説明

表面疎水化用組成物、表面疎水化方法、および半導体装置

【課題】層の表面をより簡便にかつ効果的に疎水化することができ、かつ、層のより深い領域を疎水化することができる表面疎水化用組成物、表面疎水化方法、および該表面疎水化方法が施された半導体装置を提供する。
【解決手段】表面疎水化用組成物は、(A)下記一般式(1)で表される化合物および下記一般式(2)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1種の化合物と、(B)沸点が30〜350℃である溶媒とを含む。
【化1】


・・・・・(1)
【化2】


・・・・・(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置等の電子デバイスに用いられる層の表面疎水化用組成物、表面疎水化方法、および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、大規模集積回路(LSI)などにおける半導体装置の層間絶縁層として、CVD法などの真空プロセスにより形成されたシリカ(SiO)膜が多用されている。また、近年、より均一な膜厚を有する絶縁層を形成することを目的として、SOG(Spin on Glass)膜と呼ばれるアルコキシランの加水分解生成物を主成分とする塗布型の絶縁層も使用されるようになっている。
【0003】
半導体装置の製造工程においては、一般に、絶縁層に対して様々な処理が行なわれる。例えば、絶縁層のエッチングや、アッシングによるレジストの除去が行なわれる。その際に使用される酸化性もしくは還元性の反応性ガスにより、ケイ素原子を主成分とする絶縁層においては、シラノール基(−Si−OH)が生成することがある。シラノール基は親水性基であるため、膜の吸湿性が上がり、吸収された水分によって様々なデバイス信頼性が低下することがある。
【0004】
また、LSIの高集積化に伴い、例えば、SiOCやSiOCHを主成分とするLow−k膜のデバイスへの適応が切望されている。しかしながら、上述したように、Low−k膜のエッチング工程やアッシング工程において、使用される酸化性もしくは還元性の反応性ガスにより、Low−k膜中の炭素原子(および場合によってはさらに水素原子)が脱離してシラノール基が生成すると、膜の吸湿性が上がり、吸収された水分により様々なデバイス信頼性上の問題が発生することがあるだけでなく、誘電率が上昇して、Low−k膜が低誘電性を喪失するという本質的な問題が生じるおそれがある。
【特許文献1】米国特許第6,383,466号明細書
【特許文献2】米国特許第5,504,042号明細書
【特許文献3】米国特許第6,548,113号明細書
【特許文献4】米国特許第6,700,200号明細書
【特許文献5】特許公表公報第2004−511896号明細書
【非特許文献1】フィリップ ジー クラーク(Philip G. Clerk)、外2名,多孔性MSQフィルムの洗浄およびk値の回復(Cleaning and Restoring k Value of PorousMSQ Films),セミコンダクターインターナショナル(Semiconductor International),2003年8月,46−52頁
【非特許文献2】アニル バナップ(Anil Bhanap)、外3名,プロセスにより誘導された多孔性絶縁層間絶縁層のダメージをアッシング後の処理により修復すること(Repairing Process-Induced Damage to Porous Low-k ILDs by Post-Ash Treatment), Conference proceedings Advanced Metalization, Conference XIX, pp519, 2003年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、その後の加工プロセスとの整合性を有し、層の表面をより簡便にかつ効果的に疎水化することができ、かつ、層のより深い領域を疎水化することができる表面疎水化用組成物を提供することである。
【0006】
また、本発明の他の目的は、前記表面疎水化用組成物を用いた表面疎水化方法を提供することである。
【0007】
さらに、本発明の他の目的は、前記表面疎水化方法によって表面疎水化処理が施された層を含む半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様の表面疎水化用組成物は、
(A)下記一般式(1)で表される化合物および下記一般式(2)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1種の化合物と、(B)沸点が30〜350℃である溶媒とを含む。
【化3】

・・・・・(1)
〔式中、R〜Rは同一または異なり、アルキル基、ビニル基、またはフェニル基を示し、X〜Xは同一または異なり、−OH,−OR,−OC(=O)R(ここで、R,Rは同一または異なり、アルキル基、ベンジル基、またはフェニル基を示す。)を示し、mは1または2を示す。〕
【化4】

・・・・・(2)
〔式中、R〜Rは同一または異なり、アルキル基、ビニル基、またはフェニル基を示し、X,Xは同一または異なり、−OH,−OR10,−OC(=O)R11(ここで、R10,R11は同一または異なり、アルキル基、ベンジル基、またはフェニル基を示す。)を示し、nは1または2を示す。〕
【0009】
前記表面疎水化用組成物において、層の表面に接触させた状態で、該層を加熱するために使用されることができる。
【0010】
前記表面疎水化用組成物において、前記表面はエッチングおよび/またはアッシングにより得られたものであることができる。
【0011】
前記表面疎水化用組成物において、前記層は、ケイ素原子を含有し、かつ酸素原子、炭素原子、水素原子、および窒素原子から選ばれた少なくとも1種の元素を構成元素として含むことができる。
【0012】
前記表面疎水化用組成物において、前記層は絶縁層であることができる。
【0013】
本発明の第2の態様の表面疎水化方法は、
前記表面疎水化用組成物を層の表面に接触させた状態で、該層を加熱する工程を含む。
【0014】
前記表面疎水化方法において、
前記加熱する工程は、
第1の温度で前記層を加熱する工程と、
前記第1の温度よりも高い第2の温度で前記層を加熱する工程と、をさらに含むことができる。
【0015】
前記表面疎水化方法において、前記加熱する工程は、
第1の温度で前記層を加熱する工程と、
前記第1の温度よりも高い第2の温度で前記層を加熱する工程と、
前記第2の温度よりも高い第3の温度で前記層を加熱する工程と、をさらに含むことができる。
【0016】
前記表面疎水化方法において、前記層は、ケイ素原子を含有し、かつ酸素原子、炭素原子、水素原子、および窒素原子から選ばれた少なくとも1種の元素を構成元素として含むことができる。
【0017】
前記表面疎水化方法において、前記層は絶縁層であることができる。
【0018】
本発明の第3の態様の半導体装置は、
基板の上方に配置された絶縁層を含む半導体装置であって、
前記絶縁層には凹部が設けられ、
前記凹部の内壁には、前記表面疎水化方法によって形成された疎水性膜が形成された。
【0019】
本発明の第4の態様の半導体装置は、
基板の上方に配置された配線構造体を含む半導体装置であって、
前記配線構造体は、
第1の凹部に設けられたビア層と、
前記ビア層の上に配置され、かつ第2の凹部に設けられた配線層と、
を含み、
前記第1の凹部は、前記基板の上方に配置された第1の絶縁層に設けられ、
前記第2の凹部は、前記第1の絶縁層の上方に配置された第2の絶縁層に設けられ、
前記第1の凹部の内壁には、前記表面疎水化方法によって形成された疎水性膜が形成された。
【0020】
本発明の第5の態様の半導体装置は、
基板の上方に配置された配線構造体を含む半導体装置であって、
前記配線構造体は、
第1の凹部に設けられたビア層と、
前記ビア層の上に配置され、かつ第2の凹部に設けられた配線層と、
を含み、
前記第1の凹部は、前記基板の上方に配置された第1の絶縁層に設けられ、
前記第2の凹部は、前記第1の絶縁層の上方に配置された第2の絶縁層に設けられ、
前記第1の凹部の内壁には、前記表面疎水化方法によって形成された第1の疎水性膜が形成され、
前記第2の凹部の内壁には、前記表面疎水化方法によって形成された第2の疎水性膜が形成された。
【0021】
前記半導体装置において、前記ビア層および前記配線層は一体化して形成されていることができる。
【発明の効果】
【0022】
