説明

薄膜トランジスタ、その製造方法及びこれを備えた有機電界発光表示装置

【課題】薄膜トランジスタ、その製造方法及びこれを備えた有機電界発光表示装置を開示する。
【解決手段】ゲッタリングサイトであって、ソース/ドレイン電極物質層を用いて半導体層に残存する結晶化のための金属触媒量を減少させて漏洩電流特性及び薄膜トランジスタの電気的特性を向上させるボトムゲート方式の薄膜トランジスタ、その製造方法及びこれを備えた有機電界発光表示装置に関する。基板と、基板上に位置するゲート電極と、ゲート電極上に位置するゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に位置し、金属触媒を利用して結晶化した半導体層と、半導体層上に位置し、ソース/ドレイン領域に電気的に接続するソース/ドレイン電極とを含み、ソース/ドレイン電極下部の半導体層領域内には半導体層の表面から所定深さまで金属触媒と異なる金属または異なる金属の金属シリサイドが形成されていることを特徴とする薄膜トランジスタである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜トランジスタ、その製造方法及びこれを備えた有機電界発光表示装置に関し、より詳しくは、金属触媒を用いて結晶化された半導体層のチャネル領域に残存する前記金属触媒をゲッタリングする場合において、ソース/ドレイン電極物質層をゲッタリングサイトとして用いることで、工程を単純化することができるともに、前記半導体層に残存する金属触媒量を減少して電気的特性の優れたボトムゲート方式の薄膜トランジスタ、その製造方法及びこれを備えた有機電界発光表示装置(Thin film transistor、fabricating method for the same、and organic light emitting diode display device comprising the same)に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、多結晶シリコン層は、高い電界効果移動度を有し、高速動作回路に適し、CMOS回路構成ができるという長所から薄膜トランジスタ用半導体層の用途に用いられている。このような多結晶シリコン層を用いた薄膜トランジスタは主にアクティブマトリックス型液晶ディスプレイ装置(AMLCD)の能動素子と有機電界発光素子(OLED)のスイッチング素子及び駆動素子に用いられる。
【0003】
前記非晶質シリコンを多結晶シリコンに結晶化する方法は、固相結晶化法(Solid Phase Crystallization)、エキシマレーザ結晶化法(Excimer Laser Crystallization)、金属誘導結晶化法(Metal Induced Crystallization)及び金属誘導側面結晶化法(Metal Induced Lateral Crystallization)などがあり、固相結晶化法は非晶質シリコン層を、薄膜トランジスタを用いるディスプレイ素子の基板を形成する物質であるガラスの変形温度の約700℃以下の温度で数時間ないし数十時間の間アニーリングする方法であって、エキシマレーザ結晶化法はエキシマレーザを非晶質シリコン層に走査して超短時間に局所的に高い温度で加熱して結晶化する方法であり、金属誘導結晶化法はニッケル、パラジウム、金、アルミニウムなどの金属を非晶質シリコン層と接触させたり、注入したりして該金属により非晶質シリコン層が多結晶シリコン層に相変化するように誘導させる現象を用いる方法であり、金属誘導側面結晶化法は金属とシリコンとが反応して生成したシリサイドが側面に沿って伝播されながら順に非晶質シリコン層の結晶化を誘導する方法を用いる結晶化方法である。
【0004】
しかし、前記の固相結晶化法は工程時間が長すぎるとともに、高温において長期間熱処理するので、基板が変形しやすいという短所を有しており、エキシマレーザ結晶化法は高価レーザ装置とともに、多結晶化された表面に突起(protrusion)が発生し半導体層とゲート絶縁膜との界面特性が悪いという短所があり、前記金属誘導結晶化法または金属誘導側面結晶化法による結晶化は多量の金属触媒が結晶化された多結晶シリコン層に残留して薄膜トランジスタの半導体層の漏洩電流を増加させる欠点がある。
【0005】
現在、金属を用いて非晶質シリコン層を結晶化する方法は固相結晶化(Solid Phase Crystallization)よりも低い温度で早い時間に結晶化することができるという長所から盛んに研究されている。金属を用いた結晶化方法としては、金属誘導結晶化(MIC、Metal Induced Crystallization)方法、金属誘導側面結晶化(MILC、Metal Induced Lateral Crystallization)方法、及びSGS結晶化(Super Grain Silicon Crystallization)方法などがある。しかしながら、上記の金属触媒を用いた方法の場合、金属触媒による汚染により薄膜トランジスタの素子特性が低下するという問題点がある。
