説明

車両の制御装置

【課題】無段変速モードの場合と固定変速モードの場合とでドライバビリティに違和感を生じるのを防ぐことが可能な車両の制御装置を提供する。
【解決手段】車両の制御装置は、変速モードとして、動力源の回転数と駆動軸の回転数との回転数比が連続的に変化する無段変速モードと、前記回転数比が固定となる固定変速モードとを有する車両に適用される。車両の制御装置は制御手段を備える。制御手段は、前記動力源の出力トルクを制御することにより、前記駆動軸の駆動トルクが所定値から目標値に到達するまでの到達時間を、無段変速モードの場合と固定変速モードの場合とで一致させる。これにより、無段変速モードと固定変速モードとで、運転者に違和感を与えないドライバビリティを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に好適な制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関(エンジン)に加えて、電動機や発電機として機能するモータジェネレータを備えるハイブリッド車両が知られている。ハイブリッド車両では、内燃機関を可及的に高効率状態で運転する一方、駆動力やエンジンブレーキの過不足をモータジェネレータで補う。
【0003】
このようなハイブリッド車両の一例として、以下の特許文献1に示すように、無段変速モードと固定変速モードとを切り替えて運転することが可能なように構成されたハイブリッド車両がある。このハイブリッド車両では、例えば、2つの遊星歯車機構を組み合わせた動力分配機構を有し、動力分配機構は、エンジン、第1のモータジェネレータ、駆動軸及びブレーキに接続され、第2のモータジェネレータは、駆動軸に接続される。ブレーキを解放した状態では、第1のモータジェネレータの回転数を連続的に変化させることにより、エンジンの回転数が連続的に変化し、無段変速モードでの運転が実行される。一方、ブレーキを固定した状態では、上記の回転要素の1つの回転が阻止されることにより変速比が固定となり、固定変速モードでの運転が実行される。
【0004】
【特許文献1】特開2004−345527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、無段変速モードと固定変速モードとでは、固定変速モードの方がエンジン出力に対する駆動軸の応答性が速いため、無段変速モードと固定変速モードとでドライバビリティに違和感を生じる恐れがある。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、無段変速モードの場合と固定変速モードの場合とでドライバビリティに違和感を生じるのを防ぐことが可能な車両の制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの観点では、変速モードとして、動力源の回転数と駆動軸の回転数との回転数比が連続的に変化する無段変速モードと、前記回転数比が固定となる固定変速モードとを有する車両に適用される車両の制御装置は、前記動力源の出力トルクを制御することにより、前記駆動軸の駆動トルクが所定値から目標値に到達するまでの到達時間を、無段変速モードの場合と固定変速モードの場合とで一致させる制御手段を備える。
【0008】
上記の車両の制御装置は、変速モードとして、動力源の回転数と駆動軸の回転数との回転数比が連続的に変化する無段変速モードと、前記回転数比が固定となる固定変速モードとを有する車両に適用される。車両の制御装置は、例えばECU(Electronic Control Unit)などの制御手段を備える。制御手段は、前記動力源の出力トルクを制御することにより、前記駆動軸の駆動トルクが所定値から目標値に到達するまでの到達時間を、無段変速モードの場合と固定変速モードの場合とで一致させる。ここで、所定値は任意の値であり、目標値は所定値よりも大きな任意の値である。これにより、無段変速モードと固定変速モードとで、運転者に違和感を与えないドライバビリティを提供することができる。
【0009】
上記の車両の制御装置の他の一態様は、前記制御手段は、固定変速モードの場合には、前記動力源の出力トルクを制御することにより、前記到達時間を所定時間遅延させる。ここで、所定時間は、無段変速モードの場合における駆動トルクが所定値から目標値に到達するまでの到達時間と、固定変速モードの場合における駆動トルクが所定値から目標値に到達するまでの到達時間と、の差として求められる。前記制御手段は、固定変速モードの場合には、前記動力源の出力トルクを制御することにより、固定変速モードの場合の元々の到達時間に対し、所定時間遅延させる。このようにすることで、駆動トルクが所定値から目標値に到達するまでの到達時間を、無段変速モードの場合と固定変速モードの場合とで一致させることができる。
【0010】
上記の車両の制御装置の他の一態様は、前記動力源に供給するエネルギーを蓄積することが可能なエネルギー蓄積手段を有し、前記制御手段は、前記エネルギー蓄積手段より前記動力源に供給可能なエネルギー量を検出し、検出された供給可能なエネルギー量に基づいて、前記所定時間を変更する。エネルギー蓄積手段は、例えばバッテリである。このようにすることで、エネルギー蓄積手段に出力制限がある場合であっても、駆動トルクが所定値から目標値に到達するまでの到達時間を、無段変速モードの場合と固定変速モードの場合とで一致させることができ、運転者に違和感を与えないドライバビリティを提供することができる。
【0011】
上記の車両の制御装置の好適な実施例は、内燃機関及びモータジェネレータを前記動力源として有し、無段変速モードと固定変速モードとの間で変速モードを切り換え可能に構成されたハイブリッド車両に適用される。
