説明

誘電体層形成用組成物、グリーンシート、誘電体層形成基板、及びその製造方法

【課題】均一で安定した分散状態を有し、塗布・焼成することにより、凹み欠点がなく、均一で高品質な誘電体層を形成できる誘電体層形成用組成物、グリーンシート、並びに誘電体層形成基板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス成分、熱分解性バインダー、分散剤及び溶剤を含有する誘電体層形成用組成物であって、前記分散剤が、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリカルボン酸系高分子界面活性剤、ポリエーテルエステル酸アミン塩、及びシランカップリング剤から選ばれる2種以上である誘電体層形成用組成物、この誘電体層形成用組成物をフィルム状に成形して得られるグリーンシート、基板上に、前記グリーンシートを用いて形成された誘電体層を有する誘電体層形成基板、並びにその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル等の誘電体層の形成に好適な誘電体層形成用組成物、この組成物をフィルム状に成形して得られるグリーンシート、並びに、前記グリーンシートから得られた誘電体層を有する誘電体層形成基板、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置には、液晶表示装置やエレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマディスプレイパネル等がある。これらの中でも、プラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」ともいう)は、次世代のマルチメディアディスプレイとして注目を集めている。
【0003】
図3にPDPの一例の断面図を示す。図3に示すPDPは、前面板用ガラス基板1及び背面板用ガラス基板2の1対のガラス基板からなる。この前面板用ガラス基板1と背面板用ガラス基板2の内面には、互いに直交する表示電極3及びアドレス電極4がそれぞれ形成されている。表示電極3及びアドレス電極4は、誘電体層5(前面板誘電体層)及び6(背面板誘電体層)によりそれぞれ覆われている。また、ガラス基板1及び2は、保護膜7を介してリブ(隔壁)8によって放電空間(画素)に分離され、各画素には蛍光体9が形成されている。
【0004】
PDPの誘電体層を形成する方法としては、誘電体層形成用組成物をフィルム状に成形して得られるグリーンシートを基板と貼り合わせ、その後グリーンシートを焼成する方法等が知られている(特許文献1,2等)。この方法によれば、高品質な誘電体層を効率よく形成することができる。
【0005】
近年、PDPはより高精細化される傾向にあり、PDPの誘電体層にも、より高品質なものが要求されている。
しかしながら、従来の誘電体層形成用組成物を用いる場合には、形成した誘電体層の表面又は断面方向に凹み欠点(穴開き欠点)が生じ、該誘電体層がパネルに組み込まれたときに、その部分が点灯不良等を起こす場合があった。また、組成物を調製した後使用するまでの間に、該組成物に相分離や沈殿物が生じ、均一な塗膜の形成が困難となる場合があり、問題となっていた。
【0006】
【特許文献1】特開平9−102273号公報
【特許文献2】特開平10−182919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、ガラス成分、熱分解性バインダー、分散剤、及び溶剤を含有する誘電体層形成用組成物において、均一で安定した分散状態を有し、塗布・焼成することにより、凹み欠点がなく、均一で高品質な誘電体層を形成できる誘電体層形成用組成物、グリーンシート、並びに誘電体層形成基板、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく、ガラス成分、熱分解性バインダー、分散剤、及び溶剤を含有する誘電体層形成用組成物について鋭意研究した結果、分散剤として、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリカルボン酸系高分子界面活性剤、ポリエーテルエステル酸アミン塩、及びシランカップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも2種を組み合わせたものを用いると、均一で安定した分散状態を有し、凹み欠点がなく、高品質な誘電体層が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして本発明の第1によれば、ガラス成分、熱分解性バインダー、分散剤、及び溶剤を含有する誘電体層形成用組成物であって、前記分散剤が、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリカルボン酸系高分子界面活性剤、ポリエーテルエステル酸アミン塩、及びシランカップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも2種であることを特徴とする誘電体層形成用組成物が提供される。
【0010】
本発明の誘電体層形成用組成物においては、前記熱分解性バインダーの含有量が、固形分比で、ガラス成分100重量部に対し、10〜50重量部であり、前記分散剤の含有量が、固形分比で、ガラス成分100重量部に対し、0.3〜5重量部であることが好ましい。
【0011】
本発明の誘電体層形成用組成物においては、前記溶剤中に分散しているガラス成分のゼータ電位の絶対値が50mV以上であることが好ましく、該ガラス成分の平均粒子径が3μm以下であることが好ましい。
本発明の誘電体層形成用組成物は、好適には、プラズマディスプレイパネルの誘電体層の形成に用いられるものである。
【0012】
本発明の第2によれば、本発明の誘電体層形成用組成物をフィルム状に成形して得られるグリーンシートが提供される。
本発明の第3によれば、基板上に、本発明のグリーンシートを用いて形成された誘電体層を有することを特徴とする誘電体層形成基板が提供される。