【0006】
金属触媒を用いて非晶質シリコン層を結晶化した後では、前記金属触媒を除去するためのゲッタリング(gettering)工程が実施される。一般的なゲッタリング工程は燐または希ガス(noble gas)などの不純物を用いるか、もしくは多結晶シリコン層上に非晶質シリコン層を形成する方法などを用いて実行される。しかし、上記方法を用いた場合でも、多結晶シリコン層内部の金属触媒の除去が効果的に実施されず、漏洩電流が大きな問題点として残る。
【0007】
また、トップゲート方式の薄膜トランジスタ工程の場合、ゲッタリングサイトが半導体層のチャネル領域と遠く離隔して設計されている場合が多く、ゲッタリング効果が低減されるという問題点があった。
【特許文献1】大韓民国出願公開第2002−0062276号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するものであって、金属触媒を用いて結晶化した半導体層のチャネル領域内に残存する金属触媒をゲッタリングするに当たって、ソース/ドレイン電極物質層をゲッタリングサイトとして用いることで、前記半導体層のチャネル領域に残存する金属触媒量を減少させ、優れた電気的特性を有するボトムゲート方式の薄膜トランジスタ、その製造方法、及びこれを備えた有機電界発光表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基板と、前記基板上に位置するゲート電極と、前記ゲート電極上に位置するゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に位置し、金属触媒を用いて結晶化された半導体層と、前記半導体層上に位置し、ソース/ドレイン領域に電気的に接続するソース/ドレイン電極とを含み、前記ソース/ドレイン電極下部の前記半導体層領域内には前記半導体層の表面から所定深さまで金属触媒と異なる金属または前記異なる金属の金属シリサイドが形成されていることを特徴とする薄膜トランジスタを提供する。
【0010】
また、本発明は、基板を提供する工程と、前記基板上にゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜上に非晶質シリコン層を形成する工程と、前記非晶質シリコン層を、金属触媒を用いて多結晶シリコン層に結晶化する工程と、前記多結晶シリコン層をパターニングして半導体層に形成する工程と、前記半導体層上にソース/ドレイン電極物質層を形成する工程と、前記基板を熱処理して前記半導体層のチャネル領域に存在する前記金属触媒を前記ソース/ドレイン電極物質層と接する領域にゲッタリングする工程とを含むことを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、基板と、前記基板上に位置するゲート電極と、前記ゲート電極上に位置するゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に位置し、金属触媒を用いて結晶化された半導体層と、前記半導体層上に位置し、前記半導体層のソース/ドレイン領域に電気的に接続するソース/ドレイン電極と、前記ソース/ドレイン電極と電気的に接続する第1電極と、前記第1電極上に位置する発光層を含む有機膜層と、前記有機膜層上に位置する第2電極とを含み、前記ソース/ドレイン電極下部の前記半導体層領域内には前記半導体層の表面から所定深さまで異なる金属または前記異なる金属の金属シリサイドが形成されていることを特徴とする有機電界発光表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ソース/ドレイン電極物質層をゲッタリングサイトとして用いることによって、工程を単純化し、半導体層のチャネル領域に残留する金属触媒を除去して漏洩電流などの電気的特性が優れたボトムゲート方式の薄膜トランジスタ、その製造方法及びこれを備えた有機電界発光表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付した図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を詳しく説明する。しかしながら、本発明は、ここで説明する実施形態に限られず、他の形態で具体化されることもある。
【0014】
図1Aないし図1Dは本発明の一実施形態に係る結晶化工程の断面図である。
【0015】
