説明

車両の制御装置および制御方法

【課題】駆動力を得るための電力を蓄える高圧電源を外部電源の電力で充電する外部充電が可能な車両において、補機負荷の作動を確保しつつ補機バッテリの過放電を防止する。
【解決手段】ECUは、高圧電源と、外部充電を行なうための充電装置と、低圧電源(補機バッテリ)と、補機負荷と、高圧電源の電圧を降圧して補機負荷に出力するDC/DCコンバータとを備える車両を制御する。ECUには、外部充電が可能な場合にCPLT信号が入力され、ユーザが補機負荷を作動させている可能性がある場合にIG信号が入力される。ECUは、CPLT信号が「ON」であると(S1にてYES)、外部充電を実行し(S6)、高圧電源が満充電状態となった場合(S5にてYES)、IG信号が「ON」であると(S7にてYES)、外部充電を一時的に停止させ(S8)、DC/DCコンバータの作動を継続させる(S9)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御に関し、特に、近年、車両外部の電源から供給される外部電力で車両に搭載された蓄電装置を充電する外部充電が可能な車両の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両外部の電源から供給される外部電力で車両に搭載された蓄電装置を充電する外部充電が可能な車両(いわゆるプラグイン車両)が実用化されている。このようなプラグイン車両に関し、たとえば特開2009−171733号公報(特許文献1)には、充電ケーブルが出力するパイロット信号を利用してプラグイン車両の外部充電システムを起動し、蓄電装置の充電完了時に外部充電システムを停止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−171733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、特許文献1に開示された技術では、蓄電装置の充電完了時に外部充電システムを停止する。そのため、外部充電中にユーザが車内でオーディオ、エアコンディショナ等の補機負荷を継続して使用している状況では、蓄電装置の充電完了後は、外部電力を用いた補機負荷の作動および補機バッテリの充電ができなくなる。そのため、補機バッテリの電力でのみ補機負荷を作動させることになり、最悪の場合、補機バッテリの過放電を招くおそれがある。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、外部充電が可能な車両において、補機負荷の作動を確保しつつ補機バッテリの過放電を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る制御装置は、車両の制御装置である。車両は、駆動力を得るための電力を蓄える蓄電装置と、外部電源から供給される外部電力を蓄電装置に充電可能な電力に変換する充電装置と、補機バッテリと、蓄電装置、充電装置および補機バッテリの少なくともいずれかから供給される電力を用いて作動可能な補機負荷とを備える。制御装置は、外部電源が車両に接続されかつ車両に電力供給可能な状態である場合に第1信号が入力され、ユーザが補機負荷を作動させている可能性がある場合に第2信号が入力される入力部と、第1、第2信号に基づいて、充電装置を作動させて外部電力で蓄電装置を充電する外部充電の実行と自身の作動状態とを制御する制御部とを備える。
【0007】
好ましくは、制御部は、第1信号に応じて外部充電を開始し、蓄電装置の蓄電量が目標値に達した満充電時点で第2信号がない場合は外部充電を停止して自身を停止状態にし、満充電時点で第2信号がある場合は自身を作動状態に維持した状態で外部充電を一時的に停止する。
【0008】
好ましくは、制御部は、外部充電の一時的な停止中に蓄電量が目標値未満となった場合、外部充電を再開する。
【0009】
好ましくは、車両は、蓄電装置および充電装置の少なくともいずれかから供給される電圧を補機負荷を作動可能な電圧に変換するコンバータをさらに備える。制御部は、満充電時点で第2信号がある場合は、外部充電を一時的に停止しつつコンバータを作動させて蓄電装置の電力を用いて補機負荷を作動させ、補機負荷の作動によって蓄電量が目標値未満となった場合に外部充電を再開する。
【0010】
好ましくは、制御部は、外部充電の実行中、第2信号がある場合はコンバータを作動させ、第2信号がない場合はコンバータを停止させる。
【0011】
好ましくは、車両は、蓄電装置と補機負荷との接続および非接続を切替える切替装置をさらに備える。制御部は、外部充電の実行中は切替装置を接続状態に維持し、満充電時点で第2信号がない場合は切替装置を非接続状態にし、満充電時点で第2信号がある場合は切替装置を接続状態に維持する。
