説明

車両の制御装置及び制御方法

【課題】自動MTのクラッチの架け替え時におけるトルク段差を低減する。
【解決手段】トルクアシスト型自動MTにおいては、アシストクラッチを締結しながら噛合いクラッチを解放する際に、締結による伝達トルクの増加速度が時間とともに小さくなるようにアシストクラッチを制御する。またツインクラッチ型自動MTにおいては、飛び変速の場合に、ツインクラッチの2つのクラッチのうち、トルク中断を埋める役割を担う入力軸に対応するクラッチを締結しながら、当初の変速前の噛合いクラッチを解放する際に、締結による伝達トルクの増加速度が時間とともに小さくなるように当該ツインクラッチの一方のクラッチを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置及び制御方法に関し、特に自動変速機の変速制御に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の地球温暖化に対する危機意識の高まりに伴って、車両の変速機には高い効率が求められており、トルクコンバータを用いた自動変速機(AT=Automatic Transmission)におけるロックアップ領域拡大や、無段変速機の大排気量車対応等の技術開発が活性化している。このような流れの中で、高い伝達効率を持つ手動変速機の機構を用いてクラッチ動作及びギアチェンジを自動化した自動MT(自動化Manual Transmission)が開発されている。
【0003】
しかし、従来の自動MTにおける変速時制御では、クラッチの開放・締結操作により駆動トルクの中断が発生し、乗員に違和感を与えるという問題を有している。
【0004】
そこで、従来の自動MTに摩擦クラッチ(アシストクラッチ)を設けるトルクアシスト型自動MTが提案されている(例えば特許文献1参照)。このトルクアシスト型自動MTでは、変速前の噛合いクラッチから一旦アシストクラッチに架け替え、当該アシストクラッチから変速後の噛合いクラッチに架け替えることによりトルク中断を回避する。
【0005】
また、原動機の出力軸から変速機出力軸に至る動力伝達系を2系統設け、それぞれの系統の動力伝達系に対し入力トルクの断接を切り替えるクラッチ2組を有するツインクラッチ型自動MTが提案されている。このツインクラッチ型自動MTでは、2組のクラッチを架け替えることにより、一方の動力伝達系上のギア段から他方の動力伝達系のギア段へ変速することで、トルク中断を回避する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−045163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記トルクアシスト型自動MTやツインクラッチ型自動MTは、例えば機差や経時変化により、クラッチの架け替え時にトルク段差が発生する可能性がある。
【0008】
本発明は、自動MTのクラッチの架け替え時におけるトルク段差を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
トルクアシスト型自動MTにおいては、アシストクラッチを締結しながら噛合いクラッチを解放する際に、締結による伝達トルクの増加速度が時間とともに小さくなるようにアシストクラッチを制御する。
【0010】
またツインクラッチ型自動MTにおいては、飛び変速の場合に、ツインクラッチの2つのクラッチのうち、トルク中断を埋める役割を担う入力軸に設けられた一方のクラッチを締結しながら、当初の変速前の噛合いクラッチを解放する際に、締結による伝達トルクの増加速度が時間とともに小さくなるように当該ツインクラッチの一方のクラッチを制御する。
【0011】
時間とともに増加速度を小さくする際には、例えば噛合いクラッチ締結部材位置,噛合いクラッチ締結部材移動速度,噛合いクラッチ締結部材移動速度変化,入力軸回転数変化,車両加速度,出力軸トルク,出力軸回転数変化の少なくともいずれか一つのパラメータの変化に応じて、アシストクラッチまたはツインクラッチにおける前記一方のクラッチの伝達トルクが入力トルク相当になっているか否かを判定し、当該判定結果に基づいて、当該トルク伝達量の増加率を減少する方向にアシストクラッチまたはツインクラッチにおける前記一方のクラッチの伝達トルクへの制御信号を変化させることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、自動MTのクラッチの架け替え時におけるトルク段差を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態をなす制御に基づくタイムチャートを示す。
【図2】本発明の一実施形態をなす制御に基づくタイムチャートを示す。
【図3】トルクアシスト型自動MTにおけるギア解放時のトルク伝達状態を示す。
【図4】本発明の一実施形態をなすトルクアシスト方式自動MTの全体構成図を示す。
【図5】図4のパワートレーン制御ユニット100と、エンジン制御ユニット101と、油圧制御ユニット102との間の通信手段103による入出力信号関係を示す。
【図6】図4の構成における変速制御の全体フローチャートを示す。
【図7】図4の構成における変速制御の経過時間を示すタイマの内容を示すフローチャートを示す。
【図8】図6のステップ703(解放制御フェーズ)で実行されるアシストクラッチの制御フローチャートを示す。
【図9】図8のアシストクラッチトルク増加率rtAST、アシストクラッチトルク上限ゲインgtqAST_MXを算出する関数構造を示す。
【図10】図4の実施例のアップシフト時のタイムチャートを示す。
【図11】図4の実施例のダウンシフト時のタイムチャートを示す。
【図12】図8で用いる変速機入力軸トルクSTq_inについて、学習補正を行う場合のフローチャートを示す。
【図13】図12のステップ1506の入力トルク補正マップm1の構造の例を示す。
【図14】図6のステップ703(解放制御フェーズ)で実行されるアシストクラッチの制御フローチャートの他の例を示す。
【図15】第1実施例の図4とは異なる他の構成例を示す。
【図16】本発明の一実施形態をなすツインクラッチ方式自動MTの全体構成図を示す。
【図17】図16の変速機のトルク伝達経路を示す。
【図18】図16の実施例のアップシフト時のタイムチャートを示す。
【図19】図16の実施例のダウンシフト時のタイムチャートを示す。
【図20】プリ解放制御を実行した際のタイムチャートを示す。
【図21】プリ解放制御実行時に発生するトルク段差の一例を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0015】
図3は、トルクアシスト型自動MTにおけるギア解放時のトルク伝達状態を示す。
【0016】
トルクアシスト型自動MTは、変速が開始され、噛合い伝達手段によってトルク伝達を行っている歯車列を解放する際、変速機への入力トルクの一部をアシストクラッチによって伝達し、歯車列の伝達トルクの一部を解除し、噛合い伝達手段を解放位置へ移動せしめて解放する動作を行う。
【0017】
ここで、歯車列によってトルク伝達を行う経路を第1のトルク伝達経路、アシストクラッチによってトルク伝達する経路を第2のトルク伝達経路とする。図3(A)は自動変速機の構成例のスケルトン図で、第1のトルク伝達経路の一例を実線で、第2のトルク伝達経路の一例を一点鎖線で、変速機の出力トルク経路を破線で示している。図1(B)は変速機出力トルクのタイムチャートで、第1のトルク伝達経路による出力トルクを実線で、第2のトルク伝達経路による出力トルクを一点鎖線で、変速機の出力トルクを破線で示している。
【0018】
図3(B)における時刻t1まで、すなわち変速開始までは、第1のトルク伝達経路の伝達トルク(以下、変速前ギア伝達トルク)は入力トルクTq_inそのものである。この入力トルクは第1のトルク伝達経路のみを介して出力軸へと伝達されているので、第1のトルク伝達のトルク増幅比をGRGとすると、変速機の出力トルクはTq_in×GRGである。一方、第2のトルク伝達経路を介する伝達トルク(以下、アシストクラッチ伝達トルク)は0(ゼロ)であり、このときの第2のトルク伝達経路の出力トルク(以下、アシストクラッチ出力トルク)も0である。
【0019】
変速機の出力トルクは、変速前ギア出力トルクと、アシストクラッチ出力トルクの合計であるので、アシストクラッチ伝達トルクが0の場合の自動変速機の出力トルクは、変速前ギア出力トルクと同じTq_in×GRGとなる。
【0020】
時刻t1以降、アシストクラッチ伝達トルク(アシストクラッチ出力トルク)を増加させていくと、第1のトルク伝達経路のトルクが第2のトルク伝達経路に遷移し、時刻t2において、変速前ギア出力トルクが0になる。入力トルクをTq_inとすると、このときアシストクラッチ伝達トルクは入力トルクと同じTq_inであるので、第2のトルク伝達経路のトルク増幅比をGRAとすると、このときのアシストクラッチ出力トルクはTq_in×GRAとなる。このときの自動変速機の出力トルクは、アシストクラッチ出力トルクと同じTq_in×GRAとなる。
【0021】
もし時刻t2以降、更にアシストクラッチ伝達トルク(アシストクラッチ出力トルク)を増加させた場合は、変速前ギア出力トルクが負の値を持つ。変速機の出力トルクは、変速前ギア出力トルクとアシストクラッチ出力トルクの合計であるので、第1のトルク伝達経路の噛合いクラッチを解放する際に変速前ギア出力トルクが正負いずれかの値を持っていると、変速機の出力トルクから変速前ギア出力トルク分のトルクが消滅することにより、トルク段差が生じてしまう。
【0022】
そこで、アシストクラッチ出力トルクがTq_in×GRAとなり、変速前ギア出力トルクがおよそ0になるときに、第1のトルク伝達経路の噛合いクラッチを解放すると、変速機出力トルクにトルク段差が生じず、ショックが発生しない。そのためには、変速前ギア出力トルクがおよそ0になるタイミング、すなわちアシストクラッチ伝達トルクが入力トルクと等しくなったタイミングで、第1のトルク伝達経路の噛合いクラッチの解放を行えば良い。
