表示素子用薄膜形成方法および表示素子
【課題】露光用のマスクの設計の複雑化を抑制しつつ、分割領域の継ぎ目を視認し難くして品位良好な表示領域を得ることが可能な表示素子用薄膜形成方法を提供する。
【解決手段】ガラス基板の表示領域に対応する対応領域を、互いに交差する分割線により分割した分割領域毎にレチクルを用いて露光することで、画素電極35を、画素24のそれぞれの電気的特性が表示領域全体でランダムにばらつくように形成する。露光用のレチクルの設計の複雑化を抑制しつつ、分割領域の継ぎ目を視認し難くして品位良好な表示領域を得ることが可能になる。
【解決手段】ガラス基板の表示領域に対応する対応領域を、互いに交差する分割線により分割した分割領域毎にレチクルを用いて露光することで、画素電極35を、画素24のそれぞれの電気的特性が表示領域全体でランダムにばらつくように形成する。露光用のレチクルの設計の複雑化を抑制しつつ、分割領域の継ぎ目を視認し難くして品位良好な表示領域を得ることが可能になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示素子の表示領域に薄膜を形成する表示素子用薄膜形成方法、および、薄膜を表示領域に形成した表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示素子としての液晶表示素子、すなわち液晶パネルは、走査線や信号線などの配線、画素電極などの電極、薄膜トランジスタなどのスイッチング素子などの各層をアレイ基板上に有している。これらは、例えば導電体、あるいは誘電体からなる薄膜を成膜する成膜工程と、この薄膜上にフォトレジストを塗布する塗布工程と、塗布されたフォトレジストを所定のパターンを有するマスクを介してして露光する露光工程と、露光されたフォトレジストを現像する現像工程と、フォトレジストが除去されて露出した薄膜を除去するエッチング工程となどを繰り返すことによって形成される。
【0003】
露光工程に用いる露光用のマスクは、アレイ基板などに用いる絶縁基板であるガラス基板のサイズや、ガラス基板サイズの1/2〜1/3程度の大型マスクも存在するが、例えば5インチ角程度のマスク(以下、レチクルという)を使用し、分割露光方式の露光処理をすることで形成するものがある。このような場合、基板に対してレチクルの大きさが小さいので、パターンを形成する領域を、例えば水平方向および垂直方向に沿う分割線により複数の分割領域に分割して、これら分割領域のフォトレジストを、順次対応するレチクルを介して露光する。
【0004】
しかしながら、上述したような分割露光では、各境界線において継ぎ目が視認される場合がある。このため、液晶パネルに表示される表示画面の品位の低下といった問題が発生する。
【0005】
このような継ぎ目が認識される原因の1つとしては、画素パターンの特性の違いが露光ずれによって発生することがある。例えば画素を構成する信号線と透明電極との間の容量の容量値が、露光ずれによって変化し、表示特性が変わってしまう。また、原因の他の1つとしては、露光時のショットが異なることにより画素毎の開口率が変わることがある。このような開口率の変化は、例えばパターンの線幅が変わったり、他のレイヤとの関係によって開口率が変わったりすることで生じる。
【0006】
これらの対策として、例えば分割線をジグザグ状に形成することで、境界の特性の変化勾配を緩衝化して継ぎ目を視認し難くする方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−322864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された方法では、レチクルにおける境界線のパターンが複雑化し、しかも継ぎ目において、隣接する各マスクを確実に噛み合わせるために、レチクルの設計および検査に多大な時間を費やす。このため、製造コストの増大を招くとなどの問題が発生する。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、露光用のマスクの設計の複雑化を抑制しつつ、分割領域の継ぎ目を視認し難くして品位良好な表示領域を得ることが可能な表示素子用薄膜形成方法および表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、対をなす基板を備え、複数の画素を有する表示領域が形成された表示素子に薄膜を形成する表示素子用薄膜形成方法であって、少なくともいずれか一方の前記基板の前記表示領域に対応する対応領域を互いに交差する分割線により分割した分割領域毎にマスクを用いて露光することで、少なくとも1層の薄膜を、前記画素のそれぞれの電気的特性が前記表示領域全体でランダムにばらつくように形成するものである。
【0010】
また、本発明は、対をなす基板を備え、複数の画素を有する表示領域が形成された表示素子に薄膜を形成する表示素子用薄膜形成方法であって、少なくともいずれか一方の前記基板の前記表示領域に対応する対応領域を互いに交差する分割線により分割した分割領域毎にマスクを用いて露光することで、少なくとも1層の薄膜を、前記画素のそれぞれの開口率が前記表示領域全体でランダムにばらつくように形成するものである。
【0011】
さらに、本発明は、対をなす基板を備え、複数の画素を有する表示領域が形成された表示素子であって、前記基板の少なくともいずれか一方は、前記画素のそれぞれの電気的特性が前記表示領域全体でランダムにばらつくように形成された薄膜を有しているものである。
【0012】
そして、本発明は、対をなす基板を備え、複数の画素を有する表示領域が形成された表示素子であって、前記基板の少なくともいずれか一方は、前記画素のそれぞれの開口率が前記表示領域全体でランダムにばらつくように形成された薄膜を有しているものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、画素のそれぞれの電気的特性が表示領域全体でランダムにばらつくように薄膜を形成することで、露光用のマスクの設計の複雑化を抑制しつつ、分割領域の継ぎ目を視認し難くして品位良好な表示領域を得ることが可能になる。
【0014】
また、本発明によれば、画素のそれぞれの開口率が表示領域全体でランダムにばらつくように薄膜を形成することで、露光用のマスクの設計の複雑化を抑制しつつ、分割領域の継ぎ目を視認し難くして品位良好な表示領域を得ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第1の実施の形態の構成を図面を参照して説明する。
【0016】
