計測方法及び計測装置
【課題】非球面を含む被検面の計測に有利な技術を提供する。
【解決手段】非球面を含む被検面を照明する第1の光学系と前記被検面からの光を検出面を有する検出部に導く第2の光学系と、既知の非球面形状を有する基準面を前記検出面と共役な面に配置し、前記基準面からの光が前記検出面に入射する角度を前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて前記検出部で検出する第1のステップと、前記被検面を前記共役な面に配置し、前記被検面からの光が前記検出面に入射する角度を前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて前記検出部で検出する第2のステップと、前記第1のステップで検出された角度と前記第2のステップで検出された角度との角度差により、前記被検面の面形状と前記既知の非球面形状との差分形状を求め、前記既知の非球面形状に前記差分形状を加えることで前記被検面の面形状を算出する計測方法を提供する。
【解決手段】非球面を含む被検面を照明する第1の光学系と前記被検面からの光を検出面を有する検出部に導く第2の光学系と、既知の非球面形状を有する基準面を前記検出面と共役な面に配置し、前記基準面からの光が前記検出面に入射する角度を前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて前記検出部で検出する第1のステップと、前記被検面を前記共役な面に配置し、前記被検面からの光が前記検出面に入射する角度を前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて前記検出部で検出する第2のステップと、前記第1のステップで検出された角度と前記第2のステップで検出された角度との角度差により、前記被検面の面形状と前記既知の非球面形状との差分形状を求め、前記既知の非球面形状に前記差分形状を加えることで前記被検面の面形状を算出する計測方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非球面を含む被検面の面形状を計測する計測方法及び計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非球面レンズなどの被検面の形状(面形状)を非接触で計測する技術として、ヌルレンズを用いた干渉計(例えば、フィゾー干渉計など)を利用する方法が知られている。かかる方法では、被検面の設計形状に対応した波面(ヌル波面)を有する光をヌルレンズによって形成し、その光の被検面からの反射光(計測光)と参照光とを干渉させ、計測光の波面と参照光の波面との差を計測することで被検面の形状を求めている。なお、被検面の形状を高精度に求めるためには、計測系誤差(干渉計に起因する誤差)の校正を十分な精度で行う必要があり、例えば、ヌル波面の校正、ディストーションの校正、倍率の校正などに関連する技術が幾つか提案されている(特許文献1乃至3参照)。
【0003】
また、ヌルレンズを用いることなく被検面の形状を計測する方法として、検出部に計測波面のダイナミックレンジが大きいシャック・ハルトマンセンサを用いた方法も知られている(非特許文献1参照)。かかる方法では、投光光学系を介して、被検面に球面波の光を照射している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−221029号公報
【特許文献2】特開2000−97663号公報
【特許文献3】特開平10−281736号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Optical Fabrication AND Testing, OSA Technical Digest (Optical Society of America, 2000), paper OTuC5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ヌルレンズを用いた方法では、計測精度がヌルレンズの製作精度に依存するため、高い計測精度を実現するためには、ヌルレンズの製作に多大な時間と費用が必要となる。また、被検面の形状ごとに異なるヌルレンズを用意しなければならないことや計測系誤差の校正が複雑になることなどの問題もある。
【0007】
一方、ヌルレンズを用いない方法では、投光光学系にアライメントエラーや収差などの計測系誤差が存在するため、被検面からの反射光(計測光)を検出部で検出したとしても、被検面の形状誤差と計測系誤差とを分離することが困難である。また、被検面が非球面である場合には、被検面に対して光が垂直に照射されず、入射光線角度と反射光線角度とが異なる。従って、計測光が検出部で略平行光にならず(即ち、計測光の位置倍率及び角度倍率が一定ではないため)、平面波面から大きくずれた波面として検出され、計測精度が低下することになる。
【0008】
そこで、本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、非球面を含む被検面の計測に有利な技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての計測方法は、光源からの光を用いて非球面を含む被検面を照明する第1の光学系と、前記被検面からの光を検出面を有する検出部に導く第2の光学系とを備えた計測装置を用いて、前記被検面の面形状を計測する計測方法であって、既知の非球面形状を有する基準面を前記検出面と共役な面に配置し、前記基準面からの光が前記検出面に入射する角度を前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて前記検出部で検出する第1のステップと、前記被検面を前記共役な面に配置し、前記被検面からの光が前記検出面に入射する角度を前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて前記検出部で検出する第2のステップと、座標変換テーブルを用いて、前記被検面からの光が前記検出面に入射した位置を示す前記検出面上の座標を前記被検面上の座標に変換する第3のステップと、角度変換テーブルを用いて、前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて、前記第1のステップで検出された角度と前記第2のステップで検出された角度との角度差を、前記検出面上の複数の座標のそれぞれに対応する前記被検面上の複数の座標における角度差に変換する第4のステップと、前記第3のステップで変換された前記被検面上の座標と前記第4のステップで変換された前記被検面上の複数の座標における角度差を用いた積分演算によって前記被検面の面形状と前記既知の非球面形状との差分形状を求め、前記既知の非球面形状に前記差分形状を加えることで前記被検面の面形状を算出する第5のステップと、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば、非球面を含む被検面の計測に有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一側面としての計測装置の構成を示す概略図である。
【図2】第1の実施形態における計測処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】図2に示すS202を説明するための図である。
【図4】図2に示すS210及びS212を説明するための図である。
【図5】座標変換テーブル及び角度変換テーブルを説明するための図である。
【図6】図2に示すS210で用いられる座標変換テーブル及びS212で用いられる角度変換テーブルの作成を説明するためのフローチャートである。
【図7】本発明の一側面としての計測装置の構成を示す概略図である。
【図8】第2の実施形態の概要を説明するための図である。
【図9】第2の実施形態における計測処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】図9に示すS910で用いられる座標変換テーブル及びS912で用いられる角度変換テーブルの作成を説明するためのフローチャートである。
【図11】第3の実施形態における座標変換テーブル及び角度変換テーブルの作成を説明するためのフローチャートである。
【図12】第4の実施形態における計測処理を説明するためのフローチャートである。
【図13】座標変換テーブル、比例係数及び角度変換テーブルを説明するための図である。
【図14】第4の実施形態における座標変換テーブル及び角度変換テーブルの作成を説明するためのフローチャートである。
【図15】図1に示す計測装置の検出部の検出面と共役な面と被検面(基準面)の位置との位置関係の一例を示す概略図である。
【図16】第5の実施形態における座標変換テーブル及び角度変換テーブルの作成を説明するためのフローチャートである。
【図17】第5の実施形態における計測処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は、本発明の一側面としての計測装置100の構成を示す概略図である。計測装置100は、基準面11aを含む基準レンズ11を用いて、被検レンズ12の形状、即ち、非球面を含む被検面12aの面形状を計測する。計測装置100は、図1に示すように、光源1と、コリメータレンズ2及び3と、レンズ4、5及び6と、ステージ7と、ハーフミラー8と、検出面を有する検出部9と、処理部10とを備える。
【0015】
なお、計測装置100において、コリメータレンズ2及び3とレンズ4、5及び6とは、光源1からの光を用いて基準面11aや被検面12aを照明する光学系(第1の光学系)を構成する。また、レンズ4、5及び6とハーフミラー8とは、被検面12aからの光を検出部9に導く光学系(第2の光学系)を構成する。また、ステージ7は、基準レンズ11(基準面11a)や被検レンズ12(被検面12a)を移動させる(光軸に垂直な面内でシフトさせたり、光軸に垂直な面内に対してチルトさせたりする)。
【0016】
光源1からの光は、レンズ2で拡大され、レンズ3で平行光となり、ハーフミラー8を透過する。ハーフミラー8を透過した光は、レンズ4及び5で拡大され、レンズ6で収束光となる。かかる収束光は、基準面11a又は被検面12aで反射され、レンズ6、5及び4を通過し、ハーフミラー8で反射されて検出部9に入射する。
【0017】
光源1は、例えば、単色のレーザ又はレーザダイオードを使用する。また、レンズ4、5及び6のフォーカス距離や有効径(直径)は、被検面12aの有効径及び曲率半径と検出部9の検出面の大きさ(寸法)によって決定される。
【0018】
レンズ6と被検レンズ12との間の距離は、レンズ6からの光が被検面12aにおける近軸領域の曲率中心に収束するように設定されており、光源1からの光は、被検面12aにほぼ垂直に入射する。但し、被検面12aで反射される光の角度は、被検面12aの非球面量(球面からの偏差)や形状誤差に依存する。従って、被検面12aの非球面量が大きい場合には、被検面12aで反射される光の角度は、被検面12aに入射する光の角度と大きく異なる角度となる。
【0019】
検出部9は、シャック・ハルトマンセンサで構成され、多数の微小集光レンズをマトリクス状に配列したマイクロレンズアレイとCCDセンサに代表される受光センサとで構成される検出面を有する。検出部9において、微小集光レンズを透過した光は、微小集光レンズごとに受光センサに集光される。検出部9(検出面)に入射する光の角度(角度分布)は、微小集光レンズ(マイクロレンズアレイ)で集光されるスポットの位置と予め校正された位置、例えば、平行光を入射したときのスポット位置との差を検出することで求められる。検出部9で検出する光の大きさが検出面の大きさよりも大きい場合には、検出部9を検出面内で移動させて光線角度を検出し、かかる光線角度をつなぎ合わせばよい。また、検出部9の検出面と被検面12aとは、互いに共役な位置に配置される。なお、検出部9は、シャック・ハルトマンセンサに限定されるものではなく、波面又は角度(分布)を検出することができるセンサであればよく、例えば、回折格子とCCDセンサを用いたシアリング干渉計やタルボ干渉計であってもよい。
【0020】
処理部10は、CPUやメモリなどを含み、検出部9での検出結果に基づいて、被検面12aの面形状を求めるための処理(計測処理)を行う。また、処理部10は、計測装置100の全体(動作)を制御する制御部としての機能も備える。
【0021】
基準レンズ11は、被検レンズ12と同じ設計値で製作されたレンズである。なお、基準レンズ11が含む基準面11aは、計測装置100とは異なる他の計測装置、例えば、プローブ式の計測装置などで高精度に計測され、その面形状は、処理部10に格納されている。
【0022】
以下、各実施形態において、計測装置100による被検面12aの面形状の計測処理について説明する。なお、各実施形態において、計測装置100に設置された基準面11aの光軸に垂直な面の絶対座標を(x,y)とする。
<第1の実施形態>
図2は、計測装置100による第1の実施形態における計測処理を説明するためのフローチャートである。図2を参照するに、S202(第1のステップ)では、基準面11aの計測を行う。具体的には、既知の非球面形状を有する基準面11aを検出部9の検出面と共役な面に配置し、基準面11aで反射した光の角度(Vbx,Vby)を検出部9の検出面上の複数の座標(X,Y)のそれぞれで検出する。ここで、Vは、図3(a)に示すように、検出部9の検出面で検出される光線角度である。また、Vx及びVyのそれぞれは、図3(b)に示す角度であり、検出部9の検出面で計測される光線角度VのX方向の成分及びY方向の成分である。また、bは、基準面11aの計測を表す添字である。検出部9の検出面上の座標(X,Y)は、マイクロレンズの位置に相当する。
【0023】
S204では、被検レンズ12のアライメントを行う。具体的には、基準レンズ11の代わりに被検レンズ12を計測装置100に配置し、被検面12aで反射された光の角度を検出部9で検出しながら、基準面11aで反射された光の角度との差が最小となるように被検レンズ12の位置を調整する。従って、被検レンズ12の被検面12aは、検出部9の検出面と共役な面に配置されることになる。
【0024】
S206(第2のステップ)では、被検面12aの計測を行う。具体的には、被検面12aで反射された光の角度(Vsx,Vsy)を検出部9の検出面上の複数の座標(X,Y)で検出する。
【0025】
S208では、S202で検出された角度(基準面11aで反射された光の角度)とS206で検出された角度(被検面12aで反射された光の角度)との角度差(ΔVx,ΔVy)=(Vsx−Vbx,Vsy−Vby)を処理部10で算出する。
【0026】
なお、S208では、以下の式1に示すように、基準面11aと被検面12aとの傾斜差を処理部10で算出してもよい。
[式1]
ΔVx=arctan(tan(Vsx)−tan(Vbx))
ΔVy=arctan(tan(Vsy)−tan(Vby))
【0027】
また、後述するように、基準面11aをn回移動させたときに検出部9で検出される角度の平均を(Vbx,Vby)とし、(Vsx,Vsy)との差分を算出してもよい。また、検出部9で検出される角度を有する光をベクトルとしてベクトル成分の差を求め、かかるベクトル成分の差からx軸方向及びy軸方向の角度差を算出してもよい。
【0028】
S210(第3のステップ)では、座標変換テーブルを用いて、検出部9の検出面上の座標(X,Y)を被検面上の座標(x,y)に変換する。換言すれば、被検面12aで反射された光が検出部9の検出面に入射した位置を示す検出面上の座標を被検面上の座標に変換する。
【0029】
S212(第4のステップ)では、角度変換テーブルを用いて、検出部9の検出面上の座標(X,Y)における角度差(ΔVx,ΔVy)を被検面上の対応する座標(x,y)における角度差(Δvx,Δvy)に変換する。ここで、(ΔVx,ΔVy)及び(Δvx,Δvy)は、図4に示すように、基準面11aからの反射光と被検面12aからの反射光との角度差のx成分及びy成分である。
【0030】
図5は、座標変換テーブル及び角度変換テーブルを説明するための図であって、S210における座標変換処理とS212における角度変換処理とを模式的に示している。図5を参照するに、座標変換テーブルαx(i)及びαy(i)を用いて、検出面上の座標(X(i),Y(i))が被検面上の座標(x(i),y(i))に変換される。また、角度変換テーブルβx(i)及びβy(i)を用いて、検出面上の座標(X(i),Y(i))における角度差(ΔVx(i),ΔVy(i))が被検面上の座標(x(i),y(i))における角度差(Δvx(i),Δvy(i))に変換される。
