説明

超音波受信素子及びこれを用いた超音波トランスデューサ

【課題】 圧電セラミックス材料からなる超音波受信素子と比較して、小型化に適し且つ受信感度の良い超音波受信素子、及びこれを用いた超音波トランスデューサを提供する。
【解決手段】 本発明に係る超音波受信素子1は、薄膜状のメンブレン部8を有する半導体からなるダイヤフラム2と、該ダイヤフラム2のメンブレン部8に設けられた半導体ピエゾ抵抗素子R,R,R,Rの抵抗値変化から受信超音波の音圧を検出する音圧検出回路9と、ダイヤフラム2の共振周波数を受信超音波の周波数に合わせる共振周波数調整機構5と、を具備するものである。また、本発明に係る超音波トランスデューサ13は、半導体基板14上に、圧電材料の圧電効果を利用して超音波を送信する超音波送信素子15と、前記超音波受信素子1とがそれぞれ設けられたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を受信してその音圧を検出する超音波受信素子及びこれを用いた超音波トランスデューサに関し、特に、ピエゾ抵抗素子が配置されたダイヤフラムと、このダイヤフラムの共振周波数を受信超音波の周波数に合わせる共振周波数調整機構とを備えた超音波受信素子及びこれを用いた超音波トランスデューサに関する。
【背景技術】
【0002】
医療超音波診断では、探触子で発生した超音波を体内に送信し、体内の癌等で反射してきた超音波を探触子で受信することで異常組織を検出する。特に、臓器深部の微小な初期癌などの診断を行う場合、異常組織が小さいと反射信号が小さく、また深部からの反射信号は伝播時の減衰が大きいため、探触子の高感度化が課題となる。ここで、この探触子とは、いわゆる超音波トランスデューサであって、超音波の送信機能と受信機能の両方を備えるものである。従来のトランスデューサは、圧電セラミックス材料からなる単一の素子を備え、この素子を時間的に切り替えることにより、送信用の超音波送信素子及び受信用の超音波受信素子として兼用していた(例えば、特許文献1参照)。すなわち、素子に交流電圧を印加すると、圧電効果により素子が歪んで超音波が発生する。一方、素子に超音波を照射すると、同様に圧電効果により素子が歪んで交流電圧が発生するため、この交流電圧を検出することで超音波の音圧を検出することができる。
【0003】
【特許文献1】特開平08−168097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の超音波トランスデューサは、小型化に適していないという問題がある。より詳細には、従来の超音波トランスデューサは、素子を構成する圧電セラミックス材料の微細加工が難しいため、素子の小型化が困難である。また、圧電セラミックス材料は、小型化しても比較的大きな送信出力を確保できるので、超音波送信素子を構成するには適しているが、小型化すると受信感度が悪くなるため、超音波受信素子を構成するには適していない。すなわち、素子を小型化して受信面積が小さくなると、これに比例して素子の静電容量が小さくなる。これにより、素子を含む回路のインピーダンスが高くなって十分なS/N比が取れないため、結果として高感度にできない。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、圧電セラミックス材料からなる超音波受信素子と比較して、小型化に適し且つ受信感度の良い超音波受信素子、及びこれを用いた超音波トランスデューサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る超音波受信素子は、超音波を受信してその音圧を検出する超音波受信素子において、薄膜状のメンブレン部を有する半導体からなるダイヤフラムと、該ダイヤフラムのメンブレン部に設けられた半導体ピエゾ抵抗素子の抵抗値変化から受信超音波の音圧を検出する音圧検出回路と、前記ダイヤフラムの共振周波数を受信超音波の周波数に合わせる共振周波数調整機構と、を具備するものである。
【0007】
また、本発明に係る超音波受信素子は、前記共振周波数調整機構が、前記メンブレン部と所定間隔をおいて対向するように設けられた対向電極と、該対向電極及び前記メンブレン部の間に直流バイアス電圧を印加する直流バイアス電源と、を具備するものである。
【0008】
また、本発明に係る超音波受信素子は、前記ダイヤフラムにおけるメンブレン部以外の部分と前記対向電極との間に絶縁体が介在され、該絶縁体と前記メンブレン部と前記対向電極とによって包囲される空間が、外気圧より低く減圧されたものである。
【0009】
