説明

薄膜トランジスタ

【課題】 有機電界発光型表示装置において、各画素の輝度を均一にする手段として、薄膜トランジスタの特性のばらつきを補償するための薄膜トランジスタを複数配置して電流を制御する技術が挙げられる。しかし、有機電界発光型表示装置においては微弱な電流の制御が必要であり、上記補償による電流の均一化だけでは不十分であった。
【解決手段】 本発明に係わる有機電界発光型表示装置における薄膜トランジスタは、ソース領域7bとドレイン領域7cとを共通にした複数のチャネル領域7aを備えて、かつそのパターン端がテーパー形状に加工されたポリシリコン膜7を備えたことを特徴としており、さらに各チャネル領域7aのチャネル幅Wが5μm以上30μm以下であることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置、特に電流駆動型の表示装置に利用される薄膜トランジスタの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気光学素子としてエレクトロルミネッセンス(以下ELと呼ぶ)素子のような自発光素子を用いた有機電界発光型表示装置が表示パネルのひとつとして一般に用いられるようになってきた。有機電界発光型表示装置としては、装置の表示領域を形成する画素ごとに、発光機能を有する有機発光層を含むEL層と該EL層に電流を流すために該EL層を挟むようにして形成されているカソード電極とアノード電極とからなるEL素子と、該アノード電極に電流を供給するためのEL駆動用薄膜トランジスタ(TFT)が形成される構成が知られている。該EL素子には、EL駆動用TFTからアノード電極を介して供給される電流を流すことにより発光する有機発光層が備えられているため、その電流を調整することにより表示光となる発光の輝度を最適なものとすることができる。
【0003】
このような構成を備えた有機電界発光型表示装置の表示光の輝度は、有機発光層に供給する電流量に依存するため、薄膜トランジスタの閾値電圧などの電気的特性が薄膜トランジスタごとにばらつくと、電流量だけでなく電流量に依存する発光輝度にも影響し、表示特性の低下を招くことになる。つまり、有機発光層へ供給する電流量は非常に小さく、階調表示をする際にはさらに微小な電流を制御する必要があるため、薄膜トランジスタごとの電気的特性のばらつきは致命的な影響を及ぼすことになるのである。そこで、EL素子とEL駆動用薄膜トランジスタを各画素に形成した有機電界効果型表示装置では、EL駆動用薄膜トランジスタの特性にばらつきがあっても、それを補償するための複数の薄膜トランジスタを各画素内に形成することにより、ばらつきによる悪影響を抑制する構造が知られている。(例えば、特許文献1参照。)
【0004】
【特許文献1】特開2002−23697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機電界発光型表示装置において、薄膜トランジスタの電気的特性のばらつきを補償するために複数の薄膜トランジスタを配置することにより表示特性はいくぶん改善されるものの、それだけでは不十分であり、さらに薄膜トランジスタ自体にもばらつきの影響を低減する工夫が必要である。特に、有機発光層に供給する電流量は2μA以下という微小なものであり、その電流量を制御するために配置するEL駆動用TFTや外部からの諧調デジタル電圧を電流に変換するための電圧-電流変換回路部に使用される薄膜トランジスタの特性ばらつきは発光輝度に直接影響し、表示むらとして視認されるため、電流のばらつきを抑制することがより一層要求されている。ここで、これら薄膜トランジスタの駆動は通常、飽和領域にて行われているので、上記のような微小な電流を精密に制御するためには、飽和領域におけるドレイン電流のドレイン電圧依存性が小さい特性が望ましい特性といえる。しかし、従来の薄膜トランジスタの構造では、飽和領域におけるドレイン電流はドレイン電圧に依存してしまうので、たとえば薄膜トランジスタの電流電圧特性がシフトした場合、そのシフトに応じた電流の変化が生じてしまい、発光輝度のばらつきを引き起こしてしまう。
【0006】
