説明

計測器及び計測システム

【課題】常にアナログ−デジタル変換部の性能を最大に使い切るように、増幅部が電気信号を増幅するように設定することできる計測器と計測システムを提供する。
【解決手段】受光部11と、増幅部12と、アナログ−デジタル変換部13と、演算部14と、増幅率算出部15とを有し、受光部は、受光する光強度に応じて電気信号を生成し、増幅部は、受光部から電気信号を入力され、外部から設定可能な所定の増幅率に応じて電気信号を増幅し、アナログ−デジタル変換部は、増幅部で増幅されたアナログの電気信号をデジタル信号に変換し、演算部は、デジタル信号を入力され、デジタル信号に対して所定の信号処理を行い、増幅率算出部は、増幅部において設定するべき増幅率をデジタル信号に応じて算出し、増幅率算出部で算出された増幅率が増幅部に入力されて増幅部の増幅率として設定される構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を受光して光の強度を計測する計測器に関する。また、本発明は、発光部、発光部からの光が通される光ファイバセンサ、及び光ファイバセンサからの光を受光して光の強度を計測する計測器を有する計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、光ファイバに接続されたセンサ部に光を照射し、センサ部を通過した光を受光して光強度を計測する計測システムの模式構成図である。
【0003】
例えば、発光部1は、不図示の電源に接続されたドライブ回路2及びLED(発光ダイオード)またはLD(レーザダイオード)などの光源3を有する。
ドライブ回路2の駆動により、光源3から光が発せられる。
【0004】
光ファイバ(20a,20b)は、中途部にセンサ部SPが設けられている。光センサ(20a,20b)の光入射端及び光出射端に、それぞれ光ファイバコネクタ(23a,23b)が設けられている。
【0005】
発光部1の光源3からの光は、光ファイバコネクタ23aを介して光ファイバ20aへ入射され、センサ部SPを通過して光ファイバ20bを介して光ファイバコネクタ23bから外部へ出射される。
【0006】
計測器100は、受光する光強度に応じて電気信号を生成するフォトダイオードなどの受光部101と、受光部101から電気信号を入力され、所定の増幅率に応じて電気信号を増幅するプリアンプ(増幅部)102と、プリアンプ102で増幅されたアナログの電気信号をデジタル信号に変換するADコンバータ(デジタル−アナログ変換部)103と、デジタル信号を入力され、デジタル信号に対して所定の信号処理を行い、外部に出力する演算部104とを有する。
【0007】
光ファイバコネクタ23bから外部へ出射された光は、受光部101で受光される。受光部101において、受光された光の強度に応じて電気信号が生成され、プリアンプ102へ出力される。
【0008】
受光部101で生成された電気信号はプリアンプ102に入力され、設定された増幅率で増幅されてADコンバータ103へ出力される。
【0009】
プリアンプ102で増幅された電気信号はアナログ信号であり、ADコンバータ103に入力されてアナログ信号からデジタル信号に変換され、演算部104に出力される。
【0010】
ADコンバータ103で得られたデジタル信号は演算部104に入力されて所定の信号処理が行われ、端子Tなどから外部に出力される。
【0011】
ここで、上記のプリアンプ102における電気信号の増幅率は、ある値に固定されているか、もしくは、外部から手動で調節することが可能となっている。
【0012】
上記のセンサ部SPとしては、例えば特許文献1および特許文献2に記載されている、いわゆるヘテロコアを用いることができる。
ヘテロコア型のセンサ部はとしては、例えば、測定対象物の変位に応じてセンサ部近傍の光ファイバの曲率が変化し、光ファイバを伝導される光の伝送損失が変化するように設けられ、曲率を検知することで測定対象物の変位を測定する曲率検知型と、センサ部外周に存在する物質の屈折率を検知し、センサ部外周における液体の有無などを測定する液体検知型などの異なる種類のセンサ部が知られている。
【0013】
例えば、光ファイバにより伝送される光がヘテロコアからなるセンサ部を通過する際に、上記のセンサ部近傍の光ファイバの曲率やセンサ部外周における液体の有無などに応じて伝送する光の強度に変化が生じる。即ち、光にセンサ信号が乗せられる。強度に変化が生じた光が受光部で受光されることで、伝送された光の強度変化が検知され、センサ部近傍の光ファイバの曲率やセンサ部外周における液体の有無などが識別される。