【0031】
S214(第5のステップ)では、基準面11aと被検面12aとの差分形状、即ち、基準面11aの既知の非球面形状と被検面12aの面形状との差分形状を処理部10で算出する。基準面11aと被検面12aとの差分形状は、被検面上の座標(x,y)と被検面上の座標(x,y)における角度差(Δvx,Δvy)とを用いた積分演算によって求めることができる。なお、積分演算としては、例えば、面の中心近傍から外側に向かって、座標間隔と角度差から求められる面積を加算する方法がある。また、被検面上の座標(x,y)のサンプリングを有する基底関数の微分関数を用いて、傾斜差(tan(Δvx),tan(Δvy))に対してフィッティングを行い、得られた係数と基底関数を掛け合わせる方法もある。
【0032】
S216(第5のステップ)では、被検面12aの面形状を処理部10で算出する。被検面12aの面形状は、基準面11aの既知の非球面形状にS214で算出された差分形状を加えることで求めることができる。
【0033】
このように、本実施形態では、検出部9の検出面上の座標を被検面上の座標に、且つ、検出面上の座標における角度を被検面上の対応する座標における角度に変換している。従って、計測装置100は、被検面12aが非球面である場合であっても、被検面12aの面形状を高精度に計測することができる。
【0034】
ここで、図6を参照して、S210で用いられる座標変換テーブル及びS212で用いられる角度変換テーブルの作成について説明する。座標変換テーブル及び角度変換テーブルは、一般的には、レンズの位置倍率及び角度倍率に相当し、視野全体で一定として用いられる。但し、被検面が非球面を含む場合には、レンズの位置倍率及び角度倍率が視野全体で一定にならない。そこで、本実施形態では、レンズの位置倍率及び角度倍率を補正するために、座標変換テーブル及び角度変換テーブルを用いている。
【0035】
S602では、基準面11aを検出部9の検出面と共役な面に配置し、基準面11aで反射した光の角度(Vxm,Vym)を検出部9の検出面上の複数の座標(X(i),Y(i))のそれぞれで検出する。ここで、iは、1〜qの整数である。qは、基準面11aの1回の計測で得られるデータの数であり、検出部9を構成するマイクロレンズの数に等しい。mは、1〜nの整数である。nは、基準レンズ11を移動させる回数である。
【0036】
S604では、ステージ7によって検出部9の検出面と共役な面から既知の量(Δxm,Δym)だけ移動させた位置に基準面11aを位置決めし、基準面11aで反射した光の角度を検出部9の検出面上の複数の座標のそれぞれで検出する。但し、基準面上の予め定められた複数の計測ポイントにおける光軸と垂直な方向の変位を変位計で計測し、その計測値を(Δxm,Δym)としてもよい。なお、本実施形態では、基準面11aを光軸に垂直な面内で移動させることを想定しているが、基準面11aをチルトさせてもよいし、基準面11aを光軸方向にシフトさせてもよい。
【0037】
S606では、基準面11aの傾斜角を算出する。具体的には、座標(x,y)における基準面11aの面形状(既知の非球面形状)についてx及びyのそれぞれで微分した値をQx(x,y)及びQy(x,y)とする。この場合、基準面11aを既知の量(Δxm,Δym)だけ移動させると、基準面11aの面形状についてx及びyのそれぞれで微分した値はQx(x−Δxm,y−Δym)及びQy(x−Δxm,y−Δym)となる。従って、基準面11aを既知の量(Δxm,Δym)だけ移動させたときのx傾斜角vxm及びy傾斜角vymのそれぞれは、以下の式2で求めることができる。なお、式2では、arctan(Qx(x−Δxm,y−Δym))及びarctan(Qy(x−Δxm,y−Δym))のそれぞれを2倍している。これは、光源1からの光が基準面11aで反射する際に、基準面11aの傾斜角の変化量に対する反射角の変化量が2倍になるからである。
[式2]
vxm(x,y)=2×arctan(Qx(x−Δxm,y−Δym))
vym(x,y)=2×arctan(Qy(x−Δxm,y−Δym))
【0038】
S608では、S604及びS606をn回繰り返す。これにより、検出部9の検出面と共役な面から既知の量だけ移動させた複数の位置に基準面11aを位置決めし、かかる複数の位置のそれぞれにおいて、基準面11aで反射した光の角度が検出部9の検出面上の複数の座標のそれぞれで検出される。
【0039】
S610では、基準面11aを複数の位置のそれぞれに位置決めする前後の検出部9で検出された角度の変化量と基準面11bを既知の量だけ移動させる前後の既知の非球面形状の変化量との比の分散(ばらつき)を算出する。具体的には、基準面11aで反射した光の角度(Vxm,Vym)と基準面11aのx傾斜角vxm及びy傾斜角vymとを用いて、以下の式3及び式4を計算する。
[式3]
rxmij=(Vxm(X(i),Y(i))−Ave(Vxm(X(i),Y(i))))/(vxm(x(j),y(j))−Ave(vxm(x(j),y(j))))
rymij=(Vym(X(i),Y(i))−Ave(Vym(X(i),Y(i))))/(vym(x(j),y(j))−Ave(vym(x(j),y(j))))
[式4]
σij=1/n×Σ((rxmij−Ave(rxmij))2+(rymij−Ave(rymij))2)
Ave( )は、( )内の値に対してmについての平均演算処理を行うことを表している。また、(x(j),y(j))は、計測装置100とは異なる計測装置で計測された基準面11aの面形状(データ)のサンプリング位置である。ここで、jは、1〜pの整数であり、pは、サンプリング位置の総数である。rxmij及びrymijは、基準面11aを移動させたとき、検出部9の検出面上の座標(X(i),Y(i))における角度の変化量を、基準面上の座標(x(j),y(j))における基準面11aの傾斜角の変化量で割った値である。また、σijは、S604及びS606をn回繰り返すことで得られるrxmijとrymijの分散の和である。
【0040】
なお、式3及び式4を計算する代わりに、以下の式5及び式6を計算してもよい。式5及び式6では、検出部9の検出面上の座標(X(i),Y(i))における角度の変化量を、基準面上の座標(x(j),y(j))における基準面11aの傾斜角の変化量で割る計算をしている。
[式5]
rxmij=(tan(Vxm(X(i),Y(i)))−Ave(tan(Vxm(X(i),Y(i)))))/(tan(vxm(x(j),y(j)))−Ave(tan(vxm(x(j),y(j))))))
rymij=(tan(Vym(X(i),Y(i)))−Ave(tan(Vym(X(i),Y(i)))))/(tan(vym(x(j),y(j)))−Ave(tan(vym(x(j),y(j))))))
[式6]
σij=1/n×Σ((rxmij−Ave(rxmij))2+(rymij−Ave(rymij))2)
【0041】
S612では、座標変換テーブルを作成する。検出部9の検出面上の座標(X(i),Y(i))において、分散σijが許容範囲となる、具体的には、最小となる基準面上の座標(x(j),y(j))を求める。これは、検出部9の検出面上のある座標(X,Y)に入射する光が基準面上のどの座標で反射された光であるかを、基準面11aを移動させたときの基準面11aの傾斜角の変化量と検出面上の座標における角度の変化量の比の分散を求めることで特定している。但し、vxm(x(j),y(j))−Ave(vxm(x(j),y(j)))及びvym(x(j),y(j))−Ave(vym(x(j),y(j)))がゼロに近い値である場合には誤差が大きくなるため、除外して分散σijを求める。また、分散σijが最小となる基準面上の座標(x(j),y(j))を求める際に、全ての座標(x(j),y(j))を探索する必要はなく、予想される基準面上の座標の範囲を予め限定し、その範囲内だけを探索してもよい。また、検出部9の検出面上の座標(X(i),Y(i))に対応する基準面11aの位置が(x(j),y(j))のデータサンプリングの間に存在する場合は、その位置に近い基準面上の座標(x(h),y(h))を求める。次に、補間処理によって基準面上の座標(x(h),y(h))の近傍でデータサンプリングを増大させ、上述したように、座標を探索すればよい。検出部9の検出面上の座標(X(i),Y(i))に対して、基準面上の座標(x(k),y(k))においてσijが最小になったとすると、座標変換テーブルαx(i)及びαy(i)は、以下の式7で求められる。
[式7]
αx(i)=X(i)/x(k)
αy(i)=Y(i)/y(k)
【0042】
このような処理を検出部9の検出面上の全ての座標(X(i),Y(i))に対して行うことで、座標変換テーブルが作成される。また、被検面上の座標x(y)は、検出部9の検出面上の座標X(Y)と座標変換テーブルαx(αy)とを用いて、以下の式8で表される。
[式8]
x=X/αx
y=Y/αy
【0043】
S614では、角度変換テーブルを作成する。上述した処理で求められた基準面上の座標をx(k)=X(i)/αx(i)、y(k)=Y(i)/αy(i)とし、以下の式9を計算する。
[式9]
βx(i)=Ave((Vxm(X(i),Y(i))−Ave(Vxm(X(i),Y(i))))/(vxm(x(k),y(k))−Ave(vxm(x(k),y(k)))))
βy(i)=Ave((Vym(X(i),Y(i))−Ave(Vym(X(i),Y(i))))/(vym(x(k),y(k))−Ave(vym(x(k),y(k)))))
なお、式9は、以下の2つの差の比(差(1)と差(2)との比)の平均を求めるための式である。
差(1):検出部9の検出面上の座標(X(i),Y(i))における光の角度Vxm(X(i),Y(i))及びVym(X(i),Y(i))のmについて平均した値からの差
差(2):基準面上の座標(x(k),y(k))における基準面11aの傾斜角vxm(x(k),y(k))及びvym(x(k),y(k))のmについて平均した値からの差
【0044】
なお、式9を計算する代わりに、以下の式10を計算してもよい(即ち、角度の差分ではなく、傾斜角の差分を計算してもよい)。
[式10]
βx(i)=Ave((tan(Vxm(X(i),Y(i)))−Ave(tan(Vxm(X(i),Y(i))))))/(tan(vxm(x(k),y(k)))−Ave(tan(vxm(x(k),y(k)))))
βx(i)=Ave((tan(Vym(X(i),Y(i)))−Ave(tan(Vym(X(i),Y(i))))))/(tan(vym(x(k),y(k)))−Ave(tan(vym(x(k),y(k)))))
【0045】
βx及びβyは、基準面11aの傾斜角の変化量と検出部9の検出面上の座標における光の角度の変化量との比であり、全ての座標(X(i),Y(i))に対して式9又は式10の計算を行うことで、角度変換テーブルβx及びβyが作成される。
【0046】
また、基準面11aの傾斜角vx(vy)は、角度Vx(Vy)と角度変換テーブルβx(βy)とを用いて、以下の式11で表される。
[式11]
vx−Ave(vxm)=(Vx−Ave(Vxm))/βx
vy−Ave(vym)=(Vy−Ave(Vym))/βy
【0047】
なお、基準面11aの傾斜角差から角度変換テーブルを作成した場合には、基準面11aの傾斜角vx(vy)は、角度Vx(Vy)と角度変換テーブルβx(βy)とを用いて、以下の式12で表される。
[式12]
tan(vx)−Ave(tan(vxm))=(tan(Vx)−Ave(tan(Vxm)))/βx
tan(vy)−Ave(tan(vym))=(tan(Vy)−Ave(tan(Vym)))/βy
【0048】
なお、本実施形態では、被検面12aの面形状を凸非球面としているが、被検面12aの面形状が凹非球面であっても、計測装置100は、被検面12aの面形状を高精度に計測することができる。この場合、図7に示すように、計測装置100は、被検レンズ12と同じ設計値(即ち、被検面12aの面形状である凹非球面の設計値)で製作された基準レンズ11を用いて、被検面12aの面形状を計測すればよい。具体的には、レンズ4からの発散光で被検面12aを照明し、被検面12aで反射された光の角度を検出部9で検出する。なお、レンズ4と被検レンズ12との間の距離は、被検面12aにおける近軸領域の曲率中心とレンズ4の集光点とが一致するように設定されており、光源1からの光は、被検面12aにほぼ垂直に入射する。また、被検面12aで反射された光は、広がらずに(即ち、光線角度が大きくなることなく)検出部9(の検出面)に入射する。
【0049】
<第2の実施形態>
第2の実施形態は、第1の実施形態と比較して、座標変換テーブル、角度変換テーブル及び検出部9の検出面上の座標における角度から被検面上の座標における角度への変換が異なる。特に、角度の変換では、X成分とY成分とではなく、メリジオナル面の成分とメリジオナル面とX軸とのなす角度の成分とに分解して変換する。従って、より厳密な角度の変換を行うことが可能となり、計測装置100の計測精度を向上させることができる。
【0050】
第2の実施形態では、図3(b)に示す角度Vx及びVyから、図8に示すように、メリジオナル面内の角度Vθ及びメリジオナル面とX軸とのなす角度Vφを、以下の式12に従って求める。
[式12]
Vθ=arctan(√(tan2(Vx)+tan2(Vy)))
Vφ=arctan(tan(Vy)/tan(Vx))
【0051】
同様に、基準面11aの傾斜角vx及びvyについても、メリジオナル面内の角度vθ及びメリジオナル面とX軸とのなす角度vφを、以下の式13に従って求める。
[式13]
vθ=arctan(√(tan2(vx)+tan2(vy)))
vφ=arctan(tan(vy)/tan(vx))
【0052】
第2の実施形態では、角度変換テーブルを用いて、角度Vθ及びVφのそれぞれを角度vθ及びvφに変換する。
【0053】
図9は、計測装置100による第2の実施形態における計測処理を説明するためのフローチャートである。図9を参照するに、S902では、基準面11aの計測を行う。具体的には、既知の非球面形状を有する基準面11aを検出部9の検出面と共役な面に配置し、基準面11aで反射した光の角度(Vbx,Vby)を検出部9の検出面上の複数の座標(X,Y)のそれぞれで検出する。
【0054】
S904では、被検レンズ12のアライメントを行う。具体的には、基準レンズ11の代わりに被検レンズ12を計測装置100に配置し、被検面12aで反射された光の角度を検出部9で検出しながら、基準面11aで反射された光の角度との差が最小となるように被検レンズ12の位置を調整する。
【0055】
S906では、被検面12aの計測を行う。具体的には、被検面12aで反射された光の角度(Vsx,Vsy)を検出部9の検出面上の複数の座標(X,Y)で検出する。
【0056】
S908では、S902で検出された角度(基準面11aで反射された光の角度)とS906で検出された角度(被検面12aで反射された光の角度)から角度差(ΔVθ,ΔVφ)=(Vsθ−Vbθ,Vsφ−Vbφ)を処理部10で算出する。基準面11aで反射された光の角度Vbx及びVby、及び、被検面12aで反射された光の角度Vsx及びVsyから式12を用いてVbθ、Vbφ、Vsθ及びVsφを求めることで、角度差ΔVθ及びΔVφを算出することができる。
【0057】
S910では、座標変換テーブルを用いて、検出部9の検出面上の座標(X,Y)を被検面上の座標(x,y)に変換する。
【0058】
S912では、角度変換テーブルを用いて、検出部9の検出面上の座標(X,Y)における角度差(ΔVθ,ΔVφ)を被検面上の対応する座標(x,y)における角度差(Δvθ,Δvφ)に変換する。ここで、ΔvφはΔVφと等しいとしてもよい。
【0059】
S914では、基準面11aと被検面12aとの差分形状、即ち、基準面11aの既知の非球面形状と被検面12aの面形状との差分形状を処理部10で算出する。具体的には、まず、Δvθ及びΔvφから以下の式14を用いてΔvx及びΔvyを求める。そして、被検面上の座標(x,y)と被検面上の座標(x,y)における角度差(Δvx,Δvy)とを用いた積分演算によって、基準面11aと被検面12aとの差分形状を求める。
[式14]
Δvx=arctan(tan(Δvθ)cos(Δvφ))
Δvy=arctan(tan(Δvθ)sin(Δvφ))
【0060】
S916では、被検面12aの面形状を処理部10で算出する。被検面12aの面形状は、基準面11aの既知の非球面形状にS914で算出された差分形状を加えることで求めることができる。
【0061】
