説明

超音波探傷装置

【課題】
検査対象内の回折波を検出して探傷を行う超音波探傷装置の検出感度を安定、且つ、強く保つこと。
【解決手段】
共通のセンサ14内に内蔵された送信振動子列15と受信振動子列19によって検査対象材料21に対する超音波16の送信角度と回折波18の受信角度の和の1/2が30度を含む範囲で集束音場の集束点17を電子的に走査させ、且つ前記センサ14の送信用振動素子に供給する信号又は受信用振動素子から出力される信号の少なくとも一方の信号の増幅度を前記集束点17の位置に応じて変化させ、その結果受信した回折波18から欠陥22の端部を検出して欠陥22の検出および欠陥22の深さ方向のサイジングを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波探傷技術の分野に係る。
【背景技術】
【0002】
超音波の送信用探触子と受信用探触子の2個の探触子を一定間隔で固定配置し、TOFD(Time of Flight Diffraction、飛行時間回折法)法を用いて被検査体内の欠陥を超音波探傷する装置の存在と、及びそのTOFD法の規定がイギリスの規格BS7706(1993)に規定されていること、並びにTOFD法では送信用探触子から出射した超音波を被検査体に入射する入射角は45度〜55度、その超音波に基づく被検査体内の欠陥先端からの回折波を受信用探触子で受信する受信角も45度〜55度に設定されていた、ということが知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
その一方、送信した超音波ビームの広がりで回折波の強度が低下して欠陥検出性の低下が懸念されるから、その懸念を払拭する方法として、送信用探触子から出射される超音波ビームを集束させて欠陥先端に照射し、さらに受信用探触子の回折波検出領域も集束をさせて、回折波を効率良く検出することが公知である(特許文献1,特許文献2)。
【0004】
回折波を効率良く検出する場合、超音波の入射角は45度が効率上好ましいという点が公知である(例えば特許文献2の第4頁−第5頁,図2参照。)。
【0005】
さらには、同一のケーシング内に装備される送信振動子列と受信振動子列として複数の振動素子を集合させた振動子群を、使用するとともに、その振動子群のそれぞれその振動素子に遅延回路を接続し、遅延回路による各振動素子の励起のタイミングを徐々にずらしていくことにより、超音波の進行方向を制御しつつ行う電子的走査により超音波の屈折角を微調整して欠陥深さ測定を行うことが公知である(例えば特許文献3の第3頁−第6頁,図1−図12参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−228128号公報(第2−4頁,図1−図8)
【特許文献2】特開2001−228126号公報(第4頁−第5頁,図1−図4)
【特許文献3】特開2002−62281号公報(第3−6頁,図1−図12)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これら従来例では、超音波送信探触子と受信探触子の2個の探触子を一定間隔で固定したTOFD(Time of Flight Diffraction、飛行時間回折法)法で超音波探傷を行っており、さらに、超音波の入射角は45度〜55度、受信角も45度〜55度で設定されていた。この角度を45度〜55度と規定する理由は、従来は、欠陥先端に超音波ビームを照射して得られる回折波は45度〜55度方向が強いと考えられて一般的に用いられてきたからだ。
【0008】
しかし、超音波の入射角を約45度〜55度、受信用も約45度〜55度で設定したTOFD法では、超音波送信探触子と受信探触子を約45度〜55度の送受信角度を保つためにそれに応じた広い一定間隔で超音波送信探触子と受信探触子の間隔を固定して配置し、超音波送信探触子と受信探触子を合せた外寸が大きくなることから各送受探触子の接触する面積が小さい検査箇所や狭隘部の超音波探傷検査には適用ができないとともに超音波の送信から受信までの超音波の経路長さが長くなって超音波受信強度が弱くなる課題があった。
【0009】
従って、本発明の目的は、検査対象物の浅い位置から深い位置にわたって確実に欠陥を検出することであり、更に好ましくは、超音波の減衰が大きい検査対象物にも超音波探傷が確実に実施できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、超音波探傷装置の送受信アレーセンサとして、超音波を送信する複数の送信用の振動素子を配列した送信振動子列と超音波を受信する複数の受信用の振動素子を配列した受信振動子列の双方を備え、各々の振動子列の前記振動素子は、幅が0.1mm〜2mmであり、各々の振動子列内で隣り合う前記振動素子は相互に0.05mm〜0.2mmの隔たりをもって配置されている超音波の送受信アレーセンサの構成を提案する。また、その構成に加えて好ましくは、超音波の入出射面を避けて送受信アレーセンサに検査対象物に接する摩擦低減手段を設置することを提案する。
【0011】
また、超音波探傷装置として、超音波送信角と超音波受信角との和の半分が30度以内となる集束位置に各々の前記送信用の振動素子から発信された各超音波を集束させる制御装置と、前記受信用の振動素子が受信した超音波に基づいて探傷情報を生成する生成手段と、前記生成手段によって生成された探傷情報を表示する表示手段とを有する構成を提案する。
【0012】
また、超音波探傷方法として、超音波を送信する複数の送信用の振動素子を配列した送信振動子列、及び超音波を受信する複数の受信用の振動素子を配列した受信振動子列の双方を有する送受信アレーセンサで検査対象物に対して超音波を送受信し、前記送受信に係る超音波送信角と超音波受信角との和の半分が30度以内となる集束位置に前記超音波を集束するように超音波探傷装置を制御する超音波探傷方法を提案する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、超音波回折強度が微弱となるような条件下でも確実に超音波探傷できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例による超音波探傷装置の全体図。
【図2】本発明の実施例による超音波探傷装置の動作フローチャート図。
【図3】各振動素子への送信超音波振動子制御信号のタイミングチャート図。
【図4】送信超音波の発生タイミングチャート図。
【図5】本発明の実施例における欠陥信号の出力表示例1(Aスキャン信号)の例示図。
【図6】(a)図及び(b)図共に超音波送信角θtと受信角θrの定義の解説図。
【図7】送受信一体型小型アレーセンサの幅/奥行き/高さ,超音波振動子の素子幅/素子長さおよび絶縁材幅の定義の解説図。
【図8】送受信一体型小型アレーセンサの構造図。
【図9】送受信一体型小型アレーセンサの別の構造図。
【図10】本発明の欠陥信号の出力表示例2であり、超音波探傷装置の表示装置に表された画像をプリンターで紙にプリントした図。
【図11】本発明の欠陥信号の出力表示例3の例示図。
【図12】本発明の欠陥信号の出力表示例4であり、超音波探傷装置の表示装置に表された画像をプリンターで紙にプリントした図。
【図13】本発明の欠陥信号の出力表示例5であり、超音波探傷装置の表示装置に表された画像をプリンターで紙にプリントした図。
【図14】本発明の超音波探傷装置を欠陥検出および欠陥サイジングに適用した一例を示す図。
【図15】本発明の超音波探傷装置を欠陥検出および欠陥サイジングに適用した別の例を示す図。
【図16】本発明の原子炉炉内のシュラウドサポート部への送受信一体型小型アレーセンサの適用を各ケースについて示した図。
【図17】本発明を原子炉炉内炉底部のCRDハウジングスタブチューブおよび原子力圧力容器の近傍に適用した場合の図。
【図18】本発明の送受信一体型小型アレーセンサを吊り下げ式検査装置に搭載した場合の図。
【図19】本発明である送受信一体型小型アレーセンサを凹面形状の検査対象部位へ適用した例1の図。
【図20】本発明である送受信一体型小型アレーセンサを凹面形状の検査対象部位へ適用した例2の図。
