説明

被覆ファブリック製品

有機ポリマーバインダ中に分散した少なくとも1つの固体潤滑剤を含んだ減摩性コーティングによって上塗りされていることを特徴とする、硬化したオルガノポリシロキサン組成物の被覆されたエアバッグ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の乗員を保護する安全目的のために使用されるエアバッグのコーティング、及びエアバッグを作製することを意図したエアバッグファブリックのコーティングに関する。特に、本発明は、硬化したオルガノポリシロキサン組成物によって被覆されたエアバッグ及びエアバッグファブリックの、減摩性組成物による上塗りに関する。本発明はまた、硬化したオルガノポリシロキサン組成物によって被覆したエアバッグ及びエアバッグファブリックを上塗りするための塗膜組成物に関する。
【0002】
エアバッグは、概して、合成繊維、例えば、ナイロン−6,6若しくはポリエステルなどのポリアミド製の織物又は編物から作製され、その面の少なくとも一方はエラストマーの層によって被覆されている。エアバッグは、充分な機械的強度を提供するべく被覆された後に縫合された平らなファブリック片から作製されるか、又は一体的に織られた継ぎ目を有する1つの片に織られていてもよい。縫合されたエアバッグは、一般的には、エアバッグ内部において被覆されたファブリック表面と組み合わせられる。1つの片に織られたエアバッグは、エアバッグの外側が被覆される。エアバッグ又はエアバッグファブリックへ被覆するのに好ましいエラストマーは、硬化したオルガノポリシロキサン組成物であるシリコーンエラストマー、特に、ヒドロシリル化によって、即ち1つのポリ有機シロキサンのアルケニル基と別のポリ有機シロキサンのSi−H基の反応によって硬化されたシリコーンゴムコーティングである。
【0003】
シリコーンエラストマーの被覆されたエアバッグは、多くの公開特許及び出願、例えば、米国特許第5789084号、第5877256号、第6709752号、第6425600号及び第6511754号、並びに、国際公開第08/020605(A)号及び国際公開第08/020635(A)号に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
いくつかのエアバッグ用途については、加圧ガスが、比較的長期間、ファブリックの外皮(envelope)に保持されなければならない。この要求は、例えば、自動車産業のサイドカーテンエアバッグに存在する。これらのサイドカーテンエアバッグは、従来のエアバッグのように、衝突時に膨らむことが意図されている。サイドカーテンは、乗客と、車体の側面の一部、例えば、窓との間にクッション性のあるカーテンを形成するよう展開する。従来の運転席及び助手席エアバッグの場合のように、衝突それ自体の衝撃を和らげるだけでなく、例えば、車が回転する場合に、乗客を保護することも意図しているため、サイドカーテンエアバッグは、かかる回転する過程の間、充分に加圧されることが重要である。従来の運転席及び助手席エアバッグが、何分の1秒かの間、圧力を保持する必要があるに過ぎない場合、サイドカーテンエアバッグは、2、3秒間、適切な圧力を維持することが望ましい。例えば、航空機の緊急シュート又は膨張式ボートにおいて、ある一定のガス圧を維持するために、加圧されたファブリック構造が、比較的長時間望まれる場合にも、同様の適用が存在する。従って、シリコーンゴムコーティングにより付与される、低い被覆量での柔軟性及び耐高温性の利益を持ちながらも、改善された気密性をも有する被覆ファブリックに対する需要がある。
【0005】
エアバッグ上のシリコーンエラストマーコーティングは、被覆ファブリックの柔軟性と、充分に低いガス透過率との良好な組み合わせを有する。しかしながら、シリコーンエラストマーコーティングは、硬化された場合、高い表面摩擦抵抗を有する。シリコーンエラストマーの下地塗りが、エアバッグ上に唯一のコーティングとして残っている場合、この下地塗りの表面特性は、ブロッキング(保管中のシリコーン表面の互いの貼り付き及び自動車におけるエアバッグの密な充填)並びにエアバッグが膨張したときの非常に高いストレスにつながり、これは、膨張の間に裂けることによってバッグの欠陥をもたらすであろう。
【0006】
米国特許第6177366号は、少なくとも2つの別々の異なる層を含んだエアバッグ塗膜組成物について記載する。第1の層(下地塗り)は、エアバッグの表面に接しており、シリコーンエラストマーを含む。第2の層(上塗り)は、好ましくは、シリコーン樹脂である。
【0007】
米国特許第7198854号は、シリコーンエラストマーを用いて被覆された繊維製品用減摩性シリコーンニスについて記載する。ニスは、触媒の存在下、互いに反応し、架橋を可能にする2つのシリコーンを含んだ架橋可能なシリコーン組成物と、粉末の(コ)ポリアミドを含んだ粒子成分とを含む。
