説明

表示装置

【課題】様々な曲面の表示画面に対応可能な液晶表示装置を実現する。
【解決手段】TFTガラス基板10にはエッチングストッパー12、TFT形成層11が形成され、対向ガラス基板20には、エッチングストッパー22、カラーフィルタ形成層21が形成された液晶表示装置に対し、TFTガラス基板10と対向ガラス基板20を選択的にエッチングを行い、ガラス基板を液晶表示装置の中央付近に残す。このような液晶表示装置をTFTプラスチック基板40および対向プラスチック基板50によってサンドイッチして、フレキシブルな液晶表示装置を製作する。液晶表示装置の中央付近はガラスが存在するために剛性が大きく、周辺部はガラスが無いので剛性が小さい。液晶表示装置を湾曲すると、曲率半径の異なる表示領域を有するフレキシブル液晶表示装置を得ることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフラット表示装置に係り、特にフレキシブルに湾曲させることが出来る液晶表示装置または有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、ディスプレイ装置を薄くできること、重量が大きくならないこと等から、コンピュータ用ディスプレイ、携帯電話用端末等からTV等にいたるまで、需要が拡大している。液晶表示装置はまた、画面が平面であることも特徴の一つとなっている。有機EL表示装置も同様な特徴を有している。
【0003】
一方、液晶表示装置は薄くすることが出来る点から、液晶表示装置をフレキシブルディスプレイとするための開発も進められている。このような開発の例として「非特許文献1」が挙げられる。「非特許文献1」には次のような記載がある。ポリマー分散型強誘電性液晶を2枚のプラスチック基板の間に挟み、基板間のギャップをポリマー支柱によって保つことにり液晶表示パネルを形成する。この場合バックライトもフレキシブルに形成する必要がある。これを「非特許文献1」では、フレキシブルな導光板のサイドにLEDを設置することによって実現している。
【0004】
「特許文献1」には、基板に形状記憶合金または形状回復機能を有するポリマーを使用することにより、特定温度以上への加熱と冷却により、曲面形状を記憶または曲面形状への回復が可能な液晶表示装置が記載されている。しかし、「特許文献1」には、基板にスイッチング素子としての薄膜トランジスタ(TFT)を形成する記載は無い。
【0005】
「特許文献2」には、液晶表示装置等のガラス基板を薄くすることによって円筒型のディスプレイを形成する構成が記載されている。すなわち、ガラスは薄くすると湾曲させることが出来るので、曲面ディスプレイが要請する曲率に対応できるように、ガラス基板の厚さを設定する構成が記載されている。
【0006】
【非特許文献1】H.SATO et. al. “A4-Sized LCDs with Flexible Light Guide Plate” International Display Workshop (IDW) 06
【特許文献1】特開平7−140451号公報
【特許文献2】特開2005−115087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
液晶表示装置は、薄型にできることという特徴があることから、表示画面を種々の曲面に対応できるようにしたいという要求がある。有機EL表示装置も同様である。液晶表示装置の基板としてフレキシブルな基板を用いることは、その解決方法の一つではある。「非特許文献1」あるいは「特許文献1」に記載の技術は、基板にポリマーを使用する例である。しかし、液晶のスイッチング素子としてTFTを使用する場合は、ポリマーの耐熱性に問題がある。すなわち、TFTを形成するためには様々な高温プロセスを必要とするが、ポリマーはこの温度に耐えることが出来ない。
【0008】
「特許文献2」に記載の技術は、基板にガラスを使用するので、耐熱性の問題は生じない。「特許文献2」に記載の技術は、必要な曲面に対応してガラス基板の厚さを薄くするものである。しかし、「特許文献2」に記載の技術によって対応できるディスプレイは曲面といっても、円筒型のディスプレイに限定される。
【0009】
本発明の課題は、スイッチング素子としてTFTを用いて、かつ、円筒画面に限らず、種々の曲面に対応できる液晶表示装置あるいは有機EL表示装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以上のような課題を解決するものであり、具体的な手段は次のとおりである。
【0011】
