説明

車両に搭載された作業用機器の駆動装置

【課題】作業用機器を駆動するため、シンクロ機構付き変速機から動力を取り出すPTOを装備する車両において、車両の変速走行を可能とし、かつ、変速中であっても作業用機器の駆動を継続させる。
【解決手段】シンクロ機構付き変速機に装着されるPTO6には、電磁クラッチ等の動力断続クラッチを取り付け、これをPTO軸61に連結する。また、PTO軸61と作業用機器9とを連結する動力伝動経路の途中には、一方向クラッチを備えた中間伝動軸を設置し、かつ、一方向クラッチを介して電動機8を中間伝動軸に接続する。車両の変速時には動力断続クラッチを切断して、シンクロ作用を伴う変速を可能とするとともに、電動機8を回転させる。これにより、作業用機器9はPTO軸61による駆動から電動機8による駆動に自動的に切り替えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の作業を目的とする作業用機器を搭載した車両において、作業用機器を駆動する動力を車両走行用エンジンから取り出すよう構成された作業用機器の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は、主に移動手段又は貨物の輸送手段として利用されるものであるが、その中には、特定の作業を行う作業用機器を装備した特装車と呼ばれる車両がある。特装車には、各種の用途に応じて様々な車両があり、例えば、貨物の輸送における荷役作業の容易化を目的として比較的小型のクレーンを装備するものが存在する一方、大型のクレーンを装備し重量物の持ち上げ作業を行う自走クレーン車も存在する。
【0003】
このような特装車では作業用機器を駆動する動力源を備える必要があり、通常、車両走行用エンジンから作業用機器駆動用の動力を取り出す動力取り出し装置、すなわちパワーテイクオフ(以下「PTO」という。)を備えている。エンジンから作業用機器を駆動する動力を取り出すPTOは、農業用トラクタ等にも装備されている。PTOからの動力は、直接作業用機器を駆動するために用いられる場合と、作業用機器の動力源となる油圧ポンプ、コンプレッサ等を駆動するために用いられる場合があり、ここでは動力源となる油圧ポンプ等を含めて「作業用機器」という。
【0004】
PTOは、エンジンに装着してエンジンから直接動力を取り出すこともあるが、装置の搭載性や動力取り出しの利便性から、エンジンの後方に配置される変速機にPTOを装着する場合が多い。特装車において一般的に用いられる変速機は、アウトプットシャフトと平行に配置されたカウンタシャフトを有する平行軸歯車機構式変速機であって、カウンタシャフトにはクラッチを介してエンジンの動力が伝達されている。変速機に装着されるPTOの多くは、このカウンタシャフトから動力を取り出すようになっている。エンジンと走行用車輪との間に配置される変速機から作業用動力を取り出すPTOは、一例として特開平10−122312号公報に開示されている。
【0005】
平行軸歯車機構式変速機のカウンタシャフトから動力を取り出すPTOについて、図4によって説明する。車両のエンジン3の後方にはクラッチ4が接続され、クラッチ4の出力軸は変速機5のインプットシャフト51と一体的に連結される。インプットシャフト51の端部には変速機5のアウトプットシャフト52が回転可能に軸受けされており、アウトプットシャフト52と平行にカウンタシャフト53が配置されている。インプットシャフト51及びカウンタシャフト52の端部にはそれぞれギヤが固着され、クラッチ4の締結時には、カウンタシャフト53にこれらのギヤを介してエンジン3からの動力が伝達され、カウンタシャフト53が回転することとなる。
変速機5のケースにはPTO6を装着するための開口部が設けられる。PTO6に取り付けた動力取り出し用のPTOギヤ65が開口部から変速機5の内部に挿入され、カウンタシャフト53に固着されたPTO駆動用ギヤ54と噛み合っている。そして、PTOギヤ65は噛み合いクラッチ機構を有し、噛み合いクラッチ機構が締結されたときは、PTO軸によって外部に動力が取り出される。
【0006】
カウンタシャフト53にはPTO軸駆動用ギヤ54以外に、車両の変速のための複数のギヤが固着されている。変速機5は常時噛み合い式の変速装置であって、よく知られているように、カウンタシャフト53の複数のギヤはアウトプットシャフト52に遊嵌されたギヤにそれぞれ噛み合い、常時これらを駆動する。アウトプットシャフト52のディスクの外周には変速スリーブが摺動可能にスプライン嵌合されており、変速スリーブは、アウトプットシャフト52上のギヤと一体に形成されたドグ歯に噛み合うようになっている。例えば、車両が1速のときには、変速スリーブ55が図面の左方に移動して1速ギヤのドグ歯56と係合し、エンジンの動力は、インプットシャフト51、カウンタシャフト53、1速ギヤ(ドグ歯56)及び変速スリーブ55を経由してアウトプットシャフト52に伝達され、ここから後方の車輪に伝達される。