【0008】
我々は、架橋したシリコーン組成物が、タルク等の低摩擦性充填剤により高充填となっていない限り、保管中のエアバッグ表面のブロッキングと、膨張中のエアバッグの引裂とを回避するのに充分に低い摩擦係数を持たないことを見出した。タルク保管中に沈降し、高充填組成物は少ない被覆量で連続的に塗布することが困難であるため、エアバッグ製造業者は、かかる高充填組成物を好まない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によれば、硬化したオルガノポリシロキサン組成物の被覆されたエアバッグは、有機ポリマーバインダ中に分散した少なくとも1つの固体潤滑剤を含んだ減摩性塗膜により上塗りされている。有機ポリマーとは、ポリマー鎖を形成する原子のうちの少なくとも50%が炭素原子であるポリマーのことである。
【0010】
本発明の別の側面によれば、エアバッグ又はエアバッグファブリックがオルガノポリシロキサン組成物によって被覆されているエアバッグ又はエアバッグファブリックを被覆する方法は、エアバッグが、少なくとも1つの分散した固体潤滑剤の水分散液を含んだ減摩性塗膜組成物によって上塗りされることを特徴とする。
【0011】
本発明はまた、有機ポリマーバインダの分散系中に固体フルオロポリマーの水分散液を含んだ減摩性塗膜組成物を含み、水分散液が、シロキサンポリエーテル湿潤剤を含むことを特徴とする。
【0012】
減摩性塗膜中に存在する固体潤滑剤は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフルオロポリマー、ポリオレフィンワックス等の固体炭化水素系ワックス、例えば、微粉末化されたポリプロピレンワックス、又はPTFEとワックスとの混合物を含み得る。固体潤滑剤は、追加的に又は代替的に、タルク等の鉱物潤滑剤を含んでいてもよく、これは、タルク微粒子、モンモリロナイト、二硫化モリブデン、グラファイト、硫化亜鉛若しくはリン酸三カルシウム、又はこれらのうちの任意の2つ以上の混合物の形態であってもよい。タルク等の鉱物潤滑剤も、エアバッグ表面における摩擦を低減するのに効果的であり、固体潤滑剤として、PTFEと部分的又は完全に置き換えて使用されてもよい。
【0013】
我々は、フルオロポリマーとタルクとの組み合わせが、エアバッグ表面における摩擦を低減するのに特に効果的であることを見出した。驚くべきことに、PTFEを固体潤滑剤として含んだ減摩性塗膜組成物へのタルクの添加は、被覆ファブリックの摩擦係数を、例えば、PTFE単独で達成し得る摩擦係数の半分以下までや、固体潤滑剤としてのタルク単独で達成し得るよりもはるかに低くまで、実質的に低減することができる。
【0014】
固体潤滑剤の減摩性塗膜は、好ましくは、エアバッグ又はエアバッグファブリックに塗布され、これらはどちらの場合も、水分散液からのオルガノポリシロキサン組成物で予め被覆されている。塗膜組成物は、一般的に、固体潤滑剤のエアバッグファブリックへの接着を高めるためにバインダを必要とする。バインダは、例えば、有機ポリマーバインダであってよい。好ましい有機ポリマーバインダとしては、ポリウレタン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アミノホルムアルデヒド樹脂、ビニル樹脂、例えば、ポリビニルブチラール、及びポリアミドイミド樹脂が挙げられる。好ましいポリウレタンとしては、ポリエステルポリオールと、芳香族又は脂肪族ジイソシアネートとのコポリマーが挙げられる。好ましいフェノール樹脂としては、フェノールとホルムアルデヒドとのコポリマー、及び、フェノールとホルムアルデヒドとクレゾールとのコポリマーが挙げられる。好ましいエポキシ樹脂は、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとのコポリマーである。従って、エアバッグファブリック表面に存在するコーティングは、有機ポリマーバインダ中に分散した固体潤滑剤を含んでいる。有機ポリマーバインダの濃度は、例えば、乾燥塗膜重量基準で、減摩性塗膜組成物の2又は3重量%から最大で50重量%の範囲内、即ち、乾燥塗膜重量基準で減摩性塗膜組成物の2〜50重量%、又は、3〜50重量%であってよい。例えば、乾燥塗膜重量基準で、塗膜組成物の5又は10重量%から最大で35重量%まで、即ち、5〜35重量%又は10〜35重量%の有機ポリマーバインダの濃度が好ましいことが多い。
【0015】
明確化のため、%値が提供される場合、例えば、組成物の総量は、常に合計100%になることが理解される。更に、組成物における乾燥塗膜重量基準での範囲への言及は、水及び/又は共溶媒の重量を除いて計算された重量を意味することが意図される。
