説明

表面実装型圧電発振器

【課題】 圧電振動片の傾きによる不具合をなくしたより信頼性の高い表面実装型圧電発振器を提供することにある。
【解決手段】 矩形状で励振電極が形成された圧電振動片と電子部品3と、外壁部と開口部と内部収納部が形成されたベース4と、前記ベースの開口部を覆う蓋とを有し、ベースの開口部に蓋を被せて気密封止してなる圧電発振器1であって、
前記ベースには、収納部と前記圧電振動片が搭載される絶縁性の保持台42とを有し、
前記保持台には、前記圧電振動片と接合される電極パッド51,52と、前記圧電振動片の一部の辺と重畳される絶縁性の補助保持部が形成され、
前記補助保持部には、前記圧電振動片の励振電極が接触しない接触回避部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面実装型の圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、圧電発振器では、その筐体が直方体のパッケージでベースと蓋とから構成される。そして、ベースと蓋とが接合されることで、パッケージの内部の圧電振動片やICチップなどの電子部品が気密封止されている。圧電振動片は導電性樹脂接着剤や導電バンプなどの導電性接合材を介してベースに電気的機械的に接合されており、ICチップはワイヤボンディングやFCBなどの手法により、前記圧電振動片やベースと電気的に接続されている。
【0003】
このような圧電発振器のうち、特許文献1に開示の圧電発振器では、従来のパッケージを利用しながらより小型化された圧電振動片との組み合わせによる選択肢を増やし、より様々な回路特性に対応させるものである。特に、小型化された圧電振動片では高周波化に対応されたものが従来の圧電振動片に比べて充実しており、ICチップについてもこのような小型で高周波向けの圧電振動片とのマッチングが行われたものが充実している。このため、あらかじめ高周波設計が完了した小型の圧電振動片と集積回路を従来のパッケージに利用するほうがコスト増大を抑制するばかりでなく、より信頼性の高い圧電発振器が得られる。特許文献1では、このような要求に対応すべく外形サイズの異なる圧電振動片を一つのパッケージに搭載することが可能な構成について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−345482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示している圧電発振器では、保持台と枕部の両方に接しないサイズに小型化された圧電振動片を保持台に搭載する場合、下側に圧電振動片が傾いて搭載されるため、保持台の上部あるいは上部稜線部分に圧電振動片の励振電極が接触して励振電極が傷ついたり、保持台の上部と励振電極の間に異物が介在して発振停止を招く危険性があった。
【0006】
そこで本発明は、上記課題を解決するために、圧電振動片の傾きによる不具合をなくしたより信頼性の高い表面実装型圧電発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、矩形状で励振電極が形成された圧電振動片と電子部品と、外壁部と開口部と内部収納部が形成されたベースと、前記ベースの開口部を覆う蓋とを有し、ベースの開口部に蓋を被せて気密封止してなる圧電発振器であって、前記ベースには、前記電子部品を収納する第1の収納部と、当該第1の収納部の上部に前記圧電振動片を収納する第2の収納部とを有し、前記第2の収納部には、前記圧電振動片が搭載される絶縁性の保持台が形成され、前記保持台のうちの前記第1の収納部に離隔する領域には、前記圧電振動片の一端辺の一部と導電性接合材を介して電気的機械的に接合される導電性の電極パッドが形成され、前記保持台のうちの前記第1の収納部に近接する領域には、前記圧電振動片の他端辺、あるいは一端辺と他端辺をつなぐ側端辺のうちの少なくとも一部の辺と重畳される保持台の上面素地が露出した絶縁性の補助保持部が形成され、前記補助保持部には、前記圧電振動片の励振電極が接触しない接触回避部が形成されてなることを特徴とする。
【0008】
