説明

表示装置

【課題】複雑な演算処理等をすることなく、立体視に伴う観察者の疲労感を軽減する。
【解決手段】異なる複数の視点に対応する複数の視差画像を表示する表示部と、複数の視差画像を表示する表示面のそれぞれの虚像を生成し、複数の視差画像の光のそれぞれを対応する視点に応じた位置に合成して観察者の片眼に与える光学系と、光学系および表示部の少なくとも一方等を制御することにより虚像の位置を制御して、表示部の表示面と片眼の網膜とを光学的共役関係に保つ制御部と、を備える表示装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察者に立体像を表示するための表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、観察者の注視点を検出し、注視点に表示された物体の距離を取得し、取得した距離に応じて光学系の焦点距離を制御する立体表示システムが記載されている。この立体表示システムでは、眼の焦点の距離と、観察者が注視している表示物体の距離とを一致させ、立体視に伴う観察者の疲労感を軽減することができる。
特許文献1 特公平6−85590号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、表示画面内には、注視点に表示された物体とは異なる距離の物体も表示されている。従って、このような立体表示システムは、注視点に表示された物体と異なる距離の物体については、異なる焦点距離で観察しなければならないので、観察者に疲労感を与えてしまう。
【0004】
また、このような立体表示システムでは、観察者が立体像のどこに注視しているのかを検出しなければならない。しかし、注視点を正確に検出するのは難しい。例えば昆虫の触覚の先端のような細く周囲から飛び出した突起物の先端を観察者が注視している場合、注視点を正確に検出するのは難しかった。
【0005】
また、このような立体表示システムでは、観察者が注視している表示物体の距離を取得しなければならない。立体表示システムは、一例として、左右の視差画像のそれぞれから注視点近傍の小画像を抽出し、抽出した小画像間の相関を演算して両者のずれ量を算出する。そして、立体表示システムは、その算出したずれ量から距離情報を取得することができる。しかし、オクルージョン等により左右の視差画像のうちの一方にのみ注視している表示物体が表示され、他方には表示されないような場合、このような方法では距離情報を取得することができなかった。従って、このような立体表示システムでは、眼の焦点の距離と、観察者が注視している表示物体の距離とを正確に一致させることが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、異なる複数の視点に対応する複数の視差画像を表示する表示部と、前記複数の視差画像を表示する表示面のそれぞれの虚像を生成し、前記複数の視差画像の光のそれぞれを対応する視点に応じた位置に合成して観察者の片眼に与える光学系と、前記虚像の位置を制御して、前記表示部の前記表示面と前記片眼の網膜とを光学的共役関係に保つ制御部と、を備える表示装置を提供する。
【0007】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係る表示装置10の構成を示す。
【図2】本実施形態の表示装置10において、観察者の注視点が立体像30上の点Pである場合、当該点Pが観察者の片眼40にどのように見えるかを示す。
【図3】本実施形態の表示装置10において、観察者の注視点が、点Pよりも視点側に位置する立体像30上の点Pである場合、当該点Pが観察者の片眼40にどのように見えるかを示す。
【図4】本実施形態の表示装置10において、観察者の注視点が立体像30上の点Pである場合、点Pが観察者の片眼40にどのように見えるかを示す。
【図5】本実施形態の表示装置10において、観察者の注視点が立体像30上の点Pである場合、点Pが観察者の片眼40にどのように見えるかを示す。
【図6】本実施形態の表示装置10において表示される第1の視差画像の一例を示す。
【図7】本実施形態の表示装置10において表示される第2の視差画像の一例を示す。
【図8】本実施形態の表示装置10が図6の第1の視差画像および図7の第2の視差画像を合成して観察者の片眼40に与えた場合に、制御部20が何ら制御を行っていない状態において、注視点Piの像が観察者の片眼40にどのように与えられるかを示す。
【図9】図8の状態において観察者に見える像のシミュレーション結果を示す。
【図10】本実施形態の表示装置10が図6の第1の視差画像および図7の第2の視差画像を合成して観察者の片眼40に与えた場合に、制御部20が網膜44と表示面22との間で光学的共役関係が成立するように制御を行っているが、水晶体42の厚みが完全には調整されていない状態において、注視点Piの像が観察者の片眼40にどのように与えられるかを示す。
【図11】図10の状態において観察者に見える像のシミュレーション結果を示す。
【図12】本実施形態の表示装置10が図6の第1の視差画像および図7の第2の視差画像を合成して観察者の片眼40に与えた場合に、制御部20が網膜44と表示面22との間で光学的共役関係が成立するように制御を行い、且つ、水晶体42の厚みが完全に調整された状態において、注視点Piの像が観察者の片眼40にどのように与えられるかを示す。
【図13】図12の状態において観察者に見える像のシミュレーション結果を示す。
【図14】本実施形態の第1例に係る表示装置10における、表示部14および光学系16の構成を示す。
【図15】本実施形態の第1例に係る表示装置10における、光学系16の一部、表示部14および検出部18の構成、並びに、片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1に一致する場合の調整光および表示光の光路を示す。
【図16】本実施形態の第1例に係る表示装置10における、光学系16の一部、表示部14および検出部18の構成、並びに、片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1より後側にある場合の調整光および表示光の光路を示す。
【図17】本実施形態の第1例に係る表示装置10における、光学系16の一部、表示部14および検出部18の構成、並びに、片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1より前側にある場合の調整光および表示光の光路を示す。
【図18】本実施形態の第1例に係る表示装置10における、(a)片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1に一致する場合、(b)後側にある場合、および、(c)前側にある場合の、調整光受光部70により検出される調整光のスポットSiの大きさの一例を示す。
【図19】本実施形態の第1例に係る表示装置10における、第1の表示面22−1と光学系16との間の距離Lに対する、調整光受光部70により検出される調整光のスポットSiの直径dの関係を表す。
【図20】本実施形態の第2例に係る表示装置10における、光学系16の一部、表示部14および検出部18の構成、並びに、調整光出力部60から片眼40へ向かう調整光の光路の一例を示す。
【図21】本実施形態の第2例に係る表示装置10における、光学系16の一部、表示部14および検出部18の構成、並びに、片眼40から調整光受光部70へ向かう、片眼40の網膜44により反射された調整光の光路の一例を示す。
【図22】本実施形態の第2例に係る表示装置10における、(a)片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1の後側にある場合、および、(b)前側にある場合の、調整光受光部70により検出される第1の調整光のスポットSi1および第2の調整光のスポットSi2の大きさの一例を示す。
【図23】本実施形態の第2例に係る表示装置10における、第1の表示面22−1と光学系16との間の距離Lに対する、調整光受光部70により検出される第1の調整光のスポットSi1の直径d1および第2の調整光のスポットSi2の直径d2、および、直径d1と直径d2との差(d−d)の関係を示す。
【図24】本実施形態の第3例に係る表示装置10における、光学系16、表示部14および検出部18の構成を示す。
【図25】本実施形態の第3例に係る表示面22の構成の一例を示す。
【図26】本実施形態の第3例に係る光学素子80を通過する光の経路の一例を示す。
【図27】本実施形態に係る第1の撮像方法において、右眼用の第1の視差画像を撮像する場合の撮像装置102の位置を示す。
【図28】本実施形態に係る第1の撮像方法において、右眼用の第2の視差画像を撮像する場合の撮像装置102の位置を示す。
【図29】本実施形態に係る第1の撮像方法において、左眼用の第1の視差画像を撮像する場合の撮像装置102の位置を示す。
【図30】本実施形態に係る第1の撮像方法において、左眼用の第2の視差画像を撮像する場合の撮像装置102の位置を示す。
【図31】本実施形態に係る第1の撮像方法により撮像された視差画像を観察者に提供する場合における、表示部14および光学系16の配置例を示す。
【図32】本実施形態に係る第2の撮像方法において、右眼用の第1の視差画像を撮像する場合の撮像装置102の位置を示す。
