説明

車両の下部車体構造

【課題】簡単な構成で車体の剛性を充分に確保できる車両の下部車体構造を提供する。
【解決手段】車室の底部を形成するフロアパネルFと、このフロアパネルFに沿って車体の前後方向に延びるように設置されたシートレール(9)と、このシートレール(9)に沿ってスライド自在に支持された乗員用シート2とを具備した車両の下部車体構造において、上記フロアパネルFに沿って車体の前後方向に延びるフロアフレーム41を、フロアパネルFの前方部からその前後方向中間部に至る範囲に亘って設置するとともに、上記シートレール(9)を、平面視で上記フロアフレーム41の後端部と連続して車体の後方側に延びるように設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室の底部を形成するフロアパネルと、このフロアパネルに沿って車体の前後方向に延びるように設置されたシートレールと、このシートレールに沿ってスライド自在に支持された乗員用シートとを具備した車両の下部車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、フロアパネルに沿って車体の前後方向に延びるよう左右一対のシートレールを設け、このシートレールに沿って第1後部座席および第2後部座席等からなる複数列の乗員用シートをスライド自在に支持することにより、この乗員用シートの配列パターンを多様に変化させ得るように構成した車両が知られている。
【特許文献1】特開2003−146120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記フロアパネルには、車体の前後方向に延びるフロアフレームが補強部材として設置されることが多い。特に、上記特許文献1のように、車室の後部に広い空間部を設けて乗員用シートを多様なパターンに配列し得るように構成した場合には、車両の走行安定性を良好に維持する等の理由から、上記フロアフレームにより車体を十分に補強して高い車体剛性を確保することが望まれる。このための措置として、例えば上記フロアフレームを車体前後方向の広範囲に亘って設置すれことが考えられる。
【0004】
しかしながら、このようにフロアフレームを広範囲に亘って設置した場合には、車体の重量の増大やコストアップ等を招くといった問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で車体の剛性を充分に確保できる車両の下部車体構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、車室の底部を形成するフロアパネルと、このフロアパネルに沿って車体の前後方向に延びるように設置されたシートレールと、このシートレールに沿ってスライド自在に支持された乗員用シートとを具備した車両の下部車体構造であって、上記フロアパネルには、車体の前後方向に延びるフロアフレームが、フロアパネルの前方部からその前後方向中間部に至る範囲に亘って設置されており、上記シートレールは、平面視で上記フロアフレームの後端部と連続して車体の後方側に延びるように設置されていることを特徴とするものである(請求項1)。
【0007】
本発明によれば、フロアパネルに沿って車体の前後方向に延びるフロアフレームを、フロアパネルの前方部からその前後方向中間部に至る範囲に亘って設置するとともに、平面視でこのフロアフレームの後端部と連続するように車体の後方側に延びるシートレールを設置してこのシートレールを補強部材として利用するように構成したため、フロアフレームの前後長を短くして車体重量や製造コストを低減しつつ、車体の剛性を簡単かつ効果的に向上させることができる。
【0008】
上記構成においては、上記フロアフレームの後端部とシートレールの前端部とが接続されていることが好ましい(請求項2)。
【0009】
このようにすれば、フロアフレームからシートレールに(またはシートレールからフロアフレームに)高効率で荷重が伝達されるため、車体に入力される前後方向の荷重をより効率よく分散支持することができ、車体の剛性をより効果的に向上させることができる。
【0010】
この場合、上記フロアフレームがフロアパネルの下面側に、上記シートレールがフロアパネルの上面側にそれぞれ設置されているとともに、上記フロアフレームの後端部とシートレールの前端部との間に、これらを互いに結合するブラケットが設けられていることが好ましい(請求項3)。
【0011】
