説明

負圧発生装置の制御装置

【課題】 負圧発生装置がともに使用される内燃機関に対する蒸発燃料の供給を優先可能な、さらには蒸発燃料の供給を優先するにあたって必要以上にエゼクタの機能が制限されることを抑制可能な負圧発生装置の制御装置を提供する。
【解決手段】 インテークマニホールド14から取り出そうとする負圧よりも大きな負圧を発生させるエゼクタ30と、エゼクタ30を流通する吸気の量を変更するVSV1とを有して構成される負圧発生装置100を制御するECU40Aであって、内燃機関50に対して行われる蒸発燃料の供給に応じて、エゼクタ30を流通する吸気の量を減少させるように、具体的には流路を全閉状態に遮蔽してエゼクタ30を流通する吸気の量をゼロにするようにVSV1を制御するパージ優先制御手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は負圧発生装置の制御装置に関し、特にエゼクタを有して構成される負圧発生装置を制御する負圧発生装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両において、大気から各気筒に連通する内燃機関の吸気系の吸気通路(以下、単に内燃機関の吸気系とも称す)から取り出そうとする負圧よりも、さらに大きな負圧をブレーキブースタに供給するためにエゼクタが利用されている。エゼクタは一般的にはスロットル弁を迂回するバイパス路に配設されており、ベンチュリー効果によってより大きな負圧を発生させる。このエゼクタを利用した技術として、例えば特許文献1にエゼクタを利用した負圧ブースタの負圧源装置が開示されている。
【0003】
【特許文献1】昭62−214245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来から内燃機関の吸気系の負圧を利用して内燃機関に蒸発燃料を供給し、燃費性能の向上を図るパージシステムが知られている。そして、このパージシステムには内燃機関の吸気系の負圧が低下した場合、蒸発燃料の供給流量(以下、単にパージ流量とも称す)が低下するため、内燃機関に蒸発燃料を多量に供給できなくなるといった課題が存在する。その一方でエゼクタが機能すると、バイパス路を流通する吸気が内燃機関の吸気系の負圧を低下させるように作用することになる。このため、蒸発燃料の供給(以下、単にパージとも称す)が行われているときにエゼクタも同時に機能していると、パージ流量の低下とともに蒸発燃料の燃料量(以下、単にパージ量とも称す)が低下し、その分蒸発燃料を有効利用できなくなってしまう虞がある。
【0005】
特に、直噴エンジン等のポンプロス低減のためにスロットルを開ける構成の内燃機関では、その吸気系の負圧が低下している場合が多くなっており、蒸発燃料を効率的に利用することが難しくなっている。
【0006】
そこで本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、負圧発生装置がともに使用される内燃機関に対する蒸発燃料の供給を優先可能な、さらには蒸発燃料の供給を優先するにあたって必要以上にエゼクタの機能が制限されることを抑制可能な負圧発生装置の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、内燃機関の吸気系の吸気通路から取り出そうとする負圧よりも大きな負圧を発生させるエゼクタと、該エゼクタを流通する吸気の量を変更する吸気量変更手段とを有して構成される負圧発生装置を制御する負圧発生装置の制御装置であって、前記内燃機関に対して行われる蒸発燃料の供給に応じて、前記エゼクタを流通する吸気の量を減少させるように前記吸気量変更手段を制御するパージ優先制御手段を備えることを特徴とする。すなわち本発明によれば、蒸発燃料の供給に応じてエゼクタの機能を制限することで内燃機関の吸気系の負圧をその分大きくできることから、蒸発燃料の供給を優先することができる。
【0008】
なお、蒸発燃料の供給に応じて、とは蒸発燃料の供給の有無だけに限られず、供給状態をも含む意である。具体的には例えば蒸発燃料の供給がない状態からある状態に変化する場合に限られず、蒸発燃料の供給がある場合に、さらに蒸発燃料の供給流量を調節するためのパージ流量調節手段の流路遮蔽度合いに応じることなども含む意である。すなわち、吸気量変更手段が例えば流路の遮蔽度合いを変更可能な流量調節弁などで実現されている場合には、パージ優先制御手段は、パージ流量調節手段の流路遮蔽度合いに応じて、パージ流量調節手段の流路遮蔽度合いが小さくなるほど、吸気量変更手段の流路遮蔽度合いが大きくなるように、吸気量変更手段を制御することなども可能である。これにより、ある程度エゼクタの機能と両立させるようにして、蒸発燃料の供給を優先することもできる。
