複合樹脂成形品
【課題】硬質樹脂板を成形金型内にインサートしておき、成形金型内に硬質樹脂板とは収縮率の相違する樹脂材料を射出充填して、本体樹脂部を硬質樹脂板と一体成形してなる複合樹脂成形品であって、硬質樹脂板と本体樹脂部との合わせ部分の製品表面に生じるヒケ、艶ムラ等の発生を抑える。
【解決手段】ピラーガーニッシュ(複合樹脂成形品)10は、軟質樹脂を射出成形してなるガーニッシュ本体(本体樹脂部)20と、予め成形型にインサートされる硬質樹脂板30とから構成され、硬質樹脂板30の端縁部に板厚徐変部34を形成することで、ガーニッシュ本体20の成形時、合わせ部における急激な樹脂流れを抑え、製品表面のヒケ、艶ムラ等の外観不良を解消できる。また、ガーニッシュ本体20における薄肉ヒンジ部21の形状をなだらかなV溝形状とすることで、製品表面にヒケ、艶ムラ等が発生することを抑える。
【解決手段】ピラーガーニッシュ(複合樹脂成形品)10は、軟質樹脂を射出成形してなるガーニッシュ本体(本体樹脂部)20と、予め成形型にインサートされる硬質樹脂板30とから構成され、硬質樹脂板30の端縁部に板厚徐変部34を形成することで、ガーニッシュ本体20の成形時、合わせ部における急激な樹脂流れを抑え、製品表面のヒケ、艶ムラ等の外観不良を解消できる。また、ガーニッシュ本体20における薄肉ヒンジ部21の形状をなだらかなV溝形状とすることで、製品表面にヒケ、艶ムラ等が発生することを抑える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車用内装部品等に好適な複合樹脂成形品に係り、特に、剛性に富む硬質樹脂板を成形金型内にインサートしておき、軟質樹脂を型内に射出充填して、硬質樹脂板と一体に本体樹脂部を同時成形してなる複合樹脂成形品であって、特に、成形時において硬質樹脂板と本体樹脂部との合わせ部における製品表面にヒケ、艶ムラ等の外観不良が生じることがなく、外観性能に優れた複合樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、図12に示すように、クォーターウインドウ開口部1と、バックドア開口部2とを画成するバックピラーパネル(図示せず)の室内面側にピラーガーニッシュ3が装着されており、このピラーガーニッシュ3は、図13に示すように、軟質樹脂製のガーニッシュ本体4と、剛性に富む硬質樹脂板5とからなる複合樹脂成形品が採用されている。そしてピラーガーニッシュ3の製造手順としては、硬質樹脂板5を成形金型内にインサートしておき、成形金型のキャビティ内に軟質樹脂材料を射出充填して、ガーニッシュ本体4を所要形状に成形することで同時成形品として成形される。上記硬質樹脂板5としては、PP(ポリプロピレン)樹脂、PPC樹脂(ポリプロピレン樹脂にタルク等のフィラーを混入した樹脂)が使用され、ガーニッシュ本体4としては、TPO(サーモプラスチックオレフィン)樹脂、PVC樹脂等の軟質樹脂が使用されている。
【0003】
そして、硬質樹脂板5は、ピラーパネルに取り付けるためのクリップ取付座5aや、上下端末に取付片5bが延設され、この取付片5bに取付孔5cが開設されている。また、図14,図15は、上記ピラーガーニッシュ3の断面構造を示すもので、内部に装備されているエアバッグ装置6が展開動作する際、ガーニッシュ本体4も追随して展開動作するように、展開時の起点となるヒンジ部4aが形成されている。そして、ピラーガーニッシュ3の成形方法としては、上述したように、予め所要形状に成形されている硬質樹脂板5を成形金型内にインサートしておき、成形金型のキャビティ内に溶融樹脂を射出充填することで、ガーニッシュ本体4を所要形状に成形し、収縮率の相違する硬質樹脂板5とガーニッシュ本体4を一体化しているのが実情である。上記ピラーガーニッシュ3におけるガーニッシュ本体4と硬質樹脂板5との関係は、図14に示すように、全体の厚みが一定となるため、硬質樹脂板5とラップする部位におけるガーニッシュ本体4の厚みが薄肉に設定されているとともに、特に、応力が加わる部位は図15に示すように、硬質樹脂板5の端縁部分をガーニッシュ本体4に一体化したフック状のホルダ部4bで抱え込む構成が採用されている。このエアバッグ装置6を内蔵するピラーガーニッシュ3の構成及び成形方法については、特許文献1に詳細に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−306219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、ピラーガーニッシュ3は、車体パネルへの強固な取付強度を確保するとともに、エアバッグ装置6の展開動作に追随できるように、硬質樹脂板5と軟質のガーニッシュ本体4との収縮率の異なる2種類の材料を使用した複合樹脂成形品が採用され、硬質樹脂板5を成形金型内にインサートしておき、ガーニッシュ本体4を射出成形することで一体化されているが、硬質樹脂板5の端縁部分において、ガーニッシュ本体4の板厚が急激に変化するため、図13中A1、並びにA2で示す部位において、ヒケや艶ムラ等の外観不良が生じ易く、特に、艶ムラが生じた場合には、後塗装により仕上げ工程が付加されるため、製作コストを大幅に高騰化させるという問題点が指摘されている。