本発明の構成によれば、前記保持台のうちの前記第1の収納部に近接する領域には、前記圧電振動片の他端辺、あるいは一端辺と他端辺をつなぐ側端辺のうちの少なくとも一部の辺と重畳される保持台の上面素地が露出した絶縁性の補助保持部が形成されているので、圧電振動片の他端辺、あるいは一端辺と他端辺をつなぐ側端辺のうちの少なくとも一部の辺が絶縁性の補助保持部に接して、圧電振動片の傾きを抑制することができる。このため、第1の収納部に収納された電子部品と圧電振動片が接触することがなくなり、圧電振動片の端部により電子部品の端子部や導体部を傷つけることもなくなり、圧電振動片の励振電極により極性の異なる配線パターン間をショートさせることもない。加えて、補助保持部の端部は圧電振動片の一端辺から離れた位置に設置し、落下などの衝撃に対して、圧電振動片に生じる歪(撓み)を補助保持部の上面で緩和し、圧電振動片の割れや欠け等を防ぐことができる。特に、高周波向けのより薄い圧電振動片に対して有効である。前記補助保持部には、前記圧電振動片の励振電極が接触しない接触回避部が形成されているので、圧電振動片の他端辺が下側に傾いて搭載されても、保持台の上部あるいは保持台の上部稜線部分に圧電振動片の励振電極が接触して励振電極が傷ついたり、保持台の上部と励振電極の間に異物が介在して発振停止を招くこともない。
【0009】
また、本発明では上記構成に加えて、前記保持台は、前記電極パッドが形成された基部と、当該基部から前記圧電振動片の他端辺に向かって延出した前記補助保持部材を構成する脚部と、前記基部と脚部に隣接した切欠部とを有し、前記切欠部の幅寸法を配置される圧電振動片の励振電極の他端辺の幅寸法以上で構成するとともに、前記圧電振動片の励振電極の他端辺と前記保持台の切欠部を重畳させ、当該切欠部を接触回避部としてもよい。
【0010】
このような構成では上述の作用効果に加えて、圧電振動片の他端辺、あるいは一端辺と他端辺をつなぐ側端辺のうちの少なくとも一部の辺が保持台の脚部に接して、圧電振動片の傾きを抑制することができる。圧電振動片の他端辺が下側に傾いて搭載されても、圧電振動片の励振電極の他端辺の周囲には切欠部が配置されているので、保持台の上部あるいは保持台の上部稜線部分が圧電振動片の励振電極と直接接触することがない。結果として、励振電極が傷ついたり、保持台の上部と励振電極の間に異物が介在して発振停止を招くことがない。また、保持台の基部に電極パッドを形成することができるので、保持台の脚部に電極パッドを形成する場合に比べて、形成領域を縮小することなく、かつ保持台への電極パッドの形成も設計自由度を低下させることがない。
【0011】
また、本発明では上記構成に加えて、前記保持台は、前記電極パッドが形成された基部と、当該基部から前記圧電振動片の他端辺に向かって次第に幅寸法が広がる切欠部とを有し、当該切欠部と接する保持台の上部稜線部分を補助保持部材として構成し、前記切欠部の最幅広部位の寸法を配置される圧電振動片の励振電極の他端辺の幅寸法以上で構成するとともに、前記圧電振動片の一端辺と他端辺をつなぐ一対の側端辺の一部と前記保持台の切欠部と接する上部稜線部分の一部とを重畳させ、当該切欠部を接触回避部としてもよい。
【0012】
このような構成では上述の作用効果に加えて、圧電振動片の一端辺と他端辺をつなぐ一対の側端辺の一部が保持台の切欠部と接する上部稜線部分の一部に接して、圧電振動片の傾きを抑制することができる。圧電振動片の他端辺が下側に傾いて搭載されても、圧電振動片の励振電極のうち、圧電振動片の一対の側端辺の一部と保持台の上部稜線部分の一部が接する周囲には切欠部が配置されているので、保持台の上部あるいは保持台の上部稜線部分が圧電振動片の励振電極と直接接触することがない。結果として、励振電極が傷ついたり、保持台の上部と励振電極の間に異物が介在して発振停止を招くことがない。また、保持台の基部に電極パッドを形成することができるので、電極パッドの形成領域を縮小することなく、かつ保持台への電極パッドの形成も設計自由度を低下させることがない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、圧電振動片の傾きによる不具合をなくしたより信頼性の高い表面実装型圧電発振器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1にかかる表面実装型水晶発振器の概略構成を示した図。
【図2】図1の水晶振動片を搭載する前の平面図。
【図3】本発明の実施例1の変形例にかかる平面図。
【図4】本発明の実施例1の変形例にかかる断面図。
【図5】本発明の実施例2にかかる表面実装型水晶発振器の平面図。
【図6】図5の水晶振動片を搭載する前の平面図。
