説明

車両のニュートラル制御装置

【課題】発進クラッチの油室内における推定したエア混入量に基づいて、ニュートラル制御を好適に実行することにより、ニュートラル制御復帰時におけるドライバビリティを向上することができる車両のニュートラル制御装置を提供する。
【解決手段】ECUは、車両がDレンジ停車状態であって(ステップS91でYES)エア混入量Aが禁止閾値αよりも大きい場合には(ステップS92でYES)、N制御の実行を禁止する(ステップS93)。一方、エア混入量Aが禁止閾値α以下であって(ステップS92でNO)補正閾値βよりも大きい場合には(ステップS94でYES)、エア混入量Aに基づいて油圧補正値ΔP(A)を算出し(ステップS95)、復帰時油圧Prを補正した後(ステップS96)、N制御の実行を許可する(ステップS98)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機内の動力伝達経路を解放状態とするニュートラル制御を実行する車両のニュートラル制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される自動変速機にあっては、所謂クラッチ・ツゥ・クラッチによって動力伝達経路を切り替えて変速を行う自動変速機が存在し、この自動変速機にあっては、摩擦係合要素としてのクラッチやブレーキを油圧により切り替えて所望の変速段が形成されるようになっている。
【0003】
このような自動変速機にあっては、摩擦係合要素を作動させる油圧アクチュエータに供給する油圧によって変速制御するようになっており、摩擦係合要素の締結側、解放側の油圧を高精度に制御することが要求される。このため、ソレノイドバルブの電流値を調整することによって、油圧アクチュエータに目標油圧相当の操作量を与えることによって高精度な制御が実現されている。
【0004】
このため、作動油中にエアが混入すると、前述のように目標油圧相当の操作量を与えても実際の油圧が目標値に一致しなくなり、エンジンの吹き上りやインターロック(自動変速機の出力軸のロック)を引き起こす原因となっていた。
【0005】
このような、エア混入に対処するために、作動油中におけるエア混入率を推定し、このエア混入率に応じてソレノイドの操作量を補正する自動変速機の制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この特許文献1に開示された自動変速機の制御装置は、油圧の指示値をステップ変化させたときの実油圧の変化から、油圧ステップ応答における時定数を算出し、この油圧ステップ応答の時定数から作動油におけるエア混入率を推定し、推定されたエア混入率に基づいてソレノイドの駆動電流を補正するようになっている。
この構成により、推定されたエア混入率に基づいてソレノイドの駆動電流を補正するので、作動油中にエアの混入があっても摩擦係合要素の油圧制御の精度をある程度確保することができる。
【0007】
また、自動変速機を構成する摩擦係合要素の制御油圧内への混入空気量に基づいて指示油圧の設定を適切に行う自動変速機の制御装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
この特許文献2に開示された自動変速機の制御装置は、混入空気基本補正係数KKARCと経時補正係数KDARCのうちいずれかの大きい一方を混入空気補正係数KARCとして設定し、基本指示油圧PS_Bの補正を行うことで、ATF内の混入空気量に応じた指示油圧をPSの設定を行うようになっている。
この構成により、単にオイルポンプの回転数とATF温度によって一意的に推定した混入空気量に基づいて指示油圧の補正を行った場合よりも、指示油圧の設定を適切に行って良好なシフトクオリティを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−125330号公報
【特許文献2】特開2002−364743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述のような従来の自動変速機の制御装置にあっては、作動油中のエア混入率や、制御油内の混入空気量を推定しているものの、発進クラッチを作動させるオイルへのエア混入量に関して考慮されていないため、特に発進クラッチの係合を好適に制御することができず、車両にショックが加わったり車両の発進性が悪化する(ヘジテーション)といったドライバビリティの悪化を招来するという問題があった。
【0010】
このため、従来の自動変速機の制御装置にあっては、ドライブレンジが選択された状態で車両停止時にトルクコンバータにおける負荷損失を低減するために、発進クラッチを解放するといったニュートラル制御を実行することも考えられるが、このニュートラル制御から復帰する際、発進クラッチを作動させるオイルへのエア混入量が多い状態であると、オイルの収縮率が高く発進クラッチの油圧応答性が不安定となり、発進クラッチの係合を速やか、かつ滑らかに行わせるよう制御することができず、ニュートラル制御から復帰したときに車両にショックが加わったり車両の発進性が悪化する(ヘジテーション)といったドライバビリティの悪化を招来するという問題があった。
【0011】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、発進クラッチの油室内における推定したエア混入量に基づいて、ニュートラル制御を好適に実行することにより、ニュートラル制御復帰時におけるドライバビリティを向上することができる車両のニュートラル制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る車両のニュートラル制御装置は、上記目的達成のため、(1)内燃機関の回転を変速して駆動輪へ伝達するための自動変速機を有する車両において、前進走行レンジが検出され、かつ制動力の付与により車両が停止状態である場合に、前記自動変速機内の動力伝達経路を解放状態とするニュートラル制御を実行する車両のニュートラル制御装置であって、前記車両の速度を検出する車速検出手段と、前記自動変速機の現在のシフトレンジを検出するシフトレンジ検出手段と、前記動力伝達経路を切り替える複数の摩擦係合要素のうち前記ニュートラル制御から復帰する際に係合する摩擦係合要素を作動させるオイルのエア混入量を推定する推定手段と、前記前進走行レンジが検出されている状態で、かつ車両が停止状態であるときに、前記推定手段によって推定された前記エア混入量が予め定められた禁止閾値よりも大きい場合には、前記ニュートラル制御を禁止する禁止手段と、を備えるよう構成する。
【0013】
この構成により、ニュートラル制御から復帰する際に係合する摩擦係合要素としての発進クラッチを作動させるオイルのエア混入量に基づいて、ニュートラル制御を禁止することができるので、発進クラッチを作動させるオイルへのエア混入量が多いことに起因した発進クラッチの油圧応答性が不安定な状態でニュートラル制御から復帰することを防止することができる。このため、ニュートラル制御を好適に実行してニュートラル制御復帰時におけるドライバビリティの悪化を防止することができる。
【0014】
また、上記(1)に記載の車両のニュートラル制御装置において、(2)前記推定手段によって推定された前記エア混入量が、予め定められた補正閾値より大きく、かつ前記禁止閾値以下である場合に、前記ニュートラル制御から復帰する際に係合する摩擦係合要素を作動させる油圧を、前記エア混入量に応じて補正する補正手段を備えるよう構成する。
【0015】
この構成により、推定したエア混入量が補正閾値よりも大きく、かつ禁止閾値以下である場合に、推定したエア混入量に応じてニュートラル制御復帰時の作動油圧を補正することができるので、ドライバビリティの悪化を防止することができる。
なお、禁止閾値は、ニュートラル制御復帰時に発進クラッチの油圧応答性が不安定な状態となってしまい、ニュートラル制御復帰時の作動油圧を補正することによってもドライバビリティが悪化してしまう値に設定されるのが好ましい。
また、補正閾値は、禁止閾値より小さい値でニュートラル制御復帰時に発進クラッチの油圧指示値を補正しなければドライバビリティが悪化してしまう値に設定されるのが好ましい。
【0016】
また、上記(1)または(2)に記載の車両のニュートラル制御装置において、(3)前記内燃機関の運転状態を判定する運転状態判定手段と、駐車レンジが検出されている状態で、前記運転状態判定手段によって前記内燃機関が停止したと判定されてから前記内燃機関が始動したと判定されるまでの休止継続時間を算出する算出手段と、を備え、前記推定手段は、前記算出手段によって算出された前記休止継続時間に応じて、前記エア混入量を推定するよう構成する。
【0017】
この構成により、算出手段によって算出された休止継続時間に応じて、エア混入量を推定するので、発進クラッチの油室へのオイルの供給が停止し油室内のオイルの減少に伴って外部から油室内等に入り込むエアの量を考慮して、発進クラッチを作動させるオイルへのエア混入量を推定することができ、エア混入量の推定の精度を向上させて、より効果的にニュートラル制御を実行することができる。
【0018】
また、上記(1)から(3)に記載の車両のニュートラル制御装置において、(4)前記複数の摩擦係合要素の作動状態を判定する作動状態判定手段と、前記作動状態判定手段によって判定された前記作動状態に基づいて、前記ニュートラル制御から復帰する際に係合する摩擦係合要素が係合状態から解放状態に切り替わった回数を判定する切替回数判定手段と、を備え、前記推定手段は、前記切替回数判定手段によって判定された回数に応じて前記エア混入量を推定するよう構成する。
【0019】
この構成により、ニュートラル制御から復帰する際に係合する摩擦係合要素が係合状態から解放状態に切り替わった回数に応じてエア混入量を推定するので、発進クラッチが係合状態から解放状態となる際に、発進クラッチの油室からオイルとともに抜けるエアの量を考慮して、油室内等におけるオイルへのエア混入量を推定することができる。そのため、例えば車両の走行中に発進クラッチが係合状態から解放状態となる変速が複数回行われた場合であっても、発進クラッチの油室内等におけるオイルへのエア混入量を正確に推定することができる。これにより、エア混入量の推定の精度を向上させて、より効果的にニュートラル制御を実行することができる。