【図33】本実施形態に係る第2の撮像方法において、右眼用の第2の視差画像を撮像する場合の撮像装置102の位置を示す。
【図34】本実施形態に係る第2の撮像方法において、左眼用の第1の視差画像を撮像する場合の撮像装置102の位置を示す。
【図35】本実施形態に係る第2の撮像方法において、左眼用の第2の視差画像を撮像する場合の撮像装置102の位置を示す。
【図36】本実施形態に係る第2の撮像方法により撮像された視差画像を観察者に提供する場合における、表示部14および光学系16の配置例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、本実施形態に係る表示装置10の構成を示す。表示装置10は、観察者の右眼および左眼に別個の画像を与えて、観察者に立体的に認識される画像を提供する。
【0011】
表示装置10は、出力部12と、右眼用の表示部14−Rと、左眼用の表示部14−Lと、右眼用の光学系16−Rと、左眼用の光学系16−Lと、右眼用の検出部18−Rと、左眼用の検出部18−Lと、制御部20とを備える。
【0012】
出力部12は、右眼用の複数の視差画像および左眼用の複数の視差画像を出力する。より詳しくは、出力部12は、異なる複数の視点に対応する右眼用の複数の視差画像および左眼用の複数の視差画像を出力する。出力部12は、このような視差画像として、例えば、異なる複数の視点から表示対象物を見た複数の視差画像を、右眼用および左眼用のそれぞれについて出力する。
【0013】
出力部12は、一例として、観察者の眼幅距離よりも十分短い距離(例えば、観察者の瞳の径と同等またはそれよりも短い距離)ずれた異なる複数の視点から撮像した複数の視差画像を、右眼用および左眼用のそれぞれについて出力する。複数の視差画像のずれの方向は、どの方向であってもよく、例えば、水平方向にずれていても、垂直方向にずれていてもよい。これにより、出力部12は、表示対象物の表示位置を視点から当該表示対象物までの距離に応じてずらした右眼用の複数の視差画像、および、左眼用の複数の視差画像を出力することができる。
【0014】
右眼用の表示部14−Rは、出力部12から出力された右眼用の複数の視差画像を表示する。左眼用の表示部14−Lは、出力部12から出力された左眼用の複数の視差画像を表示する。
【0015】
右眼用の表示部14−Rおよび左眼用の表示部14−Lは、複数の視差画像のそれぞれを表示する表示面22を有する。なお、右眼用の表示部14−Rおよび左眼用の表示部14−Lは、右眼用または左眼用である点において相違するが、他の点においては互いに同一の機能および構成を有するので、以下、両者を合わせて説明する場合には、単に表示部14と称する。
【0016】
右眼用の光学系16−Rは、右眼用の表示部14−Rにおける右眼用の複数の視差画像を表示する表示面22のそれぞれの虚像を生成し、右眼用の複数の視差画像の光のそれぞれを対応する視点に応じた位置に合成して観察者の右眼に与える。左眼用の光学系16−Lは、左眼用の表示部14−Lにおける左眼用の複数の視差画像を表示する表示面22のそれぞれの虚像を生成し、左眼用の複数の視差画像の光のそれぞれを対応する視点に応じた位置に合成して観察者の左眼に与える。
【0017】
なお、右眼用の光学系16−Rおよび左眼用の光学系16−Lは、右眼用または左眼用である点において相違するが、他の点においては互いに同一の機能および構成を有するので、以下、両者を合わせて説明する場合には、単に光学系16と称する。
【0018】
ここで、光学系16は、複数の視差画像を表示する表示面22の虚像を生成する虚像生成光学系と、虚像生成光学系より射出した複数の視差画像の光を互いに異なる光軸にずらして観察者の片眼に与える光学素子とを有する。虚像生成光学系は、一例として、レンズまたは反射光学系である。
【0019】
本実施形態においては、光学系16は、虚像生成光学系として、複数の視差画像のそれぞれに対応して設けられた複数のレンズ24を有する。それぞれのレンズ24は、観察者の片眼(右眼または左眼)と、表示部14における複数の視差画像を表示する表示面22のそれぞれとの間に、互いに光軸をずらして設けられる。これにより、光学系16は、観察者の片眼に対して、複数の視差画像を表示する表示面22のそれぞれの虚像を見せることができる。
【0020】
また、虚像生成光学系より射出した複数の視差画像の光を互いに異なる光軸にずらして観察者の片眼に与える光学素子は、一例として、ビームスプリッター等であってよい。このような光学素子を有することにより、光学系16は、観察者の片眼に対して、複数の視差画像の光を同時に与えることができる。なお、表示部14および光学系16の具体的な構成例については、詳細を後述する。
【0021】
さらに、一例として、表示部14および光学系16の一方または両方は、互いの光軸方向の相対的な位置を変更することができる。例えば、表示部14の表示面22および光学系16のレンズ24の一方または両方は、光軸方向の位置を移動することができる。
【0022】
右眼用の検出部18―Rは、観察者の右眼の網膜との光学的共役位置と右眼用の表示部14−Rの表示面22の位置とのずれ量を検出する。本実施形態においては、右眼用の検出部18―Rは、観察者の右眼の網膜からの光を検出し、検出した光に基づいて、観察者の右眼の網膜との光学的共役位置と右眼用の表示部14−Rの表示面22の位置とのずれ量を検出する。
【0023】
右眼用の検出部18―Rは、一例として、赤外光等の不可視の調整光を右眼用の光学系16−Rを介して観察者の右眼の網膜に与え、右眼の網膜から反射された調整光を右眼用の光学系16−Rを介して受光する。そして、右眼用の検出部18―Rは、受光した調整光に基づき、右眼の網膜との光学的共役位置と右眼用の表示部14−Rの表示面22の位置とのずれ量を検出する。
【0024】
左眼用の検出部18―Lは、観察者の左眼の網膜との光学的共役位置と左眼用の表示部14−Lの表示面22の位置とのずれ量を検出する。本実施形態においては、左眼用の検出部18―Lは、観察者の左眼の網膜からの光を検出し、検出した光に基づいて、観察者の左眼の網膜との光学的共役位置と左眼用の表示部14−Lの表示面22の位置とのずれ量を検出する。
【0025】
左眼用の検出部18―Lは、一例として、赤外光等の不可視の調整光を左眼用の光学系16−Lを介して観察者の左眼の網膜に与え、左眼の網膜から反射された調整光を左眼用の光学系16−Lを介して受光する。そして、左眼用の検出部18―Lは、受光した調整光に基づき、左眼の網膜との光学的共役位置と左眼用の表示部14−Lの表示面22の位置とのずれ量を検出する。
【0026】
なお、右眼用の検出部18−Rおよび左眼用の検出部18−Lは、右眼用または左眼用である点において相違するが、他の点においては互いに同一の機能および構成を有するので、以下、両者を合わせて説明する場合には、単に検出部18と称する。また、検出部18の構成の具体例については詳細を後述する。
【0027】
制御部20は、右眼用の検出部18−Rの検出結果に基づいて右眼用の光学系16−Rおよび右眼用の表示部14−Rの少なくとも一方の位置を制御して、右眼用の表示部14−Rの表示面22と右眼の網膜とを光学的共役関係に保つ。制御部20は、一例として、右眼用の表示部14−Rの表示面22と右眼の網膜との光学的共役位置とのずれ量が0となるように、右眼用の光学系16−Rのレンズ24および右眼用の表示部14−Lの表示面22の少なくとも一方の光軸方向の位置を移動させる。
【0028】
また、制御部20は、左眼用の検出部18−Lの検出結果に基づいて左眼用の光学系16−Lおよび左眼用の表示部14−Lの少なくとも一方の位置を制御して、左眼用の表示部14−Lの表示面22と左眼の網膜とを光学的共役関係に保つ。制御部20は、一例として、左眼用の表示部14−Lの表示面22と左眼の網膜との光学的共役位置とのずれ量が0となるように、左眼用の光学系16−Lのレンズ24および左眼用の表示部14−Lの表示面22の少なくとも一方の光軸方向の位置を移動させる。
【0029】
以上のような表示装置10は、観察者の右眼に右眼用の画像を与え、観察者の左眼に左眼用の画像を与える。これにより、表示装置10によれば、観察者に立体像を提供することができる。
【0030】
図2は、本実施形態の表示装置10において、観察者の注視点が立体像30上の表示対象物P(点Pという場合もある)である場合、当該点Pが観察者の片眼40にどのように見えるかを示す。本例において、表示部14は、第1の表示面22−1と、第2の表示面22−2とを有する。第1の表示面22−1は、所定の視点から撮像された第1の視差画像を表示する。第2の表示面22−2は、第1の視差画像を撮像した視点に対して、微小距離ずれた異なる視点から撮像された第2の視差画像を表示する。なお、図2から図5では、説明上、第1の表示面22−1および第2の表示面22−2を重ねて描いている。
【0031】
また、本例において、光学系16は、第1の視差画像の光を、当該第1の視差画像を撮像した視点に対応する位置から観察者の片眼40に与える。また、光学系16は、第2の視差画像の光を、当該第2の視差画像を撮像した視点に対応する位置から観察者の片眼40に与える。例えば、光学系16は、第1の視差画像の撮像位置と第2の視差画像の撮像位置とが水平方向に所定距離ずれていれば、第1の視差画像の光と第2の視差画像の光とを水平方向に同距離ずらした視点からの光束として合成して、観察者の片眼40に与える。
【0032】