本発明の第4によれば、本発明のグリーンシートを基板と貼り合わせる工程と、前記グリーンシートを焼成することにより、誘電体層を形成する工程とを有する誘電体層形成基板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の誘電体層形成用組成物は、ガラス成分が凝集することなく、長期に亘って安定した分散状態を有する。
本発明の誘電体層形成用組成物及びグリーンシートを使用することによって、焼成後も凹み欠点のない、均一で高品質な誘電体層を得ることができる。
本発明の誘電体層形成用組成物及びグリーンシートは、プラズマディスプレイパネルの誘電体層の形成に好適に用いることができる。
【0014】
本発明の誘電体層形成基板は、本発明のグリーンシートを用いて形成された誘電体層を有するため、均一で高品質である。
本発明の誘電体層形成基板の製造方法によれば、画素欠陥のない誘電体層を有する、均一で高品質な誘電体層形成基板を効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を、1)誘電体層形成用組成物、2)グリーンシート、並びに、3)誘電体層形成基板、及びその製造方法に項分けして詳細に説明する。
【0016】
1)誘電体層形成用組成物
本発明の誘電体層形成用組成物(以下、単に「組成物」ということがある)は、ガラス成分、熱分解性バインダー、分散剤、及び溶剤を含有する誘電体層形成用組成物であって、前記分散剤が、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリカルボン酸系高分子界面活性剤、ポリエーテルエステル酸アミン塩、及びシランカップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも2種であることを特徴とする。
【0017】
(分散剤)
本発明の誘電体層形成用組成物は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリカルボン酸系高分子界面活性剤、ポリエーテルエステル酸アミン塩、及びシランカップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも2種からなる分散剤を含有する。このような2種以上の成分からなる分散剤を使用することで、均一で安定した分散状態を有する誘電体層形成用組成物を得ることができ、塗布・焼成することにより、凹み欠点がなく、均一で高品質な誘電体層を形成することができる。
【0018】
本発明の組成物においては、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリカルボン酸系高分子界面活性剤、ポリエーテルエステル酸アミン塩、及びシランカップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも2種を組み合わせて分散剤として使用すればよく、同種の界面活性剤から選ばれる2種以上であっても、異種の界面活性剤から選ばれる2種以上であってもよい。
【0019】
これらの中でも、より均一で安定した分散状態を有する誘電体層形成用組成物を得ることができ、塗布・焼成することにより、凹み欠点がなく、均一で高品質な誘電体層を形成できる観点から、(非イオン性界面活性剤とポリカルボン酸系高分子界面活性剤)、(非イオン性界面活性剤とポリエーテルエステル酸アミン塩)の組み合わせが好ましく、(非イオン性界面活性剤とポリカルボン酸系高分子界面活性剤)の組み合わせがより好ましい。
【0020】
陰イオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩、アルキルスルホコハク酸ナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム塩、ホルマリン縮合物ナトリウム塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩等が挙げられる。
【0021】
陽イオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノオレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレート、ラウリン酸ジエタノールアミド、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、ポリエーテル系界面活性剤等が挙げられる。
【0022】
ポリカルボン酸系高分子界面活性剤としては、α−オレフィン・無水マレイン酸共重合体の部分エステル、脂肪族ポリカルボン酸塩、脂肪族ポリカルボン酸特殊シリコーン等が挙げられる。
【0023】
ポリエーテルエステル酸アミン塩としては、ポリエーテルポリエステル酸、ポリエーテルポリオールポリエステル酸等のポリエーテルエステル酸類と、高分子ポリアミン等の有機アミン類とから得られる高分子分散剤(具体的には、ディスパロンDA−234(商品名、楠本化成(株)製)等)等が挙げられる。
【0024】
また、シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチル(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アンモニウムクロライド、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0025】
陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリカルボン酸系高分子界面活性剤、ポリエーテルエステル酸アミン塩、及びシランカップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも2種を組み合わせて用いる場合の重量比は、特に制約はなく、均一で安定した分散状態を有する誘電体層形成用組成物が得られるように、半経験的に各分散剤の混合割合を決定することができる。例えば、(非イオン性界面活性剤と、ポリカルボン酸系高分子界面活性剤又はポリエーテルエステル酸アミン塩)を組み合わせて用いる場合には、(非イオン性界面活性剤):(ポリカルボン酸系高分子界面活性剤又はポリエーテルエステル酸アミン塩)の重量比で、(非イオン性界面活性剤):(ポリカルボン酸系高分子界面活性剤又はポリエーテルエステル酸アミン塩)=1:10〜10:1、好ましくは5:1〜1:5、より好ましくは1:3〜3:1である。