(1)TFTおよび画素電極が形成されたTFT形成層とカラーフィルタが形成されたカラーフィルタ形成層との間に液晶層が挟持されている液晶表示装置であって、前記TFT形成層の前記液晶層と反対側の面にはTFT側エッチングストッパーが形成され、前記TFT側エッチングストッパーの一部と密着してTFTガラス基板が存在し、前記TFT側エッチングストッパーの他の部分には前記TFTガラス基板は存在しておらず、前記TFTガラス基板と前記TFT側エッチングストッパーには接着層を介してTFTプラスチック基板が接着し、前記カラーフィルタ形成層の前記液晶層と反対側の面にはカラーフィルタ側エッチングストッパーが形成され、前記カラーフィルタ側エッチングストッパーの一部と密着して対向ガラス基板が存在し、前記カラーフィルタ側エッチングストッパー他の部分には前記対向ガラス基板は存在しておらず、前記対向ガラス基板と前記カラーフィルタ側エッチングストッパーには接着層を介してTFTプラスチック基板が接着していることを特徴とする液晶表示装置。
【0012】
(2)前記TFT側エッチングストッパーまたは前記カラーフィルタ側エッチングストッパーはSiNまたはSiO2によって形成されていることを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0013】
(3)前記カラーフィルタ側エッチングストッパーは樹脂で形成されていることを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0014】
(4)前記TFTガラス基板および前記対向ガラス基板は前記液晶表示装置の中央に配置されていることを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0015】
(5)TFT形成層が形成されたTFTガラス基板とカラーフィルタ形成層が形成された対向ガラス基板との間に液晶層が挟持された液晶表示装置であって、前記TFTガラス基板は一部の厚さが大きく、他の部分がそれよりも薄く形成され、前記対向ガラス基板は一部の厚さが大きく、他の部分がそれよりも薄く形成され、前記TFTガラス基板には、接着層を介してTFTプラスチック基板が接着し、前記対向ガラス基板には、接着層を介して対向プラスチック基板が接着していることを特徴とする液晶表示装置。
【0016】
(6)前記TFTガラス基板と前記TFT形成層の間にはTFT側エッチングストッパーが形成されていることを特徴とする(5)に記載の液晶表示装置。
【0017】
(7)前記TFTガラス基板の板厚が厚い部分は前記液晶表示装置の中央付近であり、前記対向ガラス基板の板厚が厚い部分は前記液晶表示装置の中央付近であることを特徴とする(5)に記載の液晶表示装置。
【0018】
(8)前記対向ガラス基板と前記カラーフィルタ形成層の間にはカラーフィルタ側エッチングストッパーが形成されていることを特徴とする(5)に記載の液晶表示装置。
【0019】
(9)TFT側エッチングストッパーの上にはTFTおよび有機EL層が形成されたTFT形成層が形成され、前記TFT側エッチングストッパーと対向して封止ガラス基板側エッチングストッパーが形成され、TFT側エッチングストッパーの前記TFT層が形成された面と反対側の面の一部にはTFTガラス基板が存在し、他の部分にはTFTガラス基板は存在せず、前記封止ガラス基板エッチングストッパーの前記TFT側ガラス基板と反対側の面の一部には封止ガラス基板が存在し、他の部分には封止ガラス基板は存在せず、前記TFTガラス基板および前記TFT基板側エッチングストッパーには、接着層を介してTFTプラスチック基板が接着し、前記封止ガラス基板と前記封止ガラス基板側エッチングストッパーには、接着層を介して封止プラスチック基板が接着していることを特徴とする有機EL表示装置。
【0020】
(10)有機EL素子およびTFTが形成されたTFT形成層が形成されたTFTガラス基板と、前記TFT基板と対向して封止ガラス基板が配置された有機EL表示装置であって、前記TFTガラス基板は一部の厚さが大きく、他の部分がそれよりも薄く形成され、前記封止ガラス基板は一部の厚さが大きく、他の部分がそれよりも薄く形成され、前記TFTガラス基板には、接着層を介してTFTプラスチック基板が接着し、前記対向ガラス基板には、接着層を介して対向プラスチック基板が接着していることを特徴とする有機EL表示装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、液晶表示装置あるいは有機EL表示装置等の薄型表示装置において、表示領域をフラットあるいは円筒面とするのみでなく、表示装置の要望にあわせた任意の曲面とすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
