説明

表示システムおよび表示装置

【課題】簡単な構成で、軽くて小さい電源を使用しても動作可能な表示システムおよび表示装置の実現。
【解決手段】表示装置1と、表示装置に表示データを供給するデータ供給部2と、を備え、表示データを通信する表示システムであって、表示装置1は、メモリ性の表示素子11,30と、通信部18と、表示素子の表示を書き換える表示書き換え部12,32-34,38,39と、通信部および表示書き換え部への電源供給を制御する電源供給制御部13,37と、を備え、電源供給制御部13は、表示書き換え部が表示を書き換える書き換え期間中、通信部18への電源供給を停止し、データ供給部2は、書き換え期間中、表示装置への通信を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリ性の表示装置と、表示装置に表示データを供給するデータ供給部が分離しており、その間を通信経路で接続する表示システムおよびそこで使用する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電源を切っても表示内容を保持できる書換え可能な表示デバイスとし、各企業および大学などにおいて電子ペーパーの開発が盛んに進められている。電子ペーパーの表示方式として、電気泳動方式、電子粉流体方式、ツイストボール方式、液晶表示ディスプレイなど各種の表示方式が提案されている。いずれの方式の電子ペーパーも、フレキシブルなフィルム基板をベースとすることで、可撓性を実現している。また、電子ペーパーは、電源が無くても表示状態を保持可能で、電気的に書換え可能であるという特徴を有しており、超低消費電力の電子ペーパーが実現できる。
【0003】
電子ペーパーには、上記の紙のような可撓性と共に、目にやさしく、疲れない反射型の表示が要望されている。電子ペーパーの有力な方式にコレステリック液晶を使用した液晶表示素子(LCD)があり、反射型でカラー表示可能であることから注目されている。コレステリック液晶は、半永久的な表示保持(メモリ性)や鮮やかなカラー表示、高コントラスト、高解像度といった優れた特徴を有している。以下、コレステリック液晶表示素子を例として説明を行うが、開示の技術はこれに限定されるものではない。
【0004】
デジタル化された本や新聞、漫画、あるいはコンピュータからの印刷出力などを閲覧するにあたって、これらの画像データを電子ペーパー上に表示させることで、通常の液晶に表示させるのと同等の表示を実現できる。そして、電子ペーパーに表示する方が、液晶に表示する場合よりも電力消費を抑制できるという利点がある。これは、上記の画像データが、動画のように1秒間に数十回書き換えられるような性質の表示データではなく、一度表示するとある程度の時間書き換える必要のない表示データであるためである。通常の液晶表示装置は、同じ画像を表示する場合でも常時電圧パルスを印加しており電力を消費する。これに対して、電子ペーパーはメモリ性があるため同じ画像を表示する場合には書き換えを行う必要がない。
【0005】
電子ペーパーで構成される表示装置と、電子ペーパーに表示する表示データを記憶しておくデータ供給部とを分離し、データ供給部から電子ペーパーへの表示データの供給を通信で行うように構成することで、電子ペーパーの可搬性が向上する。これにより、電子ペーパーを様々な場所に設置することが可能になる。特に、データ供給部と電子ペーパーの間の画像データの通信をBluetooth(登録商標)のような無線方式で行うことにより、可搬性が大幅に向上する。無線通信方式を使用する場合、通信処理や表示画像の書き換え処理を行うために表示装置に電源を内蔵する必要があるが、可搬性の観点から、電源は軽く且つ小さいことが要求される。
【0006】
しかし、軽くて小さい電源ほど電力供給能力は小さく、表示装置は非力な電源で動作できることが要求される。そのため、長時間の消費電力を小さくすると共に、短期間に大電流を流さないようにすること、すなわち最大電流を小さくすることが必要になる。
【0007】
印刷装置や表示装置などの画像出力部と、画像データ供給部とを分離し、その間の画像データの通信をBluetooth(登録商標)で行う分離型の出力システムにおいて、画像を出力するための駆動部と、駆動部以外の部分への電源供給を制御可能にする。そして、画像を出力する時のみ駆動部への電源を供給する。これにより、画像出力時以外は動作する必要のない駆動部への不要な電源供給が停止されるため、消費電力が低減される。
【0008】
