説明

車両のエアコンプレッサ装置

【課題】エンジン駆動車両のエアコンプレッサによって圧縮空気をリザーバタンクに貯留する装置に係り、エアコンプレッサ運転開始時に於けるショックトルクを軽減する。
【解決手段】エアコンプレッサ45のクランクシャフト53と、エンジンの出力歯車に噛合する駆動歯車69との間に、駆動軸71に取り付くサンギヤ79と、クランクシャフト53に取り付くリングギヤ81と、サンギヤ79とリングギヤ81が噛合する複数のプラネタリギヤ83と、駆動軸71に回転自在に取り付き、プラネタリギヤ83の公転運動を拾うプラネタリキャリア87とからなる遊星ギヤ機構77を装着すると共に、プラネタリキャリア87を解放/固定するプラネタリキャリアブレーキ91を備え、プラネタリキャリアブレーキ91はリザーバタンク内の空気圧が規定値に達していないときプラネタリキャリア87を解放/固定し、空気圧が規定値に達するとプラネタリキャリア87を解放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックやバス,トラクタ等の車両に搭載されるエアコンプレッサ装置(圧縮空気供給装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中大型のトラックやバス、トラクタ等の車両には、ブレーキ倍力装置やエアサスペンション装置を始め、エアコンプレッサ装置から供給された圧縮空気を作動媒体とする多くの装置が装着されている。
【0003】
図10は従来のエアコンプレッサ装置を示し、図中、1はエアコンプレッサ3とリザーバタンク5の間に接続されたチャージ配管、7はリザーバタンク5とエアコンプレッサ3の間のアンロード配管9に装着されたエアプレッシャーガバナで、エンジン(図示せず)で駆動するエアコンプレッサ3によって圧縮空気がリザーバタンク5に貯留されるようになっている。
【0004】
そして、リザーバタンク5に貯留された圧縮空気の空気圧(リザーバタンク5の内圧)が規定値に達すると、エアプレッシャーガバナ7の作動で、リザーバタンク5内の空気圧がアンロード配管9を介してエアコンプレッサ3の吸気口11に装着されたアンロード弁13に作用(アンロード信号圧力)して、エアコンプレッサ3を無負荷運転(空運転状態)に切り換えることで、リザーバタンク5への圧縮空気の供給を停止させるようになっている。
【0005】
尚、図中、15はブレーキペダルで、ドライバーがこれを踏み込むと、エアブースタ17がブレーキバルブ19からのエア圧に応じた圧縮空気をリザーバタンク5から受けて、ホイールシリンダ(図示せず)に圧縮空気を供給するようになっている。
【0006】
しかし、前記エアコンプレッサ装置21は、エアコンプレッサ3を無負荷運転に切り換えてリザーバタンク5への圧縮空気の供給を停止しても、エアコンプレッサ3を無負荷運転させるためにエンジンの駆動力が消費され、これが燃料消費に悪影響を及ぼすという問題があった。
【0007】
そこで、特許文献1には、前記エアコンプレッサ装置21の構成に加え、図11に示すようにエンジンの出力軸23とエアコンプレッサ3の駆動軸25を電磁クラッチ27で連係すると共に、リザーバタンク5の内圧が所定値に達すると、前記電磁クラッチ27の電源回路29を開成する圧力スイッチ31を設けたエアコンプレッサ装置33が開示されている。
【0008】
而して、このエアコンプレッサ装置33によれば、リザーバタンク5の内圧が所定値に達すると、圧力スイッチ31が電磁クラッチ27の電源回路29を開成してエアコンプレッサ3への駆動力の伝達を遮断するため、エンジンの駆動力が節約されて燃費の向上が図れることとなる。
【0009】
また、特許文献2には、エンジンの出力軸とエアコンプレッサの駆動軸との間に多板クラッチを装着し、該多板クラッチをアンロード信号圧力にて直接的に接・断するエアコンプレッサ装置が開示されており、この従来例も、圧縮空気がリザーバタンク内に十分充填されている場合に、エンジンからエアコンプレッサへの動力伝達が遮断されるため、エンジンの負荷を軽減させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭61−58690号公報