図3ないし図5において、11は表示装置としての液晶表示装置を示し、この液晶表示装置11は、表示素子としての液晶表示素子である液晶パネル12と、この液晶パネル12の背面側に配設され白色光を照射する面状光源装置としてのバックライト13とを備え、バックライト13からの光を透過して利用する、いわゆる透過型のものである。なお、以下、液晶パネル12は透過型のものとして説明するが、外光を反射して利用する反射型、あるいは透過型と反射型とを用いる半透過型でも対応可能であることはいうまでもない。
【0017】
液晶パネル12は、カラー表示可能なアクティブマトリクス型の液晶パネルであって、第1基板であるアレイ基板15と第2基板である対向基板16とを対向配置し、これら基板15,16間に光変調層としての液晶層17および間隙を一定に保持するスペーサを介在させてその周縁部を接着層18により貼り合わせて構成され、中央部に位置する四角形状の表示領域22に、複数、例えば3つずつの同一サイズの副画素23からなる複数の画素24が一方向である垂直方向(V方向)と他方向である水平方向(H方向)とのそれぞれに沿ってマトリクス状に配設されているとともに、表示領域22の周囲を囲む額縁状に遮光部としての非表示領域25が形成されている。また、液晶パネル12には、図示しない偏光板がアレイ基板15の表示側および対向基板16の背面(裏面)側にそれぞれ貼り付けられている。
【0018】
アレイ基板15は、例えば透光性を有する絶縁性の基板としての第1基板本体であるガラス基板30を有し、このガラス基板30の液晶層17側(図3中の上側)の主面上には、図2に示すように、複数の配線である走査線(ゲート配線)31と、複数の配線である信号線(ソース配線)32とが互いに略直交するように格子状に配設され、これら走査線31と信号線32とのそれぞれの交差位置に、スイッチング素子である薄膜トランジスタ(TFT)33が設けられ、これらを覆って液晶層17の液晶分子の配向用の配向膜34が形成されている。
【0019】
走査線31および信号線32は、導電性を有する金属などの部材によりそれぞれ形成された薄膜である。このため、これら走査線31および信号線32は、光を透過しない。換言すれば、これら走査線31および信号線32は、遮光性(反射性)を有し、各画素24の間に位置して、副画素23(画素24)毎の開口率を設定する開口率設定手段である配線ブラックマトリクス(BM)として機能している。また、走査線31は、水平方向(H方向)に沿って形成され、信号線32は、垂直方向(V方向)に沿って形成されている。
【0020】
薄膜トランジスタ33は、例えばアモルファスシリコン、あるいはポリシリコンなどにより形成された薄膜である半導体層、薄膜であるゲート電極、半導体層に電気的に接続される薄膜であるソース電極およびドレイン電極、および、これらをそれぞれ絶縁する薄膜である絶縁膜などを備えている。そして、この薄膜トランジスタ33は、ゲート電極が走査線31と接続され、ソース電極が信号線32と接続されているとともに、ドレイン電極に副画素23を形成する透明電極としての薄膜である画素電極35が接続されており、走査線駆動回路であるゲートドライバ36からの信号が走査線31を介してゲート電極に印加されることでスイッチング制御され、信号線駆動回路であるソースドライバ37から信号線32を介して入力された信号に対応して画素電極に電圧を印加することで、副画素23をそれぞれ独立して点灯/消灯させるものである。
【0021】
各画素電極35は、例えばITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電材料により略四角形状に形成されている。また、これら画素電極35は、図1に示すように、その一部に任意の形状の形状(面積)変化部である切欠部35aが例えば水平方向(H方向)の左側部など、任意の位置に形成されることなどにより、画素24のそれぞれの電気的特性が表示領域22全体でランダムに、すなわち周期性を有することなくばらつくように設定されている。換言すれば、各画素電極35は、1つの画素24を構成する複数、例えば水平方向(H方向)に隣接する3つの副画素23単位での面積の総和、あるいは形状の組み合わせなどが互いに異なっている。
【0022】
なお、切欠部35aは、あまり大きく形成しすぎると副画素23の面積が必要以上に狭くなるので、画素電極35の全体の面積に対して例えば所定の比率以下、具体的には10%以下とすることが好ましく、特に1%から4%程度とすることが好ましい。
【0023】
一方、対向基板16は、図3ないし図5に示すように、透光性を有する基板としての第2基板本体であるガラス基板51を有し、このガラス基板51上に、着色層としての薄膜であるカラーフィルタ層52、薄膜である対向電極53、および、液晶層17の液晶分子の配向用の薄膜である配向膜54などが順次積層されている。
【0024】
カラーフィルタ層52は、図3に示すように、混色により白色または黒色を形成可能な複数の原色、例えば赤(R)、緑(G)および青(B)のそれぞれに対応する着色部52r,52g,52bを備え、これら着色部52r,52g,52bが表示領域22に対応する部分にストライプ状に形成されている。また、これらカラーフィルタ層52の着色部52r,52g,52bのそれぞれの間の位置、および、カラーフィルタ層52の外周全体には、副画素23(画素24)毎の開口率を設定する遮光層としての薄膜である開口率設定手段すなわちブラックマトリクス層56がそれぞれ形成されている。
【0025】
着色部52r,52g,52bは、それぞれ例えば合成樹脂などにより形成されており、画素電極35に対応する大きさに形成されている。
【0026】
ブラックマトリクス層56は、例えば遮光性を有する黒色の合成樹脂などにより形成されており、アレイ基板15に対して対向基板16を貼り合わせた際の画素電極35と着色部52r,52g,52bとのわずかな位置ずれなどにより1つの画素電極35上に互いに色が異なる複数の着色部52r,52g,52bが重なって、副画素23において所望されない混色が生じることを防止するためのものである。
【0027】
次に、上記第1の実施の形態の製造方法を説明する。
【0028】
液晶パネル12を製造する際には、図6ないし図8に示すように、アレイ基板15用の大判基板としての大判ガラス基板61上の所定位置に、各液晶パネル12に対応する各層を複数(図7では例えば6箇所)形成するとともに、対向基板16用の大判基板としての大判ガラス基板62上の所定位置に、各液晶パネル12に対応する各層を大判ガラス基板61側の各層の形成箇所に対応する複数(例えば6箇所)形成し、これら大判ガラス基板61,62を接着層18により貼り合わせた後、各液晶パネル12の位置で大判ガラス基板61,62を割断する。なお、液晶層17は、大判ガラス基板61,62を貼り合わせる際に大判ガラス基板61,62のいずれか一方に液晶材料を滴下してもよいし、割断した後に液晶材料を注入してもよい。
