説明

薬物送達カプセルの超音波濃縮

化合物の局所的送達のための方法、組成物および装置を提供する。特定の実施形態においては、放射圧を用いて標的部位にキャリアを指向させ、そして、別の放射を用いて限局性キャリアをフラグメント化することにより、会合した化合物を放出する。超音波放射は放射圧およびフラグメント化のための発生源として好ましい。ターゲティングおよびフラグメント化が投与部位の画像化と組み合わせられる実施形態も包含される。キャリアを使用することなく化合物を局所送達する別の実施形態も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国仮出願番号第60/498,405号(2003年8月27日出願)および米国非仮出願番号第10/928,648号(2004年8月26日出願)の優先権を主張し、本明細書によって全ての目的のために、その全体が参考として援用される。
【0002】
(連邦政府による支援を受けている研究または開発に関する記載)
連邦政府は、National Institute of Health(National Cancer Institute)によって授与された、助成金番号2 R01 CA76062−07に従うこの発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
(発明の分野)
本発明は化合物のターゲティングされた送達のために有用な方法、装置および組成物に関する。より詳しくは、本発明は治療薬を含む化合物のターゲティングされた送達のための放射圧の使用に関する。
【0004】
(関連分野の説明)
超音波は内部構造を画像化するための診断手段として医療現場で使用されている。他の画像化の形態よりも優れた超音波の利点は低コスト、持ち運び易さ、および、安全性である。超音波の造影剤は従来技術においてよく知られている。典型的にはこれ等の薬剤は10μm程度またはそれ以下の直径を有する小胞、ガス状のコア、および油脂、脂質、ポリマーまたはタンパク質性のシェルを含む。超音波造影剤は薬剤と周囲の液体の間の音響の相違により音波反射材として機能することによりコントラストを向上させる。
【0005】
超音波の種々の治療上の使用も記載されている。一部の用途は、腫瘍または血管のような構造に対して発熱により破壊する強力な超音波の能力を利用している。このような方法は特異性を欠き、健常組織を損傷する場合がある。
【0006】
他の治療上の超音波の用途は薬剤、核酸等のような治療薬の送達を限局するためにリポソームおよびマイクロバブルのようなキャリアをフラグメント化するための超音波エネルギーの使用を提案している。フラグメント化は浸出するために十分小型の粒子にまでキャリアを破壊することにより特異性を増大させる。例えば腫瘍のような所望の送達部位に超音波エネルギーを集中させることにより、治療薬のより高い局所濃度が達成される。音響的に活性なキャリアの使用により、キャリアの同時可視化が可能となり、これにより診断の支援または確認が行え、そして投与部位の位置決めができる。診断用および治療用の超音波様式を組み合わせることにより、投与を行う医療従事者は所望の投与部位においてキャリアのフラグメント化を確認できるという付加的な利点も生じる。
【0007】
固形腫瘍は、数立方ミリメートルを超える腫瘍容量を支援するために必要な血液供給を樹立するためには、新しい血管の形成、即ち血管形成に依存している。新血管形成された腫瘍は正常組織と比較して漏出し易い毛細管を有する。これは正常な毛細管を通過して溢出するには大型すぎるが漏出し易い毛細管を通過して溢出するには大型すぎないキャリア中で薬剤を投与することにより腫瘍内部に薬剤を濃縮するための根拠となる。治療薬を負荷された超音波造影物質がこの目的のために提案されている。例えば、米国特許5,558,092は診断用および治療用の超音波を実施するための組成物、方法および装置を記載している。治療薬を負荷された造影物質を、診断用超音波を用いて画像化し、所望の領域で蓄積していることが観察されれば、治療用超音波を用いて破壊することにより増強されたキャビテーションまたはその領域への薬剤のターゲティングされた放出を行う。
【0008】
従来技術はキャリアをターゲティングすることによる治療薬のための特異性の向上および毒性の低減を論じている。ターゲティングは例えば投与部位において発現される抗原に結合するように設計されたキャリアの表面上のモノクローナル抗体または他のリガンドを介した、または、電荷の相互作用または他の機序を介したリガンド受容体相互作用を利用している場合がある。このような相互作用はキャリアおよび標的部位が数ナノメートル内にまで接近することを必要とする。
【0009】
従来技術はマイクロバブルのような音響活性キャリアを操作するための超音波エネルギーにより生成した放射圧の使用を論じている。このような操作は血管の端部にキャリアを運搬するため、または、血管内のキャリアの速度を遅延させることにより細胞または生物学的マトリックスへのキャリアの結合を促進するために使用できる。しかしながら、これ等の従来技術は例えば超音波により腫瘍を画像化する能力を増強するためにキャリア上の腫瘍結合リガンドを含めることによるなどして診断の範囲内においてターゲティング剤を伴ったキャリアを含むキャリアの使用に着目していた。
【0010】
今日まで、従来技術は治療(診断ではない)目的のために考案されたターゲティングされたキャリアの超音波操舵の使用により生じる別の利益を認識できないでいた。このようなキャリアは音響的に活性であり、薬物負荷物のような化合物を担持し、そして場合によりターゲティング部分を有するように考案される。本明細書に記載した通り、キャリアを血管の端部に運搬することにより、または、血管内のこのようなキャリアの速度を遅延させることにより細胞または生物学的マトリックスへのキャリアの結合を促進することにより、担持された化合物の局所送達を増強するために超音波を使用する。従来技術はまた、キャリアからの薬剤の放出および/または浸出を増強するために、放射圧を用いた部位へのキャリアの操舵とフラグメント化とを組み合わせることにより生じる別の利益も認識できていない。さらにまた、従来技術は組織透過性を促進するための治療用超音波(ソノポレーション)と操舵およびフラグメント化の組み合わせの使用により生じる別の利益も認識できていない。
【0011】
本発明は以下にさらに詳述する通り、上記およびその他の従来技術の欠点を課題としている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明は後に記載する特許請求の範囲により定義されるものであり、このセクションの何れもそれらの請求項を限定するものではない。本明細書に開示するものは、放射圧を使用した化合物およびキャリアのターゲティングされた送達のための方法、組成物および装置である。
【0013】
従って、本発明の1つの態様は部位にキャリアをターゲティングするために放射圧を使用する方法を包含する。1つの態様において放射圧は超音波放射を用いて発生させる。別の態様においては薬物負荷物のような化合物を担持するようにキャリアを考案する。さらに別の態様において本発明は部位においてキャリアをフラグメント化する方法を包含する。本発明のさらに別の態様において、本発明は上記方法に画像化を組み合わせた方法、並びに部位において組織の透過性に影響するか、他の方法で細胞生理を改変するように薬剤を投与することまたは照射を包含する方法を含む。
【0014】
1つの実施形態において、キャリアはターゲティングをさらに向上させる分子を含む。好ましい実施形態においては、キャリアは音響的に活性であり。例示される実施形態は捕獲された気体を含有する液体および固体の造影剤を包含するが、本発明は液体コアを有するキャリアを使用して実施してもよい。キャリアと周囲の組織または液体との間に音響ミスマッチが存在すれば如何なるキャリアも使用してよい。液体コアを有するキャリアが水溶性薬剤のターゲティングされた送達のためには好ましい。
【0015】
本発明の好ましい変形例においては、ターゲティングは血管壁に沿ってキャリアを濃縮するために放射圧を使用して達成される。別の好ましい変形例においては、ターゲティングは血管内のキャリアの速度を低減するために放射圧を使用して達成される。
【0016】
さらにまた、本発明は部位において組織の透過性に影響するか、他の方法で細胞生理を調節するように薬剤を投与することまたは照射により標的部位において組織の透過性または細胞生理を改変することによるキャリアを伴わない化合物のターゲティングされた送達の方法を提供する。好ましい実施形態においては、組織は血管または腫瘍を包含する。別の好ましい実施形態においては、投与された照射は超音波照射である。さらに別の好ましい実施形態においては、薬剤はブラジキニン受容体活性またはP−gp活性を調節する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
慨すれば、そして後により詳述する通り、本明細書に記載するものは、投与された化合物の薬効を向上させ、毒性を低減するための方法、組成物および装置である。向上点は例えば超音波照射により生成したもののような放射圧を使用して血管壁面、腫瘍内または他の所定の部位のような標的部位にキャリアを濃縮することにより実現できる。キャリアが標的部位において濃縮された後、キャリアは場合により破壊されてキャリアフラグメントの浸出を促進するか、または別の方法によりキャリアと会合した化合物の放出を促進する。好ましくは、キャリアをフラグメント化するために十分な周波数および圧力でキャリアをインソネート(insonate)することにより破壊を達成する。放射圧によりキャリアを操作するために必要なパラメーターの詳細はキャリアの挙動を予測するために有用なモデル内、およびモデルに関してさらに記載する。
【0018】
現在の手法の幾つかの特徴に留意しなければならない。ターゲティングされた所定の様式のキャリアの局所性または速度に影響するための放射圧の使用、キャリアのフラグメント化、標的部位のキャリアの画像化、組織の透過性または生理学的特徴に影響するための薬剤または放射の適用は全て、本発明の範囲内に包含されるものとする。さらに、本発明はキャリアを用いた製剤により化合物の特異性を向上させ毒性を低減するための技法の使用を意図する。本発明のこれ等の方法の好ましい態様において、超音波放射を用いてターゲティングされた領域における血管の透過性を調節し、これにより投与された化合物の浸出および吸収を促進する。本発明のこの態様において使用される化合物は何れかの治療または診断用の物質、例えば小分子、ペプチド、核酸およびこれらの合成および半合成のアナログを含んでよいがこれらに限定されない。
【0019】
本手法の利点は多数ある。利点としては、投与化合物の向上した特異性および低減した毒性、および、広範な種類の医学的症状、特に、癌、心臓血管疾患および炎症性障害、例えば慢性関節リューマチおよびクローン病の治療の必要な対象に対する向上した治療結果が挙げられる。
【0020】
本発明は医学的症状を診断および/または治療する目的のためのキャリアを伴うか伴わない生理学的に活性な化合物のような化合物を投与することが有利であり診断上または治療上の用途のために有用である。
【0021】
(定義)
特許請求の範囲および明細書で定義する用語は特段の記載が無い限り以下の通り定義する。
【0022】
「軽減する」という用語は疾患の状態または症状、例えば慢性または急性の疾患の状態または症状の治療における何れかの治療上有益な結果、例えば、その予防、重症度または進行度の低下、緩解または治癒を指す。
【0023】
「哺乳動物」という用語は本明細書においては、ヒトおよび非ヒトの両方を包含し、例えば非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ネズミ、ウシ、ウマおよびブタを包むがこれに限定されるものではない。
【0024】
「十分な量」という用語は所望の作用をもたらすのに十分な量、例えば領域を画像化するのに十分な量を意味する。
【0025】
「治療有効量」という用語は疾患の症候を軽減するのに効果的な量である。予防は治療と考えられることから、治療有効量は、「予防有効量」とすることができる。
【0026】
「キャリア」という用語は音響放射圧により濃縮できる気体コアを伴うか伴わないポリマー、タンパク質、脂質、油脂など何れかの粒子を指す。
【0027】
「アプタマー」とはタンパク質または代謝産物のような特定の標的分子に結合できる合成オリゴヌクレオチドの型である。
【0028】
「血管に投与する」という表現は直接または遠隔での投与(即ち直接血管内に、および薬剤が直接投与されている血管と流体連絡している血管内への投与)を包含する。
【0029】
「バソポレーション」という用語は、超音波によるインソネーションに二次的な血管透過性の機械的増大、または、超音波を用いることにより局所的に達成される血管透過性の化学的増大の何れかを指す。
【0030】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する場合は、特段の明確な記載が無い限り、単数表記「a」、「an」および「the」は複数表記を包含するものとする。さらにまた、表示した範囲は特段の明確な記載が無い限り範囲の境界となるパラメーターを包含するものとする。例えば1と10の間と表記された範囲は特段の明確な記載が無い限り1および10を包含するものとする。
【0031】
(本発明の方法および装置)
(背景)
マイクロカプセル薬物送達。多くの腫瘍用薬物は腫瘍細胞系統以外に正常組織に対しても毒性である。一般的な化学療法剤であるパクリタキセルはその低い水溶性のためクレモフォア(Cremophor)中に可溶化しなければならない。クレモフォアも高毒性であるためこれは望ましくない。この全身毒性のため、抗腫瘍剤を罹患領域に直接投与することが望まれている。Unger等のInvest.Radiol.33(12):886−892(Dec.1998)は、パクリタキセルを、油脂シェルを有する薬物送達カプセルに懸濁でき、そして、脳腫瘍に対抗してパクリタキセルの局所送達が効果的となりえることを明らかにしている。この薬物送達カプセルは直径数ミクロン程度のマイクロバブルであり、化合物を含有する多層シェルを有する。アコースティブリーアクティブリポスフェア(AAL、ImaRx Therapeutics)のような現在のマイクロカプセル薬物送達ベヒクルの作用機序は血流中への注射、その後の高強度音響パルスを用いた目的部位における破壊を包含する。この破壊によりカプセルの内容物(薬物)が目的の部位において送達される。現在、この技法は臨床治験中である。
【0032】
さらにまた、多くの新しい抗血管形成剤が開発中であり、そのうち内皮細胞に直接作用する9薬が臨床治験中である。これ等の薬物は内皮細胞特異的シグナリングまたは内皮細胞機能を抑制し、その結果腫瘍に作用する。単一の内皮細胞は多くの腫瘍細胞に栄養を供給するため、単一の内皮細胞の活性を抑制することは大きな作用を有する。マイクロカプセル薬物送達を用いれば、より高用量の薬物を腫瘍近傍の内皮細胞に送達できる。さらにまた、研究者等はマイクロバブルと組み合わせた超音波はラットにおいて毛細管の破壊をもたらし、その結果間質空隙内への赤血球の浸出をもたらすことを明らかにしている。例えばSkyba et al.,Circulation 98(4):290−293(July 1998);Price et al.,Circulation 98(13):1264−1267(September 1988)を参照。マイクロバブル薬物送達キャリアは増大した内皮透過性をもたらし、同時に化学療法剤を放出し、従って強力な治療手段となりえる。例えばWheatley et al.,Mat.Res.Soc.Symp.Proc.550:113−118(1999)を参照。さらにまた、研究者等は遺伝子送達のためのマイクロバブル剤の利用を示している。例えばWickline and Lanza,J.Cell.Biochem.Suppl.39:90−97(2002)を参照。
【0033】
超音波放射圧−超音波は媒体のものとは異なる音響インピーダンスを有する媒体中の対象に対して呈される放射圧をもたらす。一例は血液中のマイクロバブルであるが、当業者の知る通り、超音波放射圧は非気体キャリアに対しても発してよい。本発明者等はインビトロおよびインビボにおいてマイクロバブルを濃縮する放射圧の能力を示している。Dayton et al.,Ultrasound in Med.&Biol.,25(8):1195−1201(1999)。5MHz中央周波数、10kHzパルス反復周波数(PRF)および800kPaピーク圧における超音波変換器はインビボの血管壁に対してマイクロバブルを濃縮し、これ等の流動物質の速度を桁単位で低減することがわかっている。しかしながら、今日まで、薬物送達キャリアを濃縮するための放射の適用は示されておらず、また放射圧誘導濃縮とキャリアフラグメント化の複合的作用も示されていない。
【0034】
ソノポレーション−ソノポレーションと命名された細胞および血管の透過性を改変するための超音波(マイクロバブルの存在下または非存在下)の機械的作用は現在では十分に確立されている。特定の音響パラメーターを有する超音波の適用は細胞の透過性を増大させる。
【0035】
超音波的に破壊されるマイクロバブル薬物送達は新しい考えであり、これはなお研究治験中である。初期の結果は期待できるものであり、この技術は明確な臨床的影響を与える可能性を有する。音響放射圧は流体中の粒子に対して作用することがわかっており、最近では薬物送達キャリアを濃縮することが本発明者等により示された。本発明に記載する通り、破壊の前に目的部位において薬物送達カプセルを濃縮する能力は、超音波破壊薬物キャリアの治療効果を顕著に増加させる。ソノポレーションのための超音波の適用はさらにマイクロバブルのようなターゲティングされたキャリアの治療送達にも寄与する。
【0036】
1つの態様において、本発明は本発明の実施において音響活性ベシクルおよびキャリアとして有用な他の粒子のようなキャリアの有効性を増大させる超音波放射圧を提供する。放射圧は血管の壁に沿ってキャリアを「押し付ける」か濃縮するために使用する。小血管においては、細胞またはキャリアのような粒子は側面に沿うよりはむしろ血管中心に沿って流動する傾向がある。キャリアを血管壁に沿って濃縮することにより、キャリア会合化合物のより大きい比率が、特にキャリアの破壊、振動またはフラグメント化(包括的に本明細書においてはフラグメント化と称する)により、内皮に、または内皮を経由して送達される。
【0037】
さらにまた、本発明はターゲティングされたキャリアの送達を支援するための放射圧の使用を包含する。ターゲティングされたキャリアは内皮細胞上で発現される疾患の分子シグネチャーに特異的なカプセル壁に組み込まれた接着機序を有する。利用可能な接着機序は数ナノメートルの距離で作用するため、このような接着が起こるためには血管壁に沿って薬物送達ベヒクルを限局することが重要である。血流の方向に直角に、またはこれに対抗して生じた放射圧は流体中を流動する粒子の速度を低下させる。即ち、別の態様において本発明はターゲティングされたキャリアの送達を支援するために放射圧を使用するが、その理由は、より遅く移動する粒子は内皮または他の表面上において接着機序と相互作用する機会がより大きいためである。
【0038】
本発明はさらに、使用者等が投与を受けた領域を観察できるようにするための超音波画像化、および、場合により標的領域における細胞の透過性を増大させるためのソノポレーションと協同した放射圧の使用を包含する。本提案においてやはり記載されるものは、超音波を用いてマイクロカプセル送達ベヒクルを送達するために特に考案されたシステムである。
【0039】
1つの態様において、本発明は以下の好ましい様式において所望の部位における薬物または他の物質の送達を増強するために超音波およびキャリアを使用する。
【0040】
1.放射圧を発生させキャリアを濃縮するための超音波、例えば中心周波数約0.1MHz−40MHz、および低音響圧、例えば約20kPa−6MPa、および、長パルス長(例えば約>10サイクル)または短パルス長(例えば約<10サイクル)および高パルス反復周波数(例えば約>500Hz)の超音波。特異的パラメーターは後に詳述する通りキャリアの選択に応じて異なり、そして本開示の利益を有する当業者により容易に決定できる。
【0041】
2.放射圧を発生させキャリアの流動速度を低減するための超音波、例えば中心周波数約0.1MHz−40MHz、および低音響圧、例えば約20kPa−6MPa、および、長いサイクル長(例えば約>10サイクル)または短いサイクル長(例えば約<10サイクル)および高パルス反復周波数(例えば約>500Hz)の超音波。この場合も、特異的パラメーターは後に詳述する通りキャリアの選択に応じて異なり、そして本開示の利益を有する当業者により容易に決定できる。
【0042】
3.上記の超音波パルスシーケンス、その後、キャリアが放射圧による濃縮時に破壊される高音響圧、例えば約0.3MPa〜20MPaの短パルス(例えば約<10サイクル)。上記した通り、選択される特定のパラメーターは後に詳述する通りキャリアの選択に応じて異なり、そして本開示の利益を有する当業者により容易に決定できる。
【0043】
4.上記1、2または3または何れかの組み合わせの記載に従った音響放射圧の発生のために特に設計された超音波変換器の組み合わせ。
【0044】
5.上記1、2または3または何れかの組み合わせの記載に従った音響放射圧の発生のために特に設計された単一の超音波変換器。
【0045】
6.放射圧薬物送達を画像化と同時に行うために設計された超音波システム。
【0046】
7.バソポレーションと放射圧薬物送達を同時に行うために設計された超音波システム。
【0047】
8.上記技法の何れかの組み合わせ。
【0048】
本発明の好ましい実施形態においては、診断または治療を要する対象は好ましくは化合物を負荷されたキャリアの注射を受ける。好ましくは、対象は哺乳動物、より好ましくはヒトである。化合物は好ましくは例えば薬物、核酸または他の治療薬のような治療薬を含む。超音波変換器を同時に、または直後に、例えば腫瘍または炎症関節または血管患部のような送達部位上に位置づける。超音波スキャナのパルスシーケンスは放射圧のバーストをもたらし、これにより所望の部位において血管壁に向けて流動キャリアを変位させる。ターゲティングされた部位においてキャリアを破壊し、ターゲティングされた部位において薬物を放出する高音響圧破壊パルスに放射圧発生パルスが散在している。