ここで、図10を参照して、S910で用いられる座標変換テーブル及びS912で用いられる角度変換テーブルの作成について説明する。なお、S1002乃至S1008は、第1の実施形態(図6)におけるS602乃至S608と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0062】
S1010では、基準面11aを複数の位置のそれぞれに位置決めする前後の検出部9で検出された角度の変化量と基準面11bを既知の量だけ移動させる前後の既知の非球面形状の変化量との比の分散(ばらつき)を算出する。具体的には、基準面11aで反射した光の角度(Vxm,Vym)と基準面11aの傾斜角vxm及びvymとを用いて、式12及び式13からvθm、vφm、Vθm及びVφmを求める。そして、vθm、vφm、Vθm及びVφmを用いて、以下の式15及び式16を計算する。
[式15]
rθmij=(Vθm(X(i),Y(i))−Ave(Vθm(X(i),Y(i))))/(vθm(x(j),y(j))−Ave(vθm(x(j),y(j))))
rφmij=(Vφm(X(i),Y(i))−Ave(Vφm(X(i),Y(i))))/(vφm(x(j),y(j))−Ave(vφm(x(j),y(j))))
[式16]
σij=1/n×Σ((rθmij−Ave(rθmij))2+(rφmij−Ave(rφmij))2)
rθmij及びrφmijは、基準面11aを移動させたとき、検出部9の検出面上の座標(X(i),Y(i))における角度の変化量を、基準面上の座標(x(j),y(j))における基準面11aの傾斜角の変化量で割った値である。また、σijは、S1004及びS1006をn回繰り返すことで得られるrθmijとrφmijの分散の和である。
【0063】
S1012では、座標変換テーブルを作成する。検出部9の検出面上の座標(X(i),Y(i))において、分散σijが許容範囲となる、具体的には、最小となる基準面上の座標(x(j),y(j))を求める。これは、検出部9の検出面上のある座標(X,Y)に入射する光が基準面上のどの座標で反射された光であるかを、基準面11aを移動させたときの基準面11aの傾斜角の変化量と検出面上の座標における角度の変化量の比の分散を求めることで特定している。但し、vθm(x(j),y(j))−Ave(vθm(x(j),y(j)))及びvθm(x(j),y(j))−Ave(vφm(x(j),y(j)))がゼロに近い値である場合には誤差が大きくなるため、除外して分散σijを求める。検出部9の検出面上の座標(X(i),Y(i))に対して、基準面上の座標(x(k),y(k))においてσijが最小になったとすると、座標変換テーブルαx(i)及びαy(i)は、以下の式17で求められる。
[式17]
αx(i)=X(i)/x(k)
αy(i)=Y(i)/y(k)
【0064】
このような処理を検出部9の検出面上の全ての座標(X(i),Y(i))に対して行うことで、座標変換テーブルが作成される。
【0065】
S1014では、角度変換テーブルを作成する。上述した処理で求められた基準面上の座標をx(k)=X(i)/αx(i)、y(k)=Y(i)/αy(i)とし、以下の式18を計算する。
[式18]
βθ(i)=Ave((Vθm(X(i),Y(i))−Ave(Vθm(X(i),Y(i))))/(vθm(x(k),y(k))−Ave(vθm(x(k),y(k)))))
βφ(i)=Ave((Vφm(X(i),Y(i))−Ave(Vφm(X(i),Y(i))))/(vφm(x(k),y(k))−Ave(vφm(x(k),y(k)))))
なお、式18は、以下の2つの差の比(差(1)と差(2)との比)の平均を求めるための式である。
差(1):検出部9の検出面上の座標(X(i),Y(i))における光の角度Vθm(X(i),Y(i))及びVφm(X(i),Y(i))のmについて平均した値からの差
差(2):基準面上の座標(x(k),y(k))における基準面11aの傾斜角vθm(x(k),y(k))及びvφm(x(k),y(k))のmについて平均した値からの差
【0066】
βθ及びβφは、基準面11aの傾斜角の変化量と検出部9の検出面上の座標における光の角度の変化量との比であり、全ての座標(X(i),Y(i))に対して式18の計算を行うことで、角度変換テーブルβθ及びβφが作成される。
【0067】
また、基準面11aの傾斜角vθ(vφ)は、角度Vθ(Vφ)と角度変換テーブルβθ(βφ)とを用いて、以下の式19で表される。
[式19]
vθ−Ave(vθm)=(Vθ−Ave(Vθm))/βθ
vφ−Ave(vφ)=(Vφ−Ave(Vφ))/βφ
なお、角度差ではなく、傾斜差又は検出部9で検出される角度を有する光をベクトルとしてベクトル成分の差を求め、かかるベクトル成分の差からθ、φの角度差を算出してもよい。また、φについては、βφ≒1となるため、vφ=Vφとしてもよい。
【0068】
このように、本実施形態では、光線角度をメリジオナル面の角度成分とメリジオナル面とX軸とのなす角度の成分とに分解し、メリジオナル方向及びサジタル方向のそれぞれについて角度変換テーブルを作成する。これにより、検出部9で検出される検出面上の座標における角度を被検面上の座標における角度により厳密に変換することができるため、被検面12aの面形状を高精度に計測することが可能となる。
【0069】
<第3の実施形態>
第1の実施形態及び第2の実施形態では、検出部9の検出面と被検面12aとが互いに共役な位置に配置されている場合について説明した。但し、実際には、検出部9の検出面と被検面12aとの位置関係が共役な位置関係からずれてしまう場合もある。第3の実施形態では、特に、被検面12aの面形状が基準面11aの既知の非球面形状と異なり、被検面12aで反射される光の角度が変化して検出部9の検出面に入射する光の位置が基準面11aで反射される光と異なる場合について説明する。
【0070】
まず、図11を参照して、第3の実施形態における座標変換テーブル及び角度変換テーブルの作成について説明する。なお、S1102乃至S1112は、第1の実施形態(図6)におけるS602乃至S612と同様であり、ここでの説明は省略する。なお、S1102乃至S1112によって、座標変換テーブルαx及びαyが作成される。
【0071】
S1114では、比例係数Fx(i)及びFy(i)を算出する。ここで、比例計数Fx(i)及びFy(i)は、実数であり、基準面11aで反射される光線の位置(xm,ym)が検出部9の検出面上の座標(X(i),Y(i))で検出した角度の変化量に比例するとしたときの比例係数である。まず、全てのm(1〜n)に対して、以下の式20及び式21を計算する。
[式20]
δxm(i)=Fx(i)×(Vxm(i)―Ave(Vxm(i)))
δym(i)=Fy(i)×(Vym(i)―Ave(Vym(i)))
[式21]
xm(i)=X(i)/αx(i)+δxm(i)
ym(i)=Y(i)/αy(i)+δym(i)
【0072】
次いで、全てのm(1〜n)に対して、以下の式22及び式23を計算する。なお、σx(i)及びσy(i)のそれぞれは、rxm(i)及びrym(i)の分散である。
[式22]
rxm(i)=(Vxm(X(i),Y(i))−Ave(Vxm(X(i),Y(i))))/(vxm(xm(i),ym(i))−Ave(vxm(xm(i),ym(i))))
rym(i)=(Vym(X(i),Y(i))−Ave(Vym(X(i),Y(i))))/(vym(xm(i),ym(i))−Ave(vym(xm(i),ym(i))))
[式23]
σx(i)=1/n×Σ(rxm(i)−Ave(rxm(i)))2
σy(i)=1/n×Σ(rym(i)−Ave(rym(i)))2
【0073】
そして、σx(i)及びσy(i)が最小となるFx(i)、Fy(i)を求める。検出部9の検出面上の全ての座標(X(i),Y(i))に対して上述した処理を行うことで、比例係数Fx(i)及びFy(i)が求められる。
【0074】
S1116では、角度変換テーブルを作成する。具体的には、比例係数Fx(i)及びFy(i)を用いて、式20、式21及び式22を計算し、以下の式24を用いてrxm及びrymのそれぞれのmに対する平均値を求めることで、角度変換テーブルβhx及びβhyを作成する。
[式24]
βhx=Ave((Vxm(X(i),Y(i))−Ave(Vxm(X(i),Y(i))))/(vxm(xm(i),ym(i))−Ave(vxm(xm(i),ym(i)))))
βhy=Ave((Vym(X(i),Y(i))−Ave(Vym(X(i),Y(i))))/(vym(xm(i),ym(i))−Ave(vym(xm(i),ym(i)))))
【0075】
次に、図12を参照して、計測装置100による第3の実施形態における計測処理を説明する。S1202では、被検レンズ12のアライメントを行う。具体的には、まず、被検レンズ12を計測装置100に配置する。そして、被検面12aで反射された光の角度を検出部9で検出しながら、基準面11aで反射された光の角度(角度分布)の平均である(Ave(Vxm),Ave(Vym))との差が最小となるように被検レンズ12の位置を調整する。
【0076】
S1204では、被検面12aの計測を行う。具体的には、被検面12aで反射された光の角度(Vsx,Vsy)を検出部9の検出面上の複数の座標(X,Y)で検出する。
【0077】
S1206では、基準面11aで反射された光の角度の平均とS1204で検出された角度(被検面12aで反射された光の角度)との角度差(ΔVx,ΔVy)=(Vsx−Ave(Vxm),Vsy−Ave(Vym))を処理部10で算出する。
【0078】
S1208では、座標変換テーブルαx及びαFと比例係数Fx及びFyとを用いて、以下の式25に従って、検出部9の検出面上の座標(X,Y)を被検面上の座標(x,y)に変換する。
[式25]
x=X/αx+Fx×ΔVx
y=Y/αy+Fy×ΔVy
【0079】
S1210では、角度変換テーブルβhx及びβhyを用いて、以下の式26に従って、検出部9の検出面上の座標(X,Y)における角度差(ΔVx,ΔVy)を被検面上の対応する座標(x,y)における角度差(Δvx,Δvy)に変換する。
[式26]
Δvx=ΔVx/βhx
Δvy=ΔVy/βhy
【0080】
図13は、座標変換テーブル、比例係数及び角度変換テーブルを説明するための図であって、S1208における座標変換処理とS1210における角度変換処理とを模式的に示している。図13を参照するに、座標変換テーブルαx(i)及びαy(i)と比例係数Fx(i)及びFy(i)を用いて、検出面上の座標(X(i),Y(i))が被検面上の座標(x(i),y(i))に変換される。また、角度変換テーブルβhx(i)及びβhy(i)を用いて、検出面上の座標(X(i),Y(i))における角度差(ΔVx(i),ΔVy(i))が被検面上の座標(x(i),y(i))における角度差(Δvx(i),Δvy(i))に変換される。
【0081】
S1212では、基準面11aと被検面12aとの差分形状を処理部10で算出する。基準面11aと被検面12aとの差分形状は、被検面上の座標(x,y)と被検面上の座標(x,y)における角度差(Δvx,Δvy)とを用いた積分演算によって求めることができる。なお、ここでは、座標変換テーブルや角度変換テーブルを作成する際に基準面11aを移動させたときの基準面11aの形状を平均した値と被検面12aとの差分形状が求められる。
【0082】
S1214では、被検面12aの面形状を処理部10で算出する。被検面12aの面形状は、座標変換テーブルや角度変換テーブルを作成する際に基準面11aを移動させたときの基準面11aの形状を平均した値にS1212で算出された差分形状を加えることで求めることができる。
【0083】
このように、本実施形態では、検出部9の検出面と被検面12aとの位置関係が共役な位置関係からずれてしまう場合には、基準面11aで反射される光線の位置が検出部9の検出面上の座標で検出した角度の変化量に比例するとしたときの比例係数を求める。これにより、被検面12aで反射される光の角度が変化して検出部9の検出面に入射する光の位置が基準面11aで反射される光と異なる場合にも、比例係数と座標変換テーブルとを用いて、検出面上の座標を被検面上の座標に高精度に変換することができる。従って、計測装置100は、被検面12aの面形状を高精度に計測することが可能となる。
【0084】
<第4の実施形態>
第4の実施形態では、座標変換テーブル及び角度変換テーブルを光線追跡によって求める場合について説明する。この場合、基準レンズ11(基準面11a)を複数の位置に位置決めし、かかる複数の位置のそれぞれにおいて基準面11aの計測を行う必要がなくなるため、より簡易に被検面12aの面形状を計測することができる。
【0085】
図14を参照して、第4の実施形態における座標変換テーブル及び角度変換テーブルの作成について説明する。S1402では、計測装置100の光学データのパラメータを光線追跡プログラムに入力する。ここで、計測装置100の光学データは、例えば、レンズデータ(曲率半径、有効径、配置位置など)、基準レンズ11のデータ(非球面形状の設計値など)、検出部9のデータ(検出面の大きさ、マイクロレンズの大きさなど)などを含む。また、光線追跡プログラムは、処理部10にインストールされているものとする。但し、光線追跡プログラムをインストールした外部の情報処理装置を計測装置100に接続し、光線追跡の結果を計測装置100に入力するようにしてもよい。
【0086】
S1404では、S1402で入力されたパラメータに基づいて、光線追跡を行う。具体的には、光源1からの光がレンズ4、5及び6を介して基準面11aに入射し、基準面11aで反射され、レンズ6、5及び4を介して検出部9に入射する(検出部9の検出面で検出される)という光線追跡を行う。
【0087】
S1406では、式2を用いて、基準面上の座標(x,y)における傾斜角(vx,vy)を算出する。
【0088】
S1408では、検出部9の検出面に入射する基準面11aからの反射光の座標及び角度を算出する。具体的には、基準面上の座標(x,y)で反射された光が検出部9の検出面に入射する位置に対応する座標(X,Y)、及び、基準面上の座標(x,y)で反射された光の座標(X、Y)における角度(Vx,Vy)を算出する。
【0089】
S1410では、式2を用いて、基準面11aを移動させたときの座標(x,y)における傾斜角(vxt、vyt)を算出する。
【0090】
S1412では、基準面11aを移動させたときの検出部9の検出面に入射する基準面11aからの反射光の座標及び角度を算出する。具体的には、基準面11aを移動させたときの基準面上の座標(x,y)で反射された光が検出部9の検出面に入射する位置に対応する座標(Xt,Yt)を算出する。また、基準面上の座標(x,y)で反射された光の検出面上の座標(Xt、Yt)における角度(Vxt,Vyt)を算出する。
【0091】
S1414では、検出面上の座標における基準面11aからの反射光の角度を補間するための補間演算を行う。具体的には、検出面上の座標(Xt,Yt)における角度(Vxt,Vyt)に対して補間演算を行い、基準面11aで反射された光が検出面に入射する位置に対応する座標(X,Y)における角度(Vxtt,Vytt)を求める。
【0092】
S1416では、座標変換テーブルを作成する。具体的には、以下の式27を計算することで、座標変換テーブルαx及びαyを作成する。
[式27]
αx=X/x
αy=Y/y
【0093】
S1418では、角度変換テーブルを作成する。具体的には、以下の式28を計算することで、角度変換テーブルβx及びβyを作成する。
[式28]
βx=(Vxtt−Vx)/(vxt−vx)
βy=(Vytt−Vy)/(vyt−vy)
なお、角度同士の差分は傾斜の差分演算又はベクトルと考え、ベクトルのx成分とy成分との差を求め、x方向及びy方向の角度を算出してもよい。
【0094】
このように、基準面11aで反射された光を実際に検出部9で検出するのではなく、光線追跡によって座標変換テーブル及び角度変換テーブルを作成することも可能である。なお、光線追跡によって座標変換テーブル及び角度変換テーブルを作成した場合であっても、計測装置100による計測処理は上述した通りであり、ここでの説明は省略する。
【0095】
<第5の実施形態>
第5の実施形態では、検出部9の検出面と被検面12aとの位置関係が共役な位置関係からずれた場合における計測処理について説明する。図15は、検出部9の検出面と共役な面と被検面12a(基準面11a)の位置との位置関係の一例を示す概略図である。図15を参照するに、検出部9の検出面と共役な面の位置と被検面12a(基準面11a)の位置とが一致していない。このような場合には、光線追跡によって作成された座標変換テーブル及び角度変換テーブルを用いて、検出部9の検出面上の座標及び角度を検出面と共役な面での座標及び角度に変換する。そして、検出面と共役な面での座標及び角度を用いて基準面11aまでの光線追跡を行うことで被検面(基準面)上の座標及び角度を求める。従って、図15に示すような検出部9の検出面と被検面12aとの位置関係が共役な位置関係からずれた場合であっても、被検面12aの面形状を高精度に計測することができる。
