説明

車両のインストルメントパネル

【課題】 ステアリングハンガービームを廃止することで、インストルメントパネルの内側空間を有効活用することができ、且つ、車室内側からエアバッグ格納部付近の外観品質を高めることができる車両のインストルメントパネルを提供する。
【解決手段】 車幅方向に延在し実質的に水平方向に延びる板状の上面部材51と、この上面部材51の車室内側で屈曲し実質的に鉛直方向下方に延びる前面部材52とからなる開断面に形成され、左右のフロントピラーに連結される軽金属製のインストルメントパネル構造体50と、該インストルメントパネル構造体50のエアバッグ展開用の開口部25を閉塞するリッド部材35と、少なくとも前記リッド部材35を覆う軟質樹脂層15とを備え、該リッド部材35に設けたミシン目75と、前記軟質樹脂層15の裏面に設けたティアライン18との配置が整合することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両のインストルメントパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両のインストルメントパネルには、助手席前方に助手席用エアバッグモジュールを格納する格納部が設けられたものがある。この格納部には、エアバッグモジュールが格納されたものがあるが、エアバッグモジュールの格納部の上部は通常インストルメントパネルの内側に配置されたリッド部材で覆われていて、格納部の上部のインストルメントパネルの剛性を確保している。
そして、このリッド部材には、エアバッグの展開を容易にするために易破断部を形成し、これと同時に、インストルメントパネルにも同様の易破断部を設けてエアバッグ展開時に前記リッド部材及びインストルメントパネルを破断させて確実にエアバッグが展開するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−219805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述のインストルメントパネルでは、インストルメントパネルの表皮に易破断部としての例えばミシン目が形成されていたため車室内側からこのミシン目が目に付いてしまい外観品質を損ねるという課題がある。
一般に、車両のインストルメントパネルには前記エアバッグユニットに加え、各種メータ、オーディオ機器などの機器が設置されている。また、車体剛性を高めるために、車幅方向全幅に延びるステアリングハンガービームがインストルメントパネルの前方に設けられ、このステアリングハンガービームにステアリングコラムを取り付けるようにしていた。近年、このステアリングハンガービームを廃止し、インストルメントパネルの内部空間を有効利用するための技術が検討されている。
【0004】
そこで、この発明は、ステアリングハンガービームを廃止することで、インストルメントパネルの内側空間を有効活用することができ、且つ、車室内側からエアバッグ格納部付近の外観品質を高めることができる車両のインストルメントパネルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、車幅方向に延在し実質的に水平方向に延びる板状の上面部材(例えば、実施の形態における上面部材51)と、この上面部材の車室内側で屈曲し実質的に鉛直方向下方に延びる前面部材(例えば、実施の形態における前面部材52)とからなる開断面に形成され、左右のフロントピラー(例えば、実施の形態におけるフロントピラー100a,100b)に連結される軽金属製のインストルメントパネル基材(例えば、実施の形態におけるインストルメントパネル構造体50)と、該インストルメントパネル基材のエアバッグ展開用の開口部(例えば、実施の形態における開口部25)を閉塞するリッド部材(例えば、実施の形態におけるリッド部材35)と、少なくとも前記リッド部材を覆う表皮部材(例えば、実施の形態における軟質樹脂層15)とを備え、該リッド部材に設けた易破断部(例えば、実施の形態におけるミシン目75)と、前記表皮部材の裏面に設けた易破断部(例えば、実施の形態におけるティアライン18)との配置位置を整合したことを特徴とする。
このように構成することにより、軽金属で形成されたインストルメントパネル基材の機械的強度が高くなり、このインストルメントパネル基材によって左右のフロントピラーが連結されることとなるため、ステアリングハンガービームを設けなくても、十分な車体剛性を得ることができる。また、ステアリングハンガービームを廃止することができるので軽量化が可能になるとともに、インストルメントパネル基材が開断面に形成されているので、インストルメントパネル基材の内側に種々の機器を収納することが容易にでき、空間の有効利用が可能になる。また、リッド部材によってエアバッグ展開用の開口部上部の剛性を確保しつつ、例えば、エアバッグ展開時には、リッド部材の易破断部と表皮部材の易破断部とをエアバッグの圧力で容易かつ確実に破断させることができる。
