表示装置
【課題】運転時の安全性を確保しつつ、運転の補助情報を表示可能な表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置は、光源ユニットと、投影部と、表示生成手段と、表示切替手段と、を備える。光源ユニットは、車両に設置され、表示像を構成する光を出射する。投影部は、表示像が投影され、当該表示像を虚像として表示させる。表示生成手段は、表示像を運転の補助情報に基づき生成する。表示切替手段は、虚像の表示位置を、車両のフロントウィンドウの上部と重なる位置又はフロントウィンドウの下部と重なる位置に切り替える。表示生成手段は、フロントウィンドウ上部と重なる位置に表示される虚像が示す補助情報による案内方法と、フロントウィンドウ下部と重なる位置に表示される虚像が示す補助情報による案内方法と、を異ならせる。
【解決手段】表示装置は、光源ユニットと、投影部と、表示生成手段と、表示切替手段と、を備える。光源ユニットは、車両に設置され、表示像を構成する光を出射する。投影部は、表示像が投影され、当該表示像を虚像として表示させる。表示生成手段は、表示像を運転の補助情報に基づき生成する。表示切替手段は、虚像の表示位置を、車両のフロントウィンドウの上部と重なる位置又はフロントウィンドウの下部と重なる位置に切り替える。表示生成手段は、フロントウィンドウ上部と重なる位置に表示される虚像が示す補助情報による案内方法と、フロントウィンドウ下部と重なる位置に表示される虚像が示す補助情報による案内方法と、を異ならせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報を表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の運転に関する情報の表示画像を運転者の目の位置(アイポイント)から虚像として視認させる技術が存在する。例えば、特許文献1には、表示源を収容したハウジング及びコンバイナを上下に移動可能に構成することで、アイポイントの上下位置の変化に対する視線方向の不変性を確保する技術が開示されている。その他、本発明に関連する技術が特許文献2及び特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−052953号公報
【特許文献2】特開平05−077657号公報
【特許文献3】特開2002−293161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、運転状態に応じて、運転者にとって便宜な虚像の位置及び内容は異なる。一方、2画面表示等によりフロントウィンドウの略全体にわたり虚像を表示させた場合、運転の妨げとなる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、運転時の安全性を確保しつつ、運転の補助情報を表示可能な表示装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、車両に設置され、表示像を構成する光を出射する光源ユニットと、前記表示像が投影され、当該表示像を虚像として表示させる投影部と、前記表示像を運転の補助情報に基づき生成する表示生成手段と、前記虚像の表示位置を、前記車両のフロントウィンドウの上部と重なる位置又は前記フロントウィンドウの下部と重なる位置のいずれか一方に選択的に切り替える表示切替手段と、を備え、前記上部と重なる位置に表示されるルート案内のための虚像は、前記下部と重なる位置に表示されるルート案内のための虚像と比較して、施設の表示が一部省略されており、前記ルート案内のための虚像は、地図を表示する。
請求項10に記載の発明は、車両に設置され、表示像を構成する光を出射する光源ユニットと、前記表示像が投影され、当該表示像を虚像として表示させる投影部とを備える表示装置が実行する制御方法であって、前記表示像を運転の補助情報に基づき生成する表示生成工程と、前記虚像の表示位置を、前記車両のフロントウィンドウの上部と重なる位置又は前記フロントウィンドウの下部と重なる位置のいずれか一方に選択的に切り替える表示切替工程と、を有し、前記上部と重なる位置に表示されるルート案内のための虚像は、前記下部と重なる位置に表示されるルート案内のための虚像と比較して、施設の表示が一部省略されており、前記ルート案内のための虚像は、地図を表示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ヘッドアップディスプレイシステムの概略構成の一例である。
【図2】第1コンバイナの拡大図である。
【図3】光源ユニットが第1コンバイナを照射して第1虚像を表示させた場合の運転者の視界の一部を示す。
【図4】光源ユニットが第2コンバイナを照射して第2虚像を表示させた場合の運転者の視界の一部を示す。
【図5】第2構成例に係るヘッドアップディスプレイシステムの概略構成図である。
【図6】第3構成例に係るヘッドアップディスプレイシステムの概略構成図である。
【図7】第4構成例に係るヘッドアップディスプレイシステムの概略構成図である。
【図8】第5構成例に係るヘッドアップディスプレイシステムの概略構成図である。
【図9】第6構成例に係るヘッドアップディスプレイシステムの概略構成図である。
【図10】第7構成例に係るヘッドアップディスプレイシステムの概略構成図である。
【図11】第8構成例に係るヘッドアップディスプレイシステムの概略構成図である。
【図12】第1具体例に係る第1虚像の表示例である。
【図13】第1具体例に係る第2虚像の表示例である。
【図14】(a)第2具体例に係る第1虚像の表示例である。(b)第2具体例に係る第2虚像の表示例である。
【図15】(a)第1虚像及び第2虚像で縮尺が同一の場合の第1虚像の表示例である。(b)第1虚像及び第2虚像で縮尺が同一の場合の第2虚像の表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の1つの好適な実施形態では、表示装置は、車両に設置され、表示像を構成する光を出射する光源ユニットと、前記表示像が投影され、当該表示像を虚像として表示させる投影部と、前記表示像を運転の補助情報に基づき生成する表示生成手段と、前記虚像の表示位置を、前記車両のフロントウィンドウの上部と重なる位置又は前記フロントウィンドウの下部と重なる位置に切り替える表示切替手段と、を備え、前記表示生成手段は、前記上部と重なる位置に表示される虚像が示す前記補助情報による案内方法と、前記下部と重なる位置に表示される虚像が示す前記補助情報による案内方法と、を異ならせる。
【0009】
上記の表示装置は、光源ユニットと、投影部と、表示生成手段と、表示切替手段と、を備える。光源ユニットは、車両に設置され、表示像を構成する光を出射する。投影部は、表示像が投影され、当該表示像を虚像として表示させる。表示生成手段は、表示像を運転の補助情報に基づき生成する。表示切替手段は、虚像の表示位置を、車両のフロントウィンドウの上部と重なる位置又はフロントウィンドウの下部と重なる位置に切り替える。ここで、「フロントウィンドウの上部」とは、フロントウィンドウのボンネット近傍の下端よりも、天井部近傍の上端に近いフロントウィンドウの領域を指す。同様に、「フロントウィンドウの下部」とは、フロントウィンドウの上端よりも、下端に近いフロントウィンドウの領域を指す。また、「車両のフロントウィンドウの上部と重なる位置」とは、必ずしも、虚像の表示領域の全体が当該上部と重なる位置にある必要はなく、一部であってもよい。同様に、「車両のフロントウィンドウの下部と重なる位置」とは、必ずしも、虚像の表示領域の全体が当該下部と重なる位置にある必要はなく、一部であってもよい。そして、表示生成手段は、フロントウィンドウ上部と重なる位置に表示される虚像が示す補助情報による案内方法と、フロントウィンドウ下部と重なる位置に表示される虚像が示す補助情報による案内方法と、を異ならせる。
【0010】
一般に、運転状態に応じて、運転者にとって便宜な虚像の位置及び内容は異なる。従って、表示装置は、虚像の表示位置を適宜切り替えると共に、当該虚像が示す補助情報に基づく案内方法を変える。これにより、表示装置は、運転状態に応じて、運転補助情報の表示位置及び内容を変えることができ、安全性及び運転者の利便性を向上させることができる。
【0011】
上記の表示装置の一態様では、前記表示生成手段は、前記上部と重なる位置に表示される虚像が、前記下部と重なる位置に表示される虚像よりも簡易的な表示となるように前記表示像を生成する。このように、表示装置は、注視せずとも視界の中に入る上部の虚像を簡易的に表示させることで、運転を妨げることなく運転の補助情報を提供することができる。
【0012】
上記の表示装置の他の一態様では、前記表示切替手段は、道路の形状、又は、道路周辺の状態に基づき、前記虚像の表示位置を切り替える。これにより、表示装置は、運転時の安全性を確保しつつ、利便性を向上させることができる。
【0013】
上記の表示装置の他の一態様では、前記表示切替手段は、運転者の疲労状態に基づき、前記虚像の表示位置を切り替える。これによっても、表示装置は、運転時の安全性を確保しつつ、利便性を向上させることができる。
【0014】
上記の表示装置の他の一態様では、前記表示切替手段は、渋滞情報に基づき、前記虚像の表示位置を切り替える。これによっても、表示装置は、運転時の安全性を確保しつつ、利便性を向上させることができる。
【0015】
上記の表示装置の他の一態様では、前記表示生成手段は、ナビゲーション装置から得られるルート情報を、当該ルート情報に対応する撮像された前方風景像に重畳することで、前記表示像を生成する。これにより、表示装置は、より実際の視界に即した経路案内を運転者に提供することができる。
【0016】
上記の表示装置の他の一態様では、前記投影部は、非軸放物面等の非球面、もしくは自由曲面を有する。これにより、表示装置は、虚像の歪みを低減させることができる。
【0017】
上記の表示装置の他の一態様では、前記投影部は、前記車両のサンバイザ近傍に配置された第1コンバイナ、及び、ダッシュボード上に設置された第2コンバイナであり、前記光源ユニットは、前記車両の天井部に設置され、かつ、前記第1コンバイナへ光を出射する位置又は前記第2コンバイナへ光を出射する位置との間で遷移可能であり、前記表示切替手段は、前記虚像の表示位置に応じて前記光源ユニットの位置を遷移させる。この態様により、表示装置は、好適に、フロントウィンドウの上部と下部とに虚像の位置を切り替えることができる。
【0018】
上記の表示装置の他の一態様では、前記第1コンバイナ及び前記第2コンバイナのうち、前記光源ユニットから照射されていないコンバイナが収納される。これにより、表示装置は、運転者に車室内のスペースを有効活用させることができる。
【0019】
上記の表示装置の他の一態様では、前記投影部は、フロントウィンドウに沿って移動可能なコンバイナであり、前記光源ユニットは、前記車両の天井部に設置され、かつ、光の出射方向が可変であり、前記表示切替手段は、前記虚像の表示位置に応じて、前記コンバイナの位置及び前記出射方向を変更する。この態様によっても、表示装置は、好適に、虚像の表示位置を切り替えることができる。
【0020】