前記表面疎水化用組成物によれば、(A)上記一般式(1)で表される化合物および上記一般式(2)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含む。前記化合物は、高い疎水性を有するトリアルキルシリルアルケニル基を有し、かつ、反応効率が高い反応性置換基を複数有する。すなわち、上記一般式(1)で表される化合物は、上記一般式(1)においてX〜Xで示される基を有し、上記一般式(2)で表される化合物は、上記一般式(2)においてX,Xで示される基を有し、ここで、X〜Xは反応性置換基である。
【0023】
前記表面疎水化用組成物を層の表面に接触させた状態で加熱した場合、前記化合物は、反応効率が高い反応性置換基を複数有することにより、反応性置換基を1つのみ有する化合物と比較して、反応性置換基と結合するケイ素周辺の立体障害が小さい。このため、層中の活性基(例えばシラノール基)と前記反応性置換基とが速やかに反応した後、該反応性置換基が速やかに脱離することができる。その結果、層表面の疎水化を速やかに達成することができる。
【0024】
また、前記化合物中のトリアルキルシリルアルケニル基は、例えばHMDSと比較して分子量が小さいため、層のより深い領域まで拡散して、確実にかつ速やかに疎水化を達成することができる。
【0025】
また、前記表面疎水化方法によれば、層の表面および内部を効果的に疎水化することができ、これにより層の吸湿性の増加を防止することができるため、吸収された水分によるデバイス信頼性の低下を防ぐことができ、かつ、層の誘電率の上昇を防止することができる。
【0026】
さらに、前記半導体装置によれば、前記表面疎水化方法によって得られた疎水性膜を含む。この疎水性膜が形成された層においては、該疎水性膜によって誘電率の増加が防止されるため、デバイス信頼性の低下が防止された装置にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態に係る表面疎水化用組成物、表面疎水化方法、および半導体装置について具体的に説明する。
【0028】
1.第1実施形態(表面疎水化用組成物)
本発明の第1実施形態に係る表面疎水化用組成物は、後述する(A)成分および(B)成分を含む。前記表面疎水化用組成物は、層の表面に接触させた状態で、該層を加熱するために使用することができ、このように使用することにより、層の表面を効果的に疎水化することができる。前記表面疎水化用組成物を用いた詳しい表面疎水化方法については、後述する。
【0029】
前記表面疎水用組成物は、スピンオン組成物に適している。以下、前記表面疎水化用組成物の各成分について説明する。
【0030】
1.1.(A)成分
(A)成分は、(A)下記一般式(1)で表される化合物(以下、「化合物1」ともいう。)および下記一般式(2)で表される化合物(以下、「化合物2」ともいう。)の群から選ばれた少なくとも1種の化合物である。
【化5】

・・・・・(1)
〔式中、R〜Rは同一または異なり、アルキル基、ビニル基、またはフェニル基を示し、X〜Xは同一または異なり、−OH,−OR,−OC(=O)R(ここで、R,Rは同一または異なり、アルキル基、ベンジル基、またはフェニル基を示す。)を示し、mは1または2を示す。〕
【化6】

・・・・・(2)
〔式中、R〜Rは同一または異なり、アルキル基、ビニル基、またはフェニル基を示し、X,Xは同一または異なり、−OH,−OR10,−OC(=O)R11(ここで、R10,R11は同一または異なり、アルキル基、ベンジル基、またはフェニル基を示す。)を示し、nは1または2を示す。〕
【0031】
上記一般式(1)および(2)において、R〜R11で表されるアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、iso−プロピル基、n−プロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。
【0032】
前記表面疎水化用組成物においては、(A)成分として、上記化合物を単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
前記表面疎水化用組成物における(A)成分の含有量は、0.01〜70質量%であることが好ましく、0.05〜60質量%であることがより好ましく、0.1〜50質量%であることがさらに好ましい。前記表面疎水化用組成物における(A)成分の含有量が0.01質量%未満であると、疎水化が十分に進行しないことがあり、一方、(A)成分の含有量が70質量%を超えると、組成物の貯蔵安定性が悪くなることがある。
【0034】
化合物1の具体例としては、例えば、(トリメチルシリルメチル)トリアセトキシシラン、(トリメチルシリルメチル)トリメトキシシラン、(トリメチルシリルメチル)トリエトキシシシラン、(トリメチルシリルメチル)トリヒドロキシシシラン、(トリエチルシリルメチル)トリアセトキシシラン、(トリエチルシリルメチル)トリメトキシシラン、(トリエチルシリルメチル)トリエトキシシラン、(トリエチルシリルメチル)トリヒドロキシシシラン、(トリメチルシリルエチル)トリアセトキシシラン、(トリメチルシリルエチル)トリメトキシシラン、(トリメチルシリルエチル)トリエトキシシラン、(トリメチルシリルエチル)トリヒドロキシシシラン、(トリエチルシリルエチル)トリアセトキシシラン、(トリエチルシリルエチル)トリメトキシシラン、(トリエチルシリルエチル)トリエトキシシラン、(トリエチルシリルエチル)トリヒドロキシシシラン、(ジメチルフェニルシリルメチル)トリアセトキシシラン、(ジメチルフェニルシリルメチル)トリメトキシシランが挙げられる。
【0035】
化合物2の具体例としては、例えば、(トリメチルシリルメチル)メチルジアセトキシシラン、(トリメチルシリルメチル)メチルジエトキシシシラン、(トリメチルシリルメチル)メチルジヒドロキシシシラン、(トリエチルシリルメチル)メチルジアセトキシシラン、(トリエチルシリルメチル)メチルジメトキシシラン、(トリエチルシリルメチル)メチルジエトキシシラン、(トリエチルシリルメチル)メチルジヒドロキシシシラン、(トリメチルシリルエチル)メチルジアセトキシシラン、(トリメチルシリルエチル)メチルジメトキシシラン、(トリメチルシリルエチル)メチルジエトキシシラン、(トリメチルシリルエチル)メチルジヒドロキシシシラン、(トリエチルシリルエチル)メチルジアセトキシシラン、(トリエチルシリルエチル)メチルジメトキシシラン、(トリエチルシリルエチル)メチルジエトキシシラン、(トリエチルシリルエチル)メチルジヒドロキシシシラン、(ジメチルフェニルシリルメチル)メチルジアセトキシシラン、(ジメチルフェニルシリルメチル)トリメトキシシランが挙げられる。
【0036】
1.2.(B)成分
(B)成分は、沸点が30〜350℃である溶媒である。
【0037】
(A)成分がアシルオキシ基を有する化合物である場合(例えば、上記一般式(1)において、X〜Xの少なくとも1つが−OC(=O)Rである場合や、上記一般式(2)において、X,Xの少なくとも一方が−OC(=O)R11である場合)には、溶媒との反応を避けるため、(B)成分として、非プロトン性溶媒を用いる。
【0038】
また、(A)成分がアシルオキシ基を有さない場合、(B)溶媒として、非プロトン性溶媒およびプロトン系溶媒のいずれも用いることができる。
【0039】
(B)成分は、下記に例示する溶媒を1種または2種以上組み合わせて使用することができる。より具体的には、(B)成分として、プロトン性溶媒および非プロトン性溶媒が挙げられる。プロトン性溶媒としては、アルコール系溶媒が挙げられる。非プロトン性溶媒としては、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒または後述するその他の非プロトン性溶媒が挙げられる。
【0040】
アルコール系溶媒としては、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどが例示できる。
【0041】
ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン、フェンチョンなどのほか、アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、3,5−オクタンジオン、2,4−ノナンジオン、3,5−ノナンジオン、5−メチル−2,4−ヘキサンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ヘプタンジオンなどのβ−ジケトン類などが挙げられる。
【0042】
エステル系溶媒としては、ジエチルカーボネート、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルなどが挙げられる。