【0012】
上記の車両の制御装置の好適な実施例は、第1のモータジェネレータと、前記内燃機関及び前記第1のモータジェネレータが連結された動力分配機構と、前記駆動軸に接続された第2のモータジェネレータと、前記動力分配機構の回転要素に連結されたブレーキと、を有し、前記ブレーキを解放した状態では、前記内燃機関の出力トルクの反力が前記第1のモータジェネレータにより出力される無段変速モードが実行され、前記ブレーキを固定した状態では、前記動力分配機構の回転要素が固定されることにより前記内燃機関の出力トルクが、前記第1のモータジェネレータにより出力される反力の影響を受けることなく前記駆動軸に伝達される固定変速モードが実行されるハイブリッド車両に適用される。このハイブリッド車両では、無段変速モードの場合には、第1のモータジェネレータより反力を変化させるため、内燃機関から出力されたトルクが駆動軸に伝達されるのに遅れが生じる。そのため、無段変速モードの場合には、固定変速モードの場合と比較して、前記駆動トルクが目標値に到達するのが遅れる。このハイブリッド車両に本発明の制御装置を適用することにより、固定変速モードの場合において、前記駆動トルクが目標値に到達するのを所定時間遅延させることができ、駆動トルクが所定値から目標値に到達するまでの到達時間を、無段変速モードの場合と固定変速モードの場合とで一致させることができる。これにより、運転者に違和感を与えないドライバビリティを提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
変速モードとして、動力源の出力トルクに対応する反力を変化させることにより前記動力源の回転数と駆動軸の回転数との回転数比が連続的に変化する無段変速モードと、前記回転数比が固定となる固定変速モードとを有する車両に適用される車両の制御装置であって、前記動力源の出力トルクを制御することにより、前記駆動軸の駆動トルクが所定値から目標値に到達するまでの到達時間を、無段変速モードの場合と固定変速モードの場合とで一致させる制御手段を備える。これにより、無段変速モードと固定変速モードとで、運転者に違和感を与えないドライバビリティを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0015】
[装置構成]
図1に本発明の車両の制御装置を適用したハイブリッド車両の概略構成を示す。図1の例は、機械分配式2モータ型と称されるハイブリッド車両であり、エンジン(内燃機関)1、第1のモータジェネレータMG1、第2のモータジェネレータMG2、動力分配機構20、を備える。動力源に相当するエンジン1と、第1のモータジェネレータMG1とが動力分配機構20に連結されている。動力分配機構20の駆動軸3には、駆動軸3のトルク(駆動トルク)又はブレーキ力のアシストを行うための動力源である第2のモータジェネレータMG2が連結されている。第2のモータジェネレータMG2はMG2変速部6を介して駆動軸3と接続されている。さらに、駆動軸3は最終減速機8を介して左右の駆動輪9に連結されている。第1のモータジェネレータMG1と第2のモータジェネレータMG2とは、バッテリ、インバータ、又は適宜のコントローラ(図2参照)を介して、もしくは直接的に電気的に接続され、第1のモータジェネレータMG1で生じた電力で第2のモータジェネレータMG2を駆動するように構成されている。
【0016】
エンジン1は燃料を燃焼して動力を発生する熱機関であり、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどが挙げられる。第1のモータジェネレータMG1はエンジン1からトルクを受けて回転することにより主として発電を行うものであり、発電に伴うトルクの反力が作用する。第1のモータジェネレータMG1の回転数を制御することにより、エンジン1の回転数が連続的に変化する。このような変速モードを無段変速モードという。無段変速モードは、後述する動力分配機構20の差動作用により実現される。
【0017】
第2のモータジェネレータMG2は、駆動トルク又はブレーキ力を補助(アシスト)する装置である。駆動トルクをアシストする場合、第2のモータジェネレータMG2は電力の供給を受けて電動機として機能する。一方、ブレーキ力をアシストする場合には、第2のモータジェネレータMG2は、駆動輪9から伝達されるトルクにより回転させられて電力を発生する発電機として機能する。
【0018】
図2は、図1に示す第1及び第2のモータジェネレータMG1及びMG2、並びに動力分配機構20の構成を示す。
【0019】
動力分配機構20は、エンジン1の出力トルクを第1のモータジェネレータMG1と駆動軸3とに分配する機構であり、差動作用を生じるように構成されている。具体的には複数組の差動機構を備え、互いに差動作用を生じる4つの回転要素のうち、第1の回転要素にエンジン1が連結され、第2の回転要素に第1のモータジェネレータMG1が連結され、第3の回転要素に駆動軸3が連結される。第4の回転要素はブレーキ部7により固定可能となっている。ブレーキ部7は、例えば、複数のドグ歯を有する係合要素(不図示)、及び複数のドグ歯を有する被係合要素(不図示)、を有する噛合機構である。
【0020】
ブレーキ部7が第4の回転要素を固定していない状態では、第1のモータジェネレータMG1の回転数を連続的に変化させることによりエンジン1の回転数が連続的に変化し、無段変速モードが実現される。一方、ブレーキ部7が第4の回転要素を固定している状態では、動力分配機構20により決定される変速比がオーバードライブ状態(即ち、エンジン1より出力される回転数が駆動軸3の回転数より小さくなる状態)に固定され、固定変速モードが実現される。