【0007】
このような変速機では、車両の変速時、例えば1速から2速に変速する場合は、クラッチ4を遮断してエンジン動力の入力を切断した後、まず変速スリーブ55を中立位置に戻して1速ギヤのドグ歯56と変速スリーブ55との係合を外す。次いで変速スリーブ57を図面の右方に移動し、これを2速ギヤのドグ歯58と噛み合わせるようにする。このときに、2速ギヤの回転数とアウトプットシャフト52の回転数とを一致(同期)させてスムースな噛み合わせを行うため、ドグ歯58と変速スリーブ57との間にはシンクロナイザリング59等からなる周知のシンクロ機構が配設され、回転数が一致した時点で変速スリーブ57がドグ歯58との噛み合い位置に移動可能となる。こうして、変速スリーブ57が2速ギヤのドグ歯58と係合することにより2速への変速が完了し、その後クラッチ4が接続される。
【特許文献1】特開平10−122312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特装車の作業用機器は車両を停車させて操作するものが多い。しかし、路面に道路標識等の塗装を行うラインマーカー車のように、車両を走行させながら作業を行う特装車もある。ラインマーカー車の作業中には、車両を走行させるとともにPTOから塗装用のポンプを駆動するが、このとき次の理由によって走行中の変速ができないという問題がある。
上記のとおり、車両の変速操作においては、今までの速度段の噛み合いを外して変速スリーブを中立位置に移動した後、シンクロ機構によって目標とする速度段のギヤの回転数をアウトプットシャフトの回転数に同期させる。ところが、全ての速度段のギヤは常時カウンタシャフトのギヤと噛み合っているので、カウンタシャフトがPTO軸を介してポンプ等の負荷と連結されていると、ギヤの回転数を変えるときカウンタシャフトには慣性モーメント等の負荷トルクが作用し、目標とする速度段のギヤを同期させることが非常に困難である。このため、PTO軸から作業用機器を駆動している状態では車両の変速が不可能であって、変速機のカウンタシャフトから動力を取り出すPTOを装備する車両では、作業中は速度段を固定して走行せざるを得ない。
【0009】
PTOを装備する車両において作業中の変速を可能とするには、カウンタシャフトとPTO軸との間に動力断続クラッチを配置して変速時にそのクラッチを切り離すことが考えられ、特許文献1に記載されたPTOでは、シンクロ機構付きの変速機の入力側にこうしたクラッチを設けている。しかし、動力断続クラッチを切り離したときはPTO軸には動力の伝達が遮断されるから、ポンプ等の作業用機器の駆動が一時的に停止され、正常な作業に支障をきたすこととなる。また、例えば冷凍機のコンプレッサのような作業用機器をPTOにより駆動している場合には、停止直後の再起動時に大きな負荷トルクが作用することがあり、そのため再起動ができない虞れが生じる。
本発明の課題は、変速機から動力を取り出すPTOを装備する車両において、PTO軸にクラッチを配置して作業中の車両の変速を可能とし、かつ、変速中であっても作業用機器の駆動を継続させて、このような問題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題に鑑み、本発明は、動力を取り出すPTO軸に動力断続クラッチを配置して作業用機器の作動中における変速操作を可能とし、さらに、作業用機器には、バッテリにより駆動される電動機をPTO軸とともに連結して、動力伝達経路の途中にそれぞれ一方向クラッチを設け、動力断続クラッチを切断したときは、電動機により作業用機器を駆動するものである。すなわち、本発明は、
「車両走行用エンジン及び作業用機器を搭載し、前記車両走行用エンジンから動力を取り出して前記作業用機器を駆動する車両における作業用機器の駆動装置であって、
前記車両走行用エンジンにはシンクロ機構付き変速機が接続され、
前記作業用機器の駆動装置は、前記シンクロ機構付き変速機の回転軸から動力を取り出す動力取り出し軸と、その動力取り出し軸への動力の伝達を断続する動力断続クラッチとを備えており、さらに、
前記作業用機器は、前記動力取り出し軸に一方向クラッチを介して連結されるとともに、バッテリにより駆動される電動機に一方向クラッチを介して連結されており、前記動力断続クラッチを切断したときは、前記作業用機器が前記電動機により駆動される」
ことを特徴とする作業用機器の駆動装置となっている。
【0011】