【0043】
エーテル系溶媒としては、エチルエーテル、i−プロピルエーテル、n−ブチルエーテル、n−ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテルなどが挙げられる。
【0044】
アミド系溶媒としては、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、N−ホルミルピロリジン、N−アセチルモルホリン、N−アセチルピペリジン、N−アセチルピロリジンなどが挙げられる。
【0045】
他の非プロトン性溶媒としては、脂肪族炭化水素系溶媒(例えば、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、i−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン)、芳香族炭化水素系溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、メシチレン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンセン、i−プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−i−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン、トリメチルベンゼン)、含硫黄系溶媒(例えば、硫化ジメチル、硫化ジエチル、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−プロパンスルトン)、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N,N’,N’−テトラエチルスルファミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチルモルホロン、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−メチル−3−ピロリン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N,N−ジメチルピペラジン、N−メチルイミダゾール、N−メチル−4−ピペリドン、N−メチル−2−ピペリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチルテトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノンなどが挙げられる。
【0046】
非プロトン系溶媒の中では、酢酸ブチル、ジエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤およびメシチレンが好ましく、アルコール系溶剤としては、プロピレングリコールモノプロピルエーテルなどが好ましい。
【0047】
前記表面疎水化用組成物における(B)成分の含有量は、30〜99.99質量%であることが好ましく、40〜99.95質量%であることがより好ましく、50〜99.9質量%であることがさらに好ましい。前記表面疎水化用組成物における(B)成分の含有量が30質量%未満であると、均一な塗布を行なうことが難しく、一方、(B)成分の含有量が99.99質量%を超えると、スピンコーティング後に膜上に組成物が残りにくくなる。
【0048】
2.第2実施形態(表面疎水化方法)
2.1.表面疎水化方法
本発明の第2実施形態に係る表面疎水化方法は、上記第1実施形態に係る表面疎水化用組成物を層の表面に接触させた状態で、該層を加熱する工程を含む。
【0049】
ここで、前記加熱は100℃以上300℃未満の温度範囲で行なうことが好ましい。加熱の温度範囲が100℃未満であると、十分な脱水効果が得られないことがあり、一方、加熱処理の温度範囲が300℃以上であると、層内部でシラノール基同士の縮合が起こり、前記表面疎水化用組成物中の(A)成分と反応可能なシラノール基が減少するため、疎水性膜が十分に形成されないことがある。
【0050】
また、本実施形態に係る表面疎水化方法を施す層の表面は、エッチングおよび/またはアッシングにより得られたものであってもよい。さらに、前記層は例えば絶縁層であることができ、シリカ系膜であることが好ましい。
【0051】
前記層がシリカ系膜である場合、ケイ素原子を含有し、かつ酸素原子、炭素原子、水素原子、および窒素原子から選ばれた少なくとも1種の元素を構成元素として含むことができる。この場合、前記層の表面にシラノール基が存在することがある。この場合において、前記表面疎水化用組成物を前記層の表面に接触させることにより、前記表面疎水化用組成物中の(A)成分がダメージ部位に浸透してシラノールと反応することにより、層の表面および内部をより効果的に疎水化することができる。なお、層を加熱する工程については後述する。
【0052】
2.2.表面疎水化方法の対象となる層
前記表面疎水化方法の対象となる層としては、例えばケイ素原子を主構成元素とする層が挙げられる。ケイ素原子を主構成要素とする層は、半導体装置や液晶表示装置、有機EL装置などの電子デバイスに広く用いられている。また、ケイ素原子を主構成元素とする層は電子産業のみならず、例えば、自動車産業、光学産業、バイオ産業等の分野で使用されている。
【0053】
例えば、半導体装置の絶縁層として用いられるケイ素原子を主構成元素とする層は、ケイ素原子のほかに、酸素原子、窒素原子、炭素原子、水素原子、フッ素原子、ホウ素原子、リン原子等を構成元素として含むことができ、このような層としては、より具体的には、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、および後述する絶縁層が例示できる。これらの層は、半導体装置用層間絶縁層、半導体装置の表面コート膜などの保護層、多層レジストを用いた半導体作製工程の中間層、多層配線基板の層間絶縁層、液晶表示装置用の保護層や絶縁層などの用途に有用である。
【0054】
ケイ素原子を主構成要素とする層の製造方法は特に限定されないが、代表的なものとして、CVD法(例えば、プラズマCVD法)およびSOG法(Spin on Glass)が挙げられる。なかでも、SOG法により製造される絶縁層は、より微細化された半導体装置の層間絶縁層として用いられるようになってきている。この絶縁層は例えば、ケイ素原子を含有し、かつ酸素原子、炭素原子、水素原子、および窒素原子から選ばれた少なくとも1種の元素を構成元素として含むことができる。特に、本実施形態に係る表面疎水化方法を、ケイ素原子、酸素原子、炭素原子、および水素原子を主成分とするLow−k膜に施すことにより、誘電率の上昇を防止でき、かつ、膜の脱ガス特性および電気的特性を維持することができる。
【0055】
2.3.表面疎水化方法の具体例
次に、本実施形態に係る表面疎水化方法について、図1〜図5を参照して具体的に説明する。図1は、本実施形態に係る表面疎水化方法を用いて製造された半導体装置を模式的に示す図であり、図2〜図5は、図1に示す半導体装置の一製造工程(本実施の形態に係る表面疎水化方法)を模式的に示す断面図である。
【0056】
本実施形態に係る表面疎水化方法が施される層は、耐吸湿性に優れ、かつ低い比誘電率を示すことから、LSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D−RDRAMなどの半導体装置用層間絶縁層、半導体装置の表面コート膜などの保護層、多層レジストを用いた半導体作製工程の中間層、多層配線基板の層間絶縁層、液晶表示装置用の保護層や絶縁層などの用途に有用である。
【0057】
なお、ここでは半導体装置に含まれる絶縁層について、本実施形態に係る表面疎水化方法を施す場合について説明するが、本実施形態に係る表面疎水化方法を施す層は半導体装置の絶縁層に限定されるわけではなく、半導体装置以外のデバイスに含まれる層にも同様に適用することができる。
【0058】
図1に示す半導体装置は、基板(半導体基板)10の上方に配置された絶縁層20を含む。この絶縁層20には凹部22が設けられ、凹部22の内壁22aには疎水性膜24が形成されている。この疎水性膜24は、上述の本実施形態に係る表面疎水化方法にしたがって、(A)成分および(B)成分を含む表面疎水化用組成物を凹部22の内壁22aに接触させて得られる。絶縁層20はシリカ系膜であり、換言すれば、ケイ素原子および酸素原子を構成元素として含む層である。
【0059】
図1に示す半導体装置は以下の工程により製造することができる。まず、基板10の上方に絶縁層20を形成する(図2参照)。絶縁層20の形成方法は、上述の方法を用いることができる。