さらに、前記表皮部材において、車室内側から目に付かない裏面にだけ易破断部を形成して、表皮部材の表面に易破断部が露出するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載した発明によれば、機械的強度が高い軽金属製インストルメントパネル基材によって左右のフロントピラーが連結されているので、ステアリングハンガービームを設けなくても、十分な車体剛性を得ることができ、ステアリングハンガービームを廃止することができるので軽量化が可能になる。また、インストルメントパネル基材が開断面であるので、インストルメントパネル基材の内側に種々の機器を収納することが容易にでき、空間の有効利用が可能になる。
また、軽金属製のインストルメントパネル基材に設けた開口からエアバッグを展開させるので、エアバッグ展開時に軽金属製のインストルメントパネルにエアバッグの影響を及ぼすことがない。さらに、リッド部材によってエアバッグ展開用の開口部上部の剛性を確保しつつ、例えば、エアバッグ展開時には、リッド部材の易破断部と表皮部材の易破断部とをエアバッグの圧力で容易かつ確実に破断させることができるため、信頼性の向上を図ることができる効果がある。
さらに、前記表皮部材において、車室内側から目に付かない裏面にだけ易破断部を形成して、表皮部材の表面に易破断部が露出するのを防止することができるため、エアバッグ格納部付近の外観品質を向上することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、この実施の形態では、進行方向に対して左側に運転席、右側に助手席を配置したいわゆる左ハンドルの車両を例に説明する。
図1〜図4に示すように、インストルメントパネル1は車両のフロントウインドウガラスに隣接した車室内側であって、運転席及び助手席の正面に車幅方向に沿って全幅に配置され、この左右端部は、フロントピラー100a,100bの下部にボルト41〜44で各々固定されている。
【0008】
前記インストルメントパネル1は、軽合金であるマグネシウム合金を原材料としてダイキャスト成形により一体成形されたインストルメントパネル構造体(インストルメントパネル基材)50を備え、このインストルメントパネル構造体50に、メータユニット2、エアバッグモジュール3、オーディオ&ヒータコントロールユニット(以下、単にオーディオユニットと略す)4、ステアリングコラム9、グローブボックス13等が装着されて構成されている。
【0009】
インストルメントパネル構造体50は、車幅方向に沿って延在して実質的に水平方向に延びる上面部材51と、この上面部材51の車両後方の車室内側で屈曲して実質的に鉛直下方に延びる前面部材52とで構成された開断面に形成されているので、インストルメントパネル構造体50の内側に種々の機器を収納することが容易にでき、空間の有効利用が可能になる。上面部材51には、上方に膨出する段差部53が車幅方向に沿った全幅に亘って形成されており、段差部53よりも車両前方側に位置する下段部51aには、フロントデフロスター吹出口54が車幅方向に沿う一部の領域に細長く開口している。また、上面部材51よりも車両後方側に位置する上段部51bは所定の曲線状の断面形状を呈している。
【0010】
前面部材52の左端部には、後縁が略弧状に形成された側壁部材56と、前方に延出するブラケット57と、車幅方向外側に延出するブラケット58が設けられ、一方、前面部材52の右端部には後縁が略弧状に形成された側壁部材59と、車幅方向外側に延出するブラケット60が設けられている。図1に示すように左側のブラケット57,58は左側のフロントピラー100aにボルト41,42によって固定され、右側の側壁部材59とブラケット60は右側のフロントピラー100bにボルト43,44によって固定される。
【0011】
前面部材52の車幅方向略中央上部には空気吹出口61が車両後方に向かって開口しており、空気吹出口61の左側にメータ格納凹部62が形成され、空気吹出口61の右側にエアバッグモジュール3を格納するエアバッグ格納部63が上方を開口させて形成されている。さらに、前面部材52において、メータ格納凹部62よりも左側の上部と、エアバッグ格納部63よりも右側の上部には空気吹出口64,65がそれぞれ設けられている。
【0012】
また、前面部材52において、メータ格納凹部62の下側にはステアリングコラム支持テーブル66が所定角度に傾斜して形成されており、空気吹出口61の下側にはオーディオユニット取付枠部67が鉛直方向下方に延設されており、さらにオーディオユニット取付枠部67の左端部からスティ68が鉛直下方に延設されている。スティ68の下端は、車体フレーム(図示せず)に設けられた支持部101にボルト45,45によって固定される。すなわち、インストルメントパネル構造体50は、左右端部をフロントピラー100a,100bに連結され、中央下部を車体フレームに連結される。
【0013】