【0006】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、硬質樹脂板を成形金型にインサートしておき、軟質樹脂を射出充填してなる複合樹脂成形品であって、硬質樹脂板の端縁部において、本体樹脂部の板厚が急激に変化することにより、ヒケ、艶ムラ等の外観不良が製品表面に生じることを可及的に防止でき、外観性能を高め、後塗装等の付加工程を廃止でき、コストダウンを招来できる複合樹脂成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者は、成形金型に予めインサートしておく硬質樹脂板の端縁部分の形状に創意工夫を加えることで、本体樹脂部の板厚の急激な変化を和らげ、本体樹脂部表面にヒケや艶ムラ等の外観不良の発生が抑えられることに着目して本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、硬質樹脂板を成形金型内にインサートしておき、成形金型のキャビティ内に軟質樹脂材料を射出充填して、本体樹脂部を硬質樹脂板と一体化してなる複合樹脂成形品において、前記硬質樹脂板の端縁部にテーパー状の板厚徐変部が形成されていることで、合わせ部における製品表面にヒケ、艶ムラ等の発生が回避される構成であることを特徴とする。
【0009】
ここで、複合樹脂成形品としては、ピラーパネルの室内面側に装着されるフロントピラーガーニッシュ、センターピラーガーニッシュ、リヤピラーガーニッシュ、バックピラーガーニッシュ等、各種ピラーガーニッシュや、リヤサイドトリム、ラゲージサイドトリム等に適用できる。また、複合樹脂成形品とは、少なくとも2種類以上の異なる樹脂材料を使用した樹脂成形品であり、例えば、ピラーガーニッシュに適用した場合、ピラーパネルに対する取付剛性を備えた硬質樹脂板と、エアバッグの展開動作に追随して撓み変形可能な軟質樹脂製のガーニッシュ本体とから構成され、硬質樹脂板の高い剛性により、車体パネルへの取付剛性が確保され、また、ガーニッシュ本体が容易に撓み変形する性質を持つことからエアバッグの展開動作に容易に追随して、エアバッグの機能性を損なうことがない。
【0010】
上記硬質樹脂板としては、PP樹脂、PPC樹脂(ポリプロピレン樹脂にタルク等のフィラーを混入した樹脂)が使用され、この硬質樹脂板には、クリップ取付座やビス止め孔を設けた取付片が一体化されている。また、硬質樹脂板をインサートした成形金型のキャビティ内に溶融樹脂を射出充填して成形される本体樹脂部としては、TPO(サーモプラスチックオレフィン)樹脂、PVC樹脂等の軟質樹脂材料が適している。更に、硬質樹脂板の端縁部に形成される板厚徐変部としては、徐変の割合が急激ではなく、なだらかなほうがより効果が上がる。そして、本体樹脂部と硬質樹脂板との関係については、全体の厚みが一定となるように、本体樹脂部におけるラップ部分の厚みを薄肉にしても良く、また、本体樹脂部の厚みを一定にし、ラップ部分において硬質樹脂板と本体樹脂部の厚みを本体樹脂部単体部分に比べ厚肉に設定することもできる。
【0011】
次いで、本発明は、硬質樹脂板を成形金型内にインサートしておき、成形金型のキャビティ内に軟質樹脂材料を射出充填して、本体樹脂部を硬質樹脂板と一体化してなる複合樹脂成形品において、前記本体樹脂部に撓み変形する際の起点となる薄肉ヒンジ部が形成され、この薄肉ヒンジ部の両側は、それぞれ板厚徐変部として設定され、かつこの部位に延設される硬質樹脂板の端縁部にはテーパー状の板厚徐変部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
そして、本体樹脂部に設けられる薄肉ヒンジ部としては、厚みが急激に変化するのではなく、両側に板厚徐変部を設けたヒンジ部としてなだらかなV溝状に形成されている。この部分に硬質樹脂板をラップさせる場合、硬質樹脂板の端縁部においても端末に向けて徐々に厚みが薄くなる板厚徐変部を設定するのが好ましい。尚、この本体樹脂部には、薄肉ヒンジ部や硬質樹脂板の端縁部を保持するホルダ部が一体形成されている。
【0013】
このように、本発明によれば、本体樹脂部と硬質樹脂板との合わせ部分において、硬質樹脂板の端縁部の厚みが徐変されているため、本体樹脂部を成形する際、急激な樹脂流れが生じることがなく、合わせ部における本体樹脂部表面にヒケ、艶ムラ等の外観不良が生じることがない。
【0014】
更に、本体樹脂部に薄肉ヒンジ部を設定する際、薄肉ヒンジ部の両側の板厚を徐変させるとともに、この部位に硬質樹脂板の厚みを徐変させながら延設するという構成が採用されているため、薄肉ヒンジ部に対応する製品表面にヒケ、艶ムラ等が生じることがない。
【0015】
このように、本体樹脂部と硬質樹脂板の合わせ部分に対応する部位の製品表面、及び薄肉ヒンジ部に対応する製品表面にヒケ、艶ムラ等が生じないため、外観性能を良好に維持できるとともに、後塗装等の付加工程を廃止することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明した通り、本発明に係る複合樹脂成形品は、剛性に優れた硬質樹脂板を成形金型内にインサートしておき、成形金型内の製品キャビティ内に軟質樹脂材料を射出充填することで、硬質樹脂板と一体に軟質樹脂からなる本体樹脂部を一体成形してなる複合樹脂成形品であって、特に、硬質樹脂板の端縁部の厚みを徐変させることで、合わせ部分における製品表面にヒケ、艶ムラ等が生じることを確実に防止することができるため、外観性能を良好に維持できるとともに、後塗装工程を不要とすることから、コストダウンが期待できるという効果を有する。
【0017】