【0049】
細胞および血管の透過性を改変する超音波(マイクロバブルの存在下または非存在下)の機械的作用は現在では十分解明されている。さらに、ターゲティングされた薬物送達ベヒクルおよび音響活性化可能なベヒクルが開発され、特性化されており、その挙動を予測するためのモデルも開発されている。これ等の開発をもたらす超音波システムは本発明の方法の利点を実現するために本発明により提供される。
【0050】
1つの態様において、本発明は画像化と薬物送達を組み合わせるためのシステムを提供する。システムは以下の要素を含む。
【0051】
1.システムは3次元の容量を介して画像化フレームをスイープすることができる。画像化フレームは典型的な臨床中心周波数(例えば約2〜20MHz)および典型的な音響圧(例えばメカニカルインデックス、即ちMI<1.9)よりならなければならない。
【0052】
2.さらにまたシステムは画像化パルスと治療パルスを交互に配置している。これ等の治療パルスは以下の通り数種の形態をとりえる。
【0053】
a.気体並びに油脂または液体を含有するベヒクルの場合は、より低い周波数のパルス(例えば中心周波数約0.1MHz〜20MHz)の使用をベヒクルのフラグメント化に適用できる。このフラグメント化の利点は血管から容易に浸出するのに十分小型である粒子が形成されるか、或いは、小型粒子がピノサイトーシスに付されるという点である。この過程が目的の三次元領域全体にわたって反復される。この過程は好ましくは血管がキャリアを再充填する度毎に反復される。通常は最重点に要する時間は約5〜20秒程度である。過程は好ましくは注射されたベヒクルの総容量が所望の部位に送達されるまで反復する。この時間は上記した画像化パルスを用いて決定できる。
【0054】
b.リガンドまたは所定の電荷分布のようなターゲティング機序を含むか、または放射圧の影響を受けやすいベヒクルの場合は、治療システムは目的の細胞にキャリアリガンドまたは電荷を接触させるためにこの力を適用する能力を有する。この目的を達成するためには画像化用または治療用のアレイは低強度(例えば<800kPa)長(例えば>10サイクル)のパルストレインを3次元容量内の各領域に送信する。この放射圧シーケンスは好ましくは画像化パルスと交互となるか、または、好ましくは治療パルスより前になる。治療パルスに関する操作の典型的な中心周波数は約100kHz〜約40MHz程度となり、より好ましくは約1MHz〜20MHzである。
【0055】
c.目的の領域にさらに薬物を送達するためには、「バソポレーション」をもたらす治療シーケンスを送信しつつ、マイクロバブル系または他の化合物を血管に充填する。このシーケンスにおいては、中心周波数約0.1MHz〜5.0MHz、より好ましくは約0.75MHz〜1.5MHzの治療パルスを約0.1MPa〜10.0MPa、より好ましくは約0.75MPa〜2MPaの強度で治療容量内の各領域に適用する。これ等の治療パルスは好ましくは画像化パルスと交互とする。これ等のバソポレーションパルスの適用の後、または同時に、この改変された血管を通過して浸出する薬物を単独またはキャリアと共に投与する。
【0056】
即ち本発明は個別または組み合わせにおいてa、bまたはcに記載した治療のストラテジーと共に画像化を実施するシステムを意図している。従って本発明により提供されるシステムは以下の態様を包含する。
【0057】
1.変換器−組み合わせられた画像化および治療用の変換器を提供する。1つの実施形態において、変換器は1.5Dアレイのために用いられているようにインターフェースの方策を使用し、中心アレイは画像化のため、そして外側アレイは治療パルスのために使用する。このような配置は例えば参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許5,558,092に記載されている。本変換器101の1つの実例は図1にダイアグラムとして示す通りであり、内側画像化アレイ102および外側治療アレイ103を含み、この場合、要素は好ましい実施形態においてはより大型化され、異なるスペーシングを有する。
【0058】
2.変換器を機械的にスキャンすることにより所望の三次元の標的部位を治療および/または画像化してよい。スキャニングは手動で、または、自動的にコンピューター誘導ロボットを用いて、当業者がよく知る通り達成してよい。
【0059】
3.超音波システムのタイミングは画像化と治療パルスのシーケンスが送信できるように調節する。
【0060】
例えば負荷サイクル、パルス長、音響圧および中心周波数のようなパラメーターをさらに変更することは、所望の部位の血管の流速、目的領域の深度、および、キャリアベヒクルの特定の性質に応じて担当者またはシステムにより改変してよい。
【0061】
(本発明の実施に適する組成物)
キャリアおよび化合物を含む組成物は本発明の実施のために特に有用である。好ましい実施形態においては、キャリアは音響的に活性であり、そして化合物は治療上活性である。このようなキャリアおよび化合物は当業者のよく知る通りであり、本開示の利益を有する当業者により予定外の実験をすることなく選択されてよい。有用な組成物の代表例を以下に記載する。
【0062】
捕獲された気体を含有する液体および固体の造影剤は当該技術分野でよく知られており、本発明の実施のために有用である。例えば米国特許4,235,871;4,265,251;4,442,843;4,533,254;4,572,203;4,657,756;4,681,199;5,088,499;5,147,631;5,228,446;5,271,928;5,380,519;5,413,774;5,527,521;5,531,980;5,547,656;5,558,094;5,573,751;5,585,112;5,620,689;5,715,824;5,769,080;EP0122624;EP0727225;WO96/40285;およびWO99/65467を参照でき、これ等の開示内容は全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる。これ等の造影剤により提供されるマイクロバブルは気体マイクロバブルと周囲の液体の間の音響の相違により音波リフレクターとして作用する。
【0063】
化合物はキャリアの脂質コーティングに連結または溶解、または表面下の油脂の層内に付着、または、キャリア自身の内部に捕獲することができる。
【0064】
Ishiharaへの米国特許5,190,766(参照により全体が本明細書に組み込まれる)は薬物が放出される環境の音響インピーダンスとは多く異なる音響インピーダンスを有する液体/ゾルを含有し、そして、薬物が放出される環境において薬物キャリアの使用を容易にする共鳴周波数および散乱/吸収特性のような音響特性を有するマイクロカプセルまたは粒子を選択または生産および使用するための組成物および製造技法を記載している。該特許は薬物を伴った超音波造影剤を負荷し、血管内に注射によりその造影剤を投与し、注射した造影剤の蓄積を、超音波を介して画像化し、そして造影剤内に共鳴を誘導するように設計された周波数において焦点超音波エネルギーを適用することを介して局所部位において造影剤からの薬物の放出を促進するための方法および装置を記載している。
【0065】
Albunex(登録商標)(Molecular Biosystems Inc.,San Diego,CA)は本発明を実施するために有用な別の組成物である。Albunexは超音波心臓図および他の領域において使用されている超音波造影剤であり、微小球よりなり、その95%超が1〜10ミクロンの範囲の直径を有する。目的の化合物をAlbunexのタンパク質コーティング上に吸着させる方法は当業者に周知である。
【0066】
本発明を実施するのに有用な他のキャリアは、Optison(Molecular Biosystems)、Imagent(Aliance Pharmaceuticals)、DMP−115(ImaRx Pharmaceutical)およびBR1(Brasco Imaging)により例示されるマイクロバブルおよび関連する薬物(疎水性または親水性)負荷のための方法の市販の原料;並びに小型非気体多層脂質ベシクルよりなる音響活性リポソーム(Alkan−Onyuksel,et al.,J.Pharm.Sci85:486−490(1996)、参照により全体が本明細書に組み込まれる)および音響活性脂質球(ImaRx Therapeutics)を包含する。
【0067】
Klaveness等の米国特許出願US2002/0102215A1(参照により全体が本明細書に組み込まれる)は身体内の標的部位または構造に対して親和性を有するベクターに場合によりカップリングまたは連結した膜形成界面活性剤の単層により安定化された気体重点マイクロバブルを含むターゲティング可能な診断用および/または治療用の活性剤を開示しており、そして、マイクロバブルの内部に捕獲されるか、安定化膜に結合または取り込まれた治療用化合物の配合を記載している。
【0068】
中空のポリマー造影剤もまた本発明の実施に有用であり、そして、炭酸アンモニウムの固体コアをマイクロカプセル化し、その後これを分解および凍結乾燥により除去することにより形成される。適当なポリマーは好ましくはFDA認可のインビボ分解しやすいもの、例えばポリD,L(ラクチドコグリコリド)(PLGA)である。噴霧乾燥、コアセルベーションおよび溶媒抽出法を使用してよい。理想的には得られる粒子は10μm以下程度の平均粒径を有する。化合物は吸着によりカプセル内に負荷してよい。このような方法は全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれるWheatley, El−Sherif,et al.,Mat.Res.Soc.Symp.Proc.Vol.550:113−118(1999)により詳細に記載されている。
【0069】
本発明の実施のために有用な温度活性化気体前駆体充填微小球はUnger等の米国特許公開US2003/0039613A1に記載されている。同様の開示はUnger等の米国特許6,554,989B1およびUngerの米国特許6,416,740B1に含まれており;本発明の実施に有用な気体充填脂質二層の形成はUnger等の米国特許6,146,657に記載されている。Unger等の米国特許5,770,222は治療用化合物を含む気体充填微小球を含む治療用薬物送達システム、並びに治療用薬物送達用途におけるそれらの使用のための方法を記載している。米国特許5,770,222はまた本発明の実施に適するカプセル化薬物を有するリポソームを包含するリポソームの製造のための方法および装置を記載している。このパラグラフにおいて引用した刊行物および特許は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0070】
Unger等の米国特許公開US2003/0039613A1(全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる)はまた、液体の非混和性のシース内に導入された液体のコアの層流、所定の大きさの細孔を通過する加圧下の押出および同様の方法を用いた押出、濾過、音波処理、均質化を含む粒径を調節するための操作法を記載している。
【0071】
本発明の実施に有用な粒径はキャリアの性質により変動する。一般的に10μm以下程度の直径を有する粒子が好ましい。以下に記載するものは周波数、キャリアの粒径および物理的特性に基づいて圧力および他のパラメーターを選択する場合の当業者の指針として有用なモデルである。粒径は例えばModel770A Accusizer粒径測定器(Particle Sizing Systems,Santa Barbara,CA)を用いて測定してよい。本発明の実施のために特に有用なものは37℃において動粘度が約1mm/秒〜約100mm/秒。または約10mm/秒〜約80mm/秒、または約20mm/秒〜60mm/秒の油脂を含む粒子である。動粘度は例えばKoehler Instrument Co.,Inc.(Bohemia,New York)より入手可能なKV5000Kinematic Viscosity Bathのような装置を用いて計測できる。
【0072】
上記した通り、本発明は部位へのキャリアのターゲティングにおいて支援できるように設計されたターゲティング部分を含むキャリアを用いて実施してよい。このようなターゲティング部分は当該技術分野でよく知られており、本開示の利益を有する当業者により予定外の実験をすることなく選択および組み込まれてよい。ターゲティング部分に関する従来技術の例示される説明を以下に示す。
【0073】
キャリアにターゲティング部分をカップリングさせるために適する方法はHermanson,「Bioconjugate Techniques」, Academic Press:New York,1996;および「Chemistry of Protein Conjugation and Cross−linking」, S.S.Wong,CRC Press, 1993に記載されておりこれ等は全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる。他の適当な方法はKlaveness等の米国特許出願公開US2002/0102215A1のパラグラフ66〜130に記載されている。特定のカップリング方法は2官能性のリンカーの使用、カルボジイミド縮合、ジスルフィド結合の形成、および、特定の結合対の使用を包含し、これは対の一方のメンバーはターゲティング剤上にあり、他方はキャリア上にある、例えばビオチン−アビジンの相互作用が挙げられ、例えばDayton et al.J.Acoust.Soc.Am.112(5):2183−2192(Nov.2002)および参考文献10〜14に記載されている(Dayton et al.および引用文献10〜14は全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる)。
【0074】
荷電リン脂質の使用はそれらが所望により連結単位によりターゲティング部分への連結を可能にするカルボキシルまたはアミノのような官能性の基を含有している点において有利である。
【0075】
ターゲティングされたキャリアを使用する本発明の実施形態を実施するために適する組成物はLindner and Kaul,Echocardiography18(4):329−337(2001)に記載されているような抗原をターゲティングするためのアビジンビオチン架橋を有するものを包含する。初期工程は抗原に対するビオチニル化モノクローナル抗体を投与することを包含し、その後、アビジンを投与し、そして次にビオチニル化リン脂質を含有するマイクロバブルのエマルジョンを投与する。アビジンは抗原を発現する表面とビオチニル化マイクロバブルの間に架橋を形成する。
【0076】
ImaRx Pharmaceutical Corp.,Tucson,AZ,USAにより製造されているMRX−408は本発明の実施のための別の適当な組成物である。MRX−408は血小板IIB/IIIa受容体のRGD結合部位により認識されるマイクロバブル表面にコンジュゲートしたオリゴペプチド配列を有する脂質シェル保有のマイクロバブルである。ペプチドはより多数のリガンド−受容体対を可能にする分子スペーサーであるポリエチレングリコールを介してマイクロバブル表面にコンジュゲートされる。Lindner and Kaul,Echocardiography,330を参照。
【0077】
同様に適するものとしては、全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれるLindner and Kaul,Echocardiography,332、引用文献19、20に記載されているもののような、自身の表面にコンジュゲートしているICAM−1を認識するモノクローナル抗体を用いて製剤されているマイクロバブルおよび音響活性マイクロエマルジョン剤である。これ等の製剤は慢性関節リューマチおよびクローン病のような炎症性疾患の治療において使用するためのICAM−1およびプロ炎症サイトカインのような内皮細胞接着分子の阻害剤を治療用化合物として含んでよい。Lindner and Kaul,Echocardiography,333、引用文献21、23を参照。例示される化合物は抗ICAM−1;CD54抗体(慢性関節リューマチ用);抗TNFモノクローナル抗体+メトトレキセート(やはり慢性関節リューマチ用);およびクローン病用のTNFに対するキメラモノクローナル抗体cA2を含む。
【0078】
同様に適するものとしては、全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれるLindner and Kaul,Echocardiography,333、引用文献26、27に記載のもののような自身の表面にコンジュゲートした腫瘍関連抗原に対するモノクローナル抗体と共に細胞毒性剤を含有する腫瘍に特異的なイムノリポソームである。特定の例は、例えば特定の乳癌、肺癌および卵巣癌の表面上に発現されるHER−2プロトオンコジーンによりコードされる腫瘍抗原p185を包含する。表面にコンジュゲートしたp185の細胞外ドメインに対するFab’を用いて製剤したドキソルビシンを含有するイムノリポソームは全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれるLindner and Kaul,Echocardiography(2001)の引用文献28に記載されている。
【0079】
適当なターゲティング部分およびそれをキャリアに結合させるための方法はLi等の米国特許出願US2002/0071843A1の例えばパラグラフ0109〜0116およびパラグラフ157〜159、および、Klaveness等の米国特許出願公開US2002/0102215のパラグラフ131〜145記載されており、その開示は全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0080】
その他の適当なターゲティング部分はアプタマーおよびペプチドミメティックを包含する。
【0081】
多価の結合は、薬剤の送達後の好都合な時間において画像化を可能とするために十分長時間に渡り結合が持続するように、アビディティーを増強し「オフレート」を低減するために有用である。多価の結合はキャリア当たり1種より多いリガンドを用いて、または、異なる標的に指向されたリガンド−キャリアのコンストラクトの混合物を用いて可能である。
【0082】
本発明は広範な種類の化合物、例えば広範な分子量、化学組成、油/水分配係数等を有する治療用化合物を用いて実施してよい。例示される化合物およびキャリアはLindner and Kaul,Echonocardiography,331に記載されているもののような音響活性マイクロバブル内に非両親媒性の薬物をパッケージングするために特に有用な内側および外側のシェルの間に濃縮された薬物を含有する二層シェル保有マイクロバブルを包含する。同様に、本発明を実施するために有用な化合物の範囲に包含されるものは、核酸、例えばmRNA、cDNA、ゲノムDNA、アンチセンスおよびRNAiであり、これ等の何れも安定性または特異性を変更するために半合成の骨格または合成の核酸をさらに含有していてよい。
【0083】
遺伝子積載のマイクロバブルの音響破壊によるインビボの心筋トランスフェクションが最近報告された。例えばLindner,Am.J.Cardiol.90(suppl):72J−80J(2002)および引用文献36を参照;さらにまたオリゴヌクレオチドがアルブミン−デキストロースのマイクロバブルの表面に結合できることを示しているLindner(2002)の引用文献40、ブタにおけるバルーンカテーテル傷害の後の頚動脈心内膜過形成を減衰させるc−mycプロトオンコジーンに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有するマイクロバブルを示しているLindner(2002)の引用文献41も参照。報告されている組成物の各々は本発明の実施に有用である。これ等の参考文献の各々は全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる
同様に本発明の実施において有用なものは、Unger et al.Invest.Radiol.32:723−727(1997);Shohet et al.,Circulation 101:2554−2556(2000)に記載のバブルシェルまたは内部への直接のDNAの取り込みによるトランスフェクション剤;Lanza et al.J.Am.Coll.Cardiol.19(3 SupplA):114A(1992);Demos et al.,J.Am.Coll.Cardiol.33:867−875(1999)に記載されている内皮インテグリンを特異的にターゲティングするために有用なリフレクティブリポソーム;およびWickline and Lanza,J.Cellular Biochemistry Supplement 39:90−97(2002)に記載の他のものとしての使用の可能性が明らかになっている安定化気体マイクロバブル造影剤であり、これ等は全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0084】
別の例示される化合物はUnger等の米国特許公開US2003/0039613A1の例えばパラグラフ0156〜0172に記載されており(全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる)、そして抗新生物剤、ホルモン、駆虫剤、抗マラリア剤および抗結核剤;生物学的物質;ウィルスワクチン;アミノグリコシド;甲状腺薬;心臓血管用医薬;グルカゴン;血液製剤;生物学的応答改良剤;抗カビ剤;ビタミン;抗アレルギー剤;循環剤;代謝強化剤;抗ウィルス剤;抗狭心症剤;抗凝固剤;抗生物質;抗炎症剤;抗リューマチ剤;麻薬;アヘン;強心配糖体;神経筋ブロッカー;安定剤;局所麻酔剤;放射性粒子またはイオン;モノクローナル抗体;遺伝子物質;およびプロドラッグを包含する。
【0085】
(本発明の医薬組成物)
