説明

裸のシリコンチップを搭載した回路板からの熱の散逸

【課題】露出面を有する裸のシリコンチップを搭載した回路板のための熱散逸設備を提供する。
【解決手段】熱分散体16は平坦部分18を有し、その内面20(回路板12に面する)上に1つもしくはそれ以上のジェル組成物23からなるパッド22がつけられる。パッド22は、熱分散体16が回路板12に取り付けられ、チップ14の露出面25を完全にカバーしたときに、裸のシリコンパッドの向かい側に位置決めされる。ジェル組成物23は粘着強さよりも大きい凝集強さ、1.38Mpaよりも小さい圧縮係数、1.0W/m−℃よりも大きい熱伝導率、および0.08mmと1.0mmとの間の厚みを有する。ジェル物質の低圧縮係数は、機械的ストレスのチップへの伝達からチップ14を保護する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は裸のシリコンチップを搭載した回路板からの熱の散逸に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路チップなどの電子要素が搭載された回路板はもちろんよく知られている。しばしば電子要素は十分な熱を生成するので、熱散逸手段を設けなければならない。1つの手段は単純に回路板を横切る空気を吹き出すファンである。他の手段は回路板(または電子要素)と熱的に接続されたヒートシンクである。ヒートシンクは回路板の前側(電子要素を帯びる側)または後ろ側(電子要素を帯びる側と反対の側)に位置決めされればよい。ヒートシンクと熱生成要素および/または回路板との間の熱的な接触を生じさせるために熱伝導物質を用いてもよい。回路板の熱散逸に関する例証となる開示はCipolla et al., US5,268,815(1993);Kim et al., US5,552,635(1996);およびShuff, US5,812,374(1998)を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年の発展は、要素が裸のシリコンチップである回路板を含んでいる。裸のシリコンチップは、露出された表面がモールドプラスチックパッケージで保護されていない(チップが薄い表面処理層または保護層を有しているかもしれないけれども)シリコンである。ベアシリコンチップテクノロジーはまたダイレクトチップアタッチ即ちDCAテクノロジーとして知られ、Electronic Packaging & Production,pp.12−20(NEPCON West ’99)のような刊行物にさらに説明されている。1つの例は、カリフォルニア、マウンテンビューのRAMBUS社により開発されたDRAMチップセットである。これらのチップは典型的なメモリチップよりも多くの電力を消費するので、より積極的な熱散逸デザインが要求される。例えば、もしファンだけが熱散逸のために用いられる場合には、増加した電力消費のコストと騒音において、著しく高いフローレートの導管内で運転するファンが要求される。他のデザインでは、2つのファンが用いられる。1つはマイクロプロセッサチップを冷却するためであり、別個の専用の1つはDRAMチップのためである。その時に、パッケージされていないままの裸のシリコンチップは、もし適当な管理がなされていなければ、それらをもっとダメージを蒙りやすくする。
【0004】
カリフォルニア、メンロパークのRaychem社は、回路板における熱散逸のためのインターフェース物質として、内部サポートされた熱伝導ジェル物質を販売した。そのような物質は、許可された共に出願中の、共通に譲渡されたMercer他、願番08/746,024、出願日1996年11月5日の図1aおよび図1bに記述されている。顧客はサポートされたジェル物質を購買し、それを彼だけの回路板またはヒートシンクに付加する。ジェル組成物にファイバーグラスマットを挟み込んだフォームの内部サポートは、必要な操作性を備えるために必要である。そうでなければ、ジェル組成物はあまりにも柔らかく、質が悪くなり、こわれやすくなる。しかしながら、サポートはジェル物品の圧縮係数を増加させ、したがって機械的ストレスが下に横たわる電子要素に望ましくなく伝達される。
【0005】
したがって、裸のシリコンチップを含む回路板からの熱散逸、一方、同時にそれらを機械的ストレスから保護し、またはそのようなストレスが裸のシリコンチップに伝達されることを防止するための方法を発展させることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
我々は、裸のシリコンチップ回路板から効果的に熱を散逸させる一方、同時にチップを物理的に保護する発明をなした。したがって、我々は、複数の裸のシリコンチップを搭載した回路板のための熱散逸構造を作成する方法であって、以下のステップを含む方法を開示する:
(a) それぞれが露出面を有する複数の裸のシリコンチップが搭載された回路板を設ける;
(b) 内面および外面を有する実質的に平坦な部分を有し、平坦部分の内面が回路板の裸のシリコンチップを帯びる側に面するように、回路板への取付のためにサイズおよび形状が設定された熱分散体を設ける;
(c) 硬化されて、粘着力よりも大きい凝集力を有し、1.38Mpaよりも小さい圧縮係数を有し、1.0W/m−℃よりも大きい熱伝導率を有するジェル組成物になる前駆物質を内面に与える;
(d) ジェル組成物が、約0.08mmと約1.0mmとの間の厚みを有し、熱分散体が取り付けられた時に複数の裸のシリコンチップの露出面に接触して完全にカバーするように位置決めされている少なくとも1つのパッドを形成するように前駆物質を硬化してジェル組成物に変換する;そして
(e) ジェル組成物からなる少なくとも1つのパッドが複数の裸のシリコンチップの露出面に接触して完全にカバーするように熱分散体を回路板に取り付ける。
【0007】
この発明の他の実施例においては、熱散逸のための設備を有する回路板構造に組立可能なコンビネーションが設けられ、以下を含む:
それぞれが露出面を有する複数の裸のシリコンチップが搭載された回路板;
内面および外面を有する実質的に平坦な部分を有し、平坦部分の内面が回路板の裸のシリコンチップを帯びる側に面するように、回路板への取付のためにサイズおよび形状を設定され、回路板から離された熱分散体;