【特許文献2】特開昭59−188075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、前記エアコンプレッサ装置に使用される電磁クラッチや多板クラッチは所謂「ON/OFFクラッチ」であるため、特にクラッチが繋がったエアコンプレッサ運転開始時のショックトルクが大きいという欠点が指摘されている。
【0012】
また、電磁クラッチの如く単板クラッチの場合は大きな押付け力が必要となり、大きな押付け力が得られない場合は、特許文献2に開示されるような多板構造の多板クラッチが必要となるが、多板クラッチは構造が複雑で嵩張り、重量も重い等の欠点があった。
【0013】
本発明は斯かる実情に鑑み案出されたもので、リザーバタンクの内圧が所定値に達した時に、エンジンからエアコンプレッサへの動力伝達を遮断してエンジンの負荷を軽減するこの種のエアコンプレッサ装置に改良を加え、動力伝達の接・断をスムーズにして、エアコンプレッサ運転開始時に於けるショックトルクを軽減すると共に、リザーバタンク内の充填エア圧のような小さな力でも動力伝達の接・断を作動できる構造の簡単な車両のエアコンプレッサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
斯かる目的を達成するため、請求項1に係る発明は、エンジンで駆動するエアコンプレッサによって圧縮空気をリザーバタンクに貯留する車両のエアコンプレッサ装置に於て、前記エアコンプレッサのクランクシャフトと、エンジンの出力歯車に噛合するエアコンプレッサの駆動歯車との間に、前記駆動歯車の駆動軸に取り付くサンギヤと、前記クランクシャフトに取り付くリングギヤと、前記サンギヤとリングギヤが噛合する複数のプラネタリギヤと、前記駆動軸に回転自在に取り付き、前記プラネタリギヤの公転運動を拾うプラネタリキャリアとからなる遊星ギヤ機構を装着すると共に、前記プラネタリキャリアを解放/固定するプラネタリキャリアブレーキを備え、前記プラネタリキャリアブレーキは、前記リザーバタンク内の空気圧が規定値に達していないとき、前記プラネタリキャリアを制動,固定し、リザーバタンク内の空気圧が規定値に達すると、プラネタリキャリアを解放することを特徴とする。
【0015】
そして、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の車両のエアコンプレッサ装置に於て、前記プラネタリキャリアは、プラネタリギヤの取付け半径よりも大きな半径を有する円柱状に形成されてその外周面がブレーキ部とされ、前記プラネタリキャリアブレーキは、前記ブレーキ部の外形形状に沿って形成され、一端側が支点に回動自在に取り付く一対の半円形状のブレーキ部材と、両ブレーキ部材の他端側にピン結合されたブレーキ解放用シリンダと、一対の前記ブレーキ部材を前記ブレーキ部に押圧付勢する押付けばねとからなり、前記プラネタリキャリアブレーキは、前記リザーバタンク内の空気圧が規定値に達していないとき、押付けばねのばね力で一対のブレーキ部材をブレーキ部に押圧してプラネタリキャリアを制動,固定し、リザーバタンク内の空気圧が規定値に達すると、その空気圧でブレーキ解放用シリンダが押付けばねのばね力に抗して伸長し、一対の前記ブレーキ部材をブレーキ部から離間させてプラネタリキャリアを解放することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1及び請求項2に係る発明によれば、従来に比し、エアコンプレッサによる空気圧縮が不要な場合のエンジン負荷を大幅に軽減させることが可能となって燃費の向上が図れると共に、エンジンからエアコンプレッサ45への動力伝達の接・断を、常時噛み合い式の遊星ギヤ機構によって行うように構成したので、従来の電磁クラッチや多板クラッチ等の「ON/OFFクラッチ」に比し動力伝達の接・断が滑らかに行え、ショックトルクが極めて小さい利点を有する。
【0017】
また、動力伝達の接・断を行う前記電磁クラッチや多板クラッチ等の押付型のクラッチに代え、本発明は、遊星ギヤ機構のプラネタリキャリアの解放/固定によって動力伝達の接・断を行うように構成したため、これらの従来構造に比し動力伝達の接・断がリザーバタンク内の充填エア圧のような小さな力でできる利点を有する。