まず、図1Aに示すように、ガラスまたはプラスチックのような基板100上にバッファ層110を形成する。前記バッファ層110は、化学的気相蒸着(Chemical Vapor Deposition)法または物理的気相蒸着(Physical Vapor Deposition)法を用いてシリコン酸化膜、シリコン窒化膜のような絶縁膜を用いて単層またはこれらの複層で形成される。この際、前記バッファ層110は前記基板100から発生する水分または不純物の拡散を防止し、または結晶化時に熱の伝達速度を調節することで、非晶質シリコン層の結晶化が最適に実施されるようにする役割を持つ。
【0016】
次いで、前記バッファ層110上に、アルミニウム(Al)またはアルミニウム−ネオジム(Al−Nd)のようなアルミニウム合金の単一層や、クロム(Cr)またはモリブデン(Mo)合金上にアルミニウム合金が積層された多重層のゲート電極用金属層(図示せず)を形成し、フォトエッチング工程で前記ゲート電極用金属層をエッチングし、後続で形成される半導体層のチャネル領域に対応される部分にゲート電極120を形成する。
【0017】
前記ゲート電極120上にゲート絶縁膜130を形成する。ここで前記ゲート絶縁膜130は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜またはこれらの二重層とすることができる。
【0018】
図1Bは、基板上に非晶質シリコン層140を形成し、前記非晶質シリコン層140上にキャッピング層150と金属触媒層160を形成する工程の断面図である。
【0019】
前記ゲート絶縁膜130上に非晶質シリコン層140を形成する。この際、前記非晶質シリコン層140は、化学的気相蒸着法または物理的気相蒸着法を利用することができる。また、前記非晶質シリコン層140を形成する際、または、形成した後に脱水素処理による水素の濃度を下げる工程を行うことができる。
【0020】
次に、前記非晶質シリコン層140を多結晶シリコン層に結晶化する。本発明では、MICM法、MILC法、またはSGS法などのような金属触媒を用いた結晶化方法を用いて前記非晶質シリコン層を多結晶シリコン層に結晶化する。
【0021】
前記MIC法はニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)などの金属触媒を非晶質シリコン層に接触または注入させ、前記金属触媒により非晶質シリコン層から多結晶シリコン層への相変化が誘導される現象を用いる方法であり、前記MILC法は金属触媒とシリコンが反応して生成されたシリサイドが側面に沿って伝播され順次シリコンの結晶化を誘導する方法を用いて非晶質シリコン層を多結晶シリコン層に結晶化させる方法である。
【0022】
前記SGS法は非晶質シリコン層に拡散する金属触媒の濃度を低濃度に調節して結晶粒の大きさを数μmないし数百μmまでに調節することのできる結晶化方法である。前記非晶質シリコン層に拡散する金属触媒の濃度を低濃度に調節するための一実施形態として前記非晶質シリコン層上にキャッピング層を形成し、前記キャッピング層上に金属触媒層を形成した後、熱処理して金属触媒を拡散させることができ、工程によってはキャッピング層を形成せず、金属触媒層を低濃度で形成することによって拡散する金属触媒の濃度を低濃度に調節することもできる。
【0023】
本発明の実施形態では、キャッピング層150の形成において、MIC法やMILC法に比べて非晶質シリコン層に拡散される金属触媒の濃度を低濃度に制御することのできるSGS方法によって結晶化させることが好ましい。
【0024】
以下、一実施形態としてSGS法について説明する。
【0025】
前記非晶質シリコン層140上にキャッピング層150を形成する。この場合、前記キャッピング層150は後の工程で形成される金属触媒が熱処理工程を介して拡散されるシリコン窒化膜で形成することが好ましく、シリコン窒化膜とシリコン酸化膜の複層を用いることができる。前記キャッピング層150は化学的気相蒸着法または物理的気相蒸着法などのような方法で形成される。このとき、前記キャッピング層150の厚さは1ないし2000Åで形成される。前記キャッピング層150の厚さが1Å未満である場合は前記キャッピング層150が拡散する金属触媒の量を阻止することができず、2000Åを超える場合は前記非晶質シリコン層140に拡散する金属触媒の量が少なくて多結晶シリコン層に結晶化することが困難となる。
【0026】