粘着力よりも大きい凝集力を有し、1.38Mpaよりも小さい圧縮係数を有し、1.0W/m−℃よりも大きい熱伝導率を有し、約0.08mmと約1.0mmとの間の厚みを有し、熱分散体が取り付けられた時に複数の裸のシリコンチップの露出面に接触して完全にカバーするように位置決めされている少なくとも1つのパッドを有する、熱分散体の内面上のジェル組成物。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1a】本発明にしたがう熱散逸構造を示す。
【図1b】本発明にしたがう熱散逸構造を示す。
【図2】本発明の一方法を概略的に示す。
【図3】本発明の代わりの方法を概略的に示す。
【図4】何れかの例における熱的特性測定のために用いられる熱分散体を示す。
【図5】何れかの例における熱的特性測定のために用いられるチップセットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付図面において、1つの図からその他に繰り返される数字は、同じもしくは等価な要素を示す。
【0010】
図1中、(a)は本発明にしたがって作成された熱散逸構造10を示す。構造10は複数の裸のシリコンチップ14が搭載された回路板12を含む。(他の電子要素が回路板12に搭載されていてもよい。)チップ14(または、有る場合には他の電子要素)により生成された熱を散逸させるために、熱分散体16がチップ14が搭載された回路板12の側に取り付けられる。熱分散体16は、それぞれ内面20および外面21を有する平坦部分18を有している。チップ14は、熱分散体16の取付前に露出されている面25を有している。熱分散体16が回路板12に取り付けられたときには、内面20がチップ14に面し、それらの面25は熱伝導ジェル組成物23からなる複数の個別のパッド22により、パッド当たり1チップで完全にカバーされる。チップ14と熱分散体16との間の熱接触は、熱的インターフェース物質として機能するジェル組成物23を有するパッド22により達成される。各パッド22は、向かい合って配置されていることを考慮して、実質的にそれぞれのチップ14の外形に対応する外形を有している。パッド22はチップ14により生成された熱を、熱を散逸させる熱分散体16に伝達する。一般的に1つだけのチップがその時点で熱い場合に、熱は熱分散体16の長軸に沿う単純な熱伝導により散逸されてもよい。熱勾配、または関連するCPUのための冷却ファンに起因する空気の流れによって生じる自然な対流もまた熱除去に寄与する。(本発明の利点は、いくつかの従来のデザインと比較して、裸のシリコンチップ14の冷却に供されるファンの必要性を不要とすることである。)熱分散体16の前側取付は裸のシリコンチップ14の物理的保護の追加の利点を提供する。
【0011】
取付手段24は回路板12と熱分散体16を互いに取り付ける。それは熱分散体16の穴を貫通する回路板12の柱(またはその反対)、またはクリップ(熱分散体16の一部として一体的に形成されていても、別に設けられた要素であってもよい)、リベット、ねじ、スプリングピンなどの他の取付手段とすることができる。
【0012】
図1中、(b)は本発明にしたがって作成された代わりの熱散逸構造10を示し、複数のパッドに代えてジェル組成物からなる単一の連続的なパッドがある点で異なっている。実質的にチップの表面をカバーするどれか1つの形状のように、他の代わりの熱散逸構造も本発明の範囲内である。「実質的」は50%よりも大きい、好ましくは75%よりも大きい、より好ましくは80%よりも大きいことを意味する。望ましい形状は、多数の連続的な、または不連続な個別の離れたストリップ、ビーズ、ドット、もしくは矩形であってもよい。
【0013】
チップ14のこわれやすさおよびそれらの熱出力は、可能な限り機械的ストレスを少なくして良好な熱接触を達成することを重要なことにする。この目的に向かって、ジェル組成物23は非常に柔らかくなければならない。すなわち、1.38Mpa(200psi)より少ない、好ましくは0.69Mpa(100psi)より少ない低圧縮係数を有する。圧縮係数は、25.4mm(1インチ)の円板、厚み3mmを用い、0.1mm/分の圧縮レートで、ASTM D575(1991)で測定された10%圧縮での係数である。パッド22は硬化(キュア)されたジェル組成物に基づき、非常に薄くなければならず、約0.08mmと約1mmとの間の厚みを有する。
【0014】
熱分散体16は平坦部18が薄いことが好ましい。薄いとは5mmよりも小さい厚みを意味する。薄く重い熱分散体16は、熱散逸の観点から好ましい可能性があるが、コスト、重さおよび空間制限に起因して問題である。熱分散体16(または少なくともそれの平坦部分)は高熱伝導率を有する物質、好ましくは金属、より好ましくはアルミニウムまたは銅のような高熱伝導性金属からなることが好ましい。本発明にとっては要求されていないけれども、熱分散体16は放熱のためのフィン、またはヒートシンクとして機能するための平坦部分からの遠位的なより薄い部分を有していてもよく、または熱分散体16は他のヒートシンク要素と熱的に接続されていてもよい。
【0015】
本発明の方法は図2に示されている。ジェル前駆組成物23aからなるパッド22は熱分散体16の内面20に塗られる(内面20上と共に部分図に示す)。パッド22は凹版印刷もしくはフレキソ印刷のような従来の印刷(プリント)プロセスにより塗られてもよく、または、代わりに、スクリーン印刷もしくはステンシル印刷のようなより薄い層、例えば0.25mmよりも大きい厚さ、を塗ることを可能にする方法により塗られてもよい。より薄い層はまた、ジェル組成物23からなる連続体を形成するために硬化させる間に凝集する前駆組成物23aからなる分離されたビーズ、レンズ、リボン、もしくはドットを分配することにより達成される。最終物質サイズ(面積)および厚みをコントロールするために分配とステンシル印刷との結合を採用してもよい。
【0016】