【0021】
本実施形態では、図2に示すように、動力分配機構20は、2つの遊星歯車機構を組み合わせて構成される。第1の遊星歯車機構はリングギアR1、キャリアC1、サンギアS1を備える。第2の遊星歯車機構はダブルピニオン式であり、リングギアR2、キャリアC2、サンギアS2を備える。
【0022】
エンジン1の出力軸2は第1の遊星歯車機構のキャリアC1に連結され、そのキャリアC1は第2の遊星歯車機構のリングギアR2に連結されている。これらが第1の回転要素を構成する。第1のモータジェネレータMG1のロータ11は第1の遊星歯車機構のサンギアS1に連結され、これらが第2の回転要素を構成している。
【0023】
第1の遊星歯車機構のリングギアR1と第2の遊星歯車機構のキャリアC2は相互に連結されているとともに駆動軸3に連結されている。これらが第3の回転要素を構成している。また、第2の遊星歯車機構のサンギアS2は回転軸29に連結されており、回転軸29とともに第4の回転要素を構成している。回転軸29はブレーキ部7により固定可能となっている。
【0024】
電源ユニット30は、インバータ31、コンバータ32、HVバッテリ33及びコンバータ34を備える。第1のモータジェネレータMG1は電源線37によりインバータ31に接続されており、第2のモータジェネレータMG2は電源線38によりインバータ31に接続されている。また、インバータ31はコンバータ32に接続され、コンバータ32はHVバッテリ33に接続されている。さらに、HVバッテリ33はコンバータ34を介して補機バッテリ35に接続されている。
【0025】
インバータ31は、モータジェネレータMG1及びMG2との間で電力の授受を行う。モータジェネレータの回生時には、インバータ31はモータジェネレータMG1及びMG2が回生により発電した電力を直流に変換し、コンバータ32へ供給する。コンバータ32は、インバータ31から供給される電力を電圧変換し、HVバッテリ33を充電する。一方、モータジェネレータの力行時には、HVバッテリ33から出力される直流電力はコンバータ32により昇圧されてインバータ31へ供給され、電源線37又は38を介してモータジェネレータMG1又はMG2へ供給される。
【0026】
HVバッテリ33の電力はコンバータ34により電圧変換されて補機バッテリ35に供給され、各種の補機の駆動に使用される。
【0027】
インバータ31、コンバータ32、HVバッテリ33及びコンバータ34の動作はECU4により制御されている。ECU4は制御信号S4を送信することにより、電源ユニット30内の各要素の動作を制御する。また、電源ユニット30内の各要素の状態などを示す必要な信号は制御信号S4としてECU4に供給される。具体的には、HVバッテリ33のバッテリ残存容量を示すSOC(State Of Charge)及びバッテリの入出力制限値などは制御信号S4としてECU4に供給される。
【0028】
ECU4は、エンジン1、第1のモータジェネレータMG1及び第2のモータジェネレータMG2との間で制御信号S1〜S3を送受信することにより、それらを制御する。例えば、ECU4は、図示しないアクセルペダルからの制御信号に基づいて、アクセル開度を検出して要求駆動トルクを求め、駆動トルクが当該要求駆動トルクとなるように、エンジン1、第1のモータジェネレータMG1及び第2のモータジェネレータMG2、を制御する。従って、ECU4は、本発明における制御手段として機能する。また、ECU4は、図示しないブレーキ操作部に制御信号を供給し、ブレーキ操作部は、当該制御信号に基づいて、ブレーキ部7における固定(係合)/解放を制御する。
【0029】
(制御方法)
次に、本実施形態に係る車両の制御方法について説明する。
【0030】
まず、図3を参照して、無段変速モード、及び、固定変速モード、におけるハイブリッド車両の動作状態について説明する。図3は、無段変速モード及び固定変速モードにおける共線図の一例を示している。図3(a)、(b)において、上下方向は回転数に対応しており、上方向が正回転に対応する。
【0031】
図3(a)における直線A1a、A1b、A1cは無段変速モードにおける共線図の一例を示している。無段変速モードの場合には、エンジン1の出力トルクTKEに対応する反力が、第1のモータジェネレータMG1よりトルクTK1として出力されている。なお、トルクTK2は、第2のモータジェネレータMG2より出力されるトルクを示している。無段変速モードでは、第1のモータジェネレータMG1の回転数を増減変化させることにより、エンジン1の回転数を連続的に制御することが可能である。駆動軸3の回転数がN1であるとした場合において、例えば、第1のモータジェネレータMG1の回転数を白丸m1、m2、m3と順次変化させた場合には、エンジン1の回転数は、白丸Ne1(>N1)、Ne2(=N1)、Ne3(<N1)と順次変化する。つまり、エンジン1の回転数は、駆動軸3の回転数よりも高い値、等しい値及び低い値に順次変化する。ここで、直線A1cに示すように、第1のモータジェネレータMG1について、その回転数が負となる場合には、即ち、第1のモータジェネレータMG1が力行状態となった場合には、第2のモータジェネレータMG2から第1のモータジェネレータMG1に電力を供給する動力循環が発生する。動力循環が発生すると、車両の伝達効率が低下して燃費が悪化する。
【0032】