実施例にしたがって、本発明の詳細な内容を開示する。実施例は主として液晶表示装置について説明するが、有機EL表示装置についても同様にして本発明を適用することが出来る。
【実施例1】
【0023】
図1は本発明の第1の実施例を示すフレキシブル液晶表示装置の平面図である。図2は図1のA−A断面図である。図1において、最上層は対向プラスチック基板50であり、対向プラスチック基板50には画像を表示する表示領域25が存在している。液晶表示装置に外部から電源、映像信号等を供給するためのフレキシブル配線基板70が対向プラスチック基板50の下側から延在している。
【0024】
図2は図1のA−A断面図であり、実施例1のフレキシブル液晶表示装置の構造を示すものである。図2において、液晶層15が、TFT形成層11と、カラーフィルタ形成層21との間に挟持されている。液晶層15の周辺にはシール材が形成されており、液晶を内部に封止している。
【0025】
TFT形成層11は、もともとはTFTガラス基板10の上に形成されていたものであるが、図2においては、TFTガラス基板10は中央部を残して除去されている。また、カラーフィルタ形成層21は、もともとは対向ガラス基板20の上に形成されていたものであるが、図2においては、対向ガラス基板20は中央部を残して除去されている。
【0026】
TFTガラス基板10の上には、TFT側エッチングストッパー12が形成されている。TFT側エッチングストッパー12は後で述べるように、ガラスをエッチングするエッチング液であるフッ酸からTFT形成層11を保護するものである。TFT側エッチングストッパー12の上には、液晶表示装置の中央部において、TFTガラス基板10が存在している。TFTガラス基板10は、液晶表示装置の周辺においては、エッチングによって除去されている。
【0027】
TFT側エッチングストッパー12およびTFTガラス基板10の上には、接着層45を介してTFTプラスチック基板40が配置されている。図2において、TFTプラスチック基板40、および、後で説明する対向プラスチック基板50とで表示装置の機械的な強度を持たせている。なお、本液晶表示装置はフレキシブル液晶表示装置であるから、TFTプラスチック基板40および対向プラスチック基板50はフレキシブルである必要がある。
【0028】
図2における対向ガラス基板20側において、カラーフィルタ形成層21の上には、カラーフィルタ側エッチングストッパー22が形成されている。カラーフィルタ側エッチングストッパー22は後で述べるように、ガラスをエッチングするエッチング液であるフッ酸からカラーフィルタ形成層21を保護するものである。カラーフィルタ側エッチングストッパー22の上には、液晶表示装置の中央部において、対向ガラス基板20が存在している。対向ガラス基板20は、液晶表示装置の周辺においては、エッチングによって除去されている。
【0029】
カラーフィルタ側エッチングストッパー22および対向ガラス基板20の上には、接着層45を介して対向プラスチック基板50が配置されている。図2において、対向プラスチック基板50、および、TFTプラスチック基板40とで表示装置の機械的な強度を持たせている。なお、対向プラスチック基板50はフレキシブルでなければならないことはTFTプラスチック基板40と同様である。
【0030】
図2の特徴は、TFTガラス基板10および対向ガラス基板20は液晶表示装置の中央部分において、残っているが、周辺では除去されていることである。ガラスは剛性を有しているので、液晶表示装置を曲げた場合、ガラスの存在している部分はあまり曲がらないので曲率半径が大きくなり、ガラスの存在しない部分は良く曲がるので曲率半径が小さくなる。したがって、表示領域25の中央付近と周辺付近とで、曲率半径の異なった曲面ディスプレイを実現することが出来る。すなわち、本発明によれば、種々の形の曲面ディスプレイを実現することが出来る。
【0031】
また、図2に示す液晶表示装置は、機械的な強度は、TFTプラスチック基板40、対向プラスチック基板50等のプラスチック基板によって持たせているので、ガラス基板と異なって、容易に割れたりすることが無い。一方、TFT等は、当初はTFTガラス基板10の上に形成するので、TFT形成時にプラスチック基板の耐熱性が問題となることは無い。すなわち、プラスチック基板は、TFT層等が形成された後、接着されるので、プラスチック基板が高温プロセスにさらされることは無い。
【0032】
本実施例である図1および図2のフレキシブル液晶表示装置は、図3および図4に示す通常の液晶表示装置を製作したあと、TFTガラス基板10、対向ガラス基板20等を部分エッチングし、TFTプラスチック基板40あるいは対向プラスチック基板50を接着して完成する。
【0033】