【0018】
そして、請求項2に係る発明は、プラネタリキャリアをプラネタリギヤの取付け半径よりも大きな半径で形成して、その外周のブレーキ部に一対のブレーキ部材を制動させるように構成したので、ブレーキトルクは同じでも接戦力としては約半分程度の小さい力ですみ、大幅に面圧を大きくしたりブレーキ幅を大きくしたりせずにすむ利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】請求項1及び請求項2の第一実施形態に係るエアコンプレッサ装置の全体配置図である。
【図2】エアコンプレッサの概略構成図である。
【図3】プラネタリキャリアブレーキの概略構成図である。
【図4】エアコンプレッサと遊星ギヤ機構及びプラネタリキャリアブレーキの概略構成図である。
【図5】プラネタリキャリアブレーキの概略構成図である。
【図6】リザーバタンクの内圧の変化とプラネタリキャリアの解放/固定との関係を示すグラフである。
【図7】エアコンプレッサ稼働時の各軸の回転数と駆動トルクの関係を示すグラフである。
【図8】エアコンプレッサ停止時の各軸の回転数と駆動トルクの関係を示すグラフである。
【図9】請求項1及び請求項2の第二実施形態に係るエアコンプレッサ装置のエアコンプレッサの概略構成図である。
【図10】従来のエアコンプレッサ装置の概略構成図である。
【図11】従来の他のエアコンプレッサ装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1は請求項1及び請求項2の第一実施形態に係るエアコンプレッサ装置の全体配置図を示し、エアコンプレッサ装置41は、エンジン43で駆動するエアコンプレッサ45によって、圧縮空気がチャージ配管47を介してリザーバタンク49に貯留されるようになっている。
【0022】
そして、リザーバタンク49に貯留された圧縮空気の空気圧(リザーバタンク49の内圧)が規定値(アンロード圧)に近づくと、リザーバタンク49内の空気圧がアンロード配管51からエアコンプレッサ45側に作用するようになっている。
【0023】
図2はエアコンプレッサ45の概略構成図を示し、図中、53はクランクシャフト、55はコンロッド57を介してクランクシャフト53に連結されたピストンで、エンジン43の駆動でクランクシャフト53が回転してピストン55がシリンダ59内を往復動することにより、エアコンプレッサ45は空気吸込口61からシリンダ59内に吸い込まれた空気を圧縮して、圧縮空気吐出口63からチャージ配管47を介してリザーバタンク49に圧送するようになっている。
【0024】
尚、図2中、65は空気吸込口61に取り付く吸込弁、67は圧縮空気吐出口63に取り付く吐出弁である。
【0025】
また、図2に於て、69はエンジン43の出力歯車(図示せず)に噛合するエアコンプレッサ45側の駆動歯車で、駆動歯車69が取り付く駆動軸(入力軸)71は軸受73を介してエアコンプレッサ45のボディ75に回転自在に支持されている。
【0026】
そして、クランクシャフト53と駆動歯車69との間に、エンジン43からエアコンプレッサ45への動力伝達の接・断を行う遊星ギヤ機構77が装着されている。
【0027】
遊星ギヤ機構77は、前記駆動軸71に取り付くサンギヤ79と、クランクシャフト53に取り付くリングギヤ81と、サンギヤ79とリングギヤ81が噛合する複数のプラネタリギヤ83と、前記駆動軸71に軸受85を介して回転自在に取り付き、プラネタリギヤ83の公転運動を拾うプラネタリキャリア87とで構成され、遊星ギヤ機構77はボディ75内に収納されている。そして、図2及び図3に示すようにプラネタリキャリア87は、プラネタリギヤ83の取付け半径よりも大きな半径を有する円柱状に形成されて、その外周面がブレーキ部89とされている。
【0028】
更に、ボディ75内に、前記ブレーキ部89を介してプラネタリキャリア87を解放/固定するプラネタリキャリアブレーキ91が備えられている。
【0029】
図3はプラネタリキャリアブレーキ91の概略構成を示し、図中、93、95は一端側がボディ75上の支点97を中心に回動自在に取り付く一対のブレーキ部材で、両ブレーキ部材93、95はブレーキ部89の外形形状に沿って半円形状に形成されている。