請求項2に記載のように、前記シンクロ機構付き変速機がカウンタシャフトを有する平行軸歯車機構式変速機であるときは、前記動力取り出し軸が前記カウンタシャフトから動力を取り出すよう構成することができる。また、請求項3に記載のように、前記動力取り出し軸が前記シンクロ機構付き変速機のインプットシャフトから動力を取り出すよう構成してもよい。
【0012】
請求項4に記載のように、前記動力取り出し軸と前記作業用機器との間に中間伝動軸を配置して、前記中間伝動軸の両端に前記電動機と発電機とをそれぞれ一方向クラッチを介して連結し、かつ、前記動力取り出し軸を伝動装置により前記発電機に連結するとともに、前記作業用機器を伝動装置により前記中間伝動軸に連結するよう構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、作業用機器を駆動する目的で、シンクロ機構付き変速機の回転軸から動力を取り出すPTOを装備する車両において、動力取り出し軸であるPTO軸に動力断続クラッチを配置して変速時にはこれを切断する。PTO軸が連結される変速機の回転軸は、変速機のシンクロ機構の入力側に置かれた回転軸、つまり、変速機のエンジン動力伝達経路においてシンクロ機構よりも前方側に位置する回転軸であって、請求項2に記載のカウンタシャフトあるいは請求項3に記載のインプットシャフト等がこれに相当する。このような回転軸では、変速中にシンクロ機構により同期を行うときに回転数変化が生じるが、本発明においては、回転軸に作用する作業用機器の負荷が動力断続クラッチによって遮断されているので回転数変化がスムースに行われ、作業用機器が作動中であっても車両の変速が可能となる。
【0014】
また、作業用機器には、一方向クラッチを介して、バッテリにより駆動される電動機をPTO軸とともに連結してある。変速時に動力断続クラッチを切断したときは、PTO軸による駆動に代え、作業用機器を電動機により駆動することが可能である。したがって、変速中にも作業機器を継続して駆動し正常な作業を実施できると同時に、作業中であっても車両を適正な速度段に変速して効率的な作業を実施でき、さらに、一時的な停止に伴う弊害の発生を防止できる。
PTO軸及び電動機を作業用機器に連結する2つの伝動経路には、それぞれ一方向クラッチが介在されている。そのため、作業用機器はPTO軸及び電動機の中、高速で回転しているものによって駆動されることとなり、駆動源の切替えが自動的に行われる。変速時においては、動力断続クラッチを遮断して電動機を起動させると、電動機の回転数がPTO軸の回転数を上回った時点で、作業用機器は電動機で駆動されるようになる。
【0015】
作業用機器は、車両走行用エンジンとは独立に電動機で駆動可能なように構成されているので、車両の変速中に限らず状況に応じて適宜電動機により作業用機器を運転することができる。例えば、車両が低速走行中であって車両走行用エンジンの出力が小さいときには、動力断続クラッチを遮断して電動機により大きな出力で作業用機器を駆動できる。車両走行用エンジンを停止して車両が停車しているときでも、電動機で作業用機器を運転することができ、そのときは外部の商用電源を電動機の駆動に利用するよう商用電源の接続口を設けることも可能である。
【0016】
請求項4の発明のように、動力取り出し軸(PTO軸)と作業用機器との間に中間伝動軸を配置し、中間伝動軸の一端に前記電動機を一方向クラッチを介して連結し、かつ、他端には発電機を一方向クラッチを介して連結したときは、車両走行用エンジンによって発電機を駆動して電動機の電源となるバッテリを充電することができ、電動機として容量の大きなものを採用するうえで有利となる。また、PTO軸を伝動装置により発電機に連結するとともに、作業用機器を伝動装置により中間伝動軸に連結するよう構成することに伴い、PTOの全体構成がコンパクトとなり、車両への搭載性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面によって本発明の作業用機器の駆動装置について説明する。
図1は、本発明に基づく作業用機器の駆動装置を搭載した車両のシャシフレームを概略的に示す図である。車両のシャシフレームは、車両の全長に亘って前後方向に伸びる2本のサイドレール1と、両方のサイドレールを結合する複数のクロスメンバ2とを有し、シャシフレームの前方には、車両走行用エンジン3、クラッチ4及び変速機5からなるパワーユニットが搭載されている。変速機5はシンクロ機構付きの平行軸歯車機構式変速機であってカウンタシャフトを有しており、カウンタシャフトから作業機を駆動する動力を取り出すPTO6が変速機5の側面に装着されている。これらの構成は、図4に示す従来の動力取り出し装置と基本的に変わりはなく、図1と図4において対応する部品等には同一の符号が付してある。
【0018】