【0026】
分散剤全体の使用量は、固形分比で、ガラス成分100重量部に対し、0.3〜5重量部、好ましくは1〜3重量部である。分散剤の使用量がこの範囲より少ないと、得られる誘電体層形成用組成物が、分散状態が不均一で、ガラス成分が沈降又は凝集しやすいものとなるおそれがある。一方、この範囲より多いと、焼成工程を経ても分散剤が誘電体層内に残存し、耐電圧及び透明性の低下の原因となる。
【0027】
(ガラス成分)
本発明の誘電体層形成用組成物に用いるガラス成分としては、例えば、PbO−B(酸化鉛−酸化ホウ素)系ガラス、PbO−B−SiO(酸化鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素)系ガラス、PbO−B−SiO−A1(酸化鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素−酸化アルミニウム)系ガラス、PbO−BaO−SiO−A1(酸化鉛−酸化バリウム−酸化ケイ素−酸化アルミニウム)系ガラス、PbO−BaO−B−SiO−Al(酸化鉛−酸化バリウム−酸化ホウ素−酸化ケイ素−酸化アルミニウム)系ガラス、Bi−BaO−B−ZnO−SiO(酸化ビスマス−酸化バリウム−酸化ホウ素−酸化亜鉛−酸化ケイ素)系ガラス、ZnO−B−SiO(酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素)系ガラス、PbO−ZnO−B−SiO(酸化鉛−酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素)系ガラス、NaO−B−SiO(酸化ナトリウム−酸化ホウ素−酸化ケイ素)系ガラス、BaO−CaO−SiO(酸化バリウム−酸化カルシウム−酸化ケイ素)系ガラス、PbO−BaO−B−SiO(酸化鉛−酸化バリウム−酸化ホウ素−酸化ケイ素)系ガラス、PbO−ZnO−B−BaO−SiO(酸化鉛−酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化バリウム−酸化ケイ素)系ガラス、ZnO−B−SiO−Al(酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素−酸化アルミニウム)系ガラス、PbO−ZnO−B−SiO−Al(酸化鉛−酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素−酸化アルミニウム)系ガラス等が挙げられる。また、これらのガラス成分には、CaO、SiO、TiO、CuO等が添加されていてもよい。
【0028】
これらの中でも、PbO−B−SiO系ガラス、PbO−B−SiO−A1系ガラス、PbO−BaO−SiO−A1系ガラス、PbO−BaO−B−SiO−Al系ガラス、Bi−BaO−B−ZnO−SiO系ガラスの使用が好ましく、PbO−BaO−B−SiO−Al系ガラス、Bi−BaO−B−ZnO−SiO系ガラスの使用がより好ましい。また、環境保護の観点からは、鉛成分(PbO)を含有しないガラスの使用が好ましい。
【0029】
本発明においては、これらのガラス成分を粉末状にして用いる。ガラス成分の平均粒子径は、好ましくは0.1〜5μm、より好ましくは0.5〜3.0μmである。このような範囲の平均粒子径を有するガラス成分を用いることにより、均一で安定した分散状態を有する誘電体層形成用組成物を得ることが容易となる。また、ガラス成分の最大粒子径は、均一で透明な誘電体層を得る上から、20μm以下であるのが好ましい。
【0030】
本発明においては、ガラス成分をガラスフリットとして用いることもできる。ガラスフリットは、ガラス成分及び所望によりフィラー成分を所定割合で混合し、得られた混合物を溶融し、次いで、冷却することで得ることができる。得られたガラスフリットは粉砕して粉末状にして用いる。粉末状に粉砕したガラスフリットの平均粒子径は、好ましくは0.1〜5μm、より好ましくは0.5〜3.0μmである。
【0031】
(熱分解性バインダー)
本発明の組成物は熱分解性バインダーを含有する。熱分解性バインダーは、焼成することにより分解して容易に除去できる、結合剤としての機能を有する。
【0032】
本発明に用いる熱分解性バインダーとしては、特に制限されないが、結合剤としての機能を有し、焼成することにより分解して、容易に除去できる有機高分子として、優れたバインダーとしての役割とガラス基板との感圧接着剤としての役割を果たすアクリル樹脂の使用が好ましい。
【0033】
アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリレート化合物の単独重合体、(メタ)アクリレート化合物の2種以上から得られる共重合体、(メタ)アクリレート化合物と他の共重合性単量体から得られる共重合体等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリレート化合物の2種以上から得られる共重合体が好ましい。ここで、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートのいずれかを表す(以下にて同じ)。
【0034】
(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;
【0035】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等のフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;
