説明

貯蔵安定な酸性化食品組成物およびその調製方法

【課題】 酸味の少ない、低pH、高水分の、貯蔵安定な食品組成物、およびその作製方法の提供。
【解決手段】 Awが約0.90以上でありかつ最終pHが5.0以下、好ましくは4.2以下である食品組成物を提供するのに有効な量で、pH4.0での酸性化能が酸性化剤1g当たり少なくとも0.005モル/リットルである酸味の低い酸性化剤により酸性化される食品組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵安定な食品組成物、およびその調製方法を対象とする。詳細には、この食品組成物は、貯蔵安定性が高くかつ許容可能な味および官能特性を備える低pH高水分食品組成物を提供するのに有効な量の、酸性化された乳タンパク質、電気透析された組成物、および/または無機酸で調製される。より詳細には、本発明の食品組成物は、望ましくない酸性味、異臭、および/または他の望ましくない官能特性を与える有機酸分の実質的非存在下で、非常に低いpHにまで酸性化された、高水分で貯蔵安定な製品である。
【背景技術】
【0002】
食品製造業者は、理想的に、官能特性上好ましいだけではなく十分に貯蔵安定な、完成食品を製造する。一般に食品の保存は、概して、これまで、例えば直接的な酸性化、熱処理、化学保存剤、静水学的処理、冷蔵、およびそれらの組合せを介して試みられてきた。しばしば直面する難題は、食品の望ましい感覚属性を低下させることなく、したがって商品の商業的価値を低下させることなく、貯蔵寿命を向上させることである。
【0003】
食品加工は、所望の製品安定性を得るために、pH調節をたいてい必要とする。有機食品酸性化剤(酢酸や乳酸など)の直接添加は、そのような酸性化食品の味に、著しい(たいてい負の)変化を必然的にもたらす。低pH製品は、官能的品質を低下させ、また追加の処理をより難しくする、望ましくない沈殿物をもたらす可能性もある。
【0004】
食品に対する有機食品酸性化剤の添加の1つの代替例は、電気分解および/または電気透析によって生成される組成物を使用することである。電気透析(ED)は、溶解した塩またはその他の天然に生ずる不純物の、1つの水溶液から別の水溶液への分離に関連して使用される。これら溶解した塩またはその他の不純物の分離は、カソード(陰電位電極)とアノード(陽電位電極)との間に確立される印加電場の影響下における、半透性イオン選択膜を通るイオン移動の結果として起こる。膜は、1価または多価の陽イオンおよび/または陰イオンの間で分離が望まれるか否かに応じて、1価イオンまたは多価イオンに選択的であってよい。分離プロセスは、塩または不純物が濃縮された流れ(濃縮物または塩水として知られる)、および塩または不純物が枯渇した流れ(希釈物として知られる)をもたらす。濃縮物および希釈物の流れは電気透析装置内の溶液区画を流れ、該区画はアノードとカソードとの間に配置され、かつ交互に並べられた陽イオンおよび陰イオンの選択膜によって分離されている。アノード電極およびカソード電極に隣接する最外区画は、それを通って流れる再循環性の電極洗浄溶液を有して、カソードおよびアノード電極を清浄に保つ。
【0005】
低コスト、高品質の乳製品は、大体は、貯蔵安定な形で入手することができない。レトルト処理や無菌包装のようなプロセスが、貯蔵安定な乳製品を調製するのに使用されてきたが、しかしながら、これらのプロセスは、非常にコストがかかる。他のものは、湿潤剤(例えばグリセロール)および保存剤(例えば高塩、ソルビン酸)の使用に主に依存する、中程度の水分保存技術を使用し、非常に固く質の悪い生成物(例えば、ガム状またはキャンディ状の食感、許容されない味)をもたらす。貯蔵安定な乳製品を提供するための有機酸による酸性化の使用は、問題を引き起こし、該問題は、(1)粒状の質感、エマルジョンの破壊などをもたらすカゼインの等電沈殿、および(2)最も重要なことには、許容できない酸味を含む可能性がある。
【0006】
低pH(高酸性)食品製品の酸味強度すなわち酸性味は、概して、大量の直接の飲食に関して、食品製品をそれほど魅力的ではなくする(例えばレモンジュース)。感知される酸味強度は、概して、慣用の酸性化剤(例えば、酢酸、乳酸、クエン酸)で酸性化された酸性食品製品のpHに反比例する。また、いくつかの高酸性食品は、その強い酸味を打ち消すために、非常に甘く味付けされる(例えばレモネード)。他のものは、高い脂肪含量および/または高い塩含量で配合される。いくつかの場合では、これら酸性化製品は、冷蔵条件下でのみ安定である。例えば、非常に低いpH(例えば<3.5)の、ランチドレッシング、クリーミーキューカンバードレッシング、およびバターミルク風味のドレッシングなどのような、よりマイルドなまたは乳製品ベースのサラダドレッシングでは、伝統的な酢酸保存系によって与えられる酸味は、官能的観点からそれほど望ましくない製品を提供する。なぜならば、与えられる酸性味は多くの消費者にとって好ましくない可能性があるからである。マイルドなまたは乳製品ベースのサラダドレッシングに与えられる酸味は、これら乳ベース製品の高い緩衝能力に部分的に起因して、減カロリー配合物においてさらに重要なものになる。
【0007】
また、食品製品には、貯蔵安定性をもたらすために、著しい熱処理が行われている(例えば殺菌され、またはレトルトのような、より高度な熱処理にかけられる)。熱処理は、潜在的に生産を複雑化し、栄養価を低下させ、生産コストを増大させる。さらに、熱感受性食品製品は、特に、その望ましい感覚属性(例えば、味、口当り、質感、色、臭いまたはそれらが無いこと)を犠牲にすることなく、食品組成物の安定化に用いられる殺菌または他の著しい熱処理に耐えることができない可能性がある。例えば、いくつかのサラダドレッシングやディップ、スプレッド、ソースのような、乳製品(例えばミルク、チーズ、バター、クリーム、乳タンパク質など)を含有する特定の広く使用される甘味付けされない食品は、上記分類に入る。なぜならば、望ましくないかまたは望ましさが減じられた風味および/または口当りなどが、それらの著しい熱処理からもたらされるからである。
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,200,662号明細書
【非特許文献1】S.Rantakokko, S.Mustonen, M.Yritys,およびT.Vartiainen, “Ion Chromatographic Method for the Determination of Selected Inorganic Anions and Organic Acids from Raw and Drinking Waters Using Suppressor Current Switching to Reduce The Background Noise”, Journal of Liquid Chromatography and Related Technology(2004); 27, 821-842
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
高温処理、および/または甘味料、脂肪、ナトリウム塩、または他の保存剤の高添加率を必要としない、不快な酸味の異味のない貯蔵安定な酸性化高水分食品組成物を調製するための、新しく簡単な方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、酸味を導入することも食品組成物の官能特性に悪影響を与えることもなく、その貯蔵安定性を高めるのに有効な、高水分食品組成物を酸性化するための方法を広く対象とする。食品組成物の酸性化は、酸味のない酸性化剤の添加によって行われる。これらの酸性化剤は、電気透析組成物(ED)、食用無機酸、無機酸の食用金属酸塩、酸性化乳タンパク質や酸性化大豆タンパク質、酸性化卵アルブミン、酸性化穀物タンパク質、またはこれらの組合せのような高度に酸性化された食品成分から選択することができる。これらの種類の酸性化剤の1つまたは複数は、その目的のための酸味のある有機酸を使用する代わりに、より貯蔵安定な形にまで食品組成物のpHを著しく低下させるために使用される。
【0011】
1つの実施形態では、5.0以下、具体的には4.6以下、より具体的には4.2以下の最終pHを有し、約0.90以上の水分活性(Aw)を有する食品組成物を提供するのに有効な量で、pH4.0において酸性化剤1g当たり少なくとも約0.005モル/リットルの酸性化能を有する酸味の低い酸性化剤と食品を組み合わせることにより、酸味が軽減された、低pH高水分の貯蔵安定な食品組成物を作製するための方法が提供される。具体的な実施形態では、酸味の低い酸性化剤は、pH4.0において酸性化剤1g当たり少なくとも約0.01モル/リットル、より具体的にはpH4.0において酸性化剤1g当たり少なくとも約0.1モル/リットルの酸性化能を有し、pH4.0において酸性化剤1g当たり約0.01から約0.5モル/リットルに及んでもよい。本発明の実施形態に従って酸味が軽減された状態で調製することができる低pH高水分の貯蔵安定な食品組成物の非限定的な例には、例えば、ソース、グレイビー、スプレッド、ディップ、ドレッシング、サラダ、野菜、デンプン、肉、魚介類、シリアル、焼いた食品、フィリング、トッピング、焼いた食品、糖菓、飲料、デザート、スナック、およびそれらの混合物が含まれる。
【0012】