【0014】
例えば、ヘテロコアからなるセンサ部で生じる損失の変化は、電圧として監視される。例えば、ヘテロコア部で3dBの損失が生じた場合は、4Vであった電圧が2V(半分)になる。
【0015】
上記の構成において、光ファイバ20bの出力端部から出射される光が受光部101で受光されて生成される電気信号は、比較的微弱なため、上述のようにプリアンプによって増幅することが一般的に行われている。
【特許文献1】国際公開97/48994号パンフレット
【特許文献2】特開2003−214906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記の計測システムにおいて、ドライブ回路内の抵抗値の変動などによるドライブ回路の個体差、光源自体の個体差、及び、環境温度の変動などによる抵抗値の変動などが存在する。このため、ドライブ回路によって駆動されるLED及びLDなどの光源から出力される光の強度は、計測システムを構築するたびに、または、同一の計測システムであっても電源を入れるたびに、若干変動してしまう。
【0017】
さらに、光ファイバと光ファイバコネクタとが接続される箇所は、同じ接続箇所であっても、光ファイバと光ファイバコネクタと接続しなおすたびに、接続損失が若干変動する。
【0018】
さらに、ヘテロコア型のセンサ部自体にも個体差があり、センサ部毎に挿入損失が若干異なる。また、曲率検知型と液体検知型などの異なる種類のへテロコア型のセンサ部を接続した場合は、挿入損失が大きく異なってしまう。
【0019】
以上の理由から、受光部に入射される光の強度は、計測システムを構築するたびに、同一の計測システムであっても電源を入れるたびに、あるいは、光ファイバと光ファイバコネクタと接続しなおすたびに、若干変動してしまう。
【0020】
このため、プリアンプで増幅された得られた電圧がADコンバータの入力電圧のフルスケールに達しない場合があり、このときはADコンバータの性能を最大に使いきれないことになる。あるいは、ADコンバータの入力電圧を超えてしまう場合があり、正常な数値が得られなくなってしまう。また、外部入力手段Cが設けられている場合には、プリアンプの増幅率を手動にて調節する場合もあるが、これは煩雑な手順であるので省略することが望まれている。
【0021】
解決しようとする問題点は、個体差や環境差などのために受光部に入射される光の強度が変わってしまうことから、常にADコンバータの性能を最大に使い切るように、プリアンプが電気信号を増幅するように設定することが困難であったという点である。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の計測器は、受光する光強度に応じて電気信号を生成する受光部と、前記受光部から前記電気信号を入力され、外部から設定可能な所定の増幅率に応じて前記電気信号を増幅する増幅部と、前記増幅部で増幅されたアナログの前記電気信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換部と、前記デジタル信号を入力され、前記デジタル信号に対して所定の信号処理を行う演算部と、前記増幅部において設定するべき増幅率を前記デジタル信号に応じて算出する増幅率算出部とを有し、前記増幅率算出部で算出された前記増幅率が前記増幅部に入力されて前記増幅部の増幅率として設定される。
【0023】
上記の本発明の計測器は、受光部と、増幅部と、アナログ−デジタル変換部と、演算部と、増幅率算出部とを有する。
受光部は、受光する光強度に応じて電気信号を生成する。
増幅部は、受光部から電気信号を入力され、外部から設定可能な所定の増幅率に応じて電気信号を増幅する。
アナログ−デジタル変換部は、増幅部で増幅されたアナログの電気信号をデジタル信号に変換する。
演算部は、デジタル信号を入力され、デジタル信号に対して所定の信号処理を行う。
増幅率算出部は、増幅部において設定するべき増幅率をデジタル信号に応じて算出する。
また、増幅率算出部で算出された増幅率が増幅部に入力されて増幅部の増幅率として設定される。
【0024】
上記の本発明の計測器は、好適には、前記増幅率算出部においては、前記増幅部で増幅された前記電気信号が前記アナログ−デジタル変換部の入力可能範囲に見合う値となるように、前記増幅率が算出される。
【0025】
上記の本発明の計測器は、好適には、前記増幅率算出部で算出されたデジタルの増幅率をアナログ数値に変換して前記増幅部に入力するデジタル−アナログ変換部をさらに有する。
