説明

車両のバッテリ冷却構造

【課題】冷却ダクトを既存の部品を利用して保護することによって部品点数の削減とコストダウンを図ることができる車両のバッテリ冷却構造を提供すること。
【解決手段】車両のシート4下方のフロアパネル3上に配設されるバッテリ6の冷却構造として、前記フロアパネル3のシート4下方の部位に基本面より下方に膨出する凹部3Aを形成し、該凹部3Aに前記バッテリ6を配置するとともに、該バッテリ6の車両前方且つシート4下方に電動ファン7を配設し、該電動ファン7から延びる冷却ダクト8を前記フロアパネル3を貫通して該フロアパネル3とフロアサイドメンバ9とで形成される閉断面空間S内に通し、その端部を前記バッテリ6に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車やハイブリッド車等のシート下方のフロアパネル上に配設されるバッテリの冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動モータのみを駆動源とする電気自動車(EV)や電動モータとガソリンエンジン等を駆動源とするハイブリッド車(HEV)においては、電動モータに電力を供給するバッテリの搭載が必須となる。ここで、バッテリとしては繰り返し充放電が可能なニッカド電池(Ni−Cd電池)やニッケル水素電池等の二次電池が使用されるが、このバッテリは充放電中に発熱する。
【0003】
ところで、バッテリは密閉されたバッテリケース内に電池セルを収容して構成されているため、これが発熱するとその温度はかなりの高温になる。そして、バッテリが高温(例えば50℃以上)になると、その性能が低下するばかりか、寿命が著しく低下するため、これを冷却する必要がある。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、車両のシート下方のフロアパネル上にバッテリを配設し、バッテリに設けられた電動ファンによってバッテリ内に冷却風を送ってバッテリを冷却する冷却構造が開示されており、バッテリ周りに配索されるワイヤーハーネスや冷却ダクトを保護部材によって保護する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−280036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1において提案された冷却構造では、冷却ダクト等を保護するための保護部材が別途必要となるため、部品点数が増加し、コストアップを招くという問題がある。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、冷却ダクトを既存の部品を利用して保護することによって部品点数の削減とコストダウンを図ることができる車両のバッテリ冷却構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、車両のシート下方のフロアパネル上に配設されるバッテリの冷却構造として、前記フロアパネルのシート下方の部位に基本面より下方に膨出する凹部を形成し、該凹部に前記バッテリを配置するとともに、該バッテリの車両前方且つシート下方に電動ファンを配設し、該電動ファンから延びる冷却ダクトを前記フロアパネルを貫通して該フロアパネルとフロアサイドメンバとで形成される閉断面空間内に通し、その端部を前記バッテリに接続したことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記冷却ダクトを、前記電動ファンから垂直下方に延びて前記フロアパネルを貫通する垂直部と、前記バッテリの前端面から車両前方に向かって前記閉断面空間内へと水平に延びる水平部とで構成し、これらの垂直部と水平部の各端部同士を前記閉断面空間内で接続することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記フロアパネル上の車両前後方向において前記電動ファンと前記バッテリとの間に車幅方向に配設されたクロスメンバを避けて前記冷却ダクトを配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、電動ファンから延びる冷却ダクトをフロアパネルを貫通して該フロアパネルとフロアサイドメンバとで形成される閉断面空間内に通すようにしたため、冷却ダクトは既存のフロアサイドメンバによって保護される。このため、冷却ダクトを保護するための専用の保護部材が不要となり、部品点数の削減とコストダウンを図ることができる。