また、本体樹脂部に薄肉ヒンジ部を成形する構成においては、薄肉ヒンジ部における両側の板厚を徐変させるとともに、薄肉ヒンジ部に延設される硬質樹脂板の板厚も徐変させる構成を採用すれば、本体樹脂部の成形時に急激な板厚変化がなく、薄肉ヒンジ部に対応する製品表面にヒケ、艶ムラ等の外観不良が生じることがないため、外観性能を良好に保つとともに、後塗装等の加工が不要となることから、製作コストを低減することができ、コストダウンを招来することができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る複合樹脂成形品をピラーガーニッシュに適用した実施例について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、念のため付言すれば、本発明の要旨は特許請求の範囲に記載した通りであり、以下に説明する実施例の内容は、本発明の一例を単に示すものに過ぎない。
【実施例1】
【0019】
図1乃至図5は本発明の第1実施例を示すもので、図1は本発明に係る複合樹脂成形品を適用したピラーガーニッシュを室内側から見た斜視図、図2は同ピラーガーニッシュの構成説明図、図3は同ピラーガーニッシュの断面図、図4は同ピラーガーニッシュにおける硬質樹脂板の端末形状を示す断面図、図5は同ピラーガーニッシュの変形例を示す断面図である。
【0020】
図1において、クォーターウインドウ開口部1とバックドア開口部2との間に位置する図示しないバックピラーパネルの室内側の一部を被覆するように、ピラーガーニッシュ10が装着されており、このピラーガーニッシュ10は、図2に示すように、ガーニッシュ本体20と硬質樹脂板30の2部材を一体化してなる複合樹脂成形品が採用されている。上記ガーニッシュ本体20は、軟質樹脂、例えば、TPO(サーモプラスチックオレフィン)樹脂、PVC樹脂等が使用されており、硬質樹脂板30としては、PP樹脂、PPC樹脂(ポリプロピレン樹脂にタルク等のフィラーを混入した樹脂)が使用され、硬質樹脂板30により車体パネルへの取付剛性及び保形性を確保するとともに、ガーニッシュ本体20を軟質樹脂で構成することで、内部に配置したエアバッグ装置6の展開動作時にエアバッグ装置6と追随するように撓み変形可能で、かつ良好な感触が確保されている。この硬質樹脂板30の形状は、図示するように、ほぼ中央にクリップ取付座31が形成され、このクリップ取付座31に図示しないクリップを装着して、バックピラーパネルの取付孔に圧入嵌合することにより、ピラーガーニッシュ10がパネル側に固定される。また、硬質樹脂板30の上下端末には、取付片32が形成され、この取付片32には、左右にそれぞれ取付孔33が開設され、図示しないビス等によりこれもバックピラーパネルの取付孔に締め付け固定される。
【0021】
そして、硬質樹脂板30とガーニッシュ本体20の一体化構造については、成形金型内に硬質樹脂板30をインサートしておき、成形金型のキャビティ内に軟質樹脂材料を射出充填することで、ガーニッシュ本体20を硬質樹脂板30に対して一体成形して、複合樹脂成形品であるピラーガーニッシュ10を成形することができる。このガーニッシュ本体20については、エアバッグ装置6の展開時に旋回可能なように薄肉ヒンジ部21が上下に延びるコーナーラインに沿って設定され、内側に凹溝状に形成されている。
【0022】
ところで、本発明に係るピラーガーニッシュ10は、従来からヒケや艶ムラ等の外観不良が生じ易い箇所である図2,図3中A1で示す部位にヒケや艶ムラ等が生じることがなく、外観性能を向上させたことが特徴である。そのためには、図3,図4に示すように、硬質樹脂板30の端縁部に板厚徐変部34を設定したことが構成上の特徴である。すなわち、硬質樹脂板30に板厚徐変部34を設定することで、ガーニッシュ本体20の成形時に軟質樹脂を射出充填した際、急激な板厚変化がないため、樹脂流れをほぼ均一に維持することができ、図2中A1で示す箇所にヒケや艶ムラ等の外観不良が生じることがない。この板厚徐変部34の徐変割合としては、図4に示すように、長さ方向変位xに対して厚み方向変位yとした場合、x≧yが良く、xの割合が大きいほど、ヒケ、艶ムラ等が発生することを抑える効果が高い。
【0023】
次いで、図5は変形例を示すもので、同様にピラーガーニッシュ10における硬質樹脂板30の端縁部に板厚徐変部34を設定してはいるが、この変形例においては、ガーニッシュ本体20の厚みは一定であり、ガーニッシュ本体20のラップ部分とガーニッシュ本体20と硬質樹脂板30のラップ部分については板厚が可変しており、その際、硬質樹脂板30の端縁部に板厚徐変部34を形成しておくことで、全体の板厚変化の度合いが緩和されるため、図中A1に示すピラーガーニッシュ10表面にヒケ、艶ムラ等が発生するのを可及的に防止することができる。
【実施例2】
【0024】
図6乃至図11は本発明の第2実施例を示すもので、第1実施例同様、バックピラーパネルの室内側の一部に装着されるピラーガーニッシュ10に適用されている。図6はピラーガーニッシュ10の斜視図、図7,図8は同ピラーガーニッシュにおける薄肉ヒンジ部の構成を示す断面図、図9乃至図11は同ピラーガーニッシュにおける薄肉ヒンジ部の各変形例を示す各断面図である。
【0025】
