説明

視点位置検出装置、視点位置検出方法及び立体表示装置

【課題】実装コストの低い画像処理から構成され、また、明るさが常に変動する環境下でも安定して対象者の視点位置を検出することが可能な視点位置検出装置、視点位置検出方法及び立体表示装置を提供する。
【解決手段】視点位置検出装置は、1つ以上の発光マーカー12aを備え対象者2の頭部に装着可能であるマーカー部12と、対象者2を撮像する撮像部11と、撮像部11が撮像した対象者2の画像から対象者2の視点位置を検出する視点位置検出部14と、を備える。視点位置検出部14は、撮像部11が撮像した対象者2の画像上の発光マーカー12aの位置を検出し、発光マーカー12aの位置に基づいて対象者2の視点位置を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者の視点位置を検出する視点位置検出装置、視点検出方法及び画像を立体的に表示可能な立体表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のフロントガラスに立体的な画像を表示可能な車両用表示装置であるヘッドアップディスプレイ(Head-Up Display;HUD)としては、例えば、特許文献1に開示されるものがある。この車両用表示装置は、表示画像の元となる立体データを記憶した記憶手段と、運転者の視点位置検出手段と、視点位置に基づいて立体データから表示画像を得る画像処理手段とから構成される。そして、運転者の視点位置を検出し、その位置に基づいて立体データから表示画像データを生成し、HUDに表示する。
また、立体的に画像を表示可能な車両用表示装置としては、例えば、特許文献2に開示されるように、左目用画像及び右目用画像を時分割で液晶表示パネルに表示させるとともに、運転者の視点位置を検出し、その位置に応じて液晶表示パネルを透過する照明光の光軸を変化させるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−6968号公報
【特許文献2】特開2010−191404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に記載の車両用表示装置において、運転者(対象者)の視点位置を検出する方法としては、運転者の顔を撮像した画像から運転者の目を割り出して視点位置を検出する処理がある。しかしながら、かかる方法は高度な画像認識処理が要求される為に処理が複雑になり、実装コストが高いという問題点があった。また、移動する車両内のように,周囲の明るさが常に変動している状況では、検出対象である運転者の画像も変化する為に安定して視点位置を検出することが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、実装コストの低い画像処理から構成され、また、明るさが常に変動する環境下でも安定して対象者の視点位置を検出することが可能な視点位置検出装置、視点位置検出方法及び立体表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の視点位置検出装置は、
1つ以上の発光マーカーを備え対象者の頭部に装着可能であるマーカー部と、前記対象者を撮像する撮像部と、前記撮像部が撮像した前記対象者の画像から前記対象者の視点位置を検出する視点位置検出部と、を備える視点位置検出装置であって、
前記視点位置検出部は、前記撮像部が撮像した前記対象者の画像上の前記発光マーカーの位置を検出し、前記発光マーカーの位置に基づいて前記対象者の視点位置を検出することを特徴とする。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の視点位置検出方法は、
対象者を撮像部で撮像し、前記撮像部が撮像した前記対象者の画像から前記対象者の視点位置を検出する視点位置方法であって、
前記撮像者は1つ以上の発光マーカーを備えるマーカー部を頭部に装着し、前記撮像部が撮像した前記対象者の画像上の前記発光マーカーの位置を検出し、前記発光マーカーの位置に基づいて前記対象者の視点位置を検出することを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の立体表示装置は、
立体的に視認可能な立体画像を表示する画像表示部を備える立体表示装置であって、
請求項1または2に記載の視点位置検出装置と、前記視点位置検出装置によって検出された対象者の視点位置に基づいて前記立体画像を生成する画像表示制御部と、を備えてなることを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の立体表示装置は、
表示パネルに右目用画像と左目用画像を所定の時間間隔で交互に表示させることにより立体的に視認可能な立体画像をミラーに反射させて表示するヘッドアップディスプレイ(HUD)を備える立体表示装置であって、