このように、フロアパネルの下面側に設置されたフロアフレームの後端部と、フロアパネルの上面側に設置されたシートレールの前端部とをブラケットを介して接続するようにした場合には、フロアフレームのような構造物がフロアパネルの上面側に突出して車室内空間が阻害されるのを防止しつつ、フロアパネルを挟んで上下反対側に設置されたフロアフレームとシートレールとをブラケットを介して接続することにより、車体の前後方向の広範囲に亘った補強構造を容易に形成できるという利点がある。
【0012】
上記フロアパネルには、車幅方向に延びるクロスメンバが設置されており、上記シートレールがこのクロスメンバに接続されていることが好ましい(請求項4)。
【0013】
このようにすれば、車体の前後方向に延びるシートレールと車幅方向に延びるクロスメンバとを介して、車体に入力される荷重を車体前後・左右の各方向に効率よく分散させて支持することができ、車体剛性をさらに効果的に向上させることができる。
【0014】
また、本発明においては、上記シートレールとフロアフレームとが、上記フロアパネルにおける車幅方向内方寄りの左右2箇所にそれぞれ設けられ、上記フロアパネル上には、車体の後端部近傍まで延びる左右一対の外側シートレールが、上記シートレールよりも車幅方向外側に位置するように配設されており、上記シートレールと外側シートレールとに沿って、前後に配列された複数列の乗員用シートがスライド自在に支持されていることが好ましい(請求項5)。
【0015】
このように、フロアパネルにおける車幅方向内方寄りの左右2箇所に設けられた上記シートレールと、その外側に配設された左右一対の外側シートレールとに沿って、前後に配列された複数列の乗員用シートをスライド自在に支持した場合には、シートの多様な配列パターンが得られるとともに、上記外側シートレールをも有効に利用して車体を広範囲に亘って効果的に補強できるという利点がある。
【0016】
この場合、車幅方向に延びる一体のシートクッションを備えたベンチシートタイプの乗員用シートが、上記外側シートレールに沿ってスライド自在に支持されていることが好ましい(請求項6)。
【0017】
このようにすれば、ベンチシートタイプの乗員用シートを上記外側シートレールに沿って車体の前後方向の広範囲に亘って移動させることができ、より多様なシートの配列パターンを実現できるという利点がある。
【0018】
さらに、上記ベンチシートタイプの乗員用シートの前方側に、左右に分割されたセパレートタイプの乗員用シートが配設され、このセパレートタイプの乗員用シートを構成する左右の分割シートが、それぞれ相隣接する上記シートレールおよび外側シートレールに沿って個別にスライド自在に支持されていることが好ましい(請求項7)。
【0019】
このように、上記ベンチシートタイプの乗員用シートの前方側にセパレートタイプの乗員用シートを配設するとともに、このシートを構成する左右の分割シートを、上記シートレールおよび外側シートレールに沿ってスライド自在に支持した場合には、さらに多様なシートの配列パターンが得られるという利点がある。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の車両の下部車体構造によれば、簡単な構成で車体の剛性を充分に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1〜図3は、本発明に係る車両の下部車体構造の実施形態を示している。この車両の車室底部を形成するフロアパネルF上の前後方向中心部には、互いに独立した右側シート2aおよび左側シート2bからなる中列の乗員用シート2が配設されているとともに、その後方側には、車幅方向に延びる一体のシートクッションを備えたいわゆるベンチシートタイプからなる後列の乗員用シート3が配設されている。また、上記中列の乗員用シート2の前方側には、運転席シート1aおよび助手席シート1bからなる前列の乗員用シート1が配設されている。
【0022】
図4は、上記乗員用シート1〜3を取り外した状態におけるフロアパネルFを上側から見た状態を示している。この図4および先の図2,図3に示すように、上記フロアパネルFの下面には、その左右両外側部において前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレーム4,4が、フロアパネルFの前後方向中間部からその後端部に至る範囲に亘って設置されている。また、同じくフロアパネルFの下面には、その車幅方向内方寄りの左右2箇所において前後方向に延びる左右一対のフロアフレーム41,41が、フロアパネルFの前方部からその前後方向中間部に至る範囲に亘って設置されている。
【0023】
また、図1および図4に示すように、後部車体の側方部には、車室内側に膨出するリヤホイールハウス5が設けられるとともに、その前方側には、車体の前後方向に延びるサイドシル6が設置されている。また、上記フロアパネルFの後方部には、図略のスペアタイヤまたはバッテリ等が収容されるスペアタイヤパン7が下方に向けて凹入するように形成されている。
