説明

表示装置およびその製造方法

【課題】活性層となる酸化物導電体層への光の入射を防ぎ、TFT特性の低下を抑制することが可能な表示装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本技術の表示装置は、活性層が酸化物導電体よりなる薄膜トランジスタと、薄膜トランジスタ上に設けられた発光素子と、薄膜トランジスタおよび発光素子の各端面、並びに発光素子の上面の一部を覆う遮光膜とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、活性層が酸化物導電体よりなる薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)を備えた表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TFTは液晶表示装置や有機EL表示装置等の基盤技術として広く応用されている。TFTの活性層となる半導体層には、一般的にはアモルファスシリコン(a−Si:H)またはポリシリコンが用いられているが、近年では、スパッタ法等の安価な装置で形成することが可能な金属酸化物等の酸化物導電体が半導体層に用いられている。但し、酸化物導電体を用いた半導体層は、光(特に420nm以下の紫外光)が照射されると光誘起によってTFT特性が変化、具体的には閾値電圧(Vth)が負(−)方向にシフトするという問題があった。
【0003】
この問題を解決するために、例えば特許文献1では基板の裏面に遮光膜を有するTFTが開示されている。また、例えば特許文献2では、ゲート電極と活性層との間に光吸収層を設けたボトムゲート型のTFTが、特許文献3では、基材(基板)にバンドギャップエネルギーよりも波長の短い光の透過率が10%以下の材料を用いたTFTがそれぞれ開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−115902号公報
【特許文献2】特開2009−224354号公報
【特許文献3】特開2007−150157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1〜3に開示された方法では、基板裏面方向から活性層への入射光は遮光されるが、基板側面方向から照射された光に対しては十分な遮光効果は得らない。近年、表示装置、特にモバイルディスプレイでは狭額縁化が求められており周辺領域(額縁領域)に設けられた端子部と、表示領域(画素領域)に設けられた画素間との距離が非常に短くなる。このため額縁領域側、即ち、斜め方向から照射された光がTFTの半導体層(酸化物導電体層)に入射し、これによりTFTの特性が低下するという問題があった。
【0006】
本技術はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、活性層となる酸化物導電体層への光の入射を防ぎ、TFT特性の低下を抑制することが可能な表示装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術の表示装置は、活性層が酸化物導電体よりなる薄膜トランジスタと、薄膜トランジスタ上に設けられた発光素子と、薄膜トランジスタおよび発光素子の各端面、並びに発光素子の上面の一部を覆う遮光膜とを備えたものである。
【0008】
本技術の表示装置の製造方法は、以下の(A)〜(C)の工程を含むものである。
(A)基板上の画素部に活性層が酸化物導電体からなる薄膜トランジスタを形成する工程
(B)薄膜トランジスタ上に発光素子を形成する工程
(C)少なくとも前記薄膜トランジスタおよび発光素子の端面および発光素子の上面の一部を覆う遮光膜を形成する工程
【0009】
本技術の表示装置およびその製造方法では、薄膜トランジスタおよび発光素子を形成したのち、薄膜トランジスタおよび発光素子の側面および上面の一部を遮光膜で覆うことにより、斜め方向、特に額縁領域から薄膜トランジスタへの入射光が遮光される。
【発明の効果】
【0010】
本技術の表示装置およびその製造方法によれば、薄膜トランジスタおよび発光素子の側面および上面の一部を遮光膜で覆うようにしたので、薄膜トランジスタへの斜め方向、特に額縁領域からの入射光が遮光され、薄膜トランジスタの特性の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本開示の一実施の形態に係る表示装置の構成の一例を表す断面図である。
【図2】図1に示した表示装置の平面図である。
【図3】各材料における紫外線(UV)透過率を表す特性図である。
【図4】UV照射量と閾値との関係を表す特性図である。
【図5】図1に示した表示装置のブロック図である。
【図6】図5に示した表示装置の画素駆動回路の一例を表す図である。
【図7】図1に示した表示装置の一部の断面図である。
【図8】図1に示した表示装置の製造方法の流れを表す図である。
【図9】図8に示した製造方法を工程順に表す断面図である。
【図10】図9に続く工程を表す断面図である。
【図11】図10に続く工程を表す断面図である。
【図12】比較例におけるTFTの特性図である。
【図13】比較例に係る表示装置の模式図である。
【図14】本開示の表示装置におけるTFTの特性図である。
【図15】(A)は適用例1の裏側から見た外観を表す斜視図、(B)は表側から見た外観を表す斜視図である。
【図16】適用例2の外観を表す斜視図である。
【図17】(A)は適用例3の表側から見た外観を表す斜視図、(B)は裏側から見た外観を表す斜視図である。
【図18】適用例4の外観を表す斜視図である。
【図19】適用例5の外観を表す斜視図である。
【図20】(A)は適用例6の開いた状態の正面図、(B)はその側断面、(C)は閉じた状態の正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態
1−1.全体構成
1−2.TFTおよび発光素子の構成
1−3.製造方法
2.適用例
【0013】
1.実施の形態
(1−1.全体構成)
