説明

複層塗膜形成方法及び塗装物品

【課題】 加工性、衛生性、衛生性及び耐食性に優れた塗装物品、特に、ワインやチューハイに代表されるアルコール飲料や亜硫酸塩を含む飲料に対して優れた耐食性を有する缶体を提供すること。
【解決手段】
下記の工程1〜工程3を有することを特徴とする複層塗膜形成方法。
「工程1:レゾール型フェノール樹脂(a1)と、アクリル系共重合体樹脂(a2)とが、前者/後者の質量比で20/80〜80/20の割合で溶媒中に溶解ないし分散した樹脂溶液(A)を、金属素材に乾燥膜厚で0.1〜5μmとなるように塗装する工程
工程2:工程1で得られた樹脂液(A)に基づく未硬化塗膜又は硬化塗膜上に、上塗り塗料組成物を乾燥膜厚で1〜30μmとなるように塗装する工程、
工程3:金属素材の到達最高温度が120〜280℃となる条件にて5秒間〜60分間加熱乾燥する工程」

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属素材、特に、飲料、果実などの食用缶や缶蓋、キャップなどの金属缶構成部材における内面被覆に好適に用いられる複層塗膜形成方法であって、
該複層塗膜形成方法を用いることによって、加工性、衛生性、香味保持性及び耐食性に優れた塗装物品を提供できることに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料の容器として、金属容器は密封性、外部からの光、水、ガス等の遮断性に優れ、充填速度が速く、また軽量で輸送時の取り扱いも簡便であることから非常に多用されている。これら飲料用金属缶の内面は、金属と内容物である飲料との接触による影響を防止するため樹脂で塗装されている。
【0003】
一方、飲料用金属容器に充填される飲料は、炭酸飲料、果実飲料、乳性飲料、ミネラルウォーター、紅茶・日本茶やウーロン茶等の茶系飲料、コーヒー飲料や清涼飲料およびビール、清酒、ワイン、リキュール、発泡酒等のアルコール飲料など様々である。
また、乳製品入りの飲料であるコーヒー飲料やココア飲料及びスープ系飲料などの低酸性飲料(中性飲料)やホットパックや加熱殺菌を要する飲料等や、さらにこれらの飲料を加温した状態で販売することがある。このように、飲料の品質や適性は、多様且つ高度
化しており、それに伴い塗膜にも種々の塗膜性能が要求されている。
【0004】
特に、アルコール飲料では、一般に飲料中のフレーバー香気成分が塗膜に吸着され易いので、アルコール飲料の風味保全のために塗膜にはフレーバー香気成分の低吸着性が望まれる。
【0005】
このようなアルコール飲料の中でもワイン等の果実醗酵酒には酸化防止剤として、亜硫酸ナトリウム等の腐蝕性の強い亜硫酸塩が含まれる場合が多い、これら強い亜硫酸塩は
塗膜下腐食の促進因子であり塗膜下の金属の腐食が起こると塗膜にブリスターを生じ、腐食が進行すると孔食が起こったり金属素材が飲料中に溶出したりすることになる。従来からこれらの塗膜腐食を防止する為に、自己乳化型で自己架橋型のエポキシ−アクリル樹脂と、油溶性フェノール類からのレゾール型フェノール−アルデヒド樹脂とを含む水性分散体から成る塗料を缶内面にスプレー塗装して成る発明が開示されている(特許文献1)。
【0006】
他に、金属容器の内面がエポキシアクリル共重合体100重量部に対して、1〜7重量部のフェノール樹脂からなる樹脂組成物で被覆された缶体に関する発明が知られている(特許文献2)。
【0007】
他に、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂及びフェノール樹脂をアミンもしくはアンモニアの存在下に水性媒体中に分散して含む水性塗料組成物であって、前記自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂が、アクリル酸もしくはメタクリル酸/スチレン/メチルメタクリレート/エチルアクリレートを66〜80/1〜20/1〜20/1〜20(重量%)の組成で共重合してなるカルボキシル基含有アクリル系共重合体と、ビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂を必須成分として含むエポキシ樹脂とをエステル化反応せしめてなる自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂であり、フェノール樹脂がビスフェノールAまたは/およびビスフェノールFをモノマーとするレゾール型フェノール樹脂である水性塗料組成物及びアルコール飲料缶に関する発明が開示されている(特許文献3)。
【0008】
他に、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)及びフェノール樹脂(B)をアミンもしくはアンモニアの存在下に水性媒体中に分散して含む水性塗料組成物であって、前記自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)が、カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)と、低分子量エポキシ樹脂(A2−1)とビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂(A2−2)を、低分子量エポキシ樹脂(A2−1)/ビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂(A2−2)=25/75〜55/45の重量比で含むビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)を、前記カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)/ビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)=30/70〜10/90の重量比でエステル化反応せしめてなる自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)であり、前記フェノール樹脂(B)が3官能性フェノールをモノマーとし、樹脂中のベンゼン環1核体含有率が1重量%以下、数平均分子量が250〜1,000、フェニル基当りのメチロール基、アルコキシル化メチル基、メチレン結合、およびジメチレンエーテル結合の合計値が1.5〜2.5であるレゾール型フェノール樹脂である水性塗料組成物、及び該水性塗料組成物を含む塗料で内面が被覆されてなる飲料缶に関する発明が開示されている(特許文献4、特許文献5)。
【0009】
これら特許文献1〜5はエポキシ樹脂/フェノール樹脂が、金属付着性に優れることを利用し、塗膜下腐食を抑制しようとするものである。しかしながら特許文献1〜5に記載された水性塗料組成物では、水分散体の安定性による貯蔵安定性が問題となったり、塗膜架橋密度や塗膜硬度は高いが、一方、塗膜がもろくなり加工性が損なわれるなどの不具合があった。
【0010】
【特許文献1】特開昭63−75075号公報
【特許文献2】特開2002−361784号公報
【特許文献3】特開2004−155835号公報
【特許文献4】特開2006−36964号公報
【特許文献5】特開2006−36979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、金属素材、特に、飲料、果実などの食用缶や缶蓋、キャップなどのの被覆において、加工性、衛生性、香味保持性及び耐食性に優れた塗膜を形成する方法を見出し、該塗膜性能に優れた塗装物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の工程1〜工程3からなる複層塗膜形成方法によって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0013】
本発明の複層塗膜形成方法によって、加工性、衛生性、香味保持性及び耐食性に優れた複層塗膜を有する塗装物品を提供できる。特に、ワインやチューハイに代表されるアルコール飲料や亜硫酸塩を含む飲料缶において優れた耐食性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、下記の工程1〜工程3を有することを特徴とする複層塗膜形成方法である。工程1〜工程3の順に詳細に説明する。
【0015】
[複層塗膜形成方法]
【0016】
工程1:
工程1は、金属素材に、樹脂液(A)を乾燥膜厚で0.1〜5μmとなるように塗装する工程である。
【0017】
金属素材は、例えばアルミニウム板、鋼板、ブリキ板等の無処理の又は表面処理した金属板、これらの金属板を缶などに加工したものを挙げることができる。
樹脂液(A)は、レゾール型フェノール樹脂(a1)と、ガラス転移温度100〜180℃でかつ酸価150〜400mgKOH/gのアクリル系共重合体樹脂(a2)とが、前者/後者の質量比で20/80〜80/20の割合で、溶媒中に溶解ないし分散した樹脂液である。
【0018】
なかでも樹脂液(A)は、レゾール型フェノール樹脂(a1)と、ガラス転移温度100〜180℃でかつ酸価150〜400mgKOH/gのアクリル系共重合体樹脂(a2)とが、前者/後者の質量比で20/80〜80/20の割合で、該レゾール型フェノール樹脂(a1)が該アクリル系共重合体樹脂(a2)の中和物によって水に安定に分散されたフェノール系樹脂水分散体(A1)であることが好適である。