【0024】
上記フロアパネルF上には、その車幅方向内方寄りの左右2箇所において前後方向に延びる左右一対の内側レール9,9(本発明にかかるシートレールに相当)と、この内側レール9,9に対しそれぞれ車幅方向外側に位置する左右一対の外側レール8,8(本発明にかかる外側シートレールに相当)とがそれぞれ設置されている。このうち外側レール8,8は、前列の乗員用シート1の後端部に近接する車体の前後方向中間部から車体後端部まで延設されている。一方、内側レール9,9は、その全長が上記外側レール8よりも短く設定されており、上記フロアフレーム41,41の後端部と平面視で重複する位置からスペアタイヤパン7の設置部近傍まで延設されている。すなわち、内側レール9,9は、上記フロアフレーム41,41の後端部と連続して車体の後方側に延びるように設置されている。
【0025】
これら外側レール8および内側レール9は、図5および図6に示すように、上面が開口した所定の強度を有する断面C字状の溝型鋼等から構成されている。また、図2および図3に示すように、上記外側レール8および内側レール9は、後上がりに傾斜した状態で設置されることにより、略水平に設置された上記フロアパネルFとの離間距離が、後方に至るに従い大きくなるように設定されている。そして、これら外側レール8および内側レール9に沿って、上記中列および後列の乗員用シート2,3が、それぞれ前後方向の所定範囲に亘りスライド可能に支持されている(図1参照)。具体的には、中列の乗員用シート2を構成する右側シート2aが、車体右側の外側レール8およびこれに隣接した内側レール9に沿ってスライド可能に支持されるとともに、左側シート2bが、車体左側の外側レール8およびこれに隣接した内側レール9に沿ってスライド可能に支持され、かつ後列の乗員用シート3が、左右一対の外側レール8,8に沿ってスライド可能に支持されている。
【0026】
図2および図4に示すように、車体の後端部にはリヤバンパー10が設置されており、このリヤバンパー10を構成するバンパーレインフォースメント11の上方部に、上記外側レール8の後端部に設けられた取付プレート8aが取付ボルトを介して固定されている。
【0027】
上記リヤサイドフレーム4は、図5および図6に示すように、上面が開口した断面コ字状のフレーム本体4aと、その内側辺部および外側辺部の上端部に突設されたフランジ4b,4bとを有し、上記外側レール8の設置部に対応する側方位置でフロアパネルFの下面に沿って車体の前後方向に延びるように設置されている。また、リヤサイドフレーム4の後端部は、図2に示すように、上記バンパーレインフォースメント11の下方部に接合されることにより、上記外側レール8の後端部よりも所定距離Sだけ下方側に位置するように配設されている。
【0028】
上記フロアフレーム41は、上記リヤサイドフレーム4と同様の断面形状とされ、図5および図7に示すように、上面が開口した断面コ字状のフレーム本体41aと、その内側辺部および外側辺部の上端部に突設されたフランジ41b,41bとを有している。そして、このフロアフレーム41の後端部と、上記内側レール9の前端部とが、図3、図4、図7に示すブラケット42を介して接続されるようになっている。
【0029】
このブラケット42は、図7に示すように、フロアパネルFの上側に設置された左右一対の上側部材43,43と、フロアパネルFの上側と下側とに亘ってフロアパネルFを貫通するように設置された左右一対の下側部材44,44とから構成されている。このうち上側部材43は、その上端部に形成された上下方向に延びる第1縦壁部45と、この第1縦壁部45の下端部から略水平向きに延びる横壁部46と、この横壁部46の外側端部から下方に延びる第2縦壁部47とを有している。一方、下側部材44は、フロアパネルFに形成されたスリット54に挿通された状態で上下方向に延びる(フロアパネルFを貫通する)第1縦壁部48と、この第1縦壁部48の下端部から略水平向きに延びる横壁部49と、この横壁部49の内側端部から下方に延びる第2縦壁部50とを有している。そして、上側部材43の第1縦壁部45が内側レール9の左右両側面に溶接等により固定されるとともに、下側部材44の第2縦壁部50が上記フロアフレーム41の左右両側面に取付ボルト52を介して固定され、かつ上側部材43の第2縦壁部47と下側部材44の第1縦壁部48とが取付ボルト51を介して連結されることにより、フロアパネルFを挟んで上下反対側に設置された上記フロアフレーム41と内側レール9とがブラケット42を介して接続されている。
【0030】