また、分離型の表示システムにおいて、表示装置の通信部をスタンバイモードにして低消費電力化を図ることが知られている。具体的には、通信部、制御のためのマイクロプロセッサおよび画像を出力するためのその他の部分への電源供給を制御可能にする。そして、通信部は画像データの複数の組みを一括して受信し、受信後はデータ受信感知に必要な最低限の回路以外の動作を止めてスタンバイモードになる。書き換え処理はプロセッサによるタイマー起動に応じて行われる。これにより、通信動作による電力消費のオーバーヘッドを低減することができる。
【0009】
【特許文献1】特開2003−163711号公報
【特許文献2】特開2006−30718号公報
【特許文献3】国際公開WO2007/110949A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記の通信部をスタンバイモードにして低消費電力化する構成は、画像データの複数の組みを一括して受信するもので、これらの画像データを記憶する大きな容量のメモリを表示装置に設ける必要があり、小型化および低消費電力化の別の問題を生じる。また、実際の使用では、画像データは不定期に一組ずつ受信することが多く、そのような場合には、通信部をスタンバイモードにできない。
【0011】
さらに、上記の構成では、通信部をスタンバイモードにしており、通信データの感知が可能である。そのため、スタンバイモードであってもデータが通信された時には受信動作を行うことになり、表示書き換え処理中に受信動作が起動される場合も起こり得る。この場合、短期間に大電流が流れることになり、電源の最大電流をそれに合わせて設定する必要が生じ、大きな電源となる。
【0012】
開示の実施形態は、簡単な構成で、軽くて小さい電源を使用しても動作可能な表示システムおよび表示装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態の表示システムは、表示装置と、表示装置に表示データを供給するデータ供給部と、を備え、表示データをデータ供給部から表示装置に通信する表示システムであって、表示装置は、メモリ性の表示素子と、データ供給部との通信部と、表示素子の表示を書き換える表示書き換え部と、通信部および表示書き換え部への電源供給を制御する電源供給制御部と、を備え、電源供給制御部は、表示書き換え部が表示素子の表示をデータ供給部から供給された表示データに応じて書き換える書き換え期間中、通信部への電源供給を停止し、データ供給部は、書き換え期間中、表示装置への通信を停止する。
【発明の効果】
【0014】
実施形態の表示システムは、表示データに書き換える書き換え期間中通信部への電源供給を停止するので消費電力を低減でき、特に通信部とそれ以外の部分への電源供給を同時に行わないため、電源の最大電流を低減できる。データ供給部は、書き換え期間中、表示装置への通信を停止するため、表示装置の通信部がまったく非動作状態になっても問題は生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、第1実施形態の表示システムの構成を示すブロック図である。
【0016】
図1に示すように、第1実施形態の表示システムは、表示装置1と、データ供給部2と、を有し、表示装置1とデータ供給部2の間では無線通信により通信可能に接続されている。ここでは、無線通信はBluetooth(登録商標)方式を使用し、データ供給部2から表示装置1にJPEG方式で圧縮された画像データが送信される。
【0017】
表示装置1は、電子ペーパー11と、表示駆動部12と、電源供給制御部13と、画像処理部14と、メモリ15と、温度センサ16と、メ書き換え時間導出部18と、通信部18と、を有する。なお、図示していないが、表示装置1の全体を制御する制御部が設けられている。電子ペーパー11は、可撓性を有するペーパー状である。表示装置1の電子ペーパー11を除く部分も薄く小型に作られており、表示装置1全体も可撓性を有するペーパー状である。
【0018】
データ供給部2は、送信データ記憶部21と、通信制御部22と、通信部23と、を有する。
【0019】
電子ペーパー11は、書き込み処理により表示した画像が電源の供給無しに長時間保持可能なメモリ性の表示素子であればどのようなものでもよいが、ここではコレステリック液晶表示素子を使用する。コレステリック液晶表示素子については後述する。表示駆動部12は、画像データに応じた表示を行うように電子ペーパー11を駆動する。コレステリック液晶表示素子の場合には、表示駆動部12は、パッシブ駆動方式の汎用ドライバが使用される。
【0020】
電源供給制御部13は、表示装置11内の各部に電源を供給し、供給するかしないかを独立に制御可能である。電子ペーパーの場合には、電源としてボタン電池などが使用される。ここで、電源供給制御部13は、表示駆動部12と、メモリ15と、通信部18と、画像処理部14と、残りの部分と、にそれぞれ供給する電源を独立に制御できる。