また、本発明に係る超音波受信素子は、前記ダイヤフラムにおけるメンブレン部以外の部分と前記対向電極との間に絶縁体が介在され、前記メンブレン部と前記対向電極の少なくともいずれか一方に、前記絶縁体と前記メンブレン部と前記対向電極とによって包囲される空間を外部と連通するための連通穴が形成されたものである。
【0010】
また、本発明に係る超音波トランスデューサは、半導体基板上に、圧電材料の圧電効果を利用して超音波を送信する超音波送信素子と、該超音波送信素子から送信された超音波を受信してその音圧を検出する請求項1乃至4のいずれかに記載の超音波受信素子とがそれぞれ設けられたものである。
【0011】
また、本発明に係る超音波トランスデューサは、前記超音波送信素子は、前記圧電材料がバルク材であることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明に係る超音波トランスデューサは、前記超音波送信素子は、前記圧電材料が薄膜材であることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明に係る超音波トランスデューサは、前記超音波送信素子の前記半導体基板全体に占める面積比率が、前記超音波受信素子の前記半導体基板全体に占める面積比率より大きいものである。
【0014】
また、本発明に係る超音波トランスデューサは、前記超音波送信素子と前記超音波受信素子のうち、少なくともいずれか一方がアレイ状に設けられたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る超音波受信素子によれば、ダイヤフラムに設けられた半導体ピエゾ抵抗素子は微細加工が容易なので、超音波受信素子の小型化に適している。また、半導体ピエゾ抵抗素子の抵抗値変化を検出する音圧検出回路は、そのインピーダンスが低いためS/N比が高く、受信感度の高い超音波受信素子を作製することができる。更に、共振周波数調整機構を設けたことにより、超音波受信素子の受信感度をより高めることができる。
【0016】
また、本発明に係る超音波受信素子によれば、メンブレン部と対向電極との間に直流バイアス電圧が印加されると、メンブレン部に歪が生じてダイヤフラムの共振周波数が変化する。このように、簡易な構成によってダイヤフラムの共振周波数を容易に調整することができる。
【0017】
また、本発明に係る超音波受信素子によれば、絶縁体とメンブレン部と対向電極とによって包囲される空間が外気圧より低く減圧されているので、メンブレン部は空間内の空気に妨げられることなく自由に変形することができる。これにより、超音波の音圧に対してメンブレン部が十分に応答するので、正確な音圧検出が可能となる。
【0018】
また、本発明に係る超音波受信素子によれば、絶縁体とメンブレン部と対向電極とによって包囲される空間内の空気は連通穴を介して外部との間を自由に行き来できるので、メンブレン部は空間内の空気に妨げられることなく自由に変形することができる。これにより、超音波の音圧に対してメンブレン部が十分に応答するので、正確な音圧検出が可能となる。
【0019】
また、本発明に係る超音波トランスデューサによれば、超音波送信素子として圧電方式のものを採用したので、素子を小型化しても比較的大きな送信出力を確保することができる。一方、超音波受信素子としてピエゾ抵抗方式のものを採用したので、素子を小型化しやすく、また小型化しても高い受信感度を確保することができる。以上により、超音波トランスデューサ全体として小型且つ高感度化を図ることができる。
【0020】
また、本発明に係る超音波トランスデューサによれば、超音波送信素子を構成する圧電材料がバルク材なので、高い送信出力を得ることができる。
【0021】
また、本発明に係る超音波トランスデューサによれば、超音波送信素子を構成する圧電材料が薄膜材なので、半導体プロセスの中で半導体基板上に作製することができる。従って、超音波受信素子の集積化が容易になる。
【0022】
また、本発明に係る超音波トランスデューサによれば、超音波送信素子の面積比率が大きい分、大きな送信出力を得られる一方、超音波受信素子の面積比率は小さくても高い受信感度を確保することができる。これにより、小型且つ高感度の超音波トランスデューサを実現することができる。
【0023】
また、本発明に係る超音波トランスデューサによれば、超音波送信素子と超音波受信素子のうち、少なくともいずれか一方がアレイ状に設けられているので、アレイを構成する各要素を順次切り替えることにより、或いはフェーズドアレイ方式を用いることにより、対象物の2次元的な場所情報が得られ、これを画像化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
