補正用治具
【課題】レーザ測長機等の高度な装置や複雑な手間を要することなく、しかも部品実装装置のX軸およびY軸の座標の補正を行う補正用治具を提供する。
【解決手段】マウントヘッドをX軸方向およびY軸方向に移動させて目標位置に部品を実装する部品実装装置の、X軸方向およびY軸方向の移動の補正値を求めるための補正用治具75であって、部品実装装置のX軸およびY軸にそれぞれ沿って配置される辺を有する矩形状の表面を有するガラスからなる本体部と、表面に形成され、マウントヘッドに搭載されたカメラでそれぞれ認識される、本体部の辺に沿ってX軸方向およびY軸方向にそれぞれ1列で配置された複数の観測点77,78と、を含み、表面内で1列に配置された複数の観測点77,78よりも内側の領域には他の観測点が設けられていない。
【解決手段】マウントヘッドをX軸方向およびY軸方向に移動させて目標位置に部品を実装する部品実装装置の、X軸方向およびY軸方向の移動の補正値を求めるための補正用治具75であって、部品実装装置のX軸およびY軸にそれぞれ沿って配置される辺を有する矩形状の表面を有するガラスからなる本体部と、表面に形成され、マウントヘッドに搭載されたカメラでそれぞれ認識される、本体部の辺に沿ってX軸方向およびY軸方向にそれぞれ1列で配置された複数の観測点77,78と、を含み、表面内で1列に配置された複数の観測点77,78よりも内側の領域には他の観測点が設けられていない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は補正用治具に係り、とくに所定の対象物を座標軸に沿って移動させるようにした装置における補正用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路は絶縁材料から成る回路基板上に形成される。すなわち絶縁材料の回路基板上に接合された銅箔を選択的にエッチングして所定の配線パターンを形成するとともに、その上に部品を実装し、部品の電極を配線パターンの接続ランドに半田付けし、これによって電子部品が互いに接続されて所定の電子回路が形成される。
【0003】
このような回路基板上における部品の実装のために、電子部品実装装置が用いられる。実装装置はマウントヘッドを備え、このマウントヘッドの先端部に取付けられている吸着ノズルによって部品をパーツカセットから取出し、X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向の運動の組合わせによって回路基板上の所定の位置にマウントするものである。
【0004】
ここで回路基板上の所定の位置に正しく電子部品を実装するために、マウントヘッドにワーク認識カメラを取付けておき、このワーク認識カメラによって回路基板上の基準マークを画像認識し、この画像認識に基いて回路基板の位置の補正を行なうようにしている。そしてこのような位置補正に応じてマウントヘッドによる部品の実装に補正を加え、回路基板上の所定の位置へ正しく電子部品を実装している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような部品実装装置は、吸着ノズルを先端部に有するマウントヘッドをX軸およびY軸に沿ってそれぞれ移動させるようにしているために、X軸およびY軸が高い剛性を有し、しかも狂いがない状態で設けられることが必要になる。X軸およびY軸がゆがんでいたり曲っていたり、あるいはうねっていたりすると、マウントヘッドの移動に狂いを生じ、正しい位置に電子部品を実装することができない。
【0006】
そこで従来は3点測定によってX軸およびY軸についてそれぞれ簡易的な補正を行なっていた。ところがこのような補正では、X軸およびY軸のそれぞれの軸の傾きおよび平均化された送り誤差補正しか行なうことができない。またX軸およびY軸の真直度等の走り精度を補正するは、レーザー測長器のような高度な装置を用いて手間のかかる測長を行なうことが必要になり、とくに量産の装置については生産性が劣る問題がある。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであって、レーザー測長器等のような高度な装置を用いることなく、しかも煩雑な手間を要することなく高精度に座標軸の補正を行なうことができるようにした補正用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための、本発明の補正用治具は、マウントヘッドをX軸方向およびY軸方向に移動させて目標位置に部品を実装する部品実装装置の、X軸方向およびY軸方向の移動の補正値を求めるための補正用治具であって、部品実装装置のX軸およびY軸にそれぞれ沿って配置される辺を有する矩形状の表面を有するガラスからなる本体部と、表面に形成され、マウントヘッドに搭載されたカメラでそれぞれ認識される、本体部の辺に沿ってX軸方向およびY軸方向にそれぞれ1列で配置された複数の観測点と、を含み、表面内で1列に配置された複数の観測点よりも内側の領域には他の観測点が設けられていないものである。
【0009】
X軸およびY軸を有する装置において、X軸およびY軸の真直度等の走り精度を補正するには、高度な装置と手間のかかるレーザー測長等の測定が必要になるが、本願発明の上記の態様では外部の測定器で既に測定された補正用治具を用い、ヘッドに取付けられたワーク認識カメラにより補正用時具上の観測点を測定することにより、簡単に走り精度の補正が可能になる。また装置の量産に当っても、その装置を測定するための測定機およびその準備が不要で、生産性の向上が図られるとともに、装置出荷後のサービスも場所を選ばずに簡単に行なうことが可能になる。
【発明の効果】
【0010】
補正用治具に関する主要な発明は、平坦な平面を有し、該平坦な平面上における座標軸に沿って1列に観測点を設けた補正用治具に関するものである。
【0011】
従って極めて単純な構成の補正用治具となり、高度な装置や手間のかかる測長等を行なうことなくしかも装置の座標軸の補正を行なうための補正用治具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】部品実装装置の全体の構成を示す斜視図である。
【図2】マウントヘッドを示す一部を破断した正面図である。
【図3】同マウントヘッドの側面図である。
【図4】ミラーを退避したときのマウントヘッドの側面図である。
【図5】吸着ノズルを下降させたときのマウントヘッドの側面図である。
【図6】制御部のシステム構成を示すブロック図である。
【図7】基準治具の平面図である。
【図8】位置決め穴を有する基準治具の平面図である。