図1は本開示の一実施の形態に係る表示装置1の一部の断面構成を表したものである。この表示装置1は、基板11上画素領域2に、複数の画素(図示せず)がマトリクス状(格子状)に配置されている。複数の画素は、例えば赤色画素R,緑色画素G,青色画素Bであり、それぞれ色ごとにライン状に配置されている。これら各画素(R,G,B)にはそれぞれ対応する色を発する有機EL素子20(発光素子)が設けられている。この有機EL素子20は、それぞれ素子駆動用の薄膜トランジスタ(TFT)10上に形成されている。なお、ここでは赤色画素R,緑色画素Gおよび青色画素Bの組み合わせが一つの表示画素(ピクセル)を構成している。画素領域2の周囲には額縁領域3が設けられており、この額縁領域3の周縁部には、端子部4が設けられている。
【0014】
本実施の形態の表示装置1では、図1および図2(A)に示したように額縁領域3(画素領域2と端子部4との間)に遮光膜5が設けられている。この遮光膜5は、光、特に420nm以下の波長を有する光(紫外光)を散乱または吸収することで遮光機能を有する材料により構成されている。遮光膜5は、画素領域2に設けられたTFT10および有機EL素子20の側面と有機EL素子20の上面の一部とを覆うように形成されている。これにより、後述する表示装置1の製造工程における端子部4に防湿補強材35A,35Bを設ける際に照射される紫外(UV)光のTFT10への入射が抑制されるようになっている。本実施の形態では、遮光膜5(5A,5B;図10参照)はTFT10および有機EL素子20の側面と有機EL素子20の上面の一部に加えて、TFT10の端部よりもはみ出して形成された有機EL素子20を構成する層上にも設けられ、有機EL素子20を挟み込むように形成されている。但しこれに限らず、例えば、遮光膜5は少なくとも有機EL素子20の上面の一部からその側面、更に有機EL素子20側面から基板11に達する延長線上に設けられていれば、上述したUV光のTFT10への入射は抑制される。
【0015】
また、図2(B)に示したように、本実施の形態では遮光膜5の表面(基板11上および有機EL素子20の上面,図1参照)に1以上の凹部5aが設けられている。この凹部5aを設けることにより、遮光膜5を構成する材料の特性によるUV光の遮光機能に加えて、形状(凹部5a)による反射機能が追加され、TFT10に対して斜め方向から入射するUV光がより確実に遮光されるようになっている。遮光膜5を構成する具体的な材料としては、酸化チタン(TiO2)または酸化亜鉛(ZnO)が挙げられるが、上述したようにUV光を遮光する機能を有していればこれに限らない。また、遮光膜5は遮光機能を有する材料以外の材料を含んでいても構わない。
【0016】
遮光膜5の膜厚は380nm以上とすることが好ましい。例えば、図3に示したように、TiO2(図3(B))はITO(図3(A))およびシリカ(図3(C))と比較して、紫外領域の光を遮光する機能を有する。具体的には、膜厚500nmで90%のUV遮光能を有する。上述した防湿補強材を硬化する際に照射するUV照射量は一般的に1000mJ/cm2程度であるため、膜厚500nmのTiO2膜で遮光した際には10%(100mJ/cm2)程度のUV光が透過する。図4はUV照射量と、UV照射前後におけるTFT10の閾値(Vth)の変化量(ΔVth)との関係を表したものである。この図4から、100mJ/cm2のUV光が照射された際の閾値(Vth)は0.1V程度シフトすることがわかる。一般的に、TFTの許容可能なΔVthは0.2V以下である。ΔVthが0.2VとなるUV照射量は、図4から175mJ/cm2であることがわかる。一方、UV入射光の強さをL0とした場合の透過光の強度Lは、単位長さ(膜厚)当たりの透過率をηとすると、L(t)=L0×ηtの関係がある。入射光の強さL0を、防湿補強材35A,35Bを硬化する際に照射するUV照射量(1000mJ/cm2)とし、単位長さ(膜厚)当たりの透過率ηを、膜厚500nmにおける透過率、η=10%=0.1とする。また、透過光の強度L(t)をTFTの許容可能なΔVth(0.2V)とした場合、175=1000×0.1(t/500)となり、t=378.5nmとなる。即ち、TFT10へのUV光の入射を効果的に抑制するための遮光膜5の膜厚は、378.5nm以上であることが好ましく、より好ましくは380nm以上であることがわかる。
【0017】
(1−2.表示装置の全体構成)
次に、表示装置1の断面構成について説明する。図5は、本実施の形態の表示装置1のブロック構成を表したものである。この表示装置1は、例えば有機ELテレビジョン装置などとして用いられるものであり、上述したように、基板11の上に、複数の有機EL素子20(20R,20G,20B)がマトリクス状に配置された画素領域2が形成されており、画素領域2を囲うように額縁領域3が配置されている。額縁領域3には、映像表示用のドライバである信号線駆動回路120および走査線駆動回路130が設けられている。
【0018】
画素領域2内には画素駆動回路140が設けられている。図6は、画素駆動回路140の一例を表したものである。画素駆動回路140は、後述する下部電極21の下層に形成されたアクティブ型の駆動回路である。すなわち、この画素駆動回路140は、駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2と、これらトランジスタTr1,Tr2の間のキャパシタ(保持容量)Csと、第1電源ライン(Vcc)および第2電源ライン(GND)の間において駆動トランジスタTr1に直列に接続された赤色有機EL素子20R(または緑色有機EL素子20G,青色有機EL素子20B)とを有する。駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2は、一般的なTFTにより構成され、その構成は、例えば逆スタガ構造(いわゆるボトムゲート型)でもよいしスタガ構造(トップゲート型)でもよく特に限定されない。
【0019】
画素駆動回路140において、列方向には信号線120Aが複数配置され、行方向には走査線130Aが複数配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの交差点が、赤色有機EL素子20R,緑色有機EL素子20G,青色有機EL素子20Bのいずれか一つに対応している。各信号線120Aは、信号線駆動回路120に接続され、この信号線駆動回路120から信号線120Aを介して書き込みトランジスタTr2のソース電極に画像信号が供給されるようになっている。各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、この走査線駆動回路130から走査線130Aを介して書き込みトランジスタTr2のゲート電極に走査信号が順次供給されるようになっている。