【0026】
上記の本発明の計測器は、好適には、前記計測器の電源投入時に、前記増幅部において設定するべき増幅率が前記増幅率算出部において算出され、前記増幅部に入力されて前記増幅部の増幅率として設定される。
【0027】
上記の本発明の計測器は、好適には、光の受光の開始時に、前記増幅部において設定するべき増幅率が前記増幅率算出部において算出され、前記増幅部に入力されて前記増幅部の増幅率として設定される。
【0028】
上記の本発明の計測器は、好適には、押圧されたときに増幅率算出設定開始信号を前記演算部に出力するボタンをさらに有し、前記増幅率算出設定開始信号が前記演算部に入力された時に、前記増幅部において設定するべき増幅率が前記増幅率算出部において算出され、前記増幅部に入力されて前記増幅部の増幅率として設定される。
【0029】
また、本発明の計測システムは、発光部と、コアおよびコアの外周に積層されたクラッドを備え、中途部にセンサ部を有する光ファイバと、計測器を有し、前記計測器は受光する光強度に応じて電気信号を生成する受光部と、前記受光部から前記電気信号を入力され、外部から設定可能な所定の増幅率に応じて前記電気信号を増幅する増幅部と、前記増幅部で増幅されたアナログの前記電気信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換部と、前記デジタル信号を入力され、前記デジタル信号に対して所定の信号処理を行う演算部と、前記増幅部において設定するべき増幅率を前記デジタル信号に応じて算出する増幅率算出部とを有し、前記増幅率算出部で算出された前記増幅率が前記増幅部に入力されて前記増幅部の増幅率として設定される。
【0030】
上記の本発明の計測システムは、発光部と、コアおよびコアの外周に積層されたクラッドを備え、中途部にセンサ部を有する光ファイバと、計測器を有する。
ここで、計測器は、上記の本発明の計測器である。
【0031】
上記の本発明の計測システムは、好適には、複数個の前記センサ部が1本の前記光ファイバ上に直列に接続されている。
【0032】
上記の本発明の計測システムは、好適には、前記センサ部が、伝送する光の一部の外界との相互作用を可能にする光透過部材を有する。
【0033】
上記の本発明の計測システムは、好適には、前記光透過部材は、前記光ファイバのコア径と異なるコア径を有するヘテロコア部である。
【0034】
上記の本発明の計測システムは、好適には、前記光透過部材は、前記光ファイバのコアの屈折率あるいはクラッドの屈折率と同等の屈折率を持つ光透過部材である。
【発明の効果】
【0035】
本発明の計測器は、受光部からの電気信号を所定の増幅率で増幅し、デジタル信号に変換し、得られたデジタル信号から、設定すべき増幅率を算出して、改めて増幅部の増幅率を設定しなおすので、個体差や環境差などのために受光部に入射される光の強度が変わってしまっても、常にアナログ−デジタル変換部の性能を最大に使い切るように、増幅部が電気信号を増幅するように設定することできる。
【0036】
本発明の計測システムは、上記の本発明の計測器を組み込んで計測システムを構成しており、個体差や環境差などのために受光部に入射される光の強度が変わってしまっても、常にアナログ−デジタル変換部の性能を最大に使い切るように、増幅部が電気信号を増幅するように設定することできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に、本発明の計測器及びそれを用いた計測システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0038】
第1実施形態
図1は、本実施形態に係る計測器の模式構成図である。
計測器10は、例えば、受光部11と、プリアンプ(増幅部)12と、ADコンバータ(アナログ−デジタル変換部)13と、演算部14と、増幅率算出部15と、DAコンバータ(デジタル−アナログ変換部)16とを有する。
【0039】
受光部11は、例えば、受光する光強度に応じて電気信号を生成し、フォトダイオードなどからなる。
プリアンプ12は、例えば、受光部11から電気信号を入力され、外部から設定可能な所定の増幅率に応じて電気信号を増幅する。
ADコンバータ13は、例えば、プリアンプ12で増幅されたアナログの電気信号をデジタル信号に変換する。
演算部14は、例えば、デジタル信号を入力され、デジタル信号に対して所定の信号処理を行う。
【0040】