【0020】
また、上記(1)から(4)に記載の車両のニュートラル制御装置において、(5)前記算出手段は、後進走行レンジが検出されてからその他のシフトレンジが検出されるまでの後進走行レンジ継続時間を算出し、前記推定手段は、前記後進走行レンジ継続時間に応じて前記エア混入量を推定するよう構成する。
【0021】
この構成により、算出手段によって算出された後進走行レンジ継続時間に応じてエア混入量を推定するので、発進クラッチの油室へのオイルの供給が停止し油室内のオイルの減少に伴って外部から油室内等に入り込むエアの量を考慮して、発進クラッチを作動させるオイルへのエア混入量を推定することができる。そのため、車両の運転中に後進走行レンジが検出されても、エア混入量の推定精度を向上させて、より効果的にニュートラル制御を行うことができる。
【0022】
さらに、上記(1)から(5)に記載の車両のニュートラル制御装置において、(6)前記オイルの温度を検出する温度検出手段を備え、前記推定手段は、前記温度検出手段によって検出された前記オイルの温度に応じて前記エア混入量を推定するよう構成する。
【0023】
この構成により、オイルの温度に応じてエア混入量を推定するので、発進クラッチの油室に供給されるオイルの温度に依存するオイルの粘度の変化を考慮して、エア混入量を推定することができる。すなわち、オイルの粘度の変化に伴い変動する油室からのエアの抜けやすさ、または油室へのエアの入り込みやすさを考慮して、エア混入量を推定することができる。そのため外気温や内燃機関の温度等の変化に伴ってオイルの温度が変化しても、オイルの温度に応じたエア混入量を推定することができるので、温度に依らずに効果的にニュートラル制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、発進クラッチの油室内における推定したエア混入量に基づいて、ニュートラル制御を好適に実行することにより、ニュートラル制御からの復帰時におけるドライバビリティを向上することができる車両のニュートラル制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両のニュートラル制御装置を搭載した車両の概略ブロック構成図である。
【図2】本発明の実施の形態における自動変速機の構成を表す骨子図である。
【図3】本発明の実施の形態における摩擦係合要素の作動状態を表す作動表である。
【図4】本発明の実施の形態における油圧制御装置の構成を表す回路図である。
【図5】本発明の実施の形態における休止状態でのC1クラッチの油室およびオイルパイプ等へのエア入り込み量AiEPと休止継続時間tpとの関係を表すグラフである。(a)は、オイルの温度Toが低温の場合のグラフであり、(b)は、オイルの温度Toが中温の場合のグラフであり、(c)は、オイルの温度Toが高温の場合のグラフである。
【図6】本発明の実施の形態におけるAiEPを推定するためのAiEP推定マップの模式図である。
【図7】本発明の実施の形態におけるC1クラッチの解放時におけるC1クラッチの油室およびオイルパイプ等からのエア抜け量AoC1を推定するためのAoC1推定マップの模式図である。
【図8】本発明の実施の形態における後進状態でのC1クラッチの油室およびオイルパイプ等へのエア入り込み量AiRを推定するためのAiR推定マップの模式図である。
【図9】本発明の実施の形態におけるC1クラッチの復帰時油圧Prの油圧補正値ΔP(A)を算出するためのΔP(A)算出マップの模式図である。
【図10】本発明の実施の形態におけるエア混入量Aの推定処理のメインフローを表すフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態におけるAiEPの推定処理のサブルーチンを表すフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態におけるAoC1の推定処理のサブルーチンを表すフローチャートである。
【図13】本発明の実施の形態におけるAiRの推定処理のサブルーチンを表すフローチャートである。
【図14】本発明の実施の形態におけるエア混入量Aの推定処理のサブルーチンを表すフローチャートである。
【図15】本発明の実施の形態におけるN制御禁止処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0027】
まず、図1を参照して、本実施の形態に係る車両10の概略構成について説明する。
図1に示すように、車両10は、エンジン11と、トルクコンバータ15と、変速機構20と、油圧制御装置60と、電子制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)100と、を備えている。
【0028】
エンジン11は、図示しないインジェクタから噴射された燃料と空気との混合気を、シリンダの燃焼室内で燃焼させる内燃機関により構成されている。この燃焼によりシリンダ内のピストンが押し下げられて、後述する出力軸としてのクランクシャフトが回転させられるようになっている。なお、内燃機関の代わりに外燃機関を用いてもよい。また、補助的な動力源として電動機等が追設されてもよい。
【0029】
トルクコンバータ15は、エンジン11から変速機構20にトルクを増大して伝達するようになっている。なお、トルクコンバータ15の詳細な構成については、後で詳細に説明する。
【0030】
自動変速機5は、トルクコンバータ15と変速機構20とを含んで構成されている。そして、自動変速機5は、後述するクランクシャフトの回転数を所定の変速比γで減速あるいは増速して出力する有段式の変速機である。変速機構20の出力ギヤから出力される動力は、図示しないディファレンシャルギヤおよびドライブシャフトを介して、図示しない左右の前輪に伝達される。自動変速機5の構成については、後で詳細に説明する。
【0031】
油圧制御装置60は、後述する摩擦係合要素の作動状態を切り替えるためのリニアソレノイドバルブSL1〜SL5を有している。油圧制御装置60の構成については、後に詳細に説明する。
【0032】
ECU100は、双方向性バス107を介して互いに接続されているCPU(Central Processing Unit)101、RAM(Random Access Memory)102、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)103、B−RAM(Back Up Random Access Memory)104、入力ポート105および出力ポート106等を備えたマイクロコンピュータによって構成されている。
【0033】
CPU101は、RAM102の一次記憶機能を利用しつつ、予めEEPROM103に記憶されたプログラムに従って、入力ポート105から入力された各種検出信号の処理等を実行することにより、エンジン11の出力制御、および自動変速機5の変速制御等を実行するようになっている。出力ポート106から出力された信号は、図示しないADC(Analog Digital Converter)を介して、エンジン11、およびリニアソレノイドバルブSL1〜SL5等の制御対象に入力されるようになっている。
【0034】
また、EEPROM103には、車速およびスロットル開度と自動変速機5の変速段とを対応させた変速線図がマップ化されて記憶されている。したがって、ECU100は、CPU101によって、後述する車速センサおよびスロットルセンサの検出信号とEEPROM103に記憶された変速線図とに基づいて、自動変速機5の変速段を決定し、決定した変速段を形成するよう自動変速機5に変速を行わせるようになっている。
【0035】
また、ECU100は、油圧制御装置60のリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の作動状態を変化させ、図示しないオイルポンプによって発生させられるライン圧を元圧とする油圧により、自動変速機5における複数の摩擦係合要素の作動状態を係合状態または解放状態に切り替えることにより、自動変速機5における動力伝達経路を切り替えて、所望の変速段を形成させるようになっている。これにより、ECU100は、所望の変速段に応じた変速比γで、自動変速機5に変速を行わせるようになっている。
【0036】
さらに、EEPROM103には、後述する作動表112、AiEP推定マップ114、AoC1推定マップ116、AiR推定マップ118、ΔP(A)推定マップ120、禁止閾値α、補正閾値β、運転回転数NEo、車両10の諸元値、および各種プログラムが記憶されている。
【0037】
車両10は、さらに、油圧制御装置60におけるオイルの温度を検出するための油温センサ70と、エンジン11の出力軸回転数を検出するためのエンジン回転数センサ72と、エンジン11の吸入空気量を検出するための吸入空気量センサ74と、エンジン11に吸入される空気の温度を検出するための吸入空気温度センサ76と、吸入空気量を調整するスロットルバルブ6の開度を検出するためのスロットルセンサ78と、車両10の車速Vを検出するための車速センサ80と、エンジン11の冷却水温を検出するための冷却水温センサ82と、ブレーキセンサ84と、トルクコンバータ15のタービン回転数、すなわち自動変速機の入力軸回転数を検出するためのタービン回転数センサ86と、シフトレバー3の操作位置を検出するためのシフトセンサ88と、を備えている。
【0038】
エンジン回転数センサ72は、後述するクランクシャフトに設けられた図示しないタイミングロータの所定の回転角ごとに、出力信号としてのパルスを発生し、検出信号としてECU100に出力するようになっている。ECU100は、この検出信号に基づいて、エンジン回転数NEを算出する。すなわち、ECU100とエンジン回転数センサ72とは、協働してエンジン回転数NEを検出するようになっている。
【0039】
吸入空気量センサ74は、エンジン11への吸気流路に設けられたホットワイヤ式のエアフローメータにより構成されており、吸入空気量Qinの変化に伴う熱線の抵抗値を表す検出信号をECU100に出力するようになっている。ECU100は、この検出信号が表す抵抗値の変化に基づいて吸入空気量Qinを算出するようになっている。すなわち、ECU100と吸入空気量センサ74とは、協働して吸入空気量Qinを検出するようになっている。