【0016】
本発明の好ましい一側面において、予めオルガノポリシロキサン組成物によって被覆されたエアバッグファブリックに塗布された減摩性塗膜組成物は、有機ポリマーバインダ又は有機ポリマーバインダ/アミノシラン混合物の分散系において、フルオロポリマー及び/又はタルク等の固体潤滑剤の水分散液を含んでいる。有機ポリマーバインダ又は有機ポリマーバインダ/アミノシラン混合物の分散系は、必要であれば、任意に水混和性有機共溶媒を含んだ水溶液であってよいか、或いは、水性エマルション又は懸濁液であってよい。かかるエマルション又は懸濁液は、一般には、少なくとも1つの界面活性剤によって安定化されており、これは、非イオン性、アニオン性、カチオン性及び両性界面活性剤、並びにこれらのうちの2つ以上の混合物から選択されてもよい。適当な非イオン性界面活性剤の例は、アルキルエトキシレート(エトキシル化された脂肪アルコール)又は(t−オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール等のアラルキルエトキシレートである。適当なアニオン性界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。任意の適当な溶媒が利用されてもよく、選択は、組成物中の有機ポリマーバインダに依存するであろうが、可能性のある共溶媒としては、例示のために、アルコール及びn−アルキルピロリドンが挙げられる。
【0017】
アミノシラン、例えば、(エチレンジアミンプロピル)トリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランアミノアルキルアルコキシシラン、N−フェニルアミノメチルジメトキシメチルシラン、N−シクロヘキシル−アミノメチルジメトキシメチルシラン、N−メチルアミノメチル−ジメトキシメチルシラン、N−エチルアミノメチルジメトキシ−メチルシラン、N−プロピルアミノメチルジメトキシメチルシラン、N−ブチルアミノメチルジメトキシメチルシラン、(メタクリロイル−オキシメチル)−ジメトキシメチルシラン、N−(ジメトキシメチル−シリルメチル)−O−メチルカルバメート、アミノメチルジメトキシメチルシランの、マレイン酸ジエステル、フマル酸ジエステル、シトラコン酸ジエステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ケイ皮酸エステル、イタコン酸ジエステル、ビニルホスホン酸ジエステル、ビニルスルホン酸アリールエステル、ビニルスルホン、ビニルニトリル、1−ニトロエチレン等のマイケル受容体とのマイケル型付加反応からの生成物、又は例えば、マロン酸ジエステルと、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド若しくはベンズアルデヒド等のアルデヒドとの縮合産物等のクネーフェナーゲル縮合産物等を、前記バインダ系と組み合わせて使用してもよい。存在する場合には、有機ポリマーバインダとアミノシランとの比は、乾燥重量基準で1:5〜9:1の比率である。バインダ系の全部分を形成することが意図される場合、典型的には、前記アミノシランは、乾燥塗膜重量に基づき、約10〜25重量%の量で存在する。アミノシランが存在する場合、有機ポリマーバインダとアミノシランとの混合物は、例えば、乾燥重量基準で、コーティングの3〜70%を構成してもよい。
【0018】
減摩性塗膜は、固体潤滑剤を有機ポリマーバインダの分散系中に分散させるか、固体潤滑剤の分散系を有機ポリマーバインダの分散系と混合するか、又は有機ポリマーバインダを固体潤滑剤の分散系中に分散させることによって調製することができる。これらの技術の組み合わせが使用されてもよく、例えば、フルオロポリマーの固体潤滑剤の分散系を、有機ポリマーバインダの分散系と混合してもよく、タルク等の鉱物固体潤滑剤を、得られた分散系中に混合してもよい。
【0019】
減摩性の塗膜組成物は、好ましくは、乾燥重量基準で、10重量%から最大で90重量%、より好ましくは、最大で80重量%の固体潤滑剤、例えば、3〜90重量%、あるいは3〜80重量%、あるいは5〜90重量%、あるいは5〜80重量%、あるいは10〜90重量%、あるいは10〜80重量%の固体潤滑剤を含んでいる。例としては、乾燥重量組成物に基づき、50%又は60%の固体潤滑剤を含んだ組成物が挙げられる。最も好ましくは、ファブリック上の減摩性塗膜は、乾燥重量基準で、少なくとも20又は30重量%から最大で75又は85重量%の固体潤滑剤、例えば、乾燥重量基準で、20〜85重量%、あるいは20〜75重量%、あるいは30〜85重量%、あるいは30〜75重量%の固体潤滑剤を含んでいる。有機ポリマーバインダは、例えば、乾燥重量基準で、3〜70%又は3〜50%のコーティングを含んでいる。上記組み合わせのいずれかについては、組成物の合計%量は、100%である。