【0036】
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;
ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
他の共重合性単量体としては、上記(メタ)アクリレート化合物と共重合可能な化合物であれば特に制約されない。例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、ビニルフタル酸等の不飽和カルボン酸類;ビニルベンジルメチルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン等のビニル基含有ラジカル重合性化合物;等が挙げられる。
【0038】
これらの中でも、本発明に用いる熱分解性バインダーとしては、アルキル(メタ)アクリレートの少なくとも一種と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも一種とから得られる共重合体が特に好ましい。
【0039】
本発明においては、熱分解性バインダーとして、公知の製造方法で製造したもの、あるいは市販品として入手したものを用いることができる。
【0040】
熱分解性バンイダーの製造方法としては、特に制限されず、公知の方法を採用できる。例えば、アクリル樹脂は、前記(メタ)アクリレート化合物及び所望により他の共重合性単量体とを(共)重合させることにより製造することができる。重合方法は特に制限されず、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のラジカル重合開始剤を用いるラジカル重合法が挙げられる。
【0041】
本発明の誘電体層形成用組成物中の熱分解性バインダーの含有量は、固形分比で、ガラス成分100重量部に対し10〜50重量部、好ましくは15〜40重量部である。熱分解性バインダーをこのような範囲とすることで、均一で安定した分散状態を有する誘電体層形成用組成物が得やすくなる。
【0042】
本発明に用いる熱分解性バインダーの重量平均分子量は、特に制限されないが、通常15,000〜400,000、好ましくは50,000〜300,000である。分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0043】
本発明に用いる熱分解性バインダーのガラス転移温度(Tg)は、特に制限されないが、通常、−15℃〜+40℃である。
ガラス転移温度は、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)法により測定することができる。
【0044】
また本発明においては、熱分解性バインダーとして、熱分解性バインダーが水相に微粒子状に分散してなる熱分解性バインダーのエマルションを用いることもできる。
【0045】
(溶剤)
本発明の組成物には、適度な流動性又は可塑性、良好な膜形成性を付与するため、溶剤を用いる。用いる溶剤としては、水;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類:N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセタミド、ヘキサメチルリン酸ホスホロアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ε−カプロラクタム等のラクタム類;γ−ラクトン、δ−ラクトン等のラクトン類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;及びこれらの2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。これらの中でも、均一で安定した分散状態を有する誘電体層形成用組成物を効率よく得る上からは、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、又はこれらの2種以上からなる混合溶媒の使用が好ましい。
溶剤の使用量は、特に限定されるものではないが、通常1〜55重量%である。
【0046】
(その他の添加剤)
本発明の誘電体層形成用組成物には、必要に応じて、可塑剤、粘着付与剤、保存安定剤、消泡剤、熱分解促進剤、酸化防止剤等のその他の添加剤が添加されていてもよい。例えば、可塑剤は、加工適性を向上させるために添加される。用いる可塑剤としては、アジピン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、グリコールエステル系可塑剤等が挙げられる。可塑剤の使用量は、ガラス成分100重量部に対して、0〜10重量部である。
【0047】
(誘電体層形成用組成物の調製)
本発明の誘電体層形成用組成物は、上述した熱分解性バインダー、ガラス成分、分散剤及び溶剤等の原料をプレミキシングした後、分散機にかけて機械的に分散させることにより調製することができる。
【0048】
分散に用いる分散機としては特に制約はなく、例えば、ボールミル、ビーズミルなどのメディアミル;超音波式、撹拌式等の各種ホモジナイザー;ジェットミル;ロールミル;等の公知の分散機が挙げられる。
【0049】
以上のようにして得られる本発明の誘電体層形成用組成物は、溶剤中にガラス成分が均一に分散してなる分散液である。
【0050】
本発明の誘電体層形成用組成物においては、均一で安定した分散状態を有する誘電体層形成用組成物を得ることができ、塗布・焼成することにより、凹み欠点がなく、均一で高品質な誘電体層を形成することができる上では、組成物中に分散しているガラス成分のゼータ電位の絶対値が50mV以上であるのが好ましい。
【0051】
ゼータ電位は、ガラス成分の静止層と流動層の境界面(滑り面)での電位であり、分散液中における微粒子(ガラス成分)の分散状態に大きな影響を及ぼすものである。一般的に、ゼータ電位の絶対値が大きいほど、ガラス成分間の反発力が強くなり、分散液中におけるガラス成分の安定性は高くなる。逆にゼータ電位がゼロに近くなると、ガラス成分間の反発がなくなりガラス成分は凝集しやすくなるといえる。