【0060】
次に、公知のフォトリソグラフィ法により、所定のパターンのレジスト層R1を絶縁層20上に形成した後、このレジスト層R1をマスクとして、絶縁層20をエッチングする(図3参照)。エッチングとしては、公知の方法(RIE(反応性イオンエッチング)などのドライエッチングまたはウエットエッチング)を用いることができる。この際、凹部22の内壁22aはエッチングにより表面にダメージが生じる。より具体的には、エッチング時に使用されるエッチャントにより、凹部22の内壁22aの表面がダメージを受けて、絶縁層20の表面にシラノール基(−SiOH)が形成される。特に、反応性イオンエッチングを行なう場合、エッチャントとして使用される反応性イオンによって、凹部22の内壁22aの表面にシラノール基が形成されやすい。
【0061】
次いで、アッシングによりレジスト層R1を除去する(図4参照)。アッシング方法としては例えば、酸素プラズマを用いたプラズマアッシング、オゾンを用いたオゾンアッシング、ウエットアッシングが使用可能である。このアッシング工程によっても、凹部22の内壁22aの表面がダメージを受けて、この表面にシラノール基が形成される。
【0062】
次いで、上述の第1実施形態に係る表面疎水化用組成物を層の表面に接触させた状態で、該層を加熱する工程を行なうことにより、凹部22の内壁22aに疎水性膜24が形成される(図5参照)。
【0063】
より具体的には、まず、前記表面疎水化用組成物を絶縁層20に接触させて、凹部22の内壁22aの表面に形成されたシラノール基と、前記表面疎水化用組成物中の(A)成分とを反応させることにより、シラノール基の水酸基(−OH)が疎水性基で置換される。以上により、疎水性膜24が形成される。この疎水性膜24が形成されることにより、凹部22の内壁22aの表面が疎水化される。
【0064】
前記表面疎水化用組成物を表面に接触させる方法としては特に限定されないが、例えば、スピンコートによる塗布、スプレーによる噴霧、気化による蒸着、ディッピングが挙げられる。
【0065】
さらに、凹部22に導電層26が形成されることにより、図1に示す半導体装置が得られる。
【0066】
図5に示す工程において疎水性膜24が形成されることにより、凹部22の内壁22aの表面から水分が絶縁層20に吸収されるのを防止することができる。これにより、絶縁層20中の水分の増加を防止することができるため、半導体装置の信頼性を維持することができる。特に、絶縁層20が絶縁層である場合、絶縁層20中の水分が増加すると誘電率が上昇するため、低誘電膜としての機能を発揮しえなくなることがある。これに対して、疎水性膜24が形成されることにより、絶縁層20中の水分の増加を防止することができるため、低誘電膜としての機能を維持することができる。
【0067】
ここで、疎水性膜24を形成する際に、上記第1および第2の表面疎水化用組成物を前記表面に接触させた後、絶縁層20を加熱する工程をさらに含むことができる。この工程によれば、(A)成分と、凹部22の内壁22aの表面のシラノール基との反応をさらに促進させることができるため、疎水成膜24をより容易に形成することができる。この場合、前記加熱する工程は、1〜3段階の温度で加熱する工程を含むことができる。
【0068】
加熱工程が1段階の場合、例えば、150〜350℃にて15分間以内の加熱を行なうことができる。
【0069】
加熱工程が2段階である場合、前記加熱する工程は、第1の温度で前記層(絶縁層20)を加熱する工程と、第1の温度よりも高い第2の温度で前記層を加熱する工程とを含むことができる。例えば、1段階目の加熱反応を第1の温度(50〜250℃のいずれかの温度)にて5分間以内の加熱を行ない、2段階目の加熱反応を第2の温度(150〜350℃のいずれかの温度)にて10分間以内の加熱を行なうことができる。
【0070】
加熱工程が3段階である場合、前記加熱する工程は、第1の温度で前記層(絶縁層20)を加熱する工程と、第1の温度よりも高い第2の温度で前記層を加熱する工程と、第2の温度よりも高い第3の温度で前記層を加熱する工程とを含むことができる。例えば、1段階目の加熱反応を第1の温度(50〜250℃のいずれかの温度)にて5分間以内の加熱を行ない、2段階目の加熱反応を第2の温度(150〜300℃のいずれかの温度)にて5分間以内の加熱を行ない、3段階目の加熱反応を第3の温度(250〜350℃のいずれかの温度)にて5分間以内の加熱を行なうことができる。
【0071】
本実施形態に係る表面疎水化方法においては、上記1〜3段階の加熱工程を行なうことが好ましい。1段階の加熱工程では、(A)成分とシラノール基との反応と、未反応の(A)成分の蒸発(あるいは分解)とが同時に起こる温度に設定するのがより好ましい。一方、2段階の加熱工程では、1段階目の加熱工程で(A)成分とシラノール基との反応、2段階目の加熱工程で未反応の(A)成分の蒸発(あるいは分解)が起こる温度に設定するのがより好ましい。一方、3段階の加熱工程では、1段階目の加熱工程で(A)成分とシラノール基との反応、2段階目の加熱工程では、(A)成分とシラノール基との反応、ならびに、(A)成分とシラノール基との反応生成物と、シラノール基との反応、3段階目の加熱工程では、未反応の(A)成分の蒸発(あるいは分解)が起こる温度に設定するのがより好ましい。以上のように加熱工程を設定することにより、層の表面および内部をより効果的に疎水化することができる。本実施形態においては、上記3段階の加熱工程を行なうことがより好ましい。
【0072】
加熱方法としては、ホットプレート、オーブン、ファーネスなどを使用することができ、加熱雰囲気としては、大気下、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、真空下、酸素濃度をコントロールした減圧下などで行なうことができるが、特に窒素雰囲気が好ましい。
【0073】
なお、ここでは、絶縁層20の表面がエッチングおよびアッシングの両方に曝された場合について説明したが、エッチングおよびアッシングのいずれか一方に曝された表面についても、本実施形態に係る表面疎水化方法を適用できるのはいうまでもない。また、エッチングやアッシング以外の工程であっても、何らかの工程(例えばプラズマを用いた加工プロセス)によって、絶縁層の表面が化学的および物理的ダメージを受けた場合に、本実施形態に係る表面疎水化方法によって、前記表面疎水化用組成物を該表面に適用することができる。
【0074】
上記のプラズマを用いた加工プロセスとしては、特に限定されるわけではないが、例えばプラズマエッチング、プラズマアッシング、プラズマCVD法、プラズマドーピング、プラズマを用いた表面処理、プラズマアニール、プラズマ酸化等が挙げられる。本実施形態に係る表面疎水化方法によれば、このような処理によりダメージを受けた表面を疎水化することができる。
【0075】
本実施形態に係る表面疎水化方法によれば、(A)成分および(B)成分を含む表面疎水化用組成物を絶縁層20(凹部22の内壁22a)の表面に接触させて、絶縁層20を加熱する工程を含むことにより、(A)成分が凹部22の内壁22aの表面近傍においてシラノール基が存在する部位に速やかに浸透し、シラノール基と速やかに反応して、シラノール基を疎水性基で置換することができる。これにより、絶縁層20の表面を確実に疎水化することができる。
【0076】
なお、(A)成分は、(A)成分が絶縁層20の表面に接触する前に蒸発せず、あるいは接触した後でも反応する前に蒸発するということがない。また、絶縁層20から除去することも容易である。
【0077】
3.第3実施形態(半導体装置)
次に、上記第2実施形態に係る表面疎水化方法を適用した、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の一具体例について説明する。
【0078】
3.1.第1の具体例の半導体装置
図6は、本実施形態に係る半導体装置の第1の具体例に係る配線構造体100を模式的に示す断面図である。この配線構造体100は半導体装置の配線層およびビア層として機能する。
【0079】
より具体的には、この配線構造体100は、デュアルダマシン法によって形成された導電層90を有する。より具体的には、この導電層90は、ビア層92と、ビア層92の上に連続して設けられた配線層94とを含む。ビア層92は、絶縁層(第1の絶縁層)120に設けられた第1の凹部72に埋め込まれており、配線層94は、有機系絶縁層(第2の絶縁層)220に設けられた第2の凹部74に埋め込まれている。なお、この配線層94の設置位置は特に限定されず、第1層目の配線層または第2層目以上の配線層であってもよい。また、ここでは、上記第2実施形態に係る表面疎水化方法が、ダマシン法によって形成される配線構造体中の絶縁層の形成に適用される例について示したが、上記第2実施形態に係る表面疎水化方法は、ダマシン法によって形成される配線構造体の製造方法にのみ適用されるわけではなく、半導体装置中のあらゆる層の製造方法に適用可能である。