【0029】
各大判ガラス基板61,62の各層は、例えば薄膜を形成する成膜工程、形成した薄膜上にフォトレジストを塗布する塗布工程、塗布されたフォトレジストを所定のパターンを有するマスクであるレチクルR(図8)を介して露光する露光工程、露光されたフォトレジストを現像する現像工程、および、フォトレジストが除去されて露出した薄膜を除去するエッチング工程などを繰り返すことによって形成される。
【0030】
アレイ基板15用の大判ガラス基板61には、走査線31や信号線32などの配線、画素電極35などの電極、および、薄膜トランジスタ33などが形成される。また、対向基板16用の大判ガラス基板62には、カラーフィルタ層52、ブラックマトリクス層56、および、対向電極53などが形成される。
【0031】
例えばアレイ基板15用の大判ガラス基板61の各層の形成の際の露光工程時には、図7に示すように、各液晶パネル12の表示領域22に対応する四角形状の対応領域Aを、互いに交差する分割線、例えば水平方向(H方向)に沿う分割線である水平分割線L1と垂直方向(V方向)に沿う分割線である垂直分割線L2とで複数、例えば4つの分割領域ADに、特性上影響のない場所に沿って分割し、それぞれの分割領域ADに対応して設計したレチクルR(図8)を用いて分割露光する。
【0032】
このようなレチクルRの設計には、一般に設計用プログラムであるCADが用いられる。CADのデータ構造は、例えば副画素23のような繰り返しパターンの場合には、1つの副画素23を設計した後、これらをマトリクス状に並設する機能を使用することで、繰り返しパターンを有する部分は大幅にデータを削減可能となっている。
【0033】
レチクルRには、例えば画素電極35(図1)の形状を変えて画素24の電気的特性を表示領域22全体でばらつかせるための加工をする。ここで、マトリクス状に並設した副画素23のパターンの一部だけを変更しようとすると、マトリクス全体をデータ展開しなければならず、データ量が膨大になるため、基本的な副画素23のパターンは変更せず、変更する分のパターンのみを追加して作成することが好ましい。すなわち、例えば画素電極35の最も面積が小さいパターンを設計してこのパターンをマトリクス状に並設した後、追加するパターンをランダムに発生させて、マトリクス状に並設したパターンに重ねることで、変更分のパターンを追加するだけでランダムにばらつかせる加工を施すことができる。
【0034】
そして、露光工程では、上記のように加工したレチクルRを露光用データと呼ばれる座標データを用いて大判ガラス基板61上の所定位置に順次配置し、露光機により露光する。露光用データは、レチクルR上の露光領域の範囲および基準となる中心点を示すデータ、および、露光される大判ガラス基板61上の座標のデータなどを含んでおり、レチクルR上の指定した範囲が大判ガラス基板61上の指定した領域に露光される。
【0035】
この結果、図1に示すように画素電極35の形状(面積)が画素24毎にばらつくことで、画素24の電気的特性が表示領域22全体でランダムにばらつくように構成される。
【0036】
なお、分割領域ADは、互いに隣接するもの同士の一部が重なるように分割されており、互いに重なる部分で多重露光される。
【0037】
上述したように、上記第1の実施の形態によれば、画素24のそれぞれの電気的特性が表示領域22全体でランダムにばらつくように薄膜である画素電極35を形成、具体的には画素電極35の形状(面積)を画素24毎に変えるように形成することで、露光用のレチクルRの設計の複雑化を抑制しつつ、分割領域ADでの継ぎ目を視認し難くして品位良好な表示領域22を得ることが可能になる。
【0038】
図9(b)に示す従来例のように、分割したレチクルを直線分割のまま露光すると、直線部Lが認識されてしまうことがある。このとき、目視で認識されるレベルは、各副画素23を例えば256階調としたとき、1または2階調程度の所定階調の違いである。したがって、これら1または2階調程度の違いを視認しにくくするために、それ以上の2階調以上25階調以下(好ましくは3階調以上10階調以下)の階調差のばらつきがあるように副画素23の画素電極35のパターンを設計することで、図9(a)に示すように、図9(b)の直線部Lに対応する部分での継ぎ目を認識しにくくなる。ここで、図9においては、便宜的に、直線部Lの左右の階調差およびランダムな階調のばらつきを、それぞれ強調して示している。
【0039】
なお、上記第1の実施の形態において、画素電極35の形状(面積)のばらつきは、画素24毎に変えるように構成したが、例えば副画素23毎に変えるように形成してもよいし、あるいは複数の副画素23毎、あるいは複数の画素24毎に変えるように形成してもよい。
【0040】
また、画素電極35の一部に形成した形状(面積)変化部は、切欠部35aだけでなく、例えば突出部などとしてもよい。
【0041】
さらに、副画素23の電気的特性を表示領域22全体でランダムにばらつかせることができれば、画素電極35に限らず、例えば薄膜トランジスタ33を構成する各薄膜、走査線31、あるいは信号線32などの薄膜の少なくともいずれかのパターン形状を画素24毎に変えるようにしても同様の作用効果を得ることができる。
【0042】
そして、カラーフィルタ層52は、対向基板16側に形成するものに限定されず、例えばアレイ基板15側に形成するものとしてもよい。この場合には、表示領域22の周辺などの所定の領域を除き、ブラックマトリクス層56を形成しない構成とすることが可能である。
【0043】
次に、第2の実施の形態を図10を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0044】
この第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態の画素電極35の形状をランダムにばらつかせる構成に代えて、対向基板16のブラックマトリクス層56の形状(面積)を画素24毎にばらつかせることで、画素24の開口率を表示領域22全体でランダムにばらつかせるものである。
【0045】