この第2実施例においても、ピラーガーニッシュ10は、ガーニッシュ本体20と硬質樹脂板30とからなる複合樹脂成形品で構成されている点は第1実施例と同一であり、この第2実施例では、ガーニッシュ本体20における薄肉ヒンジ部21付近の構成に工夫を加えることで、薄肉ヒンジ部21に対応する製品表面にヒケ、艶ムラ等の外観不良が生じることを可及的に防止したことが特徴である。従って、ガーニッシュ本体20、硬質樹脂板30の材料や、成形方法等は第1実施例と同一であるため、ここではその説明は省略する。
【0026】
この第2実施例においては、図7,図8に示すように、ガーニッシュ本体20における薄肉ヒンジ部21は、それぞれ左右側に板厚徐変部21a,21bが設定され、薄肉ヒンジ部21はなだらかなV溝状に形成されることでガーニッシュ本体20の成形時、樹脂流れが急激に変化することがなく、製品表面にヒケ、艶ムラ等が生じることを抑えることができるとともに、この薄肉ヒンジ部21の内面に一体化される硬質樹脂板30の端縁部についても、板厚徐変部35が設定され、この硬質樹脂板30の端縁部を抱え込むように、ガーニッシュ本体20の内面には、薄肉ヒンジ部21からフック状に延びるホルダ部22が形成されている。
【0027】
このように、第2実施例においては、ガーニッシュ本体20における薄肉ヒンジ部21をなだらかなV溝形状とすることで、ガーニッシュ本体20における板厚の急激な変化をなくすとともに、硬質樹脂板30についても板厚徐変部35をガーニッシュ本体20のホルダ部22で抱え込む構成としたため、図6乃至図8中A2で示す部分においてヒケ、艶ムラ等が生じることがなく、外観性能を良好に維持できるとともに、後塗装等の加工も廃止できるという利点がある。
【0028】
更に、図9に示すように、硬質樹脂板30にフランジ部36を設定する構成や、図10に示すように、硬質樹脂板30に形成する板厚徐変部35としてガーニッシュ本体20の板厚徐変部21bと対応する形状の板厚徐変部35を設定するか、また、図11に示すように、ガーニッシュ本体20側のホルダ部22を廃止する形状を採用する等、基本的にガーニッシュ本体20における薄肉ヒンジ部21をなだらかなV溝形状に設定するとともに、硬質樹脂板30の端縁部分に板厚徐変部35を設定するという基本構成が採用されていれば良い。
【0029】
従って、この第2実施例によれば、ガーニッシュ本体20における薄肉ヒンジ部21のヒンジ機能を損なうことがないため、エアバッグ装置6の展開動作に応じて薄肉ヒンジ部21を基にガーニッシュ本体20が展開状に変形可能であり、エアバッグ装置6の機能を損なうことがないとともに、薄肉ヒンジ部21がなだらかなV溝形状でかつ硬質樹脂板30の端縁部についても、板厚徐変部35が採用されているため、薄肉ヒンジ部21に対応する製品表面には、ヒケや艶ムラ等の外観不良がなく、製品外観が更に良好に保たれるとともに、後塗装等の加工も不要となり、製作コストも低減できるという有利さを備えている。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上説明した実施例1、実施例2は、バックピラーパネルの室内面側に装着されるピラーガーニッシュ10に適用したが、硬質樹脂板30を成形金型にインサートしておき、本体樹脂部を一体成形する複合樹脂成形品全般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る複合樹脂成形品を適用したピラーガーニッシュを車室内側から見た外観図である。
【図2】本発明に係る複合樹脂成形品を適用したピラーガーニッシュを示す斜視図である。
【図3】図2中III −III 線断面図である。
【図4】図3に示すピラーガーニッシュにおける硬質樹脂板の端縁部分の形状を示す説明図である。
【図5】ピラーガーニッシュの変形例を示す断面図である。
【図6】本発明に係る複合樹脂成形品を適用したピラーガーニッシュを示す斜視図である。
【図7】図6中VII −VII 線断面図である。
【図8】図7に示すピラーガーニッシュにおける薄肉ヒンジ部付近の構成を示す拡大断面図である。
【図9】図6に示すピラーガーニッシュの変形例を示す断面図である。
【図10】図6に示すピラーガーニッシュの変形例を示す断面図である。
【図11】図6に示すピラーガーニッシュの変形例を示す断面図である。
【図12】車両のリヤピラーの室内側を示す説明図である。
【図13】従来のピラーガーニッシュを示す斜視図である。
【図14】図13中XIV −XIV 線断面図である。
【図15】図13中XV−XV線断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 クォーターウインドウ開口部
2 バックドア開口部
6 エアバッグ装置
10 ピラーガーニッシュ(複合樹脂成形品)
20 ガーニッシュ本体(本体樹脂部)
21 薄肉ヒンジ部
21a,21b 板厚徐変部
22 ホルダ部
30 硬質樹脂板
31 クリップ取付座
32 取付片
33 取付孔
34,35 板厚徐変部
36 フランジ部