本発明は上記問題点を鑑みて、有機電界発光型表示装置において飽和領域で駆動を行う薄膜トランジスタについてなされたものであり、飽和領域におけるドレイン電流のドレイン電圧依存性が小さい特性を有する薄膜トランジスタを提供することを目的とし、さらに薄膜トランジスタ等の電気的特性のばらつきによる電流のばらつきを抑制し、もって有機電界効果型表示装置の各画素における発光輝度を均一化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の薄膜トランジスタは、ゲート電極を共通としながら、チャネル領域が複数に分かれて形成されており、そのチャネル領域の幅であるチャネル幅は5μm以上30μm以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
このような構造とすることにより、本発明にかかる薄膜トランジスタにおいては、飽和領域におけるドレイン電圧に対するドレイン電流の変化が小さい電気的特性を得ることができ、該薄膜トランジスタから有機発光層へ電流の受け渡しを正確に行うことができる。したがって、本発明にかかる薄膜トランジスタを用いた有機電界効果型表示装置においては、各画素を均一な輝度で発光させることが可能となり、良好な表示特性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
実施の形態1について図面を用いて説明する。図1は、この発明の実施の形態1における薄膜トランジスタを示す平面図である。また、図1においてA−Aで示される箇所の断面構造を図2に示し、B−Bで示される箇所の断面構造を図3に示す。これらの図において示される薄膜トランジスタの構造は、絶縁性基板1上に形成された透過性絶縁膜であるSiN膜2やSiO2膜3上層にあって不純物を含んだ導電性領域であるソース領域7bとドレイン領域7c、および前記導電性領域に挟まれるようにして形成されるチャネル領域7aとを有し、その端部がテーパ−形状に加工された半導体膜であるポリシリコン膜7と、さらにそれらを覆うようにしてポリシリコン膜7に接して広がって形成される絶縁層であるゲート絶縁膜5と、前記チャネル領域7aと対向してゲート絶縁膜5の上に形成されるゲート電極6と、それらを覆うようにして形成される層間絶縁膜8と、層間絶縁膜8上にあって層間絶縁膜8とゲート絶縁膜5とに設けられたコンタクトホール9、10を介してそれぞれソース領域7bとドレイン領域7cと接続するように設けられたソース電極11とドレイン電極12とからなるものである。ここで、ポリシリコン膜7の端部にはテーパー形状を形成して、ゲート絶縁膜5が良好に被覆できるように構成しているので、絶縁破壊等の不良を十分抑制することができ、薄膜トランジスタの信頼性の向上に寄与している。また、図示しないが、ここで示した薄膜トランジスタの上部に、ドレイン電極12上を開口した平坦化膜と、ドレイン電極12と接続するようにして平坦化膜上に形成されるアノード電極と、アノード電極上に形成されるEL層とカソード電極とを備えた有機電界効果型表示装置をなすことも可能である。
【0010】
さらに、図1で示すように、ポリシリコン膜7は、ゲート電極6の下でスリット状の開孔部13を3個有している。3個の開孔部13があるために、本発明の実施の形態にかかる薄膜トランジスタは、図3に示すように、共通のゲート電極6の下方にチャネル幅Wを有する4個のチャネル領域7aが並んだ構造になっている。すなわち、本発明の実施の形態1に示す薄膜トランジスタとは、機能的にはゲート電極6と導電性領域であるソース領域7bとドレイン領域7cとを共通にして並列に接続された薄膜トランジスタであることがわかる。ここで、図3に示すように、チャネル幅Wとは各々のチャネル領域7aの平坦部がゲート絶縁膜5と接するトップ側の長さを計った値であり、テーパー形状をなす箇所は含んでいない。また、後述するように、チャネル幅Wは5μm以上かつ30μm以下であるのが好ましい。
【0011】
以下、本実施の形態1に示す薄膜トランジスタの構造が、いかにして本発明の課題を解決する手段となりえるのかについての説明を行う。
【0012】
