説明

被成膜物の支持機構

【課題】簡易な構成で、被成膜物における未成膜部分を低減させることができる成膜装置の支持機構を提供する。
【解決手段】成膜面Waが下方に向けられた状態にガラス基板Wを支持して成膜面Waに成膜物質を付着堆積させる成膜装置1におけるガラス基板Wの搬送トレイ40であって、成膜面Waと同等以上の広さの開口部42を内部に有する枠体43と、枠体43の内方に備えられ、開口部42の周方向における縦断面を上方から下方に向けて狭めるテーパー状支持部44とを備え、このテーパー状支持部44のテーパー側面44bは、成膜面Waを囲むガラス基板Wの稜線Wbに線接触するようになっている。このようなテーパー側面44bを有するテーパー状支持部44によってガラス基板Wを支持することにより、ガラス基板Wの未成膜部分が低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置における被成膜物の支持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板やシリコン基板などの被成膜物に対して成膜を行う成膜装置として、成膜面が下方に向けられた状態に被成膜物を支持して、この成膜面に対して下方からITO(インジウムすず酸化膜)やSiON(シリコン酸窒化物)といった成膜物質を付着させて成膜する装置レイアウトを持った成膜装置が知られている(例えば特許文献1)。このような成膜装置では、成膜を行う被成膜物を搭載して搬送する搬送トレイやホルダといった支持機構の内部に所定以上の広さを有する開口部を設けて成膜領域を確保すると共に、この開口部を取り囲む部分全体に段差からなる支持部を設け、被成膜物を落下させないように確実に支持して成膜を行っていた。
【特許文献1】特開2007−211270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような成膜装置では、段差からなる支持部が成膜面の外周端部と接触して被成膜物を支持した状態で成膜を行うことから、成膜面の外周端部が未成膜部分として残存し、この未成膜部分により、成膜面全体における成膜物質の付着率が低下してしまうおそれがあった。また、被成膜物の外周端部に特定の機能を付与しようとした場合(例えば、ガラス基板の外周部にも導電性を持たせるためITOといった透明電極を外周部を含む全面に成膜する場合)には、成膜工程終了後に、上述したような未成膜部分の外周端部を切断して除去したり或いは未成膜部分に導電性物質などを印刷等の方法で改めて塗布したりする必要があった。一方、成膜面に支持部を一切接触させないよう成膜面と逆側の裏面を真空吸着などで吸着支持して被成膜物を支持する支持機構はあるものの、このような機構は支持や搬送の安定性を確保することが難しく、また装置構成が複雑となることから現実的ではなかった。
【0004】
本発明は、上記した事情に鑑みて為されたものであり、簡易な構成にもかかわらず、被成膜物における未成膜部分を低減させることができる成膜装置の支持機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る支持機構は、成膜面が下方に向けられた状態に被成膜物を支持して成膜面に成膜物質を付着堆積させる成膜装置における被成膜物の支持機構であって、成膜面と同等以上の広さの開口部を内部に有する枠体と、枠体の内方に備えられ、少なくとも開口部の周方向における一部において、開口部の縦断面を上方から下方に向けて狭めるテーパー状支持部とを備え、このテーパー状支持部は、成膜面を囲む被成膜物の稜線に線接触または点接触するようになっていることを特徴としている。
【0006】
この支持機構では、テーパー状支持部が、成膜面を囲む被成膜物の稜線と線接触または点接触するようになっている。このような稜線との接触によって被成膜物を支持していることから、成膜面を直接支持しないで成膜を行うことができ、被成膜物の成膜面の略全面を成膜させることができる。この結果、テーパー状支持部といった簡易な構成にもかかわらず、被成膜物における未成膜部分を低減させて、成膜物質の付着率を上昇させることができる。また、被成膜物の外周端部などに形成され易い未成膜部分を低減できるので、被成膜物の外周端部などに特定の機能を成膜処理で持たせることができる。更に、被成膜物の稜線をテーパー状支持部で斜め下方から支持しているため、裏面の真空吸着などによる支持機構に比べて、支持や搬送の安定性を高くできる。
【0007】
また、テーパー状支持部が枠体の内側全周に形成されていることが好ましい。開口部を下方に向かって狭めるテーパー状支持部が全周にわたって形成されていることで、より多くの箇所で被成膜物を斜め下方から支持でき、支持や搬送の安定性を更に高くできる。
【0008】