請求項1または2に記載の視点位置検出装置と、前記視点位置検出装置によって検出された対象者の視点位置に基づいて前記ヘッドアップディスプレイを制御するHUD制御部と、を備え、
前記HUD制御部は、前記視点位置検出装置によって検出された対象者の視点位置に基づいて前記右目用画像及び前記左目用画像を生成する及び/あるいは前記対象者の視点位置に対応するように前記ミラーの回転角を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、実装コストの低い画像処理から構成され、また、明るさが常に変動する環境下でも安定して視点位置を検出することが可能な視点位置検出装置、視点位置検出方法及び立体表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態の全体構成を示す全体概略図である。
【図2】同上実施形態のHUD制御部のハードウェア構成図である。
【図3】同上実施形態の表示内容制御処理を示すフローチャートである。
【図4】同上実施形態の表示例である。
【図5】同上実施形態の表示例である。
【図6】同上実施形態の表示タイミング制御処理を示すフローチャートである。
【図7】同上実施形態の視点位置検出処理を示すフローチャートである。
【図8】同上実施形態の視点位置検出処理の説明図である。
【図9】同上実施形態の視点位置検出処理における、画像上の視点位置のx座標とミラー角度の対応関係を示すテーブルを説明するための図である。
【図10】同上実施形態の設定画面の説明図である。
【図11】本発明の第2実施形態の全体構成を示す全体構成図である。
【図12】同上実施形態のマーカー制御部のハードウェア構成図である。
【図13】同上実施形態のマーカー点滅制御処理のフローチャートである。
【図14】同上実施形態のマーカー点滅制御処理のタイミングチャートである。
【図15】同上実施形態の視点位置検出処理のフローチャートである。
【図16】同上実施形態の視点位置検出処理の説明図である。
【図17】本発明に適用される発光マーカー付きイヤホンマイクの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1(a)及び(b)は、本発明の第1実施形態に係る車載立体表示装置1の概略構成を示す図である。本実施形態に係る車載立体表示装置1は、撮像部11と、マーカー付き眼鏡12と、ヘッドアップディスプレイ(HUD)13と、HUD制御部14と、から構成され、視点位置検出装置を含むものである。
【0014】
撮像部11は、運転者(対象者)2の顔を撮像するものであり、CCD(Charged Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の周知の撮像素子と、それを制御する周辺回路やレンズ等から構成される。撮像部11は、マーカー付き眼鏡12を頭部に装着した運転者2の正面に設置される。撮像部11は、撮像した運転者2の顔の画像を、奇数フィールドと偶数フィールドからなる所謂インターレース方式でビデオ信号(出力映像信号)に変換し、出力する。インターレース方式のビデオ信号の規格としては、例えばNTSC(National Television System Committee)方式がある。
【0015】
マーカー付き眼鏡12(マーカー部の一例)は、運転者2が頭部に装着可能なものである。マーカー付き眼鏡12は、撮像部11が運転者2の顔を撮像した際に、運転者の顔と共に撮像可能な位置に少なくとも1つ以上(本実施形態においては4つ)の発光マーカー12aを備える。発光マーカー12aは例えばLED等の発光素子からなり、本実施形態においては電源が投入されると常時点灯するものである。なお、発光マーカー12aは、運転者2からは発光が認識されない赤外線LED等を用いても良く、また、照明光を反射する反射シールからなるものであっても良い。
【0016】
HUD13は、HUD制御部14からの制御信号に基づいて、運転者2の左右の目にそれぞれ別々の画像をフロントガラス3に反射させて交互に投影することで、立体感のある表示を実現するものである。HUD13は、光源13aと、表示パネル13bと、結像レンズ13cと、ミラー13dと、ミラー駆動部13eとから構成される。
【0017】
光源13aは、2つの光源から構成され、それぞれ運転者2の左右の目に対応して、独
立して発光可能なものである。光源12aは、HUD制御部14からの光源制御信号に基
づいて、交互に点灯する。
【0018】
表示パネル13bは、HUD制御部14が出力する画像情報を表示するものである。表
示パネル13bは、例えばLCD(Liquid Crystal Display)から構成され、HUD制御
部14からの表示制御信号に基づいて、交互に左右の目に対応する画像情報を切換表示す
る。
【0019】
