説明

複合型温度補償水晶発振器

【課題】製造を容易にして製造コストを低減し、正確な温度補償をする。
【解決手段】第一凹部K1と第二凹部K2と第三凹部K3とが形成された素子搭載部材110と、第一凹部内に搭載されるATカット水晶振動素子120と、第二凹部内に搭載される音叉型水晶振動素子130と、第三凹部内に搭載される1つの集積回路素子150と、第一凹部と第二凹部とを塞ぐ蓋部材140とを備え、集積回路素子が、ATカット水晶振動素子に接続される第一抵抗及び第一インバータと、音叉型水晶振動素子に接続される第二抵抗及び第二インバータと、メモリと、温度センサーと、温度センサーとメモリとに接続しATカット水晶振動素子とバリキャップダイオードを介して接続する第一温度補償信号発生回路と、温度センサーとメモリとに接続し音叉型水晶振動素子とバリキャップダイオードを介して接続する第二温度補償信号発生回路とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に搭載される複合型温度補償水晶発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子機器には電子デバイスが搭載されている。このような電子デバイスのうち、例えば、電子機器が使用される環境の温度変化が多く起こる場合には、特に、温度補償水晶発振器が用いられる場合がある。
この従来の温度補償水晶発振器は、ATカット水晶振動素子とこのATカット水晶振動素子と電気的に接続される集積回路素子と、これらが搭載される素子搭載部材と、ATカット水晶振動素子を封止する蓋部材とから主に構成されている(例えば、特許文献1参照)。
ATカット水晶振動素子が搭載された温度補償水晶発振器は、主に基準周波数の信号に用いられる。
【0003】
また、従来の温度補償水晶発振器は、他の例として、ATカット水晶振動素子に代わって音叉型水晶振動素子が用いられる場合もある(例えば、特許文献2参照)。
音叉型水晶振動素子が搭載された温度補償水晶発振器は、例えば、32.768kHzの周波数を用いて時間のカウントに用いられる。
【0004】
これら従来の温度補償型水晶発振器は、1つに複合化されて構成された複合型温度補償水晶発振器も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
例えば、特許文献3に記載の複合型温度補償水晶発振器は、素子搭載部材が、基板部とこの基板部の一方の主面に第一凹部と第二凹部が形成されるように設けられる第一枠部と前記基板部の他方の主面に第三凹部が形成されるように第二枠部が設けられている。
ここで、第一凹部には、音叉型水晶振動素子が搭載され、第三凹部にATカット水晶振動素子が搭載される。また、第二凹部には集積回路素子が搭載される。
また、従来の温度補償型水晶発振器は、音叉型水晶振動素子が搭載された第一凹部を封止するために第一蓋部材が素子搭載部材に接合され、ATカット水晶振動素子が搭載された第三凹部を封止するために第二蓋部材が素子搭載部材に接合される。
ここで、集積回路素子は、温度センサーと発振回路と温度補償回路とが含まれており、温度センサーが発生させる温度データを温度補償回路に入力し、温度補償回路によってこの温度データに基づいて温度補償する温度データをメモリから読み込み、この温度データ用いて、ATカット水晶振動素子と音叉型水晶振動素子とを発振させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−267887号公報
【特許文献2】特開2010−206432号公報
【特許文献3】特開2009−232336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の複合型温度補償水晶発振器は、ATカット水晶振動素子の封止と音叉型水晶振動素子の封止とを別々に行う必要がある。
例えば、従来の複合型温度補償水晶発振器は、ATカット水晶振動素子と音叉型水晶振動素子とが素子搭載部材の裏表に設けられた第一凹部と第三凹部とに別々に搭載されているので、これらを封止する際は、第一凹部と第三凹部とのどちらか一方を封止した後に残った凹部を封止することとなる。したがって、製造工程が多くかかり、製造コストを増大させる要因となる。