【0023】
しかし、機差や経時劣化等によるアシストクラッチ伝達トルクの立ち上がりのばらつきや、エンジントルクのばらつきにより、最適タイミングとずれたタイミングで噛合いクラッチが解放され、トルク段差が発生し、変速フィーリングを損ねる場合がある。
【0024】
そのため、アシストクラッチ伝達トルクを推定もしくは検出し、推定もしくは検出したアシストクラッチ伝達トルクに基づいて、歯車列の伝達トルクが十分に解除される最適タイミングを検出し、検出した最適タイミングに従って、噛合い伝達手段を解放位置へ移動せしめるように、荷重をかけてギアを解放することが考えられる。
【0025】
しかし、新たにセンサを備え、アシストトルクを検出し、歯車列の伝達トルクが十分に解除される最適タイミングを検出するにはコストアップを招く。
【0026】
また、アシストクラッチ伝達トルクを推定することによって歯車列の伝達トルクを十分に解除した最適タイミングを算出する場合は、機差ばらつきや経時劣化等によって、推定したアシストクラッチ伝達トルクに誤差が伴う。従って、算出した最適タイミングと、実際の最適タイミングにはずれが生じ、必ずしも最適タイミングで噛合いクラッチ解放を行えず、トルク段差が発生し、運転フィーリングを損ねる場合がある。
【0027】
そこで噛合いクラッチ解放前に、噛合いクラッチを解放位置へ移動する方向に荷重をかけ、歯車列の伝達トルクの少なくとも一部が解除されたときに、噛合いクラッチを解放位置へ移動せしめるようにし、歯車列の伝達トルクを十分に解除したタイミング付近で噛合いクラッチ解放を行う制御(以下、プリ解放制御)を実行することが考えられる。
【0028】
図20は、プリ解放制御を実行した際のタイムチャートを示す参考図である。
【0029】
図20(A)は、噛合いクラッチにかかる荷重を示すタイムチャートである。図20(B)は、噛合いクラッチの位置(以下、シフト位置)を示すタイムチャートである。図20(C)は、変速機の出力トルクを示すタイムチャートである。
【0030】
時刻t1sで、噛合いクラッチの噛合い機構に噛合いを解消する方向の荷重(以下、プリ解放シフト荷重)をかける。このとき、プリ解放シフト荷重は、噛合いクラッチを介してトルク伝達していないときに、噛合い機構の噛合いを解消できる荷重より大きく設定する。
【0031】
時刻t2sでアシストクラッチ伝達トルク(アシストクラッチ出力トルク)の立ち上げを開始する。アシストクラッチ出力トルクの立ち上げに伴って、変速前ギア出力トルクが減少する。
【0032】
この間、噛合いクラッチには、噛合いを維持する方向の荷重(以下、ギア噛合い力)が働いており、ギア噛合い力は変速前ギア出力トルクに比例する。
【0033】
入力トルクをTq_in、第2のトルク伝達経路のトルク増幅比をGRAとすると、アシストクラッチ出力トルクがTq_in×GRAとなる時刻t5sで、変速前ギア出力トルクが0になる。
【0034】
ギア噛合い力が、プリ解放荷重より小さくなる時刻t3sから、変速前ギアが解放方向に移動を開始し、時刻tgoでギア解放する。
【0035】
図20(C)のアシストクラッチ出力トルク波形と、時刻tgoで値を同じくして、時刻tgoから続く破線は、時刻tgoでギア解放させずに、アシストクラッチ出力トルクを増加させた場合の波形を示す。
【0036】
図20(C)の変速前ギア出力トルク波形と、時刻tgoで値を同じくして、時刻tgoから続く破線は、時刻tgoでギア解放させず、アシストクラッチ出力トルクを増加させた場合の、変速前ギア出力トルクを示しており、時刻tgo以降マイナストルクとなる。
【0037】
この場合、ギア噛合い力がプリ解放荷重より小さくなる時刻t3s〜時刻t6sの間はギアの解放方向への移動が可能である(ギア可動範囲)。
【0038】
また、変速前ギア伝達トルクが所定内にある時刻t4s〜時刻t6sの間にギア解放を行うと、出力トルクに段差がなく、ショックが低減できる(ギア解放好適範囲)。
【0039】
図21は、プリ解放制御実行時に発生するトルク段差の一例を示す参考図である。
【0040】
図21(A)は、噛合い伝達手段にかかる荷重を示すタイムチャートである。図21(B)は、シフト位置を示すタイムチャートである。図21(C)は、変速機の出力トルクを示すタイムチャートである。
【0041】
図21の時刻t3sにおいて、ギア噛合い力がプリ解放荷重より小さくなって、噛合い伝達手段が解放位置へ移動開始した後、実際にギア解放するまでの間にはある時間を要するため、実際にギア解放する時刻tgoには、ギア解放好適範囲(図21時刻t4s〜時刻t5s)を外れる場合があり、この場合、時刻tgo直前には変速前ギア出力トルクは負のトルクとなっている。ギア解放によって、出力トルクから、負の変速前ギア出力トルクが消滅するので、トルク段差を生じる、さらにはギア可動範囲を外れるとギア解放が行われない場合がある。
【0042】
そこで、プリ解放シフト荷重は当初小さく設定しておき、噛合い伝達手段の解放位置への移動開始を検出したら、プリ解放シフト荷重を大きくすることで、ギア解放速度の速度を大きくし、歯車列の伝達トルクが十分に解除したタイミング付近でギア解放を行うことが考えられる。
【0043】
しかしながら、噛合い伝達手段の移動を生じさせる機構の応答速度が十分では無い場合は、噛合い伝達手段の解放位置への移動開始を検出しプリ解放シフト荷重を大きくしてから、実際に噛合い伝達手段の解放位置への移動速度が増加して、ギア解放するまでの間にトルク段差が発生し、運転フィーリングを損ねる場合がある。
【0044】
そこで、そのようなトルク段差を低減するために、アシストクラッチ出力トルクが次第にTq_in×GRAに漸近するように制御する。
【0045】
図2は、本発明の一実施形態をなす制御に基づくタイムチャートを示す。(A)は噛合い伝達手段にかかる荷重を、(B)はシフト位置を、(C)は変速機の出力トルクを示すタイムチャートである。
【0046】
時刻t1sからのアシストクラッチ出力トルクを増加させる際、アシストクラッチ出力トルクの増加速度を時間が進むにつれて小さくすると、アシストクラッチ伝達トルクが入力トルク付近となる期間が長くなり、変速前ギア出力トルクが0近傍にいる期間が長くなるため、前記ギア可動範囲(時刻t3s〜時刻t6s)、ギア解放好適範囲(時刻t4s〜時刻t5s)のいずれも拡大することができる。
【0047】
これにより、噛合い伝達手段が解放位置へ移動開始した後、実際にギア解放するまでの間に時間を要したとしても、また機差や経年変化によりギア解放時間が想定した時間と異なったとしても、実際にギア解放する時刻tgoはギア解放好適範囲に含まれるようになり、トルク段差を低減することができるという効果がある。
【0048】
尚、図2の例でもトルク段差を効果的に低減することができるが、ギア可動範囲に達するまでの時間(時刻t1sから時刻t3s間の期間)が延びることから、ギア解放時間が延びてしまい、運転フィーリングの悪化,発熱の増加による耐久性の悪化が生じる可能性がある。そこでギア解放移動にかかる時間を短縮するため、プリ解放シフト荷重を大きく設定すると、ギアの移動速度のみでなく、ギア可動範囲が広がるため、歯車列の伝達トルクが十分に解除する前にギア解放が行われる場合があり、やはりギア解放時にトルク段差が発生し、運転フィーリングを損ねる場合がある。
【0049】
そこで、アシストクラッチ伝達トルクが入力トルク相当になった時点で、アシストクラッチ出力トルクの増加速度を減少させる。
【0050】
図1は、本発明の他の実施形態をなす制御に基づくタイムチャートを示す。
【0051】
図1(A)は噛合い伝達手段にかかる荷重を、(B)はシフト位置を、(C)は変速機の出力トルクを示す。
【0052】
時刻t2sでアシストクラッチ出力トルクの増加を開始する。アシストクラッチ出力トルクの増加に伴い、変速前ギア出力トルクが減少する。時刻t3sで、変速前ギア出力トルクが所定値以下となり、それに伴ってギア噛合い力がプリ解放シフト荷重以下となって噛合い伝達機構が解放方向への移動を開始する。アシストクラッチ伝達トルクが入力トルク相当になったと判定した時刻tgsで、アシストクラッチ出力トルクの増加速度を減少させる。時刻tgoでギアが解放される。
【0053】
図において、アシストクラッチ出力トルク波形の時刻tgsから続く破線は、時刻tgs直前のアシストクラッチ出力トルクの増加速度をそのまま継続した場合のアシストクラッチ出力トルク波形を示している。またアシストクラッチ出力トルク波形の時刻tgsから続く点線は、時刻tgs直後のアシストクラッチ出力トルクの増加速度をそのまま継続した場合の、アシストクラッチ出力トルク波形を示している。
【0054】
また変速前ギア出力トルク波形の時刻tgsから続く破線は、時刻tgs直前のアシストクラッチ出力トルクの増加速度をそのまま継続した場合の、変速前ギア出力トルク波形を示している。また変速前ギア出力トルク波形の時刻tgsから続く点線は、時刻tgs直後のアシストクラッチ出力トルクの増加速度をそのまま継続した場合の、変速前ギア出力トルク波形を示している。
【0055】
アシストクラッチ伝達トルクが入力トルク相当になったと判定した時刻tgsで、アシストクラッチ出力トルクの増加速度を減少させることにより、ギア可動範囲はギア噛合い力がプリ解放シフト荷重以下となる時刻t3sから時刻t6s(図示しない)の期間となる。またこのときのギア解放好適範囲は、変速前ギア伝達トルクが所定値以下となる時刻t4sから時刻t5sの期間となる。また、このときのギア解放時間は、時刻t2sから時刻tgoの期間である。
【0056】