すなわち、図10に示すように、ブラックマトリクス層56の例えば水平方向(H方向)右側部にそれぞれ異なる形状の形状(面積)変化部である突出部56aを形成することで、画素24の開口率が互いに異なっている。換言すれば、ブラックマトリクス層56は、1つの画素24を構成する複数、例えば水平方向(H方向)に隣接する3つの副画素23単位での面積の総和、あるいは形状の組み合わせなどが互いに異なっている。
【0046】
なお、突出部56aは、あまり大きく形成しすぎると副画素23の開口率が必要以上に小さくなるので、各副画素23の開口率に対して例えば所定の比率以下の面積、具体的には10%、さらに好ましくは1%から4%程度とすることが好ましい。
【0047】
そして、対向基板16用の大判ガラス基板62の各層の形成の際の露光工程時には、図6に示すように、各液晶パネル12の表示領域22に対応する四角形状の対応領域Aを、互いに交差する分割線、例えば水平方向(H方向)に沿う分割線である水平分割線L1と垂直方向(V方向)に沿う分割線である垂直分割線L2とで複数、例えば4つの分割領域ADに、特性上影響のない場所に沿って分割し、それぞれの分割領域ADに対応して設計したレチクルRを用いて分割露光する。
【0048】
ここで、レチクルRは、上記第1の実施の形態と同様に、ブラックマトリクス層56の形状を変えて画素24の開口率を表示領域22全体でばらつかせるための加工をする。この加工に際しては、例えばブラックマトリクス層56の最も面積が小さいパターンを設計してこのパターンを並設した後、追加するパターンをランダムに発生させて、並設したパターンに重ねることで、変更分のパターンを追加するだけでランダムにばらつかせる加工を施すことができる。
【0049】
そして、このように加工したレチクルRを、露光用データを用いて大判ガラス基板62上の所定位置に順次配置し、露光機により露光する。
【0050】
このように、画素24のそれぞれの開口率が表示領域22全体でランダムにばらつくように薄膜であるブラックマトリクス層56を形成、具体的にはブラックマトリクス層56の形状(面積)を画素24毎に変えるように形成することで、露光用のレチクルRの設計の複雑化を抑制しつつ、分割領域ADでの継ぎ目を視認し難くして品位良好な表示領域22を得ることが可能になる。
【0051】
なお、上記第2の実施の形態において、ブラックマトリクス層56の一部に形成した形状(面積)変化部は、突出部56aだけでなく、例えば切欠部などとしてもよい。
【0052】
また、副画素23の開口率を表示領域22全体でランダムにばらつかせることができれば、ブラックマトリクス層56に限らず、例えばカラーフィルタ層52の着色部52r,52g,52bによる遮光パターン形状、あるいは、アレイ基板15側の走査線31および信号線32などによる遮光パターン形状などを副画素23毎に変えるようにしても同様の作用効果を得ることができる。
【0053】
さらに、上記各実施の形態において、対応領域Aを分割領域ADに分割する分割線は、水平方向および垂直方向に沿うものだけでなく、互いに交差する任意の直線状の分割線とすることが可能である。
【0054】
そして、表示素子としては、液晶パネル12だけでなく、例えば有機EL表示素子など、対をなす基板を備えた任意の表示素子であっても、同様に対応することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施の形態の表示素子の表示領域の薄膜を拡大して示す平面図である。
【図2】同上表示素子を示す回路図である。
【図3】同上表示素子を示す説明断面図である。
【図4】同上表示素子を示す平面図である。
【図5】同上表示素子を備えた表示装置を示す説明図である。
【図6】同上表示素子の製造方法の大判基板の一方を示す平面図である。
【図7】同上大判基板を貼り合わせた状態を示す断面図である。
【図8】同上表示素子の薄膜の露光用のマスクを示す平面図である。
【図9】(a)は同上表示素子の画素の特性をランダムにばらつかせた状態での表示領域での表示状態を示す説明図、(b)は従来例の表示素子の表示領域での表示状態を示す説明図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態の表示素子の着色層と遮光部との位置関係を示す平面図である。
【符号の説明】
【0056】
12 表示素子としての液晶パネル
22 表示領域
24 画素
30,51 基板としてのガラス基板
35 薄膜である画素電極
56 薄膜であるブラックマトリクス層
A 対応領域
AD 分割領域
L1 分割線である水平分割線
L2 分割線である垂直分割線
R マスクであるレチクル
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示素子の表示領域に薄膜を形成する表示素子用薄膜形成方法、および、薄膜を表示領域に形成した表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示素子としての液晶表示素子、すなわち液晶パネルは、走査線や信号線などの配線、画素電極などの電極、薄膜トランジスタなどのスイッチング素子などの各層をアレイ基板上に有している。これらは、例えば導電体、あるいは誘電体からなる薄膜を成膜する成膜工程と、この薄膜上にフォトレジストを塗布する塗布工程と、塗布されたフォトレジストを所定のパターンを有するマスクを介してして露光する露光工程と、露光されたフォトレジストを現像する現像工程と、フォトレジストが除去されて露出した薄膜を除去するエッチング工程となどを繰り返すことによって形成される。
【0003】
露光工程に用いる露光用のマスクは、アレイ基板などに用いる絶縁基板であるガラス基板のサイズや、ガラス基板サイズの1/2〜1/3程度の大型マスクも存在するが、例えば5インチ角程度のマスク(以下、レチクルという)を使用し、分割露光方式の露光処理をすることで形成するものがある。このような場合、基板に対してレチクルの大きさが小さいので、パターンを形成する領域を、例えば水平方向および垂直方向に沿う分割線により複数の分割領域に分割して、これら分割領域のフォトレジストを、順次対応するレチクルを介して露光する。
【0004】
しかしながら、上述したような分割露光では、各境界線において継ぎ目が視認される場合がある。このため、液晶パネルに表示される表示画面の品位の低下といった問題が発生する。
【0005】
このような継ぎ目が認識される原因の1つとしては、画素パターンの特性の違いが露光ずれによって発生することがある。例えば画素を構成する信号線と透明電極との間の容量の容量値が、露光ずれによって変化し、表示特性が変わってしまう。また、原因の他の1つとしては、露光時のショットが異なることにより画素毎の開口率が変わることがある。このような開口率の変化は、例えばパターンの線幅が変わったり、他のレイヤとの関係によって開口率が変わったりすることで生じる。