樹脂液(A)の製造に用いるレゾール型フェノール樹脂(a1)とアクリル系共重合体樹脂(a2)について説明する。
【0019】
レゾール型フェノール樹脂(a1)は、フェノールやビスフェノールAなどのフェノール化合物とホルムアルデヒド類を反応触媒の存在下で縮合反応させて、メチロール基を導入してなるフェノール樹脂、また導入されたメチロール基の一部を炭素原子数1〜6個のアルコールでアルキルエーテル化したものを包含する。
【0020】
上記フェノール化合物としては、o−クレゾール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−エチルフェノール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノールなどの2官能性フェノール化合物;石炭酸、m−クレゾール、m−エチルフェノール、3,5−キシレノール、m−メトキシフェノールなどの3官能性フェノール化合物;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどの4官能性フェノール化合物;などのフェノール化合物を1種で、または2種以上混合して使用することができる。
【0021】
上記ホルムアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド又はトリオキサンなどが挙げられ、1種で、または2種以上混合して使用することができる。メチロール化フェノール樹脂のメチロール基の一部をアルキルエーテル化するのに用いられるアルコールとしては、炭素原子数1〜6個、好ましくは1〜4個の1価アルコールを好適に使用することができる。好適な1価アルコールとしてはメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノールなどが挙げられる。
【0022】
レゾール型フェノール樹脂(a1)は、数平均分子量(注1)が200〜2000、好ましくは300〜1200の範囲内であり、かつベンゼン核1核当たりのメチロール基の平均数が0.3〜3.0個、好ましくは0.5〜2.8個の範囲内であることが適当である。特に、レゾール型フェノール樹脂(a1)の中でも、石炭酸とホルムアルデヒドと縮合反応させて得られる石炭酸ホルムアルデヒド樹脂が、衝撃加工を受けた部分に耐食性の良好な塗膜を得るためには好ましい。
【0023】
(注1)数平均分子量:JIS K 0124−83に準じて決定した。ゲルろ過クロマトグラフィー法で、分離カラムに「TSKGEL4000HXL」、「G3000HXL」、「G2500HXL」、「G2000HXL」(東ソー株式会社製)の4本を用いて40℃で流速1.0ml/分、溶離液にGPC用テトラヒドロフランを用いて、RI屈折計で得られたクロマトグラムと標準ポリスチレンの検量線から求めた。
【0024】
アクリル系共重合体樹脂(a2)は、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体とその他の重合性不飽和単量体とを単量体成分とする共重合体樹脂である。また、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体とその他の重合性不飽和単量体とを単量体成分とする部分の割合が90重量%以上であれば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂などで変性したものも該
アクリル系共重合体樹脂(a2)に包含され好適に使用できる。上記エポキシ樹脂で変性した場合は素材密着性が向上し、ポリエステル樹脂で変性した場合は、折り曲げ性などの加工性が向上する場合がある。
【0025】
カルボキシル基含有重合性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸等の単量体が挙げられ、これらは単独もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
その他の重合性不飽和単量体は、上記カルボキシル基含有重合性不飽和単量体と共重合可能な単量体であればよく、求められる性能に応じて適宜選択して使用することができるものであり、例えば、スチレン、ビニルトルエン、2−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレンなどの芳香族系ビニル単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−,i−又はt−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−,i−又はt−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜18のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸の炭素数2〜8個のヒドロキシアルキルエステル;N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミドなどのN−置換アクリルアミド又はN−置換メタクリルアミドモノマーなどの1種又は2種以上の混合物を挙げることができる。
【0027】
アクリル系共重合体樹脂(a2)は、樹脂酸価が150〜400mgKOH/g、好ましくは180〜300mgKOH/gであり、数平均分子量(注1)が5,000〜100,000、好ましくは8,000〜50,000、ガラス転移温度(注2)が100〜180℃の範囲内であることが好適である。
【0028】
(注2)ガラス転移温度:ガラス転移温度(°C)は、下記式によって算出することができる。
1/Tg(°K)=(W1/T1)+(W2/T2)+・・・
式中、W1、W2、・・は共重合に使用されたモノマーのそれぞれの重量%、T1、T2、・・は、それぞれ単量体のホモポリマ−のTg(°K)を表わす。なお、T1、T2、・・は、Polymer Hand Book(Second Edition,J.Brandrup・E.H.Immergut 編)による値である。
【0029】
また、モノマーのホモポリマーのTgが明確でない場合のガラス転移温度(℃)は、静的ガラス転移温度とし、例えば示差走査熱量計「DSC−50Q型」(島津製作所製、商品名)を用いて、試料を測定カップにとり、真空吸引して完全に溶剤を除去した後、3℃/分の昇温速度で−100℃〜+200℃の範囲で熱量変化を測定し、低温側における最初のベースラインをガラス転移温度とした。
【0030】
樹脂液(A)は、レゾール型フェノール樹脂(a1)とアクリル系共重合体樹脂(a2)とを、合計100質量部に対して、レゾール型フェノール樹脂(a1)が20〜80質量部、好ましくは30〜70質量部、アクリル系共重合体樹脂(a2)が80〜20質量部、好ましくは70〜30質量部の割合で混合し、溶媒中に溶解ないし分散した樹脂液である。なかでも該レゾール型フェノール樹脂(a1)が該アクリル系共重合体樹脂(a2)の中和物によって水中に安定に分散されたフェノール系樹脂水分散体(A1)が好ましい。
【0031】
上記の配合割合の範囲であることが、塗膜の加工性や衛生性の点から適している。なお製造に用いる溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノールなどのアルコール系;エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテルなどのエーテル系;水あるいはこれらの混合物などが挙げられる。このような樹脂液(A)には、さらに必要に応じて、添加樹脂、溶剤、界面活性剤、消泡剤、顔料、ワックス、香料などを適宜加えることができる。
【0032】
また樹脂液(A)がフェノール系樹脂水分散体(A1)である場合には、レゾール型フェノール樹脂(a1)とアクリル系共重合体樹脂(a2)とが、前者/後者の質量比で20/80〜80/20、好ましくは30/70〜70/30の割合で、該レゾール型フェノール樹脂(a1)が該アクリル系共重合体樹脂(a2)の中和物によって水に安定に分散された水分散体として用いることができる。上記の配合割合の範囲であることが、塗膜の加工性や衛生性の点から適している。
【0033】
該アクリル系共重合体樹脂(a2)の中和に用いる中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノールなどの第1級モノアミン;ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−またはジ−iso−プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンなどの第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどの第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミンなどのポリアミンを挙げることができる。
【0034】
なおフェノール系樹脂水分散体(A1)は、平均粒子径(注3)が、10〜300nm、好ましくは10〜150nmの範囲であることが、耐食性、密着性等の塗膜性能向上の為には好ましい。
【0035】
(注3)平均粒子径:サブミクロン粒子アナライザーN4(商品名、ベックマン・コールター株式会社製、粒度分布測定装置)にて、試料を脱イオン水にて測定に適した濃度に希釈して、常温(20°C程度)にて測定した。80nm以下のものについては凍結割断法による、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)装置を用いたTEM像を画像解析し、任意の直線上に存在する水分散体の粒子30個の平均を求めることによって、平均粒子径を算出した。