【0040】
スロットルセンサ78は、スロットルバルブ6のスロットル開度θthに応じた出力電圧が得られるホール素子により構成されており、この出力電圧を表す検出信号をECU100に出力するようになっている。ECU100は、この検出信号に基づいてスロットル開度θthを算出するようになっている。すなわち、ECU100とスロットルセンサ78とは、協働してスロットル開度Qthを検出するようになっている。
【0041】
車速センサ80は、自動変速機5の出力軸に設けられた図示しないタイミングロータの所定の回転角ごとに、出力信号としてのパルスを発生し、検出信号としてECU100に出力するようになっている。ECU100は、この検出信号に基づいて、車速Vを算出するようになっている。すなわち、ECU100と車速センサ80とは、協働して車速Vを検出するようになっている。
【0042】
冷却水温センサ82は、冷却水の温度に応じて抵抗値が変化するサーミスタにより構成されており、エンジン11の冷却水温に応じて変化した抵抗値に基づく検出信号を、ECU100に出力するようになっている。ECU100は、この検出信号に基づいて、冷却水温度Tcを算出するようになっている。すなわち、ECU100と冷却水温センサ82とは、協働して冷却水温度Tcを検出するようになっている。
【0043】
ブレーキセンサ84は、車両10に備えられた図示しないブレーキペダルが運転者により所定の踏込量で踏み込まれたとき、OFF状態からON状態に切り替わる信号(踏力スイッチ信号)をECU100に出力するようになっている。ECU100は、この信号に基づいて、ブレーキペダルが所定量踏み込まれたか否かを判定するようになっている。すなわち、ECU100とブレーキセンサ84とは、協働して、ブレーキペダルが所定量踏み込まれたか否かを判定するようになっている。
【0044】
タービン回転数センサ86は、後述する変速機構20の入力軸に設けられた図示しないタイミングロータの所定の回転角ごとに、出力信号としてのパルスを発生し、検出信号としてECU100に出力するようになっている。ECU100は、この検出信号に基づいて、タービン回転数NTを算出するようになっている。すなわち、ECU100とタービン回転数センサ86とは、協働してタービン回転数NTを検出するようになっている。
【0045】
シフトセンサ88は、シフト操作装置4に複数設けられ、シフトレバー3が運転者によって操作された際、各センサがシフトレバー3を検出し、その検出信号をECU100に出力するようになっている。
【0046】
ここで、シフトレバー3は、運転者によって、車両10の駐車のための駐車位置(Pレンジ)、後進走行のための後進走行位置(Rレンジ)、自動変速機5における動力伝達経路を解放状態とする中立位置(Nレンジ)、自動変速モードにおける前進走行位置(Dレンジ)、手動変速モード(シーケンシャルシフトマチックモード:以下、「Sレンジ」という)においてシフト操作するためのマニュアルポジションを表す手動変速位置、アップシフトを指示するためのアップ変速指示位置(+)およびダウンシフトを指示するためのダウン変速指令位置(−)のシフト操作位置のうち、いずれかに切り替えられるようになっている。
このような構成により、ECU100は、シフトセンサ88と協働して、自動変速機5の現在のシフトレンジおよび変速段を検出することができるようになっている。
【0047】
次に、図2を参照して、本実施の形態に係る自動変速機5の構成について説明する。
図2に示すように、トルクコンバータ15は、クランクシャフト13と連結される入力部材としてのポンプインペラ(以下、「インペラ」という)16と、変速機構20の入力軸22と連結される出力部材としてのタービンランナ(以下、「タービン」という)17と、ワンウェイクラッチ21によって一方向の回転が阻止されているステータ18と、を有している。
【0048】
ここで、トルクコンバータ15の内部には作動流体としてのオイルが充てんされている。インペラ16はクランクシャフト13の回転エネルギーをオイルの流れのエネルギーに変換し、タービン17がこのオイルの流れを受け止めることでオイルの流れのエネルギーをタービン17の回転エネルギーとして取り出し、動力を伝達させている。また、タービン17を回転させたオイルは、まだ相当のエネルギーを有しており、ステータ18により整流され、再びインペラ16に導かれることによって、インペラ16の回転力を増大させる。このようにして、トルクコンバータ15におけるトルクの増大がなされている。
【0049】
ここで、トルクコンバータ15は、流体を介して動力を伝達する性質上、伝達効率が低いことが知られている。そのため、トルクコンバータ15は、直結クラッチであるロックアップクラッチ19を有している。このロックアップクラッチ19は、油圧制御によって、インペラ16と一体回転する図示しないコンバータカバーに押し当てられ係合状態となると、インペラ16とタービン17とを機械的に直結するようになっており、エンジン11から変速機構20への動力の伝達効率を向上させることができる。
【0050】
変速機構20の入力軸22は、タービン17に接続されており、トルクコンバータ15によって伝達された回転を変速機構20に伝達するよう構成されている。変速機構20は、遊星歯車機構により構成される第1セット30と、遊星歯車機構により構成される第2セット40と、出力ギヤ58と、ギヤケース59に固定された多板式の油圧式摩擦係合要素としてのC1クラッチ55、C2クラッチ56、B1ブレーキ51、B2ブレーキ52、B3ブレーキ53(以下、特に区別しない場合は「クラッチCおよびブレーキB」という)、およびワンウェイクラッチF57と、を有している。なお、自動変速機5は、入力軸22に対して略対照的に構成されており、図2では下半分が省略されている。
【0051】
第1セット30は、シングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。第1セット30は、サンギヤS(UD)31と、ピニオンギヤ32と、リングギヤR(UD)33と、キャリアC(UD)34とを有している。
【0052】
サンギヤS(UD)31は、入力軸22を介してタービン17に連結されている。ピニオンギヤ32は、キャリアC(UD)34に回転自在に支持されており、サンギヤS(UD)31およびリングギヤR(UD)33と係合している。
【0053】
リングギヤR(UD)33は、B3ブレーキ53によりギヤケース59に選択的に固定されている。キャリアC(UD)34は、B1ブレーキ51によりギヤケース59に選択的に固定されている。
【0054】
第2セット40は、ラビニヨ型の遊星歯車機構により構成されている。第2セット40は、サンギヤS(D)41と、ショートピニオンギヤ42と、キャリアC(1)43と、ロングピニオンギヤ44と、キャリアC(2)45と、サンギヤS(S)46と、リングギヤR(1)(R(2))47とを有している。
【0055】
サンギヤS(D)41は、キャリアC(UD)34に連結されている。ショートピニオンギヤ42は、キャリアC(1)43に回転自在に支持されている。また、ショートピニオンギヤ42は、サンギヤS(D)41およびロングピニオンギヤ44と係合している。キャリアC(1)43は、出力ギヤ58に連結されている。
【0056】
ロングピニオンギヤ44は、キャリアC(2)45に回転自在に支持されている。ロングピニオンギヤ44は、ショートピニオンギヤ42、サンギヤS(S)46およびリングギヤR(1)(R(2))47と係合している。キャリアC(2)45は、出力ギヤ58に連結されている。
【0057】
サンギヤS(S)46は、C1クラッチ55を介して入力軸22に選択的に連結されている。リングギヤR(1)(R(2))47は、B2ブレーキ52により、ギヤケース59に選択的に固定されるとともに、C2クラッチ56により入力軸22に選択的に連結されている。また、リングギヤR(1)(R(2))47は、ワンウェイクラッチF57に連結されており、入力軸22の回転方向と反対の方向への回転が阻止されるようになっている。
【0058】
ここで、クラッチCおよびブレーキBは、入力軸22を中心とした円環状の油室を有しており、これらの油室には、後述する油圧制御装置60の制御状態に応じた油圧でオイルが充てんされるようになっている。例えば、C1クラッチ55においては、ECU100が油圧制御装置60を制御して油室内のオイルの油圧を所定の油圧まで増大させると、油室の容積の増大に伴って図示しないクラッチピストンが入力軸22に沿って移動させられることにより、複数の摩擦板がクラッチピストンによって押圧される。これにより、複数の摩擦板が互いに摩擦係合することにより、C1クラッチ55が係合状態となる。
【0059】
一方、ECU100が油圧制御装置60を制御して、油室内のオイルの油圧を所定の油圧まで低下させると、図示しないリターンスプリングの付勢力によってクラッチピストンが押し戻され、上記複数の摩擦板の押圧が解除される。これにより、C1クラッチ55は解放状態となる。また、クラッチピストンが押し戻されることにより、油室の容積が減少するので、油室からオイルが排出される。なお、C1クラッチ55以外の摩擦係合要素もC1クラッチ55と同様に係合状態と解放状態とを切り替えられるため、説明を省略する。
【0060】
ここで、図3を参照して、本発明の実施の形態に係る摩擦係合要素の作動状態を説明する。
図3において、「○」は係合状態を表している。「×」は解放状態を表している。「◎」はエンジンブレーキ時にのみ係合状態となることを表している。また、「△」は駆動時にのみ係合状態となることを表している。
【0061】
この作動表112に示された組み合わせに応じて、油圧制御装置60(図1参照)に設けられたリニアソレノイドバルブSL1〜SL5および図示しないトランスミッションソレノイドの励磁、非励磁によってクラッチCおよびブレーキBが作動させられることにより、複数のシフトレンジが選択的に形成されるようになっている。
【0062】
また、図3に示すように、シフトレンジがDレンジである場合には、自動変速機5は、変速線図に基づいてECU100によって制御されることにより、細分化された1st(1速)から6th(6速)の変速段のいずれかを形成するようになっている。
【0063】