図3は通常の液晶表示装置の平面図である。図3において、対向ガラス基板20には表示領域25が形成されている。対向ガラス基板20の下側には、図示しないシール部30を介してTFTガラス基板10が形成されている。TFTガラス基板10は対向ガラス基板20よりも図3の右側において大きく形成され、この部分に端子部を配置する。この端子部に外部から電源、映像信号等を供給するフレキシブル配線基板70を接続する。
【0034】
図4は、図3のB−B断面図である。図4において、液晶層15はTFTガラス基板10と対向ガラス基板20の間に挟持されている。TFTガラス基板10と対向ガラス基板20の周辺部にはシール部30が形成されて、液晶層15を封止している。TFTガラス基板10には、まず、TFT側エッチングストッパー12が形成され、その上にTFT形成層11が存在している。
【0035】
また、対向ガラス基板20にはカラーフィルタ側エッチングストッパー22が形成され、その上にカラーフィルタ形成層21が配置されている。TFTガラス基板10は対向ガラス基板20よりも大きく形成された部分には端子部が形成され、端子部にフレキシブル配線基板70が接続されている。
【0036】
図4において、TFTガラス基板10および対向ガラス基板20のガラス基板厚は0.2mmである。液晶表示装置の製造プロセスにおいては、0.2mm厚のガラス基板には対応出来ないので、当初は厚さが0.4mmあるいは0.5mm程度のガラス基板が使用される。そして、TFTガラス基板10と対向ガラス基板20を合わせて接着したあと、TFTガラス基板10および対向ガラス基板20の外側を研磨してガラス厚さを0.2mm程度としている。なお、液晶表示装置を一個づつ製造したのでは効率が悪いので、マザーガラス基板に複数の液晶表示装置となる液晶表示パネルを形成し、その後、個々の液晶表示パネルを分離する。
【0037】
液晶層15への信号の印加はTFTをスイッチング素子として行われる。TFTにはpoly−Siをアクティブ層103として使用する場合と、a−Siをアクティブ層103として使用する場合とがある。図5はpoly−Siをアクティブ層103として使用する場合のTFTガラス基板10側のTFT付近の断面図である。
【0038】
図5においてTFTガラス基板10の上にはSiN膜からなる第1下地膜101が形成され、その上にSiO膜からなる第2下地膜102が形成されている。第1下地膜101および第2下実施例膜はガラス基板からの不純物が第2下地膜102の上に形成される半導体層を汚染することを防止するために形成される。しかし、本発明においては、この第1下地膜101および第2下地膜102が後で述べるTFT側エッチングストッパー12としての役割を有する。
【0039】
すなわち、ガラスのエッチング液によっては、SiNおよびSiOはエッチングされないので、ガラスのエッチング液によってTFTガラス基板10を除去するときに、エッチング液がTFT形成層11に進入して、TFT層を汚染することを防止する。したがって、本発明における第1下地膜101あるいは第2下地膜102は通常の液晶表示装置の場合よりも厚く形成される。
【0040】
第2下地膜102の上には、アクティブ層103となるpoly−Si層が形成される。poly−Si層の上にはゲート絶縁膜104が形成され、その上にゲート電極105が形成される。ゲート電極105あるいはゲート電極をパターニングするためのレジストをマスクとして、イオンインプランテーションによって、poly−Si層にLDD(Light Doped Drain)層、あるいは、ソース部またはドレイン部となる導電層が形成される。
【0041】
ゲート電極105の上には層間絶縁膜106が形成され、その上に、映像信号線と同層でドレイン電極107およびソース電極107が形成される。ドレイン電極107およびソース電極107は、Al層1072をMoW層間絶縁膜1071、1073によってサンドイッチした3層構造となっている。ソース電極107あるいはドレイン電極107を覆って無機パッシベーション膜108が形成され、無機パッシベーション膜108の上には、平坦化膜を兼ねた有機パッシベーション膜109が形成される。
【0042】
有機パッシベーション膜109の上には画素電極110が形成され、画素電極110の上には、液晶を配向させる配向膜111が形成される。有機パッシベーション膜109および無機パッシベーション膜108にはスルーホールが形成され、画素電極110と、ソースあるいはドレイン電極107との導通を取る。
【0043】
以上説明したように、TFT基板側においては、第1パッシベーション膜と第2パッシベーション膜を厚く形成することによってTFT側エッチングストッパー12としての役割を持たせている。つまり、膜厚は異なるが、基本的な構成は通常の液晶表示装置のTFT基板と大差は無い。