【0021】
画像処理部14は、例えばマイクロプロセッサやDSPで構成され、データ供給部2から送信されメモリ15に記憶された画像データを処理して表示駆動部12に供給する形式のデータに変換し、変換した画像データをメモリ15に記憶する。メモリ15は、データ供給部2から送信された画像データおよび変換画像データを記憶する。また、メモリ15は、表示装置1に搭載されている電子ペーパー11の固有の特性値も記憶している。特性値を記憶する部分は不揮発性のメモリで構成される。
【0022】
温度センサ16は、電子ペーパー11の温度を検出する。温度検出箇所は1箇所でもよいが、複数箇所の温度を検出してその平均を検出温度としてもよい。書き換え時間導出部18は、メモリ15に記憶された特性値データ、温度センサ16の検出した温度およびデータ供給部2から送信された画像データに基づいて表示画像の書き換えに要する書き換え時間を導出する。書き換え時間導出部18は、表示装置1の全体の制御を行う制御部と一緒に低機能のマイクロプロセッサで実現される。
【0023】
表示装置1の通信部18およびデータ供給部2の通信部23は、Bluetooth(登録商標)方式で通信を行い、データ供給部2の通信部23から表示装置1の通信部18にJPEG方式で圧縮された画像データを送信する。なお、表示装置1の通信部18からデータ供給部2の通信部23へデータを送信することも可能である。
【0024】
送信データ記憶部21は、画像データなど表示装置1に送信するデータを記憶する。通信制御部22は、送信データ記憶部21に記憶された画像データを通信部23から送信する制御を行う。
【0025】
データ供給部2は、表示装置1が設置された近くに配置され、有線方式や無線方式(例えば電話回線)でホストコンピュータに接続される。表示する画像は、ホストコンピュータからデータ供給部2に通信される。なお、送信データ記憶部21が、画像データの多数の組みを記憶しており、あらかじめ設定された時間間隔で順番に表示装置1に供給して表示するようにしてもよい。
【0026】
次に、コレステリック液晶を利用した電子ペーパー11を有する表示装置1について詳しく説明する。なお、以下の説明において、特許文献3などに記載された従来技術は、参照され、組み入れられるものとする。
【0027】
図2は、コレステリック液晶などのメモリ性の表示材料を有するドットマトリクス型の表示素子30を使用した実施形態の液晶表示装置の全体構成を示す図である。例えば、表示素子30は、A4判XGA仕様で、1024×768画素を有する。表示素子30が電子ペーパー11として使用される。
【0028】
電源31は、例えば3V〜5Vの電圧を出力する。昇圧部32は、DC−DCコンバータなどのレギュレータにより、電源31からの入力電圧を36V〜40Vに昇圧する。電圧切替部33は、抵抗分割などにより各種の電圧を生成する。電圧安定部34は、電圧切替部33から供給される各種の電圧を安定化させるために、オペアンプのボルテージフォロア回路を使用することが望ましい。なお、図示していないが、電源31からは、昇圧部32だけでなく、画像処理部14、メモリ15、通信部18などへも電源が供給され、制御回路37により各部に電源を供給するかしないかが制御可能である。
【0029】
原振クロック部35は、動作の基本となる基本クロックを発生する。分周部36は、基本クロックを分周して動作に必要な各種クロックを生成する。
【0030】
制御回路37は、基本クロック、各種クロックおよび画像データに基づいて制御信号を生成して、コモンドライバ38およびセグメントドライバ39に供給する。制御回路37は、簡単なマイクロプロセッサ(MCU)で構成され、表示装置1の各部の制御を行う。制御回路37は、温度センサ16の検出した表示素子30の温度を読み取り、検出温度、メモリ15に記憶された表示素子30の特性値および書き換える画像データから書き換えに要する時間を導出する。より詳細には、制御回路37は、書き換える画像データから画像処理部14が変換処理に要する画像処理時間を、変換した画像データ、検出温度および特性値から、コモンドライバ38およびセグメントドライバ39により表示素子30の画像を書き込むのに要する書き込み時間を導出する。画像処理時間と書き込み時間の和が書き換え時間である。
【0031】
メモリ15は、DRAMやSRAMなどのダイナミックメモリ部と、不揮発性メモリ部と、で構成される。ダイナミックメモリ部は、通信部18で受信した画像データを記憶すする。不揮発性メモリ部は、出荷時に入力された表示素子30の特性値を記憶する。
【0032】