まず、本発明の実施例に係る超音波受信素子の構成について、図面に基づいて説明する。図1及び図2は、本実施例に係る超音波受信素子1を示す図であり、図1は概略平面図、図2は図1におけるA−A断面を示す概略縦断面図である。超音波受信素子1は、超音波を受信するためのダイヤフラム2と、このダイヤフラム2を下方から支持する支持体3と、ダイヤフラム2と支持体3の間に介在された絶縁体4と、ダイヤフラム2が受信した超音波の音圧を検出するための音圧検出回路(図1と図2には不図示)と、ダイヤフラム2の共振周波数を受信超音波の周波数に合わせる共振周波数調整機構5と、を備えるものである。尚、本超音波受信素子1は、材料に亀裂が発生し又は亀裂が進展する際に生じる弾性波、いわゆるアコースティックエミッションを検出することができ、例えば、材料評価や構造物の保守検査等の用途に用いられる。
【0025】
支持体3は、ダイヤフラム2を下方から支持する役割と、ダイヤフラム2の対向電極としての役割とを果たすものである。この支持体3は、シリコンからなる板状の部材であって、平面視で略矩形形状を有するとともに、その厚みは例えば300〜500μm程度である。そして、この支持体3の中央部を貫通して、横断面形状が略円形の連通穴6が、上面から底面に達するように形成されている。尚、連通穴6の個数及び横断面形状は、任意に設計変更が可能である。また、支持体3の材質は、対向電極として使用可能であれば、シリコン以外の半導体やその他の導電性部材とすることも可能である。
【0026】
絶縁体4は、ダイヤフラム2と支持体3とを電気的に隔絶するためのものである。この絶縁体4は、二酸化ケイ素からなる板状の部材であって、図1及び図2に示すように、その平面視形状は支持体3と略等しい矩形である。また、図2では模式的に図示しているが、絶縁体4の実際の厚みは支持体3よりはるかに薄く、例えば1〜3μm程度である。そして、この絶縁体4の中央部を貫通して、横断面形状が略矩形の貫通穴7が形成されている。このように構成される絶縁体4は、その外縁位置を支持体3の外縁位置に合わせるようにして支持体3の上に載置され、その底面が支持体3の上面に固定される。この時、絶縁体4の貫通穴7の下部開口と、支持体3の連通穴6の上部開口とが連通した状態となっている。尚、貫通穴7の横断面形状は、任意に設計変更が可能であり、例えば図3に示すように、横断面形状を円形に形成することも可能である。この場合、後述するメンブレン部の対称性が良く、いわゆるQ値が大きくなるので、横断面形状が矩形の場合よりも受信感度を高くすることができる。また、絶縁体4の材質は導電性のない他の部材であってもよく、絶縁体4の平面視形状は支持体3の形状に応じて適宜設計変更が可能である。
【0027】
ダイヤフラム2は、超音波の音圧変化を電圧変化に変換して検出するためのものである。このダイヤフラム2は、シリコンからなる薄膜状の部材であって、その平面視形状は支持体3及び絶縁体4と略等しい矩形形状である。このように構成されるダイヤフラム2は、図2に示すように、その外縁位置を絶縁体4の外縁位置に合わせるようにして絶縁体4の上に載置され、その底面が絶縁体4に固定される。この時、ダイヤフラム2における前記貫通穴7の直上位置には、絶縁体4に固定されることなく自由に変形可能なメンブレン部8が形成されている。尚、ダイヤフラム2の平面視形状は、絶縁体4の形状に応じて適宜設計変更が可能である。
【0028】
音圧検出回路は、メンブレン部8に生じた歪みの大きさから受信超音波の音圧を検出するものである。図4は、音圧検出回路9の構成を示す概略図である。音圧検出回路9は、4個の半導体ピエゾ抵抗素子R,R,R,Rを含んだフルブリッジ回路として構成される。各半導体ピエゾ抵抗素子R,R,R,Rは、シリコンからなるメンブレン部8の表面に、半導体プロセスによって形成されたものである。4個の半導体ピエゾ抵抗素子R,R,R,Rは、図1に示すように、ダイヤフラム2のメンブレン部8の最も外側位置にそれぞれ設けられ、そのうち2個の半導体ピエゾ抵抗素子R,Rがダイヤフラム2の中心位置を挟んで所定間隔で相対向するように設けられる一方、残りの2個の半導体ピエゾ抵抗素子R,Rがこれに直交する方向に所定間隔で相対向するように設けられている。このような音圧検出回路9によれば、各半導体ピエゾ抵抗素子R,R,R,Rの抵抗値が変化することによって回路全体としてのバランスが崩れると、不平衡電圧としての出力電圧を検出し、この出力電圧の大きさによって、受信超音波の音圧を検出することが可能となっている。尚、半導体ピエゾ抵抗素子R,R,R,Rの個数及び配置位置は、本実施例に限られず、ブリッジ回路を構成できる範囲内で適宜設計変更が可能である。