【0044】
図6はTFTのアクティブ層103としてa−Si層を使用した場合である。図6において、TFTガラス基板10の上には、TFT側エッチングストッパー12となるSiNが形成されている。a−Siを用いたTFTの場合は、ボトムゲートが一般的であり、ゲートがガラスからの不純物をストップするので、通常は下地膜は使用しないが、本発明においては、下地膜をTFT側エッチングストッパー12として使用するので、TFTガラス基板10の上にpoly−SiタイプのTFTの場合と同様に、下地膜101を形成する。図6では、下地膜101は一層であるが、図5のpoly−SiタイプのTFTの場合と同様に2層形成しても良い。
【0045】
図6において、下地膜101の上には、ゲート電極105が形成されている。ゲート電極105はAl層1051とMoW層1052の2層構造となっている。ゲート電極105を覆って、アクティブ層103となるa−Si層が形成される。a−Si層の上には、金属とのオーミックコンタクトをとるためのn+Si層が形成される。n+Si層の上には、図5の場合と同様に、3層からなるソース電極107あるいはドレイン電極107が形成される。
【0046】
ソース電極107およびドレイン電極107を覆って無機パッシベーション膜108が形成され、その上に平坦化膜を兼ねた有機パッシベーション膜109が形成されている。有機パッシベーション膜109の上には、画素電極110が形成され、その上に配向膜111が形成されることは図5の場合と同様である。なお、図6において、a−Si層の中央付近のチャネルとなる部分にはチャネルエッチング部が形成され、このチャネルエッチング部を無機パッシベーション膜108および有機パッシベーション膜109が保護する。
【0047】
以上説明したように、本発明のa−Siを用いた液晶表示装置では、TFTガラス基板10の上に一層あるいは二層の下地膜を形成することによってTFT側エッチングストッパー12の役割を持たせている。
【0048】
以上の説明は、TFTガラス基板10側の構成の例である。対向ガラス基板20にはカラーフィルタが形成されているが、対向ガラス基板20にカラーフィルタを形成する前に、SiNあるいはSiOからなるカラーフィルタ側エッチングストッパー22を形成することが出来る。一方、対向ガラス基板20にはTFTガラス基板10のような高温プロセスは存在しないので、カラーフィルタ側エッチングストッパー22には、ガラスのエッチング液に耐える有機樹脂を使用することも出来る。
【0049】
図7〜図11は、本実施例のフレキシブル液晶表示装置を製造するプロッセスを示す断面図である。図7は、図4の液晶表示装置に対して、レジスト60を形成した状態を示す断面図である。図7において、TFTガラス基板10の全面にレジスト60が形成されているが、対向ガラス基板20には中央部付近にのみレジスト60が形成されている。その他の構成は図4で説明したのと同様である。なお、実際は、対向ガラス基板20に形成された端子部およびフレキシブル配線基板70にもエッチングから保護するレジスト60が形成されるが、図7ではこの部分のレジスト60は省略されている。
【0050】
図7の状態で、フッ酸等のガラスのエッチング液によって対向ガラス基板20をエッチングする。このエッチングはいわゆるガラスの化学研磨である。そうすると、対向ガラス基板20において、レジスト60の形成されていない部分のみエッチングされ、対向ガラス基板20がこの部分から除去される。一方、レジスト60の形成された液晶表示装置の中央部付近には対向ガラス基板20が残存する。TFTガラス基板10側は、全面にレジスト60が形成されているので、TFTガラス基板10板はエッチングされないまま残存する。
【0051】
図8はこのようにして、対向ガラス基板20をエッチングした後、対向ガラス基板20およびTFTガラス基板10からレジスト60を除去した状態を示す断面図である。対向ガラス基板20の中央部のみに、ガラス基板が残存している。図8に示す対向ガラス基板20では、周辺にはガラス基板は存在していない。但し、周辺においては、カラーフィルタ側エッチングストッパー22が存在しているので、カラーフィルタ形成層21はエッチング液から保護されている。
【0052】
図8の液晶表示装置に対して、対向ガラス基板20側に、接着層45を介して対向プラスチック基板50が貼り付けられた状態を示す断面図が図9である。図9において、対向プラスチック基板50は、対向ガラス基板20に代わってフレキシブル液晶表示装置の機械的強度を担うことになる。また、対向プラスチック基板50はフレキシブルである。このようにして、カラーフィルタ基板側の構造が完成する。