図3(b)における直線A2は固定変速モードにおける共線図の一例を示している。固定変速モードの場合には、ブレーキ部7が第4の回転要素を固定している状態となるため、動力分配機構20により決定される変速比がオーバードライブ状態(即ち、エンジン1の回転数NeSが駆動軸3の回転数N1より小さくなる状態)に固定される。このとき、ブレーキ部7がサンギアS2を固定することにより、エンジン1の出力トルクTKEに対応する反力TKBがブレーキ部7において機械的に支持されるため、第1のモータジェネレータMG1を発電機及び電動機のいずれとしても機能させる必要がなく、第1のモータジェネレータMG1は実質的に空転状態となる。そのため、第2のモータジェネレータから第1のモータジェネレータMG1に電力を供給する必要がなくなり、動力循環を回避することができる。従って、高速定常走行時では、無段変速モードから固定変速モードに切り換えることにより、動力循環を防ぐことができ、低燃費化を図ることができる。
【0033】
ここで、エンジン1の出力トルクの立ち上がり時において、固定変速モードの場合には、エンジン1の出力トルクに対応する反力がブレーキ部7において機械的に支持されているため、第1のモータジェネレータMG1の反力の影響を受けることなく、エンジン1の出力トルクは駆動軸3に伝達される。それに対し、無段変速モードの場合には、第1のモータジェネレータMG1より反力を変化させるため、エンジン1の出力トルクは、動力分配機構20を介して駆動軸3に伝達される過程で低下する。そのため、エンジン1の出力トルクの立ち上がり時において、無段変速モードの場合には、固定変速モードの場合と比較して、エンジン1の出力トルクが駆動軸3に伝達されるのに遅れが生じてしまう。このことについて、図4を用いて説明する。
【0034】
図4は、アクセル開度、エンジン1の出力トルク、駆動トルク、の夫々について時間に対する変化を示すグラフである。図4に示すグラフは、運転者がアクセルを踏み込むことにより、駆動トルクを所定値Tstから目標値Tedまで上昇させる場合を示している。なお、図4に示す例では、第2のモータジェネレータMG2による駆動トルクのアシストを行わずに、エンジン1の出力トルクのみを増加させることにより、駆動トルクを目標値Tedまで上昇させる。
【0035】
時刻t1において運転者がアクセルを踏み込むと、アクセル開度が増加する。アクセルペダルセンサは、アクセル開度に対応する制御信号をECU4に供給する。ECU4は、アクセルペダルセンサより制御信号を受信すると、アクセル開度を検出し、検出されたアクセル開度に対応する要求駆動トルクを求める。アクセル開度の増加に従い、要求駆動トルクは増加する。ECU4は、駆動トルクが当該要求駆動トルクとなるように、エンジン1に制御信号を供給することにより、エンジン1の出力トルクの制御を行う。
【0036】
固定変速モードの場合には、第1のモータジェネレータMG1の反力の影響を受けることなく、エンジン1の出力トルクが駆動軸3に伝達されるため、エンジン1の出力トルクが大きくなると直ぐに、駆動トルクも大きくなる。その結果として、駆動トルクは時刻t2で目標値Tedに到達する。一方、無段変速モードの場合には、第1のモータジェネレータMG1の反力の影響により、固定変速モードの場合と比較して、駆動トルクの上昇は緩やかとなるので、時刻t2よりも遅い時刻t3で目標値Tedに到達する。このことから分かるように、エンジン1の出力トルクの立ち上がり時には、固定変速モードの場合の方が、無段変速モードの場合と比較して、エンジン1からの出力に対する駆動軸3の応答性が速いため、運転者は、無段変速モードの場合と固定変速モードの場合とでドライバビリティに違和感を生じる恐れがある。
【0037】
そこで、本実施形態に係る車両の制御装置では、ECU4は、駆動トルクが所定値から目標値に到達するまでの到達時間を、無段変速モードに設定された場合と固定変速モードに設定された場合とで一致させることとする。このことについて、図5を用いて具体的に述べる。
【0038】
図5は、駆動トルクについて時間に対する変化を示すグラフである。具体的には、図5は、固定変速モード、無段変速モード、の夫々の場合において、所定値Tout1から所定値Tout2を経て目標値Tkedに駆動トルクを上昇させたときのグラフである。指定値Tout1から所定値Tout2までは、主にモータジェネレータから出力されるトルクにより駆動トルクは上昇され、所定値Tout2から目標値Tkedまでは、主にエンジン1の出力トルクにより駆動トルクは上昇される。
【0039】
図5において、「α」は無段変速モードの場合の駆動軸3の応答性を示し、「β」は固定変速モードの場合の駆動軸3の応答性を示している。「γ」は無段変速モードの場合と固定変速モードの場合との間の応答差α−βを示している。なお、ここでいう応答性とは、駆動トルクが所定値Tout2から目標値Tkedに到達するまでの時間である。即ち、「α」は、無段変速モードの場合において、駆動トルクが所定値Tout2から目標値Tkedに到達するまでの到達時間を示しており、「β」は、固定変速モードの場合において、駆動トルクが所定値Tout2から目標値Tkedに到達するまでの到達時間を示し、「γ」は、無段変速モードの場合における到達時間αと固定変速モードの場合における到達時間βとの差α−βを示している。なお、「ε」はHVバッテリ33の出力制限による駆動トルクの低下量を示している。
【0040】
ここで、所定値Tout1、Tout2、Tkedは任意に設定される値である。「α」、「β」は、例えば、予め実験などにより、所定値Tout2と目標値Tkedとのマップとして求められており、ECU4のROMなどに記録されている。
【0041】