【0012】
好ましくは、外部電力は、充電ケーブルを介して車両に供給される。第1信号は、充電ケーブルが外部電源および車両に接続されかつ外部電源が車両に電力供給可能な状態であることに応じて生じるパイロット信号である。第2信号は、補機バッテリと補機負荷とが電気的に接続されていることに応じて生じる信号である。
【0013】
この発明の別の局面に係る制御方法は、車両の制御装置が行なう制御方法である。車両は、駆動力を得るための電力を蓄える蓄電装置と、外部電源から供給される外部電力を蓄電装置に充電可能な電力に変換して蓄電装置に出力する充電装置と、補機バッテリと、蓄電装置、充電装置および補機バッテリの少なくともいずれかから供給される電力を用いて作動可能な補機負荷とを備える。制御方法は、外部電源が車両に接続されかつ車両に電力供給可能な状態であることを示す第1信号およびユーザが補機負荷を作動させている可能性があることを示す第2信号が入力されるか否かを判断するステップと、第1、第2信号に基づいて、充電装置を作動させて外部電力で蓄電装置を充電する外部充電の実行と制御装置の作動状態とを制御するステップとを含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外部充電が可能な車両において、補機負荷の作動を確保しつつ補機バッテリの過放電を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】車両の全体ブロック図である。
【図2】低電圧系の起動回路の概略図である。
【図3】IGスイッチ操作とIG信号との関係を示す。
【図4】プラグイン操作、IGP信号、CPLT信号の関係を例示した図である。
【図5】充電モードが選択された場合のECUの機能ブロック図である。
【図6】充電制御モード中のECUの処理手順を示すフローチャートである。
【図7】ECUの状態遷移を示す図である。
【図8】充電制御中におけるSOCのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0017】
図1は、本実施の形態に従う制御装置を搭載した車両1の全体ブロック図である。車両1は、高圧電源10と、システムメインリレー(SMR)11と、パワーコントロールユニット(PCU)20と、モータジェネレータ(MG)30と、動力伝達ギア40と、駆動輪50と、DC/DCコンバータ60と、低圧電源70と、補機負荷80と、制御装置(ECU)100とを備える。
【0018】
高圧電源10は、車両1の駆動力を得るための電力を蓄える。高圧電源10は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの二次電池である。なお、高圧電源10は、電気二重層キャパシタであってもよい。
【0019】
高圧電源10は、正極線PL1および負極線NL1を介してPCU20に接続される。そして、高圧電源10は、車両1の駆動力を発生させるための電力をPCU20に供給する。また、高圧電源10は、MG30で発電された電力を蓄電する。高圧電源10の出力はたとえば200V程度である。
【0020】
SMR11は、リレーR1,R2を含む。リレーR1,R2は、ECU100からの制御信号S1によってそれぞれ独立して制御され、高圧電源10とPCU20との間での電力の供給と遮断とを切替える。
【0021】
コンデンサC1は、正極線PL1および負極線NL1の間に接続され、正極線PL1および負極線NL1の間の電圧変動を低減する。
【0022】
PCU20は、コンバータおよびインバータを含んで構成される。PCU20は、ECU100からの制御信号S2により制御され、高圧電源10から供給される直流電力をMG30を駆動可能な交流電力に変換し、MG30に出力する。これにより、高圧電源10の電力でMG30が駆動される。
【0023】
MG30は交流回転電機であり、たとえば、永久磁石が埋設されたロータを備える永久磁石型同期電動機である。
【0024】
MG30の出力トルクは、動力伝達ギア40を介して駆動輪50に伝達されて、車両1を走行させる。MG30は、車両1の回生制動時には、駆動輪50の回転力によって発電することができる。そして、その発電電力は、PCU20によって高圧電源10を充電するための電力に変換される。
【0025】
なお、図1は、MG30を1つ設ける場合を例示しているが、モータジェネレータを複数設けてもよい。また、動力源としてMG30の他にエンジンを備えてもよい。すなわち、本実施の形態における車両1は、電気自動車、ハイブリッド車両、燃料電池自動車など、電力で駆動力を得る車両全般に適用可能である。
【0026】
