説明

超音波ペン誤座標入力防止システム

【課題】座標検出するための超音波信号とそれ以外の雑音等による誤座標入力を防止する機能をもつ筆跡入力システム。
【解決手段】超音波発振素子が電子ペンの位置座標を得る位置座標測定期間内に超音波を少なくとも2回以上予め定められた間隔で超音波を発信し、各々の超音波受信器で測定したそれぞれの到達時間の差が超音波信号の発信間隔と筆記の際の電子ペンの最大移動速度から算出される到達時間差より小さければ正常な到達時間として判定し、大きければ超音波到達時間の誤認識と判定することにより、正常入力の超音波信号と雑音等の異常な超音波信号とを判別する機能により誤った電子ペンの位置座標入力を防止する超音波位置測定方法を持つ筆跡入力システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は少なくとも、位置座標を検出するための超音波信号を発信する1個以上の超音波発振素子と、トリガ信号を発信する赤外線発光素子もしくは電磁発信素子と、筆記状態であることを検知できるセンサを具備する電子ペン、及び、筆記時に該電子ペンから発せられる前記トリガ信号を受信する受信素子と前記超音波信号を受信する少なくとも2つ以上の超音波受信素子を具備し、前記トリガ信号と前記超音波信号の到達時間差から前記電子ペンの筆記状態での位置座標を検出することのできる受信装置とを有する筆跡入力システムにおいて、雑音等による誤座標入力を防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外線信号もしくは電磁波信号と超音波信号を発信する発生回路とペン先が筆記状態であることを検知できるセンサを備えた電子ペンと、電子ペンから発信される赤外線信号もしくは電磁波信号を受信する受信素子と、超音波信号を受信する複数の受信素子を組み込んだ受信装置を有する手書き筆跡入力システムが開発されている。この筆跡入力システムは、電子ペンで筆記すると受信装置が、電子ペンから発信された超音波信号と赤外線とを複数の受信素子により受信し、電子ペンの位置座標を計測し、位置座標とペン先のON−OFF状態を合わせて筆跡データとして検出する。筆跡データを連続的に検出することにより、書いた文字や図形等を手書き筆跡データとして認識する筆跡入力システムが知られている。
【0003】
超音波方式を利用する座標検出装置は、雑音等によって座標検出位置を誤認識しやすいため、従来では、雑音等の影響を抑えるために特別な超音波受信素子を使用したり、超音波信号を増幅するための増幅器の後段に急峻なフィルタを設けたり、あるいはソフトウェアによる座標位置の推測等により、雑音等に起因して発生する誤座標入力を防止する様々な努力がなされてきた。
【0004】
【特許文献1】特開平8−6704号。
【特許文献2】特開2004−178269号。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
超音波信号を利用した座標入力装置おいて、外部からの雑音は、電子ペンの位置座標を誤認識させる大きな要因である。このため、超音波信号到達時間を用いた座標検出方法において外部からの雑音をいかに抑えるか、または、いかに雑音等による電子ペンの位置座標の誤認識を識別するかが大きな課題となっていた。
【0006】
従来技術では雑音等を低減するため、特別な超音波受信素子や急峻なフィルタ回路等が必要となり、座標入力装置に組み込んだ場合、小型化が困難であった。または、装置の形状を複雑な構造とする必要があり、高価となっていた。本発明の目的は、上記課題を解決し、特別な部品を設けることなく検出された超音波信号から所望の超音波信号を取り出し、雑音等による電子ペンの位置座標の誤認識を防止する機能をもつ筆跡入力システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するために成したもので、少なくとも、位置座標を検出するための超音波信号を発信する1個以上の超音波発振素子と、トリガ信号を発信する赤外線発光素子もしくは電磁発信素子と、筆記状態であることを検知できるセンサを具備する電子ペン、及び、筆記時に該電子ペンから発せられる前記トリガ信号を受信する受信素