各パッドは、結果的に向かい合うチップの外形に対応する外形を有する。この描写において、種々の外形および不規則な位置を有するパッド22が示されている。パッド22は、チップ14と他の電子要素の外形および位置、またはサイズ、形状および位置のいくつかの他の組み合わせに依存して、例えばアレイ状に配列される同じ外形および規則的な位置をそのうえに有してもよいことが分かる。ジェル前駆組成物23aはそれをジェル組成物23に変換するために硬化される。よって、各パッドはジェル組成物23からなる単一の(すなわち、連続的なもしくは統合された)体を含む。都合よく、前駆組成物23aはジェル組成物23に要求されるのと実質的に同じサイズ、形状、および厚みの連続体として塗られ、硬化される。硬化においてこれらのパラメータには殆ど変化がない。硬化方法は選択された硬化作用に依存する。それは加熱(熱硬化組成物のために、例えば60℃で10分)、紫外光(光硬化組成物のために)、または単純に時間の経過(室温硬化組成物のために、例えば室温で約2時間)であってもよい。硬化後に、熱分散体16および回路板12は互いに取り付けられ、構造10を製造する。この方法は電子モジュールの製造に特に好ましい。なぜならば、インターフェース物質(ジェル)を加えた熱分散体は、最終回路板組立体の製造に必要とされた時に使うために製造され、船積みされ、保存され得るからである。(保存の間に、ジェルは剥離シートにより保護される。)
【0017】
図3は本発明の代わりの実施例を示し、チップ14の露出面(アウトラインを点線で示す外形)を実質的に完全にカバーするために十分なサイズの単一のジェルパッド22が形成された点において異なる。チップの露出面が完全ではないけれども実質的にカバーされている本発明の代わりの実施例は示されていない。「実質的」は50%よりも大きい、好ましくは75%よりも大きい、より好ましくは80%よりも大きいことを意味する。他のパターン、例えばそれらの長軸が互いに平行であるが互いに僅かに離れているように方向付けられた連続的または不連続な別個のストリップ、を採用してもよい。他のパターンはビーズ、ドットもしくは矩形を含んでいてもよい。
【0018】
ここで用いられている高度に適合したジェルは回路板およびその上の裸のシリコンチップおよび他の電子要素上の機械的ストレスを最小にする。ジェル組成物はまた、設計仕様書または製造ばらつきに起因する要素の高さの変化に適応する。同時に、そこに結合することによりチップからの熱移動が最大になり、従来のファンシステムの使用、またはファンを全く使用しないことをも可能とする。ジェル組成物の粘着性、高い可塑性、および高い熱伝導性は、振動または運搬もしくはサービス中の少しの位置の移動に起因して発生するかもしれないような裸のシリコンチップおよび熱分散体の相対的な少しの動き(一時的もしくは永久的)に拘わらず、熱的接触の維持に貢献する。
【0019】
ジェルの適合性はまた、通常の使用の過程における温度サイクルの間に経験される回路板および裸のシリコンチップ上のストレスの最小化に重要である。温度サイクルの間に、シリコンエラストマーまたはエポキシ接着剤に基づくもののように硬いインターフェース物質はチップと回路板との間の接続を破壊するのに十分なストレスを生成する。
【0020】
支持されたジェル組成物を採用する本発明は従来技術を越える利点を提供する。支持は、非常に軟らかく、粘着性のジェル組成物を取り扱うために必要である。しかしながら、支持物質(典型的には、ファイバーグラスもしくはポリマーのメッシュ)は支持されたジェル組成物の圧縮係数を増加させ、それを望ましくなく硬くする。熱分散体上に直接硬化させ、熱分散体上に規定された外形のジェルからなるパッドを形成して、ジェルに総合的な低い圧縮係数を持たせる効果を有することによって、取り扱い性を与えるサポートメッシュのための必要性を解消させる。
【0021】
適切なジェル組成物は、ポリウレタン、ポリウレア、シリコン(ポリシロキサン、またはオーガノポリシロキサンとして知られている)、アンハイドライド含有ポリマーなどに基づくシステムを含む。典型的な開示は、Dubrow et al.,US4,595,635(1986);Debbaut,US4,600,261(1986);Dubrow et al.,US4,777,063(1988);Dubrow et al.,US5,079,300(1992);Rinde et al.,US5,104,930(1992);Mercer et al.,US5,849,824(1998);およびChiotis et al.,US5,886,111(1999)を含む。これらの開示は参照によってここに組み込まれる。
【0022】
好ましくは、ジェルは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)に基づき架橋結合したシリコンジェルであり、そしてビニール官能化PDMSおよびハイドライド官能化PDMSの間の白金触媒反応で調製される。そのようなジェルはいくつかの方法で形成される。1つの方法は、非反応性の増量流体、例えば、トリメチルシロキシで終わるPDMS、の存在下で架橋結合したシリコンジェルを合成する。代わりの方法は正規組成過剰な多官能ビニール置換シリコンと多官能ハイドライド置換シリコンとを軟らかく、流体で増量されたシステムを得るような様式で反応させることによりシリコンジェルを製造する。後者のアプローチにおいて、ビニール豊富なゾル留分が得られる。もちろん、結合システムも可能である。これらのジェルシステムの適切な例は、特に、Debbaut,US4,600,261(1986);Debbaut,US4,634,207(1987);Debbaut,US5,357,057(1994);Dubrow et al.,US5,079,300(1992);Dubrow et al.,US4,777,063(1988);およびNelson,US3,020,260(1962)により教示される。これらの開示は参照によりここに組み込まれる。過酸化水素、紫外光、高エネルギー照射のような代わりの硬化技術に基づくシリコンジェルシステムもまた使用できる。
【0023】
好ましい実施例において、前駆物質は、以下を含む。
【0024】
(A) 粘度が25℃で50,000cPより少ないシリコン組成物。シリコン組成物は以下を含む。
(i) 25℃で50と100,000cPとの間の粘度を有し、各分子に少なくとも2つのシリコン結合したアルキニルグループを有するアルキニル官能化ジオーガノポリシロキサン;および
(ii) 25℃で1と1、000,000cPとの間の粘度を有し、分子当たり平均で少なくとも2つのシリコン結合したハイドロゲン原子を含み、アルキニル官能化ジオーガノポリシロキサン(i)における1モルのシリコン結合したアルキニル当たり0.2と5.0モルとの間のシリコン結合したハイドロゲンを与える量のハイドロゲン官能化オーガノポリシロキサン;
(B) シリコン組成物(A)の硬化をもたらすのに十分な量のハイドロシレーション触媒;および