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車用内装部品等に好適な複合樹脂成形品に係り、特に、剛性に富む硬質樹脂板を成形金型内にインサートしておき、軟質樹脂を型内に射出充填して、硬質樹脂板と一体に本体樹脂部を同時成形してなる複合樹脂成形品であって、特に、成形時において硬質樹脂板と本体樹脂部との合わせ部における製品表面にヒケ、艶ムラ等の外観不良が生じることがなく、外観性能に優れた複合樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、図12に示すように、クォーターウインドウ開口部1と、バックドア開口部2とを画成するバックピラーパネル(図示せず)の室内面側にピラーガーニッシュ3が装着されており、このピラーガーニッシュ3は、図13に示すように、軟質樹脂製のガーニッシュ本体4と、剛性に富む硬質樹脂板5とからなる複合樹脂成形品が採用されている。そしてピラーガーニッシュ3の製造手順としては、硬質樹脂板5を成形金型内にインサートしておき、成形金型のキャビティ内に軟質樹脂材料を射出充填して、ガーニッシュ本体4を所要形状に成形することで同時成形品として成形される。上記硬質樹脂板5としては、PP(ポリプロピレン)樹脂、PPC樹脂(ポリプロピレン樹脂にタルク等のフィラーを混入した樹脂)が使用され、ガーニッシュ本体4としては、TPO(サーモプラスチックオレフィン)樹脂、PVC樹脂等の軟質樹脂が使用されている。
【0003】
そして、硬質樹脂板5は、ピラーパネルに取り付けるためのクリップ取付座5aや、上下端末に取付片5bが延設され、この取付片5bに取付孔5cが開設されている。また、図14,図15は、上記ピラーガーニッシュ3の断面構造を示すもので、内部に装備されているエアバッグ装置6が展開動作する際、ガーニッシュ本体4も追随して展開動作するように、展開時の起点となるヒンジ部4aが形成されている。そして、ピラーガーニッシュ3の成形方法としては、上述したように、予め所要形状に成形されている硬質樹脂板5を成形金型内にインサートしておき、成形金型のキャビティ内に溶融樹脂を射出充填することで、ガーニッシュ本体4を所要形状に成形し、収縮率の相違する硬質樹脂板5とガーニッシュ本体4を一体化しているのが実情である。上記ピラーガーニッシュ3におけるガーニッシュ本体4と硬質樹脂板5との関係は、図14に示すように、全体の厚みが一定となるため、硬質樹脂板5とラップする部位におけるガーニッシュ本体4の厚みが薄肉に設定されているとともに、特に、応力が加わる部位は図15に示すように、硬質樹脂板5の端縁部分をガーニッシュ本体4に一体化したフック状のホルダ部4bで抱え込む構成が採用されている。このエアバッグ装置6を内蔵するピラーガーニッシュ3の構成及び成形方法については、特許文献1に詳細に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−306219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、ピラーガーニッシュ3は、車体パネルへの強固な取付強度を確保するとともに、エアバッグ装置6の展開動作に追随できるように、硬質樹脂板5と軟質のガーニッシュ本体4との収縮率の異なる2種類の材料を使用した複合樹脂成形品が採用され、硬質樹脂板5を成形金型内にインサートしておき、ガーニッシュ本体4を射出成形することで一体化されているが、硬質樹脂板5の端縁部分において、ガーニッシュ本体4の板厚が急激に変化するため、図13中A1、並びにA2で示す部位において、ヒケや艶ムラ等の外観不良が生じ易く、特に、艶ムラが生じた場合には、後塗装により仕上げ工程が付加されるため、製作コストを大幅に高騰化させるという問題点が指摘されている。
【0006】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、硬質樹脂板を成形金型にインサートしておき、軟質樹脂を射出充填してなる複合樹脂成形品であって、硬質樹脂板の端縁部において、本体樹脂部の板厚が急激に変化することにより、ヒケ、艶ムラ等の外観不良が製品表面に生じることを可及的に防止でき、外観性能を高め、後塗装等の付加工程を廃止でき、コストダウンを招来できる複合樹脂成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者は、成形金型に予めインサートしておく硬質樹脂板の端縁部分の形状に創意工夫を加えることで、本体樹脂部の板厚の急激な変化を和らげ、本体樹脂部表面にヒケや艶ムラ等の外観不良の発生が抑えられることに着目して本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、硬質樹脂板を成形金型内にインサートしておき、成形金型のキャビティ内に軟質樹脂材料を射出充填して、本体樹脂部を硬質樹脂板と一体化してなる複合樹脂成形品において、前記硬質樹脂板の端縁部にテーパー状の板厚徐変部が形成されていることで、合わせ部における製品表面にヒケ、艶ムラ等の発生が回避される構成であることを特徴とする。
【0009】
ここで、複合樹脂成形品としては、ピラーパネルの室内面側に装着されるフロントピラーガーニッシュ、センターピラーガーニッシュ、リヤピラーガーニッシュ、バックピラーガーニッシュ等、各種ピラーガーニッシュや、リヤサイドトリム、ラゲージサイドトリム等に適用できる。また、複合樹脂成形品とは、少なくとも2種類以上の異なる樹脂材料を使用した樹脂成形品であり、例えば、ピラーガーニッシュに適用した場合、ピラーパネルに対する取付剛性を備えた硬質樹脂板と、エアバッグの展開動作に追随して撓み変形可能な軟質樹脂製のガーニッシュ本体とから構成され、硬質樹脂板の高い剛性により、車体パネルへの取付剛性が確保され、また、ガーニッシュ本体が容易に撓み変形する性質を持つことからエアバッグの展開動作に容易に追随して、エアバッグの機能性を損なうことがない。
【0010】