種々の疾患の治療方法もまた本発明に包含される。本発明のこのような方法はキャリアおよび化合物、または、別の実施形態においてはキャリアを伴わない化合物の治療有効量を投与することを包含する。本発明の実施に有用なキャリアおよび化合物は医薬組成物に製剤できる。これ等の組成物は化合物および任意のキャリアのほかに、製薬上許容しうる賦形剤、増量剤、緩衝剤、安定化剤または当業者に周知の物質も含むことができる。このような物質は非毒性でなければならず、そして化合物の薬効を妨害してはならない。キャリアおよび他の物質の厳密な性質は投与経路、例えば経口、静脈内、皮内または皮下、経鼻、筋肉内、腹腔内経路などにより変動する。本発明の実施においては、好ましい投与経路は例えば血管内、リンパ内、非経腸、皮下、筋肉内、鼻内、直腸内、腹腔内、間質、気道内、経口、局所、腫瘍内を包含する。例えばUnger等の米国特許公開2003/0039613A1のパラグラフ0202を参照。
【0086】
経口投与用の医薬組成物は錠剤、カプセル、粉末または液体形態であってよい。浄財はゼラチンまたはアジュバントのような固体キャリアを含むことができる。液体医薬組成物は一般的には水、石油、動物性または植物性の油脂、鉱油または合成油のような液体キャリアを含む。生理食塩水、デキストロースまたは他の糖溶液またはグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールを含有できる。
【0087】
静脈内、皮内または皮下注射、または罹患部位への注射のためには、活性成分は発熱物質非含有で適当なpH、等張性および安定性を有する非経腸的に許容される水溶液の形態となる。当業者であれば例えば等張性のベヒクル、例えば注射用塩化ナトリウム液、注射用リンゲル液、注射用乳酸加リンゲル液を用いて適当な溶液を調製できる。保存料、安定化剤、緩衝液、抗酸化剤および/または他の添加剤を必要に応じて含むことができる。
【0088】
対象に与えるべき本発明のポリペプチド、抗体、核酸、小分子または他の薬学的に有用な化合物の何れにもかかわらず、投与は好ましくは「治療有効量」または「予防有効量」(予防は治療である場合があるため、事情に応じて)において行い、これは対象に利益を呈するのに十分なものである。投与する実際の量、および投与の比率および日程は治療すべき症状の性質および重症度に応じて変動する。投与の組成、例えば用量、時期等の決定は一般的担当者および他の医師の責任の範囲内であり、典型的には治療すべき疾患、対象の症状、送達の部位、投与方法および担当者の知る他の要因を考慮する。上記した技法およびプロトコルはRemington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,Osol,A.(ed),1980に記載されている(全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる)。
【0089】
組成物は治療すべき症状に応じて単独、または、同時または逐次的に他の治療と組み合わせて投与できる。
【0090】
(放射源およびパラメーター)
キャリアの変形、中心周波数、圧力、パルス長およびインソニファイされたキャリアの基本および倍音の共鳴周波数の間の関係は例えばDayton et al.J.Acoust.Soc.Am.112(5):2183−2192(Nov.2002)に記載されている(全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる)。これ等の関係に関するその他の説明は後述する実施例において記載する。
【0091】
本発明の実施に有用な超音波システムは超音波の送達および画像化のためのフェイズドシステムアレイ(HDIc000cv、Advanced Technologies Laboratories)、Unger等の米国特許5,558,092に記載のシステムを包含し、そして、皮膚および他の表面組織に好ましい外部適用を包含してよいが、深部構造のためには間質プローブまたは血管内超音波カテーテルを介した音エネルギーの適用が好ましい。
【0092】
画像化、フラグメント化および操舵(例えば放射圧による)を統括する物理は本開示の利益を有する当業者が十分理解できるものである。例えば、倍音の発射はインソネートされたベシクル(通常は入射治療用超音波の2X周波数)から発せられ、そしてそのような倍音発射は例えば画像化に有用であることはよく知られている。Unger等の米国特許5,770,222に記載されている通り、本発明の実施に有用な微小球は約0.5MHz〜約10MHzにピーク共鳴周波数を有する。当然ながら、気体充填微小球のピーク共鳴周波数は直径、および、ある程度は微小球の弾性および可撓性により変動し、微小球の弾性または可撓性が大きいほど低弾性または低可撓性微小球よりも低い共鳴周波数を有することになる。
【0093】
本発明の実施に有用な微小球キャリアのフラグメント化または破壊は、治療の必要な対象の領域に対し、キャリアが投与された後か他の方法でその領域に到達した後に、特定の周波数の超音波を適用することにより容易に実施される。化合物含有気体充填微小球キャリアのピーク共鳴周波数に相当する周波数で超音波を適用すると、微小球は破壊され、そして、その内容物を放出する。
【0094】
ピーク共鳴周波数はインビボまたはインビトロの何れかにおいて当業者により決定できるが、好ましくはインビボにおいて微小球を超音波に曝露し、反射共鳴周波数を受信し、そして、従来の手段を用いて受信シグナルのスペクトルを分析してピークを求めることにより行う。このようにして求められたピークはピーク共鳴周波数(または場合により呼称される通り第2の倍音)に相当する。
【0095】
気体充填微小球キャリアはまたより高い強度(ワット数)および持続性(時間)と組み合わせられた非ピーク共鳴周波数の超音波に曝露された場合も破壊される。しかしながらこのより高値のエネルギーは大きく増大した加熱をもたらし、これは望ましくない。ピーク共鳴周波数にマッチするようにエネルギーの周波数を調節することにより、破壊および治療薬放出の効率が上昇し、明らかな組織の加熱は一般的に起こらず(約2℃を超えた温度上昇は起こらない場合が多い)、そして、全体的に必要となるエネルギーの量が低減する。即ち、ピーク共鳴周波数における超音波の適用は、必須ではないが最も好ましい。
【実施例】
【0096】
本発明を実施するための特定の実施形態の例を以下に記載する。実施例は説明を目的としているのみであり、本発明の範囲の如何なる限定も行わない。使用した数値(例えば量、温度等)に関しては正確さを確保するように努めたが、一部の実験的誤差および偏移が当然ながら許容されるべきである。
【0097】
本発明の実施は特段の記載が無い限り、当業者の知るタンパク質化学、生化学、組み換えDNA技法および薬理学の従来の方法を使用する。このような技法は文献に十分記載されている。例えばT.E.Creighton, Proteins:Structures and Molecular Properties (W.H.Freeman and Company,1993);A.L.Lehninger,Biochemistry(Worth Publishers,Inc.,current edition);Sambrook, et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual (2nd Edition, 1989);Methods In Enzymology (S.Colowick and N.Kaplan eds.,Academic Press,Inc.);Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Edition (Easton, Pennsylvania: Mack Publishing Company,1990);Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3rd Ed.(Plenum Press)Vols A and B(1992)を参照できる。
【0098】
(序論)
多くの期待できる研究によれば、治療すべき領域を特定するため、および、送達ベヒクルの流入をモニタリングするために使用される超音波画像化を用いて目的領域に薬物を局所送達するために超音波増強薬物送達ベヒクルを使用できることを示している。本発明者等はまず薬物送達ベヒクルを血管壁に偏向させ、次にその部位においてベヒクルを破壊する放射圧パルスシーケンスを開発した。薬物送達ベヒクルは目的の薬物を含有する肥厚したシェルの内部に小容量の気体を取り込ませることを介して超音波放射圧により操作できるように考案することができる。本発明者等は、ベヒクルが超音波造影剤と同様の特性を有するが、500nm程度の肥厚したシェルを有するように音響活性脂質球(AAL)として考案した。この場合、本発明者等は油性のシェルを想定しているが、多くの他の可能性もある。超音波造影剤は典型的には脂質、アルブミンまたはポリマーよりなる薄層のシェルを有する。AALまたは造影剤の内部にこの小気泡を封入することは多大なる好機をもたらすが、その理由は空気の圧縮性は水の17,000倍であり、血漿と比較した場合に得られる音響インピーダンスのミスマッチが臨床用超音波圧において身体内で単一の気体充填ベヒクルを検出または操作する機会を与えるためである。超音波は0.01pL程度でこのような粒子の容量に対して感受性を有する。さらにまた、超音波圧により数十〜数百ナノメートル程度の粒子をもたらすミクロンサイズの球のフラグメント化が起こり、そしてこれ等の粒子が局所的な内皮細胞に付着するようにベヒクルを設計できる。本発明者等は血管脳関門(BBB)を通過して脳内に化学療法薬物を局所的に濃縮する超音波の技法を開発している。これは独特の問題であり、そして、原発および転移の脳腫瘍の生存期間が短期であるため、臨床的には重要である。化学療法は一般的に成功せず、そして腫瘍の外科的減量および放射線療法は患者の生存を6〜12ヶ月延長するのみである。新しい研究試験によれば、ブラジキニンアナログおよびP−糖タンパク質(P−gp)モジュレーターを含む全身用化合物の適用を介して親水性および疎水性の薬物の両方についてBBBの透過性を大きく増大できた。これ等の化合物によりもたらされるBBB透過性の全般的増大の不都合な点は所望の濃度における化学療法剤の同時適用が重度の神経毒をもたらす場合があることである。薬物は所望の領域の内皮細胞の管腔表面に濃縮され、この上昇した濃度は、特に例えばP−pg調節と組み合わせられた場合には腫瘍および脳周囲の腫瘍領域における上昇した薬物濃度を局所的にもたらすため、本発明は上記問題に着目している。即ち、最終的には、目的の領域における内皮細胞への化学療法剤の局所送達に上昇したBBB透過性を組み合わせることにより、本発明の方法は脳腫瘍における化学療法の有効性を大きく向上させるのである。以下に示す実施例は脳への疎水性薬物の超音波増強局所薬物送達を説明するように記載されている。
【0099】
これ等の薬剤の振動のためのモデルが開発されている。さらにまた音響活性リポソーム(AAL)の物理的および音響的な力学に関する本発明者等の研究によれば、これ等の薬剤による所望の応答を得るためには特定の音響パラメーターが必要であることがわかっている。本発明者等は音響場において粒子に作用する放射圧は血管壁に沿って造影剤およびAALを操作して濃縮する独特の能力を有することを明らかにしている。血管壁に沿って限局した粒子は低下した速度で移動し、これにより内皮細胞によるこれ等のベヒクルの捕獲効率をさらに上昇させる。気体コアを含有する薬物送達ベヒクル、即ちキャリアは血管壁に偏向させられ、次にフラグメント化し、極めて小さい局所フラグメントを形成する。これ等のサブミクロンのフラグメントは内皮細胞により取り込まれるか、または細胞外の流体空間内に浸出する。特に、これ等のベヒクルにより放出されたパクリタキセルは膜の脂質相を通過して内皮細胞内に進むことができる。
【0100】
実施例1において、本発明者等はAALに適用される超音波放射圧により生じる変位のためのモデルを開発して評価している。実施例2においては、内皮細胞への蛍光標識パクリタキセルの音響媒介転移を評価している。実施例3においては、P−糖タンパク質ブロッカーの同時投与の存在下または非存在下における脳内で薬物を濃縮するF18標識パクリタキセル含有AALの能力を測定している。
【0101】
(背景および意義)
(脳への局所薬物送達)
多くがナノモル濃度において有効である新しい生物学的に活性な治療薬の開発に伴い、現在のがん治療と比較して治療効果が向上する多くの機会が存在している。さらにまた、超音波増強薬物送達には大きな可能性がある。この手法の1つの大きな利点は画像化が治療と同時に行える点である。説明のために、本発明者等は脳への薬物送達の独特の状況に対する薬物送達の方策を開発しているが、本発明の技法は多くの領域、例えば心臓、炎症および末梢血管の疾患にも適用できる。
【0102】
脳への薬物送達の問題は堅固な内皮細胞の接合およびBBBの多剤耐性の特性のために一部独特の態様を有している。多くの手法は薬物に対するBBBの透過性を増大させると考えられており、数クラスの薬物が送達について検討されている。親油性のパクリタキセルおよび親水性のカルボプラチンのような薬物は有効な応答をもたらすほど十分な濃度を神経膠腫内において達成していない。最近、セレポート(Cereport:RMP−7)が実質的により長い半減期を有するブラジキニンの医薬品アナログとして開発された。RT Bartus et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.293(3):903−11(June 2000)(全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる)。
【0103】
セレポートの投与後、カルボプラチンはセレポートを使用しない場合よりも遥かに高い腫瘍内および脳内の濃度に達したことがわかっている。DF Emerich, et al.,Clin.Pharmacokinet.40(2):105−23(2001)(全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる)。一部の領域は取り込みの数倍増加を示している。この変化の機序はBBBの堅固な接合に対するセレポートの作用と推測される。しかしながら興味深いことにセレポートは親油性薬物パクリタキセルの取り込みを増大しない。この親油性薬物は内皮細胞膜の脂質相を通過して脳内に拡散する。Bartus, et al.2000。
【0104】
パクリタキセルは典型的には、これがP−糖タンパク質(P−gp)により血液内に急速に返送されるため、大部分は脳または腫瘍内部に高濃度を達成しない。P−糖タンパク質は薬物流出ポンプとして機能する170,000ダルトンの膜タンパク質であり、その過剰発現は多剤耐性の表現型における最も一貫した改変の1つである。P−糖タンパク質ノックアウトマウスにおいて脳内へのパクリタキセルの浸透が顕著に増大したことがわかっている。タモキシフェン、バルスポダール(PSC833)、ベラパミル、シクロスポリンAおよびVX−710を含めて、P−gp媒介多剤耐性を克服するための試みにおいて多くの薬剤が研究されている。バルスポダールはセラミドの形成の強化を介して化学療法に対して癌細胞を感受性にすることから、特に興味深い化合物である。セラミドは化学療法誘導アポトーシスの第2のメッセンジャーであるため、バルスポダールは治療用の同時投与に関する特に興味深い標的である。パクリタキセル単独では腫瘍容量に影響しなかったが、パクリタキセル(静脈内)とバルスポダール(経口投与)の同時投与では腫瘍容量は90%低減した。本試験においては、本発明者等は超音波増強薬物送達を使用することによりパクリタキセルの局所的に上昇した濃度をもたらし、そしてP−gpモジュレーターの存在下または非存在下におけるBBB通過の能力について評価する。この大きく上昇した局所濃度はさらに、薬効を増大させ、全身毒性を低下させる。本発明の方法は脳間投与の条件を排除するため対流増強送達よりも優れている。
【0105】
内皮系および上皮系の受容体の両方はAALの局所送達に関して興味深い。多くの新しい、そして特に抗血管形成性の治療は内皮細胞に作用するため、効果的な方策は浸出する薬物送達ベヒクルを必要としない。
【0106】
薬剤濃度の実質的な相違もまた原発および転移の腫瘍の間にあることがわかっており、原発腫瘍では全身投与薬物の濃度がより低くなることがわかっている。本発明の方法は原発の脳腫瘍への薬物送達の特殊で困難な問題を意図している。
【0107】
BBBのインビトロモデル:本試験において使用する細胞培養モデルは血液脳関門および関連する薬物の輸送の多くの試験において大きな価値を有することがわかっている(例えばRD Hurst, et al.,J.Cell. Physiol.167(1):81−88(April 1996);K Takahashi, et al.,In Vitro Cell Dev Biol.26(3Pt1):265−274(March 1990);RC Janzer and MC Raff Nature 325(6101):253−27(Jan 15−21 1987) Jan 15−21;およびGA Grant, et al.,News Physiol Sci.13:287−293(Dec.1998)を参照)(これらの各々は全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる)。ECV304表現型はラットc6グリア細胞と共培養した場合に上昇した経内皮電気抵抗を発生させる。これは内皮細胞を透過性のインサート上において培養する静的な系であり、グリア細胞との近接部はインビボの血液脳関門の特徴の多くを有する堅固な障壁を誘導する。この組み合わせはまたP−糖タンパク質の過剰発現をもたらすこともわかっている。
【0108】
局所送達:局所薬物送達は、長期循環リポソーム、熱活性化リポソーム、巨大分子キャリアおよびここで検討しているAALを含む方法を用いて周囲組織に対する一部の化合物の毒性作用を低減するために長年に渡り検討されてきた(例えばT.Lian, R.J.Y.Ho, Journal of Pharmaceutical Sciences,90(6):667−680(June 2001);T.M.Allen, C.B.Hansen,D.E.Lopes de Menezes, Advanced Drug Delivery Reviews, 16:267−284(1995);Y.Takakura,M.Hashida, Pharmaceutical Research, 13(6):820−831(1996);およびEC Unger, et al. Invest Radiol.33(12):886−892(Dec.1998)を参照)(これらの各々は全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる)。リポソーム、ポリエチレングリコール(PEG)コーティングリポソーム、経皮送達システムおよび「電子輸送技術」を用いた経皮システムを使用する市販のシステムを用いて新しい方策が現在結実しつつある。良好なターゲティングされた送達ベヒクルは最近にも報告されている。抗体(Rituximab)、放射標識抗体(イットリウム90イブリツモマブチウキセタン)およびペプチドターゲティング療法(In−111DTPA、「オクトレオチド」)の現在認可され高度に良好な例が存在する。このような方策は現在非ホジキンリンパ腫を有する患者の50〜70%超で応答を、30%超で完全な緩解をもたらしている。明らかに、ターゲティングの試みは成功しているが、これ等の化合物は脳腫瘍の治療において有効であるためにはなおBBBを通過しなければならない。以下の例において本発明者等はBBBを通過する問題を論じる。
【0109】
腫瘍への局所薬物送達は長年検討されており、その目標は長期循環リポソーム、熱活性化リポソーム、巨大分子キャリアシステムを用いて周囲組織に対する一部の化合物の毒性作用を低減することであった。粒径は特に重要であり、200nmより小さいリポソームが最も効果的であり、そして負の表面電荷も重要である。一般的にリポソームはその種々の薬物動態の特徴および分布のパターンにより毒性を減衰する能力を示している。ドキソルビシンのリポソームカプセル化は心毒性を低減することがわかっている。パクリタキセルは油脂中に懸濁でき、そして局所的および効率的に送達できる。予備的データによれば、リポソームまたはAAL中のパクリタキセルのカプセル化は神経毒性を大きく低減でき、クレモフォアの必要性を排除する。リポソームの循環の持続時間を増大させることにおける打開策はリポソームのPEGコーティングであった。しかしながらこの場合もこれ等のスキームは脳内の薬物の濃度を増大させることにおいては効果的ではなかった。
【0110】
本発明者等の手法は、組織を破壊するための高超音波圧または温度上昇に依存するHIFU(高強度焦点超音波)手法または細胞膜の透過性の変化のみに依存する手法とは実質的に異なっている。操作の典型的な超音波のモードを表1に示す。本発明の1つの目的は低超音波圧において放射圧およびフラグメント化のモードを用いながら脳に新しい治療薬を局所的に送達することである。この手法は拡散毒性を伴う脳内で高い超音波強度を得ることが困難であることを回避する。多くの新しい薬物がナノモル濃度において活性であるとすれば、薬物の極めて少量の局所送達は大きい影響を有すると期待される。多くのグループが超音波造影剤の振動によりもたらされる細胞膜の透過性の変化を研究している。M Ward, J Wu, JF Chiu, Ultrasound Med Biol 26(7):1169−1175(September 2000)(全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる)において、細胞膜の透過性を変化させるためには造影剤は細胞の数ミクロン内に位置しなければならず、従って、臨床上意味のある応答を誘発するためには大量の造影剤が必要となる場合があることが示されている。膜に影響するために十分な壁速度を有する気泡に極めて接近した細胞の集団も死滅することになり、そして、僅か少数の内皮細胞のみが合理的な濃度において透過性の変化を示す。後述する実施例においては、本発明者等は目的の領域内の多くの内皮細胞に化学療法を提供するための超音波トリガー薬物送達に集中し、投与すべきAALに直ぐ隣接して細胞が存在する必要はないという利点を得ている。
【0111】
【表1】