本実施の形態においては、例えば、自動変速機5が4thを形成すると、C1クラッチ55およびC2クラッチ56が係合状態となる。この状態から、例えば運転者によるシフトレバー3(図1参照)の操作により3rdへのダウンシフトが指示されると、ECU100は、油圧制御装置60を制御して、C2クラッチ56を解放状態にするとともに、B3ブレーキ53を係合状態にする掴み替えを実行するようになっている。
【0064】
次に、図4を参照して、本実施の形態に係る油圧制御装置60の概略構成を説明する。
図4に示すように、油圧制御装置60は、エンジン11のクランクシャフト13と直接的または間接的に連結されたトロコイド式のオイルポンプ61と、リリーフ型の第1調圧バルブ62と、シフトセンサ88の検出結果に応じてECU100によって電気的に制御されるマニュアルバルブ63と、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5と、を有している。
【0065】
リニアソレノイドバルブSL1〜SL5は、C1クラッチ55、C2クラッチ56、B1ブレーキ51、B2ブレーキ52、B3ブレーキ53にそれぞれ対応するよう配設されている。また、オイルポンプ61と第1調圧バルブ62とマニュアルバルブ63とは、オイルパイプ64によって接続されている。さらに、マニュアルバルブ63と各リニアソレノイドバルブSL1〜SL5とは、オイルパイプ65によって接続されている。さらに、オイルパイプ64には、オイルの温度Toを検出するための油温センサ70が取り付けられている。
【0066】
オイルポンプ61から圧送されたオイルは、第1調圧バルブ62によってエンジン11の負荷等に応じて調圧され、第1ライン圧PL1となる。第1ライン圧PL1に油圧が調圧されたオイルは、オイルパイプ64を介してマニュアルバルブ63に供給される。ここで、シフトレバー3がDレンジに対応するポジションに位置する場合には、第1ライン圧PL1と等しい前進ポジション圧PDを有するオイルが、マニュアルバルブ63からリニアソレノイドバルブSL1〜SL5に、オイルパイプ65を介して供給されるようになっている。
【0067】
ECU100は、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5を、ソレノイド電流によって独立に制御することにより、油圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3を調節する。これにより、ECU100は、C1クラッチ55、C2クラッチ56、B1ブレーキ51、B2ブレーキ52、B3ブレーキ53の作動状態を係合状態または解放状態に切り替えるとともに、クラッチCおよびブレーキBに供給する油圧を調節するようになっている。
【0068】
ここで、ニュートラル制御(以下、「N制御」という)について説明する。
車両10の走行中の信号待ち等において、シフトレバー3が操作されたことによりDレンジが検出された状態で、かつブレーキペダルの踏込により車両10が停車した状態(以下、「Dレンジ停車」という)では、駆動輪が回転しないため、図示しないディファレンシャル機構を介して駆動輪と連結された出力ギヤ58(図2参照)も回転しない。よって、第1セット30および第2セット40(図2参照)を構成する複数のギヤは回転できない状態となっている。さらに、Dレンジ停車中は車速Vも略零であるために、図示しない変速線図に基づいて1stの変速段が形成されているので、C1クラッチ55が係合状態となっている(図3参照)。
【0069】
よって、C1クラッチ55を介して第1セット30および第2セット40と連結された入力軸22も回転できない状態であるため、タービン17も回転できない状態となっている。
一方、エンジン11が運転状態であるため、インペラ16は、クランクシャフト13によって伝達された動力により回転している。しかし、タービン17が回転できない状態であるので、インペラ16とタービン17との間のオイルの循環が正常になされず、インペラ16は、オイルによって回転に対する抵抗を受ける。
【0070】
このように、Dレンジ停車状態においては、インペラ16が抵抗を受けることから、クランクシャフト13を介してインペラ16と連結されたエンジン11の負荷が増大し、エンジン11の燃費が悪化することが考えられる。
【0071】
そのため、ECU100は、Dレンジ停車状態において、油圧制御装置60を制御することによりC1クラッチ55を解放状態にし、シフトレンジを実質的にNレンジに切り替えるN制御を行う。これにより、第1セット30および第2セット40の複数のギヤと入力軸22との間の動力伝達経路が解放状態となり、タービン17が回転可能となるので、インペラ16がオイルから受ける回転方向の抵抗が減少し、エンジン11の負荷が低減されるので、エンジン11の燃費の悪化が抑制される。
【0072】
なお、車両10が坂道等でDレンジ停車状態となると、N制御を行った場合に車両10が動き出す可能性があるため、ECU100は、ブレーキセンサ84の検出信号に基づいて、ブレーキペダルが所定量踏み込まれていると判断したことを条件に、N制御を行う。
【0073】
一方、Dレンジ停車状態において、N制御を終了して車両10を発進させる場合(以下、「N制御復帰時」という)には、ECU100は、油圧制御装置60を制御することによりC1クラッチ55を係合状態に切り替えて、Dレンジ(1st)を形成する。
【0074】
ここで、N制御復帰時において、C1クラッチ55を作動させるためのオイルにエアが混入していると、C1クラッチ55の係合時に所望の油圧応答性が得られず、車両10の発進時にショックが発生したり、発進にもたつき(ヘジテーション)が生ずる。これは、エアの圧縮率がオイルの圧縮率よりも大きいために、C1クラッチ55の油室に供給される油圧を増大する際、オイル中のエアの圧縮に油圧が消費されることに起因するものである。この結果、油圧応答性が悪くなり、C1クラッチ55を解放状態から係合状態にするために必要な時間が増加するので、ヘジテーションが発生する。また、C1クラッチ55を解放状態から係合状態にするために必要な時間が減少すると、C1クラッチ55が急激に係合してしまいショックが発生する。
なお、C1クラッチ55の係合の際には、完全な係合状態となるような値まで油圧を増大させるため、C1クラッチ55の係合状態における締結力は、混入エアの有無によっては変わらない。
【0075】
ここで、C1クラッチ55の油室およびオイルパイプ等へのエアの入り込み、およびエアの抜けについて説明する。
まず、Pレンジが検出され、エンジン11が停止した場合(以下、「休止状態」という)におけるC1クラッチ55の油室およびオイルパイプ等へのエアの入り込みについて説明する。
【0076】
車両10が休止状態となる場合には、エンジン11の停止に伴いオイルポンプ61(図4参照)が停止するので、第1ライン圧PL1が発生しなくなる。また、シフトセンサ88によってPレンジが検出されているので、これに伴いマニュアルバルブ63が作動して、オイルポンプ61から第1ライン圧PL1の供給を受けるポートと前進ポジション圧PDを供給するポートとの連通が遮断され、前進ポジション圧PDを供給するポートとドレンポートとが連通する。そのため、マニュアルバルブ63からリニアソレノイドバルブSL1までの油路内のオイルは、マニュアルバルブ63のドレンポートから排出される。また、リニアソレノイドバルブSL1は通電されていないと閉状態となるので、C1クラッチ55の油室とリニアソレノイドバルブSL1のドレンポートとが連通する。このとき、C1クラッチ55の油室の油圧が、リニアソレノイドバルブSL1のドレンポートを介して解放される。これに伴い、リターンスプリングの付勢力によりクラッチピストンが押し戻されてC1クラッチ55の油室の容積が減少させられるため、C1クラッチ55の油室およびオイルパイプ内のオイルは、リニアソレノイドバルブSL1のドレンポートから排出される。
【0077】
ここで、図示しないクラッチドラム、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5およびマニュアルバルブ63等の接合部には、製作誤差等に起因する間隙が存在するため、休止状態の時間の経過に伴い、上記間隙からオイルが抜け出るとともにエアが入り込む。なお、上記間隙は、温度変化や経年劣化に起因する部材の膨張および収縮等により変化するため、間隙の大きさに伴い、エアが入り込む量も変化する。
【0078】
図5を参照して、休止状態におけるC1クラッチ55の油室およびオイルパイプ等へのエア入り込み量AiEPの変化を説明する。
図5に示すように、休止状態の継続時間(以下、「休止継続時間tp」という)の経過とともにAiEPは増大する。また、図5(b)および図5(c)に示すようにオイルの温度Toが高い程、AiEPの増加速度が大きくなる。これは、オイルの温度Toの上昇に伴いオイルの動粘度が低下することから、間隙からオイルが抜けやすくなるとともにエアが入り込みやすくなるためである。
【0079】
しかし、AiEPは一定の値まで増加した後、それ以上は増加しない。これは、C1クラッチ55の油室およびオイルパイプ内部の圧力と、外部の圧力とが釣り合い、間隙におけるオイルの抜けおよびエアの入り込みが発生しなくなるためであると考えられる。
【0080】
図5に示すAiEPの時間変化をマップ化したものが、図6に示すAiEP推定マップ114である。
図6に示すように、AiEP推定マップ114は、休止継続時間tpおよびオイルの温度Toを入力値とし、AiEPを出力値とするものである。
【0081】
次に、C1クラッチ55の解放時におけるC1クラッチ55の油室およびオイルパイプ等からのエアの抜けについて説明する。
C1クラッチ55が係合状態となる4th(図3参照)で車両10が走行している場合、C1クラッチ55の油室にはオイルが充てんされ、C1クラッチ55の油室およびクラッチドラム等は入力軸22の回転に伴い回転している。ここで、オイルの比重はエアの比重に対して極めて大きいため、オイルは遠心力によって円環状の油室の外周方向に移動する。一方、オイルに混入しているエアは、オイルの移動に伴い油室の内周方向に移動させられる。
【0082】