【0036】
なおフェノール系樹脂水分散体(A1)の製造に使用するアクリル系共重合体樹脂(a2)は、単量体の構成比率、種類は特に制限されるものではないが、特に、構成する単量体の合計量に対して、スチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸/アクリル酸エチル=10〜50/20〜50/25〜55/0〜10(質量%)が、分散安定性も良好で、ワインやチューハイに代表されるアルコール飲料や亜硫酸塩を含む飲料に対して優れた耐食性を得ることができるので好ましい。フェノール系樹脂水分散体(A1)には、さらに必要に応じて、添加樹脂、溶剤、界面活性剤、消泡剤、顔料、ワックス、香料などを適宜加えることができる。
【0037】
基材に、前記樹脂液(A)を塗装する方法としては、公知の各種の方法、例えばロールコータ塗装、スプレー塗装、浸漬塗装や電着塗装等が適用できる。なかでもロールコータ塗装もしくはスプレー塗装が好ましい。塗膜厚は用途によって適宜選定すればよいが、通常0.1〜5μm、好ましくは0.3〜2μmがよい。
【0038】
得られた樹脂液(A)に基づく塗膜は、1秒間〜180分間の常温でのセッティング、金属素材の到達最高温度30〜80℃未満で1〜60分間のプレヒート、並びに金属素材の到達最高温度80〜250℃で10秒〜30分間加熱乾燥から選ばれる少なくとも1種を施すことによって塗膜中の溶剤や水分を揮散することができ、次の工程2において塗装される塗膜を混層することなく塗装することができ、加工性や耐食性に優れた塗膜を形成できる。
【0039】
工程2:
工程1で得られた樹脂液(A)に基づく未硬化塗膜又は硬化塗膜上に、アクリル樹脂変性エポキシ樹脂系塗料組成物(B)、エポキシ/フェノール樹脂系塗料組成物(C)、塩化ビニル樹脂系塗料組成物(D)、並びにポリエステル樹脂系塗料組成物(E)から選ばれる少なくとも1種の上塗り塗料組成物を乾燥膜厚で1〜30μmとなるように塗装する工程である。上塗り塗料組成物を塗り重ねることによって、衛生性、香味保持性及び耐食性に優れた塗装物品を提供できる。
【0040】
上塗り塗料組成物におけるアクリル樹脂変性エポキシ樹脂系塗料組成物(B)(以下、塗料組成物(B)と略することがある)は、ビスフェノール型エポキシ樹脂とカルボキシル基含有アクリル樹脂とをエステル付加反応させてなるアクリル樹脂変性エポキシ樹脂(b1)及びビスフェノール型エポキシ樹脂にカルボキシル基含有重合性不飽和単量体を含有する重合性不飽和単量体成分をグラフト重合させてなるアクリル樹脂変性エポキシ樹脂(b2)から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有する。
【0041】
アクリル樹脂変性エポキシ樹脂(b1)は、例えば有機溶剤中で、ビスフェノール型エポキシ樹脂とカルボキシル基含有アクリル樹脂とをエステル化触媒の存在下にて加熱することにより容易にエステル付加反応させることができる。アクリル樹脂変性エポキシ樹脂(b2)は、例えば有機溶剤中において、ベンゾイルパーオキサイド等のラジカル発生剤の存在下にて、ビスフェノール型エポキシ樹脂に重合性不飽和単量体成分をグラフト重合させることができる。
【0042】
アクリル樹脂変性エポキシ樹脂(b1)において使用されるビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒などの触媒の存在下に高分子量まで縮合させてなる樹脂、エピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒などの触媒の存在下に、縮合させて低分子量のエポキシ樹脂とし、この低分子量エポキシ樹脂とビスフェノールとを重付加反応させることにより得られた樹脂、及び得られたこれらの樹脂又は上記低分子量エポキシ樹脂に、二塩基酸を反応させてなるエポキシエステル樹脂のいずれであってもよい。
【0043】
上記ビスフェノールとしては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニ
ル)ブタン[ビスフェノールB]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、p−(4−ヒドロキシフェニル)フェノール、オキシビス(4−ヒドロキシフェニル)、スルホニルビス(4−ヒドロキシフェニル)、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタンなどを挙げることができ、なかでもビスフェノール
A、ビスフェノールFが好適に使用される。上記ビスフェノール類は、1種で又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0044】
上記エポキシエステル樹脂の製造に用いられる二塩基酸としては、具体的には、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ヘキサヒドロフタル酸等を例示できる。
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、数平均分子量(注1参照)が2,000〜35,000、好ましくは4,000〜30,000であり、エポキシ当量が1,000〜12,000好ましくは3,000〜10,000の範囲であることが、得られた塗膜の耐食性から好適である。
【0045】
ビスフェノール型エポキシ樹脂の市販品としては、例えばジャパンエポキシレジン株式会社製のエピコート1007(エポキシ当量約1,700、数平均分子量(注1)約2,900)、エピコート1009(エポキシ当量約3,500、数平均分子量約3,750)、エピコート1010(エポキシ当量約4,500、数平均分子量約5,500);旭チバ社製のアラルダイトAER6099(エポキシ当量約3,500、数平均分子量約3,800);及び三井化学(株)製のエポミックR−309(エポキシ当量約3,500、数平均分子量約3,800)などを挙げることができる。
【0046】
エステル付加反応させてなるアクリル樹脂変性エポキシ樹脂(b1)においては、エステル付加反応の際に、ビスフェノール型エポキシ樹脂中のエポキシ基にカルボキシル基含有アクリル樹脂中のカルボキシル基がエステル付加反応するので、ビスフェノール型エポキシ樹脂中にエポキシ基が必要であり、エポキシ樹脂1分子当りエポキシ基は平均0.5〜2個、好ましくは0.5〜1.6個の範囲内であるのがよい。一方、グラフト重合させてなるアクリル樹脂変性エポキシ樹脂(b2)においては、グラフト反応がエポキシ樹脂主鎖の水素引き抜きによって起こりグラフト重合反応が進行するので、ビスフェノール型エポキシ樹脂中にエポキシ基は実質上存在しなくてもよい。
【0047】
エステル付加反応させてなるアクリル樹脂変性エポキシ樹脂(b1)において使用されるカルボキシル基含有アクリル樹脂は、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体とその他の重合性不飽和単量体とを単量体成分とする共重合体樹脂である。
【0048】
カルボキシル基含有重合性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸等の単量体が挙げられ、これらは単独もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0049】
その他の重合性不飽和単量体は、上記カルボキシル基含有重合性不飽和単量体と共重合可能な単量体であればよく、求められる性能に応じて適宜選択して使用することができるものであり、例えば、スチレン、ビニルトルエン、2−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレンなどの芳香族系ビニル単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−,i−又はt−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−,i−又はt−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜18のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸のC〜C ヒドロキシアルキルエステル;N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミドなどのN−置換アクリルアミド系又はN−置換メタクリルアミド系モノマーなどの1種又は2種以上の混合物を挙げることができる。
【0050】
カルボキシル基含有アクリル樹脂は、単量体の構成比率、種類は特に制限されるものではないが、通常、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体が15〜80質量%、特に20〜60質量%であることが好ましく、その他の重合性不飽和単量体が85〜20質量%、特に80〜40質量%であることが好ましい。
【0051】