【0006】
これらの対策として、例えば分割線をジグザグ状に形成することで、境界の特性の変化勾配を緩衝化して継ぎ目を視認し難くする方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−322864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された方法では、レチクルにおける境界線のパターンが複雑化し、しかも継ぎ目において、隣接する各マスクを確実に噛み合わせるために、レチクルの設計および検査に多大な時間を費やす。このため、製造コストの増大を招くとなどの問題が発生する。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、露光用のマスクの設計の複雑化を抑制しつつ、分割領域の継ぎ目を視認し難くして品位良好な表示領域を得ることが可能な表示素子用薄膜形成方法および表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、対をなす基板を備え、複数の画素を有する表示領域が形成された表示素子に薄膜を形成する表示素子用薄膜形成方法であって、少なくともいずれか一方の前記基板の前記表示領域に対応する対応領域を互いに交差する分割線により分割した分割領域毎にマスクを用いて露光することで、少なくとも1層の薄膜を、前記画素のそれぞれの電気的特性が前記表示領域全体でランダムにばらつくように形成するものである。
【0010】
また、本発明は、対をなす基板を備え、複数の画素を有する表示領域が形成された表示素子に薄膜を形成する表示素子用薄膜形成方法であって、少なくともいずれか一方の前記基板の前記表示領域に対応する対応領域を互いに交差する分割線により分割した分割領域毎にマスクを用いて露光することで、少なくとも1層の薄膜を、前記画素のそれぞれの開口率が前記表示領域全体でランダムにばらつくように形成するものである。
【0011】
さらに、本発明は、対をなす基板を備え、複数の画素を有する表示領域が形成された表示素子であって、前記基板の少なくともいずれか一方は、前記画素のそれぞれの電気的特性が前記表示領域全体でランダムにばらつくように形成された薄膜を有しているものである。
【0012】
そして、本発明は、対をなす基板を備え、複数の画素を有する表示領域が形成された表示素子であって、前記基板の少なくともいずれか一方は、前記画素のそれぞれの開口率が前記表示領域全体でランダムにばらつくように形成された薄膜を有しているものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、画素のそれぞれの電気的特性が表示領域全体でランダムにばらつくように薄膜を形成することで、露光用のマスクの設計の複雑化を抑制しつつ、分割領域の継ぎ目を視認し難くして品位良好な表示領域を得ることが可能になる。
【0014】
また、本発明によれば、画素のそれぞれの開口率が表示領域全体でランダムにばらつくように薄膜を形成することで、露光用のマスクの設計の複雑化を抑制しつつ、分割領域の継ぎ目を視認し難くして品位良好な表示領域を得ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第1の実施の形態の構成を図面を参照して説明する。
【0016】
図3ないし図5において、11は表示装置としての液晶表示装置を示し、この液晶表示装置11は、表示素子としての液晶表示素子である液晶パネル12と、この液晶パネル12の背面側に配設され白色光を照射する面状光源装置としてのバックライト13とを備え、バックライト13からの光を透過して利用する、いわゆる透過型のものである。なお、以下、液晶パネル12は透過型のものとして説明するが、外光を反射して利用する反射型、あるいは透過型と反射型とを用いる半透過型でも対応可能であることはいうまでもない。
【0017】
液晶パネル12は、カラー表示可能なアクティブマトリクス型の液晶パネルであって、第1基板であるアレイ基板15と第2基板である対向基板16とを対向配置し、これら基板15,16間に光変調層としての液晶層17および間隙を一定に保持するスペーサを介在させてその周縁部を接着層18により貼り合わせて構成され、中央部に位置する四角形状の表示領域22に、複数、例えば3つずつの同一サイズの副画素23からなる複数の画素24が一方向である垂直方向(V方向)と他方向である水平方向(H方向)とのそれぞれに沿ってマトリクス状に配設されているとともに、表示領域22の周囲を囲む額縁状に遮光部としての非表示領域25が形成されている。また、液晶パネル12には、図示しない偏光板がアレイ基板15の表示側および対向基板16の背面(裏面)側にそれぞれ貼り付けられている。
【0018】
アレイ基板15は、例えば透光性を有する絶縁性の基板としての第1基板本体であるガラス基板30を有し、このガラス基板30の液晶層17側(図3中の上側)の主面上には、図2に示すように、複数の配線である走査線(ゲート配線)31と、複数の配線である信号線(ソース配線)32とが互いに略直交するように格子状に配設され、これら走査線31と信号線32とのそれぞれの交差位置に、スイッチング素子である薄膜トランジスタ(TFT)33が設けられ、これらを覆って液晶層17の液晶分子の配向用の配向膜34が形成されている。
【0019】
走査線31および信号線32は、導電性を有する金属などの部材によりそれぞれ形成された薄膜である。このため、これら走査線31および信号線32は、光を透過しない。換言すれば、これら走査線31および信号線32は、遮光性(反射性)を有し、各画素24の間に位置して、副画素23(画素24)毎の開口率を設定する開口率設定手段である配線ブラックマトリクス(BM)として機能している。また、走査線31は、水平方向(H方向)に沿って形成され、信号線32は、垂直方向(V方向)に沿って形成されている。
【0020】
薄膜トランジスタ33は、例えばアモルファスシリコン、あるいはポリシリコンなどにより形成された薄膜である半導体層、薄膜であるゲート電極、半導体層に電気的に接続される薄膜であるソース電極およびドレイン電極、および、これらをそれぞれ絶縁する薄膜である絶縁膜などを備えている。そして、この薄膜トランジスタ33は、ゲート電極が走査線31と接続され、ソース電極が信号線32と接続されているとともに、ドレイン電極に副画素23を形成する透明電極としての薄膜である画素電極35が接続されており、走査線駆動回路であるゲートドライバ36からの信号が走査線31を介してゲート電極に印加されることでスイッチング制御され、信号線駆動回路であるソースドライバ37から信号線32を介して入力された信号に対応して画素電極に電圧を印加することで、副画素23をそれぞれ独立して点灯/消灯させるものである。