【図21】本発明である送受信一体型小型アレーセンサを凸面径形状の検査対象部位へ適用した例1の図。
【図22】本発明である送受信一体型小型アレーセンサを凸面径形状の検査対象部位へ適用した例2の図。
【図23】本発明である送受信一体型小型アレーセンサの凹凸面径形状への追従機構の例の図。
【図24】本発明の超音波探傷装置を欠陥検出および欠陥サイジングに適用した別の例を示す図。
【図25】本発明の超音波探傷装置を用いた原子炉内簡易検査装置の実施例の図。
【図26】本発明の超音波探傷装置を用いた原子炉内検査装置の実施例の図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施例における超音波探傷方法は、超音波の検査対象材料への送受信の入射角が30度以下の領域を用いることで、送信および受信の集束点の交差領域を広くすることが可能であり、送信超音波の集束点と受信超音波の集束点の僅かな位置ずれによる欠陥検出感度の変動を大幅に低減することができた。
【実施例1】
【0016】
発明者等は複数の超音波の振動素子を配列した送信振動子列を備えているアレー型送信超音波振動子(送信用アレーセンサともいう。)と複数の超音波の振動素子を配列した受信振動子列を備えているアレー型送信受信超音波振動子(受信用アレーセンサともいう。)を1つのケーシング内に納めて一体成型した送受信一体型小型アレーセンサ(以下、単に送受信アレーセンサ又はセンサと略称する。)を製作した。発明者等は、このセンサを用いて超音波の送信および受信の両者に集束をかけて、尚且つ、従来では回折波の検出が困難と考えられていた超音波の送信/受信角をそれぞれ0度〜30度に設定して検査対象物内の欠陥に超音波を照射し、欠陥探傷および欠陥サイジング試験を実施した。
【0017】
その結果、欠陥探傷および欠陥サイジングが良好に実施可能であることを、はじめて発明者等が明らかにした。即ち、超音波の送信/受信角が、従来は45度から55度であるのを30度以下という浅い角度でも、欠陥探傷および欠陥サイジングが良好に可能であることを発見した。
【0018】
即ち、超音波の送信/受信角が45度から55度である従来TOFD法とは異なる新しい超音波探傷方法を確立することができた。この新しい超音波探傷方法は送受信の入射角が30度以下の領域を用いることで、送信および受信の集束点の交差領域を広くすることが可能であり、送信超音波の集束点と受信超音波の集束点の僅かな位置ずれによる欠陥検出感度の変動を大幅に低減することができ、欠陥検出および欠陥サイジングが安定に実施可能である特徴を持つという、いわゆる欠陥検出感度のロバスト性を実現できるに至った。
【0019】
この新しい超音波探傷方法を用いることで、従来法である端部エコー法やTOFD法では欠陥検出および欠陥サイジングが不可能であった、(1)欠陥幅が狭く、超音波回折強度が微弱な欠陥、(2)超音波の減衰が大きい材料や超音波が屈曲する異方性材料中の欠陥、(3)探触子の接触可能面積が小さい検査箇所や狭隘部の欠陥、(4)溶接金属中の欠陥の欠陥検出および欠陥サイジングが実現できた。
【0020】
この新しい超音波探傷方法を実現する具体的な実施例を以下に説明する。図1は本発明の超音波探傷装置の全体を表すものである。本発明の実施例による超音波探傷装置は大きく分けて、超音波探傷装置本体122と、その超音波探傷装置本体122と各信号線で電気的に接続された送受信アレーセンサ14(以下、単にセンサ14という。)から構成される。その各信号線は一束にされて信号ケーブル123とされる。
【0021】
センサ14は、送信用アレーセンサを構成する送信振動子列15の各振動素子A,B,C,Dから検査対象物である検査対象材料21内に超音波16を送信し、その超音波16に基づいて検査対象材料21内で超音波16が欠陥22の下端で回折して発生した回折波を受信用アレーセンサを構成する受信振動子列19の各振動素子O,P,Q,Rで受信し、受信振動子列19の各振動素子から回折波を受信したことによって各振動素子に発生した電気的信号を超音波探傷装置本体122へ出力するものである。この送信振動子列15の各振動素子A,B,C,Dは送信用に用いられるので送信用振動素子であり、受信振動子列19の各振動素子O,P,Q,Rは受信用に用いられるので受信用振動素子と定義できる。
【0022】
この送信振動子列15と受信振動子列19を一体にして備えたセンサ14は、検査対象材料21の表面に、欠陥22の真上にセンサ14の中央部が位置するようにして置かれる。
【0023】
超音波探傷装置本体122は、その受信振動子列19の各振動素子から電気的信号を受けて超音波探傷結果として検査結果を創出するものである。超音波探傷装置本体122としては、入力装置1とメモリ2と超音波制御装置3と情報処理装置4とI/O5と表示装置6と送信側アンプ制御装置9と受信側アンプ制御装置10と送信超音波振動子制御装置7と受信信号処理装置8と送信側アンプ11と受信側アンプ12とを有する。
【0024】
以下でこれら各装置の詳細な説明およびその装置の役割を記載する。図1は本発明の実施例による超音波探傷装置の全体図を表すものである。図2は本発明の実施例における動作ステップのフローを記載したものである。
【0025】
先ず、入力装置1を用いて、超音波の送受信パターンを決定するための入力条件を入力する(ステップa)。入力条件とは、欠陥を高感度に検出するための、超音波送受信パターンを決定するための条件であり、(1)送信振動子列(図2では励起素子列と記している。)とする振動素子A,B,C,D、(2)受信振動子列(図2では受信素子列と記している。)の振動素子O,P,Q,R、(3)送信超音波集束点の位置(F11,F12,…,Fmn,m=1〜i,n=1〜j)、(4)受信側集束点の位置(F11,F12,…,Fmn,m=1〜i,n=1〜j)、(5)送信側アンプ11の増幅度を表すゲイン、(6)受信側アンプ12の増幅度を表すゲイン等から構成される。この入力条件は入力装置1からメモリ2および超音波制御装置3へ転送される(ステップb)。
【0026】
超音波制御装置3では、入力条件より各超音波集束点に超音波が集束されるような各超音波振動子の超音波送信タイミングTtimnおよび受信タイミングTrimnを計算する(ステップc)。ここでTt:送信超音波遅延時間,Tr:受信遅延時間,i:振動素子の番号(A,B,C,………),mn:2次元座標である。
【0027】
送信振動子列の各振動素子A,B,C,Dおよび受信振動子列の振動素子O,P,Q,Rを動作させるために必要な超音波制御信号を送信超音波振動子制御装置7および受信信号処理装置8へ超音波制御装置3からI/O5を介して送信する(ステップd)。送信超音波振動子制御信号(集束点Fmn,初期値F11)は送信側アンプ11を用いて増幅され、送信振動子列15の各振動素子A,B,C,Dへ供給される(ステップe)。
【0028】
送信振動子列15の各振動素子A,B,C,Dから放出されたそれぞれの超音波16(球面波)は時間差があるため、検査対象材料21内部の集束点17(Fmn)の位置で各超音波16は集束される(ステップf)。図1においては集束点17(Fmn)に超音波16を集束させるため、集束点17(Fmn)に最も遠いセンサ14の最外部付近に存在する振動素子Aへの送信信号が最も早く入力され、最も早く超音波が振動素子Aから放出される。また、集束点17(Fmn)に最も近いセンサ14の中心付近に存在する振動素子Dへの送信信号が最も遅く入力され、最も遅く超音波16が振動素子Dから放出される。
【0029】
図3に各振動素子への送信超音波振動子制御信号のタイミングチャートを示す。また、図4に図3によって発生する超音波16の発生タイミングチャートを示す。上でも述べたように、検査対象材料21内部の集束点17(Fmn)の位置で超音波を集束されるための各振動素子A,B,C,Dへの遅延時間TrAmn,TrBAmn,TrCmn,…は超音波制御装置3で計算される。従って、超音波16(球面波)は時間差があるため、検査対象材料21内部の集束点17(Fmn)の位置で超音波は集束させることが可能となる。
【0030】