DC/DCコンバータ60は、正極線PL1および負極線NL1に接続される。DC/DCコンバータ60は、ECU100からの制御信号S3に基づいて制御され、正極線PL1および負極線NL1の間の電圧を降圧する。そして、DC/DCコンバータ60は、正極線PL3を介して、低圧電源70、補機負荷80、およびECU100などに降圧した電圧(12V程度)を供給する。
【0027】
低圧電源70は、代表的には鉛蓄電池を含んで構成される。低圧電源70は、補機バッテリとも呼ばれ、補機負荷80やECU100などを作動させるための電力を蓄える。低圧電源70の出力電圧は、高圧電源10の出力電圧よりも低く、たとえば12V程度である。以下では、低圧電源70から供給される電力で作動する機器類を総称して「低電圧系」ともいう。
【0028】
補機負荷80は、空調ユニット81と、オーディオユニット82とを含む。補機負荷80には、これらの他、たとえば図示しないランプ類、ワイパー、ヒータなど、他の電気負荷も含まれる。
【0029】
なお、以下では、補機負荷80を低電圧系として説明するが、補機負荷80の一部を高圧電源10から供給される電力で作動する高電圧系の補機としてもよい。たとえば空調ユニット81を高電圧系の補機とする場合には、空調ユニット81をDC/DCコンバータ60を介さずに正極線PL1および負極線NL1に直結すればよい。
【0030】
補機負荷80は、低圧電源70およびDC/DCコンバータ60の少なくともいずれかから供給される電力で作動される。
【0031】
さらに、車両1は、外部電源500からの電力で高圧電源10を充電する外部充電を行なうための構成として、充電装置200と、インレット210とを含む。
【0032】
インレット210は、外部電源500からの交流電力を受けるために、車両1のボディに設けられる。インレット210には、充電ケーブル400のコネクタ410が接続される。そして、充電ケーブル400のプラグ420が、(たとえば、家庭用電源のような)外部電源500のコンセント510に接続されることによって、外部電源500の電力を充電ケーブル400を介して車両1に供給可能な状態となる。
【0033】
充電ケーブル400の内部には、パイロット回路430が設けられる。パイロット回路430は、外部電源500から供給される電力によって作動し、コントロールパイロット信号(以下、「CPLT信号」という)を発生する。パイロット回路430は、コネクタ410がインレット210に接続されると、所定のデューティサイクル(発振周期に対するパルス幅の比)でCPLT信号を発振させる。CPLT信号は、外部電源500の電力を車両1に供給可能な状態(すなわち、充電ケーブル400が外部電源500および車両1の双方に接続され、かつ、停電などによる電力供給遮断がない状態)である場合に、インレット210を経由して、ECU100に入力される。
【0034】
なお、コネクタ410がインレット210に接続された場合、コネクタ410の内部に設けられたリミットスイッチが作動する。これにより、ケーブル接続信号PISWがインレット210からECU100に入力される。
【0035】
充電装置200は、インレット210に接続される。充電装置200は、ECU100からの制御信号S4によって制御され、インレット210から供給される交流電力を、高圧電源10に充電可能な電力(直流200V程度)に変換し、正極線PL1および負極線NL1に出力する。これにより、上述した外部充電が行なわれる。
【0036】
さらに、車両1は、IGスイッチ91、アクセルペダルポジションセンサ92、ブレーキペダルストロークセンサ93、シフトポジションセンサ94を含む。
【0037】
IGスイッチ91は、車両1を走行可能状態(以下「Ready−ON状態」ともいう)にするための操作をユーザが入力するためのスイッチである。なお、Ready−ON状態では、後述するように低圧電源70と補機負荷80とが電気的に接続されるため、補機負荷80の作動が可能な状態となる。走行不能状態(以下「Ready−OFF状態」ともいう)でユーザがIGスイッチ91を押すと、IGスイッチ91は、ユーザがReady−ON状態にすることを要求していることを示すIGreq信号を、ECU100に出力する。後述するように、ECU100は、このIGreq信号に応じて起動される。なお、本実施の形態において、「起動」とは、停止状態(スリープ状態)から作動状態に変化することを意味する。
【0038】
アクセルペダルポジションセンサ92は、アクセルペダルの操作量APを検出する。ブレーキペダルストロークセンサ93は、ブレーキペダルのストローク量BSを検出する。
【0039】
シフトポジションセンサ94は、ユーザによって操作されるシフトレバー(図示せず)の位置(シフトポジション)SPを検出する。
【0040】
これらの各センサは、検出結果をECU100に出力する。