【0052】
ゼータ電位の絶対値が50mV以上である組成物は、分散状態が極めて安定しており、このものを基板上に塗布・焼成することにより、凹み欠点がなく、均一で高品質な誘電体層を得ることができる。
【0053】
誘電体層形成用組成物のゼータ電位は、例えば、電気泳動法、流動電位法、沈降電位法、超音波法、ESA法等によって測定することができる。
【0054】
本発明の誘電体層形成用組成物において、溶剤中に分散しているガラス成分の平均粒子径は、特に制限されないが、均一で安定した分散状態を有する誘電体層形成用組成物を得ることができ、塗布・焼成することにより、凹み欠点がなく、均一で高品質な誘電体層を形成することができる上では、前記ガラス成分の平均粒子径は3μm以下であることが好ましく、0.5〜3μmであることがより好ましい。
溶剤中に分散しているガラス成分の平均粒子径は、公知の粒度分布測定装置を使用して測定することができる。
【0055】
本発明の誘電体層形成用組成物は、フラットパネルディスプレイの誘電体層、特にPDPの誘電体層の形成に好適に用いることができる。
また、本発明の組成物は、後述する本発明のグリーンシートの製造原料としても有用である。
【0056】
2)グリーンシート
本発明のグリーンシートは、本発明の誘電体層形成用組成物をフィルム状に成形して得られるものである。具体的には、本発明の組成物をキャリアーフィルム上に塗工し、次いで乾燥してフィルム化して製造することができる。
【0057】
本発明のグリーンシートを製造する一例を図1に示す。
図1において、13はキャリアーフィルム、14は本発明の誘電体層形成用組成物を塗工する塗工装置、18は誘電体層形成用組成物の塗膜を乾燥する(溶媒を除去する)乾燥装置、20a及び20bは、グリーンシート上に保護フィルムを積層する積層ロールである。
【0058】
以下、図1を参照しながら、本発明のグリーンシートの製造方法を説明する。
先ず、ロール状に巻き取られたキャリアーフィルム13が塗工装置14へ送られる。キャリアーフィルム13としては、誘電体層形成用組成物の塗膜との剥離性に優れるものであれば特に制限されない。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることができる。また、前記プラスチックフィルムの片面に、シリコーン樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂、長鎖アルキル樹脂等の剥離剤を塗布したものを用いるのが好ましい。さらに、上記プラスチックフィルム上に剥離性を有する樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にポリオレフィン樹脂を押し出したものでもよい。キャリアーフィルムの厚さは、通常10〜200μmである。
【0059】
次に、塗工装置14により、キャリアーフィルム13上に組成物が塗布される。塗工装置14は貯蔵部15と塗工部16からなる。貯蔵部15は、スラリー状の組成物を貯蔵し、この組成物を一定量ずつ塗工部16に送液する。塗工部16としては特に制限されない。例えば、ナイフコーター、ダイコーター等の公知のコーターを用いることができる。
本発明の組成物の塗工量は、形成する組成物の塗膜17aの厚みに応じて適宜設定することができる。
【0060】
次に、表面に組成物の塗膜17aが形成されたキャリアーフィルム13は、乾燥装置18に送り込まれる。この乾燥装置18内で組成物の塗膜17aを乾燥する(すなわち、溶剤等の揮発成分を除去する)ことにより、組成物の乾燥塗膜、すなわち、グリーンシート17がキャリアーフィルム13上に積層された積層物を得ることができる。
【0061】
前記組成物の塗膜17aを乾燥する方法としては特に制限されないが、例えば、(イ)塗膜が形成されたキャリアーフィルムを所定温度に加熱する方法、(ロ)前記塗膜表面に乾燥空気又は熱風を送り込む方法、(ハ)前記(イ)及び(ロ)を組み合わせる方法等が挙げられる。
乾燥するときの温度は、キャリアーフィルムが熱変形しない温度以下であれば特に制限されず、通常室温から150℃、好ましくは60〜130℃であり、乾燥時間は1〜10分である。
乾燥後の塗膜17aの厚みは、通常10〜200μm、好ましくは20〜120μmである。
【0062】
次いで、グリーンシート17上に保護フィルム19を積層する。
図1中、保護フィルム19はロール状に巻き取られた長尺のフィルムである。用いる保護フィルムとしては、前記キャリアーフィルムと同じものを使用することができる。保護フィルムの厚みは、通常10〜200μmである。
【0063】
グリーンシート17上に保護フィルム19を積層するには、図1中、2つの積層ロール20a及び20bの間をグリーンシート17と保護フィルム19とを通過させて、貼り合わせる(ラミネートする)。この場合、積層ロール20a及び20bの両方又は一方、例えば、保護フィルム面側のロール20bを加熱してもよい。
【0064】
以上のようにして、キャリアーフィルム13−グリーンシート17−保護フィルム19の3層からなる積層フィルム21を得ることができる。
得られた積層フィルム21は、ロール状に巻き取り、回収して保存、運搬することができる。
【0065】
以上のようにして得られる本発明のグリーンシートは、本発明の組成物をフィルム状に成形して得られたものであるので、均一で高品質の誘電体層を形成することができる。
【0066】
3)誘電体層形成基板及びその製造方法
本発明の誘電体層形成基板は、基板上に、本発明のグリーンシートを用いて形成された誘電体層を有することを特徴とする。
【0067】
本発明の誘電体層形成基板は、例えば、グリーンシートを基板と貼り合わせる工程と、前記グリーンシートを焼成することにより、誘電体層を形成する工程とを有する本発明の誘電体層形成基板の製造方法によって得ることができる。具体的には、グリーンシートから保護フィルムを剥離した後、基板にラミネートし、次いで、キャリアーフィルムを剥離した後、該グリーンシートを焼成して得ることができる。この方法によれば、大面積であっても、均一で高品質な誘電体層形成基板を製造することができる。