【0020】
タルク等の固体鉱物潤滑剤の量は、保管中に、相当のタルクの沈降を生じるほど高くないことが好ましい。PTFE固体潤滑剤をも含んだコーティング中に存在するタルクの量は、好ましくは、5又は10%から最大で30又は40%、例えば、5〜30%、あるいは5〜40%、あるいは10〜30%、あるいは10〜40%の範囲内である。固体鉱物潤滑剤、例えば、タルクが組成物中に存在する場合、かかる固体鉱物潤滑剤、例えば、タルクは、乾燥重量基準で、コーティングの5〜10重量%から最大で80又は90重量%、例えば、5〜90重量%、あるいは5〜80重量%、あるいは10〜90重量%、あるいは10〜80重量%の範囲内で存在する。本発明に従う減摩性塗膜におけるタルクの使用は、タルクが、ブロッキングを阻止するのにエアバッグに粉末として塗布される場合、防塵に関する問題を回避する。
【0021】
減摩性塗膜組成物は、湿潤剤を含み、塗膜が硬化したオルガノポリシロキサンの下地塗り上に広がることを確実にしてもよい。好ましい湿潤剤のタイプの1つは、シロキサンポリエーテル、特には、ポリエーテル基がヒドロキシル終端したポリオキシエチレンシロキサンであり、別名シリコーングリコールとして既知である。かかる湿潤剤としては、アルキルシロキサン基と結合したアルキルポリ(エチレンオキシ)シロキサン基を含んだシロキサン化合物が挙げられ、ここで、アルキル基は、1〜6個の炭素原子を含んでいる。それらは好ましくは、低分子量化合物であり、好ましくは2〜8個のケイ素原子を含んでいる。例えば、湿潤剤は、1〜3個のアルキルポリ(エチレンオキシ)シロキサン基(i)と、1〜4個のアルキルシロキサン基(ii)とを含んでいてもよい。あるいは、湿潤剤は、1個のアルキルポリ(エチレンオキシ)シロキサン基(i)と、2個のメチル及び/又はエチルシロキサン基(ii)とを含んだトリシロキサンであってもよい。好ましくは、アルキルポリ(エチレンオキシ)シロキサン基(ii)におけるエチレンオキシ(EO)単位の平均数は、5〜12である。好ましくは、アルキルポリ(エチレンオキシ)シロキサン基(ii)の末端単位は、アセトキシ、ヒドロキシル又はアルコキシ単位(例えば、メトキシ)である。例えば、以下の構造の化合物である:
【化1】

ここで、
・n=3〜20
・R=H,CH,CHCH,CHCOである。
【0022】
他のR基が使用されてもよく、Si原子とEO鎖との間のアルキル鎖の長さは、1〜12個の炭素まで変化してもよく、例えば、3個の炭素原子であり、それによって、Si原子とEO鎖との間にプロピルの結合を形成する。好ましい例としては、限定するものではないが、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチル−3−ポリエトキシプロピル−トリシロキサンが挙げられる。湿潤剤は、好ましくは、塗膜組成物中、最大10重量%の配合、例えば、0.5%又は1%から最大で3%存在する。
【0023】
減摩性塗膜組成物は、硬化したオルガノポリシロキサンの下地塗りへのコーティングの接着を改善するために、接着促進剤を含んでいてもよい。好ましい接着促進剤のタイプの1つは、エポキシシラン、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシアルキルトリアルコキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(アルク)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン、又は上述したアミノシラン等のアミノシランである。例えば、(引用により組み込まれる)米国特許第3,455,877号に記載されるエポキシ基及びアルコキシ官能基を有する有機ケイ素化合物が使用されてもよい。アルコキシ基は、同じであっても異なっていてもよく、通常、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基、例えば、メトキシ基又はエトキシ基から選択される。他の任意の置換基は、存在する場合には、好ましくは、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基から選択される。適当なシランとしては、例えば、9−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシランが挙げられる。
【0024】
接着促進剤は、好ましくは、塗膜組成物中、最大で5重量%までの配合、例えば、0.2又は0.5重量%から最大で1重量%まで、即ち、0.2〜1重量%又は0.5〜1重量%の配合で存在する。アミノシロキサンの場合、接着促進剤として単独で使用されるとき、かかるアミノシロキサンは、組成物中に5重量%よりも多い量では存在しないであろう。