【図7】本発明の実施例2の変形例にかかる平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について表面実装型水晶発振器(表面実装型圧電発振器)を例にしながら図面を参照して説明する。図1は本発明の実施例1にかかる表面実装型水晶発振器の概略構成を示した図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のA−A線に沿った断面図、図1(c)は図1(a)のB−B線に沿った断面図、図1(d)は図1(a)のC−C線に沿った断面図である。図2は図1の水晶振動片を搭載する前の平面図である。図3は本発明の実施例1の変形例にかかる平面図であり、図4は本発明の実施例1の変形例にかかる断面図である。図5は本発明の実施例2にかかる表面実装型水晶発振器の平面図であり、図6は図5の水晶振動片を搭載する前の平面図である。図7は本発明の実施例2の変形例にかかる平面図である。なお同様の部分については一部同番号を付すとともに説明の一部を省略している。
【0016】
本発明の実施形態にかかる表面実装型水晶発振器1は、水晶振動片(圧電振動片)2と集積回路素子としてのICチップ(電子部品)3と、これらを配置して保持するベース4と、ベース4と接合してベース4に配置保持した水晶振動片2とICチップ3を気密封止するための図示しない蓋とを含む構成とである。以下、この表面実装型水晶発振器の各構成について説明する。
【0017】
水晶振動片2は、ATカットの水晶片からなり、平面視矩形上の一枚板の直方体に成形され、一端辺21と他端辺22、一端辺と他端辺をつなぐ側端辺23,24を有している。この水晶振動片2の両主面には、それぞれ励振電極25と、これらの励振電極25を外部電極と電気的に接続するための接続電極26と、励振電極25を接続電極に引き出すための引出電極27とが形成されている。なお、励振電極25,接続電極26,および引出電極27は、真空蒸着法やスパッタリング法により形成され、例えば、水晶振動片側からクロム、金の順に、あるいはクロム、金、クロムの順に、あるいはクロム、銀、クロム、あるいはクロム、金、銀の順に積層して形成されている。なお下地電極についてはクロムにかえてニッケルなどを用いてもよい。
【0018】
ICチップ3は、水晶振動片2とともに発振回路を構成する1チップ集積回路素子であり、その上面あるいは底面に接続端子が複数形成されている。本実施形態では、ICチップ3にベアチップを採用しており、ワイヤボンディング工法で接続されるICチップ3を例示しているので、上面にワイヤが接続される接続端子31が複数形成されており、底面では図示しない接合材によりベース4と接合されている。なお、ICチップ3としてはワイヤボンディング工法に限るものではなく、FCB工法により接続されるものを採用してもよい。この場合、ICチップ3の底面に複数の接続端子が形成されており、金などからなる金属バンプを介してベース4に形成された複数の電極パッドと電気機械的に接合する。
【0019】
ベース4は、全体として直方体で、アルミナ等のセラミックからなる絶縁性材料とタングステン等の導電材料を適宜積層した構成からなる。このベース4は、箱状体に形成され、セラミック材料からなる平面視矩形状の一枚板上に、所定形状からなる導電材料および中空を有するセラミック材料を積層して断面視略凹状に一体的に焼成されている。また、中空を有するセラミック材料は、平面視矩形状の一枚板のセラミック材料の表面外周に沿って成形されている。この中空が積層されて断面凹状の収納部40を構成し、当該収納部40はベースの底面側に配置されICチップ3が収納される中空の小さな第1の収納部401と、ベースの上面側に配置され水晶振動片2が収納される中空の大きな第2の収納部402とからなっている。収納部40の周囲には堤部41(外壁部)が形成されており、堤部41の上面は平坦で、蓋との接合領域411であり、この接合領域411には、図示していないが蓋と接合するための封止用金属層が設けられている。
【0020】
本実施形態では、ワイヤボンディング工法で接続されるICチップ3を例示しているので、前記第1の収納部401と第2の収納部402の間には、第1の収納部401より中空が大きく第2の収納部402より中空の小さい中間層403が形成されている。第1の収納部と同じセラミック材料の積層部分である上面の一部が中間層403の内底面として露出して構成され、後述する電極パターンが上面に形成されている。第2の収納部402には、中空の大きな第2の収納部402に対して中空の小さな第1の収納部401に隣接するとともに、中間層403と同じセラミック材料の積層部分である上面の一部が第2の収納部の内底面として露出して構成され、水晶振動片2が搭載される保持台42が形成されている。なお、ICチップ3としてFCB工法により接続されるものを採用する場合、前記中間層403をなくし、第1の収納部の内底面に後述する電極パターンを形成すればよい。