【図9】補正データの測定の動作を示すフローチャートである。
【図10】補正式の算出を示すフローチャートである。
【図11】カメラ画像上のキャリブレーションターゲットを示す平面図である。
【図12】カメラ画像上の観測点を示す平面図である。
【図13】真直度の誤差を示すグラフである。
【図14】累積リード誤差を示すグラフである
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明を図示の形態によって説明する。まずマウントヘッドをX軸方向およびY軸方向に移動させて目標位置に部品を実装する部品実装装置の全体の構成を図1〜図3によって説明する。
【0014】
図1に示すように部品実装装置はベース10を備えるとともに、このベース10上にはフレーム11が架装されている。そしてその一方の側面にはパーツカセット装着台12が設けられており、この装着台12上にパーツカセット13を配列して搭載するようにしている。図1においては単一のパーツカセット13のみしか図示されていないが、実際にはそれぞれ異なる種類の部品を保持したテープをリールによって保持した多数のパーツカセット13が一列に配されるようになる。そして上記パーツカセット13の配置位置の前方には横方向に延びる搬送コンベア14が設けられており、この搬送コンベア14によって回路基板15が供給される。
【0015】
これに対してフレーム11の下部にはX軸ユニット17が取付けられるとともに、このX軸ユニット17によってX軸方向に移動可能なY軸ユニット18が設けられており、Y軸ユニット18によってY軸方向に移動自在にマウントヘッド19が取付けられている。マウントヘッド19はその先端側に図2に示すように吸着ノズル20を備えており、この吸着ノズル20によって部品を吸着保持し、上記回路基板15上の所定の位置
にマウントする。
【0016】
次にマウントヘッド19の構成について図2および図3により説明する。マウントヘッド19はフレーム23を備えるとともに、このフレーム23にボールナット24が回転自在に支持されている。そしてボールナット24は垂直に配されるボールねじ25と螺合されている。しかもボールナット24にはプーリ26が取付けられている。そしてフレーム23上のモータ28の出力軸29にプーリ30が取付けられている。ボールナット24のプーリ26とモータ28の出力軸29のプーリ30との間にはタイミングベルト31が掛渡されている。
【0017】
先端部に吸着ノズル20を備えるボールねじ25はさらにスプラインナット34と係合されている。スプラインナット34は上記ボールナット24の下側に位置し、しかもその外周部にプーリ35を備えている。これに対して図3に示すモータ36にはその出力軸にプーリ37が固着されている。そしてスプラインナット34のプーリ35とモータ36のプーリ37との間にタイミングベルト38が掛渡されている。
【0018】
またフレーム23にはブラケット41を介してワーク認識カメラ42が支持されている。ワーク認識カメラ42は搬送コンベア14によって送られてきた回路基板15(図1参照)を上方から認識するためのものである。
【0019】
また上記フレーム23にはブラケット45が固着されるとともに、このブラケット45の先端側に横方向に延びるようにリニアガイド46が取付けられている。そしてリニアガイド46と平行にボールねじ47もブラケット45に支持されている。そしてアーム48が上記ボールねじ47と螺合するボールナット49に固着されている。そしてアーム48の先端側の部分にはミラー50が取付けられている。またボールねじ47にはプーリ52が固着されている。また水平方向に配されたモータ54の出力軸55にはプーリ56が固着されている。そしてボールナット49のプーリ52とモータ54のプーリ56との間にタイミングベルト57が掛渡されている。またブラケット45の側部にはさらに別のブラケット60を介してミラー61が支持されるとともに、このミラー61の上部に部品認識カメラ62が取付けられている。部品認識カメラ62は吸着ノズル20によって吸着された部品の下面の画像をミラー50、61によって反射させて取込み、画像認識を行なうためのものである。
【0020】
上記ワーク認識カメラ42および部品認識カメラ62は図6に示すように、それぞれ画像処理回路65、66を介してコントローラ63に接続されている。コントローラ63は上記のワーク認識カメラ42および部品認識カメラ62によって取込まれかつ画像処理回路65、66で画像処理された画像情報が入力されるとともに、演算をするためのコンピュータ(CPU)を備え、しかも記憶装置67と接続されている。またコントローラ63はX軸ユニット17、Y軸ユニット18、モータ28、36、54、および搬送コンベア14をそれぞれ制御する。
【0021】
このように本実施の形態の電子部品実装装置は、図1に示すように電子部品をテープによって巻装した状態で供給するパーツカセット13と、回路基板15を搬送する搬送コンベア14と、電子部品をパーツカセット13から取出して回路基板15上の所定の位置に実装するためのマウントヘッド19と、マウントヘッド19を回路基板15の所定の位置へ移動するためのX軸ユニット17およびY軸ユニット18とから構成されている。
【0022】
そして上記マウントヘッド19は図2および図3に示すように、電子部品を吸着するための吸着ノズル20と、この吸着ノズル20を上下方向に移動および回転させるためのスプライン付きボールねじ25と、スプライン付きボールねじ25のボールナット24をタイミングベルト31を介して回転させるためのモータ28と、スプライン付きボールねじ25のスプラインナット34をタイミングベルト38を介して回転させるためのモータ36と、吸着ノズル20に吸着された電子部品の位置を検出する第1のミラー50、第2のミラー61、および部品認識カメラ62と、吸着ノズル20が上下動するときにミラー50を退避させるためのリニアガイド46、ボールねじ47、タイミングベルト57を介してボールねじ47を回転させるためのモータ54、および電子部品を装着する回路基板15の位置を検出するワーク認識カメラ42から構成される。
【0023】
ここでモータ36を駆動することなくスプラインナット34を停止させた状態でモータ28によってボールナット24を回転させると、ボールねじ25は回転することなく上下動する。従って吸着ノズル20のZ軸方向の運動が可能になる。これに対してモータ36によってスプラインナット34を回転させるとともに、モータ28によって同じ角度でボールナット24を回転させると、ボールねじ25は上下動することなく回転運動のみを行なう。従ってこれにより吸着ノズル20の回転動作、すなわちθ軸の動作が行なわれる。