変速段が4thから5thに切り替わるよう変速が行われた場合、C1クラッチ55は係合状態から解放状態に切り替わる(図3参照)。この場合、リニアソレノイドSL1はドレンポートを解放しオイルを排出するため、リニアソレノイドSL1からC1クラッチ55の油室までの油圧が低下する。よって、図示しないリターンスプリングの付勢力が油室の油圧より大きくなることによりクラッチピストンが押し戻されて油室の容積が減少するので、油室のオイルは、油室の内周付近に形成されたオイルポートから排出され、さらにリニアソレノイドSL1のドレンポートから排出される。
【0083】
上述したように、C1クラッチ55の油室において、エアは油室の内周方向に移動しているため、油室からオイルが排出される場合には、オイルよりもエアが優先的に排出され、リニアソレノイドバルブSL1のドレンポートから排出される。このようにして、C1クラッチ55の油室およびオイルパイプ内からのエアの抜けが行われる。
【0084】
ここで、図7を参照して、オイルの温度Toと、C1クラッチ55の解放時におけるC1クラッチ55の油室およびオイルパイプ等からのエア抜け量AoC1との関係を説明する。
図7に示すAoC1推定マップ116は、C1クラッチ55が係合状態から解放状態に切り替わった場合におけるオイルの温度Toを入力値とし、エア抜け量AoC1を出力値とするものである。
【0085】
上述したように、Toが高い程オイルの動粘度が小さくなる。そのため、C1クラッチ55の解放状態への切替時においては、Toが高い程オイルが油室から抜けやすくなるため、エア抜け量AoC1が増大することとなる。
【0086】
次に、Rレンジが検出された場合(以下、「後進状態」という)におけるC1クラッチ55の油室およびオイルパイプ等へのエアの入り込みについて説明する。
車両10が後進状態となる場合には、マニュアルバルブ63(図4参照)については、オイルポンプ61から第1ライン圧PL1の供給を受けるポートと、図示しない後進ポジション圧PRをリニアソレノイドバルブSL1〜SL5に供給するポートとが連通する。一方、前進ポジション圧PDを供給するポートと、ドレンポートとが連通するので、C1クラッチ55の油室およびこの油室に油圧を供給するオイルパイプ内のオイルは、マニュアルバルブ63のドレンポートから排出される。したがって、休止状態と同様に、時間の経過とともに上記間隙からエアが入り込む。
【0087】
ここで、図8を参照して、後進状態におけるC1クラッチ55の油室およびオイルパイプ等へのエア入り込み量AiRについて説明する。
図8に示すAiR推定マップ118は、後進走行レンジ継続時間trおよびオイルの温度Toを入力値とし、AiRを出力値とするものである。
なお、後進状態におけるC1クラッチ55およびオイルパイプ等へのエアの入り込みのメカニズムは、休止状態のものと同様であるため、説明を省略する。
【0088】
次に、本実施の形態に係る車両のニュートラル制御装置の特徴的な構成について説明する。
【0089】
ECU100および車速センサ80は、車両10の車速Vを協働して検出するようになっている。
したがって、ECU100および車速センサ80は、本発明に係る車速検出手段を構成している。
【0090】
ECU100およびシフトセンサ88は、自動変速機5の現在のシフトレンジを協働して検出するようになっている。
したがって、ECU100およびシフトセンサ88は、本発明に係るシフトレンジ検出手段を構成している。
【0091】
ECU100は、エンジン11の運転状態を判定するようになっている。具体的には、エンジン回転数センサ72の検出信号に基づいてECU100が算出したエンジン回転数NEが零または略零である場合には、エンジン11は停止状態(OFF)であると判定する。また、エンジン回転数センサ72の検出信号に基づいて算出したエンジン回転数NEが予めEEPROM103に記憶された運転回転数NEoよりも大きい場合には、エンジン11は運転状態(ON)であると判定する。
したがって、ECU100は、本発明に係る運転状態判定手段を構成している。
【0092】
ECU100は、駐車レンジ(Pレンジ)が検出されている状態で、エンジン11が停止したと判定してからエンジン11が始動したと判定するまでの休止継続時間tpを算出するようになっている。
具体的には、ECU100は、シフトセンサ88の検出信号に基づいて判定したシフトレンジがPレンジである状態において、エンジン回転数センサ72の検出信号に基づいてエンジン11がOFFであると判定した時刻を計時して休止状態の開始時刻tp1としてEEPROM103に記憶しておき、エンジン11がONであると判定した時刻を計時して休止状態の終了時刻tp2としてEEPROM103に記憶し、さらに、tp2からtp1を差し引くことにより、休止継続時間tpを算出する。
【0093】
また、ECU100は、後進走行レンジ(Rレンジ)が検出されてからその他のシフトレンジが検出されるまでの後進走行レンジ継続時間trを算出するようになっている。
具体的には、ECU100は、シフトセンサ88の検出信号に基づいて判定したシフトレンジがRレンジであると判定した時刻を計時して後進状態の開始時刻tr1としてEEPROM103に記憶しておき、シフトレンジがRレンジ以外のシフトレンジであると判定した時刻を計時して後進状態の終了時刻tr2としてEEPROM103に記憶し、さらに、tr2からtr1を差し引くことにより、後進走行レンジ継続時間trを算出する。
したがって、ECU100は、本発明に係る算出手段を構成している。
【0094】
ECU100は、複数の摩擦係合要素としてのC1クラッチ55、C2クラッチ56、B1ブレーキ51、B2ブレーキ52およびB3ブレーキ53のそれぞれの作動状態を判定するようになっている。
具体的には、ECU100は、シフトセンサ88によって検出した現在のシフトレンジ、手動変速モードにおいてシフトレバー3の変速操作により決定される変速段、または、自動変速モードにおいてEEPROM103に記憶された変速線図に基づいて決定した変速段に基づいて、EEPROM103に記憶された作動表112を参照することにより、各摩擦係合要素の作動状態を判定する。
【0095】
このとき、ECU100は、変速段が5th若しくは6thであるか、Nレンジが検出されている場合には、C1クラッチ55が解放状態であると判定する。一方、ECU100は、変速段が1stから4thのうちのいずれかである場合に、C1クラッチ55は係合状態であると判定する。
したがって、ECU100は、本発明に係る作動状態判定手段を構成している。
【0096】
ECU100は、上記複数の摩擦係合要素の作動状態に基づいて、N制御から復帰する際に係合する摩擦係合要素が係合状態から解放状態に切り替わった回数を判定するようになっている。
ここで、N制御復帰時には、ECU100はC1クラッチ55を係合状態にすることにより、シフトレンジをDレンジ(1st)に切り替える。そのため、N制御から復帰する際に係合する摩擦係合要素とは、C1クラッチ55を意味する(図3参照)。ECU100は、シフトセンサ88と協働して判定した各摩擦係合要素の作動状態、特に、C1クラッチ55の作動状態に基づいて、C1クラッチ55が係合状態から解放状態に切り替わった回数を判定する。
したがって、ECU100は、本発明に係る切替回数判定手段を構成している。
【0097】
ECU100および油温センサ70は、N制御から復帰する際に係合する摩擦係合要素を作動させるオイルの温度Toを協働して検出するようになっている。
具体的には、ECU100は、油温センサ70によって、油圧制御装置60のオイルパイプ64内のオイルの温度Toを直接検出することによって、C1クラッチ55を作動させるためのオイルの温度Toを検出するようになっている。
したがって、ECU100および油温センサ70は、本発明に係る温度検出手段を構成している。
なお、ECU100は、マニュアルバルブ63からC1クラッチ55の油室までのオイルパイプ内のオイルの温度Toを検出してもよく、外気温およびエンジン11の運転状態等からオイルの温度Toを推定してもよい。
【0098】
ECU100は、自動変速機5内の動力伝達経路を切り替える複数の摩擦係合要素のうちN制御から復帰する際に係合する摩擦係合要素を作動させるオイルのエア混入量を推定するようになっている。
具体的には、ECU100は、C1クラッチ55を作動させるオイルのエア混入量Aを推定するようになっている。すなわち、ECU100は、C1クラッチ55を係合させる際に油圧が増大するオイルのエア混入量Aを推定するようになっている。
【0099】
また、ECU100は、上記エア混入量Aの推定においては、算出した休止継続時間tpに応じて、C1クラッチ55を作動させるためのオイルへのエア混入量Aを推定するようになっている。
具体的には、ECU100は、休止状態が終了したと判定した場合に、算出した休止継続時間tpと、油温センサ70によって検出したオイルの温度Toと、に基づいて、AiEP推定マップ114(図6参照)を参照することにより、休止状態におけるC1クラッチ55の油室およびオイルパイプ等へのエア入り込み量AiEPを推定する。そして、ECU100は、推定したAiEPの量だけエア混入量Aを増大させることによりエア混入量Aを推定する。
【0100】
また、ECU100は、上記エア混入量Aの推定においては、C1クラッチ55の係合状態から解放状態への切替回数に応じてエア混入量Aを推定するようになっている。
具体的には、ECU100は、C1クラッチ55の作動状態が係合状態から解放状態に切り替えられたと判定した場合に、油温センサ70によって検出したオイルの温度Toに基づいて、AoC1推定マップ116を参照することにより、C1クラッチ55の係合状態から解放状態への1回の切替におけるC1クラッチ55の油室からのエア抜け量AoC1を推定し、推定したAoC1の、上記C1クラッチ55の切替回数分の量だけエア混入量Aを減少させることによりエア混入量Aを推定する。
【0101】
また、ECU100は、上記エア混入量Aの推定においては、算出した後進走行レンジ継続時間trに応じてエア混入量Aを推定する。
具体的には、ECU100は、Rレンジが検出された後進状態において、Rレンジ以外のシフトレンジが検出されたことにより後進状態が終了したと判定した場合に、算出した休止継続時間tpと、油温センサ70によって検出したオイルの温度Toと、に基づいて、AiR推定マップ118(図8参照)を算出することにより、後進状態が継続することによるC1クラッチ55の油室およびオイルパイプ等へのエア入り込み量AiRを推定する。そして、ECU100は、推定したAiRの量だけエア混入量Aを増大させることにより、エア混入量Aを推定する。