集束点17(Fmn)の位置に欠陥端部がある場合、超音波が欠陥端部で回折して回折波18が生じ、回折波18は受信振動子列19の各振動素子O,P,Q,Rに時間差を持ちながら入射する(ステップg)。
【0031】
図1では集束点17(Fmn)に最も近いセンサ14の中央付近に存在する受信側の振動素子Oに入射する回折波18が時間的に最も早く、また、集束点17(Fmn)に最も遠いセンサ14の最外部付近に存在する受信側の振動素子Rに入射する回折波18が時間的に最も遅い。受信振動子列19の各振動素子O,P,Q,Rに回折波18が入射すると、受信振動子列19の各振動素子O,P,Q,Rには回折波18の強度および時間に対応した超音波受信信号(電気信号)が誘起され、この超音波受信信号(電気信号)は受信側アンプ12で増幅されて、受信信号処理装置8へ入力される(ステップh)(ここで、受信側アンプ12と受信信号処理装置8を入れ替えて、受信信号処理装置8で信号を加算して1つの信号に合成した後に、受信側アンプ12の1個で増幅しても良い)。
【0032】
受信信号処理装置8では、受信振動子列19の各振動素子O,P,Q,Rの受信の集束点17(Fmn)と受信振動子列19の各振動素子O,P,Q,Rの位置関係(距離関係)より各超音波受信信号(電気信号)を合成する受信タイミングTrimnを制御した後、各超音波受信信号(電気信号)を加算して1つの超音波受信信号を作成する(ステップi)。受信タイミングTrimnは入力条件より決定された受信の集束点(集束点17(Fmn)と同じ)に受信振動子列19の各振動素子O,P,Q,Rの受信の集束点が集束されるような値を超音波制御装置3で計算されたものである。
【0033】
超音波受信信号はI/O5を介して情報処理装置204とメモリ2へ転送される(ステップj)。ここで得られる超音波受信信号を情報処理装置4で表示形態に応じて処理して表示装置6で探傷情報として表示させたときの代表例を図5に示す。この信号表示はAスコープと呼ばれており、探傷情報として横軸が超音波受信信号(電気信号)の時間、縦軸には超音波受信信号強度が表示される。図5のように探傷情報として欠陥回折波信号が表示されることにより、その欠陥回折波信号の存在を欠陥の存在根拠として認識して欠陥の検出が可能となる。また、超音波の送信した時間と回折波の検出時間(超音波の伝播時間)より、欠陥の深さを測定(欠陥サイジング)することができる。
【0034】
従来の超音波探傷方法による回折波18は微弱であるため、本実施例では上記のように、欠陥端部に送信超音波を集束させ、受信側も集束させることにより回折波検出感度を大幅に向上させることが可能となる。しかも、超音波の送信角や回折波の受信角が30度以下の領域を用いることで、送信および受信の集束点の交差領域を広くすることが可能であり、欠陥検出および欠陥サイジングをロバストにすることが可能となった。このように、本発明の実施例では、超音波の送受信角が30度以下となる領域に超音波の集束点を少なくとも一点設定してあり、全点をそのように設定しても良い。
【0035】
このようにして、超音波16の集束点と受信の集束点が同じ場所になるように超音波制御装置3で超音波送信タイミングと受信タイミングを計算し、その制御信号を送信超音波振動子制御装置7と受信信号処理装置8に与えて処理する。
【0036】
以上のステップeからステップjの動作は、2次元座標で定義される集束点(F11,F12,…,Fmn,m=1〜i,n=1〜j)が複数存在する場合には、ステップj以降のステップk,l,m,n,oを実行することによって、複数の各集束点に対して行われる。そして、最終的には、ステップPで回折波を受信して得られた受信信号を所望する表示形態に合うように情報処理装置4で処理し、その情報処理装置を用いて受信信号を所望の表示形態の探傷情報として表示装置6で画像表示するとともに、受信信号の情報(受信データ)を処理,解析する。
【0037】
このように、本発明の実施例では、小型で高感度,高分解分解能および欠陥検出がロバスト探傷方法を実現するため、(1)超音波探傷装置において、送信用アレーセンサと受信用アレーセンサのそれぞれの集束音場の交点(集束点17)が存在し、そのなす超音波の送信角と受信角の角度の和の1/2が30度を含む範囲で集束音場の交点を移動させること、(2)集束音場の交点が送信用アレーセンサと受信用アレーセンサの中心であること、(3)超音波の送信角θtと受信角θrの値を従来では回折波の検出が困難と考えられていた30度以下の領域を用いて(送信角θtと受信角θrをそれぞれ30度以下の領域を含むように設定)、欠陥に超音波を送信/受信し、超音波の伝播時間より欠陥探傷および欠陥サイジング試験を実施すること、(4)小型,高感度,高分解分解能な送受信一体型小型アレーセンサに適した小型で緻密化したアレーセンサ(素子幅:1.0mm以下,絶縁材幅:0.2mm以下)にしてあることなどが提案できる。
【0038】
図6の(a)図及び(b)図にセンサ14から検査対象材料21への超音波16の送信角θtと超音波である回折波18のセンサ14への受信角θrの定義を示す。超音波送信角θtは送信振動子列15の中央と集束点17を結んだ線(図中の実線)とセンサ14の中心(送信振動子列15と受信振動子列19の間)と集束点17を結んだ線(図中の破線)とのなす角と定義する。受信角θrは受信振動子列19の中央と集束点17を結んだ線(図中の実線)とセンサ14の中心(送信振動子列15と受信振動子列19の間)と集束点17を結んだ線(図中の破線)とのなす角と定義する。
【0039】
本発明の実施例では、超音波探傷装置で送信した超音波と回折波として受信した超音波のそれぞれの集束音場の交点(集束点17)が存在し、その集束音場の交点に対する超音波送信角θtと受信角θrとの和の1/2が30度以下を含む範囲で集束音場の交点を移動させている。この動作を実行するには、送信角θtと受信角θrの値がそれぞれ30度以下を含む範囲で集束音場の交点の位置を変位させるように、入力条件として送信超音波集束点(F11,F12,…,Fmn,m=1〜i,n=1〜j)と受信側集束点(F11,F12,…,Fmn,m=1〜i,n=1〜j)を入力し、図1の装置を用いて図2の動作のフローを実行して実現できる。
【0040】
図7には、センサ14の幅/奥行き/高さ、電気的信号を超音波に変換する振動素子、即ち送信振動子列15と受信振動子列19を構成する振動素子の素子幅/素子長さおよび絶縁材幅の定義を図示してある。
【0041】
本発明の実施例では、送信用アレーセンサと受信用アレーセンサを小型に一体化したセンサ14を用いること、そのセンサ14の大きさが検査対象部位あるいは検査対象部位である溶接金属部の幅より小さい、または同等であること、センサ14に装備された送信振動子列15と受信振動子列19を構成する振動素子の幅が素子と素子との間隔の2倍以上、40倍以下であること、特に、原子炉炉内で用いる超音波探傷装置において、検査対象面である溶接金属部や母材に直接接触させる送受信一体型小型アレーセンサの接触面積(フットプリント)をセンサ14の幅方向30mm×センサ14の奥行き方向30mm以下の小型として、溶接金属部の欠陥の真上からセンサ14を直接接触させることにより欠陥の検出またはサイジングを行えるようにした。センサ14の振動素子に関しては、素子幅が2.0mmを超えると真下方向の超音波が真下に強くなって横方向のそれが弱くなるので、結果として超音波の集束制御が行いにくくなること、及び素子幅が0.1mm未満である場合には、発信できる超音波のエネルギーが弱くなって深い位置に超音波が伝わりにくくなることを考慮して、振動集束素子幅は0.1mm〜2.0mmとし、振動素子間の絶縁材幅は0.05mm〜0.2mmとした。このようにして、小型で振動素子が緻密化されたセンサ14を構成する。
【0042】