【0029】
共振周波数調整機構5は、ダイヤフラム2の共振周波数を受信超音波の周波数に合わせることにより、超音波受信素子1の受信感度を高めるためのものである。この共振周波数調整機構5は、図2に示すように、直流バイアス電源10を含んで構成され、その一端側がダイヤフラム2に、他端側が対向電極としての支持体3にそれぞれ電気的に接続されている。このように構成される共振周波数調整機構5によれば、ダイヤフラム2と支持体3との間に直流バイアス電圧を印加して、ダイヤフラム2のメンブレン部8に歪を生じさせることにより、ダイヤフラム2の共振周波数を任意の大きさに調整することができる。
【0030】
以上のように構成される超音波受信素子1によれば、メンブレン部8に設けられた半導体ピエゾ抵抗素子R,R,R,Rは微細加工が容易なので、超音波受信素子1の小型化に適している。また、ピエゾ抵抗効果を利用して超音波の音圧を検出する方式では、音圧検出回路9のインピーダンスが低いためS/N比が高くなる。これにより、小型で受信感度の高い超音波受信素子1を作製することができる。
【0031】
次に、超音波受信素子1の動作について説明する。ダイヤフラム2が超音波を受信すると、超音波の音圧を受けたメンブレン部8は絶縁体4側へ膨らむように変形しようとする。ここで、前述のようにメンブレン部8と絶縁体4と支持体3とによって包囲される空間11は連通穴6を介して外部12に連通しているため、空間11内の空気は、メンブレン部8から押圧力を受けると、外部12との間を自在に行き来することができる。これにより、超音波の音圧を受けたメンブレン部8は、空間11内の空気に妨げられることなく、自在に変形することができる。そして、メンブレン部8に歪みが生じると、メンブレン部8に設けられた4個の半導体ピエゾ抵抗素子R,R,R,Rの抵抗値が変化し、音圧検出回路9によって受信超音波の音圧が検出される。また、共振周波数調整機構5によって、ダイヤフラム2の共振周波数が受信超音波の周波数に合わされることにより、超音波受信素子1の高感度化が図られる。
【0032】
尚、本実施例では、メンブレン部8と絶縁体4と支持体3とによって包囲される空間11を外部12に連通するため、支持体3に連通穴6を形成しているが、これに限られず、図に詳細は示さないが、支持体3には連通穴6を設けずにメンブレン部8に連通穴6を設けてもよく、或いは支持体3とメンブレン部8の両方に連通穴6を設けてもよい。また、超音波の音圧に対してメンブレン部8を十分に応答させる手段としては、空間11を外部12と連通する連通穴6を形成する以外に、図示しないポンプ等を用いて空間11の内部を減圧することも可能である。
【0033】
次に、超音波受信素子1を用いた超音波トランスデューサについて説明する。図5は、本実施例に係る超音波トランスデューサ13を示す概略斜視図である。尚、図5では説明の便宜上、一部を破断した状態で示している。本超音波トランスデューサ13は、平面視で略円形の半導体基板14の上に、超音波を送信する超音波送信素子15と、この超音波送信素子15から発せられて対象物で反射された超音波を受信する超音波受信素子16とがそれぞれ設けられたものである。
【0034】
超音波受信素子16は、図5に詳細は示さないが、図1及び図2に示す超音波受信素子1と同じ構成を備えるものであり、ここでは詳細な説明を省略する。この超音波受信素子16は、平面視で半導体基板14より小径の円形であって、その中心位置を半導体基板14の中心位置に一致させるようにして、半導体基板14の上面に設けられている。
【0035】
超音波送信素子15は、圧電材料の圧電効果を利用して超音波を発生させる従来公知のものである。この超音波送信素子15は、図5に示すように、平面視で略ドーナツ型を有し、その外径が半導体基板14と略同径であって、その内径が超音波受信素子16より若干大径に形成されている。このように構成される超音波送信素子15は、超音波受信素子16を包囲するようにして、半導体基板14の上面に設けられている。尚、超音波送信素子15を構成する圧電材料の材質としては、いわゆるPZT〔Pb(Zr,Ti)Oの略形〕や、いわゆるPMN−PT〔Pb(Zn1/3Nb2/3)O−PbTiOの略形〕等を用いることが可能である。また、圧電材料は、バルク材として形成しても、薄膜材として形成してもよい。バルク材として形成する場合、大きな送信出力を得られるという利点がある。一方、薄膜材として形成する場合、従来公知のスパッタリング法やゾルゲル法やCVD法等により、半導体プロセスの中で半導体基板14上に作製することができる。従って、圧電材料をバルク材として形成した場合に半導体基板14上に固定する必要があるのと比較して、超音波送信素子15の集積化が容易になる。