このように制御することで、変速前ギア出力トルクの0付近の傾きを小さくすることができるため、ギア可動範囲,ギア解放好適範囲のどちらも拡大することができ、ギア解放ショックを低減することができる。
【0057】
このように、入力軸から出力軸へトルクの伝達が可能な複数の歯車対と複数の噛合い伝達機構とを有する歯車式変速機であり、内燃エンジン等の動力源の出力軸と、前記変速機の出力軸の間に、少なくとも2つの伝達トルク可変機構を備え、前記歯車対と前記噛合い伝達機構との連結を第1の連結から第2の連結へと切り替える際に、前記した伝達トルク可変機構の少なくとも一つを経由して一時的にトルクを伝達するように構成したものにおいて、前記第1の連結から前記第2の連結への変速指令がなされると、前記伝達トルク可変機構による伝達トルクを増加させる変速に際し、前記エンジン、または、前記変速機、またはこれらを搭載した車両の運転状態を表す信号が所定の大きさの変化を生じた時点で、前記伝達トルク可変機構の伝達トルク増加量を減少させる。
【0058】
また、前記第1の連結を形成する噛合い伝達機構の解放方向への移動検出のタイミングに基づき、変速機入力トルク推定値を補正する。
【0059】
また、前記変速機入力トルク補正値に基づき、前記伝達トルク可変機構を制御する。
【0060】
これにより、変速において、トルク伝達を行っている歯車対の前記噛合い伝達機構を解放する際、前記エンジン、または、前記変速機、またはこれらを搭載した車両の運転状態を表す信号が所定の大きさの変化を生じた時点で、前記伝達トルク可変機構を介して伝達するトルクの増加速度を変えることで、ギア解放に適したトルク釣り合い状態を維持し、ギア解放時のショックを低減する。
【0061】
また、前記噛合い伝達機構の解放方向への移動検出のタイミングに基づき、変速機の入力トルク推定値を補正することで、変速機入力トルク推定値に基づいた制御の精度を高め、変速時の運転性を向上する。
【0062】
尚、この技術は自動車,鉄道車両など、自動MTを用いた車両全般に適用可能である。
【0063】
以下、上記を達成するための具体的な構成及び制御を示す。
【実施例1】
【0064】
図4は、本発明の一実施形態をなすトルクアシスト方式自動MTの全体構成図を示す。このトルクアシスト型自動MTは、ツインクラッチ型自動MTに対し、変速機が小型軽量であるとともに、既存の手動変速機からの構造変更が少ないという利点がある。
【0065】
ガソリンエンジンであるエンジン1には、エンジン1の回転数を計測するエンジン回転数センサ(図示しない)、電子制御スロットル他のエンジントルクを調節する装置(図示しない)、吸入空気量に見合う燃料量を噴射するための燃料噴射装置(図示しない)が設けられている。エンジン1は、エンジン制御ユニット101により吸入空気量,燃料量,点火時期等が操作されることにより、出力トルクが高精度に制御されるように構成されている。
【0066】
エンジン1には乾式単板方式の摩擦伝達機構である発進クラッチC1が連結されている。発進クラッチC1を係合,開放することで、エンジン1のトルクを変速機入力軸SIに伝達,遮断する。
【0067】
発進クラッチC1の押付け力(入力軸クラッチトルク)の制御には、油圧によって駆動するアクチュエータ22が用いられる。この押付け力を調節することで、エンジン1の出力を入力軸SIへ伝達,遮断を行うことができるように構成されている。
【0068】
変速機入力軸SIには、第1ドライブギアD1,第2ドライブギアD2,第3ドライブギア,第4ドライブギアD4,第5ドライブギアD5,後進ドライブギア(図示しない)が設けられている。入力軸回転数検出機構として、変速機入力軸SIの回転数を検出するためのセンサNSIが設けられている。
【0069】
変速機出力軸SOには、第1ドリブンギアG1,第2ドリブンギアG2,第3ドリブンギアG3,第4ドリブンギアG4,第5ドリブンギアG5,後進ドリブンギア(図示しない)が設けられている。第1ドリブンギアG1は第1ドライブギアD1と、第2ドリブンギアG2は第2ドライブギアD2と、第3ドリブンギアG3は第3ドライブギアD3と、第4ドリブンギアG4は第4ドライブギアD4と、第5ドリブンギアG5は第5ドライブギアD5と、後進ドリブンギアは逆転ギア(図示しない)を介して後進ドライブギアと、それぞれ噛合している。
【0070】
第1ドライブギアD1と第2ドライブギアD2の間には、第1噛合い伝達機構SC1が設けられている。これは、第1ドライブギアD1または第2ドライブギアD2を変速機入力軸SIに係合させる噛合い伝達機構である。変速機入力軸SIから第1噛合い伝達機構SC1を介して、第1ドライブギアD1または第2ドライブギアD2に伝達された回転トルクは、第1ドリブンギアG1または第2ドリブンギアG2から、変速機出力軸SOに伝達される。
【0071】
同様に第3ドライブギアD3と第4ドライブギアD4の間には噛合い伝達機構である第2噛合い伝達機構SC2が設けられている。
【0072】
また後進ドライブギアには、後進ドライブギアを変速機入力軸SIに係合させる、噛合い伝達機構である第3噛合い伝達機構(図示しない)が設けられている。後進ドライブギアに伝達された回転トルクは、変速機入力軸SIから第3噛合い伝達機構を介して、後進ドリブンギアから変速機出力軸SOに伝達される。
【0073】
変速機入力軸SIの回転トルクを第1噛合い伝達機構SC1、または第2噛合い伝達機構SC2、あるいは第3噛合い伝達機構に伝達するためには、第1噛合い伝達機構SC1、または第2噛合い伝達機構SC2、あるいは第3噛合い伝達機構のうちいずれか一つを変速機入力軸SIの軸方向に移動させ、第1ドライブギアD1,第2ドライブギアD2,第3ドライブギアD3,第4ドライブギアD4,後進ドライブギアのいずれか一つと締結する。ここで第1噛合い伝達機構SC1,第2噛合い伝達機構SC2、あるいは第3噛合い伝達機構を移動するには、シフト第1アクチュエータ23,シフト第2アクチュエータ24,セレクト第1アクチュエータ25,セレクト第2アクチュエータ26によって、シフト機構/セレクト機構27を動作させることによって行う。
【0074】
第1噛合い伝達機構SC1、または第2噛合い伝達機構SC2、あるいは第3噛合い伝達機構のいずれか一つを第1ドライブギアD1,第2ドライブギアD2,第3ドライブギアD3,第4ドライブギアD4,後進ドリブンギアのいずれか一つに締結させることで、変速機入力軸SIの回転トルクを、第1噛合い伝達機構SC1、または第2噛合いクラッチSC2、あるいは第3噛合い伝達機構のいずれか一つを介して駆動輪出力軸SOへと伝達する。
【0075】
出力軸回転数検出機構として、前記変速機出力軸SOの回転数を検出するためのセンサNSOが設けられている。
【0076】
シフト第1アクチュエータ23,シフト第2アクチュエータ24、およびセレクト第1アクチュエータ25,セレクト第2アクチュエータ26は、電磁弁を用いて構成する。シフト/セレクト機構27は、シフターレール,シフターフォークなどによって構成する。
シフト/セレクト機構27には、走行時のギア抜け防止のためにギア位置を保持する位置保持機構(図示しない)を設けることが好ましいが、それがなくても良い。
【0077】
この実施形態では、動力伝達機構ASが備えられており、変速機入力軸SIのトルクを、変速機出力軸SOに伝達する。動力伝達機構ASにはアシストクラッチC2が備えられている。アシストクラッチC2は、伝達トルク可変機構の一方式である摩擦伝達機構であり、ここでは湿式多板クラッチを用いる。ここで、摩擦伝達機構とは、摩擦面の押付け力によって摩擦力を発生させてトルクを伝達する機構である。アシストクラッチC2を係合することで、第5ドライブギアD5と入力軸SIが連結され、第5ドライブギアD5と嵌合する第5ドリブンギアG5を経て、変速機入力軸SIの回転トルクを変速機出力軸SOに伝達する。
【0078】
アシストクラッチC2の押付け力の制御には、油圧によって駆動するアクチュエータ
30を用いる。この押付け力を調節することで、エンジン1の出力を伝達,遮断することができるように構成されている。
【0079】
上記ドライブギアとドリブンギアの組み合わせを介して変速機出力軸SOに伝達された変速機入力軸SIの回転トルクは、変速機出力軸SOに連結されたディファレンシャルギア(図示しない)を介して車軸(図示しない)に伝えられる。
【0080】
発進クラッチC1の押付け力(入力軸クラッチトルク)を発生させる入力軸クラッチアクチュエータ22,アシストクラッチC2の押付け力(アシストクラッチトルク)を発生させるアシストクラッチクラッチアクチュエータ30は、油圧制御ユニット102によって制御される。油圧制御ユニット102は、各アクチュエータに設けられた電磁弁(図示しない)の電流を制御することで各アクチュエータに設けられた油圧シリンダ(図示しない)のストローク量を調節して各アクチュエータの油圧を制御し、各クラッチの伝達トルクの制御を行っている。
【0081】
油圧制御ユニット102は、セレクト第1アクチュエータ25,セレクト第2アクチュエータ26に設けられた電磁弁(図示せず)の電流を制御することで各アクチュエータに設けられた油圧シリンダ(図示せず)のストローク量を調節する。このストローク量を調節することにより、各アクチュエータの油圧を制御し、第1噛合い伝達機構SC1,第2噛合い伝達機構SC2,第3噛合い伝達機構のいずれかを移動または選択している。また、油圧制御ユニット102は、シフト第1アクチュエータ23,シフト第2アクチュエータ24に設けられた電磁弁(図示せず)の電流を制御することで各アクチュエータに設けられた油圧シリンダ(図示せず)のストローク量を調節する。このストローク量を調節することにより、各アクチュエータの油圧を制御し、第1噛合い伝達機構SC1,第2噛合い伝達機構SC2,第3噛合い伝達機構を動作させる荷重を制御できるよう構成されている。
【0082】
