説明

触媒コーティングした担体、その生産方法、それを含む反応器、およびその使用

少なくとも1つの多孔質空洞含有触媒層を含む触媒コーティングを有する担体であって、空洞が、少なくとも2つの寸法において5μmを超える寸法を有するか、少なくとも10μm2の横断面積を有する不規則な空間である、前記担体について記載する。
触媒コーティングは高い接着強度を特徴とし、好ましくはマイクロリアクターに用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、良好な接着強度と層厚の高い平面性および低い許容差を有する担持触媒層、その生産方法、不均一触媒プロセスにおけるその使用、ならびにそのような触媒層を含有する反応器に関する。
【0002】
多くの化学反応は、非常に広い範囲の反応器内で不均一触媒作用を受ける。触媒層を備える反応器は、かなり以前から知られている。
DE 76 40 618 Uには、排気ガスの触媒的浄化法であって、流れを妨げるように形成され触媒材料でライニングされている金属管を用いる方法について記載されている。液相または気相から触媒を直接施用することに加え、金属管に施用した多孔質層に触媒的に活性な材料を含浸させることが記載されている。この公開物では、最初に金属管に例えばアルファ−アルミナの固着層を施用し、その後または該固着層と一緒に触媒を直接施用することも示唆されている。
【0003】
DE 198 39 782 A1には、複合金属酸化物材料を含有する触媒コーティングを有する金属製反応管が開示されており、該反応管は触媒気相反応に用いることができる。触媒層は、溶液、エマルションまたは分散液の形態で、接着促進中間層を用いずに金属製反応管に直接施用する。これは噴霧または浸漬により達成することができる。典型的な層厚は10〜1000μmの範囲にある。より厚い層を生産するために、反応管の多重コーティングが推奨されている。
【0004】
DE 199 59 973 A1には、異なる触媒が内部に施用されている連続チャネルを有するボディから構成される不均一触媒配列の生産方法が記載されている。該方法は、配列の公知の範囲を拡大すると考えられている。該方法は自動化することができる。
【0005】
シート様触媒層は、コーティングのための金属製またはセラミック製ハニカムボディをウォッシュコート懸濁液中に浸漬することにより施用することができることが知られている。触媒成分がウォッシュコート中に既に存在しているか、または前記成分を後で含浸により施用する。この後、乾燥し、焼成し、所望により還元する。そのような方法は、例えばCatal.Rev.2001,43,345−380に記載されている。
【0006】
DE 699 06 741 T2には、多孔質ディーゼル排気ガスフィルターが開示されている。これに関し、ハニカム壁構造を有する貫流フィルターボディが用いられており、該ボディの表面は触媒的に活性な材料でコーティングされている。表面積が増大するコーティングを、ウォッシュコートでのコーティングにより、例えば、焼成したフィルターボディに小さなコロイド粒子を含むゾルを施用することにより、フィルターボディに施用する。その後、触媒的に活性な金属層を、例えばフィルターボディに金属スラリーを含浸させることにより施用することができる。
【0007】
US−A−5316661には、基材上でのゼオライト層の結晶化法が記載されている。
WO−A−03/33146には、一酸化炭素の選択的酸化のための担持触媒が開示されている。これらは、結晶質シリケートおよびシリカ粒子の接着促進層の上側で金属担体に施用されている触媒層を有する。接着促進層は、結晶質シリケートとシリカゾルの水性混合物を施用することにより金属担体上にもたらされる。
【0008】
EP−A−1043068には、担持触媒の調製方法であって、触媒含有材料を溶媒と混合し、溶媒の沸点より高温に加熱された基材上に噴霧することにより付着させる方法が開示されている。該方法により、大きな活性表面積および良好な接着強度で触媒材料を基材上に目標どおりに付着させることが可能になる。
【0009】
DE−A−103 35 510には、コーティングされた触媒担体ボディであって、高い接着強度を有し、亀裂の発生および全体的な亀裂の長さが大きいことを特徴とする前記ボディが開示されている。説明によると、これらの亀裂のほとんどは触媒層の表面で途切れる。触媒層における空洞および他の多孔質空間の発生は記載されていない。
【0010】
近年、<1mmの壁間隔を有する触媒壁要素を含むマイクロリアクターが提案されている。これらの例は、DE 100 42 746 A1およびDE 101 10 465 A1に記載されている。
【0011】
これらの壁反応器では、反応混合物を、各場合において平行に配置され触媒コーティングされている2枚のプレート様壁要素の間を通過させる。通常、そのような反応器は一連の壁要素からなる。壁要素の間隔が狭いため大きな壁対体積比が実現し、該比により、高い熱除去速度と、標準状態では爆発性である反応混合物を用いる手順が可能になる。高い熱除去速度は、強い発熱反応においていわゆるホットスポットを回避する一方、非常に良好な温度制御を可能にする。したがって、壁反応器を、ポリトロピックな手順の場合より高温で操作することができる。この結果、触媒壁反応器では、より高い時空収率を達成することができる。ホットスポットの他の望ましくない影響、例えば選択率の損失および失活も、避けることができる。熱輸送が良好なため、とりわけ、従来の反応器では発熱を制御することができない活性触媒を用いることも可能である。
【0012】
公知の反応器において、固定および封止のための装置を伴うプレートからなる触媒壁要素が既に用いられている。反応側において、プレートは1つ以上の触媒コーティングされた平坦なシート様要素を有する。プレートの裏側は多様な設計を有することができ、冷却または加熱媒体のためのチャネルがしばしば好都合である。
【0013】
そのようなマイクロリアクターおよび他の壁反応器では、均一な層厚および物質輸送に対する低い抵抗性を有しとりわけ堅固に接着している触媒層が必要とされる。
公知の方法および該方法で生産される触媒層は、多くの点でなお改善を必要とする。したがって、公知の方法では物質の特別な組合わせの使用が必要となることが多いか、達成しうる層厚の許容差および/または接着強度が不十分である。
【0014】
詳細には、工業的に用いることができる触媒層は、以下の要件を満たさなければならない:
−層は、据付中および操作中のフレーキングを回避するのに足る接着強度を有さなければならない
−層の安定性は、反応温度において、または場合によっては触媒前駆体を分解するのに要するあらゆる焼成中に、熱応力を受けた後であっても、確実でなければならない
−層厚は、反応器内での流速が反応器の幅および反応器の長さの全体にわたり実質的に一定になるように、できるだけ均一でなければならない;この基準は特にマイクロリアクターの場合に顕著な役割を果たす
−層厚は、十分な触媒的に活性な材料が反応器内に導入されるように、十分厚くなければならない;典型的な層厚は20μm〜3mmである
−触媒層は、十分な触媒活性、すなわち、十分大きな内表面積および多孔度を有さなければならない
−触媒層での物質輸送に対する抵抗性は、十分に低くなければならない。