上記の表示装置の他の一態様では、前記投影部は、ダッシュボード上又は前記光源ユニット上に設けられたコンバイナ、及び前記フロントウィンドウであり、前記ダッシュボード上に設置された前記光源ユニットの出射方向に設けられ、前記光源ユニットから出射した光を、前記コンバイナ又は前記フロントウィンドウのいずれか一方に反射する反射ミラーをさらに備える。この態様によっても、表示装置は、好適に、虚像の表示位置を切り替えることができる。
【0021】
上記の表示装置の他の一態様では、前記投影部は、前記車両のサンバイザ近傍に配置された第1コンバイナ、及び、ダッシュボード上又は前記光源ユニット上に設けられた第2コンバイナであり、ダッシュボード上に設置された前記光源ユニットの出射方向に設けられ、前記光源ユニットから出射した光を、前記第1コンバイナ又は前記第2コンバイナのいずれか一方に反射する反射ミラーをさらに備える。この態様によっても、表示装置は、好適に、虚像の表示位置を切り替えることができる。
【0022】
上記の表示装置の他の一態様では、前記投影部は、ダッシュボード上に設けられたコンバイナ、及び前記フロントウィンドウであり、前記光源ユニットは、前記ダッシュボード内に設置され、前記光源ユニットの出射方向に設けられ、前記光源ユニットから出射した光を、前記コンバイナ又は前記フロントウィンドウのいずれか一方に反射する反射ミラーをさらに備え、前記ダッシュボードは、前記反射ミラーによる反射光を通過させる開口部を有する。この態様によっても、表示装置は、好適に、虚像の表示位置を切り替えることができる。
【0023】
上記の表示装置の他の一態様では、前記投影部は、前記車両のサンバイザ近傍に配置された第1コンバイナ、及び、ダッシュボード上に設けられた第2コンバイナであり、前記光源ユニットは、前記ダッシュボード内に設置され、前記光源ユニットの出射方向に設けられ、前記光源ユニットから出射した光を、前記第1コンバイナ又は前記第2コンバイナのいずれか一方に反射する反射ミラーをさらに備え、前記ダッシュボードは、前記反射ミラーによる反射光を通過させる開口部を有する。この態様によっても、表示装置は、好適に、虚像の表示位置を切り替えることができる。
【実施例】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0025】
[概略構成]
図1は、本発明に係る表示装置が搭載されたヘッドアップディスプレイシステム(以後、「HUDシステム」とも呼ぶ。)の概略構成の一例である。HUDシステムは、主に、光源ユニット1と、第1コンバイナ2x及び第2コンバイナ2yと、を備える。光源ユニット1は制御部50を備える。また、HUDシステムは、フロントウィンドウ11と、天井部12と、ボンネット13と、ダッシュボード14と、を備える車両に取り付けられる。
【0026】
光源ユニット1は、支持部材31a、31bを介して車室内の天井部12に付設され、現在地を含む地図情報や経路案内情報、走行速度、その他運転を補助する情報(以後、「運転補助情報」とも呼ぶ。)を示す表示像を第1コンバイナ2x又は第2コンバイナ2yのいずれか一方へ照射する。具体的には、光源ユニット1は、制御部50の制御に基づき、光源ユニット1内に表示像の元画像(実像)を生成し、それを第1コンバイナ2x又は第2コンバイナ2yへ照射することで、運転者に虚像を視認させる。
【0027】
また、光源ユニット1は、制御部50の制御に基づき、回動自在に構成されている。光源ユニット1は、例えば支持部材31a、31bが伸縮することにより、光源ユニット1の出射方向が調整される。そして、光源ユニット1は、実線に示す位置に存在する場合、表示像を第1コンバイナ2xへ投影する。一方、光源ユニット1は、破線に示す位置に存在する場合、表示像を第2コンバイナ2yへ投影する。
【0028】
制御部50は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などを有し、HUDシステムの全般的な制御を行う。制御部50は、本発明における「表示生成手段」及び「表示切替手段」の一例である。
【0029】
第1コンバイナ2x及び第2コンバイナ2yは、光源ユニット1から出射される表示像が投影されると共に、表示像を運転者の目の位置(「アイポイントPe」とも呼ぶ。)へ反射することで当該表示像を虚像として表示させる。そして、第1コンバイナ2xは、天井部12に設置された支持軸部3xを有し、支持軸部3xを支軸として回動する。支持軸部3xは、具体的には、フロントウィンドウ11の上端110a近傍の天井部12、言い換えると運転者用の図示しないサンバイザが設置される位置の近傍に設置される。なお、支持軸部3xは、上述のサンバイザに代えて設置されてもよい。第2コンバイナ2yは、支持軸部3yを有し、支持軸部3yを支軸として回動する。支持軸部3yは、ボンネット13と略同一面上に延在するダッシュボード14の平面部140に設置される。第1コンバイナ2xは、不使用状態では、天井部12に沿って倒されることで収納される。また、第2コンバイナ2yは、不使用状態では、平面部140に沿って倒されることで収納される。
【0030】
また、第1コンバイナ2x及び第2コンバイナ2yは、好適には、図2に示すような非軸放物面ミラーなどの非球面ミラー、もしくは自由曲面ミラーである。これにより、HUDシステムは、第1コンバイナ2x及び第2コンバイナ2yの角度調整によって生じる像の歪み(収差)を低減することができる。
【0031】
再び図1を参照して説明する。光源ユニット1が第1コンバイナ2xへ光を出射する場合、出射された光は、破線で示される線分「L1」及び線分「L2」を通過してアイポイントPeに達する。そして、この場合、線分L2の延長線「L3」上に虚像が生成される。以後では、第1コンバイナ2xを介して主にフロントウィンドウ11の上部と重なって表示される虚像を、「第1虚像Iv1」と呼ぶ。ここで、「フロントウィンドウ11の上部」とは、具体的には、下端部110bよりも上端部110aに近いフロントウィンドウ11の領域を指す。
【0032】
一方、光源ユニット1が第2コンバイナ2yへ光を出射する場合、出射された光は、一点鎖線で示される線分「L4」及び線分「L5」を軌跡としてアイポイントPeに達する。そして、この場合、線分L5の延長線「L6」上に虚像が生成される。以後では、第2コンバイナ2yを介して主にフロントウィンドウ11の下部と重なって表示される虚像を、「第2虚像Iv2」と呼ぶ。ここで、「フロントウィンドウ11の下部」とは、上端部110aよりも下端部110bに近いフロントウィンドウ11の領域を指す。このように、第1コンバイナ2x及び第2コンバイナ2yは、本発明における「投影部」の一例である。
【0033】
[表示方法]
次に、HUDシステムにおける運転補助情報の表示方法について説明する。概略的には、制御部50は、第1虚像Iv1又は第2虚像Iv2のいずれかを排他的に切り替えて表示すると共に、第1虚像Iv1が示す運転補助情報による案内方法と、第2虚像Iv2が示す運転補助情報による案内方法とを異ならせる。これにより、制御部50は、運転状態に即した運転補助情報の表示を行い、運転者の利便性を向上させると共に運転時の安全性を確保する。
【0034】
(表示内容)
まず、制御部50が第1虚像Iv1で表示させる運転補助情報について説明する。制御部50は、第1虚像Iv1で表示させる内容を、行先を先導する矢印、言い換えると経路を案内する矢印又はこれに相当する誘導物などの簡易な誘導表示に特化させる。言い換えると、制御部50は、第1虚像Iv1が、第2虚像Iv2よりも簡易的な表示となるように表示像を生成する。
【0035】
図3は、光源ユニット1が第1コンバイナ2xに表示像を照射して第1虚像Iv1を表示させた場合の運転者の視界の一部を示す。図3に示すように、第1虚像Iv1は、第1コンバイナ2x内で主に上空に重畳されて視認されている。そして、図3では、第1虚像Iv1として、車両が次に進むべき経路を指し示す矢印が表示されている。なお、制御部50は、例えば、図示しないナビゲーション装置と電気的に接続され、ナビゲーション装置からルート情報等の表示像を生成するのに必要な情報を受信する。
【0036】
一般に、虚像がフロントウィンドウ11の上部に表示される場合には、運転者が注視せずとも視界の中にその虚像が入る。以上を勘案し、制御部50は、図3に示すように、行先を先導する簡易的な矢印又は誘導物等に第1虚像Iv1の表示を特化させる。これにより、運転者は、必要に応じて情報を見る場合であっても、その表示位置及び内容を容易に確認することができる。
【0037】
次に、制御部50が第2虚像Iv2で表示させる運転補助情報について説明する。制御部50は、第2虚像Iv2で表示させる内容を、通常の経路(ルート)案内で表示するナビゲーション画面又はその一部の表示に特化させる。
【0038】
図4は、光源ユニット1が第2コンバイナ2yを照射して第2虚像Iv2を表示させた場合の運転者の視界の一部を示す。図4に示すように、第2虚像Iv2は、第2コンバイナ2y内で主に道路に重畳されて視認されている。具体的には、第2虚像Iv2は、現在地を指し示す現在地アイコン21aと、現在地に対応した地図表示であって、交差点の位置及びその分岐道路の方向等の情報を把握可能な地図表示21bとを含む。なお、制御部50は、例えば、図示しないナビゲーション装置と電気的に接続され、ナビゲーション装置から地図データ及びルート情報等の表示像を生成するのに必要な情報を受信する。
【0039】
このように、制御部50は、運転時の運転者の視線方向に位置する第2虚像Iv2に、交差点の拡大図などの交差点情報を含む運転補助情報を表示させることで、ナビゲーション機能を強化し、運転を支援することができる。なお、第2虚像Iv2は、上述の現在地アイコン21a及び地図表示21bの他、進行すべき方向を示す矢印、その他の運転補助情報が付加されて表示されてもよい。
【0040】
(切り替え制御)
次に、第1虚像Iv1と第2虚像Iv2との表示の切り替え方法について、第1制御乃至第5制御の5つの具体例を示す。制御部50は、以下に示す第1制御乃至第5制御を任意に組み合わせて実行してもよい。
【0041】
第1制御では、制御部50は、走行中の道路形状又はその周辺状態に基づき、第1虚像Iv1と第2虚像Iv2との表示を切り替える。具体的には、高速(有料)道路などの直線または緩やかなカーブからなる道、又は道路沿いに高層の建築物等が少なく視界の開けている道では、第1虚像Iv1のみを表示させる。一方、制御部50は、都心に存在する道などの複雑な交差点を有する道路では、第2虚像Iv2のみを表示させる。これにより、制御部50は、頻繁に運転者に視線移動させずに眼精疲労を抑制しつつ、運転時の安全性を確保することができる。
【0042】
例えば、制御部50は、第1制御を実行する場合、道路情報及び建物情報を含む地図データと、目的地又は立寄地までの経路(ルート)情報と、自車の現在地情報と、に基づき、走行中の道路が上述したいずれの場合に該当するか判断する。この場合、制御部50は、例えば、図示しないナビゲーション装置と電気的に接続され、上述の地図データ、ルート情報及び現在地情報を取得する。
【0043】