エンジン1は、エンジン制御ユニット101により、吸入空気量,燃料量,点火時期等を操作することで、エンジン1のトルクを高精度に制御するようになっている。そして、油圧制御ユニット102とエンジン制御ユニット101は、パワートレイン制御ユニット100によってコントロールされている。パワートレーン制御ユニット101,エンジン制御ユニット101,油圧制御ユニット102は、通信手段103によって相互に情報を送受信する。
【0083】
本実施形態では、入力軸クラッチアクチュエータ22,アシストクラッチアクチュエータ30として油圧アクチュエータを用いているが、電動機等による電気アクチュエータによって構成しても良い。その場合、油圧制御ユニット102は、電動機制御ユニットとなる。
【0084】
また、駆動力源はガソリンエンジンのみならず、ディーゼルエンジン,天然ガスエンジンや、電動機などでも良い。またこれらエンジンと電動機を用いたハイブリッド自動車においても本発明は適用可能である。
【0085】
また、発進クラッチC1,アシストクラッチC2は、乾式単板クラッチ,乾式多板クラッチ,湿式多板クラッチ,電磁クラッチなどを用いても良い。また、動力伝達機構ASは電動発電機などによって構成してもよい。
【0086】
ここで発進クラッチC1は、発進のために用いられる可能性があるという意味で発進クラッチと呼称しているが、発進のために用いられないような実施形態であっても、エンジンと変速機の間の動力を遮断可能な手段をすべて含む。またアシストクラッチC2は、変速をアシストするという意味でアシストクラッチと呼称しているが、自動MTにおけるトルク中断を避けるために用いられる手段すべてを含む。
【0087】
また、第1噛合い伝達機構SC1,第2噛合い伝達機構SC2,第3噛合い伝達機構は、常時噛合い機構でも良く、また摩擦伝達機構を備え、摩擦伝達機構によって回転同期させて噛合わせるクラッチ(いわゆる同期噛合い機構)でも良い。
【0088】
また、シフト第1アクチュエータ23,シフト第2アクチュエータ24、およびセレクト第1アクチュエータ25,セレクト第2アクチュエータ26は、電動機等による電動アクチュエータによって構成しても良い。また、シフト/セレクト機構27は、シフターレール,シフターフォークなどによって構成しても良く、またはドラム式のもので構成しても良い。
【0089】
また、シフト第1アクチュエータ23,シフト第2アクチュエータ24を一つのアクチュエータで構成しても良く、またセレクト第1アクチュエータ25,セレクト第2アクチュエータ26を一つのアクチュエータとして構成しても良い。
【0090】
図5は、図4のパワートレーン制御ユニット100と、エンジン制御ユニット101と、油圧制御ユニット102との間の通信手段103による入出力信号関係を示す。
【0091】
パワートレーン制御ユニット100は、入力部100i,出力部100o,コンピュータ100cを備えたコントロールユニットとして構成される。同様に、エンジン制御ユニット101も、入力部101i,出力部101o,コンピュータ101cを備えたコントロールユニットとして構成され、油圧制御ユニット102も、入力部102i,出力部102o,コンピュータ102cを備えたコントロールユニットとして構成される。
【0092】
パワートレーン制御ユニット100からエンジン制御ユニット101に、通信手段103を用いてエンジントルク指令値tTeが送信され、エンジン制御ユニット101はtTeを実現するように、エンジン1の吸入空気量,燃料量,点火時期等を制御する。また、エンジン制御ユニット101内には、変速機への入力トルクとなるエンジントルクを検出または推定することによりエンジントルクを決定して出力する手段が備えられ、エンジン制御ユニット101によってエンジン1の回転数Ne、エンジン1が発生したエンジントルクTeを検出し、通信手段103を用いてパワートレーン制御ユニット100に送信する。エンジントルク検出手段には、トルクセンサを用いるか、またはインジェクタの噴射パルス幅や吸気管内の圧力とエンジン回転数等など、エンジンのパラメータによる推定手段としても良い。
【0093】
パワートレーン制御ユニット100から油圧制御ユニット102には、入力軸クラッチ目標トルクTTqSTA,目標シフト荷重Fsft,目標セレクト位置tpSEL,アシストクラッチ目標トルクTTqASTが送信される。油圧制御ユニット102は、入力軸クラッチ目標トルクTTqSTAを実現するよう、入力軸クラッチアクチュエータ22を制御して、発進クラッチC1を係合,開放する。
【0094】
また、目標シフト荷重Fsft,目標セレクト位置tpSELを実現するよう、シフト第1アクチュエータ23,シフト第2アクチュエータ24,セレクト第1アクチュエータ25,セレクト第2アクチュエータ26を制御する。このようにシフト/セレクト機構27を操作することにより、シフト位置,セレクト位置を制御し、第1噛合い伝達機構SC1,第2噛合い伝達機構SC2,第3噛合いクラッチの締結,解放を行う。また、アシストクラッチ目標トルクTTqASTを実現するよう、アシストクラッチアクチュエータ30を制御して、アシストクラッチC2を締結,開放する。
【0095】
また油圧制御ユニット102は、入力軸クラッチの係合,開放を示す位置信号rpSTA,シフト位置信号rpSFT,セレクト位置信号rpSELを検出し、パワートレーン制御ユニット100に送信する。
【0096】
パワートレーン制御ユニット100には入力軸回転センサNSI,出力軸回転センサNSOから、入力軸回転数Ni,出力軸回転数Noがそれぞれ入力され、また、Pレンジ,Rレンジ,Nレンジ,Dレンジ等のシフトレバー位置を示すレンジ位置信号RngPosと、アクセルペダル踏み込み量Apsと、ブレーキが踏み込まれているか否かを検出するブレーキスイッチからのON/OFF信号Brkが入力される。パワートレーン制御ユニット100は、例えば、運転者がシフトレンジをDレンジ等にしてアクセルペダルを踏み込んだときは運転者に発進,加速の意志があると判断し、また、運転者がブレーキペダルを踏み込込んだときは運転者に減速,停止の意志があると判断する。そして、運転者の意図を実現するように、エンジントルク指令値tTe,入力軸クラッチ目標トルクTTqSTA,目標シフト荷重Fsft,目標セレクト位置tpSELを設定する。また、出力軸回転数Noから算出する車速Vspとアクセルペダル踏み込み量Apsから変速段を設定し、設定した変速段への変速動作を実行するよう、エンジントルク指令値tTe,入力軸クラッチ目標トルクTTqSTA,目標シフト荷重Fsft,目標セレクト位置tpSEL,アシストクラッチ目標トルクTTqASTを設定する。
【0097】
ここではパワートレーン制御ユニット100,エンジン制御ユニット101,油圧制御ユニット102をそれぞれ分離したユニットで構成しているが、少なくともいずれか2つ、さらには3つ全ての機能を一つのユニットで構成しても良い。その場合、通信手段103による入出力信号は、当該ユニット内の信号線に置き換わる。また以下に説明する制御処理は、それぞれの機能を有するユニット内で実行される。
【0098】
図6は、図4の構成における変速制御の全体フローチャートを示す。
【0099】
以下に示す変速制御の内容は、パワートレーン制御ユニット100のコンピュータ100cにプログラミングされ、あらかじめ定められた周期で繰り返し実行される。
【0100】
ステップ701では、図5に示した各入出力信号によって表される一部または全部のパラメータを読み込み、ステップ702に進む。
【0101】
ステップ702では、車速Vspとアクセルペダル踏み込み量Apsから変速段を決定し、現変速段から次変速段に変速すべきかどうかを判断する。この判断は従来の技術を適用すれば良いので、ここでは説明を省略する。変速すべきではないと判断した場合は、Noに進み、本フローチャートを終了する。変速すべきと判断した場合は、変速動作を開始し、ギアを解放するため、ステップ703に進む。
【0102】
ステップ703(ギア解放制御フェーズ)では、ギア解放制御を実行し、次のステップ704で当該ギア解放制御が完了したか否かを判定する。ギア解放制御が完了していない場合はステップ703に戻り、ギア解放制御が完了した場合はステップ705に進む。
【0103】
ステップ705(回転同期制御フェーズ)では、入力回転数を次変速段相当の回転数である目標回転数に同期するようアシストクラッチ目標トルクを制御し、次のステップ706で当該回転同期制御が完了したか否かを判定する。回転同期制御が完了していない場合はステップ705に戻り、回転同期制御が完了した場合はステップ707に進む。
【0104】
ステップ707(ギア締結制御フェーズ)では、ギア締結制御を実行し、次のステップ708で当該ギア締結制御が完了か否かを判定する。ギア締結制御が完了していない場合はステップ707に戻り、ギア締結制御が完了した場合は、ステップ709に進む。
【0105】
ステップ709(アシストクラッチトルク解放制御フェーズ)では、アシストクラッチトルク解放制御を実行し、次のステップ710で、当該アシストクラッチトルク解放制御が完了したか否かを判定する。アシストクラッチトルク解放制御が完了していない場合はステップ709に戻り、アシストクラッチトルク解放制御が完了した場合は、ステップ711へ進む。
【0106】
ステップ711(変速終了フェーズ)では、変速制御を終了する。
【0107】
図7は、図4の構成における変速制御の経過時間を示すタイマの内容を示すフローチャートを示す。
【0108】
以下に示すタイマの内容は、パワートレーン制御ユニット100のコンピュータ100cにプログラミングされ、あらかじめ定められた周期で繰り返し実行される。
【0109】
ステップ801では、変速制御中であるか否かの判定を行う。変速制御中でない場合はステップ804に進み、ギア解放制御タイマTmr_gopをクリアして処理を終了する。変速制御中の場合はステップ802に進む。
【0110】