【0015】
本発明の目的は、これらの要件を満たす触媒層を提供することである。
本発明の他の目的は、良好な接着強度と層厚の高い平面性および低い許容差を有し、物質輸送に対する低い抵抗性を有する触媒層を簡単で経済的に生産することができ、多くの触媒系で普遍的に用いることができる方法を提供することである。
【0016】
本発明は、空洞を有する少なくとも1つの多孔質触媒層を含む触媒コーティングを有する担体に関する。本説明の文脈において、空洞は、少なくとも2つの寸法において5μmを超える寸法を有するか、少なくとも10μm2の横断面積を有する不規則な空間を意味すると理解する。
【0017】
これらの空間は実質的に閉じており、実質的に、5μm未満の直径を有する細孔によるか、5μm未満の幅を有する亀裂によってのみ、層表面または他の空洞に接続している。空洞は、樹脂を含浸させた触媒層の断面の走査型電子顕微鏡写真で認識することができる。横断面積または寸法は、それ自体が公知の方法により、例えば定量的顕微鏡法により、決定することができる。本発明の文脈において、不規則な空間は、理想的な球形および/または円筒形から大きく逸脱する非球形および/または非円筒形の形状寸法を有し、内表面が局所的な粗さおよびマクロ細孔からなる空間を意味すると理解する。亀裂とは対照的に、これらの空洞は固有の好ましい方向を有さない。
【0018】
空洞は細孔系の一部である。それらは、とりわけ大きなマクロ細孔である。IUPACの定義の文脈において、マクロ細孔は、50nmを超える直径を有する細孔である。
触媒層中の空洞の割合は、断面像において可視的である10μm2を超える面積のみを空洞とみなして、代表的な断面像における空洞の可視的面積分が、2〜60%、好ましくは3〜50%、特にとりわけ好ましくは5〜35%になるように、選択することが好ましい。画像評価におけるコントラストおよび解像度は、空間−注型樹脂を含む層においてとりわけ暗いコントラストで検出可能なもの−のみが検出され、層材料と、空洞から生じ5μm未満の直径を有する細孔または亀裂は検出されないように、選択すべきである。不確かな場合、本説明の文脈において不均一層の場合は、層全体に分布する無作為に選択した5つの断面像の面積分の算術平均を用いるべきである。
【0019】
意外にも、材料密度が実質的に低下し、したがって層を形成する粒子の接触面積が低下するにもかかわらず、空洞に富むそのような層はとりわけ高い接着強度を有する。一理論に縛られるものではないが、発明者らは、これを2つの活性作用に起因すると考える:
1.空洞は層内での亀裂の拡大を妨げ、したがって、触媒の据付中または操作中に生じるような機械的または熱的に引き起こされる応力を低減するのに役立つ。断面の顕微鏡写真では、層中に生じる亀裂は空洞で途切れ、“消滅する”ことが明らかである(図1参照)。空洞を含まない層の場合、そのような亀裂は層全体にわたり延び、機械的な不安定性をもたらす(図2参照)。
2.空洞は、コーティング中の乾燥工程において溶媒または懸濁媒体の除去を促進し、このようにして、層の機械的損害をもたらす圧力増大を妨げる。
【0020】
本発明に従った層は、機械的および熱的負荷をかけた後であっても高い接着強度を示す。これらの利点により、触媒層の取扱いおよび使用中、例えば据付および操作中の感受性が低くなる。典型的には、これらの層系は、>1kPa(DIN EN ISO 4624を基準にして測定)、とりわけ>10kPa、さらに特に>50kPaの接着強度を示す。
【0021】
空洞に加えて、本発明に従った触媒層は、より小さな直径のさらなるマクロ細孔を高い割合で有することが好ましい。
好ましい態様において、触媒層は、細孔容積の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%が、少なくとも50nmの直径を有するマクロ細孔により形成されている細孔系を含有する。細孔容積は、4nmを超える直径を有し、DIN 66133に従った水銀圧入法を用いて測定することができる細孔の容積を意味すると理解する。水銀に関し140°の接触角および480mN/mの表面張力を仮定する。測定のために、試料を105℃で乾燥する。マクロ細孔の細孔容積の割合も同様に水銀圧入法により決定する。
【0022】
とりわけ好ましい態様に従った高い割合のマクロ細孔は、触媒層内での物質輸送に対する低い抵抗性をもたらす。これにより、選択性および活性を犠牲にすることなく、より厚い層を使用することが実質的に可能になる。より厚い層は、単位面積につきより多くの触媒材料を提供する利点を有する。費用、詳細にはマイクロリアクターの費用は面積の要件に伴い増大し、したがって、より厚い層により、費用削減の可能性がもたらされる。
【0023】
触媒層の細孔および空洞を合わせた容積は、飽和吸水量および示差的秤量により決定することができ、層の全容積に基づき典型的には30〜95%、好ましくは50〜90%である。
【0024】
他の好ましい態様において、本発明に従ってコーティングされた担体は、好ましくは±30μm未満の許容差で均一な層厚を有する。
層厚が均一であることから、軸方向および横方向の流れの状態が均一であるため、反応器内での狭い滞留時間分布を確立することができる。このことは、最適な選択性および最適な時空収率をもたらす。
【0025】
担体はあらゆる望ましい形状寸法を有することができ、非常に広い範囲の材料からなることができる。したがって、それらは、例えば管であってもよい。シート様ボディ、詳細にはプレートを用いることが好ましい。触媒層が施用されているシート様くぼみを有するシート様ボディか、シート様くぼみに加えて溝を有するシート様ボディを用いることが、とりわけ好ましい。
【0026】
担体の他の形態は、いわゆる熱交換プレートを含む。これらは一般に、少なくともいくつかの場合において平行に配置され、点様接触領域において例えば溶接またははんだ付けにより互いに接続され、これら接触領域の外側で間隔をおいて離れている、少なくとも2枚の金属シートを意味すると理解する。この構造に起因して熱交換プレートはクッション様構造を有し、該構造では、互いに向かい合い接触領域を介して互いに接続している金属シートの表面間に、網状チャネルパターンが形成されている。第一にこのチャネルパターンは触媒で処理された反応空間として働くことができ、第二に前記チャネルパターンに冷却液を通過させることができる。熱交換プレートは、とりわけDE−A−101 08 380およびDE−C−100 11 568に記載されており、ドイツのDEG Intense Technologies & Services GmbHから市販されている。
【0027】
担体基材は、金属またはセラミック材料からなることが好ましい。例えば、担体は、アルミニウム、鉄、銅もしくはニッケルを含有する金属または合金からなることができ;あるいは、セラミックス、例えば、アルミナ、酸化チタンまたはシリカ、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素またはコーディエライトなどからなることができる。
【0028】
担体基材は、あらゆる所望の表面を有することができる。平滑表面に加え、粗い表面または多孔質表面を用いることもできる。表面は、担体基材の材料から、または追加的に施用した材料の層、例えば酸化物層からなることができる。