例えば、センサ14の振動集束素子幅と、振動素子間の絶縁材幅は、送信振動子列15と受信振動子列19の各振動素子(超音波振動子)間の間隔を1.0mm(素子幅:0.8mm,絶縁材幅:0.2mm)に設定し、送信振動子列15を8素子、受信振動子列19を8素子、合計で16素子、幅:1.0mm/素子×16素子=16mm、素子長さ:10mmのアレー探触子で実現した。また、送信振動子列15と受信振動子列19の各振動素子(超音波振動子)間の間隔を0.5mm(素子幅:0.4mm,絶縁材幅:0.1mm)に設定し、送信振動子列15を16素子、受信振動子列19を16素子、合計で32素子、幅:0.5mm/素子×32素子=16mm,素子長さ:10mmのアレー探触子で実現した。また、送信振動子列15と受信振動子列19の各振動素子(超音波振動子)間の間隔を0.25mm(素子幅:0.2mm,絶縁材幅:0.05mm)に設定し、送信振動子列15を32素子、受信振動子列19を32素子、合計で64素子、幅:0.25mm/素子×64素子=16mm,素子長さ:10mmのアレー探触子で実現した。これらにより、センサ14の幅と奥行きによって定められるセンサ14の断面(フットプリント)が幅方向約16mm×奥行き方向10mmと非常に小さいセンサが実現できる。
【0043】
即ち、本発明の実施例は、センサ14の断面積(フットプリント)が幅方向30mm×奥行き方向30mm以下の非常に小さいセンサを用い、この小型のセンサ14で欠陥探傷および欠陥サイジングが実現できる。原子炉炉内の代表的な溶接金属部の幅は約20〜50mm前後であり、この上に接触させることを考えるとセンサ14のフットプリントは幅方向30mm×奥行き方向30mm以下にすることで検査が良好に実施可能となる。
【0044】
前述の説明では、「検査対象面である溶接金属部や母材に直接接触させる送受信一体型小型アレーセンサの接触面積を30mm×30mm以下の小型とし」、という表現を用いているが、この表現は、検査対象材料の表面にセンサ14を直接密着させる方法は当然のことながら、検査対象材料の表面との摩擦を避けるために用いられる部分水浸法(水距離10mm以下)を実施することも意味として含む。
【0045】
図8にセンサ14の構造の一例を示す。送信振動子列15と受信振動子列19の各振動素子は超音波の出入りする入出射面であるエポキシ樹脂板101の上に設置され、樹脂102で位置が固定されている。ケーシング100と樹脂102の間には超音波を吸収する遮音材103が充填されている。図9にセンサ14の別の構造例では、送信振動子列15と受信振動子列19の各振動素子はエポキシ樹脂板101の上に設置され、その間には吸音材104(コルク材等)が設置され、これにより、送信振動子列15と受信振動子列19間の音のクロストークは大幅に低減可能であり、ノイズの低減とさらなる検出感度の向上が実現できる。
【0046】
後に記載した実施例で詳細には説明するが、本装置構成を用いれば、集束点17をセンサ14の中心真下方向に電子的に走査すること、即ち集束点17の位置を移動させることが可能となる。ここで得られる探傷情報として欠陥の信号を表示装置6で表示させたときの代表例を図10に示す。この信号表示は欠陥深さを表示したものであり、横軸が送受信一体型小型アレーセンサ14の送信振動子列15と受信振動子列19が並んでいる方向の距離、縦軸はセンサ14の底面方向の距離である。図10中の原点が受信アレープローブの中心であり、超音波の受信角θrの時の信号強度(Aスコープの信号強度を色濃淡画像で表示)を表示したものである。即ち、この2次元座標上の濃淡分布は超音波受信信号(電気信号)強度を表したものである。超音波受信信号(電気信号)の強度か高い部分には超音波の発生源(反射源)である欠陥の先端があると評価できるため、欠陥のサイジングが可能となる。図10から分かるとおり、欠陥の先端を視覚的に認識することが可能であり、欠陥検出および欠陥サイジングの客観性が向上できる。
【0047】
図11に本発明の実施例における超音波探傷装置の別の表示例を示す。図11は欠陥先端が2箇所ある場合の例を示した。焦点深さF11(θr=θ1),F12(θr=θ2),F13(θr=θ3),F14(θr=θ4)…に対して、θr毎にAスコープを表示させたものであるが、このときのF11(θr=θ1),F12(θr=θ2),F13(θr=θ3),F14(θr=θ4)のAスコープの模式波形を図11に示した。F11(θr=θ1)に着目すると、超音波集束点領域に存在する超音波信号が欠陥指示信号と考えられ、同様にF12(θr=θ2),F13(θr=θ3),F14(θr=θ4)の超音波集束点領域に着目し、この超音波集束点領域にゲートをかけて全て加算すると最下部のAスコープ波形(ACスコープ)が得られる。このACスコープの超音波信号が存在するところに欠陥先端があると認識できることから、欠陥検出および欠陥サイジングが可能となる。
【0048】
図12に本発明の実施例における探傷情報の別の表示例を示す。この探傷情報の信号表示は欠陥深さを客観的に評価することを目的に表示したものであり、横軸が欠陥深さ(∝超音波受信信号の時間)、縦軸は集束パターン番号である。縦軸の集束パターン番号とは送信超音波集束点(=受信側集束点)番号でありF11,F12,F13,F14に対応する。即ち、図3cは縦軸(集束パターン番号)に対応したAスコープの信号強度を色濃淡画像で表示させたものである。超音波受信信号(電気信号)の強度が高い部分には回折波である超音波の発生源(反射源)としての欠陥の先端があると評価できるため、欠陥のサイジングが可能となる。図12から分かるとおり、欠陥の先端を視覚的に認識することが可能であり、欠陥検出および欠陥サイジングの客観性が向上できる。
【0049】
集束点17をセンサ14の中心真下方向に電子的に走査する探傷条件で、そのセンサ14を機械的に走査(センサ14の送信振動子列15と受信振動子列19の各振動素子が並んでいる方向に対して直交する水平方向に走査)した場合の、欠陥の信号を含む探傷情報を表示装置6で表示させたときの代表例を図13に示す。横軸が超音波受信信号(電気信号)の時間、縦軸はセンサ14の走査方向の距離であり、この2次元座標上の濃淡分布は超音波受信信号(電気信号)強度を表したものである。即ち、超音波受信信号(電気信号)の局所的に強度か高い部分には回折波である超音波の発生源(反射源)である欠陥の先端があると評価でき、また、その他の定常的に強度か高い部分には底面エコーと判断できるため、欠陥の検出およびサイジングが可能となる。
【0050】
超音波の送受信で得られた受信信号の情報は図10,図11,図12,図13のいずれかの表示による探傷情報として表示装置6で可視化されるのであるが、それらの探傷情報は受信信号処理装置8からメモリ2に送られて蓄積された受信信号や情報処理装置4に送られてきた受信信号に基づいて情報処理装置4で表示形態にあった探傷情報に処理されて表示装置6に表示される。
【0051】
図1では欠陥22の下側の先端の位置が概ね判明している場合で、超音波16の集束点17をその先端の位置に合せて一箇所にする入力条件とする。検査対象材料21の表面に開口している欠陥22の先端(各図中の欠陥22の下端)に超音波16の集束点17を定め、その集束点17に超音波16を集束させるように送信振動子列15の各振動素子A,B,C,Dから超音波16を発信して欠陥22の先端である集束点17に向かって超音波16を集束させる。集束された超音波16は欠陥22の先端で回折して回折波18が生じる。この回折波18は受信振動子列19の各振動素子O,P,Q,Rに入射して受信される。各振動素子O,P,Q,Rが回折波を受信することによって各振動素子O,P,Q,Rから超音波受信信号(電気信号)が出力されて送受信信号遅延制御装置7へ伝送され、増幅および遅延処理が実行された後、超音波波形である図5の波形が表示装置6に表示される。その表示内容は図10,図11または図13等で有っても良い。これにより、欠陥検出および欠陥サイジングが可能となる。図1では欠陥22の先端がある程度分かっているときの手法について述べた。この場合には、集束点17は一箇所であるから、集束点17を複数設定して集束点を移動させる必要が無い。
【0052】
図14は、本発明の実施例による超音波探傷装置を欠陥検出および欠陥サイジングに適用した別の例を示すものである。上で述べたように欠陥22の下側の先端がある程度分かっているときの手法について述べたが、実際の検査ではカメラ等を用いた目視検査にて検査対象材料21の表面に欠陥22の開口があるという初期情報しかない場合が多い。即ち、欠陥22の深さ、即ち、欠陥22の下端の位置は分からない状態で、超音波探傷試験を実施することが多い。図14ではこのような、欠陥22の深さは分からない状態で、超音波探傷試験を実施する例について記載したものであり、以下で詳細に説明する。