酸性化された乳清タンパク質濃縮物のような酸性化乳タンパク質成分は、過度の酸味を与えることなく高水分食品のpHを低下させるための食品酸性化剤として、調製し使用することができる。1つの実施形態では、酸性化高水分食品組成物、特に酸性化高水分乳タンパク質は、酸性化乳タンパク質成分で乳製食品を酸性化することによって提供される。該酸性化乳タンパク質成分は、乳清タンパク質濃縮物を食用無機酸および/またはその金属酸塩と水性媒体中で組み合わせて混合物を提供し、この混合物を乾燥させて、pH4.0において酸性化剤1g当たり少なくとも約0.01モル/リットル、具体的には、pH4.0において酸性化剤1g当たり約0.1から約0.5モル/リットルに及んでもよい酸性化能を有する酸性化乳清タンパク質濃縮物微粒子を提供することにより調製される。乳製食品は、ミルク、ミルク由来物、またはそれらの組合せを含んでもよい。ミルクは、新鮮な(全)乳、粉乳、濃縮乳、脱脂粉乳、減脂肪乳、およびそれらの混合物であってもよい。ミルク由来物は、乳清、乳清タンパク質濃縮物、チーズカード、カゼイン塩、バターミルク、クリーム、バター、乳脂肪、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。乳製品は、例えば、甘い味付けのクリームフィリングおよびクリームチーズであってもよい。
【0013】
あるいはまた、過度な酸味を与えることなく食品のpHを低下させるため、味の無い酸性ED組成物を調製し、使用する。1つの実施形態では、酸性ED組成物を、全陰イオンまたは全陽イオン濃度が1.8N以下である水溶液を、膜電気透析システムと接触させることを含むプロセスによって調製する。この膜電気透析システムは、陽イオン膜と陰イオン膜との間に両極性膜を含む少なくとも1つの電気透析セルを含み、この少なくとも1つのセルは、アノード電極とカソード電極との間に配置されている集積体である。好ましい実施形態では、該集積体は複数のセルを含む。水溶液のpHを少なくとも2.0だけ変化させ、かつ全陰イオンまたは全陽イオン濃度が1.0N以下であり、各陽イオンまたは陰イオン濃度が1.0N以下であり、遊離塩素含量が1ppm以下である電気透析組成物を提供するのに有効な時間にわたって、アノード電極とカソード電極との間に電位をかける。1つの実施形態では、膜電気透析システムは、カソード電極−(CAB)C−アノード電極、カソード電極−C(ABC)−アノード電極、カソード電極−A(BCA)−アノード電極、およびカソード電極−(ABC)−アノード電極からなる群から選択された集積構成を含むことができる。ここで、「C」は陽イオン膜を表し、「A」は陰イオン膜を表し、「B」は両極性膜を表し、「n」は、集積構成におけるセルの数を表す正の整数である。1つの好ましい実施形態では、以下の配列で(i)カソード電極、(ii)陽イオン膜、陰イオン膜、および両極性膜をこの順序で含む少なくとも1つの電気透析セル、(iii)陽イオン膜、および(iv)アノード電極を含む、少なくとも1つの電気透析セルが提供される。
【0014】
別の代替例では、食用無機酸および/またはそれらの金属酸塩を、過度な酸味を与えることなく食品のpHを低下させるのに使用する食品酸性化剤として、使用することができる。この点に関して有用な無機酸は、例えば、塩酸、硫酸、金属酸サルフェートなどを含む。
【0015】
しかしながら、上述の酸味のない食品酸性化剤の1つまたは複数の使用は、当該食品組成物中の酸味付与成分が共存する可能性およびその濃度に応じて、必ずしも、得られる低pH食品で知覚される酸味を排除または著しく低減させるとは限らず、また許容可能な製品を提供するとも限らない。特に、全有機酸、特にα−ヒドロキシ有機酸の低いレベルを所与の食品(摂取時)において維持することは、許容可能な酸性化食品製品を提供するのに重要であると考えられる。いくつかの配合食品製品においては、低pH食品に通常なら付随する酸味を有さない、貯蔵安定な食品組成物を提供するために、有機酸含量を低下させるのに有効な成分の選択および配合を必要とする。1つの実施形態では、酸性化食品組成物の全有機酸含量は、食品組成物1000g当たり約0.22モル以下であり、具体的には食品組成物1000g当たり約0.12モル以下であり、より具体的には食品組成物1000g当たり0.06モル以下である。これらの範囲内の量で保持される有機酸は、例えば、酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、グルコン酸、アジピン酸、および/またはラクトビオン酸を含む。調製された食品の場合、これは、適切な成分の選択および/または変性によって得ることができる。1つの実施形態では、完成した食品組成物は、酸味を与える有機酸を含まないか、または本質的に含まない。しかしながら、風味を変えるだけの少量の酸味ある有機酸を、上記範囲内の量でpH修正食品組成物に含めて、望ましくない酸性の刺激を与えるのではない望ましい手法で、風味のプロフィルを調節しまたは変化させることができることが理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、概して、酸性化乳タンパク質成分、電気透析組成物(ED)、食用無機酸、無機酸の食用金属酸塩、またはそれらの組合せから選択される酸味のない酸性化剤を使用して、高品質、高水分の、貯蔵安定な酸性化食品組成物を作製する方法に関する。より詳細には、食品を、pH4.0において酸性化剤1g当たり少なくとも約0.005モル/リットルの酸性化能を有する酸味の低い酸性化剤を、約0.90以上のAwを有しかつ最終pHが5.0以下、具体的には4.6以下、より具体的には4.2以下である食品組成物を提供するのに有効な量で組み合わせることによって、酸味の低い、低pH、高水分の、貯蔵安定な食品組成物を作製するための方法が提供される。具体的な実施形態では、酸味の低い酸性化剤の酸性化能は、pH4.0において酸性化剤1g当たり少なくとも約0.01モル/リットルであり、より具体的にはpH4.0において酸性化剤1g当たり少なくとも約0.1モル/リットルであり、pH4.0において酸性化剤1g当たり約0.01から約0.5モル/リットルに及んでもよい。
【0017】
本明細書で使用される際に、「酸性化剤」は、食品組成物のpHを低下させるpH調節剤を指す。「酸性化能」は、滴定の所与の終点pHでの、塩化水素溶液の当量滴定酸度を指し、酸性化剤1g当たりの塩化水素溶液の当量モル濃度(すなわち、モル/リットル)で表される。したがって、1g当たり0.1モル/リットルの酸性化能を備える酸性化剤は、滴定の特定の終点pH(例えば4.0)において、0.1モル/リットルの塩酸溶液1.0gと同じ滴定酸度を有することになる。「人間の摂取に適切」とは、有害なまたは未承認の化学物質または汚染物質、病原体、および不快な風味または味が無いことを意味する。「貯蔵安定な食品製品」とは、一般に、周囲条件下で貯蔵された保存食品製品が、摂取するのに安全であることを意味する。貯蔵安定性は、安全性(病原体の増殖に対する)または微生物学的安定性(腐敗微生物に対する)によって決定される。「貯蔵寿命」とは、特定の貯蔵条件下での貯蔵寿命を意味する。製品の貯蔵寿命は、官能的性質または食感品質、安全性または微生物学的安定性によって決定される。冷蔵流通および貯蔵システムを使用する場合、「貯蔵寿命」および「製品安定性」を延ばすことができる。具体的な態様では、貯蔵(周囲)安定な製品に関して、少なくとも約6カ月、または好ましくは9から12カ月の貯蔵寿命が得られる。別の態様では、約90日または具体的には少なくとも120日の、冷蔵製品、すなわち周囲温度では貯蔵安定でない製品の貯蔵寿命を得ることができる。
【0018】
酸味のない酸性化剤:酸性化乳清タンパク質
ある特定の実施形態では、非常に低いpHまで食品組成物を直接酸性化するのに使用される酸味のない酸性化剤は、高度に酸性化された乳清タンパク質である。乳清タンパク質は、人間にとって高い栄養価を有する。乳清タンパク質は、典型的には、約14000から100000の間の分子範囲を有する。乳清タンパク質の典型的な分析を、以下の表に示す。
【0019】
【表1】

【0020】
全てのタイプの乳清タンパク質材料は、本発明で使用される乳清タンパク質、最終的には食品製品に使用される乳清タンパク質の、可能性ある供給源と考えられる。したがって例えば、適切な乳清タンパク質材料は、慣用のチーズ作製プロセスから得られる乳清、乳清タンパク質濃縮物、および乳清タンパク質単離物などを含む。乳清タンパク質を含有する乳清タンパク質材料は、乾燥乳清粉末または濃縮(すなわち液体)乳清調製物の形をとることができる。本明細書における目的のために、「乳清タンパク質」という用語は、乳清タンパク質濃縮物(WPC)および乳清タンパク質単離物(WPI)を含むが、これらに限定されない。典型的には、WPCは、約35から約80%のタンパク質と、約4%よりも多い脂肪とを含有し、WPIは、典型的には、約90%以上のタンパク質と、約2%よりも少ない脂肪とを含有する。伝統的には、WPCは、チーズまたはカゼインの製造におけるミルクからの乳タンパク質の、酸(鉱酸または乳酸乳清)またはスイート(チーズまたはレンネット乳清)凝集の副産物である乳清に由来する。酸またはスイート乳清からWPCを生成するための標準的な方法は、周知であり、例えば、その記述が参照により本明細書に援用される特許文献1に論じられている(特許文献1参照)。乳清タンパク質の加水分解物も、本明細書に記述されるように酸性化を受け易い場合には、使用することができる。
【0021】
乳清タンパク質酸性化プロセス