他の例では、制御部50は、第1制御を実行する場合、カメラを備える携帯端末と電気的に接続され、携帯端末の操作に基づき取得された車両の前方画像を当該携帯端末から受信する。そして、制御部50は、当該前方画像を画像認識することで、走行中の道路が上述したいずれの道路に該当するか判断する。例えば、制御部50は、周知の画像認識技術に基づき、受信した前方画像から道路及び当該道路沿いに存在する建物を認識し、曲率が所定値以下の道路であるか、又は視界が遮られていない道路であるか等を判断する。
【0044】
第2制御では、制御部50は、生体情報や運転の継続時間に基づき、運転者の疲労状態を判断し、第1虚像Iv1と第2虚像Iv2の表示を切り替える。具体的には、制御部50は、例えば、運転者の心拍数、血圧などの生体情報を検出するセンサと電気的に接続され、当該センサの検出値が所定の閾値を超えた又は下回った場合、運転者の疲労が蓄積していると判断する。そして、この場合、制御部50は、簡易的な運転補助情報の表示である第1虚像Iv1のみを表示するか、又は、第1虚像Iv1及び第2虚像Iv2のいずれの表示も行わない。
【0045】
他の例では、制御部50は、第2制御を実行する場合、例えば車両の電源又は光学ユニット1の電源がオンである継続時間幅等から運転の継続時間幅を推定し、当該継続時間幅が所定値以上の場合、運転者の疲労が蓄積していると判断する。そして、この場合も同様に、制御部50は、簡易的な運転補助情報の表示である第1虚像Iv1のみを表示するか、又は、第1虚像Iv1及び第2虚像Iv2のいずれの表示も行わない。
【0046】
第3制御では、制御部50は、渋滞情報に基づき、第1虚像Iv1又は第2虚像Iv2を表示させるか判断する。例えば、制御部50は、VICSセンタ、又は各車両の走行履歴を蓄積管理して渋滞情報を提供するサーバなどから配信される渋滞情報その他交通情報を取得し、走行中の道路が渋滞していると判断した場合、第1虚像Iv1のみを表示させる。
【0047】
第4制御では、制御部50は、外部入力に基づき、上述した第1乃至第3制御のうちいずれを有効にするか決定する。例えば、光源ユニット1は、図示しない入力部を備え、制御部50は、当該入力部への運転者等による入力に基づき、第1乃至第3制御のうちいずれを有効にするかの設定を受け付ける。
【0048】
第5制御では、制御部50は、外部入力に基づき、第1虚像Iv1又は第2虚像Iv2のいずれを表示させるか決定する。例えば、光源ユニット1は、図示しない入力部を備え、制御部50は、当該入力部への運転者等による入力に基づき、第1虚像Iv1と第2虚像Iv2との表示を切り替える。
【0049】
[他の構成例]
本発明に係るHUDシステムの構成例は、図1に示す構成(「第1構成例」とも呼ぶ。)に限定されない。ここで、本発明の表示装置が適用されたHUDシステムの他の構成例である第2構成例乃至第8構成例について、図5乃至図11を参照して説明する。なお、以後では、同様の構成については適宜同一の符号を付してその説明を省略する。
【0050】
図5は、第2構成例に係るHUDシステムの概略構成図である。図5に示すように、第2構成例では、HUDシステムは、投影部となるコンバイナ2を一つのみ備える点、及び、コンバイナ2の位置を移動可能なアーム30を備える点で、第1構成例と異なる。
【0051】
具体的には、アーム30は、フロントウィンドウ11に沿って延在し、車室内の所定位置に固定される。アーム30は、コンバイナ2の一端に備えられた支持軸部3の移動を当該アーム30が延在する範囲に規制する。そして、アーム30は、少なくとも、図1に示す第1構成例に係る支持軸部3x、3yが存在する位置に支持軸部3が移動可能な範囲に延在する。
【0052】
コンバイナ2は、制御部50の制御に基づき、又は手動により、実線により示される位置と破線により示される位置とを遷移する。この場合、アーム30は、例えば、索道におけるロープとして機能し、単線方式または複線方式などによりコンバイナ2を支え、かつ牽引する。そして、コンバイナ2は、実線により示される位置に存在する場合、第1虚像Iv1を運転者に表示し、破線により示される位置に存在する場合、第2虚像Iv2を運転者に表示する。このように、コンバイナ2は、本発明における「投影部」の一例である。
【0053】
図6は、第3構成例に係るHUDシステムの概略構成図である。図6に示すように、第3構成例では、HUDシステムは、光源ユニット1が平面部140上に設置されている。光源ユニット1は、制御部50の制御に基づき、第1虚像Iv1又は第2虚像Iv2のいずれを表示させるかに応じて出射方向を変更可能である。具体的には、光源ユニット1は、第1虚像Iv1を運転者に視認させる場合、破線「L7」が示す方向に光を出射する。一方、光源ユニット1は、第2虚像Iv2を運転者に視認させる場合、一点鎖線「L8」が示す方向に光を出射する。
【0054】
また、光源ユニット1の上面10には、コンバイナ2が載置されている。コンバイナ2は、支持軸部3を支軸として回動可能である。コンバイナ2は、第2虚像Iv2を表示する際には、図6に示す位置に固定される。一方、コンバイナ2は、第2虚像Iv2を表示しない場合には、光源ユニット1の上面10と略同一面上となるように光源ユニット1上又は光源ユニット1内に収納される。コンバイナ2は、本発明における「投影部」の一例である。
【0055】
平面部140上であって光源ユニット1の照射する方向に凹面ミラー5が設置されている。凹面ミラー5は、支持部51に支えられている。そして、凹面ミラー5は、例えば支持部51が凹面ミラー5上または平面部140上をスライドすることで、起伏が可能である。凹面ミラー5は、本発明における「反射ミラー」の一例である。
【0056】
凹面ミラー5は、実線に示す位置に存在する場合、光源ユニット1から出射した光を反射して第1虚像Iv1をフロントウィンドウ11の上部に投影する。この場合、「フロントウィンドウ11」は、本発明における「投影部」に相当する。一方、凹面ミラー5は、破線に示す位置に存在する場合、光源ユニット1から出射した光をコンバイナ2へ反射する。これにより、コンバイナ2は、フロントウィンドウ11の下部に重畳させて第2虚像Iv2を表示する。
【0057】
なお、図6では、コンバイナ2は、光源ユニット1上に取り付けられていたが、これに代えて、ダッシュボード14の平面部140上に備えられてもよい。この場合、コンバイナ2は、例えば、光源ユニット1とフロントウィンドウ11との間に設置され、倒されることで平面部140と略平行になるようにダッシュボード14に収納される。
【0058】
図7は、第4構成例に係るHUDシステムの概略構成図である。図7に示すように、第4構成例では、HUDシステムは、第1コンバイナ2xを通して第1虚像Iv1が視認される点で第3構成例と異なる。
【0059】
第4構成例では、HUDシステムは、第1構成例と同様の位置に、第1コンバイナ2xを備える。第1コンバイナ2xは、不使用状態では、天井部12に沿って倒されることで収納される。また、第2コンバイナ2yは、第3構成例のコンバイナ2と同様、光源ユニット1の上面10に設置され、上面10に沿って倒されることで光源ユニット1に収納される。そして、凹面ミラー5は、実線に示す位置に存在する場合、光源ユニット1から出射した光を第1コンバイナ2xへ反射する。これにより、第1コンバイナ2xは、第1虚像Iv1をフロントウィンドウ11の上部を通して表示させる。一方、凹面ミラー5は、破線に示す位置に存在する場合、光源ユニット1から出射した光を第2コンバイナ2yへ反射する。これにより、第2コンバイナ2yは、フロントウィンドウ11の下部に重畳させて第2虚像Iv2を表示する。
【0060】
図8は、第5構成例に係るHUDシステムの概略構成図である。図8に示すように、第5構成例では、HUDシステムは、第1虚像Iv1をフロントウィンドウ11の上部に表示させる点で第3構成例と共通し、ダッシュボード14内に光源ユニット1及び凹面ミラーが設けられる点及び平面部140に光が通過するための開口部19が設けられている点で、第3構成例と異なる。
【0061】
第5構成例では、光源ユニット1は、コンバイナ2の下方に位置し、ダッシュボード14内に設けられる。光源ユニット1は、第3及び第4構成例と同様、光の出射方向を変更可能である。
【0062】
凹面ミラー5は、ダッシュボード14内であって、光源ユニット1の出射方向であって、反射面が光源ユニット1と対向する位置に設置されている。そして、凹面ミラー5は、実線に示す位置に存在する場合、光源ユニット1から出射した光を開口部19内へ反射する。そして、開口部19を通過した光は、フロントウィンドウ11の上部に照射され、第1虚像Iv1が表示される。一方、凹面ミラー5は、破線に示す位置に存在する場合、光源ユニット1から出射した光をコンバイナ2へ反射する。このとき、凹面ミラー5で反射した光は、開口部19を通過してコンバイナ2へ到達する。そして、コンバイナ2は、フロントウィンドウ11の下部に重畳させて第2虚像Iv2を表示する。従って、開口部19は、第1虚像Iv1が表示される場合、又は第2虚像Iv2が表示される場合のいずれの場合であっても凹面ミラー5から反射された光が平面部140により遮られない位置及び範囲に設けられる。
【0063】
図9は、第6構成例に係るHUDシステムの概略構成図である。第6構成例では、HUDシステムは、ダッシュボード14内に光源ユニット1及び凹面ミラー5が設けられる点で第5構成例と一致し、第1虚像Iv1が第1コンバイナ2xを通して表示される点で第5構成例と異なる。
【0064】
第6構成例では、HUDシステムは、第1構成例と同様の位置に、第1コンバイナ2x及び第2コンバイナ2yを備える。そして、凹面ミラー5は、実線に示す位置に存在する場合、光源ユニット1から出射した光を第1コンバイナ2xへ反射する。これにより、第1コンバイナ2xは、第1虚像Iv1をフロントウィンドウ11の上部と重畳させて表示する。一方、凹面ミラー5は、破線に示す位置に存在する場合、光源ユニット1から出射した光を第2コンバイナ2yへ反射する。これにより、第2コンバイナ2yは、フロントウィンドウ11の下部と重畳させて第2虚像Iv2を表示する。そして、開口部19は、第5構成例と同様、第1虚像Iv1が表示される場合、又は第2虚像Iv2が表示される場合のいずれの場合であっても凹面ミラー5から反射された光が平面部140により遮られない位置及び範囲に設けられる。
【0065】
図10は、第7構成例に係るHUDシステムの概略構成図である。第7構成例では、平面部140上に第2凹面ミラー5yが設置される点、及び開口部19が小さい点で、第5構成例と異なる。
【0066】
第7構成例では、HUDシステムは、第5構成例の凹面ミラー5と同様の位置に第1凹面ミラー5xが設置される。第1凹面ミラー5xは、第1虚像Iv1を表示する際に光源ユニット1から出射した光(破線L7参照)をフロントウィンドウ11の上部へ反射するミラーであり、所定の傾斜角度で固定されている。これにより、フロントウィンドウ11の上部を介して第1虚像Iv1が運転者に視認される。また、第2凹面ミラー5yは、平面部140上かつ開口部19の近傍に設置される。第2凹面ミラー5yは、支持軸部51yを支軸として回動可能であり、不使用状態では、開口部19を介してダッシュボード14に収納される。第2凹面ミラー5yは、光源ユニット1から開口部19を介して出射された光(一点鎖線L8参照)をコンバイナ2へ反射する。これにより、コンバイナ2は、第2虚像Iv2を表示する。そして、第7構成例では、第2凹面ミラー5yが平面部140上かつ開口部19の近傍に設置される。これにより、開口部19で光が通過する範囲が集中する。その結果、第7構成例の開口部19は、第5及び第6構成例と比較して平面部140に占める範囲が小さい。