生体分布および多剤耐性のPET画像化:Eckelmanおよび共同研究者はパクリタキセルの生体分布および多剤耐性腫瘍を調べるために放射標識パクリタキセル化合物のセットが使用できることを示している。F18−フルオロパクリタキセルは多くの組織において高度な取り込みおよび急速なクリアランスを示している。P−gpノックアウトマウスの脳におけるF18−フルオロパクリタキセルの取り込みは野生型コントロールと比較して1400%増大している。XR9576、即ちP−gpモジュレーターの予備投与によりF18−フルオロパクリタキセルの取り込みは20%増大したが;しかしながらこの増大は有意ではなかった。後述する実施例においては、バルスポダールは同時投与された場合にパクリタキセルの脳内濃度を有意に上昇させることがわかっていることから、本発明者等はこれをP−gpモジュレーターとして使用している。
【0112】
(造影剤およびAAL)
造影剤およびAALに対する超音波の作用はインソニファイされた薬剤の半径方向の振動(半径−時間曲線)を光学的に測定することにより最も良好に求められる。音響パルスの間、高度に圧縮可能な薬剤は、適用された圧力の希薄化および圧縮に伴って膨張および圧縮する。この振動性の応答は臨床画像化システムにより検出できる異なる反射波を発生させる。半径−時間曲線より、破壊の確率および放射圧の大きさを推定できる。音響圧、中心周波数およびパルス長のようなパラメーターを旨適化できる。さらにまた、音響シグネチャーを超音波送信および受信システムを用いて直接測定でき、そして光学的に獲得された半径−時間曲線と共に使用できる。
【0113】
本発明者等はインソニケーションの間に薬剤の動的特徴を画像化するための最初の機会を提供している1億フレーム/秒の光学システムを使用している。その結果、本発明者等は散乱した反射波に影響する現象を細分化することができる。放射圧の作用および貪食されたサブミクロンの造影剤の挙動もまた特性化している。後述する実施例において、新しい薬物送達ベヒクルを評価するために方法を適用している。
【0114】
さらにまた、本発明者等は造影剤およびAALの破壊の機序およびこれ等の破壊機序をもたらすパラメーターを解明した。破壊の機序には気泡のより小さい気泡へのフラグメント化および/またはカプセル化された気体の拡散が関与するが、フラグメント化は局所薬物送達には必要である。医療用画像化において使用される様式内においては、領域の粒子を特定して破壊する能力は超音波に独特のものである。
【0115】
実施例においては、本発明者等は気体コアを含有する超音波活性化薬物送達ベヒクルを用いて脳に薬物を局所送達するスキームを記載する。本発明者等はフラグメント化機序を測定できる高速画像化およびストリークカメラ(秒当たり1億フレーム)を使用している。従来のAAL(コーン油または大豆油)よりも遥かに優れたAALを与える低粘度の油脂であるトリアセチンを用いて新しいキャリアを作成した。遥かに低い圧力は大豆AALと比較してトリアセチンAALを偏向および分散させることができる。油脂をインソネーションにより拡散させ、得られた液滴の直径は適切な超音波パラメーターが選択されていれば数十〜数百ナノメートルとなりえる(血管壁を通過して浸透するのに十分小さい)。
【0116】
インソネーションの間のこれ等のキャリアの挙動およびAAL破壊の可能性は共に気泡の動的特性の以前の観察に基づいて、そして音響定常波内における液滴に関する以前の研究から検討することができる。マイクロバブルの相対的膨張は静止期の半径Rで割った最大半径Rmaxとして定義され、そしてキャビテーション閾値およびフラグメント化と相関付けられている。M.S.Plesset, T.P.Mitchell,Quart.Appl.Math.,13:419−430(1956)(全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる)。キャビテーションの相対的膨張閾値は2.32〜3.46である(R.E.Apfel,C.Holland,Ultrasound in Medicine and Biology, 17(2):179−185(1991)(全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる)。形状の安定性の分析に基づく関連する基準はPlessetおよびMitchellにより誘導されており、これによれば、最小マイクロバブル半径がピーク膨張の間に起こる最大半径の10分の1まで減少すれば、マイクロバブルは劇的に不安定化してフラグメントとなるとされている。上記Apfel等は低下した中心周波数はキャビテーションに必要な閾値圧力を低下し、気泡がフラグメント化できる静止期の半径を増大させることを示している。非球状の振動および気泡の不安定性は破壊の前駆である場合が多い。本発明者等はまたAALの破壊に対する非球状振動の作用を明らかにしている(J.Allen, D.May and K.W.Ferrara, Ultrasound in Medicine and Biology, Vol.28(6):805−816(July 2002)(全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる)。このような以前の研究の1例は、音響定常波におけるミリメーターサイズの液滴の空中浮揚の研究である(C.P.Lee,A.V.Anikumar,T.G.Wang,Physics of Fluids,6(11):3554−3566(1994)(全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる)。この研究はキャピラリー波および乱流がシェル表面に存在していることを示している。全液滴がフラグメント化しない場合、衛星液滴がなお発射される。以前の光学的観察により、造影剤およびAALのフラグメント化は臨床的圧力においても可能であることがわかっている(D.May,J.Allen and K.W.Ferrara,IEEE Transactions on UFFC,49(10):1400−1410(Oct.2002)(全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる)。
【0117】
放射圧:放射圧の作用はC.A.Bjerknesとその息子V.F.K.Bjerknesにより1906年に初めて報告され、その時には音響場における気泡の誘引および反撥が観察されている。その後50年間に渡り、いくつかの研究グループが休憩に対する放射圧の理論的分析を発表している。気泡に対する音響放射圧、即ちしばしば「Bjerknes力」とも称されるものは、ほぼ1970年までは実験的に研究されていなかった。1969年、EllerとCrumは音響変換器によりエネルギー付与された円筒状の管における気泡に対する放射圧の作用を検討している。MacedoとYangは流動中の気泡に対する音響変換器により発せられた放射圧の作用を研究している。1975年、Crumは振動している管内部の気泡に対して作用する圧力波により生じた力を研究した後にBjerknes力をさらに分析して発表している。これ等の場合の何れにおいても研究された気泡は半径数十ミクロン程度であり、音響周波数は数十kHz程度であった。この研究は気泡と相互作用する放射圧を扱っていたが、臨床用に関連するパラメーター範囲(気泡の大きさ、音響周波数)を考慮していなかった。臨床超音波周波数はMHz程度であり、マイクロバブルは直径数ミクロン程度である。さらにまた、臨床超音波は典型的には以前の実験において研究されていた静止波ではなく移動波を使用している。ミクロンサイズの気泡に対する放射圧の最初の実験的分析は本発明者等および共同研究者の1人により報告されている(例えばP.Dayton,K.Morgan,S.A.Klibanov,G.Brandenburger,K.Nightingale and K.Ferrara,IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control,44(6):1264−1277(1997);P.Dayton,「The effects of acoustic radiation force on contrast agents: experimental and theoretical analysis」, Ph.D.Dissertation, University of Virginia, August 2001; Paul A.Dayton, John S.Allen, Kathy W.Ferrara, Journal of the Acoustical Society of America, 112(5):2183−2192(Nov.2002);およびP.Dayton, A Klibanov, G.Brandenburger, K.Ferrara, Ultrasound and Medicine and Biology, 25(8):1195−1201(1999)を参照)(参照により全体が本明細書に組み込まれる)。以来、多くの他の研究者等が理論的見地からマイクロバブルに対する放射圧の分析を発表している。さらにまた、AALの局所薬物送達は、マイクロバブルの通過速度を低減すること、並びに、血管壁に向けた気泡の変位により一次放射圧を用いて促進することができる(P.Dayton, A.Klibanov,et al.,(1999))。
【0118】
本発明者等の実施例はAALの振動の予測、造影剤およびAALの併進運動の予測および周囲の細胞への染料および薬物の転移の可能性の明確化のためのモデルを有効化するために設計されている。AALの挙動はインビトロでは十分特性化されており、そしてインビボで染料およびパクリタキセルを分散させるのに使用されている。造影剤(インビトロおよびインビボ)およびAAL(インビトロ)の放射圧操作が明らかにされている。AALの横断(transverse)クライオ電子顕微鏡観察結果を図2に示す。約8ミクロンの直径を有する薬剤に対し、油脂シェルは約500nmの厚みを有している。
【0119】
(実施例1:フラグメント化をもたらす造影剤およびAALの振動および放射圧)
薬物の局所送達を向上させるためには血管壁に薬剤を送達すること、サブミクロン粒子まで送達ベヒクルをフラグメント化すること、および、可能であれば油脂と薬物成分を分離することが重要である。AALの振動およびフラグメント化は油脂の粘度に大きく依存しており、トリアセチンは音響励起およびフラグメント化に特に有効であることが観察されている。本発明者等の結果では、フラグメントの数および大きさ並びにマイクロバブルの破壊の機序は超音波パラメーターに依存していることを示している(例えばD.May, J.Allen and K.W.Ferrara,(Oct,2002)参照)(全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる)。本実施例においては、方程式(1)〜(3)の解を用いて薬剤の時間依存性の容量を、さらには方程式(11)における放射圧を推定するため、本発明者等はまず造影剤およびAALの振動のための本発明者等のモデルを検討した。さらにまた、フラグメント化は薬剤の膨張が静止期の半径の3倍に達した時点で起こる。本発明者等は経時的な造影剤の振動のためのモデルを作成して有効化しており(K.Morgan,J.Allen,P.Dayton,J.Chomas,A.Klibanov,K.Ferrara,IEEE Trans.On Ultrasonics, Ferrelectrics and Frequency Control,47(6):1494−1509(2000))(全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる)、そして得られた方程式はEq.1に示す通りである。
【0120】
【数1】