HVバッテリ33の出力制限が無いとした場合には、固定変速モード及び無段変速モードのどちらの場合であっても、要求駆動トルクの増加に対し、駆動トルクが所定値Tout1からTout2まで上昇するまでは(時刻ta1〜ta2の間)、主にモータジェネレータ(具体的には、第2のモータジェネレータMG2)から出力されるトルクにより駆動トルクは上昇される。駆動トルクが所定値Tout2を超えると、主にエンジン1の出力トルクにより駆動トルクは目標値Tkedまで上昇される。主にエンジン1の出力トルクにより駆動トルクが上昇される際、先に述べたように、固定変速モードの場合の方が、無段変速モードの場合と比較して、エンジン1からの出力に対する駆動軸3の応答性が速い。そのため、固定変速モードの場合における、駆動トルクが所定値Tout2から目標値Tkedに到達するまでの到達時間βは、無段変速モードの場合の到達時間αと比較して短くなる。図5において、無段変速モードの場合における、駆動トルクが目標値Tkedに到達したときの時刻を「ta3」とする。
【0042】
本実施形態に係る車両の制御装置では、固定変速モードの場合には、ECU4は、「β」の応答性を遅延させる。具体的には、ECU4は、固定変速モードの場合には、無段変速モードの場合と比較して、エンジン1の出力トルクの上昇度合いが時間に対して緩やかになるようにエンジン1を制御することにより、駆動トルクが目標値Tkedに到達するのを時間γだけ遅延させる。エンジン1の出力トルクの上昇度合いを変速モードによって変えてエンジン1を制御する方法としては、例えば、要求駆動トルクと、点火時期、吸入空気量、燃料噴射量、の夫々の値と、の関係を示すマップを、無段変速モードの場合と固定変速モードの場合とで別々に用意しておき、ECU4は、固定変速モードの場合と無段変速モードの場合とで、参照するマップを切り換える方法が考えられる。
【0043】
固定変速モードの場合、駆動軸3の応答性は元々「β」となっているので、駆動トルクが目標値Tkedに到達するのを時間γだけ遅延させることにより、時刻ta2から時間β+γ(=α)経過したときに、即ち、時刻ta3に、駆動トルクは目標値Tkedに到達することとなる。
【0044】
つまり、固定変速モードの場合には、ECU4は、エンジン1の出力トルクを制御することにより、駆動トルクが目標値Tkedに到達するのを、元々の到達時間βに対し時間γだけ遅延させる。つまり、ECU4は、「β」の応答性を「γ」だけ遅延させた「β+γ」の応答性で駆動トルクが出力されるように制御する。このようにすることで、駆動トルクの所定値Tout2から目標値Tkedに到達するまでの到達時間を、無段変速モードの場合と固定変速モードの場合とで一致させることができる。これにより、無段変速モードの場合と固定変速モードの場合とにおける、エンジン1の出力に対する駆動軸3の応答性の違いを解消することができる。別の言い方をすると、無段変速モードの場合と固定変速モードの場合とで、アクセル開度の変化に対する応答性の違いを解消することができる。これにより、運転者に違和感を与えないドライバビリティを提供することができる。
【0045】
なお、ここで、ECU4は、固定変速モードの場合において、駆動トルクが目標値Tkedに到達するのを、元々の到達時間βに対し時間γだけ遅延させるとする代わりに、無段変速モードの場合において、駆動トルクが目標値Tkedに到達するのを、元々の到達時間βに対し時間γだけ早めるとしても良い。しかし、無段変速モードにおける応答性を速めるよりも、固定変速モードにおける応答性を遅延させる方が簡単であり、その点でも上述の方法の方が有利である。
【0046】
次に、HVバッテリ33の出力制限が有る場合について説明する。HVバッテリ33の出力制限が有る場合には、モータジェネレータの出力トルクの大きさも制限される。従って、HVバッテリ33の出力制限が無い場合と比較して、駆動トルクの上昇は緩やかとなる。そのため、図5に示すように、固定変速モードの場合において、時刻ta1〜ta2までの間に、駆動トルクを所定値Tout2まで上昇させることができず、時刻ta2では、HVバッテリ33の出力制限が無い場合と比較して、駆動トルクは低くなる。図5では、時刻t2における、HVバッテリ33の出力制限が無い場合と比較した駆動トルクの低下量を「ε」としている。
【0047】
そのため、HVバッテリ33の出力制限が有る場合において、エンジン1を制御して「β+γ」の応答性で駆動トルクが出力されるように制御した場合には、即ち、駆動トルクが目標値Tkedに到達するのを時間γだけ遅延させるとした場合には、時刻ta3に駆動トルクが目標値Tkedに到達しなくなる恐れがある。即ち、駆動トルクが所定値から目標値に到達するまでの到達時間を、固定変速モードの場合と無段変速モードの場合とで一致させることができなくなる恐れがある。
【0048】
そこで、本実施形態に係る車両の制御装置では、固定変速モードの場合に、ECU4は、HVバッテリ33の出力制限に基づいて、時間γを変更することとする。具体的には、
ECU4は、HVバッテリ33のSOCと出力制限値に基づいて、出力制限割合δを求め、出力制限割合δに基づいて、駆動トルクの低下量εを求める。そして、ECU4は、駆動トルクの低下量εに基づいて、時間γの補正量を求める。
【0049】
まず、ECU4は、HVバッテリ33のSOCと出力制限値に基づいて、出力制限割合δを求める。出力制限割合δは、モータジェネレータの最大出力に対する出力可能な割合を示している。具体的には、出力制限割合δは、例えば、SOC及び出力制限値と出力制限割合との関係を示すマップにより求められる。ここで、例えば、出力制限割合δが40%として求められた場合には、モータジェネレータの出力として最大出力の40%までしか出力することができない。
【0050】