次いで、前記キャッピング層150上に金属触媒を蒸着して金属触媒層160を形成する。この場合、前記金属触媒は、Ni、Pd、Ag、Au、Al、Sn、Sb、Cu、Tr、及びCdからなる群から選択されるいずれか1つを用いることができ、好ましくはニッケル(Ni)を用いる。この場合、前記金属触媒層160は、前記キャッピング層150上に1011ないし1015atoms/cmの面密度で形成するが、前記金属触媒が1011atoms/cmの面密度よりも少なく形成された場合には結晶化の核であるシードの量が少なくて前記非晶質シリコン層がSGS法による多結晶シリコン層に結晶化することが困難であり、前記金属触媒が1015atoms/cmの面密度よりも多く形成された場合には非晶質シリコン層160に拡散される金属触媒の量が多く多結晶シリコン層の結晶粒が小さくなり、また、残留する金属触媒の量が多くなるため前記多結晶シリコン層をパターニングして形成する半導体層の特性が低下する。
【0027】
図1Cは前記基板を熱処理して金属触媒を、キャッピング層を介して拡散させて非晶質シリコン層の界面に移動させる工程の断面図である。
【0028】
図1Cを参照すると、前記バッファ層110、ゲート電極120、非晶質シリコン層140、キャッピング層150及び金属触媒層160が形成された前記基板100を熱処理170して前記金属触媒層160の金属触媒中の一部を前記非晶質シリコン層140の表面に移動させる。すなわち、前記熱処理170によって前記キャッピング層150を通過して拡散する金属触媒160a、160b中の微量の金属触媒160bだけが前記非晶質シリコン層140の表面に拡散され、殆どの金属触媒160aは前記非晶質シリコン層140に到達できないか、もしくは前記キャッピング層150を通過することができない。
【0029】
したがって、前記キャッピング層150の拡散阻止能力によって前記非晶質シリコン層140の表面に到達する金属触媒の量が決定されるが、前記キャッピング層150の拡散阻止能力は前記キャッピング層150の厚さと密接な関係がある。すなわち、前記キャッピング層150の厚さが厚くなるほど拡散する量は少なくなるので結晶粒の大きさは大きくなり、厚さが薄くなるほど拡散する量は多くなるので結晶粒の大きさは小さくなる。
【0030】
このとき、前記熱処理170工程は200ないし900℃の温度範囲において数秒ないし数時間の間に行われて前記金属触媒を拡散することになるが、上記の温度と時間により実行された場合には過多な熱処理工程による基板の変形などを防止することができるので、製造費用及び収率面からも好ましい。前記熱処理170工程は、炉(furnace)工程、RTA(Rapid Thermal Annealing)工程、UV工程またはレーザ(Laser)工程のうちのいずれか1つの工程を用いることができる。
【0031】
図1Dは拡散した金属触媒により非晶質シリコン層が多結晶シリコン層に結晶化する工程の断面図である。
【0032】
図1Dを参照すると、前記キャッピング層150を通過して前記非晶質シリコン層140の表面に拡散した金属触媒160bにより前記非晶質シリコン層140が多結晶シリコン層180に結晶化される。すなわち、前記拡散した金属触媒160bが非晶質シリコン層のシリコンと結合し金属シリサイドを形成し前記金属シリサイドが結晶化の核であるシード(seed)を形成して非晶質シリコン層が多結晶シリコン層に結晶化することになる。
【0033】
一方、図1Dでは、前記キャッピング層150と金属触媒層160を除去せず、前記熱処理工程を実行したが、金属触媒を前記非晶質シリコン層140上に拡散させて結晶化の核である金属シリサイドを形成した後、前記キャッピング層150と金属触媒層160を除去して熱処理することによって多結晶シリコン層を形成しても構わない。
【0034】
図2Aないし図2Cは、本発明の実施形態に係るボトムゲート方式の薄膜トランジスタを製造する工程の断面図である。
【0035】
図2Aを参照すると、バッファ層110、ゲート電極120及びゲート絶縁膜130が順に積層された基板100上に、図1Aないし図1DのSGS結晶化法により結晶化する工程を介して製造された多結晶シリコン層180をパターニングして半導体層185を形成する。
【0036】
前記半導体層185のチャネル領域として定義される領域に対応するようにフォトレジストパターン190を形成する。次いで、前記フォトレジストパターン190をマスクとして用いて導電型の不純物イオン200を所定量注入してソース領域181、ドレイン領域183及びチャネル領域182を形成する(図2Bに示す)。この場合、前記不純物イオン200にはp型不純物またはn型不純物を用いて薄膜トランジスタが形成されるので、前記p型不純物はホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)及びインジウム(In)からなる群から選択することができ、前記n型不純物は燐(P)、ヒ素As及びアンチモン(Sb)などからなる群から選択することができる。
【0037】
図2Bは、前記半導体層が形成された基板上にソース/ドレイン電極物質層及び熱酸化防止膜が形成された工程を示す図である。