したがって、ECU100は、本発明に係る推定手段を構成している。
【0102】
ECU100は、前進走行レンジ(Dレンジ)が検出されている状態で、かつ車両10が停止状態であるときに、推定したエア混入量Aが予め定められた禁止閾値αよりも大きい場合には、N制御を禁止するようになっている。
したがって、ECU100は、本発明に係る禁止手段を構成している。
【0103】
ECU100は、推定したエア混入量Aが、予め定められた補正閾値βより大きく、かつ禁止閾値α以下である場合に、N制御から復帰する際に係合する摩擦係合要素を作動させる油圧(以下、「復帰時油圧Pr」という)を、エア混入量Aに応じて補正するようになっている。
具体的には、ECU100は、エア混入量Aと油圧補正値ΔP(A)との関係を表すΔP(A)算出マップ120を用いて算出したΔP(A)を、補正前の復帰時油圧Pr0に加算して、補正後の復帰時油圧Pr1とする。これにより、ECU100は、復帰時油圧Prを補正する。
すなわち、ECU100は、本発明に係る補正手段を構成している。
【0104】
ここで、図9を参照して、ΔP(A)算出マップ120について説明する。
図9に示すように、ΔP(A)算出マップ120は、エア混入量Aを入力値とし、ΔP(A)を出力値とするものである。図9に示すように、ΔP(A)は、エア混入量Aに比例して増大する。これは、エア混入量Aが多い程、C1クラッチ55の油室に供給する油圧を増大する際にオイル中のエアの圧縮に油圧が消費されてしまい、油圧応答性が悪くなるため、C1クラッチ55の油室に対して、より大きな油圧を供給する必要があるためである。
【0105】
なお、上述したAiEP推定マップ114(図6参照)、AoC1推定マップ116(図7参照)、AiR推定マップ118(図8参照)およびΔP(A)算出マップ120(図9参照)は、マニュアルバルブ63等の接合部の間隙の寸法、C1クラッチ55の油室の寸法、およびオイルパイプ65等の寸法等の車両10のハード諸元値に基づいて作成したものである。そのため、上記マップ114、116、118および120は、車種や自動変速機の型式によって異なるものである。
【0106】
また、上記マップ114、118および120は、クリアランスの大きな間隙等を選択して、油室およびオイルパイプ等へのエアの入り込み量、およびオイルへのエア混入量Aが大きく推定されるように作成したものである。そのため、油室およびオイルパイプ等へのエアの入り込み量、およびオイルへのエア混入量Aを安全側に評価することができ、N制御から復帰する際にC1クラッチ55に十分な復帰時油圧Pr1を供給して、C1クラッチ55を係合させることができるので、N制御からの復帰時におけるドライバビリティの悪化を確実に防止することができる。また、上記マップ116も、同様に、油室およびオイルパイプ等へのエアの入り込み量、およびオイルへのエア混入量Aを安全側に評価することができるよう作成されたものである。
【0107】
次に、動作について説明する。
まず、図10を参照して、エア混入量Aの推定処理のメインフローを説明する。
図10に示す処理は、RAM102を作業領域として、CPU101によって実行されるエア混入量の推定処理のメインフローに係るプログラムの実行内容を表す。また、このエア混入量Aの推定処理は、CPU101によって、少なくともアクセサリー電源が確保されている条件において、予め定められた時間間隔で実行されるようになっている。
【0108】
図10に示すように、まず、CPU101は、AiEPを推定する(ステップS10)。次に、CPU101は、AoC1を推定する(ステップS30)。また、CPU101は、AiRを推定する(ステップS50)。さらに、CPU101は、推定したAiEP、AoC1およびAiRに基づいて、エア混入量Aを推定し(ステップS70)、本処理を終了する。ここで、AiEPの推定処理(ステップS10)の後にAoC1の推定処理(ステップS30)を実行し、その後AiRの推定処理(ステップS50)を実行するとして説明したが、これらの処理の順序はこの順序に限られない。
【0109】
次に、図11を参照して、AiEPの推定処理のサブルーチンを説明する。
図11に示すように、まず、CPU101は、エンジン回転数センサ72の検出信号に基づいてエンジン11がOFFであるか否かを判定する(ステップS11)。CPU101は、エンジン11がOFFであると判定すると(ステップS11でYES)、シフトセンサ88(図1参照)の検出信号に基づいて、Pレンジが検出されているか否かを判定する(ステップS12)。一方、CPU101は、エンジン11がONであると判定すると(ステップS11でNO)、AiEP推定用フラグFEPを「0」にする(ステップS17)。
【0110】
CPU101は、Pレンジが検出されていると判定すると(ステップS12でYES)、AiEP推定用フラグFEPを「1」にした後(ステップS13)、前回のAiEP推定サブルーチンの実行時におけるAiEP推定用フラグFEPを表すAiEP推定用前回フラグFEPBが「0」であるか否かを判定する(ステップS14)。一方、CPU101は、Pレンジ以外のシフトレンジが検出されていると判定すると(ステップS12でNO)、AiEP推定用フラグFEPを「0」にする(ステップS17)。
【0111】
CPU101は、AiEP推定用前回フラグFEPBが「0」であると判定した場合には(ステップS14でYES)、前回のAiEP推定サブルーチンの実行時には、エンジン11がOFFかつPレンジが検出されているという条件が成立せずに(ステップS11またはステップS12でNO)休止状態とはなっておらず、今回のAiEP推定サブルーチンの実行時にはエンジン11がOFF(ステップ11でYES)かつPレンジが検出されており(ステップS12でYES)休止状態となっているため、休止状態が開始したと判断し、現在時刻を計時して休止状態の開始時刻tp1としてEEPROM103(図1参照)に記憶する(ステップS15)。
【0112】
CPU101は、開始時刻tp1を記憶した後(ステップS15)、AiEP推定用フラグFEPを、AiEP推定用前回フラグFEPBに置き換えて(ステップS16)、本処理を終了する。
【0113】
CPU101は、AiEP推定用前回フラグFEPBが「0」ではない、すなわち「1」であると判定した場合には(ステップS14でNO)、前回のAiEP推定サブルーチンの実行時から、休止状態が継続して成立しているとして、開始時刻tp1の記憶処理(ステップS15)を実行せず、AiEP推定用フラグFEPをAiEP推定用前回フラグFEPBに置き換え(ステップS16)、本処理を終了する。
ここで、CPU101は、「1」であるAiEP推定用フラグFEPをAiEP推定用前回フラグFEPBに置き換えたので(ステップS16)、次回のAiEP推定サブルーチンの実行時には、ステップS14および後述するステップS18においてAiEP推定用前回フラグFEPBを「1」として判定する。
【0114】
一方、CPU101は、AiEP推定用フラグFEPを「0」にした後(ステップS17)、AiEP推定用前回フラグFEPBが「1」であるか否かを判定する(ステップS18)。
【0115】
CPU101は、AiEP推定用前回フラグFEPBが「1」であると判定した場合には(ステップS18でYES)、前回のAiEP推定サブルーチンの実行時には、エンジン11がOFFかつPレンジが検出されているという条件が成立し(ステップS11およびS12でYES)休止状態であったが、今回のAiEP推定サブルーチンの実行時には、休止状態とはなっていないため(ステップS11またはステップS12でNO)、休止状態が終了したと判断し、現在時刻を計時して休止状態の終了時刻tp2としてRAM102に記憶する(ステップS19)。
【0116】
次に、CPU101は、休止状態の終了時刻tp2から、休止状態の開始時刻tp1を差し引くことにより、休止継続時間tpを算出する(ステップS20)。また、CPU101は、油温センサ70(図4参照)によって、油圧制御装置60におけるオイルの温度Toを検出する(ステップS21)。
【0117】
CPU101は、算出した休止継続時間tpと、検出したオイルの温度Toと、に基づいて、EEPROM103に記憶されたAiEP推定マップ114(図6参照)を参照してAiEPを推定する(ステップS22)。そして、CPU101は、AiEP推定用フラグFEPをAiEP推定用前回フラグFEPBに置き換えて(ステップS16)、本処理を終了する。
【0118】
一方、CPU101は、AiEP推定用前回フラグFEPBが「0」であると判定した場合には(ステップS18でNO)、前回および今回のAiEP推定サブルーチンの実行時に、休止状態が成立していないため(ステップS11またはステップS12でNO)、AiEPの推定処理(ステップS19からステップS22)を実行せず、AiEP推定用フラグFEPをAiEP推定用前回フラグFEPBに置き換えて(ステップS16)、本処理を終了する。
ここで、CPU101は、「0」であるAiEP推定用フラグFEPをAiEP推定用前回フラグFEPBに置き換えたので(ステップS16)、次回のAiEP推定サブルーチンの実行時には、ステップS14およびステップS18においてAiEP推定用前回フラグFEPBを「0」として判定する。
【0119】
次に、図12を参照して、AoC1の推定処理のサブルーチンを説明する。
図12に示すように、まず、CPU101は、シフトセンサ88(図1参照)の検出信号に基づいてC1クラッチ55(図4参照)が解放状態であるか否かを判定する(ステップS31)。
【0120】
CPU101は、C1クラッチ55が解放状態であると判定した場合には(ステップS31でYES)、AoC1推定用フラグFCを「1」にし(ステップS32)、C1クラッチ55が係合状態であると判定した場合には(ステップS31でNO)、AoC1推定用フラグFCを「0」にする(ステップS37)。
【0121】
