピン511、521は、それぞれ、先端側が細くなっているため、ケース側板250の位置決め孔172、173が多少ずれている場合であっても、位置決めピン511、521によりケース側板250が正確な位置に変位する。
従って、本一実施の形態によれば、テレビカメラを用いること無く、溶接装置500とケース側板250との位置合わせを正確に行うことができる。
【0096】
そして、図示しない制御装置および駆動機構により、溶接装置500の溶接トーチ504をx、y方向に移動してバスバー150の電極接合部152に位置合わせする。位置が合った状態で溶接トーチ504をz方向に移動して、バスバー150の電極接合部152に対して所定のギャップが確保される位置で停止し、アーク溶接を行う。アーク溶接としては、上述した如く、例えば、TIG(Titan Inert Gas)溶接、ガスシールドアーク溶接等が適している。
この場合、接続端子180、181に一体に形成されたバスバー部150a、150bを、バスバー150と同様に、それぞれ、電池セル140の正極端子140aまたは負極端子140bに溶接する。
【0097】
次に、ステップS5において、バスバー150と、電圧検出導体805の先端部800aとを接続する。具体的には、電圧検出導体805の先端部800aをバスバー150の配線接合部154に当接させ、この状態で、例えば、TIG溶接により接合する。また、同様に、先端部800b、800cをそれぞれ、バスバー部150aまたは150bの配線接合部154に溶接する。
【0098】
次に、ステップS6において、覆い板160をケース側板250にシール部材(図示せず)を介して組み付け、ボルト、ネジ、リベットなどの締結部材161により固定する。
シール部材は、弾性を有する円環状のシール部材(例えばゴム製のOリング)であり、ケース側板250に形成された溝に嵌め込まれている。シール部材には液状ガスケットを用いても構わない。
【0099】
次に、ステップS7において、電池セル140が収納され、覆い板160とケース側板250がケース本体に締結された組立体を上下反転し、ケース側板251を上側に向ける。
【0100】
次に、ステップS8において、バスバー150をケース側板251に取り付ける。
この工程は、ステップS4と同様に行われものであり、ここでは説明を省略する。
【0101】
次に、ステップS9において、バスバー150と、電圧検出導体805の先端部800aとを接続する。
この工程は、ステップS5と同様に行われものであり、ここでは説明を省略する。
【0102】
次にステップS10において、覆い板160をケース側板251にシール部材(図示せず)を介して組み付け、ボルト、ネジ、リベットなどの締結部材161により固定する。
この工程は、ステップS6と同様に行われものであり、ここでは説明を省略する。
【0103】
ステップS10が完了すると1個の蓄電モジュール100が作製される。
ステップS1〜S10を繰り返して行い、蓄電モジュール100aおよび100bを作製する。
次に、ステップS11において、ステップS1〜ステップS10に示された方法により組立てられた蓄電モジュール100a、100bを、それぞれの長手方向が平行になるように並置した状態で、モジュールベース101を組み付ける。モジュールベース101は、ボルト、ネジ、リベットなどの締結定手段によりケース本体110の底部に固定される。
【0104】
そして、2つの蓄電モジュール100a、100bの長手方向中央部に制御装置900の筐体を、ボルト、ネジ、リベットなどの締結手段により固定する。
各蓄電モジュール100の接続配線800のコネクタを各蓄電モジュール100の接続端子810および制御装置900の電圧検出用コネクタ912にそれぞれ接続する。制御装置900には、一端が高電位側の蓄電モジュール100aの高電位側に接続され、他端が低電位側の蓄電モジュール100bの負極側に接続されたSDスイッチ700が設けられている。
【0105】
各蓄電モジュール100a、100bに設けられた複数の温度センサ(図示省略)から延びる信号線のコネクタを制御装置900の温度検出用コネクタ913に接続する。さらに、上位制御装置、例えば車両コントローラ30およびモータコントローラ23と通信するための通信線のコネクタを制御装置900のコネクタに接続する。
以上のステップS1〜S11の組み立て作業により、蓄電装置1000が完成する。
【0106】
[実施形態の効果]
以上説明した一実施の形態による蓄電モジュール100では、バスバー150が位置決めされるケース側板250、251に、溶接装置500の位置決めピン511、521が嵌合する位置決め孔172、173が設けられている。このため、位置決めピン511、521を位置決め孔172、173に嵌合するだけで、正確に位置決めがなされる。結果、バスバー150と電池セル140の正・負極端子140a、140bの接合を大変効率的に行うことが可能となる。
【0107】
各バスバー150の端子部157には、端子部157の面積を大きくするための立ち上がり部259が形成されている。このため、バスバー150の体積が増大し、溶接時の放熱を大きくすることができる。
【0108】