【0068】
ここで用いる基板としては、ガラス基板、セラミック基板等が挙げられ、ガラス基板が好ましい。ガラス基板としては、例えば、表面に表示電極が形成された前面板用ガラス基板等が挙げられる。基板の厚みは特に制限されないが、通常1〜10mm程度である。
【0069】
本発明の誘電体層形成基板として、PDPの前面板用ガラス基板に用いられる透明誘電体層を製造する一例を図2に示す。図2に示すものは、図3中、前面板用ガラス基板1上に透明誘電体層5を形成する例である。
【0070】
先ず、図2(a)に示すように、積層フィルム21の片面の保護フィルム19を剥離除去する。
次に、図2(b)に示すように、グリーンシート17を、表面に表示電極3が形成された前面板用ガラス基板1上(表示電極3が形成されている側)に熱圧着する。熱圧着は、例えば、加熱ローラーを用いて、加熱温度50℃〜130℃、圧力0.05MPa〜2.0MPaの条件で行うことができる。本発明の組成物中の熱分解性バインダーは、バインダーであるとともに感圧性接着剤でもあるため、簡便な操作により、グリーンシート17をガラス基板1に均一に貼着することができる。
【0071】
次いで、図2(c)に示すように、グリーンシート17からキャリアーフィルム13を剥離除去し、グリーンシート17が熱圧着されたガラス基板1を焼成する。この過程で、組成物中の熱分解性バインダーが熱分解し、有機成分が完全に除去される。
【0072】
グリーンシート17が熱圧着されたガラス基板を焼成する方法としては、例えば、グリーンシート17が熱圧着されたガラス基板を焼成炉の中に入れて全体を加熱する方法が挙げられる。
【0073】
焼成温度は、熱分解性バインダーが熱分解し、有機成分が完全に除去され、かつ、ガラス成分が均一な溶融状態となって溶融し、均一化する温度である。この焼成温度は、通常、グリーンシート中のガラス成分の軟化点付近の温度であるとされている。具体的には、通常500〜650℃、好ましくは520〜620℃である。
焼成時間は通常1分から3時間、好ましくは5分〜120分である。
【0074】
焼成後は、冷却することにより、図2(d)に示すように、厚さ5〜100μm、好ましくは5〜90μmの透明誘電体層5が積層されたガラス基板1を得ることができる。
【0075】
以上のようにして得られる透明誘電体層5は、凹み欠点のない、均一で高品質なものであって、透明性に優れている。凹み欠点の有無は、例えば、形成した誘電体層の表面部を目視観察することにより確認することができる。
【0076】
透明誘電体層5の直線光透過率は、好ましくは65%以上である。透明誘電体層の直線光透過率は、例えば、公知のヘイズメーター(HAZEMETER)を用いて測定することができる。
【0077】
なお、本実施形態では、PDPの前面板用ガラス基板1に用いられる透明誘電体層5を形成する場合について説明したが、背面板用ガラス基板2に対する白色誘電体層6や、セラミック基板上や回路基板上の誘電体層等も同様にして形成することができる。
【0078】
本発明の誘電体層形成基板を用いることにより、高品質なフラットパネルディスプレイを製造することができる。フラットパネルディスプレイとしては、PDP、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス表示装置等が挙げられ、PDPが特に好ましい。
【実施例】
【0079】
次に実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0080】
ガラス成分、分散剤、熱分解性バインダー、溶剤及び可塑剤は、次のものを用いた。
1)ガラス成分
(1)ガラス成分A:PbO、BaO、B、SiO、Alを主成分とした、平均粒子径1.5μmのガラスフリット
(2)ガラス成分B:Bi、BaO、B、ZnO、SiOを主成分とした、平均粒子径1.9μmのガラスフリット
【0081】
2)熱分解性バインダー
熱分解性バインダーとして、下記のものを用いた。なお、以下においては、2−エチルヘキシルメタクリレートを「2−EHMA」と、n−ブチルメタクリレートを「BMA」と、メチルメタクリレートを「MMA」と、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを「HEMA」とそれぞれ略記する。
【0082】
(1)熱分解性バインダーA:アゾビスイソブチロニトリル1.0重量部をラジカル重合開始剤として用い、2−EHMA:HEMA=97:3(重量%)のモノマー混合物200重量部を、メチルイソブチルケトン:酢酸エチル=25:75(重量%)の混合溶媒中で、70℃16時間重合させることにより得られた共重合体(重量平均分子量:80,000)の50重量%溶液。
【0083】
(2)熱分解性バインダーB:アゾビスイソブチロニトリル1.0重量部をラジカル重合開始剤として用い、2−EHMA:BMA:MMA:HEMA=40:40:10:10(重量%)のモノマー混合物200重量部を、メチルイソブチルケトン:酢酸エチル=25:75(重量%)の混合溶媒中で、70℃16時間重合させることにより得られた共重合体(重量平均分子量:80,000)の50重量%溶液。
【0084】
3)分散剤
(1)分散剤A:ポリカルボン酸系高分子界面活性剤(α−オレフィン/無水マレイン酸共重合体の部分エステル、商品名:フローレン G700、共栄社化学(株)製)
(2)分散剤B:ソルビタンモノオレート(商品名:SP−010V、花王(株)製)
(3)分散剤C:ポリエーテル系分散剤(商品名:NC−500,共栄社化学(株)製)
(4)分散剤D:ポリエーテルエステル酸アミン塩(商品名:ディスパロンDA−234、楠本化成(株)製)
【0085】
4)溶剤
メチルイソブチルケトンと酢酸エチルの混合溶媒(重量比1:1)
5)可塑剤
アジピン酸ジ2−エチルヘキシル(関東化学(株)製)
【0086】
6)平均粒子径の測定