次に、ECU4は、求められた出力制限割合δに基づいて、駆動トルクの低下量εを算出する。具体的には、ECU4は、例えば、駆動トルクの低下量εと出力制限割合δとの関係を示すマップを予めROMなどに記録しておき、当該マップを用いることにより、出力制限割合δより駆動トルクの低下量εを算出する。ECU4は、求められた低下量εに対し駆動力補正係数ζを掛けた値ε×ζを時間γの補正量として算出する。ここで、駆動力補正係数ζは、駆動トルクの低下量εに対応する到達時間の遅れを算出するための係数であり、予め実験などにより求められ、ECU4のROMなどに記録されている。
【0051】
ECU4は、時間γを補正量ε×ζで補正することにより求められた時間γ−ε×ζを新たな遅延時間とする。この補正後の時間γ−ε×ζは、補正前の時間γと比較して短くなっている。ECU4は、エンジン1の出力トルクを制御して、駆動トルクが目標値Tkedに到達するのを、元々の到達時間βに対し時間γ−ε×ζだけ遅延させることとする。つまり、ECU4は、「β+γ−ε×ζ」の応答性で駆動トルクが出力されるように制御する。このようにすることで、駆動トルクを時刻ta3で目標値Tkedに到達させることができる。これにより、HVバッテリ33の出力制限がある場合であっても、無段変速モードの場合と固定変速モードの場合とで、アクセル開度に対する応答性の違いを解消することができ、運転者に違和感を与えないドライバビリティを提供することができる。
【0052】
(制御処理)
次に、本実施形態に係る車両の制御方法について、図6に示すフローチャートを用いて説明する。図6は、本実施形態に係る車両の制御処理について示すフローチャートである。
【0053】
まず、ステップS101において、ECU4は、現在の変速モードが無段変速モードになっているか否かについて判定する。例えば、ECU4は、ブレーキ操作部に供給した制御信号に基づいて、現在の変速モードが無段変速モードになっているか否かについて判定することができる。ECU4は、現在の変速モードが無段変速モードになっていると判定した場合には(ステップS101:Yes)、無段変速モードによる走行制御を行い(ステップS102)、ステップS103の処理へ進む。
【0054】
ステップS103において、ECU4は、「α」の応答性で駆動トルクが出力されるように、駆動トルクの指示制御を行う。具体的には、ECU4は、要求駆動トルクに対し、エンジン1について通常の応答制御(エンジン1の応答性を遅延させたりすることのない制御)を行う。その後、本制御処理をリターンする。
【0055】
先のステップS101において、ECU4は、現在の変速モードが固定変速モードになっていると判定した場合には(ステップS101:No)、固定変速モードによる走行制御を行い(ステップS104)、ステップS105の処理へ進む。
【0056】
ステップS105において、ECU4は、HVバッテリ33の出力制限が無いか否かについて判定する。具体的には、ECU4は、HVバッテリ33のSOCと出力制限値に基づいて、出力制限が無いか否かについて判定する。ECU4は、HVバッテリ33の出力制限が無いと判定した場合には(ステップS105:Yes)、ステップS106の処理へ進む。
【0057】
ステップS106において、ECU4は、「β+γ」の応答性で駆動トルクが出力されるように、駆動トルクの指示制御を行う。具体的には、ECU4は、エンジン1の出力トルクを制御して、駆動トルクが目標値Tkedに到達するのを、元々の到達時間βに対し時間γだけ遅延させる。その後、本制御処理をリターンする。このようにすることで、無段変速モードと固定変速モードとで、運転者に違和感を与えないドライバビリティを提供することができる。
【0058】
先のステップ105において、ECU4は、HVバッテリ33の出力制限が有ると判定した場合には(ステップS105:No)、ステップS107の処理へ進む。
【0059】
ステップS107において、ECU4は、HVバッテリ33のSOCと出力制限値に基づいて、出力制限割合δを求める。具体的には、出力制限割合δは、SOC及び出力制限値と出力制限割合との関係を示すマップより求められる。SOCと出力制限値との関係を示すマップは、予め実験などにより求められ、ECU4のROMなどに記録されている。
【0060】
ステップS108において、ECU4は、出力制限割合δに基づいて、駆動トルクの低下量εを算出する。具体的には、ECU4は、例えば、駆動トルクの低下量εと出力制限割合δとの関係を示すマップを用いることにより、出力制限割合δより駆動トルクの低下量εを算出する。当該マップは、予め実験などにより求められ、ECU4のROMなどに記録されている。
【0061】
ステップS109において、ECU4は、低下量εに対し駆動力補正係数ζを掛けた値を、時間γの補正量として算出し、「β+γ−ε×ζ」の応答性で駆動トルクが出力されるように、駆動トルクの指示制御を行う。具体的には、ECU4は、エンジン1の出力トルクを制御して、駆動トルクが目標値Tkedに到達するのを、元々の到達時間βに対し時間γ−ε×ζだけ遅延させることとする。このようにすることで、HVバッテリ33の出力制限がある場合であっても、無段変速モードと固定変速モードとで、運転者に違和感を与えないドライバビリティを提供することができる。
【0062】
[変形例]
次に、上述の実施形態に係る車両の制御装置の変形例について説明する。上述の実施形態では、ブレーキ部7により回転軸29を固定することで固定変速モードが実現されるハイブリッド車両に対して本発明の車両の制御装置を適用する例を示したが、これに限られるものではない。この代わりに、例えば、第1のモータジェネレータMG1のモータ軸の回転をロックすることにより固定変速モードを実現するハイブリッド車両や、固定変速モードとして複数の変速比で変速可能な固定変速機構を備える、いわゆるマルチモードタイプのハイブリッド車両にも本発明の車両の制御装置を適用することができるのは言うまでもない。これらのハイブリッド車両においても、高速定常走行時に固定変速モードに切り換えることで、動力循環を防ぎ燃費を低減することができる。