【0009】
また本発明は、内燃機関の吸気系の吸気通路から取り出そうとする負圧よりも大きな負圧を発生させるエゼクタと、該エゼクタを流通する吸気の量を変更する吸気量変更手段とを有して構成される負圧発生装置を制御する負圧発生装置の制御装置であって、蒸発燃料の供給流量を調節するためのパージ流量調節手段が所定の度合い以上で流路を連通するように開かれている場合に、前記パージ優先制御手段が、前記エゼクタを流通する吸気の量を減少させるように前記吸気量変更手段を制御することを特徴とする。すなわち、多量の蒸発燃料を利用しようとしている状態において、パージ流量調節手段は一般にパージ流量を増大すべく大きく開かれることから、本発明によれば、多量の蒸発燃料を利用しようとしている状態に応じて蒸発燃料の供給を優先することができる。
【0010】
また本発明は、前記エゼクタを流通する吸気の量がゼロになるように減少されてもよい。特に蒸発燃料の供給を優先するにあたっては、例えば本発明のようにエゼクタを流通する吸気の量がゼロになるように減少されることが好適である。なお、吸気量変更手段が例えば流路の遮蔽度合いを変更可能な流量調節弁などで実現されている場合には、パージ優先制御手段が流路を全閉に遮蔽するようにこの流量調節弁を制御することで本発明を実現できる。また吸気量変更手段が例えば流路を全開、全閉に変更可能な制御弁などで実現されている場合には、パージ優先制御手段がこの制御弁を全閉に制御することで本発明を実現できる。なお前述の発明にあっては、パージ優先制御手段は、エゼクタの機能を完全に停止させないように所定の度合いで流路を遮蔽するように吸気量変更手段を制御することも可能である。これにより、蒸発燃料の供給を優先しつつも、ある程度エゼクタの機能を維持することもできる。
【0011】
また本発明は、さらに蒸発燃料の燃料濃度が所定値以下の場合には、前記パージ優先制御手段が、前記エゼクタを流通する吸気の量を減少させるように前記吸気量変更手段を制御しなくてもよい。ここで蒸発燃料の燃料濃度(以下、単にパージ濃度とも称す)が所定値以下の場合とは、利用可能な蒸発燃料の不足状態を指標するものであり、利用可能な蒸発燃料が不足している場合には、そもそもパージを行う必要性は乏しいものとなる。したがって係る場合にまで蒸発燃料の供給を優先すると、必要以上にエゼクタの機能が制限されることとなるため却って不都合である。本発明は係る点に鑑みたものであり、本発明によれば、蒸発燃料の供給を優先するにあたって、必要以上にエゼクタの機能が制限されることを抑制できる。
【0012】
また本発明は、上記負圧ブレーキ負圧発生装置の制御装置において、ブレーキ負圧が所定値以下の場合にはエゼクタを優先させるように構成することができる。ブレーキ負圧が所定以下となってブレーキの効きが劣化するような場合には、エゼクタを優先させることで十分なブレーキの効きを確保することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、負圧発生装置がともに使用される内燃機関に対する蒸発燃料の供給を優先可能な、さらには蒸発燃料の供給を優先するにあたって必要以上にエゼクタの機能が制限されることを抑制可能な負圧発生装置の制御装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、ECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)40Aで実現されている本実施例に係る負圧発生装置の制御装置を、負圧発生装置100とともに模式的に示す図である。内燃機関50を始めとした図1に示す各構成は車両(図示省略)に搭載されている。内燃機関50の吸気系10は、エアクリーナ11と、エアフロメータ12と、電動スロットル13と、インテークマニホールド14と、内燃機関50の各気筒(図示省略)に連通する図示しない吸気ポートと、これらの構成の間に適宜配設される例えば吸気管15a、15bなどを有して構成されている。エアクリーナ11は内燃機関50の各気筒に供給される吸気を濾過するための構成であり、図示しないエアダクトを介して大気に連通している。エアフロメータ12は吸気流量を計測するための構成であり吸気流量に応じた信号を出力する。
【0016】