【0029】
触媒層の厚さは、用途に応じて広い範囲に及ぶことができる;典型的には50〜3000μm、好ましくは200〜1000μmであり、触媒層は、同一または異なる組成を有することができる個々の層から構成されることができる。
【0030】
特にとりわけ好ましい担体は、触媒層が、担体の表面に直接施用されている接着促進層を含み、該接着促進層が、触媒作用を有さないことができる担体である。この接着促進層の典型的な厚さは100μm未満、好ましくは100nm〜80μmである。
【0031】
とりわけ好ましい接着促進層は、ミクロン範囲において実質的に均一なマトリックスを示し、好ましくは、例えば担体に施用するための懸濁液中により粗大な粒子を用いると形成する可能性があるような直径が5μmを超える個々の構造を含有しない。触媒の上層とは対照的に、接着促進層は空洞を有さない。
【0032】
1μmを超える直径を有する構造を有する触媒的に活性な材料の少なくとも1つのマクロ多孔質層を、この第1層に施用する。
第1の接着促進層の材料は、触媒層が用いられる反応条件下で変化しないという条件で、あらゆる所望の材料であることができる。前記材料は、典型的なバインダー材料、例えば無機酸化物および/または熱安定性プラスチックを含むことができる。第1層は触媒を含有することもできる。
【0033】
第1の接着促進層を構成する材料の例は、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタンおよびそれらの混合物である。
空洞を含有する少なくとも1つのさらなる層を、空洞を含まない第1の接着促進層に施用する。しかしながら、空洞を含有する層を、接着促進層を用いずに担体に直接施用することもできる。空洞含有層は典型的に、1μmを超える直径を有する粒子に起因する構造であって、触媒的に活性な材料および所望によりさらなる不活性材料を含む構造を含有する。
【0034】
触媒材料は幅広く選ぶことができる。強い発熱または吸熱反応、詳細には酸化反応のための触媒系が、とりわけ興味深い。例えば、以下のものを、促進剤を用いて変動させる基本系として挙げることができる:
−セラミックまたは活性炭上に担持させた貴金属
−さらなるドーパントに加えて、基体としてモリブデン、ビスマス、バナジウム、タングステン、リン、アンチモン、鉄、ニッケル、コバルトおよび銅の酸化物から選択したものからなる複合金属酸化物
−ゼオライト、例えば、一般式(SiO21-x(TiO2xのチタン含有モレキュラーシーブに基づくモレキュラーシーブなど、例えば、MFI結晶構造を有するチタンシリカライト−1(TS−1)、MEL結晶構造を有するチタンシリカライト−2(TS−2)、BEA結晶構造を有するチタンβ−ゼオライト、およびゼオライトZSM48の結晶構造を有するチタンシリカライト−48
−フィッシャー・トロプシュ触媒、とりわけCoまたはFeに基づくもの
−Fe−、Ni−、Co−またはCu−に基づく触媒
−固体塩基または酸
−これらの系の混合物
以下の触媒系を用いることがとりわけ好ましい:
−チタンシリカライト−1
−酸化物担体マトリックス、好ましくは高い割合のシリカを有する酸化物中で、元素の周期表の第VIIIB族、好ましくは白金族の金属、とりわけPdを、元素の周期表の第IB族の金属、好ましくはAuと、好ましくは有機酸のアルカリ金属塩、非常に好ましくは酢酸カリウムと、所望によりさらなる促進剤と組み合わせたもの
−酸化物担体マトリックス、好ましくは高い割合のシリカを有する酸化物中で、元素の周期表の第VIIIB族、好ましくは白金族の金属、とりわけPdを、元素の周期表の第IIB族の金属、好ましくはCdと、好ましくは有機酸のアルカリ金属塩、非常に好ましくは酢酸カリウムと、所望によりさらなる促進剤と組み合わせたもの
−Mo、Bi、Fe、Co、Niおよび所望によりさらなる添加物、例えばKなどのアルカリ金属の酸化物の混合物および混合酸化物
−Mo、V、Cu、Wおよび所望によりさらなる添加物、例えば、元素の周期表の第VA族の元素、好ましくはSbおよび/または元素の周期表の第VB族の金属、好ましくはNbの酸化物の混合物および混合酸化物
−好ましくは少なくとも部分的にα相にあるアルミナ上のAgおよび所望によりさらなる添加物、例えば、Csなどのアルカリ金属および/またはReなど元素の周期表の第VIIB族の金属など
−ピロリン酸バナジウムおよび所望によりさらなる添加物
−酸化物担体上の酸化バナジウムおよび所望によりさらなる添加物
−アルミナ上の元素の周期表の第VIIIB族、好ましくは白金族の金属、とりわけPdおよび/またはPt。
【0035】
触媒的に活性な材料は、無機酸化物または熱安定性プラスチックの不活性または支持的マトリックス中に存在することができる。
このマトリックスの好ましい材料は、Si、Al、Ti、Zrの酸化物および/またはその混合物である。
【0036】
各場合において、さらなるドーピング要素および触媒層の生産に通例の他の副成分も存在することができる。そのような材料の例は、とりわけ、アルカリ金属−、アルカリ土類金属−、ハロゲン化物−、リン酸塩−および硫酸塩−化合物である。
【0037】
触媒的に活性な層の厚さはとりわけ均一である、すなわち、該層は、層厚における高い平面性および低い許容差を特徴とする。これは、DIN EN ISO 2360に従った渦流原理を用いた層厚測定において、多くの測定で<35μm、好ましくは<25μmという低い標準偏差が示されることにより立証される。しかしながら、局所的粗さは比較的高度である。この局所的粗さは、間隙幅にわたる臨界滞留時間分布に影響は与えず、ヘッドスペースにおいて少なくとも部分的な乱流をより迅速にもたらすため、ヘッドスペースと触媒層の間の物質輸送が改善される。顕微鏡では、反応体の良好な浸透を確実にするとりわけ開いた表面構造が示される。この開いた細孔構造は、本発明に従って、層表面上に存在し、少なくとも2つの寸法において5μmを超える寸法を有する空洞の開いた、すなわち閉じていない予備形態により形成される。担体方向に向いているこれら開いた構造の内表面は、触媒的に活性な層の内部に延びる細孔を保有し、したがって触媒層内への物質輸送を確実にする。さらに、表面上に生じる開いた構造と触媒層の内部に存在する閉じた空洞との間にマクロ多孔質チャネルを介する個々の接続が存在していてもよく、および/または触媒的に活性な層内の閉じた空洞間の個々の接続が存在していてもよい。
【0038】
局所的粗さは、プローブを用いて記録することができるプロフィログラムで立証され、単位長さあたりの多くの極大、極小およびゼロ交差、ならびに高い粗さ深さを示す。該層はさらに、特に厳密で狭いピークを特徴とする。DIN EN ISO 4287に従ってプローブを用いるトポグラフィーで決定した場合、ゼロ線通過の平均数は、測定した断片の長さが十分であると仮定すると、典型的には1mmあたり>2、好ましくは1mmあたり>2.5、もっとも好ましくは1mmあたり3〜8の範囲にある(Form Talysurf Series 2、Taylor−Hobson Precisionで測定)。ゼロ線通過は、プロフィルと中心線の交点により定義される。プローブにより測定されDIN EN ISO 4287に従って決定される粗さ深さRzは、全体的測定長さ40mm、1回の測定長さ8mmを基準と考えて、>70μm、好ましくは>100μm、もっとも好ましくは>120μmである。