酸性化乳清タンパク質は、一般に、材料の水和した形態を提供し、これを無機酸および/またはその金属酸塩で酸性化し、任意選択で酸性化された乳清タンパク質を加熱して食感を持たせ、乾燥して、酸性化された乳清タンパク質微粒子を提供することにより、調製される。乳清タンパク質を酸性化するための、1つの具体的なプロセスは、以下のステップを含む。
【0022】
(1)乳清タンパク質材料の水性混合物を調製するステップ。当初の乳清タンパク質材料が水溶液(例えば、チーズ製造プロセスからの乳清)である場合、その材料は、そのまま使用することができ、あるいは所望されるように付加的な水を添加または除去して、水性混合物を形成することができる。乾燥した乳清材料(例えば、乳清タンパク質単離物、乳清タンパク質濃縮物など)に関しては、水を添加して水性混合物を形成する。
【0023】
(2)乳清タンパク質材料の水性混合物を酸性化するステップ。乳清タンパク質の溶解度を維持するために、水性混合物のpHを約2.5から約4、好ましくは約2.5から約3.2に低下させるのに有効な量で、無機酸および/またはその金属酸塩を添加する。この目的に適した無機酸は、塩酸や硫酸、およびそれらの組合せのような無機酸を含むが、これらに限定されるものではない。酸味のない無機酸が、この酸性化プロセスに好ましい。特に、有機酸は、酸味を与えるので望ましくない。得られる酸性化乳清タンパク質は、ダイアフィルトレーション、pH調節などを介してpH中和がなされていない。酸性状態に維持しながら、任意選択的に、水性酸性化乳清タンパク質材料を、少なくとも約170°F(約77℃)、特に約175から約185°F(約79から約85℃)で、材料の粘度を変化させる(すなわち増加させる)のに十分な約20〜30分間にわたって、熱処理にかけてもよい。水性酸性化乳清タンパク質材料がエマルジョンを形成してもよいがゲルを形成しないように、熱処理を管理することができる。
【0024】
酸性化乳清タンパク質を、乾燥酸性化乳清タンパク質材料を形成するのに十分なまで、脱水する(例えば、蒸発加熱、凍結乾燥、噴霧乾燥など)。乾燥したタンパク質調製物を、有用な粒径にまで微粒子化(粉末化)する。例えば、1から100ミクロンの平均粒径を有する酸性化乳清タンパク質微粒子を提供および使用することができる。酸性化乳清タンパク質の微粒子化は、噴霧乾燥技術を使用することによって、乾燥と同時に実現することができる。また、機械的手段によるさらなる粉砕またはミリングを使用してもよい。酸性化乳清タンパク質微粒子は、概して、約7のpHで水溶液にもどされるとき、約25℃で少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%の溶解度を有する。
【0025】
上述の、乾燥酸性化乳清タンパク質微粒子は、乳化剤、安定化剤、抗ケーキング剤、抗スティッキング剤などのような他の成分と組み合わせることができる。代表的な安定化剤はガムであり、木、種、海藻、および微生物から得られるような、天然の植物性多糖を含み、アラビアガム、アカシア、トラガカント、カラヤ、カラマツ、ガティ、ローカスト、グアール、寒天、アルギン、カラギーナン、フラセララン、キサンタン、ペクチン、ゼラチンのような特定のタンパク質、それに加えて、セルロースのある特定の化学誘導体を含む。本発明の乾燥酸性乳清タンパク質微粒子を、水および/またはミルクのような水性成分を添加することによって、食品組成物と組み合わせるステップの前または間に再水和することができる(したがって、様々な成分を任意の適切な順序で合わせることができる)。次いで製品を、その具体的なタイプに応じて凍結し、冷蔵し、または調理し、後に使用するために貯蔵することができる。
【0026】
具体的な実施形態では、酸性化乳清タンパク質は、pH4.0において酸性化剤1g当たり少なくとも約0.01モル/リットル、具体的には、pH4.0において酸性化剤1g当たり約0.1から約0.5モル/リットルに及んでよい最小の酸性化能を備える酸性化乳清タンパク質濃縮物(「aWPC」)である。使用されるaWPCは、スラリーまたは粉末のいずれか一方の形態であることができ、主にpH調節剤としておよび二次的には食感改質剤として機能することができる。任意選択で、酸性化食品組成物を調製する際、電気透析組成物、無機酸、無機酸の金属酸塩、またはそれらの混合物のような付加的なpH調節剤を使用する必要はない。一般に、高酸性食品成分すなわちaWPCは、単純なブレンドおよび混合によって、全配合物ミックスに直接添加される。高酸性食品成分すなわちaWPCの量は、全配合物の緩衝能力および酸性化食品組成物が目標とする最終pHによって決定される。また、酸性化食品または乳組成物を作製するためにaWPCを使用するこの方法は、食感、ホイップ性、および全体的な製品外観を改善する。乳組成物は、主にミルク(例えば新鮮な(全)乳、濃縮乳、脱脂粉乳、減脂肪乳、およびそれらの混合物)およびミルク由来物(例えば乳清、チーズカード、カゼイン、クリーム、バターミルク、バター、バター脂肪など)から作製することができる。また、任意選択的に、植物油、砂糖、塩、乳化剤、親水コロイド、安定化剤、香料、着色料、ビタミン、ミネラル、ハーブ、スパイス、および微粒子を含む他の食用成分または添加剤を、酸性化乳組成物に添加してもよい。任意選択的に、最終の殺菌ステップ(例えばホットフィル)を使用して、貯蔵安定性をさらに高めてもよい。本発明の貯蔵安定な酸性化食品または乳組成物を、クリームチーズ、ドレッシング、ソース、ディップ、スプレッド、デザート、スナック、飲料、および糖菓を含むがそれらに限定されない完成製品の形で使用することができる。また、多相の食品製品、具体的にはスナックの成分として(例えばフィリングまたはトッピングとして)、それらを使用することもできる。
【0027】
本発明のこの実施形態は、酸味のない酸性化/保存技術を拡張して、高品質(例えば酸味が低い)、高水分、低pHの、貯蔵安定な食品製品を製造するに際し、望ましい製品pHを得る手段としての高酸性化食品成分(例えばaWPC)の使用をさらに対象とする。さらに、そのような成分、より具体的にはaWPCを使用することにより、少ない酸味でのマイクロスタビリティだけではなく、品質の改善(例えば硬さ、クリーム状、ホイップ性)およびプロセスの単純化(すなわち、酸の取扱いの排除、および最終の酸性化食品組成物における改善されたpH精度での個別の酸性化ステップの排除)も可能になる。したがってaWPCは、高品質の貯蔵安定な食品製品の製造で、二重機能成分として使用することができる。これは、費用のかかるプロセス(例えば無菌処理)のための高い資本投資費用の支出がありそうにない市場、および/または、冷蔵または冷凍流通システムが限定されまたは存在しないかのどちらかである市場に、特に適用可能である。
【0028】
他の酸味のない酸性化剤
酸性化乳清タンパク質は、本発明を実施するための1つの具体的な酸味のない酸性化剤であるが、酸性化タンパク質の他の供給源もまた、pHが非常に低く高水分の貯蔵安定な食品組成物を調製するための、酸味のない酸性化剤として使用することができる。これらは、例えば、酸性化大豆タンパク質、酸性化卵アルブミン、および酸性化穀物タンパク質を含む。酸性化卵アルブミンは、例えば、酸性化された新鮮な、冷蔵され、冷凍され、または乾燥された卵白を含む。酸性化全粒小麦粉のような酸性化穀物粉を、酸性化穀物タンパク質の供給源として使用することができる。あるいはまた、酸性化大豆粉を、酸性化大豆タンパク質の供給源として使用することができる。さらなる有用な酸味のない酸性化剤、およびこれを調製し使用する方法について、以下により詳細に記述する。
【0029】
食用無機酸およびその金属酸塩
本発明で使用することのできる食用無機酸は、例えば、塩酸、および硫酸、およびそれらの混合物を含む。本発明で使用することのできる無機酸の金属酸塩は、硫酸および重硫酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、またはマグネシウム塩のような、食用アルカリまたはアルカリ土類金属酸塩を含むが、これらに限定されるものではない。これらの金属酸塩は、例えば、重硫酸ナトリウム(すなわち硫酸水素ナトリウムまたはナトリウム酸サルフェート)、重硫酸カリウム(すなわち硫酸水素カリウム)、重硫酸カルシウム(すなわち硫酸水素カルシウム、酸性化硫酸カルシウム)、重硫酸マグネシウム(すなわち硫酸水素マグネシウムまたはマグネシウム酸サルフェート)、およびそれらの混合物を含む。これらの金属酸塩は、水性ベースの乳ブレンドまたは他の食品組成物に、容易にかつ均一に分散し溶解することができる粒径の、乾燥粒状結晶形態で市販されている。食品グレードの硫酸ナトリウム酸サルフェートを、例えばpHase(商標)(Jones−Hamilton Co.,sWalbridge OH)として、乾燥粒状形態で商業的に得ることができる。食品グレードの硫酸カルシウムを、例えばSafeO(商標)(Mionix、Rocklin、CA)として、乾燥粒状形態で商業的に得ることができる。
【0030】
ED組成物および処理
以下に述べるように、水溶液を供給流として使用し、膜電気透析を使用して処理して、ED組成物を形成する。また、ED組成物を、酸性化食品組成物の配合および/または調製に使用してもよい。企図される無機酸およびそれらの塩と同様に、本明細書で使用されるED組成物は、人間の摂取に適切である。図1〜4は、ED組成物の形成に使用することができる電気透析システムの、3つの異なる非限定的な例を示す。したがって、別段に指定しない限り、以下に述べるED処理に関する記述および材料は、図1〜4のシステムのいずれかに適用可能であると考えるべきである。
【0031】
