説明

表面検査方法及び装置

【課題】2波長方式で多層構造の被検体の内部を正確に測定できる表面検査方法及び装置を提供する。
【解決手段】 短波長と長波長の波長を出射する光源部から光束を被検体の被検面に対して所定の入射角で同時又は択一的に入射させ、光源部からの光束の種類、及び第1光強度検出部からの出力に基づき、射出される少なくとも長波長の光束の強度を調整し、短波長の光束を照射した際の第1光強度検出部の出力と、長波長の光束を照射した際の第1光強度検出部の出力とを比較し、長波長の光束を照射した際の第1光強度検出部の出力にのみ現れる信号を、内部対象物からの検出信号と判別し、かつ、長波長の光束の強度を調整し、その内部対象物からの検出信号が消失する付近の消失レベルを求め、消失レベルよりも高いレベルに、長波長の光束の第1強度を設定し、第1強度の長波長の光束により得られる第1光強度検出部の出力に基づき、被検体内部の対象物を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハその他の被検体の表面検査方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2波長のレーザ光を利用してウエハ内部の欠陥を検査する方法及び装置は公知である。特許文献1および2や、非特許文献2を参照。
【0003】
例えば、2波長の波長差(短波長と長波長の差)によってウエハの内部測定と表層測定は可能になっている。
【特許文献1】特開平11−354598号公報
【特許文献2】特開平11−237226号公報
【非特許文献1】武田一男著「ニ波長光散乱によるウエハ全面における表層欠陥のサイズと深さの計測技術(OSDA)」表面科学Vol.22、No.5、pp.323−331、2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の2波長方式の表面検査においては、SOI校正をすることができない。しかも、SOIウエハの内部界面の情報を定量的に測定することができなかった。
【0005】
次世代の薄膜SOIウエハの表面の異物測定は短波長(DUV)を用いることで可能であるが、従来の2波長方式の表面検査では、ウエハ母材の影響を定量的に測定することができない。例えば、中層と下層の界面の正確な測定ができない。とくに、ウエハ内部の小さな空洞や異物が測定できない。そのため、デバイスの歩留まりについて悪い影響があった。
【0006】
本発明の目的は、2波長方式で多層構造の被検体(例えばウエハ)の内部を正確に測定できる表面検査方法及び装置を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、薄膜SOIまたはそれに準じた特性を持つ多層構造の被検体の内部の欠陥や異物を高精度に測定することを可能とし、歩留まりに貢献し、材質の品質を向上できる表面検査方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決手段を例示すると、次のとおりである。
【0009】
(1)短波長と長波長の2種類の波長の光束を、その強度を変化可能として出射する光源部と、
前記光源部から出射した2種類の波長の光束を表面検査の対象である被検体の被検面に対して所定の入射角で同時または択一的に入射させる照射光学系と、
前記光束が前記被検面を走査するように、前記光束および前記被検体のうち少なくとも一方を相対的に変位させる走査部と、
前記光束が入射した前記被検面の入射部分から出射した散乱光を、第1光強度検出部に導光する散乱光検出光学系と、
前記光束が入射した前記被検面の入射部分から出射した正反射光を、第2光強度検出部に導光する散乱光検出光学系と、
光源部から出射される光束の種類、及び第1光強度検出部からの出力に基づき、光源部から射出される少なくとも長波長の光束の強度を調整する制御演算部とを備え、
前記制御演算部は、短波長の光束を照射した際の前記第1光強度検出部の出力と、長波長の光束を照射した際の前記第1光強度検出部の出力とを比較し、長波長の光束を照射した際の前記第1光強度検出部の出力にのみ現れる信号を、内部対象物からの検出信号と判別し、かつ、長波長の光束の強度を調整し、その内部対象物からの検出信号が消失する付近の消失レベルを求め、消失レベルよりも高いレベルに、長波長の光束の第1強度を設定し、第1強度の長波長の光束により得られる第1光強度検出部の出力に基づき、被検体内部の対象物を測定するように構成されていることを特徴とする表面検査装置。
【0010】