【0039】
例えば公知の噴霧法およびドクターブレード法により得ることができる本発明によらない触媒層は、一般により大きな層厚の変動を示すが、これらは一般に有利な局所的粗さを示さない。一般に層厚の正確な調整を可能にするコーティング法、例えばCVDは、非常に複雑であり、局所的平滑性を伴う構造を示す。
【0040】
表面の粗さは、所望により後処理、例えば研削および研磨により低減することができる。
触媒コーティングを有する本発明に従った担体は、とりわけ簡単で経済的な方法により生産することができる。これも同様に本発明の対象である。
【0041】
該方法は、以下の処置を含む:
a)担体基材を導入し、
b)所望により接着促進剤層を施用し、
c)少なくとも5μm(懸濁液中でのレーザー回折により決定)のメジアン径(D50値)を有する触媒的に活性な材料および/またはその前駆体の粒子と所望により触媒的に活性な層のさらなる構成要素を含有し、少なくとも30重量%の固形分を有する懸濁液を吹き付け、そして
d)所望により段階c)を1回以上繰り返す。
【0042】
該方法は、担体基材上に吹き付けた懸濁液の融合が実質的に妨げられるように実施する。すなわち、接触時の液滴の水分率を、一方では十分に高い粘性により自由な融合が妨げるが、他方では液滴が、下の触媒層に堅固に結合するのに十分な高さの凝集力を有するように、選択する。これは光学顕微鏡で確認することができる;融合した層は平滑な構造を有するが、本発明に従った方法では、ミクロン規模において粗く、オリフィスおよび谷を有する構造が生じる。
【0043】
この条件で、当業者なら、固形分、質量流量、噴霧距離、液滴サイズならびに基材および懸濁液の温度のパラメーターから、そのような噴霧結果を可能にする窓を選択することができる。
【0044】
噴霧中は、過剰噴霧、すなわち、担体のすぐそばまたはコーティングすべきでない担体部分に当たる噴霧材料に起因する材料損失が最小限になるように、噴霧ジェットの良好な焦点合わせを可能にするノズル技術を用いることが好ましい。ここでは、例えば、噴霧コーンを追加的な圧縮空気ノズルにより制限することができるHVLPノズル技術が適している。
【0045】
特定の態様において、担体基材は、コーティング中に高温であるが懸濁媒体の沸点未満にある。水性懸濁液の場合の好ましい温度は30〜80℃である。
他の好ましい態様において、懸濁液の粒子は、スパンDx=(D90−D10)/D50>1.5を有する広い粒径分布を有する。ここで、Dxは、全粒子体積のx%の体積分率を有する最小粒子の体積分における最大粒子の粒径を意味する。
【0046】
他の好ましい態様において、懸濁液の粒子は、例えば微粉砕または破砕により形成するような粗い表面および不規則な形状を有する。
他の好ましい態様では、バインダーを懸濁液に加える。適したバインダーは、無機または有機材料およびそれらの混合物である。
【0047】
詳細には、Al、Si、Ti、Zrの酸化物またはその混合物のゾル、非常に微細な懸濁液または溶液を、無機バインダー材料として用いることができる。さらに好ましい無機バインダーは、<2μmのメジアン粒径(D50値)を有する非常に微細な酸化物、例えば、発熱性酸化物もしくは非常に微細に微粉砕された沈降酸化物などか、ガラス繊維のような機械的架橋剤か、または、特別な針状もしくは棒状微結晶、例えば、ActigelTM208(製造者ITC−Floridin)などである。
【0048】
用いることができる有機バインダー材料は、詳細には、多価アルコール、例えばグリセロール、エチレングリコールまたはポリビニルアルコールなど、PTFE、ポリ酢酸ビニル、セルロース誘導体、例えばメチルセルロースまたはセルロース繊維である。
【0049】
本発明に従った方法の好ましい変法は、所望による部分段階b)、すなわち、5μmを超える直径を有する粒子を含まないナノ粒子材料を含有する第1の懸濁液を、担体の表面上に、最大80μm、好ましくは5〜30μmの厚さを有する第1の接着促進層が形成するような量で吹き付けることを含む。
【0050】
さらなる変法において、本発明に従った方法は、先に定義した段階a)、所望による段階b)、およびc’)少なくとも5μm(懸濁液中でのレーザー回折により決定)のメジアン径(D50値)を有する不活性および/または触媒的な材料の粒子と所望により触媒的に活性な層のさらなる構成要素を含有し、少なくとも30重量%の固形分を有する懸濁液を吹き付け、そしてd’)所望によりc’)を1回以上繰り返し、そして段階e)として、そのような層系の生産後、これに、触媒的に活性な材料および/もしくはその前駆体ならびに/または促進剤材料および/もしくはその前駆体を含浸させることを含む。
【0051】
個々の層または全体的層系もしくはその一部の吹き付け後、層のさらなる処理を行う前に、これらを所望により乾燥および/または焼成することができる。
例えば250〜1200℃の温度での焼成により、有機または他の分解性残留物を除去することができる。前処理は、順序に関しては変動しうるこれら個々の工程の組合わせであることができる。
【0052】
本発明に従った方法に用いられる担体基材は、所望により、コーティング前に、詳細には、触媒でコーティングすべき担体基材表面を機械的、化学的および/または物理的方法により粗化することにより、前処理することができる。この前処理は、担体に施用すべき層のさらに改善した接着をもたらすことができる。これは、とりわけ金属担体に望ましい。したがって、コーティングする担体基材表面は、機械的方法、例えばサンドブラスチングもしくは研削によるか、化学的方法、例えば酸もしくは塩基でのエッチングにより粗化することができる。グリース残留物は、溶媒により除去することができる。
【0053】
吹き付ける触媒懸濁液は、少なくとも1種以上の触媒的に活性な材料またはその前駆体を含有する。
前駆体は、例えば、硝酸塩、シュウ酸塩、炭酸塩、酢酸塩、または熱分解もしくは酸化分解により例えば酸化物に転化することができる他の塩であることができる。
【0054】
触媒的に活性な材料またはその前駆体は、分子、コロイド、結晶質および/または非晶質の形態で存在することができる。実際の触媒材料またはその前駆体は懸濁液中に存在することができ、または後で含浸により施用することができる。
【0055】
pHを確立するために酸または塩基を加えることができる。さらに、有機構成要素、例えば、界面活性剤、バインダーまたは細孔形成剤が存在していてもよい。適した懸濁媒体または溶媒は、とりわけ水である。しかしながら、有機液体を用いることもできる。
【0056】
施用するこの懸濁液は、噴霧または霧吹きにより施用する。コーティングすべきでない部分は、被覆またはマスキングすることができる。
市販の一元または二元ノズルを噴霧に用いることができる。これでは、ジェット誘導を手動または好ましくは自動で達成することができる。自動化された手順では、噴霧する表面の上方においてコンピューター制御下でノズルを動かし、材料の施用および該方法の他のパラメーターを具体的にモニタリングして調整することが望ましい。
【0057】