画像処理部は、例えば、マイクロプロセッサやDSPで構成され、メモリ15に記憶された通信部19から供給された画像データを処理してコモンドライバ38およびセグメントドライバ39に供給する形式の画像に変換する。変換された画像データは、メモリ15のダイナミックメモリ部に記憶され、書き込み処理時にセグメントドライバ39に供給される。
【0033】
以上の説明から、図1の電子ペーパー11は図2の表示素子30に対応し、表示駆動部12は昇圧部32、電圧切替部33、電圧安定部34、コモンドライバ38およびセグメントドライバ39に対応し、電源供給制御部13は電源31および制御回路37の一部に対応し、書き換え時間導出部17は制御回路37の一部に対応する。
【0034】
次に、書き換え時間の演算処理を説明する。メモリ15の不揮発性部に記憶している表示素子の特性値は、書き込み処理時に表示駆動部12が電子ペーパー11に印加する電圧印加時間である。例えば、コレステリック液晶表示素子30の場合には、液晶をプレーナ状態(白状態)にするために、コモンドライバ38およびセグメントドライバ39が所定の電圧(リセット電圧:±36V)を所定期間印加するが、この印加時間が表示素子ごとに異なる。例えば、リセット電圧を50ms印加すればプレーナ状態になる場合と、100ms印加しないとプレーナ状態にならない場合などがあり得る。また、プレーナ状態からプレーナ状態とフォーカルコニック状態の混在した状態(中間調状態または黒状態)へと遷移させる場合に、階調値と書き込み電圧を印加する時間との関係も表示素子により異なる。さらに、特性値として、表示素子30の画素数、状態遷移後の電圧無印加時間の長さなど各種ある。メモリ15は、これらのうち画像の書き込み時間に関係する特性値を記憶する。
【0035】
コレステリック液晶表示素子の場合、コモンドライバ38により駆動される電極単位で画像を書き換えることができる。従って、書き込み時間は、書き換える領域の大きさで異なる。書き込み時間は、以下の式で表される。
【0036】
書き込み時間=書き換え領域をプレーナ状態にする時間(リセット時間)+書き換え領域をプレーナ状態からプレーナ状態とフォーカルコニック状態の混在した状態にする時間(階調書込み時間)+電圧の無印加時間
書き換え領域をプレーナ状態にする場合、書き換え領域全体に同時にリセット電圧を印加する。従って、書き換え領域をプレーナ状態にするリセット時間は上記の特性値から算出できる。
【0037】
書き換え領域をプレーナ状態からプレーナ状態とフォーカルコニック状態の混在した状態にする場合、その領域にコモンドライバ38からスキャンパルスを印加し、スキャンパルスの印加に同期してセグメントドライバ39から書き込み電圧を印加する。従って、書き換え領域をプレーナ状態とフォーカルコニック状態の混在した状態にする時間(会長書き込み時間)は、書き換えライン数×1ラインのスキャン時間で表される。1ラインのスキャン時間は、上記のように特性値により算出できる。なお、中間調を表示するために複数回のスキャンを行う場合には、各回のスキャンの合計時間になる。
【0038】
なお、表示装置によっては、画素毎に書き込みを行う場合もあるので、その場合には書き換える領域の画素数により時間を算出する。さらに、表示素子によっては一部の画像部分を書き換える場合でも全面を書き換える場合もあり、その場合には書き換え領域の大きさは時間に影響せず、時間は特性値のみにより決定される。
【0039】
電圧の無印加時間は、特性値により決定される。
【0040】
コレステリック液晶表示素子の場合、温度により「リセット時間」および「階調書込み時間」が変化する。そのため、温度センサ16の検出した表示素子30の温度により、これらの時間を補正する。例えば、メモリ15は、温度に対応させた複数の特性値を記憶しており、制御回路37(書き換え時間導出部17)は、検出した温度に応じた特性値を読出し。上記の演算を行い、書き換え時間を算出する。
【0041】
画像処理部14の性能は温度ではほとんど変化しないので、画像処理部14において受信した画像データを処理するのに要する画像処理時間を見積もることが可能である。例えば、画像処理時間は、画像データ量にほぼ比例するので、画像データ量に応じて決定するようにしてもよい。
【0042】
いずれにしろ、同じ書き換え条件であれば、書き換え時間は同じ値が導出される必要がある。
【0043】
以上のようにして導出した書き換え時間は、画像処理部14で受信した画像の処理を開始する前に、表示装置1の通信部18からデータ供給部2の通信部23に送信される。通信制御部22は、送信された書き換え時間にある程度の余裕時間を加えて通信断絶時間を決定し、その間は表示装置1への通信を行わないようにする。
【0044】