増幅率算出部15は、例えば、プリアンプ12において設定するべき増幅率を、上記のデジタル信号に応じて算出する。
例えば、増幅率算出部15においては、プリアンプ12で増幅された電気信号がADコンバータ13の入力可能範囲に見合う値となるように、さらにはプリアンプ12で増幅されて得られた電圧がADコンバータ13の入力電圧のフルスケール相当となるように、増幅率が算出される。
【0041】
DAコンバータ16は、例えば、増幅率算出部15で算出されたデジタルの増幅率をアナログ数値に変換して、プリアンプ12に入力する。
【0042】
上記のようにして増幅率算出部で算出された増幅率が増幅部に入力されて増幅部の増幅率として設定される。
【0043】
本実施形態の計測器の動作について説明する。
まず、例えば、外部からの光が受光部11で受光されると、受光部11において、受光された光の強度に応じて電気信号が生成され、プリアンプ12へ出力される。
【0044】
次に、例えば、受光部11で生成された電気信号はプリアンプ12に入力され、所定の増幅率で増幅されてADコンバータ13へ出力される。
【0045】
次に、例えば、プリアンプ12で増幅された電気信号はアナログ信号であり、ADコンバータ13に入力されてアナログ信号からデジタル信号に変換され、演算部14に出力される。
【0046】
次に、例えば、ADコンバータ13で得られたデジタル信号は演算部14に入力される。
一方、例えば、ADコンバータ13で得られたデジタル信号は、演算部14を介して増幅率算出部15に入力される。増幅率算出部15では、プリアンプ12において設定するべき増幅率が、入力されたデジタル信号に応じて算出される。
例えば、プリアンプ12で増幅された電気信号がADコンバータ13の入力可能範囲に見合う値となるように、さらにはプリアンプ12で増幅されて得られた電圧がADコンバータ13の入力電圧のフルスケール相当となるように、増幅率が算出される。
【0047】
次に、例えば、増幅率算出部15で算出されたデジタルの増幅率は、DAコンバータ16においてアナログ数値に変換され、プリアンプ12に入力される。
【0048】
上記のようにして増幅率算出部15で算出された増幅率がプリアンプ12に入力されてプリアンプ12の増幅率として設定される。
プリアンプ12での以降の増幅は、新たに設定された増幅率によりなされる。
【0049】
上記のように増幅率が設定された後で、ADコンバータ13からのデジタル信号に対して演算部14において所定の信号処理が行われ、端子Tなどから外部に出力される。
【0050】
本実施形態の計測器において、増幅率算出部15における増幅率の算出とプリアンプ12での設定は、例えば、計測器の電源投入時に、プリアンプ12において設定するべき増幅率が増幅率算出部15において算出され、プリアンプ12に入力されてプリアンプ12の増幅率として設定される。
【0051】
あるいは、例えば、受光部11での光の受光の開始時に、プリアンプ12において設定するべき増幅率が増幅率算出部15において算出され、プリアンプ12に入力されてプリアンプ12の増幅率として設定される。
【0052】
あるいは、例えば、押圧されたときに増幅率算出設定開始信号を演算部14に出力するボタンBをさらに有しており、ボタンBの入力によって増幅率算出設定開始信号が演算部14に入力された時に、プリアンプ12において設定するべき増幅率が増幅率算出部15において算出され、プリアンプ12に入力されてプリアンプ12の増幅率として設定される。
【0053】
増幅率の設定が上記の一回の算出工程で十分な値とならなかった場合には、上記の設定するべき増幅率を増幅率算出部15において算出する工程を複数回繰り返して、プリアンプ12で増幅された電気信号がADコンバータ13の入力可能範囲に見合う値となるまで、増幅率の算出が行われるようにしてもよい。
【0054】
本実施形態の計測器は、受光部からの電気信号を所定の増幅率で増幅し、デジタル信号に変換し、得られたデジタル信号から、設定すべき増幅率を算出して、改めて増幅部の増幅率を設定しなおすので、個体差や環境差などのために受光部に入射される光の強度が変わってしまっても、常にアナログ−デジタル変換部の性能を最大に使い切るように、増幅部が電気信号を増幅するように設定することできる。
【0055】
本実施形態の計測器によれば、自動的に、ADコンバータの性能を最大に使い切ることができるようになる。または、ADコンバータの性能が最大に使い切ることができるようになっていたプリアンプの増幅率調整という煩雑な作業を行わなくてよくなる。