(2)上記被検体は、表面から順に表層、中層及び下層を有する多層構造になっていて、主に各層の境界に被検対象物が存在しており、上記制御演算部は、消失レベルよりも高いレベルに、長波長の光束の第1強度を設定し、第1強度の長波長の光束により得られる第1光強度検出部の出力に基づき、被検体内部の下層に属する被検対象物を測定し、消失レベルよりも低いレベルに、長波長の光束の第2強度を設定し、第2強度の長波長の光束により得られる第1光強度検出部の出力に基づき、被検体内部の中層に属する被検対象物を測定するように構成されていることを特徴とする前述の表面検査装置。
【0011】
(3)上記光源部は、短波長として紫外域の光束を射出し、長波長として可視域の光束を射出するように構成され、
上記被検体は、薄膜SOIウエハであり、薄膜SOIウエハの表面から順にSi、SiO、Siの層が多層構造として形成されていることを特徴とする前述の表面検査装置。
【0012】
(4)上記光源部は、短波長として遠紫外域(DUV:Deep Ultraviolet)の光束を射出するように構成され、
上記被検体はウエハであり、そのウエハにおける被検対象物は、ウエハ表面の異物と、ウエハ内部のCOP又は欠陥を含む異物であることを特徴とする前述の表面検査装置。
【0013】
(5)上記光源部は、短波長と長波長の2種類の波長の光束を、同軸に、かつ、その強度を変化可能として出射するように構成したことを特徴とする前述の表面検査装置。
【0014】
(6)短波長と長波長の2種類の波長の光束を表面検査の対象である被検体の被検面に対して所定の入射角で入射させて異物を検出する表面検査方法において、長波長の光束の強度を調整して、その内部対象物からの検出信号が消失する付近の消失レベルを求め、消失レベルよりも高いレベルに、長波長の光束の第1強度を設定し、第1強度の長波長の光束により得られる第1光強度の出力に基づき、被検体内部の対象物を測定することを特徴とする表面検査方法。
【0015】
(7)短波長と長波長の2種類の波長の光束を表面検査の対象である被検体の被検面に対して所定の入射角で入射させて異物を検出する表面検査方法において、長波長の光束の強度を調整して、長波長の光束の強度を「強」にしたときに測定される対象物から、長波長の光束の強度を「弱」にしたときに測定される対象物を差し引いて、残った対象物を被検体の内部のCOP又は欠陥を含む異物と判定することを特徴とする表面検査方法。
【0016】
(8)表層、中層および下層がそれぞれ第1層、第2層および第3層であり、一方で、短波長の光を照射して第1測定結果を得、他方で、内部の第3層にあるCOP又は欠陥を含む異物まで検出できる強い強度の長波長で照射して検出画像を得、第1測定結果以外の対象物が消失するレベルまで下げて基準レベルとし、これより所定レベル上げた第1測定レベルにより測定することにより第2測定結果を得、さらに基準レベルより所定レベル下げて測定することにより第3測定結果を得て、第1測定結果にのみ現れる対象物を被検体の表面に存在するものと判定し、第1乃至第3測定結果に現れる異物を第2層より深い対象物と判定し、第1及び第2測定結果にのみ現れる対象物を第1層に存在するものと判定することを特徴とする前述の表面検査方法。
【0017】
(9)上記被検体は、表面から順に表層、中層及び下層を有する多層構造となっていて、主に各層の境界に被検対象物が存在しており、
内部対象物からの検出信号が消失する付近の消失レベルよりも高いレベルに、長波長の光束の第1強度を設定し、第1強度の長波長の光束により得られる第1光強度の出力に基づき、被検体内部の下層に属する被検対象物を測定し、消失レベルよりも低いレベルに、長波長の光束の第2強度を設定し、第2強度の長波長の光束により得られる第1光強度の出力に基づき、被検体内部の中層に属する被検対象物を測定することを特徴とする前述の表面検査方法。
【0018】
(10)短波長として紫外域の光束を射出し、長波長として可視域の光束を射出し、
上記被検体は、薄膜SOIウエハであり、薄膜SOIウエハの表面から順にSi、SiO、Siの層が多層構造として形成されていることを特徴とする前述の表面検査方法。
【0019】
(11)短波長として遠紫外域(DUV:Deep Ultraviolet)の光束を射出し、
上記被検体はウエハであり、そのウエハにおける被検対象物は、ウエハ表面の異物と、ウエハ内部のCOP又は欠陥を含む異物であることを特徴とする前述の表面検査方法。
【0020】
(12)短波長と長波長の2種類の波長の光束を、同軸に出射することを特徴とする前述の表面検査方法。
【発明を実施する最良の形態】
【0021】
本発明は、短波長と長波長の2種類の波長の光束を表面検査の対象である被検体の被検面に対して所定の入射角で入射させて被検対象物例えば異物を検出する表面検査方法及び装置を改良したものである。
【0022】