【0096】
図16を参照して、第5の実施形態における座標変換テーブル及び角度変換テーブルの作成について説明する。S1602では、計測装置100の光学データ(レンズデータ、基準レンズ11のデータ、検出部9のデータなど)のパラメータを光線追跡プログラムに入力する。
【0097】
S1604では、S1602で入力されたパラメータに基づいて、光線追跡を行う。具体的には、光源1からの光がレンズ4、5及び6を介して基準面11aに入射し、基準面11aで反射され、レンズ6、5及び4を介して検出部9に入射する(検出部9の検出面で検出される)という光線追跡を行う。
【0098】
S1606では、基準面上の座標(x,y)で反射された光の検出部9の検出面と共役な面での入射位置に対応する座標(xc,yc)、及び、基準面上の座標(x,y)で反射された光の座標(xc、yc)における角度(vxc,vyc)を算出する。
【0099】
S1608では、検出部9の検出面に入射する基準面11aからの反射光の座標及び角度を算出する。具体的には、基準面上の座標(x,y)で反射された光が検出部9の検出面に入射する位置に対応する座標(X,Y)、及び、基準面上の座標(x,y)で反射された光の座標(X、Y)における角度(Vx,Vy)を算出する。
【0100】
S1610では、基準面11aを移動させたときの検出部9の検出面と共役な面に入射する基準面11aからの反射光の座標及び角度を算出する。具体的には、基準面11aを移動させたときの基準面上の座標(x,y)で反射された光が検出部9の検出面と共役な面に入射する位置に対応する座標(xcc,Ycc)を算出する。また、基準面上の座標(x,y)で反射された光の検出面と共役な面上の座標(Xcc、Ycc)における角度(vxcc,vycc)を算出する。
【0101】
S1612では、基準面11aを移動させたときの検出部9の検出面に入射する基準面11aからの反射光の座標及び角度を算出する。具体的には、基準面11aを移動させたときの基準面上の座標(x,y)で反射された光が検出部9の検出面に入射する位置に対応する座標(Xt,Yt)を算出する。また、基準面上の座標(x,y)で反射された光の検出面上の座標(Xt、Yt)における角度(Vxt,Vyt)を算出する。
【0102】
S1614では、検出部9の検出面と共役な面上の座標における基準面11aからの反射光の角度を補間するための補間演算を行う。具体的には、検出部9の検出面と共役な面上の座標(xcc,ycc)における角度(vxcc,vycc)に対して補間演算を行う。これにより、基準面11aで反射された光が共役な面に入射する位置に対応する座標(xc,yc)における角度(vxccc,vyccc)を求める。
【0103】
S1616では、検出面上の座標における基準面11aからの反射光の角度を補間するための補間演算を行う。具体的には、検出面上の座標(Xt,Yt)における角度(Vxt,Vyt)に対して補間演算を行い、基準面11aで反射された光が検出面に入射する位置に対応する座標(X,Y)における角度(Vxtt,Vytt)を求める。
【0104】
S1618では、座標変換テーブルを作成する。具体的には、以下の式29を計算することで、座標変換テーブルαx及びαyを作成する。
[式29]
αx=X/xc
αy=Y/yc
【0105】
S1620では、角度変換テーブルを作成する。具体的には、以下の式30を計算することで、角度変換テーブルβx及びβyを作成する。
[式30]
βx=(Vxtt−Vx)/(vxccc−vxc)
βy=(Vytt−Vy)/(vyccc−vyc)
なお、角度同士の差分は傾斜の差分演算、又は、光線をベクトルと考え、ベクトルのx成分、y成分、z成分の差を求め、x方向及びy方向の角度を算出してもよい。
【0106】
次に、図17を参照して、計測装置100による第5の実施形態における計測処理を説明する。S1702では、基準面11aの計測を行う。具体的には、基準レンズ11を計測装置100に配置し、基準面11aで反射した光の角度(Vbx,Vby)を検出部9の検出面上の複数の座標(X,Y)のそれぞれで検出する。
【0107】
S1704では、被検レンズ12のアライメントを行う。具体的には、基準レンズ11の代わりに被検レンズ12を計測装置100に配置し、被検面12aで反射された光の角度を検出部9で検出しながら、基準面11aで反射された光の角度との差が最小となるように被検レンズ12の位置を調整する。
【0108】
S1706では、被検面12aの計測を行う。具体的には、被検面12aで反射された光の角度(Vsx,Vsy)を検出部9の検出面上の複数の座標(X,Y)で検出する。
【0109】
S1708では、座標変換テーブルαx及びαyを用いて、検出部9の検出面上の座標(X,Y)を検出面と共役な面上の座標(xc,yc)に変換する。
【0110】
S1710では、角度変換テーブルβx及びβyを用いて、検出部9の検出面上の座標(X,Y)における角度を検出面と共役な面上の対応する座標(xc,yc)における角度に変換する。具体的には、以下の式31に従って、座標(X,Y)における角度Vbx、Vby、Vsx及びVsyを座標(xc,yc)における角度vbxc、vbyc、vsxc及びvsycに変換する。
[式31]
vbxc=vxc+Vbx/βx
vbyc=vyc+Vby/βy
vsxc=vxc+Vsx/βx
vsyc=vyc+Vsy/βy
【0111】
S1712では、検出部9の検出面と共役な面から基準面11までの光線追跡を行う。検出面と共役な面上の座標(xc,yc)における基準面11aからの反射光の角度(vbxc,vbyc)及び被検面12aからの反射光の角度(vsxc,vsyc)を用いて、基準面11aと交差する座標(xb,yb)及び(xs,ys)を求める。
【0112】
S1714では、基準面上の座標(xs,ys)における角度(vsxc,vsyc)に対して補間演算を行い、基準面上の座標(xb,yb)における角度(vsbxc,vsbyc)を算出する。
【0113】
S1716では、以下の式32に従って、角度差(Δvx,Δvy)を処理部10で算出する。
[式32]
Δvx=vsbxc−vbxc
Δvy=vsbyc−vbyc
【0114】
S1718では、基準面11aと被検面12aとの差分形状、即ち、基準面11aの既知の非球面形状と被検面12aの面形状との差分形状を処理部10で算出する。基準面11aと被検面12aとの差分形状は、基準面上の座標(xb,yb)と角度差(Δvx,Δvy)とを用いた積分演算によって求めることができる。
【0115】
S1720では、被検面12aの面形状を処理部10で算出する。被検面12aの面形状は、基準面11aの既知の非球面形状にS1718で算出された差分形状を加えることで求めることができる。
【0116】
このように、本実施形態では、検出部9の検出面上の座標及び角度を検出面と共役な面での座標及び角度に変換し、かかる座標及び角度を用いて基準面11aまでの光線追跡を行う。これにより、検出部9の検出面と被検面12aとの位置関係が共役な位置関係からずれた場合であっても、被検面12aの面形状を高精度に計測することができる。
【0117】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、非球面を含む被検面の面形状を計測する計測方法及び計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非球面レンズなどの被検面の形状(面形状)を非接触で計測する技術として、ヌルレンズを用いた干渉計(例えば、フィゾー干渉計など)を利用する方法が知られている。かかる方法では、被検面の設計形状に対応した波面(ヌル波面)を有する光をヌルレンズによって形成し、その光の被検面からの反射光(計測光)と参照光とを干渉させ、計測光の波面と参照光の波面との差を計測することで被検面の形状を求めている。なお、被検面の形状を高精度に求めるためには、計測系誤差(干渉計に起因する誤差)の校正を十分な精度で行う必要があり、例えば、ヌル波面の校正、ディストーションの校正、倍率の校正などに関連する技術が幾つか提案されている(特許文献1乃至3参照)。
【0003】
また、ヌルレンズを用いることなく被検面の形状を計測する方法として、検出部に計測波面のダイナミックレンジが大きいシャック・ハルトマンセンサを用いた方法も知られている(非特許文献1参照)。かかる方法では、投光光学系を介して、被検面に球面波の光を照射している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−221029号公報
【特許文献2】特開2000−97663号公報
【特許文献3】特開平10−281736号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Optical Fabrication AND Testing, OSA Technical Digest (Optical Society of America, 2000), paper OTuC5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ヌルレンズを用いた方法では、計測精度がヌルレンズの製作精度に依存するため、高い計測精度を実現するためには、ヌルレンズの製作に多大な時間と費用が必要となる。また、被検面の形状ごとに異なるヌルレンズを用意しなければならないことや計測系誤差の校正が複雑になることなどの問題もある。
【0007】
一方、ヌルレンズを用いない方法では、投光光学系にアライメントエラーや収差などの計測系誤差が存在するため、被検面からの反射光(計測光)を検出部で検出したとしても、被検面の形状誤差と計測系誤差とを分離することが困難である。また、被検面が非球面である場合には、被検面に対して光が垂直に照射されず、入射光線角度と反射光線角度とが異なる。従って、計測光が検出部で略平行光にならず(即ち、計測光の位置倍率及び角度倍率が一定ではないため)、平面波面から大きくずれた波面として検出され、計測精度が低下することになる。
【0008】
そこで、本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、非球面を含む被検面の計測に有利な技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての計測方法は、光源からの光を用いて非球面を含む被検面を照明する第1の光学系と、前記被検面からの光を検出面を有する検出部に導く第2の光学系とを備えた計測装置を用いて、前記被検面の面形状を計測する計測方法であって、既知の非球面形状を有する基準面を前記検出面と共役な面に配置し、前記基準面からの光が前記検出面に入射する角度を前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて前記検出部で検出する第1のステップと、前記被検面を前記共役な面に配置し、前記被検面からの光が前記検出面に入射する角度を前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて前記検出部で検出する第2のステップと、座標変換テーブルを用いて、前記被検面からの光が前記検出面に入射した位置を示す前記検出面上の座標を前記被検面上の座標に変換する第3のステップと、角度変換テーブルを用いて、前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて、前記第1のステップで検出された角度と前記第2のステップで検出された角度との角度差を、前記検出面上の複数の座標のそれぞれに対応する前記被検面上の複数の座標における角度差に変換する第4のステップと、前記第3のステップで変換された前記被検面上の座標と前記第4のステップで変換された前記被検面上の複数の座標における角度差を用いた積分演算によって前記被検面の面形状と前記既知の非球面形状との差分形状を求め、前記既知の非球面形状に前記差分形状を加えることで前記被検面の面形状を算出する第5のステップと、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば、非球面を含む被検面の計測に有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一側面としての計測装置の構成を示す概略図である。
【図2】第1の実施形態における計測処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】図2に示すS202を説明するための図である。
【図4】図2に示すS210及びS212を説明するための図である。
【図5】座標変換テーブル及び角度変換テーブルを説明するための図である。
【図6】図2に示すS210で用いられる座標変換テーブル及びS212で用いられる角度変換テーブルの作成を説明するためのフローチャートである。
【図7】本発明の一側面としての計測装置の構成を示す概略図である。
【図8】第2の実施形態の概要を説明するための図である。
【図9】第2の実施形態における計測処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】図9に示すS910で用いられる座標変換テーブル及びS912で用いられる角度変換テーブルの作成を説明するためのフローチャートである。
【図11】第3の実施形態における座標変換テーブル及び角度変換テーブルの作成を説明するためのフローチャートである。
【図12】第4の実施形態における計測処理を説明するためのフローチャートである。
【図13】座標変換テーブル、比例係数及び角度変換テーブルを説明するための図である。
【図14】第4の実施形態における座標変換テーブル及び角度変換テーブルの作成を説明するためのフローチャートである。
【図15】図1に示す計測装置の検出部の検出面と共役な面と被検面(基準面)の位置との位置関係の一例を示す概略図である。
【図16】第5の実施形態における座標変換テーブル及び角度変換テーブルの作成を説明するためのフローチャートである。
【図17】第5の実施形態における計測処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は、本発明の一側面としての計測装置100の構成を示す概略図である。計測装置100は、基準面11aを含む基準レンズ11を用いて、被検レンズ12の形状、即ち、非球面を含む被検面12aの面形状を計測する。計測装置100は、図1に示すように、光源1と、コリメータレンズ2及び3と、レンズ4、5及び6と、ステージ7と、ハーフミラー8と、検出面を有する検出部9と、処理部10とを備える。
【0015】
なお、計測装置100において、コリメータレンズ2及び3とレンズ4、5及び6とは、光源1からの光を用いて基準面11aや被検面12aを照明する光学系(第1の光学系)を構成する。また、レンズ4、5及び6とハーフミラー8とは、被検面12aからの光を検出部9に導く光学系(第2の光学系)を構成する。また、ステージ7は、基準レンズ11(基準面11a)や被検レンズ12(被検面12a)を移動させる(光軸に垂直な面内でシフトさせたり、光軸に垂直な面内に対してチルトさせたりする)。
【0016】
光源1からの光は、レンズ2で拡大され、レンズ3で平行光となり、ハーフミラー8を透過する。ハーフミラー8を透過した光は、レンズ4及び5で拡大され、レンズ6で収束光となる。かかる収束光は、基準面11a又は被検面12aで反射され、レンズ6、5及び4を通過し、ハーフミラー8で反射されて検出部9に入射する。
【0017】
光源1は、例えば、単色のレーザ又はレーザダイオードを使用する。また、レンズ4、5及び6のフォーカス距離や有効径(直径)は、被検面12aの有効径及び曲率半径と検出部9の検出面の大きさ(寸法)によって決定される。
【0018】
レンズ6と被検レンズ12との間の距離は、レンズ6からの光が被検面12aにおける近軸領域の曲率中心に収束するように設定されており、光源1からの光は、被検面12aにほぼ垂直に入射する。但し、被検面12aで反射される光の角度は、被検面12aの非球面量(球面からの偏差)や形状誤差に依存する。従って、被検面12aの非球面量が大きい場合には、被検面12aで反射される光の角度は、被検面12aに入射する光の角度と大きく異なる角度となる。
【0019】