【0067】
なお、第7構成例では、HUDシステムは、第1凹面ミラー5x及び第2凹面ミラー5yの2つの反射ミラーを備えたが、これに代えて、第1凹面ミラー5xと第2凹面ミラー5yとの位置を往復可能な一つの反射ミラーを備えてもよい。この場合、例えば、HUDシステムは、反射ミラーを上下に移動可能な駆動部を備え、制御部50は、反射ミラーの位置を、第1虚像Iv1を表示させるか又は第2虚像Iv2を表示させるかに応じて移動させる。
【0068】
図11は、第8構成例に係るHUDシステムの概略構成図である。第8構成例では、HUDシステムは、平面部140上に第2凹面ミラー5yが設置される点で第7構成例と一致し、第1虚像Iv1が第1コンバイナ2xを通して表示される点で第7構成例と異なる。
【0069】
第8構成例では、HUDシステムは、第1及び第6構成例と同様の位置に、第1コンバイナ2x及び第2コンバイナ2yを備える。そして、第1凹面ミラー5xは、第7構成例と同様、第1虚像Iv1を表示する際に光源ユニット1から出射した光を第1コンバイナ2xへ反射する。これにより、第1コンバイナ2xは、第1虚像Iv1を表示する。また、第2凹面ミラー5yは、第7構成例と同様、光源ユニット1から開口部19を介して出射された光を第2コンバイナ2yへ反射する。これにより、第2コンバイナ2yは、第2虚像Iv2を表示する。そして、第8構成例では、第2凹面ミラー5yが平面部140上かつ開口部19の近傍に設置される。これにより、開口部19で光が通過する範囲が集中する。その結果、第8構成例の開口部19は、第7構成例と同様、第5及び第6構成例と比較して平面部140に占める範囲が小さい。
【0070】
なお、第8構成例では、HUDシステムは、第1凹面ミラー5x及び第2凹面ミラー5yの2つの反射ミラーを備えたが、これに代えて、第1凹面ミラー5xと第2凹面ミラー5yとの位置を往復可能な一つの反射ミラーを備えてもよい。この場合、例えば、HUDシステムは、反射ミラーを上下に移動可能な駆動部を備え、制御部50は、反射ミラーの位置を、第1虚像Iv1を表示させるか又は第2虚像Iv2を表示させるかに応じて移動させる。
【0071】
[変形例]
以下、上述の実施例に好適な変形例について説明する。以下の変形例は、任意に組み合わせて上述の実施例に適用してもよい。
【0072】
(変形例1)
第1虚像Iv1及び第2虚像Iv2に対応する表示像は、ナビゲーション装置から得られる進行すべき方向等を示したルート情報を、当該ルート情報に対応する撮像された前方風景像に重畳したものであってもよい。この場合、HUDシステムは、車両の前方を撮像するカメラを備え、制御部50は、カメラと電気的に接続される。そして、制御部50は、カメラから供給される画像と、ナビゲーション装置から供給されるルート情報と、を重畳させて表示像を生成する。
【0073】
(変形例2)
図3、図4に示す第1虚像Iv1及び第2虚像Iv2の表示例はこれに限定されない。例えば、これに代えて、第1虚像Iv1及び第2虚像Iv2は、縮尺が異なる同様のルート情報を示してもよい。この場合であっても、第2虚像Iv2が示すルート情報は、第1虚像Iv1に比べて広域又は/及び詳細に表示されることにより、第1虚像Iv1が第2虚像Iv2に比べて簡易的な表示となる。これによっても、HUDシステムは、運転を妨げることなく、運転の補助情報を運転者に提示することができる。
【0074】
これについて、第1具体例及び第2具体例の2つの具体例を挙げて説明する。
【0075】
図12は、第1具体例に係る第1虚像Iv1の表示例を示す。また、図13は、第1具体例に係る第2虚像Iv2の表示例を示す。図中において、特定地マーク21cは、出発地や目的地、立寄地など外部入力により設定された特定地を指し、走行ルート21dは、車両が通過した又は通過予定の経路を示す。
【0076】
図12に示すように、第1虚像Iv1は、地図表示21b上に現在地アイコン21a、特定地マーク21c、及び走行ルート21dを表示している。図12では、特定地マーク21cは、出発地を示す。同様に、第2虚像Iv2は、図13に示すように、現在地アイコン21aと、地図表示21bと、特定地21cと、走行ルート21dとを表示する。
【0077】
そして、図12、図13に示すように、第1虚像Iv1の表示は、第2虚像Iv2の表示よりも、簡略的に表示されている。そして、第1虚像Iv1が示す地図表示21bの縮尺は、第2虚像Iv2が示す地図表示21bの縮尺よりも大きい。言い換えると、第2虚像Iv2が示す地図表示21bは、図13の第1虚像Iv1が示す地図表示21bよりも広域且つ詳細に表示されている。また、第2虚像Iv2では、各特定地21cに、吹き出しによる当該特定地の説明が表示されている。
【0078】
次に、第2具体例について、図14(a)、(b)を参照して説明する。図14(a)は、第2具体例に係る第1虚像Iv1の表示例を示す。図14(b)は、第2具体例に係る第2虚像Iv2の表示例を示す。
【0079】
図14(a)では、第1虚像Iv1は、現在地アイコン21aと、地図表示21bとを表示する。同様に、図14(b)では、第2虚像Iv2は、現在地アイコン21aと、地図表示21bと、障害物21eと、を表示する。ここで、障害物21eは、対向車両その他障害物を指す。障害物21eは、例えば、車両前方を撮影するカメラが取得した画像を画像処理することにより検出される。
【0080】
図14(a)、(b)に示すように、第1虚像Iv1が示す地図表示21bの縮尺は、第2虚像Iv2が示す地図表示21bの縮尺よりも小さい。即ち、第1虚像Iv1が示す地図表示21bは、第2虚像Iv2が示す地図表示21bよりも広域に表示されている。一方、第2虚像Iv2は、現在位置付近が拡大された地図表示21bを表示すると共に、検出された障害物21eを表示することにより、第1虚像Iv1より詳細な表示を行う。
【0081】
以上の具体例に示すように、HUDシステムは、縮尺を変えることにより、第1虚像Iv1を第2虚像Iv2に比べて簡易的な表示とする。従って、この場合であっても、HUDシステムは、運転を妨げることなく、運転の補助情報を運転者に提示することができる。
【0082】
また、HUDシステムは、第1虚像Iv1及び第2虚像Iv2の縮尺が同一であっても、地図表示21b中の施設の表示を省略することにより、第1虚像Iv1を第2虚像Iv2に比べて簡易的な表示としてもよい。これについて、図15(a)、(b)を参照して説明する。
【0083】
図15(a)は、第1虚像Iv1の表示例を示し、図15(b)は、第2虚像Iv2の表示例を示す。図15(a)、(b)において、道路210は、高速道路を示し、ロゴマーク211乃至215は、各種施設のロゴマークを示す。
【0084】
図15(a)及び図15(b)に示すように、第1虚像Iv1と第2虚像Iv2にそれぞれ表示された地図表示21bは、同一の縮尺を有する。一方、第1虚像Iv1では、第2虚像Iv2と比較して、ロゴマーク211乃至215が適宜省略されて表示されている。即ち、第1虚像Iv1は、第2虚像Iv2と比較して、表示対象とする地域が同一であっても、施設の表示が一部省略されている。
【0085】
このように、HUDシステムは、縮尺が同一であっても、第1虚像Iv1を第2虚像Iv2に比べて簡易的な表示とする。従って、この場合であっても、HUDシステムは、運転を妨げることなく、運転の補助情報を運転者に提示することができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、経路案内や車両の情報を運転者に視認させるシステムに好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 光源ユニット
2 コンバイナ
2x 第1コンバイナ
2y 第2コンバイナ
3 支持軸部
11 フロントウィンドウ
12 天井部
13 ボンネット
14 ダッシュボード
50 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報を表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の運転に関する情報の表示画像を運転者の目の位置(アイポイント)から虚像として視認させる技術が存在する。例えば、特許文献1には、表示源を収容したハウジング及びコンバイナを上下に移動可能に構成することで、アイポイントの上下位置の変化に対する視線方向の不変性を確保する技術が開示されている。その他、本発明に関連する技術が特許文献2及び特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−052953号公報
【特許文献2】特開平05−077657号公報
【特許文献3】特開2002−293161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、運転状態に応じて、運転者にとって便宜な虚像の位置及び内容は異なる。一方、2画面表示等によりフロントウィンドウの略全体にわたり虚像を表示させた場合、運転の妨げとなる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、運転時の安全性を確保しつつ、運転の補助情報を表示可能な表示装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、車両に設置され、表示像を構成する光を出射する光源ユニットと、前記表示像が投影され、当該表示像を虚像として表示させる投影部と、前記表示像を運転の補助情報に基づき生成する表示生成手段と、前記虚像の表示位置を、前記車両のフロントウィンドウの上部と重なる位置又は前記フロントウィンドウの下部と重なる位置のいずれか一方に選択的に切り替える表示切替手段と、を備え、前記上部と重なる位置に表示されるルート案内のための虚像は、前記下部と重なる位置に表示されるルート案内のための虚像と比較して、施設の表示が一部省略されており、前記ルート案内のための虚像は、地図を表示する。
請求項10に記載の発明は、車両に設置され、表示像を構成する光を出射する光源ユニットと、前記表示像が投影され、当該表示像を虚像として表示させる投影部とを備える表示装置が実行する制御方法であって、前記表示像を運転の補助情報に基づき生成する表示生成工程と、前記虚像の表示位置を、前記車両のフロントウィンドウの上部と重なる位置又は前記フロントウィンドウの下部と重なる位置のいずれか一方に選択的に切り替える表示切替工程と、を有し、前記上部と重なる位置に表示されるルート案内のための虚像は、前記下部と重なる位置に表示されるルート案内のための虚像と比較して、施設の表示が一部省略されており、前記ルート案内のための虚像は、地図を表示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ヘッドアップディスプレイシステムの概略構成の一例である。
【図2】第1コンバイナの拡大図である。
【図3】光源ユニットが第1コンバイナを照射して第1虚像を表示させた場合の運転者の視界の一部を示す。
【図4】光源ユニットが第2コンバイナを照射して第2虚像を表示させた場合の運転者の視界の一部を示す。