一方で、短波長の光束を被検体の被検面に入射させて被検体の表面における異物を測定し、他方で(あるいは、短波長による測定のあとで)、長波長の光束の強度を調整して、被検体の内部における異物(本願において異物とは狭義の異物、欠陥、空洞、COP等を含む)を測定する。
【0023】
例えば、本発明の1つの実施形態においては、長波長の光束の強度を調整し、その内部対象物からの検出信号が消失する付近の消失レベルを求め、消失レベルよりも高いレベルに、長波長の光束の第1強度を設定し、第1強度の長波長の光束により得られる第1光強度の出力に基づき、被検体内部の対象物を測定する。
【0024】
本発明の別の実施形態においては、長波長の光束の強度を「強」にしたときに測定される異物から、長波長の光束の強度を「弱」にしたときに測定される異物を差し引いて、残った異物を被検体内部のCOP又は欠陥を含む異物と判定する。
【0025】
本発明で検査する被検体は、例えば、表面から順に表層、中層及び下層(それぞれ第1層、第2層、第3層に相当するのが普通)を有する多層構造となっていて、好ましくは、主に各層の境界に被検対象物(異物)が数多く存在している。
【0026】
本発明の別の実施形態においては、消失レベルよりも高いレベルに、長波長の光束の第1強度を設定し、第1強度の長波長の光束により得られる第1光強度の出力に基づき、被検体内部の下層に属する被検対象物を測定し、消失レベルよりも低いレベルに、長波長の光束の第2強度を設定し、第2強度の長波長の光束により得られる第1光強度の出力に基づき、被検体内部の中層に属する被検対象物を測定する。
【0027】
好ましくは、短波長として紫外域の光束を射出し、長波長として可視域の光束を射出する。この場合、被検体の好ましい例は、薄膜SOIウエハであり、薄膜SOIウエハの表面から順にSi、SiO、Siの層が多層構造として形成されている。
【0028】
また、短波長として遠紫外域(DUV:Deep Ultraviolet)の光束を射出することもできる。この場合、被検体はウエハとし、そのウエハにおける被検対象物は、ウエハ表面の異物と、ウエハ内部(とくに中層と下層の境界)のCOP又は欠陥を含む異物であることが好ましい。
【0029】
また、短波長と長波長の2種類の波長の光束を、同軸に出射することが好ましい。
【0030】
また、本発明の別の好ましい実施形態においては、表面検査装置は、短波長と長波長の2種類の波長の光束を、その強度を変化可能として出射する光源部と、前記光源部から出射した2種類の波長の光束を表面検査の対象である被検体の被検面に対して所定の入射角で同時または択一的に入射させる照射光学系と、前記光束が前記被検面を走査するように、前記光束および前記被検体のうち少なくとも一方を相対的に変位させる走査部と、前記光束が入射した前記被検面の入射部分から出射した散乱光を、第1光強度検出部に導光する散乱光検出光学系と、前記光束が入射した前記被検面の入射部分から出射した正反射光を、第2光強度検出部に導光する散乱光検出光学系と、光源部から出射される光束の種類、及び第1光強度検出部からの出力に基づき、光源部から射出される少なくとも長波長の光束の強度を調整する制御演算部とを備えている。
【0031】
前記表面検査装置の制御演算部は、短波長の光束を照射した際の前記第1光強度検出部の出力と、長波長の光束を照射した際の前記第1光強度検出部の出力とを比較し、長波長の光束を照射した際の前記第1光強度検出部の出力にのみ現れる信号を、内部対象物からの検出信号と判別し、かつ、長波長の光束の強度を調整し、その内部対象物からの検出信号が消失する付近の消失レベルを求め、消失レベルよりも高いレベルに、長波長の光束の第1強度を設定し、第1強度の長波長の光束により得られる第1光強度検出部の出力に基づき、被検体内部の対象物を測定するように構成されている。
【0032】
好ましくは、上記制御演算部は、消失レベルよりも高いレベルに、長波長の光束の第1強度を設定し、第1強度の長波長の光束により得られる第1光強度検出部の出力に基づき、被検体内部の下層に属する被検対象物を測定し、消失レベルよりも低いレベルに、長波長の光束の第2強度を設定し、第2強度の長波長の光束により得られる第1光強度検出部の出力に基づき、被検体内部の中層に属する被検対象物を測定するように構成されている。
【0033】
上記光源部は、短波長として紫外域の光束を射出し、長波長として可視域の光束を射出するように構成されていることが好ましい。
【0034】
上記光源部は、短波長として遠紫外域(DUV:Deep Ultraviolet)の光束を射出するように構成することもできる。
【0035】
また、上記光源部は、短波長と長波長の2種類の波長の光束を、同軸に、かつ、その強度を変化可能として出射するように構成することが好ましい。
【0036】