【0053】
図10は、図9のようにして、形成された液晶表示装置において、TFTガラス基板10に対し所定の領域をエッチングするためにレジスト60を形成した状態を示す断面図である。図10において、TFTガラス基板10の中央付近にレジスト60を形成している。一方、対向プラスチック基板50にはレジスト60は形成していない。プラスチック基板はガラスのエッチング液であるフッ酸にはエッチングされないからである。もちろん、対向プラスチック基板50の表面にレジスト60等の保護膜を形成しても良い。
【0054】
図11は、図10の状態でフッ酸によってTFTガラス基板10をエッチングした後の状態を示す断面図である。すなわち、図11はTFTガラス基板10をいわゆる化学研磨した状態を示す断面図である。図11において、TFTガラス基板10が液晶表示装置の中央付近において、残っているが、液晶表示装置の周辺からは除去されている。図11において、液晶表示装置の周辺部では、SiNあるいはSiOによる下地膜がTFT側エッチングストッパー12となって、TFT形成層11がフッ酸によって汚染されることから保護している。
【0055】
その後、接着層45によってTFTプラスチック基板40を接着すると図2に示すようなフレキシブル液晶表示装置が出来る。この状態において、液晶表示装置の中央付近に存在するTFTガラス基板10および対向ガラス基板20の板厚はエッチングガラスのエッチング前と同じ0.2mmである。
【0056】
図2に示すような、フレキシブル液晶表示装置は中央付近にはガラス基板が残存しているために、中央付近での剛性が大きいが、液晶表示装置の周辺にはガラス基板が存在していないので、剛性が小さい。図2のようなフレキシブル液晶表示装置を曲げると中央付近の曲率半径が大きく、周辺において曲率半径の小さいディスプレイを得ることが出来る。
【0057】
曲げる力が小さければ、表示領域25の中央付近では平面で、周辺部分が曲面であるディスプレイを形成することも出来る。図12はこのようなディスプレイの断面模式図である。図12において、表示領域25の中央付近は平面領域26であり、周辺は曲面領域27である。図12では、ディスプレイの凹部側から人間がディスプレイを視認していることを示しているが、もちろん、逆側から視認するようにディスプレイを構成することも出来る。
【0058】
図12において、曲面の曲げ応力を強くすれば中央付近も曲率半径の大きな曲面とすることも可能である。また、ガラス基板を除去する領域と残す領域を変化させることによって種々の形状の表示領域25を有するディスプレイを実現することが出来る。
【実施例2】
【0059】
実施例1では、液晶表示装置の周辺部分において、TFTガラス基板10あるいは対向ガラス基板20を完全に除去しており、エッチング終了後においては、液晶表示装置の周辺部分においては、TFT側エッチングストッパー12、あるいは、カラーフィルタ側エッチングストッパー22によって機械的に保持されている。しかし、TFT側エッチングストッパー12あるいはカラーフィルタ側エッチングストッパー22は、機械的に弱く、TFTプラスチック基板40あるいは、対向プラスチック基板50を接着するまでのプロセスにおいて、液晶表示装置が破壊する危険が大きい。
【0060】
本実施例は、液晶表示装置の周辺領域においても、ガラス基板を全部除去せず、薄く残すことによって、TFTプラスチック基板40あるいは対向プラスチック基板50を貼り付けるまでのプロセスにおいて、液晶表示装置が破壊することを防止するものである。
【0061】
図13は本発明の第2の実施例におけるフレキシブル液晶表示装置の途中プロセスにおける断面図である。図13において、TFTガラス基板10および対向ガラス基板20は、液晶表示装置の中央部においては厚く、液晶表示装置の周辺においては薄く形成されている。このような形状は、実施例1の図7あるいは図10に示すように、ガラス基板をエッチングしない部分にレジスト60を形成し、TFTガラス基板10あるいは対向ガラス基板20をエッチングするときに、エッチング時間を制御することによって液晶表示装置の周辺にもガラスを残すことによって可能となる。
【0062】
これによって途中プロセスにおける液晶表示装置の周辺が機械的に弱いことによる歩留りの低下を抑えることが出来る。図13における他の構成は図4で説明したのと同様である。その後、TFTガラス基板10側には接着層45を介してTFTプラスチック基板40を接着し、対向ガラス基板20側には接着層45を介して対向プラスチック基板50を接着してフレキシブル液晶表示装置を形成する。
【0063】