【0036】
尚、半導体基板14の形状は、平面視で円形に限定されず、例えば平面視で矩形に形成することも可能であり、これに応じて超音波送信素子15や超音波受信素子16の形状も適宜設計変更が可能である。
【0037】
このように、超音波トランスデューサ13では、超音波送信素子15として、小型化しても比較的大きな送信出力を得られる圧電方式のものを採用する一方、超音波受信素子16として、小型化した場合に圧電方式よりも高い受信感度を得られるピエゾ抵抗方式のものを採用している。これにより、小型且つ高感度の超音波トランスデューサ13を実現することができる。
【0038】
また、超音波受信素子16は、小型化して受信面積を小さくしても比較的高い受信感度が得られる一方、超音波送信素子15は、送信面積を大きくした方が送信出力をより大きく確保することができる。従って、半導体基板14上における超音波送信素子15と超音波受信素子16の面積比率としては、超音波受信素子16の受信面積をなるべく小さくして、その分、超音波送信素子15の送信面積をなるべく大きくした方が好適である。
【0039】
ここで、図6は、超音波トランスデューサ13を構成する超音波送信素子15と超音波受信素子16の配置の仕方に関し、図5に示したものとは別の配置例を示したものである。図6Aに示す配置例は、平面視で円形の半導体基板14(不図示)の上に、中心位置を半導体基板14と一致させるようにして平面視で円形の超音波送信素子15を設けるとともに、これを包囲するようにして平面視でリング型の超音波受信素子16を設けたものである。ここで、超音波送信素子15は、半導体基板14より若干小径に形成され、超音波受信素子16は、その内径が超音波送信素子15より若干大径に、その外径が半導体基板14と略同径に形成されている。また、図6Bに示す配置例は、平面視で円形の半導体基板14(不図示)の上に、中心位置を半導体基板14と一致させるようにして平面視でリング型の超音波受信素子16を設けるとともに、これを包囲するようにして平面視でリング型の超音波送信素子15を設けたものである。ここで、超音波送信素子15は、その外径が半導体基板14と略同径に、その内径が超音波受信素子16の外径より若干大径に形成されている。また、図6Cに示す配置例は、平面視で円形の半導体基板14(不図示)の上に、平面視で扇形の超音波送信素子15と、同じく平面視で扇形の超音波受信素子16とを、半導体基板14の周方向に向かって所定間隔で交互に設けたものである。ここで、前述のように、超音波受信素子16の受信面積をなるべく小さく、超音波送信素子15の送信面積をなるべく大きくして超音波トランスデューサ13の小型且つ高感度を図れるよう、超音波送信素子15の中心角を大きく形成するとともに、超音波受信素子16の中心角を小さく形成している。尚、超音波送信素子15と超音波受信装置の配置の仕方は、図6の配置例に限定されるものではなく、適宜設計変更が可能である。
【0040】
また、図7は、超音波送信素子15と超音波受信素子16のいずれか一方又は双方をアレイ状に設けた配置例を示す図である。尚、本発明においてアレイ状とは、複数のものが相隣接して配列された状態を意味する。ここで、図7Aに示す配置例は、図6Aに示す配置例において、超音波受信素子16をその周方向に向かって複数個に分割したものである。尚、超音波受信素子16だけでなく、超音波送信素子15も複数個に分割することができる。また、図7Bに示す配置例は、図6Bに示す配置例において、超音波送信素子15と超音波受信素子16の双方を、その径方向に向かってそれぞれ複数個に分割したものである。
【0041】
このように、超音波送信素子15や超音波受信素子16を複数個に分割すれば、超音波送信素子15を駆動する送信回路と、超音波受信素子16を駆動する受信回路を、個々の超音波送信素子15や超音波受信素子16に対して順次切り替えながら接続することにより、対象物からの反射音を検出するか否かによって、対象物についての2次元的な場所情報が得られ、これを画像化することができる。また、いわゆるフェーズドアレイ方式を用い、個々の超音波送信素子15を駆動する順序と駆動遅延時間を制御して、任意の超音波ビームを発生させ、これで対象物を走査することにより、対象物についての2次元画像情報を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る超音波トランスデューサは、医療用途以外に、金属の欠陥検査用等にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例に係る超音波受信素子1を示す概略平面図。