【0056】
従来例に係る計測器では、計測器の電源投入毎や、センサ接続毎に受光量(電圧)が変わるため、今までは電圧がフルスケールに達していない場合にはADコンバータの性能を最大に使いきれない、または、ADコンバータの入力電圧を超えてしまう場合があり、場合によっては、プリアンプの増幅率に対して手動で調節する場合もあり、操作が煩雑となっていた。
本実施形態の計測器では、自動的にプリアンプの増幅率を調整するため、ADコンバータの性能を最大に使い切ることができるようになり、使いやすい。
【0057】
例えば、本実施形態に係る計測器において、演算部14と増幅率算出部15は、コンピュータなどにおける一体化された演算部上に実現されてもよい。
【0058】
第2実施形態
図2は、本実施形態に係る計測システムの模式構成図である。
本実施形態に係る計測システムは、光ファイバに接続されたセンサ部に光を照射し、センサ部を通過した光を受光して光強度を計測するシステムであり、例えば、発光部1と、コアおよびコアの外周に積層されたクラッドを備え、中途部にセンサ部SPを有する光ファイバ(20a,20b)と、計測器10を有する。
【0059】
例えば、発光部1は、不図示の電源に接続されたドライブ回路2及びLED(発光ダイオード)またはLD(レーザダイオード)などの光源3を有する。
ドライブ回路2の駆動により、光源3から光が発せられる。
【0060】
光ファイバ(20a,20b)は、中途部にセンサ部SPが設けられている。光ファイバ(20a,20b)の光入射端及び光出射端に、それぞれ光ファイバコネクタ(23a,23b)が設けられている。
【0061】
発光部1の光源3からの光は、光ファイバコネクタ23aを介して光ファイバ20aへ入射され、センサ部SPを通過して光ファイバ20bを介して光ファイバコネクタ23bから外部へ出射される。
【0062】
光ファイバコネクタ23bを介して光ファイバ20bの出射端から外部に出射された光は、計測器10の受光部11で受光される。
計測器10の構成は、上記の通りであり、例えば、光ファイバにより伝送される光がセンサ部を通過する際に、光にセンサ信号が乗せられ、これが計測器10で計測される。
【0063】
図3(a)は、本実施形態のセンサ部SPの一例を示す、センサ部近傍での斜視図であり、図3(b)はセンサ部近傍での長手方向の断面図である。
図3(a)および(b)に示すように、伝送する光の一部の外界との相互作用を可能にする光透過部材であるセンサ部SPは、光ファイバ(20a,20b)のコア径と異なるコア径を有するヘテロコア部30であり、コア31と、その外周部に積層されたクラッド32とを有する。
【0064】
光ファイバ(20a,20b)としては、例えば、コア径9μm程度のシングルモードファイバ、あるいは例えばコア径50μm程度のマルチモードファイバなどを用いることができる。
【0065】
ヘテロコア部30におけるコア31の径blは、光ファイバ(20a,20b)のコア21の径alより十分に小さく、例えばal=9μm、bl=5μmある。また、ヘテロコア部30の長さclは1mm〜数cmであり、例えば1mm程度である。
【0066】
光ファイバ(20a,20b)とセンサ部SPを構成するヘテロコア部30は、長手方向に直交する界面40でコア同士が接合するように同軸に、例えば汎用化されている放電による融着などにより、接合されている。
【0067】
図3(a)および(b)に示す光ファイバ(20a,20b)の中途部にヘテロコア型のセンサ部SPが接合されてなる構成において、ヘテロコア部30におけるコア31の径blと光ファイバ(20a,20b)のコア21の径alとが界面40で異なっており、このコア径の差に起因して光の一部のヘテロコア部30のクラッド32へのリークWが発生する。
【0068】
例えば、リークWが小さくなるようにコア21とコア31の径の組み合わせを設定すると、大部分の光は再びコア21に入射し、伝送される。コア21とコア31の径の組み合わせによっては、リークWが大きくなり、伝送するセンサ光のロスも大きくなる。リークWが小さくなれば、ロスも小さくなる。
ヘテロコア型のセンサ部において、リークWの大きさ、即ちセンサ光のロス量は、センサ部近傍の光ファイバの屈曲の変化により鋭敏に変化する。
上記のような構成のセンサ部とすることで、例えば、測定対象物の変位に応じてセンサ部近傍の光ファイバの曲率が変化し、光ファイバを伝導される光の伝送損失が変化するように設けられ、曲率を検知することで測定対象物の変位を測定する計測システムとすることができる。