(C) 20W/m−℃より大きい容積熱伝導率を有する少なくとも35体積%の微粒子物質。
【0025】
シリコン組成物(A)は、平均式がRSiOのオーガノシロキサン樹脂をさらに80重量%まで含んでいてもよい。ここで、Rはアルキニル以外の一価のハイドロカーボングループであり、aは20.と2.2の間の数字であり、bは0.9と1.0との間の数字である。重量%は、アルキニル官能化ジオーガノポリシロキサン(i)を加えたオーガノポリシロキサンとハイドロゲン官能化オーガノポリシロキサン(ii)との量に基づく。
【0026】
熱伝導率は、20W/m−℃より大きい容積熱伝導率を有する微粒子物質と共にジェルを充填することにより加えられる。代表的な適合する微粒子物質は、アルミナ、シリコンカーバイド、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、二ホウ化チタン、アルミニウム、銅、銀、ダイアモンド、ニッケル、シリコン、グラファイト、酸化第二鉄、酸化ベリリウム、二酸化チタン、酸化マグネシウム、および窒化ボロンからなるグループから選択されればよい。典型的には、微粒子物質は少なくとも35体積%の量で用いられる。体積%は、微粒子物質およびジェル組成物の結合した体積に基づいて計算される。
【0027】
本発明で使用するための、好ましい熱伝導性の、しかしまだ高い適合性のジェル組成物はアルミナ充填ジェルであり、Mercer et al.,出願番号08/746,024、出願日1996年11月5日の、許可された共に係属中の、共通に譲渡された出願に開示されている。その開示はこの参照によってここに組み込まれる。粒子サイズが少なくとも74μmのα−アルミナ粒子を少なくとも10重量%含むα−アルミナの使用が高い熱伝導率の達成に必要な高い充填剤レベルを、高い充填剤レベルに通常関連する伸長および軟らかさを減少させることなく、可能にする。もし、α−アルミナおよびジェル(またはその前駆体)が少なくとも10ジュール/グラムの特定のエネルギー入力で混合されれば、さらなる改善が観察される。そのような特定のエネルギーの入力は、結果組成物をそうでない場合よりも適合させるという効果を有する。
【0028】
熱管理の他の従来方法は熱伝導性グリースを用いる。そのようなグリースは、チップ上に大きな機械的ストレスを加えることなく、表面に沿って流れるという利点を有する。熱的グリースの基本的な不都合は、規定時間を越えて、おかれた場所から流れ去る傾向があり、熱伝導率を妥協することである。熱的なグリースが接触を意図していない他の要素上に流れることも好ましくないことである。熱的なグリースのさらに他の不都合は、付与するときに汚れること、付与の後は包装、船積み、およびダメージを受けもしくはずれることなく取り扱うことができないことである。熱伝導グリースは、非常に低い凝集強さを有する。その凝集強さはその粘着強さよりも小さい。したがって、熱伝導グリースにより接触されている要素を分離したときに、きれいな分離を得ることができない。
【0029】
本発明の硬化されたジェルは、液体グリースではなく、粘着強さよりも大きい凝集強さを有する固体の架橋結合した物質である。本発明で用いられる硬化ジェルは、低い搭載圧力を与えることにより濡れて殆どの表面に粘着する(しかし、凝集強さが粘着強さよりも大きく、基板からのきれいな取り外しを許す)。そして、チップおよび他の要素から熱分散体への低熱抵抗経路を設ける。ジェルが粘着強さよりも大きい凝集強さを有しているか否かを確認するために、硬化ジェルからなるサンプルをアルミニウム板の上に置く(または分与され硬化される)。他のアルミニウム板が硬化ジェルサンプルのトップに置かれる。室温(ca.25℃)で少なくとも5分0.21Mpa(30psi)の圧力を与え、トップのアルミニウム板を取り外す。もし凝集強さが粘着強さよりも大きければ、取り外し後に、実質的に全ての硬化ジェルサンプルがトップまたはボトムのアルミニウム板に残るはずである。(留意しなければならないことは、もしジェルが基板に接触している間に硬化されれば、そのような基板へのジェルの粘着力の方が大きいかもしれない。この明細書において、ジェルの粘着力はこの硬化された本来の粘着力を意味せず、前述の技術により測定された硬化後の粘着力を意味する。)
【0030】
本発明のジェルはVoland硬さ数により特徴付けられる。Voland硬さ数の測定を以下に説明する。機器は、Dubrow et al.,US5,079,300(1992)に記載されたように、力を測定する5kgのロードセル、5gのトリガー、および1/4インチ(6.35mm)のステンレススチール ボール プローブを用いるVoland−Stevens テクスチャー アナライザー モデルLFRA、Texture Technologies Texture Analyzer TA−XT2などである。Dubrow et al.,US5,079,300(1992)の開示は参照によってここに組み込まれる。例えば、約12.5gのアナライト(分析されるべきジェルまたは他の物質)を含む20mLのガラスびんがTA−XT2アナライザーに置かれ、プローブが0.2mm/secの速度で浸透深さ4.0mmまでアナライトに侵入させられる。アナライトの硬さは、プローブを侵入させるため、または特定された4.0mmの距離だけアナライトの表面を変形させるために必要なグラムでの力である。高い数はより硬い物質を表す。TA−XT2アナライザーからのデータは、Microsystems社、XT.RA Dimension Version3.76ソフトウエアが走っているIBM PCなどのコンピュータ上に記録され、解析される。
【0031】
従来のヒートシンクのための搭載圧力は、典型的には0.14−0.34Mpa(20−50psi)であり、時には0.69Mpa(100psi)と大きい。熱分散体16の比較的薄い平坦部分18を曲げることに起因して、一般に0.1Mpa(15psi)のオーダーもしくはそれより小さい低搭載圧力のみが及ぶ。本発明は低搭載圧力に拘わらず、効果的な熱接触を許す。低搭載圧力はBGA(ボール グリッド アレイ)またはμBGAのようなダイ取付方法に特に好ましい。これらのデザインはストレス下でダメージを受けやすいからである。
【0032】
一般に、熱源(ここでは、チップ14または他の電子要素)から介在インターフェース物質(ここでは、ジェル組成物23)を通してヒートシンク(ここでは、熱分散体16)までの熱伝達の全体としての有効性は式(1)にしたがう熱抵抗で計測できる。