一方、表示装置1では、通信部18が書き換え時間を送信した後、電源供給制御部13が、通信部18への電源供給を停止するように電源31を制御する。さらに、電源供給制御部13は、通信部18への電源供給を停止した後、画像処理部14への電源供給を開始するように制御する。そして、電源供給制御部13は、画像処理部14における処理が終了すると、画像処理部14への電源供給を停止し、表示駆動部12(コモンドライバ38およびセグメントドライバ39)への電源供給を開始するように制御する。電子ペーパー11(表示素子30)への書き込み処理が終了すると、電源供給制御部13は、表示駆動部12(昇圧部32、電圧切り替え部33、電圧安定部34、コモンドライバ38およびセグメントドライバ39)への電源供給を停止し、通信部18への電源供給を開始するように制御する。通信部18は、データ供給部2から新しい画像データに書き換える指令が来るのを監視する。この時、通信部18は、通信が要求されたことのみを検出する待ち受け状態(スタンバイモード)になり、消費電力を低減することが望ましい。
【0045】
上記のように、表示装置1の通信部18は、書き換え時間を送信した後、書き換え処理が完了するまでの間、電源供給が停止され、データ供給部2からの信号をまったく受け付けない非動作状態になる。もし、通信部18が非動作状態であるにもかかわらず、データ供給部2の通信部23が信号を送信すると、相手先を見失うことになり以後正常な通信動作が行えなくなる。しかし、上記のように、本実施形態では、データ供給部2の通信部23は、通信断絶時間中通信部18へ通信信号を送信しないので何ら問題を生じない。
【0046】
データ供給部の画像データの送信先がプリンタである場合、紙詰まりなどのために画像データの出力動作が完了するまでの時間が一定せず、通信断絶時間を設定できない。これに対して、電子ペーパーのような表示装置であれば、上記のように書き換え時間は一意に決定することができる。通信断絶時間中は、データ供給部がデータ通信を停止することにより、表示装置の通信部への電源供給を停止して電源から供給する電流を低減できる。
【0047】
図3は第1実施形態における表示装置1の処理を示すフローチャートであり、図4は第1実施形態におけるデータ供給部2の処理を示すフローチャートである。以下、第1実施形態の表示システムの処理を説明する。
【0048】
まず、図3および図4に示した動作を開始する前に、表示装置1は、データ供給部2との通信のためのBluetooth(登録商標)規格で決められている送受信方式に関するやり取りは完了しているものとする。この時、表示装置1では、通信部18にのみ電源が供給されている。
【0049】
ステップS1では、画像データの送信要求があるか確認する処理が行われ、なければこのステップが繰り返され、送信要求があれば処理はステップS2に進む。
【0050】
ステップS2では、待ち受け状態を解除し、画像データの受信を開始する処理が行われる。
【0051】
ステップS3では、画像データの受信を行い、受信した画像データをメモリ15に記憶する処理が行われる。
【0052】
ステップS4では、画像データの受信が終了したかを判定し、終了していなければステップS3を繰り返し、終了した時には処理はステップS5に進む。
【0053】
ステップS5では、書き換え時間導出部17がメモリ15から電子ペーパーの特性値を読み出す。
【0054】
ステップS6では、書き換え時間導出部17が温度センサ16から温度を読み出す。
【0055】
ステップS7では、書き換え時間導出部17が受信した画像データから書き換え領域のライン数を導出する。
【0056】
ステップS8では、書き換え時間導出部17が、その時点の温度で、書き換え領域をリセットするのに要するリセット時間と、1ラインの書き込み処理に必要な時間と、を導出する。
【0057】
ステップS9では、書き換え時間導出部17が、ステップS8で算出した1ラインの書き込み処理時間に書き換え領域のライン数を乗じた値(階調書き込み時間)と、リセット時間と、電圧無印加時間との和を計算する。この和が、受信した画像データを電子ペーパーに表示するのに要する書き込み時間である。
【0058】
ステップS10では、書き換え時間導出部17が、受信した画像データのサイズから、JPEG圧縮された画像を展開するのに要する画像処理時間を計算する。
【0059】
ステップS11では、書き換え時間導出部17が、書き込み時間と画像処理時間の和である書き換え時間を計算する。計算した値は、通信部18を介してデータ送信部2に送信される。
【0060】
ステップS12では、電源供給制御部13が、通信部18への電源供給を停止する。
【0061】
ステップS13では、電源供給制御部13が、画像処理部14への電源供給を開始する。
【0062】
ステップS14では、画像処理部14は、メモリ15に記憶されているJPEG圧縮された画像データを展開する。