電動スロットル13は、スロットル弁13aと、スロットルボディ13bと、弁軸13cと、電動モータ13dとを有して構成されている。スロットル弁13aは、内燃機関50の各気筒に供給する全吸気流量を開度変化により調整するための構成である。また、電動スロットル13はアイドル回転数を制御するために吸気流量を調節するための構成にもなっている。スロットルボディ13bは、吸気通路が形成された筒状部材からなる構成であり、この吸気通路に配設されたスロットル弁13aの弁軸13cを軸支する。電動モータ13dは、ECU40Aの制御の基、スロットル弁13aの開度を変更するための構成であり、この電動モータ13dにはステップモータが採用されている。電動モータ13dはスロットルボディ13bに固定されており、その出力軸(図示省略)は弁軸13cに連結されている。スロットル弁13aの開度は、電動スロットル13に内蔵された図示しないエンコーダ(以下、単にエンコーダと称す)からの出力信号に基づき、ECU40Aで検出される。
【0017】
なお、スロットル機構には、電動スロットル13のようなスロットル弁13aをアクチュエータで駆動するスロットルバイワイヤ方式を適用することが好ましい。但し、これに限られず、例えば電動スロットル13の代わりにワイヤなどを介してアクセルペダル(図示省略)と連動し、スロットル弁13aの開度が変更されるような機械式スロットル機構を適用してもよい。インテークマニホールド14は、上流側で一つの吸気通路を下流側で内燃機関50の各気筒に対応させて分岐するための構成であり、吸気を内燃機関50の各気筒に分配する。
【0018】
ブレーキ装置20は、ブレーキペダル21と、ブレーキブースタ22と、マスターシリンダ23と、ホイルシリンダ(図示省略)とを有して構成されている。運転者が車輪の回転を制動するために操作するブレーキペダル21は、ブレーキブースタ22の入力ロッド(図示省略)と連結されている。ブレーキブースタ22は、ペダル踏力に対して所定の倍力比でアシスト力を発生させるための構成であり、内部でマスターリシンダ23側に区画された負圧室(図示省略)が、エゼクタ30を介してインテークマニホールド14の吸気通路に接続されている。ブレーキブースタ22は、さらにその出力ロッド(図示省略)がマスターシリンダ23の入力軸(図示省略)と連結されており、マスターシリンダ23は、ペダル踏力に加えてアシスト力を得たブレーキブースタ22からの作用力に応じて油圧を発生させる。マスターシリンダ23は、油圧回路を介して各車輪のディスクブレーキ機構(図示省略)に設けられたホイルシリンダ夫々に接続されており、ホイルシリンダはマスターシリンダ23から供給された油圧で制動力を発生させる。なお、ブレーキブースタ22は気圧式のものであれば特に限定されるものではなく、一般的なものであってよい。
【0019】
エゼクタ30は、吸気系10、より具体的にはインテークマニホールド14から取り出そうとする負圧よりもさらに大きな負圧を発生させてブレーキブースタ22の負圧室に供給するための構成である。エゼクタ30は、流入ポート31aと流出ポート31bと負圧供給ポート31cとを有している。これらのうち、負圧供給ポート31cがエアホース5cでブレーキブースタ22の負圧室に接続されている。また、流入ポート31aは吸気管15aの吸気通路にエアホース5aで、流出ポート31bはインテークマニホールド14の吸気通路にエアホース5bで、電動スロットル13、より具体的にはスロットル弁13aを挟むようにして夫々接続されている。これによって、電動スロットル13を迂回するバイパス路Bが、エゼクタ30を含んでエアホース5aと5bとで形成される。なお、エゼクタ30が機能していない場合、ブレーキブースタ22の負圧室には、インテークマニホールド14の吸気通路から、エアホース5b、エゼクタ30の流出ポート31b及び負圧供給ポート31c、エアホース5c夫々を介して負圧が供給される。
【0020】
エアホース5aには、VSV(バキュームスイッチングバルブ)1を介在させている。VSV1は、ECU40Aの制御のもと、バイパス路Bを連通、遮断するための構成であり、本実施例では2ポジション2ポートのノーマルクローズドソレノイドバルブを採用している。但し、これに限られず、VSV1は他の適宜の電磁弁などであってよく、さらに例えば流路の遮蔽度合いを制御可能な流量調節弁などであってもよい。また、このVSV1はバイパス路Bを連通、遮断することで、エゼクタ30を流通する吸気の量を変更するとともにエゼクタ30を機能、或いは機能停止させるための構成となっている。本実施例ではVSV1で吸気量変更手段を実現している。