誘電体層形成用組成物に含まれるガラス成分の平均粒子径(μm)は、レーザー回折式粒度分布測定装置(型式:LA−920、(株)堀場製作所製)で測定した。
【0087】
7)ゼータ電位の測定
誘電体層形成用組成物のゼータ電位は、該組成物に、ガラス成分濃度が30重量%となるまでメチルイソブチルケトンを添加して希釈し、得られた希釈液について、ゼータ電位測定器(ESA−9800、Matec Applied Sciences社製)により測定した。
【0088】
8)沈降安定性試験
誘電体層形成用組成物の少量を容器に入れ、該容器を密閉して14日間室温で静置した。目視観察により、ガラス成分と有機成分の相分離の有無、及び容器底のハードケーキの有無を確認した。どちらも確認されなかった場合を○、少なくとも一方が確認された場合を×(沈降安定性不良)として評価した。
【0089】
(実施例1)
前記ガラス成分A100重量部、熱分解性バインダーA30重量部、分散剤A0.5重量部、分散剤B0.9重量部、溶剤25重量部、及び可塑剤4重量部を、ビーズミル系分散機を用いて分散させることにより、実施例1の誘電体層形成用組成物1(以下「スラリー1」という)を調製した。
スラリー1に含まれるガラス成分の平均粒子径、スラリー1のゼータ電位の測定結果、及びスラリー1の沈降安定性試験結果を第1表に示す。
【0090】
キャリアーフィルムとして、片面をシリコーン樹脂により厚さ0.1μmで剥離処理された厚さ50μmの長尺のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意した。このフィルムの剥離処理された面上に、上記で得たスラリー1をナイフコーターを用いて塗布した。次いで、100℃で2分間乾燥して、PETフィルム上に厚さ70μmのグリーンシート1を得た。
【0091】
次に、上記で得たグリーンシート1上に、前記PETフィルムと同じ長尺の、片面をシリコーン樹脂により厚さ0.1μmで剥離処理された保護用PETフィルムの剥離処理面をロール間圧着させることにより、PETフィルム−グリーンシート−PETフィルムの3層が積層されてなる積層フィルムを得た。
【0092】
グリーンシート1上の保護用PETフィルムを剥離除去し、積層フィルムのグリーンシート面を下にして、表面に表示電極が形成された厚さ3mmのガラス基板(100mm×100mm)表面に重ね合わせ、加熱ローラーを用いて熱圧着(100℃、0.5MPa)した。
次いで、キャリアーフィルム(PETフィルム)を剥離除去し、焼成炉内に入れ、室温から10℃/分で570℃まで昇温し、570℃で30分間維持する条件でグリーンシート1の樹脂を焼成することにより熱分解除去し、厚さ35μmの誘電体層が形成された誘電体層形成ガラス基板1を得た。
得られた誘電体層形成ガラス基板1の表面の凹み欠点数(個/80mm×80mm)を目視にて観測したところ、凹み欠点は観測されなかった。
【0093】
(実施例2)
実施例1において、ガラス成分A100重量部の代わりにガラス成分Bを100重量部用い、熱分解性バインダーA30重量部の代わりに、熱分解性バインダーBを30重量部用い、分散剤A0.5重量部及び分散剤B0.9重量部に代えて、分散剤C1.0重量部及び分散剤D0.5重量部とした以外は実施例1と同様にして、誘電体層形成用組成物2(以下、「スラリー2」という)、グリーンシート2、及び誘電体層形成ガラス基板2を得た。
スラリー2に含まれるガラス成分の平均粒子径、スラリー2のゼータ電位の測定結果、及びスラリー2の沈降安定性試験結果を第1表に示す。
また、得られた誘電体層形成ガラス基板2の表面の凹み欠点数(個/80mm×80mm)を目視にて観測したところ、凹み欠点は観測されなかった。
【0094】
(実施例3)
実施例2において、熱分解性バインダーB30重量部に代えて、熱分解性バインダーBを80重量部用いた以外は、実施例2と同様にして、誘電体層形成用組成物3(以下、「スラリー3」という)を得た。
スラリー3に含まれるガラス成分の平均粒子径、スラリー3のゼータ電位の測定結果、及びスラリー3の沈降安定性試験結果を第1表に示す。
【0095】
キャリアーフィルムとして、片面をシリコーン樹脂により厚さ0.1μmで剥離処理された厚さ50μmの長尺のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意した。このフィルムの剥離処理された面上に、上記で得たスラリー3をナイフコーターを用いて塗布した。次いで、100℃で2分間乾燥して、PETフィルム上に厚さ95μmのグリーンシート3を得た。
【0096】
次に、上記で得たグリーンシート3上に、前記PETフィルムと同じ長尺の、片面をシリコーン樹脂により厚さ0.1μmで剥離処理された保護用PETフィルムの剥離処理面をロール間圧着させることにより、PETフィルム−グリーンシート−PETフィルムの3層が積層されてなる積層フィルムを得た。
【0097】
グリーンシート3上の保護用PETフィルムを剥離除去し、積層フィルムのグリーンシート面を下にして、表面に表示電極が形成された厚さ3mmのガラス基板(100mm×100mm)表面に重ね合わせ、加熱ローラーを用いて熱圧着(100℃、0.5MPa)した。
次いで、キャリアーフィルム(PETフィルム)を剥離除去し、焼成炉内に入れ、室温から10℃/分で570℃まで昇温し、570℃で30分間維持する条件でグリーンシート1の樹脂を焼成することにより熱分解除去し、厚さ35μmの誘電体層が形成された誘電体層形成ガラス基板3を得た。
得られた誘電体層形成ガラス基板3の表面の凹み欠点数(個/80mm×80mm)を目視にて観測したところ、凹み欠点は観測されなかった。
【0098】
(比較例1)
実施例1において、分散剤A0.5重量部、及び分散剤B0.9重量部に代えて、分散剤Aを1.4重量部用いた以外は実施例1と同様にして、誘電体層形成用組成物4(以下、「スラリー4」という)、グリーンシート4、及び誘電体層形成ガラス基板4を得た。
スラリー4に含まれるガラス成分の平均粒子径、スラリー4のゼータ電位の測定結果、及びスラリー4の沈降安定性試験結果を第1表に示す。