【0021】
各画素電極35は、例えばITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電材料により略四角形状に形成されている。また、これら画素電極35は、図1に示すように、その一部に任意の形状の形状(面積)変化部である切欠部35aが例えば水平方向(H方向)の左側部など、任意の位置に形成されることなどにより、画素24のそれぞれの電気的特性が表示領域22全体でランダムに、すなわち周期性を有することなくばらつくように設定されている。換言すれば、各画素電極35は、1つの画素24を構成する複数、例えば水平方向(H方向)に隣接する3つの副画素23単位での面積の総和、あるいは形状の組み合わせなどが互いに異なっている。
【0022】
なお、切欠部35aは、あまり大きく形成しすぎると副画素23の面積が必要以上に狭くなるので、画素電極35の全体の面積に対して例えば所定の比率以下、具体的には10%以下とすることが好ましく、特に1%から4%程度とすることが好ましい。
【0023】
一方、対向基板16は、図3ないし図5に示すように、透光性を有する基板としての第2基板本体であるガラス基板51を有し、このガラス基板51上に、着色層としての薄膜であるカラーフィルタ層52、薄膜である対向電極53、および、液晶層17の液晶分子の配向用の薄膜である配向膜54などが順次積層されている。
【0024】
カラーフィルタ層52は、図3に示すように、混色により白色または黒色を形成可能な複数の原色、例えば赤(R)、緑(G)および青(B)のそれぞれに対応する着色部52r,52g,52bを備え、これら着色部52r,52g,52bが表示領域22に対応する部分にストライプ状に形成されている。また、これらカラーフィルタ層52の着色部52r,52g,52bのそれぞれの間の位置、および、カラーフィルタ層52の外周全体には、副画素23(画素24)毎の開口率を設定する遮光層としての薄膜である開口率設定手段すなわちブラックマトリクス層56がそれぞれ形成されている。
【0025】
着色部52r,52g,52bは、それぞれ例えば合成樹脂などにより形成されており、画素電極35に対応する大きさに形成されている。
【0026】
ブラックマトリクス層56は、例えば遮光性を有する黒色の合成樹脂などにより形成されており、アレイ基板15に対して対向基板16を貼り合わせた際の画素電極35と着色部52r,52g,52bとのわずかな位置ずれなどにより1つの画素電極35上に互いに色が異なる複数の着色部52r,52g,52bが重なって、副画素23において所望されない混色が生じることを防止するためのものである。
【0027】
次に、上記第1の実施の形態の製造方法を説明する。
【0028】
液晶パネル12を製造する際には、図6ないし図8に示すように、アレイ基板15用の大判基板としての大判ガラス基板61上の所定位置に、各液晶パネル12に対応する各層を複数(図7では例えば6箇所)形成するとともに、対向基板16用の大判基板としての大判ガラス基板62上の所定位置に、各液晶パネル12に対応する各層を大判ガラス基板61側の各層の形成箇所に対応する複数(例えば6箇所)形成し、これら大判ガラス基板61,62を接着層18により貼り合わせた後、各液晶パネル12の位置で大判ガラス基板61,62を割断する。なお、液晶層17は、大判ガラス基板61,62を貼り合わせる際に大判ガラス基板61,62のいずれか一方に液晶材料を滴下してもよいし、割断した後に液晶材料を注入してもよい。
【0029】
各大判ガラス基板61,62の各層は、例えば薄膜を形成する成膜工程、形成した薄膜上にフォトレジストを塗布する塗布工程、塗布されたフォトレジストを所定のパターンを有するマスクであるレチクルR(図8)を介して露光する露光工程、露光されたフォトレジストを現像する現像工程、および、フォトレジストが除去されて露出した薄膜を除去するエッチング工程などを繰り返すことによって形成される。
【0030】
アレイ基板15用の大判ガラス基板61には、走査線31や信号線32などの配線、画素電極35などの電極、および、薄膜トランジスタ33などが形成される。また、対向基板16用の大判ガラス基板62には、カラーフィルタ層52、ブラックマトリクス層56、および、対向電極53などが形成される。
【0031】
例えばアレイ基板15用の大判ガラス基板61の各層の形成の際の露光工程時には、図7に示すように、各液晶パネル12の表示領域22に対応する四角形状の対応領域Aを、互いに交差する分割線、例えば水平方向(H方向)に沿う分割線である水平分割線L1と垂直方向(V方向)に沿う分割線である垂直分割線L2とで複数、例えば4つの分割領域ADに、特性上影響のない場所に沿って分割し、それぞれの分割領域ADに対応して設計したレチクルR(図8)を用いて分割露光する。
【0032】
このようなレチクルRの設計には、一般に設計用プログラムであるCADが用いられる。CADのデータ構造は、例えば副画素23のような繰り返しパターンの場合には、1つの副画素23を設計した後、これらをマトリクス状に並設する機能を使用することで、繰り返しパターンを有する部分は大幅にデータを削減可能となっている。
【0033】
レチクルRには、例えば画素電極35(図1)の形状を変えて画素24の電気的特性を表示領域22全体でばらつかせるための加工をする。ここで、マトリクス状に並設した副画素23のパターンの一部だけを変更しようとすると、マトリクス全体をデータ展開しなければならず、データ量が膨大になるため、基本的な副画素23のパターンは変更せず、変更する分のパターンのみを追加して作成することが好ましい。すなわち、例えば画素電極35の最も面積が小さいパターンを設計してこのパターンをマトリクス状に並設した後、追加するパターンをランダムに発生させて、マトリクス状に並設したパターンに重ねることで、変更分のパターンを追加するだけでランダムにばらつかせる加工を施すことができる。
【0034】
そして、露光工程では、上記のように加工したレチクルRを露光用データと呼ばれる座標データを用いて大判ガラス基板61上の所定位置に順次配置し、露光機により露光する。露光用データは、レチクルR上の露光領域の範囲および基準となる中心点を示すデータ、および、露光される大判ガラス基板61上の座標のデータなどを含んでおり、レチクルR上の指定した範囲が大判ガラス基板61上の指定した領域に露光される。