個々の層の吹き付けはそれ自体が公知の方法で達成することができ、該方法の多くのパラメーターを当業者なら入手することができる。これらの例は、噴霧圧、噴霧距離、噴霧角度、噴霧ノズルまたは固定式噴霧ノズルの場合は基材の前進速度、ノズル径、材料の流量、および噴霧ジェットの形状寸法である。さらに、噴霧する懸濁液の性質、例えば、用いた懸濁液の密度、動力学粘度、表面張力およびゼータ電位は、得られる層の質に影響を与える可能性がある。
【0058】
本発明に従ってコーティングされた担体を生産するためには、段階的な施用を行う。さらに、担体材料を少なくとも第1の懸濁液の吹き付け中、有利にはすべての層の施用中に加熱することは有利であり得る。担体は、用いる溶媒の沸点未満の温度に加熱することが好ましい。
【0059】
各層の施用後、乾燥および焼成のために1または2種の熱処理を行うことができる。施用した層がまだ乾いていない場合、例えば20〜200℃の温度における別個の乾燥か、乾燥と例えば200〜1000℃の温度における焼成の組合わせを行うことができる。乾燥および焼成は、酸化雰囲気、例えば空気中か、不活性雰囲気、例えば窒素中で実施することができる。
【0060】
最初にすべての層を施用した後、層系を乾燥および焼成することも可能である。
触媒的に活性な材料を含有する複数の層を吹き付ける場合、これらは同じ組成を有することができる;この場合、したがって、接着促進剤層を所望により施用した後、つねに同じ懸濁液を用いる。しかしながら、異なる組成を有する触媒的に活性な材料を含有する層、または不活性材料からなるいくつかの層を生産することも可能である。
【0061】
個々の層の施用において、さらなる加工が必要なくなるように、できるだけ平坦で±25μmという低い全体的層厚の許容差を有する層を生産することができると好ましい。しかしながら、施用した層を、例えば、生産した層系の表面を研削することにより、または例えばCNC機を用いて微粉砕することにより、平滑化することも可能である。
【0062】
乾燥または焼成後、所望によりさらなる触媒成分またはその前駆体を含浸により施用することができる。労働安全性および経済性に関する理由により、一般に、そのような含浸はあらゆる最終的な機械的処理後にのみ実施することが望ましい。この目的のために、担体層を、成分を含有する溶液もしくは懸濁液でコーティングするか、前記溶液もしくは懸濁液に浸漬するか、または担体層に噴霧する。含浸後、乾燥および/または焼成を行ってもよい。
【0063】
本発明に従ってコーティングした担体は、非常に広い範囲の反応器、例えば、プレート型または管状反応器に用いることができる。
本発明はさらに、触媒コーティングを有する本発明に従った少なくとも1つの担体を含有する反応器に関する。
【0064】
本発明に従った担体は壁反応器で用いることが好ましく、該反応器にはマイクロリアクターも包含される。本説明の文脈において、マイクロリアクターは、反応空間または反応空間(複数)の流れの方向に対し横方向である少なくとも1つの寸法が10mm未満、好ましくは1mm未満、特に好ましくは0.5mm未満である反応器を意味すると理解する。
【0065】
壁反応器および詳細にはマイクロリアクターは、複数の反応空間、好ましくは互いに平行な複数の反応空間を有する。
反応空間のディメンショニングは、少なくとも1つの寸法が10mm未満の範囲にあるならば、任意であることができる。
【0066】
反応空間は、円形、楕円形、三角形または多角形、詳細には長方形もしくは正方形の横断面を有することができる。横断面の寸法または寸法の一つ、すなわち、少なくとも1つの辺の長さまたは直径もしくは直径の一つが、10mm未満であることが好ましい。
【0067】
とりわけ好ましい態様において、横断面は長方形または円形であり、横断面の寸法の1つのみ、すなわち辺の長さの1つまたは直径が、10mm未満の範囲にある。
反応空間に入れる材料は、それが反応条件下で安定であり、十分な熱の除去を可能にし、反応空間の表面が、触媒的に活性な材料を含有する本発明に従った層系で完全または部分的にコーティングされているならば、任意のものであることができる。
【0068】
したがって、本発明は、とりわけ不均一系触媒気相反応に用いることができる反応器であって、
i)少なくとも1つの寸法が10mm未満である少なくとも1つの反応空間、および
ii)反応空間の表面が、触媒的に活性な材料を含有する先に定義した層系でコーティングまたは部分的にコーティングされている、
を含む前記反応器にも関連する。
【0069】
好ましいマイクロリアクターは、垂直または水平に平行に配置されている多くの空間を有し、該空間が少なくともそれぞれ1つの供給ラインと1つの放出ラインを有するものであり、ここにおいて、該空間は、積み重ねられたプレートまたは層により形成されており、該空間の一部は少なくとも1つの寸法が10mm未満の範囲にある反応空間で、他の空間は熱輸送空間であり、反応空間への供給ラインは少なくとも2個のディストリビューターユニットに接続しており、反応空間からの放出ラインは少なくとも1個の捕集ユニットに接続しており、反応空間と熱輸送空間の間の熱輸送は、共有のプレートにより形成されている少なくとも1つの共有の空間壁により達成される。
【0070】
とりわけ好ましく用いられるこのタイプのマイクロリアクターは、すべての空間に配置されているスペーサー要素を有し、反応空間の内壁上に本発明に従った方法により少なくとも部分的に施用された触媒材料を含有し、自由流れの横断面の円周長さに対する面積の4倍の商として定義される水力直径は、反応空間において4000μm未満、好ましくは1500μm未満、とりわけ好ましくは500μm未満であり、触媒でコーティングした後の2個の隣接するスペーサー要素間の垂直方向の最小距離と反応空間のスリット高さとの比は、800未満10以上、好ましくは450未満、とりわけ好ましくは100未満である。
【0071】
本発明はさらに、有機化合物を反応するための反応器における上記担体の使用に関する。これらは、気相、液相、または超臨界状態を有する相における反応であることができる。
【0072】
反応器は、好ましくは壁反応器、とりわけ好ましくはマイクロリアクターである。
有機化合物の反応は、好ましくは強い発熱または吸熱反応(50kJ/molを超える大きさのΔH)である。
【0073】
反応の例は、酸化およびアンモ酸化反応、例えば:
・オレフィンのエポキシ化、例えば、プロペンからプロペンオキシドまたはエチレンからエチレンオキシドまたは塩化アリルからエピクロロヒドリンへの酸化
・酢酸ビニルを得るための酢酸とエチレンの酸化カップリング
・酢酸を得るためのエタンおよび/またはエテンの酸化
・プロペンからアクロレインへの酸化
・アクリル酸を得るためのプロペンおよび/またはアクロレインの酸化
・アクロレインおよび/またはアクリル酸を得るためのプロパンの酸化
・ギ酸または酢酸を得るためのブタンの酸化
・メタクロレインおよび/またはメタクリル酸を得るためのイソブタンおよび/またはイソブテンの酸化
・無水フタル酸を得るためのキシレンおよび/またはナフタレンの酸化
・無水マレイン酸を得るためのブタンおよび/またはブテンの酸化
・アクリロニトリルを得るためのプロペンのアンモ酸化
・ベンゾニトリルを得るための芳香族のアンモ酸化