【0025】
減摩性塗膜組成物は、難燃剤を含んでいてもよい。エアバッグは、燃焼を支援しないことが重要であり、エアバッグは、エアバッグに適用され得る厳しい可燃性試験を通過するために、難燃剤の添加を一般的に要する。難燃剤は、上塗り中に含まれる場合に最も効果的であってよい。好ましい難燃剤の例は、好ましくは、表面処理されていないアルミニウム三水和物である。減摩性の塗膜組成物は、例えば、5〜40重量%のアルミニウム三水和物を含んでいてもよい。ファブリック上のコーティングは、乾燥重量基準で、例えば、5〜55%のアルミニウム三水和物を含んでいてもよい。
【0026】
減摩性の塗膜組成物が、タルク等の鉱物潤滑剤を含んでいる場合、タルクの沈降を抑制するために増粘剤を含んでいてもよい。増粘剤は、例えば、ヒュームド・シリカ、ベントナイト粘土、又はポリビニルアルコール等のポリマー増粘剤であってよい。増粘剤は、好ましくは、乾燥重量基準で、最大で5重量%まで、例えば、0.2又は0.5%から最大で1%、塗膜組成物中に存在する。
【0027】
減摩性塗膜は、ローラ塗布、例えば、グラビア、オフセットローラ又はキスロールによって、カーテンコーティングによって、空気補助若しくはエアレススプレーであってもよいスプレーによって、又は、ナイフオーバーローラ(knife over roller)によって、被覆されたエアバッグ又は被覆されたエアバッグファブリックに塗布されてもよい。ローラ塗布は、少ない塗布量で均一に塗布する効果的な方法として好ましいことが多い。ファブリックに転写される塗膜組成物の量は、ローラへの圧力及び/又はグラビア中のエッチング表面の深さの関数である。減摩性塗膜は、好ましくは、乾燥塗膜重量基準で、1g/mから最大で15g/mまで、例えば、3〜5g/mの被覆量で塗布される。1又は2g/mの低い被覆量は、必要とされる低い摩擦係数を提供し、ブロッキングを防ぐことができる。より高い被覆量、例えば、5〜15g/mは、エアバッグを密封し、バッグからの空気圧の損失の速度を落とすという更なる利益をもたらし得る。
【0028】
減摩性塗膜組成物中の水性希釈剤(水と、水と混合された任意の共溶媒)の量は、コーティングに必要な粘度及び必要とされる被覆量に応じて制御されてよい。通常、塗膜組成物は、20〜75重量%の固体含有率を有し、80〜25%の水性希釈剤を含んでいる。
【0029】
エアバッグ又はエアバッグファブリックに、下地塗りとして塗布されるオルガノポリシロキサン組成物は、上述の特許に記載されたもののいずれかであってよい。オルガノポリシロキサン組成物の下地塗りは、好ましくは、脂肪族不飽和炭化水素又はヒドロカルボノキシ(hydrocarbonoxy)置換基を有するオルガノポリシロキサンと、ケイ素が結合した少なくとも3つの水素原子を有する有機ケイ素架橋剤と、脂肪族不飽和炭化水素又はヒドロカルボノキシ置換基とSi−H基との反応を促進することのできる触媒と、補強充填剤とを含んでいる。
【0030】
オルガノポリシロキサンの下地塗りは、通常、減摩性塗膜の塗布前に硬化するが、別のプロセスにおいては、減摩性塗膜組成物が、未硬化のオルガノポリシロキサンの下地塗りに塗布され、オルガノポリシロキサンの下地塗り組成物と減摩性塗膜組成物との組み合わせが熱硬化される。
【0031】
減摩性塗膜が、硬化したオルガノポリシロキサンの下地塗りに塗布される場合、減摩性塗膜は、周辺温度で硬化することができるか、又は、例えば、50〜200℃、特には100〜150℃の範囲内に昇温した温度で、より迅速に硬化することができる。高温で硬化する可能な方法の1つは、オルガノポリシロキサンの下地塗りの熱硬化の直後に、減摩性塗膜組成物を、加熱した基材、例えば、コーティングしたエアバッグ又はエアバッグファブリックに塗布することを含む。
【0032】
減摩性の塗膜組成物を、未硬化のオルガノポリシロキサンの下地塗りに塗布する場合、塗布は、好ましくはスプレーによるものである。米国特許第6534126号は、粉末のシリコーンゴムの水性懸濁液を、熱硬化性液体シリコーンゴム組成物の未硬化表面にスプレーすることを記載しており、同様の技術が本発明の減摩性塗膜組成物を塗布するのに使用されてもよい。脂肪族不飽和炭化水素又はヒドロカルボノキシ置換基を有するオルガノポリシロキサンと、ケイ素が結合した少なくとも3つの水素原子と、触媒とを含んだ好ましいオルガノポリシロキサン組成物の下地塗り、及び、かかる下地塗りの未硬化表面に塗布された本発明に従う減摩性塗膜組成物は、共に、ファブリック表面で、100〜200℃の範囲内の温度、例えば、125〜150℃で硬化されてもよい。
【0033】