式中、時間依存性の半径、壁面速度および壁面加速度はそれぞれR、R’およびR”で示す。流体静力学的圧力はPであり、音響力圧力はPdriv(t)である。既知のパラメーターは液体の密度 r、液体の粘度μ、多向性気体指数γ、表面張力σおよび音速cである。シェルの特性に関して推定したパラメーターはシェル弾性率χおよびシェルの厚みεとシェル粘度μshの積である。気泡からrの距離の予測反響P(r)は下記関係により気泡の半径、速度および加速度から得られる。
【0121】
【数2】

式中、Φは速度ポテンシャルである。このモデルは広範なマイクロバブルの大きさおよび画像化パラメーターに渡って有効化されている(D.Patel,P.Dayton,J.et al., IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics and Frequency Control; RT Bartus, P Snodgrass, et al.,J Pharmacol Exp Ther.293(3):903−11(June 2000)(全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる))。これ等の方程式に基づいて、半径方向の振動、音響反響およびスペクトルを伝達条件の範囲について予測している。
【0122】
肥厚シェルの薬物送達ベヒクルの振動に関する予備的モデルを開発し、薬物送達ベヒクルの性能の予備的評価を実施している(D.May, J.Allen and K.W.Ferrara, IEEE Transactions on UFFC,49(10):1400−1410(Oct.2002);J.Allen, D.May and K.W.Ferrara, Ultrasound in Medicine and Biology,28(6):805−816(July 2002)(全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる)。駆動されたベヒクルの時間依存性の方程式を(3)で示す。
【0123】
【数3】

式中の定義は以下の通り、即ち、R’、壁面速度、R”、壁面加速度、R、気体コア半径、R、外側液体シェル半径、R、内側半径、R、外側半径、R10、平衡内側半径、R20、平衡外側半径、 r、シェルの密度、r、液体の密度、σ、内側半径における表面張力、σ、外側半径における表面張力、κ、多向性気体指数、μ、シェルの剪断粘度、μ、液体の剪断粘度、p、圧力、P、無限大における圧力、Pgo、初期気体圧力(内側半径に関する)である。何れかの音響力が無限大において圧力に当てはめる。
【0124】
内側および外側の半径は方程式4で示される関係にある。
【0125】
【数4】

半径方向の振動の光学的観察:本発明者等の実験系はインソネーションの間に薬剤の半径方向の変動を観察するために光学系と音響系を組み合わせている。光学系は倒立顕微鏡(Olympus IX70、Melville,NY)および100×対物レンズ(Zeiss Achroplan 100X、NA=1.0、Carl Zeiss,Inc.,Thornwood,NY)よりなる。画像は毎秒1億フレーム可能な高速デジタルカメラを用いてキャプチャーする(Imacon 468,DRS Hadland,Inc.,Cupertino,CA)。キセノンストロボによりマイクロバブルの照明を行う。この光は光ファイバーケーブルにより画像化領域に転移する。カメラシャッター、ストロボおよび波形発生器のタイミングは専用コンピューターにより直接制御される。カメラは可変のシャッター時間(10ns〜1ms)およびインソネーションからの遅れ時間により気泡の7画像を発生させる。8画像が経時的に1つの光学的垂直のラインオブサイトを示す。垂直線を気泡中心上に位置づけた場合、この「ストリーク」画像は時間の関数としての気泡の直径を示す(経時的に気泡中心を通過するMモード画像)。ストリーク画像の時間的解像度は約10nsであり、空間的解像度は0.12μm/ピクセルである。閾値基準を用いながら各時点における半径を測定することによりMatlabにおいてストリーク画像を半径−時間の曲線に変換する。ストリーク画像はグレースケールで示し、画像の左側を用いてインソネーション前のものとして静止期のマイクロバブル直径を推定する。
【0126】
図3はALLを破壊した2つの例に関するストリークおよび2Dの画像を示し、図3a−cには1つの小型AALを、図3d−hには第2のより大きいAALを示す。図3aの小さい静止期直径(約2ミクロン)に留意しなければならない。直径はストリーク画像において経時的に変化している(図3b)。フラグメントの最終的なセットは図3cの粒子の小セットを含んでいる。ALLが対称性に崩壊するこの破壊様式は小型の薬剤について観察される。送信中心周波数における共鳴サイズより大きい静止期直径を有するAALについては、表面の振動は図3eおよび図3fに示されるとおり突起部を有する2Dの画像においてしばしば観察される。小フラグメントのセットが発生したが、1つの大型フラグメントも図3gにおいて目視される。即ち、AALについては、観察された破壊の機序は静止期の半径に応じて変動し、共鳴サイズに近いAALは対称性の崩壊を起こし、小フラグメントのセットを生成する。共鳴サイズは送信周波数により変動するが、3〜6ミクロンの間の直径を含む。共鳴サイズと共鳴サイズの2倍の間の静止期半径を有するより大型のAALのインソネーションの間、表面波は目視可能となり、振動は頻繁に非対称となる。共鳴サイズのほぼ2倍の静止期半径の場合は、破壊機序はピンチオフに変わり、1つのフラグメントが元の容量の大型の区分を含有するようになる。
【0127】
最大膨張およびフラグメント化の確率をある範囲のベヒクル直径、中心周波数およびパルス長について測定する一連の実験を実施した。これらの実験の結果を以下に概説する方程式(3)〜(4)およびD.May,J.Allen and K.W.Ferrara,IEEE Transactions on UFFC,49(10):1400−1410(Oct.2002);J.Allen, D.May and K.W.Ferrara, Ultrasound in Medicine and Biology, 28(6):805−816(July 2002)(全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる)からの推測と比較した。図4は1.5MHzの送信中心周波数および5サイクルのパルス長に対するAALの初期直径の範囲の最大膨張の総括である。最大膨張は初期半径に応じて変動し、2より大きい膨張率がフラグメント化をもたらす場合が多い。AALの最大膨張は送信中心周波数に依存しており、より高値の周波数はより小さい膨張およびフラグメント化の閾値半径のシフトをもたらす。等価な画像化パラメーターについては、第1のサイクルのAALの最大膨張は脂質シェル保有造影剤のものと同様であり、サブ倍音は同様の半径および周波数に対して造影剤およびAALについて生じる。即ち、一部の態様においては、送達ベヒクルは造影剤と同様の様式で機能する。
【0128】
図5aは最大フラグメントの正規化した容量を示し、図5bは本発明者等の光学的解像度(0.1ミクロン)より小型であるか光学的焦点を超えて移動し、目視不可能となったフラグメントの容量を示す。小さい静止期半径および1.5MHzの周波数については、 各フラグメントにおける区分容量が極めて小さく、元の容量の50%が可視化できない。AALの破壊の背後にある機序をさらに理解するために本発明者等は図6において予測される内側および外側の壁面速度を調べている((3)および(4)に基づく)。この図は全ての小型の静止期半径について、油脂層の内壁および外壁の半径方向速度の間には大きな差があり、そしてこの差が破壊をもたらすことを示している。
【0129】
(実施例2:AALを用いたインビボの試験)
ダイズ油中パクリタキセルを含有する脂質球の濃度、大きさ、マウスにおける急性毒性および超音波による音響活性および薬物放出が試験されている。EC Unger, TP McCreery, et al. Invest Radiol.33(12):886−892(Dec.1998)(全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる)。本発明者等はトリアセチンの実質的により低値の粘度が低音響圧におけるAALの振動、放射圧感受性およびフラグメント化能を大きく向上させることを明らかにしている(D.May,J.Allen and K.W.Ferrara,IEEE Transactions on UFFC,49(10):1400−1410(Oct.2002);J.Allen, D.May and K.W.Ferrara, Ultrasound in Medicine and Biology,28(6):805−816(July 2002))が、Unger et al.(Dec.1988)のデータはインビボの概念の証拠および低毒性を示している。トリアセチンを含有するAALを用いた別の急性毒性試験が進行中であるが、多くの他の低粘度油脂を本発明の実施において使用してよく、そして、トリアセチンは他の治療目的のために頻繁に使用されている。本発明の実施のために現在好ましいものは37℃において約10mm/秒〜約80mm/秒程度の動粘度を有する油脂である。スーダンブラック染料を含有する脂質球が製造され、音響活性脂質球(AAL)超音波放出概念が明らかにされている(Unger,et al.(Dec.1988))。図7はマウスにスーダンブラック含有AALを注射した実験で得られた結果を示しており、インソネーションに付した組織の領域における染料の付着の増大を示している。スーダンブラック含有AALはまた図8aおよび8bに示す流動システムにおいて内皮細胞への接着を示した。内皮細胞801をポリエステルチューブ内に入れた。スーダンブラックで標識したAALを毎秒数ミリメートル程度の速度で注入した。放射圧パルスとその後の破壊パルスよりなる超音波パルスを適用した。AALフラグメント802は細胞803に接着した状態で示される。図8bは図8aに示す画像の断面のより高倍率の画像である。マウスにおける急性毒性の試験は遊離のパクリタキセルと比較してAALにおけるパクリタキセルの毒性の10分の1と低いことを明らかにした(Unger et al.(Dec.1988))。AALは超音波を反射しており、その反響を用いてインビボでモニタリングできる。超音波エネルギーの増量は選択的にAALを破壊し、パクリタキセルを放出した。
【0130】
超音波エネルギーを使用することにより、数ミクロン程度の薬物送達ベヒクル中にカプセル化された薬物は十〜数百ナノメートル程度の小粒子にフラグメント化できる。次にこれ等の構造体を腫瘍内の内皮細胞の接合部を通過させ、他の臓器内の腫瘍内における薬物送達のために最も効果的である大きさとなる。脳内の内皮細胞への送達のためには、パクリタキセルは膜内の液相を経由して通過してよい。AALの外側半径の最大膨張は理論的に推定されるものより僅かに小さい。AALのフラグメント化の確率は周波数の低下に従って上昇する(D.May,J.Allen and K.W.Ferrara,IEEE Transactions on UFFC,49(10):1400−1410(Oct.2002))。AALフラグメント化のためには1.5MHzの周波数が極めて効果的であり、最小パルス長は5サイクル(前述)であり、1.6MPaの圧がミクロンサイズの薬剤のフラグメント化には必要である。モデルの推定および実験の詳細な考察はD.May,J.Allen and K.W.Ferrara,IEEE Transactions on UFFC,49(10):1400−1410(Oct.2002);J.Allen, D.May and K.W.Ferrara, Ultrasound in Medicine and Biology,28(6):805−816(July 2002)に記載されている。
【0131】
(実施例3:マイクロバブル薬剤に対する放射圧の作用(造影剤およびAAL))
造影剤およびAALに対する音響放射圧の作用が詳細に検討されている。P.Dayton,K.Morgan,IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control,44(6):1264−1277(1997);P.Dayton,「The effects of acoustic radiation force on contrast agents: experimental and theoretical analysis」, Ph.D.Dissertation, University of Virginia, August 2001; Paul A.Dayton, John S.Allen, Kathy W.Ferrara, J.Acoust.Soc.Am.,112(5):2183−2192(Nov.2002);2183−2192;P.Dayton, A Klibanov, G.Brandenburger, K.Ferrara, Ultrasound and Medicine and Biology, 25(8):1195−1201(1999)(参照により全体が本明細書に組み込まれる)。小型の高度に圧縮可能な対象、例えば造影剤およびAALについては、本発明者等は100kHzの圧および<0.1%の負荷サイクルを用いたインソネーションにより生じた放射圧が造影剤およびAALの急速な併進運動を可能にすることを明らかにしている。旨適化されたパラメーターを用いることにより、臨床変換器により生じた音響場は音響源から離れた薬剤の併進運動をもたらす。さらにまた、二次放射圧は薬剤間の誘引力をもたらし、気泡を凝集させる。本発明者等はこれ等の作用および音響パラメーターとの関連性を十分に説明しており、そしてさらに、音響パルス上への個々の気泡の変位を正確にシミュレーションする理論的モデルを開発している。キャリアの進路を偏向させる場合の一次放射圧の作用を示す模式図を図9に示す。図9aは超音波圧の適用の前のキャリア901の流線を示す。超音波適用後(矢印902)、流線は血管壁903に向けて変位させられる(図9b)。圧縮不可能な対象は放射圧および中心周波数と共に増大する効果的な変位を経験するが、自身の共鳴周波数において駆動される圧縮可能な対象は遥かに大きい変位を経験する。何れかの音響サイクルにより、AALまたは造影剤は膨張および収縮し、そしてまた実質併進運動を経験できる。この現象は、図10において、2.25MHzの中心周波数および180kPaの圧力において20サイクルのパルスを用いてインビトロで超音波造影剤に対する放射圧を使用しながら、2.4μm(図10a)、1.7μm(図10b)および1.5μm(図10c)の静止期半径の薬剤に付き示した。造影剤が振動し、各音響サイクルにより少量を併進運動させていることがわかる。送信された波形は白色で示す。
【0132】
本発明者等はAALおよび造影剤のインソネーションのビデオ録画されたシーケンスを作成している。第1に、本発明者等は血管壁にAALを偏向させるパルスのシーケンスを適用し、次に薬剤をフラグメント化し、そして最後に領域内に薬剤を再充填させた後に、パルスシーケンスを反復した。この血管直径はこの例では約1mmである。ビデオはまた全ヘマトクリット流動血液内および生体内顕微鏡観察の間の造影剤に対する放射圧の作用を示している。食塩水中を流動する薬剤と比較して、血液を含有する血管内を流動する造影剤の空間的変位において、差は観察されなかった。生体内顕微鏡観察を用いたインビボの放射圧の作用はP.Dayton,「The effects of acoustic radiation force on contrast agents: experimental and theoretical analysis」, Ph.D.Dissertation, University of Virginia, August 2001に総括されており、そしてP.Dayton, A Klibanov,et al.(1999)は図11に示してあり、ここで本発明者等は、超音波場(1101のダイアグラム)は蛍光標識造影剤1102をマウス精巣挙筋内の50ミクロンの小動脈の壁面1103に沿って限局させることを明らかにしている。図11aは超音波オフ時に得られた画像である。図11bは超音波オン時に得られた画像である。
【0133】
薬剤が血管壁近傍で濃縮された場合、それらは流動の中心にある場合と比較して低下した速度で移動する。図11bの血管の壁面1103に沿って示した薬剤1102は1mm/秒より低速で移動しているのに対し、血管中央の速度は7.5mm/秒と推定された。本発明者等はまた図11bに示すとおり放射圧は薬剤1102を相互に誘引し、他の場合と比較して遥かにより高い濃度のマイクロバブルを血管壁1103に沿って与えることを観察している。これ等の薬剤は融合せず、誘引は完全に可逆である。
【0134】
(実施例4:キャリアの併進運動)
Paul A.Dayton,John S.Allen,et al.(Nov.2002)において、本発明者等は造影剤に対して作用する放射圧により生じた変位のモデルを開発し、このモデルを下記の通り検討している。インソネーションの間の流体中のマイクロバブルの併進運動をEq5に示す粒子軌道式を解くことにより計算する。
【0135】
【数5】