また、テーパー状支持部は複数の弾性支持部材からなり、複数の弾性支持部材は、各弾性支持部材が枠体から下方に向かって開口部に突出して被成膜物を複数の箇所で支持すると共に、この複数の箇所を結んで形成される領域内に被成膜物の重心が位置するように配置されることが好ましい。このように配置された弾性支持部材で被成膜物を支持することにより、支持や搬送の安定性を高くしつつ、搬送の際に外部から被成膜物に伝達される振動を低減できる。
【0009】
また、複数の弾性支持部材の少なくともいずれか1つの弾性支持部材が螺旋形状または波形状であることが好ましい。このような形状であれば、簡易な構成で弾性支持部材を実現することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡易な構成で、被成膜物における未成膜部分を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る成膜装置を模式的に示した断面図である。図2は、搬送トレイとガラス基板との配置関係を示す斜視図、図3は、搬送トレイにガラス基板を配置した際の、(a)は縦断面図であり、(b)は上面図であり、(c)は底面図である。図1に示すように、成膜装置1は、イオンプレーティング法に基づく成膜を行う装置であり、ITOといった透明導電材料などからなる材料ロッドMをプラズマビームPbで加熱し、材料ロッドMから昇華(または蒸発)して気化した粒子(以下、「昇華粒子」という)を上方に位置するガラス基板(被成膜物)Wの成膜面Waに付着堆積させて膜を生成する。
【0013】
成膜装置1は、成膜室である真空容器3と、真空容器3内を減圧状態にする排気手段5と、真空容器3内にプラズマビームPbを供給するプラズマガン7と、真空容器3内の下部に配置されてプラズマビームPbを導く陽極部9と、陽極部9に材料ロッドMを供給する材料供給装置11と、陽極部9で昇華された昇華粒子が成膜されるガラス基板Wを水平方向に搬送させる搬送機構13とを備えている。
【0014】
プラズマガン7は、圧力勾配型のプラズマガンであり、真空容器3の側壁に設けられた筒状部3aに固定されている。プラズマガン7は、プラズマビームPbを収束させる永久磁石15aと空芯コイル16aとがそれぞれ内蔵された第1中間電極15及び第2中間電極16からなる中間電極17と、陰極管18が固定されたカソードフランジ19とを備え、中間電極17とカソードフランジ19との間に陰極管18を包囲するガラス管20が配置されている。また、筒状部3aの周囲には、プラズマビームPbを真空容器3内に導くステアリングコイル21が設けられている。プラズマガン7は、ガン駆動装置22に接続され、ガン駆動装置22によって、陰極管18への給電を切り替えたり、第1中間電極15、第2中間電極16、またはステアリングコイル21への給電を調整する。
【0015】
陽極部9は、プラズマビームPbを下方に導く主陽極であるハース23と、ハース23の周囲に配置された環状の補助陽極24とを備えている。このハース23は、絶縁物を介して真空容器3の下部に固定されている。ハース23は、内部に貫通孔を有しており、この貫通孔に材料ロッドMが下方から材料供給装置11によって供給される。補助陽極24は、プラズマビームPbをコントロールしてハース23の直上方にカスプ状磁場を形成する環状永久磁石24aとコイル24bとを備え、陽極電源装置25に接続されている。陽極電源装置25によってコイル24bに印加する電流を変化させてハース23に入射するプラズマビームPbの位置や入射範囲が微調整される。
【0016】
材料供給装置11は、真空容器3の下部に設けられており、ハース23に設けられた貫通孔内で材料ロッドMを上方に移動させて供給する。このように供給される材料ロッドMがITOといった導電性物質の場合、プラズマビームPbが材料ロッドMに直接入射し、材料ロッドMの先端部分が加熱されて昇華点以上の温度になり、昇華(または蒸発)して昇華粒子になる。なお、材料ロッドMは、所定長さの円柱状の固体に成形されており、材料供給装置11により所定時間ごとに突き上げて上昇されるようになっている。
【0017】
搬送機構13は、ガラス基板Wを保持する搬送トレイ(支持機構)40と、搬送トレイ40を定速で上流側から下流側に向かって水平方向に移動させる複数のローラからなるローラ部41とを備えている。
【0018】
搬送トレイ40は、図2及び図3に示すように、矩形状の開口部42を内部に備える枠体43と、枠体43の内側全周に備えられたテーパー状支持部44とを有している。開口部42は、テーパー状支持部44により、上面から下面に向かって狭くなるようなテーパー形状に形成され、このような開口部42の内部にガラス基板Wが収容されるようになっている。
【0019】