θ = θI1 + θ + θI2 (1)
ここで、
θは全体としての熱抵抗;
θは熱源とヒートシンクとを結ぶインターフェース物質の厚みを横切る熱抵抗;
θI1はヒートシンクとインターフェース物質との間の界面熱抵抗;そして
θI2は熱源とインターフェース物質との間の界面熱抵抗。
【0033】
続いて、θは式(2)で与えられる。
θ = t/kA (2)
ここで、
kはインターフェース物質の熱伝導率;
tはインターフェース物質の厚み;そして
Aは熱接触の面積。
【0034】
本発明のジェル組成物は高熱伝導率kを有し、それでθは小さい。それの高い適合性および粘着性の特性は、熱源およびヒートシンクとの優れた熱接触をもたらし、それでθI1およびθI2も、それらが全体としての熱抵抗に著しくは寄与しない点までと非常に小さい。また、ジェルパッドは、約5ミルと約40ミルとの間に、もっと並外れて薄くすることができ、それでtは小さい。
【0035】
固有の個別の、単一の対向する、熱を放散する電子要素の外形に対応する外形(1対1パッド対要素比)を有するパッドを有する実施例において、Aの値が極大化され、それで熱抵抗θが減少される。このアプローチは、Cipolla et al.,US5,268,815(1993)に教示されているように、単一の要素に接触するジェル組成物からなる複数のパッド(例えば、ビーズまたは小滴)を有するのに好ましい。Cipollaの多数対1つのパッド対要素比はAの値を低下させ、それで熱伝達の効率−インターフェース物質に接触せず、熱伝達プロセスに効率的には寄与しない要素の表面の部分がある。
【0036】
単一の連続的なジェル組成物からなるパッドが複数の電子要素と重なる代わりの実施例、1つ対多数のパッド対要素比、は熱伝達効率の面から複数の個別のパッドのように効率的である。しかしながら、ジェル組成物は熱行程の間横に広がるためのスペースを有せず、結果的に裸のシリコンチップに伝達されるかもしれない機械的ストレスはいくぶん少なくこの点では好ましい。単一パッドの実施例は、特に、電子要素が全体として密集しているときには、より簡単な製造の利点を提供する。裸のシリコンチップに伝達される機械的ストレスを軽減するために、上述の、連続的もしくは個別のストリップ、ビーズ、ドットまたは矩形のような代わりの形状を採用してもよい。圧縮されれば、ジェル組成物はパッドにより前もって占められていない空間に広げられる。そのような形状は効率的であり、追加の機械的ストレスをもたらさない。
【0037】
要約すれば、本発明は、界面熱抵抗θI1およびθI2および界面物質の厚みを横切る熱抵抗θを完全に最小にすることにより、全体の熱抵抗θを最小にするようにデザインされている。θはまたtを最小にするとともに、kおよびAを最大にし、圧縮係数のような他の物質特性をバランスさせることにより最小化される。
【0038】
本発明は、実例により規定され、そして制限されない以下の例を参照することによりさらに理解できる。
【0039】
(例1)
組成物は、酸化アルミニウム(Alcan社からの砕かれていないC−75FineおよびC751の70:30混合物)72重量部(39体積部)に最初に混合されることにより調製され、低粘度(<1000cps)、低硬度(<20g Voland Hardness)の商業的に利用可能なシリコンジェルからなるPart Aになった。このPart AはMyersの高剪断単一軸混合機を用いて調製された。
【0040】
次いで組成物は、酸化アルミニウム(上述のとおり)72重量部(39体積部)に最初に混合されることにより調製され、低粘度(<1000cps)、低硬度(<20g Voland Hardness)の商業的に利用可能なシリコンジェルからなるPart Bになった。このPart BはMyersの高剪断単一軸混合機を用いて調製された。
【0041】
上記Part A50重量部が著しい剪断を与えるオーバーヘッド プロペラ型混合機を用いて上記Part B50重量部と3分間混合された。結果として生じる混合物は3.2mm厚み、50.8mm直径の円盤型で鋳造され、29インチHgより少ない真空下で5分ガス抜きされた。このサンプルは80℃で2時間硬化され、架橋結合された組成物が製造された。
【0042】
この円盤はASTM E1530(1993)によって容積熱伝導率がテストされた。結果としての値はテスト温度70℃で1.08W/m°Kであった。10%圧縮(ASTM D575−91による)でのこの物質の圧縮係数は32psi(0.22Mpa)であった。
【0043】
次いで、上記Part A50重量部のこの同じ組成物が小さいバッチで上記Part B50重量部と手動で3分間混合された。この硬化されていない組成物はAnalysis Tech Semiconductor Thermal Analyzer, Model−10Aの銅のヒートシンクに分配された。ほぼ0.5mmの厚み、12×18mmの幅および長さの硬化されていない組成物からなるパッドがヒートシンク上に形成された。これは室温で一晩中硬化され、架橋結合された組成物が製造された。
【0044】
ベース寸法がほぼ10×15mmのキャリブレートされたTIP31 n−p−nトランジスタが熱源として使用された。このデバイスはヒートシンク上の硬化された組成物と接触され、油圧シリンダーを通して圧力が与えられた。圧力が与えられている間に厚みが計測された。熱インターフェースを横切る熱抵抗Rjxは式(3)により℃/Wで計測された。
jx = (T − T)/電力 (3)
ここで、Tはシリコンの接合部温度であり、Tは水冷ヒートシンクの参照温度である。
【0045】
このRjxの値はRjc(接合部からケース)とRcs(ケースからシンク)との和である。Rcsは関心の熱的物質を横切る熱抵抗である。RjcはTIP31を測定し、Rjxから減じた。残余の値は与えられた印加圧力(式(4))下における熱インターフェース物質の外見上の熱抵抗である。
〜 Rcs = Rjx − Rjc (4)
TIP下での面積1.52mmおよび各圧力レベルでの測定された厚みを用い、サンプルの外見上の熱抵抗(App.k)が計算された。
App.k = 厚み/(T × 面積)
上述の組成物についての外見上の伝導率は以下の表1に示されている。
【0046】
(例2)
これは、低圧縮係数の重要性および高圧縮係数のインターフェース物質がどのように望ましくないかを例証する比較例である。