子と前記超音波信号を受信する少なくとも2つ以上の超音波受信素子を具備し、定期的に発信される前記トリガ信号と前記超音波信号の到達時間差から前記電子ペンの筆記状態での位置座標を検出することのできる受信装置とを有する筆跡入力システムにおいて、超音波発振素子が電子ペンの位置座標を得る位置座標検出期間に超音波信号を少なくとも2回以上予め定められた間隔で発信し、受信装置各々の超音波受信器で測定したそれぞれの到達時間の差が超音波信号発振間隔と筆記の際の電子ペンの最大移動速度から算出される到達時間差より小さければ正常な到達時間として判定し、大きければ超音波信号の誤認識と判定することにより、正常入力の超音波信号と雑音等の異常な超音波信号とを判別する機能により誤った電子ペンの位置座標入力を防止する超音波位置測定方法を持つ超音波ペン誤座標入力防止システム。
【0008】
また上記筆跡入力システムにおいて、1つの位置座標を得るために2つ以上の超音波信号を発信することになるが、その最初の超音波信号を受信した際、超音波信号のための増幅器の増幅率及び/又は超音波信号の閾値を決定し、2回目以降の超音波信号の受信は、それらの増幅率及び閾値を用いて到達時間の測定を行う筆跡入力システムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、電子ペンの1つの位置座標を測定するにあたり、2回以上の超音波信号が発信され、それぞれの超音波信号到達時間の測定が実施される。2回目以降の超音波信号の到達時間の測定に際して、1回目の超音波信号の到達時間との差が、十分に小さければ正常な信号と判定し、十分に小さくなければ異常な信号と判定することにより、雑音等による誤座標位置検出を防ぐことができる。
【0010】
また、電子ペンの1つの位置座標を得るための1回目の超音波信号を受信した際、超音波信号の増幅回路の増幅率及び/又は超音波信号の到達時間の比較に用いる閾値を決定する。2回目以降の超音波信号の受信は、それらの増幅率及び/又は閾値を用いて超音波信号の到達時間の測定を行う筆跡入力システムである。本発明は、電子ペンの1つの位置座標を測定するにあたり、2回以上の超音波信号が発信され、それぞれの超音波信号到達時間の測定が実施されることにより、得られた情報が所定の座標位置検出信号か、あるいは雑音によるものかを識別できるようにしたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
電子ペンには、超音波発振素子と超音波信号の到達時間の測定用の赤外線発光素子とこれらを駆動する為の回路基板が内蔵されている。また、ペンの先端に係る圧力変位に応じてオンとオフを検出するセンサが内蔵されていて、筆記を検出した際に、赤外線及び1回目の超音波信号を発生させる。赤外線発光素子から発せられるトリガ信号は、超音波信号と同時もしくは以前に発信される。次に電子ペンから2回目の超音波信号を発生させる。1回目から2回目以降の超音波発振の間隔は、予め設定された1回目の超音波信号の残留した音波が十分に静定した時間間隔で行われる。この1回目と2回目の超音波信号の間に、電子ペンは筆記などにより超音波信号の発信位置が移動している。この為に、1回目から2回目以降の超音波信号の発信間隔は、超音波信号の発信された位置の移動量が少なくなり間隔が短い方が理想的になる。
【0012】
受信装置では、超音波受信素子と赤外線受光素子が内蔵されており、電子ペンからのトリガ信号を受信し内蔵されたカウンタをスタートさせて、遅れて到着する1回目の超音波信号を各超音波受信素子が受信し、トリガ信号の受信から超音波信号の受信までの時間を測定し受信装置内のカウンタに記憶させる。続いて電子ペンから発信された2回目の超音波信号の受信を行う。受信装置では、予めトリガ信号から2回目の超音波信号の発信時間が設定されており、2回目の超音波信号発信から受信までの時間を測定し受信装置内のカウンタに記憶する。次に、1回目と2回目以降の超音波の測定時間値の違いから受信した超音波信号が雑音か正常な信号かを判定する。違いが十分小さければ正常な信号とし、違いが十分小さくなければ雑音とする。正常な信号として測定された各時間を各超音波センサの位置関係から2次元もしくは3次元の電子ペンの位置座標データに変換する。