【0080】
図6に示す半導体装置において、配線構造体100は、半導体基板110の上方に配置され、第1の凹部72に設けられたビア層92と、ビア層92の上に配置され、かつ第2の凹部74に設けられた配線層94とを含む。第1の凹部72は、基板10の上方に配置された絶縁層(第1の絶縁層)120に設けられている。また、第2の凹部74は、第1の絶縁層120の上方に配置された絶縁層(第2の絶縁層)220に設けられている。第1の凹部72の内壁72aには疎水性膜124が形成されている。この疎水性膜124は、上記第2実施形態に係る表面疎水化方法にしたがって、上記第1実施形態に係る表面疎水化用組成物を第1の凹部72の内壁72aに接触させる工程、および第1の絶縁層120を加熱する工程により得ることができる。
【0081】
第1の絶縁層120は例えば、MSQ(methylsilsesquioxane)絶縁層であり、第2絶縁層220は例えば、有機系絶縁層である。半導体基板110の材質は特に限定されないが、例えばシリコン基板、サファイア基板、GaAsなどの化合物半導体基板である。第1の絶縁層120の上には、キャップ層40を介して第2の絶縁層220が積層されている。また、半導体基板110上には拡散防止層82が設けられている。また、第1の凹部72の底面において、拡散防止層82と導電層90とが接している。なお、図1に示すように、第1の凹部72および第2の凹部74の内壁はバリア層80で覆われていてもよい。すなわち、この場合、第1の絶縁層120とビア層92は、疎水性膜124およびバリア層80を介して隣り合っている。また、第2の絶縁層220と配線層94はバリア層80を介して隣り合っている。第2の絶縁層220の上にキャップ層42を設けることができる。
【0082】
第1の絶縁層120に用いられるMSQ絶縁層としては、例えば、ケイ素原子、酸素原子、炭素原子を構成元素とするSOG膜が挙げられる。
【0083】
第2の絶縁層220に用いられる有機系絶縁層としては、例えば、ポリアリーレン、ポリアリーレンエーテル、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール,ポリトリアゾール、ポリフェニルキノキサリン、ポリキノリン,ポリキノキサリンなどより選ばれた有機ポリマーが挙げられ、特にポリアリーレン、ポリアリーレンエーテルからなる有機絶縁層が好ましい。また、第2の絶縁層220として、上記有機ポリマーを1種あるいは2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0084】
この配線構造体100は例えば以下の方法により形成することができる。図6〜図11はそれぞれ、配線構造体100の一製造工程を模式的に示す断面図である。
【0085】
まず、半導体基板110の上方に拡散防止層82を形成した後、この拡散防止層82の上に例えばSOG法により第1の絶縁層120を形成する(図7参照)。次に、第1の絶縁層120上にストッパ層40、第2の絶縁層220、およびキャップ層42を順に形成する(図7参照)。なお、第2の絶縁層220は例えば、第1の絶縁層100と同様に塗布により形成することができる。この場合、一台の装置(スピンオンプロセス装置)のみで積層構造を形成することができるため、半導体製造時のスループット向上に大きく寄与する。
【0086】
次に、第1の絶縁層120、ストッパ層40、第2の絶縁層220、およびキャップ層42を貫通する開口部(スルーホール)70を形成する(図8参照)。具体的には、まず、キャップ層42上にレジスト層(図示せず)を成膜した後、公知のフォトリソグラフィ工程によって、所定のパターンのレジスト層R10を形成する。このレジスト層R10は、開口部70(図8参照)を形成するためのパターンを有する。次いで、このレジスト層R10をマスクとして、第1の絶縁層120、ストッパ層40、第2の絶縁層220、およびキャップ層42をエッチングすることにより、開口部70を形成する(図8参照)。第1の絶縁層120はMSQ絶縁層からなるため、このエッチング工程によって、図8に示すように、開口部70の内壁の表面はダメージを受けて、シラノール基が生成する。次いで、アッシングによってレジスト層R10を除去する。上述のように、このアッシング工程によって、開口部70の内壁の表面はさらにダメージを受けて、シラノール基がさらに生成する。
【0087】
次いで、第1の絶縁層120に第1の凹部72を、第2の絶縁層220に第2の凹部74をそれぞれ形成する(図9参照)。具体的には、まず、キャップ層42上にレジスト層(図示せず)を成膜した後、公知のフォトリソグラフィ工程によって、所定のパターンのレジスト層R11を形成する。このレジスト層R11は、第2の凹部74を形成するためのパターンを有する。次いで、このレジスト層R11をマスクとして、プラズマを用いたエッチングによりキャップ層42および有機系絶縁層220をパターニングして、第1の凹部72および第2の凹部74を形成する。その後、アッシングなどによりレジスト層R11を除去する。なお、まず第2の絶縁層220をパターニングして第2の凹部74を形成した後、ストッパ層40および第1の絶縁層120をパターニングして第1の凹部72を形成してもよい。
【0088】
キャップ層42および第1の絶縁層120のエッチング方法としては、各種のプラズマを用いたエッチング方法(例えば、異方性プラズマエッチング、反応性プラズマエッチング,誘導結合型プラズマエッチング,ECRプラズマエッチング)などを用いることができる。また、第2の絶縁層220のエッチング方法およびレジスト層R10,R11のアッシング方法としては、酸素プラズマ処理、アンモニアプラズマ処理、水素/窒素混合ガスプラズマ処理、および窒素/酸素混合ガスを主成分とするドライエッチングプロセスが例示できる。
【0089】
次に、第1の凹部72の内壁72aの表面に、上記第2実施形態に係る表面疎水化方法にしたがって、上記第1実施形態に係る表面疎水化用組成物を用いて、第1の凹部72の内壁72aに疎水性膜124を形成する(図10参照)。この工程における手順は例えば、上述の「2.3.表面疎水化方法の具体例」の欄に記載された方法を用いることができる。
【0090】
次いで、例えばCVD法やスパッタリング法を用いて、第1の凹部72および第2の凹部74の内壁にバリア層80を形成する(図11参照)。続いて、第1の凹部72および第2の凹部74に導電層90(図6参照)を形成する。具体的には、例えばPVD法にて銅シード層(図示せず)を形成した後、メッキ法によって第1の凹部72および第2の凹部74に導電性材料90aを埋め込む(図11参照)。次いで、CMPによりこの導電性材料90aを平坦化する。これにより、導電性材料90aのうちキャップ層42より上に形成された部分が除去されて、導電層90が得られる(図6参照)。すなわち、第1の凹部72にはビア層92が形成され、第2の凹部74には配線層94が形成される。次いで、必要に応じて、導電層90およびキャップ層42の上にストッパ層84を形成する。以上の工程により、配線構造体100が得られる(図6参照)。
【0091】
この配線構造体100では、第1の絶縁層120に設けられた第1の凹部72の内壁72aに疎水性膜124が形成されているため、第1の凹部72の内壁72aから水分が第1の絶縁層120に入り込むことにより、第1の絶縁層120の吸湿性が上がるのを防止することができる。これにより、第1の絶縁層120の低誘電性を保持することができるため、信頼性に優れた半導体装置を得ることができる。
【0092】
また、第1の絶縁層120中のHOを除去した後、上記表面疎水化用組成物を第1の絶縁層120に接触させることにより、第1の絶縁層120の誘電率を回復することができ、かつ、バリア層80の成膜する際に、第1の絶縁層120に残存したHOが脱ガスすることにより生じる成膜不良を防止することができる。
【0093】
3.2.第2の具体例の半導体装置
次に、上記第2実施形態に係る表面疎水化方法を適用した本実施形態に係る半導体装置の別の一具体例について説明する。
【0094】
図12は、本実施形態に係る半導体装置の第2の具体例に係る配線構造体200を模式的に示す断面図である。この配線構造体200は、半導体装置の配線層およびビア層として機能する。なお、図12に示す半導体装置は、上述の第1の具体例に係る半導体装置(図6参照)と比較して、有機系絶縁層である第2の絶縁層220のかわりに無機系の第2の絶縁層320が設けられている点、ならびに、第1の絶縁層120と第2の絶縁層320との間にキャップ層44が設けられている点が異なる。