本発明の減摩性塗膜は、被覆エアバッグにおいて摩擦を低減し、故に、車両を使用する場合において移動に供されるとき、エアバッグの低下した圧力保持をもたらす、エアバッグの磨耗を低減する。減摩性塗膜はまた、シリコーン表面のブロッキング、即ち、車両のエアバッグコンパートメントにおける保管又は密なパッキングの間に、被覆表面が互いに貼り付くことを阻止する。かかるブロッキングは、エアバッグが膨張する場合に、非常に高い応力を生じ、これは、引裂によって又はファブリックからのシリコーンの下地塗りの剥離によって、バッグの欠陥を生じ得る。我々はまた、特に、減摩性塗膜の被覆量が5g/mを超える場合、本発明に従う減摩性塗膜が、空気圧の損失に対して、エアバッグの密封を増加させるのにある程度の影響を与えることを見出した。上塗りが、エアバッグの圧力保持を改善することは、異例である。
【0034】
好ましくは、本明細書中に記載されたエアバッグは、加圧された気体がファブリック外皮内に比較的長時間、例えば、5秒以上保持されなければならないエアバッグ、特に自動車産業用のサイドカーテンエアバッグへの適用において、とりわけ有用である。これらのサイドカーテンエアバッグは、従来のエアバッグのように、衝突時に膨らむことが意図されている。サイドカーテンは、乗客と、車体の側面の一部、例えば窓との間に、クッション性のあるカーテンを形成するよう展開する。従来の運転席及び助手席エアバッグの場合のように、衝突それ自体の衝撃を和らげるだけでなく、例えば、車が回転する場合に乗客を保護することも意図しているため、かかる回転する過程の間、サイドカーテンエアバッグが充分に加圧されることが重要である。従来の運転席及び助手席エアバッグが、何分の1秒かの間圧力を保持する必要があるに過ぎない場合、サイドカーテンエアバッグは、2、3秒間、適切な圧力を保持することが望ましい。加圧されたファブリック構造が、例えば、航空機の緊急シュート又は膨張式ボートにおいて、比較的長時間、ある一定のガス圧を維持するために望まれる場合、同様に適用する。従って、シリコーンゴムコーティングにより付与される低い被覆量で、柔軟性及び耐高温性の利益を持ちながらも、改善された気密性をも有する被覆ファブリックに対する需要がある。
【0035】
本発明は以下の例によって説明されるが、その中で、部及び割合は、特に示さない限り、重量によるものである。
【実施例】
【0036】
実施例1
1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチル−3−ポリエトキシプロピル−トリシロキサン湿潤剤及び3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン接着促進剤を、非イオン性界面活性剤によって安定化された水性脂肪族ポリウレタン分散系に添加し、非イオン性界面活性剤によって安定化されたPTFE粉末の水分散液と混合し、水52%と、PTFE38%と、ウレタンポリマー3.0%と、湿潤剤3.0%と、エポキシシラン接着促進剤1.0%と、(t−オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール非イオン性界面活性剤3.0%とを含んだ減摩性塗膜組成物を形成した。
【0037】
上記減摩性塗膜を、硬化した液体シリコーンゴム55g/mが被覆された、織られたナイロンのエアバッグファブリックの被覆表面に、グラビアローラコーティングよって塗布した。下地塗りは、脂肪族不飽和炭化水素又はヒドロカルボノキシ置換基を有するオルガノポリシロキサン、ケイ素が結合した少なくとも3つの水素原子を有する有機ケイ素架橋剤、白金錯体触媒及びシリカ補強充填剤を含んでいた。減摩性塗膜は、140℃で熱硬化された。異なる実験において、減摩性塗膜を3g/mと6g/mの被覆量で塗布した。
【0038】
上塗りされた表面の摩擦係数(COF)を、ASTM D−1894に従い、200gのスレッド(sled)を使用して、ニューヨーク、ロンコンコマのテスティングマシ−ン株式会社(Testing Machine Inc.)のTMIモニター/スリップ及び摩擦試験装置(TMI Monitor/Slip and Friction Tester)により測定した。減摩性塗膜3g/mにより被覆したファブリックのCOFは、0.9であり、減摩性塗膜6g/mにより被覆したファブリックのCOFは、0.8であった。これに対して、硬化した液体シリコーンゴムの下地塗りによって被覆されたファブリックのCOFは、1.2〜1.9の範囲内であった。
【0039】
減摩性塗膜6g/mの被覆されたファブリックからカーテンエアバッグを作製した。エアバッグを、10リットルのタンクを140kPaまで圧縮し、0.2秒以内にバッグの中へ排出する動的圧力維持試験において試験した。バッグの中の圧力を、圧力放出後10秒間に渡って記録した。50kPaに達するのにかかった時間は6秒であった。これに対して、硬化した液体シリコーンゴムの下地塗りのみによって被覆されたファブリックから作製したエアバッグを試験した場合、50kPaに達するのにかかった時間は3秒であった。