インストルメントパネル構造体50のメータ格納凹部62にはスピードメータ等を備えたメータユニット2が格納固定され、エアバッグ格納部63にはエアバッグモジュール3が格納固定され、オーディオユニット取付枠部67にはオーディオユニット4が取り付けられる。
また、インストルメントパネル構造体50の前面部材52において車室内側の所定の面が、インストルメントパネルパッド5によって覆われている。
【0014】
このインストルメントパネルパッド5は、右端部に右側のグリル開口30(図1参照)の一部を形成するコの字状部28を有し、さらに、コの字状部28から車幅方向の中央に亘って衝撃吸収部10が一体成形されている。この衝撃吸収部10は、助手席の前方位置に配置されるものであり、この上縁がエアバッグ格納部63の車両後方側の一部を形成すると共に、下縁がグローブボックス13の上壁を形成している。さらに、衝撃吸収部10の左方には、センターパネル用開口(略全周を構成する)31が一体成形されており、このセンターパネル用開口31の左下部から車両左側に向かってニーボルスター支持部32が延びている。そして、前記ニーボルスター支持部32の左端部は左側のグリル開口33の下部コーナ部を形成するL字状部29を有し、また、ニーボルスター支持部32の左右下部には鉛直下方に向けて延出するニーボルスター34が一体的に形成されている。
【0015】
図4、図5に示すように、インストルメントパネル構造体50のエアバッグ格納部63の開口部25にはエアバッグモジュール3を覆う樹脂製のリッド部材35が取り付けられている。このリッド部材35は上面部材51の上段部51bと連続して形成された上壁70と、この上壁70の車室内側で鉛直下方に屈曲形成された後壁71とで構成されており、インストルメントパネル構造体50のエアバッグ格納部63の開口部25を囲うようにして、前方側の爪26と後方側のボルト47により固定されている。
【0016】
具体的には、図6に示すように、リッド部材35には後壁71の下縁にフランジ部37が設けられ、このフランジ部37に形成された長孔である3つの取付孔38に前述したボルト47が挿通されてインストルメントパネル構造体50に取り付けられるようになっている。一方、リッド部材35の前縁側には前述した3つの爪26が形成され、この爪26がインストルメントパネル構造体50の係止孔Kに挿通して係止するようになっている。リッド部材35の上壁70には、後述するレーザ加工機73によってこの上壁70を貫通するミシン目(易破断部)75が形成され、このミシン目75は周囲を取り囲む矩形の部分75aと、この矩形の部分を前後方向で分割する横方向の部分75bとから構成されている。
【0017】
リッド部材35の裏面にはエアバッグモジュール3に設けられたヒンジブラケット27の上面が超音波溶着によって固定されている。このヒンジブラケット27の上面部分には、前後に下側に屈曲した車幅方向に向かうメカニカルヒンジ部76,76を形成して、このメカニカルヒンジ部76,76の間に車幅方向にスリット77が形成されている。このスリット77は、このスリット77の両端が各々前述した各メカニカルヒンジ部76,76の両端に至る部分まで延びており、したがって、ヒンジブラケット27の上面は上下に開く二つの開閉扉78,78が前後に形成されることとなる。
【0018】
前記ヒンジブラケット27は前記リッド部材35の裏面に溶着される上面部分と、この上面部分の裏面から下側に延出する延出片79を備えている。この延出片79は前後側の延出片79a及び左右の延出片79bの4つの延出片で構成され、前後の延出片79aには、係止用の孔80が複数(この実施の形態では5個)設けられている。この前後の延出片79aの係止用の孔80には、前述したエアバッグモジュール3が引っ掛けた状態で取り付けられている。
【0019】
具体的には、エアバッグモジュール3の前後壁に下側に向いた舌部81が複数形成され、各舌部81を前記ヒンジブラケット27の下側から延出片79aの係止用の孔80に挿入してエアバッグモジュール3が支持されている。また、エアバッグモジュール3の下部の後面側には2つの取付ブラケット82が車両後方に延出して形成されこの取付ブラケット82が前述した前面部材52の裏側にボルト46によって固定されている。
【0020】
そして、前記リッド部材35の上壁70の上面とインストルメントパネル構造体50の上面部材51の車室内側面とに亘って軟質樹脂製(例えば、軟質ウレタン等)の軟質樹脂層15が被覆されており、さらに、この軟質樹脂層15の車室内側の部分に表皮層17が形成されている。
図7、図8に示すように、この軟質樹脂層15には、前述したヒンジブラケット27のスリット77に対応して内側からレーザ加工機73によって表皮層17の車室内側面の手前に至る部分まで切り欠かれるエッジ部19が設けられている。このエッジ部19は図7に示すように、軟質樹脂層15の裏側から前述したヒンジブラケット27の開閉扉78の各々の周縁に対応する位置にレーザ加工機73によって断続的に深さを変化させてティアライン(易破断部)18を構成するようになっている。
【0021】