【0021】
ベース4の平面視四隅を含む堤部41の外周には、複数のキャスタレーションが形成されている。キャスタレーションは、ベース4の半円弧状の切り欠き(半円弧状の凹部)が本体筐体の表面から裏面にかけて形成されている。このキャスタレーションには図示しない電極パターンが形成されている。また、図示していないが、ベース4の裏面には、外部(外部部品や外部機器)の電極との接続(接合)される複数の外部端子電極が形成されている。この外部端子電極には、少なくとも、Gnd用電極と、出力用電極と、OE(Output Enable)用電極と、VDD用電極等がある。
【0022】
ベースの保持台42のうち第1の収納部401に離隔する領域には、水晶振動片2の一端辺21の両端部に形成された接続電極26,26と導電性接合材を介して電気的機械的に接合される導電性の電極パッド51,52が形成され、ベースの保持台42のうち第1の収納部401に近接する領域には、電極パッド51,52より高さが低く、かつ水晶振動片2の他端辺22、あるいは一端辺と他端辺をつなぐ側端辺23,24のうちの少なくとも一部の辺と重畳される保持台42の上面素地が露出した絶縁性の補助保持部420が形成されている。
【0023】
ベース4の中間層403の内底面には、水晶振動片2と接合される電極パッド51,52とICチップ3の接続端子と接合され、水晶振動片2とICチップ3とを電気的に接続するための内部接続用の電極パターン71,72と、ICチップ3の各接続端子と接合され、ICチップ3と各外部端子電極とを電気的に接続するための外部接続用の電極パターン73,74,75,76,77,78とが形成されている。これにより水晶振動片2およびICチップ3は端子電極から外部(外部部品や外部機器)と接続(接合)される。このような電極パッド51,52、および電極パターン71,72,73,74,75,76,77,78、および外部端子電極、および封止用金属層は、例えばタングステンやモリブデンのメタライズ層(図示省略)の上部にニッケルメッキと金メッキが形成されている。
【0024】
蓋は、例えば金属材料からなり下面にろう材(図示省略)が形成されている。シーム溶接やビーム溶接、雰囲気加熱等の手法によりベース4に接合されて、蓋とベース4とによる表面実装型水晶発振器の本体筐体が成形される。具体的にシーム溶接による蓋は、コバールからなるコア材に金属層としての金属ろう材が形成された平面視矩形状の一枚板構成であり、より詳しくは、例えば上面からニッケル層、コバールコア材、銅層、銀ろう層の順の多層構成である。ここでいう銀ろう層がベース2のメタライズ層と接合される。また、銀ろう層の一部がベース4のメタライズ層と接合するための溶接領域とされ、この溶接領域は蓋の平面視外周端部に沿って設定されている。蓋の平面視外形はベース2の外形とほぼ同じであるか、若干小さい構成となっている。
【0025】
以上のような表面実装型水晶発振器1の各構成において、ベースの第1の収納部401にICチップ3を配して収納され、当該第1の収納部の内底面とICチップの底面を接合材によりダイボンディングされるとともに、ICチップの上面の接続端子31と電極パターン71,72,73,74,75,76とをワイヤWによりワイヤボンディング接続されている。またベースの第2の収納部402に水晶振動片2を配して収納され、水晶振動片2の一端辺21の両端部に形成された接続電極26,26では、導電性樹脂接着剤D(本発明でいう導電性接合材)を用いてベースの保持台42に形成された一対の電極パッド51,52に対して電気機械的に接合されている。本実施形態で用いる導電性接着剤Dは、硬化温度が180度程度の導電性シリコーン系樹脂が用いられている。また、導電性接合材として導電性シリコーン系樹脂に限定されるものではなく、導電性ウレタン系樹脂などの他の樹脂であってもよく、また、金などの金属バンプであってもよい。これらICチップ3および水晶振動片2が収納されたベース4を図示しない蓋にて被覆し、ベース4の封止用金属層と蓋の銀ろう層の一部とを溶融硬化させて接合させ、収納部40内のICチップ3および水晶振動片2の気密封止を行う。
【0026】
本発明では前記補助保持部420の構造に特徴点があり、前記水晶振動片2の励振電極25が補助保持部420に接触しない接触回避部が形成されている。以下、詳細について実施例1,2とともに説明する。