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、メモリを含み、各センサ等からの信号の入力や各機器への制御信号の出力を行なうとともに、車両1および各機器の制御を行なう。なお、これらの制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
【0041】
ECU100は、各センサ等から入力される信号などに応じて上述した制御信号S1〜S4を生成し、対応する各機器に出力する。なお、図1においては、ECU100を1つのユニットとしているが、たとえば機能ごとに分割してもよい。
【0042】
図2は、低電圧系の起動回路の概略図である。この起動回路は、メインリレー(MR)71と、プラグインメインリレー(PIMR)72との2つの電源スイッチを含む。MR71およびPIMR72は、それぞれECU100からの制御信号S5,S6によって制御される。
【0043】
ECU100および充電装置200は、MR71を介して低圧電源70に接続されるとともに、PIMR72を介しても低圧電源70と接続される。なお、ECU100は、電力線PL4を介して低圧電源70に常時接続されている。一方、補機負荷80は、MR71を介して低圧電源70に接続されるが、PIMR72を介しては低圧電源70に接続されない。
【0044】
ECU100は、停止状態(スリープ状態)において、電力線PL4を介して供給される電力を僅かに消費しながら、IGreq信号およびCPLT信号を監視している。
【0045】
スリープ状態でユーザがIGスイッチ91を押すと、ECU100にIGreq信号が入力される。この場合、ECU100は、MR71を閉状態にさせる制御信号S5をMR71に出力する。これにより、MR71が閉状態となり、低圧電源70の電力がECU100を含む低電圧系に供給される。この状態がReady−ON状態である。以下では、低圧電源70からMR71を介してECU100に供給される電力を「IG信号」という。ECU100は、このIG信号が入力されることによって起動される。また、IG信号がECU100に入力されている場合には、MR71が閉状態であるため、低圧電源70と補機負荷80とが電気的に接続され、低圧電源70の電力で補機負荷80を作動させることができる。つまり、IG信号がECU100に入力されている場合には、ユーザが補機負荷80を作動させている可能性がある。
【0046】
一方、スリープ状態でユーザが充電ケーブル400を外部電源500および車両1に接続する操作(以下「プラグイン操作」という)を行なうと、上述したCPLT信号がECU100に入力される。この場合、ECU100は、PIMR72を閉状態にさせる制御信号S6をPIMR72に出力する。これにより、PIMR72が閉状態となり、低圧電源70の電力が充電装置200およびECU100に供給される。この際、外部充電に必要のない補機負荷80(空調ユニット81やオーディオユニット82など)は起動されないため、無駄な電力消費が抑制される。以下では、低圧電源70からPIMR72を介してECU100に供給される電力を「IGP信号」という。ECU100は、上述したIG信号だけでなく、このIGP信号が入力されることによっても起動される。
【0047】
このように、ECU100は、IG信号またはIGP信号が入力されることによって、起動される。なお、以下の説明において、信号について用いる「ON」は、その信号が活性状態であることを意味し、「OFF」は非活性状態であることを意味する。
【0048】
図3は、IGスイッチ操作(ユーザがIGスイッチ91を押す操作)とIG信号との関係を示す。IG信号が「OFF」(IG信号がECU100に入力されていない状態)の場合にIGスイッチ操作がなされると、IGreq信号がECU100に入力され、IG信号は「OFF」から「ON」(IG信号がECU100に入力された状態)に変化する。一方、IG信号が「ON」の場合にIGスイッチ操作がなされると、IG信号は「ON」から「OFF」に変化する。このように、IG信号のON/OFFの切替は、ユーザのIGスイッチ操作に応じて行なわれ、ECU100の判断では行なわれない。
【0049】
図4は、プラグイン操作、IGP信号、CPLT信号の関係を例示した図である。IGP信号が「OFF」の場合にプラグイン操作がなされると、CPLT信号がECU100に入力され、IGP信号は「OFF」から「ON」に変化する。これにより、ECU100が起動され、外部充電が可能な状態となる。その後、ECU100が自らの判断でPIMR72を開状態にすると、IGP信号を「ON」から「OFF」に変化する。この場合、ユーザが充電ケーブル400を外部電源500または車両1から外す操作(以下、「プラグアウト操作」という)を行なうまでは、外部電源500の停電がない限り、図4に示すように、IGP信号のOFF後もCPLT信号の入力は継続される。