図4および図6に示すように、上記スペアタイヤパン7の左右両側方部には、このスペアタイヤパン7の設置部に近接した位置において、上記リヤホイールハウス5の車室内側縦壁部5aと、フロアパネルFの車室内側面(上面)とを接続する補強ガセット部材12が設けられ、この補強ガセット部材12に上記外側レール8が取り付けられている。上記補強ガセット部材12は、図6および図8に示すように、リヤホイールハウス5の車室内側縦壁部5aに接合される上部フランジ17と、その下端部から車体の内方側に延びる上壁部18と、その車内側部位に設けられたレール設置用の段部19と、その内側端部から下方に延びる側壁部20と、その下端部から車内側に向けて突設された内側フランジ21と、上記上壁部18および側壁部20の前面および後面を覆うように設置された前後の縦壁部22と、この縦壁部22の下端部に突設された下部フランジ23とを有している。
【0031】
そして、上記補強ガセット部材12の上部フランジ17が、取付ボルト24を介してリヤホイールハウス5の車室内側縦壁部5aに固定されるとともに、上記内側フランジ21が、取付ボルト25を介してスペアタイヤパン7の設置部に近接したフロアパネルFの所定部位およびリヤサイドフレーム4の内側のフランジ4bに固定され、かつ上記下部フランジ23が、取付ボルト26を介してフロアパネルFの外側端部に固定されることにより、リヤホイールハウス5の車室内側縦壁部5aと、フロアパネルFの車室内側面(上面)とが上記補強ガセット部材12を介して接続されている。また、上記外側レール8が、補強ガセット部材12の段部19上に載置されてボルト止めまたは溶接等の手段で補強ガセット部材12に固定されることにより、後上がりに傾斜した状態で設置された上記外側レール8と、略水平に設置された上記フロアパネルFとの間に、補強ガセット部材12が配設されるようになっている。
【0032】
また、上記外側レール8および内側レール9の前端部近傍部位と、これら外側レール8および内側レール9の前端部から所定距離だけ後方側に位置する部位との下方には、図2〜図4に示すように、No.3クロスメンバ13、つまり車体の前方側から数えて3番目のクロスメンバと、No.4クロスメンバ14、つまり車体の前方側から数えて4番目のクロスメンバとが、それぞれフロアパネルFの車室内側面(上面)に沿って車幅方向に延びるように設置されている。このNo.3,No.4クロスメンバ13,14の前方側には、レールブラケット15,16がそれぞれ設置され、このレールブラケット15,16を介して上記外側レール8および内側レール9の前端部近傍部位とその所定距離後方側の部位とが上記No.3,No.4クロスメンバ13,14にそれぞれ接続されている。
【0033】
上記外側レール8および内側レール9の前端部近傍部位をNo.3クロスメンバ13に接続するレールブラケット15は、図9に示すように、後端部が後拡がりの台形状に形成された上壁部28と、その左右両側辺部から下方に延びる側壁部29と、その後端部に設けられた後部フランジ30と、上記側壁部29の下端部に設けられた下部フランジ31と、左右側壁部29の前面を覆うように設置された前壁部32とを有し、上記レールブラケット15の上壁部28に外側レール8および内側レール9がボトル止めまたは溶接等の手段で固定されるようになっている。
【0034】
そして、上記レールブラケット15の後部フランジ30が、No.3クロスメンバ13の前壁面に取付ボルト33を介して固定されるとともに、上記下部フランジ31が取付ボルト34を介してフロアパネルFの上面に固定されることにより、外側レール8および内側レール9の前端部近傍部位がレールブラケット15を介してNo.3クロスメンバ13に接続されている。なお、上記外側レール8および内側レール9の中央部をNo.4クロスメンバ13に接続するレールブラケット16は、上記レールブラケット15と同様の構成を有しているため、その説明を省略する。
【0035】
図3、図4、および図10に示すように、上記スペアタイヤパン7の前端部に近接したフロアパネルFの所定部位には、その上面に取付ボルト35を介して固定される底壁部36と前後一対の縦壁部37とを有する支持ブラケット38が設置され、この支持ブラケット38により、上記内側レール9の後端部近傍部位が支持されるように構成されている。また、上記スペアタイヤパン7の前端部に近接したフロアパネルFの下面側には、図10および図11に示すように、車幅方向に延びる下面側クロスメンバ39が設置されている。
【0036】