【0020】
図7は、表示装置1の一部の断面構成を表したものである。表示装置1は、基板11上に、例えばアクティブマトリックス方式により駆動するTFT10が設けられ、このTFT10上には、画素(R,G,B)に対応する発光層23Cを有する有機EL素子20(20R,20G,20B)が設けられている。
【0021】
(TFT)
TFT10は、いわゆるボトムゲート型のTFTであり、チャネル(活性層)に、例えば酸化物半導体を用いたものである。このTFT10では、ガラス等よりなる基板11上に、ゲート電極12、ゲート絶縁膜13、酸化物半導体層14、チャネル保護膜15およびソース・ドレイン電極16A,16Bがこの順に形成されている。ソース電極16Aおよびドレイン電極16B上には、基板11の全面に渡ってTFT10の凹凸を平坦化させるための平坦化膜18が形成されている。
【0022】
ゲート電極12は、TFT10に印加されるゲート電圧によって酸化物半導体層14中のキャリア密度(ここでは、電子密度)を制御する役割を果たすものである。このゲート電極12は、例えばモリブデン(Mo),アルミニウム(Al)およびアルミニウム合金等のうちの1種よりなる単層膜、または2種以上よりなる積層膜により構成されている。なお、アルミニウム合金としては、例えばアルミニウム−ネオジム合金が挙げられる。
【0023】
ゲート絶縁膜13は、SiO2、Si34、シリコン窒化酸化物(SiON)および酸化ハフニウム(HfO)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化タンタル(TaO)、酸化ジルコニウム(ZrO)等あるいはこれらの酸窒化物のうちの1種よりなる単層膜である。また、これらのうちの2種以上よりなる積層膜としてもよい。これにより、酸化物半導体層14との界面特性を改善したり、基板11に含まれる不純物が酸化物半導体層14へ拡散することを防ぐことができる。ゲート絶縁膜13の膜厚は、例えば200nm〜300nmである。
【0024】
酸化物半導体層14は、例えばインジウム(In),ガリウム(Ga),亜鉛(Zn),スズ(Sn),Tiのうちの少なくとも1種の酸化物を主成分として含んでいる。この酸化物半導体層14は、ゲート電圧の印加によりソース・ドレイン電極16A,16B間にチャネルを形成するものである。この酸化物半導体層24の膜厚は、例えば5nm〜200nmである。
【0025】
チャネル保護膜15は、酸化物半導体層14上に形成され、ソース・ドレイン電極26A,26B形成時におけるチャネルの損傷を防止するものである。チャネル保護膜25の厚みは、例えば20〜300nmである。また、チャネル保護膜15の材料は、ゲート絶縁膜13と同様の材料を用いることができる。
【0026】
ソース・ドレイン電極16A,16Bは、例えばMo,Al,銅(Cu)およびTi等の金属あるいはこれらの合金、またはITOおよびTiO等の導電体のうち1種よりなる単層膜またはこれらのうちの2種以上よりなる積層膜である。例えば、Mo,Al,Moの順に、50nm,500nm,50nmの膜厚で積層した3層膜や、ITOおよび酸化チタン等の酸素を含む金属化合物のような酸素との結びつきの弱い金属または金属化合物を用いることが望ましい。これにより、酸化物半導体の電気特性を安定して保持することができる。
【0027】
平坦化膜18は、例えばAl23,TiO2あるいはこれらの窒化物等の無機絶縁材料が用いられる。この平坦化膜18の厚みは、例えば20nm〜200nmであり、好ましくは50nm以下である。平坦化膜18はその膜密度を3.0g/cm3以上とすることにより、酸素および水素に対する高いバリア性能を有する。平坦化膜18上には、有機EL素子20の下部電極21が形成されている。
【0028】
(有機EL素子)
有機EL素子20は、下部電極21(アノード電極)から注入された正孔と上部電極24(カソード電極)から注入された電子が発光層23C内で再結合する際に生じた発光光を基板11と反対側(カソード電極側)から光を取り出す上面発光型(トップエミッション型)の発光素子である。上面発光型の有機EL素子20を用いることにより表示装置の発光部の開口率が向上する。なお、本発明の有機EL素子20は、このような構成に限定されることはなく、例えば基板11側から光を取り出す透過型、即ち下面発光型(ボトムエミッション型)の発光素子としてもよい。
【0029】
有機EL素子20では、平坦化膜18上に、例えば表示装置1が上面発光型である場合には、高反射性材料、例えば、Al,Ti,Cr等からなる下部電極12が形成されている。また、表示装置1が透過型である場合には、透明材料、例えばITO,IZO,IGZO等が用いられる。
【0030】
ここで、下部電極21上および平坦化膜18上には、下部電極21と、後述する上部電極24との絶縁性を確保する隔壁22が設けられている。この隔壁22は、TFT20のゲート・ソース電極16A,16Bと下部電極21との接続部上に設けられている。隔壁22は、例えばポリイミドまたはノボラック等の有機材料、具体的にはポジ型感光性ポリイミドなどの感光性樹脂により形成されており、プラズマ処理することにより、撥液性が付加される。
【0031】
有機層23は、例えば、図7に示したように、下部電極13側から順に、正孔注入層23A,正孔輸送層23B,発光層23Cおよび電子輸送層23Dを積層した構成を有する。有機層23は、詳細は後述するが、例えば真空蒸着法やスピンコート法等によって形成される。この有機層23の上面は上部電極23によって被覆されている。有機層23を構成する各層の膜厚および構成材料等は特に限定されないが、一例を以下に示す。
【0032】