結像レンズ13cは、表示パネル13bを通った光源12aからの光(画像)が運転者2の左右の目に対して結像するように投影するものである。
【0020】
ミラー13dは、画像の投影方向を制御するものである。ミラー13dは、水平面内で回転可能である。ミラー13dに反射した画像は、さらにフロントガラス3に反射し、最終的に運転者2の目に到達する。
【0021】
ミラー駆動部13eは、例えばステッピングモータから構成され、ミラー13dの回転角を、HUD制御部14から送信される回転角制御信号に基づいて制御する。
【0022】
HUD制御部14(視点位置検出部に相当する)は、図1(b)に示すように、後述する視点位置検出処理にて検出される運転者2の視点位置に基づいて、画像が運転者2の目に到達するようにHUD13のミラー13dの回転を制御するものである。これにより、より広範囲で立体感のある表示が可能となる。また、HUD制御部14は、運転者2の視点位置に基づいて、画像のHUD13の表示パネル13bへの表示を制御するものである。図2に、HUD制御部14のハードウェア構成の一例を示す。HUD制御部14は、いわゆるマイクロコンピュータから構成され、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)14aと、ROM(Read-Only Memory)14bと、汎用メモリ14cと、ビデオメモリ14dと、外部デバイスインターフェイス(I/F)14eと、を備える。CPU14aは、ROM14b内に予め記憶された後述する表示制御処理のための所定プログラムを読み出し、及び実行する。そしてCPU14aは、撮像部11からの入力画像情報、処理画像情報及び演算結果等を汎用メモリ14cに一時的に記憶させる。また、CPU14aは、ROM14b内に予め記憶された例えば道路データ、標識、案内表示板といった道路情報等の3次元データから表示パネル12bに表示するための2次元データである画像情報を生成し、汎用メモリ14cに一時的に記憶させる。また、CPU14aは、汎用メモリ14cに記憶された画像情報をビデオメモリ14dに転送し、表示パネル13bに出力する。また、撮像部11及びHUD13は、外部デバイスI/F14eを介して、HUD制御部14の各部と接続されている。
【0023】
車両制御システム部15は、車両を制御するコンピュータであり、後述する表示内容制御処理において参照される設定モード信号をHUD制御部14に出力する。車両制御システム部15は、外部デバイスI/F14eを介して、HUD制御部14の各部と接続されている。
【0024】
次に、HUD制御部14のCPU14aが実行する表示内容制御処理について図3を用いて説明する。表示内容制御処理は、例えばエンジンキーを差し込んで回すといった車両の始動動作によってバッテリーからCPU14aに電源が供給されることで開始する。
【0025】
HUD制御部14は、最初に、表示タイミングを初期化する(ステップS11)。例えば、表示タイミングを右目に初期化する。そして、後述する表示タイミング制御処理の周期的な呼び出しを開始する(ステップS12)。次に、撮像部11の出力画像を取り込む撮像処理を実行する(ステップS13)。その後、取り込んだ画像に対して後述の視点位置検出処理を実行することにより、運転者2の視点位置と、それに対して最適なミラー13dの駆動角度を得る(ステップS14)。さらに、運転者2の視点位置に基づいて右目用と左目用の画像を生成する(ステップS15)。図4は、右目用画像と左目用画像の一例を示すものであり、図4においては前方の道路や標識、案内板などの道路情報と車速情報とを含む。HUD制御部14は、ROM14b内に予め記憶された例えば道路データ、標識、案内表示板といった道路情報等の3次元データから、運転者2の視点位置に基づいて運転者2の右目から見た場合の2次元データである右目用画像と、左目からみた場合の2次元データである左目用画像とを生成する。これにより、画像として道路情報などの運転者2の視点位置によって見え方が変化する情報を表示する場合に背景と表示画像とのズレによって生じる運転者2の違和感を低減することができ、運転者2に伝えたい情報を正確に伝達することが可能となる。次の条件分岐において、設定モードであるか否かの情報を車両制御システム部15から取得し(ステップS16)、設定モードである場合は(ステップS16;Yes)、後述の設定情報を描画する(ステップS17)。図5は設定情報を含む右目用画像と左目用画像の一例を示すものであり、設定情報として視点位置検出処理における2値化閾値が表示される。最後に、運転者2の視点位置に対する最適なミラー13dの駆動角度に基づいて、ミラー駆動部13eに対して制御信号を出力する(ステップS18)。その後は、ステップS13に戻り、以降電源がオフになるまで前述の処理を反復実行する。
【0026】