【0013】
超音波信号は、電子ペンからの超音波受信器までの距離が遠くなるに従って、すなわち超音波発振後の時間がたつにつれ指数関数的に減衰する。本発明は、超音波を利用する受信装置に対して、超音波信号の到達時間を決定するための超音波信号の強度の閾値の時間変化が、前記指数関数と同じ動きになるような手段を付加し、1回目の測定で閾値を固定し、固定された閾値で2回目以降の超音波信号の受信時間を測定することにより、外部からの雑音に起因した座標信号の誤認識を抑えるようにしたものである。
例えば、トリガ信号の繰返し周期は100pps程度、10msecである。一方、超音波の速度は約330m/secであるので、例えば0.5m四方の入力領域を有する筆跡入力システムの場合、超音波受信器と電子ペンの最大検出距離は0.5m×1.41=0.71m程度で、時間にして0.71m÷330m/sec=2.2msecであり、残りの8割は超音波を利用する座標検出には使用していない。
超音波を利用する座標検出装置の検出領域は超音波信号とトリガ信号の送信出力で略決定する。
【実施例】
【0014】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。図1〜3は、装置図面が煩雑にならないよう単純に構成を模式的に表現したものである。本発明は、以下の実施例に限定されるものでなく、本発明の技術範囲において、種々の変形例を含むものである。また、各実施例において、同じ構成については同じ参照符号を付けた。
【0015】
図1に、本発明の筆跡入力システムの全体像を示す。また図3に本システムのタイミングチャートを示す。電子ペン1は、赤外線発光素子2及び、超音波発振素子3を持ち、筆記状態であることを検知できるセンサ及びそれらを制御する回路基板(図示せず)が内蔵されている。電子ペン1のペン先には、ボールペンなどのリフィルが挿入されており、筆記した際に内部のセンサ(図示せず)が加重により筆記状態の検出を行う。筆記状態が検出されると電子ペン1の回路は、赤外線発光素子2及び超音波発振素子3に電子ペンの1つの座標を検出する時間(図3に示すt1からt7の時間)内にトリガ信号と1回目の超音波信号を同時に発信させ、更にその後一定間隔(図3に示すt2からt3の時間)をおいて2回目の超音波信号を発信させる。電子ペンが筆記状態であることをセンサが検出しているあいだ、電子ペンは上記動作を一定時間で繰り返す。
【0016】
図2は本システムの受信装置の一部の構成図を示す。一つの赤外線受光ダイオード11と二つ以上の超音波受信回路を持つ。図2では、省略して一つのみの超音波受信回路が図示されている。クロック発生器29は十分な距離測定精度を保障する精度と分解能のクロックを常時出力する。電子ペン1から出力された赤外線は、赤外線受光ダイオード11で受信され(図3に示す時刻t1)、増幅回路12で増幅され、パルス整形回路13でパルス波形(赤外線受信信号)になされる。このパルス波形は、閾値信号発生回路14、シフトレジスタ16、第1カウンタ22をスタートさせる。閾値信号発生回路14は、1回目の超音波信号の時間による減衰に合わせた波形を発生させ始め、アナログ比較器20にその信号を出力する。シフトレジスタ16は、一回目と二回目の超音波信号の時間差(図3に示すt1からt3の時間)を作り、第2カウンタ23をスタートさせる。
【0017】
電子ペンから赤外線と同時に発信された1回目の超音波信号は、時間t5に超音波受信器17に受信され、増幅回路18で増幅され、バンドパスフィルタ19でフィルタリングされ、アナログ比較器20で閾値信号発生器14の出力と比較され、大きければ波形検出回路21に出力される。波形検出回路21は、その信号をロジック信号に変換し、閾値信号発生回路14に閾値固定信号15として出力し、閾値信号発生回路14は出力を固定する。また、波形検出回路21は、第1カウンタ22にストップ信号を出力する。第1カウンタ22はそのカウントした値を、デジタル比較器24に距離時間信号25(図3に示すt1からt5の時間)として出力する。2回目の超音波信号は、D F/F27及びAND28回路により第2カウンタ23をストップさせる。第2カウンタ23は、そのカウントした値(図3に示すt3からt6の時間)をデジタル比較器24に出力する。デジタル比較器24はこの2つの値を比較し、その差が十分に小さければ、データ合格信号26を出力する。