【0053】
図14を用いて欠陥探傷およびサイジングの手順を以下に記載する。検査対象材料21の中に発生した欠陥22の真上、即ち、検査対象材料21の表面に現れた欠陥22の開口にセンサ14を、センサ14の中央部が対面するように押し当てる。
【0054】
欠陥22とセンサ14の位置合わせは、目視あるいはカメラと照明を用いた遠隔目視にて実施し、センサ14の中心と欠陥22の開口とを位置合わせする。即ち、欠陥22の真上にセンサ14の位置合わせをして欠陥検出および欠陥サイジングを実施する。
【0055】
検査対象材料の表面に存在する欠陥22の開口側からの目視では欠陥22の深さは分からないため、本実施例では送信超音波16の集束点17(=超音波の集束受信点)を欠陥の奥行き(深さ)方向であるセンサ14の真下方向に連続的にあるいは離散的に走査させる。この送信超音波16の集束点17(=超音波の集束受信点)のセンサ14真下方向の走査は超音波制御装置3を用いて送信超音波振動子制御装置7および受信信号処理装置8を制御して可能であり、超音波集束幅は数ミリ程度の有限の大きさを持つことから、欠陥22の端部と集束した送信超音波16との相互作用で回折波18が生じる。この回折波18は受信振動子列19に入射し、超音波受信信号(電気信号)は受信側アンプ12で増幅されて、受信信号処理装置8へ伝送/信号合成されメモリ2に記憶または情報処理装置4で信号処理される。ここで得られる超音波波形は図5が得られ、欠陥検出および欠陥サイジングの出力は図10,図13が得られる。これにより、欠陥22の深さは分からない状態でも欠陥検出および欠陥サイジングが可能となる。
【0056】
図14と表1を用いて集束点17の位置(深さ)により送信アンプのゲインを変化させる一例を説明する。図14では集束点17をF11→F12→F13→F14へと走査させている。このため、図14の例では、送受信の集束点17の位置として4箇所の位置が超音波の送受信パターンを決定するための入力条件として設定される。
【0057】
検査対象材料21の集束点17の内表層付近(F11)では深い点(F14)に比べて超音波の伝播距離が短く、検査対象材料21中の超音波の減衰が少ないため、表層付近(F11)では超音波の強度が高い。これに対し、集束点の深い点(F14)では超音波の伝播距離が長く、検査対象材料21中の超音波の減衰が大きく、表層付近(F11)に比べ超音波の強度が低くなる。集束点の深い点(F14)に合わせて送信側アンプ11のゲインを設定してしまうと、表層付近(F11)ではゲインが高すぎて、超音波の不感帯が大きくなるため、検査対象材料21の表層付近(F11)の欠陥を検出することができない。
【0058】
このため、検査対象材料21の表層付近(F11)では集束点の深い点(F14)に比べ送信側アンプ11のゲインを低く設定する。即ち、本実施例では集束点深さに最適な超音波強度を与えるため、超音波制御装置3で集束点深さに最適な超音波強度を計算および設定し、I/O5を通して送信側アンプ制御装置9を制御し、送信側アンプ11のゲインを集束点深さに応じて変化させる。したがって、超音波制御装置3と送信側アンプ制御装置9が第1増幅度制御装置としても機能する。これにより、検査対象材料21内の集束点17の内表層付近(F11)から集束点の深い点(F14)までの広範囲における欠陥検出および欠陥サイジングが可能となる。
【0059】
【表1】

【0060】
表1に代表的な送信側アンプ11のゲイン設定を示す。AT1〜AT4は送信側アンプ11の各アンプ名称であり、一振動素子に一アンプが接続されているものである。F11〜F14は送受信の集束点17を示し、集束点17の浅い方から順にF11〜F14である。各アンプAT1〜AT4のある集束点(F11〜F14)におけるゲインはGである。例えば、アンプAT1の集束点F11のゲインはGA1、集束点F14のゲインはGD1である。表1に示すとおり、各アンプのゲインは集束点深さに応じてゲインを最適化し、集束点深さが深くになるに従いゲインを大きく設定する(GA<GB<GC<GD)ことを特徴とする。
【0061】
上記では集束点17の深さにより送信アンプのゲインを変化させる実施例の一例を示したが、この効果は、集束点17の深さにより受信側アンプ12のゲインを変化させることでも実現可能であり、その一例を以下に説明する。検査対象材料21の表層付近(F11)では深い点(F14)に比べて超音波の伝播距離が短く、検査対象材料21中の超音波の減衰が少ないため、表層付近(F11)では超音波の強度が高い。これに対し、集束点の深い点(F14)では超音波の伝播距離が長く、検査対象材料21中の超音波の減衰が大きく、表層付近(F11)に比べ超音波の強度が低くなる。集束点の深い点(F14)に合わせて受信側アンプ12のゲインを設定してしまうと、表層付近(F11)ではゲインが高すぎて、検査対象材料21の表層付近(F11)の欠陥を正確に検出することができない。
【0062】
このため、受信側アンプ12のゲインを検査対象材料21の表層付近(F11)では集束点の深い点(F14)に比べ低く設定する。即ち、本発明の特徴は集束点深さに最適な超音波検出感度を与えるため、超音波制御装置3で集束点深さに最適な超音波検出感度を計算および受信側アンプ12のゲインを設定し、I/O5を通して受信側アンプ制御装置10を制御し、受信側アンプ12のゲインを集束点深さに応じて変化させるところにある。したがって、超音波制御装置3と受信側アンプ制御装置10が第2増幅度制御装置としても機能する。
【0063】
これにより、検査対象材料21の表層付近(F11)から集束点の深い点(F14)までの欠陥検出が可能となる。表2に代表的な受信側アンプ12のゲイン設定を示す。AR1〜AR4は受信振動子列の各振動素子一個につき一台の受信側アンプ12を接続した、その受信アンプ12の各アンプ名称であり、F11〜F14は集束点17を示し、集束点17の浅い方から順にF11〜F14である。各アンプ(AR1〜AR4)のある集束点(F11〜F14)におけるゲインはGである。例えば、アンプAR1の集束点F11のゲインはGO1、集束点F14のゲインはGR1である。表2に示すとおり、各アンプのゲインは集束点深さに応じてゲインを最適化し、集束点深さが深くになるに従いゲインを大きく設定する(GO<GP<GQ<GR)。
【0064】
【表2】

【0065】
上記では集束点の深さにより送信側アンプまたは受信側アンプのゲインを変化させる一例を示したが、この効果は、集束点(深さ)により送信側アンプと受信側アンプの両者のゲインを変化させることでも実現可能である。即ち、送信側アンプと受信側アンプの両者の各アンプのゲインは集束点17の深さに応じてゲインを最適化し、集束点17の深さが深くになるに従いゲインを大きく設定することを特徴とする。
【0066】
図15は、本発明の実施例による超音波探傷装置を欠陥検出および欠陥サイジングに適用した別の例を示すものである。上で述べたように図14の例ではセンサ14の真下方向に欠陥22が進展している場合の欠陥検出および欠陥サイジング方法について記載した。
【0067】
図14のように欠陥22は真下方向に進展しているケースが多いと考えられるが、稀なケースとしては欠陥が真下方向ではなく、斜め方向に進展している欠陥や欠陥先端が枝分かれしているケースなども考える必要がある。図15は欠陥の進展形状が分からない状態で、超音波探傷試験を実施する例について記載したものであり、以下で詳細に説明する。欠陥探傷およびサイジングの手順を以下に記載する。検査対象材料21の中に発生した斜め方向に進展している欠陥や欠陥先端が枝分かれしている欠陥24の表面開口部の真上にセンサ14を押し当てる。
【0068】
表面開口側からの目視では欠陥の進展方向や欠陥形状は分からないため、先ず送信超音波16の集束点(=超音波の集束受信点)をセンサ14の真下方向に連続的にあるいは離散的に走査させ超音波データを収録した後、次に、集束点(=超音波の集束受信点)をセンサ14の送信振動子列15の振動素子配列方向(図15中のX方向)に超音波集束幅(数ミリ程度)の1/2または1/4程度の距離を移動させた後に真下方向(図15中のY方向)に連続的にあるいは離散的に走査させ超音波データを収録する。