このような方程式は剛性の球の周囲の非定常のストークス流動に関する第1の原理から誘導してよい。液体中の気泡と粒子の運動に関するより包括的な説明のためには、参考文献としてBrennenによるテキストが挙げられる(C.E.Brennen,Cavitation and bubble dynamics,Oxford University Press(1995)(全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる))。mという項は気泡の質量とその加速度の積である。簡便のために、気泡の質量は気泡の密度および容量のほうがその質量よりも物理的に推定することが容易であることから、rで表わす。即ち左側の項はr(du/dt)と表わしてよく、式中uは気泡の速度である。
【0136】
上記(3)から得られる造影剤の半径方向の振動をFRF(t)の項において(5)に代入し、半径方向の振動を用いて時間の関数として容量を推定する。FRF(t)は音響圧波により生じる放射圧である。音響波長より遥かに小さい高度に圧縮可能な気泡に対する音響放射圧は以前の研究から得られたものである(L.A.Crum,A.IEller,Office of Naval Research Technical Memorandum,No.61,(1969);V.N.Alekseev,Soviet Physics,Acoustics,29(2):77−81(1983);A.Prosperetti,Ultrasonics,22(3):97−144(1984))(全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる))。音響伝播の方向の瞬間的放射圧はV(dP/dx)に等しく、式中Vは気泡の容量であり、dP/dxは液体中の圧力勾配(xの方向のみに空間的に変化)である。第2の項FQS(t)は準静的抗力である。この項は流体の粘度からの気泡に対する併進運動抗力を示す。この項の1つの確立された形態は(1/2)r|u|uACであり、式中Aは気泡断面積であり、そしてuは併進運動する気泡と液体の間の相対速度である。この項の実験的近似が種々の条件下、種々の大きさの気泡について、研究者等、V.E.Johnson and T.Hsieh, Sixth Naval Hydrodynamics Symposium, pp.163−182(1966);L.A.Crum,J.Acoust.Soc.Am.,57:1363−1370(1975);T.Watanabe and Y.Kukita, Physics of Fluids A,5(11):2682−2688(1993)(全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる)により求められており、そして本発明者等はMeyer, et al.Transactions of the ASME, 114:672−679(1992)(全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる)により求められた数値を使用している。uの値は気泡速度と液体速度の差、u=u−uとして定義される。液体速度uはこの場合には、音響圧場から求められる(H.J.Rath, Acustica, 44:148−155(1980)(全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる))。
【0137】
【数6】

Cdは抗力係数であり、そして、この数値のいくつかの経験的な式が文献において考察されている。Meyer et al.およびJohnson and Hsieh(R.S.Meyer, M.L.Billet,J.W.Holl,「Transactions of the ASME, 114:672−679(1992);V.E.Johnson and T.Hsieh,Sixth Naval Hydrodynamics Symposium, pp.163−182,(1966))は共に下記の通り表わしている。
【0138】
【数7】

Eq.5の右辺の第3項、FAMは加算質量として知られている。流体中の気泡の非定常の併進運動は流体の加速を必要とする。気泡の真の質量に流体の質量を加算することによりこの作用が力の均衡に組み込まれる。この項は周囲流体中の剛性の球を加速するために供されるべき力を説明しており、一般的にEq.9として文献に表わされている。
【0139】
【数8】

RBはMeyer et al.により使用された別の付加質量の項であり、振動気泡壁による付加的な加速度を考慮している。この項はEq.10に示すとおり表わされる。
【0140】
【数9】

数人の研究者等が履歴項Fは気泡の併進運動に対する総抗力には僅かに寄与(5%)するのみであるとしている。この作用は小さく、そして履歴項は計算的に過大であるため、この項は本発明者等のモデルでは無視した。最終的に本発明者等は薬剤に対する血管壁に由来する浮力および摩擦の作用を考慮するための項を付加している。要すれば、音響放射圧に由来する気泡の併進運動に関して解くために使用される微分方程式はEq.11により与えられる。
【0141】
【数10】