検出部9は、シャック・ハルトマンセンサで構成され、多数の微小集光レンズをマトリクス状に配列したマイクロレンズアレイとCCDセンサに代表される受光センサとで構成される検出面を有する。検出部9において、微小集光レンズを透過した光は、微小集光レンズごとに受光センサに集光される。検出部9(検出面)に入射する光の角度(角度分布)は、微小集光レンズ(マイクロレンズアレイ)で集光されるスポットの位置と予め校正された位置、例えば、平行光を入射したときのスポット位置との差を検出することで求められる。検出部9で検出する光の大きさが検出面の大きさよりも大きい場合には、検出部9を検出面内で移動させて光線角度を検出し、かかる光線角度をつなぎ合わせばよい。また、検出部9の検出面と被検面12aとは、互いに共役な位置に配置される。なお、検出部9は、シャック・ハルトマンセンサに限定されるものではなく、波面又は角度(分布)を検出することができるセンサであればよく、例えば、回折格子とCCDセンサを用いたシアリング干渉計やタルボ干渉計であってもよい。
【0020】
処理部10は、CPUやメモリなどを含み、検出部9での検出結果に基づいて、被検面12aの面形状を求めるための処理(計測処理)を行う。また、処理部10は、計測装置100の全体(動作)を制御する制御部としての機能も備える。
【0021】
基準レンズ11は、被検レンズ12と同じ設計値で製作されたレンズである。なお、基準レンズ11が含む基準面11aは、計測装置100とは異なる他の計測装置、例えば、プローブ式の計測装置などで高精度に計測され、その面形状は、処理部10に格納されている。
【0022】
以下、各実施形態において、計測装置100による被検面12aの面形状の計測処理について説明する。なお、各実施形態において、計測装置100に設置された基準面11aの光軸に垂直な面の絶対座標を(x,y)とする。
<第1の実施形態>
図2は、計測装置100による第1の実施形態における計測処理を説明するためのフローチャートである。図2を参照するに、S202(第1のステップ)では、基準面11aの計測を行う。具体的には、既知の非球面形状を有する基準面11aを検出部9の検出面と共役な面に配置し、基準面11aで反射した光の角度(Vbx,Vby)を検出部9の検出面上の複数の座標(X,Y)のそれぞれで検出する。ここで、Vは、図3(a)に示すように、検出部9の検出面で検出される光線角度である。また、Vx及びVyのそれぞれは、図3(b)に示す角度であり、検出部9の検出面で計測される光線角度VのX方向の成分及びY方向の成分である。また、bは、基準面11aの計測を表す添字である。検出部9の検出面上の座標(X,Y)は、マイクロレンズの位置に相当する。
【0023】
S204では、被検レンズ12のアライメントを行う。具体的には、基準レンズ11の代わりに被検レンズ12を計測装置100に配置し、被検面12aで反射された光の角度を検出部9で検出しながら、基準面11aで反射された光の角度との差が最小となるように被検レンズ12の位置を調整する。従って、被検レンズ12の被検面12aは、検出部9の検出面と共役な面に配置されることになる。
【0024】
S206(第2のステップ)では、被検面12aの計測を行う。具体的には、被検面12aで反射された光の角度(Vsx,Vsy)を検出部9の検出面上の複数の座標(X,Y)で検出する。
【0025】
S208では、S202で検出された角度(基準面11aで反射された光の角度)とS206で検出された角度(被検面12aで反射された光の角度)との角度差(ΔVx,ΔVy)=(Vsx−Vbx,Vsy−Vby)を処理部10で算出する。
【0026】
なお、S208では、以下の式1に示すように、基準面11aと被検面12aとの傾斜差を処理部10で算出してもよい。
[式1]
ΔVx=arctan(tan(Vsx)−tan(Vbx))
ΔVy=arctan(tan(Vsy)−tan(Vby))
【0027】
また、後述するように、基準面11aをn回移動させたときに検出部9で検出される角度の平均を(Vbx,Vby)とし、(Vsx,Vsy)との差分を算出してもよい。また、検出部9で検出される角度を有する光をベクトルとしてベクトル成分の差を求め、かかるベクトル成分の差からx軸方向及びy軸方向の角度差を算出してもよい。
【0028】
S210(第3のステップ)では、座標変換テーブルを用いて、検出部9の検出面上の座標(X,Y)を被検面上の座標(x,y)に変換する。換言すれば、被検面12aで反射された光が検出部9の検出面に入射した位置を示す検出面上の座標を被検面上の座標に変換する。
【0029】
S212(第4のステップ)では、角度変換テーブルを用いて、検出部9の検出面上の座標(X,Y)における角度差(ΔVx,ΔVy)を被検面上の対応する座標(x,y)における角度差(Δvx,Δvy)に変換する。ここで、(ΔVx,ΔVy)及び(Δvx,Δvy)は、図4に示すように、基準面11aからの反射光と被検面12aからの反射光との角度差のx成分及びy成分である。
【0030】
図5は、座標変換テーブル及び角度変換テーブルを説明するための図であって、S210における座標変換処理とS212における角度変換処理とを模式的に示している。図5を参照するに、座標変換テーブルαx(i)及びαy(i)を用いて、検出面上の座標(X(i),Y(i))が被検面上の座標(x(i),y(i))に変換される。また、角度変換テーブルβx(i)及びβy(i)を用いて、検出面上の座標(X(i),Y(i))における角度差(ΔVx(i),ΔVy(i))が被検面上の座標(x(i),y(i))における角度差(Δvx(i),Δvy(i))に変換される。
【0031】
S214(第5のステップ)では、基準面11aと被検面12aとの差分形状、即ち、基準面11aの既知の非球面形状と被検面12aの面形状との差分形状を処理部10で算出する。基準面11aと被検面12aとの差分形状は、被検面上の座標(x,y)と被検面上の座標(x,y)における角度差(Δvx,Δvy)とを用いた積分演算によって求めることができる。なお、積分演算としては、例えば、面の中心近傍から外側に向かって、座標間隔と角度差から求められる面積を加算する方法がある。また、被検面上の座標(x,y)のサンプリングを有する基底関数の微分関数を用いて、傾斜差(tan(Δvx),tan(Δvy))に対してフィッティングを行い、得られた係数と基底関数を掛け合わせる方法もある。
【0032】
S216(第5のステップ)では、被検面12aの面形状を処理部10で算出する。被検面12aの面形状は、基準面11aの既知の非球面形状にS214で算出された差分形状を加えることで求めることができる。
【0033】
このように、本実施形態では、検出部9の検出面上の座標を被検面上の座標に、且つ、検出面上の座標における角度を被検面上の対応する座標における角度に変換している。従って、計測装置100は、被検面12aが非球面である場合であっても、被検面12aの面形状を高精度に計測することができる。
【0034】
ここで、図6を参照して、S210で用いられる座標変換テーブル及びS212で用いられる角度変換テーブルの作成について説明する。座標変換テーブル及び角度変換テーブルは、一般的には、レンズの位置倍率及び角度倍率に相当し、視野全体で一定として用いられる。但し、被検面が非球面を含む場合には、レンズの位置倍率及び角度倍率が視野全体で一定にならない。そこで、本実施形態では、レンズの位置倍率及び角度倍率を補正するために、座標変換テーブル及び角度変換テーブルを用いている。
【0035】
S602では、基準面11aを検出部9の検出面と共役な面に配置し、基準面11aで反射した光の角度(Vxm,Vym)を検出部9の検出面上の複数の座標(X(i),Y(i))のそれぞれで検出する。ここで、iは、1〜qの整数である。qは、基準面11aの1回の計測で得られるデータの数であり、検出部9を構成するマイクロレンズの数に等しい。mは、1〜nの整数である。nは、基準レンズ11を移動させる回数である。
【0036】
S604では、ステージ7によって検出部9の検出面と共役な面から既知の量(Δxm,Δym)だけ移動させた位置に基準面11aを位置決めし、基準面11aで反射した光の角度を検出部9の検出面上の複数の座標のそれぞれで検出する。但し、基準面上の予め定められた複数の計測ポイントにおける光軸と垂直な方向の変位を変位計で計測し、その計測値を(Δxm,Δym)としてもよい。なお、本実施形態では、基準面11aを光軸に垂直な面内で移動させることを想定しているが、基準面11aをチルトさせてもよいし、基準面11aを光軸方向にシフトさせてもよい。
【0037】
S606では、基準面11aの傾斜角を算出する。具体的には、座標(x,y)における基準面11aの面形状(既知の非球面形状)についてx及びyのそれぞれで微分した値をQx(x,y)及びQy(x,y)とする。この場合、基準面11aを既知の量(Δxm,Δym)だけ移動させると、基準面11aの面形状についてx及びyのそれぞれで微分した値はQx(x−Δxm,y−Δym)及びQy(x−Δxm,y−Δym)となる。従って、基準面11aを既知の量(Δxm,Δym)だけ移動させたときのx傾斜角vxm及びy傾斜角vymのそれぞれは、以下の式2で求めることができる。なお、式2では、arctan(Qx(x−Δxm,y−Δym))及びarctan(Qy(x−Δxm,y−Δym))のそれぞれを2倍している。これは、光源1からの光が基準面11aで反射する際に、基準面11aの傾斜角の変化量に対する反射角の変化量が2倍になるからである。
[式2]
vxm(x,y)=2×arctan(Qx(x−Δxm,y−Δym))
vym(x,y)=2×arctan(Qy(x−Δxm,y−Δym))
【0038】
S608では、S604及びS606をn回繰り返す。これにより、検出部9の検出面と共役な面から既知の量だけ移動させた複数の位置に基準面11aを位置決めし、かかる複数の位置のそれぞれにおいて、基準面11aで反射した光の角度が検出部9の検出面上の複数の座標のそれぞれで検出される。
【0039】
S610では、基準面11aを複数の位置のそれぞれに位置決めする前後の検出部9で検出された角度の変化量と基準面11bを既知の量だけ移動させる前後の既知の非球面形状の変化量との比の分散(ばらつき)を算出する。具体的には、基準面11aで反射した光の角度(Vxm,Vym)と基準面11aのx傾斜角vxm及びy傾斜角vymとを用いて、以下の式3及び式4を計算する。
[式3]
rxmij=(Vxm(X(i),Y(i))−Ave(Vxm(X(i),Y(i))))/(vxm(x(j),y(j))−Ave(vxm(x(j),y(j))))
rymij=(Vym(X(i),Y(i))−Ave(Vym(X(i),Y(i))))/(vym(x(j),y(j))−Ave(vym(x(j),y(j))))
[式4]
σij=1/n×Σ((rxmij−Ave(rxmij))2+(rymij−Ave(rymij))2)
Ave( )は、( )内の値に対してmについての平均演算処理を行うことを表している。また、(x(j),y(j))は、計測装置100とは異なる計測装置で計測された基準面11aの面形状(データ)のサンプリング位置である。ここで、jは、1〜pの整数であり、pは、サンプリング位置の総数である。rxmij及びrymijは、基準面11aを移動させたとき、検出部9の検出面上の座標(X(i),Y(i))における角度の変化量を、基準面上の座標(x(j),y(j))における基準面11aの傾斜角の変化量で割った値である。また、σijは、S604及びS606をn回繰り返すことで得られるrxmijとrymijの分散の和である。
【0040】
なお、式3及び式4を計算する代わりに、以下の式5及び式6を計算してもよい。式5及び式6では、検出部9の検出面上の座標(X(i),Y(i))における角度の変化量を、基準面上の座標(x(j),y(j))における基準面11aの傾斜角の変化量で割る計算をしている。
[式5]
rxmij=(tan(Vxm(X(i),Y(i)))−Ave(tan(Vxm(X(i),Y(i)))))/(tan(vxm(x(j),y(j)))−Ave(tan(vxm(x(j),y(j))))))
rymij=(tan(Vym(X(i),Y(i)))−Ave(tan(Vym(X(i),Y(i)))))/(tan(vym(x(j),y(j)))−Ave(tan(vym(x(j),y(j))))))
[式6]
σij=1/n×Σ((rxmij−Ave(rxmij))2+(rymij−Ave(rymij))2)
【0041】
S612では、座標変換テーブルを作成する。検出部9の検出面上の座標(X(i),Y(i))において、分散σijが許容範囲となる、具体的には、最小となる基準面上の座標(x(j),y(j))を求める。これは、検出部9の検出面上のある座標(X,Y)に入射する光が基準面上のどの座標で反射された光であるかを、基準面11aを移動させたときの基準面11aの傾斜角の変化量と検出面上の座標における角度の変化量の比の分散を求めることで特定している。但し、vxm(x(j),y(j))−Ave(vxm(x(j),y(j)))及びvym(x(j),y(j))−Ave(vym(x(j),y(j)))がゼロに近い値である場合には誤差が大きくなるため、除外して分散σijを求める。また、分散σijが最小となる基準面上の座標(x(j),y(j))を求める際に、全ての座標(x(j),y(j))を探索する必要はなく、予想される基準面上の座標の範囲を予め限定し、その範囲内だけを探索してもよい。また、検出部9の検出面上の座標(X(i),Y(i))に対応する基準面11aの位置が(x(j),y(j))のデータサンプリングの間に存在する場合は、その位置に近い基準面上の座標(x(h),y(h))を求める。次に、補間処理によって基準面上の座標(x(h),y(h))の近傍でデータサンプリングを増大させ、上述したように、座標を探索すればよい。検出部9の検出面上の座標(X(i),Y(i))に対して、基準面上の座標(x(k),y(k))においてσijが最小になったとすると、座標変換テーブルαx(i)及びαy(i)は、以下の式7で求められる。
[式7]
αx(i)=X(i)/x(k)
αy(i)=Y(i)/y(k)
【0042】
このような処理を検出部9の検出面上の全ての座標(X(i),Y(i))に対して行うことで、座標変換テーブルが作成される。また、被検面上の座標x(y)は、検出部9の検出面上の座標X(Y)と座標変換テーブルαx(αy)とを用いて、以下の式8で表される。
[式8]
x=X/αx
y=Y/αy
【0043】
S614では、角度変換テーブルを作成する。上述した処理で求められた基準面上の座標をx(k)=X(i)/αx(i)、y(k)=Y(i)/αy(i)とし、以下の式9を計算する。
[式9]
βx(i)=Ave((Vxm(X(i),Y(i))−Ave(Vxm(X(i),Y(i))))/(vxm(x(k),y(k))−Ave(vxm(x(k),y(k)))))
βy(i)=Ave((Vym(X(i),Y(i))−Ave(Vym(X(i),Y(i))))/(vym(x(k),y(k))−Ave(vym(x(k),y(k)))))
なお、式9は、以下の2つの差の比(差(1)と差(2)との比)の平均を求めるための式である。
差(1):検出部9の検出面上の座標(X(i),Y(i))における光の角度Vxm(X(i),Y(i))及びVym(X(i),Y(i))のmについて平均した値からの差
差(2):基準面上の座標(x(k),y(k))における基準面11aの傾斜角vxm(x(k),y(k))及びvym(x(k),y(k))のmについて平均した値からの差
【0044】
なお、式9を計算する代わりに、以下の式10を計算してもよい(即ち、角度の差分ではなく、傾斜角の差分を計算してもよい)。
[式10]
βx(i)=Ave((tan(Vxm(X(i),Y(i)))−Ave(tan(Vxm(X(i),Y(i))))))/(tan(vxm(x(k),y(k)))−Ave(tan(vxm(x(k),y(k)))))
βx(i)=Ave((tan(Vym(X(i),Y(i)))−Ave(tan(Vym(X(i),Y(i))))))/(tan(vym(x(k),y(k)))−Ave(tan(vym(x(k),y(k)))))
【0045】
βx及びβyは、基準面11aの傾斜角の変化量と検出部9の検出面上の座標における光の角度の変化量との比であり、全ての座標(X(i),Y(i))に対して式9又は式10の計算を行うことで、角度変換テーブルβx及びβyが作成される。
【0046】
また、基準面11aの傾斜角vx(vy)は、角度Vx(Vy)と角度変換テーブルβx(βy)とを用いて、以下の式11で表される。
[式11]
vx−Ave(vxm)=(Vx−Ave(Vxm))/βx