カルボキシル基含有アクリル樹脂の調製は、例えば、上記した単量体組成を重合開始剤の存在下、有機溶剤中で溶液重合反応することにより容易に行うことができる。カルボキシル基含有アクリル樹脂は、樹脂酸価が100〜400mgKOH/g、数平均分子量(注1参照)が5,000〜100,000の範囲内であるのがよい。
【0052】
上記反応は、従来公知の方法で行うことができ、例えばビスフェノール型エポキシ樹脂とカルボキシル基含有アクリル樹脂との均一な有機溶剤中にエステル化触媒を配合せしめ、実質的にエポキシ基の全てが消費されるまで、通常、60〜130℃の反応温度にて約1〜6時間反応させることによって行うことができる。上記エステル化触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミンなどの第3級アミン類やトリフェニルフォスフィンなどの第4級塩化合物などを挙げることができ、なかでも第3級アミン類が好適である。
【0053】
ビスフェノール型エポキシ樹脂とカルボキシル基含有アクリル樹脂との反応系における固形分濃度は、反応系が反応に支障のない粘度範囲内である限り特に限定されるものではない。また、エステル付加反応させる際にエステル化触媒を使用する場合には、その使用量はビスフェノール型エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して通常、0.1〜1当量の範囲で使用するのがよい。
【0054】
ビスフェノール型エポキシ樹脂とカルボキシル基含有アクリル樹脂の含有割合としては特に制限されるものではないが、通常、ビスフェノール型エポキシ樹脂/カルボキシル基含有アクリル樹脂=60/40〜90/10の質量比で、より好ましくはビスフェノール型エポキシ樹脂/カルボキシル基含有アクリル樹脂=70/30〜85/15の質量比であることが好ましい。
【0055】
グラフト重合させてなるアクリル樹脂変性エポキシ樹脂(b2)において、ビスフェノール型エポキシ樹脂にグラフト重合させる重合性不飽和単量体成分は、カルボキシル基含有アクリル樹脂の製造に用いられる単量体成分であるカルボキシル基含有重合性不飽和単量体を含有する重合性不飽和単量体成分を挙げることができる。また、該成分はカルボキシル基含有アクリル樹脂に用いられるその他の重合性不飽和単量体をさらに含有してもよい。
【0056】
グラフト重合反応は、従来公知の方法で行うことができ、例えば80〜150℃に加熱されたビスフェノール型エポキシ樹脂の有機溶剤中に、ラジカル発生剤と重合性不飽和単量体成分との均一な混合溶液を徐々に添加し、同温度に1〜10時間程度保持することによって行うことができる。上記ラジカル発生剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾイルオクタノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどを挙げることができる。
【0057】
アクリル樹脂変性エポキシ樹脂(b1)は、カルボキシル基を有し、樹脂酸価が10〜160mgKOH/g、さらには20〜100mgKOH/gの範囲内であることが水分散性や塗膜性能などの観点から好ましい。アクリル樹脂変性エポキシ樹脂(b1)は、塩基性化合物で樹脂中のカルボキシル基の少なくとも一部を中和することによって水性媒体中に分散可能となる。
【0058】
上記カルボキシル基の中和に用いられる塩基性化合物としては、アミン類やアンモニアが好適に使用される。上記アミン類の代表例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアルキルアミン類;ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノメチルプロパノールなどのアルカノールアミン類;モルホリンなどの環状アミン類などを挙げることができる。
アクリル樹脂変性エポキシ樹脂(b1)の中和程度は、特に限定されるものではないが、アクリル樹脂変性エポキシ樹脂(b1)中のカルボキシル基に対して通常0.1〜2.0当量中和の範囲であることが好ましい。上記水性媒体は、水のみであってもよいが、水と有機溶剤との混合物であってもよく、この有機溶剤としては、従来公知のものをいずれも使用できる。
【0059】
アクリル樹脂変性エポキシ樹脂(b1)を水性媒体中に中和、分散するには、常法によればよく、例えば中和剤である塩基性化合物を含有する水性媒体中に撹拌下にアクリル樹脂変性エポキシ樹脂(b1)を徐々に添加する方法、アクリル樹脂変性エポキシ樹脂(b1)を塩基性化合物によって中和した後、撹拌下にて、この中和物に水性媒体を添加するか又はこの中和物を水性媒体中に添加する方法などを挙げることができる。
【0060】
なおアクリル樹脂変性エポキシ樹脂(b1)又は前記アクリル樹脂変性エポキシ樹脂(b2)の有機溶剤量は、樹脂固形分に対して、環境保護の観点などから20質量%以下の範囲であることが望ましい。アクリル樹脂変性エポキシ樹脂(b1)又は前記アクリル樹脂変性エポキシ樹脂(b2)を含有するアクリル樹脂変性エポキシ樹脂系塗料組成物(B)には、必要に応じて、添加樹脂、溶剤、界面活性剤、消泡剤、顔料、ワックス、香料などを適宜加えることができる。
【0061】
上塗り塗料組成物におけるエポキシ樹脂/フェノール樹脂系塗料組成物(C)(以下、塗料組成物(C)と略することがある)は、エポキシ樹脂(c1)とフェノール樹脂(c2)を含有する塗料組成物である。
【0062】
エポキシ樹脂(c1)としては、数平均分子量が900〜60,000、好ましくは2,000〜20,000であることが、得られる塗膜が目的とする耐食性、特にワインやチューハイに代表されるアルコール飲料や亜硫酸塩を含む飲料に対しても優れた耐食性を有することができる点から好ましい。
【0063】
エポキシ樹脂(c1)としては、具体的には、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、これらのエポキシ樹脂中のエポキシ基又は水酸基に各種変性剤が反応せしめられた変性エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0064】
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒などの触媒の存在下に高分子量まで縮合させてなる樹脂、エピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒などの触媒の存在下に縮合させて低分子量のエポキシ樹脂とし、この低分子量エポキシ樹脂とビスフェノールとを重付加反応させることにより得られる樹脂のいずれであってもよい。
上記ビスフェノールとしては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン[ビスフェノールB]、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン[水添ビスフェノールA]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、p−(4−ヒドロキシフェニル)フェノール、オキシビス(4−ヒドロキシフェニル)、スルホニルビス(4−ヒドロキシフェニル)、4,4´−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタンなどを挙げることができる。上記ビスフェノール類は、1種で又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0065】
ビスフェノール型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、エピコート828EL、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009、エピコート1010(以上、いずれもジャパンエポキシレジン社製、商品名)、AER6097、AER6099(以上、いずれも旭化成エポキシ社製、商品名)、エポミックR−309(三井化学社製、商品名)などを挙げることができる。
上記ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、分子内に多数のエポキシ基を有するフェノールグリオキザール型エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0066】
ノボラック型のエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂として、エピコート152、エピコート154(以上、いずれもジャパンエポキシレジン社製、商品名)、EPPN−201(日本化薬社製、商品名)、エポトートYDPN−638(東都化成社製、商品名)などが挙げられ、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂として、エピコート180S65、エピコート180H65(以上、いずれもジャパンエポキシレジン社製、商品名)、EOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S(以上、いずれも日本化薬社製、商品名)、エポトートYDCN−701、エポトート−702、エポトート−703、エポトート−704(以上、いずれも東都化成社製、商品名)などが挙げられ、その他のノボラック型エポキシ樹脂として、エポトートZX−1071T、エポトートZX−1015、エポトートZX−1247、エポトートYDG−414S(以上、いずれも東都化成社製、商品名)などを挙げることができる。