【0069】
この後、更に集束点(=超音波の集束受信点)をセンサ14の送信振動子列15の振動素子配列方向(図15中のX方向)に超音波集束幅(数ミリ程度)の1/2または1/4程度の距離を移動させた後に真下方向(図15中のY方向)に連続的にあるいは離散的に走査させ超音波データを収録する手順を繰り返すことで、センサ14の下部の2次元的な走査が実現できる。本実施例の走査方法および欠陥検出により検査対象材料21の中に発生した斜め方向に進展している欠陥や欠陥先端が枝分かれしている欠陥24をも欠陥検出および欠陥サイジングが可能となる。
【0070】
図16は既述のいずれかの実施例による超音波探傷装置を原子炉炉内のシュラウドサポート部の超音波探傷作業に適用した例を示したものである。原子炉内のシュラウドサポート25とシュラウドサポートリング27とは原子炉圧力容器内に装備されていて、互いにインコネル溶接金属部29で溶接されている。シュラウドサポート25とシュラウドサポートリング27とを接合するインコネル溶接金属部29を溶接で得る際には温度上昇が生じ、インコネル溶接金属部29の近傍にシュラウドサポートリングの熱影響部28が発生する。同様にインコネル溶接金属部29の近傍にシュラウドサポートの熱影響部26が発生する。一般的にインコネル溶接金属部29,シュラウドサポートリングの熱影響部28およびシュラウドサポートの熱影響部26は応力腐食割れの感受性が高いと考えられており、これらの部位の欠陥検出および欠陥サイジングは非常に重要な課題となっている。表面開口欠陥22の検出は従来型の斜角探触子を用いた超音波探傷方法では欠陥検出および欠陥サイジングは非常に困難である。
【0071】
また、従来TOFD法を用いた溶接部の検査では、溶接線を跨いだ体系、での検査となるため、超音波ビームの伝播経路が送信探触子→母材→溶接金属部→母材→受信探触子となり、超音波ビームが母材から溶接金属部へ入射するに、超音波ビームが曲がること、および溶接金属内部では超音波ビームが拡散/減衰することが知られている。また、従来型のTOFD法を用いた超音波探傷方法は、超音波送信探触子と受信探触子を一定間隔で固定し、走査することが必要であり外寸が大きくなることから、図17に示すような幅が狭く段差があるインコネル溶接金属部29,シュラウドサポートリングの熱影響部28およびシュラウドサポートの熱影響部26には適用が困難である。図17は表面開口欠陥22の欠陥検出および欠陥サイジングに適したセンサ14を用いた超音波探傷装置を原子炉炉内のシュラウドサポート部のインコネル溶接金属部29,シュラウドサポートリングの熱影響部28およびシュラウドサポートの熱影響部26に適用した例を示したものである。
【0072】
図16中のケース(1)は表面開口欠陥22の欠陥検出および欠陥サイジングに適したセンサ14を用いた超音波探傷装置をシュラウドサポートリングの熱影響部28に適用した例を示したものであるが、図からも分かる通り、表面開口欠陥22の頂上(欠陥22の開口部)にセンサ14を設置させることが可能であり、シュラウドサポートリングの熱影響部28に適用可能である欠陥検出および欠陥サイジングが可能となる。
【0073】
図16中のケース(3)は本発明である表面開口欠陥22の欠陥検出および欠陥サイジングに適したセンサ14を用いた超音波探傷装置をシュラウドサポートの熱影響部26に適用した例を示したものであるが、図からも分かる通り、表面開口欠陥22の頂上にセンサ14を設置させることが可能であり、シュラウドサポートの熱影響部26に適用可能である欠陥検出および欠陥サイジングが可能となる。
【0074】
同様に、図16中のケース(2)は表面開口欠陥22の欠陥検出および欠陥サイジングに適したセンサ14を用いた超音波探傷装置をインコネル溶接金属部29に適用した例を示したものであるが、図からも分かる通り、表面開口欠陥22の頂上にセンサ14を設置させることが可能であり、インコネル溶接金属部29に適用可能であり欠陥検出および欠陥サイジングが可能となる。
【0075】
特にインコネル溶接金属部29は超音波の減衰が大きいこと、超音波が屈曲することおよびノイズエコーが発生することから、インコネル溶接金属部29での超音波伝播距離が長くなる従来型の斜角探触子を用いた超音波探傷方法や従来型TOFD法を用いた超音波探傷方法では欠陥検出および欠陥サイジングは非常に困難である。これに対し、本発明である送受信一体型小型アレーセンサ14を用いた超音波探傷方法では、送受信一体型小型アレーセンサ14をインコネル溶接金属部29へ設置して欠陥検出および欠陥サイジングを実施するため、以下の利点がある。(1)溶接金属部の超音波伝播距離が比較的短くでき、回折波の検出効率が高くなる。(2)超音波の屈曲の影響が多少あったとしても、送受信一体型小型アレーセンサ14から出射される超音波と欠陥先端からの回折波はほぼ同じ経路を伝播するため、送受信一体型小型アレーセンサ14は小型であり、送信超音波振動子群と受信超音波振動子群が近接しているため、回折波を効率的に検出できる。更に後で別の実施例で記載する送信超音波振動子と受信超音波振動子を交互に配置した送受信一体型小型アレーセンサでは、超音波の送信領域と受信領域をほぼ同じ領域にすることができるため、超音波の屈曲の影響による回折波の検出効率の低下を防止でき、回折波を効率的に検出し欠陥検出効率を飛躍的に改善できる。(3)直接接触であるため、水浸法で問題となるような検査対象部位から反射されるような形状エコーの影響が無く、回折波のSN比が高くなる。即ち、従来法に比べて本発明は欠陥検出および欠陥サイジング性が大幅に改善される。
【0076】
図16を用いて、欠陥サイジング方法について説明する。図16のシュラウドサポート25のように板厚tが既知の部位を利用し、センサ14で出射した超音波が反対面である底面に反射して戻ってきて、検出された時間より材料の音速を評価することが可能であり、この音速と回折波の現れた時間との関係より欠陥サイジングが可能となる。また、図16のインコネル溶接金属部29も同様に、板厚tが既知の部位を利用し、センサ14で出射した超音波が反対面である底面に反射して戻ってきて、検出された時間より材料の音速を評価することが可能であり、この音速と回折波の現れた時間との関係より欠陥サイジングが可能となる。
【0077】
センサ14の大きさが検査対象部位あるいは検査対象部位である溶接金属部の幅より小さい、または同等である。即ち、図16中のWwelは検査対象部位あるいは検査対象部位である溶接金属部の幅、Wはセンサ14の大きさ(幅)である。図16からも分かるとおり、センサ14の大きさ(幅)Wは検査対象部位あるいは検査対象部位である溶接金属部の幅Wwelより小さい、または同等であるから、例えば、検査対象部位である溶接金属部でセンサ14から発信された超音波で欠陥22を探傷する際には他の溶接金属外の金属組織内を通過しなくて良い。図16は溶接部の両端に段差がある場合を示したが、段差が無い表面における溶接のX開先,V開先,レ開先でも同様であり、センサ14の大きさ(幅)Wは検査対象部位あるいは検査対象部位である溶接金属部の幅Wwelより小さい、または同等であることが好ましい。
【0078】
図17は既述のいずれかの実施例による超音波探傷装置を原子炉炉内炉底部のCRDハウジングスタブチューブ31および原子力圧力容器32の近傍の探傷に適用した例を示したものである。記述のいずれかの実施例による超音波探傷装置のセンサ14,多関節マニピュレータ33を収納可能な検査装置34はCRDハウジング35で支持、および炉心支持板36で拘束する。センサ14の信号ケーブルや多関節マニピュレータ33の信号ケーブル,動力ケーブルおよび高圧水ホース等は検査装置34の上部より一括してケーブルおよびホース37として束ねられ、上部の運転/制御場所であるオペレーションフロアーまで引き伸ばされ、それぞれの制御装置に接続される。
【0079】