CPU101は、AoC1推定用フラグFCを「1」にした後(ステップS32)、前回のAoC1推定サブルーチンの実行時におけるAoC1推定用フラグFCを表すAoC1推定用前回フラグFCBが「0」であるか否か判定する(ステップS33)。
【0122】
CPU101は、AoC1推定用前回フラグFCBが「0」であると判定した場合には(ステップS33でYES)、油温センサ70(図4参照)によって、油圧制御装置60におけるオイルの温度Toを検出する(ステップS34)。そして、CPU101は、検出したオイルの温度Toに基づいて、AoC1推定マップ116(図7参照)を参照することにより、AoC1を推定する(ステップS35)。
【0123】
CPU101は、AoC1を推定した後(ステップS35)、AoC1推定用フラグFCをAoC1推定用前回フラグFCBに置き換えて(ステップS36)、本処理を終了する。また、CPU101は、AoC1推定用前回フラグFCBが「1」であると判定した場合には(ステップS33でNO)、前回のAoC1推定サブルーチンの実行時からC1クラッチ55の解放状態が継続しているため(ステップS31でYES)、AoC1の推定処理(ステップS34およびステップS35)は行わず、AoC1推定用フラグFCをAoC1推定用前回フラグFCBに置き換え(ステップS36)、本処理を終了する。
ここで、CPU101は、「1」であるAoC1推定用フラグFCをAoC1推定用前回フラグFCBに置き換えたので、次回のAoC1推定サブルーチンの実行時には、ステップS33においてAoC1推定用前回フラグFCBを「1」として判定する。
【0124】
一方、CPU101は、AoC1推定用フラグFCを「0」にした後(ステップS37)、AoC1推定用フラグFCをAoC1推定用前回フラグFCBに置き換え(ステップS36)、本処理を終了する。
ここで、CPU101は、「0」であるAoC1推定用フラグFCをAoC1推定用前回フラグFCBに置き換えたので、次回のAoC1推定サブルーチンの実行時には、ステップS33においてAoC1推定用前回フラグFCBを「0」として判定する。
【0125】
次に、図13を参照して、AiRの推定処理のサブルーチンを説明する。
図13に示すように、まず、CPU101は、シフトセンサ88(図1参照)の検出信号に基づいて、Rレンジが検出されているか否かを判定する(ステップS51)。CPU101は、Rレンジが検出されていると判定した場合には(ステップS51でYES)、AiR推定用フラグFRを「1」にする(ステップS52)。一方、CPU101は、Rレンジ以外のシフトレンジが検出されていると判定した場合には(ステップS51でNO)、AiR推定用フラグFRを「0」にする(ステップS56)。
【0126】
CPU101は、AiR推定用フラグFRを「1」にした後(ステップS52)、前回のAiR推定サブルーチンの実行時におけるAiR推定用フラグFRを表すAiR推定用前回フラグFRBが「0」であるか否かを判定する(ステップS53)。CPU101は、AiR推定用前回フラグFRBが「0」であると判定した場合には(ステップS53でYES)、前回のAiR推定サブルーチンの実行時にはRレンジ以外のシフトレンジが検出されており(ステップS51でNO)、一方、今回のAiR推定サブルーチンの実行時にはRレンジが検出されていることから(ステップS51でYES)、後進状態が開始したと判断し、現在時刻を計時して後進状態の開始時刻tr1としてRAM102に記憶する(ステップS54)。
【0127】
CPU101は、開始時刻tr1をRAM102に記憶した後(ステップS54)、AiR推定用フラグFRをAiR推定用前回フラグFRBに置き換えて(ステップS55)、本処理を終了する。また、CPU101は、AiR推定用前回フラグFRBが「1」であると判定した場合には(ステップS53でNO)、前回のAiR推定サブルーチンの実行時から後進状態が継続しているとして、開始時刻tr1の記憶処理(ステップS54)を行わずに、AiR推定用フラグFRをAiR推定用前回フラグFRBに置き換えて(ステップS55)、本処理を終了する。
ここで、CPU101は、「1」であるAiR推定用フラグFRをAiR推定用前回フラグFRBに置き換えたので(ステップS55)、次回のAiR推定サブルーチンの実行時には、ステップS53および後述するステップS57においてAiR推定用前回フラグFRBを「1」として判定する。
【0128】
一方、CPU101は、AiR推定用フラグFRを「0」にした後(ステップS56)、AiR推定用前回フラグFRBが「1」であるか否かを判定する(ステップS57)。
【0129】
CPU101は、AiR推定用前回フラグFRBが「1」であると判定した場合には(ステップS57でYES)、前回のAiR推定サブルーチンの実行時にはRレンジが検出されており(ステップS51でYES)、今回のAiR推定サブルーチンの実行時にはRレンジ以外のシフトレンジが検出されていることから(ステップS51でNO)、後進状態が終了したと判断し、現在時刻を計時して後進状態の終了時刻tr2としてRAM102に記憶する(ステップS58)。
【0130】
CPU101は、後進状態の終了時刻tr2から、後進状態の開始時刻tr1を差し引くことによって、後進走行レンジ継続時間trを算出する(ステップS59)。また、CPU101は、油温センサ70によって、油圧制御装置60におけるオイルの温度Toを検出する(ステップS60)。
【0131】
CPU101は、算出した後進走行レンジ継続時間trと、検出したオイルの温度Toと、に基づいて、AiR推定マップ118(図8参照)を参照することにより、AiRを推定する(ステップS61)。そして、CPU101は、AiR推定用フラグFRをAiR推定用前回フラグFRBに置き換え(ステップS55)、本処理を終了する。
【0132】
また、CPU101は、AiR推定用前回フラグFRBが「0」であると判定した場合には(ステップS57でNO)、前回および今回のAiR推定サブルーチンの実行時に、後進状態が成立していないとして、AiRの推定処理(ステップS58からステップS61)を実行せず、AiR推定用フラグFRをAiR推定用前回フラグFRBに置き換え(ステップS55)、本処理を終了する。
ここで、CPU101は、「0」であるAiR推定用フラグFRをAiR推定用前回フラグFRBに置き換えたので(ステップS55)、次回のAiR推定サブルーチンの実行時には、ステップS53およびステップS57においてAiR推定用前回フラグFRBを「0」として判定する。
【0133】
次に、図14を参照して、エア混入量Aの推定処理のサブルーチンを説明する。
図14に示すように、まず、CPU101は、AiEP(図11参照)と、AoC1(図12参照)と、AiR(図13参照)と、に基づいて、エア混入量Aを推定する(ステップS71)。
【0134】
具体的には、CPU101は、前回のエア混入量Aの推定サブルーチンにおいて推定した前回エア混入量ABに対し、AiEPおよびAiRを加算するとともにAoC1を減算し、この値をエア混入量Aに置き換えることにより、エア混入量Aを推定する(ステップS71)。
【0135】
CPU101は、次に、AiEP、AoC1およびAiRの値を「0」にする(ステップS72)。さらに、CPU101は、推定したエア混入量Aを前回エア混入量ABに置き換えて(ステップS73)、本処理を終了する。
【0136】
このように、エア混入量Aは、AiEPおよびAiRが加算されることにより増大し、AoC1が減算されることにより減少する。そして、車両10が休止状態となっても、その時点までに推定されたエア混入量Aは前回エア混入量ABとしてEEPROM103に記憶されており、休止状態が解除された場合にはAiEPが推定されるので(図11参照)、記憶された前回エア混入量ABに、推定されたAiEPが加算される。この繰り返しによって、休止継続時間tp、C1クラッチ55の切替回数および後進走行レンジ継続時間trが考慮された適切なエア混入量Aが推定される。
【0137】
次に、図15を参照して、本発明の実施の形態に係る車両のニュートラル制御処理を説明する。
図15に示すように、CPU101は、まず、車両10がDレンジ停車状態であるか否かを判定する(ステップS91)。具体的には、CPU101は、シフトセンサ88の検出信号に基づいて、Dレンジが検出されていると判定し、かつ、車速センサ80の検出信号に基づいて車両10が停車していると判定した場合には、車両10はDレンジ停車状態であると判定する。このとき、CPU101は、車速センサ80の検出信号に基づいて算出した車速Vが零または略零である場合に、車両10が停車していると判定する。
【0138】
CPU101は、Dレンジ停車状態ではないと判定した場合には(ステップS91でNO)、N制御を行う必要はないと判断し、本処理を終了する。
【0139】
CPU101は、Dレンジ停車状態であると判定した場合には(ステップS91でYES)、推定したエア混入量A(図14参照)が、予めEEPROM103に記憶された禁止閾値αよりも大きいか否か判定する(ステップS92)。CPU101は、エア混入量Aが、禁止閾値αよりも大きいと判定した場合には(ステップS92でYES)、エア混入量Aに応じてN制御からの復帰時油圧Prを補正することによっても、N制御からの復帰時にドライバビリティが悪化してしまうと判断して、N制御の実行を禁止する(ステップS93)。
【0140】
一方、CPU101は、エア混入量Aが禁止閾値α以下であると判定した場合には(ステップS92でNO)、エア混入量Aが、予めEEPROM103に記憶された補正閾値βよりも大きいか否かを判定する(ステップS94)。CPU101は、エア混入量Aが補正閾値βよりも大きいと判定した場合には(ステップS94でYES)、エア混入量Aに応じてN制御からの復帰時油圧Prを補正しなければ、N制御からの復帰時にドライバビリティが悪化してしまうと判断し、復帰時油圧Prを補正する。
【0141】
具体的には、CPU101は、推定したエア混入量Aに基づいて、ΔP(A)算出マップ120(図9参照)を参照することにより、復帰時油圧Prを補正するための油圧補正値ΔP(A)を算出する(ステップS95)。次に、CPU101は、算出した油圧補正値ΔP(A)を補正前の復帰時油圧Pr0に加算した値を、補正後の復帰時油圧Pr1に置き換え(ステップS96)、さらに油圧補正値ΔP(A)を「0」にする(ステップS97)。