【0038】
前記金属触媒により結晶化された半導体層185を形成した後、次いで、前記半導体層185を含む基板全面にソース/ドレイン電極を形成するソース/ドレイン電極物質層210を形成する。前記ソース/ドレイン電極物質層210はTi、Cr、Mo及びWからなる群から選択された1つまたはこれらの合金で形成されるか、Ti/Al/TiまたはMo/Al/Moの三重層からなることができる。
【0039】
本発明では前記ソース/ドレイン電極物質層210を蒸着した後、後続の熱処理工程を実施して形成される上記半導体層185内の領域を用いてゲッタリング工程を実施する。
【0040】
ゲッタリングのための前記ソース/ドレイン電極物質層210は、前記半導体層185内における結晶化のための前記金属触媒よりも小さな拡散係数を持つ金属またはこれらの合金金属を含むことが好ましい。
【0041】
前記半導体層185内での前記ソース/ドレイン電極物質層210の金属の拡散係数は、前記結晶化のための金属触媒の拡散係数の1/100以下であることが好ましい。前記金属の拡散係数が前記金属触媒の1/100以下の場合、前記ゲッタリング用の金属が前記半導体層185内で前記ソース/ドレイン電極物質層210と接する領域から離脱し前記半導体層210内の他の領域に拡散されることを防止し、前記半導体層185内の他の領域に前記金属または金属シリサイドが位置することを防止させる。
【0042】
半導体層185の結晶化に用いる金属触媒としてはニッケルが広く用いられており、ニッケルの場合は半導体層185内での拡散係数は約10−5cm/s以下なので、ニッケルを金属触媒として用いる場合は、前記ゲッタリング用として用いるソース/ドレイン電極物質層210金属の前記半導体層185内での拡散係数はニッケルの1/100倍以下の値、すなわち、0超過ないし10−7cm/s以下の値を有することが好ましい。この場合、前記ソース/ドレイン電極物質層210は、Ti、Cr、Mo及びWからなる群から選択された1つまたはそれらの合金で形成されるか、もしくはTi/Al/TiまたはMo/Al/Moの三重層からなる。
【0043】
次いで、前記ソース/ドレイン電極物質層210上に熱酸化防止膜220が形成される。前記熱酸化防止膜220はゲッタリングのための後続の熱処理時に熱処理条件によって前記ソース/ドレイン電極物質層210が酸化されたり窒素などのガスと反応して表面が変形されたりすることを防止するためのものであり、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜などで形成される。この場合、後続の熱処理工程を不活性雰囲気で実施する場合には前記熱酸化防止膜220を形成しないこともある。
【0044】
続いて、前記半導体層185に残留している、特に前記半導体層185のチャネル領域182に残留している結晶化のための金属触媒を除去するために熱処理工程を実行する。前記熱処理工程を実行すると、前記ソース/ドレイン電極物質層210と接する前記半導体層185の表面から前記ソース/ドレイン電極物質層210の金属が前記半導体層185のシリコンと結合して金属シリサイドルを形成する。よって、前記ソース/ドレイン電極物質層210と接する領域では前記半導体層185の表面から所定深さまで結晶化のための金属触媒とは異なる金属の金属シリサイドが存在する領域が形成される。また、このとき、前記半導体層185と接する金属層の一部が金属シリサイド層に変化する。
【0045】
前記熱処理工程によって前記半導体層185のチャネル領域182に残留する、結晶化のための前記金属触媒が前記ソース/ドレイン電極物質層210と接する前記半導体層185内の領域に拡散される場合、前記金属触媒は前記領域に沈澱してそれ以上に拡散しない。これは結晶化のための前記金属触媒がシリコン内部に位置するよりも、他の金属シリサイドが存在する前記領域にあるほうが熱力学的に安定するからである。よって、このような原理から前記半導体層185のチャネル領域182に残留する結晶化のための前記金属触媒を除去することができる。
【0046】
このとき、前記熱処理は500ないし993℃の温度の範囲内で実施し、10秒以上10時間以下の時間の範囲内で加熱する。前記熱処理温度を500℃未満とした場合は前記半導体層185で結晶化のための前記金属触媒の拡散が起きず前記金属触媒が前記半導体層185内の前記領域に移動することが困難であり、前記熱処理温度を993℃以上とした場合は金属触媒として用いるニッケルの共融点(eutectic point)が993℃であり、993℃を超える温度ではニッケルが固体状態となって、また高温のため基板の変形が起こりうる。
【0047】