また、電子機器の基板に搭載するための外部接続端子と第一蓋部材又は第二蓋部材とがショートしないように、素子搭載部材の構造を工夫する必要がある。
例えば、従来の複合型温度補償水晶発振器は、外部接続端子が設けられる側の凹部を形成する枠部に段差を設けて、この段差に蓋部材を接合する必要が生じる。そのため、素子搭載部材の構造が複雑となり、製造コストを増大させる要因となる。
【0007】
また、従来の複合型温度補償水晶発振器は、集積回路素子の温度補償回路がATカット水晶振動素子と音叉型水晶振動素子とに接続されている。
ここで、ATカット水晶振動素子の温度補償は、周波数偏差を縦軸、温度変化を横軸とした場合、周波数偏差と温度との関係は三次関数になるため、この三次関数とは逆になる三次関数を生成することで行われる。
また、音叉型水晶振動素子の温度補償は、周波数偏差を縦軸、温度変化を横軸とした場合、周波数偏差と温度との関係は二次関数になるため、この二次関数とは逆になる二次関数を生成することで行われる。
したがって、温度補償回路をATカット水晶振動素子と音叉型水晶振動素子とで共用する場合は、ATカット水晶振動素子か音叉型水晶振動素子かのどちらかを優先して温度補償することとなる。そのため、ATカット水晶振動素子と音叉型水晶振動素子との両方の温度補償を正確に行えない課題があった。
【0008】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、製造を容易にして製造コストを低減し、正確な温度補償が複合型温度補償水晶発振器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、複合型温度補償水晶発振器であって、基板部と、この基板部の一方の主面に設けられ第一凹部と第二凹部を形成する第一枠部と、前記基板部の他方の主面に設けられ第三凹部を形成する第二枠部とを備える素子搭載部材と、前記第一凹部内に設けられた第一搭載パッドに搭載されるATカット水晶振動素子と、前記第二凹部内に設けられた第二搭載パッドに搭載される音叉型水晶振動素子と、前記第三凹部内に設けられた第三搭載パッドに搭載される1つの集積回路素子と、前記第一凹部と前記第二凹部とを塞ぐ蓋部材と、を備え、前記集積回路素子が、前記ATカット水晶振動素子と並列に接続される第一抵抗及び第一インバータと、前記音叉型水晶振動素子と並列に接続される第二抵抗及び第二インバータと、周囲の温度を検知して温度データを出力する温度センサーと、温度データと対応し前記ATカット水晶振動素子の温度補償に用いる第一温度補償データと、温度データと対応し前記音叉型水晶振動素子の温度補償に用いる第二温度補償データとを格納しているメモリと、前記温度センサーと前記メモリとに接続しつつ前記ATカット水晶振動素子とバリキャップダイオードを介して接続する第一温度補償信号発生回路と、前記温度センサーと前記メモリとに接続しつつ前記音叉型水晶振動素子とバリキャップダイオードを介して接続する第二温度補償信号発生回路と、を備えて構成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、複合型温度補償水晶発振器であって、 基板部と、この基板部の一方の主面に設けられ第一凹部と第二凹部を形成する第一枠部と、前記基板部の他方の主面に設けられ第三凹部を形成する第二枠部とを備える素子搭載部材と、前記第一凹部内に設けられた第一搭載パッドに搭載されるATカット水晶振動素子と、前記第二凹部内に設けられた第二搭載パッドに搭載される音叉型水晶振動素子と、前記第三凹部内に設けられた第三搭載パッドに搭載される1つの集積回路素子と、前記第一凹部と前記第二凹部とを塞ぐ蓋部材と、を備え、前記集積回路素子が、前記ATカット水晶振動素子と並列に接続される第一抵抗及び第一インバータと、前記音叉型水晶振動素子と並列に接続される第二抵抗及び第二インバータと、周囲の温度を検知して温度データを出力する温度センサーと、温度データと対応し前記ATカット水晶振動素子の温度補償に用いる第一温度補償データを格納しているメモリと、前記温度センサーと前記メモリとに接続しつつ前記ATカット水晶振動素子とバリキャップダイオードを介して接続する第一温度補償信号発生回路と、を備え、前記第二抵抗及び第二インバータとが、ダイオードを介して接地されて構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このような請求項1に係る複合型温度補償水晶発振器によれば、基板部の一方の主面に設けられる第一凹部にATカット水晶振動素子が搭載され、第二凹部に音叉型水晶振動素子が搭載され、これら第一凹部と第二凹部とを蓋部材で塞ぐ構成となっているため、蓋部材による封止を1回で完了させることができる。