又、フロアパネルの冷却ダクトが貫通する部分はフロアサイドメンバによって覆われて外部に露出することがないため、貫通部分の防水処理等が不要となり、組付工数が削減されて更なるコストダウンが図られる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、冷却ダクトを垂直部と水平部とで構成し、両者の各端部同士をフロアパネルとフロアサイドメンバとで形成される閉断面空間内で接続するようにしたため、フロアサイドメンバを開放させるための加工を要することなく冷却ダクトを容易に組み付けることができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、フロアパネル上の車両前後方向において電動ファンとバッテリとの間に車幅方向に配設されたクロスメンバを避けて冷却ダクトを配置するようにしたため、シートの取り付けに冷却ダクトが邪魔にならず、シートを作業性良くフロアパネル上に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るバッテリ冷却構造を備える車両の概略側面図である。
【図2】本発明に係るバッテリ冷却構造を備える車両のバッテリ搭載部分の側面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】本発明に係るバッテリ冷却構造における冷却ダクト部分の斜視図である。
【図5】本発明に係るバッテリ冷却構造における冷却ダクトの組付要領を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は本発明に係るバッテリ冷却構造を備える車両の概略側面図、図2は同車両のバッテリ搭載部分の側面図、図3は図2のA−A線断面図、図4は同車両の冷却ダクト部分の斜視図、図5は冷却ダクトの組付要領を示す説明図である。
【0017】
図1に示す車両1は、電気自動車(EV)であって、不図示の電動モータを駆動源として走行するものである。この車両1の車室2の底部を構成するフロアパネル3上の車両前後には前部シート4と後部シート5が適当な間隔を隔てて配設されている。
【0018】
ところで、前部シート4は左右一対設けられており(図1及び図2には1つのみ図示)、これらの前部シート4の下方のフロアパネル3上には左右一対のバッテリ6(図1及び図2には1つのみ図示)が配設されており、これらのバッテリ6から不図示の電動モータに電力が供給されて該電動モータが回転駆動される。尚、バッテリ6としては繰り返し充放電が可能なニッカド電池(Ni−Cd電池)やニッケル水素電池等の二次電池が使用される。
【0019】
ここで、図2に詳細に示すように、フロアパネル3の各前部シート4下方の部位には基本面より下方に膨出する凹部3Aがそれぞれ形成されており、各凹部3Aに前記バッテリ6が配置されている。
【0020】
又、各バッテリ6の車両前方且つ各前部シート4の下方には電動ファン7が配設されており、該電動ファン7から下方に延びる丸パイプ状の冷却ダクト8は、図2、図4及び図5に示すように、フロアパネル3に形成された円孔状の貫通孔3aを貫通して該フロアパネル3とフロアサイドメンバ9とで形成される閉断面空間S内に通されている。そして、この冷却ダクト8は、閉断面空間S内で直角に折り曲げられて車両後方に向かって略水平に延び、フロアパネル3の斜面部3Bに形成された貫通孔3bを貫通し、その後端はバッテリ6の前端面に接続されて該バッテリ6内に開口している。尚、フロアサイドメンバ9は、図3に示すように、上方が開放されたチャンネル部材であって、フロアパネル3の下面の左右に車両前後方向に沿って平行に結着されており、フロアパネル3との間に横断面逆台形状の閉断面空間Sを形成している。又、図2に示すように、前部シート4の下方に配された電動ファン7や冷却ダクト8等はカバー10によって覆われている。
【0021】
ここで、本実施の形態では、図2及び図4に示すように、フロアパネル3上の車両前後方向において電動ファン7とバッテリ6との間にはクロスメンバ11が車幅方向に配設されているが、冷却ダクト8はクロスメンバ11を避けて配置されている。
【0022】
ところで、冷却ダクト8は、図5に示すように、前記電動ファン7から垂直下方に延びてフロアパネル3を貫通する垂直部8Aと、バッテリ6の前端面から車両前方に向かって閉断面空間S内へと水平に延びる水平部8Bとで構成されており、これらの垂直部8Aと水平部8Bの各端部同士を閉断面空間S内で接続することによって冷却ダクト8が組み付けられる。
【0023】
即ち、バッテリ6の前端面に予め水平に取り付けられている水平部8Bをフロアパネル3の斜面部3Bに形成された貫通孔3bを通して閉断面空間S内に臨ませる。尚、図5に示すように、冷却ダクト8の水平部8Bの先端部には垂直上方に向かって直角に折り曲げられた高さの低い接続部8aが形成されており、この接続部8aの端面は上方に向かって開口している。