【0063】
また、本発明の車両の制御装置を適用可能な車両としてはハイブリッド車両に限られない。また、動力源としては、エンジンとモータジェネレータに限られるものではなく、種々の動力源を用いることができる。例えば、電気自動車のように、エンジンを動力源とせずに、モータジェネレータのみを動力源としても良い。要は、変速モードとして、動力源の回転数と駆動軸の回転数との回転数比が連続的に変化する無段変速モードと、当該回転数比が固定となる固定変速モードと、を有する車両であれば、本発明の制御装置を適用することができる。従って、変速機構としては動力分割機構に限られるものではなく、他の機構を用いるとしてもよい。
【0064】
他の機構の例として、固定変速機構に加えて、ベルト式又はトロイダル式の無段変速機構を備えた車両に本発明を適用する例について説明する。このように、固定変速機構に加えて、ベルト式又はトロイダル式の無段変速機構を備えた車両においては、高速走行時に固定変速モードに切り換えることで、無段変速機構による変速を禁止して燃費を低減することができる。
【0065】
図7は、動力源からの出力を固定のギヤ比で変速することにより固定変速モードを実現する固定変速機構に加えて、ベルト式の無段変速機構を備えた車両の一例を示すスケルトン図である。車両は、主に、動力源51、トルクコンバータ52、クラッチ56、無段変速機構53、ギヤ57、58、59、駆動軸60、を備える。
【0066】
動力源51からの出力は、トルクコンバータ52に伝達される。トルクコンバータ52は、オイルなどの流体継手を介して動力源と変速機構とを連結するためのものであり、車両の前進又は後進を切り換える機能を有する。トルクコンバータ52からの出力は、クラッチ56へ伝達される。クラッチ56は、固定変速モードと無段変速モードを切り換えるためのものである。クラッチ56が解放された状態では、無段変速モードが実現され、クラッチ56が係合された状態では、固定変速モードが実現される。
【0067】
具体的には、クラッチ56が解放された状態では、トルクコンバータ52からの出力は、ベルト式の無段変速機構53に伝達される。ベルト式の無段変速機構53は、プライマリプーリ54a、セカンダリプーリ54b、及び、両プーリに巻掛けられた金属等からなるベルト55からなる。両プーリの可動シーブ54aa,54baを軸方向(両端矢印に示す方向)に動かすことによりベルト有効径が変化することにより、トルクコンバータ52からの出力は、プライマリプーリ54aからセカンダリプーリ54bに伝達される際に変速される。セカンダリプーリ54bは、駆動軸60に接続されており、セカンダリプーリ54bからの出力は駆動軸60に伝達される。駆動軸60に伝達された出力は、ギヤ61、62、63、デファレンシャルギヤ64を介して、駆動輪65に伝達される。これにより、無段変速モードが実現される。
【0068】
クラッチ56が係合された状態では、トルクコンバータ52からの出力は、ベルト式の無段変速機構53には伝達されずに、ギヤ57、58、59を介して駆動軸60に伝達される。このとき、トルクコンバータ52からの出力は、ギヤ57、58、59のギヤ比に応じて変速された後、駆動軸60に伝達される。従って、ギヤ57、58、59が固定変速機構として機能する。駆動軸60に伝達された出力は、ギヤ61、62、63、デファレンシャルギヤ64を介して、駆動輪65に伝達される。これにより、固定変速モードが実現される。
【0069】
上述のベルト式の無段変速機構を備えた車両においても、無段変速モードの場合には、動力源から出力されたトルクは、無段変速機構53において、変速のために両プーリからの反力が変化し、固定変速モードの場合と比較して、駆動トルクの目標値までの到達時間は遅延する。従って、上述のベルト式の無段変速機構を備えた車両においても、本発明の車両の制御装置を適用することができる。具体的には、固定変速モードの場合において、動力源51の出力トルクを制御することにより、駆動トルクが目標値に到達するのを、元々の到達時間に対し所定時間遅延させ、駆動トルクが所定値から目標値に到達するまでの到達時間を無段変速モードの場合と一致させる。これにより、無段変速モードと固定変速モードとで、運転者に違和感を与えないドライバビリティを提供することができる。
【0070】
上述の例では、固定変速機構に加えてベルト式の無段変速機構を備えた車両に対し、本発明の車両の制御装置を適用する例を示したが、これに限られるものではなく、ベルト式の無段変速機構の代わりに、トロイダル式の無段変速機構を備えるとしてもよい。トロイダル式の無段変速機構は、入力ディスク、出力ディスク、及びそれら両ディスクに挟持されたパワーローラを有し、当該パワーローラの位置制御により変速を可能とするものである。入力ディスクには動力源が連結され、出力ディスクには駆動軸が連結されている。固定変速機構に加えて、このトロイダル式の無段変速機構を備えた車両に対し、本発明の車両の制御装置を適用した場合であっても先に述べたのと同様の効果を得ることができる。即ち、無段変速モードの場合と固定変速モードの場合とで、運転者に違和感を与えないドライバビリティを提供することができる。
【0071】
さらに、トルクコンバータを備えた車両にも本発明の車両の制御装置を適用することができる。トルクコンバータは、オイルなどの流体継手を介して動力源と変速機を連結することにより無段階に変速するモード(流体継手モード)と、ロックアップクラッチといった摩擦係合要素により動力源と変速機とを機械的に連結するモード(連結モード)と、の2つのモードを有する。定常走行時には、連結モードにすることで、流体継手モードの場合と比較して、流体を介することによる伝達ロスを防ぐことができ、燃費の向上を図ることができる。