【0069】
あるいは、例えば、上記のセンサ部SPにおいて、ヘテロコア部30におけるコア31の径blと光ファイバ(20a,20b)のコア21の径alとが界面40で異なっており、このコア径の差に起因して光の一部がヘテロコア部30のクラッド32にリーク光Wとしてリークし、クラッド32と外界との境界においてエバネッセント波を発生させ、これを外界に作用させることができる。エバネッセント波は、第1媒質中の光が第2媒質との境界で全反射したときなどに第2媒質中に生じる光波のように、境界面からの距離とともに指数関数的に減衰するエバネッセント(Evanescent:次第に消える)な波であり、実質的にエネルギーを持たない光波のことである。エバネッセント波により外界との相互作用を受けた光は、再び光ファイバのコア21に入射し、伝送される。
上記のような構成のセンサ部とすることで、例えば、センサ部外周に存在する物質の屈折率を検知し、センサ部外周における液体の有無などを測定する計測システムとすることができる。
【0070】
センサ部SPとしては、上記に記載の構成以外の構成を採用することも可能である。
図4(a)及び(b)は、本実施形態に係る計測システムの他の例に係るセンサ部SP近傍の長手方向の断面図である。
図4(a)では、センサ部SPを構成する光透過部材であるヘテロコア部30のコア31の径blが、光ファイバ(20a,20b)のコア21の径alよりも大きな構成となっている。
図4(b)では、センサ部SPとして、光ファイバ(20a,20b)のコア21の屈折率あるいはクラッド22の屈折率と同等の屈折率を持つ材料からなる、ヘテロコア部ではない光透過部材30aが光ファイバ(20a,20b)の中途部に接合されてなる構成となっている。
【0071】
本実施形態の計測システムは、第1実施形態に係る計測器を組み込んで計測システムを構成しており、個体差や環境差などのために受光部に入射される光の強度が変わってしまっても、常にアナログ−デジタル変換部の性能を最大に使い切るように、増幅部が電気信号を増幅するように設定することできる。
【0072】
第3実施形態
図5は、本実施形態に係る計測システムの模式構成図である。
本実施形態においては、複数個のセンサ部が1本の光ファイバ上に直列に接続されている。図面上3個のセンサ部(SP,SP,SP)が光ファイバ(20a,20b,20c,20d・・・20x)上に直列に接続されているが、これに限らず、4個以上のセンサ部を接続してもよい。
【0073】
本実施形態の計測システムは、第1実施形態に係る計測器を組み込んで計測システムを構成しており、個体差や環境差などのために受光部に入射される光の強度が変わってしまっても、常にアナログ−デジタル変換部の性能を最大に使い切るように、増幅部が電気信号を増幅するように設定することできる。
特に、複数個のセンサ部を接続した光ファイバは損失の総計が大きくなっており、このような光ファイバとセンサ部を1個のみ接続した光ファイバを適宜交換しながら計測するような場合でも、光ファイバを交換するごとに、自動的に、常にアナログ−デジタル変換部の性能を最大に使い切るように、増幅部が電気信号を増幅するように設定することできる。
【0074】
本発明は上記の説明に限定されない。
例えば、計測器を構成するDAコンバータは、デジタル入力可能な増幅器を用いている場合には、不要である。
また、演算部と増幅率算出部は、コンピュータなどにおける一体化された演算部上に実現されてもよい。
また、センサ部を直列に接続する個数に特に限定はない。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の計測器及びこれを用いた計測システムは、ヘテロコア型センサ部を用いるための計測器及び計測システムに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は第1実施形態に係る計測器の模式構成図である。
【図2】図2は第2実施形態に係る計測器の模式構成図である。
【図3】図3(a)は第2実施形態のセンサ部SPの一例を示す、センサ部近傍での斜視図であり、図3(b)はセンサ部近傍での長手方向の断面図である。
【図4】図4(a)及び(b)は第2実施形態に係る計測システムの他の例に係るセンサ部SP近傍の長手方向の断面図である。
【図5】図5は第3実施形態に係る計測システムの模式構成図である。
【図6】図6は従来零例に係る計測システムの模式構成図である。
【符号の説明】
【0077】
1…発光部