【0030】
一方、両ブレーキ部材93、95の他端側には1つのブレーキ解放用シリンダ99がピン結合されており、ブレーキ解放用シリンダ99内にプリセット荷重用のばね106が装着され、その一室101にアンロード配管51が接続されている。
【0031】
更に、ブレーキ解放用シリンダ99が取り付く両ブレーキ部材93、95の他端側には、夫々、ボディ75との間に押付けばね103、105が介装されており、リザーバタンク49に貯留された圧縮空気の空気圧(リザーバタンク49の内圧)が不十分なときは、アンロード配管51からリザーバタンク49の空気圧がかかっても、図2及び図3に示すように前記ばね106のプリセット荷重でブレーキ解放用シリンダ99が縮んだ状態となり、押付けばね103,105のばね力でブレーキ部材93、95がプラネタリキャリア87のブレーキ部91に押圧されて、プラネタリキャリア87の回転が制動,固定されるようになっている。
【0032】
一方、図6に示すようにリザーバタンク49に貯留された圧縮空気の空気圧が規定値に近づく(リザーバタンク49の内圧が高まる)に従い、アンロード配管51を介してブレーキ解放用シリンダ99内の圧力が徐々に高まり、リザーバタンク49からの空気圧が規定値に達してばね106のプリセット荷重を超えると(図6中、A点)、ブレーキ解放用シリンダ99が押付けばね103、105のばね力に抗して伸長して、前記支点97を中心に両ブレーキ部材93、95を外方へ押し広げるため、両ブレーキ部材93、95がブレーキ部89から離間してプラネタリキャリア87が解放されるようになっている。
【0033】
本実施形態に係るエアコンプレッサ装置41はこのように構成されているから、既述したようにリザーバタンク49の内圧が不十分なときは、アンロード配管51からリザーバタンク49の空気圧がかかっても、図2及び図3に示すようにばね106のプリセット荷重でブレーキ解放用シリンダ99が縮んだまま、押付けばね103,105のばね力でブレーキ部材93、95がプラネタリキャリア87のブレーキ部91に押圧されて、プラネタリキャリア87の回転が制動,固定される。
【0034】
而して、斯様にプラネタリキャリア87の回転が制動,固定されると、図2に示すようにプラネタリギヤ83の公転が規制されて自転のみが可能となるため、エンジン43の駆動力がサンギヤ79、プラネタリギヤ83,リングギヤ81からクランクシャフト53へ伝達されてエアコンプレッサ45が駆動し、圧縮空気がチャージ配管47を介してリザーバタンク49に貯留されていくこととなる。
【0035】
そして、このエアコンプレッサ45の駆動(運転)時の各軸の回転は、図7(a)に示すようにプラネタリキャリア87の停止により、駆動軸71とクランクシャフト53(リングギヤ81)は反対方向の回転となるため、プラネタリギヤ83のギヤ比に応じたエアコンプレッサ45の回転数が得られることとなる。
【0036】
また、図7(b)に示すように駆動トルクについては、駆動軸回転数よりエアコンプレッサ45の回転数が減速となる場合、大きな駆動トルクでエアコンプレッサ45が駆動され、プラネタリキャリア87は両トルクの合計トルクを反力として受けるため、この反力をプラネタリキャリアブレーキ91で吸収する必要がある。
【0037】
しかし、既述したようにプラネタリキャリア87は、プラネタリギヤ83の取付け半径よりも大きな半径で形成されているため、ブレーキトルクは同じでも接戦力としては約半分程度の小さい力ですみ、大幅に面圧を大きくしたりブレーキ幅を大きくしたりせずにすむこととなる。
【0038】
この後、エアコンプレッサ45の駆動により圧縮空気がリザーバタンク49に貯留されて、図6の如くリザーバタンク49の内圧が規定値に近づくに従い、アンロード配管51を介してブレーキ解放用シリンダ99内の圧力が徐々に高まり、リザーバタンク49の内圧が規定値に達してばね106のプリセット荷重を超えると、ブレーキ解放用シリンダ99が押付けばね103、105のばね力に抗して伸長して、前記支点97を中心に両ブレーキ部材93、95を外方へ押し広げるため、両ブレーキ部材93、95がブレーキ部89から離間してプラネタリキャリア87が解放される。