【0067】
また、前記変性エポキシ樹脂としては、上記ビスフェノール型エポキシ樹脂又はノボラック型エポキシ樹脂に、例えば、乾性油脂肪酸を反応させたエポキシエステル樹脂、上記ビスフェノール型エポキシ樹脂又はノボラック型エポキシ樹脂に、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸などを含有する重合性不飽和モノマー成分を反応させたアクリル変性エポキシ樹脂、上記ビスフェノール型エポキシ樹脂又はノボラック型エポキシ樹脂に、例えば、イソシアネート化合物を反応させたウレタン変性エポキシ樹脂、上記ビスフェノール型エポキシ樹脂とノボラック型エポキシ樹脂及び上記各種変性エポキシ樹脂から選ばれるエポキシ樹脂のエポキシ基にアミン化合物を反応させて、アミノ基又は4級アンモニウム塩を導入してなるアミン変性エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0068】
フェノール樹脂(c2)としては、従来公知のものが制限なく使用でき、例えばフェノール類とホルムアルデヒド類とを反応させて得られるものが挙げられ、この反応により導入されたメチロール基はアルコールによりアルキルエーテル化されていてもよい。
【0069】
上記フェノール類としては、例えば、フェノール、メチルフェノール、p−エチルフェノール、p−n−プロピルフェノール、p−イソプロピルフェノール、p−n−ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−アミルフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−シクロヘキシルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、3,5−キシレノール、レゾルシノール、カテコールなどの1分子中にベンゼン環を1個有するフェノール類;o−フェニル−クレゾール、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノールなどの1分子中にベンゼン環を2個有するフェノール類;ビスフェノールA、ビスフェノールF、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2 , 2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1, 1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)−2 ,2−プロパン、p−(4−ヒドロキシフェニル)フェノール、オキシビス(4−ヒドロキシフェニル)、スルホニルビス(4−ヒドロキシフェニル)、4,4´−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタンなどのビスフェノール類;等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0070】
また、ホルムアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、またはトリオキサンなどが挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。メチロール化フェノール樹脂のメチロール基の一部をアルキルエーテル化するのに用いられるアルコールとしては、炭素原子数1〜8の1価アルコールが適しており、例えばメタノール、エタノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノールなどを挙げることができる。上記フェノール樹脂は、レゾール型フェノール樹脂であってもノボラック型フェノール樹脂であってもよい。
【0071】
フェノール樹脂(c2)の製造に用いられるホルムアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド又はトリオキサンなどが挙げられ、これらは1種で又は2種以上混合して使用することができる。
【0072】
またフェノール樹脂(c2)としては、メチロール基の一部をアルキルエーテル化したメチロール化フェノール樹脂も用いることができる。メチロール基の一部をアルキルエーテル化するのに用いられるアルコールとしては、炭素原子数1〜8個、好ましくは1〜4個の1価アルコールが適しており、例えばメタノール、エタノール、n−ブタノール、イソブタノールなどを挙げることができる。フェノール樹脂(c2)の市販品としては、ショーノールCKS−394(昭和高分子社製、p-クレゾール・ビスフェノールA型のフェノール樹脂)が挙げられる。
【0073】
上記に述べた、エポキシ樹脂(c1)とフェノール樹脂(c2)との配合割合に関して、エポキシ樹脂(c1)とフェノール樹脂(c2)の質量比で、60/40〜95/5、好ましくは70/30〜90/10であることが、塗膜の硬化性や耐食性の点から適している。
【0074】
本発明に用いるエポキシ樹脂/フェノール樹脂系塗料組成物(C)には、さらに必要に応じて、添加樹脂、溶剤、界面活性剤、消泡剤、顔料、ワックス、香料などを適宜加えることができる。
【0075】
また上塗り塗料組成物として、塩化ビニル樹脂系塗料組成物(D)を用いることができる。塩化ビニル樹脂系塗料組成物(D)(以下、塗料組成物(D)と略することがある)に使用する塩化ビニル樹脂(d1)としては、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル樹脂・酢酸ビニル樹脂・マレイン酸共重合樹脂、塩化ビニル樹脂・酢酸ビニル樹脂・(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂などが挙げられる。
【0076】
また、塩化ビニル樹脂系塗料組成物(D)には、数平均重合度900〜2,100、特に数平均重合度1,000〜1,800の塩化ビニル系重合体を、有機溶剤に溶解して分散した塩化ビニルオルガノゾルも好適に用いることができる。このような塩化ビニル系重合体の市販品としては、例えば、OXY−1730(COLORITE POLYMER社製、商品名)を挙げることができる。
【0077】
上記塩化ビニル樹脂(d1)は、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチルなどの一般的な塩化ビニル系樹脂用可塑剤や、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、レゾール型フェノール樹脂、アミノ樹脂などの樹脂を添加し、有機溶剤中に分散又は溶解させることにより塗装可能な塗料組成物となる。塩化ビニル樹脂系塗料組成物(D)には、さらに必要に応じて、添加樹脂、溶剤、界面活性剤、消泡剤、顔料、ワックス、香料などを適宜加えることができる。
【0078】
また上塗り塗料組成物として、多塩基酸成分と多価アルコール成分とのエステル化物からなるポリエステル樹脂(e1)を含有するポリエステル樹脂系塗料組成物(E)(以下、塗料組成物(E)と略することがある)も使用することができる。
【0079】
多塩基酸成分としては、例えば無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ダイマー酸などから選ばれる1種以上の二塩基酸及びこれらの酸の低級アルキルエステル化物が主として用いられ、必要に応じて安息香酸、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸などの一塩基酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸などの3価以上の多塩基酸などが併用される。多価アルコール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの二価アルコールが主に用いられ、さらに必要に応じてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールを併用することができる。これらの多価アルコールは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。上記酸成分とグリコール成分とを通常公知の反応装置を用いて、エステル化反応またはエステル交換反応させることによって合成される。その際ジブチル 錫オキサイド等公知の反応触媒を使用することができる。
【0080】
また、上記ポリエステル樹脂(e1)のカルボキシル基の一部又は全部を塩基性化合物で中和し、水中に分散又は溶解したポリエステル樹脂組成物を用い、さらにレゾール型フェノール樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂などの架橋剤を配合することによって架橋型の水性塗料することができ、本発明に好適に用いることができる。
【0081】
またポリエステル樹脂(e1)としては、多塩基酸成分としてテレフタル酸、多価アルコール成分としてエチレングリコールを主成分として用いたポリエチレンテレフタレート系樹脂(以下、PET樹脂と称する)も好適に用いることができる。このPET樹脂を溶融圧着してPET樹脂被膜を形成することもできる。
【0082】