である。
【0074】
反応の他の例は、有機化合物の水素化反応、例えば、芳香族炭化水素およびニトロ化合物の水素化ならびに不飽和有機化合物の選択的水素化である。
他の重要な反応は、合成ガスの反応、例えばフィッシャー・トロプシュ反応およびメタノール合成など、または縮合反応、例えばアセトンからイソホロンへの転化である。
【0075】
本発明を、実用的な実施例に関連して以下に記載する:
実施例1:アルミニウム99.5上の壁触媒TS−1
深さ1.0mmおよび幅20mmの溝を、長さ100mm、幅30mmおよび厚さ3mmの3枚のアルミニウム(Al99.5)製プレートのそれぞれ中央に切削した。プレートを室温において硝酸溶液中で30minにわたり酸洗いし、脱イオン水で洗浄してから過酸化水素溶液で不動態化した後、再び脱イオン水で洗浄した。乾燥後、プレートのウェブを接着テープで覆い、乾燥器で50℃に予熱した。
【0076】
それと同時に、粒径分布D10/D50/D90:8.05/41.5/78.4を有する16gのTS−1、20gのシリカゾル、1.8gの水ガラスおよび2.8gの脱イオン水の懸濁液を生産した。すべての物質を混合した後、得られた懸濁液を、分散装置を用いて15000rpmで2minにわたり分散させた。分散後、懸濁液の粒径分布D10/D50/D90:6.6/43.1/77.4が測定された。
【0077】
その後、予熱したアルミニウム製プレートを、この懸濁液で、0.7barの圧力において、噴霧距離を20cmにして複数の工程で吹き付けることによりコーティングした。ノズル径1.8mmを有する二元ノズルを用いた。最初の工程で厚さ20μmの層を施用し;次の工程で厚さ40μmの層をそれぞれ施用した。このようにして、全体的厚さが740μmである触媒層系を18工程で生産した。工程間に、プレートをそれぞれ40℃で4minにわたり乾燥した。最終工程の後、プレートを80℃で12hにわたり乾燥した。
【0078】
1枚のプレートにおいて、このようにして生産した触媒系を接着強度およびトポグラフィーについて調査した。100kPaの垂直接着強度が測定された。粗さについては、29μmの粗さの算術平均値が測定され、全体的層厚の許容差は±16μmであった。
【0079】
図3は、この実施例に従って生産した触媒層系の断面の顕微鏡写真を示している。
このようにして生産した触媒系の空洞の割合は、断面像に見られる断面積の32%である。水銀圧入法を用いて測定した細孔分布は、細孔の95%が>50nmの直径を有し、空洞に関する全体的多孔度が49%であることを示している。
【0080】
その後、他の2枚のプレートを、溝が幅20mmおよび高さ0.52mmのチャネルを形成するように実験用反応器内に据え付けた。プロペン、ガス状過酸化水素および窒素からなる反応ガスをこのチャネルに貫流させて、触媒系の触媒的性質を決定した。この実験は、温度140℃、圧力1.2barで270hの期間にわたり実施した。恒常的なプロペン転化率10%が、過酸化水素の完全転化と相まって達成された。プロペンオキシドに関する選択率は93%であった。
実施例2:ステンレス鋼上の壁触媒Pd/Au/SiO2
深さ1.05mmおよび幅30mmの溝を、長さ400mm、幅40mmおよび厚さ8mmの3枚のステンレス鋼(材料番号1.4571)製プレートのそれぞれ中央に切削した。縁に残っているウェブをアルミニウムのテンプレートで覆い、コーティングする溝にコランダムを3barの圧力で噴射した。テンプレート除去後、プレートを室温において硝酸とフッ化水素酸の溶液中で30minにわたり酸洗いした後、脱イオン水で中性に洗浄した。プレートの乾燥後、プレートのウェブを接着テープで覆い、50℃に予熱した。
【0081】
この触媒系の場合、パラジウム、金およびシリカからなり、粒径分布D10/D50/D90:3.3/22.1/87.2μmを有する37.5gの微粉砕触媒の懸濁液を、31.25gのシリカゾルおよび31.25gの水と混合した後、分散装置を用いて15000rpmで2minにわたり分散させた。分散後の懸濁液の粒径分布は、D10/D50/D90:3.8/17.2/67.0である。
【0082】
予熱したステンレス鋼製プレートを、この懸濁液で、0.8barの圧力において、プレート表面から噴霧ノズルまでの噴霧距離を20cmにして複数の工程で吹き付けることによりコーティングした。ノズル径1.8mmを有する二元ノズルを用いた。最初の工程で厚さ20μmの層を施用し;次の工程でそれぞれ厚さ40μmの層を施用した。このようにして生産した触媒層系は、786μmの全体的厚さを有していた。工程間にプレートを40℃で4minにわたり乾燥した。最終工程の後、プレートを250℃で6hにわたり焼成した。
【0083】
1枚のプレートにおいて、このようにして生産した触媒系を接着強度およびトポグラフィーについて調査した。>100kPaの垂直接着強度が測定された。粗さについては、28μmの粗さの算術平均値が測定され;全体的層厚の許容差は±15μmであった。
【0084】
図4は、この実施例に従って生産した層系の断面の顕微鏡写真を示している。
図5は、この実施例に従って生産した層系の表面のDIN ISO 4287に従ったプロフィログラムを示している(Form Talysurf Series 2、Taylor Hobson Precisionで決定)。横座標はmmでの走査幅を示し、縦座標はμmでの相対的プロフィル深さを示している。
【0085】
水銀圧入法を用いて測定した細孔分布は、細孔の84%が>50nmの直径を有することを示している。空洞に関する全体的多孔度は68%である。
その後、他の2枚のプレートを、溝が高さ0.53mmおよび幅30mmのチャネルを形成するように実験用反応器内に据え付けた。エチレン、酸素および酢酸からなる反応ガスをこのチャネルに通過させて、触媒系の触媒的性質を決定した。この実験は、温度155℃、圧力9barで180hの期間にわたり実施した。
【0086】
1300gのVAM/(触媒1kg・h)の収率が95%を超える選択率で達成された。
実施例3:ステンレス鋼上の混合酸化物触媒
深さ1.05mmおよび幅30mmの溝を、長さ400mm、幅40mmおよび厚さ8mmの3枚のステンレス鋼(材料番号1.4571)製プレートのそれぞれ中央に切削した。縁に残っているウェブをアルミニウムのテンプレートで覆い、コーティングする溝にコランダムを3barの圧力で噴射した。テンプレート除去後、プレートを室温において硝酸とフッ化水素酸の溶液中で30minにわたり酸洗いした後、脱イオン水で中性に洗浄した。プレートの乾燥後、プレートのウェブを接着テープで覆い、50℃に予熱した。
【0087】
この触媒系の場合、EP0900774、実施例1(触媒2の調製)に従った37.5gのアクロレイン触媒、31.25gのシリカゾルおよび31.25gの脱イオン水の懸濁液を調製した後、分散装置(Ultra Turrax)を用いて15000rpmで2minにわたり分散させた。分散後の粒径分布D10/D50/D90は、0.49/13.24/24.98であった。予熱したステンレス鋼製プレートを、このようにして調製した懸濁液で、1.6barの圧力において、噴霧ノズルからプレート表面までの距離を20cmにして複数の工程で吹き付けることによりコーティングした。ノズル径0.8mmを有する二元ノズルを用いた。最初の工程で20μmの層を施用し;次の工程で、それぞれ40μmの層厚を、ノズルにおける材料の流量を増大させることにより施用した。個々の工程間にプレートを50℃で4minにわたり乾燥し;最終工程の後、前記プレートを450℃で8hにわたり焼成した。