ED処理用の水溶液
酸性ED組成物を生成するためにED法で処理することができる水性供給溶液は、湧水、井戸水、都市水、海水のような天然水源から得ることが可能な任意のミネラルまたはイオン豊富な水溶液、および/または汚染および過剰な塩素化(例えば、遊離塩素が約2ppmより多い)がなされていない人工的イオン豊富化水を含む。ED処理用の水性供給溶液は、約0.1から約200mS/cmの初期導電率を提供するのに有効な、約0.001Nから約1.8Nの全陽イオンまたは全陰イオン濃度を有するべきである。本明細書で使用される際に、「全陽イオン濃度」または「個々の陽イオン濃度」は、水素イオン濃度を除外した任意の陽イオン(例えばNa、K、Ca++、Mg++)濃度を意味する。「全陰イオン濃度」または「個々の陰イオン濃度」は、ヒドロキシルイオン濃度を除外した任意の陰イオン(例えばCl、F、SO−2、PO−3)濃度を意味する。イオン濃度は、例えば選択される陽イオンに対する誘導結合プラズマ原子発光分析や選択される陰イオンに対するイオンクロマトグラフィのような、当技術分野で知られている技術を使用して測定することができる。
【0032】
重要な態様では、EDで処理される水性供給溶液は、約0.005から約30mS/cmの初期導電率を提供するのに有効な、約0.002Nから約1.0Nの全陽イオンまたは全陰イオン濃度を有することができる。例えば、EDで処理される水溶液は、下記の少なくとも1つを含むことができる。
陽イオン濃度(N)
カルシウム 0〜0.2
マグネシウム 0〜0.002
カリウム 0〜0.01
ナトリウム 0〜1.7
陰イオン
重炭酸イオン 0〜0.07
塩化物イオン 0〜1.7
硫酸イオン 0〜0.01
【0033】
膜電気透析
図1〜4に示されるように、膜電気透析を、両極性膜と陰イオンおよび陽イオン膜との様々な構成を使用して行うことができる。膜は、カソード電極(すなわち負(−)に帯電した電極)とアノード電極(すなわち正(+)に帯電した電極)との間に配置され、電界を印加される。膜は、分離した区画を形成し、これらの区画を通って流れる材料を、別々に収集することができる。イオン選択膜を含む電気透析装置の例は、EUR6である(Eurodia Industrie、Wissous(フランス)から入手可能)。適切な膜は、例えば(株)トクヤマ(日本)から入手可能である。両極性膜は、一緒に接合された陽イオン膜および陰イオン膜を含む。
【0034】
1つの態様によれば、水溶液を、イオン選択膜に接触させる。水溶液は、イオン選択膜上に水溶液を流すことにより、バッチモード、半連続モード、または連続モードで処理することができる。所望のpHおよびイオン濃度を有する電気透析溶液を提供するのに有効な時間にわたって、アノードとカソードとの間に電位をかける。バッチモードでの処理時間、および半連続モードまたは連続モードでの流量は、使用されるイオン選択膜の数および印加される電位の量の関数である。したがって、得られるED溶液を監視し、所望のpHおよびイオン濃度が達成されるまでさらに処理することができる。一般に、各セル内の2つの膜の間のそれぞれの流れの両端には、約0.1から約10Vの電位が供給される。
【0035】
図1〜4に示されるように、本発明の膜電気透析システムは、1対の陽イオン膜の間(図1)、または1対の陰イオン膜の間(図2)、または陽イオン膜と陰イオン膜との間(図3〜4)に、少なくとも1つの両極性膜を含む。図1〜2の実施形態を参照すると、水溶液を複数の両極性膜(各両極性膜は、2つの陽イオン膜の間(図1)、あるいはまた、2つの陰イオン膜の間にある(図2))と接触させることによって、水溶液のpHを約0から約7のpH範囲に調節することができる。図3〜4の実施形態を参照すると、水溶液を複数の両極性膜(各両極性膜は、陽イオン膜と陰イオン膜との間にある(図3〜4))と接触させることによって、水溶液のpHを約0から約7のpH範囲に調節することができる。図1〜4では、両極性膜の左側の区画から、後の使用のために材料を収集する。また、両極性膜の右側の流れを、アルカリ生成物中で使用するために収集してもよい。両極性膜の右側の区画から収集された材料を、膜を通して戻して再循環してもよく、あるいは約0から約7のpH、好ましくは約1から約5のpHを有する水溶液を提供するのに必要な回数だけ第2の膜電気透析へと循環してもよい。また、両極性膜の左側の区画からの材料を、この膜を通して戻して再循環させてもよい。アノードおよびカソードに隣接する区画からの材料を、膜を通して戻して再循環することができる。
【0036】
図3をより詳細に参照すると、この実施形態では、1.8N以下の全陰イオンまたは全陽イオン濃度を有する水溶液が、膜電気透析システムと接触した状態の、多区画電気透析システムが提示される。該電気透析システムは、(i)カソード電極、(ii)陽イオン膜、陰イオン膜、および両極性膜をこの配列で含む少なくとも1つの電気透析セル、(iii)陽イオン膜、および(iv)アノード電極をこの順序で含む。少なくとも2.0だけ水溶液のpHを変化させ、1.8N以下の全陰イオンまたは全陽イオン濃度、0.9N以下の各陽イオンまたは陰イオン濃度、および2ppm以下(好ましくは1ppm以下)の遊離塩素含量を有する電気透析組成物を提供するのに有効な時間にわたって、カソード電極とアノード電極との間に電位を印加する。この例示では、膜電気透析システムは、カソード電極とアノードに隣接して配置された陽イオン膜との間に、複数の前記セルを含む。本明細書中の他の場所では「n」で表されるそのようなセルの数は、特に限定されるものではなく、例えば、1、2、3、またはそれ以上に定めることができる。
【0037】
より具体的には、図3に例示される膜の配置は、基本的に集積構成(I)を有する。
【0038】
(I)カソード電極−(CAB)C−アノード電極(「C」は陽イオン膜を指し、「A」は陰イオン膜を指し、「B」は両極性膜を指し、および「n」は積層体中のセルの数を指す)。例示されるシステム内で、電荷の方向が示されている。4つの流れが含まれる。「A」と「B」との間を流れる供給「水」は、電解質(例えば塩)添加を必要とせず、排出時に酸性になる。任意選択的に、塩/電解質は、プロセス流として、プロセス/供給流で使用することができる。得られる「塩基性流」は、BとCとの間を流れる。「塩溶液」は、CとA(この図でBの左側)との間を流れる。「電極洗浄流」は、アノード−C間およびC−カソード間の両方を流れる。この膜構成を使用することにより、比較的穏やかなED条件下で飲料(飲用)水を処理して、異味のない(例えば、遊離塩素が<2ppmの)酸性化された水を生成することが可能である。
【0039】
両極性膜が陽イオン膜と陰イオン膜との間に配置される図3の膜配置の代替の膜配置である図4を参照すると、集積構成(II)が下記の通り使用される。
(II)カソード電極−C(ABC)−アノード電極(「A」、「B」、「C」、および「n」は、上記と同じ意味を有する)。
【0040】
図3の他の代替例として、以下のような3チャンバ集積構成(III)または(IV)を使用することができる。
(III)カソード電極−A(BCA)−アノード電極、または
(IV)カソード電極−(ABC)−アノード電極。
構成(III)および(IV)では、酸および塩基の流れは脱塩され、塩の流れは豊富化される。
【0041】
積層構成(I)〜(IV)に関して、左から右に見た膜および電極の配列は、装置レイアウトの観察者の視野に依存する程度において、任意であることが理解されよう。例えば本明細書における目的のために、カソード電極−(CAB)C−アノード電極として示される集積構成(I)は、左から右への配列(例えば正面から見た場合など)を指すだけではなく、同じ装置レイアウトの後方から見た背面の眺めも指し、その眺めは、左から右への視点において、積層構成の配列がアノード電極−C(BAC)−カソード電極へと逆転する。同様に、本明細書における目的のために、カソード電極−C(ABC)−アノード電極の上記集積構成(II)は、アノード電極−(CBA)C−カソード電極の同じ積層配列の背面(後方から)の眺めも指す。
【0042】
電気透析組成物
図1〜3のシステムのいずれか1つに従うような膜電気透析で処理した後、pHが変更されたED組成物は、その全陽イオンまたは陰イオン濃度が約1.8N未満であり、個々のイオンの濃度はいずれも約1.0N未満であり、かつ遊離塩素含量が2ppm未満である。好ましい実施形態では、ED組成物は、その全陽イオン濃度または陰イオン濃度が約0.5N未満であり、個々の陽イオンまたは陰イオンの濃度が0.3N未満であり、遊離塩素含量が1ppm未満である。例えば、電気透析組成物は、下記の少なくとも1つを含有することができる。
濃度(N)
陽イオン:
カルシウム 0〜0.1
マグネシウム 0〜0.001
カリウム 0〜0.005
ナトリウム 0〜0.9
陰イオン:
重炭酸イオン 0〜0.04
塩化物イオン 0〜0.9
硫酸イオン 0〜0.005
また、他の無毒性の食用イオンが存在してもよく、それらは主に個々のイオンの味の影響によって限定される。
【0043】
膜電気透析で処理した後、ED組成物は、約0.0から約5に及ぶpHを有する。処理された溶液は、1ppm未満の遊離塩素含量を有し、不快な味および/または臭いが無い。
【0044】
貯蔵安定な食品組成物の調製
本発明の方法により、上述の様々なタイプの酸味のない酸性化剤で調製することができる食品組成物は、例えば、ソース、グレイビー、スプレッド、ディップ、ドレッシング、サラダ、野菜、デンプン(米、ポテト、パスタ、ヌードルなど)、肉、魚介類、シリアル、焼いた食品、フィリング、トッピング、焼いた食品、糖菓、飲料、デザート、スナック、およびそれらの混合物を含む。