【0035】
この結果、図1に示すように画素電極35の形状(面積)が画素24毎にばらつくことで、画素24の電気的特性が表示領域22全体でランダムにばらつくように構成される。
【0036】
なお、分割領域ADは、互いに隣接するもの同士の一部が重なるように分割されており、互いに重なる部分で多重露光される。
【0037】
上述したように、上記第1の実施の形態によれば、画素24のそれぞれの電気的特性が表示領域22全体でランダムにばらつくように薄膜である画素電極35を形成、具体的には画素電極35の形状(面積)を画素24毎に変えるように形成することで、露光用のレチクルRの設計の複雑化を抑制しつつ、分割領域ADでの継ぎ目を視認し難くして品位良好な表示領域22を得ることが可能になる。
【0038】
図9(b)に示す従来例のように、分割したレチクルを直線分割のまま露光すると、直線部Lが認識されてしまうことがある。このとき、目視で認識されるレベルは、各副画素23を例えば256階調としたとき、1または2階調程度の所定階調の違いである。したがって、これら1または2階調程度の違いを視認しにくくするために、それ以上の2階調以上25階調以下(好ましくは3階調以上10階調以下)の階調差のばらつきがあるように副画素23の画素電極35のパターンを設計することで、図9(a)に示すように、図9(b)の直線部Lに対応する部分での継ぎ目を認識しにくくなる。ここで、図9においては、便宜的に、直線部Lの左右の階調差およびランダムな階調のばらつきを、それぞれ強調して示している。
【0039】
なお、上記第1の実施の形態において、画素電極35の形状(面積)のばらつきは、画素24毎に変えるように構成したが、例えば副画素23毎に変えるように形成してもよいし、あるいは複数の副画素23毎、あるいは複数の画素24毎に変えるように形成してもよい。
【0040】
また、画素電極35の一部に形成した形状(面積)変化部は、切欠部35aだけでなく、例えば突出部などとしてもよい。
【0041】
さらに、副画素23の電気的特性を表示領域22全体でランダムにばらつかせることができれば、画素電極35に限らず、例えば薄膜トランジスタ33を構成する各薄膜、走査線31、あるいは信号線32などの薄膜の少なくともいずれかのパターン形状を画素24毎に変えるようにしても同様の作用効果を得ることができる。
【0042】
そして、カラーフィルタ層52は、対向基板16側に形成するものに限定されず、例えばアレイ基板15側に形成するものとしてもよい。この場合には、表示領域22の周辺などの所定の領域を除き、ブラックマトリクス層56を形成しない構成とすることが可能である。
【0043】
次に、第2の実施の形態を図10を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0044】
この第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態の画素電極35の形状をランダムにばらつかせる構成に代えて、対向基板16のブラックマトリクス層56の形状(面積)を画素24毎にばらつかせることで、画素24の開口率を表示領域22全体でランダムにばらつかせるものである。
【0045】
すなわち、図10に示すように、ブラックマトリクス層56の例えば水平方向(H方向)右側部にそれぞれ異なる形状の形状(面積)変化部である突出部56aを形成することで、画素24の開口率が互いに異なっている。換言すれば、ブラックマトリクス層56は、1つの画素24を構成する複数、例えば水平方向(H方向)に隣接する3つの副画素23単位での面積の総和、あるいは形状の組み合わせなどが互いに異なっている。
【0046】
なお、突出部56aは、あまり大きく形成しすぎると副画素23の開口率が必要以上に小さくなるので、各副画素23の開口率に対して例えば所定の比率以下の面積、具体的には10%、さらに好ましくは1%から4%程度とすることが好ましい。
【0047】
そして、対向基板16用の大判ガラス基板62の各層の形成の際の露光工程時には、図6に示すように、各液晶パネル12の表示領域22に対応する四角形状の対応領域Aを、互いに交差する分割線、例えば水平方向(H方向)に沿う分割線である水平分割線L1と垂直方向(V方向)に沿う分割線である垂直分割線L2とで複数、例えば4つの分割領域ADに、特性上影響のない場所に沿って分割し、それぞれの分割領域ADに対応して設計したレチクルRを用いて分割露光する。
【0048】
ここで、レチクルRは、上記第1の実施の形態と同様に、ブラックマトリクス層56の形状を変えて画素24の開口率を表示領域22全体でばらつかせるための加工をする。この加工に際しては、例えばブラックマトリクス層56の最も面積が小さいパターンを設計してこのパターンを並設した後、追加するパターンをランダムに発生させて、並設したパターンに重ねることで、変更分のパターンを追加するだけでランダムにばらつかせる加工を施すことができる。
【0049】
そして、このように加工したレチクルRを、露光用データを用いて大判ガラス基板62上の所定位置に順次配置し、露光機により露光する。
【0050】
このように、画素24のそれぞれの開口率が表示領域22全体でランダムにばらつくように薄膜であるブラックマトリクス層56を形成、具体的にはブラックマトリクス層56の形状(面積)を画素24毎に変えるように形成することで、露光用のレチクルRの設計の複雑化を抑制しつつ、分割領域ADでの継ぎ目を視認し難くして品位良好な表示領域22を得ることが可能になる。
【0051】
なお、上記第2の実施の形態において、ブラックマトリクス層56の一部に形成した形状(面積)変化部は、突出部56aだけでなく、例えば切欠部などとしてもよい。
【0052】
また、副画素23の開口率を表示領域22全体でランダムにばらつかせることができれば、ブラックマトリクス層56に限らず、例えばカラーフィルタ層52の着色部52r,52g,52bによる遮光パターン形状、あるいは、アレイ基板15側の走査線31および信号線32などによる遮光パターン形状などを副画素23毎に変えるようにしても同様の作用効果を得ることができる。
【0053】
さらに、上記各実施の形態において、対応領域Aを分割領域ADに分割する分割線は、水平方向および垂直方向に沿うものだけでなく、互いに交差する任意の直線状の分割線とすることが可能である。
【0054】