なお、本実施例においては、TFTガラス基板10あるいは対向ガラス基板20においては、ガラス基板の板厚は異なるが、全面においてガラス基板が存在しているので、ガラスのエッチング液がTFT形成層11あるいは、カラーフィルタ形成層21を汚染することが無い。したがって、本実施例においては、TFT側エッチングストッパー12あるいはカラーフィルタ側エッチングストッパー22を省略することが出来る。
【0064】
このようにして形成されたフレキシブル液晶表示装置を特定方向に曲げる応力を加えると、液晶表示装置の中央付近においては、曲率半径が大きく、液晶表示装置の周辺付近においては、曲率半径の小さいディスプレイを形成することが出来る。なお、中央部分と周辺部分の板厚の差を制御することによって、中央付近の曲率半径と周辺部分の曲率半径の差を制御することが出来る。なお、図13および図14は中央付近のTFTガラス基板10あるいは対向ガラス基板20を大きくしたが、ディスプレイの曲面の要請に応じて、ガラス基板の板厚を薄くする領域を変えることによって、種々の曲面を有するディスプレイを実現することが出来る。
【0065】
以上の実施例は、加工前の液晶表示装置は、TFTガラス基板10も対向ガラス基板20もガラスである。しかし、高温プロセスを必要とするのは、TFTガラス基板10側である。したがって、カラーフィルタ側の基板は最初からガラスで形成せずに、プラスチック基板で形成することも出来る。この場合は、TFTガラス基板10のみに、実施例1あるいは実施例2で説明したような加工を施すことによって、実施例1あるいは実施例2のフレキシブル液晶表示装置と同様な機能を有する液晶表示装置を実現することが出来る。
【0066】
以上の説明は液晶表示装置について行った。本発明は有機EL表示装置に対しても同様に適用することが出来る。有機EL表示装置は、有機EL素子および、制御用のTFTが形成されたTFT基板と、有機EL層を水分から保護する封止基板とがシール材を介して接着している。有機EL表示装置のTFT基板は、液晶表示装置のTFTガラス基板10と同様であるから、各実施例において、液晶表示装置のTFTガラス基板10についての説明をそのまま適用することが出来る。一方、有機EL表示装置における封止基板は一般には、単なるガラス基板である。このガラス基板にSiNあるいはSiO等によってエッチングストッパーを形成することによって液晶表示装置の対向ガラス基板20と同じプロセスを適用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施例1のフレキシブル液晶表示装置の平面図である。
【図2】実施例1のフレキシブル液晶表示装置の断面図である。
【図3】液晶表示装置の平面図である。
【図4】液晶表示装置の断面図である。
【図5】poly−SiタイプのTFT基板の断面図である。
【図6】a−SiタイプのTFT基板の断面図である。
【図7】図3の液晶表示装置にレジストを形成した断面図である。
【図8】対向ガラス基板をエッチングしたあとの断面図である。
【図9】対向プラスチック基板を接着した断面図である。
【図10】TFTガラス基板にレジストを形成した断面図である。
【図11】TFTガラス基板をエッチングした断面図である。
【図12】フレキシブル液晶表示装置の応用例である。
【図13】実施例2のフレキシブル液晶表示装置の途中工程での断面図である。
【図14】実施例2のフレキシブル液晶表示装置の断面図である。
【符号の説明】
【0068】
10…TFTガラス基板、 11…TFT形成層、 12…TFT側エッチングストッパー、 15…液晶層、 20…対向ガラス基板、 21…カラーフィルタ形成層、 22…カラーフィルタ側エッチングストッパー、 25…表示領域、 26…平面領域、 27…曲面領域、 30…シール部、 40…TFTプラスチック基板、 45…接着層、 50…対向プラスチック基板、 60…レジスト、 70…フレキシブル配線基板、 101…第1下地膜、 102…第2下地膜、 103…アクティブ層、 104…ゲート絶縁膜、 105…ゲート電極、 106…層間絶縁膜、 107…ソース、ドレイン電極、 108…無機パッシベーション膜、 109…有機パッシベーション膜、 110…画素電極、 111…配向膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TFTおよび画素電極が形成されたTFT形成層とカラーフィルタが形成されたカラーフィルタ形成層との間に液晶層が挟持されている液晶表示装置であって、
前記TFT形成層の前記液晶層と反対側の面にはTFT側エッチングストッパーが形成され、前記TFT側エッチングストッパーの一部と密着してTFTガラス基板が存在し、前記TFT側エッチングストッパーの他の部分には前記TFTガラス基板は存在しておらず、前記TFTガラス基板と前記TFT側エッチングストッパーには接着層を介してTFTプラスチック基板が接着し、