【0050】
ECU100は、起動時以降に、IG信号、IGP信号、CPLT信号などに基づいて、車両1の走行を制御するための走行制御モードおよび充電装置200を制御して外部充電を行なうための充電制御モードのいずれかの制御モードを選択し、選択した制御モードで車両1の各機器を制御する。
【0051】
走行制御モードでは、ECU100は、SMR11を閉状態にして高圧電源10の電力をPCU20を経由してMG30に供給可能な状態とする。そして、ECU100は、アクセルペダルの操作量APなどの各センサからの情報に基づいてPCU20の動作を制御して、高圧電源10の電力でMG30を駆動させる。これにより、ユーザの意図に応じて車両1が走行される。なお、走行制御モードでは、充電装置200の作動が禁止される。したがって、外部充電を行なうことはできない。
【0052】
走行制御モード中にユーザがシステムを停止させるためにIGスイッチ91を押すと、ECU100は、MR71を開状態にする。これに伴ない、ECU100は作動状態からスリープ状態に移行する。
【0053】
一方、充電制御モードでは、ECU100は、SMR11を閉状態にして充電装置200と高圧電源10とを接続する。そして、ECU100は、充電装置200の動作を制御して、外部電源500の交流電力を高圧電源10に充電可能な直流電力に変換する。これにより、外部充電が行なわれる。
【0054】
また、充電制御モードでは、ECU100は、充電装置200およびDC/DCコンバータ60を制御して外部電源500の電力を用いて補機負荷80を作動させたり低圧電源70を充電したりすることを許容する。すなわち、ECU100は、充電制御モード中において、IG信号が「ON」の場合はユーザが補機負荷80を作動させている可能性があるため、充電装置200を制御して外部電源500の交流電力を直流電力に変換させるとともに、DC/DCコンバータ60を制御して充電装置200で変換された電力の電圧を降圧して低圧電源70および補機負荷80に供給する。これにより、充電制御モード中であれば、家庭用の外部電源500の電力で低圧電源70を充電したり、家庭用の外部電源500の電力をリアルタイムで車両1の補機負荷80に供給したりすることができる。以下では、このような目的で充電装置200およびDC/DCコンバータ60を作動させることを「マイルーム充電」ともいう。
【0055】
図5は、充電モードが選択された場合のECU100の機能ブロック図である。図5に示した各機能ブロックは、電子回路等によるハードウェア処理によって実現してもよいし、プログラムの実行等によるソフトウェア処理によって実現してもよい。
【0056】
ECU100は、入力部110と、制御部120とを含む。
入力部110には、IG信号、CPLT信号、高圧電源10の蓄電量を示すSOC(State Of Charge)が入力される。なお、以下では、SOCを、高圧電源10の満充電容量に対する蓄電量の割合(パーセント)で示す。SOCは、高圧電源10の電圧および電流に基づいて図示しない他の機能ブロックで算出されて、入力部110に入力される。入力部110に入力された情報は、制御部120に送られる。
【0057】
制御部120は、CPLT信号が「ON」である場合に、充電制御モードによって外部充電を行なう。なお、充電制御モード中にCPLT信号が「ON」から「OFF」に変化した場合、制御部120は、充電装置200を停止するとともにSMR11を開状態として高圧遮断した後、PIMR72を開状態にする。これに伴ない、外部充電が停止されるとともに、ECU100が作動状態からスリープ状態に移行する。
【0058】
制御部120は、IG信号が「OFF」の場合に外部充電を行なう第1制御部120Aと、IG信号が「ON」の場合に外部充電を行なう第2制御部120Bとを含む。
【0059】
第1制御部120Aは、IG信号が「OFF」の場合、ユーザが補機負荷80を作動させている可能性が低いため、補機負荷80の作動を禁止しつつ外部充電を行なう。以下、このような充電を「通常充電」ともいう。
【0060】
第1制御部120Aは、通常充電中、SOCが目標値に達した(高圧電源10が満充電状態となった)時点でもIG信号が「OFF」の場合、制御信号S4によって充電装置200を停止させ、制御信号S1によってSMR11を開状態とて高圧遮断し、制御信号S6によってPIMR72を開状態にする。これに伴ない、ECU100は作動状態からスリープ状態に移行する。
【0061】
第2制御部120Bは、IG信号が「ON」の場合、ユーザが補機負荷80を作動させている可能性がある(高い)ため、補機負荷80の作動を許容しつつ外部充電を行なう。このような充電が上述した「マイルーム充電」である。マイルーム充電では、制御信号S3によってDC/DCコンバータ60が作動される。