上記下面側クロスメンバ39は、スペアタイヤパン7の前辺周縁部を含む車幅方向の所定範囲に沿って配設されるタイヤパン対応部39aと、このタイヤパン対応部39aの左右両端部から車幅方向外側に延びる側方延出部39bとを有し、その左右両端部がリヤサイドフレーム4の車室内側壁面に接合されている。また、上記下面側クロスメンバ39の前方側であって内側レール9,9の後端部が取り付けられる部位には、補強プレート40が設置され、この補強プレート40に上記支持ブラケット38が取付ボルト35により固定されている。また、上記補強プレート40の後辺部下面には、下面側クロスメンバ39の前部フランジ39c(図10参照)が接合されている。
【0037】
上記のように車室の底部を形成するフロアパネルFと、このフロアパネルFに沿って車体の前後方向の広範囲に亘って設置された外側レール8と、この外側レール8に対し相対的に前後長が短い内側レール9とを具備した車両において、これら外側レール8および内側レール9を後上がりの傾斜状態で設置するとともに、外側レール8および内側レール9に沿って中列および後列の乗員用シート2,3をスライド可能に支持した上記構成によれば、シートの多様な配列パターンが得られるとともに、快適な車室内の居住空間が得られるという利点がある。
【0038】
例えば、図12および図13に示すように、車室の前面およびルーフ部の前部に、フロントガラス56およびルーフガラス57が連続して設置されたいわゆるパノラマルーフタイプの車両において、上記のように外側レール8および内側レール9を後上がりの傾斜状態で設置した場合には、運転席および助手席からなる前列の乗員用シート1の設置高さH1に比べ、その後方側に位置する中列の乗員用シート2および後列の乗員用シート3の設置高さH2およびH3を順次大きく設定することにより、中列および後列の乗員用シート2,3に着座した乗員の視界、つまり上記フロントガラス56およびルーフガラス57等を介して外部を視認する際の視界を充分に確保することができる。
【0039】
また、上記中列の乗員用シート2を前列の乗員用シート1に近接した位置までスライド変位させるとともに、後列の乗員用シート3を最後部までスライド変位させることにより、後列の乗員用シート3に着座した乗員の前方部に広い空間を確保することができる。さらに、中列の乗員用シート2に着座した乗員の前方部に広い空間を確保するために、中列および後列の乗員用シート2,3をそれぞれ後方にスライド変位させる等により、シートの多様な配列パターンが得られるという利点がある。
【0040】
そして、フロアパネルFに沿って車体の前後方向に延びるフロアフレーム41を、フロアパネルFの前方部からその前後方向中間部に至る範囲に亘って設置するとともに、平面視で上記フロアフレーム41の後端部と連続して車体の後方側に延びるように上記内側レール9を設置してこの内側レール9を補強部材として利用するように構成したため、フロアフレーム41の前後長を短くして車体重量や製造コストを低減しつつ、車体の剛性を簡単かつ効果的に向上させることができるという利点がある。
【0041】
すなわち、上記内側レール9は、乗員用シート2を安定して支持し得るように所定の剛性を有しており、この内側レール9を、フロアパネルF補強用のフロアフレーム41と前後方向に連続する状態で設置したことにより、上記内側レール9を補強部材として有効に利用することができるため、上記内側レール9の設置部より前方側のフロアパネルFの所定領域にのみフロアフレーム41を設置するだけで、フロアパネルFやその周辺部材の剛性を効果的に向上させることができる。したがって、車体重量や製造コストの増大等を防止しつつ、車体の剛性を効果的に向上させることができ、例えば車両の後突時に車体後部に入力された大きな衝撃荷重を、上記内側レール9およびフロアフレーム41を介して車体の各部に伝達して効率よく分散支持することができる。この結果、上記衝撃荷重に応じて車体が大きく変形するのを効果的に防止できるとともに、車両の走行時にリヤサスペンション等から入力される荷重により車体が変形し、これに応じて走行安定性が損なわれること等を効果的に防止できるという利点がある。
【0042】
特に、上記実施形態のように、上記フロアフレーム41の後端部と内側レール9の前端部とを(ブラケット42を介して)接続するようにした場合には、フロアフレーム41から内側レール9に(または内側レール9からフロアフレーム41に)荷重が高効率で伝達されるため、車体に入力される前後方向の荷重をより効率よく分散支持することができ、車体の剛性をより効果的に向上させることができるという利点がある。
【0043】
さらに、上記実施形態のように、フロアパネルFの下面側に設置されたフロアフレーム41の後端部と、フロアパネルFの上面側に設置された内側レール9の前端部とをブラケット42を介して接続するようにした場合には、フロアフレーム41のような構造物がフロアパネルFの上面側に突出して車室内空間が阻害されるのを防止しつつ、フロアパネルFを挟んで上下反対側に設置されたフロアフレーム41と内側レール9とをブラケット42を介して接続することにより、車体の前後方向の広範囲に亘った補強構造を容易に形成できるという利点がある。