さらに、好ましい光源部について具体的に説明する。
【0037】
遠紫外線の波長としては、例えば213nm、226nm、355nmを用いることが好ましい。これらの波長は、YAGの固体レーザ(基本波1064nm)をCBO結晶(セシウムトリボレート結晶)やCLBO結晶(セシウム・リチウム・ボレート結晶)などの非線形光学結晶によって、それぞれ5倍波、4倍波、3倍波を取り出すことにより形成することができる。
【0038】
可視光線の好ましい構成の一例を述べると、408nmとして青色半導体レーザを利用し、488nmとしてArレーザ固体レーザを利用することができる。
【0039】
本発明によれば、SOIウエハもしくは他の多層膜構造のウエハが、2波長により内部と表層を測定可能である。例えば、ウエハ内部まで異物の検査をする。とくに界面での散乱量を測定する。それにより界面状況を把握し、SOIウエハの内部異物・欠陥測定及び界面の測定が可能となる。その結果、品質の向上がはかれる。さらに、ウエハ内部のCOP又は欠陥を含む異物を用いてSOI校正を行うことができる。
【実施例】
【0040】
本発明の好適な実施例を説明する。
【0041】
本発明の好適な実施例における測定方法の原理について述べる。
【0042】
波長毎のSiにおいて入射光強度が1/e(約13%)となる深さと波長の関係は、図1のグラフに示すとおりである。
【0043】
図1からも明らかなように、紫外域(特に遠紫外域)の波長と、可視域の波長の間の領域において、Siにおける透過する距離が10倍以上相違するように著しく変化する。したがって、紫外域の波長の光を照射して検出した場合には、略表面の異物やCOPの検出のみに留まる一方、可視域の波長の光を用いれば、ウエハの内部深くまで照射される。そのため、ウエハの内部にある膜構成(多重構造)、例えば中層と下層の境界におけるCOP(最も数が多く、特徴的であるCOPである)の検出が可能となる。
【0044】
図2において、ウエハは、Siからなる表層A(第1層)、SiOからなる中層B(第2層)、Siからなる下層C(第3層)を有し、表層Aの厚みが20〜100nm、中層Bの厚みが100〜150nm、下層Cの厚みが約500nmである。
【0045】
図2の例における下層Cは母材とも呼ばれる。
【0046】
本発明の好ましい実施形態においては、測定の際、まず、紫外線の波長(短波長)の光λ1を照射して第1測定結果を得る。次に、内部(例えば下層つまり第3層CにあるCOP)まで検出できる強い強度の可視光の波長(長波長)の光λ2で照射して検出画像を得る。第1測定結果以外の対象物が消失するレベルまで下げて、その消失時点のレベルを基準レベルとする。この基準レベルより所定レベルだけ上方に上げて第1測定レベルとする。その第1測定レベルで測定することにより第2測定結果を得る。さらに、基準レベルだけ下方に下げた第2測定レベルにより測定することにより第3測定結果を得る。
【0047】
このように得た測定結果に基づいて対象物(異物)を測定する。例えば、第1測定結果にのみ現れる対象物をウエハ表面に存在するものと判定し、第1乃至第3測定結果に現れる異物をウエハの中層(第2層)より深い対象物と判定し、第1及び第2測定結果にのみ現れる対象物を表層(第1層)に存在するものと判定する。
【0048】
このような測定を実行することにより、多層構造(膜条件)が異なるウエハであったとしても、基準レベルから上方及び下方の所定レベル(又は基準レベルより高いレベルと、それより低いレベル)の照射光で測定を行うため、散乱光の大きさにより、ウエハ内部の各層又は各境界に存在する対象物の大きさが信頼性を持って測定可能となる。
【0049】
なお、COPは、Crystal Originated Particleの略語であり、ウエハ上の微粒子やウエハ内部の結晶空洞をいう。
【0050】
また、SOIウエハとは、Silicon on Insulatorウエハをいう。
【0051】
図3〜6を参照して、前述のような測定原理に基づく表面検査方法の実施例を説明する。
【0052】
まず、ウエハ31の表層である第1層31aと、内部の中層と下層である第2層31bと第3層31cを測定するために、2種類の波長の光、つまりDUV(遠紫外線)と呼ばれる波長の短いレーザー光32(例えば355nm、226nmなどの光)と、可視光で長波長(例えば408,488nm)のレーザー光33を利用する。
【0053】
図3に示すように、第1層31aがSiからなり、第2層31bがSiОからなり、第3層1cがSiからなる場合、通常、波長の短い光32(DUV)は、Siからなる第1層31aを透過しないため、波長の短い光32によって第1層1a(表層)のみを測定する事が可能である。波長の長い光33は、内部(第2層31bと第3層31c)まで測定できるが、レーザー光(光束)の強度によって測定可能な深さが変化する。