前記カラーフィルタ形成層の前記液晶層と反対側の面にはカラーフィルタ側エッチングストッパーが形成され、前記カラーフィルタ側エッチングストッパーの一部と密着して対向ガラス基板が存在し、前記カラーフィルタ側エッチングストッパー他の部分には前記対向ガラス基板は存在しておらず、前記対向ガラス基板と前記カラーフィルタ側エッチングストッパーには接着層を介してTFTプラスチック基板が接着していることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記TFT側エッチングストッパーまたは前記カラーフィルタ側エッチングストッパーはSiNまたはSiOによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記カラーフィルタ側エッチングストッパーは樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記TFTガラス基板および前記対向ガラス基板は前記液晶表示装置の中央に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
TFT形成層が形成されたTFTガラス基板とカラーフィルタ形成層が形成された対向ガラス基板との間に液晶層が挟持された液晶表示装置であって、
前記TFTガラス基板は一部の厚さが大きく、他の部分がそれよりも薄く形成され、前記対向ガラス基板は一部の厚さが大きく、他の部分がそれよりも薄く形成され、前記TFTガラス基板には、接着層を介してTFTプラスチック基板が接着し、前記対向ガラス基板には、接着層を介して対向プラスチック基板が接着していることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項6】
前記TFTガラス基板と前記TFT形成層の間にはTFT側エッチングストッパーが形成されていることを特徴とする請求項5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記TFTガラス基板の板厚が厚い部分は前記液晶表示装置の中央付近であり、前記対向ガラス基板の板厚が厚い部分は前記液晶表示装置の中央付近であることを特徴とする請求項5に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記対向ガラス基板と前記カラーフィルタ形成層の間にはカラーフィルタ側エッチングストッパーが形成されていることを特徴とする請求項5に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
TFT側エッチングストッパーの上にはTFTおよび有機EL層が形成されたTFT形成層が形成され、前記TFT側エッチングストッパーと対向して封止ガラス基板側エッチングストッパーが形成され、
TFT側エッチングストッパーの前記TFT層が形成された面と反対側の面の一部にはTFTガラス基板が存在し、他の部分にはTFTガラス基板は存在せず、
前記封止ガラス基板エッチングストッパーの前記TFT側ガラス基板と反対側の面の一部には封止ガラス基板が存在し、他の部分には封止ガラス基板は存在せず、
前記TFTガラス基板および前記TFT基板側エッチングストッパーには、接着層を介してTFTプラスチック基板が接着し、
前記封止ガラス基板と前記封止ガラス基板側エッチングストッパーには、接着層を介して封止プラスチック基板が接着していることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項10】
有機EL素子およびTFTが形成されたTFT形成層が形成されたTFTガラス基板と、前記TFT基板と対向して封止ガラス基板が配置された有機EL表示装置であって、
前記TFTガラス基板は一部の厚さが大きく、他の部分がそれよりも薄く形成され、前記封止ガラス基板は一部の厚さが大きく、他の部分がそれよりも薄く形成され、前記TFTガラス基板には、接着層を介してTFTプラスチック基板が接着し、前記対向ガラス基板には、接着層を介して対向プラスチック基板が接着していることを特徴とする有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−48887(P2010−48887A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210818(P2008−210818)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】