ステップ802では、解放制御中であるか否か(図6のステップ703が実行中であるか否か)の判定を行い、解放制御中で無い場合はステップ804に進み、ギア解放制御タイマTmr_gopをクリアして処理を終了する。解放制御中の場合はステップ803に進む。
【0111】
ステップ803では、ギア解放制御タイマTmr_gopをカウントアップする。
【0112】
図8は、図6のステップ703(解放制御フェーズ)で実行されるアシストクラッチの制御フローチャートを示す。
【0113】
ステップ901では、図5に示した各入出力信号によって表される一部または全部のパラメータを読み込み、アシストクラッチ実伝達トルクRTqASTや、入力トルクTq_inなど、必要なデータを求め、ステップ902に進む。ここでアシストクラッチ実伝達トルクRTqASTは、トルクセンサを用いたり、回転数と他のパラメータを組み合わせて推定または演算したり、もしくはアシストクラッチのストロークと伝達トルクの関係を演算またはマップに基づき求めたりするなど、従来の技術を適用すれば良いので、ここでは詳細な説明を省略する。また、入力トルクTq_inは、エンジン側で検出または推定しても良いし、変速機側で検出または推定しても良い。
【0114】
ステップ902では、アシストクラッチ実伝達トルクRTqASTが、入力トルクTq_inと等しいかどうか判定する。アシストクラッチ実伝達トルクRTqASTが、変速機入力軸トルクTq_inと等しい場合はステップ905に進む。等しくない場合はステップ903に進む。ここで等しいかどうか判定する際に、アシストクラッチ実伝達トルクRTqASTと入力トルクTq_inの差が所定の範囲内になったことをもって「等しい」と判断しても良い。所定の範囲内とは、当該範囲を用いて本実施形態を適用した結果、トルク段差の低減という効果が獲られる範囲で設定可能である。所定の範囲は、例えば実験で調整しても良いし、摩擦板の大きさや摩擦係数,材料固有値に応じて実験またはシミュレーションで定められても良い。またアシストクラッチの状態、例えばそのときの温度や熱量,経年変化,機差に応じて変化させても良い。
【0115】
ステップ903では、関数g1(STq_in,Tmr_gop)に基づきアシストクラッチトルク増加率rtASTを求め、ステップ904に進む。ここで変速機入力軸トルクSTq_inは、変速機入力軸トルクTq_inをそのまま用いても良いし、また他の要素による推定値でも良いし、また図10で説明する学習値STq_in2を用いても良い。またTmr_gopは図7で説明したタイマ値である。関数g1の内容は後述の図9で説明する。
【0116】
ステップ904では、ステップ903で演算したアシストクラッチトルク増加率rtASTと、変速機入力軸トルクSTq_inの積から、アシストクラッチ目標トルクTTqASTを演算し、処理を終了する。
【0117】
ステップ905では、関数g2(STq_in)に基づきアシストクラッチ目標トルク上限ゲインgtqAST_MXを演算して、ステップ906に進む。関数g2の内容は後述の図9で説明する。
【0118】
ステップ906では、ステップ905で演算したアシストクラッチ目標トルク上限ゲインgtqAST_MXと、ステップ906で決定した変速機入力軸トルクSTq_inの積から、アシストクラッチ目標トルク上限tqAST_MXを演算する。
【0119】
ステップ907では、目標アシストトルクTTqASTが、ステップ906で演算したアシストクラッチ上限トルクtqAST_MXより小さいかどうか比較し、小さくない場合は処理を終了する。目標アシストトルクTTqASTが上限トルクtqAST_MXより小さい場合はステップ908に進む。
【0120】
ステップ908では、アシストクラッチ目標トルクTTqASTの前回値に、アシストクラッチ目標トルク増加分dttqASTを足し込む。ここでdttqASTは、本実施形態を適用した結果、トルク段差の低減という効果が獲られる範囲で設定可能である。所定の範囲は、例えば実験で調整しても良いし、摩擦板の大きさや摩擦係数,材料固有値に応じて実験またはシミュレーションで定められても良い。またアシストクラッチの状態、例えばそのときの温度や熱量,経年変化,機差に応じて変化させても良い。
【0121】
なお、ここではステップ902において、アシストクラッチ実トルクRTqASTと、変速機入力軸トルクTq_inを比較することにより、アシストクラッチ伝達トルクが入力トルク相当になっているか否かを判定したが、代りに、入力軸回転数変化,車両加速度,出力軸トルク,出力軸回転数変化を用いてもよい。入力軸回転数変化を用いる場合は、入力軸回転数が所定の閾値(例えばアシストクラッチ締結後に想定される回転数や、出力軸回転数に第5ドライブギアD5と第5ドリブンギアG5のギア比を想定した回転数)に達した場合や、入力軸回転数変化率が所定の閾値よりも小さくなったことに基づきアシストクラッチ伝達トルクが入力トルク相当になっているか否かを判定する。出力軸回転数変化も同様である。また車両加速度を用いる場合は、例えばアシストクラッチ伝達トルクが入力トルク相当になった場合の車両加速度を閾値として予め求め、それと実際の車両加速度を比較する。また出力軸トルクを用いる場合も同様に、例えばアシストクラッチ伝達トルクが入力トルク相当になった場合の出力軸トルクを閾値として予め求め、それと実際の出力軸トルクを比較する。また、他にもアシストクラッチ伝達トルクが入力トルク相当になった場合の入力軸回転数変化,車両加速度,出力軸トルク,出力軸回転数変化そのものの挙動を用いて判断することも可能である。
【0122】
図9は、図8のアシストクラッチトルク増加率rtAST,アシストクラッチトルク上限ゲインgtqAST_MXを算出する関数構造を示す。
【0123】
図9(A)には、図8のステップ903の関数g1の設定値の例が示されている。図8のステップ903の関数g1の設定値は、ギア解放制御タイマTmr_gopの進行につれて大きく設定される。また、図では関数g1の設定値を変速機入力軸トルクSTq_inの大きさ毎に設定しているが、それは好ましい形態であって、変速機入力軸トルクSTq_inの代表値によって定められる一意のデータでも良い。さらには、変速段毎、オートモード/マニュアルモードに別設定とすることが好ましい。
【0124】
図9(B)には、図8のステップ905の関数g2の設定値の例が示されている。図8のステップ905の関数g2の設定値は、変速機入力軸トルクSTq_inの進行につれて大きく設定されることが望ましい。また、変速段毎,オートモード/マニュアルモード毎に別設定とすることが望ましい。
【0125】
図10は、図4の実施例のアップシフト時のタイムチャートを示す。(A)は図4の変速機入力軸SIの回転数を、(B)は第3噛合い伝達機構L12及び第2噛合い伝達機構L34の位置(シフト位置)を、(C)は変速前ギア出力トルク,アシストクラッチ出力トルク,変速後ギア出力トルクを、(D)は変速機出力軸SOの出力軸トルクを示す。
【0126】
時刻t0から時刻t4の期間がギア解放フェーズ、時刻t4から時刻t5の間が回転同期フェーズ、時刻t5から時刻t6の間がギア締結フェーズ、時刻t6から時刻t7の間がアシストトルク解放フェーズである。また、時刻t0から時刻t3の期間が、図1における時刻t0sから時刻tgoの期間に対応している。
【0127】
時刻t1でアシストクラッチ出力トルクの立ち上げを開始する。アシストクラッチ出力トルクを立ち上げていくに伴って、変速前ギア出力トルクが減少する。ギアの解放方向への移動を検出した時刻t2で、アシストクラッチ出力トルクの増加速度を小さく変更する。その後時刻t3でギア解放が行われる。ギアがニュートラル付近となった時刻t4から、アシストクラッチを用いた回転同期制御を開始することで入力軸回転数を次変速段相当に回転同期する((A)の時刻t4〜t5)。入力軸回転数が次変速段相当になったところで、ギアを次変速段に切り替える((B)の時刻t5〜t6)。ギアが次変速段になったところで、アシストクラッチ出力トルクの解放を開始すると、アシストクラッチ出力トルクの解放に伴い、次変速段でトルク伝達するようになり、最終的には次変速段のみでトルク伝達するようになる((C)の時刻t6〜t7)。時刻t8で変速が終了する。
【0128】
図11は、図4の実施例のダウンシフト時のタイムチャートを示す。(A)〜(D)の定義は図10と同様である。時刻t0から時刻t2の期間が、図1における時刻t0sから時刻t5sの期間に対応している。
【0129】
時刻t1でアシストクラッチ出力トルクの立ち上げを開始する。アシストクラッチ出力トルクを立ち上げていくに伴って、変速前ギア出力トルクが減少する。時刻t2で、ギアの解放移動を検出し、アシストクラッチ出力トルクの増加速度を小さく変更する。その後ギア解放が行われる((B)の時刻t3)。ギアがニュートラル付近となった時刻t4から、アシストクラッチを用いた回転同期制御を開始することで入力軸回転数を次変速段相当に回転同期する((A)の時刻t4〜t5)。入力軸回転数が次変速段相当になったところで、ギアを次変速段に切り替える((B)の時刻t5〜t6)。ギアが次変速段になったところで、アシストクラッチ出力トルクの解放を開始すると、アシストクラッチ出力トルクの解放に伴い、次変速段でトルク伝達するようになり、最終的には次変速段のみでトルク伝達するようになる((C)の時刻t6〜t7)。時刻t8で変速が終了する。
【0130】
図12は、図8で用いる変速機入力軸トルクSTq_inについて、学習補正を行う場合のフローチャートを示す。この学習補正は必須ではないが、実施することが好ましい。
【0131】
ステップ1501では、パラメータの読み込みを行い、ステップ1502に進む。
【0132】
ステップ1502では、ギア解放フェーズか否かの判定を行い、ギア解放フェーズの場合はステップ1503に進む。ギア解放フェーズではない場合はステップ1507に進む。
【0133】