【0024】
次にこのような実装装置による電子部品の実装動作の概要を説明する。回路基板15は搬送コンベア14によって搬送され、所定の位置で位置決めされる。するとこの実装装置はマウントヘッド19をX軸ユニット17およびY軸ユニット18によってX軸方向およびY軸方向に移動させ、回路基板15上のフィデューシャルマークをマウントヘッド19に設けられているワーク認識カメラ42によって撮像してその位置を検出し、これによって回路基板15の正確な位置を促らえる。このような動作によってワーク認識カメラ42を何処に移動させれば電子部品を実装すべき位置の上に来る
かが分る。
【0025】
その後にマウントヘッド19は電子部品を供給するパーツカセット13の部品取出し位置まで移動し、吸着ノズル20を下降させて電子部品を真空吸着する。このときにミラー50の位置は図4および図5に示すように吸着ノズル20の上下動作エリアから退避した位置にある。そして吸着ノズル20が電子部品を吸着した後にボールナット24の回転によって所定の高さまで上昇し、その後にミラー50が図3に示すように吸着ノズル20の下まで移動する。すると吸着ノズル20に吸着された電子部品の下面の映像がミラー50、61によって反射され、部品認識カメラ62によって撮像される。
【0026】
部品認識カメラ62によって撮像された電子部品の位置に関する情報を用いて吸着時の電子部品のカメラ画像基準位置(通常は吸着ノズル20の回転中心位置)からの位置ずれ量を検出する。マウントヘッド19は予めプログラムされた回路基板15上の所定の位置に吸着時の位置ずれ量を補正した位置に移動する。この後にミラー50を図4に示すように退避させて図5に示すように吸着ノズル20を下降させ、電子部品を回路基板15上の所定の位置に装着する。
【0027】
このような部品実装装置において、X軸ユニット17およびY軸ユニット18から構成される機械座標系は、部品の加工精度や組立て精度等によって、回路基板15上の理想的なXY座標であるNC座標系に対して歪みをもつ座標系である。そこでこのような機械座標系を理想的なNC座標系に一致させるための補正を行なわなければならない。このような補正について以下に説明する。
【0028】
XY座標補正で使用する座標補正用基準治具75(補正用治具)は図7に示される。基準治具75は例えばステンレス鋼板の平板から成り、基準治具平面上にはエッチング等の方法によって複数個の観測点76、77、78が形成されている。さらに観測点76の近傍にはカメラキャリブレーション用ターゲット79が施されている。なおさらに補正精度が要求される場合には、ガラス基板(本体部)上にクロム等の蒸着によって観測点およびカメラキャリブレーション用ターゲットを施すことが望ましい。
【0029】
また図7で示される観測点76、77、78は円形であるが、これらの観測点は必ずしも円形に限らず、画像処理で最も精度良く観測点の中心座標が認識できる形状であればよい。カメラキャリブレーション用ターゲット79は上述のワーク認識カメラ42のスケールおよびカメラ座標系を決定するのに用いられるものである。ここでワーク認識カメラ42のレンズの球面収差による誤差を取除くために、極力カメラ視野全体で計測できるような図11に示すターゲット形状であることが好ましい。
【0030】
基準治具75の平面上に施された観測点は、NC座標系と一致する理想的なXY座標系で、予め測定されたそれぞれの観測点76、77、78の位置座標データを保持する。そしてカメラキャリブレーション用ターゲット79の点の配列は、上述のNC座標系と一致するように配置される。
【0031】
また基準治具75を回路基板15が載置される部位に基準ピン等によって指定位置に位置決めする場合には、図8に示すように基準治具75に位置決め穴81、82を設けると好ましい。このときに基準ピンの位置をNC座標の原点とする場合には、以下に述べる補正値において観測点原点と基準ピンの位置決め穴81との距離をオフセット値として考慮する必要がある。
【0032】
次に補正データの測定方法を図9に示すフローチャートによって説明する。図1に示す部品実装装置のX軸ユニット17およびY軸ユニット18は原点位置、すなわち機械座標原点から、搬送コンベア14の所定位置に位置決めされた基準治具75上のカメラキャリブレーション用ターゲット79の位置にワーク認識カメラ42を移動させる。このときにCCDカメラから成るワーク認識カメラ42は図11に示すようにキャリブレーション用ターゲット79を認識し、既知のターゲットサイズよりカメラスケールを、またターゲット79の点の配列からNC座標系に一致するカメラ座標系を生成し、任意の位置、例えば視野の中心位置をカメラ座標原点と定める。
【0033】
次に上記ワーク認識カメラ42を基準治具75上の観測点原点76に移動させる。ここで後の補正を簡潔にするために、観測点原点76の中心を画像処理にて求め、カメラの座標原点が一致するようにワーク認識カメラ42の位置をX軸ユニットおよびY軸ユニットによって調整する。
【0034】
観測点原点76とワーク認識カメラ42の座標原点が一致した位置から、基準治具75上のX軸方向に複数個配列された観測点77を、この基準治具75がデータとして有する観測点位置座標データに基いて、X軸ユニット17およびY軸ユニット18によってワーク認識カメラ42を移動させ、図12に示すように個々の観測点においてその観測点の中心を画像処理によって求める。そしてこの画像処理において、カメラの座標原点からのずれ量(Xri,Yri)(i=0〜n)を図6に示すコントローラ63のCPUと接続されている記憶装置67に格納する。同様に基準治具75上のY軸方向の観測点78についてもこの測定を行なう。これによってNC座標系に対する機械座標系の歪みが把握可能になる。
【0035】
以上のような測定によって得られたデータを利用して、この部品実装装置の機械座標系の歪みを補正する補正式をコントローラ63のCPUによる演算機能を利用して算出する。図10は補正式算出のフローチャートを示している。
【0036】
まず基準治具75上の直交する軸線上に等間隔に配置された各観測点77、78の座標を(Xpi,Ypi)(i=0〜n)とし、上記座標に従ってX軸ユニット17およびY軸ユニット18に取付けられたワーク認識カメラ42を移動させ、画像認識によって求めたカメラ座標原点からの観測点位置ずれ量(Xri,Yri)(i=0〜n)とする。
【0037】