枠体43は、所定の厚みを有する4つの辺部43a,43b,43c,43dからなり、開口部42を取り囲むように、隣接する辺部の端部同士が各連結部43eでそれぞれ連結されている。
【0020】
テーパー状支持部44は、枠体43の内側面全周に隣接して備えられており、図3(a)に示すように、開口部42の周方向における縦断面において上方から下方に向けて徐々に幅を狭めるよう、テーパー状支持部44の下面44aに対するテーパー側面44bの角度(テーパー角度)が約70度であるテーパー形状を有している。このようなテーパー状支持部44により、開口部42は、上開口面42aが成膜面Waより広い(図3(b)参照)一方、下開口面42bが成膜面Waより狭くなる(図3(c)参照)ように形成され、開口部42の内部で、テーパー状支持部44のテーパー側面44bと成膜面Waを囲むガラス基板Wの稜線Wbとが全周にわたって線接触するようになっている。このような線接触により、ガラス基板Wは、テーパー状支持部44に斜め下方から支持される。なお、枠体43とテーパー状支持部44とは一体形成されても、別々に形成後、両者を接着させて一体化したものでもよい。
【0021】
次に、上記した成膜装置1の動作手順について説明する。
【0022】
まず、排気手段5によって真空容器3内を減圧状態になるように排気すると共に、材料供給装置11によってハース23に材料ロッドMを充填し、陽極部9の貫通孔に材料ロッドMを保持させる(第1のステップ)。続いて、ガン駆動装置22及び陽極電源装置25によって、プラズマガン7の陰極管18と、ハース23との間で放電を生じさせ、放電によって生じるプラズマビームPbをハース23に向けて照射する(第2のステップ)。
【0023】
次に、陽極電源装置25によって、補助陽極24に印加する電流を調整し、ハース23の貫通孔に入射するプラズマビームPbの入射範囲を制御し、材料ロッドMの先端部分などの温度が昇華点以上になるように制御する(第3のステップ)。材料ロッドMが十分に加熱されると、材料ロッドMが昇華(または蒸発)して気化し、昇華粒子が出現する。そして、昇華粒子をプラズマビームPbによってイオン化し、活性度の高い状態で、搬送トレイ40に支持されたガラス基板Wの下面に位置する成膜面Waに入射させ、成膜面WaにITO膜を形成する(第4のステップ)。
【0024】
ここで、テーパー状支持部44の下開口面42bが成膜面Waより狭くなるように形成されていることから成膜面Waの外周端部への直接的な成膜が一部行われない可能性があるものの、所定のテーパー角(例えば65度〜85度、好ましくは70度)を有するテーパー状支持部44とすることにより、昇華粒子がテーパー状支持部44の下方先端部に対して回り込むようになり、成膜面Waの外周端部へも所定量のITO膜が成膜されるようになっている。
【0025】
以上詳述したように、本実施形態に係る搬送トレイ40を有する成膜装置1では、テーパー状支持部44のテーパー側面44bが、成膜面Waを囲むガラス基板Wの稜線Wbと線接触するようになっている。このような稜線との線接触によってガラス基板Wを支持していることから、成膜面Waを直接支持しないで成膜を行うことができ、ガラス基板Wの成膜面Waの略全面を成膜させることができる。この結果、テーパー状支持部44といった簡易な構成にもかかわらず、ガラス基板Wにおける未成膜部分を低減させて、ITO膜の付着率を上昇させることができる。また、ガラス基板Wの外周端部などに形成され易い未成膜部分を低減できるので、ガラス基板Wの外周端部などに特定の機能を成膜処理で持たせることができる。更に、ガラス基板Wの稜線Wbをテーパー状支持部44のテーパー側面44bで斜め下方から支持しているため、裏面の真空吸着などによる支持機構に比べて、支持や搬送の安定性を高くできる。
【0026】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、テーパー状支持部を複数の板ばねで構成し、各板ばねが4つの辺部それぞれから下方に向かって開口部に突出するように配置された搬送トレイを用いる。
【0027】
本実施形態に係る搬送トレイ50について図4を参照して説明する。搬送トレイ50は、図4に示すように、矩形状の開口部52を内部に備える枠体53と、枠体53の内側に備えられてガラス基板Wを支持するテーパー状支持部54とを備えている。開口部52は、ガラス基板Wの成膜面Waより所定幅広くなるように形成されており、ガラス基板Wが開口部52内に収容されるようになっている。
【0028】
枠体53は、所定の厚みを有する4つの辺部53a,53b,53c,53dからなり、開口部52を取り囲むように、隣接する辺部の端部同士が各連結部でそれぞれ連結されている。
【0029】