また、得られた誘電体層形成ガラス基板4の表面の凹み欠点数(個/80mm×80mm)を目視にて観測したところ、凹み欠点が3個観測された。
【0099】
(比較例2)
実施例1において、分散剤A0.5重量部、及び分散剤B0.9重量部に代えて、分散剤Bのみを1.4重量部用いた以外は実施例1と同様にして、誘電体層形成用組成物5(以下「スラリー5」という)、グリーンシート5及び誘電体層形成ガラス基板5を得た。
スラリー5に含まれるガラス成分の平均粒子径、スラリー5のゼータ電位の測定結果、及びスラリー5の沈降安定性試験結果を第1表に示す。
得られた誘電体層形成ガラス基板5の表面の凹み欠点数(個/80mm×80mm)を目視にて観測したところ、凹み欠点は観測されなかった。
【0100】
(比較例3)
実施例2において、分散剤C1.0重量部、及び分散剤D0.5重量部に代えて、分散剤C2.0重量部を使用した以外は実施例2と同様にして、誘電体層形成用組成物6(以下、「スラリー6」という)、グリーンシート6、及び誘電体層形成ガラス基板6を得た。
スラリー6に含まれるガラス成分の平均粒子径、スラリー6のゼータ電位の測定結果、及びスラリー6の沈降安定性試験結果を第1表に示す。
また、得られた誘電体層形成ガラス基板6の表面の凹み欠点数(個/80mm×80mm)を目視にて観測したところ、凹み欠点が2個観測された。
【0101】
(比較例4)
実施例2において、分散剤C1.0重量部、及び分散剤D0.5重量部に代えて、分散剤D1.0重量部を使用した以外は実施例2と同様にして、誘電体層形成用組成物7(以下「スラリー7」という)、グリーンシート7、及び誘電体層形成ガラス基板7を得た。
スラリー7に含まれるガラス成分の平均粒子径、スラリー7のゼータ電位の測定結果、及びスラリー7の沈降安定性試験結果を第1表に示す。
また、得られた誘電体層形成ガラス基板7の表面の凹み欠点数(個/80mm×80mm)を目視にて観測したところ、凹み欠点は観測されなかった。
【0102】
【表1】

第1表から、2種類の分散剤を使用して得られた実施例1〜3の誘電体層形成用組成物は、均一で安定した分散状態を有し(沈降安定性に優れる)、塗布・焼成することにより、凹み欠点がなく、均一で高品質な誘電体層を形成できることがわかる。
一方、一種類の分散剤(分散剤A、C)のみを使用して得られた、比較例1及び3の誘電体層形成用組成物では、均一で安定した分散状態を有する(沈降安定性に優れる)ものの、塗布・焼成して得られる誘電体層には凹み欠点が見られた。また、一種類の分散剤(分散剤B、D)のみを使用して得られた、比較例2及び4の誘電体層形成用組成物では、塗布・焼成して得られる誘電体層には凹み欠点は見られないものの、均一で安定した分散状態を有しない(沈降安定性に劣る)ものであり、ガラス基板上に均一な塗膜を形成することが困難であった。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明のグリーンシートを製造する工程概略図である。
【図2】本発明の誘電体層形成基板の形成方法を示す工程断面図である。
【図3】プラズマディスプレイパネルの一例の構造断面図である。
【符号の説明】
【0104】
1…前面板用ガラス基板、2…背面板用ガラス基板、3…表示電極、4…アドレス電極、5…誘電体層(前面板誘電体層)、6…誘電体層(背面板誘電体層)、7…保護膜、8…リブ(隔壁)、9…蛍光体、13…キャリアーフィルム、14…塗工装置、15…貯蔵部、16…塗工部、17a…誘電体層形成用組成物の塗膜、17…グリーンシート、18…乾燥装置、19…保護フィルム、20a、20b…積層ロール、21…積層フィルム






【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス成分、熱分解性バインダー、分散剤、および溶剤を含有する誘電体層形成用組成物であって、前記分散剤が、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリカルボン酸系高分子界面活性剤、ポリエーテルエステル酸アミン塩、およびシランカップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも2種であることを特徴とする誘電体層形成用組成物。
【請求項2】
前記熱分解性バインダーの含有量が、固形分比で、ガラス成分100重量部に対し、10〜50重量部であり、前記分散剤の含有量が、固形分比で、ガラス成分100重量部に対し、0.3〜5重量部である、請求項1に記載の誘電体層形成用組成物。
【請求項3】
前記溶剤中に分散しているガラス成分のゼータ電位の絶対値が50mV以上である請求項1または2に記載の誘電体層形成用組成物。
【請求項4】
前記溶剤中に分散しているガラス成分の平均粒子径が3μm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の誘電体層形成用組成物。
【請求項5】
プラズマディスプレイパネルの誘電体層の形成に用いられるものである請求項1〜4のいずれかに記載の誘電体層形成用組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の誘電体層形成用組成物をフィルム状に成形して得られるグリーンシート。
【請求項7】
基板上に、請求項6に記載のグリーンシートを用いて形成された誘電体層を有することを特徴とする誘電体層形成基板。
【請求項8】
請求項6に記載のグリーンシートを基板と貼り合わせる工程と、前記グリーンシートを焼成することにより、誘電体層を形成する工程とを有する誘電体層形成基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−246310(P2007−246310A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−69203(P2006−69203)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】