【図5】第2構成例に係るヘッドアップディスプレイシステムの概略構成図である。
【図6】第3構成例に係るヘッドアップディスプレイシステムの概略構成図である。
【図7】第4構成例に係るヘッドアップディスプレイシステムの概略構成図である。
【図8】第5構成例に係るヘッドアップディスプレイシステムの概略構成図である。
【図9】第6構成例に係るヘッドアップディスプレイシステムの概略構成図である。
【図10】第7構成例に係るヘッドアップディスプレイシステムの概略構成図である。
【図11】第8構成例に係るヘッドアップディスプレイシステムの概略構成図である。
【図12】第1具体例に係る第1虚像の表示例である。
【図13】第1具体例に係る第2虚像の表示例である。
【図14】(a)第2具体例に係る第1虚像の表示例である。(b)第2具体例に係る第2虚像の表示例である。
【図15】(a)第1虚像及び第2虚像で縮尺が同一の場合の第1虚像の表示例である。(b)第1虚像及び第2虚像で縮尺が同一の場合の第2虚像の表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の1つの好適な実施形態では、表示装置は、車両に設置され、表示像を構成する光を出射する光源ユニットと、前記表示像が投影され、当該表示像を虚像として表示させる投影部と、前記表示像を運転の補助情報に基づき生成する表示生成手段と、前記虚像の表示位置を、前記車両のフロントウィンドウの上部と重なる位置又は前記フロントウィンドウの下部と重なる位置に切り替える表示切替手段と、を備え、前記表示生成手段は、前記上部と重なる位置に表示される虚像が示す前記補助情報による案内方法と、前記下部と重なる位置に表示される虚像が示す前記補助情報による案内方法と、を異ならせる。
【0009】
上記の表示装置は、光源ユニットと、投影部と、表示生成手段と、表示切替手段と、を備える。光源ユニットは、車両に設置され、表示像を構成する光を出射する。投影部は、表示像が投影され、当該表示像を虚像として表示させる。表示生成手段は、表示像を運転の補助情報に基づき生成する。表示切替手段は、虚像の表示位置を、車両のフロントウィンドウの上部と重なる位置又はフロントウィンドウの下部と重なる位置に切り替える。ここで、「フロントウィンドウの上部」とは、フロントウィンドウのボンネット近傍の下端よりも、天井部近傍の上端に近いフロントウィンドウの領域を指す。同様に、「フロントウィンドウの下部」とは、フロントウィンドウの上端よりも、下端に近いフロントウィンドウの領域を指す。また、「車両のフロントウィンドウの上部と重なる位置」とは、必ずしも、虚像の表示領域の全体が当該上部と重なる位置にある必要はなく、一部であってもよい。同様に、「車両のフロントウィンドウの下部と重なる位置」とは、必ずしも、虚像の表示領域の全体が当該下部と重なる位置にある必要はなく、一部であってもよい。そして、表示生成手段は、フロントウィンドウ上部と重なる位置に表示される虚像が示す補助情報による案内方法と、フロントウィンドウ下部と重なる位置に表示される虚像が示す補助情報による案内方法と、を異ならせる。
【0010】
一般に、運転状態に応じて、運転者にとって便宜な虚像の位置及び内容は異なる。従って、表示装置は、虚像の表示位置を適宜切り替えると共に、当該虚像が示す補助情報に基づく案内方法を変える。これにより、表示装置は、運転状態に応じて、運転補助情報の表示位置及び内容を変えることができ、安全性及び運転者の利便性を向上させることができる。
【0011】
上記の表示装置の一態様では、前記表示生成手段は、前記上部と重なる位置に表示される虚像が、前記下部と重なる位置に表示される虚像よりも簡易的な表示となるように前記表示像を生成する。このように、表示装置は、注視せずとも視界の中に入る上部の虚像を簡易的に表示させることで、運転を妨げることなく運転の補助情報を提供することができる。
【0012】
上記の表示装置の他の一態様では、前記表示切替手段は、道路の形状、又は、道路周辺の状態に基づき、前記虚像の表示位置を切り替える。これにより、表示装置は、運転時の安全性を確保しつつ、利便性を向上させることができる。
【0013】
上記の表示装置の他の一態様では、前記表示切替手段は、運転者の疲労状態に基づき、前記虚像の表示位置を切り替える。これによっても、表示装置は、運転時の安全性を確保しつつ、利便性を向上させることができる。
【0014】
上記の表示装置の他の一態様では、前記表示切替手段は、渋滞情報に基づき、前記虚像の表示位置を切り替える。これによっても、表示装置は、運転時の安全性を確保しつつ、利便性を向上させることができる。
【0015】
上記の表示装置の他の一態様では、前記表示生成手段は、ナビゲーション装置から得られるルート情報を、当該ルート情報に対応する撮像された前方風景像に重畳することで、前記表示像を生成する。これにより、表示装置は、より実際の視界に即した経路案内を運転者に提供することができる。
【0016】
上記の表示装置の他の一態様では、前記投影部は、非軸放物面等の非球面、もしくは自由曲面を有する。これにより、表示装置は、虚像の歪みを低減させることができる。
【0017】
上記の表示装置の他の一態様では、前記投影部は、前記車両のサンバイザ近傍に配置された第1コンバイナ、及び、ダッシュボード上に設置された第2コンバイナであり、前記光源ユニットは、前記車両の天井部に設置され、かつ、前記第1コンバイナへ光を出射する位置又は前記第2コンバイナへ光を出射する位置との間で遷移可能であり、前記表示切替手段は、前記虚像の表示位置に応じて前記光源ユニットの位置を遷移させる。この態様により、表示装置は、好適に、フロントウィンドウの上部と下部とに虚像の位置を切り替えることができる。
【0018】
上記の表示装置の他の一態様では、前記第1コンバイナ及び前記第2コンバイナのうち、前記光源ユニットから照射されていないコンバイナが収納される。これにより、表示装置は、運転者に車室内のスペースを有効活用させることができる。
【0019】
上記の表示装置の他の一態様では、前記投影部は、フロントウィンドウに沿って移動可能なコンバイナであり、前記光源ユニットは、前記車両の天井部に設置され、かつ、光の出射方向が可変であり、前記表示切替手段は、前記虚像の表示位置に応じて、前記コンバイナの位置及び前記出射方向を変更する。この態様によっても、表示装置は、好適に、虚像の表示位置を切り替えることができる。
【0020】
上記の表示装置の他の一態様では、前記投影部は、ダッシュボード上又は前記光源ユニット上に設けられたコンバイナ、及び前記フロントウィンドウであり、前記ダッシュボード上に設置された前記光源ユニットの出射方向に設けられ、前記光源ユニットから出射した光を、前記コンバイナ又は前記フロントウィンドウのいずれか一方に反射する反射ミラーをさらに備える。この態様によっても、表示装置は、好適に、虚像の表示位置を切り替えることができる。
【0021】
上記の表示装置の他の一態様では、前記投影部は、前記車両のサンバイザ近傍に配置された第1コンバイナ、及び、ダッシュボード上又は前記光源ユニット上に設けられた第2コンバイナであり、ダッシュボード上に設置された前記光源ユニットの出射方向に設けられ、前記光源ユニットから出射した光を、前記第1コンバイナ又は前記第2コンバイナのいずれか一方に反射する反射ミラーをさらに備える。この態様によっても、表示装置は、好適に、虚像の表示位置を切り替えることができる。
【0022】
上記の表示装置の他の一態様では、前記投影部は、ダッシュボード上に設けられたコンバイナ、及び前記フロントウィンドウであり、前記光源ユニットは、前記ダッシュボード内に設置され、前記光源ユニットの出射方向に設けられ、前記光源ユニットから出射した光を、前記コンバイナ又は前記フロントウィンドウのいずれか一方に反射する反射ミラーをさらに備え、前記ダッシュボードは、前記反射ミラーによる反射光を通過させる開口部を有する。この態様によっても、表示装置は、好適に、虚像の表示位置を切り替えることができる。
【0023】
上記の表示装置の他の一態様では、前記投影部は、前記車両のサンバイザ近傍に配置された第1コンバイナ、及び、ダッシュボード上に設けられた第2コンバイナであり、前記光源ユニットは、前記ダッシュボード内に設置され、前記光源ユニットの出射方向に設けられ、前記光源ユニットから出射した光を、前記第1コンバイナ又は前記第2コンバイナのいずれか一方に反射する反射ミラーをさらに備え、前記ダッシュボードは、前記反射ミラーによる反射光を通過させる開口部を有する。この態様によっても、表示装置は、好適に、虚像の表示位置を切り替えることができる。
【実施例】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0025】
[概略構成]
図1は、本発明に係る表示装置が搭載されたヘッドアップディスプレイシステム(以後、「HUDシステム」とも呼ぶ。)の概略構成の一例である。HUDシステムは、主に、光源ユニット1と、第1コンバイナ2x及び第2コンバイナ2yと、を備える。光源ユニット1は制御部50を備える。また、HUDシステムは、フロントウィンドウ11と、天井部12と、ボンネット13と、ダッシュボード14と、を備える車両に取り付けられる。
【0026】
光源ユニット1は、支持部材31a、31bを介して車室内の天井部12に付設され、現在地を含む地図情報や経路案内情報、走行速度、その他運転を補助する情報(以後、「運転補助情報」とも呼ぶ。)を示す表示像を第1コンバイナ2x又は第2コンバイナ2yのいずれか一方へ照射する。具体的には、光源ユニット1は、制御部50の制御に基づき、光源ユニット1内に表示像の元画像(実像)を生成し、それを第1コンバイナ2x又は第2コンバイナ2yへ照射することで、運転者に虚像を視認させる。
【0027】
また、光源ユニット1は、制御部50の制御に基づき、回動自在に構成されている。光源ユニット1は、例えば支持部材31a、31bが伸縮することにより、光源ユニット1の出射方向が調整される。そして、光源ユニット1は、実線に示す位置に存在する場合、表示像を第1コンバイナ2xへ投影する。一方、光源ユニット1は、破線に示す位置に存在する場合、表示像を第2コンバイナ2yへ投影する。
【0028】
制御部50は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などを有し、HUDシステムの全般的な制御を行う。制御部50は、本発明における「表示生成手段」及び「表示切替手段」の一例である。
【0029】
第1コンバイナ2x及び第2コンバイナ2yは、光源ユニット1から出射される表示像が投影されると共に、表示像を運転者の目の位置(「アイポイントPe」とも呼ぶ。)へ反射することで当該表示像を虚像として表示させる。そして、第1コンバイナ2xは、天井部12に設置された支持軸部3xを有し、支持軸部3xを支軸として回動する。支持軸部3xは、具体的には、フロントウィンドウ11の上端110a近傍の天井部12、言い換えると運転者用の図示しないサンバイザが設置される位置の近傍に設置される。なお、支持軸部3xは、上述のサンバイザに代えて設置されてもよい。第2コンバイナ2yは、支持軸部3yを有し、支持軸部3yを支軸として回動する。支持軸部3yは、ボンネット13と略同一面上に延在するダッシュボード14の平面部140に設置される。第1コンバイナ2xは、不使用状態では、天井部12に沿って倒されることで収納される。また、第2コンバイナ2yは、不使用状態では、平面部140に沿って倒されることで収納される。