【0045】
酸味のない酸性化剤を、乾燥状態、液体状態、または水性分散状態から食品組成物に組み入れることができる。ED組成物のような、液体形態の酸味のない酸性化剤が利用可能でありまたは提供される場合、この組成物を、配合物中に通常存在する水の完全または部分的な置換によって、食品製品に配合することができる。酸性化食品製品を得るのに有効な、所定pHのある量の酸味のない酸性化剤を食品配合物に直接組み入れることによって、貯蔵安定な配合食品製品を調製することができ、その量は、約5.0未満、具体的には約4.6未満、より具体的には約4.2未満の完成製品のpHを実現するのに十分である。
【0046】
概して、約1.0から約3.5のpHを有する酸味のない酸性化剤を使用して、貯蔵安定な食品組成物を調製する。酸味のない酸性化剤を、食品そのものの調製物中に組み入れることができ、または食品組成物の調理に使用することができる。以下により詳細に論じるように、主に風味および/または味付けの目的で、少量の慣用の食品酸味料(ビネガーのようなもの)を、依然として使用することができる。酸味を有することが通常予測される食品組成物(例えば培養された乳製品、果物風味付けをされた製品)に関して、以下により詳細に述べるように、完成した食品組成物中の全有機酸含量が低く維持され得る限りにおいて、本明細書で述べる酸味のない酸性化剤を使用して食品組成物を完全にまたは部分的に酸性化することによって、pH4.3以下にさらに酸性化された後のこれら食品組成物の酸味を、著しく低減させることができる。
【0047】
微生物学的安定性を提供するために、酸性化食品組成物は、酸性化処理と合わせて任意選択で、熱処理、例えば殺菌することができる。例えば、酸性化食品組成物を熱安定性の封止可能な容器内に置くことができる。容器を封止した後、この食品製品を殺菌するのに有効な温度および時間で、この封止容器内の食品製品を熱処理する。必要とされる殺菌ステップを、容器内への酸性化食品製品の単純なホットフィルによって実現してもよい。熱処理された食品製品を冷却して、温度を約25℃未満に低下させることが、一般に望ましい。保存食品製品は、有機酸タイプの食品酸味料の使用に通常付随する不快な酸味または異臭が無く、少なくとも6カ月間にわたって、しかし一般には9から12カ月のオーダーで、周囲条件下で安定である(すなわち有機酸)。
【0048】
塩またはナトリウムの含量は、もはや、低pH(例えば4.2以下)および熱処理(例えば殺菌)製品の貯蔵安定性を保証する要素ではないので、任意のレベルのナトリウム低減が可能である(例えば、無塩、薄塩)。したがって本発明は、栄養的に改善された製品を提供するのに使用することもできる。
【0049】
貯蔵安定な乳製品の調製
貯蔵安定な乳製品を、約2から約12重量%の乳清タンパク質濃縮物粉末を、4.3以下、好ましくは3.5以下のpHを提供する量の酸味のない酸性化剤とブレンドすることによって調製できる。スイート乳清由来の、任意の乾燥または液体のスイート乳清タンパク質濃縮物を、使用することができる(例えば、First District、MNからのFDA53)。低有機酸含量の乳清タンパク質濃縮物または単離物が、最も好ましい。乾燥乳清タンパク質濃縮物は、様々なタンパク質含量で市販されている。乾燥乳清タンパク質粉末を使用する場合、まず、曝気を避けるために例えばGroen Kettleを使用して穏やかに撹拌するだけの状態で、粉末を温水(約30から50℃)と穏やかに混合する。乳清タンパク質を完全に溶解させて乳清タンパク質溶液を形成するために、必要に応じて付加的な混合または剪断を使用することができる。
【0050】
最終製品が液状油を含有する場合、最終製品配合物からの油の一部を、乳清タンパク質スラリーに添加して、泡立ちを最小限に抑えることができる。任意選択で、選択された消泡剤(例えばTrans−220K、Trans−Chemo,Inc.WI)を使用することができる。乳清タンパク質溶液は、約180から205°F(約82から約96℃)の温度に加熱され、約5から20分間の時間、保持されることによって、食感が与えられる。濃厚なゲル状の、食感が与えられた乳清タンパク質スラリーは、加熱中に形成され、これを直接使用することもでき、食品製品に組み込まれる乳タンパク質成分として使用することもできる。この食感が与えられた乳清タンパク質スラリーは、低pH食品製品において物理的に安定であり(沈殿の危険性が無い)、これを、そのまま容易に使用することができ、または、食感が与えられていない乳清タンパク質および/または概して高pHの他の食品成分にブレンドすることによって、目標とするpH(例えばpH=4.0)、概してその現状のpHよりも高いpHにまで、さらに中和することができる。それほど好ましくない場合では、低pHの貯蔵安定な乳製品を後に調製する前に、pH標準化のために食用塩基(例えば水酸化ナトリウム)を添加してもよい。
【0051】
同様のソースを、乳清タンパク質単離物(WPI)を、市販の乳清タンパク質濃縮物(WPC)で置換することによって、等しい完成ソース中タンパク質含量で作製することができるが、著しく酸味が強く、それほど受け入れられないソースが得られた。これは明らかに、WPC中の高レベルの有機酸(主にクエン酸塩およびリン酸塩)による。対照的に、そのような有機酸は、典型的には、WPI生成中に除去されている。同様に、添加された乳酸およびリン酸を有する別のチーズ風味を使用したが、得られたソースはより酸味があり、それほど受け入れられないようになった。
【0052】
クリームチーズの調製
貯蔵安定なクリームチーズ、クリームチーズ製品、または乳製品は、冷蔵流通が不足しているかまたは存在しない世界的な新興市場にとって、非常に望ましい。典型的なクリームチーズ製品のpHは、pH4.7から5.0程度であり、最短で5カ月の貯蔵寿命を確実にするために、冷蔵貯蔵する必要がある。発酵によってpHをさらに低下させると(例えば4.6よりも低い)、乳酸の形成が原因で、知覚される酸味強度が徐々に増大する。クリームチーズでは、あるレベルの酸味は容認され、そのような製品(すなわち発酵した)の典型的な風味プロフィルのためにしばしば必要とされる。しかしながら、製品pHが約4.3よりも低くなると、製品の味は許容されないほど酸味が強くなる。したがって、酸味の少ない低pH(4.3以下)のクリームチーズ、クリームチーズ状製品、または乳製品が望ましい。真に貯蔵安定な本物のクリームチーズは存在しないが、周囲安定なクリームチーズスナック製品を製造しようとする従来技術は、主に製品のpHを4.6よりも低く保つことによって、および湿潤剤(例えばグリセロール)を含む保存剤を使用することによって、Awを約0.9より下に制御する手法をとってきた。これらの手法は、食品媒介病原体に対する製品の安全性を改善することができるが、しかしながら、しばしば製品の風味、味(具体的には、ポリオールからの不快な酸味および異味)、食感、および/または安定性を劣ったものにする。さらに、これらの手法は、典型的には、出発材料として、既に作製されたクリームチーズを典型的には完成品の約50重量%使用する必要がある。これは、最終の酸性化製品を調製するために、付加的な取扱いおよび処理ステップを必要とし、したがって、既存のクリームチーズプロセスに適用することが困難である。本発明は、pH低下剤、具体的には酸味への影響がほとんどないか全くないpH低下剤の選択的使用によって、酸味の問題を著しく緩和するだけではなく、通常のクリームチーズプロセスを使用することによって、真に(周囲)貯蔵安定にされた高品質の、本物のクリームチーズ/乳組成物も提供する。また、さらに本発明は、安定化剤系を調節することにより、クリーミーな口当りを犠牲にすることも、不快なペースト状またはガム状の食感を発生させることもなく、周囲貯蔵温度におけるクリームチーズの改善された硬さおよび物理的安定性(乳化破壊、離漿などに対して)を示す。従来技術とは異なり、本発明を、クリームチーズに関する米国規格に適合するよう作製することができる。
【0053】