また、各バスバー150の端子部157に形成される2つの電極接合部152の中心には、平面形状が楕円形の細長貫通孔151が配置されている。このため、細長貫通孔151は、溶接時に発生する熱の影響を少なくし、溶融により、細長貫通孔151が塞がれることを防ぐ。その結果、電池セル140から噴出するガスの排出口が塞がれるようなことが防止される。
上述の如く、各バスバー150に立ち上がり部159を設け、楕円形の細長貫通孔151を設けることで、バスバー150と電池セル140との溶接時に発生する熱に対して、高い信頼性が確保される。
【0109】
さらに、バスバー150の各端子部157には、電池セル140の正・負極端子140a、140bに当接する平面円形の凸部状の電極接合部152を設けている。溶接時の熱は、バスバー150から電池セル140の正・負極端子140a、140bに伝導され、両部材の接合部位が溶融されることにより接合される。このことから、バスバー150の電極接合部152は溶接時の溶接起点となる機能を有する。電極接合部152を、平面円形の凸部状とすることにより、いずれの方向に対しても熱伝導が一様となり、均一な接合を行なうことができる。円形の直径を、溶接設備のトーチ位置のばらつきおよび蓄電装置1000を構成する各部品の組み合わせによるばらつきを考慮して、必要とされる溶接強度の最小面積が確保できる大きさとすることにより、いかなる場合でも、安定した高品質な蓄電装置1000とすることが可能となる。
【0110】
以上説明した一実施の形態による蓄電モジュール100によると、上記した効果以外にも、以下の効果を奏する。
(1)蓄電モジュール100は、複数の電池セル140と、複数の電池セル140を収納するケース本体110と、複数の電池セル140を電気的に接続するための複数のバスバー150と、複数の電池セル140のそれぞれの電圧を検出するための電圧検出導体805とを備える。ケース本体110は、少なくとも、複数の電池セル140を両側から挟みこんで支持する一対の樹脂製のケース側板250、251を有する。図8、9に示すように、電圧検出導体805は、所定の形状に成形されて、ケース側板250、251と一体化されている。これにより、電圧検出用のリード線を手作業でケース側板250、251に引回して設置するためのスペースおよび煩雑な製造工程が不要となり、蓄電モジュール100を効率的に製造することができる。特に、小型化が要求される蓄電モジュール100に対する電圧検出導体805の設置を容易に行うことができる。
【0111】
(2)複数のバスバー150は、複数の電池セル140を接続するためにケース本体110の外側からケース側板250、251に取り付けられる。これにより、バスバー150と各電池セル140との接続を容易に行うことができる。
【0112】
(3)電圧検出導体805の先端部800aは、複数のバスバー150に接続され、電圧検出導体805の他端部には、電池セル140からの電流を遮断する電流遮断装置(電流遮断部)811が設けられている。電流遮断部811は、制御装置900や接続配線800の異常時にヒューズワイヤを溶断して電池セルからの電流を遮断し、製品を保護する。
電流遮断部811を電圧検出導体805の他端部に設けることにより、例えば、接続配線800に短絡が発生した場合に、電流遮断部811が電圧検出導体805の他端部で電流が遮断されることになる。これにより、蓄電モジュール100全体を保護することができる。この場合、接続配線800および電流遮断部811を取り替えることにより、蓄電モジュール100を再利用することが可能となる。なお、電圧検出導体805は、所定の形状に成形されたうえでケース側板250、251と一体化されているため、電圧検出導体805自体では実質的に短絡が発生しない。
【0113】
(4)電圧検出導体805は、樹脂材料(樹脂部)807によって所定の形状に維持された状態で樹脂製のケース側板250、251にインサートモールドされることによって、ケース側板250、251と一体化されている。具体的には、電圧検出導体805を、成形された形状を維持するように樹脂部807で固定してサブユニットを作製し、サブユニットをインサートモールドしてケース側板250、251を作製する。サブユニットを作成することにより、電圧検出導体805の形状維持を確実に行うことができ、製造工程において電圧検出導体805の検出線806同士が誤って接触してしまうことを防止できる。
【0114】
(5)ケース側板250、251には、複数の電池セル140に対応する位置に貫通孔201が形成され、さらにケース側板250、251には電池セル140を接着する接着剤220、221の厚さを確保するための環状の溝205a、206aが形成されている。複数の電池セル140は、貫通孔201を密に塞ぐように接着剤220、221を用いてケース側板250、251に取り付けられている。これにより、ケース本体110の内部と外部の空間をより確実に分離することができ、信頼性が向上する。また、蓄電モジュール100に加えられる外力、例えば振動等を接着剤により吸収しながら、ケース側板250、251と電池セル140との接続状態を維持することができる。
【0115】