(実施例5:予測と比較した放射圧の併進運動に関する実験データ)
低振幅超音波パルスに応答した超音波造影剤の予測された変位は図12に総括するとおりであり、そして、同じ変位を用いた場合の予測および実験データの両方がPaul A.Dayton, John S.Allen, Kathy W.Ferrara,(Nov.2002)に総括されている。図12はピーク変位(およびピーク一次放射圧)がインソネーション周波数に対する共鳴サイズの近傍にある半径を有する薬剤で起こっていることを示している。1MHzの近傍で共鳴するより大きい薬剤は0.6サイクル/ミクロン程度のピーク変位を示す。2.25MHzでインソネーションされたMP1950(脂質シェル保有薬剤)のピーク変位は約0.1ミクロン/サイクルであり、約1.7ミクロンの静止期半径で起こる(共鳴に相当)。実験データ(図13)によれば、特定の脂質/トリアセチン比を有するAAL(後述する実施例7に記載する通り添加トリアセチン750μlを用いた組成に相当)は2.5MHzの中心周波数および200kPaの圧において約0.04ミクロン/サイクルで併進できる(即ち造影剤より僅かに低値)。ALLピーク変位は典型的には造影剤より高周波数(2.5〜5MHz)で起こる。他の組成は実質的に低値で併進する(0.01ミクロン/サイクル程度)。組成を比較して旨適パラメーターを誘導することは、本開示の利益を有する当業者の技術水準内にある。
【0142】
AALの大多数が毛細管内に存在すると仮定すれば、ミクロン程度においてキャリアを変位させるのに十分であり、従って、数千サイクル程度のサイクル数で十分である。1つの実施形態においては、即ち、心臓血管病の治療のためには、ALLは数百ミクロン程度の距離を併進することにより小動脈および静脈に対して治療を行う。50kPaもの低値の音響圧がこのような変位をもたらすのに有効である。
【0143】
本発明者等はPaul A.Dayton, John S.Allen, Kathy W.Ferrara,(Nov.2002)においてAALに対する最大の放射圧の規模は気泡の共鳴周波数(2.5〜5MHz)に等しい送信周波数で起こることを示している。気体充填薬剤の典型的パラメーターは2.5〜6MHzの送信中心周波数、50〜200kPaの送信圧、20サイクル以上のパルス長、および数10kHzのパルス反復率を含む(即ち典型的なドプラーパラメーター)。AALの場合は、理想的にはベヒクルをまず壁面に偏向させ、そして次に十分なセットの放射圧サイクルが適用された後にフラグメント化させる。必要なパルスシーケンスは複雑であるが、本開示の利益を有する当業者により容易に達成できる。
【0144】
(実施例6:研究の設計および方法)
脳に薬物を送達するためには、本発明者等は従来の化学療法に透過性増大を組み合わせるためのいくつかの新しい方策を選択している。超音波パルスは血管壁への変位のために必要なもの、および、所望の周囲の細胞へのベヒクル内の化合物の転移を伴うベヒクルのフラグメント化のために必要なものとして特性化することができる。本発明者等はまず、パルス化超音波場に応答した薬物送達ベヒクルの併進のモデルを開発し、そしてこれをある範囲の圧力に渡って得られた実験データと比較した。蛍光および放射核種で標識された形態のパクリタキセルを配合した送達ベヒクルを作成している。これ等のベヒクルからの標識パクリタキセルの流出は種々の超音波パラメーターを用いて推定される。内皮およびグリア細胞の共培養を用いて提案された治療薬に対するBBBの透過性の変化を評価する。最終的にF18−蛍光パクリタキセルを用いてインビボのパクリタキセルの局所濃度を試験する。
【0145】
(実施例7:標識パクリタキセルを含有する音響活性脂質球)
1〜5重量パーセント(w:w)脂質混合物(ジパルミトイルホスファチジルコリン[DPPC]、ジパルミトイルホスファチジン酸[DPPA]およびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン−ポリエチレングリコール−5000[DPPE−PEG−5000]、モル比82:10:8)を標準食塩水に懸濁し、その後60℃に短時間加熱し、次に一連(n=4)の凍結−解凍のサイクルに付す。次に製剤を真空下に乾燥し、その後標準食塩水、グリセロールおよびプロピレングリコール(8:1:1、v:v:v)を含む希釈剤中に再懸濁する。6.35mg/ml脂質製剤の1.14mlに対し、トリアセチン油脂320〜750マイクロリットルを添加する。次に製剤を45秒間約4500rpmで回転振とう器(Espe Shaker,Munich,Germany)上で振とうし、音響活性脂質球を得る。音響活性脂質球をParticle Sizing Systemsの光学サイジング器(Particle Sizing Systems,Santa Barbara,California)上でサイジングして計数する。
【0146】
(実施例8:パクリタキセルを用いたAALの製剤およびインビトロ試験)
パクリタキセル(蛍光またはF18標識)をAALに添加する。慨すれば、脂質に対して1〜5重量%の化学療法化合物を脂質製剤に添加し、その後、標準食塩水中に懸濁し、凍結−解凍する。1〜5mg/mL−1の脂質/化学療法剤の混合物を含有する製剤を標準食塩水:プロピレングリコール:グリセロール、8:8:1、v:v:vを含む希釈剤中に製剤する。6.35mg/ml脂質製剤1.14mlに対しトリアセチン油脂320〜750マイクロリットルを添加する。Vialmix振とう器による振とうを用いてAALを生成する(45秒)。
【0147】
(実施例9:超音波系)
増強された局所薬物送達のシステムを設計して構築する。概念の実証性を説明するために、システムは第1に小領域中で放射圧およびフラグメント化パルスを送達することができる。本システムのために1ピストン変換器(V305、Panametrics,Waltham,MA)を中心周波数2.4MHz、6dB帯領域1.6〜3.3MHz、焦点長2.34”および0.75”有効口径で使用する。これは単一視線に沿ってインソネーションできる焦点設定変換器である。音響圧はハイドロホン(PZT−Z44−0200、Specialty Engineering Associates)を用いてカリブレーションする。インビボの実験のために、同じ焦点設定変換器を用い、画像化のためには2D平面、そして治療のためには小3D領域に渡り、使用可能なモーションシステムを用いてスイープする。
【0148】
0.2cm×0.2cm×0.2cm(方位角×上昇度×深度)容量を画像化し、処理する。3D画像化は上昇させながら線形で変換器を機械的にスキャンし、漸増位置においてフレームを獲得することにより行う。焦点設定変換器を線形/回転サーボモーター(LAR30−25、SMAC、Carlsbad,CA)およびモーションコントローラー(DMC−2240,Galil Motion Control,Rocklin,CA)の組み合わせを用いて上昇させながら線形スキャンする。処理期は放射圧パルスの発生および短時間あけて球焦点設定ピストン変換器による高強度パルスの送達よりなる。2kW(ピーク)パルス電力増幅器(BT02000−CLβ、Tomco Electronics,Australia)に自由波形発生器(33120A、Agilent Technologies,Palo Alto,CA)を組み合わせて使用することによりピストンを駆動する。
【0149】
パルスシーケンスを複合放射圧画像化およびAAL破壊のために発生させる。これには中心周波数1.5〜3.5MHzおよび振幅50〜400kPaの約100〜10サイクル、その直後の振幅1.6MPaおよび周波数1〜1.5MHzの破壊パルスよりなる1つの極めて長い放射圧パルスを含む。シーケンスは3秒に1回反復する。1cm/s未満の速度で流動する試料容量中の全AALをこのパルスシーケンスにより1mm血管の壁面に偏向させる。より高速においては、薬剤の変位はより小さく、従って、血管内のより少量分の薬剤が壁面に偏向されるが、効果はなお有意である。大部分のAALが毛細管内に滞留しているとすれば、シーケンスは極めて効果的である。
【0150】
(実施例10:AALに対する放射圧に関するモデルの開発および評価および得られる併進)
上記した音響場におけるマイクロバブルの併進のためのモデルを、適切な項において付加的な層として適切な容量の油脂層の質量を付加することによりAALにも拡張する。AALの変位に関して得られた予測を周波数1.5〜3.5MHz、パルス100〜10サイクルおよび音響圧50〜400kPaで得られた実験データと比較する。結果をトリアセチン320〜750マイクロリットルを使用する製剤のものと比較する。
【0151】
R−t曲線の分析:高速電子カメラ(キャプチャー速度〜10フレーム/秒)で得られたストリーク画像をAdobe Photoshop(Adobe)およびMATLABを用いてオフラインでデジタル化し、半径−時間曲線に変換する。この半径−時間曲線は音響パルスに対する気泡の応答を示し、そしてAALに適用される放射圧の規模を計算するのに有用である。半径−時間曲線の分析により膨張率および時間の関数としての容量の推定値が得られる。前記したとおり、音響伝播の方向の瞬間放射圧はV(dP/dx)と等しく、従って、瞬間容量はパルス全体にわたり推定して積分しなければならない。音響パルスによりAALのフラグメント化が起こるかどうか調べるために7フレーム画像のタイミングシーケンスを位置づける。この分析によりベヒクルのインソネーションに関する旨適音響パラメーターの決定が可能となる。要すれば、変位を最大にするために旨適化された音響パラメーターを放射圧パルスのために、そしてシーケンスのフラグメント化部分のためには最大膨張フラグメント化を選択する。
【0152】
(実施例11:AALから染料流出の評価)
AALを用いた内皮細胞への送達の動的試験:AALの治療能力は内皮細胞への脂溶性染料の送達を増強するために超音波を使用して定量される。脂質膜を染色するBODIPY FLパクリタキセル(Molecular Probes,Eugene,OR)をAALシェル内に溶解する。HUVEC細胞をほぼ音響的に透明であるThermonoxカバーガラス(NalgeNunc,Rochester,NY)上で生育させる。カバーガラスを静的試験チャンバーの片面として使用し、総容量は約500μlとする。ミリリットル当たり10、100および1000個の気泡となるようにリン酸塩緩衝食塩水(PBS)中に希釈したAALを試験チャンバーに注入する。次にチャンバーを水充填チャンバー中の音響スタンドオフ上に置く。チャンバーの内張りとなる音響吸収剤が重複反射を防止する。チャンバーを上記したパルスシーケンスおよび超音波システムでインソネーションする。インソネーションの後、カバーガラスを除去し、蛍光顕微鏡(IX70、Olympus,Melville,NY)で光学的に観察し、内皮細胞への染料の送達を測定する。染料の取り込みの量および位置を音響周波数、音響圧および負荷サイクルの関数として定量する。実験はまた、コントロール条件下、即ち細胞と共にインキュベートしたAALを用いて超音波の非存在下において実施する。
【0153】
(実施例12:超音波放射圧を用いた薬物転移の流動試験)
細胞1401を培養して血管ミメティックとした1mmのポリエステル管を通して希薄溶液を送液する。流動はシリンジポンプで制御する。管をウォーターバスチャンバー内に入れ、対物レンズ1402および超音波変換器1403の両方の相互焦点となるように置く(図14)。ポリエステルはほぼ光学的および音響的に透明である。音響放射圧を上記した通り超音波変換器1403により発生させ、細胞層1401に流動キャリア1404を指向させるために使用する。(Molecular Probeはパクリタキセルの3種の蛍光誘導体:オレゴングリーン488パクリタキセル(Flutax−2、P−22310)、BODIPY FLパクリタキセル(P−7500)およびBODIPY564/570パクリタキセル(P−7501)を提供する)。BODIPY FL−パクリタキセルはAAL内に含ませる。AALを管に注入する。上記旨適であると示された(そしてインビボで使用される)パルスシーケンスをこの流動モデル系において評価する。管は実験後に切開する。HUVEC細胞への蛍光標識薬物の転移は蛍光計を領域に渡りスキャンし、蛍光を積分することにより流量の関数として定量的に測定される。モデル化合物としてのスーダンブラックの予備画像を図8に示す。
【0154】
(実施例13:内皮グリア共培養におけるインビトロの評価)
内皮グリア共培養:内皮細胞および共培養グリア細胞よりなるインビトロのBBBモデルを使用し、内皮細胞は半透過性のフィルターインサート上で生育させる。本試験において使用した細胞培養モデルはBBBの多くの最近の試験において有用であることがわかっている(A.H.Schinkel,Adv Drug Deliv Rev.36(2−3):179−194(Apr.5 1999)(全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる)。ECV304細胞系統(ATCCヨーロッパ)は眼瞼な内皮表現型および経内皮電気抵抗(TEER)の増大をC6グリオーマ細胞と共培養した場合には示している。さらにまた、ECV304細胞と共培養したC6は脳内皮において別の特性、例えばP−糖タンパク質の発現を起こす。Schinkel(1999)におけると同様、ECV304細胞はラットC6グリオーマ細胞に渡りインサート上で生育する。本発明者等は以前にBDFalcon(商標)細胞培養インサートを検討し、それらがほぼ音響的に透明であることを発見し、そしてRexolite(別のほぼ音響的に透明なプラスチック)から12穴のプレートを作成した。反射を最小限にすることはこれ等の実験のために重要である。C6細胞を培地に懸濁し、次に12穴プレートに添加し、結合のために3〜4時間置く。ECV304含有インサートをウェル内に入れる。インサートの基底部の支持体はC6細胞とECV304細胞またはインサート膜との間に物理的接触が無いように設計されている。次に共培養細胞を4日間に渡り37℃でインキュベートする。
【0155】
変換器をニードルハイドロホン(PZT−Z44−0200、Specialty Engineering Associates)および予備増幅器(A17dB、Specialty Engineering Associates)を用いて光学的視野において焦点設定しながらカリブレーションする。音響吸収ゴムを試料チャンバー下に置いて多重反射を防止する。
【0156】
内皮グリア共培養におけるP−gp抑制剤の存在下および非存在下の標識パクリタキセルに対する細胞の透過性の測定:AAL内のBODIPY FLパクリタキセルを表3に示すとおりこれ等の実験において使用する。AALを内皮細胞および共培養グリア細胞を含有する12穴プレートのウェルに添加し、食塩水を添加して超音波変換器をプレートに連結する。プレートを臨床的に関連性のある音響パラメーターの種々の組み合わせにおいて音響パルスに曝露し、その応答を測定する。上記実施例において旨適であることがわかっているパルスシーケンスを使用する。5秒、20秒、1分、5分および20分のインソネーションの後、食塩水、内皮細胞およびグリア細胞中の蛍光を測定し、コントロールの未曝露細胞と比較する。別個の実験において、バルスポダール(PSC833)またはコントロール(食塩水)を10μMの濃度で添加し、30分〜4時間曝露する。薬物溶液を細胞培養物に添加し、プレートを10分間回転振とう器上に置く。インソネーションを実施(または超音波を用いないコントロール)し、そして食塩水、グリア細胞および内皮細胞中の蛍光を測定する。さらにまた、内皮細胞層を染色して堅固な接合に関連するタンパク質クラウジン−1の接合部発現を評価することにより、プロトコルが機能を改変たかどうか調べる。クラウジン−1を評価するために、内皮細胞を冷メタノール中に固定し、PBS中0.1%トリトンX−100を用いて透過性付与する。細胞をブロッキング溶液中に浸積し、抗−クラウジン−1抗体と共にインキュベートする。Alexa Fluor568−コンジュゲートIgGを二次抗体として使用する。さらにまた、P−gpの発現を、C219モノクローナル抗体を用いて評価する。
【0157】
被験群は以下の通りであり、バルスポダールおよび超音波(US)曝露に関する一定範囲のパラメーターを含む。
【0158】
【表2】

経内皮電気抵抗(TEER)を用いてインビトロBBBの小イオン透過性の基礎および刺激薬剤誘導の変化を定量する。TEERの測定は抵抗測定チャンバー(EndohmチャンバーおよびEVOM抵抗計、World precision instrument,Sarasota,Fla)を用いて実施する。インサートを銀−銀電極の間にいれ、測定器を用いてTEERを記録する。抵抗は小イオンの透過性と反比例する。ブランクインサートのコントロール測定値を差し引いてバックグラウンドを除く。別の機序に基づいた粒子に対する透過性の変化を示すため、TEERを確認することは重要である。
【0159】
(実施例14:超音波治療とその後の領域のPET画像化)
マウスの8群を表4に示す通り治療用超音波の有無において試験する。これにより化学療法剤の局所送達の使用によりパクリタキセルの局所送達が増大する程度を調べることができる。パクリタキセル20mg/kg(AAL中)の有効量を適用し、その後治療用超音波を適用する。治療用超音波はインビトロの試験の間に測定されたパラメーターを使用しながら薬物/コントロールの注射により決定された期間適用する。本発明者等は循環AALが除去されることを確実にした後に、十分なインソネーションを使用してPET画像化を行っている。組織加熱の可能性はパルスシーケンスが終了した後に標準的な方法を用いて測定する。放射圧パルスにおいて使用した低圧(臨床最大値より遥かに低値)は加熱を最小限にする。次に、この処理の直後、PET画像化を30分間の期間に渡り実施する。
【0160】
PET画像化のために、各マウスを誘導チャンバー内にいれ、エアロゾル化されたイソフルランをチャンバー内にチューブシステムを経由して導入することによりマウスを麻酔する。睡眠後、マウスをチャンバーより出し、マスクを解して麻酔を維持し、そしてイソフルランの吸入量を必要麻酔深度に対して滴定する。これにより少なくとも1時間十分な定常的麻酔が得られる。麻酔の深度は呼吸パターンの確認により、および、パルス酸素測定を解した血中酸素飽和度の連続記録によりモニタリングする。体温は熱ランプおよび水ボトルのシステムを介して維持する。超音波をゲルパッドを介して頭蓋骨に連結する。尾部静脈24ゲージの留置カテーテルを用いて挿管し、AALを尾部静脈を介して単回注射する。超音波は頭蓋表面から0.2mmの深度において前頭面および矢状面の正中において0.2×0.2×0.2mmの領域に適用する。その後のPET画像化を用いて、30分の時点におけるインソネーションされた領域の画像を周囲の脳のものと比較することにより、インソネーションされた領域にF18−フルオロパクリタキセルが送達された程度を測定する。30分の時点(超音波後)において得られたPET画像がF18−フルオロパクリタキセルの分布を超音波が変化させたかどうかを調べる場合に最も有用である。
【0161】
【表3】

バルスポダール(Novartis Pharmaceuticals (Basel,Switzerland)):100mg/mlバルスポダールを含有する飲料溶液をそのベヒクルであるクレモフォアRH40、エタノール、d,L−α−トコフェロール、プロピレングリコールおよびラブラフィル(Labrafil)M2125CSの混合物で5mg/mlの濃度に希釈する。0.2mlの容量を体重20g当たり胃管栄養法により投与し、体重kg当たりバルスポダール50mgの用量とする。同様の方法において、ベヒクルをコントロール動物に投与する。
【0162】
試料サイズの正当化:本発明者等によれば、PET試験は10%の標準偏差を示す。α0.05の両側試験の場合は、標準偏差10%を示すことがわかっている画像化試験については0.9の検出力では治療効果の20%変化を検出するためには各群11匹が必要になる。
【0163】
F18−FPacの合成:F18−フルオロパクリタキセルの合成方法は以前に記載(DO Kiesewetter, EM Jagoda, et al.,Nucl Med Biol.30(1):11−24(Jan 2003)(全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる))されており、本発明においてはこの方法に従う。
【0164】
PET:F18−フルオロパクリタキセルを含有する放射標識粒子(AAL)をラットの尾部静脈に単回注入としてカテーテルを介して注入する。典型的には、50〜100マイクロCiの放射標識粒子を注入するが、許容できる画像は僅か10〜30マイクロCiでも得られる。トレーサーの注入を支援するために尾部静脈を拡張するためには、加熱ランプおよび/または温水を使用する。注入の前後のシリンジ中の活性は注入された用量が既知となるように用量の尺度として測定し、注入された用量が既知となるように崩壊について補正する。粒子の注入および初期の超音波試験の後、麻酔した動物をマイクロPETスキャナ中の専用ベッド上に置く。ベッドは動物に麻酔薬を送達する装置を有し、そして動物の体温を維持できるように温水を再循環させることにより加熱される。体温は直腸プローブを用いて試験期間中を通じてモニタリングする。データは30分の期間について列挙様式で獲得する。このデータセットは獲得後にユーザー定義の時間間隔となるように再保存することにより、動態を示す画像の動的シーケンスを得る。全データは有効化された統計学的な3D再構築アルゴリズムを用いて再構築する。検出正規化、無作為偶発およびむだ時間に関する補正を行う。光子の減衰または散乱に関しては現在補正は行われていないが、その理由はそれが比較的小さい作用であり、補正の複雑さは本発明者等の見解においてはこの状況においては正当化されないためである。絶対的な定量はラットの場合と概ね同じ形状および容量を用いて光子発射放射性核種の均一な濃度を含有するシリンダーの画像を用いてマウスの画像をカリブレーションすることにより行われる。カリブレーションスキャンはマウスのスキャンと同一の条件および再構築パラメーターの下に得られる。
【0165】
金標準物質測定:マウスをPET画像化後に屠殺し、血液および組織を採取し、計量し、そして超音波処理および未処理の領域における脳の放射能含有量(位置により測定)を測定し、示差的取り込み比率として表わす。
【0166】
(実施例15:Elegraの薬物送達シーケンスの実施)
臨床超音波システムであるSiemens Elegraを用いて放射圧−フラグメント化パルスのシーケンスをインビトロで送達した。システムはシーケンスにおいて各パルスのタイミング、空間的範囲および強度の制御を可能にするソフトウエアを実行する。
【0167】
(Elegraシーケンスソフトウエアの説明)
このソフトウエアは3.5PL28アレイ変換器と共に現在使用されている。慨すればパルスシーケンスは以下の通り超音波パルスを送る。第1にスキャナがPush Timeコントロールにより定義されるミリ秒数に対して高パルス反復周波数(PRF)において1視線に沿って脱焦点パルス化ドプラーパルスを送る。これ等のパルスは放射圧を発生させ、これが送達ベヒクルを変換器から離れて目的の細胞または血管に向かうように駆動する。次にシステムは、Pause timeコントロールで定義される第2の期間にはパルスを送らない。これにより二次的放射圧の作用により一群となった何れの送達ベヒクルも緩和して僅かに離れて流動するようになり、ブレーキパルスの作用を低下させる可能性がある多重気泡シールドを低減する。最後に、システムはフラグメント化パルスとして使用される5完全色ドプラーフレームを送る。各フレームは多くの視線よりなり、そして各視線はEnsemble Sizeコントロールによりセットされる多くのパルスよりなる。システムはRepeat Delayによりセットされる時間待機し、次にStop Acquireが押されるまで反復する。この時間の間、標的のBモードの画像化が所望により起こりえる。典型的なセッティングを用いた場合のシーケンスが要する総時間は僅か2.5s+0.5s+30s=33秒に渡るのみである。
【0168】
放射圧の振幅および周波数およびフラグメント化パルスはDopplerおよびColorのメニューを用いてそれぞれ超音波システム上で制御でき、そして画像化フレームは2Dメニューで制御される。1つの実施形態においては、以下のパラメーター、即ち、放射圧に関しては、低振幅(1%送信電力)、高周波数(3.6MHz)、多サイクル(3.6MHzで22.5mmのゲートサイズに対し約50)パルス、そして、フラグメント化に関しては高振幅(100%送信電力)、低周波数(2.0MHz)、短サイクル(約5サイクル)パルスを用いた。ソフトウエアに関する個々のコントロールを表5に記載する。
【0169】
【表4】