【0021】
図2はエゼクタ30の内部構成を模式的に示す図である。エゼクタ30は内部にディフューザ32を備えている。ディフューザ32は、先細テーパ部32aと、末広テーパ部32bと、これらを連通する通路にあたる負圧取出部32cとで構成されている。先細テーパ部32aは、流入ポート31aに対向するようにして開口しており、末広テーパ部32bは、流出ポート31bに対向するようにして開口している。また、負圧取出部32cは、負圧供給ポート31cに連通している。流入ポート31aには、流入してきた吸気を先細テーパ部32aに向けて噴射するノズル33が配設されており、ノズル33から噴射された吸気はディフューザ32を流通し、さらに流出ポート31bからエアホース5bに流出する。この際、ディフューザ32で高速噴流が生起されることにより、ベンチュリー効果で負圧取出部32cに大きな負圧が発生し、さらにこの負圧は負圧供給ポート31cからエアホース5cを介して負圧室に供給される。このようなエゼクタ30の機能により、ブレーキブースタ22は、インテークマニホールド14から取り出す場合よりも大きな負圧を得ることができる。なお、負圧取出部32cと負圧供給ポート31cとの間の内部流路と、流出ポート31bと負圧供給ポート31cとの間の内部流路と、ブレーキブースタ22のエアホース5c接続部とに設けられた逆支弁34は、夫々逆流を防止するためのものである。また、エゼクタ30は図2に示す内部構造を備えるものに限られず、その他の異なる内部構造を備えるエゼクタをエゼクタ30の代わりに適用してよい。
【0022】
排気系60は、エキゾーストマニホールド61と、三元触媒62と、図示しない消音器と、これらの構成の間に適宜配設される吸気管などを有して構成されている。エキゾーストマニホールド61は、各気筒からの排気を合流させるための構成であり、各気筒に対応させて分岐させた排気通路を下流側で一つの排気通路に集合させている。三元触媒62は排気を浄化するための構成であり、炭化水素HC及び一酸化炭素COの酸化と窒素酸化物NOxの還元を行う。排気系60には、排気中の酸素濃度に基づき空燃比をリニアに検出するためのA/Fセンサ63が三元触媒62の上流に、排気中の酸素濃度に基づき空燃比が理論空燃比よりもリッチかリーンかを検出するための酸素センサ64が三元触媒62の下流に、夫々配設されている。
【0023】
パージシステム70は、燃料タンク71と、キャニスタ72と、パージ制御弁73とを有して構成されている。キャニスタ72は、接続先の燃料タンク71内で発生する蒸発燃料を捕捉するための構成である。キャニスタ72は、内部に蒸発燃料を吸着するための活性炭(図示省略)を備えており、この活性炭は温度が低いほど蒸発燃料の吸着効率が向上し、温度が高いほど吸着した蒸発燃料の脱離効率が向上する性質を有している。また、キャニスタ72はインテークマニホールド14にパージ通路で接続されている。パージ通路にはパージ制御弁73が介在している。パージ制御弁73はパージ流量を調節するための構成であり、ECU40Aの制御のもと、流路の遮蔽度合いが適宜変更される流量調節弁となっている。パージ制御弁73が流路を連通すると、キャニスタ72内で脱離された蒸発燃料は吸気系10の負圧によりインテークマニホールド14の吸気通路に導かれる。本実施例ではパージ制御弁73でパージ流量調節手段を実現している。
【0024】
ECU40Aは、図示しないCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、入出力回路などを有して構成されている。ECU40Aは主として内燃機関50を制御するための構成であり、本実施例ではVSV1やパージ制御弁73や電動スロットル13なども制御している。ECU40Aには、VSV1やパージ制御弁73や電動スロットル13のほか、各種の制御対象が駆動回路(図示省略)を介して接続されている。また、ECU40AにはVSV1の作動状態を検出するための図示しないVSV1状態検出センサや、パージ制御弁73の作動状態を検出するための図示しないパージ制御弁63状態検出センサや、A/Fセンサ63や、酸素センサ64や、エンコーダや、アクセルペダルの状態を検出するための図示しないアクセルセンサや、内燃機関50の回転数Neを検出するための図示しないクランク角センサなどの各種のセンサが接続されている。
【0025】