また、本例において、光学系16は、第1のレンズ24−1と、第2のレンズ24−2とを有する。第1のレンズ24−1は、第1の表示面22−1と片眼40との間の光路中に設けられる。また、第2のレンズ24−2は、第2の表示面22−2と片眼40との間における、第1のレンズ24−1とは異なる光路中に設けられる。
【0033】
このような表示装置10では、第1の表示面22−1に表示された第1の視差画像の光は、第1のレンズ24−1を透過して片眼40に与えられる。これとともに、第2の表示面22−2に表示された第2の視差画像の光は、第2のレンズ24−2を透過して片眼40に与えられる。
【0034】
ここで、観察者の注視点が、立体像30上の点Pにあるとする。また、点Pにおける視点からの距離はHであるとする。
【0035】
この場合、制御部20は、第1の表示面22−1と片眼40の網膜44とを光学的共役関係とするように、第1の表示面22−1および第1のレンズ24−1の何れか一方または両方の光軸方向の位置を制御する。これとともに、制御部20は、第2の表示面22−2と片眼40の網膜44とを光学的共役関係とするように、第2の表示面22−2および第2のレンズ24−2の何れか一方または両方の光軸方向の位置を制御する。
【0036】
更に、観察者の片眼40は、距離H上の面で、第1の視差画像による点Pと第2の視差画像による点Pとが一致するように、水晶体42の厚みを調整する。この間も、制御部20は、水晶体42の厚みの変化に追従して、網膜44と表示面22との間で光学的共役関係が成立するように制御する。従って、観察者は、第1の視差画像の点Pの像と第1の視差画像の点Pの像とを重ねて、点Pの物体を鮮明に見ることができる。
【0037】
以上により、表示装置10は、観察者の片眼40に対して、第1の視差画像による点Pと第2の視差画像による点Pとを、距離H上の面において合致させ、且つ、ピントが合った状態で見せることができる。
【0038】
図3は、本実施形態の表示装置10において、観察者の注視点が、点Pよりも視点側に位置する立体像30上の表示対象物P(点Pという場合もある)である場合、当該点Pが観察者の片眼40にどのように見えるかを示す。観察者の注視点が、立体像30上の点Pにあるとする。また、点Pにおける視点からの距離はHであるとする。
【0039】
この場合、制御部20は、第1の表示面22−1と片眼40の網膜44とを光学的共役関係とするように、第1の表示面22−1および第1のレンズ24−1の何れか一方または両方の光軸方向の位置を制御する。これとともに、制御部20は、第2の表示面22−2と片眼40の網膜44とを光学的共役関係とするように、第2の表示面22−2および第2のレンズ24−2の何れか一方または両方の光軸方向の位置を制御する。
【0040】
更に、観察者の片眼40は、距離H2上の面で、第1の視差画像による点P2と第2の視差画像による点P2とが合致するように、水晶体42の厚みを調整する。これにより、観察者は、第1の視差画像の点Pの像と第2の視差画像の点Pの像とを重ねて、点Pの物体を鮮明に見ることができる。
【0041】
以上により、表示装置10は、観察者の片眼40に対して、第1の視差画像による点P2と第2の視差画像による点P2とを、距離H2上の面において合致させ、且つ、ピントが合った状態で見せることができる。
【0042】
図2および図3に示されるように、表示装置10は、表示面22と観察者の片眼40の網膜44との光学的共役位置とを一致させることができる。これにより、表示装置10によれば、観察者に対して、不快感および疲労等の少ない自然な立体像を提供することができる。
【0043】
さらに、表示装置10は、画像内における観察者の注視点を検出することなく、表示面22と観察者の片眼40の網膜44との光学的共役位置とを一致させることができる。従って、表示装置10によれば、注視点において常時正確にピントが合った立体像を観察者に観察させることができる。
【0044】
例えば、表示装置10によれば、突起物の先端を注視している場合およびオクルージョンにより左右の眼に対する像が異なる箇所を注視している場合等であっても、注視点にピントが合った立体像を観察者に観察させることができる。また、表示装置10によれば、観察者の注視点を検出するための装置および注視点における距離等を演算する装置を用いないでよいので、構成および処理を簡易にすることができる。
【0045】
図4は、本実施形態の表示装置10において、観察者の注視点が立体像30上の点Pである場合、点Pが観察者の片眼40にどのように見えるかを示す。点Pから第1のレンズ24−1を通り片眼40に向かう光束の主光線、および、点Pから第2のレンズ24−2を通り片眼40に向かう光束の主光線は、距離H上の面では一致するが、距離H上の面ではずれて観察される。
【0046】
ここで、観察者の注視点が立体像30上の点Pにある場合、第1の表示面22−1の虚像および第2の表示面22−2の虚像は、距離H上の面に生成される。従って、この場合、第1のレンズ24−1が作る点Pに対応する虚像と、第2のレンズ24−2が作る点Pに対応する虚像とは、位置がずれた像となる。
【0047】
このように、表示装置10は、観察者の注視点が立体像30上の点Pにある場合、点Pとは距離が異なる点Pについては、観察者の片眼40に対して、位置ずれして重ねられた二重の像を与えることができる。この場合において、第1のレンズ24−1が作る点Pに対応する虚像の位置と、第2のレンズ24−2が作る点Pに対応する虚像の位置とのずれ量sは、距離Hと距離Hとの間隔dに比例した値となる。
【0048】
図5は、本実施形態の表示装置10において、観察者の注視点が立体像30上の点Pである場合、点Pが観察者の片眼40にどのように見えるかを示す。点P1から第1のレンズ24−1を通り片眼40に向かう光束の主光線、および、点P1から第2のレンズ24−2を通り片眼40に向かう光束の主光線は、距離H上の面では一致するが、距離H上の面ではずれて観察される。
【0049】
ここで、観察者の注視点が立体像30上の点Pにある場合、第1の表示面22−1の虚像および第2の表示面22−2の虚像は、距離H上の面に生成される。従って、この場合、第1のレンズ24−1が作る点Pに対応する虚像と、第2のレンズ24−2が作る点Pに対応する虚像とは、位置がずれた像となる。
【0050】
このように、表示装置10は、観察者の注視点が立体像30上の点Pにある場合、点Pとは距離が異なる点Pについては、観察者の片眼40に対して、位置ずれして重ねられた二重の像を与えることができる。この場合において、第1のレンズ24−1が作る点Pに対応する虚像の位置と、第2のレンズ24−2が作る点Pに対応する虚像の位置とのずれ量sは、距離Hと距離Hとの間隔dに比例した値となる。
【0051】
図4および図5に示されるように、表示装置10は、注視点に表示された表示対象物と異なる距離の表示対象物を、注視点に表示された表示対象物からの距離に応じたずれ量分、表示面内方向にずらして、観察者の片眼40に与える。このずれ量により、観察者には擬似的にぼけが生じたように感じられるので、表示装置10は、注視点に表示された表示対象物からの距離に応じてぼけ量が大きくなる立体像を観察者に提供することができる。
【0052】
このような状態は、3次元物体を直接観察する場合とほぼ等価な状態である。従って、2台の表示装置10により左右両眼に立体像を供給することで、両眼視差による表示対象物上の注視点に、眼のピントを合わせることができるので、不快感および疲労等の少ない自然な立体像を観察者に与えることができる。
【0053】
更に、表示装置10によれば、複数の視差画像のずれによりぼけを生じさせるので、観察者の注視点が変わった場合にも、ぼかしの状態を容易に変化させることができる。これにより、表示装置10によれば、複雑な演算を必要とせず、リアルタイムで簡易にぼかしの状態を変化させることができる。
【0054】
図6は、本実施形態の表示装置10において表示される第1の視差画像の一例を示す。図7は、本実施形態の表示装置10において表示される第2の視差画像の一例を示す。
【0055】
表示装置10は、例えば、図6および図7に示されるような所定方向(例えば水平方向)に微小にずれた視点から撮像した第1の視差画像および第2の視差画像を、観察者の片眼40に対して同時に与える。この場合、表示装置10は、第1の視差画像および第2の視差画像をそれぞれ視点に応じた位置から観察者の片眼40に与えられるように合成して与える。
【0056】
図8は、本実施形態の表示装置10が図6の第1の視差画像および図7の第2の視差画像を合成して観察者の片眼40に与えた場合に、制御部20が何ら制御を行っていない状態において、注視点Piの像が観察者の片眼40にどのように与えられるかを示す。図9は、図8の状態において観察者に見える像のシミュレーション結果を示す。
【0057】
例えば、表示装置10が図6および図7に示された第1の視差画像および第2の視差画像を合成して、観察者の片眼40に与えたとする。この場合、制御部20が何ら制御を行っていなければ、図8に示されるように、第1の視差画像および第2の視差画像のそれぞれからの光束は、どちらも網膜44上で集光しておらず、それらの主光線同士も網膜44上では一致していない。このような状態においては、観察者には、図9に示されるように、画像全体がぼけており、更に、注視点Piの近傍においても第1の視差画像および第2の視差画像の間でずれた像が見える。
【0058】