ステップ1503では、第1噛合い伝達機構SC1,第2噛合い伝達機構SC2,第3噛合い伝達機構等の噛合い伝達部材(またはクラッチ,ボークリングなど)の位置が所定範囲SFT_op内にあるかどうかの判定を行う。所定範囲SFT_op内の場合はステップ1504に進む。所定範囲SFT_op内にない場合はステップ1507に進む。
【0134】
上記所定範囲SFT_opは、噛合い伝達機構が噛合い状態で前述のプリ解放シフト荷重をかけた場合に、アシストクラッチ伝達トルクと入力トルクとが釣り合い状態に至る以前に、部材のたわみや、噛込み不十分等が原因で噛合い部材が移動してしまう場合の移動範囲を含まないように設定することが好ましい。
【0135】
ステップ1504では、噛合い伝達部材の移動速度spSFTが所定速度SFT_opsp以上で、かつ噛合い伝達部材の移動速度の前回値spSFTzが所定速度SFT_opsp以下であるかどうか判定を行う。この条件が成立した場合はステップ1505に進む。条件が非成立の場合はステップ1507に進む。尚、所定速度SFT_opspは、シフトの解放移動が安定して検出可能な値に設定することが好ましい。
【0136】
ステップ1505では、アシストクラッチ目標トルクTTqASTを入力トルクTq_inで割って、学習補正値bcTq_inを算出する。
【0137】
ステップ1506では、ステップ1505で求めた学習補正値bcTq_inを図11で説明する学習補正マップm1に格納する。
【0138】
ステップ1507では、推定入力トルクSTq_inに、学習補正マップm1の値を掛けて学習後推定入力トルクSTq_in2を算出し、以後のアシストクラッチ目標トルクTTqAST演算時に、推定入力トルクSTq_inの代りに用いることで、アシストクラッチ目標トルクTTqASTに対する補正が可能となる。
【0139】
図13は、図12のステップ1506の入力トルク補正マップm1の構造の例を示す。
【0140】
ステップ1506の入力トルク補正マップm1の構造は、推定入力トルクSTq_inと、エンジン回転数Neのマップになっていることが好ましい。また、アクセル開度や、その他のエンジン運転状態を表すパラメータ別の設定となっていても良い。
【実施例2】
【0141】
以下、第2実施例を示す。
【0142】
図14に、図6のステップ703(解放制御フェーズ)で実行されるアシストクラッチの制御フローチャートの他の例を示す。他の構成や制御,符号や記号の意味や内容は第1実施例に示したものと同様である。
【0143】
ステップ1001でパラメータを読み込む。
【0144】
ステップ1002で実シフト位置が所定シフト位置SFT_op範囲内であるか比較する。実シフト位置が所定シフト位置SFT_op範囲外の場合はステップ903に進む。実シフト位置rpSFTの絶対値が所定シフト位置SFT_op範囲内の場合にはステップ1005に進む。上記所定シフト位置SFT_op範囲は、ギア噛込み状態からプリ解放荷重をかけた際に、アシストクラッチ伝達トルクがトルク釣り合い点に至る以前に、部材のたわみや噛合いのずれによってシフト位置が動いてしまう場合の移動範囲を含まないように設定する。これは、アシストクラッチ伝達トルクがトルク釣り合い点になった際のシフト移動との切り分けを行う処理である。
【0145】
ステップ1003では、関数g1に基づきアシストクラッチトルク増加率rtASTを演算し、ステップ1004に進む。
【0146】
ステップ1004では、ステップ1003で演算したアシストクラッチトルク増加率rtASTと、変速機入力軸トルクSTq_inの積から、アシストクラッチ目標トルクTTqASTを演算する。
【0147】
ステップ1005では、実シフト位置より算出した実シフト速度が所定シフト速度SFT_opsp以上か否かを比較する。実シフト速度が所定値以上の場合は、ステップ1006に進む。実シフト速度が所定値以下の場合はステップ1003に進む。
【0148】
ステップ1006では、関数g2に基づきアシストクラッチ目標トルク上限ゲインgtqAST_MXを演算する。
【0149】
ステップ1007では、ステップ1006で演算したアシストクラッチ目標トルク上限ゲインgtqAST_MXと、変速機入力軸トルクSTq_inの積から、アシストクラッチ目標トルク上限tqAST_MXを演算する。
【0150】
ステップ1008では、目標アシストトルクTTqASTが、ステップ1007で演算したアシストクラッチ上限トルクtqAST_MXより小さいかどうか比較し、小さい場合はステップ1009に進む。
【0151】
ステップ1009では、アシストクラッチ目標トルク前回値に、アシストクラッチ目標トルク増加分dttqASTを足し込む。
【0152】
本実施例によれば、経年変化や機差による制御変動を低減できるという効果がある。
【実施例3】
【0153】
以下、第3実施例を示す。
【0154】
図15は、第1実施例の図4とは異なる他の構成例を示す。他の構成や制御,符号や記号の意味や内容は第1実施例に示したものと同様である。また、この実施例に実施例2を組み合わせることも可能である。
【0155】
本実施例においては、第1変速クラッチSC1と、第2変速クラッチSC2とが変速機出力軸SO上の、従動歯車側に配置されている。
【0156】
また、変速機出力軸SOと平行に、変速機外部出力軸SO2が設けられている。
【0157】
また、変速機出力軸SOに、出力駆動歯車DOを設けてある。出力駆動歯車DOは、変速機2Aの外部出力軸SO2に設けられた出力従動歯車GOと噛合っている。なお、出力駆動歯車GOと、出力従動歯車DOの代りに、差動減速機を用いても良い。
【0158】
本実施例は、前輪駆動車に採用するに好適である。
【実施例4】
【0159】
以下、第4実施例を示す。
【0160】
図16は、第1実施例の図4とは異なるさらに他の構成例を示す。他の構成や制御,符号や記号の意味や内容は第1実施例に示したものと同様である。また、この実施例に実施例2を組み合わせることも可能である。
【0161】
図4と異なる点は、図4に図示の構成例が発進クラッチC1の係合によってエンジン1のトルクを変速機入力軸SIに伝達するように構成されているのに対し、本構成例がツインクラッチで構成されている点である。すなわち、入力軸第1クラッチC1Aの締結によってエンジン1のトルクが変速機第1入力軸SIAに伝達され、入力軸第2クラッチC1Bの締結によってエンジン1のトルクが変速機第2入力軸SIBに伝達するように構成されている。
【0162】
変速機第2入力軸SIBは中空になっており、変速機第1入力軸SIAは、変速機第2入力軸SIBの中空部分を貫通し、変速機第2入力軸SIBに対し回転方向への相対運動が可能な構成となっている。
【0163】
変速機第2入力軸SIBには、第1ドライブギアD1と第3ドライブギアD3と第5ドライブギアD5が固定されており、変速機第1入力軸SIAに対して回転自在となっている。また、変速機第1入力軸SIAには、第2ドライブギアD2と第4ドライブギアD4が固定されており、変速機第2入力軸SIBに対しては、回転自在となっている。入力軸第1クラッチC1Aの係合,解放は入力軸クラッチ第1アクチュエータ305によって行われ、入力軸第2クラッチC1Bの係合,解放は入力軸クラッチ第2アクチュエータ306によって行われる。
【0164】
第1ドリブンギアG1と第3ドリブンギアG3の間には、第1ドリブンギアG1を変速機出力軸SOに係合させたり、第3ドリブンギアG3を変速機出力軸SOに係合させる第1変速クラッチSC13が設けられている。したがって、第1ドライブギアD1、または第3ドライブギアD3から第1ドリブンギアG1または第3ドリブンギアG3に伝達された回転トルクは、第1変速クラッチSC13に伝達され、第1変速クラッチSC13を介して変速機出力軸SOに伝達される。
【0165】
また、第2ドリブンギアG2と第4ドリブンギアG4の間には、第2ドリブンギアG2を変速機出力軸SOに係合させたり、第4ドリブンギアG4を変速機出力軸SOに係合させる、第3噛合いクラッチSC24が設けられている。したがって、第2ドライブギアD2、または第4ドライブギアD4から第2ドリブンギアG2または第4ドリブンギアG4に伝達された回転トルクは、第3噛合いクラッチSC24に伝達され、第3噛合いクラッチSC24を介して変速機出力軸SOに伝達される。
【0166】
また、第5ドリブンギアG5には、第5ドリブンギアG5を変速機出力軸SOに係合させる、第2噛合いクラッチSC5が設けられている。したがって、第5ドライブギアD5から第5ドリブンギアG5に伝達された回転トルクは、第2噛合いクラッチSC5に伝達され、第2噛合いクラッチSC5を介して変速機出力軸SOに伝達される。
【0167】
このように、変速機第1入力軸SIA、および変速機第2入力軸SIBの回転トルクを第1噛合いクラッチSC13、または第2噛合いクラッチSC5、または第3噛合いクラッチSC24に伝達するためには、第1噛合いクラッチSC13、または第2噛合いクラッチSC5、または第3噛合いクラッチSC24のうちいずれか一つを変速機出力軸SOの軸方向に移動させ、第1ドリブンギアG1,第2ドリブンギアG2,第3ドリブンギアG3,第4ドリブンギアG4,第5ドリブンギアG5のいずれか一つと締結する必要がある。そのためには、第1噛合いクラッチSC13、または第2噛合いクラッチSC5、または第3噛合いクラッチSC24を移動する。第1噛合いクラッチSC13、または第2噛合いクラッチSC5、または第3噛合いクラッチSC24を移動するために、シフト第1アクチュエータ23,シフト第2アクチュエータ24,セレクト第1アクチュエータ25,セレクト第2アクチュエータ26によって、シフト/セレクト機構28を動作させる。
【0168】