また、このような構成において、温度センサーは、第一温度補償信号発生回路と第二温度補償信号発生回路とに接続されており、第一温度補償信号発生回路がATカット水晶振動素子と接続しており、第二温度補償信号発生回路が音叉型水晶振動素子と接続しているので、ATカット水晶振動素子と音叉型水晶振動素子とを別々に温度補償することができる。
【0012】
また、このような請求項2に係る複合型温度補償水晶発振器によれば、基板部の一方の主面に設けられる第一凹部にATカット水晶振動素子が搭載され、第二凹部に音叉型水晶振動素子が搭載され、これら第一凹部と第二凹部とを蓋部材で塞ぐ構成となっているため、蓋部材による封止を1回で完了させることができる。
また、このような構成において、ATカット水晶振動素子に接続される回路と音叉型水晶振動素子に接続される回路とが独立して設けられているため、ATカット水晶振動素子と音叉型水晶振動素子とのそれぞれに独立して発振させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る複合型温度補償水晶発振器の一例を概念的に示す段面図である。
【図2】ATカット水晶振動素子の一例を模式的に示す斜視図である。
【図3】(a)は音叉型水晶振動素子の一例を模式的に示す平面図であり、(b)は水晶片の一例を模式的に示す平面図である。
【図4】第一の実施形態に係る集積回路素子の一例を示す概念図である。
【図5】第二の実施形態に係る集積回路素子の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」という。)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各構成要素について、状態をわかりやすくするために、誇張して図示している。
【0015】
(第一の実施形態)
図1に示すように、本発明の第一の実施形態に係る複合型温度補償水晶発振器100は、素子搭載部材110、ATカット水晶振動素子120、音叉型水晶振動素子130、蓋部材140、集積回路素子150とから主に構成されている。
【0016】
素子搭載部材110は、基板部111と、この基板部111の一方の主面に設けられ第一凹部K1と第二凹部K2を形成する第一枠部112と、基板部111の他方の主面に設けられ第三凹部K3を形成する第二枠部113とから主に構成されている。
この素子搭載部材110は、第一凹部K1内で露出する基板部111に2つ一対の第一搭載パッド111Aが設けられ、第二凹部K2内で露出する基板部111に2つ一対の第二搭載パッド111Bが設けられ、第三凹部K3内で露出する基板部111に複数の第三搭載パッド111Cが設けられている。
また、第二枠部113において、第三凹部K3内に露出する基板部111の表面と同一方向を向く面に複数の外部端子Gが設けられている。
【0017】
図1に示すように、ATカット水晶振動素子120は、第一凹部K1内に設けられた第一搭載パッド111Aに搭載される。
このATカット水晶振動素子120は、図2に示すように、水晶素板121に励振用電極122を被着形成したものであり、外部からの交番電圧が励振用電極122を介して水晶素板121に印加されると、所定の振動モード及び周波数で励振を起こすようになっている。
水晶素板121は、人工水晶体から所定のカットアングル、例えば、ATカットで切断し外形加工を施された概略平板状で平面形状が例えば四角形となっている。
励振用電極122は、前記水晶素板121の表裏両主面に金属を所定のパターンで被着・形成したものである。