上記硬質樹脂板としては、PP樹脂、PPC樹脂(ポリプロピレン樹脂にタルク等のフィラーを混入した樹脂)が使用され、この硬質樹脂板には、クリップ取付座やビス止め孔を設けた取付片が一体化されている。また、硬質樹脂板をインサートした成形金型のキャビティ内に溶融樹脂を射出充填して成形される本体樹脂部としては、TPO(サーモプラスチックオレフィン)樹脂、PVC樹脂等の軟質樹脂材料が適している。更に、硬質樹脂板の端縁部に形成される板厚徐変部としては、徐変の割合が急激ではなく、なだらかなほうがより効果が上がる。そして、本体樹脂部と硬質樹脂板との関係については、全体の厚みが一定となるように、本体樹脂部におけるラップ部分の厚みを薄肉にしても良く、また、本体樹脂部の厚みを一定にし、ラップ部分において硬質樹脂板と本体樹脂部の厚みを本体樹脂部単体部分に比べ厚肉に設定することもできる。
【0011】
次いで、本発明は、硬質樹脂板を成形金型内にインサートしておき、成形金型のキャビティ内に軟質樹脂材料を射出充填して、本体樹脂部を硬質樹脂板と一体化してなる複合樹脂成形品において、前記本体樹脂部に撓み変形する際の起点となる薄肉ヒンジ部が形成され、この薄肉ヒンジ部の両側は、それぞれ板厚徐変部として設定され、かつこの部位に延設される硬質樹脂板の端縁部にはテーパー状の板厚徐変部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
そして、本体樹脂部に設けられる薄肉ヒンジ部としては、厚みが急激に変化するのではなく、両側に板厚徐変部を設けたヒンジ部としてなだらかなV溝状に形成されている。この部分に硬質樹脂板をラップさせる場合、硬質樹脂板の端縁部においても端末に向けて徐々に厚みが薄くなる板厚徐変部を設定するのが好ましい。尚、この本体樹脂部には、薄肉ヒンジ部や硬質樹脂板の端縁部を保持するホルダ部が一体形成されている。
【0013】
このように、本発明によれば、本体樹脂部と硬質樹脂板との合わせ部分において、硬質樹脂板の端縁部の厚みが徐変されているため、本体樹脂部を成形する際、急激な樹脂流れが生じることがなく、合わせ部における本体樹脂部表面にヒケ、艶ムラ等の外観不良が生じることがない。
【0014】
更に、本体樹脂部に薄肉ヒンジ部を設定する際、薄肉ヒンジ部の両側の板厚を徐変させるとともに、この部位に硬質樹脂板の厚みを徐変させながら延設するという構成が採用されているため、薄肉ヒンジ部に対応する製品表面にヒケ、艶ムラ等が生じることがない。
【0015】
このように、本体樹脂部と硬質樹脂板の合わせ部分に対応する部位の製品表面、及び薄肉ヒンジ部に対応する製品表面にヒケ、艶ムラ等が生じないため、外観性能を良好に維持できるとともに、後塗装等の付加工程を廃止することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明した通り、本発明に係る複合樹脂成形品は、剛性に優れた硬質樹脂板を成形金型内にインサートしておき、成形金型内の製品キャビティ内に軟質樹脂材料を射出充填することで、硬質樹脂板と一体に軟質樹脂からなる本体樹脂部を一体成形してなる複合樹脂成形品であって、特に、硬質樹脂板の端縁部の厚みを徐変させることで、合わせ部分における製品表面にヒケ、艶ムラ等が生じることを確実に防止することができるため、外観性能を良好に維持できるとともに、後塗装工程を不要とすることから、コストダウンが期待できるという効果を有する。
【0017】
また、本体樹脂部に薄肉ヒンジ部を成形する構成においては、薄肉ヒンジ部における両側の板厚を徐変させるとともに、薄肉ヒンジ部に延設される硬質樹脂板の板厚も徐変させる構成を採用すれば、本体樹脂部の成形時に急激な板厚変化がなく、薄肉ヒンジ部に対応する製品表面にヒケ、艶ムラ等の外観不良が生じることがないため、外観性能を良好に保つとともに、後塗装等の加工が不要となることから、製作コストを低減することができ、コストダウンを招来することができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る複合樹脂成形品をピラーガーニッシュに適用した実施例について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、念のため付言すれば、本発明の要旨は特許請求の範囲に記載した通りであり、以下に説明する実施例の内容は、本発明の一例を単に示すものに過ぎない。
【実施例1】
【0019】
図1乃至図5は本発明の第1実施例を示すもので、図1は本発明に係る複合樹脂成形品を適用したピラーガーニッシュを室内側から見た斜視図、図2は同ピラーガーニッシュの構成説明図、図3は同ピラーガーニッシュの断面図、図4は同ピラーガーニッシュにおける硬質樹脂板の端末形状を示す断面図、図5は同ピラーガーニッシュの変形例を示す断面図である。
【0020】
図1において、クォーターウインドウ開口部1とバックドア開口部2との間に位置する図示しないバックピラーパネルの室内側の一部を被覆するように、ピラーガーニッシュ10が装着されており、このピラーガーニッシュ10は、図2に示すように、ガーニッシュ本体20と硬質樹脂板30の2部材を一体化してなる複合樹脂成形品が採用されている。上記ガーニッシュ本体20は、軟質樹脂、例えば、TPO(サーモプラスチックオレフィン)樹脂、PVC樹脂等が使用されており、硬質樹脂板30としては、PP樹脂、PPC樹脂(ポリプロピレン樹脂にタルク等のフィラーを混入した樹脂)が使用され、硬質樹脂板30により車体パネルへの取付剛性及び保形性を確保するとともに、ガーニッシュ本体20を軟質樹脂で構成することで、内部に配置したエアバッグ装置6の展開動作時にエアバッグ装置6と追随するように撓み変形可能で、かつ良好な感触が確保されている。この硬質樹脂板30の形状は、図示するように、ほぼ中央にクリップ取付座31が形成され、このクリップ取付座31に図示しないクリップを装着して、バックピラーパネルの取付孔に圧入嵌合することにより、ピラーガーニッシュ10がパネル側に固定される。また、硬質樹脂板30の上下端末には、取付片32が形成され、この取付片32には、左右にそれぞれ取付孔33が開設され、図示しないビス等によりこれもバックピラーパネルの取付孔に締め付け固定される。