【0088】
プレートの冷却後、触媒層を、接着強度、トポグラフィーおよび多孔度について調査した。
>100kPaの垂直接着強度が測定された。25μmの粗さの平均値が、±15μmの層厚の許容差と相まって測定された。水銀圧入法を用いて測定した細孔分布は、細孔の76%が>50nmの直径を有することを示していた。全体的多孔度は57.4%であった。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】空洞を含む層の断面の顕微鏡写真である。
【図2】空洞を含まない層の断面の顕微鏡写真である。
【図3】実施例1に従って生産した触媒層系の断面の顕微鏡写真である。
【図4】実施例2に従って生産した層系の断面の顕微鏡写真である。
【図5】実施例2に従って生産した層系の表面のDIN ISO 4287に従ったプロフィログラムである(Form Talysurf Series 2、Taylor Hobson Precisionで決定)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞を含有する少なくとも1つの多孔質触媒層を含む触媒コーティングを有する担体であって、空洞が、少なくとも2つの寸法において5μmを超える寸法を有するか、少なくとも10μm2の横断面積を有する不規則な空間である、前記担体。
【請求項2】
空洞が、無作為に選択した5つの断面走査型電子顕微鏡写真の触媒層における面積分の算術平均として決定して2〜60%の面積分を占める、請求項1に記載の担体。
【請求項3】
DIN 66133に従った水銀圧入法により決定して、細孔容積の少なくとも50%が、少なくとも50nmの直径を有するマクロ細孔により形成されている、請求項1または2に記載の担体。
【請求項4】
細孔および空洞により形成される触媒層の容積が、該層の全容積に基づき30〜95%である、請求項1〜3のいずれかに記載の担体。
【請求項5】
触媒層の厚さが50〜3000μmであり、層厚の変動が<50μmである、請求項1〜4のいずれかに記載の担体。
【請求項6】
担体基材の表面に直接施用されていて、厚さが好ましくは100nm〜80μmである接着促進層を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の担体。
【請求項7】
接着促進層が、最大80μmの厚さを有し、5μmを超える直径を有する粒子を含有しないナノ粒子材料から構成される、請求項6に記載の担体。
【請求項8】
接着促進層の粒子を構成する材料が無機酸化物および/または熱安定性プラスチックである、請求項6〜7のいずれかに記載の担体。
【請求項9】
担体基材が、触媒層が施用されているシート様くぼみを有するシート様ボディであるか、該シート様ボディがシート様くぼみに加えて溝を有する、請求項1〜8のいずれかに記載の担体。
【請求項10】
異なるまたは同一の材料からなるさらなる多孔質空洞含有層を、第1の多孔質空洞含有触媒層に施用して含有する、請求項1〜9のいずれかに記載の触媒コーティングを有する担体。
【請求項11】
少なくとも1つの多孔質空洞含有触媒層が、触媒的に活性な材料と、不活性バインダーの粒子、好ましくは無機酸化物および/または熱安定性プラスチックを含有する、請求項1〜10のいずれかに記載の担体。
【請求項12】
触媒コーティングが、>1kPa(DIN EN ISO 4624に従って測定)、とりわけ>10kPa、さらに特に>50kPaの接着強度を有する、請求項1〜11のいずれかに記載の担体。
【請求項13】
DIN EN ISO 2360に従った渦流原理を用いた触媒コーティングの厚さの測定が、<35μm、好ましくは<25μmの標準偏差を示す、請求項1〜12のいずれかに記載の担体。
【請求項14】
触媒コーティングの表面が、1mmあたり>2、好ましくは1mmあたり>2.5、もっとも好ましくは1mmあたり3〜8であるゼロ線通過の平均数と、>70μm、好ましくは>100μm、もっとも好ましくは>120μmであるプローブにより測定されDIN EN ISO 4287に従って決定される粗さ深さRzとで表現される高い局所的粗さを示す、請求項1〜13のいずれかに記載の担体。
【請求項15】
少なくとも1つの多孔質空洞含有触媒層が、モレキュラーシーブからなる系列からの触媒、好ましくはチタン含有モレキュラーシーブを含有する、請求項1〜14のいずれかに記載の担体。
【請求項16】
少なくとも1つの多孔質空洞含有触媒層が、酸化物担体マトリックス中で、元素の周期表の第VIIIB族、好ましくは白金族の金属、とりわけPdを、元素の周期表の第IB族の金属、好ましくはAuと、好ましくは有機酸のアルカリ金属塩、非常に好ましくは酢酸カリウムと、所望によりさらなる促進剤と組み合わせたものを含有する、請求項1〜14のいずれかに記載の担体。
【請求項17】
少なくとも1つの多孔質空洞含有触媒層が、酸化物担体マトリックス中で、元素の周期表の第VIIIB族、好ましくは白金族の金属、とりわけPdを、元素の周期表の第IIB族の金属、好ましくはCdと、好ましくは有機酸のアルカリ金属塩、非常に好ましくは酢酸カリウムと、所望によりさらなる促進剤と組み合わせたものを含有する、請求項1〜14のいずれかに記載の担体。
【請求項18】
少なくとも1つの多孔質空洞含有触媒層が、元素Mo、Bi、Fe、CoおよびNiと、所望によりさらなる添加物としてアルカリ金属、とりわけKを含有する、請求項1〜14のいずれかに記載の担体。
【請求項19】
少なくとも1つの多孔質空洞含有触媒層が、元素Mo、V、CuおよびWと、所望によりさらなる添加物として元素の周期表の第VA族の元素、好ましくはSbおよび/または元素の周期表の第VB族の金属、好ましくはNbを含有する、請求項1〜14のいずれかに記載の担体。
【請求項20】
少なくとも1つの多孔質空洞含有触媒層が、酸化物担体マトリックス中に、元素Agと、所望によりさらなる添加物、とりわけCsなどのアルカリ金属および/またはReなど元素の周期表の第VIIB族の金属とを含有する、請求項1〜14のいずれかに記載の担体。
【請求項21】
少なくとも1つの多孔質空洞含有触媒層が、ピロリン酸バナジウムおよび所望によりさらなる添加物を含有するか、酸化物担体上の酸化バナジウムおよび所望によりさらなる添加物を含有する、請求項1〜14のいずれかに記載の担体。
【請求項22】
少なくとも1つの多孔質空洞含有触媒層が、酸化物担体マトリックス中、好ましくはアルミナ上に、元素の周期表の第VIIIB族、好ましくは白金族の金属、とりわけPdおよび/またはPtを含有する、請求項1〜14のいずれかに記載の担体。
【請求項23】
請求項1に記載の触媒コーティングを有する担体の生産方法であって、処置:
a)担体基材を導入し、
b)所望により接着促進剤層を施用し、
c)少なくとも5μm(懸濁液中でのレーザー回折により決定)のメジアン径(D50値)を有する触媒的に活性な材料および/またはその前駆体の粒子と所望により触媒的に活性な層のさらなる構成要素を含有し、少なくとも30重量%の固形分を有する懸濁液を吹き付け、そして