【0030】
また、第1コンバイナ2x及び第2コンバイナ2yは、好適には、図2に示すような非軸放物面ミラーなどの非球面ミラー、もしくは自由曲面ミラーである。これにより、HUDシステムは、第1コンバイナ2x及び第2コンバイナ2yの角度調整によって生じる像の歪み(収差)を低減することができる。
【0031】
再び図1を参照して説明する。光源ユニット1が第1コンバイナ2xへ光を出射する場合、出射された光は、破線で示される線分「L1」及び線分「L2」を通過してアイポイントPeに達する。そして、この場合、線分L2の延長線「L3」上に虚像が生成される。以後では、第1コンバイナ2xを介して主にフロントウィンドウ11の上部と重なって表示される虚像を、「第1虚像Iv1」と呼ぶ。ここで、「フロントウィンドウ11の上部」とは、具体的には、下端部110bよりも上端部110aに近いフロントウィンドウ11の領域を指す。
【0032】
一方、光源ユニット1が第2コンバイナ2yへ光を出射する場合、出射された光は、一点鎖線で示される線分「L4」及び線分「L5」を軌跡としてアイポイントPeに達する。そして、この場合、線分L5の延長線「L6」上に虚像が生成される。以後では、第2コンバイナ2yを介して主にフロントウィンドウ11の下部と重なって表示される虚像を、「第2虚像Iv2」と呼ぶ。ここで、「フロントウィンドウ11の下部」とは、上端部110aよりも下端部110bに近いフロントウィンドウ11の領域を指す。このように、第1コンバイナ2x及び第2コンバイナ2yは、本発明における「投影部」の一例である。
【0033】
[表示方法]
次に、HUDシステムにおける運転補助情報の表示方法について説明する。概略的には、制御部50は、第1虚像Iv1又は第2虚像Iv2のいずれかを排他的に切り替えて表示すると共に、第1虚像Iv1が示す運転補助情報による案内方法と、第2虚像Iv2が示す運転補助情報による案内方法とを異ならせる。これにより、制御部50は、運転状態に即した運転補助情報の表示を行い、運転者の利便性を向上させると共に運転時の安全性を確保する。
【0034】
(表示内容)
まず、制御部50が第1虚像Iv1で表示させる運転補助情報について説明する。制御部50は、第1虚像Iv1で表示させる内容を、行先を先導する矢印、言い換えると経路を案内する矢印又はこれに相当する誘導物などの簡易な誘導表示に特化させる。言い換えると、制御部50は、第1虚像Iv1が、第2虚像Iv2よりも簡易的な表示となるように表示像を生成する。
【0035】
図3は、光源ユニット1が第1コンバイナ2xに表示像を照射して第1虚像Iv1を表示させた場合の運転者の視界の一部を示す。図3に示すように、第1虚像Iv1は、第1コンバイナ2x内で主に上空に重畳されて視認されている。そして、図3では、第1虚像Iv1として、車両が次に進むべき経路を指し示す矢印が表示されている。なお、制御部50は、例えば、図示しないナビゲーション装置と電気的に接続され、ナビゲーション装置からルート情報等の表示像を生成するのに必要な情報を受信する。
【0036】
一般に、虚像がフロントウィンドウ11の上部に表示される場合には、運転者が注視せずとも視界の中にその虚像が入る。以上を勘案し、制御部50は、図3に示すように、行先を先導する簡易的な矢印又は誘導物等に第1虚像Iv1の表示を特化させる。これにより、運転者は、必要に応じて情報を見る場合であっても、その表示位置及び内容を容易に確認することができる。
【0037】
次に、制御部50が第2虚像Iv2で表示させる運転補助情報について説明する。制御部50は、第2虚像Iv2で表示させる内容を、通常の経路(ルート)案内で表示するナビゲーション画面又はその一部の表示に特化させる。
【0038】
図4は、光源ユニット1が第2コンバイナ2yを照射して第2虚像Iv2を表示させた場合の運転者の視界の一部を示す。図4に示すように、第2虚像Iv2は、第2コンバイナ2y内で主に道路に重畳されて視認されている。具体的には、第2虚像Iv2は、現在地を指し示す現在地アイコン21aと、現在地に対応した地図表示であって、交差点の位置及びその分岐道路の方向等の情報を把握可能な地図表示21bとを含む。なお、制御部50は、例えば、図示しないナビゲーション装置と電気的に接続され、ナビゲーション装置から地図データ及びルート情報等の表示像を生成するのに必要な情報を受信する。
【0039】
このように、制御部50は、運転時の運転者の視線方向に位置する第2虚像Iv2に、交差点の拡大図などの交差点情報を含む運転補助情報を表示させることで、ナビゲーション機能を強化し、運転を支援することができる。なお、第2虚像Iv2は、上述の現在地アイコン21a及び地図表示21bの他、進行すべき方向を示す矢印、その他の運転補助情報が付加されて表示されてもよい。
【0040】
(切り替え制御)
次に、第1虚像Iv1と第2虚像Iv2との表示の切り替え方法について、第1制御乃至第5制御の5つの具体例を示す。制御部50は、以下に示す第1制御乃至第5制御を任意に組み合わせて実行してもよい。
【0041】
第1制御では、制御部50は、走行中の道路形状又はその周辺状態に基づき、第1虚像Iv1と第2虚像Iv2との表示を切り替える。具体的には、高速(有料)道路などの直線または緩やかなカーブからなる道、又は道路沿いに高層の建築物等が少なく視界の開けている道では、第1虚像Iv1のみを表示させる。一方、制御部50は、都心に存在する道などの複雑な交差点を有する道路では、第2虚像Iv2のみを表示させる。これにより、制御部50は、頻繁に運転者に視線移動させずに眼精疲労を抑制しつつ、運転時の安全性を確保することができる。
【0042】
例えば、制御部50は、第1制御を実行する場合、道路情報及び建物情報を含む地図データと、目的地又は立寄地までの経路(ルート)情報と、自車の現在地情報と、に基づき、走行中の道路が上述したいずれの場合に該当するか判断する。この場合、制御部50は、例えば、図示しないナビゲーション装置と電気的に接続され、上述の地図データ、ルート情報及び現在地情報を取得する。
【0043】
他の例では、制御部50は、第1制御を実行する場合、カメラを備える携帯端末と電気的に接続され、携帯端末の操作に基づき取得された車両の前方画像を当該携帯端末から受信する。そして、制御部50は、当該前方画像を画像認識することで、走行中の道路が上述したいずれの道路に該当するか判断する。例えば、制御部50は、周知の画像認識技術に基づき、受信した前方画像から道路及び当該道路沿いに存在する建物を認識し、曲率が所定値以下の道路であるか、又は視界が遮られていない道路であるか等を判断する。
【0044】
第2制御では、制御部50は、生体情報や運転の継続時間に基づき、運転者の疲労状態を判断し、第1虚像Iv1と第2虚像Iv2の表示を切り替える。具体的には、制御部50は、例えば、運転者の心拍数、血圧などの生体情報を検出するセンサと電気的に接続され、当該センサの検出値が所定の閾値を超えた又は下回った場合、運転者の疲労が蓄積していると判断する。そして、この場合、制御部50は、簡易的な運転補助情報の表示である第1虚像Iv1のみを表示するか、又は、第1虚像Iv1及び第2虚像Iv2のいずれの表示も行わない。
【0045】
他の例では、制御部50は、第2制御を実行する場合、例えば車両の電源又は光学ユニット1の電源がオンである継続時間幅等から運転の継続時間幅を推定し、当該継続時間幅が所定値以上の場合、運転者の疲労が蓄積していると判断する。そして、この場合も同様に、制御部50は、簡易的な運転補助情報の表示である第1虚像Iv1のみを表示するか、又は、第1虚像Iv1及び第2虚像Iv2のいずれの表示も行わない。
【0046】
第3制御では、制御部50は、渋滞情報に基づき、第1虚像Iv1又は第2虚像Iv2を表示させるか判断する。例えば、制御部50は、VICSセンタ、又は各車両の走行履歴を蓄積管理して渋滞情報を提供するサーバなどから配信される渋滞情報その他交通情報を取得し、走行中の道路が渋滞していると判断した場合、第1虚像Iv1のみを表示させる。
【0047】
第4制御では、制御部50は、外部入力に基づき、上述した第1乃至第3制御のうちいずれを有効にするか決定する。例えば、光源ユニット1は、図示しない入力部を備え、制御部50は、当該入力部への運転者等による入力に基づき、第1乃至第3制御のうちいずれを有効にするかの設定を受け付ける。
【0048】
第5制御では、制御部50は、外部入力に基づき、第1虚像Iv1又は第2虚像Iv2のいずれを表示させるか決定する。例えば、光源ユニット1は、図示しない入力部を備え、制御部50は、当該入力部への運転者等による入力に基づき、第1虚像Iv1と第2虚像Iv2との表示を切り替える。
【0049】
[他の構成例]
本発明に係るHUDシステムの構成例は、図1に示す構成(「第1構成例」とも呼ぶ。)に限定されない。ここで、本発明の表示装置が適用されたHUDシステムの他の構成例である第2構成例乃至第8構成例について、図5乃至図11を参照して説明する。なお、以後では、同様の構成については適宜同一の符号を付してその説明を省略する。
【0050】
図5は、第2構成例に係るHUDシステムの概略構成図である。図5に示すように、第2構成例では、HUDシステムは、投影部となるコンバイナ2を一つのみ備える点、及び、コンバイナ2の位置を移動可能なアーム30を備える点で、第1構成例と異なる。
【0051】
具体的には、アーム30は、フロントウィンドウ11に沿って延在し、車室内の所定位置に固定される。アーム30は、コンバイナ2の一端に備えられた支持軸部3の移動を当該アーム30が延在する範囲に規制する。そして、アーム30は、少なくとも、図1に示す第1構成例に係る支持軸部3x、3yが存在する位置に支持軸部3が移動可能な範囲に延在する。
【0052】
コンバイナ2は、制御部50の制御に基づき、又は手動により、実線により示される位置と破線により示される位置とを遷移する。この場合、アーム30は、例えば、索道におけるロープとして機能し、単線方式または複線方式などによりコンバイナ2を支え、かつ牽引する。そして、コンバイナ2は、実線により示される位置に存在する場合、第1虚像Iv1を運転者に表示し、破線により示される位置に存在する場合、第2虚像Iv2を運転者に表示する。このように、コンバイナ2は、本発明における「投影部」の一例である。
【0053】
図6は、第3構成例に係るHUDシステムの概略構成図である。図6に示すように、第3構成例では、HUDシステムは、光源ユニット1が平面部140上に設置されている。光源ユニット1は、制御部50の制御に基づき、第1虚像Iv1又は第2虚像Iv2のいずれを表示させるかに応じて出射方向を変更可能である。具体的には、光源ユニット1は、第1虚像Iv1を運転者に視認させる場合、破線「L7」が示す方向に光を出射する。一方、光源ユニット1は、第2虚像Iv2を運転者に視認させる場合、一点鎖線「L8」が示す方向に光を出射する。
【0054】