このようなATカット水晶振動素子120は、その両主面に被着されている異極となるそれぞれの励振用電極122から延出する引き出し電極123と第一凹部K1内の第一搭載パッド111Aとを、導電性接着剤DSを介して電気的且つ機械的に接続することによって第一凹部K1内に搭載される。このときの引き出し電極123が設けられた一辺とは反対側の自由端となる端辺を圧電振動素子120の先端部とする。
【0018】
図1に示すように、音叉型水晶振動素子130は、第二凹部K2内に設けられた第二搭載パッド111Bに搭載される。
図3に示すように、音叉型水晶振動素子130は、水晶片131と、その水晶片131の表面に設けられた励振用電極と接続用電極と周波数調整用電極と導配線パターンとにより主に構成される。
【0019】
水晶片131は、基部131Aと第一の振動腕部131B及び第二の振動腕部131Cとから成る。基部131Aは、平面視略四角形の平板である。第一の振動腕部131B及び第二の振動腕部131Cは、基部131Aの一辺から同一方向に延設されている。このような水晶片131は、基部131Aと各振動腕部131B,131Cとが一体となって音叉形状を成しており、フォトリソグラフィ技術と化学エッチング技術により製造される。
【0020】
第一の振動腕部131Bに設けられる電極は、励振用電極132A、132B、132C及び132Dと周波数調整用電極133Aとから成る。
励振用電極132Aは、第一の振動腕部131Bの一方の主面に設けられている。励振用電極132Bは、第一の振動腕部131Bの他方の主面に設けられている。励振用電極132Cは、第一の振動腕部131Bの第二の振動腕部131Cに対向する内側側面に設けられている。励振用電極132Dは、励振用電極132Cが設けられた側面に対向する第一の振動腕部131Bの外側側面に設けられている。周波数調整用電極133Aは、第一の振動腕部131Bの先端部の両主面に設けられている。
【0021】
第二の振動腕部131Cに設けられる電極は、励振用電極132E、132F、132G及び132Hと周波数調整用電極133Bとから成る。励振用電極132Eは、第二の振動腕部131Cの一方の主面に設けられている。励振用電極132Fは、第二の振動腕部131Cの他方の主面に設けられている。励振用電極132Gは、第二の振動腕部131Cの第一の振動腕部131Bに対向する内側側面に設けられている。励振用電極132Hは、励振用電極132Gが設けられた側面に対向する第二の振動腕部131Cの外側側面に設けられている。周波数調整用電極133Bは、第二の振動腕部131Cの先端部の両主面に設けられている。
【0022】
基部131Aには接続用電極134A及び134Bが設けられる。接続用電極134Aは、基部131Aの振動腕部131B、131Cが形成されている辺とは反対側にあたる辺の一方の角端部に、基部131Aの一方の主面から他方の主面にわたって設けられている。接続用電極134Bは、基部131Aの振動腕部131B、131Cが形成されている辺とは反対側にあたる辺の他方の角端部に、基部131Aの一方の主面から他方の主面にわたって設けられている。
【0023】
また、基部131A及び各振動腕部131B、131Cには、所定の電極間を電気的に接続させるための導配線パターンが設けられている。
【0024】
接続用電極134Aは、基部131Aの一方の主面に設けられた導配線パターンにより、第二の振動腕部131Cの一方の主面に設けられた励振用電極132Eと電気的に接続している。又、接続用電極134Aは、第一の振動腕部131Bの外側側面に設けられた励振用電極132Dと電気的に接続している。励振用電極132Dは、周波数調整用電極133Aを介して、第一の振動腕部131Bの内側側面に設けられた励振用電極132Cと電気的に接続している。更に、励振用電極132Eは、第二の振動腕部131Cの内側側面に設けられた導配線パターンにより、第二の振動腕部131Cの他方の主面に設けられた励振用電極132Fと電気的に接続されている。
【0025】