テーパー状支持部54は、弾性を有する4つの板ばね(弾性支持部材)54a,54b,54c,54dから構成される。各板ばね54a,54b,54c,54dは所定幅を有し、一端が各辺部53a,53b,53c,53dの長手方向の略中央付近に固定され、他端はテーパー角が約70度になるように開口部52の下方に向かって突出形成される。なお、突出形成された各板ばね54a,54b,54c,54dの他端の先端は、上方への付勢力を維持してガラス基板Wを継続的に安定支持するため、先端が突出方向とは逆に戻る反り返り構造を有している。
【0030】
上述した枠体53とテーパー状支持部54とにより、図4(a)に示すように、各板ばね54a,54b,54c,54dが配置された開口部52の所定箇所においては、縦断面が上方から下方に向けて徐々に幅を狭め、下方ではガラス基板Wの幅より狭くなるようになっている。そして、開口部52にガラス基板Wを収容した際、テーパー状支持部54を構成する各板ばね54a,54b,54c,54dのテーパー側面と成膜面Waを囲むガラス基板Wの稜線Wbの一部とが線接触する。このような線接触により、ガラス基板Wは、板ばね54a,54b,54c,54dによって複数の箇所において斜め下方から支持される。なお、この支持の際、板ばね54a,54b,54c,54dそれぞれが成膜面Waと接触する複数の箇所を結んで形成される領域R1内にガラス基板Wの重心Gが位置しており、ガラス基板Wは搬送トレイ50によって安定支持される。
【0031】
このように、本実施形態に係る搬送トレイ50を有する成膜装置1では、弾性を有する板ばね54a,54b,54c,54dが下方に向かって開口部52に突出するように配置されて、テーパー状支持部54を形成している。このため、弾性を有する板ばねでガラス基板Wを支持でき、搬送の際に外部から被成膜物に伝達される振動を低減できる。また、テーパー状支持部54が枠体53の内周の一部だけに備えられていることから、第1実施形態に比べて、成膜面Waの外周端部への直接的な成膜が行われない箇所を低減でき、成膜物質の付着率を上昇させることができる。
【0032】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、テーパー状支持部を複数の線ばねで構成し、各線ばねが4つの辺部それぞれから下方に向かって開口部に突出するように配置された搬送トレイを用いる。
【0033】
本実施形態に係る搬送トレイ60について図5を参照して説明する。搬送トレイ60は、図5に示すように、矩形状の開口部62を内部に備える枠体63と、枠体63の内側に備えられてガラス基板Wを支持するテーパー状支持部64とを備えている。開口部62は、ガラス基板Wの成膜面Waより所定幅広くなるように形成されており、ガラス基板Wが開口部62内に収容されるようになっている。
【0034】
枠体63は、所定の厚みを有する4つの辺部63a,63b,63c,63dからなり、開口部62を取り囲むように、隣接する辺部の端部同士が各連結部でそれぞれ連結されている。
【0035】
テーパー状支持部64は、弾性を有する4つの線ばね(弾性支持部材)64a,64b,64c,64dから構成される。各線ばね64a,64b,64c,64dは線状の支持部材であって、一端が各辺部63a,63b,63c,63dの長手方向の略中央付近に固定され、他端はテーパー角が約70度になるように開口部62の下方に向かって突出形成される。なお、突出形成された各線ばね64a,64b,64c,64dの他端の先端は、上方への付勢力を維持してガラス基板Wを継続的に安定支持するため、先端が突出方向とは逆に戻る反り返り構造を有している。
【0036】
上述した枠体63とテーパー状支持部64とにより、図5(a)に示すように、各線ばね64a,64b,64c,64dが配置された開口部62の所定箇所においては、縦断面が上方から下方に向けて徐々に幅を狭め、下方ではガラス基板Wの幅より狭くなるようになっている。そして、開口部62にガラス基板Wを収容した際、テーパー状支持部64を構成する各線ばね64a,64b,64c,64dのテーパー側面と成膜面Waを囲むガラス基板Wの稜線Wbの一部とが点接触する。このような点接触により、ガラス基板Wは、線ばね64a,64b,64c,64dによって複数の箇所において斜め下方から支持される。なお、この支持の際、線ばね64a,64b,64c,64dそれぞれが成膜面Waと接触する複数の箇所を結んで形成される領域R2内にガラス基板Wの重心Gが位置しており、ガラス基板Wは搬送トレイ60によって安定支持される。
【0037】