次に、HUD制御部14のCPU14aが実行する表示タイミング制御処理について図6を用いて説明する。表示タイミング制御処理は、右目用画像と左目用画像を所定の時間間隔で交互に表示させることにより運転者2に画像を立体的に視認させる処理であり、前述の表示内容制御処理においてTミリ秒の時間間隔で周期的に呼び出される(例えばT=33)。
【0027】
HUD制御部14は、最初に、表示タイミングの判定を行う(ステップS21)。表示タイミングが右目である場合(ステップS21;右目)、表示パネル13bに対する右目用画像の表示更新を行う(ステップS22)。ここで表示される表示パネル13bに表示される画像はステップS15で生成された右目用画像である。次に、右目用の光源3aが点灯するように点灯させる光源3aを切換える(ステップS23)。そして、次回の表示タイミングを左目に切換え(ステップS24)、処理を終了する。また、表示タイミングが左目である場合(ステップS21;左目)、表示パネル13bに対する左目用画像の表示更新を行う(ステップS25)。ここで表示される表示パネル13bに表示される画像はステップS15で生成された左目用画像である。次に、左目用の光源3aが点灯するように点灯させる光源3aの切換えを行う(ステップS26)。そして、次回の表示タイミングを右目に切換え(ステップS27)、処理を終了する。
【0028】
次に、HUD制御部14のCPU14aが前述の表示内容制御処理において実行する視点位置検出処理について図7及び図8を用いて説明する。
【0029】
HUD制御部14は、最初に、撮像部11にて撮像したマーカー付き眼鏡12を装着した運転者2の画像B(図8(a)参照)に対して、公知の画像処理技術である2値化処理を行う(ステップS31)。この処理によって、発光マーカー12aを示す2値画像Cが得られる(図8(b)参照)。次に、2値画像C中の各発光マーカー12aの位置を、これもまた公知の画像処理技術であるラベリング処理により検出する(ステップS32、図8(c)参照)。次に、これら発光マーカー12aの位置の重心を求め(図8(d)参照)、この重心を画像B上の視点位置(x,y)とする(ステップS33)。最後に、視点位置のx座標xに基づいて、図9示す画像B上の視点位置のx座標xとミラー13dの駆動角度θの対応関係を記述したテーブルを参照して、ミラー13dの駆動角度θを得る(ステップS34)。HUD制御部14は、前記表示内容制御処理において、この視点位置(x,y)に基づき右目用画像及び左目用画像を生成して描画処理を行い、また、ミラー13dの駆動角度θに基づき前記投影方向制御処理でミラー13dの角度制御を行う。
【0030】
なお、前記視点位置検出処理において、図10(a)〜(c)に示すような設定表示をHUD13に表示させてもよい。図10(a)は、運転者2の視点位置を+印で運転者2の顔を撮像した画像Bに描画した設定表示の例である。かかる表示によれば、検出可能領域を確認することができる。図10(b)は、視点位置検出結果を画像Bに描画した設定表示の例である。かかる表示によっても、前述の設定表示例と同様に検出可能領域を確認することができる。図10(c)は、設定情報(図中では2値化閾値)を画像Bに描画した設定表示の例である。かかる表示によれば、前記視点位置検出処理における2値化閾値を始めとするパラメータを調整することができる。
【0031】
以上のように、本実施形態に係る車載立体表示装置1は、1つ以上の発光マーカー12aを備え運転者2の頭部に装着可能であるマーカー付き眼鏡12と、運転者2を撮像する撮像部11と、撮像部11が撮像した運転者2の画像から運転者2の視点位置を検出するHUD制御部14と、を備え、HUD制御部14は、撮像部11が撮像した運転者2の画像B上の発光マーカー12aの位置を検出し、発光マーカー12aの位置に基づいて運転者2の視点位置を検出する。そして、検出された視点位置に基づいて右目用画像及び左目用画像を生成し、また、運転者2の視点位置に対応するようにミラー13dの回転角を制御する。このように運転者2の視点位置を検出する視点位置検出方法により、HUD制御部14は画像上で他の部分と輝度の差が大きい発光マーカー12aを割り出すことができれば良いため、運転者の顔から目を割り出す場合と比較して実装コストの低い画像処理で視点位置を検出することができ、また、明るさが常に変動する環境下でも安定して運転者2の視点位置を検出することが可能となる。
【0032】
(第2実施形態)
図11は、本発明の第2実施形態に係る車載立体表示装置1の概略構成を示す図である。第2実施形態に係る車載立体表示装置1の構成は、発光マーカー制御部16を付加し、発光マーカー制御部16の出力信号に従ってマーカー付き眼鏡12の発光マーカー12aを点滅させる点を除いては第1実施形態と同様である。
【0033】