【実施例1】
【0027】
実施例1について、図1,図2を参照にして説明する。実施例1の表面実装型水晶発振器1では、保持台42は、第1の収納部401に離隔する領域に電極パッド51,52が形成された基部421と、当該基部421から水晶振動片2の他端辺22に向かって延出し、第1の収納部401に近接した補助保持部材を構成する一対の脚部422,423と、前記基部421と脚部422,423に隣接した矩形状の切欠部424とを有している。つまり、保持台42における基部421と脚部422,423では、平面視略コ字形状に構成されており、中央に切欠部424が配置されている。
【0028】
脚部422,423は、中間層403と同じセラミック材料の積層部分である上面の一部が第2の収納部の内底面として露出しており、電極パッド51,52より高さが低く、かつ水晶振動片2の他端辺22の両端部近傍で脚部の稜線部分4221,4231が重畳して絶縁性の補助保持部420として構成される。
【0029】
前記矩形状の切欠部424の幅寸法w1を配置される水晶振動片2の励振電極25の他端辺251の幅寸法w2以上で構成するとともに、前記水晶振動片の励振電極25の他端辺251と前記保持台の切欠部424を重畳させている。以上により切欠部424が前記水晶振動片の励振電極25と脚部422,423との接触回避部として構成することができる。
【0030】
なお、本実施例1の基部421と脚部422,423は、収納部40の周囲の堤部41と接合された状態で一体形成してもよい。このため、セラミック材料の積層ずれに対しても安定して保持台の各領域を確保することができるため、セラミック材料の積層ずれによる電極パッド形成領域の縮小や補助保持部材領域の縮小による機能低下を抑制することができる。またベース4の曲げ強度が向上することで、搭載後の水晶振動片2へ不要な歪みの発生を軽減することができ、結果として周波数変動や振動特性を劣化させることもない。
【0031】
上記実施例1により、保持台の脚部の稜線部分4221,4231に対して、水晶振動片2の他端辺22の両端部近傍が接して、水晶振動片2の傾きを抑制することができる。このため、第1の収納部401に収納されたICチップ3と第2の収納部402に収納された水晶振動片2が接触することがなくなる。水晶振動片の他端辺22によりICチップ3の接続端子31やワイヤWを傷つけることもなくなり、水晶振動片の励振電極25により極性の異なる配線パターン間をショートさせることもない。加えて、保持台の脚部422,423の端部は水晶振動片2の一端辺21から離れた位置に設置し、落下などの衝撃に対して、水晶振動片2に生じる歪(撓み)を保持台の脚部422,423の上面で緩和し、水晶振動片2の割れや欠け等を防ぐことができる。特に、高周波向けのより薄い水晶振動片2に対して有効である。
【0032】
また、脚部422,423は、電極パッド51,52より高さを低く形成しているので、水晶振動片2を電極パッド51,52に搭載した際にも保持台42との隙間が確保され、水晶振動片の振動を妨げることがなく特性を劣化させることがない。
【0033】
また水晶振動片2の他端辺22が下側に傾いて搭載されても、水晶振動片の励振電極の他端辺251の周囲には切欠部424が配置されているので、保持台42の上部あるいは保持台の稜線部分4221,4231が水晶振動片の励振電極25と直接接触することがない。結果として、励振電極25が傷ついたり、保持台42の上部と励振電極25の間に異物が介在して発振停止を招くことがない。また、保持台の基部421に電極パッド51,52を形成することができるので、保持台の脚部422,423に電極パッドを形成する場合に比べて、形成領域を縮小することなく、かつ保持台42への電極パッドの形成も設計自由度を低下させることがない。
【0034】
なお、上記実施例1に示すものでは、保持台42における基部421と脚部422,423では、平面視略コ字形状に構成されており、中央に切欠部424が配置されているがこのような構成に限らず、図3の変形例に示すような構成してもよい。具体的に図3(a)では、保持台42は、第1の収納部401に離隔する領域に電極パッド51,52が形成された基部421と、当該基部421から水晶振動片2の他端辺22に向かって延出し、第1の収納部401に近接した補助保持部材を構成する一対の脚部422,423と、当該脚部の先端部をつなぐ連結部425と、前記基部421と脚部422,423、連結部425に隣接した矩形状の切欠部426とを有している。つまり、保持台42における基部421と脚部422,423と連結部425では、平面視略ロ字形状に構成されており、中央に切欠部426が配置されている。また図3(b)では、保持台42は、第1の収納部401に離隔する領域に電極パッド51,52が形成された基部421と、当該基部421から水晶振動片2の他端辺22に向かって延出し、第1の収納部401に近接した補助保持部材を構成する脚部423と、前記基部421と脚部423に隣接した矩形状の切欠部427とを有している。つまり、保持台42における基部421と脚部423では、平面視略L字形状に構成されており、中央から端部に切欠部427が配置されている。