マニピュレータ基部38はマニピュレータ基部上下および回転機構39に固定されておりマニピュレータ基部は上下運動および回転運動が可能な構造である。マニピュレータ33は3個の屈曲関節40と2個の回転関節41から構成されている。マニピュレータ33の先端にはハンド42があり、小型アレーセンサ14に取り付けられた把持部43をハンド42で把持する。小型アレーセンサ14と把持部43の間には、小型アレーセンサ14がCRDハウジングスタブチューブ31と原子力圧力容器32およびCRDハウジングスタブチューブ31と原子力圧力容器32の溶接部等の曲面に追従可能な構造を持つコンプライアンス機構44が設置されている。このコンプライアンス機構44はX軸,Y軸,Z軸の3軸とも変移可能なものである。このコンプライアンス機構44により小型アレーセンサ14をスムーズにCRDハウジングスタブチューブ31と原子力圧力容器32およびCRDハウジングスタブチューブ31と原子力圧力容器32の溶接部等の曲面に追従させることが可能となる。この結果上で述べた欠陥検出および欠陥サイジングの方法を用いて欠陥22の欠陥検出および欠陥サイジングが実現できる。
【0080】
図18は既述のいずれかの実施例による超音波探傷装置のセンサ14を吊り下げ式検査装置45、即ち、水中検査装置に搭載した例を示すものである。吊り下げ式検査装置45はセンサ14,2個の水中CCDカメラ46,照明47,スラスタ48およびクラッド除去および回収装置49を搭載している。
【0081】
吊り下げ式検査装置45は一般産業用タンクおよびプールや原子炉炉内の炉内構造物に発生した欠陥の有無を目視試験および非破壊試験である超音波試験で欠陥検出および欠陥サイジングの実施を目的とするものである。本吊り下げ式検査装置45は吊り下げワイヤ50で吊り下げられているため、上部の気中より人間が吊り下げワイヤ50を操作することおよびスラスタ48の推進力を利用して、吊り下げ式検査装置45を検査対象部へ誘導およびセンサ14を検査対象部へ密着させることが可能であり、センサ14を用いることで欠陥検出および欠陥サイジングが可能となる。
【0082】
2個の水中CCDカメラ46は目視試験用であり、2個の水中CCDカメラ46を用いてステレオ画像を再生し、検査員が検査部位の凹凸を的確に認識することが可能となり、検査部位の凹凸あるいは欠陥(表面開口欠陥)であるかを容易に判断することができ、視認性が高く、また、効率的に目視検査を実施可能となる。照明47は検査部位が暗いときに、水中CCDカメラ46用の光源として用いるものであり、電球はハロゲンランプ、メタルはライドランプおよび発光ダイオード等から構成され、水中CCDカメラ46の視認性を向上させるため調光機能が装備されている。
【0083】
スラスタ48は本吊り下げ式検査装置45の姿勢を制御する推進装置である。このスラスタ48の回転方向および回転数を制御し、吊り下げ式検査装置45の姿勢を変化させることが可能である。クラッド除去および回収装置49は検査部位に付着したクラッド等の付着物を除去および吸引する装置である。クラッド除去および回収装置49は付着物を除去するための回転ブラシと剥がされた付着物を回収するための装置から構成される。クラッド除去および回収装置49を用いてクラッド等の付着物を除去することで、クラッド等の付着物の下にある欠陥(表面開口欠陥)を見出すことが可能となる。
【0084】
また、除去されクラッド等の付着物は、クラッド回収用ホース110と吸引装置を用いて吸引し、フィルターでクラッド等の付着物を回収する構造とする。このため水の濁りが発生しないため、効率的に目視検査を実施することが可能となる。本吊り下げ式検査装置45を一般産業用タンクおよびプールや原子炉炉内の炉内構造物に発生した欠陥の目視試験および非破壊試験である超音波試験に適用することにより欠陥検出および欠陥サイジングが実現できる。さらに、本吊り下げ式検査装置45を自走遊泳可能な遠隔操縦とすることによりその機動性は高くなり、検査範囲も拡大される。即ち、センサ14および2個の水中CCDカメラ46,照明47,スラスタ48およびクラッド除去および回収装置49を搭載した水中検査装置を自走遊泳可能とした上で遠隔操縦も可能とすることであっても良い。その場合に水中検査装置の構造は図20の構造が基本的な構造として採用できる。
【0085】
以下では記述の各実施例の超音波探傷装置では、センサ14の検査対象に対面する超音波送受信面(超音波の入出射面ともいう。)が平坦であるが、検査対象の表面の形状によっては、以下に説明するように平坦でなくとも良い。即ち、超音波送受信面を平坦以外の形状にした例を以下に記載する。図19では検査対象部位53が凹面形状の場合のセンサ14の超音波送受信面の形状例を示したものである。検査対象部位53が凹面形状である場合、センサ14の検査対象部位53への接触面が平板であると、センサ14の接触面と検査対象部位53の表面との間に隙間ができ、検査対象部位53への超音波入射効率が低下する場合がある。
【0086】
このような超音波入射効率の低下を防止するため、センサ14の超音波入出射面にシリンドリカル形状または球形状の一部分の面形状を成しているアクリルやポリエチレン等の緩衝材52を装着する。この緩衝材52を検査対象部位53の形状に合わせることで、超音波入射効率の低下を防止できる。緩衝材52の形状は検査対象部位53の凹面形状の半径より、緩衝材52の形状の半径が小さいこととする。これにより検査対象部位53への緩衝材52の追従性が向上し、超音波入射効率の低下を防止でき、信頼性が高く高精度な超音波検査が実現できる。
【0087】
図20も検査対象部位53が凹面形状の場合に採用するセンサ14の例を示したものである。図19との違いは、送信振動子列15と受信振動子列19の各振動素子の配置を、検査対象部位53の形状に沿うように配置してあるところである。これにより図19と同じように、超音波入射効率の低下を防止でき、信頼性が高く高精度な超音波検査が実現できる。
【0088】
図21は検査対象部位53が凸面径形状の場合に対応したセンサ14の例を示したものである。検査対象部位53が凸面径形状である場合、センサ14の検査対象部位53への接触面が平板であると、センサ14の接触面と検査対象部位53間に隙間ができ、検査対象部位53への超音波入射効率が低下する場合がある。このような超音波入射効率の低下を防止するため、センサ14の超音波入出射面にシリンドリカル形状または球形状の一部分の面の形状を成しているアクリルやポリエチレン等の緩衝材52を装着する。この緩衝材52を検査対象部位53の形状に合わせることで、超音波入射効率の低下を防止できる。緩衝材52の形状は検査対象部位53の凸面径形状の半径より、緩衝材52の形状の半径が大きいこととする。これにより検査対象部位53への緩衝材52の追従性が向上し、超音波入射効率の低下を防止でき、信頼性が高く高精度な超音波検査が実現できる。
【0089】
図22も検査対象部位53が凸面径形状の場合のセンサ14の例を示したものである。図21との違いは、送信振動子列15と受信振動子列19の振動素子配列を、検査対象部位53の形状に合わせて弓形の配置にしているところである。これにより図21と同じく超音波入射効率の低下を防止でき、信頼性が高く高精度な超音波検査が実現できる。
【0090】
図23は既述の実施例による超音波探傷装置のセンサ14にセンサ14の検査対象部位53への追従性向上機構を追加したものである。凹凸がある検査対象部位53をセンサ14で走査しながら検査すると、センサ14の端部が検査対象部位53と干渉し、センサ14のスムーズな走査や、検査対象部位53への的確な密着が得られないことがある。
【0091】
この現象を回避するため、センサ14の端部に摩擦低減手段としてローラーまたはボールベアリング等の滑り機構54を装着し、センサ14の端部が検査対象部位53と干渉や突っかかりを防止する。これにより、センサ14のスムーズな走査や検査対象部位53への的確な密着が得られ、信頼性が高く高精度な超音波検査が実現できる。
【0092】