d)所望により段階c)を1回以上繰り返す、
を含む前記方法。
【請求項24】
請求項1に記載の触媒コーティングを有する担体の生産方法であって、処置:
a)担体基材を導入し、
b)所望により接着促進剤層を施用し、
c’)少なくとも5μm(懸濁液中でのレーザー回折により決定)のメジアン径(D50値)を有する不活性および/または触媒的材料の粒子と所望により触媒的に活性な層のさらなる構成要素を含有し、少なくとも30重量%の固形分を有する懸濁液を吹き付け、
d’)所望により段階c’)を1回以上繰り返し、そして
e)層系の生産後、これに、触媒的に活性な材料および/またはその前駆体を含浸させる、
を含む前記方法。
【請求項25】
噴霧において、噴霧コーンが追加的な圧縮空気ノズルにより制限されるノズル技術を用いる、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
担体基材が、コーティング中に高温であるが懸濁媒体の沸点未満にある、請求項23または24に記載の方法。
【請求項27】
粒子がスパンDx=(D90−D10)/D50>1.5の広い粒径分布を有する懸濁液を用いる、請求項23〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
懸濁液が、粗い表面および不規則な形状を有する微粉砕または破砕粒子を含有する、請求項23〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
懸濁液が、バインダー、好ましくは、Al、Si、Ti、Zrの酸化物またはその混合物のゾル、非常に微細な懸濁液または溶液を含有する、請求項23〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
段階b)において、5μmを超える直径を有する粒子を含まないナノ粒子材料を含有する第1の懸濁液を、担体の表面上に、最大80μm、好ましくは5〜30μmの厚さを有する第1の接着促進層が形成するような量で吹き付ける、請求項23〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
用いる担体基材を、コーティング前に、詳細には、触媒でコーティングすべき担体表面を機械的、化学的および/または物理的方法により粗化することにより処理する、請求項23〜30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
個々の層、全体的層系またはその一部の吹き付け後、これらの層を乾燥および/または焼成する、請求項23〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
請求項1に記載の触媒コーティングを有する少なくとも1つの担体を含有する反応器。
【請求項34】
プレート型反応器または管状反応器である、請求項33に記載の反応器。
【請求項35】
触媒コーティングを有するシート様担体を含有し、マイクロリアクターである、請求項33〜34のいずれかに記載の反応器。
【請求項36】
不均一系触媒気相反応に用いることができ、
i)少なくとも1つの寸法が10mm未満である少なくとも1つの反応空間、および
ii)反応空間の表面が、請求項1に記載の触媒的に活性な材料を含有する層系でコーティングまたは部分的にコーティングされている、
を含む、請求項33〜35のいずれかに記載の反応器。
【請求項37】
垂直または水平に平行に配置されている多くの空間を有し、該空間が少なくともそれぞれ1つの供給ラインと1つの放出ラインを有する、請求項35〜36のいずれかに記載の反応器であって、該空間が、積み重ねられたプレートまたは層により形成されており、該空間の一部が、少なくとも1つの寸法が10mm未満の範囲にある反応空間で、他の空間が熱輸送空間であり、反応空間への供給ラインが少なくとも2個のディストリビューターユニットに接続しており、反応空間からの放出ラインが少なくとも1個の捕集ユニットに接続しており、反応空間と熱輸送空間の間の熱輸送が、共有のプレートにより形成されている少なくとも1つの共有の空間壁により達成される、前記反応器。
【請求項38】
すべての空間に配置されているスペーサー要素を有し、請求項1に記載の触媒的に活性な材料を含有する層系を反応空間の内壁上に少なくとも部分的に含有し、自由流れの横断面の円周長さに対する面積の4倍の商として定義される水力直径が、反応空間において4000μm未満、好ましくは1500μm未満、とりわけ好ましくは500μm未満であり、触媒でコーティングした後の2個の隣接するスペーサー要素間の垂直方向の最小距離と反応空間のスリット高さとの比が、800未満10以上、好ましくは450未満、とりわけ好ましくは100未満である、請求項35〜37のいずれかに記載の反応器。
【請求項39】
プロペンからプロペンオキシドへの接触酸化法における請求項1〜22のいずれかに記載の担体の使用。
【請求項40】
酸素を用いて酢酸ビニルを得るための酢酸とエテンの触媒的酸化カップリング法における請求項1〜22のいずれかに記載の担体の使用。
【請求項41】
プロペンからアクロレインおよび/またはアクリル酸への接触酸化法における請求項1〜22のいずれかに記載の担体の使用。
【請求項42】
プロペンおよび/またはアクロレインからアクリル酸への接触酸化法における請求項1〜22のいずれかに記載の担体の使用。
【請求項43】
エテンからエチレンオキシドへの接触酸化法における請求項1〜22のいずれかに記載の担体の使用。
【請求項44】
塩化アリルからエピクロロヒドリンへのへの接触酸化法における請求項1〜22のいずれかに記載の担体の使用。
【請求項45】
キシレンおよび/またはナフタレンからフタル酸(無水物)への接触酸化法における請求項1〜22のいずれかに記載の担体の使用。
【請求項46】
ブタンおよび/またはブテンから無水マレイン酸への接触酸化法における請求項1〜22のいずれかに記載の担体の使用。
【請求項47】
有機化合物の接触水素化法における請求項1〜22のいずれかに記載の担体の使用。
【請求項48】
合成ガスの反応法における請求項1〜22のいずれかに記載の担体の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2008−538323(P2008−538323A)
【公表日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506985(P2008−506985)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【国際出願番号】PCT/EP2006/003502
【国際公開番号】WO2006/111340
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(504378582)ウーデ・ゲーエムベーハー (10)
【出願人】(507348436)エヴォニク・デグッサ・ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】