【0039】
而して、斯様にプラネタリキャリア87が解放されるとプラネタリキャリア87はフリー回転状態になるが、エアコンプレッサ45そのものが圧縮や吐出に伴う抵抗やフリクションがあるため、図8(a)に示すようにエアコンプレッサ45が停止してブレーキとなり、この結果、図4の如くエンジン43からの駆動力がプラネタリギヤ83を回転させ乍らプラネタリキャリア87を公転(空運転)させて、エアコンプレッサ45への動力伝達が遮断される。
【0040】
そして、図8(a),(b)に示すようにプラネタリキャリア87を公転(空運転)させる駆動力は、エアコンプレッサ45の駆動時に比べると大幅に少ない動力ですみ、エンジン43の消費馬力は大幅に軽減されることとなる。
【0041】
このように本実施形態に係るエアコンプレッサ装置41によれば、図10及び図11の従来例に比し、エアコンプレッサ45による空気圧縮が不要な場合に於けるエンジン43の負荷を大幅に軽減させることが可能となって燃費の向上が図れると共に、エンジン43からエアコンプレッサ45への動力伝達の接・断を、常時噛み合い式の遊星ギヤ機構77によって行うように構成したので、図11の電磁クラッチ27や特許文献2に開示された多板クラッチ等の「ON/OFFクラッチ」に比し動力伝達の接・断が滑らかに行え、ショックトルクが極めて小さい利点を有する。
【0042】
また、動力伝達の接・断を行う前記電磁クラッチ27や多板クラッチ等の押付型のクラッチに代え、本実施形態は、遊星ギヤ機構77のプラネタリキャリア87の解放/固定によって前記動力伝達の接・断を行うように構成したため、これらの従来構造に比し動力伝達の接・断がリザーバタンク49内の充填エア圧のような小さな力でできる利点を有する。
【0043】
図9は請求項1及び請求項2の第二実施形態に係るエアコンプレッサ装置を示し、本実施形態は、前記遊星ギヤ機構77に代え、遊星ギヤ機構107を従来周知のデフ装置の如き構成としたもので、図中、109は駆動歯車69の駆動軸71に取り付くサンギヤ、111は該サンギヤ109に対向してエアコンプレッサ45のクランクシャフト53に取り付くリングギヤで、上述したようにこれらはデフ装置の左右一対のデフサイドギヤの如きかさ歯車状に形成され、回転半径を同じくするギヤ比1対1に設定されている。
【0044】
そして、サンギヤ109とリングギヤ111が噛合する2個のプラネタリギヤ113がこれらと直交する方向に配置され、プラネタリギヤ113の公転運動を拾うプラネタリキャリア115がサンギヤ109とリングギヤ111との間に回転可能に装着されている。
【0045】
プラネタリキャリア115は、サンギヤ109とリングギヤ111との間に回転可能に取り付く第1キャリア軸117とこれと直交する第2キャリア軸119、そして、第2支持軸119を直径とする円柱状のブレーキ部121とからなり、第2キャリア軸119にプラネタリギヤ113が回転可能に取り付けられている。
【0046】
そして、前記ブレーキ部121は図2及び図3のブレーキ部89に相当し、その外周に沿って、プラネタリキャリア115を解放/固定する前記プラネタリキャリアブレーキ91が備えられている。
【0047】
尚、その他の構成は図1の実施形態と同様であるので、同一のものには同一符号を付してそれらの説明は省略する。
【0048】
本実施形態に係るエアコンプレッサ装置123はこのように構成されているから、前記実施形態と同様、リザーバタンク49の内圧が不十分なときは、アンロード配管51からリザーバタンク49の空気圧がかかっても、ばね106のプリセット荷重でブレーキ解放用シリンダ99が縮んだまま、押付けばね103,105のばね力でブレーキ部材93、95がブレーキ部121に押圧されて、プラネタリキャリア115の回転が制動,固定される。
【0049】
そして、エアコンプレッサ45の駆動により圧縮空気がリザーバタンク49に貯留されてリザーバタンク49の内圧が規定値に近づくに従い、アンロード配管51を介してブレーキ解放用シリンダ99内の圧力が徐々に高まり、リザーバタンク49の内圧が規定値に達してばね106のプリセット荷重を超えると、ブレーキ解放用シリンダ99が押付けばね103、105のばね力に抗して伸長して、両ブレーキ部材93、95を外方へ押し広げるため、両ブレーキ部材93、95がブレーキ部121から離間してプラネタリキャリア115が解放されることとなる。