正孔注入層23Aは、発光層23Cへの正孔注入効率を高めると共に、リークを防止するためのバッファ層である。正孔注入層23Aの厚みは例えば5nm〜200nmであることが好ましく、さらに好ましくは8nm〜230nmである。正孔注入層16Aの構成材料は、電極や隣接する層の材料との関係で適宜選択すればよく、例えばポリアニリン,ポリチオフェン,ポリピロール,ポリフェニレンビニレン,ポリチエニレンビニレン,ポリキノリン,ポリキノキサリンおよびそれらの誘導体、芳香族アミン構造を主鎖又は側鎖に含む重合体などの導電性高分子,金属フタロシアニン(銅フタロシアニン等),カーボンなどが挙げられる。導電性高分子の具体例としてはオリゴアニリンおよびポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)などのポリジオキシチオフェンが挙げられる。
【0033】
正孔輸送層23Bは、発光層23Cへの正孔輸送効率を高めるためのものである。正孔輸送層23Bの厚みは、素子の全体構成にもよるが、例えば5nm〜200nmであることが好ましく、さらに好ましくは8nm〜230nmである。正孔輸送層23Bを構成する材料としては、有機溶媒に可溶な発光材料、例えば、ポリビニルカルバゾール,ポリフルオレン,ポリアニリン,ポリシランまたはそれらの誘導体、側鎖または主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体,ポリチオフェンおよびその誘導体,ポリピロールまたはAlq3などを用いることができる。
【0034】
発光層23Cでは、電界がかかると電子と正孔との再結合が起こり発光する。発光層23Cの厚みは、素子の全体構成にもよるが、例えば10nm〜200nmであることが好ましく、さらに好ましくは20nm〜230nmである。発光層23Cは、それぞれ単層あるいは積層構造であってもよい。具体的には、本実施の形態の有機EL素子20のように、正孔輸送層23B上に赤色,緑色,青色の発光層23CR,23CG,23CBが単層設けられている以外に、例えば、青色発光層を各有機EL素子20R,20G,20Bの共通層としてもよい。この場合、赤色有機EL素子20Rには赤色発光層23CR上に青色発光層23CBが積層され、緑色有機EL素子20Gには緑色発光層23CG上に青色発光層23CBが積層されている。また、ここには示していないが、赤色発光層23CR,緑色発光層23CGおよび青色発光層23CBを積層してもよく、これらを積層することにより白色有機EL素子が形成される。
【0035】
発光層23Cを構成する材料は、それぞれの発光色に応じた材料を用いればよく、例えばポリフルオレン系高分子誘導体や、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体,ポリフェニレン誘導体,ポリビニルカルバゾール誘導体,ポリチオフェン誘導体,ペリレン系色素,クマリン系色素,ローダミン系色素,あるいは上記高分子に有機EL材料をドープしたものが挙げられる。ドープ材料としては、例えばルブレン,ペリレン,9,10−ジフェニルアントラセン,テトラフェニルブタジエン,ナイルレッド,クマリン6等を用いることができる。なお、発光層23Cを構成する材料は、上記材料を2種類以上混合して用いてもよい。また、上記高分子量の材料に限らず、低分子量の材料を組み合わせて用いてもよい。低分子材料の例としては、ベンジン,スチリルアミン,トリフェニルアミン,ポルフィリン,トリフェニレン,アザトリフェニレン,テトラシアノキノジメタン,トリアゾール,イミダゾール,オキサジアゾール,ポリアリールアルカン,フェニレンジアミン,アリールアミン,オキザゾール,アントラセン,フルオレノン,ヒドラゾン,スチルベンあるいはこれらの誘導体、または、ポリシラン系化合物,ビニルカルバゾール系化合物,チオフェン系化合物あるいはアニリン系化合物等の複素環式共役系のモノマーあるいはオリゴマーが挙げられる。
【0036】
発光層23Cを構成する材料としては、上記材料の他に発光性ゲスト材料として、発光効率が高い材料、例えば、低分子蛍光材料、りん光色素あるいは金属錯体等の有機発光材料を用いることができる。
【0037】
なお、発光層23Cは、例えば上述した正孔輸送層23Bを兼ねた正孔輸送性の発光層としてもよく、また、後述する電子輸送層23Dを兼ねた電子輸送性の発光層としてもよい。
【0038】
電子輸送層23Dは、発光層23Cへの電子輸送効率を高めるためのものである。電子輸送層23Dの総膜厚は素子の全体構成にもよるが、例えば5nm〜200nmであることが好ましく、より好ましくは10nm〜180nmである。
【0039】
電子輸送層23Dの材料としては、優れた電子輸送能を有する有機材料を用いることが好ましい。発光層23Cへの電子の輸送効率を高めることにより、電界強度による発光色の変化が抑制される。具体的には、例えばアリールピリジン誘導体およびベンゾイミダゾール誘導体などを用いることが好ましい。これにより、低い駆動電圧でも高い電子の供給効率が維持される。電子注入層23Eの材料としては、アルカリ金属,アルカリ土類金属,希土類金属およびその酸化物,複合酸化物,フッ化物,炭酸塩等が挙げられる。
【0040】
上部電極24は、例えば、厚みが10nm程度であり、光透過性が良好で仕事関数が小さい材料により構成されている。また、酸化物を用いて透明導電膜を形成することによっても光取り出しを担保することができる。この場合には、ZnO,ITO,IZnO,InSnZnO等を用いる事が可能である。更に、上部電極24は単層でもよいが、ここでは例えばアノード電極24側から順に第1層24A、第2層24B、第3層24Cと積層した構造となっている。
【0041】
第1層24Aは、仕事関数が小さく、且つ、光透過性の良好な材料により形成されることが好ましい。具体的には、例えばカルシウム(Ca),バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属、リチウム(Li),セシウム(Cs)等のアルカリ金属、インジウム(In),マグネシウム(Mg),銀(Ag)が挙げられる。更に、Li2O,Cs2Co3,Cs2SO4,MgF,LiFやCaF2等のアルカリ金属酸化物,アルカリ金属フッ化物,アルカリ土類金属酸化物,アルカリ土類フッ化物が挙げられる。
【0042】
第2層24Bは、薄膜のMgAg電極やCa電極などの光透過性を有し、且つ、導電性が良好な材料で構成されている。第3層24Cは、電極の劣化を抑制するために透明なランタノイド系酸化物を用いることが好ましい。これにより、上面から光を取り出すことが可能な封止電極として用いることが可能となる。また、ボトムエミッション型の場合には、第3層23Cの材料として金(Au),白金(Pt)またはAuGe等が用いられる。