このレーザ加工機73によって軟質樹脂層15を加工するに当たっては、コントローラ83からの信号に基づいてレーザ発信器84の照射ノズル85よりレーザ光を発射すると共に、軟質樹脂層15を透過したレーザ光を受光部86で検出しながらフィードバックを行っている。この時、深さがdの軟質樹脂層15に対して焦点位置をd1とした深い切り欠きと、レーザ光の照射位置を抑えた焦点位置d2の浅い切り欠きとを交互にコントローラ83によって制御して、ピッチpの断続的な切り欠きを前記図7に示す領域で形成している。
【0022】
図3、図4に示すように、前記リッド部材35の車両後方側に前記インストルメントパネルパッド5が配置されている。このインストルメントパネルパッド5のパッド本体36は衝撃吸収性の高い硬質樹脂(例えば、硬質ウレタン)で形成され、この車室内側は手前側に向かうほど下がる曲面形状に形成されている。
【0023】
また、このパッド本体36の上部すなわちリッド部材35側には、パッド本体36内にインストルメントパネル1のセンターパネル用開口31からグリル開口30に亘り車幅方向に車室内放出用ダクト22Eが埋設されている。そして、このパッド本体36の車両前方側の縦壁72が、前記リッド部材35の後壁71とインストルメントパネル1の前面部材52の一部とに当接し、パッド本体36の下面前部が前記インストルメントパネル構造体50の上面部材51に支持されている。
【0024】
インストルメントパネル構造体50の内側、すなわち、上面部材51の下側であって前面部材52の車両前方側には、フロントデフロスターダクト21、車室内放出用ダクト22A〜22C、ハーネス23等が収納されている。フロントデフロスターダクト21の吹出開口21a,21aはインストルメントパネル構造体50のフロントデフロスター吹出口54,54に接続されている。尚、フロントデフロスターダクト21と車室内放出用ダクト22A〜22Eには、空調ユニット(図示せず)により処理された空気が供給可能にされている。尚、この実施例において、フロントデフロスターダクト21、車室内放出用ダクト22A〜22Eは空調装置の一部を構成する。
【0025】
車室内放出用ダクト22Aの中央吹出開口22a,22aはインストルメントパネル構造体50の空気吹出口61に配置され、車室内放出用ダクト22Bの吹出開口22bはインストルメントパネル構造体50の空気吹出口64に配置されている。さらに、車室内放出用ダクト22Cは車室内放出用ダクト22Eの一方のジョイント部39に接続され、車室内放出用ダクト22Dが車室内放出用ダクト22Eの他方のジョイント部39に接続されている。そして、車室内放出用ダクト22Dの吹出開口22dがインストルメントパネル構造体50の空気吹出口65に配置されている。
【0026】
前記メータ格納凹部62にはメータバイザー6が挿入固定され、メータバイザー6を通してメータユニット2を見ることができるようになっている。センターパネル用開口31にはセンターパネル7が挿入固定され、センターパネル7の開口7aにオーディオユニット4の操作面が嵌合し、センターパネル7のグリル7b,7bにインストルメントパネル構造体50の空気吹出口61が接続される。グリル開口30,33にはグリル8a,8bが固定される。
【0027】
インストルメントパネル構造体50のステアリングコラム支持テーブル66には、ステアリングコラム9が固定される。
また、インストルメントパネル構造体50においてステアリングコラム支持テーブル66の下部には運転席ロアカバー11が取り付けられ、オーディオユニット取付枠部67の下部にはセンターロアカバー12が取り付けられる。
インストルメントパネル構造体50において前面部材52のエアバッグ格納部63の下部には、グローブボックス13が回動可能に取り付けられると共に、グローブボックスフレーム14が取り付けられる。
また、前面部材52の左右の側壁部材56,59にはインストルメントパネルサイドカバー16,16が取り付けられる。
【0028】
したがって、上述の実施の形態によれば、インストルメントパネル構造体50を軽金属で一体成型することで機械的強度を高めることができ、このインストルメントパネル構造体50を左右フロントピラー100a,100bと連結することで、従来必要とされていたステアリングハンガービームを省略しても十分な車体剛性を確保することができる。
【0029】
また、インストルメントパネル構造体50のステアリングコラム支持テーブル66に直接ステアリングコラム9を固定することで、ステアリングハンガービームを廃止することができ、軽量化が可能となるとともに、インストルメントパネル構造体50の内部空間に種々の機器を収納することが容易にでき、空間の有効利用が可能になる。尚、前述したように、インストルメントパネル構造体50は機械的強度が高いので、ステアリングコラム9を支持するのになんら問題はない。
また、インストルメントパネル構造体50に開口部25を介してエアバッグを展開させることが可能となるため、一体成形されたインストルメントパネル構造体50にエアバッグの展開力が作用することなく、影響を及ぼすことがない。