【0050】
このように本実施形態に係るエアコンプレッサ装置123も、前記エアコンプレッサ装置41と同様に機能して所期の目的を達成することが可能となり、エンジン43からエアコンプレッサ45への動力伝達の接・断が滑らかに行えると共に、動力伝達の接・断がリザーバタンク49内の充填エア圧のような小さな力でできる利点を有する。
【0051】
また、本実施形態は、サンギヤ109とリングギヤ111を対向させてこれらを回転半径を同じくするギヤ比1対1に設定したので、遊星ギヤ機構107を収容するボディ125を前記エアコンプレッサ装置41のボディ75に比し小型化することが可能となって装置全体の小型化が図れる利点を有する。
【符号の説明】
【0052】
41,123 エアコンプレッサ装置
43 エンジン
45 エアコンプレッサ
47 チャージ配管
49 リザーバタンク
51 アンロード配管
53 クランクシャフト
55 ピストン
59 シリンダ
61 空気吸込口
63 圧縮空気吐出口
69 駆動歯車
71 駆動軸
75,125 ボディ
77 遊星ギヤ機構
79,109 サンギヤ
81,111 リングギヤ
83,113 プラネタリギヤ
87,115 プラネタリキャリア
89,121 ブレーキ部
91 プラネタリキャリアブレーキ
93、95 ブレーキ部材
97 ボディ上の支点
99 ブレーキ解放用シリンダ
103、105 押付けばね
106 ばね
107 遊星ギヤ機構
117 第1キャリア軸
119 第2キャリア軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンで駆動するエアコンプレッサによって圧縮空気をリザーバタンクに貯留する車両のエアコンプレッサ装置に於て、
前記エアコンプレッサのクランクシャフトと、エンジンの出力歯車に噛合するエアコンプレッサの駆動歯車との間に、
前記駆動歯車の入力軸に取り付くサンギヤと、前記クランクシャフトに取り付くリングギヤと、前記サンギヤとリングギヤが噛合する複数のプラネタリギヤと、前記入力軸に回転自在に取り付き、前記プラネタリギヤの公転運動を拾うプラネタリキャリアとからなる遊星ギヤ機構を装着すると共に、
前記プラネタリキャリアを解放/固定するプラネタリキャリアブレーキを備え、
前記プラネタリキャリアブレーキは、前記リザーバタンク内の空気圧が規定値に達していないとき、前記プラネタリキャリアを制動,固定し、リザーバタンク内の空気圧が規定値に達すると、プラネタリキャリアを解放することを特徴とする車両のエアコンプレッサ装置。
【請求項2】
前記プラネタリキャリアは、プラネタリギヤの取付け半径よりも大きな半径を有する円柱状に形成されてその外周面がブレーキ部とされ、
前記プラネタリキャリアブレーキは、前記ブレーキ部の外形形状に沿って形成され、一端側が支点に回動自在に取り付く一対の半円形状のブレーキ部材と、両ブレーキ部材の他端側にピン結合されたブレーキ解放用シリンダと、一対の前記ブレーキ部材を前記ブレーキ部に押圧付勢する押付けばねとからなり、
前記プラネタリキャリアブレーキは、前記リザーバタンク内の空気圧が規定値に達していないとき、押付けばねのばね力で一対のブレーキ部材をブレーキ部に押圧してプラネタリキャリアを制動,固定し、
リザーバタンク内の空気圧が規定値に達すると、その空気圧でブレーキ解放用シリンダが押付けばねのばね力に抗して伸長し、一対の前記ブレーキ部材をブレーキ部から離間させてプラネタリキャリアを解放することを特徴とする請求項1に記載の車両のエアコンプレッサ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−52542(P2011−52542A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199319(P2009−199319)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】