【0054】
まず、短波長の光32を照射して第1測定結果を得、次に、内部の第2層31bにあるCOPまで検出できる強い強度の長波長の光33を照射して検出画像を得る。第1測定結果以外の対象物が消失するレベルまで下げて基準レベルとする。基準レベルより所定レベル上方に上げた第1測定レベル(上方測定レベル)により測定することにより第2測定結果を得る。さらに基準レベルより下方に所定レベル下げた第2測定レベル(下方測定レベル)により測定することにより第3測定結果を得る。そして、第1測定結果にのみ現れる対象物をウエハ表面に存在するものとし、第1乃至第3測定結果に現れる異物を第2層より深い位置の対象物と判断し、第1及び第2測定結果にのみ現れる対象物を第1層に存在するものと判断する。
【0055】
前述のような2種類の波長の光による測定結果に基づいてウエハ31の内部と表層の異物を識別して測定できる。とくに、ウエハ内部の各層(つまり第2層と第3層)の異物と表層の異物とを識別して測定できる。
【0056】
好ましくは、図4に示すように、特徴のあるCOP34が母材つまり第3層31c(下層)に多いウエハ31を使用する事で、長波長側の校正を可能とすることができる。例えば、長波長側の光量の強度を調整して、例えば強度をまず「強」として、ウエハ31の全層を測定し、つぎに「強」から「弱」に調整していくと、下層31cのCOP34が消失して検出できなくなる。一般にCOPはウエハ31の下層31c(母材)の表面、換言すれば中層31bと下層31cとの境界に多く集中しているため、前述のような「強」から「弱」への強度調整によって、ウエハ31の下層31cの表面に多く集中している特徴あるCOP34が、ある強度レベルで大量に消える。この現象を利用すれば、ウエハ31の母材つまり第3層31c(下層)に存在するCOP34を測定するための最適光量が分かり、校正が容易かつ正確にできる。
【0057】
また、図5に示すように、ウエハ下層31cのCOP34が消失する前後で検出される異物の差から、下層31cの異物を判定できる。つまり、COP34の消失前の異物を検出して記録しておき、COP34の消失前の異物から、COP34の消失後の異物を差し引いて残った異物を、下層31cの異物であると判定することができる。
【0058】
このような現象を活用すると、下層のCOPを利用して校正が可能となる。例えば、異なる条件で最低2回測定することで、ウエハの表面、表層、内部(中層、下層)に属する異物を識別して正確に測定することができる。
【0059】
また、波長によって表面散乱は各界面での散乱を含んでいると考えられる。そのため、上記校正を行い、さらにHAZE測定(すなわち、表面散乱測定)をし、ウエハ内部(中層、下層)の状態をHAZE−Aとし、内部のCOP消失時の状態をHAZE−Cとすると、HAZE−AからHAZE−Cを差し引いたものが、ウエハ31の下層31Cの表面でのHAZE情報と判定できる。
【0060】
例えば、図6は、ウエハ31の上層31a、中層31b、下層31cの各界面からHAZEを示す。COPの観察できる状態にはHAZE−1、2、3が含まれており、COPが測定できなくなったときには、HAZE−2、3の情報となる。短波長がHAZE−3とすれば、波長による係数が必要であるが、演算により各界面でのHAZE情報を抽出可能である。
【0061】
図7は、本発明方法を実施するための、好適な1つの実施例による表面検査装置を示している。
【0062】
図7において、光源部1と、その光源部1からのレーザー光の光束2でウエハ3(被検体)の被検面3aを所定の傾斜角度で照明する照明光学系4と、被検面3aからの散乱反射光5を受光する第1受光光学系6と、第1受光光学系6で受けとられた散乱反射光5を受光する第1光強度検出部7と、被検面3aからの正反射光又は鏡面反射光8を受光する第2受光光学系9と、第2受光光学系9で受けとられた正反射光又は鏡面反射光8を受光する第2光強度検出部10と、第1光強度検出部7からの第1信号12に基づき被検面3aにある異物22の大きさを求めたり、第2光強度検出部10からの第2信号13に基づき被検面3aにある異物22の高さを求めたりするための制御演算部14とを有する。
【0063】
光源部1は、短波長と長波長の2種類の波長の光束を、その強度を変化可能として出射する。
【0064】
光源部1から出射した2種類の波長の光束は、被検体の被検面に対して所定の入射角で同時または択一的に入射させる。
【0065】
光源部1から出射される光束の種類、及び第1光強度検出部7からの出力に基づき、光源部1から射出される少なくとも長波長の光束の強度を制御演算部14で調整する。