2…ドライブ回路
3…光源
10…計測器
11…受光部
12…プリアンプ
13…ADコンバータ
14…演算部
15…増幅率算出部
16…DAコンバータ
20a,20b,20c,・・20x…光ファイバ
21,31…コア
22,32…クラッド
23a,23b…光ファイバコネクタ
30…ヘテロコア部
30a…光透過部材
40…界面
B…ボタン
SP,SP,SP,SP…センサ部
T…端子
W…リーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光する光強度に応じて電気信号を生成する受光部と、
前記受光部から前記電気信号を入力され、外部から設定可能な所定の増幅率に応じて前記電気信号を増幅する増幅部と、
前記増幅部で増幅されたアナログの前記電気信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換部と、
前記デジタル信号を入力され、前記デジタル信号に対して所定の信号処理を行う演算部と、
前記増幅部において設定するべき増幅率を前記デジタル信号に応じて算出する増幅率算出部とを有し、
前記増幅率算出部で算出された前記増幅率が前記増幅部に入力されて前記増幅部の増幅率として設定される
計測器。
【請求項2】
前記増幅率算出部においては、前記増幅部で増幅された前記電気信号が前記アナログ−デジタル変換部の入力可能範囲に見合う値となるように、前記増幅率が算出される
請求項1に記載の計測器。
【請求項3】
前記増幅率算出部で算出されたデジタルの増幅率をアナログ数値に変換して前記増幅部に入力するデジタル−アナログ変換部をさらに有する
請求項1または2に記載の計測器。
【請求項4】
前記計測器の電源投入時に、前記増幅部において設定するべき増幅率が前記増幅率算出部において算出され、前記増幅部に入力されて前記増幅部の増幅率として設定される
請求項1〜3のいずれかに記載の計測器。
【請求項5】
光の受光の開始時に、前記増幅部において設定するべき増幅率が前記増幅率算出部において算出され、前記増幅部に入力されて前記増幅部の増幅率として設定される
請求項1〜3のいずれかに記載の計測器。
【請求項6】
押圧されたときに増幅率算出設定開始信号を前記演算部に出力するボタンをさらに有し、
前記増幅率算出設定開始信号が前記演算部に入力された時に、前記増幅部において設定するべき増幅率が前記増幅率算出部において算出され、前記増幅部に入力されて前記増幅部の増幅率として設定される
請求項1〜3のいずれかに記載の計測器。
【請求項7】
発光部と、
コアおよびコアの外周に積層されたクラッドを備え、中途部にセンサ部を有する光ファイバと、
計測器を有し、
前記計測器は、
受光する光強度に応じて電気信号を生成する受光部と、
前記受光部から前記電気信号を入力され、外部から設定可能な所定の増幅率に応じて前記電気信号を増幅する増幅部と、
前記増幅部で増幅されたアナログの前記電気信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換部と、
前記デジタル信号を入力され、前記デジタル信号に対して所定の信号処理を行う演算部と、
前記増幅部において設定するべき増幅率を前記デジタル信号に応じて算出する増幅率算出部とを有し、
前記増幅率算出部で算出された前記増幅率が前記増幅部に入力されて前記増幅部の増幅率として設定される
計測システム。
【請求項8】
複数個の前記センサ部が1本の前記光ファイバ上に直列に接続されている
請求項7に記載の計測システム。
【請求項9】
前記センサ部が、伝送する光の一部の外界との相互作用を可能にする光透過部材を有する
請求項7または8に記載の計測システム。
【請求項10】
前記光透過部材は、前記光ファイバのコア径と異なるコア径を有するヘテロコア部である
請求項9に記載の計測システム。
【請求項11】
前記光透過部材は、前記光ファイバのコアの屈折率あるいはクラッドの屈折率と同等の屈折率を持つ光透過部材である
請求項9に記載の計測システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−169592(P2011−169592A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142996(P2008−142996)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(598123138)学校法人 創価大学 (49)
【Fターム(参考)】