接続用電極134Bは、基部131Aの他方の主面に設けられた導配線パターンにより、第一の振動腕部131Bの他方の主面に設けられた励振用電極132Bと電気的に接続している。又、接続用電極134Bは、第二の振動腕部131Cの外側側面に設けられた励振用電極132Hとも電気的に接続している。励振用電極132Hは、周波数調整用電極133Bを介して、第二の振動腕部131Cの内側側面に設けられた励振用電極132Gと電気的に接続している。更に、励振用電極132Bは、第一の振動腕部131Bの内側側面に設けられた導配線パターンにより第一の振動腕部131Bの一方の主面に設けられた励振用電極132Aと電気的に接続されている。
【0026】
これら励振用電極、接続用電極、周波数調整用電極及び導配線パターンは、フォトリソグラフィ技術により形成され、Cr層の上にAu層が設けられた積層構造となっている。
【0027】
この音叉型水晶振動素子130を振動させる場合、接続用電極134A及び134Bに交番電圧を印加する。印加後のある電気的状態を瞬間的にとらえると、第一の振動腕部131Bの励振用電極132Cと132Dはプラス電位となり、励振用電極132Aと132Bはマイナス電位となり、プラスからマイナスに電界が生じる。一方、このときの第二の振動腕部131Cの励振用電極132Gと132Hはマイナス電位となり、励振用電極132Fと132Gはプラス電位という第一の振動腕部131Bの励振用電極に生じた極性とは反対の極性となり、プラスからマイナスに電界が生じる。この交番電圧により生じた電界によって、第一の振動腕部131B及び第二の振動腕部131Cに伸縮現象が生じ、各振動腕部に設定した共振周波数の屈曲振動を得る。尚、この共振周波数は、音叉型水晶振動素子130に設けられた周波数調整用電極を構成する金属の量を増減させて調整することができる。
【0028】
蓋部材140は、例えば金属からなり、第一凹部K1と第二凹部K2とを塞ぐ役割を果たし、素子搭載部材110の第一枠部112に接合される。このとき、蓋部材140は、一方の主面に封止材が設けられており、真空雰囲気中又は不活性ガス雰囲気中で第一枠部112のメタライズ層と封止材とが接合することにより、第一枠部112に接合される。
なお、蓋部材140と第一枠部112との接合は、例えば、蓋部材140に設けられる封止材が金スズからなる場合は、蓋部材140を第一枠部112に重ねた状態で加熱することで接合することができる。
【0029】
図1に示すように、集積回路素子150は、第三凹部K3内に設けられた第三搭載パッド111Cに搭載される。
この集積回路素子150は、図4に示すように、主に、温度センサー151、第一温度補償信号発生回路152A、第二温度補償信号発生回路152B、メモリ153、バリキャップダイオード154A、154B、156A、156B、第一インバータ154C、第一抵抗154D、第二インバータ156C、第二抵抗156Dとが組み込まれて構成される。
【0030】
温度センサー151は、周囲の温度を検知して温度データを出力する役割を果たす。
【0031】
メモリ153は、ATカット水晶振動素子120の温度補償に用いる第一温度補償データと、音叉型水晶振動素子130の温度補償に用いる第二温度補償データとを格納している。
これら第一温度補償データと第二温度補償データとは、温度センサー151が出力する温度データに対応したデータとなっている。
【0032】
第一温度補償信号発生回路152Aは、温度センサー151とメモリ153とに接続しつつATカット水晶振動素子120にバリキャップダイオード154A、154Bを介して接続している。
【0033】
この第一温度補償信号発生回路152Aは、ATカット水晶振動素子120の周波数偏差と温度との関係が3次関数となることに対応して、この3次関数とは逆となる3次関数を生成する役割を果たす。これにより、所定の温度の範囲で周波数偏差が少ない補償をすることができる。
【0034】
このとき、第一温度補償信号発生回路152Aは、温度センサー151からの温度データを入力し、メモリ153に格納されている第一温度補償データのうち、入力した温度データに対応した第一温度補償データを参照して3次関数を生成する。この3次関数は、温度補償信号となる電圧を出力する。
この温度補償信号の微調整を、例えば、ゲインコントロール回路で調整しても良い。