ポリエステル樹脂系塗料組成物(E)には、さらに必要に応じて、添加樹脂、溶剤、界面活性剤、消泡剤、顔料、ワックス、香料等、従来から公知の添加剤を含有することができる。
【0083】
以上に述べた塗料組成物(B)〜塗料組成物(E)から選ばれる少なくとも1種の上塗り塗料組成物を、樹脂液(A)に基づく未硬化塗膜又は硬化塗膜上に塗装する方法としては、例えばロールコータ塗装、スプレー塗装、浸漬塗装等が適用できる。なかでもロールコータ塗装もしくはスプレー塗装が好ましい。塗膜厚は用途によって適宜選定すればよいが、通常乾燥膜厚で1〜30μmが好適である。
【0084】
工程3:
これまでの工程1及び工程2で得られた複層塗膜を、金属素材の到達最高温度が120〜280℃となる条件にて、好ましくは150〜250℃で、乾燥時間としては5秒間〜60分間、好ましくは10秒間〜30分間加熱乾燥する工程である。
工程3を施すことによって、樹脂液(A)塗膜またはフェノール系樹脂水分散体(A1)の0.1〜5μmの塗膜上に、上塗り塗料組成物の1〜30μmの塗膜が積層された複層塗膜を得ることができる。
【0085】
この複層塗膜を金属素材、特に、飲料、果実などの食用缶や缶蓋、キャップなどの金属缶構成部材の内面被覆に用いた場合には、塗膜から缶内容物への低分子化合物の溶出がなく衛生性に優れ、かつ加工性及び耐食性、特にワインやチューハイに代表されるアルコール飲料や亜硫酸塩を含む飲料に対しても優れた塗膜性能を有する塗装物品を提供できる。
【実施例】
【0086】
本発明を実施例により、さらに具体的に説明する。以下、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0087】
[樹脂液(A)及びフェノール系樹脂水分散体(A1)の製造]
製造例1 レゾール型フェノール樹脂(a1)溶液の製造例
還流管、温度計、撹拌機を装着した四つ口フラスコに、フェノール188部、37%ホルムアルデヒド水溶液324部を仕込み、50℃に加熱し内容物を均一に溶解した。次に、酢酸亜鉛を添加、混合して系内のpHを5.0に調整した後、90℃に加熱し5時間反応を行った。ついで50℃に冷却し、32%水酸化カルシウム水分散液をゆっくり添加し、pHを8.5に調整した後、50℃で4時間反応を行った。
反応終了後、20%塩酸でpHを4.5に調整した後、キシレン/n−ブタノール/シクロヘキサン=1/2/1(質量比)の混合溶剤で樹脂分の抽出を行い、触媒、中和塩を除去し、ついで減圧下で共沸脱水し、固形分50%のレゾール型フェノール樹脂No.1(溶液)を得た。該レゾール型フェノール樹脂No.1は、数平均分子量は350、ベンゼン核1核当たりの平均メチロール基数は1.3であった。
【0088】
製造例2 レゾール型フェノール樹脂(a1)溶液の製造例
還流管、温度計、撹拌機を装着した四つ口フラスコに、m−クレゾール108部、37%ホルムアルデヒド水溶液216部及び25%水酸化ナトリウム水溶液160部を仕込み、窒素気流下で50℃にて反応させた後、100℃まで昇温しさらに1時間反応させ、塩酸で中和後、キシレン/n−ブタノール=1/1(質量比)の混合溶剤で樹脂分の抽出を行い、触媒、中和塩を除去し、ついで減圧下で共沸脱水し、固形分50%のレゾール型フェノール樹脂No.2(溶液)を得た。該レゾール型フェノール樹脂No.2の数平均分子量は350、ベンゼン核1核当たりの平均メチロール基数は0.7であった。
【0089】
製造例3 レゾール型フェノール樹脂(a1)溶液の製造例
ビスフェノールA228部、37%ホルマリン649部、35%水酸化ナトリウム302部を混合し、50℃で2時間反応後酢酸エチル250部とn−ブチルアルコール250部を加え、続いて20%塩酸401部を加え60℃で10分間攪拌後、静置したところ数分間で2層に分かれた。水とアンモニア水を用いて上層を洗浄中和し、固形分50%のレゾール型フェノール樹脂No.3(溶液)を得た。該レゾール型フェノール樹脂No.3の数平均分子量は460、ベンゼン核1核当たりの平均メチロール基数は0.7であった。
【0090】
製造例4 アクリル系共重合体樹脂(a2)溶液の製造例
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、及び滴下装置を備えた反応容器にプロピレングリコールn−プロピルエーテル70部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、100°Cに昇温した。
その後、単量体混合物(メタクリル酸45部、エチルアクリレート5部、スチレン50部の混合物)100部と重合開始剤溶液(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート2部、プロピレングリコールnプロピルエーテル50部の混合液)52部を4時間かけて定量ポンプで反応器内に滴下し、滴下終了後0.5時間熟成を行った。
続いて、重合開始剤溶液(t-ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5部、プロピレングリコールn−プロピルエーテル30部の混合液)30.5部を0.5時間かけて滴下し、2時間熟成を行った。
その後、60℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスでろ過、排出し、固形分40%のアクリル系共重合体樹脂No.1溶液を得た。該アクリル系樹脂No.1は、ガラス転移温度137℃、酸価293mgKOH/g、数平均分子量10,000であった。
【0091】
製造例5〜10 アクリル系共重合体樹脂(a2)溶液の製造
単量体混合物を表1の配合内容とする以外は、製造例4と同様にしてアクリル系共重合体樹脂No.2溶液〜No.7溶液を得た。
【0092】
【表1】

【0093】
(注4)エピコート834:ジャパンエポキシレジン社製、商品名、エポキシ樹脂、エポキシ当量260。
【0094】
製造例11 樹脂溶液No.1の製造例
製造例1で得られたレゾール型フェノール樹脂No.1を100部(固形分50部)と製造例4で得られたアクリル系共重合体樹脂No.1を125部(固形分50部)と、プロピレングリコールn−プロピルエーテル175部を配合し、十分に混合して固形分25%の樹脂溶液No.1を作製した。
【0095】
製造例12〜25 樹脂溶液No.2〜No.15の製造例
表2の配合とする以外は、製造例11と同様にして樹脂溶液No.2〜No.15を得た。
【0096】
【表2】

【0097】
製造例26 フェノール系樹脂水分散体No.1の製造例
温度計、攪拌機、冷却管及び水分離器を備えた4つ口フラスコに、製造例5で得た固形分40%のアクリル系樹脂No.2を125部(固形分50部)を入れ、常温で撹拌混合しながら、50%ジメチルエタノールアミン水溶液33部(0.8当量中和に相当する量)を滴下し均一に混合した。
次いで、この中に、製造例1で得た固形分50%のレゾール型フェノール樹脂No.1を100部(固形分50部)滴下した後、脱イオン水242部を加え均一に混合して、固形分20%のフェノール系樹脂水分散体No.1を得た。フェノール系樹脂水分散体No.1の平均粒子径(注3参照)は、100nmであった。
【0098】
[アクリル樹脂変性エポキシ樹脂系塗料組成物(B)の製造例]
製造例27
温度計、攪拌機、冷却管及び水分離器を備えた4つ口フラスコに、エピコート828EL(ジャパンエポキシレジン社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量約190、分子量約350)558部、ビスフェノールA 329部、テトラブチルアンモニウムブロマイド 0.6部を仕込み、窒素気流下で160℃にて反応を行った。反応はエポキシ当量で追跡し、約5時間反応することにより数平均分子量約11,000、エポキシ当量約8,000のビスフェノールA型エポキシ樹脂を得た。 ・・・(1)
また別途、還流管、温度計、滴下ロート、撹拌機を装着した四つ口フラスコにn−ブタノール 882部を仕込み、「メタクリル酸 240部、スチレン240部 、アクリル酸エチル120部 、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 18部」の単量体混合物を窒素気流下で100℃に加熱し、滴下ロートから約3時間を要して滴下し、滴下後さらに同温度にて2時間撹拌を続け、次いで冷却して固形分40%のアクリル樹脂溶液を得た。得られた樹脂(固形分)は、樹脂酸価261mgKOH/g、数平均分子量約19,000を有していた。 ・・・(2)
次いで、還流管、温度計、撹拌機を装着した四つ口フラスコに、上記(1)で得たビスフェノールA型エポキシ樹脂80部 (固形分)、上記(2)で得た40%アクリル樹脂溶液50部 (固形分20部)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル 33部 を加えて100℃に加熱して溶解させた後、N,N−ジメチルアミノエタノール 2部を加えて約2時間反応を行った後、N,N−ジメチルアミノエタノール3部を加えて20分反応を継続した。その後、脱イオン水165部を1時間かけて滴下し水分散を行い、固形分30%のアクリル変性エポキシ樹脂溶液を得た。該アクリル変性エポキシ樹脂(固形分)の酸価は47mgKOH/gであった。
この固形分30%のアクリル変性エポキシ樹脂333部(固形分100部)を約30分間撹拌した後、脱イオン水を徐々に加えて調整し、アクリル変性エポキシ樹脂を含有する固形分25%の塗料組成物No.1(アクリル樹脂変性エポキシ樹脂系塗料組成物)を得た。