図10は、本実施形態の表示装置10が図6の第1の視差画像および図7の第2の視差画像を合成して観察者の片眼40に与えた場合に、制御部20が網膜44と表示面22との間で光学的共役関係が成立するように制御を行っているが、水晶体42の厚みが完全には調整されていない状態において、注視点Piの像が観察者の片眼40にどのように与えられるかを示す。図11は、図10の状態において観察者に見える像のシミュレーション結果を示す。
【0059】
表示装置10は、網膜44と表示面22との間で光学的共役関係が成立するように、表示面22および光学系16の少なくとも一方の光軸方向の位置を移動させる。網膜44と表示面22との間で光学的共役関係が成立した結果、図10に示されるように、第1の視差画像および第2の視差画像のそれぞれからの光束は、どちらも網膜44上で集光する。このような状態においては、観察者には、図11に示されるように、画像全体のぼけが無くなり、鮮明な画像を見ることができる。
【0060】
しかしながら、水晶体42の厚みは完全には調整されていないので、第1の視差画像および第2の視差画像のそれぞれからの光束の主光線同士は網膜44上では一致せず、網膜44には、第1の視差画像および第2の視差画像の間で2重にずれた光が与えられる。従って、観察者は、図11に示されるような、注視点Piの近傍においては第1の視差画像および第2の視差画像の間でずれた像が見える。
【0061】
図12は、本実施形態の表示装置10が図6の第1の視差画像および図7の第2の視差画像を合成して観察者の片眼40に与えた場合に、制御部20が網膜44と表示面22との間で光学的共役関係が成立するように制御を行い、且つ、水晶体42の厚みが完全に調整された状態において、注視点Piの像が観察者の片眼40にどのように与えられるかを示す。図13は、図12の状態において観察者に見える像のシミュレーション結果を示す。
【0062】
観察者の片眼40は、第1の視差画像および第2の視差画像の間のずれを解消しようとして、水晶体42の厚みを調整する。これとともに、制御部20は、水晶体42の厚みの変化に追従して、網膜44と表示面22との間で光学的共役関係が成立するように制御を行う。この結果、図12に示されるように、第1の視差画像および第2の視差画像のそれぞれからの光束は、どちらも網膜44上で集光し、且つ、それらの主光線同士も網膜44上で一致する。これにより、観察者は、図13に示されるように、注視点Piの像を、第1の視差画像および第2の視差画像の間で重なり、且つ、ピントが合った状態で見ることができる。
【0063】
これに対して、注視点Piとは異なる距離の像は、画面内方向にずれた状態で観察者の片眼40の網膜44に与えられる。従って、観察者は、注視点Piとは異なる距離の物体を2重にずれた状態、即ち、擬似的にぼけた状態で見ることができる。このような状態は、3次元物体を直接観察する場合とほぼ等価な状態である。
【0064】
このように、表示装置10によれば、注視点の像と観察者の片眼40の網膜44との光学的共役位置とを一致させることができる。更に、表示装置10によれば、注視点とは異なる距離の像を、注視点の像からの奥行き方向の距離に応じて第1の視差画像と第2の視差画像との間でずらして観察者に見せる。これにより、表示装置10によれば、不快感および疲労等の少ない自然な像を観察者に与えることができる。
【0065】
図14は、本実施形態の第1例に係る表示装置10における、表示部14および光学系16の構成を示す。なお、図14には、検出部18の構成を省略して示す。検出部18の構成は図15を参照して説明する。
【0066】
また、第1例に係る表示装置10は、図1から図5に示した表示装置10と略同一の構成および機能を有するので、図1から図5までに説明した構成要素と略同一の構成要素については同一の符号を付けて相違点を除き説明を省略する。
【0067】
第1例に係る表示部14は、複数の視差画像のうちの第1の視差画像を表示する第1の表示面22−1と、複数の視差画像のうちの第2の視差画像を表示する第2の表示面22−2とを有する。第1の表示面22−1および第2の表示面22−2は、互いに異なる位置に配置される。
【0068】
第1例に係る光学系16は、第1のレンズ24−1と、第2のレンズ24−2と、部分透過ミラー50とを有する。第1のレンズ24−1は、第1の表示面22−1により表示された第1の視差画像の光を透過する。第2のレンズ24−2は、第2の表示面22−2により表示された第2の視差画像の光を透過する。
【0069】
部分透過ミラー50は、第1のレンズ24−1を透過した第1の視差画像の光および第2のレンズ24−2を透過した第2の視差画像の光を異なる方向(例えば、互いに直交する方向)から入射する。そして、部分透過ミラー50は、第1の視差画像の光の一部を透過して第2の視差画像の光の一部を反射して、第1の視差画像の光および第2の視差画像の光を、光軸をずらして出射する。この場合において、部分透過ミラー50は、第1の視差画像の光と第2の視差画像の光とを、撮像位置のずれの方向およびずれ量に対応して光軸をずらして出射する。部分透過ミラー50は、例えば、片眼40に対して水平方向に光軸がずれた光を射出してもよいし、片眼40に対して垂直方向にずれた光を射出してもよい。
【0070】
このような第1例に係る光学系16は、異なる複数の視点から撮像された第1の視差画像および第2の視差画像を、対応する視点に応じた位置に光学的に合成して観察者の片眼40に与えることができる。そして、このような第1例に係る光学系16は、第1のレンズ24−1および第2のレンズ24−2を機械的に干渉させずに配置することができる。
【0071】
なお、第1の表示面22−1は、制御部20による制御に応じて光軸方向に沿って前後に移動する。同様に、第2の表示面22−2は、制御部20による制御に応じて光軸方向に沿って前後に移動する。第1の表示面22−1および第2の表示面22−2は、互いに同期して同一の移動量で移動する。
【0072】
また、光学系16は、部分透過ミラー50に代えて、偏光ビームスプリッターを有する構成であってもよい。この場合、偏光ビームスプリッターは、第1のレンズ24−1を透過した第1の視差画像の光および第2のレンズ24−2を透過した第2の視差画像の光を異なる方向から入射する。そして、偏光ビームスプリッターは、第1の視差画像の光の第1偏光成分(例えばP偏光成分)を透過して第2の視差画像の光の第2偏光成分(S偏光成分)を反射することにより、第1の視差画像および第2の視差画像の光を光軸をずらして出射する。表示装置10は、このような構成の光学系16を用いた場合も、部分透過ミラー50を用いた場合と同様の作用効果を有する。
【0073】
図15は、本実施形態の第1例に係る表示装置10における、光学系16の一部、表示部14および検出部18の構成、並びに、片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1に一致する場合の調整光および表示光の光路を示す。図16は、図15と同様の構成、並びに、片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1より後側にある場合の調整光および表示光の光路を示す。図17は、図15と同様の構成、並びに、片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1より前側にある場合の調整光および表示光の光路を示す。
【0074】
検出部18は、調整光を光学系16を介して観察者の片眼40の網膜44に与える。片眼40の網膜44は、与えられた調整光の一部を吸収し、一部を散乱および正反射する。検出部18は、片眼40の網膜44から反射された調整光を光学系16を介して受光する。
【0075】
本例において、検出部18は、第1の表示面22−1と光学系16の第1のレンズ24−1との間の光路中に配置される。また、本例において、検出部18および第1の表示面22−1は一体化されて光学ユニット72を形成する。そして、光学ユニット72は、光軸に沿って前後に移動する。
【0076】
検出部18は、調整光出力部60と、出力用レンズ62と、第1のハーフミラー64と、第2のハーフミラー66と、受光用レンズ68と、調整光受光部70とを有する。
【0077】
調整光出力部60は、観察者に不可視の調整光を出力する。調整光出力部60は、観察者が視覚的に認識することができない赤外光等の不可視波長領域の調整光を出力する。また、調整光出力部60は、観察者が認識することができない程度の短時間発光するパルス波の調整光を出力してもよい。
【0078】
出力用レンズ62は、調整光出力部60から出力された調整光を集光する。この場合において、出力用レンズ62は、当該調整光が調整光出力部60から片眼40の網膜44に与えられるまでの光路上における、光学系16からの光学的距離が表示面22と等しい位置に、調整光を集光する。
【0079】
即ち、出力用レンズ62は、光学系16からの光学的距離が表示面22と等しい位置と、調整光出力部60の発光位置との間を、共役関係とするレンズであってよい。これにより、出力用レンズ62は、第1の表示面22−1から光学系16の第1のレンズ24−1までの光学的距離と、当該出力用レンズ62が集光した調整光のスポットSsの位置から光学系16の第1のレンズ24−1までの光学的距離とを同一とすることができる。
【0080】