図4に示すのは、駆動用の薄膜トランジスタと、駆動用の薄膜トランジスタに直列に接続されたEL素子とを模式的に示した図である。図4において、薄膜トランジスタ21からはゲート21a、ドレイン21b、ソース21cが出ており、ドレイン21bにEL素子22が接続されており、ドレイン21bからEL素子22にはドレイン電流23が流れている。ソース21cとドレイン21bとの間の電圧Vdsと、EL素子22に印加される電圧VELとの和である電圧VTは通常、所定の一定な値に維持されているので、図4に示す回路で流れるドレイン電流23を求めるためには通常、図5のようなドレイン電流Id−ドレイン電圧Vd特性図を用いる。
【0013】
図5に示す飽和領域26において、駆動用薄膜トランジスタの特性曲線27とEL素子の特性曲線28との交点である動作点29の位置が、図4の模式図において流れるドレイン電流23を表している。したがって、図5の飽和領域26における薄膜トランジスタ特性曲線27の傾斜が大きい場合、薄膜トランジスタ特性曲線27が少し左右にシフトしただけで、ドレイン電流23が大きく変化することがわかる。最も理想的な特性は、図5の飽和領域26における薄膜トランジスタ特性曲線27の傾斜がフラットな特性であり、このときに薄膜トランジスタ特性曲線27が左右にシフトしてもドレイン電流23の大きさには影響が無いため、薄膜トランジスタ特性のばらつきによる電流値や発光輝度のばらつきという悪影響もないことになる。
【0014】
ここで、図5の飽和領域26における薄膜トランジスタ特性曲線27を外挿し、ドレイン電流が0Aとなるときのドレイン電圧をVaとして、この電圧値Vaを薄膜トランジスタの飽和領域におけるドレイン電圧に対するドレイン電流の変化量を示す指標とすることも可能である。この場合、電圧値Vaの絶対値が大きいほど、飽和領域26における薄膜トランジスタ特性曲線27の傾斜が小さいことを意味し、したがってドレイン電圧に対するドレイン電流の変化が小さいことを意味する。
【0015】
本発明にかかる薄膜トランジスタの効果を確認するために、チャネル領域の幅であるチャネル幅を変えたときのVaを測定した。チャネル幅を変えるために以下の方法を用いた。まず、チャネル幅が100μmである薄膜トランジスタを形成した。次に、ポリシリコン膜7のチャネル領域7aにスリット状の開孔部13を設けることによりチャネル領域を分割し、複数のチャネル領域7aを備えた薄膜トランジスタを作成した。なお、このとき、全てのチャネル領域の幅を足した値がちょうど100μmになるように、チャネル領域1個あたりの幅とチャネル領域の数とを調整した。トランジスタはn型とp型との2種類について作製し、チャネル長は20μmとした。また、印加するゲート電圧は、ソース21cとゲート21aとの間を接続した際のダイオード特性にてソース21cとドレイン21aとの間に流れる電流量がほぼ1μAとなる電圧に調整した。以上の条件で測定を行い、Vaとチャネル領域1個あたりの幅との関係を示したのが、図6と図7である。図6はn型のTFTについて、図7はp型のTFTについての測定結果である。
【0016】
例えば、チャネルを分割しなかった100μmの場合と比較して、チャネル領域を20分割(1個あたりのチャネル幅5μm)した薄膜トランジスタのVaの絶対値はp型トランジスタで約1.4倍、n型トランジスタでは2倍以上の値を示し、薄膜トランジスタの飽和領域26におけるドレイン電圧に対するドレイン電流の変化量が小さくなり、薄膜トランジスタ特性のばらつきによる影響を抑制できていることが確認された。また、上記の効果を得るためにはチャネル領域における一つあたりのチャネル幅Wを30μm以下とすればよいことも図6と図7から確認された。したがって、図3に示すようなチャネル領域一つ当たりの幅であるチャネル幅Wを30μm以下にすることにより、薄膜トランジスタの飽和領域26でEL素子22へ電流を受け渡す際のばらつきを抑制することができるため、各画素を均一な輝度で発光させることが可能となり、表示特性を向上することができるのである。
【0017】
このように、チャネル領域を複数形成して、1つのチャネル領域に流れる電流量を小さくすることで、薄膜トランジスタの飽和領域におけるドレイン電圧に対するドレイン電流の変化が小さい特性を得ることができる。本実施の形態1においては、ポリシリコン膜7に3個の開孔部13を形成することにより、4個のチャネル領域7aを形成する例について説明したが、パターン面積の制約等の状況に応じて、必要な個数だけ形成してもよい。