シャシフレームのサイドレール1の側方には、発電機7、電動機8及び作業用機器9が搭載され、これらは図示しないブラケットによってシャシフレームに支持されている。作業用機器9は、例えばラインマーカー車の場合には塗装用のポンプ、冷凍機を備えた冷凍車の場合は冷凍機のコンプレッサ等である。シャシフレームの後端部には、電動機8の電源となる比較的大型のバッテリ10が搭載され、このバッテリ10は発電機7によって充電される。この実施例では、発電機7が電動機8と対向状態で軸心を一致させて搭載されているが、場合によっては、発電機7を省略しエンジン補機の発電機からバッテリ10を充電することもできる。
【0019】
作業用機器9を駆動するため、PTO6から車両の後方に向けて伸びるPTO軸61が設けられ、その先端にはベルト伝動装置62が取り付けられる。ベルト伝動装置62は、発電機7の回転軸に固着された後述する図3のプーリ73を駆動する。また、作業用機器9と図3の中間伝動軸12との間にはベルト伝動装置63が設けられており、PTO軸61は、ベルト伝動装置62、プーリ73、中間伝動軸12及びベルト伝動装置63を経由して作業用機器9と連結されている。
【0020】
本発明のPTO6の詳細図を図2に示す。PTO6は変速機5の側部に固着されるケーシング64を有し、その中にカウンタシャフトのギヤと噛み合うPTOギヤ65が収容されている。PTOギヤ65は、変速機5の変速用ギヤと同様に(ただし、シンクロ機構は設けられていない。)、一体に形成されたドグ歯66を有するとともに中心軸67に遊嵌され、かつ、その側方にはドグ歯66と中心軸67との連結を断接するスリーブ68が配置されている。これらは噛み合いクラッチ機構を構成するもので、作業用機器9を駆動するときには、スリーブ68を左方に移動させてその内面に形成されたスプラインをドグ歯66に係合させ、PTOギヤ65を中心軸67に接続する。
【0021】
PTO6の中心軸67の出力側には動力断続クラッチ11が設置されている。動力断続クラッチ11は、変速時に迅速な切断ができるよう、電流のオンオフによってクラッチを断続する電磁クラッチとなっており、ばね材で中心軸67に結合されるアーマチャ111と、コイルで磁化されるフィールドコア112とを有する。フィールドコア112はボルトによりロータ113に固着され、コイルに通電すると、磁化されたフィールドコア112にアーマチャ111が吸引されて中心軸67はロータ113と繋がり、動力断続クラッチ11が接続される。ロータ113には、作業用機器9を駆動するPTO軸61が結合される。
【0022】
電動機8と発電機7の近傍の詳細な構造を図3に示す。発電機7及び電動機8は、各々の回転軸71,81の軸心を一致させて対向して配置され、その間に中間伝動軸12が設けられる。中間伝動軸12は、その両端がベアリングを介して各々の回転軸71,81に嵌め込まれて支持されるとともに、中央部付近には、作業用機器9に連結されるベルト伝動装置63のプーリ121が形成されている。また、発電機7の回転軸71と電動機8の回転軸81とは、それぞれ一方向クラッチ72、82を介して中間伝動軸12に連結されている。
【0023】
発電機7の回転軸71にはプーリ73が固着されており、PTO軸61とベルト伝動装置62によって連結されている。PTO6から動力が取り出されるときは、発電機7の回転軸71が回転し電動機8は停止しているので、中間伝動軸12は一方向クラッチ72を介してPTO軸61により駆動され、作業用機器9に動力を伝達する。このときには一方向クラッチ82が空転し、電動機8は停止状態を保つ。PTO6からの動力が遮断され電動機8が回転されるときは、逆の状態となって、作業用機器9は一方向クラッチ82を介して電動機8により駆動される。このように、一方向クラッチ72、82及び中間伝動軸12は、いわゆる高速優先機構を構成している。
【0024】
次いで、本発明による作業用機器の駆動装置の作動及び制御方法等について説明を加える。車両の走行中において作業用機器9を駆動するため走行用エンジン3から動力を取り出す場合には、PTO6のスリーブ68によりPTOギヤ65を中心軸67に接続するとともに、動力断続クラッチ11のコイルに通電してフィールドコア112とアーマチャ111とを結合し、PTO軸61に連なるロータ113を回転させる。動力断続クラッチ11が接続された状態にあっては、電動機8への通電は遮断され電動機8は停止している。そのため、走行用エンジン3から分岐される動力は、ベルト伝動装置62から伝動されて発電機8を駆動し、さらに、一方向クラッチ82、中間伝動軸12及びベルト伝動装置63を経て作業用機器9を駆動する。
【0025】