【0095】
より具体的には、図12に示す半導体装置は、基板110の上方に配置された配線構造体200を含み、配線構造体200は、第1の凹部72に設けられたビア層92と、ビア層92の上に配置され、かつ第2の凹部74に設けられた配線層94とを含む。第1の凹部72は、基板110の上方に配置された第1の絶縁層120に設けられている。第2の凹部74は、第1の絶縁層120の上方に配置された第2の絶縁層320に設けられている。また、第1の凹部72の内壁72aには疎水性膜(第1の疎水性膜)124が形成され、第2の凹部74の内壁74aには疎水性膜(第2の疎水性膜)224が形成されている。第1の疎水性膜124は、上記第2実施形態に係る表面疎水化方法にしたがって、上記第1実施形態に係る表面疎水化用組成物を第1の凹部72の内壁72aに接触させた状態で、第1の絶縁層120を加熱する工程により得ることができる。また、第2の疎水性膜224は、上記第1実施形態に係る表面疎水化用組成物を第2の凹部72の内壁72aに接触させた状態で、第2の絶縁層320を加熱する工程により得ることができる。
【0096】
第2の絶縁層320は例えば、第1の絶縁層120と同様に、MSQ絶縁層からなることができる。この場合、第2の絶縁層320は第1の絶縁層120と同様の工程にて製造することができる。
【0097】
図12に示す半導体装置は、第2の凹部74の内壁74aに疎水性膜224が形成される点以外は、上述の第1の具体例に係る半導体装置120と同様の製造工程により製造することができる。以下、上述の第1の具体例に係る半導体装置と同様の製造工程については説明を省略し、疎水性膜224の形成工程についてのみ説明する。
【0098】
第2の凹部74を形成するために行なわれるエッチング工程およびアッシング工程によって、第2の絶縁層320に設けられた第2の凹部74の内壁74aの表面は、第1の絶縁層120に設けられた第1の凹部72の内壁72aの表面と同様にダメージを受けて、シラノール基が生成する(図13参照)。
【0099】
次いで、上記第1実施形態に係る表面疎水化用組成物を用いて、第2の凹部74の内壁74aの表面に対して、上記第2実施形態に係る表面疎水化方法を適用するとともに、第2の凹部74の内壁74aの表面に対しても、上記第2実施形態に係る表面疎水化方法を適用する。これにより、第1の凹部72の内壁72aに疎水性膜124が形成されるとともに、第2の凹部74の内壁74aに疎水性膜224が形成される(図14参照)。この工程によって、第2の凹部74の内壁74aからの水分が吸収されるのを防止することができるため、第2の絶縁層320の吸湿性の増加を防止することができる。よって、第2の絶縁層320の低誘電性を保持することができるため、信頼性に優れた半導体装置を得ることができる。また、第1の凹部72の内壁72aの表面と、第2の凹部74の内壁74aの表面とを同一工程にて疎水化処理することができるため、疎水化処理を効率よく行なうことができる。
【0100】
4.本発明の特徴
本発明の特徴を、層の表面の改質に関する公知の技術と比較しながら説明する。層の表面を改質する技術は、例えば、上述した特許文献1〜5および非特許文献1,2に開示されている。
【0101】
(i)このうち、特許文献2(米国特許第5,504,042号)の明細書には、フッ化アンモニウムガスを使用して多孔性構造を改善する方法が開示されている。また、特許文献4(米国特許第6,700,200号)の明細書には、フッ化アンモニウムガスを使用してSOG法により得られた層の表面を処理する方法が開示されている。しかしながら、フッ化アンモニウム自身もしくは副生成物による容器や配管の腐食に細心の注意を払う必要があり、必要に応じて容器や配管を交換しなければならないため、製造コストが増加する可能性が高い。また、フッ素化された表面は、例えばその後の工程で、例えばバリアメタルにより前記表面を被覆する場合、バリアメタルとの接着性に問題が生じる可能性が高い。
【0102】
これに対して、上記第1実施形態に係る表面疎水化用組成物を用いて層の表面を疎水化する場合、副生成物が発生しないので、容器等に注意を払う必要がない。このため、簡便に前記表面を疎水化することができる。また、その後の工程でバリアメタルにより前記表面を被覆する場合、予期せぬ副反応が生じることがない。したがって、例えばダマシンプロセスのように、バリアメタルを成膜する工程を含む場合、上記第1実施形態に係る表面疎水化用組成物を用いて表面を疎水化することにより、バリアメタルと前記表面との接着性を良好に保つことができる。
【0103】
(ii)また、特許文献3(米国特許第6,548,113号)の明細書には、ハロゲン化有機シラン(例えばTMSI)を使用して、多孔性シリカ膜を脱水素化およびアルキル化する方法が開示されている。ハロゲン化有機シランを用いる場合、反応後にハロゲン化水素が発生する。このハロゲン化水素は反応性が高いため、他の物質と反応してハロゲン化物が生じることがある。例えば、半導体装置の製造プロセス中に銅配線を形成する工程を含む場合、特許文献3に記載された方法を用いて脱水素化およびアルキル化する際には、ビアの底部に銅を露出させた後にプロセスを行なう可能性が高く、この場合、発生したハロゲン化物のように金属腐食性のある反応生成物が銅配線に付着する可能性がある。
【0104】
これに対して、上記第1実施形態に係る表面疎水化方法を用いて表面を疎水化する場合、ハロゲン化水素が発生しないので、予期せぬ副反応が生じることがない。したがって、例えばダマシンプロセスのように、銅配線を形成する工程を含む場合、上記第1実施形態に係る表面疎水化用組成物を用いて表面を疎水化することにより、金属腐食性のある反応生成物が銅配線に付着することがないため、配線の電気的接続を良好に保つことができる。
【0105】
(iii)さらに、非特許文献1(フィリップ ジー クラーク(Philip G. Clerk)、外2名,多孔性MSQフィルムの洗浄およびk値の回復(Cleaning and Restoring k Valueof Porous MSQ Films),セミコンダクターインターナショナル(Semiconductor International),2003年8月,46−52頁)および特許文献1,3(米国特許第6,383,466号,米国特許第6,548,113号)の明細書では、HMDS(hexamethyldisilazane)を用いた処理方法が開示されている。しかしながら、後述する比較例1に示されるように、本発明者が行なった実験では、層の表面におけるHDMSのシラノール基との反応性はそれほど高くないことが明らかになった。その理由として、HMDSは非常に疎水性に富んでおり、かつ、分子サイズが比較的大きいため、親水性のシラノール基を有する部位に拡散しにくいことが考えられる。
【0106】
これに対して、上記第1実施形態に係る表面疎水化用組成物において使用する(A)成分は比較的低分子であり、かつ、HDMSと比較して疎水性が低いことから、親水性のシラノール基を有する部分にスムーズに拡散することができる。これにより、(A)成分が層の表面から深部まで拡散し、かつ、効率良くシラノール基と反応することができる。したがって、(A)成分は、層の内壁のような微細な領域へもスムーズに拡散することができるため、層の内壁のような微細な領域においても、表面の疎水性を高めることができる。
【0107】
(iv)また、特許文献5(特許公表公報第2004−511896号)の明細書では、アセトキシトリメチルシランを用いた表面疎水化方法が開示されている。しかしながら、この方法で使用されるアセトキシトリメチルシランは層の内部まで浸透できず、シラノール基との反応は層の表面に留まるため、十分な疎水化を達成することができない。その理由としては、アセトキシトリメチルシランは、立体的に嵩高いアルキル基を3つ有するため、アセトキシトリメチルシランのアセトキシ基が膜中のシラノール基と反応しにくいうえに、アセトキシトリメチルシランは1分子中に反応性置換基(アセトキシ基)を1つのみ有することが挙げられる。
【0108】
これに対して、上記第1実施形態に係る表面疎水化用組成物において使用する(A)成分は、高い疎水性を有するトリアルキルシリルアルケニル基を有し、かつ、反応効率が高い反応性置換基を複数有する。すなわち、化合物1は、上記一般式(1)においてX〜Xで示される基を有し、化合物2は、上記一般式(2)においてX,Xで示される基を有し、ここで、X〜Xが反応性置換基である。