vy−Ave(vym)=(Vy−Ave(Vym))/βy
【0047】
なお、基準面11aの傾斜角差から角度変換テーブルを作成した場合には、基準面11aの傾斜角vx(vy)は、角度Vx(Vy)と角度変換テーブルβx(βy)とを用いて、以下の式12で表される。
[式12]
tan(vx)−Ave(tan(vxm))=(tan(Vx)−Ave(tan(Vxm)))/βx
tan(vy)−Ave(tan(vym))=(tan(Vy)−Ave(tan(Vym)))/βy
【0048】
なお、本実施形態では、被検面12aの面形状を凸非球面としているが、被検面12aの面形状が凹非球面であっても、計測装置100は、被検面12aの面形状を高精度に計測することができる。この場合、図7に示すように、計測装置100は、被検レンズ12と同じ設計値(即ち、被検面12aの面形状である凹非球面の設計値)で製作された基準レンズ11を用いて、被検面12aの面形状を計測すればよい。具体的には、レンズ4からの発散光で被検面12aを照明し、被検面12aで反射された光の角度を検出部9で検出する。なお、レンズ4と被検レンズ12との間の距離は、被検面12aにおける近軸領域の曲率中心とレンズ4の集光点とが一致するように設定されており、光源1からの光は、被検面12aにほぼ垂直に入射する。また、被検面12aで反射された光は、広がらずに(即ち、光線角度が大きくなることなく)検出部9(の検出面)に入射する。
【0049】
<第2の実施形態>
第2の実施形態は、第1の実施形態と比較して、座標変換テーブル、角度変換テーブル及び検出部9の検出面上の座標における角度から被検面上の座標における角度への変換が異なる。特に、角度の変換では、X成分とY成分とではなく、メリジオナル面の成分とメリジオナル面とX軸とのなす角度の成分とに分解して変換する。従って、より厳密な角度の変換を行うことが可能となり、計測装置100の計測精度を向上させることができる。
【0050】
第2の実施形態では、図3(b)に示す角度Vx及びVyから、図8に示すように、メリジオナル面内の角度Vθ及びメリジオナル面とX軸とのなす角度Vφを、以下の式12に従って求める。
[式12]
Vθ=arctan(√(tan2(Vx)+tan2(Vy)))
Vφ=arctan(tan(Vy)/tan(Vx))
【0051】
同様に、基準面11aの傾斜角vx及びvyについても、メリジオナル面内の角度vθ及びメリジオナル面とX軸とのなす角度vφを、以下の式13に従って求める。
[式13]
vθ=arctan(√(tan2(vx)+tan2(vy)))
vφ=arctan(tan(vy)/tan(vx))
【0052】
第2の実施形態では、角度変換テーブルを用いて、角度Vθ及びVφのそれぞれを角度vθ及びvφに変換する。
【0053】
図9は、計測装置100による第2の実施形態における計測処理を説明するためのフローチャートである。図9を参照するに、S902では、基準面11aの計測を行う。具体的には、既知の非球面形状を有する基準面11aを検出部9の検出面と共役な面に配置し、基準面11aで反射した光の角度(Vbx,Vby)を検出部9の検出面上の複数の座標(X,Y)のそれぞれで検出する。
【0054】
S904では、被検レンズ12のアライメントを行う。具体的には、基準レンズ11の代わりに被検レンズ12を計測装置100に配置し、被検面12aで反射された光の角度を検出部9で検出しながら、基準面11aで反射された光の角度との差が最小となるように被検レンズ12の位置を調整する。
【0055】
S906では、被検面12aの計測を行う。具体的には、被検面12aで反射された光の角度(Vsx,Vsy)を検出部9の検出面上の複数の座標(X,Y)で検出する。
【0056】
S908では、S902で検出された角度(基準面11aで反射された光の角度)とS906で検出された角度(被検面12aで反射された光の角度)から角度差(ΔVθ,ΔVφ)=(Vsθ−Vbθ,Vsφ−Vbφ)を処理部10で算出する。基準面11aで反射された光の角度Vbx及びVby、及び、被検面12aで反射された光の角度Vsx及びVsyから式12を用いてVbθ、Vbφ、Vsθ及びVsφを求めることで、角度差ΔVθ及びΔVφを算出することができる。
【0057】
S910では、座標変換テーブルを用いて、検出部9の検出面上の座標(X,Y)を被検面上の座標(x,y)に変換する。
【0058】
S912では、角度変換テーブルを用いて、検出部9の検出面上の座標(X,Y)における角度差(ΔVθ,ΔVφ)を被検面上の対応する座標(x,y)における角度差(Δvθ,Δvφ)に変換する。ここで、ΔvφはΔVφと等しいとしてもよい。
【0059】
S914では、基準面11aと被検面12aとの差分形状、即ち、基準面11aの既知の非球面形状と被検面12aの面形状との差分形状を処理部10で算出する。具体的には、まず、Δvθ及びΔvφから以下の式14を用いてΔvx及びΔvyを求める。そして、被検面上の座標(x,y)と被検面上の座標(x,y)における角度差(Δvx,Δvy)とを用いた積分演算によって、基準面11aと被検面12aとの差分形状を求める。
[式14]
Δvx=arctan(tan(Δvθ)cos(Δvφ))
Δvy=arctan(tan(Δvθ)sin(Δvφ))
【0060】
S916では、被検面12aの面形状を処理部10で算出する。被検面12aの面形状は、基準面11aの既知の非球面形状にS914で算出された差分形状を加えることで求めることができる。
【0061】
ここで、図10を参照して、S910で用いられる座標変換テーブル及びS912で用いられる角度変換テーブルの作成について説明する。なお、S1002乃至S1008は、第1の実施形態(図6)におけるS602乃至S608と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0062】
S1010では、基準面11aを複数の位置のそれぞれに位置決めする前後の検出部9で検出された角度の変化量と基準面11bを既知の量だけ移動させる前後の既知の非球面形状の変化量との比の分散(ばらつき)を算出する。具体的には、基準面11aで反射した光の角度(Vxm,Vym)と基準面11aの傾斜角vxm及びvymとを用いて、式12及び式13からvθm、vφm、Vθm及びVφmを求める。そして、vθm、vφm、Vθm及びVφmを用いて、以下の式15及び式16を計算する。
[式15]
rθmij=(Vθm(X(i),Y(i))−Ave(Vθm(X(i),Y(i))))/(vθm(x(j),y(j))−Ave(vθm(x(j),y(j))))
rφmij=(Vφm(X(i),Y(i))−Ave(Vφm(X(i),Y(i))))/(vφm(x(j),y(j))−Ave(vφm(x(j),y(j))))
[式16]
σij=1/n×Σ((rθmij−Ave(rθmij))2+(rφmij−Ave(rφmij))2)
rθmij及びrφmijは、基準面11aを移動させたとき、検出部9の検出面上の座標(X(i),Y(i))における角度の変化量を、基準面上の座標(x(j),y(j))における基準面11aの傾斜角の変化量で割った値である。また、σijは、S1004及びS1006をn回繰り返すことで得られるrθmijとrφmijの分散の和である。
【0063】
S1012では、座標変換テーブルを作成する。検出部9の検出面上の座標(X(i),Y(i))において、分散σijが許容範囲となる、具体的には、最小となる基準面上の座標(x(j),y(j))を求める。これは、検出部9の検出面上のある座標(X,Y)に入射する光が基準面上のどの座標で反射された光であるかを、基準面11aを移動させたときの基準面11aの傾斜角の変化量と検出面上の座標における角度の変化量の比の分散を求めることで特定している。但し、vθm(x(j),y(j))−Ave(vθm(x(j),y(j)))及びvθm(x(j),y(j))−Ave(vφm(x(j),y(j)))がゼロに近い値である場合には誤差が大きくなるため、除外して分散σijを求める。検出部9の検出面上の座標(X(i),Y(i))に対して、基準面上の座標(x(k),y(k))においてσijが最小になったとすると、座標変換テーブルαx(i)及びαy(i)は、以下の式17で求められる。
[式17]
αx(i)=X(i)/x(k)
αy(i)=Y(i)/y(k)
【0064】
このような処理を検出部9の検出面上の全ての座標(X(i),Y(i))に対して行うことで、座標変換テーブルが作成される。
【0065】
S1014では、角度変換テーブルを作成する。上述した処理で求められた基準面上の座標をx(k)=X(i)/αx(i)、y(k)=Y(i)/αy(i)とし、以下の式18を計算する。
[式18]
βθ(i)=Ave((Vθm(X(i),Y(i))−Ave(Vθm(X(i),Y(i))))/(vθm(x(k),y(k))−Ave(vθm(x(k),y(k)))))
βφ(i)=Ave((Vφm(X(i),Y(i))−Ave(Vφm(X(i),Y(i))))/(vφm(x(k),y(k))−Ave(vφm(x(k),y(k)))))
なお、式18は、以下の2つの差の比(差(1)と差(2)との比)の平均を求めるための式である。
差(1):検出部9の検出面上の座標(X(i),Y(i))における光の角度Vθm(X(i),Y(i))及びVφm(X(i),Y(i))のmについて平均した値からの差
差(2):基準面上の座標(x(k),y(k))における基準面11aの傾斜角vθm(x(k),y(k))及びvφm(x(k),y(k))のmについて平均した値からの差
【0066】
βθ及びβφは、基準面11aの傾斜角の変化量と検出部9の検出面上の座標における光の角度の変化量との比であり、全ての座標(X(i),Y(i))に対して式18の計算を行うことで、角度変換テーブルβθ及びβφが作成される。
【0067】
また、基準面11aの傾斜角vθ(vφ)は、角度Vθ(Vφ)と角度変換テーブルβθ(βφ)とを用いて、以下の式19で表される。
[式19]
vθ−Ave(vθm)=(Vθ−Ave(Vθm))/βθ
vφ−Ave(vφ)=(Vφ−Ave(Vφ))/βφ
なお、角度差ではなく、傾斜差又は検出部9で検出される角度を有する光をベクトルとしてベクトル成分の差を求め、かかるベクトル成分の差からθ、φの角度差を算出してもよい。また、φについては、βφ≒1となるため、vφ=Vφとしてもよい。
【0068】
このように、本実施形態では、光線角度をメリジオナル面の角度成分とメリジオナル面とX軸とのなす角度の成分とに分解し、メリジオナル方向及びサジタル方向のそれぞれについて角度変換テーブルを作成する。これにより、検出部9で検出される検出面上の座標における角度を被検面上の座標における角度により厳密に変換することができるため、被検面12aの面形状を高精度に計測することが可能となる。
【0069】
<第3の実施形態>
第1の実施形態及び第2の実施形態では、検出部9の検出面と被検面12aとが互いに共役な位置に配置されている場合について説明した。但し、実際には、検出部9の検出面と被検面12aとの位置関係が共役な位置関係からずれてしまう場合もある。第3の実施形態では、特に、被検面12aの面形状が基準面11aの既知の非球面形状と異なり、被検面12aで反射される光の角度が変化して検出部9の検出面に入射する光の位置が基準面11aで反射される光と異なる場合について説明する。
【0070】
まず、図11を参照して、第3の実施形態における座標変換テーブル及び角度変換テーブルの作成について説明する。なお、S1102乃至S1112は、第1の実施形態(図6)におけるS602乃至S612と同様であり、ここでの説明は省略する。なお、S1102乃至S1112によって、座標変換テーブルαx及びαyが作成される。
【0071】
S1114では、比例係数Fx(i)及びFy(i)を算出する。ここで、比例計数Fx(i)及びFy(i)は、実数であり、基準面11aで反射される光線の位置(xm,ym)が検出部9の検出面上の座標(X(i),Y(i))で検出した角度の変化量に比例するとしたときの比例係数である。まず、全てのm(1〜n)に対して、以下の式20及び式21を計算する。
[式20]
δxm(i)=Fx(i)×(Vxm(i)―Ave(Vxm(i)))
δym(i)=Fy(i)×(Vym(i)―Ave(Vym(i)))
[式21]
xm(i)=X(i)/αx(i)+δxm(i)
ym(i)=Y(i)/αy(i)+δym(i)
【0072】
次いで、全てのm(1〜n)に対して、以下の式22及び式23を計算する。なお、σx(i)及びσy(i)のそれぞれは、rxm(i)及びrym(i)の分散である。
[式22]
rxm(i)=(Vxm(X(i),Y(i))−Ave(Vxm(X(i),Y(i))))/(vxm(xm(i),ym(i))−Ave(vxm(xm(i),ym(i))))
rym(i)=(Vym(X(i),Y(i))−Ave(Vym(X(i),Y(i))))/(vym(xm(i),ym(i))−Ave(vym(xm(i),ym(i))))
[式23]
σx(i)=1/n×Σ(rxm(i)−Ave(rxm(i)))2
σy(i)=1/n×Σ(rym(i)−Ave(rym(i)))2
【0073】
そして、σx(i)及びσy(i)が最小となるFx(i)、Fy(i)を求める。検出部9の検出面上の全ての座標(X(i),Y(i))に対して上述した処理を行うことで、比例係数Fx(i)及びFy(i)が求められる。
【0074】
S1116では、角度変換テーブルを作成する。具体的には、比例係数Fx(i)及びFy(i)を用いて、式20、式21及び式22を計算し、以下の式24を用いてrxm及びrymのそれぞれのmに対する平均値を求めることで、角度変換テーブルβhx及びβhyを作成する。
[式24]
βhx=Ave((Vxm(X(i),Y(i))−Ave(Vxm(X(i),Y(i))))/(vxm(xm(i),ym(i))−Ave(vxm(xm(i),ym(i)))))
βhy=Ave((Vym(X(i),Y(i))−Ave(Vym(X(i),Y(i))))/(vym(xm(i),ym(i))−Ave(vym(xm(i),ym(i)))))
【0075】
次に、図12を参照して、計測装置100による第3の実施形態における計測処理を説明する。S1202では、被検レンズ12のアライメントを行う。具体的には、まず、被検レンズ12を計測装置100に配置する。そして、被検面12aで反射された光の角度を検出部9で検出しながら、基準面11aで反射された光の角度(角度分布)の平均である(Ave(Vxm),Ave(Vym))との差が最小となるように被検レンズ12の位置を調整する。
【0076】
S1204では、被検面12aの計測を行う。具体的には、被検面12aで反射された光の角度(Vsx,Vsy)を検出部9の検出面上の複数の座標(X,Y)で検出する。
【0077】
S1206では、基準面11aで反射された光の角度の平均とS1204で検出された角度(被検面12aで反射された光の角度)との角度差(ΔVx,ΔVy)=(Vsx−Ave(Vxm),Vsy−Ave(Vym))を処理部10で算出する。
【0078】
S1208では、座標変換テーブルαx及びαFと比例係数Fx及びFyとを用いて、以下の式25に従って、検出部9の検出面上の座標(X,Y)を被検面上の座標(x,y)に変換する。
[式25]
x=X/αx+Fx×ΔVx
y=Y/αy+Fy×ΔVy
【0079】
S1210では、角度変換テーブルβhx及びβhyを用いて、以下の式26に従って、検出部9の検出面上の座標(X,Y)における角度差(ΔVx,ΔVy)を被検面上の対応する座標(x,y)における角度差(Δvx,Δvy)に変換する。
[式26]
Δvx=ΔVx/βhx
Δvy=ΔVy/βhy
【0080】
図13は、座標変換テーブル、比例係数及び角度変換テーブルを説明するための図であって、S1208における座標変換処理とS1210における角度変換処理とを模式的に示している。図13を参照するに、座標変換テーブルαx(i)及びαy(i)と比例係数Fx(i)及びFy(i)を用いて、検出面上の座標(X(i),Y(i))が被検面上の座標(x(i),y(i))に変換される。また、角度変換テーブルβhx(i)及びβhy(i)を用いて、検出面上の座標(X(i),Y(i))における角度差(ΔVx(i),ΔVy(i))が被検面上の座標(x(i),y(i))における角度差(Δvx(i),Δvy(i))に変換される。
【0081】
S1212では、基準面11aと被検面12aとの差分形状を処理部10で算出する。基準面11aと被検面12aとの差分形状は、被検面上の座標(x,y)と被検面上の座標(x,y)における角度差(Δvx,Δvy)とを用いた積分演算によって求めることができる。なお、ここでは、座標変換テーブルや角度変換テーブルを作成する際に基準面11aを移動させたときの基準面11aの形状を平均した値と被検面12aとの差分形状が求められる。