【0170】
【表5】

1つの実施例においては、以下のセッティング、即ち、Push Time−2500ミリ秒;Repeat Delay−30秒;Gate Size−22.5mm;Ensenble Size−6;Pause Time−0.5秒;2Dメニュー(画像化):周波数5.1MHz、送信電力0%;深度6.0cm;焦点位置2.0cm;フレーム速度最大Hz;Color menu(フラグメント化パルス):周波数2.0MHz;送信電力100%;Dopplerメニュー(放射圧パルス):周波数3.6MHz;送信電力1%;ゲート深度32mm;ゲートサイズ22.5mm。
【0171】
(ビームシェーピング)
一般的に、超音波変換器アレイのタイミングは可能な最高の画像化解像度となるような焦点設定されたビームを与えるように調節される。放射圧パルスおよびフラグメント化パルスの本発明者等の適用において、本発明者等は組織の容量に均一に行き渡るように本発明者等のシーケンスを適用することに関心を持っている。Elegraソフトウエアは標準的なパルスのドプラーパルスを放射圧のために使用している。パルス化ドプラーは通常は僅か1視線に沿って適用され、従って小さい横方向のビーム幅を有するのみである。より広い面積に沿って放射圧パルスを適用するためには、ソフトウエアはElegra焦点距離セッティングの3倍の距離に焦点を置くように指示しており、これにより目的の領域におけるビームが通常よりも大きくなり、より拡散するようになる。
【0172】
図15および16はカリブレーションされたニードルハイドロホン(Specialty Engineering Associates,Soquel,CA)を用いて作成した放射圧(図15)およびフラグメント化ビーム(図16)のビーム測定を示す。「横」方向はアレイの軸に沿った変換器の前面に平衡であり;「上昇」方向は変換器の前面に平衡であり、そしてアレイの軸に垂直である。
【0173】
放射圧ビームは変換器から3、5および7cmの横方向および上昇方向に示してあり、目的の距離である3cmにおいてビームは両方の方向においてほぼ1cmの半最大において全幅を有し、従ってパルスは約1cmの領域に渡って適用される。
【0174】
有効フラグメント化領域は変換器から3cmの横方向で約2cm幅であるが、その理由はドプラーパルスが数視線に渡って発射されているためである。
【0175】
白色光顕微鏡下に小管内を流動する薬物送達剤に対する放射圧−フラグメント化シーケンスの作用を調べた。図17に示す通り、流動中のベヒクルは放射圧の適用の間は管壁に向かって偏向し、放射圧とフラグメント化パルスの間の休止期には拡散し、そして放射圧パルスにより破壊のため消失するように観察された。
【0176】
第2の実験においては、蛍光標識およびビオチンコーティングした薬物送達カプセルをアビジンコーティング管内に連続的に注入した。放射圧−フラグメント化シーケンスによる管上の蛍光物質の構築が図18に示すとおり観察された。物質は管を経由する連続流動下に付着したまま残存していた。
【0177】
最後に、Elegraシステムからの10完全放射圧−フラグメント化シーケンスの適用後のプレーティングされた細胞への蛍光−染料含有薬物送達ベヒクルからの染料送達を明らかにした。結果は図19に示す通りである。
【0178】
本発明は好ましい実施形態および種々の代替実施形態を参照しながら特に提示して記載したが、当業者の知る通り本発明の精神および範囲から逸脱することなく形態および内容の種々の変更が可能である。
【0179】
本出願の本文内において引用した全ての参考文献、発行された特許および特許出願は全ての目的のために参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0180】
本発明の上記および他の特徴、態様および利点は以下の説明および添付する図面に関してより良く理解される。
【図1】図1は診断用および治療用の超音波照射を送達するための変換器のダイアグラムである。
【図2】図2は音響的に活性なリポソームの電子顕微鏡写真である。
【図3】図3は破壊の間の2つのAALに関する2Dおよび軌跡の画像を示す。
【図4】図4は1.5MHzの送信中心周波数および5サイクルのパルス長に対するAALの初期直径の範囲の最大膨張の総括グラフである。
【図5】図5aは最大フラグメントの正規化した容量を示すグラフであり、そして図5bはシステムの光学的解像度(0.1ミクロン)より小型であるか、光学的焦点を超えて進行し目視不可能となったフラグメントの容量を示すグラフである。
【図6】図6は推定される内壁および外壁の速度を示すグラフである。
【図7】図7はモデル薬物としてスーダンブラックを使用したマウスにおける超音波送達を示すグラフである。
【図8】図8aおよび8bは内皮細胞へのスーダンブラックの超音波支援送達を示す2つの倍率の顕微鏡写真である。
【図9】図9は血管内部の超音波パルシングによるキャリアの偏位を示す模式図である。
【図10】図10はインビトロの超音波造影剤に対する放射圧を示す3つの顕微鏡写真を包含する。図10aは静止時の半径2.4μm;図10bは静止時の半径1.7μm;図10cは静止時の半径1.5μm。中心周波数2.25MHz;圧力180kPa。送信波形は白色で表示。
【図11】図11は生体内顕微鏡による蛍光標識造影剤を用いたインビボの放射圧を示す2つの顕微鏡写真を示す。図11aは超音波オフ。図11bは超音波オン。
【図12】図12は超音波造影剤の推定された変位を示すグラフである。
【図13】図13はミクロン/サイクルに正規化されたAALの実験的に測定された変位のグラフである。
【図14】図14は流動実験系のダイアグラムである。
【図15】図15は放射圧ビームプロットである。
【図16】図16はフラグメント化ビームプロットである。
【図17】図17は流動中の薬物送達ベヒクルに対するElegraシーケンスの作用を示す顕微鏡写真である。ベヒクルの位置は丸で囲んである。
【図18】図18は試験管壁への蛍光染料の送達のエピ蛍光画像である。
【図19】図19は細胞への染料の送達の顕微鏡観察画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物の局所的送達のための方法であって、該方法は:
キャリアを投与する工程であって、ここで、該キャリアは化合物を含む、工程;および、
第1の周波数と圧力の組み合わせにおける超音波により発生された超音波放射圧に該キャリアを曝露することにより該キャリアを濃縮する工程;
を包含し、それにより該化合物を局所的に送達する、方法。
【請求項2】
第2の周波数と圧力の組み合わせにおける超音波を用いて前記濃縮されたキャリアをインソネートすることにより、該濃縮されたキャリアを破壊する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の周波数と圧力の組み合わせが、100kHz〜40MHzの範囲の中心周波数および20kPa〜6Mpaの範囲の圧力の組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の周波数と圧力の組み合わせが、0.1MHz〜5MHzの範囲の中心周波数および0.3MPa〜20.0MPaの範囲の圧力の組み合わせである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の周波数と圧力の組み合わせが、0.8MHz〜1.8MHzの範囲の中心周波数および0.3MPa〜2.0MPaの範囲の圧力の組み合わせである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記キャリアがポリマー、タンパク質、脂質、油脂またはガスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記キャリアの直径が0.1μm〜10μmである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記キャリアの直径が1μm〜10μmである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記キャリアの直径が2μm〜6μmである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記キャリアが>50nmの厚みを有するシェルを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記キャリアシェルの厚みが>100nmである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記キャリアシェルの厚みが>500nmである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記脂質または油脂が、1mm/秒と100mm/秒との間の37℃における粘度を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記脂質または油脂が、10mm/秒と80mm/秒との間の37℃における粘度を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記脂質または油脂が、20mm/秒と60mm/秒との間の37℃における粘度を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物が治療用化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
第2の周波数と圧力の組み合わせにおける超音波を用いて前記濃縮されたキャリアをインソネートすることにより、該濃縮されたキャリアを破壊する工程をさらに包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の周波数と圧力の組み合わせが、0.1MHz〜5MHzの範囲の中心周波数および0.3MPa〜20.0MPaの範囲の圧力の組み合わせである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の周波数と圧力の組み合わせが、0.8MHz〜1.8MHzの範囲の中心周波数および0.3MPa〜2.0MPaの範囲の圧力の組み合わせである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記投与が血管内へのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記血管が静脈、動脈、細静脈、細動脈、毛細血管およびリンパからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記濃縮が、前記投与されたキャリアの流動速度を低減すること、および、血管壁への該投与されたキャリアの変位からなる群から選択される機序により達成される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
第2の周波数と圧力の組み合わせにおける超音波を用いて前記濃縮されたキャリアをインソネートすることにより、該濃縮されたキャリアを破壊する工程をさらに包含する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の周波数と圧力の組み合わせが、0.1MHz〜5MHzの範囲の中心周波数および0.3MPa〜20.0MPaの範囲の圧力の組み合わせである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第2の周波数と圧力の組み合わせが、0.8MHz〜1.8MHzの範囲の中心周波数および0.33MPa〜2.0MPaの範囲の圧力の組み合わせである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記血管の透過性を増大させるのに十分な、第3の周波数と圧力の組み合わせにおける超音波に該血管を曝露する工程をさらに包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記第3の周波数と圧力の組み合わせが、0.1MHz〜5.0MHzの範囲の中心周波数および0.1MPa〜10MPaの範囲の圧力の組み合わせである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第3の周波数と圧力の組み合わせが、0.6MHz〜2.0MHzの範囲の中心周波数および0.6MPa〜2.5MPaの範囲の圧力の組み合わせである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
血管の透過性を調節する薬剤を投与する工程をさらに包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記薬剤がカリジン、ブラジキニン、プロスタグランジンおよびそのアナログからなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の周波数の倍音におけるインソネートされたキャリアからの超音波放射を受信すること、および、受信された超音波発射から画像を形成することにより、該キャリアを画像化する工程をさらに包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項32】
P−糖タンパク質の機能を調節する薬剤を投与する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記薬剤が、タモキシフェン、バルスポダール、ベラパミル、シクロスポリンAおよびVX−710からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記キャリアがさらにターゲティング部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
第2の周波数と圧力の組み合わせにおける超音波を用いて前記濃縮されたキャリアをインソネートすることにより、該濃縮されたキャリアを破壊する工程をさらに包含する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記第2の周波数と圧力の組み合わせが、0.1MHz〜5MHzの範囲の中心周波数および0.3MPa〜20.0MPaの範囲の圧力の組み合わせである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第2の周波数と圧力の組み合わせが、0.8MHz〜1.8MHzの囲の中心周波数および0.3MPa〜2.0MPaの範囲の圧力の組み合わせである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ターゲティング部分が抗体、抗体フラグメント、アプタマー、炭水化物、多糖類、ペプチドおよび小型有機分子からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
化合物の限局的送達のための方法であって、該方法は:
化合物を血管内に投与する工程;および、
該血管の透過性を増大させるのに十分な第1の周波数と圧力の組み合わせにおける超音波に該血管を曝露する工程であって、ここで、該化合物は該増大した透過性の血管を通って進出することにより局所的に送達される、工程;
を包含する、方法。
【請求項40】
前記透過性の増大がマイクロバブル誘導内皮細胞損傷の結果ではない、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記化合物が治療用化合物である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記血管が静脈、動脈、細静脈、細動脈、毛細血管およびリンパからなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記第1の周波数と圧力の組み合わせが、0.1MHz〜5.0MHzの範囲の中心周波数および0.1MPa〜10MPaの範囲の圧力の組み合わせである、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記第1の周波数と圧力の組み合わせが、0.6MHz〜2.0MHzの範囲の中心周波数および0.6MPa〜2.5MPaの範囲の圧力の組み合わせである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記化合物がキャリアと会合している、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記キャリアがポリマー、タンパク質、脂質、油脂またはガスを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
前記キャリアの直径が0.1μm〜10μmである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記キャリアの直径が1μm〜10μmである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記キャリアの直径が2μm〜6μmである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記キャリアが>50nmの厚みを有するシェルを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記キャリアシェルの厚みが>100nmである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記キャリアシェルの厚みが>500nmである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記脂質または油脂が、1mm/秒と100mm/秒との間の37℃における粘度を有する、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
前記脂質または油脂が、10mm/秒と80mm/秒との間の37℃における粘度を有する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記脂質または油脂が、20mm/秒と60mm/秒との間の37℃における粘度を有する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
第2の周波数の超音波で前記キャリアをインソネートすること、および、該第2の周波数の倍音でのインソネートされたキャリアからの超音波発射を受信すること、および、該受信された超音波発射から画像を形成することにより該キャリアを画像化する工程をさらに包含する、請求項45に記載の方法。
【請求項57】
前記第2の周波数が、0.8MHz〜20MHzの範囲の中心周波数である、請求項56の方法。
【請求項58】
第2の周波数と圧力の組み合わせにおける超音波により形成された超音波放射圧に前記キャリアを曝露することにより、該キャリアを濃縮する工程をさらに包含する、請求項45に記載の方法。
【請求項59】
前記第2の周波数と圧力の組み合わせが100kHz〜40MHzの範囲の中心周波数および20kPa〜6MPaの範囲の圧力の組み合わせである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記濃縮が、前記投与された薬物キャリアの流動速度を低減すること、および、血管壁への該投与された小胞組成物の変位からなる群から選択される機序により達成される、請求項58に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図3】
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【図10】
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【図11】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2007−513866(P2007−513866A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524889(P2006−524889)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/027931
【国際公開番号】WO2005/020918
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(500025503)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (26)
【Fターム(参考)】