ROMはCPUが実行する種々の処理が記述されたプログラムを格納するための構成であり、本実施例では内燃機関50制御用のプログラムのほかに、種々の条件のもと、エゼクタ30を流通する吸気の量を変更するとともにエゼクタ30を機能、或いは機能停止させるようにVSV1を制御する(以下、単にVSV1を開く、或いは閉じるとも称す)ためのVSV1制御用プログラムや、パージ制御弁73を制御してパージ制御を行うためのパージ制御用のプログラムも格納している。但し、これらのプログラムは一体として組み合わされていてもよい。また、本実施例ではVSV1制御用プログラムは、さらに蒸発燃料の供給に応じてエゼクタ30を流通する吸気の量を減少させるように、具体的には流路を全閉状態に遮蔽してエゼクタ30を流通する吸気の量をゼロにするようにVSV1を制御するためのパージ優先制御用プログラムを有して構成されている。本実施例ではCPUとROMとRAM(以下、CPU等とも称す)と上述の各種のプログラムとで各種の制御手段や検出手段や判定手段などが実現されており、特にCPU等とパージ優先制御用プログラムとでパージ優先制御手段が実現されている。また、本実施例ではVSV1と、エゼクタ30とで負圧発生装置100が実現されている。
【0026】
次に、蒸発燃料の供給に応じて蒸発燃料の供給を優先すべくVSV1を制御するにあたって、ECU40Aで行われる処理を図3に示すフローチャートを用いて詳述する。ECU40Aは、ROMに格納されたパージ優先制御用プログラム等に基づき、CPUがフローチャートに示す処理を極短い時間で繰り返し実行することで、VSV1を制御する。CPUは、エゼクタ30が作動中であるか否かを判定する処理を実行する(ステップ11)。エゼクタ30が作動中であるか否かは例えばVSV1状態検出センサの出力信号に基づき判定することができる。否定判定であれば、CPUはステップ11で肯定判定されるまでの間、引き続き本ステップに示す処理を実行する。一方、肯定判定であればCPUはパージ制御中であるか否かを判定する処理を実行する(ステップ12Aa)。
【0027】
パージ制御中であるか否かは、例えばパージ制御弁73状態検出センサの出力信号に基づき、パージ制御弁73が全閉状態で流路を遮蔽していないか否かで判定することができる。但し、これに限られず、パージ制御中であるか否かを例えばECU40Aで行われる内部処理に基づき判定してもよい。この場合には、パージ制御中であるか否かを例えばパージ制御を行うための条件が満たされたか否かで判定することなどが可能である。なお、パージ制御を行うための条件とは、具体的には例えば水温が所定温度に達したか否かや、さらにパージ制御が行われていない状態で所定時間が経過したか否かなどであり、これらはキャニスタ72に利用可能な蒸発燃料が十分あるか否かを推定判定するために行われる。但しこれに限られず、パージ制御を行うための条件は適宜の条件であってよく、例えばさらに空燃比がストイキであるか否かなどが判定されてもよい。
【0028】
ステップ12Aaで否定判定であれば、CPUは再びステップ11に示す処理を実行する。一方、ステップ12Aaで肯定判定であれば、CPUはVSV1を閉じるための処理を実行する(ステップ13)。すなわちステップ12Aaで肯定判定された結果、ステップ13でVSV1を閉じることで、蒸発燃料の供給に応じてVSV1を閉じることができる。これにより、エゼクタ30を流通する吸気を減少させた分、吸気系10の負圧を速やかに増大させることができることから、蒸発燃料の供給を好適に優先させることができる。
【0029】
なお、VSV1が流路の遮蔽度合いを変更可能な流量調節弁などで実現されている場合には、ステップ13でVSV1を閉じる代わりに、例えばエゼクタの機能を完全に停止させないように所定の度合いで流路を遮蔽するようにVSV1を制御することも可能である。これにより蒸発燃料の供給を優先しつつも、ある程度エゼクタの機能を維持することもできる。この場合には、パージ優先制御用プログラムとして所定の度合いで流路を遮蔽するようにVSV1を制御するためのプログラムをROMに格納すればよい。
【0030】
また、VSV1が流路の遮蔽度合いを変更可能な流量調節弁などで実現されている場合には、ステップ13でVSV1を閉じる代わりに、例えばパージ制御弁73の流路遮蔽度合いに応じて、パージ制御弁73の流路遮蔽度合いが小さくなるほど、VSV1の流路遮蔽度合いが大きくなるように、VSV1を制御することなども可能である。これにより、ある程度エゼクタの機能と両立させるようにして、蒸発燃料の供給を優先することもできる。この場合には、このようにVSV1を制御するためのプログラムをROMに格納すればよい。また、パージ制御弁73の流路遮蔽度合いは、例えばパージ制御弁73状態検出センサの出力信号に基づき検出することなどが可能である。以上により、負圧発生装置100がともに使用される内燃機関50に対する蒸発燃料の供給を優先可能なECU40Aを実現可能である。