図24は記述の実施例による超音波探傷装置のセンサ14の送信振動子列と受信振動子列との各振動素子の配列に工夫を凝らしてセンサ55とした例である。図24の例では装置構成および制御系は図1と同じである。その工夫点は以下のとおりである。即ち、図24ではセンサ55は送信振動子15の振動素子と受信振動子19の振動素子とを交互に配置して構成されている。センサ55の利点は、溶接金属部や不均一材料中を超音波が伝播する際の屈曲の影響が多少あったとしても、別の送受信一体型小型アレーセンサ55から出射される超音波と欠陥先端からの回折波18は同じ経路を伝播するため、超音波の送信領域と受信領域を全く同じ領域にすることができ、超音波の屈曲の影響による回折波の検出効率の低下を防止でき、回折波を効率的に検出し欠陥検出効率を飛躍的に改善できることである。
【0093】
記述の実施例による超音波探傷装置を用いた原子炉内の検査装置を図25に示す。即ち、棒状の操作ポール133の下方の先端に記述の実施例による超音波探傷装置のセンサ14又は55を装着し、原子炉内の欠陥深さサイジング実施する実施例を示したものである。以下、代表してセンサ14を採用した例を示す。センサ14は操作ポール133の下方側先端に取り付けられている。操作ポール133の下方はオペレーションフロア118上の作業台車115から原子炉の圧力容器内の炉水119中に降ろされる。センサ14の欠陥22への位置合わせは、センサ14付の操作ポール133とほぼ同時に原子炉の圧力容器内の炉水119中に投入された照明付カメラ135で監視しながら、原子炉の圧力容器内のシュラウド等の炉内構造物131の欠陥22の真上(欠陥22の開口部)にセンサ14を位置合わせする。照明付カメラ135のカメラケーブル134は作業台車115上のモニターに接続され、作業台車115上でセンサ14の位置をモニターで監視できる。
【0094】
欠陥22の真上(欠陥22の開口部)にセンサ14を位置合わせした後、センサ14に信号ケーブル123で接続された超音波探傷装置本体122で欠陥22の検出及び深さサイジングが可能となる。センサ14を欠陥22の表面(炉内構造物131)に密着させるため、操作ポール133とセンサ14の間に馴染み機構136(コンプライアンス機構,ジンバル機構)を設置してある。さらに、操作ポール133と送受信一体型小型アレーセンサ14の間にX−Yスキャナーを設置することにより、欠陥の分布が測定可能となる。
【0095】
図26で既述の実施例による超音波探傷装置を用いた原子炉内の他の検査装置を以下に説明する。オペレーションフロア118上の作業台車115から原子炉の圧力容器内の炉水119中に、検査・補修装置114(以下、マスト114という。)が作業台車115上の上下移動機構116からワイヤ117で吊って降ろされる。炉水119中に降ろされたマスト114は原子炉の圧力容器内の炉心支持板121に着座させ、原子炉の圧力容器内の上部格子板120で支持される。マスト114には伸縮自在なリンク機構であるパンタグラフ機構113が据付けられていて、そのパンタグラフ機構113の先端にセンサ14を含む点検ヘッド111が装着されている。したがって、パンタグラフ機構113を伸長させると、パンタグラフ機構113が縮んでマスト114内に納められていたセンサ14を含む点検ヘッド111が水平方向に突き出る。このようにパンタグラフ機構113の伸縮作用によってマスト114からセンサ14が進退移動できる。
【0096】
パンタグラフ機構113の伸長作用で原子炉内の炉内構造物131にセンサ14を押し当てて欠陥検出または欠陥深さサイジングを実施する。センサ14は点検ヘッド111の内部に格納されており、センサ14を検査対象であるシュラウド等の炉内構造物131に押し付けてシュラウド等の欠陥の検出およびサイジングを実施する。センサ14は点検ヘッド111の内部に設置されたジンバル機構で保持され、ジンバル機構は押し付け機構で保持され、押し付け機構はX−Yスキャナーで把持されている。即ち、点検ヘッド111の内部にはX−Yスキャナー,押し付け機構,ジンバル機構および送受信一体型小型アレーセンサ14が内蔵されている。パンタグラフ機構113はマスト114内部の直線移動機構で支持されており、その直線移動機構によってパンタグラフ機構113はマスト114内部を上下することが可能である。
【0097】
これにより、検査対象面であるシュラウド等の詳細探傷を実施する場合や測定点を僅かに移動させたいときは、X−Yスキャナーを用いてセンサ14を移動させる。また、粗探傷や検査場所を大きく変える場合は、マスト114内部の直線移動機構とパンタグラフ機構113で点検ヘッド111およびセンサ14を移動させることができる。
【0098】
次に、マスト114の原子炉の圧力容器内への投入および回収方法を説明する。マスト114は作業台車115に設置された上下移動機構116でワイヤ117を用いてオペレーションフロア118の高さから炉水119中に吊り下げ、降下させる。検査・補修装置114は上部格子板120を通過させて、炉心支持板121へ着座させる。その後、上で述べたような手順で、パンタグラフ機構113の伸縮で点検ヘッド111を検査位置方向に展開し、センサ14を検査対象面であるシュラウド等に押し付けてシュラウド等の欠陥を検出およびサイジングする。検査終了後、点検ヘッド111の展開と逆手順で点検ヘッド111をますと114内に収納し、検査・補修装置114は作業台車115に設置された上下移動機構116でオペレーションフロア118の高さまで吊り上げられて、天井クレーン等を用いてオペレーションフロア118の上に回収される。
【0099】
マスト114の回転,パンタグラフ機構113の上下移動および展開・収納等の動作はオペレーションフロア118上の検査・補修装置コントローラ124で制御し、制御信号は信号ケーブル123を用いて伝送される。点検ヘッド111に内蔵されたセンサ14は超音波探傷装置本体122で制御され、信号は信号ケーブル123を用いて相互に伝送される構成となっている。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、例えば、溶接構造物の溶接線やその周辺に生じたき裂など、構造物に生じた欠陥を超音波を用いて非破壊的に検出するという超音波探傷装置に利用用途がある。
【符号の説明】
【0101】
1…入力装置、2…メモリ、3…超音波制御装置、4…情報処理装置、5…I/O、6…表示装置、7…送信超音波振動子制御装置、8…受信信号処理装置、9…送信側アンプ制御装置、10…受信側アンプ制御装置、11…送信側アンプ、12…受信側アンプ、
13…信号ケーブル、14…送受信一体型小型アレーセンサ、15…送信振動子列、16…超音波、17…集束点、18…回折波、19…受信振動子列、20…超音波受信信号(電気信号)、21…検査対象材料、22…欠陥。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送信する複数の送信用振動素子を配列した送信振動子列、及び超音波を受信する複数の受信用振動素子を配列した受信振動子列の双方を有する送受信アレーセンサと、
前記アレーセンサはシリンドリカル形状または球形状の一部分の面の形状を成している緩衝材を装着し、
超音波送信角と超音波受信角との和の半分が30度以内となる集束位置に各々の前記送
信用の振動素子から発信された各超音波を集束させ、前記送信用振動素子から発信された各超音波の集束位置を、前記送信振動子列と前記受信振動子列の中央で欠陥の真上である、中央部から検査対象材料内の深層部方向とする制御装置と、
前記受信用振動素子が受信した前記検査対象材料内で回折して来た超音波に基づいて探傷情報を生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された探傷情報を表示する表示手段とを有する超音波探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2009−186489(P2009−186489A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119402(P2009−119402)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【分割の表示】特願2008−192989(P2008−192989)の分割
【原出願日】平成15年10月30日(2003.10.30)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】