また、光源ユニット1の上面10には、コンバイナ2が載置されている。コンバイナ2は、支持軸部3を支軸として回動可能である。コンバイナ2は、第2虚像Iv2を表示する際には、図6に示す位置に固定される。一方、コンバイナ2は、第2虚像Iv2を表示しない場合には、光源ユニット1の上面10と略同一面上となるように光源ユニット1上又は光源ユニット1内に収納される。コンバイナ2は、本発明における「投影部」の一例である。
【0055】
平面部140上であって光源ユニット1の照射する方向に凹面ミラー5が設置されている。凹面ミラー5は、支持部51に支えられている。そして、凹面ミラー5は、例えば支持部51が凹面ミラー5上または平面部140上をスライドすることで、起伏が可能である。凹面ミラー5は、本発明における「反射ミラー」の一例である。
【0056】
凹面ミラー5は、実線に示す位置に存在する場合、光源ユニット1から出射した光を反射して第1虚像Iv1をフロントウィンドウ11の上部に投影する。この場合、「フロントウィンドウ11」は、本発明における「投影部」に相当する。一方、凹面ミラー5は、破線に示す位置に存在する場合、光源ユニット1から出射した光をコンバイナ2へ反射する。これにより、コンバイナ2は、フロントウィンドウ11の下部に重畳させて第2虚像Iv2を表示する。
【0057】
なお、図6では、コンバイナ2は、光源ユニット1上に取り付けられていたが、これに代えて、ダッシュボード14の平面部140上に備えられてもよい。この場合、コンバイナ2は、例えば、光源ユニット1とフロントウィンドウ11との間に設置され、倒されることで平面部140と略平行になるようにダッシュボード14に収納される。
【0058】
図7は、第4構成例に係るHUDシステムの概略構成図である。図7に示すように、第4構成例では、HUDシステムは、第1コンバイナ2xを通して第1虚像Iv1が視認される点で第3構成例と異なる。
【0059】
第4構成例では、HUDシステムは、第1構成例と同様の位置に、第1コンバイナ2xを備える。第1コンバイナ2xは、不使用状態では、天井部12に沿って倒されることで収納される。また、第2コンバイナ2yは、第3構成例のコンバイナ2と同様、光源ユニット1の上面10に設置され、上面10に沿って倒されることで光源ユニット1に収納される。そして、凹面ミラー5は、実線に示す位置に存在する場合、光源ユニット1から出射した光を第1コンバイナ2xへ反射する。これにより、第1コンバイナ2xは、第1虚像Iv1をフロントウィンドウ11の上部を通して表示させる。一方、凹面ミラー5は、破線に示す位置に存在する場合、光源ユニット1から出射した光を第2コンバイナ2yへ反射する。これにより、第2コンバイナ2yは、フロントウィンドウ11の下部に重畳させて第2虚像Iv2を表示する。
【0060】
図8は、第5構成例に係るHUDシステムの概略構成図である。図8に示すように、第5構成例では、HUDシステムは、第1虚像Iv1をフロントウィンドウ11の上部に表示させる点で第3構成例と共通し、ダッシュボード14内に光源ユニット1及び凹面ミラーが設けられる点及び平面部140に光が通過するための開口部19が設けられている点で、第3構成例と異なる。
【0061】
第5構成例では、光源ユニット1は、コンバイナ2の下方に位置し、ダッシュボード14内に設けられる。光源ユニット1は、第3及び第4構成例と同様、光の出射方向を変更可能である。
【0062】
凹面ミラー5は、ダッシュボード14内であって、光源ユニット1の出射方向であって、反射面が光源ユニット1と対向する位置に設置されている。そして、凹面ミラー5は、実線に示す位置に存在する場合、光源ユニット1から出射した光を開口部19内へ反射する。そして、開口部19を通過した光は、フロントウィンドウ11の上部に照射され、第1虚像Iv1が表示される。一方、凹面ミラー5は、破線に示す位置に存在する場合、光源ユニット1から出射した光をコンバイナ2へ反射する。このとき、凹面ミラー5で反射した光は、開口部19を通過してコンバイナ2へ到達する。そして、コンバイナ2は、フロントウィンドウ11の下部に重畳させて第2虚像Iv2を表示する。従って、開口部19は、第1虚像Iv1が表示される場合、又は第2虚像Iv2が表示される場合のいずれの場合であっても凹面ミラー5から反射された光が平面部140により遮られない位置及び範囲に設けられる。
【0063】
図9は、第6構成例に係るHUDシステムの概略構成図である。第6構成例では、HUDシステムは、ダッシュボード14内に光源ユニット1及び凹面ミラー5が設けられる点で第5構成例と一致し、第1虚像Iv1が第1コンバイナ2xを通して表示される点で第5構成例と異なる。
【0064】
第6構成例では、HUDシステムは、第1構成例と同様の位置に、第1コンバイナ2x及び第2コンバイナ2yを備える。そして、凹面ミラー5は、実線に示す位置に存在する場合、光源ユニット1から出射した光を第1コンバイナ2xへ反射する。これにより、第1コンバイナ2xは、第1虚像Iv1をフロントウィンドウ11の上部と重畳させて表示する。一方、凹面ミラー5は、破線に示す位置に存在する場合、光源ユニット1から出射した光を第2コンバイナ2yへ反射する。これにより、第2コンバイナ2yは、フロントウィンドウ11の下部と重畳させて第2虚像Iv2を表示する。そして、開口部19は、第5構成例と同様、第1虚像Iv1が表示される場合、又は第2虚像Iv2が表示される場合のいずれの場合であっても凹面ミラー5から反射された光が平面部140により遮られない位置及び範囲に設けられる。
【0065】
図10は、第7構成例に係るHUDシステムの概略構成図である。第7構成例では、平面部140上に第2凹面ミラー5yが設置される点、及び開口部19が小さい点で、第5構成例と異なる。
【0066】
第7構成例では、HUDシステムは、第5構成例の凹面ミラー5と同様の位置に第1凹面ミラー5xが設置される。第1凹面ミラー5xは、第1虚像Iv1を表示する際に光源ユニット1から出射した光(破線L7参照)をフロントウィンドウ11の上部へ反射するミラーであり、所定の傾斜角度で固定されている。これにより、フロントウィンドウ11の上部を介して第1虚像Iv1が運転者に視認される。また、第2凹面ミラー5yは、平面部140上かつ開口部19の近傍に設置される。第2凹面ミラー5yは、支持軸部51yを支軸として回動可能であり、不使用状態では、開口部19を介してダッシュボード14に収納される。第2凹面ミラー5yは、光源ユニット1から開口部19を介して出射された光(一点鎖線L8参照)をコンバイナ2へ反射する。これにより、コンバイナ2は、第2虚像Iv2を表示する。そして、第7構成例では、第2凹面ミラー5yが平面部140上かつ開口部19の近傍に設置される。これにより、開口部19で光が通過する範囲が集中する。その結果、第7構成例の開口部19は、第5及び第6構成例と比較して平面部140に占める範囲が小さい。
【0067】
なお、第7構成例では、HUDシステムは、第1凹面ミラー5x及び第2凹面ミラー5yの2つの反射ミラーを備えたが、これに代えて、第1凹面ミラー5xと第2凹面ミラー5yとの位置を往復可能な一つの反射ミラーを備えてもよい。この場合、例えば、HUDシステムは、反射ミラーを上下に移動可能な駆動部を備え、制御部50は、反射ミラーの位置を、第1虚像Iv1を表示させるか又は第2虚像Iv2を表示させるかに応じて移動させる。
【0068】
図11は、第8構成例に係るHUDシステムの概略構成図である。第8構成例では、HUDシステムは、平面部140上に第2凹面ミラー5yが設置される点で第7構成例と一致し、第1虚像Iv1が第1コンバイナ2xを通して表示される点で第7構成例と異なる。
【0069】
第8構成例では、HUDシステムは、第1及び第6構成例と同様の位置に、第1コンバイナ2x及び第2コンバイナ2yを備える。そして、第1凹面ミラー5xは、第7構成例と同様、第1虚像Iv1を表示する際に光源ユニット1から出射した光を第1コンバイナ2xへ反射する。これにより、第1コンバイナ2xは、第1虚像Iv1を表示する。また、第2凹面ミラー5yは、第7構成例と同様、光源ユニット1から開口部19を介して出射された光を第2コンバイナ2yへ反射する。これにより、第2コンバイナ2yは、第2虚像Iv2を表示する。そして、第8構成例では、第2凹面ミラー5yが平面部140上かつ開口部19の近傍に設置される。これにより、開口部19で光が通過する範囲が集中する。その結果、第8構成例の開口部19は、第7構成例と同様、第5及び第6構成例と比較して平面部140に占める範囲が小さい。
【0070】
なお、第8構成例では、HUDシステムは、第1凹面ミラー5x及び第2凹面ミラー5yの2つの反射ミラーを備えたが、これに代えて、第1凹面ミラー5xと第2凹面ミラー5yとの位置を往復可能な一つの反射ミラーを備えてもよい。この場合、例えば、HUDシステムは、反射ミラーを上下に移動可能な駆動部を備え、制御部50は、反射ミラーの位置を、第1虚像Iv1を表示させるか又は第2虚像Iv2を表示させるかに応じて移動させる。
【0071】
[変形例]
以下、上述の実施例に好適な変形例について説明する。以下の変形例は、任意に組み合わせて上述の実施例に適用してもよい。
【0072】
(変形例1)
第1虚像Iv1及び第2虚像Iv2に対応する表示像は、ナビゲーション装置から得られる進行すべき方向等を示したルート情報を、当該ルート情報に対応する撮像された前方風景像に重畳したものであってもよい。この場合、HUDシステムは、車両の前方を撮像するカメラを備え、制御部50は、カメラと電気的に接続される。そして、制御部50は、カメラから供給される画像と、ナビゲーション装置から供給されるルート情報と、を重畳させて表示像を生成する。
【0073】
(変形例2)
図3、図4に示す第1虚像Iv1及び第2虚像Iv2の表示例はこれに限定されない。例えば、これに代えて、第1虚像Iv1及び第2虚像Iv2は、縮尺が異なる同様のルート情報を示してもよい。この場合であっても、第2虚像Iv2が示すルート情報は、第1虚像Iv1に比べて広域又は/及び詳細に表示されることにより、第1虚像Iv1が第2虚像Iv2に比べて簡易的な表示となる。これによっても、HUDシステムは、運転を妨げることなく、運転の補助情報を運転者に提示することができる。
【0074】
これについて、第1具体例及び第2具体例の2つの具体例を挙げて説明する。
【0075】
図12は、第1具体例に係る第1虚像Iv1の表示例を示す。また、図13は、第1具体例に係る第2虚像Iv2の表示例を示す。図中において、特定地マーク21cは、出発地や目的地、立寄地など外部入力により設定された特定地を指し、走行ルート21dは、車両が通過した又は通過予定の経路を示す。
【0076】
図12に示すように、第1虚像Iv1は、地図表示21b上に現在地アイコン21a、特定地マーク21c、及び走行ルート21dを表示している。図12では、特定地マーク21cは、出発地を示す。同様に、第2虚像Iv2は、図13に示すように、現在地アイコン21aと、地図表示21bと、特定地21cと、走行ルート21dとを表示する。
【0077】
そして、図12、図13に示すように、第1虚像Iv1の表示は、第2虚像Iv2の表示よりも、簡略的に表示されている。そして、第1虚像Iv1が示す地図表示21bの縮尺は、第2虚像Iv2が示す地図表示21bの縮尺よりも大きい。言い換えると、第2虚像Iv2が示す地図表示21bは、図13の第1虚像Iv1が示す地図表示21bよりも広域且つ詳細に表示されている。また、第2虚像Iv2では、各特定地21cに、吹き出しによる当該特定地の説明が表示されている。