第1のハーフミラー64および第2のハーフミラー66は、調整光出力部60から出力された調整光を、第1の表示面22−1と光学系16との間の光路中に導いて、光学系16を介して片眼40の網膜44へ与える。また、第1のハーフミラー64および第2のハーフミラー66は、片眼40の網膜44により反射された調整光を、光学系16と第1の表示面22−1との間の光路中から取り出して、調整光受光部70に与える。
【0081】
例えば、第1のハーフミラー64は、出力用レンズ62と、出力用レンズ62が集光した調整光のスポットSsとの間に配置される。第1のハーフミラー64は、出力用レンズ62から出力された調整光を反射(または透過)して、第2のハーフミラー66に与える。
【0082】
例えば、第2のハーフミラー66は、第1のレンズ24−1と第1の表示面22−1との間の光路中に、光軸に対して45度の角度に設けられる。第2のハーフミラー66は、第1のハーフミラー64からの調整光を反射して、光学系16を介して片眼40の網膜44に与える。また、第2のハーフミラー66は、片眼40の網膜44から戻った調整光を反射して、第1のハーフミラー64に与える。第1のハーフミラー64は、第2のハーフミラー66により反射された調整光を透過(または反射)して、調整光受光部70に与える。
【0083】
なお、第2のハーフミラー66は、一例として、調整光出力部60が所定の波長の調整光(例えば赤外光)を出力する場合には、赤外光のみを反射し、他の波長の光を透過するダイクロイックミラーであってよい。これにより、第2のハーフミラー66は、第1の表示面22−1から片眼40へ与えられる表示光に影響を与えずに、調整光を片眼40の網膜44に与え、更に、片眼40の網膜44から反射した調整光を取り出すことができる。
【0084】
また、第1のハーフミラー64および第2のハーフミラー66は、調整光出力部60から出力された調整光を光学系16を介して片眼40の網膜44に与えるとともに、片眼40の網膜44から反射されて光学系16を介して出力された調整光を取り出す検出用光学系であれば、どのような構成であってもよい。
【0085】
受光用レンズ68は、片眼40の網膜44により反射された調整光を集光して調整光受光部70に与える。この場合において、受光用レンズ68は、片眼40の網膜44により反射された調整光を、光学系16からの光学的距離が表示面22と等しい参照位置を通過した後に集光する。受光用レンズ68は、一例として、第1のハーフミラー64と調整光受光部70との間に設けられる。
【0086】
調整光受光部70は、片眼40の網膜44から反射された調整光における、光学系16からの光学的距離が表示面22と等しい参照位置でのスポットSiの大きさを検出する。調整光受光部70は、一例として、光学系16からの光学的距離が表示面22と等しい参照位置と受光用レンズ68を挟んで光学的に共役な関係となるように配置されたイメージセンサと、このイメージセンサにより検出された画像からスポットSiの大きさを算出する算出部とを含む。
【0087】
以上のような表示装置10において、網膜44上に照射される調整光のスポットSrの大きさは、片眼40のピントの位置に応じて変化する。具体的には、図15に示されるように、片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1に一致した場合には、網膜44上に照射される調整光のスポットSrは、最も小さくなる。
【0088】
また、図16に示されるように、片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1より後側(片眼40から遠い位置)にある場合には、網膜44上における調整光のスポットSrは、網膜44との光学的共役位置のずれ量に応じて大きくなる。また、図17に示されるように、片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1より前側(片眼40より近い位置)にある場合も、網膜44上における調整光のスポットSrは、網膜44との光学的共役位置のずれ量に応じて大きくなる。
【0089】
図18は、本実施形態の第1例に係る表示装置10における、(a)片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1に一致する場合、(b)後側にある場合、および、(c)前側にある場合の、調整光受光部70により検出される調整光のスポットSiの大きさの一例を示す。図19は、本実施形態の第1例に係る表示装置10における、第1の表示面22−1と光学系16との間の距離Lに対する、調整光受光部70により検出される調整光のスポットSiの直径dの関係を表す。
【0090】
なお、Lは、第1の表示面22−1と光学系16(例えば第1のレンズ24−1の主平面)との間の距離を表す。また、dは、調整光受光部70により検出された、片眼40の網膜44から反射された調整光のスポットSiの直径を表す。
【0091】
調整光受光部70は、片眼40の網膜44から第1の表示面22−1と光学的に同一距離の参照位置において、片眼40の網膜44により反射された調整光のスポットSiの大きさを検出する。調整光受光部70は、一例として、イメージセンサにより検出された画像データのエッジを検出して、スポットSiの直径dを算出する。
【0092】
ここで、片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1に一致した場合、調整光受光部70により検出されるスポットSiの直径dは、図18の(a)に示されるように、最も短くなる。
【0093】
これに対して、片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1より後側にある場合(即ち、距離Lが短い場合)、図18の(b)に示されるように、調整光受光部70により検出されるスポットSiの直径dは、網膜44との光学的共役位置のずれ量が大きいほど長くなる。同様に、片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1より前側にある場合(即ち、距離Lが長い場合)も、図18の(c)に示されるように、調整光受光部70により検出されるスポットSiの直径dは、網膜44との光学的共役位置のずれ量が大きいほど長くなる。
【0094】
従って、図19に示されるように、第1の表示面22−1と光学系16との間の距離Lに対する、調整光受光部70により検出されるスポットSiの直径dは、片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1に一致した場合に最も短く、片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1からずれるほど長くなる。
【0095】
そこで、制御部20は、検出部18により検出された、片眼40の網膜44から反射された調整光のスポットSiに基づき、当該スポットのSiの直径dを算出する。そして、制御部20は、算出した直径dが最も小さくなるように、第1の表示面22−1の光軸方向の位置(本例においては第1の表示面22−1と検出部18とを一体化した光学ユニット72)を移動させる。さらに、制御部20は、第1の表示面22−1と同様に、第2の表示面22−2の光軸方向の位置を移動させる。
【0096】
これにより、制御部20は、片眼40の網膜44との光学的共役位置を第1の表示面22−1および第2の表示面22−2に一致させることができる。そして、制御部20は、このような制御を観察者が立体像の観察中において常時行う。これにより、制御部20は、表示部14の表示面22と片眼40の網膜44とを光学的共役関係に保つことができる。
【0097】
なお、図19に示されるように、人間の眼の特性等の影響から片眼40のピントが第1の表示面22−1に一致した位置の近傍において、スポットSiの直径dが変化しない領域が生じる。しかし、制御部20が表示部14の表示面22と片眼40の網膜44とを光学的共役関係に保つように制御する上では特に支障はない。
【0098】
図20は、本実施形態の第2例に係る表示装置10における、光学系16の一部、表示部14および検出部18の構成、並びに、調整光出力部60から片眼40へ向かう調整光の光路の一例を示す。図21は、図20と同様の構成、並びに、片眼40から調整光受光部70へ向かう、片眼40の網膜44により反射された調整光の光路の一例を示す。
【0099】
なお、本実施形態に係る第2例に係る表示装置10は、図1〜図19に示された第1例に係る表示装置10と略同一の構成を有するので、同一の構成要素については図面中に同一の符号を付け、以下、相違点を除き説明を省略する。
【0100】
第2例に係る検出部18は、例えば赤外光である第1の調整光および第2の調整光のそれぞれを、光学系16を介して観察者の片眼40の網膜44に与える。そして、第2例に係る検出部18は、片眼40の網膜44から反射された第1の調整光および第2の調整光を光学系16を介して受光する。
【0101】
第2例に係る調整光出力部60は、第1の調整光および第2の調整光を出力する。調整光出力部60は、一例として、発光位置が光軸方向にずれるとともに、発光位置が光軸の水平方向にずれた第1の調整光および第2の調整光を出力する。
【0102】
調整光出力部60は、一例として、第1発光素子74と、第2発光素子76と、平行平板ガラス78とを有する。第1発光素子74は、第1の調整光を出力する。第2発光素子76は、第2の調整光を出力する。第1発光素子74および第2発光素子76は、互いに同一の方向に第1の調整光および第2の調整光を出力し、且つ、光軸に対して水平方向に発光位置が所定距離ずれている。