【0043】
なお、第1層24A、第2層24Bおよび第3層24Cは、真空蒸着法、スパッタリング法、あるいはプラズマCVD法などの手法によって形成される。また、この発光素子を用いて構成される表示装置の駆動方式がアクティブマトリックス方式である場合、上部電極24は、アノード電極21の一部を覆う隔壁22および有機層23によって、アノード電極21に対して絶縁された状態で基板11上にベタ膜状で形成され、各画素に対して共通な電極として用いてもよい。
【0044】
また、上部電極24には、アルミキノリン錯体,スチリルアミン誘導体,フタロシアニン誘導体等の有機発光材料を含有した混合層でもよい。この場合には、さらに第3層24C(図示なし)としてMgAgのような光透過性を有する層を別途有していてもよい。また、上部電極24は上記のような積層構造に限定されることはなく、作製されるデバイスの構造に応じて最適な組み合わせ、積層構造を取ればよいことは言うまでもない。例えば、上記本実施の形態の上部電極24の構成は、電極各層の機能分離、即ち有機層23への電子注入を促進させる無機層(第1層24A)と、電極を司る無機層(第2層24B)と、電極を保護する無機層(第3層24C)とを分離した積層構造である。しかしながら、有機層23への電子注入を促進させる無機層が、電極を司る無機層を兼ねてもよく、これらの層を単層構造としてもよい。
【0045】
更に、この有機EL素子20が、キャビティ構造となっている場合には、上部電極24が半透過半反射材料を用いて構成されることが好ましい。これにより、アノード電極21側の光反射面と、上部電極24側の光反射面との間で多重干渉させた発光光が上部電極24側から取り出される。この場合、アノード電極21側の光反射面と上部電極24側の光反射面との間の光学的距離は、取り出したい光の波長によって規定され、この光学的距離を満たすように各層の膜厚が設定されていることとする。このような上面発光型の発光素子においては、このキャビティ構造を積極的に用いることにより、外部への光取り出し効率の改善や発光スペクトルの制御を行うことが可能となる。
【0046】
保護膜25は、有機層23への水分の浸入を防止するためのものであり、透過性および透水性の低い材料を用いて、例えば厚さ2〜3μmで形成される。保護膜25の材料としては、絶縁性材料または導電性材料のいずれにより構成されていてもよい。絶縁性材料としては、無機アモルファス性の絶縁性材料、例えばアモルファスシリコン(α−Si),アモルファス炭化シリコン(α−SiC),アモルファス窒化シリコン(α−Si1-xx)、アモルファスカーボン(α−C)などが好ましい。このような無機アモルファス性の絶縁性材料は、グレインを構成しないため透水性が低く、良好な保護膜となる。
【0047】
封止用基板27は、有機EL素子20の上部電極23側に位置しており、接着層26と共に有機EL素子20を封止するものである。封止用基板27は、有機EL素子20で発生した光に対して透明なガラスなどの材料により構成されている。封止用基板27には、例えば、カラーフィルタ27Aおよびブラックマトリクス27Bが設けられており、有機EL素子20で発生した光を取り出すと共に、各有機EL素子20間の配線において反射された外光を吸収し、コントラストを改善するようになっている。
【0048】
封止用基板27上には、例えばカラーフィルタ27Aおよびブラックマトリクス27Bが設けられている。カラーフィルタ27Aは、赤色フィルタ27AR,緑色フィルタ27AGおよび青色フィルタ27ABを有しており、対応する有機EL素子20R,20G,20B上に配置されている。赤色フィルタ27AR,緑色フィルタ27AGおよび青色フィルタ27ABは、それぞれ例えば矩形形状で隙間なく形成されている。これら赤色フィルタ27AR,緑色フィルタ27AGおよび青色フィルタ27ABは、顔料を混入した樹脂によりそれぞれ構成されており、顔料を選択することにより、目的とする赤,緑あるいは青の波長域における光透過率が高く、他の波長域における光透過率が低くなるように調整されている。
【0049】
ブラックマトリクス27Bは、例えば黒色の着色剤を混入した光学濃度が1以上の黒色の樹脂膜、または薄膜の干渉を利用した薄膜フィルタにより構成されている。このうち黒色の樹脂膜により構成するようにすれば、安価で容易に形成することができるので好ましい。薄膜フィルタは、例えば、金属,金属窒化物あるいは金属酸化物よりなる薄膜を1層以上積層し、薄膜の干渉を利用して光を減衰させるものである。薄膜フィルタとしては、具体的には、Crと酸化クロム(III)(Cr23)とを交互に積層したものが挙げられる。
【0050】
また、有機層23は、以上の方法に加えてスピンコート法,ディッピング法,ドクターブレード法,吐出コート法,スプレーコート法などの塗布法、インクジェット法,オフセット印刷法,凸版印刷法,凹版印刷法,スクリーン印刷法,マイクログラビアコート法などの印刷法などによる形成も可能であり、各有機層や各部材の性質に応じて、ドライプロセスとウエットプロセスを併用しても構わない。
【0051】
この表示装置1は、例えば次のようにして製造することができる。
【0052】
図8は、この表示装置1の製造方法の流れを表したものである。また、図9〜図11は、表示装置1の製造方法を工程順に表したものである。まず、図9(A)に示したように、画素領域2に上述した材料よりなる基板11の上にTFT10を含む画素駆動回路140を、額縁領域3(図1参照)に引き出し電極31(図1参照)を形成する(ステップS101)。
【0053】