基準治具75上のX軸線上に配置された各観測点77の測定結果(Xri,Yri)より、Y軸方向成分(Yri)の測定データの分布はX軸の真直度誤差、すなわちX軸のY軸方向の偏差量によって定義されるうねりを表すものとなる。このようなX軸のうねりであってY軸により補正するための近似式Fxs(Xpi)を求める。またX軸方向成分(Xri)の測定データの分布はX軸方向の送り誤差の累積値であって、図14に示すような累積リード誤差を表すものとなり、X軸によって補正するための近似式Fxp(Xpi)を求める。
【0038】
同様に基準治具75上のY軸線上に配置された各観測点78の測定結果(Xri,Yri)により、X軸方向成分(Xri)の測定データの分布は図13に示すようなY軸の真直度誤差、すなわちY軸のうねりを表すものとなり、X軸により補正するための近似式Fys(Ypi)を求める。またY軸方向成分(Yri)の測定データの分布は図14に示すような累積リード誤差を表すものになり、Y軸によって補正するための近似式Fyp(Ypi)を求める。
【0039】
上記のそれぞれの近似式より求める補正量は、X軸ではXhi=Fys(Ypi)+Fxp(Xpi)となり、Y軸についてはYhi=Fxs(Xpi)+Fyp(Ypi)となる。作業対象部品上の目標座標を(Xti,Yti)とすると、ここで求めるXY軸の補正後の座標は(Xti+Xhi,Yti+Yhi)となる。
【0040】
ここで用いる近似式は次の如く計算される。いま近似式をm次の多項式で近似するとともに、最小二乗法によって各パラメータの推定を行なう。近似関数を、Fm(x)=C0x0+C1x1+C2x2+・・・+Cmxmとおく。近似関数の値Fm(xi)とxiに対応するデータの値yiとの残差riは、
ri=Fm(xi)−yi(i=0〜n)(nは観測点数)
となる。このときのパラメータC0,C1,C2・・・Cmは残差の平方和Qが最小になるように求める。
【数1】
ここで最小二乗法の場合、パラメータCk(k=0〜m)に関するQ(C0,C1,・・・Cm)の偏微分係数が同時に0になるとき最小値をとる。すなわち
【数2】
次の関数を代入してFm(xi)を展開すると、
【数3】
となり、行列方程式により残差の平方和Qを最小にするパラメータの解(C0,C1,C2・・・Cm)を求める。
【数4】
以上でm次多項式のパラメータC0,C1,C2・・・Cmが求まる。
【0041】
ここで上記の観測点座標(Xpi,Ypi)、観測結果(Xri,Yri)を当てはめると、Fys(Ypi)は、xi→Ypi、yi→Xri(図7中の観測点78より)
Fxp(Xpi)は、xi→Xpi、yi→Xri(図7中の観測点77より)
Fxs(Xpi)は、xi→Xpi、yi→Yri(図7中の観測点77より)
Fyp(Ypi)は、xi→Ypi、yi→Yri)(図7中の観測点78より)
となりそれぞれの近似式が求まる。以下の式においても同様に近似式が求まる。
【0042】
次にm次多項式の最適化について説明する。上述の推定モデルの関数は連続系関数であり、しかも調整可能なパラメータを含み、観測データに測定誤差が含まれる。このような場合には対数尤度(L)はパラメータ値により変化する。従って対数尤度(L)が最大となるようにパラメータ値(1〜m次)を調整することによって適合度が向上する。なおパラメータ数が経験値に一義的に決定できる場合には、以下を省略しても差支えない。
【0043】
次式によって最大対数尤度(L)を評価する。
【数5】
ここでV0は観測ノイズの分散であって次式によって表される。
【数6】
さらにAIC(Akaike´s information criterion)を用い、パラメータの数を決定する。
【0044】
AIC=(−2)×log(L)+2(m)上式において最小のAICを与えるモデルを最適なモデルと特定する。以上で決定されたパラメータ数のm次多項式を補正式として用いる。
【0045】
次に相関係数rによってこの近似式の有意性を確認する。まず決定係数r2は、
【数7】
相関係数rは
【数8】
となり、相関係数が任意の有意水準より大きければ有意と判断できる。逆に小さい場合には観測点の測定ミスや装置の異常が考えられるために、再度測定を試行し、有意と判断できるrを求めなければならない。
【符号の説明】
【0046】
10‥‥ベース、11‥‥フレーム、12‥‥パーツカセット装着台、13‥‥パーツカセット、14‥‥搬送コンベア、15‥‥回路基板、17‥‥X軸ユニット、18‥‥Y軸ユニット、19‥‥マウントヘッド、20‥‥吸着ノズル、23‥‥フレーム、24‥‥ボールナット、25‥‥ボールねじ、26‥‥プーリ、28‥‥モータ、29‥‥出力軸、30‥‥プーリ、31‥‥タイミングベルト、34‥‥スプラインナット、35‥‥プーリ、36‥‥モータ、37‥‥プーリ、38‥‥タイミングベルト、41‥‥ブラケット、42‥‥ワーク認識カメラ、45‥‥ブラケット、46‥‥リニアガイド、47‥‥ボールねじ、48‥‥アーム、49‥‥ボールナット、50‥‥ミラー、52‥‥プーリ、54‥‥モータ、55‥‥出力軸、56‥‥プーリ、57‥‥タイミングベルト、60‥‥ブラケット、61‥‥ミラー、62‥‥部品認識カメラ、63‥‥コントローラ、65、66‥‥画像処理回路、67‥‥記憶装置、75‥‥基準治具、76‥‥観測原点、77、78‥‥観測点、79‥‥カメラキャリブレーション用ターゲット、81、82‥‥位置決め穴
【技術分野】
【0001】
本発明は補正用治具に係り、とくに所定の対象物を座標軸に沿って移動させるようにした装置における補正用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路は絶縁材料から成る回路基板上に形成される。すなわち絶縁材料の回路基板上に接合された銅箔を選択的にエッチングして所定の配線パターンを形成するとともに、その上に部品を実装し、部品の電極を配線パターンの接続ランドに半田付けし、これによって電子部品が互いに接続されて所定の電子回路が形成される。
【0003】
このような回路基板上における部品の実装のために、電子部品実装装置が用いられる。実装装置はマウントヘッドを備え、このマウントヘッドの先端部に取付けられている吸着ノズルによって部品をパーツカセットから取出し、X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向の運動の組合わせによって回路基板上の所定の位置にマウントするものである。
【0004】