【0047】
組成物は、例1で説明されたように酸化アルミニウム72重量部(39体積部)に混合されることにより調製され、中間粘度(<5000cps)、中間硬度(ASTM D2240−1997による <50 Shore A)の商業的に利用可能な、General Electric社、 Grade RTV615からのシリコン RTVになった。この組成物は著しい剪断を与えるオーバーヘッド プロペラ型混合機を用いて3分間混合された。
【0048】
テストサンプルは例1と同じ方法で調製された。結果としての50.8mm直径の円盤からの容積熱伝導率は0.78W/m°Kであった。上述のようにASTM D575−91による10%圧縮でのこの物質の圧縮係数は955psi(6.59Mpa)であった。
【0049】
この同じ組成物は、例1に記載されたように、銅のヒートシンクに分配され、パッドに形成され、外見上の伝導率がテストされた。これらの結果は以下の表1に示されている。
【0050】
例2の物質の硬度は不十分な熱接触をもたらし、結果として生じる69kPa(10psi)での外見上の伝導率は理論上の容積伝導率のほんの約78%である。対照してみれば、例1の軟らかい物質は良好な熱接触を有し、結果として生じる69kPa(10psi)での外見上の伝導率は理論上の容積伝導率の約94%である。
【0051】
(例3)
組成物は、Advanced Ceramics社からの、Grade350の窒化ボロン60.7重量部(40体積部)に混合されることにより調製され、低粘度(<1000cps)、低硬度(<20g Voland Hardness)の商業的に利用可能なシリコンジェルになった。
【0052】
テストサンプルはBrabender Plasticorder上の60cmのボウル内で高剪断ローラーブレードを用いて5分、45RPMで混合された。結果として生じる混合物は3.2mm厚み、50.8mm直径の円盤型で鋳造され、29インチHgより少ない真空下で5分ガス抜きされた。このサンプルは80℃で2時間硬化され、架橋結合された組成物が製造された。
【0053】
この円盤はASTM E1530(1993)によって容積熱伝導率がテストされた。結果としての50.8mm直径の円盤からの容積熱伝導率は1.71W/m°Kであった。上述のASTM D575−91による10%圧縮でのこの物質の圧縮係数は102psi(0.70Mpa)であった。
【0054】
この同じ組成物は、例1に記載されたように、銅のヒートシンクに分配され、パッドに形成され、外見上の伝導率がテストされた。これらの結果は以下の表1に示されている。
【0055】
(例4)
これは、高圧縮係数のシリコンインターフェース物質の他の比較例である。
【0056】
組成物は、Grade350の窒化ボロン60.3重量部(40体積部)に混合されることにより調製され、中間粘度(<5000cps)、中間硬度(<50 Shore A)のGrade RTV615のシリコンになった。
【0057】
テストサンプルは例3と同じ方法で混合され、調製された。結果としての50.8mm直径の円盤からの容積熱伝導率は1.39W/m°Kであった。上述のようにASTM D575−91による10%圧縮でのこの物質の圧縮係数は764psi(5.27Mpa)であった。
【0058】
この同じ組成物は、例1に記載されたように、銅のヒートシンクに分配され、パッドに形成され、外見上の伝導率がテストされた。これらの結果は以下の表1に示されている。
【0059】
例4の物質の硬度は不十分な熱接触をもたらし、結果として生じる69kPa(10psi)での外見上の伝導率は理論上の容積伝導率のほんの約53%である。対照してみれば、例3の軟らかい物質は改善された熱接触を有し、結果として生じる69kPa(10psi)での外見上の伝導率は理論上の容積伝導率の83%である。理論上の容積伝導率の99%の外見上の伝導率は例3の物質のためのより高い圧力レベル210kPa(30psi)で達成できる。
【0060】
【表1】

【0061】
(例5)
組成物は、酸化アルミニウム(例1で説明されているように)を72重量部(39体積部)、Degussa社からのチキソトロピー媒介物Aerosil R972を2.0重量部、シラノール ターミネイテッド ポリヂメチルシロキサンを5.0重量部に最初に混合されることにより調製され、低粘度(<1000cps)、低硬度(<20g Voland Hardness)の商業的に利用可能なシリコンジェルからなるPart Aになった。このPart Aはダブルプラネタリー低剪断混合機を用いて調製された。
【0062】
次いで組成物は、酸化アルミニウム(例1で説明されているように)を72重量部(39体積部)、Degussa社からのチキソトロピー媒介物(Aerosil R972)を2.0重量部、シラノール ターミネイテッド ポリヂメチルシロキサンを5.0重量部に最初に混合されることにより調製され、低粘度(<1000cps)、低硬度(<20g Voland Hardness)の商業的に利用可能なシリコンジェルからなるPart Bになった。このPart Bはダブルプラネタリー低剪断混合機を用いて調製された。
【0063】
これらの物質は、20要素の混合部を用いてPart AとPart Bとの体積比1:1の混合物を与える従来の静的な混合カートリッジに置かれた。
【0064】
この組成物は手動で剥離紙(テフロンコートされたガラス布)からなるシートに分配され、0.5mm厚みのシートに形成された。これは室温で一晩中硬化され、架橋結合された組成物が製造された。
【0065】
ほぼ95×12mmのパッドはこの硬化されたシートからカットされ、図4に示されるアルミニウム熱分散体の盛り上がった部分に置かれた。陰がつけられたエリアAはチップへの熱インターフェースと接触するための盛り上がった脚であり、97×12mmの大きさである。脚とチップとの間のわずかなギャップは0.36mmであった。
【0066】
このジェルパッドを有する熱分散体は、図5に示されるように、8つの裸のシリコン耐性発熱チップ(Intel社、テストチップT13825)のアレイに接触させられた。チップのアレイは均一に12.375mm離れた中心を有していた。各チップは8.9×14.1×0.8mm(幅×長さ×高さ)の大きさであった。加えられた圧力は10psi(69kPa)より小さかった。チップ番号8は電源としてのHewlett−Packard 4142 Parametric Analyzerおよび記録されたチップ抵抗および温度を用いて約1.88Wの電力レベルに高められた。外部温度も記録された。静止空気中での平衡時の熱抵抗は[(チップ温度−周囲温度)/入力電力]として計算され、℃/Wで報告された。この手順はチップ番号5を約1.88Wの電力レベルに高め、熱抵抗を記録することにより反復された。結果は以下の表2に示されている。