続いて、TFT10の額縁領域3側、換言すると画素領域2と端子部4との間に下部遮光膜5Aを形成する(ステップS102)。まず、図9(A)に示したようにTFT10の額縁領域2側の基板11上に、エリアマスク41を用いて例えば厚さ500nmのSiO2膜を、例えばスパッタリングまたはCVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相成長)法により形成する。次に、図9(B)に示したように、フォトレジスト膜42を例えばスピンコート法によりTFT10およびSiO2膜上に塗布したのち、図9(C)に示したように、フォトマスク43を用いて露光を行い、例えばパドル式現像装置にて現像を行う。続いて、図9(D)に示したようにフォトレジスト膜42を加工したのち、例えばウェットエッチングまたはドライエッチングにより露出したSiO2膜を除去する。次に、残っているフォトレジスト膜42を除去することで、例えばφ=1000nmの円柱形状の凹部17A(図10(A))を形成する。続いて、次に、図10(B)に示したように、エリアマスク44を用い、画素領域2と端子部4との間(額縁領域3)に例えばTiO2膜を、例えばスパッタリングまたはCVD法により形成することにより、下部遮光膜5Aの下面および平坦化膜18と接する上面に凹凸を形成する。
【0054】
(平坦化膜18を形成する工程)
続いて、図10(C)に示したように、TFT10上および一部の下部遮光膜5A上に平坦化膜18を形成したのち、有機EL素子20および上部遮光膜5Bを形成する(ステップS103〜S105)。まず、TFT10上および一部の下部遮光膜5A上に、ポジ型感光性の絶縁材料として、例えばポリイミドを例えばスピンコート法により塗布し、露光装置にて露光を行う。次に、例えばパドル式現像装置にて現像を行い所定の形状を有するポリイミド膜を形成したのち、例えばクリーンベーク炉にて熱硬化させてコンタクトホール18Aを有する厚さ2μmの平坦化膜18を形成する。
【0055】
(下部電極21を形成する工程)
次いで、平坦化膜18上に例えばAl合金よりなる導電膜をパターニングすることにより、下部電極21を赤色有機EL素子20R,緑色有機EL素子20Gおよび青色有機EL素子20Bの各々ごとに形成する。その際、下部電極21を、平坦化膜18のコンタクトホール18Aを介してトランジスタ10のドレイン電極16Bと導通させる。具体的には、例えば平坦化膜18上にAl合金を例えば200nmの膜厚で成膜したのち、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングして下部電極21を形成する。
【0056】
(隔壁22を形成する工程)
続いて、下部電極21および平坦化膜18上に隔壁22を形成する。具体的には、例えばスピンコート法によりポリイミドを塗布したのち、露光および現像を行い所定の形状にパターニングし隔壁22を形成する。
【0057】
(有機層23および上部電極24を形成する工程)
次に、上部電極21上に上述した材料よりなる正孔注入層23A,正孔輸送層23B,発光層23C,電子輸送層23Dおよび上部電極24を順に形成する。具体的には、例えばN2雰囲気下において基板11をベークしたのち、O2プラズマで処理し、例えば真空蒸着法を用いて有機層23(正孔注入層23A,正孔輸送層23B,発光層23Cおよび電子輸送層23D)および上部電極24を順に形成する。なお、有機層23および上部電極24の形成方法としては、真空蒸着法の他に、例えばスピンコート法、スプレーコート法またはスリット印刷により形成してもよい。
【0058】
上部電極24を形成したのち、保護膜25形成する。具体的には、まず保護膜25を下地に対して影響を及ぼすことのない程度に、成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法、例えば蒸着法やCVD法により形成する。例えば、SiO2からなる保護膜25を形成する場合には、CVD法によって例えば5μmの膜厚に形成する。この際、有機層23の劣化による輝度の低下を防止するため、成膜温度を常温に設定すると共に、保護膜25の剥がれを防止するために膜のストレスが最小になる条件で成膜することが望ましい。
【0059】
なお、下部電極21と同一工程で補助電極(図示せず)を形成した場合、補助電極の上部にベタ膜で形成された有機層23を、上部電極24を形成する前にレーザアブレーションなどの手法によって除去してもよい。これにより上部電極24を補助電極に直接接続させることが可能となり、接触性が向上する。
【0060】
(上部遮光膜5Bを形成する工程)
保護膜25を形成したのち、有機EL素子20の側面および上面の一部に上部遮光膜5Bを形成する。具体的には、例えばスパッタリングまたはCVD法により、エリアマスク45を用いて額縁領域3の間に、例えば厚さ1500nmTiO2膜を成膜する。次に、図10(D)に示したように、保護膜25およびTiO2膜上にスピンコート法によりフォトレジスト膜46を塗布する。続いて、図11(A)に示したようにフォトマスク47を用いて露光および現像を行い、図11(B)に示したようにフォトレジスト膜46を加工する。次に、図11(C)に示したように、例えばウェットエッチングまたはドライエッチングにより露出したTiO2膜に凹部5aを形成したのち、残っているフォトレジスト膜46を除去し上部遮光膜5Bを形成する。これにより、TFT10の側面から有機EL素子20の上面の一部にかけて被覆する遮光膜5が完成する。
【0061】
上部遮光膜5Bを形成したのち、例えば、上述した材料よりなる封止用基板27に、上述した材料よりなるブラックマトリクス27Bを形成する。続いて、封止用基板27に赤色フィルタ27ARの材料をスピンコートなどにより塗布し、フォトリソグラフィ技術によりパターニングして焼成することにより赤色フィルタ27ARを形成する。続いて、赤色フィルタ27Rと同様にして、緑色フィルタ27Gを順次形成する。こののち、保護膜25,遮光膜5および基板11上に接着層26を形成し、この接着層26を介して封止用基板27を張り合わせる。
【0062】
続いて、ドライバIC34等を有するCOF(Chip On Film)33上に、例えばフィルム上に成形された異方性導電膜32を配置し仮止めしたのち、額縁領域3の基板11上に形成した引き出し電極31とCOF33との位置合わせを行う。この状態で異方性導電膜32を介して、引き出し電極31とCOF33とを押し圧しながら加熱し、異方性導電膜32に含まれる導電性微粒子によって引き出し電極31とCOF33の配線とを電気的に接続させると共に、基板11の額縁領域に3にCOF33を形成する。次に、TFT10および有機EL素子20等を封止する接着層26およびその上に設けられた封止用基板27の側面からCOF33の一部にかけて封止するように紫外線硬化性樹脂を塗布する。更に、引き出し電極31および異方性導電膜32端面を封止するように基板11の裏面方向にも紫外線硬化性樹脂を塗布する。こののち、紫外線硬化性樹脂に1000mJ/cm2のUV光(波長365nm)を照射することで硬化し、防湿補強材35A,35Bを形成する。以上により図1,図3〜図5に示した表示装置1が完成する。