【0044】
また、上記実施形態のように、フロアパネルFにおける車幅方向内方寄りの左右2箇所に設けられた上記内側レール9,9の外側に、相対的に前後長が長い左右一対の外側レール8,8を設け、これら外側レール8よび内側レール9に沿って、前後に配列された複数列の乗員用シート2,3をスライド自在に支持した場合には、シートの多様な配列パターンが得られるとともに、前後に長い上記外側レール8を有効に利用して車体を広範囲に亘って効果的に補強できるという利点がある。
【0045】
また、上記実施形態のように、車幅方向に延びる一体のシートクッションを備えたベンチシートタイプの乗員用シート3を後列シートとして設け、前後に長い上記外側レール8に沿ってこの乗員用シート3をスライド自在に支持した場合には、ベンチシートタイプの乗員用シートを車体の前後方向の広範囲に亘って移動させることができ、より多様なシートの配列パターンを実現できるという利点がある。
【0046】
なお、上記後列の乗員用シート3と同様に、中列の乗員用シート2をベンチシートタイプに構成することも可能であるが、上記実施形態に示すように、左右に分割された右側シート2aおよび左側シート2bからなるセパレートタイプのシートとして上記中列の乗員用シート2を設け、このセパレートタイプの乗員用シート2を構成する上記右側シート2aおよび左側シート2bを、それぞれ相隣接する外側レール8および内側レール9に沿って個別にスライド自在に支持した場合には、右側シート2aおよび左側シート2bの前後位置を変化させる等により、さらにシートの多様な配列パターンが得られるという利点がある。
【0047】
また、上記実施形態のように、車幅方向に延びるNo.3およびNo.4クロスメンバ13,14をフロアパネルFに設置するとともに、上記外側レール8および内側レール9をこれらクロスメンバ13,14に(レールブラケット15,16を介して)接続するようにした場合には、車体の前後方向に延びる外側および内側レール8,9と、車幅方向に延びるクロスメンバ13,14とを介して、車体に入力される荷重を車体前後・左右の各方向に効率よく分散させて支持することができ、車体剛性をさらに効果的に向上させることができるという利点がある。
【0048】
また、上記実施形態のように、フロアパネルFの車幅方向両側端部に、車体側壁部から車室内側に膨出するリヤホイールハウス5の車室内側縦壁部5aと、フロアパネルFの車室内側面(上面)とを接続する補強ガセット部材12を設け、この補強ガセット部材12を介して高剛性なリヤホイールハウス5に上記外側レール8を接続するようにした場合には、この外側レール8による車体の補強効果をより高めることができ、車体の剛性をさらに効果的に向上させることができるという利点がある。
【0049】
また、上記実施形態のように、外側レール8をリヤバンパー10の設置部まで延出した場合には、車両の後突時等に、上記リヤバンパー10に入力された衝撃荷重を上記外側レール8により直接支持することができるため、車体の変形を効果的に防止できるという利点がある。特に、上記実施形態に示すように、外側レール8の後端部を、リヤバンパー10を構成するバンパーレインフォースメント11の上部に固定するとともに、上記外側レール8の設置部に対応する位置においてフロアパネルFの下面に沿って車体の前後方向に延びるように設置されたリヤサイドフレーム4の後端部を、上記バンパーレインフォースメント11の下方部に接合することにより、上記外側レール8の後端部よりも所定距離Sだけ下方側に位置するように設置した場合には、上記外側レール8およびリヤサイドフレーム4により車体の前後方向に延びる立体的な補強構造が構成されるため、車両の後突時等に入力された衝撃荷重を、より安定して支持できるという利点がある。
【0050】
なお、上記実施形態では、フロアフレーム41の後端部と内側レール9の前端部とをブラケット42を介して接続するようにしたが、これらフロアフレーム41と内側レール9とが前後方向に連続する状態で設置されていれば(フロアフレーム41の後端部と内側レール9の前端部とが近接していれば)、上記フロアフレーム41と内側レール9とを(フロアパネルFを介して)ボルト等により直接接続してもよく、あるいは両者の接続部を省略してもよい。両者の接続部を省略した場合には、車体の補強効果は相対的に低下するものの、より低コストで車体の剛性を向上させることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る車両の下部車体構造の実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】フロアパネルの上部構造を示す平面図である。