【0103】
平行平板ガラス78は、入射面に90度未満の角度で第1の調整光が入射されるように、第1発光素子74と出力用レンズ62との間に配置される。平行平板ガラス78は、第1の調整光を平行な2つの面により2回屈折して出力する。従って、平行平板ガラス78は、第1の調整光の発光位置を第2の調整光の発光位置より光軸方向に、見かけ上、出力用レンズ62に近くすることができる。このような構成の調整光出力部60は、発光位置が光軸方向にずれるとともに発光位置が光軸の水平方向にずれた第1の調整光および第2の調整光を出力することができる。
【0104】
出力用レンズ62は、調整光出力部60から出力された第1の調整光および第2の調整光を集光する。この場合において、調整光が調整光出力部60から片眼40の網膜44に与えられるまでの光路上における、光学系16からの光学的距離が表示面22と等しい位置を挟んで光軸方向に前後する位置に、第1の調整光および第2の調整光を集光する。
【0105】
出力用レンズ62は、一例として、調整光出力部60から出力された第1の調整光を集光したスポットSs1を、片眼40から見て光学系16からの光学的距離が表示面22と等しい位置より前側(即ち、光学系16側)に形成する。また、出力用レンズ62は、一例として、調整光出力部60から出力された第2の調整光を集光したスポットSs2を、片眼40から見て光学系16からの光学的距離が表示面22と等しい位置より後側(即ち、調整光出力部60側)に形成する。
【0106】
なお、出力用レンズ62は、光学系16からの光学的距離が表示面22と等しい位置からスポットSs1までの距離と、光学系16からの光学的距離が表示面22と等しい位置からスポットSs2までの距離とが等しいことが好ましい。
【0107】
第1のハーフミラー64および第2のハーフミラー66は、調整光出力部60から出力された第1の調整光および第2の調整光を、第1の表示面22−1と光学系16との間の光路中に導いて、光学系16を介して片眼40の網膜44へ与える。また、第1のハーフミラー64および第2のハーフミラー66は、片眼40の網膜44により反射された第1の調整光および第2の調整光を、光学系16と第1の表示面22−1との間の光路中から取り出して、調整光受光部70に与える。
【0108】
受光用レンズ68は、片眼40の網膜44により反射された第1の調整光および第2の調整光を集光して調整光受光部70に与える。この場合において、受光用レンズ68は、片眼40の網膜44により反射された第1の調整光および第2の調整光を、光学系16からの光学的距離が表示面22と等しい参照位置を通過した後に集光する。
【0109】
調整光受光部70は、片眼40の網膜44から反射された第1の調整光および第2の調整光のそれぞれにおける、光学系16からの光学的距離が表示面22と等しい参照位置でのスポットSi1およびスポット2の大きさを検出する。調整光受光部70は、一例として、光学系16からの光学的距離が表示面22と等しい参照位置と受光用レンズ68を挟んで光学的に共役な関係となるように配置されたイメージセンサと、このイメージセンサにより検出された画像からスポットSi1およびスポットSi2の大きさを算出する算出部とを含む。
【0110】
このような検出部18において、出力用レンズ62が第1の調整光を集光したスポットSs1は、片眼40の網膜44から第1の表示面22−1と光学的に同一の距離の位置よりも、前側(片眼40から近い位置)に形成される。また、検出部18において、出力用レンズ62が第2の調整光を集光したスポットSs2は、片眼40の網膜44から第1の表示面22−1と光学的に同一の距離の位置よりも、後側(片眼40から遠い位置)に形成される。従って、第2例にかかる表示装置10において、網膜44上に照射される第1の調整光のスポットSr1の大きさおよび第2の調整光のスポットSr2の大きさを比較した比較結果は、片眼40のピントの位置に応じて変化する。
【0111】
具体的には、片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1よりも後側にある場合には、網膜44上における第2の調整光のスポットSr2の方が、網膜44上における第1の調整光のスポットSr1よりも小さくなる。また、片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1よりも前側にある場合、網膜44上における第1の調整光のスポットSr1の方が、網膜44上における第2の調整光のスポットSr2よりも小さくなる。また、片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1に一致する場合、網膜44上における第1の調整光のスポットSr1と、網膜44上における第2の調整光のスポットSr2とは大きさがほぼ一致する。
【0112】
図22は、本実施形態の第2例に係る表示装置10における、(a)片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1の後側にある場合、および、(b)前側にある場合の、調整光受光部70により検出される第1の調整光のスポットSi1および第2の調整光のスポットSi2の大きさの一例を示す。図23は、本実施形態の第2例に係る表示装置10における、第1の表示面22−1と光学系16との間の距離Lに対する、調整光受光部70により検出される第1の調整光のスポットSi1の直径d1および第2の調整光のスポットSi2の直径d2、および、直径d1と直径d2との差(d−d)の関係を示す。
【0113】
なお、d1は、調整光受光部70により検出された、片眼40の網膜44から反射された第1の調整光のスポットSi1の直径を表す。また、d2は、調整光受光部70により検出された、片眼40の網膜44から反射された第2の調整光のスポットSi2の直径を表す。
【0114】
調整光受光部70は、片眼40の網膜44から第1の表示面22−1と光学的に同一の距離の参照位置における、片眼40の網膜44により反射された第1の調整光のスポットSi1および第2の調整光のスポットSi2の大きさを検出する。調整光受光部70は、一例として、光軸に対して水平方向にずれた位置に形成される、スポットSi1およびスポットSi2のそれぞれをイメージセンサにより検出し、イメージセンサにより検出された画像データのエッジ等からスポットSi1の直径d1およびスポットSi2の直径d2を算出する。
【0115】
ここで、片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1に一致した場合、調整光受光部70により検出される第1調整光のスポットSi1の直径d1および第2調整光のスポットSi2の直径d2は、ほぼ一致する。
【0116】
これに対して、片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1より後側にある場合(例えば、距離Lが短い場合)、図22の(a)に示されるように、調整光受光部70により検出される第2の調整光のスポットSi2の直径d2の方が、第1の調整光のスポットSi1の直径d1よりも小さくなる。また、片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1より後側にある場合(例えば、距離Lが長い場合)、図22の(b)に示されるように、調整光受光部70により検出される第1の調整光のスポットSi1の直径d1の方が、第2の調整光のスポットSi2の直径d2よりも小さくなる。
【0117】
従って、図23に示されるように、第1の調整光のスポットSi1の大きさd1と第2の調整光のスポットSi2の大きさd2との差(d2−d1)は、片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1に一致した場合に0とる。また、この差(d2−d1)は、片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1よりも後側にある場合(例えば、距離Lがピントのあっている状態よりも短い場合)にマイナスとなり、片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1よりも前側にある場合(例えば、距離Lがピントのあっている状態よりも長い場合)にプラスとなる。
【0118】
そこで、第2変形例において、制御部20は、検出部18により検出された、第1の調整光のスポットSi1の大きさd1および第2の調整光のスポットSi2の大きさd2に基づき、第1の調整光のスポットSi1の大きさd1と第2の調整光のスポットSi2の大きさd2との差(d2−d1)を算出する。そして、制御部20は、算出した差(d2−d1)が0となるように、第1の表示面22−1の光軸方向の位置(本例においては第1の表示面22−1と検出部18とを一体化した光学ユニット72)を移動させる。
【0119】
例えば、制御部20は、第1のスポットSi2の直径d2から第1の調整光のスポットSi1の直径d1を減じた値が、プラスの値であれば、第1の表示面22−1と光学系16との間の距離Lを短くする方向に制御し、マイナスの値であれば、第1の表示面22−1と光学系16の第1のレンズ24−1との間の距離Lを長くする方向に制御する。これにより、制御部20は、片眼40の網膜44との光学的共役位置を第1の表示面22−1および第2の表示面22−2に一致させることができる。そして、制御部20は、このような制御を観察者が立体像の観察中において常時行う。これにより、制御部20は、表示部14の表示面22と片眼40の網膜44とを光学的共役関係に保つことができる。