【0109】
前記表面疎水化用組成物を層の表面に接触させた状態で加熱した場合、(A)成分は、反応効率が高い反応性置換基を複数有することにより、反応性置換基を1つのみ有するアセトキシトリメチルシランと比較して、反応性置換基と結合するケイ素周辺の立体障害が小さい。このため、層中の活性基(例えばシラノール基)と前記反応性置換基とが速やかに反応した後、該反応性置換基が速やかに脱離することができる。その結果、層表面の疎水化を速やかに達成することができる。また、(A)成分は、特許文献5に記載のアセトキシトリメチルシランと同様にトリアルキルシリル部位を有するため、アセトキシトリメチルシランと同等以上の疎水性を維持しつつ、かつ、(A)成分の反応性置換基の数は、アセトキシトリメチルシランの反応性置換基の数よりも多いため、Si−O−Si結合が切れにくく、疎水化処理後の半導体プロセスにおいて、アセトキシトリメチルシランと比較して疎水性の維持がより容易である。
【0110】
したがって、上記第1実施形態に係る表面疎水化用組成物を用いて層の表面を疎水化することにより、(A)成分が、層の表面近傍に存在するダメージ部位だけでなく、層のより深い領域(例えば、層中のポア近傍)に存在するダメージ部位へと速やかに浸透して、ダメージ部位に存在するシラノール基と速やかに反応することができる。その結果、層の表面および内部を効果的に疎水化することができる。さらに、層の吸湿性の増加を防止することができるため、吸収された水分によるデバイス信頼性の低下を防ぐことができ、かつ、層の誘電率の上昇を防止することができる。
【0111】
(v)したがって、上記第1実施形態に係る表面疎水化用組成物を用いて層の表面を疎水化することにより、シラノール基の生成に起因する問題(例えば、脱ガス量の増加、誘電率の上昇、リーク電流等の電気的特性の低下)の発生を防止することができる。このため、例えば、上記第2実施形態に係る表面疎水化方法を絶縁層に適用することにより、絶縁層の低誘電率および電気的特性を維持することができ、かつ、絶縁層の脱ガス特性を高めることができる。よって、上記第1実施形態に係る表面疎水化用組成物は、低誘電率が求められる絶縁層(Low−k膜)の表面の疎水化に有用であり、特に、Low−k膜中のポア近傍において、誘電率の維持、ならびにリーク電流および脱ガス量の低減を図ることができる点で有用である。
【0112】
5.実施例
次に、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、以下の記載は、本発明の態様を概括的に示すものであり、特に理由なく、かかる記載により本発明は限定されるものではない。また、実施例中における各評価は、次のようにして測定された。
【0113】
5.1.評価方法
5.1,1.ブランケットフィルム評価
シリコン基板(図15の8インチシリコンウエハ310)上に、スピンコート法により膜厚100〜500[nm]で成膜した後焼成して得られた絶縁層(膜1;図15の絶縁層(Low−k膜)420)に対して、エッチングガスとしてNHガスを用いた反応性イオンエッチング(RIE)を行ない、絶縁層の表面にダメージを与えて膜2(図16参照)を作製した。次いで、後述する方法により得られた実験例1〜3および比較例1,2の組成物をそれぞれ膜2上にスピンコートした後、ホットプレートにて加熱処理を行ない、疎水性膜424を有する絶縁層(膜3;図17参照)を作製した。
【0114】
RIE処理後の絶縁層(膜2)の比誘電率(=k)、ならびに組成物接触後の絶縁層(膜3)の比誘電率(=k)および脱ガス量を評価した。脱ガス量は、昇温脱離ガス分析装置で450℃まで加熱したときに脱離した水分量を測定した。
【0115】
脱ガス量評価は下記の基準で行った。
A: 脱離水分量がRIE処理後の絶縁層(膜2)の30%以下
B: 脱離水分量がRIE処理後の絶縁層(膜2)の30%以上
【0116】
また、誘電率は、横川・ヒューレットパッカード(株)製のHP16451B電極およびHP4284AプレシジョンLCRメータを用いて、10kHzにおける容量値から算出した。
【0117】
5.1.2.パターンウエハ評価
SOG法により膜厚130[nm]の絶縁層(ポーラスSiOCH)をシリコンウエハ(基板)上に成膜した後、パターンレジストをフォトリソグラフィ法により、銅シングルダマシン構造のパターンウエハ(図18参照)を作成した。図18において、配線層190は銅配線層、絶縁層520はケイ素原子,酸素原子,炭素原子を構成元素として含む層、基板310はシリコンウエハをそれぞれ示す。また、図18において、凹部170は、上記2.1.1.で行なった方法と同様に、エッチング(RIE)によるパターニングにより形成した後、アッシングにより使用したレジストを除去した。得られたパターンウエハについて、後述する方法により得られた実験例1〜3および比較例1,2の組成物を塗布した。図19に、組成物塗布後のパターンウエハに形成された銅シングルダマシン構造の配線構造体を模式的に示す断面図を示す。また、組成物塗布後のパターンウエハのリーク電流特性を測定した。
【0118】
リーク電流評価は下記の基準で行った。
A: 2mV/cmにおける電流値がRIE処理後の絶縁層未満
B: 2mV/cmにおける電流値がRIE処理後の絶縁層以上
【0119】
5.2.実験例および比較例
5.2.1.実験例1
(トリメチルシリルメチル)トリアセトキシシラン0.2gをシクロヘキサノン9.8gに溶解させて、2質量%の(トリメチルシリルメチル)トリアセトキシシランのシクロヘキサノン溶液(組成物1)を調製した。
【0120】
次に、エッチング処理を施した後のブランケットフィルム評価用の絶縁層と、エッチング処理およびアッシング処理を施した後のパターンウエハ評価用の絶縁層とにそれぞれ、組成物1をスピンコート法にて塗布した。
【0121】
次いで、窒素雰囲気下において、これらの絶縁層をホットプレート上で300℃にて1分間加熱処理した。上記工程により得られた実験例1の絶縁層の評価結果を表1に示す。
【0122】
5.2.2.実験例2
(トリメチルシリルメチル)トリメトキシシラン1gをメシチレン9gに溶解させて、10質量%の(トリメチルシリルメチル)トリメトキシシランのメシチレン溶液(組成物2)を調製した。
【0123】
次に、エッチング処理を施した後のブランケットフィルム評価用の絶縁層と、エッチング処理およびアッシング処理を施した後のパターンウエハ評価用の絶縁層とにそれぞれ、組成物2をスピンコート法にて塗布した。
【0124】
次いで、窒素雰囲気下において、これらの絶縁層をホットプレート上で80℃にて1分間、次いで250℃にて1分間加熱処理した。上記工程により得られた実験例2の絶縁層の評価結果を表1に示す。
【0125】
5.2.3.実験例3
(ジメチルフェニルシリルメチル)メチルジアセトキシシラン2gを酢酸ブチル8gに溶解させて、20質量%の(ジメチルフェニルシリルメチル)メチルジアセトキシシランの酢酸ブチル溶液(組成物3)を調製した。
【0126】
次に、エッチング処理を施した後のブランケットフィルム評価用の絶縁層と、エッチング処理およびアッシング処理を施した後のパターンウエハ評価用の絶縁層とにそれぞれ、組成物3をスピンコート法にて塗布した。
【0127】
次いで、窒素雰囲気下において、これらの絶縁層をホットプレート上で60℃にて5分間、次いで250℃にて1分間加熱処理した。上記工程により得られた実験例3の絶縁層の評価結果を表1に示す。
【0128】
5.2.4.比較例1
HMDS4.5g(沸点126℃)をトルエン25.5g(沸点111℃)に溶解させて、HMDSの濃度が15質量%の組成物4を調製した。この組成物4をスピンコート法にて、エッチング処理を施した後のブランケットフィルム評価用の絶縁層上と、エッチング処理およびアッシング処理を施した後のパターンウエハ評価用の絶縁層上とにそれぞれキャストした。次に、これらの絶縁層をホットプレート上にて80℃で4分間、続いて窒素雰囲気下で250℃にて2分間加熱処理した。上記工程により得られた比較例1の膜の評価結果を表1に示す。
【0129】
5.2.5.比較例2
ジメチルクロロシラン6g(沸点36℃)をトルエン24g(沸点111℃)に溶解させて、ジメチルクロロシランの濃度が20質量%の組成物5を調製した。この組成物5をスピンコート法にて、エッチング処理を施した後のブランケットフィルム評価用の絶縁層上と、エッチング処理およびアッシング処理を施した後のパターンウエハ評価用の絶縁層上とにそれぞれキャストした。次に、これらの絶縁層をホットプレート上にて50℃で5分間、続いて窒素雰囲気下で200℃にて2分間加熱処理した。上記工程により得られた比較例2の膜の評価結果を表1に示す。