ここで回路基板上の所定の位置に正しく電子部品を実装するために、マウントヘッドにワーク認識カメラを取付けておき、このワーク認識カメラによって回路基板上の基準マークを画像認識し、この画像認識に基いて回路基板の位置の補正を行なうようにしている。そしてこのような位置補正に応じてマウントヘッドによる部品の実装に補正を加え、回路基板上の所定の位置へ正しく電子部品を実装している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような部品実装装置は、吸着ノズルを先端部に有するマウントヘッドをX軸およびY軸に沿ってそれぞれ移動させるようにしているために、X軸およびY軸が高い剛性を有し、しかも狂いがない状態で設けられることが必要になる。X軸およびY軸がゆがんでいたり曲っていたり、あるいはうねっていたりすると、マウントヘッドの移動に狂いを生じ、正しい位置に電子部品を実装することができない。
【0006】
そこで従来は3点測定によってX軸およびY軸についてそれぞれ簡易的な補正を行なっていた。ところがこのような補正では、X軸およびY軸のそれぞれの軸の傾きおよび平均化された送り誤差補正しか行なうことができない。またX軸およびY軸の真直度等の走り精度を補正するは、レーザー測長器のような高度な装置を用いて手間のかかる測長を行なうことが必要になり、とくに量産の装置については生産性が劣る問題がある。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであって、レーザー測長器等のような高度な装置を用いることなく、しかも煩雑な手間を要することなく高精度に座標軸の補正を行なうことができるようにした補正用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための、本発明の補正用治具は、マウントヘッドをX軸方向およびY軸方向に移動させて目標位置に部品を実装する部品実装装置の、X軸方向およびY軸方向の移動の補正値を求めるための補正用治具であって、部品実装装置のX軸およびY軸にそれぞれ沿って配置される辺を有する矩形状の表面を有するガラスからなる本体部と、表面に形成され、マウントヘッドに搭載されたカメラでそれぞれ認識される、本体部の辺に沿ってX軸方向およびY軸方向にそれぞれ1列で配置された複数の観測点と、を含み、表面内で1列に配置された複数の観測点よりも内側の領域には他の観測点が設けられていないものである。
【0009】
X軸およびY軸を有する装置において、X軸およびY軸の真直度等の走り精度を補正するには、高度な装置と手間のかかるレーザー測長等の測定が必要になるが、本願発明の上記の態様では外部の測定器で既に測定された補正用治具を用い、ヘッドに取付けられたワーク認識カメラにより補正用時具上の観測点を測定することにより、簡単に走り精度の補正が可能になる。また装置の量産に当っても、その装置を測定するための測定機およびその準備が不要で、生産性の向上が図られるとともに、装置出荷後のサービスも場所を選ばずに簡単に行なうことが可能になる。
【発明の効果】
【0010】
補正用治具に関する主要な発明は、平坦な平面を有し、該平坦な平面上における座標軸に沿って1列に観測点を設けた補正用治具に関するものである。
【0011】
従って極めて単純な構成の補正用治具となり、高度な装置や手間のかかる測長等を行なうことなくしかも装置の座標軸の補正を行なうための補正用治具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】部品実装装置の全体の構成を示す斜視図である。
【図2】マウントヘッドを示す一部を破断した正面図である。
【図3】同マウントヘッドの側面図である。
【図4】ミラーを退避したときのマウントヘッドの側面図である。
【図5】吸着ノズルを下降させたときのマウントヘッドの側面図である。
【図6】制御部のシステム構成を示すブロック図である。
【図7】基準治具の平面図である。
【図8】位置決め穴を有する基準治具の平面図である。
【図9】補正データの測定の動作を示すフローチャートである。
【図10】補正式の算出を示すフローチャートである。
【図11】カメラ画像上のキャリブレーションターゲットを示す平面図である。
【図12】カメラ画像上の観測点を示す平面図である。
【図13】真直度の誤差を示すグラフである。
【図14】累積リード誤差を示すグラフである
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明を図示の形態によって説明する。まずマウントヘッドをX軸方向およびY軸方向に移動させて目標位置に部品を実装する部品実装装置の全体の構成を図1〜図3によって説明する。
【0014】
図1に示すように部品実装装置はベース10を備えるとともに、このベース10上にはフレーム11が架装されている。そしてその一方の側面にはパーツカセット装着台12が設けられており、この装着台12上にパーツカセット13を配列して搭載するようにしている。図1においては単一のパーツカセット13のみしか図示されていないが、実際にはそれぞれ異なる種類の部品を保持したテープをリールによって保持した多数のパーツカセット13が一列に配されるようになる。そして上記パーツカセット13の配置位置の前方には横方向に延びる搬送コンベア14が設けられており、この搬送コンベア14によって回路基板15が供給される。
【0015】
これに対してフレーム11の下部にはX軸ユニット17が取付けられるとともに、このX軸ユニット17によってX軸方向に移動可能なY軸ユニット18が設けられており、Y軸ユニット18によってY軸方向に移動自在にマウントヘッド19が取付けられている。マウントヘッド19はその先端側に図2に示すように吸着ノズル20を備えており、この吸着ノズル20によって部品を吸着保持し、上記回路基板15上の所定の位置
にマウントする。
【0016】
次にマウントヘッド19の構成について図2および図3により説明する。マウントヘッド19はフレーム23を備えるとともに、このフレーム23にボールナット24が回転自在に支持されている。そしてボールナット24は垂直に配されるボールねじ25と螺合されている。しかもボールナット24にはプーリ26が取付けられている。そしてフレーム23上のモータ28の出力軸29にプーリ30が取付けられている。ボールナット24のプーリ26とモータ28の出力軸29のプーリ30との間にはタイミングベルト31が掛渡されている。
【0017】
先端部に吸着ノズル20を備えるボールねじ25はさらにスプラインナット34と係合されている。スプラインナット34は上記ボールナット24の下側に位置し、しかもその外周部にプーリ35を備えている。これに対して図3に示すモータ36にはその出力軸にプーリ37が固着されている。そしてスプラインナット34のプーリ35とモータ36のプーリ37との間にタイミングベルト38が掛渡されている。
【0018】