【0062】
第2制御部120Bは、マイルーム充電中、SOCが目標値に達した時点でもIG信号が「ON」に維持されている場合、制御信号S4によって充電装置200を停止させるが、制御信号S4によってSMR11は閉状態に維持した状態で制御信号S3によってDC/DCコンバータ60を作動を継続させる。
【0063】
図6は、充電制御モード中のECU100の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、充電制御モード中に所定のサイクルタイムで開始される。したがって、この処理の開始時においては、SMR11は閉状態(オン状態)である。このフローチャートの各ステップ(以下、ステップを「S」と略す)はハードウェア処理によって実現してもよいしソフトウェア処理によって実現してもよい。
【0064】
S1にて、ECU100は、CPLT信号が入力されている(CPLT=ONである)か否かを判断する。CPLT=ONであると(S1にてYES)、処理はS2に移される。そうでないと(S1にてNO)、処理はS10に移される。
【0065】
S2にて、ECU100は、IG信号が入力されている(IG=ONである)か否かを判断する。IG=ONであると(S2にてYES)、ECU100は、処理をS3に移して補機負荷80の作動を許可する。この際、DC/DCコンバータ60が作動される。一方、IG=OFFである場合(S2にてNO)、ECU100は、処理をS4に移し、補機負荷80の作動を禁止する。
【0066】
S5にて、ECU100は、高圧電源10が満充電状態であるか否かを判断する。
高圧電源10が満充電状態でない場合(S5にてNO)、ECU100は、処理をS6に移し、充電装置200を作動させて外部充電を実行する。その後、処理はS1に戻され、S1以降の処理が繰り返される。なお、S4およびS6の処理による外部充電が通常充電であり、S3およびS6の処理による外部充電がマイルーム充電である。
【0067】
一方、外部充電によって高圧電源10が満充電状態となった場合(S5にてYES)、ECU100は、処理をS7に移し、IG信号が入力されている(IG=ONである)か否かを判断する。
【0068】
満充電状態となった時点でIG=ONである場合(S7にてYES)、ユーザが補機負荷80を作動させている可能性がある(高い)ため、ECU100は、S8にてSMR11を閉状態に維持したまま充電装置200の作動を一時的に停止して外部充電を一時的に停止させるとともに、S9にてDC/DCコンバータの作動を継続させる。
【0069】
一方、満充電状態となった時点でIG=OFFである場合(S7にてNO)、ユーザが補機負荷80を作動させている可能性が低いため、ECU100は、S10にてSMR11を開状態とし充電装置200の作動を停止させ外部充電を停止させる。さらに、ECU100は、S11にて、PIMR72を開状態に変化させる。これにより、ECU100はスリープ状態となり、この処理は終了される。
【0070】
図7は、ECU100の状態遷移を示す図である。
充電制御モード中、IG信号が「OFF」の場合は、通常充電が行なわれる。通常充電によって高圧電源10が満充電状態となった場合あるいはプラグアウト操作が行なわれた場合、通常充電が停止され、EUC100は、矢印f,gに示すようにスリープ状態となる。
【0071】
一方、通常充電中に、ユーザが補機負荷80を作動させて音楽を聴いたり空調を行なったりするためにIGスイッチ操作を行なうと、IG信号が「OFF」から「ON」に変化する。これにより、矢印aに示すように、通常充電に代えてマイルーム充電が行なわれる。すなわち、外部電源500の電力が高圧電源10に加えてDC/DCコンバータ60を介して補機負荷80にも供給される。これにより、外部電源500の電力を用いて補機負荷80を作動させることができるので、低圧電源70の電力消費を抑制することができる。
【0072】
そして、マイルーム充電によって高圧電源10が満充電状態となった場合、ECU100は、矢印cに示すように、充電装置200の作動を一時的に停止して外部充電を一時的に停止する。この際、ECU100は、自らの状態をスリープ状態とするのではなく作動状態に維持する。さらに、ECU100は、SMR11を閉状態に維持した状態でDC/DCコンバータ60の作動を継続する。これにより、高圧電源10の電力を用いて補機負荷80を作動させることができるため、低圧電源70の電力消費を抑制することができる。
【0073】
そして、外部充電の一時停止中に、補機負荷80の作動によって高圧電源10が満充電状態でなくなった場合(SOCが目標値未満となった場合)は、矢印dに示すように、マイルーム充電が再開される。これにより、外部電源500の電力を用いて補機負荷80を作動させつつ、低下した高圧電源10の蓄電量を回復させることができる。