また、前記熱処理時間を10秒未満にした場合には前記半導体層185のチャネル領域182に残留する金属触媒を充分に除去することができず、また前記熱処理時間が10時間を超える場合には長期間の熱処理による基板の変形問題と薄膜トランジスタの生産コスト及び収率の問題が発生する。一方、さらに高温で実施する場合は短時間で加熱しても金属触媒を除去することが可能である。
【0048】
一方、ゲッタリング効果を増大させるために、前記半導体層185のソース/ドレイン領域181、183内にn型不純物やp型不純物をさらに注入することができる。この場合、n型不純物としてはリン(P)が好ましく、p型不純物としてはホウ素(B)が好ましい。または、前記ソース/ドレイン電極物質層210と接して、前記半導体層185のソース/ドレイン領域181、183内にイオンやプラズマを用いてダメージ(damage)領域を形成してゲッタリング効果をさらに増大させることもできる。
【0049】
図2Cは、前記ソース/ドレイン電極物質をパターニングした後にソース/ドレイン電極が形成される工程を示す図である。
【0050】
前記ソース/ドレイン電極物質層210が形成されている基板を熱処理した後、前記ソース/ドレイン電極と接する半導体層185の所定深さまでに金属層または金属シリサイド層を形成した後、前記半導体層185のチャネル領域182が露出されるように、前記ソース/ドレイン電極物質層210をエッチングしてソース/ドレイン電極230a、230bを形成する。
【0051】
前記ソース/ドレイン電極230a、230bでパターニングする際、前記半導体層185のチャネル領域182上部に形成されているゲッタリングの金属層または金属シリサイド層はエッチングされて除去される。
【0052】
ソース/ドレイン電極230a、230bを形成した後でも、ソース/ドレイン電極230a、230bが形成された基板上に前記熱処理を繰り返し、前記ソース/ドレイン電極230a、230bと接する半導体層185内の領域において前記金属触媒をゲッタリングする工程を実施することができる。
【0053】
次いで、図3は本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタを含む有機電界発光表示装置の断面図である。
【0054】
図3を参照すると、前記本発明の実施形態に係る図2Cの薄膜トランジスタを含む前記基板100全面に絶縁膜240を形成する。前記絶縁膜240は無機膜であるシリコン酸化膜、シリコン窒化膜またはシリケートオンガラス(silicate on glass)から選択されるいずれか1つまたは有機膜であるポリイミド(polyimide)、ベンゾシクロブテン系樹脂(benzocyclobutene series resin)またはアクリレート(acrylate)から選択されるいずれか1つで形成される。または、前記無機膜と前記有機膜との積層構造で形成することもできる。
【0055】
前記絶縁膜240をエッチングして前記ソースまたはドレイン電極230a、230bを露出させるビアホールを形成する。前記ビアホールを介して前記ソースまたはドレイン電極230a、230bのうちのいずれか1つと接続する第1電極250を形成する。前記第1電極250はアノードまたはカソードで形成される。前記第1電極250がアノードの場合、前記アノードはITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)またはITZO(Indium Tin Zinc Oxide)のうちのいずれか1つからなる透明導電膜で形成され、カソードの場合、前記カソードはMg、Ca、Al、Ag、Baまたはこれらの合金を用いて形成される。
【0056】
次いで、前記第1電極250上に該第1電極250の表面一部を露出させる開口部を有する画素定義膜260を形成し、該露出された第1電極250上に発光層を含む有機膜層270を形成する。前記有機膜層270には正孔注入層、正孔輸送層、正孔抑制層、電子抑制層、電子注入層及び電子輸送層からなる群から選択される1つまたは複数の層をさらに含むことができる。次いで、前記有機膜層270上に第2電極280を形成する。これで、本発明の一実施形態に係る有機電界発光表示装置が完成される。
【0057】
上述のように、金属触媒を用いて結晶化された多結晶シリコン層に形成された半導体層185において、該半導体層185の領域内に結晶化のための前記金属触媒よりも拡散係数が小さい金属またはこれらの合金を含む金属によりソース/ドレイン電極物質層210を形成し熱処理することで、前記半導体層185のチャネル領域182に残っている金属触媒が除去でき、薄膜トランジスタのオフ電流を著しく低減することができる。上記工程により、前記ソース/ドレイン電極物質層210がゲッタリングサイトとして用いられるだけでなく、パターニング後にソース/ドレイン電極230a、230bとして用いることで、工程を単純化させることができる。