またフレーム23にはブラケット41を介してワーク認識カメラ42が支持されている。ワーク認識カメラ42は搬送コンベア14によって送られてきた回路基板15(図1参照)を上方から認識するためのものである。
【0019】
また上記フレーム23にはブラケット45が固着されるとともに、このブラケット45の先端側に横方向に延びるようにリニアガイド46が取付けられている。そしてリニアガイド46と平行にボールねじ47もブラケット45に支持されている。そしてアーム48が上記ボールねじ47と螺合するボールナット49に固着されている。そしてアーム48の先端側の部分にはミラー50が取付けられている。またボールねじ47にはプーリ52が固着されている。また水平方向に配されたモータ54の出力軸55にはプーリ56が固着されている。そしてボールナット49のプーリ52とモータ54のプーリ56との間にタイミングベルト57が掛渡されている。またブラケット45の側部にはさらに別のブラケット60を介してミラー61が支持されるとともに、このミラー61の上部に部品認識カメラ62が取付けられている。部品認識カメラ62は吸着ノズル20によって吸着された部品の下面の画像をミラー50、61によって反射させて取込み、画像認識を行なうためのものである。
【0020】
上記ワーク認識カメラ42および部品認識カメラ62は図6に示すように、それぞれ画像処理回路65、66を介してコントローラ63に接続されている。コントローラ63は上記のワーク認識カメラ42および部品認識カメラ62によって取込まれかつ画像処理回路65、66で画像処理された画像情報が入力されるとともに、演算をするためのコンピュータ(CPU)を備え、しかも記憶装置67と接続されている。またコントローラ63はX軸ユニット17、Y軸ユニット18、モータ28、36、54、および搬送コンベア14をそれぞれ制御する。
【0021】
このように本実施の形態の電子部品実装装置は、図1に示すように電子部品をテープによって巻装した状態で供給するパーツカセット13と、回路基板15を搬送する搬送コンベア14と、電子部品をパーツカセット13から取出して回路基板15上の所定の位置に実装するためのマウントヘッド19と、マウントヘッド19を回路基板15の所定の位置へ移動するためのX軸ユニット17およびY軸ユニット18とから構成されている。
【0022】
そして上記マウントヘッド19は図2および図3に示すように、電子部品を吸着するための吸着ノズル20と、この吸着ノズル20を上下方向に移動および回転させるためのスプライン付きボールねじ25と、スプライン付きボールねじ25のボールナット24をタイミングベルト31を介して回転させるためのモータ28と、スプライン付きボールねじ25のスプラインナット34をタイミングベルト38を介して回転させるためのモータ36と、吸着ノズル20に吸着された電子部品の位置を検出する第1のミラー50、第2のミラー61、および部品認識カメラ62と、吸着ノズル20が上下動するときにミラー50を退避させるためのリニアガイド46、ボールねじ47、タイミングベルト57を介してボールねじ47を回転させるためのモータ54、および電子部品を装着する回路基板15の位置を検出するワーク認識カメラ42から構成される。
【0023】
ここでモータ36を駆動することなくスプラインナット34を停止させた状態でモータ28によってボールナット24を回転させると、ボールねじ25は回転することなく上下動する。従って吸着ノズル20のZ軸方向の運動が可能になる。これに対してモータ36によってスプラインナット34を回転させるとともに、モータ28によって同じ角度でボールナット24を回転させると、ボールねじ25は上下動することなく回転運動のみを行なう。従ってこれにより吸着ノズル20の回転動作、すなわちθ軸の動作が行なわれる。
【0024】
次にこのような実装装置による電子部品の実装動作の概要を説明する。回路基板15は搬送コンベア14によって搬送され、所定の位置で位置決めされる。するとこの実装装置はマウントヘッド19をX軸ユニット17およびY軸ユニット18によってX軸方向およびY軸方向に移動させ、回路基板15上のフィデューシャルマークをマウントヘッド19に設けられているワーク認識カメラ42によって撮像してその位置を検出し、これによって回路基板15の正確な位置を促らえる。このような動作によってワーク認識カメラ42を何処に移動させれば電子部品を実装すべき位置の上に来る
かが分る。
【0025】
その後にマウントヘッド19は電子部品を供給するパーツカセット13の部品取出し位置まで移動し、吸着ノズル20を下降させて電子部品を真空吸着する。このときにミラー50の位置は図4および図5に示すように吸着ノズル20の上下動作エリアから退避した位置にある。そして吸着ノズル20が電子部品を吸着した後にボールナット24の回転によって所定の高さまで上昇し、その後にミラー50が図3に示すように吸着ノズル20の下まで移動する。すると吸着ノズル20に吸着された電子部品の下面の映像がミラー50、61によって反射され、部品認識カメラ62によって撮像される。
【0026】
部品認識カメラ62によって撮像された電子部品の位置に関する情報を用いて吸着時の電子部品のカメラ画像基準位置(通常は吸着ノズル20の回転中心位置)からの位置ずれ量を検出する。マウントヘッド19は予めプログラムされた回路基板15上の所定の位置に吸着時の位置ずれ量を補正した位置に移動する。この後にミラー50を図4に示すように退避させて図5に示すように吸着ノズル20を下降させ、電子部品を回路基板15上の所定の位置に装着する。
【0027】
このような部品実装装置において、X軸ユニット17およびY軸ユニット18から構成される機械座標系は、部品の加工精度や組立て精度等によって、回路基板15上の理想的なXY座標であるNC座標系に対して歪みをもつ座標系である。そこでこのような機械座標系を理想的なNC座標系に一致させるための補正を行なわなければならない。このような補正について以下に説明する。
【0028】
XY座標補正で使用する座標補正用基準治具75(補正用治具)は図7に示される。基準治具75は例えばステンレス鋼板の平板から成り、基準治具平面上にはエッチング等の方法によって複数個の観測点76、77、78が形成されている。さらに観測点76の近傍にはカメラキャリブレーション用ターゲット79が施されている。なおさらに補正精度が要求される場合には、ガラス基板(本体部)上にクロム等の蒸着によって観測点およびカメラキャリブレーション用ターゲットを施すことが望ましい。
【0029】