【0074】
なお、マイルーム充電中にIG信号が「OFF」に変化すると、マイルーム充電に代えて通常充電が行なわれる(矢印b)。また、マイルーム充電中にプラグアウト操作が行なわれた場合、マイルーム充電が停止され、スリープ状態となる(矢印e)。
【0075】
本実施の形態において、最も特徴的な点は、図7の矢印c、dに示した状態移行を実現した点である。この点について説明する。
【0076】
従来においては、充電制御モード中に高圧電源10が満充電状態となった場合、IG信号の有無に関わらず、ECU100をスリープ状態に移行させていた。したがって、以降の外部充電ができなくなる。そのため、補機負荷80を作動させる際、外部電源500の電力を充電ケーブル400を介して車両1に供給可能な状態であるにも関わらず、低圧電源70の電力を消費することを余儀なくされ、最悪の場合には、低圧電源70の過放電(補機バッテリ上がり)となるおそれがあった。
【0077】
これに対し、本実施の形態においては、満充電時点でIG=ONの場合には、外部充電を一時的に停止するが、ECU100を作動状態に維持し、さらに、SMR11を閉状態に維持した状態でDC/DCコンバータ60の作動を継続させる(矢印c)。これにより、外部充電の再開を可能としつつ、高圧電源10の電力で補機負荷80を作動させることができる。すなわち、低圧電源70の電力消費が抑制される。
【0078】
そして、補機負荷80の作動により高圧電源10が満充電状態でなくなった時点で外部充電を再開する(矢印d)。これにより。低下したSOCを外部電力で回復させることができる。
【0079】
図8は、充電制御中におけるSOCのタイミングチャートである。なお、図8に示す例では、ヒステリシスを持たせるために、外部充電時のSOCの目標値を、SOC増加時の目標値SOC2とSOC減少時の目標値SOC1(<SOC2)とに分けている。
【0080】
時刻t1以前は、IG=OFFであり通常充電が行なわれる。時刻t1にて、ユーザ操作によってIG=ONとなりかつ補機負荷80の作動が開始されると、マイルーム充電が開始される。なお、この影響で、時刻t1以降は、SOCの増加率が緩やかになる。
【0081】
時刻t2にて、SOCが目標値SOC2を超えると、満充電状態であると判断されて充電装置200の作動が停止されるが、SMR11が閉状態に維持され、DC/DCコンバータ60の作動は維持される。これにより、SOCが低下し始め、時刻t3にてSOCが目標値SOC1(<SOC2)まで低下すると、満充電状態ではないと判断されて充電装置200の作動が再開される。
【0082】
その後の時刻t5でユーザ操作によってIG信号が「OFF」となり、補機負荷80が停止されると、マイルーム充電に代えて通常充電が開始される。
【0083】
なお、図8に示す例では、下限を目標値SOC2、上限を目標値SOC3(>SOC2)とする領域αが設けられ、通常充電時のSOCが目標値SOC3になるまで外部充電を継続する「押し込み充電」を行なう場合を示している。したがって、SOCが目標値SOC3となった時刻t6にて、通常充電が停止され、ECU100がスリープ状態となる。
【0084】
以上のように、本実施の形態に従うECU100は、CPLT=ONの場合に外部充電を実行する。そして、外部充電によって高圧電源10が満充電状態となった時点でIG=ONの場合、ECU100は、外部充電を一時的に停止するが、自らを作動状態に維持した状態でDC/DCコンバータ60の作動を継続させる。そのため、外部充電中の車内で低電圧系の補機負荷を継続して使用している状況等、従来では対応不可能であった状況であっても、充電装置および高圧電源からの補機負荷および低圧電源(補機バッテリ)への電力供給が可能となり、車両の利便性(ユーザの使い勝手および購入インセンティブ)を著しく向上させることができる。
【0085】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0086】
1 車両、10 高圧電源、11 SMR、20 PCU、30 MG、40 動力伝達ギア、50 駆動輪、60 コンバータ、70 低圧電源、80 補機負荷、81 空調ユニット、82 オーディオユニット、91 スイッチ、92 アクセルペダルポジションセンサ、93 ブレーキペダルストロークセンサ、94 シフトポジションセンサ、100 ECU、110 入力部、120 制御部、120A 第1制御部、120B 第2制御部、200 充電装置、210 インレット、400 充電ケーブル、410 コネクタ、420 プラグ、430 パイロット回路、500 外部電源、510 コンセント、C1 コンデンサ、NL1 負極線、PL1,PL3 正極線、PL4 電力線、R1,R2 リレー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の制御装置であって、