【0066】
制御演算部14は、短波長の光束を照射した際の第1光強度検出部7の出力と、長波長の光束を照射した際の第1光強度検出部7の出力とを比較し、長波長の光束を照射した際の第1光強度検出部7の出力にのみ現れる信号を、内部対象物からの検出信号と判別し、かつ、長波長の光束の強度を調整し、その内部対象物からの検出信号が消失する付近の消失レベルを求め、消失レベルよりも高いレベルに、長波長の光束の第1強度を設定し、第1強度の長波長の光束により得られる第1光強度検出部7の出力に基づき、被検体内部の対象物を測定する。
【0067】
被検体3が、表面から順に表層、中層及び下層を有する多層構造になっていて、主に各層の境界に被検対象物が存在している場合、制御演算部14は、消失レベルよりも高いレベルに、長波長の光束の第1強度を設定し、第1強度の長波長の光束により得られる第1光強度検出部7の出力に基づき、被検体内部の下層に属する被検対象物を測定し、消失レベルよりも低いレベルに、長波長の光束の第2強度を設定し、第2強度の長波長の光束により得られる第1光強度検出部7の出力に基づき、被検体内部の中層に属する被検対象物を測定する。
【0068】
また、光源部1は、短波長として紫外域の光束を射出し、長波長として可視域の光束を射出する。好ましくは、光源部1は、短波長として遠紫外域(DUV:Deep Ultraviolet)の光束を射出する。また、光源部1は、短波長と長波長の2種類の波長の光束を、同軸に、かつ、その強度を変化可能として出射する。
【0069】
制御演算部14は、表層、中層および下層(第1層、第2層および第3層)の多層構造のウエハを検査するとき、一方で、短波長の光を照射して第1測定結果を得、他方で、内部の第2層にあるCOPまで検出できる強い強度の長波長で照射して検出画像を得、第1測定結果以外の対象物が消失するレベルまで下げて基準レベルとし、これより所定レベル上げた第1測定レベルにより測定することにより第2測定結果を得、さらに基準レベルより所定レベル下げた第2測定レベルにより測定することにより第3測定結果を得て、第1測定結果にのみ現れる対象物を被検体の表面に存在するものと判定し、第1乃至第3測定結果に現れる異物を第2層より深い対象物と判定し、第1及び第2測定結果にのみ現れる対象物を第1層に存在するものと判定する。
【0070】
また、制御演算部14は、求められた異物の大きさが被検面3aに照明された光束2の径と略等しいかそれ以上である場合に、第2信号13に基づき被検面3aにある異物22の高さを求めることもできる。
【0071】
制御演算部14は、高さデータの変化から異物22の高さを求める高さデータHR方式(高密度で精密に測定を行う、いわゆるハイリゾリューション方式)の実施形態においては、第1光強度検出部7からの第1信号12が所定のスライスレベル以上である場合に、異物22の存在を判断し、異物22が存在していると判断された領域での第2信号13及び異物22が存在していると判断された領域の周辺での第2信号13に基づき、異物の高さを求めるように構成されている。異物22の高さは、第2信号13の所定範囲での平均値に応じて決定され、被検面のうねり(ソリその他の高さ変化を含む)に追随する。
【0072】
また、制御演算部14は、異物22が存在すると判断された領域での第2信号13によるデータと、異物22の存在と判断された領域の周辺の領域での第2信号13によるデータとの平均値の差に基づき、異物22の高さを求めるように構成される。
【0073】
また、前述の表面検査装置は、ピクセル法を採用する実施形態においても使用できる。その場合は、制御演算部14が、測定対象3を所定の多数の単位面積のピクセルに区分けし、その各ピクセル内での第1信号12及び/又は第2信号13の最大値をそのピクセルでの各信号の値として扱うように構成される。
【0074】
この場合、制御演算部14は、異物22が存在すると判断された領域でピクセル処理された第2信号13によるデータと、異物22の存在と判断された領域の周辺の領域でピクセル処理された第2信号13によるデータとの平均値の差に基づき、異物22の高さを求めるように構成される。
【0075】
そして、制御演算部14は、ピクセル処理された第1信号12に基づいて異物22の存在を判断し、異物22の存在と判断された箇所でピクセル内の各アナログ第1信号12及びアナログ第2信号13に基づき、異物の高さを求めるように構成される。
【0076】
制御演算部14は、信号処理部を含んでおり、そこでの信号処理結果(異物の位置、個数、高さ、散乱反射光レベルなど)が表示部15に表示される。
【0077】
また、制御演算部14は、駆動部16に制御信号を送り、ウエハ3をのせるテーブル18のX方向、Y方向及びZ(高さ)方向の移動や回転を制御する。