【図5】図4のV−V線に沿った断面図である。
【図6】図4のVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】図4のVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】補強ガセット部材の構成を示す斜視図である。
【図9】レールブラケットの構成を示す斜視図である。
【図10】図4のX−X線に沿った断面図である。
【図11】フロアパネルの底面図である。
【図12】本発明に係る下部車体構造を有する車両の外観図である。
【図13】本発明に係る下部車体構造を有する車両の説明図である。
【符号の説明】
【0052】
2,3 乗員用シート
8 外側レール(外側シートレール)
9 内側レール(シートレール)
13,14 クロスメンバ
41 フロアフレーム
42 ブラケット
F フロアパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の底部を形成するフロアパネルと、このフロアパネルに沿って車体の前後方向に延びるように設置されたシートレールと、このシートレールに沿ってスライド自在に支持された乗員用シートとを具備した車両の下部車体構造であって、
上記フロアパネルには、車体の前後方向に延びるフロアフレームが、フロアパネルの前方部からその前後方向中間部に至る範囲に亘って設置されており、
上記シートレールは、平面視で上記フロアフレームの後端部と連続して車体の後方側に延びるように設置されていることを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項2】
請求項1記載の車両の下部車体構造において、
上記フロアフレームの後端部とシートレールの前端部とが接続されていることを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項3】
請求項2記載の車両の下部車体構造において、
上記フロアフレームがフロアパネルの下面側に、上記シートレールがフロアパネルの上面側にそれぞれ設置されているとともに、上記フロアフレームの後端部とシートレールの前端部との間に、これらを互いに結合するブラケットが設けられていることを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の下部車体構造において、
上記フロアパネルには、車幅方向に延びるクロスメンバが設置されており、上記シートレールがこのクロスメンバに接続されていることを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載に車両の下部車体構造において、
上記シートレールとフロアフレームとが、上記フロアパネルにおける車幅方向内方寄りの左右2箇所にそれぞれ設けられ、
上記フロアパネル上には、車体の後端部近傍まで延びる左右一対の外側シートレールが、上記シートレールよりも車幅方向外側に位置するように配設されており、
上記シートレールと外側シートレールとに沿って、前後に配列された複数列の乗員用シートがスライド自在に支持されていることを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項6】
請求項5記載の車両の下部車体構造において、
車幅方向に延びる一体のシートクッションを備えたベンチシートタイプの乗員用シートが、上記外側シートレールに沿ってスライド自在に支持されていることを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項7】
請求項6記載の車両の下部車体構造において、
上記ベンチシートタイプの乗員用シートの前方側に、左右に分割されたセパレートタイプの乗員用シートが配設され、このセパレートタイプの乗員用シートを構成する左右の分割シートが、それぞれ相隣接する上記シートレールおよび外側シートレールに沿って個別にスライド自在に支持されていることを特徴とする車両の下部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−105536(P2008−105536A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289714(P2006−289714)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】