【0018】
また、これらの複数のチャネル領域7aはソース領域7bとドレイン領域7cを共通にしているので、トランジスタの大きさを必要以上に大きくする必要はなく、効率的にレイアウトすることが可能となる。さらに、ソース領域7bやドレイン領域7cを一体としているため、コンタクトホールを形成する際の面積や配置のマージンも増えるという効果もある。
【0019】
本薄膜トランジスタを有機発光層へ供給する微小電流量を制御する駆動用薄膜トランジスタに用いることにより、薄膜トランジスタの飽和領域におけるドレイン電圧に対するドレイン電流の変化が小さい薄膜トランジスタを得ることができるため、各画素を均一な輝度で発光させることが可能な有機EL表示装置を得ることができる。
【0020】
また、有機EL素子を駆動する薄膜トランジスタだけでなく、薄膜トランジスタをゲート電極およびドレイン電極を接続されたダイオード接続構造を取り、閾値電圧の補正を行う構造を有する薄膜トランジスタに適用することで薄膜トランジスタの特性ばらつきによる表示むらを低減でき、表示特性に優れた表示装置を得ることができる。
【0021】
次に薄膜トランジスタの製造方法について、図8を参照して詳細に説明を行う。図8は本発明に関わる薄膜トランジスタの製造方法について説明するための断面図であり、図1のA−Aに沿った箇所の断面構造を製造工程ごとに示した図である。なお、薄膜トランジスタとしてはn型やp型やそれら両者を組み合わせて構成してもよいが、本実施の形態においては説明を簡単にするため、p型のトランジスタを例にあげて説明をする。
【0022】
図8(A)を参照して、プラズマCVD(chemical vapor deposition)法を用いて、絶縁性基板1の主表面上に、下地絶縁膜となるSiN膜2、SiO2膜3およびアモルファスシリコン膜4を順に形成する。
【0023】
なお、アモルファスシリコン膜4を形成した後、アモルファスシリコン膜4に含まれるH(水素)濃度を低減するため熱処理を実施しても良い。後に続くレーザアニール工程において、アモルファスシリコン膜4中の水素が突沸することによりシリコン膜にクラックが発生することがあるが、この熱処理をレーザアニールの前に行うことにより、そのような不具合を防止できる。
【0024】
続いてエキシマレーザ(波長308nm)のレーザ光をアモルファスシリコン膜4に向けて照射する。この際、レーザ光は、所定の光学系を通過して線状のビームプロファイルに変換された後、アモルファスシリコン膜4に向けて照射される。このレーザアニール工程によって、アモルファスシリコン膜4を多結晶化し、ポリシリコン膜7を形成する。
【0025】
なお本実施の形態では、アモルファスシリコン膜4の多結晶化にエキシマレーザを用いたが、これに限定されるものではない。たとえば、YAGレーザやCWレーザ(continuous-wave laser)を用いても良く、熱アニールを実施しても良い。熱アニールを実施する場合、Ni(ニッケル)などの触媒を使用すれば、より大きい粒径のポリシリコン膜7を得ることができる。
【0026】
図8(B)を参照して、ポリシリコン膜7上にレジストを塗布した後、写真製版工程により所定のパターンを有するレジスト膜14を形成する。図8(C)を参照して、レジスト膜14をマスクとしてポリシリコン膜7をエッチングし、ポリシリコン膜7を図1に示したような所定の形状とした後、レジスト膜14を除去する。なお、チャネル領域7aにおけるスリット状の開孔部13もこの工程で形成する。また、図2でも見たようにゲート絶縁膜5が良好にポリシリコン膜7を被覆するためには、ポリシリコン膜7のパターン端部はテーパー形状となるように形成するのがよく、そのためには、RIE(リアクティブ・イオン・エッチング)モードを用いたレジスト後退法によるドライエッチングを実施するとよい。
【0027】