【図2】図1におけるA−A断面を示す概略縦断面図。
【図3】本発明の他の実施例に係る超音波受信素子1を示す概略平面図。
【図4】音圧検出回路9の構成を示す概略図。
【図5】本発明の実施例に係る超音波トランスデューサ13を示す概略斜視図。
【図6】超音波送信素子15と超音波受信素子16の他の配置例を示す概略平面図。
【図7】超音波送信素子15と超音波受信素子16のいずれか一方又は双方をアレイ状に設けた配置例を示す概略平面図。
【符号の説明】
【0044】
1,16 超音波受信素子
2 ダイヤフラム
3 支持体(対向電極)
4 絶縁体
5 共振周波数調整機構
6 連通穴
8 メンブレン部
9 音圧検出回路
10 直流バイアス電源
11 空間
12 外部
13 超音波トランスデューサ
14 半導体基板
15 超音波送信素子
,R,R,R 半導体ピエゾ抵抗素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を受信してその音圧を検出する超音波受信素子において、
薄膜状のメンブレン部を有する半導体からなるダイヤフラムと、該ダイヤフラムのメンブレン部に設けられた半導体ピエゾ抵抗素子の抵抗値変化から受信超音波の音圧を検出する音圧検出回路と、前記ダイヤフラムの共振周波数を受信超音波の周波数に合わせる共振周波数調整機構と、を具備することを特徴とする超音波受信素子。
【請求項2】
前記共振周波数調整機構が、前記メンブレン部と所定間隔をおいて対向するように設けられた対向電極と、該対向電極及び前記メンブレン部の間に直流バイアス電圧を印加する直流バイアス電源と、を具備することを特徴とする請求項1に記載の超音波受信素子。
【請求項3】
前記ダイヤフラムにおけるメンブレン部以外の部分と前記対向電極との間に絶縁体が介在され、該絶縁体と前記メンブレン部と前記対向電極とによって包囲される空間が、外気圧より低く減圧されたことを特徴とする請求項2に記載の超音波受信素子。
【請求項4】
前記ダイヤフラムにおけるメンブレン部以外の部分と前記対向電極との間に絶縁体が介在され、前記メンブレン部と前記対向電極の少なくともいずれか一方に、前記絶縁体と前記メンブレン部と前記対向電極とによって包囲される空間を外部と連通するための連通穴が形成されたことを特徴とする請求項2に記載の超音波受信素子。
【請求項5】
半導体基板上に、圧電材料の圧電効果を利用して超音波を送信する超音波送信素子と、該超音波送信素子から送信された超音波を受信してその音圧を検出する請求項1乃至4のいずれかに記載の超音波受信素子とがそれぞれ設けられたことを特徴とする超音波トランスデューサ。
【請求項6】
前記超音波送信素子は、前記圧電材料がバルク材であることを特徴とする請求項5に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項7】
前記超音波送信素子は、前記圧電材料が薄膜材であることを特徴とする請求項5に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項8】
前記超音波送信素子の前記半導体基板全体に占める面積比率が、前記超音波受信素子の前記半導体基板全体に占める面積比率より大きいことを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の超音波トランスデューサ。
【請求項9】
前記超音波送信素子と前記超音波受信素子のうち、少なくともいずれか一方がアレイ状に設けられたことを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の超音波トランスデューサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−71395(P2009−71395A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234902(P2007−234902)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【Fターム(参考)】