また図7で示される観測点76、77、78は円形であるが、これらの観測点は必ずしも円形に限らず、画像処理で最も精度良く観測点の中心座標が認識できる形状であればよい。カメラキャリブレーション用ターゲット79は上述のワーク認識カメラ42のスケールおよびカメラ座標系を決定するのに用いられるものである。ここでワーク認識カメラ42のレンズの球面収差による誤差を取除くために、極力カメラ視野全体で計測できるような図11に示すターゲット形状であることが好ましい。
【0030】
基準治具75の平面上に施された観測点は、NC座標系と一致する理想的なXY座標系で、予め測定されたそれぞれの観測点76、77、78の位置座標データを保持する。そしてカメラキャリブレーション用ターゲット79の点の配列は、上述のNC座標系と一致するように配置される。
【0031】
また基準治具75を回路基板15が載置される部位に基準ピン等によって指定位置に位置決めする場合には、図8に示すように基準治具75に位置決め穴81、82を設けると好ましい。このときに基準ピンの位置をNC座標の原点とする場合には、以下に述べる補正値において観測点原点と基準ピンの位置決め穴81との距離をオフセット値として考慮する必要がある。
【0032】
次に補正データの測定方法を図9に示すフローチャートによって説明する。図1に示す部品実装装置のX軸ユニット17およびY軸ユニット18は原点位置、すなわち機械座標原点から、搬送コンベア14の所定位置に位置決めされた基準治具75上のカメラキャリブレーション用ターゲット79の位置にワーク認識カメラ42を移動させる。このときにCCDカメラから成るワーク認識カメラ42は図11に示すようにキャリブレーション用ターゲット79を認識し、既知のターゲットサイズよりカメラスケールを、またターゲット79の点の配列からNC座標系に一致するカメラ座標系を生成し、任意の位置、例えば視野の中心位置をカメラ座標原点と定める。
【0033】
次に上記ワーク認識カメラ42を基準治具75上の観測点原点76に移動させる。ここで後の補正を簡潔にするために、観測点原点76の中心を画像処理にて求め、カメラの座標原点が一致するようにワーク認識カメラ42の位置をX軸ユニットおよびY軸ユニットによって調整する。
【0034】
観測点原点76とワーク認識カメラ42の座標原点が一致した位置から、基準治具75上のX軸方向に複数個配列された観測点77を、この基準治具75がデータとして有する観測点位置座標データに基いて、X軸ユニット17およびY軸ユニット18によってワーク認識カメラ42を移動させ、図12に示すように個々の観測点においてその観測点の中心を画像処理によって求める。そしてこの画像処理において、カメラの座標原点からのずれ量(Xri,Yri)(i=0〜n)を図6に示すコントローラ63のCPUと接続されている記憶装置67に格納する。同様に基準治具75上のY軸方向の観測点78についてもこの測定を行なう。これによってNC座標系に対する機械座標系の歪みが把握可能になる。
【0035】
以上のような測定によって得られたデータを利用して、この部品実装装置の機械座標系の歪みを補正する補正式をコントローラ63のCPUによる演算機能を利用して算出する。図10は補正式算出のフローチャートを示している。
【0036】
まず基準治具75上の直交する軸線上に等間隔に配置された各観測点77、78の座標を(Xpi,Ypi)(i=0〜n)とし、上記座標に従ってX軸ユニット17およびY軸ユニット18に取付けられたワーク認識カメラ42を移動させ、画像認識によって求めたカメラ座標原点からの観測点位置ずれ量(Xri,Yri)(i=0〜n)とする。
【0037】
基準治具75上のX軸線上に配置された各観測点77の測定結果(Xri,Yri)より、Y軸方向成分(Yri)の測定データの分布はX軸の真直度誤差、すなわちX軸のY軸方向の偏差量によって定義されるうねりを表すものとなる。このようなX軸のうねりであってY軸により補正するための近似式Fxs(Xpi)を求める。またX軸方向成分(Xri)の測定データの分布はX軸方向の送り誤差の累積値であって、図14に示すような累積リード誤差を表すものとなり、X軸によって補正するための近似式Fxp(Xpi)を求める。
【0038】
同様に基準治具75上のY軸線上に配置された各観測点78の測定結果(Xri,Yri)により、X軸方向成分(Xri)の測定データの分布は図13に示すようなY軸の真直度誤差、すなわちY軸のうねりを表すものとなり、X軸により補正するための近似式Fys(Ypi)を求める。またY軸方向成分(Yri)の測定データの分布は図14に示すような累積リード誤差を表すものになり、Y軸によって補正するための近似式Fyp(Ypi)を求める。
【0039】
上記のそれぞれの近似式より求める補正量は、X軸ではXhi=Fys(Ypi)+Fxp(Xpi)となり、Y軸についてはYhi=Fxs(Xpi)+Fyp(Ypi)となる。作業対象部品上の目標座標を(Xti,Yti)とすると、ここで求めるXY軸の補正後の座標は(Xti+Xhi,Yti+Yhi)となる。
【0040】
ここで用いる近似式は次の如く計算される。いま近似式をm次の多項式で近似するとともに、最小二乗法によって各パラメータの推定を行なう。近似関数を、Fm(x)=C0x0+C1x1+C2x2+・・・+Cmxmとおく。近似関数の値Fm(xi)とxiに対応するデータの値yiとの残差riは、
ri=Fm(xi)−yi(i=0〜n)(nは観測点数)
となる。このときのパラメータC0,C1,C2・・・Cmは残差の平方和Qが最小になるように求める。
【数1】
ここで最小二乗法の場合、パラメータCk(k=0〜m)に関するQ(C0,C1,・・・Cm)の偏微分係数が同時に0になるとき最小値をとる。すなわち
【数2】
次の関数を代入してFm(xi)を展開すると、
【数3】
となり、行列方程式により残差の平方和Qを最小にするパラメータの解(C0,C1,C2・・・Cm)を求める。
【数4】
以上でm次多項式のパラメータC0,C1,C2・・・Cmが求まる。
【0041】
ここで上記の観測点座標(Xpi,Ypi)、観測結果(Xri,Yri)を当てはめると、Fys(Ypi)は、xi→Ypi、yi→Xri(図7中の観測点78より)
Fxp(Xpi)は、xi→Xpi、yi→Xri(図7中の観測点77より)
Fxs(Xpi)は、xi→Xpi、yi→Yri(図7中の観測点77より)
Fyp(Ypi)は、xi→Ypi、yi→Yri)(図7中の観測点78より)
となりそれぞれの近似式が求まる。以下の式においても同様に近似式が求まる。
【0042】
次にm次多項式の最適化について説明する。上述の推定モデルの関数は連続系関数であり、しかも調整可能なパラメータを含み、観測データに測定誤差が含まれる。このような場合には対数尤度(L)はパラメータ値により変化する。従って対数尤度(L)が最大となるようにパラメータ値(1〜m次)を調整することによって適合度が向上する。なおパラメータ数が経験値に一義的に決定できる場合には、以下を省略しても差支えない。