【0058】
上述では、本発明の好ましい実施形態を参照しながら説明したが、当該技術分野の熟練した当業者は、添付の特許請求範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲で、本発明を多様に修正及び変更させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1A】本発明の一実施形態に係る結晶化工程の断面図である。
【図1B】本発明の一実施形態に係る結晶化工程の断面図である。
【図1C】本発明の一実施形態に係る結晶化工程の断面図である。
【図1D】本発明の一実施形態に係る結晶化工程の断面図である。
【図2A】本発明の一実施形態に係るボトムゲート方式の薄膜トランジスタを製造する工程の断面図である。
【図2B】本発明の一実施形態に係るボトムゲート方式の薄膜トランジスタを製造する工程の断面図である。
【図2C】本発明の一実施形態に係るボトムゲート方式の薄膜トランジスタを製造する工程の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタを含む有機電界発光表示装置の断面図である。
【符号の説明】
【0060】
100 基板
110 バッファ層
120 ゲート電極
130 ゲート絶縁膜
140 非晶質シリコン層
150 キャッピング層
160 金属触媒層
170 熱処理
180 多結晶シリコン層
181、183 ソース、ドレイン領域
182 チャネル領域
190 フォトレジストパターン
200 不純物イオン
210 ソース/ドレイン物質層
220 熱酸化防止膜
230a、230b ソース/ドレイン電極
240 絶縁膜
250 第1電極
260 画素定義膜
270 有機膜層
280 第2電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に位置するゲート電極と、
前記ゲート電極上に位置するゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に位置し、金属触媒を用いて結晶化された半導体層と、
前記半導体層上に位置し、ソース/ドレイン領域に電気的に接続されるソース/ドレイン電極と、を含み、
前記ソース/ドレイン電極下部の前記半導体層領域内には前記半導体層の表面から所定深さまでに金属触媒と異なる金属または前記異なる金属の金属シリサイドが形成されていることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記金属触媒と異なる金属または前記異なる金属の金属シリサイドは前記半導体層内で拡散係数が結晶化のための前記金属触媒よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記金属触媒と異なる金属または前記異なる金属の金属シリサイドの拡散係数は前記金属触媒の拡散係数の1/100以下であることを特徴とする請求項2に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項4】
前記金属触媒はニッケルであって、前記金属触媒と異なる金属または前記異なる金属の金属シリサイドの拡散係数は0超過ないし10−7cm/s以下であることを特徴とする請求項3に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記金属触媒と異なる金属または前記異なる金属の金属シリサイドはTi、Cr、Mo及びWからなる群から選択された1つまたはこれらの合金のシリサイドを含むことを特徴とする請求項2に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項6】
前記半導体層はSGS結晶化法によって結晶化されたことを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項7】
前記ソース/ドレイン電極はTi、Cr、Mo及びWからなる群から選択された1つまたはこれらの合金で形成されるか、またはTi/Al/TiまたはMo/Al/Moの三重層で構成されることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項8】
前記金属触媒と異なる金属または前記異なる金属の金属シリサイドが存在する前記半導体層内の領域にn型不純物またはp型不純物がさらに含まれるか、またはイオンまたはプラズマ処理によるダメージ領域をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項9】
基板を提供する工程と、