ここで、例えば、第1ドライブギアD1、および第1ドリブンギアG1によって変速機出力軸SOにトルク伝達を行っている場合を第1変速段,第3ドライブギアD3、および第3ドリブンギアG3によって変速機出力軸SOにトルク伝達を行っている場合を第3変速段,第4ドライブギアD4、および第4ドリブンギアG4によって変速機出力軸SOにトルク伝達を行っている場合を第4変速段とすると、第1変速段から第3変速段へのアップシフト変速や、第3変速段から第1変速段へのダウンシフト変速は、入力軸第1クラッチC1Aを開放状態とし、第3噛合いクラッチSC24と第4ドリブンギアG4を係合状態とした状態から、図4に図示の実施の形態における、アシストクラッチおよびシフトと同様の制御を行うことで変速することになる。
【0169】
また例えば、第2ドライブギアD2、および第2ドリブンギアG2によって変速機出力軸SOにトルク伝達を行っている場合を第2変速段,第4ドライブギアD4、および第4ドリブンギアG4によって変速機出力軸SOにトルク伝達を行っている場合を第4変速段,第5ドライブギアD5、および第5ドリブンギアG5によって変速機出力軸SOにトルク伝達を行っている場合を第5変速段とすると、第2変速段から第4変速段へのアップシフト変速や、第4変速段から第2変速段へのダウンシフト変速は、入力軸第2クラッチC1Bを開放状態とし、第2噛合いクラッチSC5と第5ドリブンギアD5を係合状態とした状態から、図4に図示の実施の形態における、アシストクラッチおよびシフトと同様の制御を行うことで変速することになる。
【0170】
従って、このようなツインクラッチ方式自動MTの飛び変速時には、実施例1に記載したことと同様の制御が適用可能である。
【0171】
図17は、図16の変速機のトルク伝達経路を示す。
【0172】
ここでは、図16で示されるエンジン1の出力軸から2つのクラッチC1A,C1Bに至る経路と、2つの入力軸SIA、SIAを並列状に表現しているが、実際には図16で示されるように同軸状に配置されるものである。
【0173】
図17(A)は、例として、前記第1変速段から第3変速段への変速の際の、ギア解放時トルク伝達経路を示している。
【0174】
図17(A)において、エンジン1の出力軸から、クラッチC1Bと入力軸SIB上のギア列を介して、変速機出力軸へと伝達するトルク伝達経路((A)の実線)が、図3で示す第1のトルク伝達経路に相当しており、エンジン1の出力軸から、クラッチC1Aと入力軸SIA上のギア列を介して、変速機出力軸へと伝達するトルク伝達経路((A)の一点鎖線)が、図3の第2のトルク伝達経路に相当する。
【0175】
図17(B)は、例として、第2変速段から第4変速段への変速の際のギア解放時トルク伝達経路を示している。
【0176】
図17(B)において、エンジン1の出力軸から、クラッチC1Aと入力軸SIA上のギア列を介して、変速機出力軸へと伝達するトルク伝達経路((B)の実線)が、図3で示す第1のトルク伝達経路に相当しており、エンジン1の出力軸から、クラッチC1Bと入力軸SIB上のギア列を介して、変速機出力軸へと伝達するトルク伝達経路((B)の一点鎖線)が、図3の第2のトルク伝達経路に相当する。
【0177】
図18は、図16の実施例のアップシフト時のタイムチャートを示す。ここでは、例として1速から3速への飛び変速の場合を示している。(A)は変速機入力軸SIBの回転数を、(B)は第1噛合い伝達機構L13の位置(シフト位置)を、(C)は1速ギア出力トルク,4速ギア出力トルク,3速ギア出力トルクを、(D)は変速機出力軸SOの出力軸トルクを示す。
【0178】
図10で示すアシストクラッチ出力トルクが、クラッチC1Aと、4速ギアを介して伝達するトルク伝達経路の出力トルク(以下、4速ギア出力トルク)に置き換わること以外の基本動作としては、図10と同様である。
【0179】
ここで4速ギア出力トルクは、クラッチC1Aにより出力トルクの大小が連続的に調整される。
【0180】
時刻t0から時刻t4の期間がギア解放フェーズ、時刻t4から時刻t5の間が回転同期フェーズ、時刻t5から時刻t6の間がギア締結フェーズ、時刻t6から時刻t7の間が、4速ギアトルク解放フェーズである。時刻t0から時刻t3の期間が、図1における時刻t0sから時刻tgoの期間に対応している。
【0181】
時刻t1で4速ギア出力トルクの立ち上げを開始する。4速ギア出力トルクを立ち上げていくに伴って、1速ギア出力トルクが減少する。ギアの解放方向への移動を検出した時刻t2で、4速ギア出力トルクの増加速度を小さく変更する。その後時刻t3でギア解放が行われる。ギアがニュートラル付近となった時刻t4から、クラッチC1Aを用いた回転同期制御を開始することで入力軸回転数を次変速段相当に回転同期する((A)の時刻t4〜t5)。入力軸回転数が次変速段相当になったところで、ギアを次変速段に切り替える((B)の時刻t5〜t6)。ギアが次変速段になったところで、4速ギア出力トルクの解放を開始すると、4速ギア出力トルクの解放に伴い、次変速段でトルク伝達するようになり、最終的には次変速段のみでトルク伝達するようになる((C)の時刻t6〜t7)。時刻t8で変速が終了する。
【0182】
図19は、図16の実施例のダウンシフト時のタイムチャートを示す。ここでは、例として3速から1速への飛び変速の場合を示している。(A)は変速機入力軸SIBの回転数を、(B)は第1噛合い伝達機構L13の位置(シフト位置)を、(C)は3速ギア出力トルク,4速ギア出力トルク,1速ギア出力トルクを、(D)は変速機出力軸SOの出力軸トルクを示す。
【0183】
図11で示すアシストクラッチ出力トルクが、クラッチC1Aと、4速ギアを介して伝達するトルク伝達経路の出力トルク(以下、4速ギア出力トルク)に置き換わること以外の基本動作としては、図11と同様である。
【0184】
前記4速ギア出力トルクは、クラッチC1Aにより出力トルクの大小が連続的に調整される。
【0185】
時刻t0から時刻t4の期間がギア解放フェーズ、時刻t4から時刻t5の間が回転同期フェーズ、時刻t5から時刻t6の間がギア締結フェーズ、時刻t6から時刻t7の間が4速ギアトルク解放フェーズとなっている。時刻t0から時刻t2の期間が、図1における時刻t0sから時刻t5sの期間に対応している。
【0186】
時刻t1で4速ギア出力トルクの立ち上げを開始する。4速ギア出力トルクを立ち上げていくに伴って、変速前ギア出力トルクが減少する。時刻t2で、ギアの解放移動を検出し、4速ギア出力トルクの増加速度を小さく変更する。その後ギア解放が行われる((B)の時刻t3)。ギアがニュートラル付近となった時刻t4から、クラッチC1Aを用いた回転同期制御を開始することで入力軸回転数を次変速段相当に回転同期する((A)の時刻t4〜t5)。入力軸回転数が次変速段相当になったところで、ギアを次変速段に切り替える((B)の時刻t5〜t6)。ギアが次変速段になったところで、4速ギア出力トルクの解放を開始すると、4速ギア出力トルクの解放に伴い、次変速段でトルク伝達するようになり、最終的には次変速段のみでトルク伝達するようになる((C)の時刻t6〜t7)。時刻t8で変速が終了する。
【0187】
このように、ツインクラッチ型自動MTにおいても、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0188】
1…エンジン、2…変速機、100…パワートレーン制御ユニット、101…エンジン制御ユニット、102…油圧制御ユニット、C1…発進クラッチ、C2…アシストクラッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸のトルクを、第1の歯車対及び第1の噛合いクラッチを介して出力軸に伝えるトルク伝達経路から、第2の歯車対及び第2の噛合いクラッチを介して前記出力軸に伝えるトルク伝達経路に切り替えて変速を行う際に、前記入力軸と前記出力軸の間のトルク伝達経路を形成するアシストクラッチを締結しながら前記第1の噛合いクラッチを開放し、前記アシストクラッチを解放しながら前記第2の噛合いクラッチを締結する自動変速機を有する車両の制御装置であって、
締結による伝達トルクの増加速度が時間とともに小さくなるように前記アシストクラッチを制御する制御部と、
前記入力軸トルクを検出または推定によって決定する入力軸トルク決定部と、
前記アシストクラッチの伝達トルクを検出または推定によって決定するアシストクラッチ伝達トルク決定部と、を有し、
前記制御部は、前記入力軸トルク決定部で決定された入力軸トルクと、前記アシストクラッチ伝達トルク決定部で決定された前記アシストクラッチ伝達トルクとを比較することによって、前記アシストクラッチ伝達トルクが入力軸トルク相当になっているか否かを判定し、当該判定結果に応じてアシストクラッチ目標トルクの増加率を変化させる車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の制御装置であって、
変速開始からの時間を計測して出力するタイマと、
前記タイマの計測時間とアシストクラッチトルク増加率を対応付けたマップを記憶するメモリと、を有し、
前記制御部は、前記入力軸トルク決定部で決定された入力軸トルクと、前記アシストクラッチ伝達トルク決定部で決定された前記アシストクラッチ伝達トルクとの差が所定の値よりも大きい場合には、前記マップから前記入力軸トルク決定部と前記タイマの出力に応じた前記アシストクラッチトルク増加率を入手し、前記アシストクラッチトルク増加率に応じた信号を前記アシストクラッチのアクチュエータに出力するとともに、
前記入力軸トルク決定部で決定された入力軸トルクと、前記アシストクラッチ伝達トルク決定部で決定された前記アシストクラッチ伝達トルクとの差が前記所定の値以下の場合には、前回アシストクラッチ目標トルクに一定値を加える制御を行う車両の制御装置。
【請求項3】