【0120】
以上のように、第2変形例に係る表示装置10によれば、第1の調整光のスポットSi1の直径d1から第1のスポットSi2の直径d2との差の符号により、片眼40の網膜44との光学的共役位置が第1の表示面22−1より後側か前側にあるかを判別することができる。これにより、表示装置10によれば、サーボ制御により安定した制御を行うことができる。
【0121】
図24は、本実施形態の第3例に係る表示装置10における、表示部14、光学系16および検出部18の構成を示す。なお、第3例に係る表示装置10は、図14から図23に示した表示装置10と略同一の構成および機能を有するので、図14から図23までに説明した構成要素と略同一の構成要素については同一の符号を付けて相違点を除き説明を省略する。
【0122】
第3例に係る表示部14は、1つの表示面22を有する。表示面22は、第1の視差画像を第1偏光成分(例えば垂直方向の直線偏光成分)の光で表示し、第2の視差画像を第1偏光成分と異なる第2偏光成分(例えば第1偏光成分と直交する水平方向の直線偏光成分)の光で表示する。
【0123】
第3例に係る光学系16は、1つのレンズ24と、光学素子80とを有する。レンズ24は、表示部14から出力された第1の視差画像の光(第1偏光成分の光)および第2の視差画像の光(第2偏光成分の光)を透過する。
【0124】
光学素子80は、レンズ24を透過した光を入射する。そして、光学素子80は、入射した光の第1偏光成分と第2偏光成分とを、平行な異なる面において反射する。これにより、光学素子80は、入射した光の第1偏光成分と第2偏光成分とを光軸をずらして平行に出射することができる。
【0125】
第3例に係る検出部18は、偏光素子82を更に有する。第3変形例に係る検出部18は、偏光素子82以外の構成については、図15に示された検出部18または図20に示された検出部18と構成が同一である。
【0126】
偏光素子82は、片眼40の網膜44から反射された調整光のうちの、第1偏光成分および第2偏光成分の一方のみを透過する。これにより、第3変形例に係る検出部18は、第1の視差画像または第2の視差画像の一方の光路を通過した調整光を受光する。従って、制御部20は、片眼40の網膜44から調整光受光部70までの光路長が一定となり、安定した制御を行うことができる。
【0127】
以上のような第3例に係る光学系16は、異なる複数の視点から撮像された第1の視差画像および第2の視差画像を、対応する視点に応じた位置に光学的に合成して観察者の片眼40に与えることができる。さらに、このような第3例に係る光学系16は、第1の視差画像の光および第2の視差画像の光を光学素子80に対して同一方向から入射することができる。従って、第3例に係る光学系16は、表示装置10全体を小型にすることができる。
【0128】
図25は、本実施形態の第3例に係る表示面22の構成の一例を示す。表示面22は、一例として、第1の視差画像を第1偏光成分の光で表示する表示領域と、第2の視差画像を第2偏光成分の光で表示する表示領域とを含む構成である。
【0129】
例えば、表示面22は、図25に示されるように、第1偏光成分の光を出力する複数の第1画素22−1と、第2偏光成分の光を出力する複数の第2画素22−2とが、行方向または列方向に交互に配置された構成である。また、表示面22は、第1画素22−1と第2画素22−2とが千鳥状に配置された構成であってもよい。
【0130】
このような表示面22は、1枚の面内に第1の視差画像および第2の視差画像を表示することができる。表示装置10は、このような表示面22を備えることにより、全体を小型にすることができる。
【0131】
図26は、本実施形態の第3例に係る光学素子80を反射する光の経路の一例を示す。光学素子80は、第1面84と、第2面86とを有する。第1面84は、レンズ24を透過した光を入射し、入射した光の第1偏光成分Lpを透過して第2偏光成分Lsを反射する。第2面86は、第1面84を透過した第1偏光成分Lpの光を少なくとも反射して、第1面84へ出射する。第2面86は、一例として、第1面84と平行に配置される。
【0132】
このような光学素子80は、入射した光の第1偏光成分と第2偏光成分とを、光軸をずらして出射することができる。光学素子80は、一例として、第1偏光成分と第2偏光成分とを平行に出射することができる。これにより、光学素子80は、第1の視差画像の光および第2の視差画像の光のそれぞれを、対応する視点への光として観察者の片眼に与えることができる。
【0133】
第1面84および第2面86は、ガラス等の表面および裏面に形成されたワイヤグリッド等であってよい。また、第2面86は、偏光に依存せずに反射をする反射面であってもよい。
【0134】
また、第2面86は、半透明な面であってもよい。これにより、表示部14から射出された光に、外部から入射される光を合成して片眼40に与えることができる。従って、このような表示装置10は、実在の物体に立体像を重ねて表示することができる。
【0135】
図27および図28は、本実施形態に係る第1の撮像方法において、右眼用の第1の視差画像および第2の視差画像を撮像する場合の撮像装置102の位置を示す。図29および図30は、本実施形態に係る第1の撮像方法において、左眼用の第1の視差画像および第2の視差画像を撮像する場合の撮像装置102の位置を示す。
【0136】
表示装置10は、第1の視差画像の光と第2の視差画像の光とを、水平方向に距離rずらして合成して観察者の片眼40に与えるとする。この場合、本実施形態に係る撮像装置102は、一例として、図27から図30に示されるように、右眼用および左眼用のそれぞれの第1の視差画像および第2の視差画像を撮像する。
【0137】
ここで、被写体100上の撮像したい範囲の中心にある表示対象物Oから撮像者の方向に延ばした線を、中心線Cとする。また、表示対象物Oから撮像装置102の瞳位置までの距離をRとする。
【0138】
また、中心線Cから水平方向に右側にW/2にずれた線を、右眼用画像の基準撮像位置を表す右眼基準線Cとする。また、中心線Cから水平方向に左側にW/2にずれた線を、左眼用画像の基準撮像位置を表す左眼基準線Cとする。なお、Wは、観察者の眼幅距離に応じた長さである。
【0139】
まず、図27に示されるように、撮像装置102は、レンズの光軸を、右眼基準線Cから水平方向の右側にr/2平行移動した線上に配置して、右眼用の第1の視差画像を撮像素子104により記録する。続いて、図28に示されるように、撮像装置102は、レンズの光軸を、右眼基準線Cから水平方向の左側にr/2平行移動した線上に配置して、右眼用の第2の視差画像を撮像素子104により記録する。
【0140】
続いて、図29に示されるように、撮像装置102は、レンズの光軸を、左眼基準線Cから水平方向の右側にr/2平行移動した線上に配置して、左眼用の第1の視差画像を撮像素子104により記録する。続いて、図30に示されるように、撮像装置102は、レンズの光軸を、左眼基準線Cから水平方向の左側にr/2平行移動した線上に配置して、左眼用の第2の視差画像を撮像素子104により記録する。
【0141】
以上の各位置から撮像することにより、撮像装置102は、右眼用の第1の視差画像および第2の視差画像、並びに、左眼用の第1の視差画像および第2の視差画像を生成することができる。なお、撮像装置102は、表示装置10が水平方向以外にずらして第1の視差画像と第2の視差画像とを合成して観察者の片眼40に与える場合には、右眼基準線Cまたは左眼基準線Cを中心として、対応する方向に距離r離間した2つの位置で第1の視差画像および第2の視差画像を撮像すればよい。
【0142】
以上のように、撮像装置102は、表示装置10により合成される複数の視差画像のずれ量および方向に応じて設定された複数の異なる撮影位置から、表示対象物を撮像して複数の視差画像を生成する。これにより、撮像装置102は、光学的に合成して観察者の片眼に与えることができる複数の視差画像を生成することができる。なお、本変形例においては、1台の撮像装置102をずらすことにより4枚の視差画像を撮像するが、前述の撮像位置に4台のカメラを配置して4枚の視差画像を同時に撮像してもよい。
【0143】
図31は、本実施形態に係る第1の撮像方法により撮像された視差画像を観察者に提供する場合における、表示部14および光学系16の配置例を示す。図27から図30に示された方法で撮像した画像を表示する場合、表示装置10の右眼用の光学系16−Rおよび左眼用の光学系16−Lは、それぞれが有する光軸の中心軸が、互いに平行に距離W離間する位置に配置される。
【0144】
そして、このような表示装置10は、観察者が、撮像した範囲の中心に位置する表示対象物Oを注視している場合、右眼用の表示部14−Rの虚像110−Rおよび左眼用の表示部14−Lの虚像110−Lのそれぞれを、視点から距離R離れた位置に見えるように調整する。これにより、表示装置10は、図27から図30に示された方法により撮像された右眼用および左眼用の視差画像を表示して、観察者に立体像を与えることができる。
【0145】