前記基板上にゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上に非晶質シリコン層を形成する工程と、
前記非晶質シリコン層を、金属触媒を用いて多結晶シリコン層に結晶化する工程と、
前記多結晶シリコン層をパターニングして半導体層で形成する工程と、
前記半導体層上にソース/ドレイン電極物質層を形成する工程と、
前記基板を熱処理して前記半導体層のチャネル領域に存在する前記金属触媒を前記ソース/ドレイン電極物質層と接する領域にゲッタリングする工程と、
を含むことを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項10】
前記ソース/ドレイン電極物質層と接する領域には前記金属触媒と異なる金属または前記異なる金属の金属シリサイドが形成されることを特徴とする請求項9に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項11】
前記金属触媒と異なる金属または前記異なる金属の金属シリサイドは前記半導体層内で拡散係数が前記金属触媒よりも小さいことを特徴とする請求項10記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項12】
前記金属触媒と異なる金属または前記異なる金属の金属シリサイドの拡散係数は前記金属触媒の拡散係数の1/100以下であることを特徴とする請求項11に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項13】
前記金属触媒はニッケルであって、前記金属触媒と異なる金属または前記異なる金属の金属シリサイドの拡散係数は0超過ないし10−7cm/s以下であることを特徴とする請求項12に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項14】
前記金属触媒と異なる金属または前記異なる金属の金属シリサイドはTi、Cr、Mo及びWからなる群から選択された1つまたはこれらの合金のシリサイドを含むことを特徴とする請求項10に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項15】
前記熱処理は、500℃ないし993℃の温度範囲で10秒ないし10時間の間加熱することを特徴とする請求項9に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項16】
前記結晶化は、SGS結晶化法を用いることを特徴とする請求項9に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項17】
前記ソース/ドレイン電極物質層を形成する工程と、
前記基板を熱処理する前に前記ソース/ドレイン電極物質層上に熱酸化防止膜を形成する工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項18】
前記ソース/ドレイン電極物質層と接する前記半導体層の所定領域にn型不純物またはp型不純物を注入するか、またはイオンまたはプラズマを用いてダメージ領域を形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項19】
基板と、
前記基板上に位置するゲート電極と、
前記ゲート電極上に位置するゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に位置し、金属触媒を用いて結晶化された半導体層と、
前記半導体層上に位置し、前記半導体層のソース/ドレイン領域に電気的に接続するソース/ドレイン電極と、
前記ソース/ドレイン電極と電気的に接続する第1電極と、
前記第1電極上に位置する発光層を含む有機膜層と、
前記有機膜層上に位置する第2電極と、を含み、
前記ソース/ドレイン電極下部の前記半導体層領域内には前記半導体層の表面から所定深さまでに前記金属触媒と異なる金属または前記異なる金属の金属シリサイドが形成されていることを特徴とする有機電界発光表示装置。
【請求項20】
前記ソース/ドレイン電極は、Ti、Cr、Mo及びWからなる群から選択された1つまたはこれらの合金で形成されるか、またはTi/Al/TiまたはMo/Al/Moの三重層で構成されることを特徴とする請求項19に記載の有機電界発光表示装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−177120(P2009−177120A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186397(P2008−186397)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【Fターム(参考)】