【0063】
ステップS15では、画像処理部14は、展開したデータをメモリ15に記憶する。
【0064】
ステップS16では、電源供給制御部13が、画像処理部14への電源供給を停止する。
【0065】
ステップS17では、電源供給制御部13が、表示駆動部12(コモンドライバ38、セグメントドライバ39、昇圧部32、電圧切替部33、電圧安定部34など)への電源供給を開始する。
【0066】
ステップS18では、表示駆動部12(昇圧部32、電圧切替部33、電圧安定部34など)が、液晶をプレーナ状態にするためのリセット電圧を生成する。
【0067】
ステップS19では、表示駆動部12(コモンドライバ38、セグメントドライバ39)が、リセット電圧を書き換え領域の液晶に印加してプレーナ状態にする。
【0068】
ステップS20では、表示駆動部12(昇圧部32、電圧切替部33、電圧安定部34など)が、液晶をプレーナ状態とフォーカルコニック状態の混在状態にするための書き込み電圧を生成する。
【0069】
ステップS21では、表示駆動部12(コモンドライバ38、セグメントドライバ39)が、書き込み電圧を書き換え領域の液晶に印加して画素値に応じた混在状態になるようにする。
【0070】
ステップS22では、電源供給制御部13が、表示駆動部12への電源供給を停止する。
【0071】
ステップS23では、電源供給制御部13が、通信部18への電源供給を開始する。
【0072】
ステップS24では、通信部18が、待ち受け状態になる。処理は、ステップS1に戻る。
【0073】
次に、第1実施形態のデータ供給部2の処理を、図4を参照して説明する。
【0074】
ステップS31では、通信制御部22が、表示装置1に送信して表示する画像データがあるか確認する処理が行われ、なければこのステップが繰り返され、送信する画像データがあれば処理はステップS32に進む。
【0075】
ステップS32では、通信部23が、表示装置1に対して送信要求を送出する。これに応じて表示装置1では、ステップS1およびS2が行われる。
【0076】
ステップS33では、通信部23が、画像データを表示装置1に送信する。
【0077】
ステップS34では、通信部23が、表示装置1から送信された書き換え時間を受信する。
【0078】
ステップS35では、通信制御部22が、受信した書き換え時間にある程度余裕を加えて通信断絶時間を設定し、通信断絶時間のタイマーをセットする。さらに、通信制御部22は、この通信断絶時間中は通信部23からの通信を停止するように制御する。
【0079】
ステップS36では、通信制御部22が、通信断絶時間が経過したかを判定し、通信断絶時間が終了するまでこの判定を続ける。終了すると、処理はステップS37に進む。
【0080】
ステップS37では、通信制御部22が、通信部23からの通信を解除するように制御する。
【0081】
なお、ステップS35およびS36中に送信するデータが発生しても、ステップS37で通信部23の通信が解除されるまで、通信制御部22が、データを保留する処理を行う。
【0082】
図3および図4のフローチャートに示した第1実施形態の動作では、画像信号を受信するたびに、表示装置1において書き換え時間を計算して、計算した書き換え時間をデータ供給部2に送信していた。第2実施形態では、データ供給部2に電子ペーパーの特性値を記憶しておき、表示装置から検出した電子ペーパーの温度データをデータ供給部2に送信する。データ供給部2は、画像データを有しているので、特性値および温度データに基づいて書き換え時間を計算できる。
【0083】
図5は、第2実施形態の表示システムのデータ供給部2の構成を示す図である。図5に示すように、第2実施形態のデータ供給部2は、第1実施形態の構成に加えて、特性値メモリ24と、書き換え時間導出部25と、を有する。特性値メモリ24は、第1実施形態で説明したのと同様の特性値を記憶する。また、書き換え時間導出部25は、第1実施形態の表示装置1に設けられた書き換え時間導出部17と同じ機能を有する。
【0084】
第2実施形態の表示システムの表示装置1では、リセット処理および階調書込み処理において電圧を印加する時間を決定するのに、第1実施形態と同様の計算を行う必要があるので、第1実施形態と同様に書き換え時間導出部17および温度センサ16が設けられ、メモリ15は特性値を記憶する。そして、通信部18が、書き換え時間を送信せずに、温度データを送信することが第1実施形態と異なる。
【0085】
図6は、第2実施形態の表示システムの表示装置1における処理を示すフローチャートである。図7は、第2実施形態の表示システムのデータ供給部2における処理を示すフローチャートである。
【0086】