【0063】
この表示装置1では、各画素に対して走査線駆動回路130から書き込みトランジスタTr2のゲート電極を介して走査信号が供給されると共に、信号線駆動回路120から画像信号が書き込みトランジスタTr2を介して保持容量Csに保持される。すなわち、この保持容量Csに保持された信号に応じて駆動トランジスタTr1がオンオフ制御され、これにより、赤色有機EL素子20R,緑色有機EL素子20G,青色有機EL素子20Bに駆動電流Idが注入され、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、下面発光(ボトムエミッション)の場合には下部電極21および基板11を透過して、上面発光(トップエミッション)の場合には上部電極24,封止基板27に設けられたカラーフィルタ27Aを透過して取り出される。
【0064】
前述したように、モバイルディスプレイ等の表示装置では狭額縁化が求められている。このため額縁領域に設けられた端子部と、画素領域に設けられた画素間との距離が非常に短くなっている。TFTおよび発光素子等の実装工程では、COFの圧着後のCOFの膜剥がれや水分の浸入による端子部の腐食を防止するために端子部に防湿補強材を設ける。この防湿補強材には、上述したように紫外線硬化性樹脂が用いられているため、その製造工程においてUV光を照射する。このUV光の照射の際、狭額縁化された表示装置では、硬化のために照射されたUV光が防湿補強材を透過し、画素領域の周縁部に配置されたTFTの半導体層に入射することでTFT特性が低下するという問題があった。
【0065】
図12は従来の表示装置100における画素領域102の周縁部に配置されたTFTへのUV照射前および照射後における電流電圧特性を表したものである。図12から照射後の閾値電圧(Vth)がUV照射前よりも負(−)の方向にシフトしていることがわかる。これにより、表示装置100では画素領域102の周縁部分のTFT特性が低下し、図13に示したように画素領域102の周縁部分の輝度が低下した輝度落ち領域102Aが形成され、輝度むらが生じるという問題があった。
【0066】
これに対して本実施の形態の表示装置1では、TFT10および有機EL素子20の側面、並びに上面の一部にTiO2(図3(B))等からなる遮光膜5を設けるようにした。図14は、本実施の形態における表示装置1の画素領域2の周縁部分のTFT10へのUV照射前および照射後における電流電圧特性を表したものである。図14からUV照射前後における閾値電圧(Vth)のシフトが発生していないことがわかる。このように、防湿補強材35A,35Bを形成する際等にTFT10に対して斜め方向に照射されるUV光のTFT10への入射が抑制され、TFT特性の低下が抑制される。
【0067】
以上のように、本実施の形態の表示装置1およびその製造方法では、TFT10および有機EL素子20を形成したのち、TFT10の端面等を覆う遮光膜5を形成するようにしたので、TFT10に対して斜め方向、特に額縁領域3側から入射するUV光を効果的に遮光することが可能となる。これにより、TFT特性の低下が抑制され、画素領域2における輝度むらの発生が低減される。即ち、輝度むらの少ない高品質な表示装置を提供することが可能となる。
【0068】
また、本実施の形態では、遮光膜5の表面に凹部5aを設けるようにしたので、斜め方向から入射するUV光をより効果的に遮光することが可能となる。更に、遮光膜5の凹凸によってUV光が額縁領域3側、即ち防湿補強材35A,35B側へ反射されるため、より少ないUV光の照射により防湿補強材35A,35Bを構成する紫外線硬化性樹脂を硬化することができる。
【0069】
上記表示装置1は、例えば次の適用例1〜6に示した電子機器に搭載することができる。
【0070】
(モジュールおよび適用例)
以下、上記実施の形態で説明した表示装置1の適用例について説明する。上記実施の形態の表示装置1は、テレビジョン装置,デジタルカメラ,ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0071】
(モジュール)
上記実施の形態等の表示装置1は、例えば、図15に示したようなモジュールとして、後述する適用例1〜5などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、基板11の一辺に、保護膜20および封止用基板30から露出した領域210を設け、この露出した領域210に、信号線駆動回路120および走査線駆動回路130の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
【0072】
(適用例1)
図16は、上記実施の形態の表示装置1が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300は、上記実施の形態に係る表示装置1により構成されている。
【0073】
(適用例2)
図17は、上記実施の形態の表示装置1が適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、その表示部420は、上記実施の形態に係る表示装置1により構成されている。
【0074】
(適用例3)
図18は、上記実施の形態の表示装置1が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、その表示部530は、上記実施の形態に係る表示装置1により構成されている。
【0075】
(適用例4)
図19は、上記実施の形態の表示装置1が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有しており、その表示部640は、上記実施の形態に係る表示装置1により構成されている。
【0076】
(適用例5)
図20は、上記実施の形態の表示装置1が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そのディスプレイ740またはサブディスプレイ750は、上記実施の形態に係る表示装置1により構成されている。