【0030】
さらに、インストルメントパネル1の車室内側に露出した面を軟質樹脂層15で一様に被覆することで、インストルメントパネルパッド5とインストルメントパネル構造体50との露出面の連続性を確保することができると共に、インストルメントパネル1の車室内側の面をソフトな感触にでき、この結果、インストルメントパネル1の質感を向上させることができる。
【0031】
そして、インストルメントパネル構造体50に対してリッド部材35を取り付ける際には、リッド部材35の爪26を係止孔Kに挿入し、フランジ部37をボルト47で固定するだけでよいため、組付け工数を抑制して作業者の負担を軽減することができ、さらに、エアバッグ格納部63の開口部25をリッド部材35によって閉塞して剛性を確保できる。
【0032】
また、リッド部材35のミシン目75と、軟質樹脂層15のティアライン18との配置が整合していることで、エアバッグ展開時にエアバッグからの圧力でヒンジブラケット27の開閉扉78が開こうとすると、開閉扉78のスリット77の位置に対応したリッド部材35のミシン目75と軟質樹脂層15のティアライン18とにそれぞれエアバッグからの圧力を効率よく作用させることができるため、リッド部材35と軟質樹脂層15のミシン目75とティアライン18とを容易に破断させることができ、この結果、即座に開閉扉78を開放することができる。
【0033】
そして、前記軟質樹脂層15において、裏面側にティアライン18として断続的なエッジ部19を形成しているため、ティアライン18が車室内側から目に付くことがなくインストルメントパネル1においてエアバッグ格納部63付近の外観品質を向上させることができる。また、前記断続的なエッジ部19のピッチpを変化させるだけでティアライン18の破断限界値を自由に変化させることができるため、設計自由度を向上することができる。
また、レーザ加工機73で受光部86によるフィードバッグ制御を行いながらレーザ光の焦点距離を変化させて断続的なエッジ部19を形成することができるため、軟質樹脂層15を貫通することなしに容易かつ確実にティアライン18を形成することができる。
【0034】
尚、この発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、軟質樹脂層以外に、例えば、リッド部材に対して断続的なエッジ部を形成してティアラインを設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態におけるインストルメントパネルの組立斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるインストルメントパネルを右側から見た外観斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるインストルメントパネルの分解斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態における図1のA−A線に沿う断面図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるエアバッグモジュールの組立斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるリッド部材の斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態における軟質樹脂層のティアラインの説明図である。
【図8】本発明の実施の形態における軟質樹脂層のティアラインの詳細説明図である。
【符号の説明】
【0036】
15 軟質樹脂層(表皮部材)
18 ティアライン(易破断部)
25 開口部
35 リッド部材
51 上面部材
52 前面部材
50 インストルメントパネル構造体(インストルメントパネル基材)
75 ミシン目(易破断部)
100a,100b フロントピラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延在し実質的に水平方向に延びる板状の上面部材と、この上面部材の車室内側で屈曲し実質的に鉛直方向下方に延びる前面部材とからなる開断面に形成され、左右のフロントピラーに連結される軽金属製のインストルメントパネル基材と、該インストルメントパネル基材のエアバッグ展開用の開口部を閉塞するリッド部材と、少なくとも前記リッド部材を覆う表皮部材とを備え、該リッド部材に設けた易破断部と、前記表皮部材の裏面に設けた易破断部との配置位置を整合したことを特徴とする車両のインストルメントパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−232168(P2006−232168A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51623(P2005−51623)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】