このように、本実施形態に係る搬送トレイ60を有する成膜装置では、弾性を有する線ばね64a,64b,64c,64dが下方に向かって開口部62に突出するように配置されて、テーパー状支持部64を形成している。このため、弾性を有する線ばねでガラス基板Wを支持でき、搬送の際に外部から被成膜物に伝達される振動を低減できる。また、テーパー状支持部64が枠体63の内周の一部だけに備えられ、しかも線状の線ばねから構成されて点接触で支持するようになっていることから、第1及び第2実施形態に比べて、成膜面Waの外周端部への直接的な成膜が行われない箇所を一層低減でき、成膜物質の付着率を更に上昇させることができる。
【0038】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、被成膜物として支持されるガラス基板が矩形状の場合について説明したが、支持されるガラス基板は円形状であってもよい。このような場合には、開口部が円形であることが好ましい。また、本実施形態では、被成膜物としてガラス基板を用いて説明したが、シリコン基板やプラスチック基板などでもよく、成膜面が下方に向けられた状態で成膜する必要のある被成膜物であればよい。また、本実施形態では、成膜物質として、ITOを用いて説明したが、SiON等の成膜物質でもよく、成膜物質であればよい。
【0039】
また、第3実施形態では、線ばねからなる線状の弾性支持部材を用いたが、図6(a)に示す螺旋形状の弾性支持部材を用いてもよいし、図6(b)に示す波形状の弾性支持部材を用いてもよい。このような形状であれば、簡易な構成で弾性支持部材を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】第1実施形態に係る成膜装置を模式的に示した断面図である。
【図2】第1実施形態に係る搬送トレイと基板との配置関係を示す斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る搬送トレイにガラス基板を配置した際の、(a)は縦断面図であり、(b)は上面図であり、(c)は底面図である。
【図4】第2実施形態に係る搬送トレイにガラス基板を配置した際の、(a)は縦断面図であり、(b)は上面図であり、(c)は底面図である。
【図5】第3実施形態に係る搬送トレイにガラス基板を配置した際の、(a)は縦断面図であり、(b)は上面図であり、(c)は底面図である。
【図6】弾性支持部材の変化例であり、(a)は螺旋形状の変化例であり、(b)は波形状の変化例である。
【符号の説明】
【0041】
1…成膜装置、13…搬送機構、40,50,60…搬送トレイ(支持機構)、41…ローラ部、42,52,62…開口部、43,53,63…枠体、43a,43b,43c,43d,53a,53b,53c,53d,63a,63b,63c,63d…辺部、43e…連結部、44,54,64…テーパー状支持部、54a,54b,54c,54d…板ばね(弾性支持部材)、64a,64b,64c,64d…線ばね(弾性支持部材)、R1,R2…領域、W…ガラス基板、Wa…成膜面、Wb…稜線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜面が下方に向けられた状態に被成膜物を支持して前記成膜面に成膜物質を付着堆積させる成膜装置における被成膜物の支持機構であって、
前記成膜面と同等以上の広さの開口部を内部に有する枠体と、
前記枠体の内方に備えられ、少なくとも前記開口部の周方向における一部において、前記開口部の縦断面を上方から下方に向けて狭めるテーパー状支持部とを備え、
前記テーパー状支持部は、前記成膜面を囲む前記被成膜物の稜線に線接触または点接触するようになっていることを特徴とする支持機構。
【請求項2】
前記テーパー状支持部が前記枠体の内側全周に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の支持機構。
【請求項3】
前記テーパー状支持部は、複数の弾性支持部材からなり、
前記複数の弾性支持部材は、各弾性支持部材が前記枠体から下方に向かって前記開口部に突出して前記被成膜物を複数の箇所で支持すると共に前記複数の箇所を結んで形成される領域内に前記被成膜物の重心が位置するように配置されることを特徴とする請求項1に記載の支持機構。
【請求項4】
前記複数の弾性支持部材の少なくともいずれか1つの弾性支持部材が螺旋形状または波形状であることを特徴とする請求項3に記載の支持機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−253257(P2009−253257A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−103523(P2008−103523)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】