第2実施形態においても、図6および図7に示した処理を開始する前に、表示装置1とデータ供給部2との間で、Bluetooth(登録商標)規格で決められている送受信方式に関するやり取りは完了しているものとする。まず、第2実施形態の表示装置1における処理を説明する。
【0087】
ステップS40では、上記の送受信方式に関するやり取りを行う時に、書き換え時間導出部17がメモリ15から電子ペーパーの特性値を読み出し、通信部18を介してデータ供給部2に送信する。書き換え時間導出部17は、特性値をそのまま保持する。
【0088】
ステップS41からS44は、第1実施形態のステップS1からS4と同じであるので、説明は省略する。
【0089】
ステップS46では、書き換え時間導出部17が温度センサ16から温度を読み出す。
【0090】
ステップS51では、書き換え時間導出部17が温度データを通信部18を介してデータ供給部2に送信する。
【0091】
ステップS52では、電源供給制御部13が、通信部18への電源供給を停止する。
【0092】
ステップS53では、電源供給制御部13が、画像処理部14への電源供給を開始する。
【0093】
ステップS54では、画像処理部14は、メモリ15に記憶されているJPEG圧縮された画像データを展開する。
【0094】
ステップS55では、画像処理部14は、展開したデータをメモリ15に記憶する。
【0095】
ステップS56では、電源供給制御部13が、画像処理部14への電源供給を停止する。
【0096】
ステップS57では、電源供給制御部13が、表示駆動部12(コモンドライバ38、セグメントドライバ39、昇圧部32、電圧切替部33、電圧安定部34など)への電源供給を開始する。
【0097】
ステップS58では、表示駆動部12(昇圧部32、電圧切替部33、電圧安定部34など)が、液晶をプレーナ状態にするためのリセット電圧を生成する。
【0098】
ステップS59では、表示駆動部12(コモンドライバ38、セグメントドライバ39)が、リセット電圧を書き換え領域の液晶に印加してプレーナ状態にする。
【0099】
ステップS60では、表示駆動部12(昇圧部32、電圧切替部33、電圧安定部34など)が、液晶をプレーナ状態とフォーカルコニック状態の混在状態にするための書き込み電圧を生成する。
【0100】
ステップS61では、表示駆動部12(コモンドライバ38、セグメントドライバ39)が、書き込み電圧を書き換え領域の液晶に印加して画素値に応じた混在状態になるようにする。
【0101】
ステップS62では、電源供給制御部13が、表示駆動部12への電源供給を停止する。
【0102】
ステップS63では、電源供給制御部13が、通信部18への電源供給を開始する。
【0103】
ステップS64では、通信部18が、待ち受け状態になる。処理は、ステップS41に戻る。
【0104】
次に、第2実施形態のデータ供給部2の処理を、図7を参照して説明する。
【0105】
ステップS70では、特性値メモリ34が、送信されてきた特性値を記憶する。
【0106】
ステップS71では、通信制御部22が、表示装置1に送信して表示する画像データがあるか確認する処理が行われ、なければこのステップが繰り返され、送信する画像データがあれば処理はステップS72に進む。
【0107】
ステップS72では、通信部23が、表示装置1に対して送信要求を送出する。
【0108】
ステップS73では、通信部23が、画像データを表示装置1に送信する。
【0109】
ステップS74では、書き換え時間導出部25が、第1実施形態の場合と同様の方法で書き換え時間を計算する。
【0110】
ステップS75では、通信制御部22が、計算した書き換え時間にある程度余裕を加えて通信断絶時間を設定し、通信断絶時間のタイマーをセットする。
【0111】
ステップS76では、通信制御部22が、この通信断絶時間中は通信部23からの通信を停止するように制御する。
【0112】
ステップS77では、通信制御部22が、通信断絶時間が経過したかを判定し、通信断絶時間が終了するまでこの判定を続ける。終了すると、処理はステップS78に進む。
【0113】
ステップS78では、通信制御部22が、通信部23からの通信を解除するように制御する。
【0114】
以上、コレステリック液晶表示装置を電子ペーパーとして利用する例を説明したが、本発明はこれに限定されず、電子ペーパーであれば適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】図1は、第1実施形態の表示システムの全体構成を示す図である。
【図2】図2は、第1実施形態のコレステリック液晶表示装置の概略構成を示す図である。