【0077】
以上、一実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、発光層23Cとして各画素に対応した赤色発光層、緑色発光層、青色発光層をそれぞれ設けるようにしたが、これに限らず、各発光層を積層して白色の有機EL素子としてもよい。その際には、赤色発光層および緑色発光層の2層を黄色発光層に置き換えてもよい。
【0078】
また、上記実施の形態において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件等は限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。例えば、上記実施の形態では、TFT10におけるチャネルとして酸化物導電体を用いたが、これに限らず、シリコンまたは有機半導体等を用いてもよい。
【0079】
更に、上記実施の形態では、有機EL素子20R,20G,20B等の構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層を更に備えていてもよい。例えば、正孔注入層23A上に正孔輸送層23Bを形成せず、直接発光層13Cを形成してもよく、電子輸送層23D上に電子注入層を設けてもよい。
【0080】
更にまた、上記実施の形態では、アクティブマトリクス型の表示装置の場合について説明したが、本発明はパッシブマトリクス型の表示装置への適用も可能である。更にまた、アクティブマトリクス駆動のための画素駆動回路の構成は、上記実施の形態で説明したものに限られず、必要に応じて容量素子やトランジスタを追加してもよい。その場合、画素駆動回路の変更に応じて、上述した信号線駆動回路120や走査線駆動回路130のほかに、必要な駆動回路を追加してもよい。
【0081】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)活性層が酸化物導電体よりなる薄膜トランジスタと、前記薄膜トランジスタ上に設けられた発光素子と、前記薄膜トランジスタおよび発光素子の各端面、並びに前記発光素子の上面の一部を覆う遮光膜とを備えた表示装置。
(2)前記遮光膜は表面に凹凸を有する、前記(1)に記載の表示装置。
(3)前記遮光膜は紫外線散乱能および紫外線吸収能を有する、前記(1)または(2)に記載の表示装置。
(4)前記遮光膜は酸化チタン(TiO2)および酸化亜鉛(ZnO)の少なくとも一方を含む、前記(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の表示装置。
(5)前記薄膜トランジスタおよび発光素子を含む画素領域の周辺に設けられた額縁領域の周縁には端子部が形成されている、前記(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の表示装置。
(6)基板上の画素領域に活性層が酸化物導電体からなる薄膜トランジスタを形成する工程と、前記薄膜トランジスタ上に発光素子を形成する工程と、少なくとも前記薄膜トランジスタおよび発光素子の端面および前記発光素子の上面の一部を覆う遮光膜を形成する工程とを含む表示装置の製造方法。
(7)前記薄膜トランジスタを形成したのち、前記基板上の前記薄膜トランジスタと前記端子部との間に凸部を設けることにより前記遮光膜の下面に凹凸を形成する、前記(6)に記載の表示装置の製造方法。
(8)前記遮光膜を形成したのち、前記遮光膜の上面に凹凸を形成する、前記(6)または(7)に記載の表示装置の製造方法。
【0082】
1…表示装置、2…画素領域、3…額縁領域、4…端子部、5…遮光膜、5A…下部遮光膜、5B…上部遮光膜、10…TFT、20…有機EL素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性層が酸化物導電体よりなる薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタ上に設けられた発光素子と、
前記薄膜トランジスタおよび発光素子の各端面、並びに前記発光素子の上面の一部を覆う遮光膜と
を備えた表示装置。
【請求項2】
前記遮光膜は表面に凹凸を有する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記遮光膜は紫外線散乱能および紫外線吸収能を有する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記遮光膜は酸化チタン(TiO2)および酸化亜鉛(ZnO)の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記薄膜トランジスタおよび発光素子を含む画素領域の周辺に設けられた額縁領域の周縁には端子部が形成されている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
基板上の画素領域に活性層が酸化物導電体からなる薄膜トランジスタを形成する工程と、
前記薄膜トランジスタ上に発光素子を形成する工程と、
少なくとも前記薄膜トランジスタおよび発光素子の端面および前記発光素子の上面の一部を覆う遮光膜を形成する工程と
を含む表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記薄膜トランジスタを形成したのち、前記基板上の前記薄膜トランジスタと前記端子部との間に凸部を設けることにより前記遮光膜の下面に凹凸を形成する、請求項6に記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記遮光膜を形成したのち、前記遮光膜の上面に凹凸を形成する、請求項6に記載の表示装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2013−45522(P2013−45522A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180778(P2011−180778)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】