【表1】

表1において、「dk」=(組成物塗布前の比誘電率)−(組成物塗布後の比誘電率)を示す。
【0130】
実験例1〜3の絶縁層によれば、比誘電率、脱ガス量評価、およびリーク電流特性がいずれも良好であり、かつ、組成物塗布前の膜と組成物塗布後の膜とを比較すると、比誘電率が大幅に低下した。これに対して、比較例1,2で得られた膜は脱ガス量評価およびリーク電流特性がいずれも悪く、組成物塗布前の膜と組成物塗布後の膜とを比較すると、比誘電率の変化が少なかった。この結果により、実験例1〜3で得られた絶縁層は低誘電率でかつ耐吸湿性が高いこと、ならびに実験例1〜3で得られた表面疎水化用組成物を用いて絶縁層の表面を接触して加熱することにより、絶縁層の比誘電率を低下させることなく、絶縁層の表面を疎水化できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本実施の一実施形態に係る半導体装置を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示す半導体装置の一製造工程を模式的に示す断面図である。
【図3】図1に示す半導体装置の一製造工程を模式的に示す断面図である。
【図4】図1に示す半導体装置の一製造工程を模式的に示す断面図である。
【図5】図1に示す半導体装置の一製造工程を模式的に示す断面図である。
【図6】本実施の一実施の形態の半導体装置を模式的に示す断面図である。
【図7】図6に示す半導体装置の一製造工程を模式的に示す断面図である。
【図8】図6に示す半導体装置の一製造工程を模式的に示す断面図である。
【図9】図6に示す半導体装置の一製造工程を模式的に示す断面図である。
【図10】図6に示す半導体装置の一製造工程を模式的に示す断面図である。
【図11】図6に示す半導体装置の一製造工程を模式的に示す断面図である。
【図12】本実施の一実施形態に係る半導体装置を模式的に示す断面図である。
【図13】図12に示す半導体装置の一製造工程を模式的に示す断面図である。
【図14】図12に示す半導体装置の一製造工程を模式的に示す断面図である。
【図15】本発明の一実施例において、ブランケットフィルム評価にて作成された成膜および焼成後の絶縁層(膜1)を模式的に示す断面図である。
【図16】本発明の一実施例において、ブランケットフィルム評価にて作成されたRIE後の絶縁層(膜2)を模式的に示す断面図である。
【図17】本発明の一実施例において、ブランケットフィルム評価にて作成されたRIE後の絶縁層(膜3)を模式的に示す断面図である。
【図18】本発明の一実施例において、パターンウエハ評価にて作成された疎水性膜形成前の銅シングルダマシン構造の配線構造体を模式的に示す断面図である。
【図19】本発明の一実施例において、パターンウエハ評価にて作成された疎水性膜形成後の銅シングルダマシン構造の配線構造体を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0132】
10,110,210,310 基板
20,420,520 絶縁層
22,70,170 凹部
22a,72a,74a,170a 凹部の内壁
24,124,424,524 疎水性膜
26,90 導電層
40 ストッパ層
42,44 キャップ層
72 凹部(第1の凹部)
74 凹部(第2の凹部)
80 バリア層
82 拡散防止層
84 ストッパ層
90a 導電性材料
92 ビア層
94 配線層
100,200 配線構造体
120 絶縁層(第1の絶縁層)
124 疎水性膜(第1の疎水性膜)
190 配線層
220,320 絶縁層(第2の絶縁層)
224 疎水性膜(第2の疎水性膜)
R1,R10,R11 レジスト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される化合物および下記一般式(2)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1種の化合物と、(B)沸点が30〜350℃である溶媒とを含む、表面疎水化用組成物。
【化1】

・・・・・(1)
〔式中、R〜Rは同一または異なり、アルキル基、ビニル基、またはフェニル基を示し、X〜Xは同一または異なり、−OH,−OR,−OC(=O)R(ここで、R,Rは同一または異なり、アルキル基、ベンジル基、またはフェニル基を示す。)を示し、mは1または2を示す。〕
【化2】

・・・・・(2)
〔式中、R〜Rは同一または異なり、アルキル基、ビニル基、またはフェニル基を示し、X,Xは同一または異なり、−OH,−OR10,−OC(=O)R11(ここで、R10,R11は同一または異なり、アルキル基、ベンジル基、またはフェニル基を示す。)を示し、nは1または2を示す。〕
【請求項2】
請求項1において、
層の表面に接触させた状態で、該層を加熱するために使用される、表面疎水化用組成物。
【請求項3】
請求項2において、
前記表面はエッチングおよび/またはアッシングにより得られた、表面疎水化用組成物。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記層は、ケイ素原子を含有し、かつ酸素原子、炭素原子、水素原子、および窒素原子から選ばれた少なくとも1種の元素を構成元素として含む、表面疎水化用組成物。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれかにおいて、
前記層は絶縁層である、表面疎水化用組成物。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の表面疎水化用組成物を層の表面に接触させた状態で、該層を加熱する工程を含む、表面疎水化方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記加熱する工程は、
第1の温度で前記層を加熱する工程と、
前記第1の温度よりも高い第2の温度で前記層を加熱する工程と、をさらに含む、表面疎水化方法。
【請求項8】
請求項6において、
前記加熱する工程は、
第1の温度で前記層を加熱する工程と、
前記第1の温度よりも高い第2の温度で前記層を加熱する工程と、
前記第2の温度よりも高い第3の温度で前記層を加熱する工程と、をさらに含む、表面疎水化方法。
【請求項9】
請求項6ないし8のいずれかにおいて、
前記層は、ケイ素原子を含有し、かつ酸素原子、炭素原子、水素原子、および窒素原子から選ばれた少なくとも1種の元素を構成元素として含む、表面疎水化方法。
【請求項10】
請求項6ないし9のいずれかにおいて、
前記層は絶縁層である、表面疎水化方法。
【請求項11】
基板の上方に配置された絶縁層を含む半導体装置であって、
前記絶縁層には凹部が設けられ、
前記凹部の内壁には、請求項6ないし10のいずれかに記載の表面疎水化方法によって形成された疎水性膜が形成された、半導体装置。
【請求項12】
基板の上方に配置された配線構造体を含む半導体装置であって、
前記配線構造体は、
第1の凹部に設けられたビア層と、
前記ビア層の上に配置され、かつ第2の凹部に設けられた配線層と、
を含み、
前記第1の凹部は、前記基板の上方に配置された第1の絶縁層に設けられ、
前記第2の凹部は、前記第1の絶縁層の上方に配置された第2の絶縁層に設けられ、
前記第1の凹部の内壁には、請求項6ないし10のいずれかに記載の表面疎水化方法によって形成された疎水性膜が形成された、半導体装置。
【請求項13】
基板の上方に配置された配線構造体を含む半導体装置であって、
前記配線構造体は、
第1の凹部に設けられたビア層と、
前記ビア層の上に配置され、かつ第2の凹部に設けられた配線層と、
を含み、
前記第1の凹部は、前記基板の上方に配置された第1の絶縁層に設けられ、
前記第2の凹部は、前記第1の絶縁層の上方に配置された第2の絶縁層に設けられ、
前記第1の凹部の内壁には、請求項6ないし10のいずれかに記載の表面疎水化方法によって形成された第1の疎水性膜が形成され、
前記第2の凹部の内壁には、請求項6ないし10のいずれかに記載の表面疎水化方法によって形成された第2の疎水性膜が形成された、半導体装置。
【請求項14】
請求項12または13において、
前記ビア層および前記配線層は一体化して形成されている、半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−254594(P2007−254594A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−80990(P2006−80990)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】