入力軸のトルクを、第1の歯車対及び第1の噛合いクラッチを介して出力軸に伝えるトルク伝達経路から、第2の歯車対及び第2の噛合いクラッチを介して前記出力軸に伝えるトルク伝達経路に切り替えて変速を行う際に、前記入力軸と前記出力軸の間のトルク伝達経路を形成するアシストクラッチを締結しながら前記第1の噛合いクラッチを開放し、前記アシストクラッチを解放しながら前記第2の噛合いクラッチを締結する自動変速機を有する車両の制御装置であって、
締結による伝達トルクの増加速度が時間とともに小さくなるように前記アシストクラッチを制御する制御部と、
前記第1の噛合いクラッチの締結部材の位置を検出または推定によって決定する噛合いクラッチ締結部材位置決定部を有し、
前記制御部は、前記噛合いクラッチ締結部材位置決定部で決定された噛合いクラッチ締結部材位置に基づいてアシストクラッチ目標トルクの増加率を変化させる車両の制御装置。
【請求項4】
請求項3記載の車両の制御装置であって、
前記制御部は、前記噛合いクラッチ締結部材位置決定部で決定された前記噛合いクラッチ締結部材位置が解放方向に所定位置まで移動したら、アシストクラッチ目標トルクの増加率を減少させる車両の制御装置。
【請求項5】
請求項3記載の車両の制御装置であって、
前記第1の噛合いクラッチの締結部材の移動速度を検出または推定によって決定する噛合いクラッチ締結部材移動速度決定部を有し、
前記制御部は、前記噛合いクラッチ締結部材移動速度決定部で決定された前記噛合いクラッチ締結部材移動速度が所定値以上のとき、アシストクラッチ目標トルクの増加率を減少させる車両の制御装置。
【請求項6】
請求項3記載の車両の制御装置であって、
前記第1の噛合いクラッチの締結部材の移動速度変化を検出または推定によって決定する噛合いクラッチ締結部材移動速度変化決定部を有し、
前記制御部は、前記噛合いクラッチ締結部材移動速度変化決定部で決定された前記噛合いクラッチ締結部材移動速度変化が所定値以上のとき、アシストクラッチ目標トルクの増加率を減少させる車両の制御装置。
【請求項7】
入力軸のトルクを、第1の歯車対及び第1の噛合いクラッチを介して出力軸に伝えるトルク伝達経路から、第2の歯車対及び第2の噛合いクラッチを介して前記出力軸に伝えるトルク伝達経路に切り替えて変速を行う際に、前記入力軸と前記出力軸の間のトルク伝達経路を形成するアシストクラッチを締結しながら前記第1の噛合いクラッチを開放し、前記アシストクラッチを解放しながら前記第2の噛合いクラッチを締結する自動変速機を有する車両の制御装置であって、
締結による伝達トルクの増加速度が時間とともに小さくなるように前記アシストクラッチを制御する制御部と、
前記入力軸の回転数を検出または推定によって決定する入力軸回転数決定部を有し、
前記制御部は、前記入力軸回転数決定部で決定された入力軸回転数に基づいてアシストクラッチ目標トルクの増加率を変化させる車両の制御装置。
【請求項8】
入力軸のトルクを、第1の歯車対及び第1の噛合いクラッチを介して出力軸に伝えるトルク伝達経路から、第2の歯車対及び第2の噛合いクラッチを介して前記出力軸に伝えるトルク伝達経路に切り替えて変速を行う際に、前記入力軸と前記出力軸の間のトルク伝達経路を形成するアシストクラッチを締結しながら前記第1の噛合いクラッチを開放し、前記アシストクラッチを解放しながら前記第2の噛合いクラッチを締結する自動変速機を有する車両の制御装置であって、
締結による伝達トルクの増加速度が時間とともに小さくなるように前記アシストクラッチを制御する制御部と、
前記出力軸の回転数を検出または推定によって決定する出力軸回転数決定部を有し、
前記制御部は、前記出力軸回転数決定部で決定された出力軸回転数に基づいてアシストクラッチ目標トルクの増加率を変化させる車両の制御装置。
【請求項9】
入力軸のトルクを、第1の歯車対及び第1の噛合いクラッチを介して出力軸に伝えるトルク伝達経路から、第2の歯車対及び第2の噛合いクラッチを介して前記出力軸に伝えるトルク伝達経路に切り替えて変速を行う際に、前記入力軸と前記出力軸の間のトルク伝達経路を形成するアシストクラッチを締結しながら前記第1の噛合いクラッチを開放し、前記アシストクラッチを解放しながら前記第2の噛合いクラッチを締結する自動変速機を有する車両の制御装置であって、
締結による伝達トルクの増加速度が時間とともに小さくなるように前記アシストクラッチを制御する制御部と、
前記出力軸のトルクを検出または推定によって決定する出力軸トルク決定部を有し、
前記制御部は、前記出力軸トルク決定部で決定された出力軸トルクに基づいてアシストクラッチ目標トルクの増加率を変化させる車両の制御装置。
【請求項10】
入力軸のトルクを、第1の歯車対及び第1の噛合いクラッチを介して出力軸に伝えるトルク伝達経路から、第2の歯車対及び第2の噛合いクラッチを介して前記出力軸に伝えるトルク伝達経路に切り替えて変速を行う際に、前記入力軸と前記出力軸の間のトルク伝達経路を形成するアシストクラッチを締結しながら前記第1の噛合いクラッチを開放し、前記アシストクラッチを解放しながら前記第2の噛合いクラッチを締結する自動変速機を有する車両の制御装置であって、
締結による伝達トルクの増加速度が時間とともに小さくなるように前記アシストクラッチを制御する制御部と、
前記車両の加速度を検出または推定によって決定する車両加速度決定部を有し、
前記制御部は、前記車両加速度決定部で決定された車両加速度に基づいてアシストクラッチ目標トルクの増加率を変化させる車両の制御装置。
【請求項11】
入力軸のトルクを、第1の歯車対及び第1の噛合いクラッチを介して出力軸に伝えるトルク伝達経路から、第2の歯車対及び第2の噛合いクラッチを介して前記出力軸に伝えるトルク伝達経路に切り替えて変速を行う際に、前記入力軸と前記出力軸の間のトルク伝達経路を形成するアシストクラッチを締結しながら前記第1の噛合いクラッチを開放し、前記アシストクラッチを解放しながら前記第2の噛合いクラッチを締結する自動変速機を有する車両の制御装置であって、
締結による伝達トルクの増加速度が時間とともに小さくなるように前記アシストクラッチを制御する制御部とを有し、
前記制御部は、前記入力軸にトルクを入力する原動機,前記自動変速機、または前記車両の運転状態の少なくともいずれか一つを表すパラメータの変化に応じて、アシストクラッチ目標トルクの増加率を変化させる車両の制御装置。
【請求項12】
入力軸のトルクを、第1の歯車対及び第1の噛合いクラッチを介して出力軸に伝えるトルク伝達経路から、第2の歯車対及び第2の噛合いクラッチを介して前記出力軸に伝えるトルク伝達経路に切り替えて変速を行う際に、前記入力軸と前記出力軸の間のトルク伝達経路を形成するアシストクラッチを締結しながら前記第1の噛合いクラッチを開放し、前記アシストクラッチを解放しながら前記第2の噛合いクラッチを締結する自動変速機を有する車両の制御装置であって、
締結による伝達トルクの増加速度が時間とともに小さくなるように前記アシストクラッチを制御する制御部とを有し、
前記制御部は、前記入力軸にトルクを入力する原動機,前記自動変速機、または前記車両の運転状態の少なくともいずれか一つを表すパラメータの変化に応じて、当該アシストクラッチのトルク伝達量の増加率が減少する方向に前記アシストクラッチへの制御信号が変化する車両の制御装置。
【請求項13】
請求項12記載の車両の制御装置であって、
前記パラメータは、前記噛合いクラッチ締結部材位置,前記噛合いクラッチ締結部材移動速度,前記噛合いクラッチ締結部材移動速度変化,入力軸回転数変化,車両加速度,出力軸トルク,出力軸回転数変化の少なくともいずれか一つである車両の制御装置。
【請求項14】
原動機からのトルクを、第1の入力軸に設けられた第1のクラッチ及び第2の入力軸に設けられた第2のクラッチを有するツインクラッチを介して2つの入力軸に伝達し、当該ツインクラッチの2つのクラッチを架け替えることによって、第1の前記入力軸に設けられた第1の歯車対及び第1の噛合いクラッチを介して出力軸に伝える第1のトルク伝達経路から、第2の前記入力軸に設けられた第2の歯車対及び第2の噛合いクラッチを介して前記出力軸に伝える第2のトルク伝達経路に切り替えて変速を行い、
前記第1のトルク伝達経路から、前記第1の入力軸に設けられた第3の歯車対及び第3の噛合いクラッチで構成される第3のトルク伝達経路に切り替えるにあたり、一時的に前記第2のトルク伝達経路を形成するように、前記ツインクラッチの第2のクラッチを締結しながら前記第1の噛合いクラッチを開放し、前記ツインクラッチの前記第2のクラッチを解放しながら前記第3の噛合いクラッチを締結する自動変速機を有する車両の制御装置であって、
締結による伝達トルクの増加速度が時間とともに小さくなるように前記ツインクラッチの前記第2のクラッチを制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記入力軸にトルクを入力する原動機,前記自動変速機、または前記車両の運転状態の少なくともいずれか一つを表すパラメータの変化に応じて、前記ツインクラッチの前記第2のクラッチへの制御信号が変化する車両の制御装置。
【請求項15】
請求項14記載の車両の制御装置であって、
前記パラメータは、前記噛合いクラッチ締結部材位置,前記噛合いクラッチ締結部材移動速度,前記噛合いクラッチ締結部材移動速度変化,入力軸回転数変化,車両加速度,出力軸トルク,出力軸回転数変化の少なくともいずれか一つである車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−255855(P2010−255855A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184554(P2010−184554)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【分割の表示】特願2005−230240(P2005−230240)の分割
【原出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】