【実施例2】
【0031】
本実施例に係るECU40Bは、パージ優先制御用プログラムが、パージ制御弁73が所定の度合いα以上で流路を連通するように開かれている場合に、エゼクタ30を流通する吸気の量を減少させるように、具体的には流路を全閉状態に遮蔽にしてエゼクタ30を流通する吸気の量をゼロにするようにVSV1を制御するためのプログラムとなっている以外、実施例1に係るECU40Aと同一のものとなっている。また、車両が備える各構成はECU40A以外、実施例1で示した各構成と同一のものとなっている。本実施例ではCPU等とこのパージ優先制御用プログラムとでパージ優先制御手段が実現されている。
【0032】
次に、パージ制御弁73が所定の度合いα以上で流路を連通するように開かれている場合に、蒸発燃料の供給を優先すべくVSV1を制御するにあたって、ECU40Bで行われる処理を図4に示すフローチャートを用いて詳述する。なお図4に示すフローチャートは、ステップ12Aaがステップ12Abに変更されている以外、図3に示すフローチャートと同一のものとなっている。このため本実施例では特にステップ12Abについて詳述する。CPUはステップ12Abでパージ制御弁73が所定の度合いα以上で流路を連通するように開かれているか否かを判定する処理を実行する。開かれているか否かは、例えばパージ制御弁73状態検出センサの出力信号に基づき判定することが可能である。本ステップで多量の蒸発燃料が利用されようとしているか否かが判定される。
【0033】
ステップ12Abで肯定判定であればCPUはVSV1を閉じるための処理を実行する(ステップ13)。これにより、多量の蒸発燃料を利用しようとしている状態に応じて蒸発燃料の供給を優先することができる。なお、VSV1が流路の遮蔽度合いを変更可能な流量調節弁などで実現されている場合には、実施例1と同様にステップ13でVSV1を閉じる代わりに、所定の度合いで流路を遮蔽するようにVSV1を制御してもよい。以上により、負圧発生装置100がともに使用される内燃機関50に対する蒸発燃料の供給を優先可能なECU40Bを実現可能である。
【実施例3】
【0034】
本実施例に係るECU40Cは、パージ優先制御用プログラムが、さらにパージ濃度が所定値β以下の場合には、エゼクタ30を流通する吸気の量を減少させるように、具体的には流路を全閉状態に遮蔽にしてエゼクタ30を流通する吸気の量をゼロにするようにVSV1を制御しないためのプログラムを有して構成されている以外、実施例2に係るECU40Aと同一のものとなっている。なお、実施例2に係るECU40Bが備えるパージ優先制御用プログラムが上記プログラムを有して構成されるようにしてもよい。また、車両が備える各構成は、ECU40A以外実施例1で示した各構成と同一のものとなっている。本実施例ではCPU等とこのパージ優先制御用プログラムとでパージ優先制御手段が実現されている。
【0035】
次に、ECU40Cで行われる処理を図5に示すフローチャートを用いて詳述する。なお図5に示すフローチャートは、ステップ12Aaに続いてステップ12Bが追加されている以外、図3に示すフローチャートと同一のものとなっている。このため本実施例では特にステップ12Bについて詳述する。ステップ12Aaで肯定判定であれば、CPUはパージ濃度を検出するための処理を実行するとともに、パージ濃度が所定値βよりも大きいか否かを判定する処理を実行する(ステップ12B)。ここでパージが行なわれた場合には、供給された蒸発燃料は空燃比に反映されることになる。このことから、A/Fセンサ63や酸素センサ64の出力信号を利用してパージ量を検出し、さらにはパージ濃度を算出することができる。なお、A/Fセンサ63や酸素センサ64を利用したパージ濃度の検出方法については公知技術が存在し、また本実施例ではパージ濃度の検出方法自体は適宜のものであってよいためここでは説明を省略する。また、A/Fセンサ63や酸素センサ64に限られず、例えばHCセンサ(ハイドロカーボンセンサ)をパージ通路またはインテークマニホールド14に設けて、HCセンサの出力信号に基づきパージ濃度を検出することなども可能である。
【0036】