【0078】
さらに、制御演算部14は、光源1、照明光学系4、第1受光光学系6、第1光強度検出部7、第2受光光学系9、第2光強度検出部10、ウエハ3を操作するためのロボットアーム駆動部(図示せず)にも処理信号を供給して制御する。
【0079】
Zデータ(つまり高さデータ)のHR方式及びピクセル方式の表面検査装置及び方法は、特開2000−337844号の出願書類に説明されているものを採用できる。
【0080】
制御演算部23は、駆動部16に制御信号を出力し、モータ29や光源1の所定の制御を行う一方、駆動部16による回転情報を含む信号(例えば、被検物であるウエハを回転させるモータ29の所定回転ごとにパルス信号)をエンコーダー部から受け取る。制御演算部23は、必要に応じて、メモリ部との間でデータのやりとりを行い、所望の処理を実行する。
【0081】
光束2が被検面3aを走査するように、光束2および被検体3のうち少なくとも一方を相対的に変位させる走査部20は、駆動部16、モータ29、テーブル18その他で構成されている。
【0082】
本発明によれば、次世代ウエハと呼ばれる薄膜SOIの内部(中層、下層)やそれらの界面の管理が可能となる。従来は、ウエハの電気的特性や表面の異物によって管理されていたが、従来に比べて、本発明によれば、界面管理が可能となる。そのため、歩留まりへの影響を小さくできる。歩留まり向上と材質の品質向上に大きく寄与できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】波長とSi進入長(深さ)との関係を示すグラフ。
【図2】本発明によるウエハの表面検査方法におけるウエハの表層と内部の測定原理を説明するための図。
【図3】本発明によるウエハの表面検査方法におけるウエハの表層と内部の測定を具体的に示す説明図。
【図4】長波長側の校正を説明するための図。
【図5】長波長の強度の調整により内部COPの消失の前後の状態を示す説明図。
【図6】各界面からのHAZEを示す。
【図7】本発明方法を実施するための表面検査装置の一例を示す概略図。
【符号の説明】
【0084】
1 ウエハ
1 光源部
1a 第1層(表層)
1b 第2層(中層)
1c 第3層(下層)
2 光束
3 被検体
3a 被検面
4 照明光学系
5 散乱反射光
6 第1受光光学系
7 第1光強度検出部
8 鏡面反射光
9 第2受光光学系
10 第2光強度検出部
12 第1信号
13 第2信号
14 制御演算部
15 表示部
16 駆動部
18 テーブル
20 走査部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短波長と長波長の2種類の波長の光束を、その強度を変化可能として出射する光源部と、
前記光源部から出射した2種類の波長の光束を表面検査の対象である被検体の被検面に対して所定の入射角で同時または択一的に入射させる照射光学系と、
前記光束が前記被検面を走査するように、前記光束および前記被検体のうち少なくとも一方を相対的に変位させる走査部と、
前記光束が入射した前記被検面の入射部分から出射した散乱光を、第1光強度検出部に導光する散乱光検出光学系と、
前記光束が入射した前記被検面の入射部分から出射した正反射光を、第2光強度検出部に導光する散乱光検出光学系と、
光源部から出射される光束の種類、及び第1光強度検出部からの出力に基づき、光源部から射出される少なくとも長波長の光束の強度を調整する制御演算部とを備え、
前記制御演算部は、短波長の光束を照射した際の前記第1光強度検出部の出力と、長波長の光束を照射した際の前記第1光強度検出部の出力とを比較し、長波長の光束を照射した際の前記第1光強度検出部の出力にのみ現れる信号を、内部対象物からの検出信号と判別し、かつ、長波長の光束の強度を調整し、その内部対象物からの検出信号が消失する付近の消失レベルを求め、消失レベルよりも高いレベルに、長波長の光束の第1強度を設定し、第1強度の長波長の光束により得られる第1光強度検出部の出力に基づき、被検体内部の対象物を測定するように構成されていることを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
上記被検体は、表面から順に表層、中層及び下層を有する多層構造になっていて、主に各層の境界に被検対象物が存在しており、上記制御演算部は、消失レベルよりも高いレベルに、長波長の光束の第1強度を設定し、第1強度の長波長の光束により得られる第1光強度検出部の出力に基づき、被検体内部の下層に属する被検対象物を測定し、消失レベルよりも低いレベルに、長波長の光束の第2強度を設定し、第2強度の長波長の光束により得られる第1光強度検出部の出力に基づき、被検体内部の中層に属する被検対象物を測定するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の表面検査装置。