【0035】
また、上記実施例1に示すものに限らず、図4の変形例に示すように、前記保持台の一対の脚部422,423(423については図示せず)の先端部分に凸状の枕を形成した構成してもよい。具体的に図4(a)では、前記保持台の一対の脚部422,423(423については図示せず)の先端部分に、例えばタングステンやモリブデンのメタライズ層、あるいはアルミナコートなどの絶縁層を積層して形成することで凸状の枕53,54(54については図示せず)を構成している。また図4(b)では、前記保持台の一対の脚部422,423(423については図示せず)の先端部分に、例えばシリコーン樹脂やウレタン樹脂の弾性樹脂接着剤を塗布することで凸状の枕55,56(56については図示せず)を構成している。このような凸状の枕を形成することで、圧電振動片の傾きをさらに抑制することができ、励振電極の傷防止と異物介在を防止し、水晶振動片の破損防止にもより一層効果を奏することができる。
【実施例2】
【0036】
実施例2について、図5,図6を参照にして説明する。実施例2の表面実装型水晶発振器1では、前記保持台42は、第1の収納部401に離隔する領域に電極パッド51,52が形成された基部421と、当該基部421から水晶振動片2の中心線近傍に沿って他端辺22に向かって次第に幅寸法が広がるV字状の切欠部428とを有している。つまり、保持台42における基部421とV字状の切欠部428が隣接して配置されている。
【0037】
切欠部428と接する保持台の上部稜線部分4281,4282は、中間層403と同じセラミック材料の積層部分である上面の一部が第2の収納部の内底面として露出しており、電極パッド51,52より高さが低く、かつ水晶振動片2の側端辺23,24の一部で保持台の上部稜線部分4281,4282が重畳して絶縁性の補助保持部420として構成される。
【0038】
前記V字状の切欠部428の最幅広部位4283の寸法w3を配置される水晶振動片2の励振電極25の他端辺251の幅寸法w2以上で構成するとともに、前記水晶振動片の励振電極25の他端辺251と前記保持台の切欠部425を重畳させている。以上により切欠部428が前記水晶振動片の励振電極25と保持台42との接触回避部として構成することができる。
【0039】
なお、本実施例2の基部421を含む保持台42は、収納部40の周囲の堤部41と接合された状態で一体形成してもよい。このため、セラミック材料の積層ずれに対しても安定して保持台の各領域を確保することができるため、セラミック材料の積層ずれによる電極パッド形成領域の縮小や補助保持部材領域の縮小による機能低下を抑制することができる。またベース4の曲げ強度が向上することで、搭載後の水晶振動片2へ不要な歪みの発生を軽減することができ、結果として周波数変動や振動特性を劣化させることもない。
【0040】
上記実施例2により、保持台の上部稜線部分4281,4282に対して、水晶振動片2の側端辺23,24の一部が接して、水晶振動片2の傾きを抑制することができる。このため、第1の収納部401に収納されたICチップ3と第2の収納部402に収納された水晶振動片2が接触することがなくなる。水晶振動片の他端辺22によりICチップ3の接続端子31やワイヤWを傷つけることもなくなり、水晶振動片の励振電極25により極性の異なる配線パターン間をショートさせることもない。加えて、保持台の上部稜線部分4281,4282のうち水晶振動片2の側端辺23,24の一部と接する部分は、水晶振動片2の一端辺21から離れた位置に設置し、落下などの衝撃に対して、水晶振動片2に生じる歪(撓み)を保持台の上部稜線部分4281,4282の上面で緩和し、水晶振動片2の割れや欠け等を防ぐことができる。特に、高周波向けのより薄い水晶振動片2に対して有効である。
【0041】