図12に、発光マーカー制御部16のハードウェア構成の一例を示す。発光マーカー制御部16は、いわゆるマイクロコンピュータから構成され、CPU16aと、ROM16bと、汎用メモリ16cと、外部デバイスI/F16dと、同期信号検出手段16eと、を備える。CPU16aは、ROM16bに予め記憶された前述した処理の所定プログラムを読み出し及び実行し、演算結果等を汎用メモリ16c内に一時的に記憶させるものである。また、同期信号検出手段16eは、撮像部11と外部デバイスI/F16dを介して接続され、撮像部11が出力する公知のインターレース方式のビデオ信号に含まれる垂直同期信号と画像信号である奇数/偶数フィールド信号とを検出する。また、発光マーカー12aは、外部デバイスI/F16d介して発光マーカー制御部16の各部に接続されている。
【0034】
次に、発光マーカー制御部16のCPU16aが実行するマーカー点滅制御処理について図13及び図14を用いて説明する。マーカー点滅制御処理は、例えばエンジンキーを差し込んで回すといった車両の始動動作によってバッテリーからCPU16aに電源が供給されることで開始する。
【0035】
発光マーカー制御部16は、最初に、同期信号検出手段16eによって垂直同期信号(図14(a))の波形の立下りを検出する(ステップS41)。それと同時に、奇数/偶数フィールド信号(図14(b))が奇数フィールドであることを示した場合(ステップS41;Yes)、タイマを初期化し時刻を0にリセットしてからリスタートする。次に、時刻tがTON≦t≦TOFFである場合(ステップS42;Yes)は、マーカー点滅制御信号としてマーカーON信号(図14(c))を出力して発光マーカー12aを点灯させる。また、時刻tがTON≦t≦TOFFでない場合は(ステップS42;No)、マーカー点滅制御信号としてマーカーOFF信号(図14(c))を出力して発光マーカー12aを消灯する。したがって、発光マーカー12a、前述のマーカーON信号とマーカーOFF信号を一定間隔で交互に入力することによって点灯と非点灯を繰り返す。すなわち、TONとTOFFとを制御することによって、撮像部11が奇数フィールドを撮像している期間のみ発光マーカー12aを点灯させる。
【0036】
次に、HUD制御部14のCPU14aが表示内容制御処理で実行する視点位置検出処理について図15を用いて説明する。なお、本実施形態における表示内容制御処理は、視点位置検出処理を除いては前述の第1実施形態と同様である。
【0037】
HUD制御部14は、撮像部11が出力するビデオ信号に含まれる奇数/偶数フィールド信号からインターレース方式の画像D(図16(a))を入力すると、最初に、奇数フィールドと偶数フィールドの分離を行い、奇数フィールドの画像E1と偶数フィールドの画像E2と(図16(b))を得る(ステップS51)。なお、奇数フィールドの画像E1は奇数フィールドの各ラインの間に新たなラインを補間した画像であり、偶数フィールドの画像E2は偶数フィールドの各ラインの間に新たなラインを補間した画像である。次に、奇数フィールドの画像E1と偶数フィールドの画像E2について、公知の画像処理技術である絶対値差分を取り、差分画像F(図16(c))を得る(ステップS52)。その後、差分画像Fを公知の画像処理技術である2値化処理によって2値画像G(図16(d))に変換する(ステップS53)。そして、前述の第1実施形態のステップS32とステップS33と同様に発光マーカー12aの位置を検出し(ステップS54)、発光マーカー12aの位置の重心を求めて、この重心を画像D上の運転者2の視点位置(x,y)とする(ステップS55)。そして、前述の第1実施形態のステップS34と同様にして画像D上の視点位置のx座標xとミラー13dの駆動角度θの対応関係を記述したテーブルを参照して、ミラー13dの駆動角度θを得る(ステップS56)。
【0038】
以上のように、本実施形態に係る車載立体表示装置1は、撮像部11から垂直同期信号と垂直同期信号に同期する奇数/偶数フィールド信号とを含むビデオ信号を入力し、垂直同期信号に基づいて発光マーカー12aを点滅させる発光マーカー制御部16を備えるものである。HUD制御部14は、撮像部11が撮像した運転者2の画像D上の発光マーカー12aの位置を検出し、発光マーカー12aの位置に基づいて運転者2の視点位置を検出する。そして、検出された視点位置に基づいて右目用画像及び左目用画像を生成し、また、運転者2の視点位置に対応するようにミラー13dの回転角を制御する。このように運転者2の視点位置を検出する視点位置検出方法により、HUD制御部14は奇数フィールドと偶数フィールドとにおける発光マーカー12aの画素の輝度が異なることを利用して発光マーカー12aを割り出すことができるため、運転者の顔から目を割り出す場合と比較して実装コストの低い画像処理で視点位置を検出することができ、また、明るさが常に変動する環境下でも安定して運転者2の視点位置を検出することが可能となる。