ステップ12Bで肯定判定であれば、パージ濃度は十分に高く、蒸発燃料の供給を優先する必要があると判定され、CPUはステップ13に示す処理を実行する。これにより蒸発燃料の供給が優先される。一方、ステップ12Bで否定判定であれば、すなわちパージ濃度が所定値β以下である場合には、蒸発燃料の供給を優先する必要性が乏しいことから、CPUはステップ13に示す処理を実行することなくステップ11に示す処理を実行することになる。これにより、蒸発燃料の供給を優先するにあたって必要以上にエゼクタ30の機能が制限されることを抑制できる。以上により、負圧発生装置100がともに使用される内燃機関50に対する蒸発燃料の供給を優先可能な、さらには蒸発燃料の供給を優先するにあたって必要以上にエゼクタ30の機能が制限されることを抑制可能なECU40Cを実現可能である。
【0037】
なお、上記各実施例において、ブレーキ負圧が所定値以下の場合にはエゼクタを優先させるように構成することができる。ブレーキ負圧が所定以下となってブレーキの効きが劣化するような場合には、エゼクタを優先させることで十分なブレーキの効きを確保することができる。なお、ブレーキ負圧は、ブレーキ装置20に負圧センサを設け、その出力信号をECU40Aで受信処理することで得ることができる。ECU40Aは、前述した各フローチャートにおいて、エゼクタ30が作動中でないと判断した場合において、ブレーキ負圧が所定値以下かどうかを判断する。ブレーキ負圧が所定値以下と判断した場合には、エゼクタを優先させるためにVSV1を開く。
【0038】
上述した実施例は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】ECU40Aで実現されている負圧発生装置の制御装置を、負圧発生装置100とともに模式的に示す図である。
【図2】エゼクタ30の内部構成を模式的に示す図である。
【図3】ECU40Aで行われる処理をフローチャートで示す図である。
【図4】ECU40Bで行われる処理をフローチャートで示す図である。
【図5】ECU40Cで行われる処理をフローチャートで示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 VSV
10 吸気系
20 ブレーキ装置
30 エゼクタ
40 ECU
50 内燃機関
60 排気系
70 パージシステム
100 負圧発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気系の吸気通路から取り出そうとする負圧よりも大きな負圧を発生させるエゼクタと、該エゼクタを流通する吸気の量を変更する吸気量変更手段とを有して構成される負圧発生装置を制御する負圧発生装置の制御装置であって、
前記内燃機関に対して行われる蒸発燃料の供給に応じて、前記エゼクタを流通する吸気の量を減少させるように前記吸気量変更手段を制御するパージ優先制御手段を備えることを特徴とする負圧発生装置の制御装置。
【請求項2】
内燃機関の吸気系の吸気通路から取り出そうとする負圧よりも大きな負圧を発生させるエゼクタと、該エゼクタを流通する吸気の量を変更する吸気量変更手段とを有して構成される負圧発生装置を制御する負圧発生装置の制御装置であって、
蒸発燃料の供給流量を調節するためのパージ流量調節手段が所定の度合い以上で流路を連通するように開かれている場合に、前記パージ優先制御手段が、前記エゼクタを流通する吸気の量を減少させるように前記吸気量変更手段を制御することを特徴とする負圧発生装置の制御装置。
【請求項3】
前記エゼクタを流通する吸気の量がゼロになるように減少されることを特徴とする請求項1または2記載の負圧発生装置の制御装置。
【請求項4】
さらに蒸発燃料の濃度が所定値以下の場合には、前記パージ優先手段が、前記エゼクタを流通する吸気の量を減少させるように前記吸気量変更手段を制御しないことを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の負圧発生装置の制御装置。
【請求項5】
ブレーキ負圧が所定値以下の場合にはエゼクタを優先させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の負圧発生装置の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−8255(P2008−8255A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−181579(P2006−181579)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】