(6)ケース本体110に対して、一対のケース側板250、251の外側を覆うように設けられた金属製の覆い板160をさらに備え、ケース側板250、251は、覆い板160とバスバー150との接触を防止するための衝突防止用の固定ガイド130a、突起部207を有する。例えば、覆い板160に外力が加わってケース本体110の内側に変形した場合、覆い板160は、最初に、ケース側板250、251の表面から突出した固定ガイド130aまたは突起部207に接触する。これにより、例えば鉄製の覆い板160とバスバー150とが接触して短絡が発生することを防止できる。また、突起部207は、先端部800a付近を除くバスバー150の全周囲を囲んでいるため様々な外力に耐えられる。
【0116】
(7)蓄電装置1000は、蓄電モジュール100と、電圧検出導体805と接続された複数の電池セル140の電圧を検出し、複数の電池セル140の蓄電量を制御する制御装置900とを備える。上述したように煩雑な電圧検出線の配線作業を行うことなく蓄電モジュール100を製造することができるので、蓄電装置1000全体を効率的に製造することができる。
【0117】
[実施形態の変形例]
以上説明した一実施の形態では、所定の形状に成形した電圧検出導体805をインサートモールドしてケース側板250、251と一体成形したが、電圧検出導体805とケース側板250、251との一体化の方法はこれに限定されない。例えば、ケース側板250、251をそれぞれ2つの部材から構成し、これらの2つの部材の間に所定の形状に成形した電圧検出導体805をはめ込むことにより、一体化してもよい。ただし、電圧検出導体805をはめ込んでケース側板250、251と一体化すると、インサートモールド成形により形成したケース側板250、251に対してケース側板250、251の厚みが増加する傾向にあるため、インサートモールド成形によりケース側板250、251と電圧検出導体805を一体成形することが好ましい。
【0118】
以上説明した一実施の形態では、16個の電池セル140を接続した2つの蓄電モジュール100a、100bから構成される蓄電モジュール装置を例示した。しかし、本発明は上述した蓄電モジュール装置の構成や接続方式(直列、並列)に限定されるものではなく、電池セル140の数や電池セル列の数や配列、方向を変えたものに関しても適用される。
【0119】
以上説明した一実施の形態では、電池容器2を、ケース本体110、ケース本体110の両側面に配置された一対のケース側板250、251および各側板の外側に配置された覆い板160から構成される構造として例示した。しかし、電池容器2はこのような構成部材から形成されるものに限られるものではない。例えば、側板250、251の一方をケース本体と一体成形により形成してもよい。あるいは、電池収納部を有する下部ケースと、電池収納部を覆う上部ケースの上下分割構造にする等、種々、変形することが可能である。
【0120】
以上説明した一実施の形態では、ケース側板250、251に位置決め孔172、173を設け、溶接装置500に位置決めピン511、521を設けた構造として例示した。しかし、逆に、ケース側板250、251に位置決めピンを設け、溶接装置500位置決め孔を設けるようにしてもよい。
ケース側板250、251に形成する位置決め孔172、173は、貫通孔でなく、凹部としてもよい。
【0121】
以上説明した一実施の形態では、電池セル140に接合されるバスバー150を、ケース側板250、251に設けた固定ガイド130aに嵌合することにより電池セル140との位置合わせがなされる構成として例示した。しかし、電池セル140に接合されるバスバー150を、インサートモールド成形によりケース側板250、251と一体にしてもよい。
【0122】
以上説明した一実施の形態では、電池セル140として円筒形のリチウムイオン二次電池セルを例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。リチウムイオン電池以外に、ニッケル水素電池などの他の電池に関しても適用される。
また、電池セルに限らず、円筒形のリチウムイオン等のキャパシタに適用することができる。
【0123】
以上説明した一実施の形態による蓄電装置1000を、他の電動車両、例えばハイブリッド電車などの鉄道車両、バスなどの乗合自動車、トラックなどの貨物自動車、バッテリ式フォークリフトトラックなどの産業車両などの車両用電源装置に利用することもできる。
【0124】
また、一実施の形態による蓄電装置1000を、コンピュータシステムやサーバシステムなどに用いられる無停電電源装置、自家用発電設備に用いられる電源装置など、電動車両以外の電源装置を構成する蓄電装置にも適用しても構わない。
【0125】
その他、本発明の蓄電モジュールは、発明の趣旨の範囲内において、種々、変形して構成することが可能であり、要は、端側に正極端子、一端側に対向する他端側に負極端子を有する複数の円筒形の蓄電セルと、複数の円筒形の蓄電セルを収納する収納部を有するケース本体と、ケース本体の一側面に取り付けられ、円筒形の蓄電セルの各正極端子および各負極端子の少なくとも一部を露出する開口部を有するケース側板とを有する電池容器と、ケース側板に位置決めされ、ケース側板の開口部から露出された円筒形の蓄電セルの正極端子および負極端子に接合されたバスバーとを備え、ケース側板には、バスバーに対して所定の位置に設定され、溶接装置を位置決めするための位置決め部が設けられているものであればよい。