【0067】
(例6)
組成物は例5に説明されたように調製された。この組成物は図1に示されるアルミニウム熱分散体の内面部分に直接分配された。硬化されていない組成物からなる単一のパッドはほぼ95×12×0.5mm厚みの大きさに形成された。これは室温で一晩中硬化され、架橋結合された組成物が製造された。
【0068】
この分配され、硬化された組成物は例5で説明されたようにテストされた。熱抵抗結果は以下の表2に示されている。
【0069】
(例7)
組成物は例5に説明されたように調製され、アルミニウム熱分散体上に分配され、ほぼ12×11mmの8つの個別のパッドに形成された。これらのパッドの配置は、この硬化された組成物からなるパッドを有する熱分散体がテストチップを含む板に接触された後に、8つのテストチップのそれぞれを完全にカバーするのに十分であった。
【0070】
その後、この分配された、硬化された組成物は、例5で説明されたようにテストされた。熱抵抗結果は以下の表2に示されている。
【0071】
例5−7の結果は本発明にしたがって熱分散体上にジェルをつけることの利益を示す。熱抵抗の測定の標準の偏差は約0.1℃/Wである。したがって、表2に示される熱抵抗を2.1から2.5℃/W低下させることは統計的に意味がある。このテストで用いられる電力1.88Wにおいて、これはチップ温度の4℃低減を表す。10Wのようにより多くの電力を消費する場合には、この差は20℃よりも大きく、デバイスの性能および信頼性における意味のある改善に導くことができる。
【0072】
【表2】

【0073】
前述の本発明の詳細な説明は、主にまたは排他的に本発明の特有の部分または見地に関連する出来事を含む。これが明確化および便宜のためであること、特有の特徴が開示されている適正な経過よりも適切であるかもしれないこと、および開示はここに異なる出来事において見出された情報の全ての好ましい組み合わせが含まれることが理解されるべきである。同様に、種々の図面および説明がここに本発明の特定の実施例に関連しているけれども、特定の特徴が特有の図面または実施例の文脈に含まれていることが理解されるべきである。そのような特徴は、他の図面もしくは実施例の文脈、他の特徴との組み合わせ、または概して本発明において、用いることができる。
【0074】
また、本発明は特にある好ましい実施例について説明したが、本発明はそのような好ましい実施例には限定されない。むしろ、本発明の範囲は添付のクレームにより明確にされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の裸のシリコンチップが搭載された回路基板のための熱散逸構造を作成する方法であって、
(a) 露出面を有する複数の裸のシリコンチップが搭載された回路板を設ける、
(b) 内面および外面を有し、平坦な部分の内面が回路板の裸のシリコンチップを帯びる側に面するようにすべく回路板への取付のためにサイズおよび形状が設定された実質的に平坦な部分を有する熱分散体を設ける、
(c) 硬化して凝集力が粘着力より大きく、圧縮係数が1.38Mpaよりも小さく、熱伝導率が1.0W/m−℃よりも大きいジェル組成物になり得る前駆組成物を内面に付与する、
(d) 前駆組成物を硬化させて、ジェル組成物が0.08mmと1.0mmの間の厚みを有する少なくとも1つのパッドを形成すべく、前駆組成物をジェル組成物に変換する。少なくとも1つのパッドは、熱分散体が回路板に取り付けられたときに、複数の裸のシリコンチップの露出面に接触し完全にカバーするように位置決めされる、
(e) 複数の裸のシリコンチップの露出面に接触し完全にカバーするように熱分散体を回路板に取り付ける、
各ステップを含むことを特徴とする複数の裸のシリコンチップが搭載された回路基板のための熱散逸構造を作成する方法。
【請求項2】
ジェル組成物からなる少なくとも1つのパッドはジェル組成物の単一の連続的なパッドである請求項1記載の方法。
【請求項3】
ジェル組成物からなる少なくとも1つのパッドはジェル組成物からなる複数のパッドを含み、各パッドは、熱分散体が回路板に取り付けられたときにただ1つのおのおのの相対する裸のシリコンチップに接触するように位置決めされ、おのおのの相対する裸のシリコンチップの外形に実質的に対応する外形を有する請求項1記載の方法。
【請求項4】
熱分散体の平坦な部分は5mmよりも少ない厚みを有している請求項1、2または3記載の方法。
【請求項5】
ジェル組成物は20W/m−℃よりも大きい容積熱伝導率を有する微粒子物質で充填された架橋結合されたシリコンジェルを含む請求項1、2または3記載の方法。
【請求項6】
ジェル組成物は前駆組成物の硬化により作成され、前駆組成物は、
(A) 25℃で50,000よりも少ない粘度を有するシリコン組成物を含んでいて、このシリコン組成物は、
(i) 25℃で50と100,000cPとの間の粘度を有し、各分子に少なくとも2つのシリコン結合したアルキニルグループを有するアルキニル官能化ジオーガノポリシロキサン、および
(ii) 25℃で1と1、000,000cPとの間の粘度を有し、分子当たり平均で少なくとも2つのシリコン結合したハイドロゲン原子を含み、アルキニル官能化ジオーガノポリシロキサン(i)における1モルのシリコン結合したアルキニル当たり0.2と5.0モルとの間のシリコン結合したハイドロゲンを与える量のハイドロゲン官能化オーガノポリシロキサン、
を含み、上記前駆組成物は、さらに
(B) シリコン組成物(A)の硬化をもたらすのに十分な量のハイドロシレーション触媒、および
(C) 20W/m−℃より大きい容積熱伝導率を有する少なくとも35体積%の微粒子物質、
を含む請求項5記載の方法。
【請求項7】
シリコン組成物(A)は、アルキニル官能化ジオーガノポリシロキサン(i)を加えたオーガノポリシロキサンおよびハイドロゲン官能化オーガノポリシロキサン(ii)を100重量部につき、平均式がRSiO(ここで、Rはアルキニル以外の1価のハイドロカーボングループであり、aは20.と2.2の間の数字であり、bは0.9と1.0との間の数字である。)のオーガノシロキサン樹脂をさらに80重量%まで含んでいる請求項6記載の方法。