【0072】
このトルクコンバータを備えた車両においても、流体継手モードの場合には、動力源から出力されたトルクは、流体からの反力により低下するため、連結モードの場合と比較して、駆動トルクの目標値までの到達時間は遅延する。つまり、トルクコンバータを備えた車両においては、流体継手モードが無段変速モードに相当し、連結モードが固定変速モードに相当する。
【0073】
そこで、トルクコンバータを備えた車両においても、本発明の車両の制御装置を適用することにより上述と同様の効果を得ることができる。即ち、連結モードの場合には、動力源の出力トルクを制御することにより、駆動トルクが目標値に到達するのを、元々の到達時間に対し所定時間遅延させ、駆動トルクが所定値から目標値に到達するまでの到達時間を流体継手モードの場合と一致させる。これにより、流体継手モードと連結モードとで、運転者に違和感を与えないドライバビリティを提供することができる。
【0074】
また、上述の変形例に係る各車両において、更に加えて、バッテリなどの、動力源の外部より当該動力源にエネルギーを供給することが可能なエネルギー蓄積手段を有するとしても良い。エネルギー蓄積手段に出力制限がある場合には、先の実施形態で述べたHVバッテリ33の場合と同様の制御を行うこととする。即ち、固定変速モードにおいて、エネルギー蓄積手段より動力源に供給可能なエネルギー量を検出し、検出された供給可能なエネルギー量に基づいて、遅延時間を変更する。このようにすることで、エネルギー残量が少ない又は熱等の影響により動力源に供給可能なエネルギー量が低下し、その結果として駆動トルクが低下した場合であっても、無段変速モードの場合と固定変速モードの場合とで、運転者に違和感を与えないドライバビリティを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本実施形態に係るハイブリッド車両の概略構成を示す図である。
【図2】モータジェネレータ及び動力分割機構の構成を示す図である。
【図3】無段変速モード及び固定変速モードにおける共線図の一例を示す図である。
【図4】アクセル開度、エンジン出力トルク、駆動トルク、について時間に対する変化を示すグラフ。
【図5】駆動トルクについて時間に対する変化を示すグラフである。
【図6】本実施形態に係るハイブリッド車両の制御処理を示すフローチャートである。
【図7】ベルト式の無段変速機構を備えた車両の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
MG1、MG2 モータジェネレータ
1 エンジン
5 ドグクラッチ
7 ブレーキ部
20 動力分配機構
4 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速モードとして、動力源の回転数と駆動軸の回転数との回転数比が連続的に変化する無段変速モードと、前記回転数比が固定となる固定変速モードとを有する車両に適用される車両の制御装置であって、
前記動力源の出力トルクを制御することにより、前記駆動軸の駆動トルクが所定値から目標値に到達するまでの到達時間を、無段変速モードの場合と固定変速モードの場合とで一致させる制御手段を備えることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、固定変速モードの場合には、前記動力源の出力トルクを制御することにより、前記到達時間を所定時間遅延させる請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記動力源に供給するエネルギーを蓄積することが可能なエネルギー蓄積手段を有し、
前記制御手段は、前記エネルギー蓄積手段より前記動力源に供給可能なエネルギー量を検出し、検出された供給可能なエネルギー量に基づいて、前記所定時間を変更する請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
内燃機関及びモータジェネレータを前記動力源として有し、無段変速モードと固定変速モードとの間で変速モードを切り換え可能に構成されたハイブリッド車両に適用される請求項1乃至3に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
第1のモータジェネレータと、前記内燃機関及び前記第1のモータジェネレータが連結された動力分配機構と、前記駆動軸に接続された第2のモータジェネレータと、前記動力分配機構の回転要素に連結されたブレーキと、を有し、
前記ブレーキを解放した状態では、前記内燃機関の出力トルクの反力が前記第1のモータジェネレータにより出力される無段変速モードが実行され、前記ブレーキを固定した状態では、前記動力分配機構の回転要素が固定され、前記第1のモータジェネレータにより出力される反力の影響を受けることなく前記内燃機関の出力トルクが前記駆動軸に伝達される固定変速モードが実行されるハイブリッド車両に適用される請求項1乃至4に記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−227214(P2009−227214A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77990(P2008−77990)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】