そして、表示素子としては、液晶パネル12だけでなく、例えば有機EL表示素子など、対をなす基板を備えた任意の表示素子であっても、同様に対応することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施の形態の表示素子の表示領域の薄膜を拡大して示す平面図である。
【図2】同上表示素子を示す回路図である。
【図3】同上表示素子を示す説明断面図である。
【図4】同上表示素子を示す平面図である。
【図5】同上表示素子を備えた表示装置を示す説明図である。
【図6】同上表示素子の製造方法の大判基板の一方を示す平面図である。
【図7】同上大判基板を貼り合わせた状態を示す断面図である。
【図8】同上表示素子の薄膜の露光用のマスクを示す平面図である。
【図9】(a)は同上表示素子の画素の特性をランダムにばらつかせた状態での表示領域での表示状態を示す説明図、(b)は従来例の表示素子の表示領域での表示状態を示す説明図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態の表示素子の着色層と遮光部との位置関係を示す平面図である。
【符号の説明】
【0056】
12 表示素子としての液晶パネル
22 表示領域
24 画素
30,51 基板としてのガラス基板
35 薄膜である画素電極
56 薄膜であるブラックマトリクス層
A 対応領域
AD 分割領域
L1 分割線である水平分割線
L2 分割線である垂直分割線
R マスクであるレチクル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対をなす基板を備え、複数の画素を有する表示領域が形成された表示素子に薄膜を形成する表示素子用薄膜形成方法であって、
少なくともいずれか一方の前記基板の前記表示領域に対応する対応領域を互いに交差する分割線により分割した分割領域毎にマスクを用いて露光することで、少なくとも1層の薄膜を、前記画素のそれぞれの電気的特性が前記表示領域全体でランダムにばらつくように形成する
ことを特徴とする表示素子用薄膜形成方法。
【請求項2】
前記画素の電気的特性を設定する前記薄膜のパターン形状を前記画素毎に変えることにより前記画素のそれぞれの特性をばらつかせる
ことを特徴とする請求項1記載の表示素子用薄膜形成方法。
【請求項3】
対をなす基板を備え、複数の画素を有する表示領域が形成された表示素子に薄膜を形成する表示素子用薄膜形成方法であって、
少なくともいずれか一方の前記基板の前記表示領域に対応する対応領域を互いに交差する分割線により分割した分割領域毎にマスクを用いて露光することで、少なくとも1層の薄膜を、前記画素のそれぞれの開口率が前記表示領域全体でランダムにばらつくように形成する
ことを特徴とする表示素子用薄膜形成方法。
【請求項4】
前記画素を構成する前記薄膜による遮光パターン形状を前記画素毎に変えることにより前記画素のそれぞれの開口率をランダムにばらつかせる
ことを特徴とする請求項3記載の表示素子用薄膜形成方法。
【請求項5】
対をなす基板を備え、複数の画素を有する表示領域が形成された表示素子であって、
前記基板の少なくともいずれか一方は、前記画素のそれぞれの電気的特性が前記表示領域全体でランダムにばらつくように形成された薄膜を有している
ことを特徴とする表示素子。
【請求項6】
前記薄膜は、パターン形状が前記画素毎に異なっている
ことを特徴とする請求項5記載の表示素子。
【請求項7】
対をなす基板を備え、複数の画素を有する表示領域が形成された表示素子であって、
前記基板の少なくともいずれか一方は、前記画素のそれぞれの開口率が前記表示領域全体でランダムにばらつくように形成された薄膜を有している
ことを特徴とする表示素子。
【請求項8】
前記薄膜は、遮光パターン形状が前記画素毎に異なっている
ことを特徴とする請求項7記載の表示素子。
【請求項1】
対をなす基板を備え、複数の画素を有する表示領域が形成された表示素子に薄膜を形成する表示素子用薄膜形成方法であって、
少なくともいずれか一方の前記基板の前記表示領域に対応する対応領域を互いに交差する分割線により分割した分割領域毎にマスクを用いて露光することで、少なくとも1層の薄膜を、前記画素のそれぞれの電気的特性が前記表示領域全体でランダムにばらつくように形成する
ことを特徴とする表示素子用薄膜形成方法。
【請求項2】
前記画素の電気的特性を設定する前記薄膜のパターン形状を前記画素毎に変えることにより前記画素のそれぞれの特性をばらつかせる
ことを特徴とする請求項1記載の表示素子用薄膜形成方法。
【請求項3】
対をなす基板を備え、複数の画素を有する表示領域が形成された表示素子に薄膜を形成する表示素子用薄膜形成方法であって、
少なくともいずれか一方の前記基板の前記表示領域に対応する対応領域を互いに交差する分割線により分割した分割領域毎にマスクを用いて露光することで、少なくとも1層の薄膜を、前記画素のそれぞれの開口率が前記表示領域全体でランダムにばらつくように形成する
ことを特徴とする表示素子用薄膜形成方法。
【請求項4】
前記画素を構成する前記薄膜による遮光パターン形状を前記画素毎に変えることにより前記画素のそれぞれの開口率をランダムにばらつかせる
ことを特徴とする請求項3記載の表示素子用薄膜形成方法。
【請求項5】
対をなす基板を備え、複数の画素を有する表示領域が形成された表示素子であって、
前記基板の少なくともいずれか一方は、前記画素のそれぞれの電気的特性が前記表示領域全体でランダムにばらつくように形成された薄膜を有している
ことを特徴とする表示素子。
【請求項6】
前記薄膜は、パターン形状が前記画素毎に異なっている
ことを特徴とする請求項5記載の表示素子。
【請求項7】
対をなす基板を備え、複数の画素を有する表示領域が形成された表示素子であって、
前記基板の少なくともいずれか一方は、前記画素のそれぞれの開口率が前記表示領域全体でランダムにばらつくように形成された薄膜を有している
ことを特徴とする表示素子。
【請求項8】
前記薄膜は、遮光パターン形状が前記画素毎に異なっている
ことを特徴とする請求項7記載の表示素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図9】
【公開番号】特開2010−66540(P2010−66540A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233032(P2008−233032)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】
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