【0082】
S1214では、被検面12aの面形状を処理部10で算出する。被検面12aの面形状は、座標変換テーブルや角度変換テーブルを作成する際に基準面11aを移動させたときの基準面11aの形状を平均した値にS1212で算出された差分形状を加えることで求めることができる。
【0083】
このように、本実施形態では、検出部9の検出面と被検面12aとの位置関係が共役な位置関係からずれてしまう場合には、基準面11aで反射される光線の位置が検出部9の検出面上の座標で検出した角度の変化量に比例するとしたときの比例係数を求める。これにより、被検面12aで反射される光の角度が変化して検出部9の検出面に入射する光の位置が基準面11aで反射される光と異なる場合にも、比例係数と座標変換テーブルとを用いて、検出面上の座標を被検面上の座標に高精度に変換することができる。従って、計測装置100は、被検面12aの面形状を高精度に計測することが可能となる。
【0084】
<第4の実施形態>
第4の実施形態では、座標変換テーブル及び角度変換テーブルを光線追跡によって求める場合について説明する。この場合、基準レンズ11(基準面11a)を複数の位置に位置決めし、かかる複数の位置のそれぞれにおいて基準面11aの計測を行う必要がなくなるため、より簡易に被検面12aの面形状を計測することができる。
【0085】
図14を参照して、第4の実施形態における座標変換テーブル及び角度変換テーブルの作成について説明する。S1402では、計測装置100の光学データのパラメータを光線追跡プログラムに入力する。ここで、計測装置100の光学データは、例えば、レンズデータ(曲率半径、有効径、配置位置など)、基準レンズ11のデータ(非球面形状の設計値など)、検出部9のデータ(検出面の大きさ、マイクロレンズの大きさなど)などを含む。また、光線追跡プログラムは、処理部10にインストールされているものとする。但し、光線追跡プログラムをインストールした外部の情報処理装置を計測装置100に接続し、光線追跡の結果を計測装置100に入力するようにしてもよい。
【0086】
S1404では、S1402で入力されたパラメータに基づいて、光線追跡を行う。具体的には、光源1からの光がレンズ4、5及び6を介して基準面11aに入射し、基準面11aで反射され、レンズ6、5及び4を介して検出部9に入射する(検出部9の検出面で検出される)という光線追跡を行う。
【0087】
S1406では、式2を用いて、基準面上の座標(x,y)における傾斜角(vx,vy)を算出する。
【0088】
S1408では、検出部9の検出面に入射する基準面11aからの反射光の座標及び角度を算出する。具体的には、基準面上の座標(x,y)で反射された光が検出部9の検出面に入射する位置に対応する座標(X,Y)、及び、基準面上の座標(x,y)で反射された光の座標(X、Y)における角度(Vx,Vy)を算出する。
【0089】
S1410では、式2を用いて、基準面11aを移動させたときの座標(x,y)における傾斜角(vxt、vyt)を算出する。
【0090】
S1412では、基準面11aを移動させたときの検出部9の検出面に入射する基準面11aからの反射光の座標及び角度を算出する。具体的には、基準面11aを移動させたときの基準面上の座標(x,y)で反射された光が検出部9の検出面に入射する位置に対応する座標(Xt,Yt)を算出する。また、基準面上の座標(x,y)で反射された光の検出面上の座標(Xt、Yt)における角度(Vxt,Vyt)を算出する。
【0091】
S1414では、検出面上の座標における基準面11aからの反射光の角度を補間するための補間演算を行う。具体的には、検出面上の座標(Xt,Yt)における角度(Vxt,Vyt)に対して補間演算を行い、基準面11aで反射された光が検出面に入射する位置に対応する座標(X,Y)における角度(Vxtt,Vytt)を求める。
【0092】
S1416では、座標変換テーブルを作成する。具体的には、以下の式27を計算することで、座標変換テーブルαx及びαyを作成する。
[式27]
αx=X/x
αy=Y/y
【0093】
S1418では、角度変換テーブルを作成する。具体的には、以下の式28を計算することで、角度変換テーブルβx及びβyを作成する。
[式28]
βx=(Vxtt−Vx)/(vxt−vx)
βy=(Vytt−Vy)/(vyt−vy)
なお、角度同士の差分は傾斜の差分演算又はベクトルと考え、ベクトルのx成分とy成分との差を求め、x方向及びy方向の角度を算出してもよい。
【0094】
このように、基準面11aで反射された光を実際に検出部9で検出するのではなく、光線追跡によって座標変換テーブル及び角度変換テーブルを作成することも可能である。なお、光線追跡によって座標変換テーブル及び角度変換テーブルを作成した場合であっても、計測装置100による計測処理は上述した通りであり、ここでの説明は省略する。
【0095】
<第5の実施形態>
第5の実施形態では、検出部9の検出面と被検面12aとの位置関係が共役な位置関係からずれた場合における計測処理について説明する。図15は、検出部9の検出面と共役な面と被検面12a(基準面11a)の位置との位置関係の一例を示す概略図である。図15を参照するに、検出部9の検出面と共役な面の位置と被検面12a(基準面11a)の位置とが一致していない。このような場合には、光線追跡によって作成された座標変換テーブル及び角度変換テーブルを用いて、検出部9の検出面上の座標及び角度を検出面と共役な面での座標及び角度に変換する。そして、検出面と共役な面での座標及び角度を用いて基準面11aまでの光線追跡を行うことで被検面(基準面)上の座標及び角度を求める。従って、図15に示すような検出部9の検出面と被検面12aとの位置関係が共役な位置関係からずれた場合であっても、被検面12aの面形状を高精度に計測することができる。
【0096】
図16を参照して、第5の実施形態における座標変換テーブル及び角度変換テーブルの作成について説明する。S1602では、計測装置100の光学データ(レンズデータ、基準レンズ11のデータ、検出部9のデータなど)のパラメータを光線追跡プログラムに入力する。
【0097】
S1604では、S1602で入力されたパラメータに基づいて、光線追跡を行う。具体的には、光源1からの光がレンズ4、5及び6を介して基準面11aに入射し、基準面11aで反射され、レンズ6、5及び4を介して検出部9に入射する(検出部9の検出面で検出される)という光線追跡を行う。
【0098】
S1606では、基準面上の座標(x,y)で反射された光の検出部9の検出面と共役な面での入射位置に対応する座標(xc,yc)、及び、基準面上の座標(x,y)で反射された光の座標(xc、yc)における角度(vxc,vyc)を算出する。
【0099】
S1608では、検出部9の検出面に入射する基準面11aからの反射光の座標及び角度を算出する。具体的には、基準面上の座標(x,y)で反射された光が検出部9の検出面に入射する位置に対応する座標(X,Y)、及び、基準面上の座標(x,y)で反射された光の座標(X、Y)における角度(Vx,Vy)を算出する。
【0100】
S1610では、基準面11aを移動させたときの検出部9の検出面と共役な面に入射する基準面11aからの反射光の座標及び角度を算出する。具体的には、基準面11aを移動させたときの基準面上の座標(x,y)で反射された光が検出部9の検出面と共役な面に入射する位置に対応する座標(xcc,Ycc)を算出する。また、基準面上の座標(x,y)で反射された光の検出面と共役な面上の座標(Xcc、Ycc)における角度(vxcc,vycc)を算出する。
【0101】
S1612では、基準面11aを移動させたときの検出部9の検出面に入射する基準面11aからの反射光の座標及び角度を算出する。具体的には、基準面11aを移動させたときの基準面上の座標(x,y)で反射された光が検出部9の検出面に入射する位置に対応する座標(Xt,Yt)を算出する。また、基準面上の座標(x,y)で反射された光の検出面上の座標(Xt、Yt)における角度(Vxt,Vyt)を算出する。
【0102】
S1614では、検出部9の検出面と共役な面上の座標における基準面11aからの反射光の角度を補間するための補間演算を行う。具体的には、検出部9の検出面と共役な面上の座標(xcc,ycc)における角度(vxcc,vycc)に対して補間演算を行う。これにより、基準面11aで反射された光が共役な面に入射する位置に対応する座標(xc,yc)における角度(vxccc,vyccc)を求める。
【0103】
S1616では、検出面上の座標における基準面11aからの反射光の角度を補間するための補間演算を行う。具体的には、検出面上の座標(Xt,Yt)における角度(Vxt,Vyt)に対して補間演算を行い、基準面11aで反射された光が検出面に入射する位置に対応する座標(X,Y)における角度(Vxtt,Vytt)を求める。
【0104】
S1618では、座標変換テーブルを作成する。具体的には、以下の式29を計算することで、座標変換テーブルαx及びαyを作成する。
[式29]
αx=X/xc
αy=Y/yc
【0105】
S1620では、角度変換テーブルを作成する。具体的には、以下の式30を計算することで、角度変換テーブルβx及びβyを作成する。
[式30]
βx=(Vxtt−Vx)/(vxccc−vxc)
βy=(Vytt−Vy)/(vyccc−vyc)
なお、角度同士の差分は傾斜の差分演算、又は、光線をベクトルと考え、ベクトルのx成分、y成分、z成分の差を求め、x方向及びy方向の角度を算出してもよい。
【0106】
次に、図17を参照して、計測装置100による第5の実施形態における計測処理を説明する。S1702では、基準面11aの計測を行う。具体的には、基準レンズ11を計測装置100に配置し、基準面11aで反射した光の角度(Vbx,Vby)を検出部9の検出面上の複数の座標(X,Y)のそれぞれで検出する。
【0107】
S1704では、被検レンズ12のアライメントを行う。具体的には、基準レンズ11の代わりに被検レンズ12を計測装置100に配置し、被検面12aで反射された光の角度を検出部9で検出しながら、基準面11aで反射された光の角度との差が最小となるように被検レンズ12の位置を調整する。
【0108】
S1706では、被検面12aの計測を行う。具体的には、被検面12aで反射された光の角度(Vsx,Vsy)を検出部9の検出面上の複数の座標(X,Y)で検出する。
【0109】
S1708では、座標変換テーブルαx及びαyを用いて、検出部9の検出面上の座標(X,Y)を検出面と共役な面上の座標(xc,yc)に変換する。
【0110】
S1710では、角度変換テーブルβx及びβyを用いて、検出部9の検出面上の座標(X,Y)における角度を検出面と共役な面上の対応する座標(xc,yc)における角度に変換する。具体的には、以下の式31に従って、座標(X,Y)における角度Vbx、Vby、Vsx及びVsyを座標(xc,yc)における角度vbxc、vbyc、vsxc及びvsycに変換する。
[式31]
vbxc=vxc+Vbx/βx
vbyc=vyc+Vby/βy
vsxc=vxc+Vsx/βx
vsyc=vyc+Vsy/βy
【0111】
S1712では、検出部9の検出面と共役な面から基準面11までの光線追跡を行う。検出面と共役な面上の座標(xc,yc)における基準面11aからの反射光の角度(vbxc,vbyc)及び被検面12aからの反射光の角度(vsxc,vsyc)を用いて、基準面11aと交差する座標(xb,yb)及び(xs,ys)を求める。
【0112】
S1714では、基準面上の座標(xs,ys)における角度(vsxc,vsyc)に対して補間演算を行い、基準面上の座標(xb,yb)における角度(vsbxc,vsbyc)を算出する。
【0113】
S1716では、以下の式32に従って、角度差(Δvx,Δvy)を処理部10で算出する。
[式32]
Δvx=vsbxc−vbxc
Δvy=vsbyc−vbyc
【0114】
S1718では、基準面11aと被検面12aとの差分形状、即ち、基準面11aの既知の非球面形状と被検面12aの面形状との差分形状を処理部10で算出する。基準面11aと被検面12aとの差分形状は、基準面上の座標(xb,yb)と角度差(Δvx,Δvy)とを用いた積分演算によって求めることができる。
【0115】
S1720では、被検面12aの面形状を処理部10で算出する。被検面12aの面形状は、基準面11aの既知の非球面形状にS1718で算出された差分形状を加えることで求めることができる。
【0116】
このように、本実施形態では、検出部9の検出面上の座標及び角度を検出面と共役な面での座標及び角度に変換し、かかる座標及び角度を用いて基準面11aまでの光線追跡を行う。これにより、検出部9の検出面と被検面12aとの位置関係が共役な位置関係からずれた場合であっても、被検面12aの面形状を高精度に計測することができる。
【0117】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を用いて非球面を含む被検面を照明する第1の光学系と、前記被検面からの光を検出面を有する検出部に導く第2の光学系とを備えた計測装置を用いて、前記被検面の面形状を計測する計測方法であって、
既知の非球面形状を有する基準面を前記検出面と共役な面に配置し、前記基準面からの光が前記検出面に入射する角度を前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて前記検出部で検出する第1のステップと、
前記被検面を前記共役な面に配置し、前記被検面からの光が前記検出面に入射する角度を前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて前記検出部で検出する第2のステップと、
座標変換テーブルを用いて、前記被検面からの光が前記検出面に入射した位置を示す前記検出面上の座標を前記被検面上の座標に変換する第3のステップと、
角度変換テーブルを用いて、前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて、前記第1のステップで検出された角度と前記第2のステップで検出された角度との角度差を、前記検出面上の複数の座標のそれぞれに対応する前記被検面上の複数の座標における角度差に変換する第4のステップと、
前記第3のステップで変換された前記被検面上の座標と前記第4のステップで変換された前記被検面上の複数の座標における角度差を用いた積分演算によって前記被検面の面形状と前記既知の非球面形状との差分形状を求め、前記既知の非球面形状に前記差分形状を加えることで前記被検面の面形状を算出する第5のステップと、
を有することを特徴とする計測方法。
【請求項2】
前記座標変換テーブルを作成するステップを更に有し、
前記座標変換テーブルを作成するステップは、
前記基準面を前記共役な面から既知の量だけシフト又はチルトさせた複数の位置のそれぞれに位置決めし、前記複数の位置のそれぞれにおいて、前記基準面からの光が前記検出面に入射する角度を前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて前記検出部で検出するステップと、
前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて、前記基準面を前記複数の位置のそれぞれに位置決めする前後の前記検出部で検出された角度の変化量と前記基準面を前記共役な面から前記既知の量だけシフト又はチルトさせる前後の前記既知の非球面形状の変化量との比の分散が許容範囲となる前記被検面上の座標を求めるステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項3】
前記角度変換テーブルを作成するステップを更に有し、
前記角度変換テーブルを作成するステップは、
前記基準面を前記共役な面から既知の量だけシフト又はチルトさせた複数の位置のそれぞれに位置決めし、前記複数の位置のそれぞれにおいて、前記基準面からの光が前記検出面に入射する角度を前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて前記検出部で検出するステップと、
前記座標変換テーブルを用いて、前記基準面からの光が前記検出面に入射した位置を示す前記検出面上の座標を前記基準面上の座標に変換するステップと、
前記基準面を前記複数の位置のそれぞれに位置決めする前後の前記検出部で検出された角度の変化量と、前記変換された前記基準面上の座標における前記基準面を前記共役な面から前記既知の量だけシフト又はチルトさせる前後の前記既知の非球面形状の変化量の2倍の量との比を求めるステップと、