【0040】
実施例2
Imifabi HTP3の商標名で販売される平均粒径4μmのタルクを、PTFEとポリウレタンバインダとの分散系に混合したこと以外は、実施例1を繰り返した。減摩性塗膜の配合は、水50%、PTFE32%、タルク8.3%、ポリウレタン2.7%、湿潤剤3.0%、接着促進剤1.0%及び非イオン性界面活性剤3.0%であった。
【0041】
実施例2の減摩性塗膜3g/mの被覆されたファブリックのCOFは、0.5であり、減摩性塗膜6g/mの被覆されたファブリックのCOFは、0.3であった。減摩性塗膜中における、PTFEと組み合わせたタルクの使用が、被覆されたエアバッグ表面のCOFを更に低減したことを理解することができる。
【0042】
実施例3
脂肪族ポリウレタンと、2,5−フランジオン1−ブテンコポリマーとを、共溶媒を含んだアニオン性界面活性剤によって安定化した水中に分散させた。PTFE分散系を、得られた分散系と混合し、水45.0%と、PTFE26.0%と、ポリウレタン9.3%と、フランジオンブテンコポリマー8.3%と、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムアニオン性界面活性剤5.0%と、イソプロパノール3.0%と、N−メチルピロリドン2.6%と、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル0.87%とを含んだ減摩性塗膜を形成した。
【0043】
実施例3の減摩性塗膜を、硬化した液体シリコーンゴムコーティングにより被覆したエアバッグの被覆表面に、グラビアローラコーティングによって塗布し、実施例1に記載した通りに熱硬化した。グラビアコーティングプロセスにおいて、より高いプロセス安定性によって低減された摩擦特性が達成された。
【0044】
実施例4
減摩性塗膜を、アルミニウム三水和物をタルクと共に添加することにより、実施例2の手順に従って調製した。得られた塗膜組成物は、水52部、PTFE38部、タルク10部、アルミニウム三水和物20部、ウレタンポリマー3.0部、湿潤剤2.0部、エポキシシラン接着促進剤1.0部及び(t−オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール非イオン性界面活性剤3.0部を含んでいた。
【0045】
減摩性塗膜を、硬化した液体シリコーンゴム52g/mにより被覆した1.7mの織られたナイロンのエアバッグの被覆表面に、グラビアコーティングによって8g/m被覆した。下地塗りは、脂肪族不飽和炭化水素又はヒドロカルボノキシ置換基を有するオルガノポリシロキサン、ケイ素が結合した少なくとも3つの水素原子を有する有機ケイ素架橋剤、白金錯体触媒、及びシリカ補強充填剤を含んでいた。減摩性塗膜を、140℃で熱硬化した。減摩性塗膜6g/mで被覆したファブリックのCOFは、0.3であった。
【0046】
そのようにして被覆されたエアバッグを、エアバッグを80kPaまで加圧する圧力保持試験に供した。空気弁を閉め、エアバッグ内部の圧力を、コンピュータを用いて10秒間に渡り、モニターした。10秒後、圧力は58kPaであった。
【0047】
比較実験では、エアバッグを、シリコーンの下地塗り60g/mによって被覆した。10秒後、圧力保持試験において、圧力は48kPaであった。従って、上塗りは、エアバッグに対する同じ総被覆量でも、シリコーンゴムのみから被覆されたエアバッグの圧力保持を改善した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリマーバインダ中に分散した少なくとも1つの固体潤滑剤を含んだ減摩性塗膜によって上塗りされていることを特徴とする、硬化したオルガノポリシロキサン組成物の被覆されたエアバッグ。
【請求項2】
前記分散した固体潤滑剤は、フルオロポリマーを含むことを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項3】
前記分散した固体潤滑剤は、ポリテトラフルオロエチレンを含むことを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ。
【請求項4】
前記分散した固体潤滑剤は、タルクを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエアバッグ。
【請求項5】
前記固体潤滑剤は、ポリウレタンバインダ中に分散していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のエアバッグ。