1つの態様では、高品質高水分(例えばAw>0.9)の貯蔵安定なクリームチーズ、または乳組成物(クリームチーズ、乳スプレッド/ディップ、乳デザート、および乳飲料を含むがこれらに限定されない)が提供される。例えば、貯蔵安定なクリームチーズまたはクリームチーズ製品は、慣用のクリームチーズプロセスで直接作製され、そのような製品の低pHに通常付随する不快な酸味を引き起こすことなく、そのクリームチーズ製品は、5.0以下、好ましくは4.3以下、より好ましくは約4.2以下の最終製品のpHを有する。本発明の製品は、実質的に離漿が無く(例えば、周囲温度で6カ月後に2%未満)、降伏応力が室温で少なくとも500パスカル、好ましくは1000から2000パスカルであるクリーミーな食感を有し、および化学的および/または生物学的保存剤、および/またはAw低下湿潤剤(例えばポリオール)を必要とせずに周囲貯蔵条件下で微生物学的に安定である。本発明の製品を調製するには、当技術分野で知られている様々な製造プロセスを使用することができる。これらの適用可能なプロセスは、慣用のカードプロセス、および将来の状態の無乳清プロセスを含むが、これらに限定されない。例えば、前者のカードプロセスでは、まず、乳混合物を約4.6以上、好ましくは4.9以上のpHに発酵させて、十分なクリームチーズまたは培養乳風味を生成し、その後、1種または複数の低酸味酸性化剤を使用して、付加的および直接的な酸性化を行い、それによって、pHが4.3未満の最終製品を得る。培養乳風味が必要ではない場合、培養ステップを省略することができ、直接的な酸性化を行う。最終の加熱/殺菌ステップを、貯蔵安定性をさらに高めるために含めることができる。目標とする酸性pHと所望レベルの酸味および風味プロフィルとが実現される限りにおいて、任意の酸味のない酸性化剤、および前述のpH低下剤の任意の組合せを、本発明で使用することができる。酸性化乳タンパク質、酸性ED組成物、食用無機酸、無機酸の食用金属酸塩、酸性化大豆タンパク質、酸性化卵アルブミン、酸性化穀物タンパク質、またはそれらの混合物を、本発明での主なpH低下剤として使用することが好ましい。目標とする製品pHでの望ましい酸味は、最終保存製品において、酸味の無いpH低下剤(例えば酸性化乳清タンパク質)と、存在する場合には酸味のある食品酸(例えばクエン酸)との比とを制御することによって、慎重に実現される。また、他の食用の酸味のある酸を、風味改質剤として本発明で使用することができ、そのような酸は、酢酸、アジピン酸、フマル酸、グルコン酸、乳酸、ラクトビオン酸、リンゴ酸、リン酸、および酒石酸を含むが、これらに限定されない。また、本発明の製品を作製する手法および方法を、酸味の無いpH低下剤を使用して、製品pHをさらに低下(例えば4.6よりも低い値まで)させることにより、クリームチーズ(pH約4.7から5.0)のような冷蔵乳組成物の貯蔵寿命を延ばすのに使用することもできる。本発明の製品は、バランスのとれたクリームチーズの風味プロフィル、および許容される硬さ/物理的安定性のための、安定化剤系、味覚調節剤、天然および/または人工の風味の選択的使用によって、さらに特徴付けられる。少なくとも1種(または複数の組合せ)の陰イオン安定化剤ガムが、0.1%以上の全レベルで使用される。これらの陰イオンガムは、キサンタン、カラギーナン、ペクチン、および寒天を含むが、これらに限定されない。任意選択で、天然および/または人工の風味と、ビタミンE/EDTAのような食品グレードの酸化防止剤とを添加して、全体的な風味プロフィルおよび安定性を改善することができる。
【0054】
ミルクおよび乳ベース製品
新鮮なまたは生のミルクで作製された食品製品は、世界中で消費者に高く評価されている。現行の高ミルクベースのスナックは、典型的には、便利さおよび携帯性が低く(例えば、アイスクリームサンドイッチ)、および/または保存剤が多い(例えば、塩、砂糖、湿潤剤、抗カビ剤)。貯蔵安定な高水分のミルクまたは乳ベースのスナックは、冷蔵および/または冷凍流通が不足しているかまたは存在しない世界の新興市場にとって、非常に望ましい。また、高水分であることが、より高い製品品質(例えばクリーミーな食感)、およびより低い配合コストが可能にする可能性がある。本発明は、「新鮮なミルクで作製されたこと」という要求が望まれる場合に、特に適用可能である。発酵によるpHの低下、新規な酸性化、およびそれらの組合せによって、ほとんどの食品において、pHが約5.0より低い値、具体的には4.3よりも低い値においてでさえも、所望の酸味強度を制御し生み出すことが可能な製品の安全性がもたらされる。本発明は、新規な酸性化および保存技術を使用および拡張して、貯蔵安定なスナック、具体的には、所望の官能的性質および必要な取扱い/処理特性(例えば形成および成型に関する)を備える、主たる相が高水分でクリーミーなミルク/乳ベースの成分である多相スナックを作製する。所望の特性が提供された製品は、非常に高い水分の食品組成物を含む(すなわち、Aw>約0.9、具体的にはAw>約0.92、より具体的にはAw>約0.95)。提供される改善された貯蔵安定性は、例えば、周囲貯蔵条件を含む多くの環境に適用可能である。
【0055】
いくつかの実施形態では、クリーミーで貯蔵安定な、高水分の、ミルクまたは乳ベースの食品製品またはスナックが提供される。スナックは、単独で、または多相製品においてはシリアル(例えばクッキー)、糖菓(例えばチョコレート)などで作製される少量部分に封入または挟持されるその主要部分として、ミルクまたは乳含有成分を有する。ミルク/乳成分は、少なくとも約45重量%の水分と、少なくとも約0.90の水分活性と、約4.6未満、好ましくは約4.2以下のpHとを有し、および主にミルク(流体/乾燥、新鮮/濃縮など)およびミルク由来物(乳清、乳清タンパク質濃縮物、乳清タンパク質単離物、カゼイン塩、チーズカード、バター、バターミルク、クリーム、乳脂肪など)を含み、それらは、酸性乳清タンパク質、ED組成物、無機酸、またはその金属酸塩、あるいはそれらの混合物のような、酸味のない酸性化剤で酸性化される。また、前記ミルク/乳成分は、所望の加工性(例えば成型)を提供するために、少なくとも1種の親水コロイド安定化剤(例えばゼラチン、カラギーナン)を含有してもよい。任意選択で、香料、着色料、ミネラル、栄養素、および/または他の機能性成分を添加することができる。ミルク/乳成分は、任意選択的に引き続く発酵ステップを有する乳混合物を混合し、殺菌し、ならびに均質化する工程、およびそれを酸性化し、加熱し、均質化し、曝気し(任意選択)し、ならびに冷却の際に適切な型/形状に充填/成型する工程によって調製される。また、制御された雰囲気での包装または保存剤(例えばソルビン酸カリウム)を、カビおよび酵母の抑制に使用してもよい。多相製品では、少量部分、典型的には脂質連続相コーティング(例えばチョコレート)、または脂質含有コーティングで任意選択的に被覆されたベークドシリアル製品(例えばクッキー)が利用される。少量成分のpHは約5.0以下であるべきであり、主要成分(例えばミルクまたは乳フィリング)のpHに一致することがより好ましい。スナックは、酸味が低く、少なくとも約30日以上(例えば、冷蔵貯蔵条件下で4カ月)にわたって、安全かつ安定である。
【0056】
全有機酸含量
食品製品中の全有機酸含量は、知覚される酸味強度に影響を与える可能性がある。保存食品中の「有機酸」は、主に、酢酸、アジピン酸、クエン酸、フマル酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、リン酸、および酒石酸を含むがこれらに限定されない、添加された食品酸性化剤から生ずる。また、食品成分中の、天然の有機酸は、知覚される酸味にも寄与する。したがって「全有機酸含量」を、以後、全ての上記食品酸性化剤と、全ての天然の有機酸との合計と定義する(シュウ酸やコハク酸、アスコルビン酸、クロロゲン酸などのような、上述されていないものを含む)。有機酸のプロフィルを、非特許文献1に記載されているような適切な分析方法を使用して、容易に得ることができる(非特許文献1参照)。個々の有機酸の量を、測定し、合計して、「完成食品組成物1000g当たりのモル数」で都合良く表される「全有機酸含量」を得ることができる。
【0057】
上述の、1種または複数の酸味のない食品酸性化剤の使用は、同じ食品組成物中の酸味付与成分が共存する可能性およびその濃度に応じて、必ずしも、得られる低pH食品で知覚される酸味を排除または著しく低減させるとは限らず、また許容可能な製品を提供するとも限らない。特に、所与の食品製品(摂取時)において、全有機酸、特にα−ヒドロキシ有機酸の低いレベルを維持することは、許容可能な酸性化食品を提供するのに重要であると考えられる。低pH食品に通常なら付随する酸味を有さない貯蔵安定な食品組成物を提供するために、いくつかの配合食品において、有機酸含量を低下させるのに有効な成分の選択および配合が必要とされている。1つの実施形態では、酸性化食品組成物の全有機酸含量は、食品組成物1000g当たり約0.22モル以下であり、具体的には食品組成物1000g当たり約0.12モル以下であり、より具体的には食品組成物1000g当たり0.06モル以下である。これらの範囲内の量で保持される有機酸は、例えば、酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、グルコン酸、アジピン酸、および/またはラクトビオン酸を含む。調製された食品の場合、これは、適切な成分選択および/または変性によって得ることができる。1つの実施形態では、完成した食品組成物は、酸味を与える有機酸を含まないか、または本質的に含まない。しかしながら、風味を変える少量の、酸味のある有機酸を、上記範囲内の量でpH調節食品成分に含めて、望ましくない酸性味を与える以外の望ましい手法によって、風味プロフィルを調節しまたは変化させることができることが理解されよう。
【0058】
別段に指定しない限り、本明細書で与えられる全てのパーセンテージは、重量パーセンテージである。以下の実施例は、本発明を説明するために提供するものであり、本発明を限定しようとするものではない。
【実施例】
【0059】
(実施例1)酸性化剤としての高酸性卵白タンパク質
殺菌された乾燥卵白(National Egg Products Co.,Social Circle,GA)200g、脱イオン水340g、および6.25Nの食品グレードの塩酸34.5gを含む水性混合物を、Champ HP3高性能ブレンダ(Springfield,MO)で均質化し、次いで凍結乾燥して、高酸性卵白粉末(aEWP)を形成した。aEWP粉末は、pH4.0において、1g当たり0.46モル/リットルの酸性化能を有していた。
【0060】