【0021】
そして、硬質樹脂板30とガーニッシュ本体20の一体化構造については、成形金型内に硬質樹脂板30をインサートしておき、成形金型のキャビティ内に軟質樹脂材料を射出充填することで、ガーニッシュ本体20を硬質樹脂板30に対して一体成形して、複合樹脂成形品であるピラーガーニッシュ10を成形することができる。このガーニッシュ本体20については、エアバッグ装置6の展開時に旋回可能なように薄肉ヒンジ部21が上下に延びるコーナーラインに沿って設定され、内側に凹溝状に形成されている。
【0022】
ところで、本発明に係るピラーガーニッシュ10は、従来からヒケや艶ムラ等の外観不良が生じ易い箇所である図2,図3中A1で示す部位にヒケや艶ムラ等が生じることがなく、外観性能を向上させたことが特徴である。そのためには、図3,図4に示すように、硬質樹脂板30の端縁部に板厚徐変部34を設定したことが構成上の特徴である。すなわち、硬質樹脂板30に板厚徐変部34を設定することで、ガーニッシュ本体20の成形時に軟質樹脂を射出充填した際、急激な板厚変化がないため、樹脂流れをほぼ均一に維持することができ、図2中A1で示す箇所にヒケや艶ムラ等の外観不良が生じることがない。この板厚徐変部34の徐変割合としては、図4に示すように、長さ方向変位xに対して厚み方向変位yとした場合、x≧yが良く、xの割合が大きいほど、ヒケ、艶ムラ等が発生することを抑える効果が高い。
【0023】
次いで、図5は変形例を示すもので、同様にピラーガーニッシュ10における硬質樹脂板30の端縁部に板厚徐変部34を設定してはいるが、この変形例においては、ガーニッシュ本体20の厚みは一定であり、ガーニッシュ本体20のラップ部分とガーニッシュ本体20と硬質樹脂板30のラップ部分については板厚が可変しており、その際、硬質樹脂板30の端縁部に板厚徐変部34を形成しておくことで、全体の板厚変化の度合いが緩和されるため、図中A1に示すピラーガーニッシュ10表面にヒケ、艶ムラ等が発生するのを可及的に防止することができる。
【実施例2】
【0024】
図6乃至図11は本発明の第2実施例を示すもので、第1実施例同様、バックピラーパネルの室内側の一部に装着されるピラーガーニッシュ10に適用されている。図6はピラーガーニッシュ10の斜視図、図7,図8は同ピラーガーニッシュにおける薄肉ヒンジ部の構成を示す断面図、図9乃至図11は同ピラーガーニッシュにおける薄肉ヒンジ部の各変形例を示す各断面図である。
【0025】
この第2実施例においても、ピラーガーニッシュ10は、ガーニッシュ本体20と硬質樹脂板30とからなる複合樹脂成形品で構成されている点は第1実施例と同一であり、この第2実施例では、ガーニッシュ本体20における薄肉ヒンジ部21付近の構成に工夫を加えることで、薄肉ヒンジ部21に対応する製品表面にヒケ、艶ムラ等の外観不良が生じることを可及的に防止したことが特徴である。従って、ガーニッシュ本体20、硬質樹脂板30の材料や、成形方法等は第1実施例と同一であるため、ここではその説明は省略する。
【0026】
この第2実施例においては、図7,図8に示すように、ガーニッシュ本体20における薄肉ヒンジ部21は、それぞれ左右側に板厚徐変部21a,21bが設定され、薄肉ヒンジ部21はなだらかなV溝状に形成されることでガーニッシュ本体20の成形時、樹脂流れが急激に変化することがなく、製品表面にヒケ、艶ムラ等が生じることを抑えることができるとともに、この薄肉ヒンジ部21の内面に一体化される硬質樹脂板30の端縁部についても、板厚徐変部35が設定され、この硬質樹脂板30の端縁部を抱え込むように、ガーニッシュ本体20の内面には、薄肉ヒンジ部21からフック状に延びるホルダ部22が形成されている。
【0027】
このように、第2実施例においては、ガーニッシュ本体20における薄肉ヒンジ部21をなだらかなV溝形状とすることで、ガーニッシュ本体20における板厚の急激な変化をなくすとともに、硬質樹脂板30についても板厚徐変部35をガーニッシュ本体20のホルダ部22で抱え込む構成としたため、図6乃至図8中A2で示す部分においてヒケ、艶ムラ等が生じることがなく、外観性能を良好に維持できるとともに、後塗装等の加工も廃止できるという利点がある。
【0028】
更に、図9に示すように、硬質樹脂板30にフランジ部36を設定する構成や、図10に示すように、硬質樹脂板30に形成する板厚徐変部35としてガーニッシュ本体20の板厚徐変部21bと対応する形状の板厚徐変部35を設定するか、また、図11に示すように、ガーニッシュ本体20側のホルダ部22を廃止する形状を採用する等、基本的にガーニッシュ本体20における薄肉ヒンジ部21をなだらかなV溝形状に設定するとともに、硬質樹脂板30の端縁部分に板厚徐変部35を設定するという基本構成が採用されていれば良い。
【0029】