【0142】
CPU101は、次に、N制御の実行を許可する(ステップS98)。これにより、N制御からの復帰時において、C1クラッチ55(図4参照)が補正後の復帰時油圧Pr1で係合させられることにより、油圧応答性を損なわずにDレンジ(1st)が形成される。
【0143】
一方、CPU101は、推定したエア混入量Aが、補正閾値β以下であると判定した場合には(ステップS94でNO)、復帰時油圧Prを補正しなくても、N制御からの復帰時にドライバビリティは悪化することはないと判断し、N制御の実行を許可する(ステップS98)。この場合は、N制御からの復帰時において、C1クラッチ55が補正前の復帰時油圧Pr0で係合させられることにより、Dレンジ(1st)が形成される。
【0144】
以上のように、本実施の形態に係る車両のニュートラル制御装置は、N制御から復帰する際に係合する摩擦係合要素としてのC1クラッチ55を作動させるオイルのエア混入量Aに基づいて、N制御を禁止することができるので、C1クラッチ55を作動させるオイルへのエア混入量Aが多いことに起因したC1クラッチ55の油圧応答性が不安定な状態でN制御から復帰することを防止することができる。このため、N制御を好適に実行してN制御復帰時におけるドライバビリティの悪化を防止することができる。
【0145】
また、本実施の形態に係る車両のニュートラル制御装置は、推定したエア混入量Aが補正閾値βよりも大きく、かつ禁止閾値α以下である場合に、推定したエア混入量Aに応じて復帰時油圧Prを補正することができるので、ドライバビリティの悪化を防止することができる。
【0146】
また、本実施の形態に係る車両のニュートラル制御装置は、算出した休止継続時間tpに応じて、エア混入量Aを推定するので、C1クラッチ55の油室へのオイルの供給が停止し油室内のオイルの減少に伴って外部から油室内等に入り込むエアの量を考慮して、C1クラッチ55を作動させるオイルへのエア混入量Aを推定することができ、エア混入量Aの推定の精度を向上させて、より効果的にN制御を実行することができる。
【0147】
また、本実施の形態に係る車両のニュートラル制御装置は、N制御から復帰する際に係合するC1クラッチ55が係合状態から解放状態に切り替わった回数に応じてエア混入量Aを推定するので、C1クラッチ55が係合状態から解放状態となる際に、C1クラッチ55の油室からオイルとともに抜けるエアの量を考慮して、油室内等におけるオイルへのエア混入量Aを推定することができる。そのため、例えば車両10の走行中にC1クラッチ55が係合状態から解放状態となる変速が複数回行われた場合であっても、C1クラッチ55の油室内等におけるオイルへのエア混入量Aを正確に推定することができる。これにより、エア混入量Aの推定の精度を向上させて、より効果的にN制御を実行することができる。
【0148】
また、本実施の形態に係る車両のニュートラル制御装置は、算出した後進走行レンジ継続時間trに応じてエア混入量Aを推定するので、C1クラッチ55の油室へのオイルの供給が停止し油室内のオイルの減少に伴って外部から油室内等に入り込むエアの量を考慮して、C1クラッチ55を作動させるオイルへのエア混入量Aを推定することができる。そのため、車両10の運転中にRレンジが検出されても、エア混入量Aの推定精度を向上させて、より効果的にN制御を行うことができる。
【0149】
さらに、本実施の形態に係る車両のニュートラル制御装置は、オイルの温度Toに応じてエア混入量Aを推定するので、C1クラッチ55の油室に供給されるオイルの温度Toに依存するオイルの粘度の変化を考慮して、エア混入量Aを推定することができる。すなわち、オイルの粘度の変化に伴い変動する油室からのエアの抜けやすさ、または油室へのエアの入り込みやすさを考慮して、エア混入量Aを推定することができる。そのため外気温やエンジン11の温度等の変化に伴ってオイルの温度Toが変化しても、オイルの温度Toに応じたエア混入量Aを推定することができるので、温度に依らずに効果的にN制御を行うことができる。
【0150】
なお、上述した本発明に係る実施の形態においては、C1クラッチ55を作動させるオイルへのエア混入量Aを推定し、推定したエア混入量Aに基づいて復帰時油圧Prを補正するものとして説明したが、型式の異なる自動変速機を用いる場合には、C1クラッチ55に限らず、N制御からの復帰時におけるドライバビリティに影響を与える摩擦係合要素を作動させるオイルへのエア混入量の推定に、本発明を適用することができる。
また、N制御からの復帰時におけるドライバビリティに影響を与える摩擦係合要素は1つに限られず、複数個存在することも考えられる。
【0151】
また、上述した本発明に係る実施の形態においては、1つのECUを有するものとして説明したが、これに限らず、複数のECUによって構成されるものであってもよい。例えば、エンジン11の燃焼制御を実行するE−ECU、自動変速機5の変速制御を実行するT−ECU等の複数のECUによって、本実施の形態のECU100が構成されるものであってもよい。この場合、各ECUは、必要な情報を相互に入出力する。
【0152】
以上に説明したように、本発明に係る車両のニュートラル制御装置は、発進クラッチの油室内における推定したエア混入量に基づいて、ニュートラル制御を好適に実行することにより、ニュートラル制御からの復帰時におけるドライバビリティを向上することができ、自動変速機内の動力伝達経路を解放状態とするニュートラル制御を実行するニュートラル制御装置に有用である。
【符号の説明】
【0153】
5 自動変速機
10 車両
11 エンジン
15 トルクコンバータ
20 変速機構
51 B1ブレーキ
52 B2ブレーキ
53 B3ブレーキ
55 C1クラッチ
56 C2クラッチ
60 油圧制御装置
63 マニュアルバルブ
70 油温センサ(温度検出手段)
72 エンジン回転数センサ
74 吸入空気量センサ
76 吸入空気温度センサ
78 スロットルセンサ
80 車速センサ(車速検出手段)
82 冷却水温センサ
84 ブレーキセンサ
86 タービン回転数センサ
88 シフトセンサ(シフトレンジ検出手段)
100 ECU(車速検出手段、シフトレンジ検出手段、推定手段、禁止手段、補正手段、運転状態判定手段、算出手段、作動状態判定手段、切替回数判定手段、温度検出手段)
101 CPU
102 RAM
103 EEPROM
112 作動表
114 AiEP推定マップ
116 AoC1推定マップ
118 AiR推定マップ
120 ΔP(A)算出マップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の回転を変速して駆動輪へ伝達するための自動変速機を有する車両において、前進走行レンジが検出され、かつ制動力の付与により車両が停止状態である場合に、前記自動変速機内の動力伝達経路を解放状態とするニュートラル制御を実行する車両のニュートラル制御装置であって、
前記車両の速度を検出する車速検出手段と、
前記自動変速機の現在のシフトレンジを検出するシフトレンジ検出手段と、
前記動力伝達経路を切り替える複数の摩擦係合要素のうち前記ニュートラル制御から復帰する際に係合する摩擦係合要素を作動させるオイルのエア混入量を推定する推定手段と、
前記前進走行レンジが検出されている状態で、かつ車両が停止状態であるときに、前記推定手段によって推定された前記エア混入量が予め定められた禁止閾値よりも大きい場合には、前記ニュートラル制御を禁止する禁止手段と、を備えたことを特徴とする車両のニュートラル制御装置。
【請求項2】
前記推定手段によって推定された前記エア混入量が、予め定められた補正閾値より大きく、かつ前記禁止閾値以下である場合に、前記ニュートラル制御から復帰する際に係合する摩擦係合要素を作動させる油圧を、前記エア混入量に応じて補正する補正手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の車両のニュートラル制御装置。
【請求項3】
前記内燃機関の運転状態を判定する運転状態判定手段と、
駐車レンジが検出されている状態で、前記運転状態判定手段によって前記内燃機関が停止したと判定されてから前記内燃機関が始動したと判定されるまでの休止継続時間を算出する算出手段と、を備え、
前記推定手段は、前記算出手段によって算出された前記休止継続時間に応じて、前記エア混入量を推定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両のニュートラル制御装置。
【請求項4】
前記複数の摩擦係合要素の作動状態を判定する作動状態判定手段と、
前記作動状態判定手段によって判定された前記作動状態に基づいて、前記ニュートラル制御から復帰する際に係合する摩擦係合要素が係合状態から解放状態に切り替わった回数を判定する切替回数判定手段と、を備え、
前記推定手段は、前記切替回数判定手段によって判定された回数に応じて前記エア混入量を推定することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1の請求項に記載の車両のニュートラル制御装置。
【請求項5】
前記算出手段は、後進走行レンジが検出されてからその他のシフトレンジが検出されるまでの後進走行レンジ継続時間を算出し、
前記推定手段は、前記後進走行レンジ継続時間に応じて前記エア混入量を推定することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1の請求項に記載の車両のニュートラル制御装置。
【請求項6】
前記オイルの温度を検出する温度検出手段を備え、
前記推定手段は、前記温度検出手段によって検出された前記オイルの温度に応じて前記エア混入量を推定することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1の請求項に記載の車両のニュートラル制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2010−185488(P2010−185488A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28870(P2009−28870)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】