【請求項6】
前記減摩性塗膜は、乾燥塗膜重量基準で20〜90%の固体潤滑剤を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のエアバッグ。
【請求項7】
前記減摩性塗膜は、難燃剤として、5〜55重量%のアルミニウム三水和物を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のエアバッグ。
【請求項8】
前記減摩性塗膜の被覆量は、乾燥塗膜重量基準で1〜15g/mであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のエアバッグ。
【請求項9】
オルガノポリシロキサン組成物によって被覆されてオルガノポリシロキサンの下地塗りを形成する、エアバッグ又はエアバッグファブリックを被覆する方法であって、
前記エアバッグが、少なくとも1つの分散した固体潤滑剤の水分散液を含んだ減摩性塗膜組成物によって上塗りされることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記減摩性塗膜組成物は、有機ポリマーバインダの水分散液中に、固体フルオロポリマーの分散系を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記減摩性塗膜組成物は、有機ポリマーバインダの水分散液中に、タルクの分散系を含むことを特徴とする請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記水分散液は、1〜3個のアルキルポリ(エチレンオキシ)シロキサン基(i)と、1〜4個のアルキルシロキサン基(ii)とを有するシロキサンポリエーテル湿潤剤を含むことを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記水分散液は、エポキシシラン又はアミノシラン接着促進剤を含むことを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記バッグ又はファブリックに下地塗りとして塗布された前記オルガノポリシロキサン組成物は、脂肪族不飽和炭化水素又はヒドロカルボノキシ置換基を有するオルガノポリシロキサンと、ケイ素が結合した少なくとも3つの水素原子を有する有機ケイ素架橋剤と、前記脂肪族不飽和炭化水素又はヒドロカルボノキシ置換基とSi−H基との反応を促進することのできる触媒と、補強充填剤とを含み、前記減摩性塗膜の塗布前に硬化することを特徴とする請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記オルガノポリシロキサンの下地塗りは、前記減摩性塗膜組成物の塗布前に硬化する、請求項9〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記減摩性塗膜組成物が未硬化のオルガノポリシロキサンの下地塗りに塗布され、前記オルガノポリシロキサンの下地塗り組成物と前記減摩性塗膜組成物との組み合わせが熱硬化する、請求項9〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
有機ポリマーバインダの分散系中に固体フルオロポリマーの水分散液を含み、該水分散液がシロキサンポリエーテル湿潤剤を含むことを特徴とする減摩性塗膜組成物。
【請求項18】
前記シロキサンポリエーテルは、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチル−3−ポリエトキシプロピル−トリシロキサンであることを特徴とする請求項17に記載の減摩性塗膜。
【請求項19】
有機ポリマーバインダの分散系中に固体フルオロポリマーの水分散液を含み、前記水分散液がエポキシシラン接着促進剤を含むことを特徴とする減摩性塗膜組成物。
【請求項20】
有機ポリマーバインダ中に分散した固体潤滑剤を含んだ減摩性塗膜の、硬化したオルガノポリシロキサン組成物の被覆されたエアバッグのための上塗りとしての使用。

【公表番号】特表2013−510768(P2013−510768A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539005(P2012−539005)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/056489
【国際公開番号】WO2011/060238
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(590001418)ダウ コーニング コーポレーション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】