前記車両は、
駆動力を得るための電力を蓄える蓄電装置と、
外部電源から供給される外部電力を前記蓄電装置に充電可能な電力に変換する充電装置と、
補機バッテリと、
前記蓄電装置、前記充電装置および前記補機バッテリの少なくともいずれかから供給される電力を用いて作動可能な補機負荷とを備え、
前記制御装置は、
前記外部電源が前記車両に接続されかつ前記車両に電力供給可能な状態である場合に第1信号が入力され、ユーザが前記補機負荷を作動させている可能性がある場合に第2信号が入力される入力部と、
前記第1、第2信号に基づいて、前記充電装置を作動させて前記外部電力で前記蓄電装置を充電する外部充電の実行と自身の作動状態とを制御する制御部とを備える、車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1信号に応じて前記外部充電を開始し、前記蓄電装置の蓄電量が目標値に達した満充電時点で前記第2信号がない場合は前記外部充電を停止して自身を停止状態にし、前記満充電時点で前記第2信号がある場合は自身を作動状態に維持した状態で前記外部充電を一時的に停止する、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記外部充電の一時的な停止中に前記蓄電量が前記目標値未満となった場合、前記外部充電を再開する、請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記車両は、前記蓄電装置および前記充電装置の少なくともいずれかから供給される電圧を前記補機負荷を作動可能な電圧に変換するコンバータをさらに備え、
前記制御部は、前記満充電時点で前記第2信号がある場合は、前記外部充電を一時的に停止しつつ前記コンバータを作動させて前記蓄電装置の電力を用いて前記補機負荷を作動させ、前記補機負荷の作動によって前記蓄電量が前記目標値未満となった場合に前記外部充電を再開する、請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記外部充電の実行中、前記第2信号がある場合は前記コンバータを作動させ、前記第2信号がない場合は前記コンバータを停止させる、請求項4に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記車両は、前記蓄電装置と前記補機負荷との接続および非接続を切替える切替装置をさらに備え、
前記制御部は、前記外部充電の実行中は前記切替装置を接続状態に維持し、前記満充電時点で前記第2信号がない場合は前記切替装置を非接続状態にし、前記満充電時点で前記第2信号がある場合は前記切替装置を接続状態に維持する、請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記外部電力は、充電ケーブルを介して前記車両に供給され、
前記第1信号は、前記充電ケーブルが前記外部電源および前記車両に接続されかつ前記外部電源が前記車両に電力供給可能な状態であることに応じて生じるパイロット信号であり、
前記第2信号は、前記補機バッテリと前記補機負荷とが電気的に接続されていることに応じて生じる信号である、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項8】
車両の制御装置が行なう制御方法であって、
前記車両は、
駆動力を得るための電力を蓄える蓄電装置と、
外部電源から供給される外部電力を前記蓄電装置に充電可能な電力に変換して前記蓄電装置に出力する充電装置と、
補機バッテリと、
前記蓄電装置、前記充電装置および前記補機バッテリの少なくともいずれかから供給される電力を用いて作動可能な補機負荷とを備え、
前記制御方法は、
前記外部電源が前記車両に接続されかつ前記車両に電力供給可能な状態であることを示す第1信号およびユーザが前記補機負荷を作動させている可能性があることを示す第2信号が入力されるか否かを判断するステップと、
前記第1、第2信号に基づいて、前記充電装置を作動させて前記外部電力で前記蓄電装置を充電する外部充電の実行と前記制御装置の作動状態とを制御するステップとを含む、車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−85403(P2012−85403A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228031(P2010−228031)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】