【0126】
また、本発明の蓄電モジュールの製造方法は、ケース本体の内部に、正極端子および負極端子を有する複数の円筒形の蓄電セルを、正極端子と負極端子が交互に配置されるように収納する電池収納工程と、ケース本体の一側面に、円筒形の蓄電セルの各正極端子および各負極端子の少なくとも一部を露出する開口部を有するケース側板を取り付けるケース側板取付工程と、ケース側板に円筒形の蓄電セルの正極端子および負極端子に接合される接合部を有するバスバーを取り付けるバスバー取付工程と、ケース側板に設けられた位置決め部と溶接装置とを位置決めする位置決め工程と、溶接装置の接合ヘッドを移動して、バスバーを円筒形の蓄電セルの正極端子および負極端子に接合する接合工程とを含むものであればよい。
【符号の説明】
【0127】
100、100a、100b 蓄電モジュール、
110 ケース本体、
140 電池セル(蓄電セル)
140a 正極端子
140b 負極端子
150 バスバー
151 貫通孔
152 電極接合部
157 端子部
159 立ち上がり部
170A、170B 位置決め部位
172、173 位置決め孔
250、251 ケース側板、
500 溶接装置
511、521 位置決めピン
504 溶接トーチ(接合ヘッド)
900 制御装置
1000 蓄電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に正極端子、前記一端側に対向する他端側に負極端子を有する複数の円筒形の蓄電セルと、
前記複数の円筒形の蓄電セルを収納する収納部を有するケース本体と、前記ケース本体の一側面に取り付けられ、前記円筒形の蓄電セルの各正極端子および各負極端子の少なくとも一部を露出する開口部を有するケース側板とを有する電池容器と、
前記ケース側板に位置決めされ、前記ケース側板の開口部から露出された前記円筒形の蓄電セルの正極端子および負極端子に接合されたバスバーとを備え、
前記ケース側板には、前記バスバーに対して所定の位置に設定され、溶接装置を位置決めするための位置決め部が設けられていることを特徴とする蓄電モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電モジュールにおいて、前記位置決め部は、前記ケース側板に設けられた孔または凹部であることを特徴とする蓄電モジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蓄電モジュールにおいて、前記ケース側板は、前記バスバーを位置決めするためのガイド部を有し、前記バスバーは前記ガイド部に嵌合する嵌合部を有することを特徴とする蓄電モジュール。
【請求項4】
請求項1または2に記載の蓄電モジュールにおいて、前記バスバーは、前記ケース側板に一体成形されていることを特徴とする蓄電モジュール。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蓄電モジュールにおいて、前記電池容器に、前記円筒形の蓄電セルに接続される接続配線が一体成形されていることを特徴とする蓄電モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載された蓄電モジュールにおいて、前記接続配線の端部は、前記バスバーに接合されていることを特徴とする蓄電モジュール。
【請求項7】
ケース本体の内部に、正極端子および負極端子を有する複数の円筒形の蓄電セルを、前記正極端子と負極端子が交互に配置されるように収納する電池収納工程と、
前記ケース本体の一側面に、前記円筒形の蓄電セルの各正極端子および各負極端子の少なくとも一部を露出する開口部を有するケース側板を取り付けるケース側板取付工程と、
前記ケース側板に前記円筒形の蓄電セルの正極端子および負極端子に接合される接合部を有するバスバーを取り付けるバスバー取付工程と、
前記ケース側板に設けられた位置決め部と溶接装置とを位置決めする位置決め工程と、
前記溶接装置の接合ヘッドを移動して、前記バスバーを前記円筒形の蓄電セルの正極端子および負極端子に接合する接合工程とを含むことを特徴とする蓄電モジュールの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の蓄電モジュールの製造方法において、前記ケース側板に設けられた位置決め部は、凹部または孔であり、前記接合工程は、前記凹部または孔に前記溶接装置のケース位置決めピンを嵌合する工程を含むことを特徴とする蓄電モジュールの製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−243514(P2012−243514A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111547(P2011−111547)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】