【0024】
次に、電動ファン7の下面に予め垂直に取り付けられている垂直部8Aを電動ファン7と共に下降させ、これをフロアパネル3に形成された貫通孔3aに通して閉断面空間Sに臨ませ、その端部を水平部8Bの前端に形成された接続部8aに上から重ねて接続することによって、冷却ダクト8が図5に示すように組み付けられる。
【0025】
而して、バッテリ6は充放電中は発熱するが、本実施の形態ではバッテリ6の充放電中は電動ファン7が駆動され、車室2内の空気が冷却ダクト8を通って各バッテリ6の内部へと導入され、この空気によってバッテリ6が冷却される。この結果、バッテリ6の温度上昇が抑えられ、該バッテリ6の性能と寿命の低下が防がれる。尚、バッテリ6を冷却した空気は、不図示の排気ダクトから大気中に排出される。
【0026】
以上において、本実施の形態によれば、電動ファン7から延びる冷却ダクト8をフロアパネル3を貫通して該フロアパネル3とフロアサイドメンバ9とで形成される閉断面空間S内に通すようにしたため、冷却ダクト8は既存のフロアサイドメンバ9によって保護される。このため、冷却ダクト8を保護するための専用の保護部材が不要となり、部品点数の削減とコストダウンを図ることができる。そして、フロアパネル3の冷却ダクト8が貫通する部分はフロアサイドメンバ9によって覆われて外部に露出することがないため、貫通部分の防水処理等が不要となり、組付工数が削減されて更なるコストダウンが図られる。
【0027】
又、本実施の形態では、冷却ダクト8を垂直部8Aと水平部8Bとで構成し、両者の各端部同士をフロアパネル3とフロアサイドメンバ9とで形成される閉断面空間S内で接続するようにしたため、フロアサイドメンバ9を開放させるための加工を要することなく冷却ダクト8を容易に組み付けることができる。
【0028】
更に、本実施の形態によれば、フロアパネル3上の車両前後方向において電動ファン7とバッテリ6との間に車幅方向に配設されたクロスメンバ11を避けて冷却ダクト8を配置するようにしたため、前部シート4の取り付けに冷却ダクト8が邪魔にならず、前部シート4を作業性良くフロアパネル3上に取り付けることができるという効果が得られる。
【0029】
尚、以上の実施の形態では、本発明を電気自動車(EV)に搭載されたバッテリの冷却構造に対して適用した形態について説明したが、本発明は、電動モータとガソリンエンジン等を駆動源とするハイブリッド車(HEV)に搭載されるバッテリの冷却構造に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
1 車両
2 車室
3 フロアパネル
3A フロアパネルの凹部
3B フロアパネルの斜面部
3a,3b フロアパネルの貫通孔
4 前部シート
5 後部シート
6 バッテリ
7 電動ファン
8 冷却ダクト
8A 冷却ダクトの垂直部
8B 冷却ダクトの水平部
8a 冷却ダクトの接続部
9 フロアサイドメンバ
10 カバー
11 クロスメンバ
S 閉断面空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシート下方のフロアパネル上に配設されるバッテリの冷却構造であって、
前記フロアパネルのシート下方の部位に基本面より下方に膨出する凹部を形成し、該凹部に前記バッテリを配置するとともに、該バッテリの車両前方且つシート下方に電動ファンを配設し、該電動ファンから延びる冷却ダクトを前記フロアパネルを貫通して該フロアパネルとフロアサイドメンバとで形成される閉断面空間内に通し、その端部を前記バッテリに接続したことを特徴とする車両のバッテリ冷却構造。
【請求項2】
前記冷却ダクトを、前記電動ファンから垂直下方に延びて前記フロアパネルを貫通する垂直部と、前記バッテリの前端面から車両前方に向かって前記閉断面空間内へと水平に延びる水平部とで構成し、これらの垂直部と水平部の各端部同士を前記閉断面空間内で接続することを特徴とする請求項1記載の車両のバッテリ冷却構造。
【請求項3】
前記フロアパネル上の車両前後方向において前記電動ファンと前記バッテリとの間に車幅方向に配設されたクロスメンバを避けて前記冷却ダクトを配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の車両のバッテリ冷却構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−63042(P2011−63042A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212744(P2009−212744)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】