ここで、チャネル領域7aのチャネル幅Wとポリシリコン膜7のパターン端部のテーパー形状における勾配角度との関係を図9に示す。チャネル領域7aにおいて、一つあたりのチャネル幅Wを5μm未満とすると、ポリシリコン膜7の勾配角度は25°から急激に増大する傾向がみられ、この場合にはゲート絶縁膜5の被覆性に悪影響を与え、薄膜トランジスタの信頼性を劣化させるおそれがある。これは、形成しようとするチャネル幅が狭い場合、レジスト膜14の端部自体がテーパー形状でなく垂直になってしまい、上述のレジスト後退法を用いたエッチングが困難になるためと考えられる。一方、チャネル幅を5μm以上とすると、ポリシリコン膜の勾配角度を25°以下に抑制することができるので、ゲート絶縁膜の被覆性ならびに薄膜トランジスタの信頼性を向上することができる。さらに、チャネル領域におけるひとつあたりのチャネル幅を5μm以上かつ30μm以下とすることにより、信頼性だけでなく、ドレイン電流のドレイン電圧依存性の低減効果によって特性のばらつきの影響を抑制することが可能な薄膜トランジスタを形成することができる。
【0028】
続いてCVD法などを用いて、ポリシリコン膜7が被覆されるように厚さが100nm程度のゲート絶縁膜5を形成する。ゲート絶縁膜5を形成するには、例えば、図8(C)まで処理が完了した基板を真空チャンバ内で約350℃に加熱した状態で、TEOSガスを0.1SLM、O2ガスを5SLM導入し、真空チャンバ内の圧力を150Paになるように制御し、RFパワーを2000W印加してプラズマ放電を生じさせることにより、酸化シリコン膜を堆積してもよい。
【0029】
図8(D)を参照して、スパッタリング法等の方法により、ゲート絶縁膜5上にゲート電極6を形成するための金属膜を成膜する。この金属膜上に、所定の開口パターンを有する図示しないレジスト膜を形成する。そのレジスト膜をマスクとして金属膜をエッチングし、ゲート電極6を形成する。その後、レジスト膜を除去する。ここで形成されたゲート電極6は、図1に示したようにポリシリコン膜7に形成した開孔部13を横切るように構成される。
【0030】
イオンドーピング法を用いて、ボロンを所定のドーズ量でポリシリコン膜7に向けて注入する。このとき、ゲート電極6がマスクとなり、ボロンがポリシリコン膜7の両端に注入されることによって、ポリシリコン膜7に、導電性領域であるソース領域7bとドレイン領域7cとが形成される。また、ゲート電極6がマスクとなることによりボロンが注入されなかった領域は、チャネル領域7aとなる。なお、ここでチャネル領域7aと導電性領域との間に公知のLDD領域を形成してもよい。
【0031】
図8(E)を参照して、ゲート絶縁膜5上に、ゲート電極6を覆う層間絶縁膜8を形成する。続いて、ドーピングしたイオンを活性化するために450℃程度の熱処理を施す。層間絶縁膜8上に所定の開口パターンを有する図示しないレジスト膜を形成する。レジスト膜をマスクとして層間絶縁膜8およびゲート絶縁膜5にエッチングを行ない、ソース領域7bとドレイン領域7cにそれぞれ到達するコンタクトホール9、10を形成する。その後、レジスト膜を除去する。
【0032】
図8(F)を参照して、コンタクトホール9、10をそれぞれ充填するとともに、層間絶縁膜8上に図1に示すような所定の形状を有するソース電極11、ドレイン電極12を形成する。
【0033】
このようにして、本実施の形態1における薄膜トランジスタが完成する。この薄膜トランジスタを有機電界効果型表示装置に適用した場合の効果については既に記載したとおりである。さらに、図8(F)で示した薄膜トランジスタの上部に、ドレイン電極12上を開口した平坦化膜を形成し、ドレイン電極12と接続するようにして平坦化膜上にアノード電極を形成し、アノード電極上にEL層とカソード電極とを形成した後に封止することにより有機電界効果型表示装置を形成することも可能である。
実施の形態2
【0034】
本実施の形態1では、チャネル領域7aに形成したスリット状の開孔部13はゲート電極6を横切るように形成したが、図10に示すように、スリット状の開孔部13はゲート電極6と重なる領域にのみ形成してもよい。図10においては、ゲート電極6の下部に相当する領域には不純物が導入されていないため、複数のチャネル領域7aと一括して接続され、かつ、導電性領域であるソース領域7bあるいはドレイン領域7cとも接続しているチャネル領域連結領域15が存在する点が図1と異なっている。すなわち、複数のチャネル領域7aは、不純物が導入されていないチャネル連結領域15を介して、導電性領域であるソース領域7bあるいはドレイン領域7cと接続されている。本実施の形態2に示す薄膜トランジスタにおいても、本実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0035】