温度補償信号となる電圧は、バリキャップダイオード154A、154Bを介してATカット水晶振動素子120に出力される。
【0035】
ここで、第一抵抗154D及び第一インバータ154Cとは、ATカット水晶振動素子120と並列に接続される。また、バリキャップダイオード154Aの一方の端子は、第一インバータ154Cの入力側に接続されている。また、他のバリキャップダイオード154Bの一方の端子は、第一インバータ154Cの出力側に接続されている。これらバリキャップダイオード154Aの他方の端子と他のバリキャップダイオード154Bの他方の端子とは接続されており、さらに、第一温度補償信号発生回路152Aと接続している。
【0036】
第一インバータ154Cの出力側は、第一出力バッファ155と接続している。
この第一出力バッファ155の出力側からATカット水晶振動素子120の周波数を出力する。なお、この第一出力バッファ155は、分周回路を組み込んでいても良い。
【0037】
さらに、第二温度補償信号発生回路152Bは、温度センサー151からの温度データを入力し、メモリ153に格納されている第二温度補償データのうち、入力した温度データに対応した第二温度補償データを参照して2次関数を生成する。この2次関数は、温度補償信号となる電圧を出力する。
この温度補償信号となる電圧の微調整を、例えば、ゲインコントロール回路で調整しても良い。
温度補償信号となる電圧は、バリキャップダイオード156A、156Bを介して音叉型水晶振動素子130に出力される。
【0038】
この第二温度補償信号発生回路152Bは、音叉型水晶振動素子130の周波数偏差と温度との関係が2次関数となることに対応して、この2次関数とは逆となる2次関数を生成する役割を果たす。これにより、所定の温度の範囲で周波数偏差が少ない補償をすることができる。
【0039】
このとき、第二温度補償信号発生回路152Bは、温度センサー151からの温度データを入力し、メモリ153に格納されている第二温度補償データのうち、入力した温度データに対応した第二温度補償データを参照して2次関数を生成する。この2次関数は、温度補償信号となる電圧を出力する。
この温度補償信号となる電圧の微調整を、例えば、ゲインコントロール回路で調整しても良い。
温度補償信号となる電圧は、バリキャップダイオード156A、156Bを介して音叉型水晶振動素子130に出力される。
【0040】
ここで、第二抵抗156D及び第二インバータ156Cとは、音叉型水晶振動素子130と並列に接続される。また、バリキャップダイオード156Aの一方の端子は、第二インバータ156Cの入力側に接続されている。また、他のバリキャップダイオード156Bの一方の端子は、第二インバータ156Cの出力側に接続されている。これらバリキャップダイオード156Aの他方の端子と他のバリキャップダイオード156Bの他方の端子とは接続されており、さらに、第二温度補償信号発生回路152Bと接続している。
【0041】
第二インバータ156Dの出力側は、第三インバータ157と接続している。
この第三インバータ157の出力側から音叉型水晶振動素子130の周波数を出力する。
【0042】
このように、本発明の第一の実施形態に係る複合型温度補償水晶発振器100を構成したので、基板部の一方の主面に設けられる第一凹部に搭載されるATカット水晶振動素子と第二凹部に搭載される音叉型水晶振動素子とを蓋部材による封止を1回で完了させることができる。
また、このような構成において、温度センサーは、第一温度補償信号発生回路と第二温度補償信号発生回路とに接続されており、第一温度補償信号発生回路がATカット水晶振動素子と接続しており、第二温度補償信号発生回路が音叉型水晶振動素子と接続しているので、ATカット水晶振動素子と音叉型水晶振動素子とを別々に温度補償することができる。
【0043】
(第二の実施形態)
本発明の第二の実施形態に係る複合型温度補償水晶発振器は、集積回路素子の回路構成が第一の実施形態と異なる。
なお、第一の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0044】
本発明の第二の実施形態に係る複合型温度補償水晶発振器は、素子搭載部材110、ATカット水晶振動素子120、音叉型水晶振動素子130、蓋部材140、集積回路素子250とから主に構成されている。