を有することを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項4】
前記角度変換テーブルは、前記検出面に入射する前記基準面からの光に対するメリジオナル方向及びサジタル方向のそれぞれについて作成されていることを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項5】
前記基準面からの光の前記基準面上の位置が前記第1のステップで検出された角度と前記第2のステップで検出された角度との角度差に比例して変化するときの比例係数を求めるステップを更に有し、
前記第3のステップでは、前記座標変換テーブルと前記比例係数とを用いて、前記被検面からの光が前記検出面に入射した位置を示す前記検出面上の座標を前記被検面上の座標に変換することを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項6】
前記座標変換テーブルを作成するステップを更に有し、
前記座標変換テーブルを作成するステップは、
前記基準面を前記共役な面から既知の量だけシフト又はチルトさせた複数の位置のそれぞれに位置決めしたときに、前記複数の位置のそれぞれにおいて、前記基準面からの光が前記検出面に入射する角度を前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて光線追跡によって求めるステップと、
前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて、前記基準面を前記複数の位置のそれぞれに位置決めする前後の前記光線追跡によって求められた角度の変化量と前記基準面を前記共役な面から前記既知の量だけシフト又はチルトさせる前後の前記既知の非球面形状の変化量との比の分散が許容範囲となる前記被検面上の座標を求めるステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項7】
前記角度変換テーブルを作成するステップを更に有し、
前記角度変換テーブルを作成するステップは、
前記基準面を前記共役な面から既知の量だけシフト又はチルトさせた複数の位置のそれぞれに位置決めしたときに、前記複数の位置のそれぞれにおいて、前記基準面からの光が前記検出面に入射する角度を前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて光線追跡によって求めるステップと、
前記座標変換テーブルを用いて、前記基準面からの光が前記検出面に入射する位置を示す前記検出面上の座標を前記基準面上の座標に変換するステップと、
前記基準面を前記複数の位置のそれぞれに位置決めする前後の前記光線追跡によって求められた角度の変化量と、前記変換された前記基準面上の座標における前記基準面を前記共役な面から前記既知の量だけシフト又はチルトさせる前後の前記既知の非球面形状の変化量の2倍の量との比を求めるステップと、
を有することを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項8】
前記第3のステップでは、前記座標変換テーブルを用いて前記被検面からの光が前記検出面に入射した位置を示す前記検出面上の座標から前記検出面と共役な面での座標を求め、当該共役な面での座標からの光が前記被検面と交差する前記被検面上の座標を光線追跡によって求めることで、前記被検面からの光が前記検出面に入射した位置を示す前記検出面上の座標を前記被検面上の座標に変換し、
前記第4のステップでは、前記角度変換テーブルを用いて前記第1のステップで検出された角度と前記第2のステップで検出された角度との角度差から前記検出面上の複数の座標のそれぞれに対応する前記検出面と共役な面上の複数の座標における角度差を求め、当該共役な面での座標における角度差から前記被検面と交差する前記被検面上の座標における角度差を光線追跡によって求めることで、前記第1のステップで検出された角度と前記第2のステップで検出された角度との角度差を、前記検出面上の複数の座標のそれぞれに対応する前記被検面上の複数の座標における角度差に変換することを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項9】
前記検出部は、シャック・ハルトマンセンサを含むことを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項10】
非球面を含む被検面の面形状を計測する計測装置であって、
光源からの光を用いて前記被検面を照明する第1の光学系と、
前記被検面からの光を検出面を有する検出部に導く第2の光学系と、
前記検出部での検出結果に基づいて、前記被検面の面形状を求めるための処理を行う処理部と、
を有し、
前記処理は、
既知の非球面形状を有する基準面を前記検出面と共役な面に配置し、前記基準面からの光が前記検出面に入射する角度を前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて前記検出部で検出する第1のステップと、
前記被検面を前記共役な面に配置し、前記被検面からの光が前記検出面に入射する角度を前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて前記検出部で検出する第2のステップと、
座標変換テーブルを用いて、前記被検面からの光が前記検出面に入射した位置を示す前記検出面上の座標を前記被検面上の座標に変換する第3のステップと、
角度変換テーブルを用いて、前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて、前記第1のステップで検出された角度と前記第2のステップで検出された角度との角度差を、前記検出面上の複数の座標のそれぞれに対応する前記被検面上の複数の座標における角度差に変換する第4のステップと、
前記第3のステップで変換された前記被検面上の座標と前記第4のステップで変換された前記被検面上の複数の座標における角度差を用いた積分演算によって前記被検面の面形状と前記既知の非球面形状との差分形状を求め、前記既知の非球面形状に前記差分形状を加えることで前記被検面の面形状を算出する第5のステップと、
を含むことを特徴とする計測装置。
【請求項1】
光源からの光を用いて非球面を含む被検面を照明する第1の光学系と、前記被検面からの光を検出面を有する検出部に導く第2の光学系とを備えた計測装置を用いて、前記被検面の面形状を計測する計測方法であって、
既知の非球面形状を有する基準面を前記検出面と共役な面に配置し、前記基準面からの光が前記検出面に入射する角度を前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて前記検出部で検出する第1のステップと、
前記被検面を前記共役な面に配置し、前記被検面からの光が前記検出面に入射する角度を前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて前記検出部で検出する第2のステップと、
座標変換テーブルを用いて、前記被検面からの光が前記検出面に入射した位置を示す前記検出面上の座標を前記被検面上の座標に変換する第3のステップと、
角度変換テーブルを用いて、前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて、前記第1のステップで検出された角度と前記第2のステップで検出された角度との角度差を、前記検出面上の複数の座標のそれぞれに対応する前記被検面上の複数の座標における角度差に変換する第4のステップと、
前記第3のステップで変換された前記被検面上の座標と前記第4のステップで変換された前記被検面上の複数の座標における角度差を用いた積分演算によって前記被検面の面形状と前記既知の非球面形状との差分形状を求め、前記既知の非球面形状に前記差分形状を加えることで前記被検面の面形状を算出する第5のステップと、
を有することを特徴とする計測方法。
【請求項2】
前記座標変換テーブルを作成するステップを更に有し、
前記座標変換テーブルを作成するステップは、
前記基準面を前記共役な面から既知の量だけシフト又はチルトさせた複数の位置のそれぞれに位置決めし、前記複数の位置のそれぞれにおいて、前記基準面からの光が前記検出面に入射する角度を前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて前記検出部で検出するステップと、
前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて、前記基準面を前記複数の位置のそれぞれに位置決めする前後の前記検出部で検出された角度の変化量と前記基準面を前記共役な面から前記既知の量だけシフト又はチルトさせる前後の前記既知の非球面形状の変化量との比の分散が許容範囲となる前記被検面上の座標を求めるステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項3】
前記角度変換テーブルを作成するステップを更に有し、
前記角度変換テーブルを作成するステップは、
前記基準面を前記共役な面から既知の量だけシフト又はチルトさせた複数の位置のそれぞれに位置決めし、前記複数の位置のそれぞれにおいて、前記基準面からの光が前記検出面に入射する角度を前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて前記検出部で検出するステップと、
前記座標変換テーブルを用いて、前記基準面からの光が前記検出面に入射した位置を示す前記検出面上の座標を前記基準面上の座標に変換するステップと、
前記基準面を前記複数の位置のそれぞれに位置決めする前後の前記検出部で検出された角度の変化量と、前記変換された前記基準面上の座標における前記基準面を前記共役な面から前記既知の量だけシフト又はチルトさせる前後の前記既知の非球面形状の変化量の2倍の量との比を求めるステップと、
を有することを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項4】
前記角度変換テーブルは、前記検出面に入射する前記基準面からの光に対するメリジオナル方向及びサジタル方向のそれぞれについて作成されていることを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項5】
前記基準面からの光の前記基準面上の位置が前記第1のステップで検出された角度と前記第2のステップで検出された角度との角度差に比例して変化するときの比例係数を求めるステップを更に有し、
前記第3のステップでは、前記座標変換テーブルと前記比例係数とを用いて、前記被検面からの光が前記検出面に入射した位置を示す前記検出面上の座標を前記被検面上の座標に変換することを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項6】
前記座標変換テーブルを作成するステップを更に有し、
前記座標変換テーブルを作成するステップは、
前記基準面を前記共役な面から既知の量だけシフト又はチルトさせた複数の位置のそれぞれに位置決めしたときに、前記複数の位置のそれぞれにおいて、前記基準面からの光が前記検出面に入射する角度を前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて光線追跡によって求めるステップと、
前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて、前記基準面を前記複数の位置のそれぞれに位置決めする前後の前記光線追跡によって求められた角度の変化量と前記基準面を前記共役な面から前記既知の量だけシフト又はチルトさせる前後の前記既知の非球面形状の変化量との比の分散が許容範囲となる前記被検面上の座標を求めるステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項7】
前記角度変換テーブルを作成するステップを更に有し、
前記角度変換テーブルを作成するステップは、
前記基準面を前記共役な面から既知の量だけシフト又はチルトさせた複数の位置のそれぞれに位置決めしたときに、前記複数の位置のそれぞれにおいて、前記基準面からの光が前記検出面に入射する角度を前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて光線追跡によって求めるステップと、
前記座標変換テーブルを用いて、前記基準面からの光が前記検出面に入射する位置を示す前記検出面上の座標を前記基準面上の座標に変換するステップと、
前記基準面を前記複数の位置のそれぞれに位置決めする前後の前記光線追跡によって求められた角度の変化量と、前記変換された前記基準面上の座標における前記基準面を前記共役な面から前記既知の量だけシフト又はチルトさせる前後の前記既知の非球面形状の変化量の2倍の量との比を求めるステップと、
を有することを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項8】
前記第3のステップでは、前記座標変換テーブルを用いて前記被検面からの光が前記検出面に入射した位置を示す前記検出面上の座標から前記検出面と共役な面での座標を求め、当該共役な面での座標からの光が前記被検面と交差する前記被検面上の座標を光線追跡によって求めることで、前記被検面からの光が前記検出面に入射した位置を示す前記検出面上の座標を前記被検面上の座標に変換し、
前記第4のステップでは、前記角度変換テーブルを用いて前記第1のステップで検出された角度と前記第2のステップで検出された角度との角度差から前記検出面上の複数の座標のそれぞれに対応する前記検出面と共役な面上の複数の座標における角度差を求め、当該共役な面での座標における角度差から前記被検面と交差する前記被検面上の座標における角度差を光線追跡によって求めることで、前記第1のステップで検出された角度と前記第2のステップで検出された角度との角度差を、前記検出面上の複数の座標のそれぞれに対応する前記被検面上の複数の座標における角度差に変換することを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項9】
前記検出部は、シャック・ハルトマンセンサを含むことを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項10】
非球面を含む被検面の面形状を計測する計測装置であって、
光源からの光を用いて前記被検面を照明する第1の光学系と、
前記被検面からの光を検出面を有する検出部に導く第2の光学系と、
前記検出部での検出結果に基づいて、前記被検面の面形状を求めるための処理を行う処理部と、
を有し、
前記処理は、
既知の非球面形状を有する基準面を前記検出面と共役な面に配置し、前記基準面からの光が前記検出面に入射する角度を前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて前記検出部で検出する第1のステップと、
前記被検面を前記共役な面に配置し、前記被検面からの光が前記検出面に入射する角度を前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて前記検出部で検出する第2のステップと、
座標変換テーブルを用いて、前記被検面からの光が前記検出面に入射した位置を示す前記検出面上の座標を前記被検面上の座標に変換する第3のステップと、
角度変換テーブルを用いて、前記検出面上の複数の座標のそれぞれについて、前記第1のステップで検出された角度と前記第2のステップで検出された角度との角度差を、前記検出面上の複数の座標のそれぞれに対応する前記被検面上の複数の座標における角度差に変換する第4のステップと、
前記第3のステップで変換された前記被検面上の座標と前記第4のステップで変換された前記被検面上の複数の座標における角度差を用いた積分演算によって前記被検面の面形状と前記既知の非球面形状との差分形状を求め、前記既知の非球面形状に前記差分形状を加えることで前記被検面の面形状を算出する第5のステップと、
を含むことを特徴とする計測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−132682(P2012−132682A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282395(P2010−282395)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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