車両の変速時においては、動力断続クラッチ11を切断すると同時に電動機8へ通電してこれを起動する。走行用エンジン3の直後に置かれたクラッチ4には、断続状態を検出するクラッチスイッチが設置されており、変速のためにクラッチ4が切断されたことを検出すると、PTO軸61に連結される動力断続クラッチ11が切断される。その結果、PTO軸61以降の伝動装置及び作業用機器9が変速機5から切り離され、シンクロ機構による変速時の同期作用が円滑に行われることになる。また、このときには電動機8が起動され、その回転数が発電機7の回転数を越えた時点で、作業用機器9は一方向クラッチ72を介して自動的に電動機8により駆動されることとなる。
【0026】
車両の変速が終了し、クラッチスイッチにより再びクラッチ4が接続されたことが検出されると、動力断続クラッチ11が接続され、かつ、電動機8が停止される。そのため作業用機器9の駆動系統も元の状態に復帰し、作業用機器9は走行用エンジン3から分岐される動力によって駆動される。
動力断続クラッチ11は、電流のオンオフにより断接される電磁クラッチであるので、迅速な変速操作に対応して応答性良くPTO軸61の断接が可能である。なお、このようなクラッチとしては油圧により断接を制御する湿式多板クラッチを用いることもできる。
【0027】
以上詳述したように、本発明は、変速機から作業用機器の動力を取り出す車両において、PTO軸にクラッチを配置して車両の変速を可能とするとともに、一方向クラッチを用いて電動機により作業用機器の駆動を継続させるものである。上記の実施例では、作業用機器の外にPTO軸により駆動される発電機を設けているが、これを省くことは可能である。また、実施例の作動の説明においては、変速中に電動機で作業用機器を駆動する制御方法について述べているけれども、例えば走行用エンジンを停止した車両の停車中にも作業用機器を電動機で駆動するよう制御装置を構成する等、各種の変更が可能であるのは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の作業用機器の駆動装置が搭載された車両の全体図である。
【図2】本発明のPTO及び動力断続クラッチの詳細図である。
【図3】本発明の動力伝動系統を示す図である。
【図4】変速機に装着したPTOの概略図である。
【符号の説明】
【0029】
3 車両走行用エンジン
4 クラッチ
5 変速機
51 インプットシャフト
53 カウンタシャフト
6 PTO
61 PTO軸
62,63 ベルト伝動装置
65 PTOギヤ
7 発電機
8 電動機
72、82 一方向クラッチ
9 作業用機器
11 動力断続クラッチ
12 中間伝動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両走行用エンジン(3)及び作業用機器(9)を搭載し、前記車両走行用エンジン(3)から動力を取り出して前記作業用機器(9)を駆動する車両における作業用機器の駆動装置であって、
前記車両走行用エンジン(3)にはシンクロ機構付き変速機(5)が接続され、
前記作業用機器(9)の駆動装置は、前記シンクロ機構付き変速機(5)の回転軸から動力を取り出す動力取り出し軸(61)と、その動力取り出し軸(61)への動力の伝達を断続する動力断続クラッチ(11)とを備えており、さらに、
前記作業用機器(9)は、前記動力取り出し軸(61)に一方向クラッチ(72)を介して連結されるとともに、バッテリにより駆動される電動機(8)に一方向クラッチ(82)を介して連結されており、前記動力断続クラッチ(11)を切断したときは、前記作業用機器(9)が前記電動機(8)により駆動されることを特徴とする作業用機器の駆動装置。
【請求項2】
前記シンクロ機構付き変速機(5)は、カウンタシャフトを有する平行軸歯車機構式変速機であって、前記動力取り出し軸(61)が前記カウンタシャフトから動力を取り出す請求項1に記載の作業用機器の駆動装置。
【請求項3】
前記動力取り出し軸(61)が前記シンクロ機構付き変速機(5)のインプットシャフトから動力を取り出す請求項1に記載の作業用機器の駆動装置。
【請求項4】
前記動力取り出し軸(61)と前記作業用機器(9)との間には中間伝動軸(12)が配置され、前記中間伝動軸(12)の両端には前記電動機(8)と発電機(7)とがそれぞれ一方向クラッチ(82、72)を介して連結されており、かつ、
前記動力取り出し軸(61)が伝動装置により前記発電機(7)に連結されるとともに、前記作業用機器(9)が伝動装置により前記中間伝動軸(12)に連結される請求項1又は請求項2に記載の作業用機器の駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−118857(P2007−118857A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−316061(P2005−316061)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】