【0099】
[エポキシ樹脂/フェノール樹脂系塗料組成物(C)の製造例]]
製造例28
温度計、攪拌機、冷却管及び水分離器を備えた4つ口フラスコに、エピコートE1010( ジャパンエポキシレジン株式会社社製、商品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量約4,500、分子量約5,500)320部を混合溶剤(キシレン/メチルイソブチルケトン/エチレングリコールモノブチルエーテル)=1/1/1)に溶解して、固形分32%のエポキシ樹脂溶液を得た。・・・(1)
また、別途、ショーノールCKS−3865(昭和高分子株式会社製、商品名、ブトキシ化フェノール樹脂)320部を混合溶剤(キシレン/メチルイソブチルケトン/エチレングリコールモノブチルエーテル)に溶解して固形分32%のフェノール樹脂溶液を得た。・・・(2)
上記(1)で得た固形分32%エポキシ樹脂溶液250部(固形分80部)に、上記(2)で得た固形分32%フェノール樹脂溶液37.5部(固形分12部)及び89%リン酸水溶液0.5部(固形分0.45部)を混合し、エポキシ樹脂とフェノール樹脂を含有する塗料組成物No.2(エポキシ樹脂/フェノール樹脂系塗料組成物)を得た。
【0100】
[塩化ビニル樹脂系塗料組成物(D)の製造例]
製造例29
温度計、攪拌機、冷却管及び水分離器を備えた4つ口フラスコに、OXY−1730(COLORITE POLYMER社製、ポリ塩化ビニル樹脂のペースト)45部、エチレングリコールモノブチルエーテル27.5部及びソルベッソ100(エクソンモービル化学社製、混合溶剤)27.5部を配合してよく攪拌し、固形分45%の塩化ビニル系樹脂の分散液を得た。・・・(1)
別の攪拌機の付いた容器にVMCC(ダウ・ケミカル日本社製、塩化ビニル・酢酸ビニル・マレイン酸の共重合樹脂)30部、メチルイソブチルケトン17.5部、2−メトキシ−2−メチルプロピルメチルケトン17.5部及びキシレン35部を配合してよく攪拌し、固形分30%の塩化ビニル系樹脂の溶解液を得た。・・・(2)
上記(1)で得た塩化ビニル系樹脂の分散液30部(固形分13.5部)、上記(2)で得た固形分30%の塩化ビニル系樹脂の溶解液50部(固形分15部)、エピコート834(ジャパンエポキシレジン社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)3部、ヒタノール3305N(日立化成工業社製、クレゾール/p−tert−ブチルフェノール/ホルムアルデヒド型フェノール樹脂溶液)6部、ソルベッソ100(エクソンモービル化学社製、混合溶剤)13.5部、メチルエチルケトン13.5部を配合してよく撹拌して、塗料組成物No.3(塩化ビニル樹脂系塗料組成物(D))を得た。
【0101】
[ポリエステル樹脂系塗料組成物(E)の製造例]
製造例30
温度計、攪拌機、冷却管及び水分離器を備えた4つ口フラスコに、エチレングリコール126.3部、2−メチル−1,3−プロパンジオール133.3部、グリセリン17.0部、モノブチル錫オキサイド0.37部を加え120℃まで加熱し、その後シクロヘキサンジカルボン酸191.2部、テレフタル酸258.1部及びイソフタル酸153.6部を加え160℃ まで昇温した。
その後2時間かけて200℃まで昇温し、その温度に1時間保持した後、2時間かけて縮合水を抜きながら240℃ まで昇温した。混合液が透明になったところでキシレン37.5部を加えて反応温度を220℃にして共沸による縮合水の分離を継続して行なった。その後1時間おきに樹脂の粘度測定を行い、シクロヘキサノンで40%に希釈した樹脂の粘度がガードナー粘度でZ2になった時点で反応を終了して、数平均子量5,400及び水酸基価24mgKOH/gのポリエステル樹脂を得た。・・・(1)
さらに、温度計、攪拌機及び冷却管を備えた別の4つ口フラスコに、上記(1)で得られたポリエステル樹脂193.5部、UE3201(ユニチカ社製高分子量ポリエステル樹脂、数平均分子量約20,000、水酸基価3mgKOH/g)46.7部及びシクロヘキサノン41.1部を加え攪拌混合しながら150℃ まで昇温し、液が均一透明になった後、カルボン酸無水物基含有化合物である無水マレイン酸2.0部、無水トリメリット酸0.8部、1分子中に2個のカルボン酸無水物基を有する化合物であるエチレングリコールビストリメリテート二無水物4.1部及び10%トリブチルアミン希釈液(メチルエチルケトン希釈)0.3部を加えて2 時間反応させてカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を得た。該樹脂の酸価は20mgKOH/gであった。
該樹脂に、プロピルプロピレングリコール13.7部、エチレングリコールモノヘキシルエーテル27.4部及びエチレングリコールモノブチルエーテル55.6部を加えて100℃で40分間攪拌した後、50℃まで冷却し、トリエチルアミン5.0部を加えて中和し、さらに、攪拌しながら脱イオン水467.5部を40分間かけて滴下することにより固形分31.5%のポリエステル樹脂水分散体を得た。・・・(2)
さらに、温度計、攪拌機、冷却管及び水分離器を備えたガラス製の別の4つ口フラスコに、m-クレゾール100部、37%ホルムアルデヒド水溶液178部及び水酸化ナトリウム1部を加え、60℃で3時間反応させた後、減圧下、50℃で1時間脱水した。次いで、n-ブタノール100部とリン酸3部を加え、110〜120℃で2時間反応を行った。反応終了後、得られた溶液をろ過して生成したリン酸ナトリウムを濾別し、固形分約50%のレゾール型フェノール樹脂液を得た。得られた樹脂の固形分は、数平均分子量約750で、185℃で測定したゲル化時間が150秒であった。・・・(3)
上記(2)で得たポリエステル樹脂水分散体の317.5部(固形分100部)に対し、上記(3)で得たレゾール型フェノール樹脂を20部(固形分10部)配合し、脱イオン水を徐々に加えて調整し、固形分22%の塗料組成物No.4(ポリエステル樹脂系塗料組成物(E))を得た。
【0102】
製造例31 塗料組成物No.5の製造(特開2006−36979号公報に準ずる配合)
温度計、攪拌機、冷却管を備えたガラス製4つ口フラスコに、混合液(エチレングリコールモノブチルエーテル400部、n−ブタノール300部、メタクリル酸200部、スチレン40部、エチルアクリレート30部、メチルメタクリレート30部、過酸化ベンゾイル5部)の1/4を仕込んだ。次に100℃に加熱して30分攪拌後、100℃を保ちながらモノマー及び重合開始剤からなる上記混合液の残りの3/4を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に100℃を保ち2時間攪拌し、冷却して取り出すことで樹脂固形分30%のアクリル系共重合体溶液を得た。・・・(1)
また別途、窒素ガス置換した4ッ口フラスコに、石炭酸500部、37%ホルマリン237部、シュウ酸5部を仕込み、95℃まで加熱し3時間反応を行った。次に60mmHgまで減圧し、脱水を行いながら150℃ まで加熱した後、窒素ガスを吹き込みながら更に脱水を続け内温を210℃まで加熱した。この状態を4時間保持し、ついで20mmHgの減圧下で真空脱水を1時間行うことで、数平均分子量440の固形のノボラック型フェノール樹脂383部を得た。次いでフラスコ中に、イオン交換水200部、20%水酸化ナトリウム水溶液200部、37%ホルマリン800部を仕込み、ノボラック型フェノール樹脂383部を溶解した後、60℃で3時間反応させたところ赤褐色透明な溶液を得た。さらに、40℃まで冷却してからこの赤褐色透明溶液に、20%塩酸190部を加え攪拌したところ、10分程度で上層が無色透明な水層、下層が赤褐色の有機層に分離した。上層をデカンテーションにより分離・除去したのち、n−ブタノール490部を加え、数平均分子量680、樹脂固形分50%のレゾール型フェノール樹脂溶液を得た。・・・(2)
さらに別に、窒素ガス置換した4ッ口フラスコにエピコート1009(ジャパンエポキシレジン株式会社製)60部、エピコート1256(ジャパンエポキシレジン株式会社製)100部、エチレングリコールモノブチルエーテル70部を仕込み、120℃まで加熱、攪拌しエポキシ樹脂を均一に溶解させた。
上記の溶解したエポキシ樹脂溶液を80℃まで冷却し、上記(1)で得た樹脂固形分30%のアクリル系共重合体溶液267部(固形分80部)、上記(2)で得た樹脂固形分50%のレゾール型フェノール樹脂溶液48部(固形分24部)を仕込んだ。次に80℃を保持した状態においてジメチルアミノエタノール11部を添加し2時間反応させた。その後60℃まで冷却したのち、脱イオン水575部を1時間かけて徐々に滴下し、固形分22%の塗料組成物No.5を得た。
【0103】
製造例32 ポリエステル樹脂系塗料組成物(E)の製造
攪拌機を備えた反応容器にテレフタル酸ジメチル85部、イソフタル酸ジメチル15部、無水マレイン酸3部及びエチレングリコール32部を仕込み、260℃で3時間かけてエステル交換反応を行なった。
次いで、三酸化アンチモンを酸成分に対して400ppm添加し、285℃で0.5mmHg以下の高真空で揮発成分を留出させながら縮合反応を3時間かけて行ってポリエステル樹脂系塗料組成物No.6を得た。なおポリエステル樹脂の融点は、250℃であった。
【0104】
[複層塗膜形成方法]
実施例1
下記の「工程1〜工程3」によって、複層塗膜No.1を得た。