【0045】
素子搭載部材110は、第一の実施形態と同一構造となっており、この素子搭載部材110に搭載されるATカット水晶振動素子120、音叉型水晶振動素子130、集積回路素子250も第一の実施形態と同一位置に搭載される。
また、蓋部材140についても第一の実施形態と同一の位置にて素子搭載部材110と接合される。
【0046】
以後、集積回路素子250について説明する。
図5に示すように、集積回路素子250は、主に、温度センサー151、第一温度補償信号発生回路152A、メモリ153、バリキャップダイオード154A、154B、第一インバータ154C、第一抵抗154D、第二インバータ156C、第二抵抗156Dとが組み込まれて構成される。
【0047】
温度センサー151は、周囲の温度を検知して温度データを出力する役割を果たす。
【0048】
メモリ153は、ATカット水晶振動素子120の温度補償に用いる第一温度補償データを格納している。
これら第一温度補償データは、温度センサー151が出力する温度データに対応したデータとなっている。
【0049】
第一温度補償信号発生回路152Aは、温度センサー151とメモリ153とに接続しつつATカット水晶振動素子120にバリキャップダイオード154A、154Bを介して接続している。
【0050】
この第一温度補償信号発生回路152Aは、ATカット水晶振動素子120の周波数偏差と温度との関係が3次関数となることに対応して、この3次関数とは逆となる3次関数を生成する役割を果たす。これにより、所定の温度の範囲で周波数偏差が少ない補償をすることができる。
【0051】
このとき、第一温度補償信号発生回路152Aは、温度センサー151からの温度データを入力し、メモリ153に格納されている第一温度補償データのうち、入力した温度データに対応した第一温度補償データを参照して3次関数を生成する。この3次関数は、温度補償信号となる電圧を出力する。
この温度補償信号の微調整を、例えば、ゲインコントロール回路で調整しても良い。
温度補償信号となる電圧は、バリキャップダイオード154A、154Bを介してATカット水晶振動素子120に出力される。
【0052】
ここで、第一抵抗154D及び第一インバータ154Cとは、ATカット水晶振動素子120と並列に接続される。また、バリキャップダイオード154Aの一方の端子は、第一インバータ154Cの入力側に接続されている。また、他のバリキャップダイオード154Bの一方の端子は、第一インバータ154Cの出力側に接続されている。これらバリキャップダイオード154Aの他方の端子と他のバリキャップダイオード154Bの他方の端子とは接続されており、さらに、第一温度補償信号発生回路152Aと接続している。
【0053】
第一インバータ154Cの出力側は、第一出力バッファ155と接続している。
この第一出力バッファ155の出力側からATカット水晶振動素子120の周波数を出力する。なお、この第一出力バッファ155は、分周回路を組み込んでいても良い。
【0054】
ここで、第二抵抗156D及び第二インバータ156Cとは、音叉型水晶振動素子130と並列に接続される。また、ダイオード156Aの一方の端子は、第二インバータ156Cの入力側に接続されている。また、他のダイオード156Bの一方の端子は、第二インバータ156Cの出力側に接続されている。これらダイオード156Aの他方の端子と他のダイオード156Bの他方の端子とは接続されており、さらに、ダイオード156Aの他方の端子と他のダイオード156Bの他方の端子とは接地されている。
【0055】
第二インバータ156Dの出力側は、第三インバータ157と接続している。
この第三インバータ157の出力側から音叉型水晶振動素子130の周波数を出力する。
【0056】
このように、本発明の第二の実施形態に係る複合型温度補償水晶発振器200を構成したので、基板部の一方の主面に設けられる第一凹部に搭載されるATカット水晶振動素子と第二凹部に搭載される音叉型水晶振動素子とを蓋部材による封止を1回で完了させることができる。