【0078】
次に、第2具体例について、図14(a)、(b)を参照して説明する。図14(a)は、第2具体例に係る第1虚像Iv1の表示例を示す。図14(b)は、第2具体例に係る第2虚像Iv2の表示例を示す。
【0079】
図14(a)では、第1虚像Iv1は、現在地アイコン21aと、地図表示21bとを表示する。同様に、図14(b)では、第2虚像Iv2は、現在地アイコン21aと、地図表示21bと、障害物21eと、を表示する。ここで、障害物21eは、対向車両その他障害物を指す。障害物21eは、例えば、車両前方を撮影するカメラが取得した画像を画像処理することにより検出される。
【0080】
図14(a)、(b)に示すように、第1虚像Iv1が示す地図表示21bの縮尺は、第2虚像Iv2が示す地図表示21bの縮尺よりも小さい。即ち、第1虚像Iv1が示す地図表示21bは、第2虚像Iv2が示す地図表示21bよりも広域に表示されている。一方、第2虚像Iv2は、現在位置付近が拡大された地図表示21bを表示すると共に、検出された障害物21eを表示することにより、第1虚像Iv1より詳細な表示を行う。
【0081】
以上の具体例に示すように、HUDシステムは、縮尺を変えることにより、第1虚像Iv1を第2虚像Iv2に比べて簡易的な表示とする。従って、この場合であっても、HUDシステムは、運転を妨げることなく、運転の補助情報を運転者に提示することができる。
【0082】
また、HUDシステムは、第1虚像Iv1及び第2虚像Iv2の縮尺が同一であっても、地図表示21b中の施設の表示を省略することにより、第1虚像Iv1を第2虚像Iv2に比べて簡易的な表示としてもよい。これについて、図15(a)、(b)を参照して説明する。
【0083】
図15(a)は、第1虚像Iv1の表示例を示し、図15(b)は、第2虚像Iv2の表示例を示す。図15(a)、(b)において、道路210は、高速道路を示し、ロゴマーク211乃至215は、各種施設のロゴマークを示す。
【0084】
図15(a)及び図15(b)に示すように、第1虚像Iv1と第2虚像Iv2にそれぞれ表示された地図表示21bは、同一の縮尺を有する。一方、第1虚像Iv1では、第2虚像Iv2と比較して、ロゴマーク211乃至215が適宜省略されて表示されている。即ち、第1虚像Iv1は、第2虚像Iv2と比較して、表示対象とする地域が同一であっても、施設の表示が一部省略されている。
【0085】
このように、HUDシステムは、縮尺が同一であっても、第1虚像Iv1を第2虚像Iv2に比べて簡易的な表示とする。従って、この場合であっても、HUDシステムは、運転を妨げることなく、運転の補助情報を運転者に提示することができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、経路案内や車両の情報を運転者に視認させるシステムに好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 光源ユニット
2 コンバイナ
2x 第1コンバイナ
2y 第2コンバイナ
3 支持軸部
11 フロントウィンドウ
12 天井部
13 ボンネット
14 ダッシュボード
50 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置され、表示像を構成する光を出射する光源ユニットと、
前記表示像が投影され、当該表示像を虚像として表示させる投影部と、
前記表示像を運転の補助情報に基づき生成する表示生成手段と、
前記虚像の表示位置を、前記車両のフロントウィンドウの上部と重なる位置又は前記フロントウィンドウの下部と重なる位置のいずれか一方に選択的に切り替える表示切替手段と、を備え、
前記上部と重なる位置に表示されるルート案内のための虚像は、前記下部と重なる位置に表示されるルート案内のための虚像と比較して、施設の表示が一部省略されており、
前記ルート案内のための虚像は、地図を表示するものであることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記上部と重なる位置に表示される地図の縮尺と、前記下部と重なる位置に表示される地図の縮尺とは同一であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示生成手段は、前記上部と重なる位置に表示される地図よりも、前記下部と重なる位置に表示される地図を、縮尺が小さく、かつ、詳細となるように表示することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示生成手段は、前記上部と重なる位置に表示される地図よりも、前記下部と重なる位置に表示される地図を、縮尺が大きく、かつ、詳細となるように表示することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記表示切替手段は、道路の形状に基づき、前記虚像の表示位置を切り替えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記表示切替手段は、走行中の道路が高速道路か否かに基づき、前記虚像の表示位置を切り替えることを特徴とする請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記表示切替手段は、走行中の道路の曲率に基づき、前記虚像の表示位置を切り替えることを特徴とする請求項5に記載の表示装置。
【請求項8】
前記表示切替手段は、前記車両の前方方向へ向けて撮像された画像データから前記道路の形状を認識し、認識した道路の形状に基づき、前記虚像の表示位置を切り替えることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項9】
カメラを備える携帯端末と電気的に接続し、
前記表示切替手段は、前記携帯端末から送信される画像データから前記道路の形状を認識することを特徴とする請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
車両に設置され、表示像を構成する光を出射する光源ユニットと、
前記表示像が投影され、当該表示像を虚像として表示させる投影部とを備える表示装置が実行する制御方法であって、
前記表示像を運転の補助情報に基づき生成する表示生成工程と、
前記虚像の表示位置を、前記車両のフロントウィンドウの上部と重なる位置又は前記フロントウィンドウの下部と重なる位置のいずれか一方に選択的に切り替える表示切替工程と、を有し、
前記上部と重なる位置に表示されるルート案内のための虚像は、前記下部と重なる位置に表示されるルート案内のための虚像と比較して、施設の表示が一部省略されており、
前記ルート案内のための虚像は、地図を表示するものであることを特徴とする制御方法。
【請求項1】
車両に設置され、表示像を構成する光を出射する光源ユニットと、
前記表示像が投影され、当該表示像を虚像として表示させる投影部と、
前記表示像を運転の補助情報に基づき生成する表示生成手段と、
前記虚像の表示位置を、前記車両のフロントウィンドウの上部と重なる位置又は前記フロントウィンドウの下部と重なる位置のいずれか一方に選択的に切り替える表示切替手段と、を備え、
前記上部と重なる位置に表示されるルート案内のための虚像は、前記下部と重なる位置に表示されるルート案内のための虚像と比較して、施設の表示が一部省略されており、
前記ルート案内のための虚像は、地図を表示するものであることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記上部と重なる位置に表示される地図の縮尺と、前記下部と重なる位置に表示される地図の縮尺とは同一であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示生成手段は、前記上部と重なる位置に表示される地図よりも、前記下部と重なる位置に表示される地図を、縮尺が小さく、かつ、詳細となるように表示することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示生成手段は、前記上部と重なる位置に表示される地図よりも、前記下部と重なる位置に表示される地図を、縮尺が大きく、かつ、詳細となるように表示することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記表示切替手段は、道路の形状に基づき、前記虚像の表示位置を切り替えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記表示切替手段は、走行中の道路が高速道路か否かに基づき、前記虚像の表示位置を切り替えることを特徴とする請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記表示切替手段は、走行中の道路の曲率に基づき、前記虚像の表示位置を切り替えることを特徴とする請求項5に記載の表示装置。
【請求項8】
前記表示切替手段は、前記車両の前方方向へ向けて撮像された画像データから前記道路の形状を認識し、認識した道路の形状に基づき、前記虚像の表示位置を切り替えることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項9】
カメラを備える携帯端末と電気的に接続し、
前記表示切替手段は、前記携帯端末から送信される画像データから前記道路の形状を認識することを特徴とする請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
車両に設置され、表示像を構成する光を出射する光源ユニットと、
前記表示像が投影され、当該表示像を虚像として表示させる投影部とを備える表示装置が実行する制御方法であって、
前記表示像を運転の補助情報に基づき生成する表示生成工程と、
前記虚像の表示位置を、前記車両のフロントウィンドウの上部と重なる位置又は前記フロントウィンドウの下部と重なる位置のいずれか一方に選択的に切り替える表示切替工程と、を有し、
前記上部と重なる位置に表示されるルート案内のための虚像は、前記下部と重なる位置に表示されるルート案内のための虚像と比較して、施設の表示が一部省略されており、
前記ルート案内のための虚像は、地図を表示するものであることを特徴とする制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−62051(P2012−62051A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225859(P2011−225859)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【分割の表示】特願2011−502168(P2011−502168)の分割
【原出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【分割の表示】特願2011−502168(P2011−502168)の分割
【原出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】
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