【0043】
次式によって最大対数尤度(L)を評価する。
【数5】
ここでV0は観測ノイズの分散であって次式によって表される。
【数6】
さらにAIC(Akaike´s information criterion)を用い、パラメータの数を決定する。
【0044】
AIC=(−2)×log(L)+2(m)上式において最小のAICを与えるモデルを最適なモデルと特定する。以上で決定されたパラメータ数のm次多項式を補正式として用いる。
【0045】
次に相関係数rによってこの近似式の有意性を確認する。まず決定係数r2は、
【数7】
相関係数rは
【数8】
となり、相関係数が任意の有意水準より大きければ有意と判断できる。逆に小さい場合には観測点の測定ミスや装置の異常が考えられるために、再度測定を試行し、有意と判断できるrを求めなければならない。
【符号の説明】
【0046】
10‥‥ベース、11‥‥フレーム、12‥‥パーツカセット装着台、13‥‥パーツカセット、14‥‥搬送コンベア、15‥‥回路基板、17‥‥X軸ユニット、18‥‥Y軸ユニット、19‥‥マウントヘッド、20‥‥吸着ノズル、23‥‥フレーム、24‥‥ボールナット、25‥‥ボールねじ、26‥‥プーリ、28‥‥モータ、29‥‥出力軸、30‥‥プーリ、31‥‥タイミングベルト、34‥‥スプラインナット、35‥‥プーリ、36‥‥モータ、37‥‥プーリ、38‥‥タイミングベルト、41‥‥ブラケット、42‥‥ワーク認識カメラ、45‥‥ブラケット、46‥‥リニアガイド、47‥‥ボールねじ、48‥‥アーム、49‥‥ボールナット、50‥‥ミラー、52‥‥プーリ、54‥‥モータ、55‥‥出力軸、56‥‥プーリ、57‥‥タイミングベルト、60‥‥ブラケット、61‥‥ミラー、62‥‥部品認識カメラ、63‥‥コントローラ、65、66‥‥画像処理回路、67‥‥記憶装置、75‥‥基準治具、76‥‥観測原点、77、78‥‥観測点、79‥‥カメラキャリブレーション用ターゲット、81、82‥‥位置決め穴
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウントヘッドをX軸方向およびY軸方向に移動させて目標位置に部品を実装する部品実装装置の、前記X軸方向およびY軸方向の移動の補正値を求めるための補正用治具であって、
前記部品実装装置の前記X軸および前記Y軸にそれぞれ沿って配置される辺を有する矩形状の表面を有するガラスからなる本体部と、
前記表面に形成され、前記マウントヘッドに搭載されたカメラでそれぞれ認識される、前記本体部の前記辺に沿ってX軸方向およびY軸方向にそれぞれ1列で配置された複数の観測点と、を含み、
前記表面内で前記1列に配置された複数の観測点よりも内側の領域には他の観測点が設けられていない
部品実装装置の補正用治具。
【請求項2】
前記観測点はクロムにより形成されている
請求項1に記載の補正用治具。
【請求項3】
マウントヘッドをX軸方向およびY軸方向に移動させて目標位置に部品を実装する部品実装装置の、前記X軸方向およびY軸方向の移動の補正値を求めるための補正用治具であって、
前記X軸およびY軸に対応する辺を有する矩形状のガラス基板と、
前記ガラス基板上に形成された複数の観測点と、を含み、
前記複数の観測点は前記辺に沿った1列のみからなる
部品実装装置の補正用治具。
【請求項4】
マウントヘッドをX軸方向およびY軸方向に移動させて目標位置に部品を実装する部品実装装置の、前記X軸方向およびY軸方向の移動の補正値を求めるための補正用治具であって、
前記X軸および前記Y軸に沿った直交する軸線上であって、前記補正用治具の辺に沿って等間隔にそれぞれ1列で配列された複数の観測点を有する
部品実装装置の補正用治具。
【請求項1】
マウントヘッドをX軸方向およびY軸方向に移動させて目標位置に部品を実装する部品実装装置の、前記X軸方向およびY軸方向の移動の補正値を求めるための補正用治具であって、
前記部品実装装置の前記X軸および前記Y軸にそれぞれ沿って配置される辺を有する矩形状の表面を有するガラスからなる本体部と、
前記表面に形成され、前記マウントヘッドに搭載されたカメラでそれぞれ認識される、前記本体部の前記辺に沿ってX軸方向およびY軸方向にそれぞれ1列で配置された複数の観測点と、を含み、
前記表面内で前記1列に配置された複数の観測点よりも内側の領域には他の観測点が設けられていない
部品実装装置の補正用治具。
【請求項2】
前記観測点はクロムにより形成されている
請求項1に記載の補正用治具。
【請求項3】
マウントヘッドをX軸方向およびY軸方向に移動させて目標位置に部品を実装する部品実装装置の、前記X軸方向およびY軸方向の移動の補正値を求めるための補正用治具であって、
前記X軸およびY軸に対応する辺を有する矩形状のガラス基板と、
前記ガラス基板上に形成された複数の観測点と、を含み、
前記複数の観測点は前記辺に沿った1列のみからなる
部品実装装置の補正用治具。
【請求項4】
マウントヘッドをX軸方向およびY軸方向に移動させて目標位置に部品を実装する部品実装装置の、前記X軸方向およびY軸方向の移動の補正値を求めるための補正用治具であって、
前記X軸および前記Y軸に沿った直交する軸線上であって、前記補正用治具の辺に沿って等間隔にそれぞれ1列で配列された複数の観測点を有する
部品実装装置の補正用治具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−191307(P2011−191307A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67819(P2011−67819)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【分割の表示】特願2001−214370(P2001−214370)の分割
【原出願日】平成13年7月13日(2001.7.13)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【分割の表示】特願2001−214370(P2001−214370)の分割
【原出願日】平成13年7月13日(2001.7.13)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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