【図3】図3は、第1実施形態の表示システムの表示装置の処理を示すフローチャートである。
【図4】図4は、第1実施形態の表示システムのデータ供給部の処理を示すフローチャートである。
【図5】図5は、第2実施形態の表示システムのデータ供給部の構成を示す図である。
【図6】図6は、第2実施形態の表示システムの表示装置の処理を示すフローチャートである。
【図7】図7は、第2実施形態の表示システムのデータ供給部の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0116】
1 表示装置
2 データ供給部
11 電子ペーパー
12 表示駆動部
13 電源供給制御部
14 画像処理部
15 メモリ
16 温度センサ
17 書き換え時間導出部
18 通信部
21 送信データ記憶部
22 通信制御部
23 通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置と、前記表示装置に表示データを供給するデータ供給部と、を備え、表示データを前記データ供給部から前記表示装置に通信する表示システムであって、
前記表示装置は、メモリ性の表示素子と、前記データ供給部との通信部と、前記表示素子の表示を書き換える表示書き換え部と、前記通信部および前記表示書き換え部への電源供給を制御する電源供給制御部と、を備え、
前記電源供給制御部は、前記表示書き換え部が前記表示素子の表示を前記データ供給部から供給された表示データに応じて書き換える書き換え期間中、前記通信部への電源供給を停止し、
前記データ供給部は、前記書き換え期間中、前記表示装置への通信を停止することを特徴とする表示システム。
【請求項2】
前記表示装置は、
前記表示素子の書き換えに関係する特性値を記憶する特性値メモリと、
前記特性値に基づいて、前記表示書き換え部が前記表示素子の表示を供給された表示データに書き換えるのに要する書き換え時間を導出する書き換え時間導出部と、を備え、
前記書き換え期間の前に、導出した書き換え時間を前記データ供給部に送信し、
前記データ供給部は、受信した前記書き換え時間の間、前記表示装置への通信を停止することを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
前記表示装置は、前記表示素子の温度を検出する温度センサを備え、
前記書き換え時間導出部は、前記特性値に加えて検出した温度に基づいて、前記表示書き換え部が前記表示素子の表示を供給された表示データに書き換えるのに要する書き換え時間を導出することを特徴とする請求項2に記載の表示システム。
【請求項4】
前記データ供給部は、
前記表示素子の書き換えに関係する特性値を記憶する特性値メモリと、
前記特性値に基づいて、前記表示素子の前記表示書き換え部が前記表示素子の表示を供給した表示データに書き換えるのに要する書き換え時間を導出する書き換え時間導出部と、を備え、
前記データ供給部は、表示データの供給終了後前記書き換え時間の間、前記表示装置への通信を停止することを特徴とする請求項1または2に記載の表示システム。
【請求項5】
前記表示装置は、前記表示素子の温度を検出する温度センサを備え、検出した温度を前記データ供給部に送信し、
前記データ供給部の前記書き換え時間導出部は、前記特性値に加えて送信された温度に基づいて、前記表示書き換え部が前記表示素子の表示を供給された表示データに書き換えるのに要する書き換え時間を導出することを特徴とする請求項4に記載の表示システム。
【請求項6】
メモリ性の表示素子と、外部の表示データ送信部から表示データを受信する通信部と、前記表示素子の表示を書き換える表示書き換え部と、前記表示側通信部および前記表示書き換え部への電源供給を制御する電源供給制御部と、
前記表示素子の書き換えに関係する特性値を記憶する特性値メモリと、
前記特性値に基づいて、前記表示書き換え部が前記表示素子の表示を供給された表示データに書き換えるのに要する書き換え時間を導出する書き換え時間導出部と、を備え、
前記書き換え期間の前に、導出した書き換え時間を、前記通信部を介して外部の前記表示データ送信部に送信し、
前記電源供給制御部は、前記表示書き換え部が前記表示素子の表示を受信した表示データに書き換える書き換え期間中、前記通信部への電源供給を停止することを特徴とする表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−72560(P2010−72560A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242725(P2008−242725)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】