【請求項3】
上記光源部は、短波長として紫外域の光束を射出し、長波長として可視域の光束を射出するように構成され、
上記被検体は、薄膜SOIウエハであり、薄膜SOIウエハの表面から順にSi、SiO、Siの層が多層構造として形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の表面検査装置。
【請求項4】
上記光源部は、短波長として遠紫外域(DUV:Deep Ultraviolet)の光束を射出するように構成され、
上記被検体はウエハであり、そのウエハにおける被検対象物は、ウエハ表面の異物と、ウエハ内部のCOP又は欠陥を含む異物であることを特徴とする請求項1又は2記載の表面検査装置。
【請求項5】
上記光源部は、短波長と長波長の2種類の波長の光束を、同軸に、かつ、その強度を変化可能として出射するように構成したことを特徴とする請求項1又は2記載の表面検査装置。
【請求項6】
短波長と長波長の2種類の波長の光束を表面検査の対象である被検体の被検面に対して所定の入射角で入射させて異物を検出する表面検査方法において、長波長の光束の強度を調整して、その内部対象物からの検出信号が消失する付近の消失レベルを求め、消失レベルよりも高いレベルに、長波長の光束の第1強度を設定し、第1強度の長波長の光束により得られる第1光強度の出力に基づき、被検体内部の対象物を測定することを特徴とする表面検査方法。
【請求項7】
短波長と長波長の2種類の波長の光束を表面検査の対象である被検体の被検面に対して所定の入射角で入射させて異物を検出する表面検査方法において、長波長の光束の強度を調整して、長波長の光束の強度を「強」にしたときに測定される対象物から、長波長の光束の強度を「弱」にしたときに測定される対象物を差し引いて、残った対象物を被検体の内部のCOP又は欠陥を含む異物と判定することを特徴とする表面検査方法。
【請求項8】
表層、中層および下層がそれぞれ第1層、第2層および第3層であり、一方で、短波長の光を照射して第1測定結果を得、他方で、内部の第3層にあるCOP又は欠陥を含む異物まで検出できる強い強度の長波長で照射して検出画像を得、第1測定結果以外の対象物が消失するレベルまで下げて基準レベルとし、これより所定レベル上げた第1測定レベルにより測定することにより第2測定結果を得、さらに基準レベルより所定レベル下げて測定することにより第3測定結果を得て、第1測定結果にのみ現れる対象物を被検体の表面に存在するものと判定し、第1乃至第3測定結果に現れる異物を第2層より深い対象物と判定し、第1及び第2測定結果にのみ現れる対象物を第1層に存在するものと判定することを特徴とする請求項6又は7記載の表面検査方法。
【請求項9】
上記被検体は、表面から順に表層、中層及び下層を有する多層構造となっていて、主に各層の境界に被検対象物が存在しており、
内部対象物からの検出信号が消失する付近の消失レベルよりも高いレベルに、長波長の光束の第1強度を設定し、第1強度の長波長の光束により得られる第1光強度の出力に基づき、被検体内部の下層に属する被検対象物を測定し、消失レベルよりも低いレベルに、長波長の光束の第2強度を設定し、第2強度の長波長の光束により得られる第1光強度の出力に基づき、被検体内部の中層に属する被検対象物を測定することを特徴とする請求項6又は7記載の表面検査方法。
【請求項10】
短波長として紫外域の光束を射出し、長波長として可視域の光束を射出し、
上記被検体は、薄膜SOIウエハであり、薄膜SOIウエハの表面から順にSi、SiO、Siの層が多層構造として形成されていることを特徴とする請求項6又は7記載の表面検査方法。
【請求項11】
短波長として遠紫外域(DUV:Deep Ultraviolet)の光束を射出し、
上記被検体はウエハであり、そのウエハにおける被検対象物は、ウエハ表面の異物と、ウエハ内部のCOP又は欠陥を含む異物であることを特徴とする請求項6又は7記載の表面検査方法。
【請求項12】
短波長と長波長の2種類の波長の光束を、同軸に出射することを特徴とする請求項6〜11のいずれか1項記載の表面検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−218799(P2008−218799A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−55663(P2007−55663)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【Fターム(参考)】