以下の処方に従って、このaEWP粉末を主な酸性化剤として使用して、ドレッシング中のビネガーを置換することにより、マヨネーズドレッシングを調製した。ドレッシングの水相を、実験室用ミキサーで、水、卵黄、砂糖、および塩を混合することにより調製する。この水相に、撹拌/剪断しながら油をゆっくり添加した。対照サンプルの場合、ビネガーを最後に添加した。aEWP含有サンプルの場合、まずaEWPを、配合物の水の約半分の量に溶解した。aEWPサンプルを調製する際に、得られたペーストを使用して、ビネガーを置換した。aEWPサンプルの最終pHは、3.68であった。
【0061】
【表2】

【0062】
貯蔵安定なaEWP含有ドレッシングの官能評価によれば、貯蔵安定なaEWP含有ドレッシングは、対照に比べて低い酸味を有し、風味、食感、およびエマルジョンの安定性に優れていることが明らかになった。
【0063】
(実施例2)酸性水の生成のために両極性膜電気透析を使用するプロセス
酸性の水性ED組成物を、図3に関して上述したような、陽イオン単極−陰イオン単極−両極−陽イオン単極膜構成を備えるEDを使用することにより、調製した。両極性膜を、複数の陽イオン膜および/または複数の陰イオン膜の間に配置した。塩溶液(約12.5%NaCl)は、プロセス流(すなわち酸性および塩基性の水流)から分離された陽イオン単極膜と陰イオン単極膜との間で使用され、ED処理後に一部脱塩された。酸供給水流用の軟水都市水8リットル、および塩基性供給水流用の蒸留水8リットルを、5V/セル未満の電位および800A/mの電流を使用して、約60分間にわたって、1.0よりも低いpHが酸性水流で実現されるまで処理した。供給水溶液(プレED水)および処理された酸性水溶液(ポストED水)のイオンプロフィルを、下記の第2表に示す。処理された水に、脱イオン水を添加することによって標準化し、最終pHを1.0にした。
【0064】
【表3】

【0065】
プレED水のpHは6.98であり、ポストED水のpHは1.08(滴定により0.76)であった。処理された酸性水溶液には、不快な臭いが無かった。脱イオン水でpH3.25まで希釈した場合、得られる混合物は、実用的に味がない。
【0066】
(実施例3)酸性化剤としての高酸性大豆粉
脱脂大豆粉(Archer−Daniels−Midland Co.,Decatur,IL)200g、脱イオン水800g、および6.25Nの食品グレードの塩酸37.6gを含む水性混合物を、Champ HP3高性能ブレンダ(Springfield,MO)で均質化し、次いで凍結乾燥して、高酸性脱脂大豆粉(aDSF)粉末を形成した。aDSF粉末は、pH4.0において、1g当たり0.29モル/リットルの酸性化能を有していた。
【0067】
このDSF粉末を主な酸性化剤として使用して、以下の第3表に記載される処方に従い、貯蔵安定なディップを調製した。また、4.2以下の最終目標pHを実現するために、上記実施例2で述べた手法で得られたED組成物を、2次酸性化剤として使用した。使用されたED組成物の添加量は、13.1%であった。最初に水、コーンシロップ固体、乳タンパク質、デンプン、およびaDSFを約140°F(約60℃)で混合し、その後、予備溶解した油および乳化剤を添加して、湿潤ミックスを形成することにより、ディップを調製した。この湿潤ミックスを、2段階ホモジナイザにより2000/500psi(約13800/約3450KPa)で均質化した。塩、保存剤、安定化剤、および実施例2のED組成物を、均質化された湿潤ミックスに添加した後、このミックスをさらに混合し、186°F(約86℃)で1分間殺菌し、その後に、適切な容器(プラスチックジャー)に充填した。完成品のpHは、4.2であった。
【0068】
【表4】

【0069】
貯蔵安定なディップの官能評価によれば、貯蔵安定なディップは、不快な酸味が無く、食感およびエマルジョンの安定性に優れていることが明らかにされた。
【0070】
(実施例4)酸性全粒小麦粉
全粒小麦粉(Archer−Daniels−Midland Co.,Decatur,IL)323g、脱イオン水500g、および6.25Nの食品グレードの塩酸9.78gを含む水性混合物を、Champ HP3高性能ブレンダ(Springfield,MO)中で均質化し、次いで凍結乾燥して、酸性全粒小麦粉(aWWF)粉末を形成した。この粉末は、pH4.0において、1g当たり0.005モル/リットルの酸性化能を有していた。
【0071】
aWWF粉末を酸性化剤として使用して、かつ以下の処方にしたがって、貯蔵安定なグレイビーを調製した。グレイビーを、以下の第4表に示される全ての成分を混合し、210〜212°F(約99〜100℃)の温度に加熱することによって調製した。加熱および混合を、約205〜210°F(約96〜99℃)でさらに10分間行い、次いで適切な容器へとホットフィリングし、その後、この容器を封止し、冷却器内で周囲温度にまで冷却した。完成品のpHは、4.1であった。
【0072】
【表5】

【0073】
得られた貯蔵安定なグレイビーには、不快な酸味が無く、食感に優れていた。
【0074】
(実施例5)貯蔵安定なミルクベースのフィリング
貯蔵安定なミルクベースのフィリングを、表5に示される量の成分を使用して、以下の手法で調製した。全乳を、ライトニングミキサーを使用して、aWPCと混合した。使用したaWPCを、以下の手法で調製した:商用WPC(FDA、ミネソタ)約1部を、水3部を用い、剪断装置を使用して分散させ、食品グレードの塩酸を用いてスラリーのpHを約3.25から3.5に調節した。スラリーを、約200°F(約93℃)の温度に加熱し、約12分間にわたって保持した。冷却後、スラリーを噴霧乾燥して、乾燥粒状形態にした。使用したaWPCは、pH4.0において、aWPC1g当たり約0.22モル/リットルの酸性化能を有していた。得られた湿潤ミックスを、150°F(約66℃)に加熱した。AMFを溶融し、150°F(約66℃)に加熱した。溶融したAMFおよび湿潤ミックスを、ライトニングミキサー中で混合し、次いで3000rpmおよび500psiで均質化した。予備ブレンドされたガムおよび砂糖を、この均質化された湿潤ミックスに添加した。得られた混合物を、サーモミキサー中で190°F(約88℃)に加熱し(約10〜11分)、次いで2分間にわたって保持した。得られた混合物を、5000rpmおよび500psiで均質化した。得られた均質化物をボウルに収集し、冷蔵庫(あるいはまた、氷浴を使用することができる)で50°F(約10℃)よりも低い温度に冷却した。冷却され生成物を、高速で2分間にわたって、Hobartミキサー中でホイップした。サンプルを収集し、冷蔵庫で一晩中冷却した。冷蔵された生成物のpHは、4.1であった。食品製品組成物は、48.5%の水分、17.5%の脂肪、7.4%のタンパク質、17.0%のスクロース、6.2%のラクトース、0.7%の塩、および1.2%の灰分を含有していた。これはクリーミーで、曝気された切断可能な食感を有しており、酸味または刺激はなかった。この製品を、クッキーの外皮に対するフィリングとして使用し、酸味の異味がしない安定したクリーム充填クッキー製品を提供した。
【0075】
【表6】

【0076】
(実施例6)貯蔵安定なクリームチーズ
貯蔵安定なクリームチーズを、第6表に示される成分およびそれぞれの量で使用して、以下の手法により調製した。UF酸乳清を、マイクロ波で140°F(約60℃)に予熱した。次いで、前述の実施例と同じaWPCを、温められたUF酸乳清およびWPC−53からなるスラリーに混合した。トコフェロールを、温められたAMF(140°F(約60℃))に添加し、次いで溶融したAMFを、湿潤ミックスに添加した。次いで混合物を、5000/500psiで、ホモジナイザに通した(2回)。次いで少量の成分(すなわちLBG/キサンタン/イヌリン/ソルビン酸/塩)を、Thermomixフードプロセッサに添加した。スラリーを185°F(約85℃)に加熱し、10分間にわたって保持した。次いで風味料(天然の乳風味料)を添加した。サンプルを、2段階ホモジナイザを使用して、2500/500psiで均質化した。8オンスの小型容器に対し、サンプルをホットフィルした。脂肪分の多いソフトクリームチーズ製品を、70%のUF酸乳清、23.5%の無水乳脂肪、3.8%のaWPCを使用して作製した。完成した食品組成物は、62%の水分、25.6%の脂肪、5.1%のタンパク質、4.9%のラクトースを含有していた。
【0077】
【表7】

【0078】
本発明について、特定のプロセスおよび製品の実施形態を具体的に参照しながら詳細に述べてきたが、様々な変更例、修正例、および適合例は、本発明の開示を基にすることができ、特許請求の範囲により定義される、本発明の精神および範囲に包含されることが、理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の1つの実施形態による、pHを低下させるための膜電気透析システムの例を示す図である。
【図2】本発明の1つの実施形態による、pHを低下させるための膜電気透析システムの別の例を示す図である。
【図3】本発明の1つの実施形態による、pHを低下させるための膜電気透析システムのさらに別の例を示す図である。
【図4】本発明の1つの実施形態による、pHを低下させるための膜電気透析システムのさらに別の例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最終pHが5.0以下でありかつAwが約0.90以上である食品組成物を提供するのに有効な量で、pH4.0において酸性化剤1g当たり少なくとも約0.005モル/リットルの酸性化能を有する酸味の低い酸性化剤を用いて、食品組成物を調製するステップを含むことを特徴とする、軽減された酸味を備える、低pH、高水分の、貯蔵安定な食品組成物を調製するための方法。