【請求項8】
微粒子物質は、アルミナ、シリコンカーバイド、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、二ホウ化チタン、アルミニウム、銅、銀、ダイアモンド、ニッケル、シリコン、グラファイト、酸化第二鉄、酸化ベリリウム、二酸化チタン、酸化マグネシウム、および窒化ボロンからなるグループから選択される請求項5記載の方法。
【請求項9】
微粒子物質は、少なくとも10%が少なくとも74μmの粒子サイズを有するα−アルミナである請求項5記載の方法。
【請求項10】
ジェル組成物は0.69Mpaより少ない圧縮係数を有する請求項1記載の方法。
【請求項11】
それぞれ露出面を有する複数の裸のシリコンチップを搭載した回路板、
回路板から離れ、内面および外面を有するとともに内面が回路板の裸のシリコンチップを帯びた側に面するように回路板に対する取付のためにサイズおよび形状が設定された実質的に平坦な部分を有する熱分散体、および
熱分散体の内面上のジェル組成物、このジェル組成物は、凝集力が粘着力より大きく、圧縮係数が1.38Mpaよりも小さく、熱伝導率が1.0W/m−℃よりも大きく、前記ジェル組成物は0.08mmと1.0mmの間の厚みを有する少なくとも1つのパッドを形成するものであり、この少なくとも1つのパッドは熱分散体が回路板に取り付けられたときに、複数の裸のシリコンチップの露出面に接触し完全にカバーするように位置決めされるものである、
を含むことを特徴とする熱散逸のための設備を有する回路板配置に組立可能なコンビネーション。
【請求項12】
ジェル組成物からなる少なくとも1つのパッドはジェル組成物の単一の連続的なパッドである請求項11記載のコンビネーション。
【請求項13】
ジェル組成物からなる少なくとも1つのパッドはジェル組成物からなる複数のパッドを含み、各パッドは、熱分散体が回路板に取り付けられたときにただ1つのおのおのの相対する裸のシリコンチップに接触するように位置決めされ、おのおのの相対する裸のシリコンチップの外形に実質的に対応する外形を有するものである請求項11記載のコンビネーション。
【請求項14】
熱分散体の平坦な部分は5mmよりも少ない厚みを有している請求項11記載のコンビネーション。
【請求項15】
ジェル組成物は20W/m−℃よりも大きい容積熱伝導率を有する微粒子物質で充填された架橋結合されたシリコンジェルを含む請求項11記載のコンビネーション。
【請求項16】
ジェル組成物は前駆組成物の硬化により作成され、この前駆組成物は、
(A) 25℃で50,000よりも少ない粘度を有するシリコン組成物を含んでいて、このシリコン組成物は、
(i) 25℃で50と100,000cPとの間の粘度を有し、各分子に少なくとも2つのシリコン結合したアルキニルグループを有するアルキニル官能化ジオーガノポリシロキサン;および
(ii) 25℃で1と1、000,000cPとの間の粘度を有し、分子当たり平均で少なくとも2つのシリコン結合したハイドロゲン原子を含み、アルキニル官能化ジオーガノポリシロキサン(i)における1モルのシリコン結合したアルキニル当たり0.2と5.0モルとの間のシリコン結合したハイドロゲンを与える量のハイドロゲン官能化オーガノポリシロキサン;
を含み、上記前駆組成物は、さらに
(B) シリコン組成物(A)の硬化をもたらすのに十分な量のハイドロシレーション触媒;および
(C) 20W/m−℃より大きい容積熱伝導率を有する少なくとも35体積%の微粒子物質、
を含む請求項15記載のコンビネーション。
【請求項17】
シリコン組成物(A)は、アルキニル官能化ジオーガノポリシロキサン(i)を加えたオーガノポリシロキサンおよびハイドロゲン官能化オーガノポリシロキサン(ii)を100重量部につき、平均式がRSiO(ここで、Rはアルキニル以外の1価のハイドロカーボングループであり、aは20.と2.2の間の数字であり、bは0.9と1.0との間の数字である。)のオーガノシロキサン樹脂をさらに80重量%まで含んでいる請求項16記載のコンビネーション。
【請求項18】
微粒子物質は、アルミナ、シリコンカーバイド、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、二ホウ化チタン、アルミニウム、銅、銀、ダイアモンド、ニッケル、シリコン、グラファイト、酸化第二鉄、酸化ベリリウム、二酸化チタン、酸化マグネシウム、および窒化ボロンからなるグループから選択される請求項15記載のコンビネーション。
【請求項19】
微粒子物質は、少なくとも10%が少なくとも74μmの粒子サイズを有するα−アルミナである請求項15記載のコンビネーション。
【請求項20】
ジェル組成物は0.69Mpaより少ない圧縮係数を有する請求項11記載のコンビネーション。
【請求項21】
ジェル組成物からなる少なくとも1つのパッドは、それぞれが少なくとも1つのシリコンチップに接触すべく位置決めされたジェルからなる複数のパッドを含む請求項11記載のコンビネーション。
【請求項22】
ジェル組成物からなる少なくとも1つのパッドは、多数のストリップ、ビーズ、ドットまたは矩形を含む請求項11記載のコンビネーション。
【請求項23】
ジェル組成物からなる少なくとも1つのパッドは、それぞれが少なくとも1つのシリコンチップに接触すべく位置決めされたジェルからなる複数のパッドを含む請求項1記載の方法。
【請求項24】
ジェル組成物からなる少なくとも1つのパッドは、多数のストリップ、ビーズ、ドットまたは矩形を含む請求項1記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−54578(P2012−54578A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−227237(P2011−227237)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【分割の表示】特願2000−613001(P2000−613001)の分割
【原出願日】平成12年4月19日(2000.4.19)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】