図32および図33は、本実施形態に係る第2の撮像方法において、右眼用の第1の視差画像および第2の視差画像を撮像する場合の撮像装置102の位置を示す。図34および図35は、本実施形態に係る第2の撮像方法において、左眼用の第1の視差画像および第2の視差画像を撮像する場合の撮像装置102の位置を示す。
【0146】
被写体100上の撮像したい範囲の中心にある表示対象物Oを中心として、中心線Cから水平方向に右側に角度φ回転させた線を、右眼用画像の基準撮像位置を表す第2の右眼基準線Dとする。また、表示対象物Oを中心として、中心線Cから水平方向に左側に角度φ回転させた線を、左眼用画像の基準撮像位置を表す第2の左眼基準線Dとする。
【0147】
なお、φは、下記の式(1)の関係が成り立つ角度である。
W/2=R×tanφ …(1)
【0148】
まず、図32に示されるように、撮像装置102は、レンズの光軸を、第2の右眼基準線Dから水平方向の右側にr/2平行移動した線上に配置して、右眼用の第1の視差画像を撮像素子104により記録する。続いて、図33に示されるように、撮像装置102は、レンズの光軸を、第2の右眼基準線Dから水平方向の左側にr/2平行移動した線上に配置して、右眼用の第2の視差画像を撮像素子104により記録する。
【0149】
続いて、図34に示されるように、撮像装置102は、レンズの光軸を、第2の左眼基準線Dから水平方向の右側にr/2平行移動した線上に配置して、左眼用の第1の視差画像を撮像素子104により記録する。続いて、図35に示されるように、撮像装置102は、レンズの光軸を、第2の左眼基準線Dから水平方向の左側にr/2平行移動した線上に配置して、左眼用の第2の視差画像を撮像素子104により記録する。
【0150】
これにより撮像装置102は、右眼用の第1および第2の視差画像および左眼用の第1および第2の視差画像を生成することができる。なお、撮像装置102は、表示装置10が水平方向以外にずらして第1の視差画像と第2の視差画像とを合成して観察者の片眼40に与える場合には、第2の右眼基準線Dまたは第2の左眼基準線Dを中心として、対応する方向に距離r離間した2つの位置で第1の視差画像および第2の視差画像を撮像すればよい。
【0151】
以上のように、撮像装置102は、表示装置10により合成される複数の視差画像のずれ量および方向に応じて設定された複数の異なる撮影位置から、表示対象物を撮像して複数の視差画像を生成する。これにより、撮像装置102は、表示装置10が、光学的に合成して観察者の片眼に与えることができる複数の視差画像を生成することができる。
【0152】
特に、第2の撮像方法により撮像することにより、撮像装置102は、表示対象物Oが撮影者の近くである場合であっても、右眼用の視差画像および左眼用の視差画像により撮像される空間領域をほぼ一致させることができ、より良好な立体感を観察者に与えることができる。
【0153】
図36は、本実施形態に係る第2の撮像方法により撮像された視差画像を観察者に提供する場合における、表示部14および光学系16の配置例を示す。観察者の右眼と左眼との中間点から奥行き方向に延ばした線を、線Eとする。また、線E上における、観察者の右眼と左眼との中間点から距離Rの点を、点Xとする。
【0154】
図32から図35に示された方法で撮像した画像を表示する場合、表示装置10の右眼用の光学系16−Rは、当該右眼用の光学系16−Rが有する2つの光軸の中心軸が、線Eを点Xを中心として水平方向の右側に角度φ回転させた線上に位置するように、配置される。また、左眼用の光学系16−Lは、当該左眼用の光学系16−Lが有する2つの光軸の中心軸が、線Eを点Xを中心として水平方向の左側に角度φ回転させた線上に位置するように、配置される。
【0155】
そして、このような表示装置10は、観察者が、撮像した範囲の中心に位置する表示対象物Oを注視している場合、右眼用の表示部14−Rの虚像110−Rおよび左眼用の表示部14−Lの虚像110−Lのそれぞれを、視点から距離R´離れた位置に見えるように調整する。これにより、表示装置10は、図32から図35に示された方法により撮像された右眼用および左眼用の視差画像を表示して、観察者に立体像を与えることができる。
【0156】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0157】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0158】
10 表示装置、12 出力部、14 表示部、16 光学系、18 検出部、20 制御部、22 表示面、24 レンズ、30 立体像、40 片眼、42 水晶体、44 網膜、50 部分透過ミラー、60 調整光出力部、62 出力用レンズ、64 第1のハーフミラー、66 第2のハーフミラー、68 受光用レンズ、70 調整光受光部、72 光学ユニット、74 第1発光素子、76 第2発光素子、78 平行平板ガラス、80 光学素子、82 偏光素子、84 第1面、86 第2面、100 被写体、102 撮像装置、104 撮像素子、110 虚像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる複数の視点に対応する複数の視差画像を表示する表示部と、
前記複数の視差画像を表示する表示面のそれぞれの虚像を生成し、前記複数の視差画像の光のそれぞれを対応する視点に応じた位置に合成して観察者の片眼に与える光学系と、
前記虚像の位置を制御して、前記表示部の前記表示面と前記片眼の網膜とを光学的共役関係に保つ制御部と、
を備える表示装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記光学系および前記表示部の少なくとも一方を制御して、前記表示部の前記表示面と前記片眼の網膜とを光学的共役関係に保つ
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記観察者の前記片眼の網膜からの光を検出する検出部を更に備え、
前記制御部は、前記検出部の検出結果に基づいて、前記虚像の位置を制御する
請求項1から2の何れかに記載の表示装置。
【請求項4】
前記検出部は、調整光を前記光学系を介して前記片眼の網膜に与え、前記片眼の網膜から反射された前記調整光を前記光学系を介して受光し、
前記制御部は、前記検出部により受光された前記調整光に基づいて、前記虚像の位置を制御する
請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記検出部は、不可視波長領域の調整光を前記片眼の網膜に与える
請求項3から4の何れかに記載の表示装置。
【請求項6】
前記検出部は、パルス波の調整光を前記片眼の網膜に与える
請求項4から5の何れかに記載の表示装置。
【請求項7】
前記検出部は、
前記調整光を出力する調整光出力部と、
前記調整光出力部から出力された調整光を、前記光学系からの光学的距離が前記表示面と等しい位置に集光する出力用レンズと、
前記調整光出力部により出力された前記調整光を前記光学系を介して前記片眼の網膜に与えるとともに、前記片眼の網膜から反射されて前記光学系を介して出力された前記調整光を取り出す検出用光学系と、
前記片眼の網膜から反射された前記調整光における、前記光学系からの光学的距離が前記表示面と等しい参照位置でのスポットの大きさを検出する調整光受光部と、
を有し、
前記制御部は、前記スポットの大きさに基づき、前記光学系と前記表示面との間の光学的距離を制御する
請求項4から6の何れかに記載の表示装置。
【請求項8】
互いに光軸方向に発光位置が異なる第1の前記調整光および第2の前記調整光を出力する調整光出力部と、
前記調整光出力部から出力された前記第1の調整光および前記第2の調整光を、前記光学系からの光学的距離が前記表示面と等しい位置を挟んで光軸方向に前後する位置に集光する出力用レンズと、
前記片眼の網膜から反射された前記第1の調整光および前記第2の調整光のそれぞれにおける、前記光学系からの光学的距離が前記表示面と等しい参照位置でのスポットの大きさを検出する調整光受光部と、
を有し、
前記制御部は、前記第1の調整光のスポットの大きさと前記第2の調整光のスポットの大きさとの差に基づき、前記光学系と前記表示面との間の光学的距離を制御する
請求項4から6の何れかに記載の表示装置。
【請求項9】
前記調整光出力部は、
前記第1の調整光を出力する第1発光素子と、
前記第1の調整光と同一方向に前記第2の調整光を出力する第2発光素子と、
前記第1発光素子から出力される前記第1の調整光の光路中に設けられた平行平板ガラスと、
を有する
請求項8に記載の表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図8】
image rotate

【図10】
image rotate

【図12】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図9】
image rotate

【図11】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−158644(P2011−158644A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19172(P2010−19172)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】