工程1: リン酸クロメート処理が施された厚さ0.26mmの#5182アルミニウム板に、製造例11で得た樹脂溶液No.1を、乾燥膜厚1μmとなるようにスプレー塗装し、金属素材の到達最高温度が130℃で90秒間加熱乾燥を行った。
工程2:工程1で得られた塗膜に、製造例27で得た塗料組成物No.1を乾燥膜厚3μmとなるようにスプレー塗装した。
【0105】
工程3:金属素材の到達最高温度が200℃で90秒間加熱乾燥を行って複層塗膜No.1を得た。
【0106】
実施例2〜24
表3及び表4の樹脂溶液、フェノール系樹脂水分散体、塗料組成物、工程内容とする以外は、実施例1と同様にして複層塗膜No.2〜No.24を得た。
【0107】
実施例25
下記の「工程1〜工程3」によって複層塗膜No.25を得た。
工程1:リン酸クロメート処理が施された厚さ0.26mmの#5182アルミニウム板に、製造例26で得たフェノール系樹脂水分散体No.1を、乾燥膜厚換算で1μmとなるようにスプレー塗装し、25℃にて60秒間のセッテングを行った。
工程2:工程1で得られた塗膜に、製造例27で得た塗料組成物No.1を乾燥膜厚3μmとなるようにスプレー塗装した。
工程3:金属素材の到達最高温度が200℃で90秒間加熱乾燥を行って複層塗膜No.23を得た。
【0108】
実施例26
下記の「工程1〜工程3」によって複層塗膜No.26を得た。
【0109】
工程1:リン酸クロメート処理が施された厚さ0.26mmの#5182アルミニウム板に、製造例11で得た樹脂溶液No.1を、乾燥膜厚1.0μmとなるようにスプレー塗装し、金属素材の到達最高温度が130℃で90秒間加熱乾燥を行った。
工程2:工程1で得られた塗膜に、ラボプラストミル100CR500T-CM(株式会社東洋精機社製、混練機)を用いて、ポリエステル樹脂を280℃まで加熱し、さらに溶融押出しを行なうと同時に、5℃に冷却したゴムロールを押出された樹脂の上から押しつけて、樹脂膜厚が20μmになるように樹脂の溶融物をアルミニウム板に圧着させた。
【0110】
工程3:金属素材の到達最高温度が260℃となるよう20秒間加熱乾燥を行い、直後にこの樹脂被覆アルミニウム板を氷水中に浸漬して急冷し、複層塗膜No.26を得た。
【0111】
【表3】

【0112】
【表4】

【0113】
比較例1
リン酸クロメート処理が施された厚さ0.26mmの#5182アルミニウム板に、製造例27で得た塗料組成物No.1を乾燥膜厚4.0μmとなるようにスプレー塗装し、金属素材の到達最高温度が200℃で90秒間加熱乾燥を行い、塗膜No.27を形成させた。
【0114】
比較例2〜5
塗料組成物No.1を表5の塗料組成物に変更する以外は、比較例1と同様にして塗膜No.28〜No.31を得た。
【0115】
【表5】

【0116】
比較例6
工程1:リン酸クロメート処理が施された厚さ0.26mmの#5182アルミニウム板に、製造例18で得た樹脂溶液No.8を乾燥膜厚1.0μmとなるようにスプレー塗装し、金属素材の到達最高温度が130℃で90秒間加熱乾燥を行った。
【0117】
工程2:次いで、製造例27で得た塗料組成物No.1をスプレー塗装した。
工程3:金属素材の到達最高温度が200℃で90秒間加熱乾燥を行って複層塗膜No.32を得た。
【0118】
比較例7〜12
表6の樹脂溶液、工程内容とする以外は、比較例6と同様にして、複層塗膜No.33〜No.39を得た。
【0119】
【表6】

【0120】
(注5)Tベンド折り曲げ加工性:
試験塗板を圧延方向に5cm、圧延方向に対し垂直方向に4cmの大きさに切断した後、20℃の室内にて、特殊ハゼ折り型デュポン衝撃試験器を用い、下部を2つ折にした試験塗板の折曲げ部の間に厚さ0.26mmのアルミニウム板を2枚挟み、試験器にセットし、接触面が平らな厚さ1kgの鉄のおもりを高さ50cmから落下させて折曲げ部に衝撃を与えた後、折曲げ先端部に印加電圧6.5Vで6秒間通電し折曲げ先端部20mm幅の電流値(mA)を測定し、下記基準で評価した。
◎は、20mA未満
○は、20mA以上、且つ40mA未満
△は、40mA以上、且つ80mA未満
×は、80mA以上。
【0121】
(注6)加工後の耐食性(1):
上述のTベンド加工試験と同様に試験片を準備し、同様に折り曲げ加工を行ったものを、クエン酸、リンゴ酸、塩化ナトリウムを各1%溶解した混合水溶液に浸漬し、40℃にて2週間貯蔵した後、その折り曲げ加工部の状態を目視にて下記基準により評価した。
◎は、腐食が認められない
○は、腐食がわずかに認められる
△は、腐食がかなり認められる
×は、腐食が著しい。
【0122】
(注7)加工後の耐食性(2)
上述のTベンド加工試験と同様に試験片を準備し、同様に折り曲げ加工を行ったものを、亜硫酸ナトリウム200ppm、エタノール10%、クエン酸1%の水溶液に浸漬し、40℃にて1ヶ月貯蔵した後、その折り曲げ加工部及び非加工部の状態を目視にて下記基準により評価した。
◎は、腐食が認められない
○は、腐食がわずかに認められる
△は、腐食がかなり認められる
×は、腐食が著しい。
【0123】
(注8)複層塗膜の衛生性
試験板と活性炭処理した水道水とを、試験板の塗装面積1cm2に対して活性炭処理した水道水の量が1ccとなる割合で、耐熱ガラス製ボトルに入れ、蓋をしてオートクレーブ中にて125℃で30分間処理を行い、処理後の内容液について食品衛生法記載の試験法に準じて、過マンガン酸カリウムの消費量(ppm)に基づき、衛生性を評価した
◎は、過マンガン酸カリウム消費量が2ppm未満
○は、過マンガン酸カリウム消費量が2ppm以上4ppm未満
△は、過マンガン酸カリウム消費量が4ppm以上10ppm未満
×は、過マンガン酸カリウム消費量が10ppm以上。
【0124】
(注9)塗料の貯蔵安定性(1)
実施例および比較例の工程1にて使用した樹脂溶液及びフェノール系樹脂水分散体を、40℃にて1ヶ月貯蔵した後に、塗料状態を下記基準で評価した。
◎は、異常のないもの
○は、液面(容器壁部)にごく僅かに分離物が認められる
△は、目視で分離、沈殿の少なくともいずれかが発生し、攪拌によって溶解する
×は、著しく分離、沈殿の少なくともいずれかが発生し、攪拌によって溶解しない。
【0125】
(注10)塗料の貯蔵安定性(2)
実施例および比較例の工程3にて使用した塗料組成物を40℃にて1ヶ月貯蔵した後の塗料状態を下記基準で評価した。
◎は、異常のないもの
○は、液面(容器壁部)にごく僅かに分離物が認められる
△は、目視で分離、沈殿の少なくともいずれかが発生し、攪拌によって溶解する
×は、著しく分離、沈殿の少なくともいずれかが発生し、攪拌によって溶解しない
(注11)塗料の貯蔵安定性
本工程に使用した塗料組成物を40℃にて1ヶ月貯蔵した後の塗料状態を下記基準で評価した。
◎は、異常のないもの
○は、液面(容器壁部)にごく僅かに分離物が認められる
△は、目視で分離、沈殿の少なくともいずれかが発生し、攪拌によって溶解する
×は、著しく分離、沈殿の少なくともいずれかが発生し、攪拌によって溶解しない
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の複層塗膜形成方法を用いた複層塗膜は、加工性、衛生性、香味保持性及び耐食性に優れた塗装物品を提供できる。特に、ワインやチューハイに代表されるアルコール飲料や亜硫酸塩を含む飲料缶に対して優れた耐食性が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程1〜工程3を有することを特徴とする複層塗膜形成方法。
「工程1:レゾール型フェノール樹脂(a1)と、ガラス転移温度100〜180℃でかつ酸価150〜400mgKOH/gのアクリル系共重合体樹脂(a2)とが、
前者/後者の質量比で20/80〜80/20の割合で溶媒中に溶解ないし分散した樹脂液(A)を、金属素材に乾燥膜厚で0.1〜5μmとなるように塗装する工程、
工程2:工程1で得られた樹脂液(A)に基づく未硬化塗膜又は硬化塗膜上に、
アクリル樹脂変性エポキシ樹脂系塗料組成物(B)、エポキシ樹脂/フェノール樹脂系塗料組成物(C)、塩化ビニル樹脂系塗料組成物(D)、並びにポリエステル樹脂系塗料組成物(E)から選ばれる少なくとも1種の上塗り塗料組成物を乾燥膜厚で1〜30μmとなるように塗装する工程、
工程3:金属素材の到達最高温度が120〜280℃となる条件にて5秒間〜60分間加熱乾燥する工程」
【請求項2】
樹脂液(A)が、該レゾール型フェノール樹脂(a1)が該アクリル系共重合体樹脂(a2)の中和物によって水中に安定に分散されたフェノール系樹脂水分散体(A1)である請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項3】
フェノール系樹脂水分散体(A1)の平均粒子径が10〜300nmである請求項2に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法により得られる複層塗膜。
【請求項5】
請求項1〜3に記載の複層塗膜形成方法によって得られる塗装物品。
【請求項6】
請求項4に記載の塗膜が内面に被覆されてなる、亜硫酸塩を含むアルコール飲料を内容物とする金属缶体。

【公開番号】特開2008−168209(P2008−168209A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3951(P2007−3951)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】