従って、この第2実施例によれば、ガーニッシュ本体20における薄肉ヒンジ部21のヒンジ機能を損なうことがないため、エアバッグ装置6の展開動作に応じて薄肉ヒンジ部21を基にガーニッシュ本体20が展開状に変形可能であり、エアバッグ装置6の機能を損なうことがないとともに、薄肉ヒンジ部21がなだらかなV溝形状でかつ硬質樹脂板30の端縁部についても、板厚徐変部35が採用されているため、薄肉ヒンジ部21に対応する製品表面には、ヒケや艶ムラ等の外観不良がなく、製品外観が更に良好に保たれるとともに、後塗装等の加工も不要となり、製作コストも低減できるという有利さを備えている。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上説明した実施例1、実施例2は、バックピラーパネルの室内面側に装着されるピラーガーニッシュ10に適用したが、硬質樹脂板30を成形金型にインサートしておき、本体樹脂部を一体成形する複合樹脂成形品全般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る複合樹脂成形品を適用したピラーガーニッシュを車室内側から見た外観図である。
【図2】本発明に係る複合樹脂成形品を適用したピラーガーニッシュを示す斜視図である。
【図3】図2中III −III 線断面図である。
【図4】図3に示すピラーガーニッシュにおける硬質樹脂板の端縁部分の形状を示す説明図である。
【図5】ピラーガーニッシュの変形例を示す断面図である。
【図6】本発明に係る複合樹脂成形品を適用したピラーガーニッシュを示す斜視図である。
【図7】図6中VII −VII 線断面図である。
【図8】図7に示すピラーガーニッシュにおける薄肉ヒンジ部付近の構成を示す拡大断面図である。
【図9】図6に示すピラーガーニッシュの変形例を示す断面図である。
【図10】図6に示すピラーガーニッシュの変形例を示す断面図である。
【図11】図6に示すピラーガーニッシュの変形例を示す断面図である。
【図12】車両のリヤピラーの室内側を示す説明図である。
【図13】従来のピラーガーニッシュを示す斜視図である。
【図14】図13中XIV −XIV 線断面図である。
【図15】図13中XV−XV線断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 クォーターウインドウ開口部
2 バックドア開口部
6 エアバッグ装置
10 ピラーガーニッシュ(複合樹脂成形品)
20 ガーニッシュ本体(本体樹脂部)
21 薄肉ヒンジ部
21a,21b 板厚徐変部
22 ホルダ部
30 硬質樹脂板
31 クリップ取付座
32 取付片
33 取付孔
34,35 板厚徐変部
36 フランジ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質樹脂板(30)を成形金型内にインサートしておき、成形金型のキャビティ内に軟質樹脂材料を射出充填して、本体樹脂部(20)を硬質樹脂板(30)と一体化してなる複合樹脂成形品(10)において、
前記硬質樹脂板(30)の端縁部にテーパー状の板厚徐変部(34)が形成されていることで、合わせ部における製品表面にヒケ、艶ムラ等の発生が回避される構成であることを特徴とする複合樹脂成形品。
【請求項2】
硬質樹脂板(30)を成形金型内にインサートしておき、成形金型のキャビティ内に軟質樹脂材料を射出充填して、本体樹脂部(20)を硬質樹脂板(30)と一体化してなる複合樹脂成形品(10)において、
前記本体樹脂部(20)に撓み変形する際の起点となる薄肉ヒンジ部(21)が形成され、この薄肉ヒンジ部(21)の両側は、それぞれ板厚徐変部(21a,21b)として設定され、かつこの部位に延設される硬質樹脂板(30)の端縁部にはテーパー状の板厚徐変部(35)が設けられていることを特徴とする複合樹脂成形品。
【請求項1】
硬質樹脂板(30)を成形金型内にインサートしておき、成形金型のキャビティ内に軟質樹脂材料を射出充填して、本体樹脂部(20)を硬質樹脂板(30)と一体化してなる複合樹脂成形品(10)において、
前記硬質樹脂板(30)の端縁部にテーパー状の板厚徐変部(34)が形成されていることで、合わせ部における製品表面にヒケ、艶ムラ等の発生が回避される構成であることを特徴とする複合樹脂成形品。
【請求項2】
硬質樹脂板(30)を成形金型内にインサートしておき、成形金型のキャビティ内に軟質樹脂材料を射出充填して、本体樹脂部(20)を硬質樹脂板(30)と一体化してなる複合樹脂成形品(10)において、
前記本体樹脂部(20)に撓み変形する際の起点となる薄肉ヒンジ部(21)が形成され、この薄肉ヒンジ部(21)の両側は、それぞれ板厚徐変部(21a,21b)として設定され、かつこの部位に延設される硬質樹脂板(30)の端縁部にはテーパー状の板厚徐変部(35)が設けられていることを特徴とする複合樹脂成形品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−55764(P2008−55764A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235475(P2006−235475)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】
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