また、保持台の上部稜線部分4281,4282は、電極パッド51,52より高さを低く形成しているので、水晶振動片2を電極パッド51,52に搭載した際にも保持台42との隙間が確保され、水晶振動片の振動を妨げることがなく特性を劣化させることがない。
【0042】
また水晶振動片2の他端辺22が下側に傾いて搭載されても、水晶振動片の励振電極のうち、水晶振動片の側端辺23,24の一部と保持台の上部稜線部分4281,4282の一部が接する周囲には切欠部428が配置されているので、保持台42の上部あるいは保持台の上部稜線部分4281,4282が水晶振動片の励振電極25と直接接触することがない。結果として、励振電極25が傷ついたり、保持台42の上部と励振電極25の間に異物が介在して発振停止を招くことがない。また、保持台のうち切欠部428が存在しない基部421に電極パッド51,52を形成することができるので、形成領域を縮小することなく、かつ保持台42への電極パッドの形成も設計自由度を低下させることがない。
【0043】
なお、上記実施例2に示すものでは、保持台42における基部421と当該基部421から水晶振動片2の中心線近傍に沿って他端辺22に向かって次第に幅寸法が広がるV字状の切欠部428を構成しているが、このような構成に限らず、図7の変形例に示すような構成してもよい。具体的に、保持台42は、第1の収納部401に離隔する領域に電極パッド51,52が形成された基部421と、当該基部421から水晶振動片2の他端辺22に向かって次第に幅寸法が広がるレ字状の切欠部429を構成している。
【0044】
本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、水晶発振器などの圧電発振器に適用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 表面実装型水晶発振器
2 水晶振動片
3 ICチップ
4 ベース
D 導電性接着剤
W ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状で励振電極が形成された圧電振動片と電子部品と、外壁部と開口部と内部収納部が形成されたベースと、前記ベースの開口部を覆う蓋とを有し、ベースの開口部に蓋を被せて気密封止してなる圧電発振器であって、
前記ベースには、前記電子部品を収納する第1の収納部と、当該第1の収納部の上部に前記圧電振動片を収納する第2の収納部とを有し、
前記第2の収納部には、前記圧電振動片が搭載される絶縁性の保持台が形成され、
前記保持台のうちの前記第1の収納部に離隔する領域には、前記圧電振動片の一端辺の一部と導電性接合材を介して電気的機械的に接合される導電性の電極パッドが形成され、
前記保持台のうちの前記第1の収納部に近接する領域には、前記圧電振動片の他端辺、あるいは一端辺と他端辺をつなぐ側端辺のうちの少なくとも一部の辺と重畳される保持台の上面素地が露出した絶縁性の補助保持部が形成され、
前記補助保持部には、前記圧電振動片の励振電極が接触しない接触回避部が形成されてなることを特徴とする表面実装型圧電発振器。
【請求項2】
前記保持台は、前記電極パッドが形成された基部と、当該基部から前記圧電振動片の他端辺に向かって延出した前記補助保持部材を構成する脚部と、前記基部と脚部に隣接した切欠部とを有し、
前記切欠部の幅寸法を配置される圧電振動片の励振電極の他端辺の幅寸法以上で構成するとともに、前記圧電振動片の励振電極の他端辺と前記保持台の切欠部を重畳させ、当該切欠部を接触回避部としたことを特徴とする特許請求項1記載の表面実装型圧電発振器。
【請求項3】
前記保持台は、前記電極パッドが形成された基部と、当該基部から前記圧電振動片の他端辺に向かって次第に幅寸法が広がる切欠部とを有し、当該切欠部と接する保持台の上部稜線部分を補助保持部材として構成し、前記切欠部の最幅広部位の寸法を配置される圧電振動片の励振電極の他端辺の幅寸法以上で構成するとともに、前記圧電振動片の一端辺と他端辺をつなぐ一対の側端辺の一部と前記保持台の切欠部と接する上部稜線部分の一部とを重畳させ、当該切欠部を接触回避部としたことを特徴とする特許請求項1記載の表面実装型圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−61510(P2011−61510A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209205(P2009−209205)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】