【0039】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。本発明の視点位置検出装置及び視点位置検出方法は、車載立体表示装置に限らず他の立体表示装置に適用してもよい。また、立体表示装置は、右目用の画像と左目用の画像を交互に表示させる方式に限定されず、立体的に視認可能な立体画像を表示する画像表示部と、検出された対象者の視点位置に基づいて立体画像を生成する画像表示制御部と、を備える立体表示装置であれば本発明の視点位置検出装置及び視点位置検出方法を適用して同様の効果を得ることができる。また、第1及び第2実施形態では、発光マーカー12aはマーカー付き眼鏡12に備えられていたが、本発明のマーカー部は対象者の頭部に装着可能な形態であれば眼鏡に限定されない。図17に、イヤホンにマイクが一体化されたヘッドセット17をマーカー部とした例を示す。ヘッドセット17は,発光マーカー17aを備えるものである。発光マーカー17aは第1実施形態に適用して常時点灯させてもよく、第2実施形態に適用して点滅させてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 車載立体表示装置
11 撮像部
12 マーカー付き眼鏡
12a 発光マーカー
13 ヘッドアップディスプレイ(HUD)
13a 光源
13b 表示パネル
13c 結像レンズ
13d ミラー
13e ミラー駆動部
14 HUD制御部
15 車両制御システム部
16 発光マーカー制御部
17 ヘッドセット
17a 発光マーカー
2 運転者
3 フロントガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の発光マーカーを備え対象者の頭部に装着可能であるマーカー部と、前記対象者を撮像する撮像部と、前記撮像部が撮像した前記対象者の画像から前記対象者の視点位置を検出する視点位置検出部と、を備え、
前記視点位置検出部は、前記撮像部が撮像した前記対象者の画像上の前記発光マーカーの位置を検出し、前記発光マーカーの位置に基づいて前記対象者の視点位置を検出することを特徴とする視点位置検出装置。
【請求項2】
前記撮像部から垂直同期信号と前記垂直同期信号に同期する画像信号とを含む出力映像信号を入力し、前記垂直同期信号に基づいて前記発光マーカーを点滅させる発光マーカー制御部を備えてなることを特徴とする請求項1に記載の視点位置検出装置。
【請求項3】
対象者を撮像部で撮像し、前記撮像部が撮像した前記対象者の画像から前記対象者の視点位置を検出する視点位置方法であって、
前記撮像者は1つ以上の発光マーカーを備えるマーカー部を頭部に装着し、前記撮像部が撮像した前記対象者の画像上の前記発光マーカーの位置を検出し、前記発光マーカーの位置に基づいて前記対象者の視点位置を検出することを特徴とする視点位置検出方法。
【請求項4】
前記撮像部から垂直同期信号と前記垂直同期信号に同期する画像信号とを含む出力映像信号を入力し、前記垂直同期信号に基づいて前記発光マーカーを点滅させることを特徴とする請求項3に記載の視点位置検出方法。
【請求項5】
立体的に視認可能な立体画像を表示する画像表示部を備える立体表示装置であって、
請求項1または2に記載の視点位置検出装置と、前記視点位置検出装置によって検出された対象者の視点位置に基づいて前記立体画像を生成する画像表示制御部と、を備えてなることを特徴とする立体表示装置。
【請求項6】
前記画像表示部は、前記撮像部に撮像された前記対象者の画像または前記対象者の視点位置の検出結果の少なくとも一方を表示可能であることを特徴とする請求項5に記載の立体表示装置。
【請求項7】
表示パネルに右目用画像と左目用画像を所定の時間間隔で交互に表示させることにより立体的に視認可能な立体画像をミラーに反射させて表示するヘッドアップディスプレイ(HUD)を備える立体表示装置であって、
請求項1または2に記載の視点位置検出装置と、前記視点位置検出装置によって検出された対象者の視点位置に基づいて前記ヘッドアップディスプレイを制御するHUD制御部と、を備え、
前記HUD制御部は、前記視点位置検出装置によって検出された対象者の視点位置に基づいて前記右目用画像及び前記左目用画像を生成する及び/あるいは前記対象者の視点位置に対応するように前記ミラーの回転角を制御することを特徴とする立体表示装置。
【請求項8】
前記ヘッドアップディスプレイは、前記撮像部に撮像された前記対象者の画像または前記対象者の視点位置の検出結果の少なくとも一方を表示可能であることを特徴とする請求項7に記載の立体表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−141502(P2012−141502A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−657(P2011−657)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】