【0018】
前記実施例では、2回の超音波測定を用いて、誤座標入力システムについて述べたが、3回以上の超音波測定を用いる場合には、第2カウンタ23からAND28及びシフトレジスタ16を付加することにより実現できる。第2カウンタ23は一つである必要はなく、複数でもかまわない。多ければデータの信頼性が向上する。
【0019】
また、前記実施例では、超音波信号の到達時間の比較に用いる閾値を1回目の超音波計測により固定し、到達時間差を比較して誤座標入力防止システムを実現したが、同様に増幅回路18の増幅率を固定することで、誤座標入力を防止することが出来る。
また、増幅率又は閾値を1回目の超音波計測で、固定しなくとも2回の計測の到達時間を比較することで、誤座標の入力を防止することが出来る。
【0020】
誤座標入力の比較に用いる到達時間差は、ペンの最大移動速度が300mm/secとし、0.1mm以上の誤座標入力を異常とする場合、0.1mm/300mm/sec=0.3msecとすることで判断することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施例の超音波ペン誤座標入力防止システムの構成図。
【図2】本実施例の受信装置の一部の構成図。
【図3】本実施例のタイミングチャート図。
【符号の説明】
【0022】
1 電子ペン
2 赤外線発光素子
3 超音波発振素子
4 受信装置
5 超音波受信素子
6 赤外線受光素子
7 ボード
8 用紙
9 通信ケーブル
10 情報処理装置
11 赤外線受光ダイオード
12 増幅回路
13 パルス整形回路
14 閾値信号発生回路
15 閾値固定信号
16 シフトレジスタ
17 超音波受信器
18 増幅回路
19 バンドパスフィルタ
20 アナログ比較器
21 波形検出回路
22 第1カウンタ
23 第2カウンタ
24 デジタル比較器
25 距離時間信号
26 データ合格信号
27 D F/F
28 AND
29 クロック発生器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、位置座標を検出するための超音波信号を発信する1個以上の超音波発振素子と、トリガ信号を発信する赤外線発光素子もしくは電磁発信素子と、筆記状態であることを検知できるセンサを具備する電子ペン、及び、筆記時に該電子ペンから発せられる前記トリガ信号を受信する受信素子と前記超音波信号を受信する少なくとも2つ以上の超音波受信素子を具備し、定期的に発信される前記トリガ信号と前記超音波信号の到達時間差から前記電子ペンの筆記状態での位置座標を検出することのできる受信装置とを有する筆跡入力システムにおいて、電子ペンの位置座標を得る電子ペンの1つの位置座標を測定する時間内に、少なくとも超音波信号を2回以上発信し、前記受信装置で測定した2回以上の超音波信号の各々の到達時間の差が十分小さければ正常な信号として判定し、十分小さくなければ誤信号として判定することによって雑音等の異常な超音波信号を排除する機能を持つことを特徴とする超音波ペン誤座標入力防止システム。
【請求項2】
前記超音波ペン誤座標入力防止システムは、電子ペンの位置座標を得る電子ペンの1つの位置座標を測定する時間内に、超音波受信素子から1回目の超音波信号を受信した際、超音波受信装置の増幅回路の増幅率及び/又は超音波信号の到達時間の比較に用いる閾値を固定し、2回目以降の超音波信号の受信は、それらの増幅率及び/又は閾値を用いて雑音等の異常な超音波信号を排除する機能を持つ請求項1記載の超音波ペン誤座標入力防止システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−179507(P2007−179507A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−380507(P2005−380507)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】