また、本薄膜トランジスタのチャネル長を充分長くすることにより、薄膜トランジスタ特性の飽和領域におけるドレイン電圧に対するドレイン電流の変化量を小さくすることができ、さらにドレイン耐圧が向上して薄膜トランジスタの信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施の形態の薄膜トランジスタを示す平面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態の薄膜トランジスタを示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態の薄膜トランジスタを示す断面図である。
【図4】薄膜トランジスタとEL素子との接続状態を示した回路図である。
【図5】薄膜トランジスタからEL素子への電流の受け渡しを説明するための図である。
【図6】本発明のn型薄膜トランジスタのVaとチャネル幅との依存性を示すグラフである。
【図7】本発明のp型薄膜トランジスタのVaとチャネル幅との依存性を示すグラフである。
【図8】本発明の薄膜トランジスタの製造方法を示す工程ごとの断面図である。
【図9】本発明のチャネル幅に対するポリシリコン膜の勾配角度の関係を示すグラフである。
【図10】本発明の第2の実施の形態の薄膜トランジスタを示す平面図である。
【符号の説明】
【0037】
1:絶縁性基板、2:SiN膜、3:SiO2膜、4:アモルファスシリコン膜、
5:ゲート絶縁膜、6:ゲート電極、7:ポリシリコン膜、7a:チャネル領域、
7b:ソース領域、7c:ドレイン領域、8:層間絶縁膜、
9、10:コンタクトホール、11:ソース電極、12:ドレイン電極、
13:開孔部、14;レジスト膜、15:チャネル領域連結領域、
21:薄膜トランジスタ、21a:ゲート、21b:ドレイン、21c:ソース、22:EL素子、
23:ドレイン電流、26:飽和領域、27:薄膜トランジスタの特性曲線、
28:EL素子の特性曲線、29:動作点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基板上に、
不純物を含んだ導電性領域と前記導電性領域に挟まれているチャネル領域とを含む半導体膜と、前記半導体膜に接して広がって形成された絶縁層と、
前記絶縁層を挟むようにして前記チャネル領域と対向するゲート電極と、
前記導電性領域に接続するソース電極とドレイン電極と、
を備えた薄膜トランジスタであって、
前記チャネル領域は、複数形成されており、
各チャネル幅は5μm以上かつ30μm以下であることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記ソース電極と前記ドレイン電極は、前記絶縁層に開口されたコンタクトホールを介して前記導電性領域に接続されており、前記導電性領域には複数の前記チャネル領域が接続されていることを特徴とする請求項1記載の薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記複数のチャネル領域と前記導電性領域とは、前記複数のチャネル領域と接続するチャネル連結領域を介して接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項4】
前記ドレイン電極およびソース電極は、導電性領域と複数の箇所で接続されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記チャネル領域における半導体膜の勾配角度は、5°以上25°以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに薄膜トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−5395(P2007−5395A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−180994(P2005−180994)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】