【請求項2】
前記酸性化剤は、高酸性化食品成分、酸性ED組成物、食用無機酸、無機酸の食用金属酸塩、またはそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸性化剤は、高酸性化卵タンパク質、高酸性化大豆タンパク質、高酸性化穀物タンパク質、および高酸性化乳タンパク質からなる群から選択される高酸性化食品成分を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記酸性化剤は、pH4.0において、酸性化乳清タンパク質濃縮物1g当たり少なくとも約0.01モル/リットルの酸性化能を有する乾燥酸性化乳清タンパク質濃縮物を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記酸性化乳清タンパク質濃縮物は、乳清タンパク質濃縮物を、酸性ED組成物、食用無機酸、無機酸の金属酸塩、またはそれらの混合物からなる群から選択される酸性化剤と水性媒体中で組み合わせて、混合物を提供するステップと、前記混合物を乾燥させて、前記酸性化乳清タンパク質濃縮物を乾燥微粒子として提供するステップとによって調製されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
乳清タンパク質濃縮物を、無機酸および/またはその塩と、約4.2以下のpHを有する酸性化乳清タンパク質濃縮物を提供するのに有効なそれぞれの量でブレンドすることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記混合物を、乾燥前に170°F(約77℃)よりも高い温度に加熱することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記酸性化剤は、
全陰イオンまたは全陽イオン濃度が1.8N以下である水溶液を、膜電気透析システムと接触させるステップであって、前記膜電気透析システムが、陽イオン膜と陰イオン膜との間に両極性膜を含む少なくとも1つの電気透析セルを含み、前記少なくとも1つのセルが、アノード電極とカソード電極との間に配置されるステップと、
水溶液のpHを少なくとも2.0だけ変化させ、および全陰イオンまたは全陽イオン濃度が1.8N以下であり、個々の陽イオンまたは陰イオン濃度が0.9N以下であり、遊離塩素含量が1ppm以下である電気透析組成物を提供するのに有効な時間にわたって、アノード電極とカソード電極との間に電位を印加するステップと
を含むプロセスによって調製される酸性ED組成物を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記膜電気透析システムは、カソード電極−(CAB)C−アノード電極、カソード電極−C(ABC)−アノード電極、カソード電極−A(BCA)−アノード電極、およびカソード電極−(ABC)−アノード電極からなる群から選択される積層構成を含み、Cは陽イオン膜を表し、Aは陰イオン膜を表し、Bは両極性膜を表し、およびnは積層構成中のセル数を表す正の整数であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記酸性化剤は、
全陰イオンまたは全陽イオン濃度が1.8N以下である水溶液を、膜電気透析システムと接触させるステップであって、前記膜電気透析システムが、以下の配列で、(i)カソード電極、(ii)陽イオン膜、陰イオン膜、および両極性膜をこの順序で含む少なくとも1つの電気透析セル、(iii)陽イオン膜、および(iv)アノード電極を含むステップと、
水溶液のpHを少なくとも2.0だけ変化させ、および全陰イオンまたは全陽イオン濃度が1.8N以下であり、個々の陽イオンまたは陰イオン濃度が1.0N以下であり、および遊離塩素含量が1ppm以下である電気透析組成物を提供するのに有効な時間にわたって、アノード電極とカソード電極との間に電位を印加するステップと
を含むプロセスによって調製される酸性ED組成物を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記酸性化剤は、塩酸、硫酸、重硫酸ナトリウム、重硫酸カリウム、重硫酸カルシウム、重硫酸マグネシウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される無機酸またはその金属酸塩であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記食品組成物は、4.6以下の最終pHを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記食品組成物は、4.2以下の最終pHを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
調製された食品組成物は、食品組成物1000g当たり0.22モル以下の全有機酸含量を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
調製された食品組成物は、食品組成物1000g当たり0.12モル以下の全有機酸含量を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法によって調製されたことを特徴とする、軽減された酸味を備える、低pH、高水分の、貯蔵安定な食品組成物。
【請求項17】
請求項4に記載の方法によって調製されたことを特徴とする、軽減された酸味を備える、低pH、高水分の、貯蔵安定な食品組成物。
【請求項18】
請求項14に記載の方法によって調製されたことを特徴とする、軽減された酸味を備える、低pH、高水分の、貯蔵安定な食品組成物。
【請求項19】
乳製食品を、pH4.0において酸性化剤1g当たり約0.01モル/リットルの酸性化能を有する高酸性化乳清タンパク質濃縮物と、最終pHが5.0以下でありかつAwが約0.90以上である乳製品を提供するのに有効な量でブレンドするステップを含むプロセスによって調製される低pH、高水分の、貯蔵安定な乳製品であって、
前記高酸性化乳清タンパク質濃縮物が、乳清タンパク質濃縮物を、酸性ED組成物、食用無機酸および/またはその金属酸塩と、水性媒体中で組み合わせて混合物を与える工程の生成物として得られるステップと、前記混合物を乾燥させて、酸性化乳清タンパク質濃縮物微粒子を提供するステップとを含むプロセスによって調製される
ことを特徴とする、低pH、高水分の、貯蔵安定な乳製品。
【請求項20】
乳製食品とブレンドされた、約2から約12重量%の高乳清タンパク質濃縮物微粒子を含むことを特徴とする請求項19に記載の乳製品。
【請求項21】
乳清タンパク質濃縮物微粒子が、4.2以下の最終製品pHをもたらすのに有効な量で、乳製食品とブレンドされることを特徴とする請求項19に記載の乳製品。
【請求項22】
前記乳製食品は、ミルク、ミルク由来物、またはそれらの組合せを含み、前記乳製品は、クリームフィリングおよびクリームチーズからなる群から選択されることを特徴とする請求項19に記載の乳製品。
【請求項23】
全陰イオンまたは全陽イオン濃度が1.8N以下である水溶液を、膜電気透析システムと接触させるステップであって、前記膜電気透析システムが、陽イオン膜と陰イオン膜との間に両極性膜を含む少なくとも1つの電気透析セルを含み、前記少なくとも1つのセルが、アノード電極とカソード電極との間に配置されるステップと、
水溶液のpHを少なくとも2.0だけ変化させ、および全陰イオンまたは全陽イオン濃度が1.8N以下であり、個々の陽イオンまたは陰イオン濃度が1.0N以下であり、および遊離塩素含量が2ppm以下である電気透析組成物を提供するのに有効な時間にわたって、アノード電極とカソード電極との間に電位を印加するステップと
を含むことを特徴とする電気透析法。
【請求項24】
全陰イオンまたは全陽イオン濃度が1.8N以下である水溶液を、膜電気透析システムと接触させるステップであって、前記膜電気透析システムが、以下の配列で(i)カソード電極、(ii)陽イオン膜、陰イオン膜、および両極性膜をこの順序で含む少なくとも1つの電気透析セル、(iii)陽イオン膜、および(iv)アノード電極を含むステップと、
水溶液のpHを少なくとも2.0だけ変化させ、および全陰イオンまたは全陽イオン濃度が1.8N以下であり、個々の陽イオンまたは陰イオン濃度が1.0N以下であり、および遊離塩素含量が2ppm以下である電気透析組成物を提供するのに有効な時間にわたって、アノード電極およびカソード電極の全域に電位を印加するステップと
を含むプロセスによって調製されることを特徴とする、人間の摂取に適した電気透析組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−54066(P2007−54066A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−226807(P2006−226807)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(501360131)クラフト・フーヅ・ホールディングス・インコーポレイテッド (49)
【氏名又は名称原語表記】KRAFT FOODS HOLDINGS, INC.
【住所又は居所原語表記】Three Lakes Drive, Northfield, Illinois 60093 United States of America
【Fターム(参考)】