また、このような構成において、ATカット水晶振動素子に接続される回路と音叉型水晶振動素子に接続される回路とが独立して設けられているため、ATカット水晶振動素子と音叉型水晶振動素子とのそれぞれに独立して発振させることができる。
【符号の説明】
【0057】
100 複合型温度補償水晶発振器
110 素子搭載部材
111 基板部
111A 第一搭載パッド
111B 第二搭載パッド
111C 第三搭載パッド
112 第一枠部
113 第二枠部
120 ATカット水晶振動素子
130 音叉型水晶振動素子
140 蓋部材
150 集積回路素子
151 温度センサー
152 A第一温度補償信号発生回路
152 B第二温度補償信号発生回路
153 メモリ
154A、154B、156A、156B バリキャップダイオード
154C 第一インバータ
154D 第一抵抗
156C 第二インバータ
156D 第二抵抗
250集積回路素子
K1第一凹部
K2第二凹部
K3第三凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板部と、この基板部の一方の主面に設けられ第一凹部と第二凹部を形成する第一枠部と、前記基板部の他方の主面に設けられ第三凹部を形成する第二枠部とを備える素子搭載部材と、
前記第一凹部内に設けられた第一搭載パッドに搭載されるATカット水晶振動素子と、
前記第二凹部内に設けられた第二搭載パッドに搭載される音叉型水晶振動素子と、
前記第三凹部内に設けられた第三搭載パッドに搭載される1つの集積回路素子と、
前記第一凹部と前記第二凹部とを塞ぐ蓋部材と、
を備え、
前記集積回路素子が、
前記ATカット水晶振動素子と並列に接続される第一抵抗及び第一インバータと、
前記音叉型水晶振動素子と並列に接続される第二抵抗及び第二インバータと、
周囲の温度を検知して温度データを出力する温度センサーと、
温度データと対応し前記ATカット水晶振動素子の温度補償に用いる第一温度補償データと、温度データと対応し前記音叉型水晶振動素子の温度補償に用いる第二温度補償データとを格納しているメモリと、
前記温度センサーと前記メモリとに接続しつつ前記ATカット水晶振動素子とバリキャップダイオードを介して接続する第一温度補償信号発生回路と、
前記温度センサーと前記メモリとに接続しつつ前記音叉型水晶振動素子とバリキャップダイオードを介して接続する第二温度補償信号発生回路と、
を備えて構成されていることを特徴とする複合型温度補償水晶発振器。
【請求項2】
基板部と、この基板部の一方の主面に設けられ第一凹部と第二凹部を形成する第一枠部と、前記基板部の他方の主面に設けられ第三凹部を形成する第二枠部とを備える素子搭載部材と、
前記第一凹部内に設けられた第一搭載パッドに搭載されるATカット水晶振動素子と、
前記第二凹部内に設けられた第二搭載パッドに搭載される音叉型水晶振動素子と、
前記第三凹部内に設けられた第三搭載パッドに搭載される1つの集積回路素子と、
前記第一凹部と前記第二凹部とを塞ぐ蓋部材と、
を備え、
前記集積回路素子が、
前記ATカット水晶振動素子と並列に接続される第一抵抗及び第一インバータと、
前記音叉型水晶振動素子と並列に接続される第二抵抗及び第二インバータと、
周囲の温度を検知して温度データを出力する温度センサーと、
温度データと対応し前記ATカット水晶振動素子の温度補償に用いる第一温度補償データを格納しているメモリと、
前記温度センサーと前記メモリとに接続しつつ前記ATカット水晶振動素子とバリキャップダイオードを介して接続する第一温度補償信号発生回路と、
を備え、
前記第二抵抗及び第二インバータとが、ダイオードを介して接地されて構成されていることを特徴とする複合型温度補償水晶発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−151773(P2012−151773A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10322(P2011−10322)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000104722)京セラクリスタルデバイス株式会社 (870)
【Fターム(参考)】